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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129891
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】三次元座標測定機
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/00 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
G01B5/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039262
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】高梨 陵
【テーマコード(参考)】
2F062
【Fターム(参考)】
2F062AA04
2F062AA51
2F062CC26
2F062EE01
2F062FF02
2F062MM02
2F062MM09
(57)【要約】
【課題】定盤上の測定範囲を確保しつつ定盤の小型化を図ることができる三次元座標測定機を提供する。
【解決手段】定盤10は、定盤10には、右Yキャリッジ16の側の定盤10の下面10Bに定盤10の前後方向に延びた溝40により形成されるYガイド42が設けられ、右Yキャリッジ16は、定盤10の上面10Tに対向して配置される基部52と、定盤10の下面10B側からYガイド42を挟み込むように対向する一対の右側部54及び左側部56とを有する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下面と側面を有し、測定対象物を載置する定盤と、
測定プローブを支持し、前記定盤を跨いで前記定盤の前後方向に移動自在な門型のYキャリッジであって、二つの支柱部材により前記定盤に支持されるYキャリッジと、
前記二つの支柱部材は、前記Yキャリッジを前後方向に駆動する駆動機構をもつ第1支柱部材と、前記第1支柱部材に追従移動する第2支柱部材とを有し、
前記定盤には、前記第1支柱部材の側の前記定盤の下面に前記定盤の前後方向に延びたYガイドが設けられ、
前記第1支柱部材は、前記定盤の上面に対向して配置される基部と、前記定盤の下面側から前記Yガイドを挟み込むように対向する一対の側部とを有する、
三次元座標測定機。
【請求項2】
前記Yガイドは、前記定盤の下面に垂直な右側面と左側面とを有し、
前記基部は、前記定盤の上面に第1エアパッドを介して摺動自在に配置され、
前記一対の側部は、前記Yガイドの前記右側面に第2エアパッドを介して摺動自在に配置される右側部と、前記Yガイドの前記左側面に第3エアパッドを介して摺動自在に配置される左側部とを有し、
前記第2支柱部材は、前記定盤の上面に第4エアパッドを介して摺動自在に配置される、
請求項1に記載の三次元座標測定機。
【請求項3】
前記Yガイドは、前記定盤の下面に前記定盤の前後方向に沿って形成された凹状の溝により形成される、
請求項1又は2に記載の三次元座標測定機。
【請求項4】
前記Yガイドは、前記定盤の下面に前記定盤の前後方向に沿って形成された凸状の突条部により形成される、
請求項1又は2に記載の三次元座標測定機。
【請求項5】
前記第1支柱部材は、前記第1支柱部材の右側方から前記第1支柱部材を見た場合、前記測定プローブを直視可能とする貫通孔を有する、
請求項1又は2に記載の三次元座標測定機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元座標測定機に係り、特にX、Y、Z軸の3軸方向に測定プローブを移動させて測定対象物の三次元形状を測定する三次元座標測定機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された三次元座標測定機は、測定対象物が載置される定盤を有し、定盤の上部には前後方向(Y軸方向)に移動自在のYキャリッジが配置される。Yキャリッジは、定盤を正面側から見たときの定盤の右側及び左側の各々に上下方向(Z軸方向)に沿って立設される2本の支柱部材(以下、右Yキャリッジ、左Yキャリッジとも言う。)と、右Yキャリッジと左Yキャリッジの各々の上端部に架け渡されて左右方向(X軸方向)に沿って延在する柱状のXガイドと、を有している。
【0003】
Xガイドには、X軸方向に移動自在のXキャリッジが配置され、Xキャリッジには、Z軸方向に移動自在のZガイドが配置される。また、Zガイドの下端には測定対象物の位置を検知する測定プローブが取り付けられ、更に、測定プローブの先端には接触子を備えたスタイラスが取り付けられる。測定プローブは測定対象物に接触子が接触したときに電気信号を発生し、そのときのX位置、Y位置、Z位置をデータ処理装置が取り込むことにより測定対象物の三次元形状を測定する。
【0004】
また、特許文献1の三次元座標測定機は、右Yキャリッジと左Yキャリッジの各々の下端部と定盤の上面との間に、Yキャリッジの重量を支えるためのエアパッドが配置されている。また、定盤は、右Yキャリッジの側で、定盤の上面に垂直な右側面と左側面とを有するYガイドであって、Y軸方向に延びるYガイドを有している。
【0005】
右Yキャリッジは、Yガイドを左右から挟み込む右側面支持部材と左側面支持部材とを有しており、右側面支持部とYガイドの右側面(定盤の右側面)との間、及び左側面支持部とYガイドの左側面との間には、Yキャリッジの横振れを抑制するためのエアパッドがそれぞれ配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-105660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、三次元座標測定機においては、三次元座標測定機のコンパクト化が望まれている。三次元座標測定機をコンパクト化するための1つ案として、定盤を小型化することが考えられる。しかしながら、この場合、測定対象物を測定するために必要とされる定盤上の測定範囲が小さくなるため、三次元座標測定機において測定可能な測定対象物の大きさが制限されてしまうデメリットがある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、定盤上の測定範囲を確保しつつ定盤の小型化を図ることができる三次元座標測定機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の三次元座標測定機は、本発明の目的を達成するために、上下面と側面を有し、測定対象物を載置する定盤と、測定プローブを支持し、定盤を跨いで定盤の前後方向に移動自在な門型のYキャリッジであって、二つの支柱部材により定盤に支持されるYキャリッジと、二つの支柱部材は、Yキャリッジを前後方向に駆動する駆動機構をもつ第1支柱部材と、第1支柱部材に追従移動する第2支柱部材とを有し、定盤には、第1支柱部材の側の定盤の下面に定盤の前後方向に延びたYガイドが設けられ、第1支柱部材は、定盤の上面に対向して配置される基部と、定盤の下面側からYガイドを挟み込むように対向する一対の側部とを有する。
【0010】
本発明の一形態は、Yガイドは、定盤の下面に垂直な右側面と左側面とを有し、基部は、定盤の上面に第1エアパッドを介して摺動自在に配置され、一対の側部は、Yガイドの右側面に第2エアパッドを介して摺動自在に配置される右側部と、Yガイドの左側面に第3エアパッドを介して摺動自在に配置される左側部とを有し、第2支柱部材は、定盤の上面に第4エアパッドを介して摺動自在に配置されることが好ましい。
【0011】
本発明の一形態は、Yガイドは、定盤の下面に定盤の前後方向に沿って形成された凹状の溝により形成されることが好ましい。
【0012】
本発明の一形態は、Yガイドは、定盤の下面に定盤の前後方向に沿って形成された凸状の突条部により形成されることが好ましい。
【0013】
本発明の一形態は、第1支柱部材は、第1支柱部材の右側方から第1支柱部材を見た場合、測定プローブを直視可能とする貫通孔を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、定盤上の測定範囲を確保しつつ定盤の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態の三次元座標測定機の外観を示した斜視図である。
図2図1に示した三次元座標測定機の正面図である。
図3】定盤の右側部を拡大して示した正面図である。
図4】定盤の右側部を拡大して示した右側面図である。
図5】カバーを外した状態のYキャリッジを示した斜視図である。
図6】定盤の下面を示した下面図であり、Yキャリッジに設けられたエアパッドの定盤に対する配置位置を示した図である。
図7】定盤の右側面を示した右側面図であり、Yキャリッジに設けられたエアパッドの定盤に対する配置位置を示した図である。
図8】本例の定盤と従来の定盤のX軸方向の長さを示した説明図である。
図9】測定プローブを目視可能とする孔を有する右Yキャリッジの側面図である。
図10】定盤の他の形態を示した定盤の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面に従って本発明に係る三次元座標測定機の実施形態について説明する。
【0017】
図1及び図2は、実施形態に係る三次元座標測定機1の外観を示した斜視図及び正面図である。なお、以下の説明では、互いに直交するX、Y、Z軸の三次元直交座標系を用いて説明する。
【0018】
図1及び図2に示す三次元座標測定機1は、設置面(床面)に架台12を介して支持された定盤10を有する。定盤10は、一例として花崗岩(granite、御影石)又は大理石(marble、石灰岩、結晶質石灰岩)等の石材により平面視で矩形状に構成され、測定対象物を載置する平坦な上面10Tを有する。上面10Tは、X軸及びY軸に平行に、すなわち、Z軸に垂直に配置される。なお、定盤10は、本発明の定盤の一例である。
【0019】
定盤10の上面10T側には、定盤10を跨いで門型のYキャリッジ14が設置される。Yキャリッジ14は、定盤10を正面側から見たときの定盤10の右側及び左側の各々にZ軸方向(上下方向)に沿って延在して立設される右Yキャリッジ16及び左Yキャリッジ18と、右Yキャリッジ16及び左Yキャリッジ18の各々の上端部に架け渡されてX軸方向(左右方向)に沿って延在する柱状のXガイド20とを有する。
【0020】
右Yキャリッジ16は、定盤10にY軸方向(前後方向)に沿って設けられた後述のYガイド42をガイドとしてY軸方向に移動自在に配置される。また、右Yキャリッジ16は、Yガイド42に当接する後述の駆動部を有し、右Yキャリッジ16はその駆動部の駆動力によってYガイド42に沿ってY軸方向に移動される。左Yキャリッジ18は、定盤10の上面10Tに沿ってY軸方向に移動自在に配置される。
【0021】
このような構成により、Yキャリッジ14は、右Yキャリッジ16の駆動部により、右Yキャリッジ16を駆動側とし、左Yキャリッジ18を従動側としてY軸方向に移動される。なお、Yキャリッジ14は、本発明のYキャリッジの一例である。また、右Yキャリッジ16及び左Yキャリッジ18は、それぞれ本発明の第1支柱部材及び第2支柱部材の一例である。
【0022】
Xガイド20には、Zコラム23がX軸方向に移動自在に設けられる。Zコラム23の内部にはXキャリッジ22(図5参照)が設けられ、Xキャリッジ22はXガイド20をガイドとしてX軸方向に移動自在に配置される。Xキャリッジ22は、Xガイド20に当接する駆動部(不図示)を有し、Xキャリッジ22はその駆動部の駆動力によってXガイド20に沿ってX軸方向に移動される。
【0023】
また、Xキャリッジ22には、Zキャリッジ25(図5参照)が連結されている。Zキャリッジ25には、Z軸に沿って延在する柱状のZガイド24が設けられる。Zキャリッジ25は、Zガイド24に当接する駆動部(不図示)を有し、Zガイド24はその駆動部の駆動力によってZ軸方向に移動される(図2参照)。Zガイド24は、Zコラム23の内部に収容され、Zガイド24の下端部側がZコラム23の下端部側から突出されている。
【0024】
Zガイド24の下端部には、タッチプローブ等の測定プローブ26が取り付けられる。測定プローブ26は、例えば、先端球を有する棒状のスタイラス28を有する。測定プローブ26は、スタイラス28の先端(先端球)の測定対象物への接触の有無やスタイラス28の先端の測定対象物への接触により生じるスタイラス28の変位量を検出する。
【0025】
以上の如く構成された三次元座標測定機1は、Yキャリッジ14のY軸方向への移動、Xキャリッジ22のX軸方向への移動、及び、Zガイド24のZ軸方向への移動によって測定プローブ26のスタイラス28をX、Y、Z軸方向に移動させ、定盤10の上面10Tに載置された測定対象物の表面に沿わせてスタイラス28の先端(先端球)を移動させる。そして、そのときのYキャリッジ14のY軸方向の位置(移動量)、Xキャリッジ22のX軸方向の位置(移動量)、Zガイド24のZ軸方向の位置(移動量)、及びスタイラス28の位置(変位量)を計測することにより、測定対象物の表面の各位置の三次元座標を測定する。なお、三次元座標の測定に関する処理については周知であるので詳細な説明は省略する。
【0026】
次に、Yキャリッジ14をY軸方向に移動可能に支持すると共にY軸方向に移動させるY駆動機構について説明する。
【0027】
まず、Y駆動機構におけるYキャリッジ14の支持手段の一例について説明する。
【0028】
図3及び図4は、定盤10の右側部を拡大して示した正面図及び右側面図である。なお、図3では、定盤10の左側部も示されている。
【0029】
図3に示すように、定盤10は、Z軸に垂直な上面10T及び下面10Bと、X軸に垂直な右側面10Rとを有する。また、定盤10には、Yガイド42が設けられている。Yガイド42は、右Yキャリッジ16側の定盤10の下面10BにY軸方向に延びる凹状の溝40により形成される。
【0030】
本例のYガイド42は、定盤10の下面10Bに溝40を形成することにより下方に向けて凸となる形状を有している。このYガイド42によれば、定盤10の右側面10RがYガイド42の右側面42Rとして形成され、溝40の右側面40RがYガイド42の左側面42Lとして形成される。右側面42R及び左側面42Lは、定盤10の下面10Bに対して垂直に形成される。また、右側面42Rと左側面42Lとの間の定盤10の下面10BがYガイド42の下面42Bとして形成される。なお、Yガイド42は、本発明のYガイドの一例であり、Yガイド42の右側面42R及び左側面42Lは、それぞれ本発明のYガイドの右側面及び左側面の一例である。
【0031】
図5には、各部のカバーを取り外した状態のYキャリッジ14の斜視図が示されている。図3乃至図5に示すように、右Yキャリッジ16の下端部には、Y軸方向に幅広の支持部50が設けられる。なお、図3乃至図5では支持部50を覆う被覆部材を取り外した状態が示されている。
【0032】
図3に示すように、支持部50は、基部52、右側部54、水平部55及び左側部56を有する。基部52は、定盤10の上面10Tに対向し、Z軸に直交する方向(水平方向)に沿って配置される。右側部54は、基部52の右端からZ軸に沿って下方向に延設されてYガイド42の右側面42Rに対向する側に配置される。水平部55は、右側部54の下端からX軸に沿って左方向に延設されてYガイド42の下面42Bに対向する側に配置される。左側部56は、水平部55の左端からZ軸に沿って上方向に延設されてYガイド42の左側面42Lに対向する側に配置される。すなわち、右側部54と左側部56とは、定盤10の下面10B側からYガイド42を左右から挟み込むように対向して配置される。なお、右側部54及び左側部56は、それぞれ本発明の一対の側部であって右側部及び左側部の一例である。
【0033】
支持部50を構成する基部52、右側部54及び左側部56の各々には、次に示すように、空気を噴出することで右Yキャリッジ16をYガイド42に沿って移動(摺動)可能とする複数の円板状のエアパッドが設けられる。また、左Yキャリッジ18の下端部にも空気を噴出することで左Yキャリッジ18を定盤10の上面10Tに沿って移動(摺動)可能とする円板状のエアパッドが設けられる。
【0034】
図6及び図7は、定盤10の下面10B及び右側面10Rを示した下面図及び右側面図であり、Yキャリッジ14に設けられたエアパッドの定盤10に対する配置位置が示されている。
【0035】
これらの図において、定盤10の上面10Tには、上面10Tに沿って配置された2つのエアパッド62F、62Eを有する。これらのエアパッド62F、62Eは、支持部50(図3参照)の基部52においてY軸方向に沿った2箇所(Y軸に平行な直線上の2箇所)の位置に設けられる。また、エアパッド62F、62Eは、定盤10の上面10Tに対向して下向きに配置される。よって、基部52は、エアパッド62F、62Eを介して定盤10の上面10Tに摺動自在に配置される。なお、エアパッド62F、62Eは、本発明の第1エアパッドの一例である。
【0036】
Yガイド42の右側面42R(定盤10の右側面10R)には、右側面42Rに沿って配置された2つのエアパッド64F、64Eを有する。これらのエアパッド64F、64Eは、支持部50(図3参照)の右側部54においてY軸方向に沿った2箇所(Y軸に平行な直線上の2箇所)の位置に設けられる。また、エアパッド64F、64Eは、Yガイド42の右側面42Rに対向して左向きに配置される。よって、右側部54は、エアパッド64F、64Eを介してYガイド42の右側面42Rに摺動自在に配置される。なお、エアパッド64F、64Eは、本発明の第2エアパッドの一例である。
【0037】
Yガイド42の左側面42L(溝40の右側面40R)には、左側面42Lに沿って配置された2つのエアパッド66F、66Eを有する。これらのエアパッド66F、66Eは、支持部50(図3参照)の左側部56においてY軸方向に沿った2箇所(Y軸に平行な直線上の2箇所)の位置に設けられる。また、エアパッド66F、66Eは、Yガイド42の左側面42Lに対向して右向きに配置される。よって、左側部56は、エアパッド66F、66Eを介してYガイド42の左側面42Lに摺動自在に配置される。なお、エアパッド66F、66Eは、本発明の第3エアパッドの一例である。
【0038】
定盤10の左側面の近くの上面に配置されたエアパッド70は、左Yキャリッジ18(図3参照)の下端部に設けられる。エアパッド70は、定盤10の上面10Tに対向して下向きに配置される。よって、左Yキャリッジ18は、エアパッド70を介して定盤10の上面10Tに摺動自在に配置される。なお、エアパッド70は、本発明の第4エアパッドの一例である。
【0039】
ここで、支持部50の基部52、右側部54及び左側部56の各々において、定盤10の前側(正面側)に設置されるエアパッド62F、64F、66Fは、Y軸方向に関して略同一位置(すなわち、同一のXZ平面に沿った位置)に配置される。また、定盤10の後側(背面側)に配置されるエアパッド62E、64E、66Eにおいても、Y軸方向に関して略同一位置に配置される。
【0040】
支持部50の右側部54に設置されるエアパッド64F、64Eと左側部56に設置されるエアパッド66F、66Eとは、X軸方向に関して互いに対向する位置(すなわち、Z軸方向に関して略同一位置)に配置される。
【0041】
左Yキャリッジ18の下端部に設置されるエアパッド70は、そのY軸方向に関する位置が、Yキャリッジ14と共にY軸方向に移動する全ての部材(Yキャリッジ14及びZコラム23)の重心のY軸方向の位置と略一致する位置に配置される。
【0042】
また、エアパッド62F、62E、70が例えば直径110mmのものであるのに対して、エアパッド64F、64E、66F、66Eは、エアパッド62F、62E、70よりも直径が小さい例えば直径80mmのものが用いられる。
【0043】
なお、参考として、定盤10は、X軸方向の長さ(横幅)が約800mm~約1000mm、Y軸方向の長さ(奥行き)が約1200mm~約2700mmのものが用いられる。Yキャリッジ14は、Z軸方向の高さとして約600mm~約800mmである。支持部50は、Y軸方向の長さ(奥行き)が約700mmである。
【0044】
以上の如く構成されたYキャリッジ14の支持手段によれば、エアパッド62F、62E、64F、64E、66F、66E、70によってYキャリッジ14を定盤10に対しY軸方向に移動自在に支持することができる。
【0045】
また、各エアパッド62F、62E、64F、64E、66F、66E、70から空気を噴出することで、Yキャリッジ14を定盤10に対しY軸方向に移動可能な状態にすることができる。
【0046】
続いて、Y駆動機構におけるYキャリッジ14の駆動手段の一例について説明する。
【0047】
図4のように支持部50の右側部54には、駆動部80が設けられる。図6及び図7にも示されているように駆動部80は、支持部50の右側部54に設けられる2つのエアパッド64F、64Eの間の略中間位置に配置される。
【0048】
駆動部80は、モータ82と、回転自在のローラ84と、それらを動力伝達可能に連結する減速機構とが支持部材に組み付けられて一体的に構成される。モータ82を駆動すると減速機構を介してローラ84が回転する。
【0049】
駆動部80は、図6に示すようにローラ84の回転軸がZ軸と平行に配置される。また、ローラ84は、2つのエアパッド64F、64Eの間の略中間位置に配置され、ローラ84の外周面がYガイド42の右側面42R(定盤10の右側面10R)に当接される。
【0050】
上記の如く構成されたYキャリッジ14の駆動手段によれば、駆動部80のモータ82を駆動してローラ84を回転させることで、Yキャリッジ14をYガイド42に沿ってY軸方向に移動させることができる。
【0051】
なお、三次元座標測定機1において、Xキャリッジ22をX軸方向に移動可能に支持すると共にX軸方向に移動させるX駆動機構、X駆動機構におけるXキャリッジ22の駆動手段、Zガイド24をZ軸方向に移動可能に支持すると共にZ軸方向に移動させるZ駆動機構、及びZ駆動機構におけるZガイド24の駆動手段等については、公知であるのでその説明は省略する。
【0052】
次に、定盤10の小型化について比較例の定盤と比較して説明する。
【0053】
図8のVIIIA及びVIIIBは、実施形態の三次元座標測定機1の定盤10、及び比較例の三次元座標測定機100の定盤102をそれぞれ正面から見た場合の模式図である。また、図8には、定盤10及び定盤102のX軸方向の長さ(横幅)がそれぞれL1及びL2(L1<L2)として示されている。
【0054】
比較例の定盤102は、Yガイド106を形成するための溝105が定盤102の上面102Tに形成された構成が採用されている。Yガイド106は、右Yキャリッジ104の側で、定盤102の上面102Tに対して垂直な右側面106Rと左側面106Lとを有している。
【0055】
右Yキャリッジ104の支持部108は、基部110と、Yガイド106を左右から挟み込む右側部112及び左側部114とを有している。右側部112とYガイド106の右側面106Rとの間、及び左側部114とYガイド106の左側面106Lとの間には、Yキャリッジ116の横振れを抑制するためのエアパッド118、120がそれぞれ配置されている。
【0056】
また、基部110と定盤102の上面102Tとの間、及び左Yキャリッジ122と定盤102の上面102Tとの間には、Yキャリッジ116の重量を支えるためのエアパッド124、126がそれぞれ配置されている。
【0057】
ここで、三次元座標測定機においては、測定対象物を測定するために必要とされる定盤上の測定範囲を確保することが要求される。定盤上の測定範囲を確保するための1つの要素であるX軸方向の長さ(X軸方向における右Yキャリッジ104と左Yキャリッジ122との間の長さ)をL3とした場合、比較例の定盤102は、長さL3に対し、支持部108(基部110、右側部112及び左側部114)に要するX軸方向の長さL4と、左Yキャリッジ122のX軸方向の長さL5とを加えた長さL2(=L3+L4+L5)が必要となる。
【0058】
更に詳しく説明すると、比較例では、定盤102の上面102TにY軸方向に延びる溝105が形成され、溝105により形成されるYガイド106は上側に向かって凸となる形状を有している。そのため、右Yキャリッジ104の支持部108は、定盤102の上側からYガイド106を挟み込むように配置する必要がある。ここで、仮に、定盤102のX軸方向の長さをL2よりも短いL1とした場合、定盤102上の測定範囲を示すX軸方向の長さL3は、支持部108の左側部114の分(X軸方向の長さL6)だけ短くなってしまう。よって、比較例の定盤102は、上記の長さL3を確保するべく、定盤102のX軸方向の長さをL1よりも長いL2(=L1+L6)に設定する必要がある。
【0059】
これに対し、実施形態では、定盤10は、右Yキャリッジ16の側の定盤10の下面10BにY軸方向に延びる溝40が形成され、溝40により形成されるYガイド42は下側に向かって凸となる形状を有している。そして、右Yキャリッジ16の支持部50は、定盤10の下面10B側からYガイド42を挟み込むように配置される。このため、右Yキャリッジ16の支持部50の左側部56は、定盤10の上面10T側ではなく下面102B側に配置されることから、比較例の定盤102のように支持部108の左側部114を配置するためのスペース(X軸方向の長さL6)を定盤10の上面10T側に設けることが不要となる。
【0060】
これにより、本例の定盤10は、長さL3を確保しつつ、左側部114のX軸方向の長さL6分だけ、X軸方向の長さをL2からL1(=L2-L6)に短縮することができる。
【0061】
したがって、実施形態の三次元座標測定機1によれば、定盤上の測定範囲を確保しつつ定盤10の小型化を図ることができる。
【0062】
また、実施形態の三次元座標測定機1によれば、Yガイド42を形成するための溝40を定盤10の下面10Bに形成した構成を採用したので、溝40を覆う蛇腹カバーであって右Yキャリッジ16の移動に連動して伸縮動作する蛇腹カバーが不要になる。これにより、三次元座標測定機1のコストダウンを図ることができる。また、蛇腹カバーによる動作負荷を削減することができる。
【0063】
ところで、本例の右Yキャリッジ16は、上述した構成を採用したことに伴い、右Yキャリッジ16の強度を確保すべく、比較例における右Yキャリッジ104(図8のVIIIB参照)と比較してY軸方向の長さが長めに構成されている。
【0064】
このため、本例の右Yキャリッジ16では、オペレータが、右Yキャリッジ16の右側方から測定プローブ26を目視して測定プローブ26と測定対象物との相対位置を確認しようとした場合、Y軸方向に幅広となった右Yキャリッジ16に邪魔されて測定プローブ26が目視不能になる場合がある。
【0065】
そこで、本例の右Yキャリッジ16は、図9の如く、右Yキャリッジ16を右Yキャリッジ16の右側方から見た場合、測定プローブ26を直視可能とする貫通孔17を有している。
【0066】
これにより、右Yキャリッジ16の右側方から測定プローブ26を目視して測定プローブ26と測定対象物との相対位置を確認することが可能となる。また、貫通孔17は、図9の如く、Z軸方向に沿って複数個所(本例では3箇所)設けることが好ましい。これにより、測定プローブ26のZ軸方向の位置(高さ位置)に関係なく測定プローブ26を目視することができる。
【0067】
次に、本発明の三次元座標測定機に採用される定盤の他の形態について説明する。なお、図1から図7に示した三次元座標測定機1と同一若しくは類似の部材については同一の符号を付して説明する。
【0068】
実施形態の三次元座標測定機1に採用された定盤10は、定盤10の下面10BにY軸方向に延びる溝40を形成することによりYガイド42を形成したものであるのに対し、他の形態の定盤は以下の構成を有している。
【0069】
すなわち、図10に示す他の形態の定盤130は、定盤130の下面130BにY軸方向に延びる凸状の突条部132によりYガイド134を形成している。Yガイド134は、定盤130の下面130Bに対して垂直な右側面134R及び左側面134Lと、右側面134Rと左側面134Lとの間の下面134Bとを有している。
【0070】
右Yキャリッジ16は、支持部50の基部52が定盤130の上面130Tにエアパッド62F(62E)を介して摺動自在に配置される。また、支持部50の右側部54は、Yガイド134の右側面134Rにエアパッド64F(64E)を介して摺動自在に配置される。支持部50の左側部56は、Yガイド134の左側面134Lにエアパッド66F(66E)を介して摺動自在に配置される。左Yキャリッジ18は、定盤130の上面130Tにエアパッド70を介して摺動自在に配置される。
【0071】
本例の定盤130は、定盤130の下面130BにY軸方向に延びる突条部132が形成され、突条部132によって形成されるYガイド134は下側に向かって凸となる形状を有している。そして、右Yキャリッジ16の支持部50は、定盤130の下面130B側からYガイド42を左右から挟み込むように配置される。
【0072】
これにより、本例の定盤130においても、定盤10と同様に、支持部108(図8のVIIIB参照)の左側部114を配置するためのスペース(X軸方向の長さL6)を定盤130の上面130T側に設けることが不要となるので、定盤上の測定範囲を確保しつつ定盤130の小型化を図ることができる。
【0073】
なお、実施形態では、駆動部80の配置位置について、右Yキャリッジ16の支持部50の右側部54側に配置した例(図4参照)を説明したが、これに限定されるものではなく、支持部50の左側部56側に駆動部80を配置してもよい。
【0074】
以上、本発明に係る三次元座標測定機の一例について説明したが、本発明の技術は実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、いくつかの改良又は変形を行ってもよい。
【符号の説明】
【0075】
1…三次元座標測定機、10…定盤、10B…下面、10R…右側面、10T…下面、12…架台、14…Yキャリッジ、16…右Yキャリッジ、17…貫通孔、18…左Yキャリッジ、20…Xガイド、22…Xキャリッジ、23…Zコラム、24…Zガイド、25…Zキャリッジ、26…測定プローブ、28…スタイラス、40…溝、40R…右側面、42…Yガイド、42B…下面、42L…左側面、42R…右側面、50…支持部、52…基部、54…右側部、55…水平部、56…左側部、62E…エアパッド、62F…エアパッド、64E…エアパッド、64F…エアパッド、66E…エアパッド、66F…エアパッド、70…エアパッド、80…駆動部、82…モータ、84…ローラ、100…三次元座標測定機、102…定盤、102T…上面、104…右Yキャリッジ、105…溝、106…Yガイド、106L…左側面、106R…右側面、108…支持部、110…基部、112…右側部、114…左側部、116…Yキャリッジ、118…エアパッド、120…エアパッド、122…左Yキャリッジ、124…エアパッド、126…エアパッド、130…定盤、130B…下面、130T…上面、132…突条部、134…Yガイド、134B…下面、134L…左側面、134R…右側面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10