IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱レイヨン株式会社の特許一覧

特開2024-129836ポリカーボネート樹脂組成物及び成形品
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129836
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】ポリカーボネート樹脂組成物及び成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 69/00 20060101AFI20240920BHJP
   C08G 64/02 20060101ALI20240920BHJP
   C08L 33/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
C08L69/00
C08G64/02
C08L33/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039182
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 佳史
(72)【発明者】
【氏名】金政 智亮
【テーマコード(参考)】
4J002
4J029
【Fターム(参考)】
4J002BG02X
4J002BG03X
4J002BG04X
4J002BG05X
4J002BG06X
4J002CG01W
4J002GL00
4J002GN00
4J002GP00
4J002GQ00
4J029AA09
4J029AB07
4J029AC02
4J029AD01
4J029AD10
4J029AE01
4J029BF08
4J029BF09
4J029BF10
4J029BF17
4J029BF18
4J029BF25
4J029BF30
4J029HA01
4J029HC05A
4J029JA091
4J029JA261
4J029JB171
4J029JE182
4J029JF031
4J029JF041
4J029JF131
4J029JF141
4J029JF151
4J029JF161
(57)【要約】      (修正有)
【課題】耐衝撃性と透明性を両立することができるポリカーボネート樹脂を提供することを課題とする。
【解決手段】下記式(1)で表される構造単位(A)と、下記式(2)で表される構造単位(B)とを含むポリカーボネート樹脂と、特定構造単位を含むアクリル樹脂とを含むポリカーボネート樹脂組成物。


【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される構造単位(A)と、下記式(2)で表される構造単位(B)とを含むポリカーボネート樹脂と、下記式(3)で表される構造単位を含むアクリル樹脂とを含むポリカーボネート樹脂組成物。
【化1】

【化2】

(式(2)において、nは2~4であり、mは平均値が2~45である。)
【化3】

(式(3)において、Rは水素、及び置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基から選択され、Rは炭素数1~20の分岐または直鎖のアルキル基、及び置換基を有してもよい炭素数6~20のシクロアルキル基から選択される。)
【請求項2】
前記ポリカーボネート樹脂が、構造単位(A)を10重量%以上80重量%未満含有する請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリカーボネート樹脂と前記アクリル樹脂との含有比率が、ポリカーボネート樹脂組成物100重量%に対し、前記ポリカーボネート樹脂は10重量%以上90重量%以下であり、前記アクリル樹脂は10重量%以上90重量%以下である請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項4】
ヘーズが30%以下である請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項5】
20℃における還元粘度が0.35以上、0.85以下である、請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色相、熱安定性、柔軟性に優れたポリカーボネート樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は、一般的にビスフェノール類をモノマー成分とし、透明性、耐熱性、機械的強度等の優位性を生かし、電気・電子部品、自動車用部品、光学記録媒体、レンズ等の光学分野等でいわゆるエンジニアリングプラスチックとして広く利用されている。一方で、石油資源の枯渇や二酸化炭素排出量の増加による地球温暖化が危惧されていることから、カーボンニュートラルな植物由来モノマーを原料としたプラスチックの開発が求められている。そのような状況の中、近年、植物由来原料であるイソソルビド(以下、「ISB」と称する場合がある。)を用いて製造されたポリカーボネート樹脂が開発され自動車用部品用途や光学用途、ガラス代替用途へと使用され始めている(例えば特許文献1、2参照)。
【0003】
ISBから得られるポリカーボネート樹脂は、光学特性に優れるだけでなく、従来汎用の芳香族ポリカーボネート樹脂に比べて、耐候性や表面硬度に極めて優れる。一方で、引張伸び、あるいは応力が集中する部分での耐衝撃性などの機械物性のさらなる改善が求められている。かかる課題に対して、例えば特許文献3、4では、耐衝撃性を改善する手法としてポリカーボネート樹脂にエラストマーを含有させることで耐衝撃性を改良することが開示されている。
【0004】
アクリル樹脂は、その優れた外観、耐候性、寸法安定性から、光学材料、照明用材料、住宅設備向け材料、建築材料、車両用部品等、様々な分野で幅広く用いられている。このアクリル樹脂に対して、近年、環境負荷を低減する目的から、植物原料のバイオマス樹脂を配合してアクリル樹脂を低減させた樹脂組成物が求められている。一方で、上記の用途では、製品外観に優れることから、透明性に優れたアクリル樹脂が求められている。また、上記の用途では、人や飛散物等の物との接触により製品に破損することがあるため、耐衝撃性に優れたアクリル樹脂が求められている。(例えば特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2004/111106号
【特許文献2】国際公開第2007/148604号
【特許文献3】特開2017-88774号公報
【特許文献4】特開2021-91900号公報
【特許文献5】特開2022-69369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、熱可塑性樹脂の耐衝撃性を向上するために、特許文献3で開示されているようにポリカーボネート樹脂にエラストマーを配合する、または特許文献5で開示されているように、アクリル樹脂にゴム成分を配合することがあるが、多くの場合、耐衝撃改良剤として用いられる材料は石油と主とした枯渇性資源に由来している。
【0007】
また特許文献4で開示されているように、ポリカーボネート樹脂にバイオ由来のエラストマーを配合することで優れた耐衝撃性の向上が期待できるが、アクリル樹脂の耐衝撃性に関する記述はなく、エマストラー成分を多くした場合は、ヘーズ値が高く透明性を確保
できていない。
本発明は、上記課題を解決するものであり、耐衝撃性と透明性を両立することができるポリカーボネート樹脂を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、植物由来原料から製造される化合物を用いたポリカーボネート樹脂が耐衝撃改良剤としての特性を兼ねつつ、アクリル樹脂の耐衝撃性を改善し、かつ色相に優れた樹脂組成物を提供できることを見出した。すなわち本発明の要旨は下記に存する。
【0009】
[1]下記式(1)で表される構造単位(A)と、下記式(2)で表される構造単位(B)とを含むポリカーボネート樹脂と、下記式(3)で表される構造単位を含むアクリル樹脂とを含むポリカーボネート樹脂組成物。
【化1】

【化2】

(式(2)において、nは2~4であり、mは平均値が2~45である。)
【化3】

(式(3)において、Rは水素、及び置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基から選択され、Rは炭素数1~20の分岐または直鎖のアルキル基、及び置換基を有してもよい炭素数6~20のシクロアルキル基から選択される)
[2]前記ポリカーボネート樹脂が、構造単位(A)を10重量%以上80重量%未満含有する[1]に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[3]前記ポリカーボネート樹脂と前記アクリル樹脂との含有比率が、ポリカーボネート樹脂組成物100重量%に対し、前記ポリカーボネート樹脂は10重量%以上90重量%以下であり、前記アクリル樹脂は10重量%以上90重量%以下である[1]又は[2]に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[4]ヘーズが30%以下である[1]~[3]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[5]20℃における還元粘度が0.35以上、0.85以下である、[1]~[4]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[6][1]~[5]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形品。
【発明の効果】
【0010】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、耐衝撃性を改善しつつ、色相、熱安定性、柔軟性度に優れる。このポリカーボネート樹脂組成物を用いることで、高品質の成形品を得ることも可能になる。また本発明のポリカーボネート樹脂組成物はバイオマスを有する樹脂であり、バイオマス樹脂を有する材料を普及させることで、持続可能な社会の実現に貢献することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
【0012】
本明細書において、「~」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることとする。
【0013】
本明細書において「繰り返し構造単位」とは、樹脂中で同じ構造が繰り返し現れる構造単位であって、それぞれが連結することで当該樹脂を構成するような構造単位を意味する。例えば、ポリカーボネート樹脂の場合、カルボニル基も含めて繰り返し構造単位と呼称する。また、「構造単位」とは、樹脂を構成する部分構造であって、繰り返し構造単位に含まれる特定の部分構造のことを意味する。例えば、樹脂中で隣り合う連結基に挟まれた部分構造や、重合体の末端部分に存在する重合反応性基と、該重合性反応基に隣り合う連結基とに挟まれた部分構造を言う。より具体的には、ポリカーボネート樹脂の場合、カルボニル基が連結基であって、隣り合うカルボニル基に挟まれた部分構造のことを構造単位と呼称する。尚、本明細書において、ポリカーボネート樹脂中の各構造単位の重量比率は、全ての構造単位及び連結基の合計重量を100重量%として計算する。
【0014】
[ポリカーボネート樹脂]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、下記式(1)で表される構造単位(A)と、下記式(2)で表される構造単位(B)とを含むポリカーボネート樹脂を含む。
【化4】

【化5】

(式(2)において、nは2~4であり、mは平均値が2~45である。)
【0015】
構造単位(A)を形成するジヒドロキシ化合物としては、立体異性体の関係にある、イソソルビド(ISB)、イソマンニド、イソイデットが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも植物由来の資源として豊富に存在し、容易に入手可能な種々のデンプンから製造されるソルビトールを脱水縮合して得られるイソソルビドが入手、及び製造のし易さ、得られる成形品の特性(例えば、耐熱性、耐衝撃性、表面硬度、カーボンニュートラル)の面から最も好ましい。また、カーボンニュートラルの観点からイソソルビドを用いることが好ましい。
【0016】
本発明のポリカーボネート樹脂中の構造単位(A)の重量比率は、ポリカーボネート樹脂を構成する全ての構造単位100重量%に対し、10重量%以上が好ましく、20重量%以上がより好ましく、30重量%以上がさらに好ましい。上記下限以上だと得られるポリカーボネート樹脂の固化温度を室温以上とすることができ、ポリカーボネート樹脂をペレット形状にして取り扱う際に、ペレットの融着を防ぐことができる。また構造単位(A)の重量比率は80重量%未満が好ましく、75重量%以下がより好ましく、70重量%以下がさらに好ましい。上記上限以下であるとポリカーボネート樹脂の白濁を抑制できる。
【0017】
構造単位(B)を形成するジヒドロキシ化合物としては、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレンエーテルグリコール(PO3G)、ポリテトラエチレングリコールが挙げられる。PO3Gは、植物由来原料から製造された1,3-プロパンジオールを縮合して合成されるため、バイオマス度の観点から、PO3Gを用いることが好ましい。尚、イソソルビドやPO3Gが植物由来の資源から製造されたものであるかどうかは、例えば、放射性炭素(14C)の濃度測定により確認することが可能である。
【0018】
本発明のポリカーボネート樹脂中の構造単位(B)の数平均分子量は200以上、2500以下が好ましい。下限は300以上がより好ましく、400以上がさらに好ましく、450以上が特に好ましい。上限は2000以下がより好ましく、1500以下がさらに好ましく、1200以下が特に好ましく、1100以下が最も好ましい。
【0019】
式(2)中の、平均重合度(mの平均値)は2以上、45以下である。下限は3以上が好ましく、4以上がより好ましい。上記下限以上であると、構造単位(B)を含有するポリマー分子鎖がソフトセグメントを形成し、高い引張伸びと優れた耐衝撃性を発現させる。また上限は35以下が好ましく、25以下がより好ましく、20以下がさらに好ましい。構造単位(B)の平均重合度が前記範囲であると、構造単位(A)と構造単位(B)を含有するポリカーボネート樹脂の透明性が向上する。
【0020】
nは2以上、4以下である。前記範囲であると合成難度が低くなり、汎用性が高くなる。
【0021】
構造単位(B)の重量比率は、ポリカーボネート樹脂を構成する全ての構造単位100重量%に対し 、20重量%を超えることが好ましく、25重量%以上がより好ましく、
30重量%以上がさらに好ましい。上記下限以上だと、耐衝撃性の向上ができる。また構造単位(B)の重量比率は90重量%以下が好ましく、80重量%以下がより好ましく、70重量%以下がさらに好ましい。上記上限以下であると、ポリカーボネート樹脂の透明性が向上する。
【0022】
本発明のポリカーボネート樹脂は構造単位(A)と構造単位(B)以外の構造単位を含有してもよい。以下、構造単位(A)と構造単位(B)以外の構造単位を「その他の構造単位」と称する場合がある。その他の構造単位を形成する化合物の例としては、脂肪族ジ
ヒドロキシ化合物、脂環式ジヒドロキシ化合物、エーテル含有ジヒドロキシ化合物、アセタール含有ジヒドロキシ化合物、芳香族含有ジヒドロキシ化合物、ジエステル化合物が挙げられる。中でも、耐候性と耐湿熱性の観点から、好ましくは脂肪族ジヒドロキシ化合物、脂環式ジヒドロキシ化合物、及びアセタール含有ジヒドロキシ化合物からなる群より選ばれる1種であり、より好ましくは脂環式ジヒドロキシ化合物である。尚、ジエステル化合物に由来する構造単位を部分的に組み込んだポリカーボネート樹脂はポリエステルカーボネート樹脂と称される。本明細書において、ポリカーボネート樹脂とはポリエステルカーボネート樹脂を包含するものとする。
【0023】
脂肪族ジヒドロキシ化合物としては、例えば、以下のジヒドロキシ化合物が挙げられる。エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ヘプタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール等の直鎖脂肪族ジヒドロキシ化合物;1,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキシレングリコール等の分岐鎖を有する脂肪族ジヒドロキシ化合物。
【0024】
脂環式ジヒドロキシ化合物としては、例えば、以下のジヒドロキシ化合物が挙げられる。1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、2,6-デカリンジメタノール、1,5-デカリンジメタノール、2,3-デカリンジメタノール、2,3-ノルボルナンジメタノール、2,5-ノルボルナンジメタノール、1,3-アダマンタンジメタノール、リモネン等のテルペン化合物から誘導されるジヒドロキシ化合物等に例示される、脂環式炭化水素の1級アルコールであるジヒドロキシ化合物;1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,3-アダマンタンジオール、水添ビスフェノールA、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール等に例示される、脂環式炭化水素の2級アルコール、又は3級アルコールであるジヒドロキシ化合物。
中でも、トリシクロデカンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノールがより好ましい。
【0025】
エーテル含有ジヒドロキシ化合物としては、オキシアルキレングリコール類やアセタール環を含有するジヒドロキシ化合物が挙げられる。オキシアルキレングリコール類としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等を用いることができる。
【0026】
アセタール含有ジヒドロキシ化合物としては、例えば、スピログリコール(別名:3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)やジオキサングリコール(別名:2-(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-5-エチル-5-ヒドロキシメチルー1,3-ジオキサン)等を用いることができる。
【0027】
芳香族含有ジヒドロキシ化合物としては、例えば以下のジヒドロキシ化合物を用いることができる。2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジエチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-(3-フェニル)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-(3,5-ジフェニル)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒ
ドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-エチルヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)デカン、ビス(4-ヒドロキシ-3-ニトロフェニル)メタン、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,3-ビス(2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル)ベンゼン、1,3-ビス(2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル)ベンゼン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジスルフィド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジクロロジフェニルエーテル等の芳香族ビスフェノール化合物;2,2-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパン、1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ビフェニル、ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)スルホン等の芳香族基に結合したエーテル基を有するジヒドロキシ化合物;9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシプロポキシ)-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-イソブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-tert-ブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3,5-ジメチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-tert-ブチル-6-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルプロポキシ)フェニル)フルオレン等のフルオレン環を有するジヒドロキシ化合物。
【0028】
ジエステル化合物としては、例えば、以下に示すジカルボン酸等が挙げられる。テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’-ベンゾフェノンジカルボン酸、4,4’-ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルスルホンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸。尚、これらのジカルボン酸成分はジカルボン酸そのものとしてポリエステルカーボネート樹脂の原料とすることができるが、製造法に応じて、メチルエステル体、フェニルエステル体等のジカルボン酸エステルや、ジカルボン酸ハライド等のジカルボン酸誘導体を原料とすることもできる。
【0029】
本発明のポリカーボネート樹脂は、少なくとも前記式(A)で表される構造単位を形成するジヒドロキシ化合物、前記式(B)で表される構造単位を形成するジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステルを原料とするエステル交換反応により重縮合させる工程により合成できる。より詳細には、重縮合と共に、エステル交換反応において副生するモノヒドロキシ化合物等を系外に除去することによって得ることができる。
【0030】
エステル交換反応は、エステル交換反応触媒(以下、エステル交換反応触媒を「重合触媒」と称する)の存在下で進行する。重合触媒の種類は、エステル交換反応の反応速度、及び得られるポリカーボネート樹脂の品質に非常に大きな影響を与え得る。
【0031】
重合触媒としては、得られるポリカーボネート樹脂の透明性、色調、耐熱性、耐候性、及び機械的特性を満足させ得るものであれば特に制限はない。重合触媒としては例えば、長周期型周期表における第I族、又は第II族(以下、単に「1族」、「2族」と表記する。の金属化合物、並びに塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物を使用することができ、中でも1族金属化合物及び/又は2族金属化合物が好ましい。
【0032】
1族金属化合物としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸セシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸セシウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素セシウム、フェニル化ホウ素ナトリウム、フェニル化ホウ素カリウム、フェニル化ホウ素リチウム、フェニル化ホウ素セシウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、安息香酸セシウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、リン酸水素2セシウム、フェニルリン酸2ナトリウム、フェニルリン酸2カリウム、フェニルリン酸2リチウム、フェニルリン酸2セシウム、ナトリウム、カリウム、リチウム、セシウムのアルコレート、フェノレート、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2リチウム塩及び2セシウム塩等。1族金属化合物としては、重合活性と得られるポリカーボネート樹脂の色調の観点から、リチウム化合物が好ましい。
【0033】
2族金属化合物としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酸マグネシウム、酢酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム及びステアリン酸ストロンチウム等。2族金属化合物としては、マグネシウム化合物、カルシウム化合物又はバリウム化合物が好ましく、重合活性と得られるポリカーボネート樹脂の色調の観点から、マグネシウム化合物及び/又はカルシウム化合物が更に好ましく、カルシウム化合物が最も好ましい。
【0034】
尚、前記の1族金属化合物及び/又は2族金属化合物と共に補助的に、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物を併用することも可能であるが、1族金属化合物及び/又は2族金属化合物のみを使用することがさらに好ましい。得られるポリカーボネート樹脂の色調の観点から、2族金属化合物のみであることが最も好ましい。
【0035】
前記重合触媒の使用量は、反応に使用した全ジヒドロキシ化合物1mol当たり1μmol以上が好ましく、3μmol以上がさらに好ましく、5μmol以上が特に好ましい。また、重合触媒の使用量は、反応に使用した全ジヒドロキシ化合物1mol当たり300μmol以下が好ましく、200μmol以下がさらに好ましく、100μmol以下が特に好ましい。
【0036】
重合触媒の使用量を上述の範囲に調整することにより、重合速度を高めることができる
ため、重合温度を必ずしも高くすることなく、所望の分子量のポリカーボネート樹脂を得ることが可能になるため、ポリカーボネート樹脂の色調の悪化を抑制することができる。また、未反応の原料が重合途中で揮発してジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルのモル比率が崩れてしまうことを防止することができるため、所望の分子量と共重合比率の樹脂をより確実に得ることができる。さらに、副反応の併発を抑制することができるため、ポリカーボネート樹脂の色調の悪化又は成形加工時の着色をより一層防止することができる。
【0037】
1族金属の中でもナトリウム、カリウム、セシウムがポリカーボネート樹脂の色調へ与える悪影響や、鉄がポリカーボネート樹脂の色調へ与える悪影響を考慮すると、ポリカーボネート樹脂中のナトリウム、カリウム、セシウム、及び鉄の合計含有量は、1重量ppm以下であることが好ましい。この場合には、ポリカーボネート樹脂の色調の悪化をより一層防止することができ、ポリカーボネート樹脂の色調をより一層良好なものにすることができる。同様の観点から、ポリカーボネート樹脂中のナトリウム、カリウム、セシウム、及び鉄の合計含有量は、0.5重量ppm以下であることがより好ましい。尚、これらの金属は使用する触媒からのみではなく、原料や反応装置から混入する場合がある。出所にかかわらず、ポリカーボネート樹脂中のこれらの金属の化合物の合計量は、ナトリウム、カリウム、セシウム及び鉄の合計の含有量として、上述の範囲にすることが好ましい。
【0038】
ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを重縮合させる方法は、上述の触媒存在下、複数の反応器を用いて多段階で実施される。反応の形式は、バッチ式、連続式、あるいはバッチ式と連続式の組み合わせの方法があるが、より少ない熱履歴でポリカーボネート樹脂が得られ、生産性にも優れている連続式を採用することが好ましい。
【0039】
重合速度の制御や得られるポリカーボネート樹脂の品質の観点からは、反応段階に応じてジャケット温度と内温、反応系内の圧力を適切に選択することが重要である。具体的には、重縮合反応の反応初期においては相対的に低温、低真空でプレポリマーを得、反応後期においては相対的に高温、高真空で所定の値まで分子量を上昇させることが好ましい。この場合には、未反応のモノマーの留出を抑制し、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとのモル比率を所望の比率に調整し易くなる。その結果、重合速度の低下を抑制することができる。また、所望の分子量や末端基を持つポリマーをより確実に得ることが可能になる。
【0040】
重縮合反応の温度を調整することにより、生産性の向上や製品への熱履歴の増大の回避が可能になる。さらに、モノマーの揮散、及びポリカーボネート樹脂の分解や着色をより一層防止することが可能になる。具体的には、第1段目の反応における反応条件としては、以下の条件を採用することができる。即ち、重合反応器の内温の最高温度は、通常160~230℃、好ましくは170~220℃、更に好ましくは180~210℃の範囲で設定する。また、重合反応器の圧力(以下、圧力とは絶対圧力を表す)は、通常1~110kPa、好ましくは5~50kPa、さらに好ましくは7~30kPaの範囲で設定する。また、反応時間は、通常0.1~10時間、好ましくは1~5時間の範囲で設定する。第1段目の反応は、発生するモノヒドロキシ化合物を反応系外へ留去しながら実施されることが好ましい。
【0041】
第2段目以降は、反応系の圧力を第1段目の圧力から徐々に下げ、引き続き発生するモノヒドロキシ化合物を反応系外へ除きながら、最終的には反応系の圧力(絶対圧力)を1kPa以下にすることが好ましい。また、重合反応器の内温の最高温度は、通常200~260℃、好ましくは210~240℃、特に好ましくは215~230℃の範囲で設定する。また、反応時間は、通常0.1~10時間、好ましくは0.5~5時間、特に好ましくは1~3時間の範囲で設定する。
【0042】
撹拌動力などを指標に用いて、所定の溶融粘度(分子量)に到達したことを確認したら、反応器に窒素を導入して圧力を常圧に戻す、または反応器から溶融樹脂を抜き出すことで重合反応を停止する。溶融状態の樹脂をダイスヘッドからストランドの形態で吐出し、冷却固化させ、回転式カッター等でペレット化される。必要に応じて、ペレット化する前に押出脱揮、押出混錬、押出濾過の工程を加えてもよい。この工程で添加剤を樹脂に混ぜ合わせたり、真空ベントで低分子量成分を脱揮したり、ポリマーフィルターを用いて異物を除去する。尚、後述する実施例では室温で固化しない樹脂もあり、その場合は、重合反応後の溶融樹脂を塊の状態で抜き出し、成形や評価に用いる際に、樹脂をペレット状に切り出して使用した。
【0043】
[アクリル樹脂]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、下記式(3)で表される構造単位(以下、「構造単位(3)」と称する場合がある。)を含むアクリル樹脂を含有する。
【化6】

(式(3)において、Rは水素元素、及び置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基から選択され、Rは炭素数1~20の分岐または直鎖のアルキル基、及び置換基を有してもよい炭素数6~20のシクロアルキル基から選択される。)
【0044】
構造単位(3)を形成する樹脂としては、熱可塑性樹脂としてのアクリル樹脂が使用される。このアクリル樹脂に使用される単量体として以下の化合物が挙げられる。例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸、アクリル酸、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アクリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、コハク酸2-(メタ)アクロイルオキシエチル、マレイン酸2-(メタ)アクロイルオキシエチル、フタル酸2-(メタ)アクロイルオキシエチル、ヘキサヒドロフタル酸2-(メタ)アクリオイルオキシエチル、ペンタメチルピペリジル(メタ)アクリレート、テトラメチルピペリジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、シクロペンチルメタクリレート、シクロペンチルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘプチルメタクリレート、シクロヘプチルアクリレート、シクロオクチルメタクリレート、シクロオクチルアクリレート、シクロドデシルメタクリレート、シクロドデシルアクリレート等が挙げられる。
【0045】
これらは、単独で重合して使用してもよく、2種類以上を重合して使用してもよい。特に入手しやすいメタクリル酸メチル及び/又はアクリル酸メチルを含むことが好ましい。
【0046】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物において、ポリカーボネート樹脂とアクリル樹脂と含有比率は、ポリカーボネート樹脂組成物100重量%に対し、前記ポリカーボネート樹脂は10%以上が好ましく、20重量%以上がより好ましく、30重量%以上がさらに好ましい。上記下限値以上であると、構造単位(3)を形成する樹脂の耐衝撃性が向上する。また前記ポリカーボネート樹脂は90重量%以下が好ましく、80重量%以下がより好ましく、70重量%以下がさらに好ましい。上記上限値以下であると、前記ポリカーボネート樹脂組成物の耐熱性が向上する。
また、ポリカーボネート樹脂組成物100重量%に対し、前記アクリル樹脂は10%以上が好ましく、20重量%以上がより好ましく、30重量%以上がさらに好ましい。上記下限値以上であると、構造単位(3)を形成する樹脂の耐衝撃性が向上する。また前記アクリル樹脂は90重量%以下が好ましく、80重量%以下がより好ましく、70重量%以下がさらに好ましい。上記上限値以下であると、前記ポリカーボネート樹脂組成物の耐熱性が向上する。
【0047】
(添加剤)
本発明の効果を損なわない範囲で、ポリカーボネート樹脂組成物は添加剤を含有してもよい。添加剤としては、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、フィラーなどの充填剤、中和剤、滑剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、分散剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤、導電性付与剤、架橋剤、架橋助剤、金属不活性化剤、分子量調整剤、防菌剤、防黴材、蛍光増白剤、有機拡散剤や無機拡散剤等の光拡散剤等が挙げられる。
【0048】
(ポリマーアロイ)
本発明におけるポリカーボネート樹脂組成物は、例えば、芳香族ポリカーボネート樹脂、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリオレフィン、アモルファスポリオレフィン、ABS、AS、ポリシクロオレフィンなどの合成樹脂、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネートなどの生分解性樹脂、ゴムなどの1種又は2種以上と混練して、ポリマーアロイとしても用いることもできる。
【0049】
[ポリカーボネート樹脂組成物の特性]
【0050】
<透明性>
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、透明性が求められる用途に適用する場合には後述する方法で測定されるヘーズの値が30%以下であることが好ましい。この場合には、10%以下がより好ましく、5%以下がさらに好ましい。また全光線透過率は80%以上が好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。上記下限値以上であると、着色剤を樹脂に配合することで鮮鋭に発色する着色材料とすることや、透明性が求められる部材に適用することができる。
【0051】
<平均分子量>
本発明のポリカーボネート樹脂組成物の平均分子量は、還元粘度で表すことができる。この還元粘度は、0.35dL/g以上が好ましく、0.45dL/g以上がより好ましい。上記下限以下では、成形した時の機械的強度が弱い。還元粘度の上限は、0.85dL/g以下が好ましく、0.75dL/g以下がより好ましい。上記上限以上では成形する際の流動性が低下し、サイクル特性を低下させ、成形サイクルが長くなる。共重合ポリカーボネート樹脂組成物の還元粘度は、下記の実施例に記載の方法により測定することができる。なお、還元粘度の測定温度は20℃で行い、振れ幅を±1℃の範囲内で調整した。
【0052】
<衝撃強度>
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、後述する方法にて測定されるIzod衝撃値が3.2kJ/m以上が好ましく、10kJ/m以上がより好ましく、20kJ/m以上がさらに好ましい。前記下限値以上であると、十分に高い耐衝撃強度を有しており、高い耐衝撃特性が求められる自動車内装部品などの用途や、応力集中により破壊が起きやすい嵌合部などを有する成形品にも適用することができる。
【0053】
<熱安定性>
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、後述する熱融着試験において、70℃で4時間熱を掛けたときに、ペレット同士が熱融着していないものが好ましい。上記下限値以上であると実用的な熱安定性を備えている。
【0054】
<成形品の製造方法>
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、例えば射出成形(インサート成形法、二色成形法、サンドイッチ成形法、ガスインジェクション成形法等)、押出成形法、インフレーション成形法、Tダイフィルム成形法、ラミネート成形法、ブロー成形法、中空成形法、圧縮成形法、カレンダー成形法等の成形法により種々の成形品に加工することができる。成形品の形状には特に制限はなく、シート、フィルム、板状、粒子状、塊状体、繊維、棒状、多孔体、発泡体等が挙げられ、好ましくはシート、フィルム、板状である。また、成形されたフィルムは一軸あるいは二軸延伸することも可能である。延伸法としては、ロール法、テンター法、チューブラー法等が挙げられる。さらに、通常工業的に利用されるコロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理、オゾン処理等の表面処理を施すこともできる。
【0055】
<用途>
成形品の用途は特に限定されないが、本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、機械物性に加えて耐候性や光学特性にも優れることから、自動車の内装部材・外装部材や、屋外で使用される建材(照明カバー、カーポート、高速道路遮音壁等)、ディスプレイの前面板、電気電子機器の筐体等に好適に用いられる。
【0056】
<実施例>
以下、本発明について実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。
【0057】
<測定方法>
各種物性の測定は、下記の方法に従って行った。
(ポリトリメチレンエーテルグリコール(PO3G)の数平均分子量)
JIS K1557-1に準拠し、アセチル化試薬を用いた方法にてポリトリメチレンエーテルグリコールの水酸基価を測定した。下記式にて水酸基価から数平均分子量を算出した。
数平均分子量=1/(水酸基価/1000/56.11/2)
水酸基価の単位:mg-KOH/g-polymer
【0058】
(ヘーズ・全光線透過率)
小型射出成形機C,Mobile-0813(新興セルビック社製)を用いて、成形温度210~240℃で25mm角の3.2mm厚の試験片を作製した。ヘーズ・全光線透過率はJIS K7136に準拠した方法により、分光色彩メイズメーターCOH7700(日本電色工業社製)を用いて前記試験片を測定した。ヘーズが低いほど、透明性に優れることを表す。
【0059】
(還元粘度)
溶媒として塩化メチレンを用い、0.6g/dLの濃度のポリカーボネート溶液を調製した。森友理化工業社製:ウベローデ型粘度管を用いて、温度20.0℃±0.1℃で測定を行い、溶媒の通過時間t0と溶液の通過時間tから次式より相対粘度ηrelを求め
た。
ηrel=t/t0
次いで、得られた相対粘度ηrelから次式より比粘度ηspを求めた。
ηsp=(η-η0)/η0=ηrel-1
そして、比粘度を濃度c(g/dL)で割って、還元粘度ηsp/cを求めた。この値が高いほど分子量が大きい。
【0060】
(Izod衝撃強度)
ASTM D256に準拠して、厚み3.2mmのノッチ付き試験片を用いて、23℃においてIzod衝撃強度(単位:kJ/m)を測定した。試験片の作製は次のとおりに行った。樹脂ペレットを90℃で5時間以上、真空乾燥をした後、小型射出成形機C,Mobile-0813(新興セルビック社製)を用いて、Izod試験片を作製した。その試験片をカッターを用いて切削し、先端半径0.25mmのノッチを入れた。Izod衝撃強度の数値が大きいほど、耐衝撃性に優れることを表す。
【0061】
(熱安定性)
直径約60mm高さ約20mmの丸底アルミ皿に、得られたペレットを20g入れ、角型真空定温乾燥機DP300(ヤマト科学社製)を用いて70℃4時間、大気下で熱を掛けた。4時間後にペレットが入ったアルミ皿を取り出し、以下の評価を行った。
ペレット同士が熱融着していない:〇
ペレット同士が熱融着している:×
【0062】
(使用原料)
以下の実施例と製造例で用いた化合物の略号、および製造元は次のとおりである。
[ジヒドロキシ化合物]
・ISB:イソソルビド(ロケットフルーレ社製社製)
・PO3G500:ポリトリメチレンエーテルグリコール、数平均分子量測定値514(ALLESSA社製、商品名:VELVETOL)
・PO3G650:ポリトリメチレンエーテルグリコール、数平均分子量測定値715(ALLESSA社製)
・PO3G1000:ポリトリメチレンエーテルグリコール、数平均分子量測定値1043(ALLESSA社製)
・CHDM:1,4-シクロヘキサンジメタノール(SK Chemical社社製)
[炭酸ジエステル]
・DPC:ジフェニルカーボネート(三菱ケミカル社製)
[アクリル樹脂]
・VH001 メタクリル樹脂(三菱ケミカル社製)
[触媒失活剤]
・ホスホン酸(東京化成工業社製)
[熱安定剤(酸化防止剤)]
・Irganox1010:ペンタエリスリトール-テトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](BASF社製)
・AS2112:トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト(ADEKA社製)
【0063】
(実施例1)
撹拌翼と還流冷却器を具備した竪型撹拌反応器2器からなるバッチ重合装置を用いて重
合を行った。ISB 46.69重量部(0.320mol)、PO3G650 4 3
.42重量部(0.061mol)、DPC 81.45重量部(0.380mol)、及 び触媒として酢酸カルシウム1水和物2.01×10-3重量部(1.14×10
mol)を反応器に仕込んだ。反応器内を減圧窒素置換した後、熱媒で加温を行い、内温が100℃になった時点で撹拌を開始した。昇温開始40分後に内温を210℃に到達させ、この温度を保持するように制御すると同時に減圧を開始し、210℃に到達してから90分で13.3kPaにした。重合反応とともに副生するフェノール蒸気を110℃の還流冷却器に導き、フェノール蒸気中に若干量含まれるモノマー成分を反応器に戻し、凝縮しないフェノール蒸気は45℃の凝縮器に導いて回収した。
【0064】
第1反応器に窒素を導入して一旦大気圧まで復圧させた後、第1反応器内のオリゴマー化された反応液を第2反応器に移した。次いで、第2反応器内の昇温および減圧を開始して、40分で内温220℃、圧力20kPaにした。その後、さらに圧力を下げながら、所定の攪拌動力となるまで重合を進行させた。所定動力に到達した時点で反応器に窒素を導入して復圧し、生成したポリカーボネートを水中に押し出し、ストランドをカッティングしてペレットを得た。この樹脂を「樹脂-1」と称する。
【0065】
各モノマーに由来する構造単位の比率は、ISB/PO3G650/DPC=46.1/43.3/10.7重量%である。得られたポリカーボネート樹脂(樹脂-1)50重量部とVH001 50重量部を、定量フィーダーを用いてベント付きニ軸押出機((株
)日本製鋼所製TEX30α、シリンダー設定温度:240℃)に供給し、フィルターを通して異物を濾過した後、ダイからストランド状に排出させ、水冷、固化させた後、回転式カッターで、長さ2.9mm、短径2.4mm、長短径2.8mmのペレットを得た。前述の各種評価の結果を表2に示す。
【0066】
(実施例2)
原料の仕込みをISB 33.95重量部(0.232mol)、PO3G1000 48.79重量部(0.047mol)、CHDM 8.47重量部(0.059mol)、DPC 72.70重量部(0.339mol)とし、得られたポリカーボネート樹脂(樹脂-2)20重量部とVH001 80重量部以外は実施例1と同様に行った。前述の各種評価の結果を表2に示す。
【0067】
(実施例3)
ポリカーボネート樹脂(樹脂-2)50重量部とVH001 50重量部以外は実施例
2と同様に行った。前述の各種評価の結果を表2に示す。
【0068】
(実施例4)
原料の仕込みをISB 46.69重量部(0.320mol)、PO3G500 42.83重量部(0.083mol)、DPC 86.30重量部(0.403mol)とし、得られたポリカーボネート樹脂(樹脂-3)20重量部とVH00180重量部以外は実施例1と同様に行った。前述の各種評価の結果を表2に示す。
【0069】
(実施例5)
ポリカーボネート樹脂(樹脂-3)50重量部とVH001 50重量部以外は実施例
4と同様に行った。前述の各種評価の結果を表2に示す。
【0070】
(比較例1~3)
実施例1、2、4に記載の方法でそれぞれ樹脂-1、樹脂-2、樹脂-3について前述の各種評価を行ったが、透明性評価用の試験片、およびIzod衝撃強度用の試験片は耐熱性が無いことに起因し、試験片を取得できず成形品としては不向きであった。前述の各
種評価の結果を表2に示す。
【0071】
(比較例4)
VH001単体にて前述の各種評価を行った。前述の各種評価の結果を表2に示す。
【0072】
(比較例5)
竪型攪拌反応器3器と横型攪拌反応器1器、並びに二軸押出機からなる連続重合設備を用いて、ポリカーボネート樹脂の重合を行った。原料の仕込みをISB 29.8kg/hr、CHDM 12.6kg/hr、DPC 62.9kg/hr(モル比でISB/CHDM/DPC=0.700/0.300/1.008)の流量で第1竪型攪拌反応器に連続的に供給した。同時に、重合触媒である酢酸カルシウム1水和物の水溶液を、全ジヒドロキシ化合物1molに対して酢酸カルシウム1水和物が1.5μmolとなる添加量にて第1竪型攪拌反応器に供給した。各反応器の内温、内圧、滞留時間は、それぞれ、第1竪型攪拌反応器:190℃、25kPa、120分、第2竪型攪拌反応器:195℃、10kPa、90分、第3竪型攪拌反応器:205℃、4kPa、45分、第4横型攪拌反応器:220℃、0.1~1.0kPa、120分とした。得られるポリカーボネート樹脂の数平均分子量が8000~9000となるように、第4横型攪拌反応器の内圧を微調整しながら運転を行った。
【0073】
第4横型攪拌反応器から抜き出したポリカーボネート樹脂を、溶融状態のままベント式二軸押出機TEX30α(日本製鋼所社製)に供給した。押出機は3つの真空ベント口を有しており、ここで樹脂中の残存低分子量成分を脱揮除去するとともに、第1ベントの手前で触媒失活剤としてホスホン酸を、ポリカーボネート樹脂に対して0.64重量ppm添加し、第3ベントの手前でIrganox1010、AS2112をポリカーボネート樹脂に対して、それぞれ1000重量ppm、500重量ppm添加した。押出機を通過したポリカーボネート樹脂を引き続き溶融状態のまま、目開き10μmのウルチプリーツ・キャンドルフィルター(PALL社製)に通して、異物を濾過した。その後、ダイスからストランド状にポリカーボネート樹脂を押出し、水冷、固化させた後、回転式カッターで切断することによりペレット化した。得られたポリカーボネート樹脂(樹脂-4)30重量部と樹脂-3 70重量部を実施例1同様に混練した。前述の各種評価の結果を表2に示す。
【0074】
樹脂-1から樹脂-4の樹脂組成を、表1に示す。
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
[評価]
表2から明らかなように、本発明の実施例1~5によれば、色相、熱安定性、柔軟性に優れたポリカーボネート樹脂組成物であることが分かる。