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特開2024-129838液体付与装置、積層体製造装置、電気化学素子製造装置、液体付与方法、電極製造方法および電気化学素子製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129838
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】液体付与装置、積層体製造装置、電気化学素子製造装置、液体付与方法、電極製造方法および電気化学素子製造方法
(51)【国際特許分類】
   B05C 11/10 20060101AFI20240920BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B05C11/10
B05D3/00 B
B05D3/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039184
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】山口 高平
【テーマコード(参考)】
4D075
4F042
【Fターム(参考)】
4D075AA01
4D075AA76
4D075AA81
4D075AA85
4D075AC02
4D075AC80
4D075AC88
4D075AC91
4D075AC93
4D075AC94
4D075AE03
4D075BB24Z
4D075BB26Z
4D075BB42Z
4D075BB46Z
4D075BB91X
4D075BB91Y
4D075BB91Z
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA04
4D075DC19
4D075DC21
4D075DC27
4D075EA05
4D075EA33
4F042AA22
4F042AB00
4F042BA08
4F042DB02
4F042DB17
4F042DB25
4F042DB42
4F042DB52
4F042DF23
4F042DH09
4F042ED02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】液体付与品質の低下を低減する。
【解決手段】基体の複数の所定領域上に設けられた複数の被付与層を有する積層体前駆体を搬送する搬送部と、複数の被付与層のうち1つ以上の被付与層に液体を付与し、被付与層上に機能層を形成する付与部と、搬送部により搬送される積層体前駆体における被付与層を検出し、検出した情報を出力する検出部と、検出部の出力に基づき付与部の動作を制御する制御部と、を備える液体付与装置であって、制御部は、付与部が第一の動作を行うよう駆動する第一信号と、付与部が前記第一の動作と異なる第二の動作を行うよう駆動する第二信号と、を生成する信号生成部と、付与部が、第一の動作から第二の動作へ、または第二の動作から第一の動作への動作移行が可能であるかを判断する判断部と、を有し、判断部において付与部の動作移行が可能と判断された後の、検出部の出力の状態変化に基づき、第一信号と第二信号とを切り替える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、前記基体が有する複数の所定領域上に設けられた複数の被付与層と、を有する積層体前駆体を搬送する搬送部と、
前記複数の被付与層のうち1つ以上の前記被付与層に液体を付与し、前記被付与層上に機能層を形成する付与部と、
前記搬送部により搬送される前記積層体前駆体における前記被付与層を検出し、検出した情報を出力する検出部と、
前記検出部の出力に基づき前記付与部の動作を制御する制御部と、
を備える液体付与装置であって、
前記制御部は、
前記付与部が第一の動作を行うよう前記付与部を駆動する第一信号と、前記付与部が前記第一の動作と異なる第二の動作を行うよう前記付与部を駆動する第二信号と、を生成する信号生成部と、
前記付与部が、前記第一の動作から前記第二の動作へ、または前記第二の動作から前記第一の動作への動作移行が可能であるかを判断する判断部と、
を有し、
前記判断部において前記付与部の前記動作移行が可能と判断された後の、前記検出部の出力の状態変化に基づき、前記第一信号と前記第二信号とを切り替える
ことを特徴とする液体付与装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記被付与層の搬送方向先端および搬送方向後端を検知することを特徴とする請求項1記載の液体付与装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記判断部において前記付与部の動作移行が可能と判断された後に、前記検出部が前記被付与層の前記搬送方向後端を検出したことを契機に、前記第一信号と前記第二信号とを切り替えることを特徴とする請求項2記載の液体付与装置。
【請求項4】
前記第一の動作は、前記第一信号によって前記付与部を駆動させ、前記被付与層上に前記機能層を形成する動作であることを特徴とする請求項1記載の液体付与装置。
【請求項5】
前記第二の動作は、前記第二信号によって前記付与部を駆動させ、前記付与部に対して微駆動または空吐出の少なくとも一方を行わせる動作であることを特徴とする請求項1記載の液体付与装置。
【請求項6】
前記第二の動作は、前記付与部を前記積層体前駆体と対向させた状態で行われることを特徴とする請求項5記載の液体付与装置。
【請求項7】
請求項1に記載の液体付与装置と、前記液体付与装置の後段に設けられる後処理装置と、を備えることを特徴とする積層体製造装置。
【請求項8】
請求項7に記載の積層体製造装置と、前記積層体製造装置の後段に設けられる電気化学素子化装置と、を備えることを特徴とする電気化学素子製造装置。
【請求項9】
基体と、前記基体が有する複数の所定領域上に設けられた複数の被付与層と、を有する積層体前駆体を搬送する搬送部と、
前記複数の被付与層のうち1つ以上の前記被付与層に液体を付与し、前記被付与層上に機能層を形成する付与部と、
前記搬送部により搬送される前記積層体前駆体における前記被付与層を検出し、検出した情報を出力する検出部と、
前記付与部に対して第一の動作を行うよう前記付与部を駆動する第一信号と、前記付与部が前記第一の動作と異なる第二の動作を行うよう前記付与部を駆動する第二信号と、を生成する信号生成部、ならびに前記付与部が、前記第一の動作から前記第二の動作へ、または前記第二の動作から前記第一の動作への動作移行が可能であるかを判断する判断部を有する制御部と、
を備える液体付与装置の液体付与方法であって、
前記判断部において前記付与部の前記動作移行が可能であるかを判断する判断ステップと、
前記判断ステップにおいて、前記付与部の動作移行が可能と判断された後の、前記検出部の出力の状態変化を契機に、前記第一信号と前記第二信号とを切り替える切替ステップと、
を含むことを特徴とする液体付与方法。
【請求項10】
請求項9に記載の液体付与方法を含み、
前記被付与層は電極合材層であることを特徴とする電極製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の積層体製造方法を含むことを特徴とする電気化学素子製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体付与装置、積層体製造装置、電気化学素子製造装置、液体付与方法、電極製造方法および電気化学素子製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、台紙上にギャップを挟んで複数のラベルが貼付された印刷媒体を搬送する搬送手段と、搬送手段により搬送しながら印刷媒体の台紙の先端からラベルの先端までの先端台紙長を測定する先端台紙長測定手段と、測定された先端台紙長に基づいて所定の印刷速度で搬送されるラベルに印刷する印刷手段と、搬送速度を印刷速度から、印刷速度より遅い低速搬送速度に切替える搬送速度切替え手段と、搬送速度切替え手段により印刷媒体の搬送速度を印刷速度から低速搬送速度に切替えて、先端台紙長測定手段により先端台紙長を測定し、測定された先端台紙長に基づいて印刷手段によりラベルに印刷するよう制御する制御手段を有する画像形成装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-051995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術において、何らかの理由により、台紙に対するラベルの位置がずれていた場合は、狙いの位置に印刷を行うことができなくなる。ラベルに限らず、例えば、予め基体上に設けた被付与領域の上に液体組成物を付与して、所望の層を形成する液体付与装置においても同様であり、被付与領域の面積、位置がばらつくことで、各種制御を任意のタイミングで実施させることが難しくなり、液体付与品質が低下するという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、基体と、前記基体が有する複数の所定領域上に設けられた複数の被付与層と、を有する積層体前駆体を搬送する搬送部と、前記複数の被付与層のうち1つ以上の前記被付与層に液体を付与し、前記被付与層上に機能層を形成する付与部と、前記搬送部により搬送される前記積層体前駆体における前記被付与層を検出し、検出した情報を出力する検出部と、前記検出部の出力に基づき前記付与部の動作を制御する制御部と、を備える液体付与装置であって、前記制御部は、前記付与部が第一の動作を行うよう前記付与部を駆動する第一信号と、前記付与部が前記第一の動作と異なる第二の動作を行うよう前記付与部を駆動する第二信号と、を生成する信号生成部と、前記付与部が、前記第一の動作から前記第二の動作へ、または前記第二の動作から前記第一の動作への動作移行が可能であるかを判断する判断部と、を有し、前記判断部において前記付与部の前記動作移行が可能と判断された後の、前記検出部の出力の状態変化に基づき、前記第一信号と前記第二信号とを切り替えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、液体付与品質の低下を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係る積層体製造装置の一例を示す全体構成図。
図2】実施形態に係る積層体製造装置の印刷部の構成例を示す概略平面図。
図3】制御部の機能構成例を示すブロック図。
図4】実施形態に係る積層体製造装置における印刷部の動作例を示す図。
図5】第二同期信号から第一同期信号への切り替え動作のタイミングチャート。
図6】第二同期信号から第一同期信号への切替処理の一例を示すフローチャート。
図7】第一同期信号から第二同期信号への切り替え動作のタイミングチャート。
図8】第一同期信号から第二同期信号への切替処理の一例を示すフローチャート。
図9】積層体製造装置および電気化学素子製造装置を模式的に示した図。
図10】印刷部の変形例を示す図。
図11図10の電極印刷部における電極素子の作製工程の一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら発明を実施するための形態を説明する。図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0009】
<積層体製造装置の構成例>
図1は、実施形態に係る積層体製造装置の一例を示す全体構成図である。
【0010】
積層体製造装置100は、例えば、繰出部1と、被付与層形成部2と、印刷部3と、硬化部4と、乾燥部5と、巻取部6と、を備える。
【0011】
繰出部1は、ロール状に巻かれた基体W1を支持する繰出軸1aを備える。繰出部1は、繰出軸1aを、図中、反時計まわり方向に回転させ、基体W1を被付与層形成部2側へ繰り出す。なお、図1において、Xは基体W1の搬送方向を示し、Yは搬送方向Xと直交する方向(基体W1の幅方向)を示す。
【0012】
被付与層形成部2は、塗工部2aを備える。塗工部2aは、例えばスプレーやダイコータ等の塗工装置によって構成される。塗工部2aは、繰出部1から送られる基体W1上に設定された、複数の所定領域に対して塗工処理を施し、基体W1の複数の所定領域上に複数の被付与層を形成する。被付与層は、例えば活物質を含む電極合材層であり、基体W1は、塗工部2aを通過した後は、基体W1上に電極合材層を有した積層体前駆体W2となって印刷部3に向けて搬送される。
【0013】
印刷部3は、複数の付与部30a,30b,30c,30dと、センサ部33と、搬送装置35と、を備える。付与部30a,30b,30c,30dは、それぞれ同じ構成であるため、特に区別しない場合には、付与部30と総称表記する。
【0014】
印刷部3は、被付与層形成部2から送られる積層体前駆体W2に対して付与部30により液体を付与する。付与部30は、液体を付与するためのノズルを有するヘッドを備え、各ヘッドは、ノズルから付与する液体の付与(吐出)方向が、積層体前駆体W2に向くように配置される。付与部30は、積層体前駆体W2の被付与層の上に液体を付与し、被付与層上に機能層(例えば、絶縁層)を形成する。これにより、積層体前駆体W2は、被付与層上に機能層を有した積層体W3となって印刷部3から送り出される。
【0015】
付与部30で用いる液体は、付与部毎に異なる種類の液体でもよく、また、すべての付与部30で同じ種類の液体でもよい。例えば、積層体前駆体W2に多孔質層を形成する場合、1つの付与部30で多孔質層を形成しようとすると、層が不均一となり、電気化学素子としたときの特性にむらが生じるおそれがある。このような場合は、複数の付与部30で同じ種類の液体を用いることで、層を均一に形成することが可能となる。
【0016】
また、機能層としては、樹脂を骨格とした多孔質構造を含む多孔質層や、無機酸化物粒子を含む多孔質層、樹脂粒子を含む多孔質層、活物質を含む層や固体電解質を含む層が挙げられる。無機酸化物粒子としては、例えばアルミナやシリカなどが挙げられる。なお、付与部30の数は4つに限るものではなく、付与部30は4つより多くてもよいし、少なくてもよい。ここで、印刷部3は「液体付与装置」の一例である。
【0017】
センサ部33は、付与部30aに対し搬送方向X上流側に配置される。センサ部33は、例えば、半導体レーザ等の発光素子と、フォトダイオード等の受光素子とを有する光センサを備え、積層体前駆体W2における被付与層(電極合材層)の搬送方向端部を検出する。ここで、センサ部33は「検出部」の一例である。
【0018】
搬送装置35は、積層体前駆体W2を搬送する搬送ベルト35aと、搬送ベルト35aを支持するベルト駆動ローラ35cおよびベルト従動ローラ35bを備える。搬送ベルト35aは、ベルト駆動ローラ35cの回転により循環搬送されるため、積層体前駆体W2は搬送ベルト35aが回転する速度とほぼ同速度で搬送される。ここで、搬送装置35は「搬送部」の一例である。
【0019】
樹脂を骨格とした多孔質構造を含む層を形成するために用いられる液体が、重合性化合物(モノマー)を含む場合は、印刷部3の後段に硬化部4が設けられる。硬化部4は、積層体W3に付与された液体に対し紫外線を照射することで、重合性化合物を重合させ、液体を硬化させる。硬化部4は、光源4a,4b,4cを備える。光源4a~4cは、積層体W3に付与された液体に紫外線を照射して、液体層を樹脂層に硬化させる硬化機能を有する。
【0020】
光源4a~4cとしては、例えば、水銀ランプ、タングステンランプ、アーク灯、エキシマランプ、エキシマレーザ、半導体レーザ、高出力UV(Ultraviolet)-LED(Light Emitting Diode)、YAGレーザ(イットリウム・アルミニウム・ガーネットを用いた固体レーザ)、レーザと非線形光学結晶とを組み合わせたレーザシステム、高周波誘起紫外線発生装置、電子線照射装置(EB装置)、X線照射装置等が挙げられる。このうち、システムを簡便化できる観点から、光源4a~4cは、高周波誘起紫外線発生装置、高圧または低圧水銀ランプや半導体レーザ等であることが好ましい。また、光源4a~4cは、集光用ミラーや掃引光学系を備えてもよい。
【0021】
乾燥部5は、例えば、積層体W3に対して温風を送り、液体を乾燥させることで、積層体W3に連続した一様な膜を形成する。乾燥部5は、ヒータ5a,5bを備える。ヒータ5a,5bは、積層体W3に付与された液体を加熱して液体中の残溶媒を乾燥させ、液体の硬化を促進したり乾燥させたりする。ヒータ5a,5bは、硬化、乾燥、あるいは加熱としての機能を有する。ヒータ5a,5bは、例えば、赤外ランプ、発熱体を内蔵したローラ(熱ローラ)、温風または熱風を吹き出すブロワ、水蒸気などを用いたボイラー型熱風を導入した炉等である。
【0022】
なお、図1においては、硬化部4と乾燥部5の両方を備えた構成が例示されているが、いずれか一方を備える形態であってもよい。例えば、液体が重合性化合物を含まない場合は、硬化部4は備えず、乾燥部5のみを備える形態とすることができる。ここで、硬化部4および乾燥部5は「後処理装置」の一例である。
【0023】
巻取部6は、回転可能に設けられた巻取軸6aを備える。巻取部6は、巻取軸6aを、図中、反時計まわり方向に回転させ、乾燥部5から送り出される積層体W3を巻取軸6aに巻き取る。
【0024】
基体W1は、例えば、集電体としての金属シート等の非浸透性の基材や、集電体としての金属シート等の非浸透性の基材上に粒子を主成分とした層が設けられたものである。非浸透性基材上に設けられた粒子を主成分とした層は、例えばグラファイト層や活物質を含む電極合材層などである。非浸透性の基材は、アルミニウム、銅、ステンレス、ニッケル、白金等の金属シート、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ナイロンフィルムの樹脂フィルム等を含む。
【0025】
液体は、層の機能を実現する液体で構成される。液体は、付与部30において付与可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定はされない。液体は、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が200mPa・s以下となるものが好ましく、100mPa・s以下となるものがより好ましく、30mPa・s以下となるものが更に好ましい。より具体的には、電極の形成用液の用途で用いられる場合は、水や有機溶媒等の溶媒、染料、顔料、活物質などの電極材料、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料を含むが、その他の用途においては、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料等を含む溶液、懸濁液、エマルジョン等を含んでいてもよい。これらは例えば、印刷用液体、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターン等の各種デバイスの形成用液等の用途で用いることができる。
【0026】
図2は、実施形態に係る積層体製造装置の印刷部の概略平面図である。
【0027】
図2は、被付与層Ldが設けられた積層体前駆体W2を、図中、右から左へ搬送して行く過程において、被付与層Ldの上に、付与部30a~30dにより機能層Lzが形成(印刷)される様子を表している。被付与層Ldは、図1に示された被付与層形成部2によって形成されたものである。この場合、被付与層Ldの搬送方向の長さX1,X1´や、被付与層Ld同士の間隔X2,X2´がばらついていることがある。
【0028】
このばらつきは、基体W1への被付与層Ldの形成に用いられるスプレーやダイコータ等の塗工装置の塗工位置精度に起因するものであり、これらの塗工装置における塗工位置精度は、よいものでも数百μm程度である。このように被付与層Ldの位置がばらつくため、印刷部3(付与部30)による機能層Lzの印刷位置も一定とすることができず、印刷部3における各種制御のタイミングが取りづらくなる。例えば、印刷動作間で、付与部30に対して微駆動、空吐出等の維持・回復動作を任意のタイミングで実施させることが難しくなり、液体付与品質の低下が懸念される。
【0029】
そこで、本発明は、センサ部33と、センサ部33の出力が入力される制御部900とを設け、センサ部33の出力に基づき機能層Lzの印刷開始と停止を制御するようにしている。
【0030】
<制御部の機能構成例>
次に、図3を用いて制御部の機能構成について説明する。図3は、制御部の機能構成例を示すブロック図である。
【0031】
制御部900は、液体付与制御部907を通して液体付与部908の動作を制御する。制御部900は、例えば、被付与層Ld上に印刷する機能層Lzのデータ(以下、画像データともいう)に基づいた動作信号等を、液体付与制御部907に対して送信する。また、制御部900は、液体付与部908の状態情報等を液体付与制御部907より受信する。さらに、制御部900は、搬送量検出部909および被付与層検出部910からそれぞれの検出情報を受信する。
【0032】
液体付与制御部907は、制御部900から画像データに基づいた動作信号等を受信する。液体付与制御部907は、制御部900から受信する動作信号等に基づき、液体付与部908の駆動信号を生成し、生成した駆動信号を用いて液体付与部908を駆動する。液体付与部908は、上述の付与部30によって実現される。付与部30は、液体付与制御部907からの駆動信号に応じて、ヘッドが有するノズルから液体を付与(吐出)する。
【0033】
搬送量検出部909は、例えば、図1に示された搬送装置35のベルト従動ローラ35bの回転軸と同軸上に設けられたロータリエンコーダと、ロータリエンコーダの周方向に設けられたスリットを検出するセンサとによって実現される。センサは、その出力情報を制御部900および液体付与制御部907に送信する。制御部900および液体付与制御部907は、搬送量検出部909から受信する情報と同期させて、動作信号、駆動信号等を生成する。
【0034】
被付与層検出部910は、上述のセンサ部33によって実現される。センサ部33は、積層体前駆体W2上に形成された被付与層Ldの、搬送方向Xにおける端部(積層体前駆体W2と被付与層Ldとの境目)を検出し、その検出情報を制御部900に送信する。制御部900は、被付与層検出部910から受信する情報に基づき、画像データ処理を行う。
【0035】
制御部900は、第一同期信号生成部901、第二同期信号生成部902、画像処理部903、処理部904、判断部905、および記憶部906を備える。制御部900は、これらの機能を電気回路で実現する他、これらの機能の一部をソフトウェア(CPU:Central Processing Unit)によって実現することもできる。また、制御部900は、複数の回路または複数のソフトウェアによってこれらの機能を実現してもよい。
【0036】
第一同期信号生成部901は、被付与層検出部910(センサ部33)による検出情報に基づき、印刷を有効にする第一同期信号を生成し、生成した第一同期信号を液体付与制御部907へ送信する。ここで、第一同期信号生成部901は「信号生成部」の一例である。
【0037】
第二同期信号生成部902は、任意の印刷開始と停止、つまり印刷を有効にする第二同期信号を生成し、生成した第二同期信号を液体付与制御部907へ送信する。第二同期信号は、制御部900が備えるCPUのカウンタ機能を用いて、任意の時間をカウントして生成したり、その他、制御部900に入力される情報から任意の期間で生成するようにしてもよい。ここで、第二同期信号生成部902は「信号生成部」の一例である。
【0038】
画像処理部903は、機能層Lzに関する画像データを記憶部906から読み出すとともに、記憶部906から読み出した画像データに対し、階調処理、レンダリング処理、画像処理等を行い、画像処理部903は、上述の動作信号、駆動信号を生成するための情報を制御部900へ送信する。
【0039】
処理部904は、後述の第一同期信号と第二同期信号との切替処理等における各種処理を行う。判断部905は、後述の第一同期信号と第二同期信号との切替処理等における各種判断を行う。
【0040】
記憶部906は、機能層Lzの画像データ等を格納している。積層体前駆体W2に形成される被付与層Ldは、上述のように長さ(X1,X1´)や間隔(X2,X2´)がばらついていることがある。そのため、記憶部906には、1つの機能層Lzの形状について1つの画像データを格納するのではなく、ばらつき量を加味したサイズ違いの画像データが予め格納されている。画像処理部903は、被付与層検出部910による被付与層Ldの実測値をもとに、記憶部906に格納された画像データの中から被付与層Ldを覆うことができる大きさの画像データを読み出し、読み出した画像データに対し上述の画像処理等を行う。
【0041】
なお、第一同期信号生成部901および第二同期信号生成部902による各同期信号は、機能層Lzによって被付与層Ldが覆われる(隠される)ように、被付与層Ldの先端および後端間の時間よりも長くなるように生成してもよい。また、各同期信号は、被付与層検出部910の検出精度を補正する目的で長くしたり、または短くしてもよい。また、各同期信号は、加算、減算、倍率計算など算出を行った結果として生成してもよい。
【0042】
制御部900を構成する各機能の一部は、液体付与制御部907に設けられてもよい。または、液体付与制御部907が、制御部900に設けられてもよい。
【0043】
<積層体製造装置の全体動作>
次に、図4を用いて積層体製造装置における全体動作の一例について説明する。図4は、実施形態に係る積層体製造装置における印刷部の動作例を示す図である。
【0044】
図4(a)、図4(b)、図4(c)において、横軸はいずれも時間を表す。図4(a)は、縦軸に基体W1(積層体前駆体W2、積層体W3)の搬送速度を表している。図中、左右端は搬送停止状態であり、左から右への上り傾斜部分は加速領域を示し、加速領域後の水平部分は等速領域を示し、等速領域後の左から右への下り傾斜部分は減速領域を示す。
【0045】
図4(b)は、図4(a)に示された各領域に対する、印刷部3での実施動作の関係を示している。印刷部3は、基体搬送速度が等速領域に到達するまでの間に、付与部30のノズルのメニスカスを揺動させる微駆動動作、およびノズルから液体を捨て打ちさせる空吐出動作等の、いわゆる維持・回復動作を実施し、ノズルのメニスカスを適切な状態に維持する。基体搬送速度が等速領域に到達したならば、印刷部3は、印刷動作、つまり付与部30により被付与層Ldへ液体を付与し、被付与層Ld上に機能層Lzを印刷する動作を実施する。印刷動作が終了し、基体搬送速度が減速領域に入った際にも、印刷部3は、付与部30に対して維持・回復動作(空吐出動作、微駆動動作)を実施する。ここで、被付与層Ld上に機能層Lzを印刷する動作は「第一の動作」の一例である。また、微駆動動作、空吐出動作等の維持・回復動作は「第二の動作」の一例である。
【0046】
図4(c)は、図4(b)に示された各動作で用いられる同期信号との関係を示している。印刷動作の前後で実施される維持・回復動作は、基体搬送速度に応じて任意に開始および停止が可能な第二同期信号に基づいて制御される。印刷動作は、積層体前駆体W2の被付与層Ld上に、さらに機能層Lzを印刷する動作であるため、被付与層Ldの先端および後端の検出情報をもとに生成される第一同期信号に基づいて制御される。ここで、第一同期信号は「第一信号」の一例であり、第二同期信号は「第二信号」の一例である。
【0047】
なお、本例では、維持・回復動作として、付与部30(ノズル)に対し微駆動動作と空吐出動作を実施する構成が示されているが、維持・回復動作はこれに限るものではない。例えば、維持・回復動作は微駆動動作または空吐出動作のうち、いずれか一方のみでもよい。また、印刷動作前と印刷動作後とで、実施される維持・回復動作を異ならせてもよい。
【0048】
<同期信号の切り替え動作>
次に、図5乃至図8を用いて印刷部における実施動作の移行と、同期信号の切り替わりとの関係について説明する。なお、図5乃至図8においては、維持・回復動作として空吐出動作のみが実施される構成に基づき説明する。
【0049】
[第二同期信号から第一同期信号への切り替え動作]
まず、図5および図6を用いて第二同期信号から第一同期信号への切り替え動作の詳細を説明する。
【0050】
図5は、第二同期信号から第一同期信号への切り替え動作のタイミングチャートである。
【0051】
積層体製造装置100において、センサ部33は、積層体前駆体W2が搬送されている状態において、例えば、被付与層(例えば電極合材層)Ldの先端を検出することで立上り、センサ部33の下を被付与層Ldが通過している間、Highレベルを出力する。また、センサ部33は、被付与層Ldの後端を検出することで立下り、センサ部33の下を、被付与層Ldが形成されていない部位が通過している間、Lowレベルを出力する。
【0052】
維持・回復動作(本例では空吐出動作)の進捗状況や、積層体前駆体W2の搬送速度の到達状況等の条件が、印刷動作へ移行可能な状態となるまで、つまり移行条件を満たすまではセンサマスクを有効(Highレベル)にし、センサ部33の出力を無効にしている。センサマスクが有効となっている期間は、制御部900において内部生成信号が生成される。制御部900で内部生成信号が生成されると、この内部生成信号をもとに第二同期信号生成部902は、第二同期信号を生成する。
【0053】
印刷部3において、センサ部33と付与部30は搬送方向Xで離れた位置にあるため、その距離に相当する分、第二同期信号は内部生成信号に対し遅延して発行される。また、第二同期信号生成部902は、実際に付与部30から液体を付与(吐出)するタイミングに同期するよう、第二同期信号を生成する。そして、生成された第二同期信号に基づいて、積層体製造装置100の印刷部3では、維持・回復動作が実施される。
【0054】
一方で、加速領域中に維持・回復動作が開始され、基体搬送速度が、ある所定速度に到達すると、制御部900(判断部905)は、維持・回復動作から印刷動作へ移行する条件が満たされていると判断し、センサマスクを無効(Lowレベル)にする。センサマスクが無効になることで、センサ部33の出力が有効となる。センサマスクが無効となった後の、センサ部33の出力の状態変化に基づき、内部生成信号が有効となっている期間は終了する。つまり、センサマスクが無効となった後にセンサ部33が出力する立下り信号をトリガとして、内部生成信号が有効となっている期間は終了し、これに伴い、第二同期信号が有効となっている期間も終了する。また、第二同期信号が有効となっている期間が終了することにより、維持・回復動作が終了する。
【0055】
さらに、センサマスクが無効となった後にセンサ部33が出力する立下り信号をトリガとして、当該立下り信号以降のセンサ出力をもとに、第一同期信号生成部901は第一同期信号を生成する。印刷部3において、センサ部33と付与部30は搬送方向Xで離れた位置にあるため、その距離に相当する分、第一同期信号はセンサ出力に対し遅延して発行される。この場合、第一同期信号は、トリガとなった立下り信号以前のセンサ出力が有効とならないように生成される。また、第一同期信号生成部901は、実際に付与部30から液体を付与(吐出)するタイミングに同期するよう、第一同期信号を生成する。
【0056】
このようにして、同期信号および印刷部実施動作は、第二同期信号に基づく維持・回復動作から、第一同期信号に基づく印刷動作へと切り替えられる。第二同期信号生成部902にて生成された第二同期信号、または第一同期信号生成部901にて生成された第一同期信号は、液体付与制御部907へ送られる。液体付与制御部907は、受信した第二同期信号または第一同期信号に基づき、付与部30(ヘッド)の駆動(ヘッドが有するノズルからの液体付与動作)を制御する。
【0057】
第二同期信号から第一同期信号への切り替えを上記のように行うことで、印刷部3は、維持・回復動作が終了したならば、直ぐに印刷動作を開始することができる。そのため、維持・回復動作が終了してから印刷動作が開始されるまでの間の、液体付与が行われない期間(不吐出期間)が長くならず、その結果、ノズルのメニスカスを適切な状態に維持することが可能になる。
【0058】
図6は、第二同期信号から第一同期信号への切替処理の一例を示すフローチャートである。
【0059】
第二同期信号から第一同期信号への切替処理が開始されると、制御部900は、維持・回復動作から印刷動作へ移行する条件が満たされているかを判断する(ステップS11)。印刷動作に移行可能か否かの判断は、予め設定される維持・回復動作の進捗状況、基体搬送速度の到達状況等に基づき判断部905にて行われる。ステップS11での判断結果が「No」の場合は、印刷動作に移行可能な状態となるまでステップS11の判断処理が繰り返される。
【0060】
ステップS11での判断結果が「Yes」の場合は、センサマスクが無効(解除)になり、センサ部33におけるセンサ出力が有効となる(ステップS12)。次に、センサ部33が被付与層Ldの後端を検出したかを判断する(ステップS13)。センサ部33が被付与層Ldの後端を検出した際に発せられる信号は、上述の、センサマスクが無効となった後にセンサ部33が出力する立下り信号に対応するものである。ステップS13での判断結果が「No」の場合は、センサ部33が被付与層Ldの後端を検出するまでステップS13の判断処理が繰り返される。なお、ここでの判断処理についても制御部900の判断部905にて行われる。
【0061】
ステップS13での判断結果が「Yes」の場合は、センサ部33が被付与層Ldの後端を検出したことで発せられた信号をトリガに、内部生成信号が有効となっている期間を終了させる(ステップS14)。次に、内部生成信号が有効となっている期間の終了に伴い、第二同期信号が有効となっている期間が終了するとともに、第一同期信号の有効期間が開始し、第二同期信号から第一同期信号へ切り替えられる(ステップS15)。第二同期信号が有効となっている期間が終了することで、維持・回復動作は終了する。以上のようにして、第二同期信号から第一同期信号への切替処理は完了する。
【0062】
[第一同期信号から第二同期信号への切り替え動作]
続いて、図7および図8を用いて第一同期信号から第二同期信号への切り替え動作の詳細を説明する。図7は、第一同期信号から第二同期信号への切り替え動作のタイミングチャートである。
【0063】
印刷動作の終了位置に対応する被付与層Ldの後端が、センサ部33によって検出されると、その立下り信号をトリガとして、センサマスクが無効な状態から有効な状態に移行する。これにより、トリガとなった立下り信号以降のセンサ出力は、有効とならないように生成される。また、内部生成信号も無効状態から有効状態に移行することで、この内部生成信号をもとに第二同期信号生成部902は、第二同期信号を生成する。
【0064】
印刷部3において、センサ部33と付与部30は搬送方向Xで離れた位置にあるため、その距離に相当する分、第二同期信号は内部生成信号に対し遅延して発行される。また、第二同期信号生成部902は、実際に付与部30から液体を付与(吐出)するタイミングに同期するよう、第二同期信号を生成する。そして、生成された第二同期信号に基づいて、積層体製造装置100の印刷部3では、維持・回復動作が実施される。
【0065】
さらに、センサ部33の立下り信号をトリガとして、当該立下り信号以前のセンサ出力をもとに、第一同期信号生成部901は第一同期信号を生成する。印刷部3において、センサ部33と付与部30は搬送方向Xで離れた位置にあるため、その距離に相当する分、第一同期信号はセンサ出力に対し遅延して発行される。この場合、トリガとなった立下り信号よりも後のセンサ出力は、有効とならないように生成される。また、第一同期信号生成部901は、実際に付与部30から液体を付与(吐出)するタイミングに同期するよう、第一同期信号を生成する。
【0066】
このようにして、同期信号および印刷部動作は、第一同期信号に基づく印刷動作から、第二同期信号に基づく維持・回復動作へと切り替えられる。第一同期信号生成部901にて生成された第一同期信号、または第二同期信号生成部902にて生成された第二同期信号は、液体付与制御部907へ送られる。液体付与制御部907は、受信した第一同期信号または第二同期信号に基づき、付与部30(ヘッド)の駆動(ヘッドが有するノズルからの液体付与動作)を制御する。
【0067】
第一同期信号から第二同期信号への切り替えを上記のように行うことで、印刷部3は、印刷動作の終了位置に対応する被付与層Ldの後端まで機能層Lzを印刷した上で印刷動作を終了することができる。その結果、機能層Lzの印刷が中途半端な状態で終了してしまう被付与層Ldが発生しなくなり、積層体前駆体W2の無駄な廃棄をなくすことが可能になる。また、印刷動作の終了後は、時間を置かずに速やかに維持・回復動作へ移行するため、ノズルのメニスカスを適切な状態に維持することが可能になる。
【0068】
図8は、第一同期信号から第二同期信号への切替処理の一例を示すフローチャートである。
【0069】
第一同期信号から第二同期信号への切替処理が開始されると、制御部900は、印刷動作から維持・回復動作へ移行する条件が満たされているかを判断する(ステップS21)。維持・回復動作に移行可能か否かの判断は、例えば印刷動作の終了を示す指示等に基づき判断部905にて行われる。ステップS21での判断結果が「No」の場合は、維持・回復動作に移行可能な状態となるまでステップS21の判断処理が繰り返される。
【0070】
ステップS21での判断結果が「Yes」の場合は、センサ部33が被付与層Ldの後端を検出したかを判断する(ステップS22)。センサ部33が被付与層Ldの後端を検出した際に発せられる信号は、上述の、印刷動作の終了位置に対応する被付与層Ldの後端を検出した際にセンサ部33が出力する立下り信号に対応するものである。ステップS22での判断結果が「No」の場合は、センサ部33が被付与層Ldの後端を検出するまでステップS22の判断処理が繰り返される。
【0071】
ステップS22での判断結果が「Yes」の場合は、センサ部33が被付与層Ldの後端を検出したことで発せられた立下り信号をトリガとして、センサマスクが有効になり、センサ部33のセンサ出力を無効にする(ステップS23)。次に、センサ部33が被付与層Ldの後端を検出したことで発せられた立下り信号をトリガとして、内部生成信号の有効期間が開始する(ステップS24)。次に、第一同期信号が有効となっている期間が終了するとともに、内部生成信号の有効期間の開始に伴い、第二同期信号の有効期間が開始し、第一同期信号から第二同期信号へ切り替えられる(ステップS25)。第二同期信号の有効期間が開始することで維持・回復動作が開始される。以上のようにして、第一同期信号から第二同期信号への切替処理は完了する。
【0072】
なお、維持・回復動作(微駆動動作、空吐出動作)は、ヘッドのノズル面が基体(積層体前駆体W2)と対向しないよう、基体から付与部30を後退させた状態にして実施させてもよいし、付与部30を後退させずに、図2に示されたように基体の真上に付与部30を位置させたままの状態で維持・回復動作を実施させてもよい。後者の場合、維持・回復動作が実施されている期間中に付与部30の下を通過する積層体前駆体W2には、空吐出動作によって吐出された液体が積層体前駆体W2に付着するなど、無駄にしてしまう部分も発生することになるが、基体から付与部30を後退させる時間を省くことが可能になり、全体の生産性は向上する。また、基体から付与部30を後退させるための移動機構も不要にできるため、装置構成を簡単にすることができる。
【0073】
上述のように、本実施形態は、基体W1と、基体W1が有する複数の所定領域上に設けられた複数の被付与層Ldと、を有する積層体前駆体W2を搬送する搬送装置35と、複数の被付与層Ldのうち1つ以上の被付与層Ldに液体を付与し、被付与層Ld上に機能層Lzを形成する付与部30(30a,30b,30c,30d)と、搬送装置35により搬送される積層体前駆体W2における被付与層Ldを検出し、検出した情報を出力するセンサ部33と、センサ部33の出力に基づき付与部30の動作を制御する制御部900と、を備える印刷部3であって、制御部900は、付与部30が第一の動作を行うよう付与部30を駆動する第一同期信号と、付与部30が第一の動作と異なる第二の動作を行うよう付与部30を駆動する第二同期信号と、を生成する第一同期信号生成部901,第二同期信号生成部902と、付与部30が、第一の動作から第二の動作へ、または第二の動作から第一の動作への動作移行が可能であるかを判断する判断部905と、を有し、判断部905において付与部30の動作移行が可能と判断された後の、センサ部33の出力の状態変化(実施形態では、センサ出力のHighレベルからLowレベルへの変化)に基づき、第一同期信号と第二同期信号とを切り替える。
【0074】
また、上述のように、センサ部33は、被付与層Ldの搬送方向先端および搬送方向後端を検知する。
【0075】
また、上述のように、制御部900は、判断部905において付与部30の動作移行が可能と判断された後に、センサ部33が被付与層Ldの搬送方向後端を検出したことを契機に、第一同期信号と第二同期信号とを切り替える。
【0076】
また、上述のように、第一の動作は、第一同期信号によって付与部30を駆動させ、被付与層Ld上に機能層Lzを形成する動作である。
【0077】
これらにより、被付与層Ldに対して機能層Lzを狙いの位置に正確に形成することが可能になり、品質のよい積層体W3を提供することができる。
【0078】
また、上述のように、第二の動作は、第二同期信号によって付与部30を駆動させ、付与部30に対して微駆動または空吐出の少なくとも一方を行わせる動作である。
【0079】
これにより、付与部30が備えるヘッドのノズルのメニスカスを適切な状態に維持することができる。
【0080】
また、上述のように、第二の動作(微駆動、空吐出)は、付与部30を積層体前駆体W2と対向させた状態で行われる。
【0081】
これにより、第二の動作を実施させるために、付与部30を基体(積層体前駆体W2)から後退(退避)させる必要がなくなるので、その移動時間を省くことが可能になり、全体の生産性を向上させることができる。
【0082】
<適用例>
次に、図9を用いて適用例について説明する。図9は、積層体製造装置および電気化学素子製造装置を模式的に示した図である。
【0083】
[積層体製造装置]
図9に示されるように、積層体製造装置100は、上述の印刷部3の後段に、後処理装置50を備えて構成される。積層体製造装置100は、具体的には電極を製造する装置である。後処理装置50には、上述の硬化部4、乾燥部5の他に、薄膜電極をプレスするプレスロール、薄膜電極を切り分けるスリット刃やレーザなどのカット機構などが含まれる。
【0084】
[電気化学素子製造装置]
また、図9に示されるように、上述の積層体製造装置100の後段に、さらに、電気化学素子化装置200を備えることで電気化学素子製造装置300としてもよい。電気化学素子化装置200には、例えば、積層体製造装置100で製造された電極を積層または巻回する装置や、パッケージングする装置などが含まれる。
【0085】
<印刷部の変形例>
以下、実施形態の変形例について説明する。
【0086】
上述の積層体製造装置100では、印刷部3の構成として、付与部30から付与される液体を直接、積層体前駆体W2に付与する方式としたが、間接的に液体を積層体前駆体W2に付与する方式でもよい。間接的に液体を付与する方式としては、例えば、転写工程を介して液体を基体に付与する方式(転写方式)がある。転写方式の例を、図10を用いて説明する。
【0087】
図10は、印刷部の変形例を示す図であり、図10(a)はドラム状の中間転写体を用いた印刷部、図10(b)は無端ベルト状の中間転写体を用いた印刷部を示している。
【0088】
図10(a)に示された印刷部400´は、中間転写体4001を介して基体W10に液体を転写することで基体W10の表面に機能層を形成するインクジェットプリンタである。
【0089】
印刷部400´は、インクジェット部420、転写ドラム4000、前処理ユニット4002、吸収ユニット4003、加熱ユニット4004および清掃ユニット4005を備える。
【0090】
インクジェット部420は、複数のヘッド101を保持したヘッドモジュール422を備える。ヘッド101は、転写ドラムに4000に支持された中間転写体4001に液体を付与し、中間転写体4001上に液体層を形成する。各ヘッド101はラインヘッドであり、使用可能な最大サイズの基体W10の記録領域の幅をカバーする範囲にノズルが配列されている。
【0091】
ヘッド101は、その下面に、ノズルが形成されたノズル面を有しており、ノズル面は、微小間隙を介して中間転写体4001の表面と対向している。本実施形態の場合、中間転写体4001は円軌道上を循環移動する構成であるため、複数のヘッド101は、放射状に配置される。
【0092】
転写ドラム4000は、圧胴621と対向し、転写ニップ部を形成する。前処理ユニット4002は、ヘッド101による液体の付与前に、例えば、中間転写体4001上に、液体の粘度を高めるための反応液を付与する。吸収ユニット4003は、転写前に、中間転写体4001上の液体層から液体成分を吸収する。
【0093】
加熱ユニット4004は、転写前に、中間転写体4001上の液体層を加熱する。液体層を加熱することで、液体層中の樹脂が溶融し、基体W10への転写性が向上する。清掃ユニット4005は、転写後に中間転写体4001上を清掃し、中間転写体4001上に残留した液体やごみ等の異物を除去する。
【0094】
圧胴621の外周面は、中間転写体4001に圧接しており、圧胴621と中間転写体4001との転写ニップ部を基体W10が通過するときに、中間転写体4001上の液体層が基体W10に転写される。なお、圧胴621は、その外周面に基体W10の先端部を保持するグリップ機構を少なくとも1つ備えた構成としてもよい。
【0095】
図10(b)に示された印刷部400´´は、中間転写ベルト4006を介して基体W10に液体を転写することで基体W10の表面に機能層を形成するインクジェットプリンタである。
【0096】
印刷部400´´は、インクジェット部420に設けた複数のヘッド101から液体を付与して、中間転写ベルト4006の外周表面上に液体層を形成する。中間転写ベルト4006に形成された液体層は、乾燥ユニット4007によって乾かされ、液体層は中間転写ベルト4006上で膜化する。
【0097】
中間転写ベルト4006が転写ローラ622と対向する転写ニップ部において、中間転写ベルト4006上の膜化した液体層は基体W10に転写される。転写後の中間転写ベルト4006の表面は、清掃ローラ4008によって清掃される。
【0098】
中間転写ベルト4006は、駆動ローラ4009a、対向ローラ4009b、複数(本例では4つ)の形状維持ローラ4009c,4009d,4009e,4009f、および複数(本例では4つ)の支持ローラ4009gに架け渡され、図中矢印方向に移動する。ヘッド101に対向して設けられる支持ローラ4009gは、ヘッド101から液体が付与される際の中間転写ベルト4006の引張状態を維持する。
【0099】
なお、図10(a)に示された中間転写体4001、および図10(b)に示された中間転写ベルト4006に形成される液体層は単層とは限らず、複数のヘッド101毎に液体を異ならせ、1パスで2層以上の液体層を形成する構成としてもよい。
【0100】
その場合、例えば図11に示された工程(1)~(3)によって基体W10上に活物質層W20(X20)と絶縁層X30を形成することが可能になる。
【0101】
中間転写方式の場合、最終的に基体W10に液体層を転写する段階で、液体層の上下が反転する。そのため、工程(1)では、絶縁層用の液体(インク)を付与するヘッド101を用いて、中間転写体4001(中間転写ベルト4006)に対して液体を付与し、中間転写体4001(中間転写ベルト4006)上に絶縁層X30を形成する。
【0102】
次に、工程(2)において、中間転写体4001(中間転写ベルト4006)に対し活物質層用の液体(インク)および絶縁層用の液体(インク)を付与する。そして、中間転写体4001(中間転写ベルト4006)上の絶縁層X30の上に、さらに活物質層W20(X20)および絶縁層X30を形成する。
【0103】
工程(2)における活物質層W20(X20)および絶縁層X30の作製は、活物質層用の液体と絶縁層用の液体を付与可能な1つのヘッドにより1工程で作製してもよい。また、活物質層用の液体を付与するヘッドと、絶縁層用の液体を付与するヘッドを用いて2工程で作製してもよい。
【0104】
中間転写体4001(中間転写ベルト4006)上に作製された液体層は、工程(3)において中間転写体4001(中間転写ベルト4006)から基体W10に転写される。中間転写方式の場合には、上記のような工程により基体W10への活物質層W20(X20)および絶縁層X30の作製が行われる。
【0105】
以上説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
【0106】
[態様1]
態様1は、基体(例えば基体W1)と、前記基体が有する複数の所定領域上に設けられた複数の被付与層(例えば被付与層Ld)と、を有する積層体前駆体(例えば積層体前駆体W2)を搬送する搬送部(例えば搬送装置35)と、前記複数の被付与層のうち1つ以上の前記被付与層に液体を付与し、前記被付与層上に機能層(例えば機能層Lz)を形成する付与部(例えば付与部30)と、前記搬送部により搬送される前記積層体前駆体における前記被付与層を検出し、検出した情報を出力する検出部(例えばセンサ部33)と、前記検出部の出力に基づき前記付与部の動作を制御する制御部(例えば制御部900)と、を備える液体付与装置(例えば印刷部3)であって、前記制御部は、前記付与部が第一の動作を行うよう前記付与部を駆動する第一信号(例えば第一同期信号)と、前記付与部が前記第一の動作と異なる第二の動作を行うよう前記付与部を駆動する第二信号(例えば第二同期信号)と、を生成する信号生成部(例えば第一同期信号生成部901、第二同期信号生成部902)と、前記付与部が、前記第一の動作から前記第二の動作へ、または前記第二の動作から前記第一の動作への動作移行が可能であるかを判断する判断部(例えば判断部905)と、を有し、前記判断部において前記付与部の前記動作移行が可能と判断された後の、前記検出部の出力の状態変化に基づき、前記第一信号と前記第二信号とを切り替えることを特徴とするものである。
【0107】
[態様2]
態様2は、態様1において、前記検出部は、前記被付与層の搬送方向先端および搬送方向後端を検知することを特徴とするものである。
【0108】
[態様3]
態様3は、態様2において、前記制御部は、前記判断部において前記付与部の動作移行が可能と判断された後に、前記検出部が前記被付与層の前記搬送方向後端を検出したことを契機に、前記第一信号と前記第二信号とを切り替えることを特徴とするものである。
【0109】
[態様4]
態様4は、態様1乃至態様3のいずれかにおいて、前記第一の動作は、前記第一信号(例えば第一同期信号)によって前記付与部(例えば付与部30)を駆動させ、前記被付与層(例えば被付与層Ld)上に前記機能層(例えば機能層Lz)を形成する動作であることを特徴とするものである。
【0110】
[態様5]
態様5は、態様1乃至態様4のいずれかにおいて、前記第二の動作は、前記第二信号(例えば第二同期信号)によって前記付与部(例えば付与部30)を駆動させ、前記付与部に対して微駆動または空吐出の少なくとも一方を行わせる動作であることを特徴とするものである。
【0111】
[態様6]
態様6は、態様5において、前記第二の動作は、前記付与部(例えば付与部30)を前記積層体前駆体(例えば積層体前駆体W2)と対向させた状態で行われることを特徴とするものである。
【0112】
[態様7]
態様7は、態様1乃至態様6のいずれかの液体付与装置(例えば印刷部3)と、前記液体付与装置の後段に設けられる後処理装置(例えば後処理装置50)と、を備えることを特徴とする積層体製造装置(例えば積層体製造装置100)である。
【0113】
[態様8]
態様8は、態様7の積層体製造装置と、前記積層体製造装置の後段に設けられる電気化学素子化装置(例えば電気化学素子化装置200)と、を備えることを特徴とする電気化学素子製造装置(例えば電気化学素子製造装置300)である。
【0114】
[態様9]
態様9は、基体と、前記基体が有する複数の所定領域上に設けられた複数の被付与層と、を有する積層体前駆体を搬送する搬送部と、前記複数の被付与層のうち1つ以上の前記被付与層に液体を付与し、前記被付与層上に機能層を形成する付与部と、前記搬送部により搬送される前記積層体前駆体における前記被付与層を検出し、検出した情報を出力する検出部と、前記付与部に対して第一の動作を行うよう前記付与部を駆動する第一信号と、前記付与部が前記第一の動作と異なる第二の動作を行うよう前記付与部を駆動する第二信号と、を生成する信号生成部、ならびに前記付与部が、前記第一の動作から前記第二の動作へ、または前記第二の動作から前記第一の動作への動作移行が可能であるかを判断する判断部を有する制御部と、を備える液体付与装置の液体付与方法であって、前記判断部において前記付与部の前記動作移行が可能であるかを判断する判断ステップと、前記判断ステップにおいて、前記付与部の動作移行が可能と判断された後の、前記検出部の出力の状態変化を契機に、前記第一信号と前記第二信号とを切り替える切替ステップと、を含むことを特徴とするものである。
【0115】
[態様10]
態様10は、態様9の液体付与方法を含み、前記被付与層は電極合材層であることを特徴とする電極製造方法である。
【0116】
[態様11]
態様11は、態様10の積層体製造方法を含むことを特徴とする電気化学素子製造方法である。
【符号の説明】
【0117】
1 繰出部
2 被付与層形成部
3 印刷部(液体付与装置の一例)
30 付与部
33 センサ部(検出部の一例)
35 搬送装置(搬送部の一例)
4 硬化部(後処理装置の一例)
5 乾燥部(後処理装置の一例)
6 巻取部
50 後処理装置
100 積層体製造装置
200 電気化学素子化装置
300 電気化学素子製造装置
900 制御部
901 第一同期信号生成部(信号生成部の一例)
902 第二同期信号生成部(信号生成部の一例)
903 画像処理部
904 処理部
905 判断部
906 記憶部
907 液体付与制御部
908 液体付与部
909 搬送量検出部
910 被付与層検出部
W1 基体
W2 積層体前駆体
W3 積層体
Ld 被付与層
Lz 機能層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11