(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129890
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】三次元座標測定機
(51)【国際特許分類】
G01B 5/00 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
G01B5/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039261
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】高梨 陵
【テーマコード(参考)】
2F062
【Fターム(参考)】
2F062AA04
2F062AA51
2F062CC26
2F062FF02
2F062HH00
2F062MM02
(57)【要約】
【課題】測定プローブの移動ストローク長を確保しつつ三次元座標測定機の機高を低くすることができる三次元座標測定機を提供する。
【解決手段】定盤10と、Yキャリッジ14と、Xガイド20と、Xガイド20に沿ってX軸方向に移動自在なXキャリッジ24と、Xキャリッジ24に設けられたZキャリッジ26と、Zキャリッジ26に沿ってZ軸方向に移動自在であり、且つ、下端部に測定プローブ30を支持するZガイド28と、を備え、X軸方向から見た場合、Xガイド20は、Zガイド28に対して斜めに傾斜して構成される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物を載置する定盤と、
前記定盤を跨いで前記定盤のY軸方向に移動自在な門型のYキャリッジであって、二つの支柱部材により前記定盤に支持されるYキャリッジと、
前記Yキャリッジに設けられ、前記二つの支柱部材の上端部に架け渡されてX軸方向に延在するXガイドと、
前記Xガイドに沿ってX軸方向に移動自在なXキャリッジと、
前記Xキャリッジに設けられたZガイドキャリッジと、
前記Zキャリッジに沿ってZ軸方向に移動自在であり、且つ、下端部に測定プローブを支持するZガイドと、
を備え、
前記X軸方向から見た場合、前記Xガイドは、前記Zガイドに対して斜めに傾斜して構成される、
三次元座標測定機。
【請求項2】
前記Xキャリッジと前記Zガイドとの間には、前記Z軸方向の上側に向かうにつれて徐々に拡大する空間部が画定される、
請求項1に記載の三次元座標測定機。
【請求項3】
一端側が前記Xキャリッジに連結され、他端側が前記Zガイドの上端部に連結され、前記Zガイドの移動に伴って湾曲する可撓性部材を備え、
前記Zガイドが前記Z軸方向の最下端に移動した場合に、前記可撓性部材の少なくとも一部が前記空間部に配置される、
請求項2に記載の三次元座標測定機。
【請求項4】
前記Xガイドと前記Xキャリッジとの間に設けられ、前記Zキャリッジ側に配置された少なくとも1つのエアパッドを備え、
前記Y軸方向から見た場合、前記エアパッドの少なくも一部が前記Zガイドと重なる位置に配置される、
請求項1から3のいずれか1項に記載の三次元座標測定機。
【請求項5】
前記Xガイドと前記Xキャリッジとの間に設けられ、前記Zキャリッジ側に配置された複数のエアパッドを備え、
前記Y軸方向から見た場合、前記複数のエアパッドは、前記Xキャリッジの重心から等距離の位置に配置される、
請求項4に記載の三次元座標測定機。
【請求項6】
前記エアパッドは3つである、
請求項5に記載の三次元座標測定機。
【請求項7】
前記Zキャリッジの上端部における前記Z軸方向の高さが、前記Xガイドの上端よりも低い位置に配置される、
請求項1から3のうちいずれか1項に記載の三次元座標測定機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元座標測定機に係り、特にX、Y、Z軸の3軸方向に測定プローブを移動させて測定対象物の三次元形状を測定する三次元座標測定機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された三次元座標測定機は、測定対象物が載置される定盤を有し、定盤の上部には前後方向(Y軸方向)に移動自在のYキャリッジが配置される。Yキャリッジは、定盤を正面側から見たときの定盤の右側及び左側の各々に上下方向(Z軸方向)に沿って立設される2つの支柱部材(以下、右Yキャリッジ、左Yキャリッジとも言う。)と、右Yキャリッジと左Yキャリッジの各々の上端部に架け渡されて左右方向(X軸方向)に沿って延在する柱状のXガイドと、を有している。
【0003】
Xガイドには、X軸方向に移動自在のXキャリッジが配置される。また、XキャリッジにはZキャリッジが設けられ、Zキャリッジには、ZガイドがZ軸方向に移動自在に配置される。
【0004】
Zガイドの下端には測定対象物の位置を検知する測定プローブが取り付けられ、更に、測定プローブの先端には接触子を備えたスタイラスが取り付けられる。測定プローブは測定対象物に接触子が接触したときに電気信号を発生し、そのときのX位置、Y位置、Z位置などをデータ処理装置が取り込むことにより測定対象物の三次元形状を測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、三次元座標測定機においては、三次元座標測定機のコンパクト化が望まれている。三次元座標測定機をコンパクト化するための1つ案として、Zガイドを収容するZコラムの高さを低くして三次元座標測定機の機高を低くすることが考えられる。
【0007】
しかしながら、この場合、Z軸方向における測定プローブの移動ストローク長が短くなるため、三次元座標測定機において測定可能な測定対象物の大きさ(高さ)が制限されてしまうデメリットがある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、Z軸方向における測定プローブの移動ストローク長を確保しつつ三次元座標測定機の機高を低くすることができる三次元座標測定機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の三次元座標測定機は、本発明の目的を達成するために、測定対象物を載置する定盤と、定盤を跨いで定盤のY軸方向に移動自在な門型のYキャリッジであって、二つの支柱部材により定盤に支持されるYキャリッジと、Yキャリッジに設けられ、二つの支柱部材の上端部に架け渡されてX軸方向に延在するXガイドと、Xガイドに沿ってX軸方向に移動自在なXキャリッジと、Xキャリッジに設けられたZキャリッジと、Zキャリッジに沿ってZ軸方向に移動自在であり、且つ、下端部に測定プローブを支持するZガイドと、を備え、X軸方向から見た場合、Xガイドは、Zガイドに対して斜めに傾斜して構成される。
【0010】
本発明の一形態によれば、XキャリッジとZガイドとの間には、Z軸方向の上側に向かうにつれて徐々に拡大する空間部が画定されることが好ましい。
【0011】
本発明の一形態によれば、一端側がXキャリッジに連結され、他端側がZガイドの上端部に連結され、Zガイドの移動に伴って湾曲する可撓性部材を備え、ZガイドがZ軸方向の最下端に移動した場合に、可撓性部材の少なくとも一部が空間部に配置されることが好ましい。
【0012】
本発明の一形態によれば、XガイドとXキャリッジとの間に設けられ、Zキャリッジ側に配置された少なくとも1つのエアパッドを備え、Y軸方向から見た場合、エアパッドの少なくも一部がZガイドと重なる位置に配置されることが好ましい。
【0013】
本発明の一形態によれば、XガイドとXキャリッジとの間に設けられ、Zキャリッジ側に配置された複数のエアパッドを備え、Y軸方向から見た場合、複数のエアパッドは、Xキャリッジの重心から等距離の位置に配置されることが好ましい。
【0014】
本発明の一形態によれば、エアパッドは3つであることが好ましい。
【0015】
本発明の一形態によれば、Zキャリッジの上端部におけるZ軸方向の高さが、Xガイドの上端よりも低い位置に配置されることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、測定プローブの移動ストローク長を確保しつつ三次元座標測定機の機高を低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態の三次元座標測定機の外観を示した斜視図である。
【
図2】
図1に示した三次元座標測定機のカバーを外した斜視図である。
【
図3】
図2に示した三次元座標測定機の正面図である。
【
図4】Xキャリッジ及びZガイドを含むXガイドの縦断面図である。
【
図5】実施形態の三次元座標測定機及び比較例の三次元座標測定機の各Xガイドを三次元座標測定機の左側方から見た場合の模式図である。
【
図6】XガイドとXキャリッジとの間に配置されるエアパッドの配置位置を比較して示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面に従って本発明に係る三次元座標測定機の実施形態について説明する。
【0019】
図1は、実施形態に係る三次元座標測定機1の外観を示した斜視図である。また、
図2及び
図3は、各部のカバーを取り外した状態の三次元座標測定機1の斜視図及び正面図である。なお、以下の説明では、互いに直交するX、Y、Z軸の三次元直交座標系を用いて説明する。
【0020】
図1乃至
図3に示す三次元座標測定機1は、設置面(床面)に架台12を介して支持された定盤10を有する。定盤10は、一例として花崗岩(granite、御影石)又は大理石(marble、石灰岩、結晶質石灰岩)などの石材により平面視で矩形状に構成され、測定対象物を載置する平坦な上面10Tを有する。上面10Tは、X軸及びY軸に平行に、すなわち、Z軸に垂直に配置される。なお、定盤10は、本発明の定盤の一例である。
【0021】
定盤10の上面10T側には、定盤10を跨いで門型のYキャリッジ14が設置される。Yキャリッジ14は、定盤10を正面側から見たときの定盤10の右側及び左側の各々にZ軸方向(上下方向)に沿って延在して立設される右Yキャリッジ16及び左Yキャリッジ18と、右Yキャリッジ16及び左Yキャリッジ18の各々の上端部に架け渡されてX軸方向(左右方向)に沿って延在する柱状のXガイド20とを有する。
【0022】
右Yキャリッジ16は、定盤10にY軸方向(前後方向)に沿って設けられたYガイド(不図示)をガイドとしてY軸方向に移動自在に配置される。また、右Yキャリッジ16は、上記のYガイドに当接する駆動部(不図示)を有し、右Yキャリッジ16はその駆動部の駆動力によってYガイドに沿ってY軸方向に移動される。左Yキャリッジ18は、定盤10の上面10Tに沿ってY軸方向に移動自在に配置される。
【0023】
このような構成により、Yキャリッジ14は、右Yキャリッジ16の駆動部により、右Yキャリッジ16を駆動側とし、左Yキャリッジ18を従動側としてY軸方向に移動される。なお、Yキャリッジ14は、本発明のYキャリッジの一例である。また、右Yキャリッジ16及び左Yキャリッジ18とXガイド20は、それぞれ本発明の2つの支柱部材及びXガイドの一例である。
【0024】
Xガイド20には、Zコラム22がX軸方向に移動自在に設けられる。Zコラム22の内部にはXキャリッジ24(
図2及び
図3参照)が設けられ、Xキャリッジ24はXガイド20をガイドとしてX軸方向に移動自在に配置される。Xキャリッジ24は、Xガイド20に当接する駆動部(不図示)を有し、Xキャリッジ24はその駆動部の駆動力によってXガイド20に沿ってX軸方向に移動される。なお、Xキャリッジ24は、本発明のXキャリッジの一例である。
【0025】
また、Xキャリッジ24には、Zキャリッジ26(
図2及び
図3参照)が設けられている。Zキャリッジ26には、Z軸に沿って延在する柱状のZガイド28が設けられる。Zガイド28は、Zキャリッジ26をガイドとしてZ軸方向に移動自在に配置される。
【0026】
Zキャリッジ26は、Zガイド28に当接する駆動部(不図示)を有し、Zガイド28はその駆動部の駆動力によってZ軸方向に沿って移動される。Zガイド28は、Zコラム22の内部に収容され、Zガイド28の下端部側がZコラム22の下端部側から突出されている。なお、Zキャリッジ26及びZガイド28は、本発明のZキャリッジ及びZガイドの一例である。
【0027】
Zガイド28は、Zガイド28の下端部にタッチプローブ等の測定プローブ30を支持している。測定プローブ30は、例えば、先端球を有する棒状のスタイラス32を有する。測定プローブ30は、スタイラス32の先端(先端球)の測定対象物への接触の有無やスタイラス32の先端の測定対象物への接触により生じるスタイラス32の変位量を検出する。
【0028】
また、Xキャリッジ24とZガイド28とは、ケーブルガイド34を介して互いに連結される。ケーブルガイド34は、一端側34AがXキャリッジ24に固定されて上方向に延在され、他端側34BがZガイド28の上端部に接続金具36(
図4参照)を介して固定される。ケーブルガイド34の内部には、測定プローブ30のケーブル(不図示)が挿通配置されている。
【0029】
ケーブルガイド34は、Zガイド28の移動に伴って湾曲する部材であり、本発明の可撓性部材の一例である。また、ケーブルガイド34は、接続金具36を使用することなく他端側34BをZガイド28の上端部に直結してもよい。
【0030】
以上の如く構成された三次元座標測定機1は、Yキャリッジ14のY軸方向への移動、Xキャリッジ24のX軸方向への移動、及び、Zガイド28のZ軸方向への移動によって測定プローブ30のスタイラス32をX、Y、Z軸方向に移動させ、定盤10の上面10Tに載置された測定対象物の表面に沿わせてスタイラス32の先端(先端球)を移動させる。そして、そのときのYキャリッジ14のY軸方向の位置(移動量)、Xキャリッジ24のX軸方向の位置(移動量)、Zガイド28のZ軸方向の位置(移動量)、及びスタイラス32の位置(変位量)を計測することにより、測定対象物の表面の各位置の三次元座標を測定する。なお、三次元座標の測定に関する処理については周知であるので詳細な説明は省略する。
【0031】
また、三次元座標測定機1において、Yキャリッジ14をY軸方向に移動可能に支持すると共にY軸方向に移動させるY駆動機構、Xキャリッジ24をX軸方向に移動可能に支持すると共にX軸方向に移動させるX駆動機構、Zガイド28をZ軸方向に移動可能に支持すると共にZ軸方向に移動させるZ駆動機構については、公知であるのでその説明は省略する。
【0032】
次に、本発明の特徴部分であるXガイド20及びその周辺部の構成について説明する。
【0033】
図4は、Xガイド20及びその周辺部を含む部分のZ軸に沿う縦断面図である。なお、
図4は、
図3において左側方からXガイド20を見た場合の縦断面図である。
【0034】
図4に示すように、Xキャリッジ24をX軸方向にガイドする柱状のXガイド20は、縦断面(YZ断面)が矩形形状に構成されている。本例におけるXガイド20は、X軸方向から見た場合の断面視において、直交する2辺の長さが異なる(すなわち、長手方向と短手方向とを有する)長方形状に構成されており、Xガイド20の長手方向の一辺(一側面)がZ軸方向に対して斜めに傾斜した構成となっている。なお、Xガイド20の長手方向に限らず、Xガイド20の短手方向の一辺がZ軸方向に対して斜めに傾斜していてもよい。また、Xガイド20の断面形状は、直交する2辺の長さが同一である正方形状であってもよい。Xガイド20の断面形状が正方形状である場合、Xガイド20の一辺がZ軸方向に対して斜めに傾斜していればよい。
【0035】
Xキャリッジ24は、Zキャリッジガイド28の背面側(Y軸方向においてZガイド28の後方側)に配置される。Xキャリッジ24は、Xガイド20の周りを取り囲むように形成された矩形枠状に構成される。Xキャリッジ24とXガイド20との間には複数のエアパッド48が設けられており、Xキャリッジ24はXガイド20に沿って移動(摺動)自在に構成されている。なお、Zキャリッジ26とZガイド28との間にはエアパッド50、52が設けられており、Zガイド28はZキャリッジ26に対してZ軸方向に移動(摺動)自在に構成されている。
【0036】
Xキャリッジ24は、Zガイド28の背面部40(以下、Zガイド背面部40と言う。)に対向する正面部42(以下、Xキャリッジ正面部42と言う。)を有する。Zガイド背面部40は、Z軸方向に沿って配置されている。
【0037】
Xキャリッジ正面部42はフラットな面として構成され、Z軸方向に対しY軸方向に傾斜して設けられている。具体的に説明すると、Xキャリッジ正面部42は、X軸方向に沿う下辺部42A及び上辺部42Bを有している。Xキャリッジ正面部42は、下辺部42Aから上辺部42Bに向かうにつれて、Zガイド背面部40から後方側に離間するようにZ軸方向に対しY軸方向にθ度(例えば40~50度)傾斜して設けられている。
【0038】
このようにXキャリッジ正面部42がZ軸方向に対して傾斜していることにより、Xキャリッジ正面部42とZガイド背面部40との間には所望の大きさを有する空間部44が形成される。これにより、後述する比較例(
図5のVB参照)に比べて、Zキャリッジ26のZ軸方向の長さを短くすることができる。すなわち、Zキャリッジ26の短尺化が可能となっている。
【0039】
実施形態におけるZキャリッジ26は、
図4に示すように、Zキャリッジ26の上端部27(以下、Zキャリッジ上端部27と言う。)におけるZ軸方向の高さが、Xキャリッジ24の上端である上辺部42Bよりも低い位置に配置される。また、Zキャリッジ上端部27は、Z軸方向において上辺部42Bよりも下辺部42Aに近い側に配置される。すなわち、Z軸方向において上辺部42Bと下辺部42Aとの間の中間位置より低い位置(Z軸方向の下側の位置)にZキャリッジ上端部27が配置される。
【0040】
Xキャリッジ正面部42とZガイド背面部40との間の空間部44は、Z軸方向の下部から上部に向かうにつれてY軸方向の長さが長くなる形状、すなわち、縦断面(YZ断面)が略三角形状に形成される。空間部44は、
図4の二点鎖線で示すように、Zガイド28がZ軸方向の最下端に移動した場合に、Zガイド28の上端部に連結されるケーブルガイド34を収容するための収容スペースとなる。換言すれば、Xキャリッジ正面部42とZガイド背面部40との間の空間部44が存在することによって、ケーブルガイド34の制約を受けることなく、Zガイド28をZ軸方向の最下端まで移動させることが可能となる。
【0041】
次に、実施形態の三次元座標測定機1の効果について説明する。
【0042】
図5は、実施形態の三次元座標測定機1の効果を説明するための説明図である。
図5のVAは、実施形態の三次元座標測定機1のXガイド20及びその周辺部を含む部分の縦断面(YZ面)図である。
図5のVBは、比較例の三次元座標測定機100のXガイド101及びその周辺部を含む部分の縦断面(YZ面)図である。
【0043】
図5のVAに示すように、実施形態の三次元座標測定機1は、X軸方向から見た場合にXガイド20がZ軸方向に対して斜めに傾斜して構成される。そのため、Xキャリッジ24とZガイド28との間に形成された空間部44が、Zガイド28の上端部に連結されたケーブルガイド34の収容スペースとして機能すると共に、Zキャリッジ26側のエアパッド50、52は、Xガイド20及びXキャリッジ24の大きさの制限を受けることなく、Zキャリッジ26の所望の位置(上方側、下方側)にそれぞれ配置することが可能である。これにより、実施形態におけるZキャリッジ26は、後述する比較例に比べてZ軸方向の長さが短く構成されている。
【0044】
ここで、
図5のVAに示す実施形態において、Zガイド28のZ軸方向の移動可能範囲の長さを移動ストローク長SLとする。そして、Zガイド28が移動ストローク長SLの下限位置に移動した場合におけるZガイド28の下端部の位置(Z軸方向の高さ位置)を下限位置SBとする。また、Zガイド28が移動ストローク長SLの上限位置に移動した場合におけるZガイド28の下端部の位置(Z軸方向の高さ位置)を上限位置STとする。なお、下限位置SB、上限位置STは、それぞれ、Zガイド28の下端部に支持される測定プローブ30(不図示)の位置に実質的に相当する位置である。また、Zガイド28が移動ストローク長SLの上限位置に移動した場合におけるZガイド28の上端部の位置(Z軸方向の高さ)をZガイド28の最大高さ位置H1とする。
【0045】
一方、比較例の三次元座標測定機100は、
図5のVBに示すように、X軸方向から見た場合にXガイド101がZ軸方向に対して斜めに傾斜して構成されておらず、Xガイド101がZ軸方向に対して平行に構成されている。具体的には、Xガイド101の一辺(Zキャリッジ114側の辺)が、Z軸方向に沿って配置されたZキャリッジ114と平行に配置されており、Xガイド101とZキャリッジ114とが近接配置されている。そして、比較例におけるZキャリッジ114は、実施形態におけるZキャリッジ26よりも、Z軸方向の長さが長く構成されている。
【0046】
なお、比較例においてZキャリッジ114が長尺化される理由としては、Xガイド101とZキャリッジ114とが近接配置されるため、それらの間には実施形態のような空間部44が存在していない。そのため、Zキャリッジ114側のエアパッド110、112の配置スペースを確保するためには、Zキャリッジ114のZ軸方向の長さを長くする必要がある。すなわち、Xガイド101のZ軸方向の上方側にエアパッド110を配置し、Xガイド101のZ軸方向の下方側にエアパッド112を配置せざるをえないため、Zキャリッジ114のZ軸方向の長さが必然的に長くなる。
【0047】
このように構成される比較例において、Zガイド104の移動ストローク長SLを、実施形態におけるZガイド28のストローク長SLと同等なものとするためには(すなわち、実施形態と同様の測定範囲(上限位置SB及び下限位置ST)を実現するためには)、Zガイド104のZ軸方向の長さL2を、実施形態におけるZガイド28のZ軸方向の長さL1よりも長くする必要がある(L1<L2)。
【0048】
しかしながら、上記のように比較例を構成した場合、Zガイド104の長尺化により、Zガイド104が移動ストローク長SLの上限位置に移動した場合におけるZガイド104の上端部の位置(Z軸方向の高さ)であるZガイド104の最大高さ位置H2が、Zガイド28の最大高さ位置H1よりも高くなってしまう。その結果、比較例における三次元座標測定機100の機高が実施形態よりも高くなる。
【0049】
これに対し、実施形態では、X軸方向から見た場合にXガイド20がZ軸方向に対して斜めに傾斜して構成されるので、Xキャリッジ24とZガイド28との間に形成された空間部44が、Zガイド28の上端部に連結されたケーブルガイド34の収容スペースとして機能すると共に、Xガイド20及びXキャリッジ24の大きさの制限を受けることがないので、比較例に比べてZキャリッジ26の短尺化が実現されている。
【0050】
したがって、実施形態の三次元座標測定機1によれば、X軸方向から見た場合にXガイド20をZガイド28に対して斜めに傾斜して構成したことにより、Zガイド28の移動ストローク長(測定プローブ30のZ軸方向の移動ストローク長に相当)を確保しつつ、三次元座標測定機1の機高を低くすることができる。
【0051】
また、実施形態の三次元座標測定機1によれば、以下に説明する効果も得ることができる。
【0052】
図6は、実施形態の他の効果を説明するための説明図である。なお、
図6のVIA及びVIBは、それぞれ実施形態の構成を採用した場合のXガイド20側のエアパッド48(Xガイド20とXキャリッジ24との間のエアパッド48)の配置例を模式的に示した説明図である。また、
図6のVICは、上述した比較例(
図5のVB参照)の構成を採用した場合のXガイド101側のエアパッド48(Xガイド101とXキャリッジ102との間のエアパッド48)の配置例を模式的に示した説明図である。なお、
図6では、説明の便宜上、エアパッド48を破線でなく実線で示している。
【0053】
図6のVICで示す比較例では、Y軸方向においてXガイド101とZキャリッジ114(
図5のVB参照)とが近接配置されているため、Xガイド101側の複数のエアパッド48のうちZキャリッジ114側に配置されるエアパッド48をXガイド101とZキャリッジ114との間に配置することが困難である。
【0054】
そのため、比較例では、Zガイド104に対しX軸方向に離間した位置にエアパッド48を配置せざるをえず、エアパッド48の配置位置が制限されてしまうデメリットがある。
【0055】
また、比較例では、Xガイド101に対しXキャリッジ102を安定して支持する観点から、Xキャリッジ102の重心Gから等距離の位置にエアパッド48を4箇所に配置する必要がある。つまり、比較例では、Zガイド104を挟んで左右に2つずつエアパッド48を配置せざるをえない。このため、比較例では、Xキャリッジ102に対するZガイド104の配置位置が制限されてしまうデメリットがある。
【0056】
これに対し、
図6のVIAで示す実施形態では、Y軸方向においてXキャリッジ24とZガイド28との間に空間部44(
図4参照)が形成されているので、Xガイド20側の複数のエアパッド48のうちZキャリッジ26側に配置されるエアパッド48をXガイド20とZガイド28との間に配置することが可能となる。
【0057】
これにより、実施形態では、配置位置に制限されることなくエアパッド48を配置することが可能となる。また、エアパッド48をXガイド20とZガイド28との間に配置することにより、重心Gから等距離に配置された3つのエアパッド48によってXキャリッジ24を安定して支持することが可能となる。これにより、エアパッド48の個数を4個から3個に削減することができる。また、3つのエアパッド48でXキャリッジ24を支持(3点支持)することにより、Xキャリッジ24を面支持することが可能となるので、Xキャリッジ24を安定して支持することができる。
【0058】
また、
図6のVIBで示す実施形態の如く、Xガイド20側の複数のエアパッド48のうちZキャリッジ26側に配置されるエアパッド48をXガイド20とZガイド28との間に配置することにより、Xキャリッジ24とZガイド28とをX軸方向に相対的にずらして配置することも可能となる。
【0059】
これにより、Xキャリッジ102に対するZガイド104の配置位置が制限される比較例(
図6のVIC参照)と比較して、配置位置に制限を受けることなくZガイド28をXキャリッジ24に対して配置することが可能となる。
【0060】
なお、
図6のVIA及びVIBでは、エアパッド48の全体をXガイド20とZガイド28との間に配置する例について説明したが、これに限定されるものではなく、エアパッド48の少なくとも一部が配置されていればよい。
【0061】
実施形態の如く、Xガイド24を傾けることにより空間部44を形成したので、Zキャリッジ26のZ軸方向の長さ(エアパッド50とエアパッド52とのZ軸方向の間隔に相当)を比較例よりも短くしても作業性がよくなる。また、上記の例では、Zガイド28の背面側に配置される、Xガイド20に関する部品としてエアパッド48を例示したが、エアパッド48に限定されるものではなく、エアパッド48以外の部品であってもよい。このような部品であっても、比較例の場合、Zガイド104を基準としてX軸方向に振り分けていたが、実施形態では、Zガイド28の位置を気にすることなく、Xガイド20の部品を振り分けることができる。これにより、Xキャリッジ24の位置を任意に動かすことができるようになる。
【0062】
また、実施形態では、Xキャリッジ24とZガイド28とを連結する可撓性部材として、ケーブルを収容したケーブルガイド34を適用した例を説明したが、ケーブルガイド34に限定されるものではない。すなわち、Xキャリッジ24とZガイド28とを連結し、且つZガイド28の移動に伴って湾曲する部材であれば適用可能である。
【0063】
以上、本発明に係る三次元座標測定機の一例について説明したが、本発明の技術は実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、いくつかの改良又は変形を行ってもよい。
【符号の説明】
【0064】
1…三次元座標測定機、10…定盤、10T…上面、12…架台、14…Yキャリッジ、16…右Yキャリッジ、18…左Yキャリッジ、20…Xガイド、22…Zコラム、24…Xキャリッジ、26…Zキャリッジ、27…Zキャリッジ上端部、28…Zガイド、30…測定プローブ、32…スタイラス、34…ケーブルガイド、34A…一端側、34B…他端側、36…接続金具、40…Zガイド背面部、42…Xキャリッジ正面部、42A…下辺部、42B…上辺部、44…空間部、48…エアパッド、50…エアパッド、52…エアパッド、100…三次元座標測定機、101…Xガイド、102…Xキャリッジ、104…Zガイド、110…エアパッド、112…エアパッド、114…Zキャリッジ、H1…Zガイドの高さ、H2…Zガイドの高さ、L1…Zガイドの長さ、L2…Zガイドの長さ