(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129883
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】セットアップ方法、基板処理方法、及び基板処理装置
(51)【国際特許分類】
B24B 47/22 20060101AFI20240920BHJP
B24B 7/04 20060101ALI20240920BHJP
B24B 49/10 20060101ALI20240920BHJP
B23Q 17/22 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B24B47/22
B24B7/04 A
B24B49/10
B23Q17/22 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039253
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】片岡 正道
【テーマコード(参考)】
3C029
3C034
3C043
【Fターム(参考)】
3C029AA24
3C034AA08
3C034BB73
3C034BB93
3C034BB96
3C034CA04
3C034CA12
3C034CA22
3C034CA26
3C034CA30
3C034CB20
3C034DD12
3C043BA03
3C043BA12
3C043CC04
3C043DD02
3C043DD04
3C043DD06
(57)【要約】
【課題】加工具の基準高さを簡単に設定する、技術を提供する。
【解決手段】セットアップ方法は、基板の上面に加工具の下面を押し当てることで前記基板を加工する基板処理装置のセットアップ方法である。前記基板処理装置は、前記基板を前記加工具とは反対側から保持するチャックと、前記チャックを回転させる第1回転部と、前記加工具を回転させる第2回転部と、前記加工具を昇降させる昇降部と、を備える。前記セットアップ方法は、前記チャックの上面に液層を形成すると共に、前記チャックと共に前記液層を回転させることと、回転させている前記液層に対して前記加工具を接近させることと、前記液層と前記加工具との接触による前記加工具の回転を検出することと、前記加工具の回転を検出した時の前記加工具の高さを基に、前記加工具の基準高さを設定することと、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上面に加工具の下面を押し当てることで前記基板を加工する基板処理装置のセットアップ方法であって、
前記基板処理装置は、前記基板を前記加工具とは反対側から保持するチャックと、前記チャックを回転させる第1回転部と、前記加工具を回転させる第2回転部と、前記加工具を昇降させる昇降部と、を備え、
前記セットアップ方法は、前記チャックの上面に液層を形成すると共に、前記チャックと共に前記液層を回転させることと、回転させている前記液層に対して前記加工具を接近させることと、前記液層と前記加工具との接触による前記加工具の回転を検出することと、前記加工具の回転を検出した時の前記加工具の高さを基に、前記加工具の基準高さを設定することと、を有する、セットアップ方法。
【請求項2】
前記液層に対して前記加工具を接近させる間、前記第2回転部による前記加工具の回転を停止することを有する、請求項1に記載のセットアップ方法。
【請求項3】
前記加工具の前記基準高さを記憶することを有する、請求項1又は2に記載のセットアップ方法。
【請求項4】
前記加工具の回転を検出することは、前記加工具の回転速度が閾値以上になることを検出することである、請求項1又は2に記載のセットアップ方法。
【請求項5】
前記液層に気泡を混ぜることを有する、請求項1又は2に記載のセットアップ方法。
【請求項6】
前記基準高さを基に、前記加工具の下降速度を切り換える前記加工具の高さを設定することを有する、請求項1又は2に記載のセットアップ方法。
【請求項7】
請求項1又は2に記載のセットアップ方法で前記加工具の基準高さを設定した前記基板処理装置を用いて前記基板を加工することを有する、基板処理方法。
【請求項8】
基板の上面に加工具の下面を押し当てることで前記基板を加工する基板処理装置であって、
前記基板を前記加工具とは反対側から保持するチャックと、
前記チャックを回転させる第1回転部と、
前記加工具を回転させる第2回転部と、
前記加工具を昇降させる昇降部と、
前記チャックの上面に液層を形成するブロー部と、
前記加工具の回転を検出する回転検出部と、
前記加工具の高さを検出する位置検出部と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、請求項1又は2に記載のセットアップ方法を実施する制御を行なう、基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、セットアップ方法、基板処理方法、及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加工具の基準高さを設定するセットアップ方法が検討されている。特許文献1に記載のセットアップ方法は、ブロックゲージを用いて、チャックに対する研削砥石の高さを確認する。具体的には、チャックの上面と研削砥石の下面の隙間がブロックゲージの厚みになったときの研削砥石の高さを記憶する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の一態様は、加工具の基準高さを簡単に設定する、技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係るセットアップ方法は、基板の上面に加工具の下面を押し当てることで前記基板を加工する基板処理装置のセットアップ方法である。前記基板処理装置は、前記基板を前記加工具とは反対側から保持するチャックと、前記チャックを回転させる第1回転部と、前記加工具を回転させる第2回転部と、前記加工具を昇降させる昇降部と、を備える。前記セットアップ方法は、前記チャックの上面に液層を形成すると共に、前記チャックと共に前記液層を回転させることと、回転させている前記液層に対して前記加工具を接近させることと、前記液層と前記加工具との接触による前記加工具の回転を検出することと、前記加工具の回転を検出した時の前記加工具の高さを基に、前記加工具の基準高さを設定することと、を有する。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一態様によれば、加工具の基準高さを簡単に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る基板処理装置を示す図である。
【
図2】
図2は、基板を加工する工程における加工具のZ軸方向位置の経時変化の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、一実施形態に係るセットアップ方法を示すフローチャートである。
【
図4】
図4(A)はステップS101の一例を示す図であり、
図4(B)はステップS102の一例を示す図であり、
図4(C)はステップS103の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において同一の又は対応する構成には同一の符号を付し、説明を省略することがある。各図面において、X軸方向とY軸方向とZ軸方向は互いに垂直な方向であり、X軸方向とY軸方向は水平方向であり、Z軸方向は鉛直方向である。
【0009】
図1を参照して、一実施形態に係る基板処理装置1について説明する。基板処理装置1は、基板Wの上面に加工具Tの下面を押し当てることで基板Wを加工する。加工具Tは、例えば研削加工用である。加工具Tは、例えば、円盤状のホイールT1と、ホイールT1の下面にリング状に配列される複数の砥石T2とを含む。なお、加工具Tは、本実施形態では研削加工用であるが、研磨加工用であってもよい。
【0010】
基板処理装置1は、基板Wを加工具Tとは反対側から保持するチャック10と、チャック10を回転させる第1回転部20と、加工具Tを回転させる第2回転部30と、加工具Tを昇降させる昇降部40と、を備える。また、基板処理装置1は、加工具Tの回転を検出する回転検出部50と、加工具Tの高さを検出する位置検出部51と、基板Wの厚みを検出する厚み検出部52と、を備える。さらに、基板処理装置は、チャック10の上面に液層L(
図4参照)を形成するブロー部60と、画面を表示する表示部80と、制御部90と、を備える。
【0011】
チャック10は、基板Wを加工具Tとは反対側から保持する。チャック10は、その上面に、基板Wを吸着する吸着面11を有する。チャック10は、例えば真空チャックであって、吸着面11を形成する多孔質体12と、多孔質体12を保持する保持台13と、を有する。
【0012】
第1回転部20は、チャック10を回転させる。第1回転部20は、例えば、第1回転モータ21と、第1回転モータ21によって回転させられる鉛直な回転軸22と、を有する。回転軸22の上端にチャック10が設けられる。第1回転モータ21は、回転軸22と共にチャック10を回転させる。なお、回転軸22は、基板Wの厚み分布を調整すべく、傾斜していてもよい。
【0013】
第2回転部30は、加工具Tを回転させる。第2回転部30は、例えば、第2回転モータ31と、第2回転モータ31によって回転させられる鉛直なスピンドル軸32と、スピンドル軸32の下端に設けられるフランジ33と、を有する。フランジ33は水平に配置され、その下面に加工具Tが装着される。第2回転モータ31は、スピンドル軸32を回転させることで、フランジ33の下面に装着された加工具Tを回転させる。
【0014】
昇降部40は、加工具Tを昇降させる。昇降部40は、例えば、鉛直なZ軸ガイド41と、Z軸ガイド41に沿って移動するZ軸スライダ42と、Z軸スライダ42を移動させる昇降モータ43と、を有する。Z軸スライダ42には、モータホルダ44を介して第2回転モータ31が固定される。昇降部40は、昇降モータ43の回転運動をZ軸スライダ42の直線運動に変換する図示しないボールねじを有する。
【0015】
回転検出部50は、加工具Tの回転を検出する。回転検出部50は、例えばロータリーエンコーダであって、第2回転モータ31の回転を検出することで、加工具Tの回転を検出する。回転検出部50は、例えば回転速度を検出する。回転検出部50は、回転速度に加えて回転方向も検出してもよい。回転検出部50は、加工具Tの回転を示す信号を制御部90に送信する。
【0016】
位置検出部51は、加工具Tの高さを検出する。加工具Tの高さは、加工具TのZ軸方向位置である。位置検出部51は、例えばロータリーエンコーダであって、昇降モータ43の回転を検出することで、加工具TのZ軸方向位置を検出する。位置検出部51は、加工具TのZ軸方向位置を示す信号を制御部90に送信する。
【0017】
なお、位置検出部51は、ロータリーエンコーダには限定されない。位置検出部51は、リニアエンコーダであってもよく、Z軸ガイド41に沿って設置されるスケールと、Z軸スライダ42に搭載される読み取りヘッドとを有してもよい。読み取りヘッドは、スケールの目盛を読み取る。
【0018】
厚み検出部52は、チャック10に保持されている基板Wの厚みを検出する。厚み検出部52は、例えば、基板Wの上面に接触する接触子と、接触子の変位を検出する変位検出部とを有する。厚み検出部52は、基板Wの厚みを示す信号を制御部90に送信する。
【0019】
なお、厚み検出部52は、接触式には限定されず、非接触式であってもよい。非接触式の厚み検出部52としては、例えば、レーザー変位計が用いられる。レーザー変位計は、例えば分光干渉式であって、基板Wの上方から光を照射し、基板Wの上面で反射された光と基板Wの下面で反射された光との位相差を検出することで、基板Wの厚みを検出する。
【0020】
ブロー部60は、チャック10の内部に液体を供給することで、チャック10の上面から上方に液体を噴出させる。例えば、ブロー部60は、多孔質体12の内部に液体を供給することで、多孔質体12の上面から液体を噴出させる。液体の噴出圧で、基板Wをチャック10から引き剥がすことができる。
【0021】
ブロー部60は、チャック10の内部に液体を供給する液体供給部61を有する。液体供給部61は、液体の供給とその停止を切り替えるバルブを含む。液体供給部61は、液体の供給源を含まないが、液体の供給源を含んでもよい。液体としては、例えば水が用いられる。
【0022】
ブロー部60はチャック10の内部に液体と気体の混合流体を供給してもよく、ブロー部60はチャック10の内部に気体を供給する気体供給部62を有してもよい。気体供給部62は、気体の供給とその停止を切り替えるバルブを含む。気体供給部62は、気体の供給源を含まないが、気体の供給源を含んでもよい。気体としては、例えば空気が用いられる。
【0023】
表示部80は、画面を表示する。画面は、例えば基板処理装置1の各種検出部の検出結果を表示する。例えば、画面は、加工具TのZ軸方向位置、加工具Tの回転速度、基板Wの厚みなどを表示する。ユーザは、画面を見ることで、基板処理装置1の状態を確認する。なお、画面は、ユーザの入力操作を受け付ける入力部を表示してもよい。入力部は、例えばボタン又は入力欄を含む。ユーザは、画面を見ながら、基板Wの加工条件などの入力操作を行う。
【0024】
制御部90は、例えばコンピュータであり、CPU(Central Processing Unit)等の演算部と、メモリ等の記憶部とを備える。記憶部には、基板処理装置1において実行される各種の処理を制御するプログラムが格納される。制御部90は、記憶部に記憶されたプログラムを演算部に実行させることにより、基板処理装置1の動作を制御する。
【0025】
図2を参照して、基板Wを加工する工程における加工具TのZ軸方向位置の経時変化の一例について説明する。加工具TのZ軸方向位置は、制御部90によって制御される。制御部90は、時刻t0において加工具Tの下降を開始する。制御部90は、待機位置Z0から速度切換位置Z1まで第1速度V1で加工具Tを下降させる。このとき、制御部90は、予め設定された回転速度で加工具Tを回転させる。また、制御部90は、予め設定された回転速度でチャック10と共に基板Wを回転させてもよい。
【0026】
時刻t1において加工具Tが速度切換位置Z1に達したことを位置検出部51が検出すると、制御部90が加工具Tの下降速度を第1速度V1から第1速度V1よりも小さい第2速度V2(V2<V1)に減速する。速度切換位置Z1は、エアカット量ΔZが設定値になるように設定される。エアカット量ΔZとは、時刻t1において加工具Tと基板Wとの間に形成される隙間の大きさのことである。なお、基板Wの回転を開始する時刻は、時刻t0ではなく時刻t1であってもよい。
【0027】
上記の通り、制御部90は、時刻t0から時刻t1まで、高速で加工具Tを下降させるので、スループットの低下を抑制できる。また、制御部90は、時刻t1以降、低速で加工具Tを下降させるので、加工具Tが基板Wに接触する時の衝撃を低減でき、基板Wの破損および加工具Tの破損を抑制できる。加工具Tは、時刻t2において基板Wに接触する。
【0028】
制御部90は、時刻t2以降も、加工具Tを下降させ続ける。加工具Tの下面が基板Wの上面に押し当てられ、基板Wが薄化される。制御部90は、本実施形態では時刻t2以降も加工具Tの下降速度を第2速度V2に設定するが、第2速度V2よりも小さい第3速度にさらに減速してもよい。
【0029】
時刻t3において基板Wの厚みが設定値に達したことを厚み検出部52が検出すると、制御部90が加工具Tの下降を停止する。その後、制御部90は、加工具Tの昇降を停止させた状態で、設定時間Δtの間、加工具Tを回転させると共に基板Wを回転させてもよい。
【0030】
時刻t4において時刻t3からの経過時間が設定時間Δtに達すると、制御部90が加工具Tの上昇を開始する。なお、制御部90は、時刻t3において、加工具Tの上昇を開始してもよい。制御部90は、待機位置Z0まで加工具Tを上昇させる。加工具Tと基板Wが離隔した後、制御部90が加工具Tの回転とチャック10の回転を停止させる。
【0031】
その後、加工具Tが待機位置Z0で待機している間に、基板Wの交換が行われ、加工後の基板Wが搬出され、加工前の基板Wが搬入される。待機位置Z0は、加工具Tが基板Wの搬入出を妨げないように、速度切換位置Z1よりも上方の位置に設定される。基板Wの交換が行われた後、基板Wの加工が再び行われる。
【0032】
図3及び
図4を参照して、一実施形態に係るセットアップ方法について説明する。セットアップ方法は、加工具Tの基準高さを設定する方法である。セットアップ方法は、例えばエアカット量ΔZの調整を目的として行われる。セットアップ方法は、加工具Tの交換後であって1枚目の基板Wの加工前に行われてもよいし、上記の通りn枚目の基板Wの加工後であって(n+1)枚目の基板Wの加工前に行われてもよい。ここで、nは、予め設定される整数である。
【0033】
基板Wの処理枚数が増えるにつれ、加工具Tが摩耗する。例えば砥石T2が摩耗し、砥石T2の厚みが小さくなる。その結果、エアカット量ΔZが設定値よりも大きくなってしまい、スループットが低下することがある。n枚目の基板Wの加工後であって(n+1)枚目の基板Wの加工前に、エアカット量ΔZを調整すれば、スループットの低下を抑制できる。
【0034】
セットアップ方法は、
図3に示すように、例えばステップS101~S106を有する。ステップS101~S106は、制御部90による制御下で行われる。ステップS101~S106は、本実施形態では全てが制御部90によって自動で行われるが、少なくとも一部が手動で行われてもよい。ユーザは、表示部80の画面を見れば、加工具TのZ軸方向位置と加工具Tの回転速度を把握できる。セットアップ方法は、
図4に示すようにチャック10の上面に基板Wが無い状態で行われる。
【0035】
ステップS101は、
図4(A)に示すように、ブロー部60がチャック10の上面に液層Lを形成すると共に、第1回転部20がチャック10と共に液層Lを回転させることを有する。液層Lの厚みは、液体の供給流量とチャック10の回転速度で制御可能である。液体の供給流量が大きいほど、液層Lの厚みが大きい。一方、チャック10の回転速度が大きいほど、遠心力が大きく、液層Lの厚みが小さい。
【0036】
ブロー部60は、気体と液体の混合流体をチャック10の内部に供給してもよく、液層Lに気泡を混ぜてもよい。液体の供給流量が少量であっても、気泡が液層Lに混じることで、液層Lの厚みを目標厚みにすることができる。但し、液体の供給流量が十分であれば、ブロー部60は液層Lに気泡を混ぜないことが好ましい。気泡が無ければ、液層Lの上面が泡立たず、液層Lの厚みが安定化する。
【0037】
ステップS102は、
図4(B)に示すように、回転させている液層Lに対して加工具Tを接近させることを有する。昇降部40が、加工具Tを下降させることで、加工具Tの下面を液層Lの上面に接触させる。第1回転部20がチャック10と共に液層Lを回転させているので、液層Lと加工具Tが接触すると、
図4(C)に示すように加工具Tが液層Lに引き摺られて回転する。
【0038】
制御部90は、液層Lに対して加工具Tを接近させる間、第2回転部30による加工具Tの回転を停止してもよい。第2回転部30による加工具Tの回転を停止することは、例えば第2回転モータ31に対する電流供給を停止することを含む。第2回転部30による加工具Tの回転を停止すれば、液層Lと加工具Tとの接触による加工具Tの回転を検出することが容易である。
【0039】
なお、液層Lと加工具Tとの接触による加工具Tの回転を検出することができればよく、第2回転部30が加工具Tを回転させてもよい。第2回転部30による加工具Tの回転速度が第1回転部20による液層Lの回転速度よりも小さければ、液層Lと加工具Tとの接触による加工具Tの回転を検出することが可能である。
【0040】
ステップS103は、
図4(C)に示すように、液層Lと加工具Tとの接触による加工具Tの回転を回転検出部50が検出することを有する。加工具Tの回転を検出することは、例えば、加工具Tの回転速度が閾値以上になることを検出することである。なお、加工具Tの回転を検出することは、加工具Tの回転角が閾値以上になることを検出することであってもよい。回転角は、例えば回転速度を時間積分することで求める。ステップS103で加工具Tの回転を検出した時に、加工具Tの下面とチャック10の上面との距離は液層Lの厚みに応じた距離になる。
【0041】
ステップS104は、ステップS103で加工具Tの回転を検出した時の加工具Tの高さを基に、加工具Tの基準高さを設定することを有する。基準高さは、チャック10に対する加工具Tの相対的な高さを管理するのに用いる。以下、基準高さを、基準位置Zrefとも記載する。基準位置Zrefは、本実施形態ではステップS103で加工具Tの回転を検出した時の加工具TのZ軸方向位置であるが、そのZ軸方向位置を下方又は上方に所定量シフトさせた位置であってもよい。
【0042】
本実施形態によれば、ステップS103で加工具Tの回転を検出した時の加工具TのZ軸方向位置を基に、加工具Tの基準位置Zrefを設定する。よって、作業者の熟練度に関係なく、加工具Tの基準位置Zrefを簡単に設定でき、基準位置Zrefを短時間で設定できる。また、作業者の熟練度に関係なく、基準位置Zrefを±0.1μm程度の精度で設定できる。
【0043】
ステップS105は、ステップS104で設定した基準位置Zrefを記憶することを有する。基準位置Zrefは、例えば制御部90の記憶部に記憶される。基準位置Zrefは、例えば速度切換位置Z1の設定に用いられる。速度切換位置Z1は、エアカット量ΔZが設定値になるように、基準位置Zrefと基板Wの厚みに基づき設定される。
【0044】
ステップS106は、ステップS104で設定した基準位置Zrefを基に速度切換位置Z1を設定することを有する。加工具Tの交換後に、エアカット量ΔZを設定値に調整できる。また、加工具Tの摩耗時に、エアカット量ΔZが設定値よりも大きくなってしまうことを抑制でき、スループットの低下を抑制できる。
【0045】
なお、n枚目の基板Wの加工後であって(n+1)枚目の基板Wの加工前に、エアカット量ΔZを調整する方法は、
図3及び
図4に示す方法ではなくてもよい。速度切換位置Z1は、基準位置Zrefと加工具Tの摩耗量とを基に設定してもよい。加工具Tの摩耗量は、例えばn枚目の基板Wの厚みが設定値に達したことを厚み検出部52が検出した際の加工具Tの高さと、m枚目の基板Wの厚みが設定値に達したことを厚み検出部52が検出した際の加工具Tの高さとの差から算出可能である。ここで、mは、例えば1であるが、nよりも小さい整数であればよい。nは、2以上の整数である。
【0046】
以上、本開示に係るセットアップ方法、基板処理方法、及び基板処理装置の実施形態等について説明したが、本開示は上記実施形態等に限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除および組み合わせが可能である。それらについても当然に本開示の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0047】
1 基板処理装置
10 チャック
20 第1回転部
30 第2回転部
40 昇降部
T 加工具
W 基板