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  • 特開-加熱用タンクのジャケット構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129906
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】加熱用タンクのジャケット構造
(51)【国際特許分類】
   B65D 88/74 20060101AFI20240920BHJP
   F28B 9/08 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B65D88/74
F28B9/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039285
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134979
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 博
(74)【代理人】
【識別番号】100167427
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】杉野 湧斗
【テーマコード(参考)】
3E170
【Fターム(参考)】
3E170AA02
3E170AB01
3E170EB02
3E170VA04
(57)【要約】
【課題】ジャケット内のドレンの発生を防止できる加熱用タンクのジャケット構造を提供する。
【解決手段】被加熱物を収容するタンク本体2の周囲に設けられた、蒸気が供給される蒸気供給空間10hを有する加熱用タンク1のジャケットの構造であって、先端部20aに開口20dが形成された蒸気供給空間10h内から蒸気を排出するノズル20を有しており、ノズル20は、開口20dがジャケット10の底部10bを向いた状態となるように、先端部20aがジャケット10の底部10bに向けて曲がっている。ジャケット10の底部10b付近まで到達して上昇する蒸気を効果的にノズル20を通して排出できるので、ジャケット10の底部10b近傍にドレンDが発生することを効果的に防止することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物を収容するタンク本体の周囲に設けられた、蒸気が供給される蒸気供給空間を有する加熱用タンクのジャケットの構造であって、
先端に開口が形成された前記蒸気供給空間内から蒸気を排出するノズルを有しており、
該ノズルは、
前記開口が前記ジャケットの底部を向いた状態となるように、先端が前記ジャケットの底部に向けて曲がっている
ことを特徴とする加熱用タンクのジャケット構造
【請求項2】
前記ノズルは、
その先端開口から前記ジャケットの底部までの距離が5~10mmとなるように配設されている
ことを特徴とする請求項1記載の加熱用タンクのジャケット構造
【請求項3】
前記ノズルは、
その先端の曲がっている部分が弧状になっており、該曲がっている部分の圧力損失係数が0.13~0.71となるように形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の加熱用タンクのジャケット構造

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱用タンクのジャケット構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスや粉体材料精製などに使用されるプロセス液(以下単にプロセス液という)は、精錬プロセスの過程において、一時的に中継タンクに保管される場合がある。かかる中継タンクに保管されている状態において、温度が低下するとプロセス液は液体の状態を維持できずプロセス液の一部が固化して固形分が生成される可能性がある。かかる固形分の存在は、プロセス液の搬送を適切に行えなくなるだけでなく、次工程における反応を適切に行えなくなる可能性がある。したがって、中継タンクでは、プロセス液を液体の状態に維持するためにプロセス液を加熱する機構を有している。
【0003】
上述したように、中継タンク内部に収容されている物質(以下被加熱物という場合がある)を加熱する機構を有するタンクでは、タンクの周囲にジャケットが設置されている。このジャケット内に蒸気を入れることでタンクを加温することによって、タンク内部の物質に熱を加えることが行われている(特許文献1,2参照)。例えば、図2に示すように、ジャケット110におけるタンク100の上部近傍に蒸気の供給部111が設けられており、ジャケット110におけるタンク100の下部近傍に蒸気を排出する排出部112が設けられている場合には、以下のように蒸気はジャケット110内を流れる。まず、ジャケット110の上部の供給部111からジャケット110の空間110h内に蒸気が供給されると、ジャケット110内に供給された蒸気はジャケット110全体に行き渡りながらジャケット110の底部110bに向かって移動する。ジャケット110の底部110bまで移動した蒸気は、ジャケット110の下部に設けられたノズル120から排出される。したがって、適切な温度の蒸気を供給部111から供給しノズル120から排出するようにすれば、タンク100内の収容物をジャケット110に供給される蒸気によって所定の温度に加熱することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-096393
【特許文献2】特開2019-170850
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ジャケット110に供給された蒸気は、ジャケット110の内部を底部110bまで移動する間にタンク100に熱を供給することによって冷却されるので、ドレンDが発生する場合がある。かかるドレンDが発生すると、タンク110の側面においてドレンDと接触した箇所は冷却される。すると、タンク110の側面の冷却された箇所にプロセス液が固着したりプロセス液の固着による詰まりが発生する可能性がある。
【0006】
とくに、図2に示すようにノズル120を設けた場合には、蒸気は、一旦ジャケット110の底部110b付近まで到達した後上昇してノズル120から排出される。しかし、ジャケット110の底部110b付近まで到達して上昇する蒸気は、上方から絶えず流れ込んでくる蒸気とぶつかり、その圧力で底部110b付近にまで押し戻されそのまま滞留する状態となる。すると、ノズル120の開口120dとジャケット110の底部110bとの間にドレンDが発生しやすくなる。また、ジャケット110においてノズル120よりも下方に溜まったドレンDはノズル120から排出できないので、このドレンDを排出する場合には、一旦操業を止めてドレンDを排出する作業を行う必要があり、タンク110を備えた設備の操業効率が低下するし、ドレンDを排出する作業の負担が大きくなる。
【0007】
図3に示すように、ジャケット110の底部110bに開口hを設けて、この開口hにノズル120を接続して排出部112とすれば、ドレンDの発生を抑制でき、ドレンDが発生しても発生したドレンDを効果的に排出できる可能性はある。
【0008】
しかし、タンクが上下に分割された上部タンクと下部タンクから形成されているような場合には(図1参照)、上部タンクと下部タンクとがフランジによって連結されるため、上部タンクに設けられたジャケットでは、図3に示すような排出部を設けることは困難である。
【0009】
また、ジャケットを設けたタンクが第2種圧力容器(内容積が0.04m以上もしくは胴の内径が200mm以上で且つその長さが1000mm以上)に該当する場合には、圧力容器構造規格によってノズル取付位置が制限される。具体的には、上述したような蒸気を排出するノズルは、ジャケットの底部から一定の距離を取ってノズルを設置しなければならず、この場合も、図3に示すような排出部を設けることは困難である。
【0010】
本発明は上記事情に鑑み、ジャケット内のドレンの発生を防止できる加熱用タンクのジャケット構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1発明の加熱用タンクのジャケット構造は、被加熱物を収容するタンク本体の周囲に設けられた、蒸気が供給される蒸気供給空間を有する加熱用タンクのジャケットの構造であって、先端に開口が形成された前記蒸気供給空間内から蒸気を排出するノズルを有しており、該ノズルは、前記開口が前記ジャケットの底部を向いた状態となるように、先端が前記ジャケットの底部に向けて曲がっていることを特徴とする。
第2発明の加熱用タンクのジャケット構造は、第1発明において、前記ノズルは、その先端開口から前記ジャケットの底部までの距離が5~10mmとなるように配設されていることを特徴とする。
第3発明の加熱用タンクのジャケット構造は、第1発明において、前記ノズルは、その先端の曲がっている部分が弧状になっており、該曲がっている部分の圧力損失係数が0.13~0.71となるように形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
第1発明によれば、ジャケットの底部付近まで到達して上昇する蒸気を効果的にノズルを通して排出できるので、ジャケットの底部近傍にドレンが発生することを効果的に防止することができる。
第2および第3発明によれば、蒸気供給空間内の蒸気をより効果的に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態の加熱用タンクのジャケット構造を採用したジャケット10を有する加熱用タンク1の概略説明図である。
図2】(A)従来のジャケット110が採用されている加熱用タンク100の概略説明図である。
図3】他の排出部112の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施形態の加熱用タンクのジャケット構造は、プロセス液などの被加熱物を内部に収容して加熱するために使用されるタンクに設けられるジャケットの構造であって、被加熱物を加熱する蒸気が供給されるジャケット内にドレンが発生することを防止できるようにしたものである。
【0015】
本実施形態の加熱用タンクのジャケット構造を有する加熱用タンクが採用される設備はとくに限定されない。例えば、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスや粉体材料精製などの設備やプラントを挙げることができる。
【0016】
また、本実施形態の加熱用タンクのジャケット構造を有する加熱用タンクの用途もとくに限定されない。例えば、プロセス液などを一時的に保管する中継タンクや、反応槽や分散槽などを加熱用タンクの用途として挙げることができる。
【0017】
本実施形態の加熱用タンクのジャケット構造を有する加熱用タンクにおいて加熱されたり加温されたりする被加熱物もとくに限定されない。例えば、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスであればプロセス液を被加熱物として挙げることができる。また、粉体材料精製などの設備やプラントであれば、反応槽や分散槽などに収容される物質などを被加熱物として挙げることができる。
【0018】
本実施形態の加熱用タンクのジャケット構造が採用される加熱用タンクの構成もとくに限定されず、例えば、上部タンクと下部タンクがフランジで連結されたタンク(図1参照)や第2種圧力容器などを本実施形態の加熱用タンクのジャケットの構造が採用される加熱用タンクとして挙げることができる。
【0019】
以下では、上部タンクと下部タンクとがフランジで連結されたタンクにおいて、上部タンクに本実施形態の加熱用タンクのジャケットの構造を採用した場合を代表として説明する。
【0020】
<本実施形態の加熱用タンクのジャケットの構造>
まず、本実施形態の加熱用タンクのジャケットの構造が採用される加熱用タンク1を説明する。
【0021】
図1に示すように、本実施形態の加熱用タンクのジャケットの構造が採用される加熱用タンク1(以下単に加熱用タンク1という)は、内部に被加熱物を収容する収容空間2hを有する容器であるタンク本体2を備えている。このタンク本体2は、上部タンク3と下部タンク4とを有している。上部タンク3は、収容空間2h内に被加熱物を供給する供給部2aを有し、下端に開口を有する容器であり、下端開口の周囲にフランジ3fが設けられたものである。下部タンク4は、上端に開口を有し、下端に収容空間2h内から被加熱物を排出する排出部2bを有する容器であり、上端開口の周囲にフランジ4fが設けられたものである。そして、タンク本体2は、上部タンク3の下端開口と下部タンク4の上端開口とを合わせてフランジ3f,4fを連結して形成されている。
【0022】
そして、加熱用タンク1の周囲には、加熱蒸気が供給されるジャケット10,30が設けられている。
【0023】
かかる構成であるので、加熱用タンク1に供給部2aから収容空間2h内に被加熱物を供給して収容空間2h内に被加熱物を貯留すれば、ジャケット10,30に供給される加熱蒸気の熱によって被加熱物を所定の温度まで加熱したり所定の温度に保温したりすることができる。そして、排出部2bによって収容空間2h内と外部との間を連通すれば、所定の温度の被加熱物を排出部2bを通して次工程などに供給することができる。
【0024】
なお、上部タンク3は、上端部に開口を有しその開口が蓋などによって塞がれる構造としてもよい。この場合には、供給部2aは蓋などに設けることができる。また、上部タンク3に蓋などを取り付ける場合、上部タンク3の上端部の開口の周囲にフランジを設けて、このフランジによって蓋を上部タンク3に連結する構造を採用することができる。
【0025】
<ジャケット10>
図1に示すように、タンク本体2にはジャケット10が設けられている。具体的には、上部タンク3の周囲には、本実施形態の加熱用タンクのジャケットの構造を採用したジャケット10が設けられている。また、下部タンク4の周囲には、一般的な構造を有するジャケット30が設けられている。
【0026】
以下では、本実施形態の加熱用タンクのジャケットの構造を採用したジャケット10(以下では単に本実施形態のジャケット10という)の構造について説明する。
【0027】
なお、下部タンク4に設けられるジャケット30については、図2に示す従来のジャケット110と実質的に同様の構成を有するので、説明は割愛する。
また、下部タンク4の周囲に設けられるジャケット30にジャケット10と同等の構成、つまり、本実施形態の加熱用タンクのジャケットの構造を採用してもよい。
【0028】
<外壁11>
図1に示すように、ジャケット10は外壁11を備えている。この外壁11は、上部タンク3の周囲を囲い、上部タンク3の側壁3wとの間に隙間が形成されるように配設されている。この外壁11の下端は、溶接などによって上部タンク3のフランジ3fの上面に気密かつ液密に連結されており、その上端は上壁11tによって上部タンク3の側面3wと連結されている。つまり、外壁11と、上部タンク3のフランジ3fと、上壁11tと、によって上部タンク3の側壁3wを囲う空間(以下蒸気供給空間10hという)が形成されている。かかる構造であるので、上部タンク3のフランジ3fがジャケット10の底部を構成することになる。以下では、便宜上、上部タンク3のフランジ3fをジャケット10の底部10bという場合がある。
【0029】
なお、外壁11内面から上部タンク3の側壁3wまでの距離Lw、つまり、蒸気供給空間10hの隙間はとくに限定されず、タンク本体2の容積や、タンク本体2に収容される被加熱物の量や流量等、被加熱物の性質、被加熱物の温度に合わせて適切に調整すればよい。例えば、タンク本体2の容積が、3.5m程度にであれば、距離Lwは50mm程度にすることができる。
【0030】
また、上部タンク3が上端部に蓋などを取り付けるフランジを有する場合には、外壁11の上端を溶接などによってこのフランジの下面に気密かつ液密に連結してもよい。つまり、上部タンク3のフランジを上壁としてもよい。
【0031】
<蒸気供給部10a>
図1に示すように、ジャケット10の上端部には、蒸気供給空間10hに蒸気を供給する蒸気供給部10aが設けられている。この蒸気供給部10aは、蒸気を蒸気供給空間10hに供給できる構造となっていればよく、とくに限定されない。例えば、ジャケット10の外壁11に貫通孔を形成し、この貫通孔に配管などを連結して蒸気供給部10aとすることができる。
【0032】
<排出部10b>
図1に示すように、ジャケット10の下端部、つまり、ジャケット10の底部10b近傍(つまり上部タンク3のフランジ3f近傍)には、排出部10bが設けられている。この排出部10bは、蒸気供給空間10h内から蒸気を外部に排出するものであり、ノズル20を備えている。
【0033】
<ノズル20>
図1に示すように、ジャケット10は外壁11には、貫通孔11hが形成されており、この貫通孔11hには、排出部10bのノズル20が挿入されている。具体的には、ノズル20は、その先端部20aが蒸気供給空間10hに配置され、その外端部20cが外壁11の外部に位置するように外壁11の貫通孔11hに挿入されている。このノズル20は、その外面と外壁11の貫通孔11hの内端縁との間が気密かつ液密になるように外壁11に固定されている。例えば、溶接などの方法によって、ノズル20は外壁11の貫通孔11hに固定されている。
【0034】
このノズル20は中空な管状の部材であり、その先端部20aの開口20dがジャケット10の底部10bを向いた状態となるように設けられている。具体的には、ノズル20の先端部20aには、ジャケット10の底部10b側に向いた状態となるように曲がった曲がり部20bが設けられている。より詳しく言えば、先端部20aの開口20dがジャケット10の底部10bの上面と対向した状態となるように、ノズル20の先端部20aは曲げられている。
【0035】
一方、ノズル20の外端部20cは大気解放状態となるように設けられている。具体的には、ジャケット10の蒸気供給空間10hは蒸気供給部10aから供給される蒸気によって大気よりも高圧になっているので、この蒸気供給空間10h内の圧力とノズル20の外端部20c近傍の圧力との圧力差によって蒸気供給空間10h内の蒸気がノズル20を通って外部に排出されるように、ノズル20の外端部20cは設けられている。なお、かかる状態を維持できるのであれば、ノズル20の外端部20cは必ずしも大気解放状態となっていなくてもよく、配管やチューブなどに連結されていてもよいし、ドレンなどを回収する容器などに挿入や連結されていてよい。
【0036】
ジャケット10が上記のような構造を有しているので、蒸気供給部10aから蒸気供給空間10h内に蒸気を供給すれば、蒸気供給空間10h内を流れた蒸気を、ジャケット10の底部10b近傍から外部に設けられた排出部10bのノズル20を通して排出できる。
【0037】
しかも、ノズル20の先端部20aの開口20dがジャケット10の底部10bを向いた状態となっているので、ノズル20がジャケット10の底部10bよりも離れた位置(つまりジャケット10の底部10bよりも上方の位置)に配置されていても、蒸気をノズル20を通してスムースに外部に排出することができる。
【0038】
つまり、ジャケット10内にはジャケット10の底部10bに向かう流れ(下降流)が発生しているが、この流れはジャケット10の底部10b付近まで到達した後上昇する流れ(上昇流)となる。上昇流は下降流と干渉する可能性があるが、ノズル20の先端部20aの開口20dがジャケット10の底部10bを向いているので、上昇流を下降流と干渉させず(または干渉を少なく)ノズル20の開口20dに流入させることができる。すると、ジャケット10の底部10bの近傍で蒸気の滞留が発生することを抑制できるので、ジャケット10の底部10bにおけるドレンDの発生を抑制でき、ドレンDの発生による被加熱物の固化などを防止しやすくなる。
【0039】
<ノズル20の先端とジャケット10の底部10bの距離>
ノズル20の先端部20a、つまり、ノズル20の先端部20aの開口20dからジャケット10の底部10bの上面までの距離L1はとくに限定されない。距離L1は、ジャケット10内に供給される蒸気の流量やジャケット10の蒸気供給空間10hの容積、ジャケット10に設けられる供給口10aの数、排出部10bの数(つまりノズル20の数)、ノズル20の内径等に合わせて適切に調整すればよい。例えば、距離L1を5~10mmとすれば、上述した蒸気の流量などが異なっても、概ね良好な蒸気排出とドレン発生防止効果を得ることができる。
【0040】
<ノズル20の曲がりについて>
ノズル20の先端部20aの曲がり部20bは、その開口20dがジャケット10の底部10bに向いた状態となるように曲がっていればよく、その形状、例えば、曲率や曲がる角度はとくに限定されない。ノズル20を通して蒸気を効果的に排出でき、しかも、ノズル20の損傷(孔あき等)を防止する上では、ノズル20先端部20aの曲がり部20bは、圧力損失係数が0.13~0.71となるように形成されていることが望ましい。
【0041】
<ノズル20の太さについて>
ノズル20の太さ、つまり、外径はとくに限定されず、ノズル20の先端部20aが蒸気供給空間10h内に配置されている状態において、ジャケット10の底部10bに向かう蒸気の流れを阻害しない程度の太さに設けられていればよい。例えば、ノズル20の外径は、外壁11内面から上部タンク3の側壁3wまでの距離Lwよりも20~30mm程度細いものを使用することが望ましい。
【0042】
<ノズル20とジャケット10の連結について>
上述したように、ノズル20は、その外面とジャケット10の外壁11の貫通孔11hの内端縁とが溶接によって連結されていれば、ノズル20の外面とジャケット10の外壁11の貫通孔11hの内端縁との間を気密液密に維持できる。また、ノズル20を安定した状態で配置しておくことができるので、蒸気の排出を安定化することができる。
【0043】
一方、ノズル20の外面とジャケット10の外壁11の貫通孔11hの内端縁との間を気密液密に維持できるのであれば、ノズル20はジャケット10の外壁11に形成された貫通孔11hに挿入されているだけでもよい。この場合には、ノズル20に損傷が生じた場合、ノズル20を簡単に交換できるという利点が得られる。なお、ノズル20をジャケット10の外壁11の貫通孔11hに挿入しているだけの場合には、ノズル20の外面とジャケット10の外壁11の貫通孔11hの内端縁との間を気密液密に維持しかつノズル20の姿勢を安定させるために、両者の隙間にはシール部材などを設けることが望ましい。
【0044】
<ノズル20の素材について>
ノズル20の素材はとくに限定されず、ジャケット10の蒸気供給空間10h内に供給される蒸気によって剛性が低下したり変質したりしない素材によって形成されていればよい。例えば、ノズル20には、圧力配管用炭素鋼鋼管(STPG)や、SUS304で形成されたステンレス管などを採用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の加熱用タンクのジャケット構造は、被加熱物を収容し加熱したり保温したりするタンクに設けられるジャケットに適している。
【符号の説明】
【0046】
1 タンク
2 タンク
3 上部タンク
3f フランジ
4 下部部タンク
4f フランジ
10 ジャケット
10h 蒸気供給空間
10a 蒸気供給部
11h 貫通孔
11w 外壁
20 ノズル
20a 先端部
20d 開口
20b 曲がり部
20c 外端部
D ドレン

図1
図2
図3