(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129928
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】窒素製造方法及び窒素製造装置
(51)【国際特許分類】
F25J 3/04 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
F25J3/04 103
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039332
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】入澤 真
【テーマコード(参考)】
4D047
【Fターム(参考)】
4D047AA08
4D047AB02
4D047BA03
4D047BA07
4D047CA03
4D047CA04
4D047CA16
4D047CA17
4D047DA05
(57)【要約】
【課題】原料空気の圧力が比較的高い場合において、より効率的に運転できる窒素製造装置を提供する。
【解決手段】この窒素製造装置は、原料空気を第1窒素ガスと第1酸素富化液化流体とに分離する第1精留塔1と、第1窒素ガスと減圧した第1酸素富化液化流体とを間接熱交換させて第1窒素ガスから第1液化窒素を得ると同時に第1酸素富化液化流体から第1酸素富化ガス流体を得る第1凝縮器2と、第1酸素富化ガス流体を断熱膨張させて寒冷を発生させる膨張タービン6と、断熱膨張後の第1酸素富化ガス流体を第2窒素ガスと第2酸素富化液化流体とに分離する第2精留塔3と、第2窒素ガスと減圧した第2酸素富化液化流体とを間接熱交換させて第2窒素ガスから第2液化窒素を得ると同時に第2酸素富化液化流体から第2酸素富化ガス流体を得る第2凝縮器4と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料空気を深冷液化分離して製品窒素を採取する窒素製造方法において、
圧縮、精製、冷却した原料空気を低温蒸留して第1窒素ガスと第1酸素富化液化流体とに分離する第1分離工程と、
前記第1窒素ガスと減圧した前記第1酸素富化液化流体とを間接熱交換させて第1窒素ガスを凝縮液化して第1液化窒素を得ると同時に第1酸素富化液化流体を蒸発ガス化して第1酸素富化ガス流体を得る第1間接熱交換工程と、
前記第1酸素富化ガス流体を断熱膨張させて運転に必要な寒冷を発生させる寒冷発生工程と、
断熱膨張した後の前記第1酸素富化ガス流体を低温蒸留して第2窒素ガスと第2酸素富化液化流体とに精留分離する第2分離工程と、
前記第2窒素ガスと減圧した前記第2酸素富化液化流体とを間接熱交換させて第2窒素ガスを凝縮液化して第2液化窒素を得ると同時に第2酸素富化液化流体を蒸発ガス化して第2酸素富化ガス流体を得る第2間接熱交換工程と、
前記第1窒素ガスの一部を熱回収後に第1製品窒素ガスとして導出する第1製品回収工程と、を含むことを特徴とする窒素製造方法。
【請求項2】
前記第2液化窒素の一部を加圧して前記第1分離工程に導入する第2液化窒素加圧工程を含むことを特徴とする請求項1記載の窒素製造方法。
【請求項3】
前記第2窒素ガスの一部を熱回収後に第2製品窒素ガスとして導出する第2製品回収工程を含むことを特徴とする請求項1記載の窒素製造方法。
【請求項4】
少なくとも前記第1液化窒素の一部又は前記第2液化窒素の一部を、製品液化窒素として導出する製品液化窒素導出工程を含むことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の窒素製造方法。
【請求項5】
原料空気を深冷液化分離して製品窒素を採取する窒素製造装置において、
圧縮、精製、冷却された原料空気を低温蒸留して塔上部の第1窒素ガスと塔底部の第1酸素富化液化流体とに分離する第1精留塔と、
前記第1窒素ガスと減圧した前記第1酸素富化液化流体とを間接熱交換させて第1窒素ガスを凝縮液化して第1液化窒素を得ると同時に第1酸素富化液化流体を蒸発ガス化して第1酸素富化ガス流体を得る第1凝縮器と、
前記第1酸素富化ガス流体を断熱膨張させて運転に必要な寒冷を発生させる膨張タービンと、
断熱膨張した後の前記第1酸素富化ガス流体を低温蒸留して塔上部の第2窒素ガスと塔底部の第2酸素富化液化流体とに精留分離する第2精留塔と、
前記第2窒素ガスと減圧した前記第2酸素富化液化流体とを間接熱交換させて第2窒素ガスを凝縮液化して第2液化窒素を得ると同時に第2酸素富化液化流体を蒸発ガス化して第2酸素富化ガス流体を得る第2凝縮器と、
前記第1窒素ガスの一部を熱回収後に第1製品窒素ガスとして導出する第1製品回収経路と、を備えていることを特徴とする窒素製造装置。
【請求項6】
前記第2液化窒素の一部を加圧して前記第1精留塔に導入する液化窒素ポンプを備えていることを特徴とする請求項5記載の窒素製造装置。
【請求項7】
前記第2窒素ガスの一部を熱回収後に第2製品窒素ガスとして導出する第2製品回収経路を備えていることを特徴とする請求項5記載の窒素製造装置。
【請求項8】
少なくとも前記第1液化窒素の一部又は前記第2液化窒素の一部を、製品液化窒素として導出する製品液化窒素導出経路を備えていることを特徴とする請求項5~7のいずれか一項に記載の窒素製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒素製造方法及び窒素製造装置に関し、詳しくは、深冷液化分離法により原料空気を分離精製して製品窒素(製品窒素ガス・製品液化窒素)を採取する方法及び装置であって、従来よりも高い空気圧力で効率的に製品窒素を採取することが可能な製品収率の高い窒素製造方法及び窒素製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、深冷液化分離法により原料空気を分離精製して製品窒素を採取する方法としては、一つの精留塔を用いて原料空気を製品窒素と酸素が濃縮した廃ガスとに分離させる方法が広く用いられている。一方で、製品収率や動力原単位を改善するためにさまざまなプロセスが提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2)。特許文献1及び特許文献2で提案されているプロセスでは、二つの精留塔を用い、一つの精留塔を用いた窒素製造方法では廃棄されていた第1精留塔の廃ガスを第2精留塔の原料として更に製品窒素を製造することで、製品収率や動力原単位を大幅に改善することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4515225号公報
【特許文献2】特開平5-71870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2で提案されているプロセスでは、その性質上、装置運転圧力を上げるのに従い流体の圧力を有効に利用せずに減圧する割合が増え、エネルギーの損失が発生し、効率が低下するという問題がある。このことを以下に詳述する。
【0005】
図3は、特許文献1の
図1で開示されている窒素製造装置に相当する系統図である。この窒素製造装置のプロセスでは、主熱交換器7から排出された廃ガス(廃ガス導出経路31)は、原料空気を精製する精製器13の再生に使用され大気へ排出される。このとき、その上流の膨張タービン6の出口流体の圧力は、少なくとも大気へ排出されるまでの廃ガス導出経路31の圧力損失分だけ大気圧より高くなる。
【0006】
ここで、膨張タービン6は、入口と出口の圧力差を利用して装置に必要な寒冷を発生するが、その圧力差が小さいほど、同じ量の寒冷を発生させるためにより多くの流量を必要とする。このため、膨張タービン6へ供給される膨張タービン流体の源である第2酸素富化液化流体の圧力が下がるのに従って膨張タービン6の流量が増加する。よって、第2酸素富化液化流体の圧力は、第2酸素富化液化流体の全量が膨張タービン6に導入されたときに下限となる。
【0007】
その第2酸素富化液化流体を蒸発気化させるために、第2凝縮器4で熱交換する第2窒素ガスの凝縮液化温度を第2酸素富化液化流体の温度より高くする必要があり、これにより、第2窒素ガスの圧力は、第2酸素富化液化流体の圧力より高くなる。
【0008】
よって、第2窒素ガス及びその上流の第1酸素富化液化流体の圧力は、第2凝縮器4で熱交換が可能な値が下限となる。
【0009】
そして、上述の第2凝縮器4における熱交換と同様の関係が第1凝縮器2にも成り立つので、第1窒素ガス及び上流の原料空気の圧力にも下限がある。
【0010】
一方で、原料空気の圧力は、使用先が求める第1製品窒素ガスの圧力から遡って決定される。この圧力が上述の原料空気の圧力の下限より高い場合、プロセス内のいずれかの流体、例えば、第2酸素富化液化流体の圧力に余裕が生じ、下限まで無駄に減圧させる分だけエネルギーの損失が発生し、効率が低下するといった課題がある。
【0011】
また、特許文献2で開示されている窒素製造のプロセスは、第2精留塔から得られる窒素の導出方法が特許文献1で開示されているプロセスと異なる。すなわち、特許文献1で開示されている窒素製造のプロセスでは、第2精留塔から窒素をガスで取り出すのに対し、特許文献2で開示されている窒素製造のプロセスでは、第2精留塔(特許文献2の
図1の符号200)から窒素を液体(特許文献2の
図1の符号27)で取り出し、液化窒素ポンプ(特許文献2の
図1の符号60)を経て第1精留塔(特許文献2の
図1の符号200)に導入する。このような違いがあるものの、2つの凝縮器(特許文献2の
図1の符号101,201)における流体の関係は特許文献1で開示されているプロセスと同様であり、原料空気の圧力が下限より高い場合には同様にエネルギーの損失が発生し、効率が低下するといった課題がある。
【0012】
そこで本発明は、原料空気の圧力が比較的高い場合において、従来に対し、より効率的に運転できる窒素製造方法及び窒素製造装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の窒素製造方法は、原料空気を深冷液化分離して製品窒素を採取する窒素製造方法において、圧縮、精製、冷却した原料空気を低温蒸留して第1窒素ガスと第1酸素富化液化流体とに分離する第1分離工程と、前記第1窒素ガスと減圧した前記第1酸素富化液化流体とを間接熱交換させて第1窒素ガスを凝縮液化して第1液化窒素を得ると同時に第1酸素富化液化流体を蒸発ガス化して第1酸素富化ガス流体を得る第1間接熱交換工程と、前第1酸素富化ガス流体を断熱膨張させて運転に必要な寒冷を発生させる寒冷発生工程と、断熱膨張した後の前記第1酸素富化ガス流体を低温蒸留して第2窒素ガスと第2酸素富化液化流体とに精留分離する第2分離工程と、前記第2窒素ガスと減圧した前記第2酸素富化液化流体とを間接熱交換させて第2窒素ガスを凝縮液化して第2液化窒素を得ると同時に第2酸素富化液化流体を蒸発ガス化して第2酸素富化ガス流体を得る第2間接熱交換工程と、前記第1窒素ガスの一部を熱回収後に第1製品窒素ガスとして導出する第1製品回収工程と、を含むことを特徴としている。
【0014】
また、本発明の窒素製造方法は、前記第2液化窒素の一部を加圧して前記第1分離工程に導入する第2液化窒素加圧工程を含むことを特徴としている。
【0015】
また、本発明の窒素製造方法は、前記第2窒素ガスの一部を熱回収後に第2製品窒素ガスとして導出する第2製品回収工程を含むことを特徴としている。
【0016】
また、本発明の窒素製造方法は、少なくとも前記第1液化窒素の一部又は前記第2液化窒素の一部を、製品液化窒素として導出する製品液化窒素導出工程を含むことを特徴としている。
【0017】
本発明の窒素製造装置は、原料空気を深冷液化分離して製品窒素を採取する窒素製造装置において、圧縮、精製、冷却された原料空気を低温蒸留して塔上部の第1窒素ガスと塔底部の第1酸素富化液化流体とに分離する第1精留塔と、前記第1窒素ガスと減圧した前記第1酸素富化液化流体とを間接熱交換させて第1窒素ガスを凝縮液化して第1液化窒素を得ると同時に第1酸素富化液化流体を蒸発ガス化して第1酸素富化ガス流体を得る第1凝縮器と、前記第1酸素富化ガス流体を断熱膨張させて運転に必要な寒冷を発生させる膨張タービンと、断熱膨張した後の前記第1酸素富化ガス流体を低温蒸留して塔上部の第2窒素ガスと塔底部の第2酸素富化液化流体とに精留分離する第2精留塔と、前記第2窒素ガスと減圧した前記第2酸素富化液化流体とを間接熱交換させて第2窒素ガスを凝縮液化して第2液化窒素を得ると同時に第2酸素富化液化流体を蒸発ガス化して第2酸素富化ガス流体を得る第2凝縮器と、前記第1窒素ガスの一部を熱回収後に第1製品窒素ガスとして導出する第1製品回収経路と、を備えていることを特徴としている。
【0018】
また、本発明の窒素製造装置は、前記第2液化窒素の一部を加圧して前記第1精留塔に導入する液化窒素ポンプを備えていることを特徴としている。
【0019】
また、本発明の窒素製造装置は、前記第2窒素ガスの一部を熱回収後に第2製品窒素ガスとして導出する第2製品回収経路を備えていることを特徴としている。
【0020】
また、本発明の窒素製造装置は、少なくとも前記第1液化窒素の一部又は前記第2液化窒素の一部を、製品液化窒素として導出する製品液化窒素導出経路を備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、原料空気の圧力が比較的高い場合においても、従来と同等以下の消費動力で運転可能な窒素製造方法及び窒素製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の窒素製造方法を適用した窒素製造装置の第1形態例を示す系統図である。
【
図2】本発明の窒素製造方法を適用した窒素製造装置の第2形態例を示す系統図である。
【
図3】従来の窒素製造装置の一例を示す系統図である。
【
図4】実施例で原料空気圧力を変えて消費動力を比較した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本発明の窒素製造方法を適用した窒素製造装置の第1形態例を示す系統図である。なお、以下の説明において、前記
図3に記載した窒素製造装置の構成要素と同一の構成要素で、同一の機能を有するものには同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0024】
まず、この窒素製造装置100は、精留塔を2塔備えた二塔型の構成であって、フィルター11を経て原料空気圧縮機12で圧縮され、精製器13で水分や二酸化炭素等の不純物が除去されて精製された後に、保冷外槽14内の主熱交換器7で冷却された原料空気を深冷液化分離して製品窒素を採取する窒素製造装置である。この窒素製造装置100は、圧縮、精製、冷却された原料空気を低温蒸留して塔上部の第1窒素ガスと塔底部の第1酸素富化液化流体とに分離する第1精留塔1と、第1窒素ガスと減圧した前記第1酸素富化液化流体とを間接熱交換させて第1窒素ガスを凝縮液化して第1液化窒素を得ると同時に第1酸素富化液化流体を蒸発ガス化して第1酸素富化ガス流体を得る第1凝縮器2と、第1酸素富化ガス流体を断熱膨張させて運転に必要な寒冷を発生させる膨張タービン6と、断熱膨張した後の第1酸素富化ガス流体を低温蒸留して塔上部の第2窒素ガスと塔底部の第2酸素富化液化流体とに精留分離する第2精留塔3と、第2窒素ガスと減圧した第2酸素富化液化流体とを間接熱交換させて第2窒素ガスを凝縮液化して第2液化窒素を得ると同時に第2酸素富化液化流体を蒸発ガス化して第2酸素富化ガス流体を得る第2凝縮器4と、第1窒素ガスの一部を熱回収後に第1製品窒素ガスとして導出する第1製品回収経路32と、を備えている。
【0025】
第1精留塔1では、圧縮、精製、冷却後の原料空気は、主熱交換器7から原料空気流入経路33を通って塔下部に導入され、深冷液化分離法による低温蒸留により、塔上部の第1窒素ガスと塔底部の第1酸素富化液化流体とに分離される。塔上部から経路34に抜き出された第1窒素ガスは、一部が主熱交換器7で原料空気と熱交換し、熱回収された後に第1製品回収経路32から第1製品窒素ガスとして導出される。また、残部の第1窒素ガスは、経路35を通って第1凝縮器2に導入される。
【0026】
第1精留塔1の下部から抜き出された第1酸素富化液化流体の一部は、経路36を通って、減圧弁9dで減圧された後、後述する第2酸素富化液化流体に合流し、寒冷補給流体として第2精留塔3と第2凝縮器4の熱損失を補う。第1酸素富化液化流体の残部は、減圧弁9aで所定圧力に減圧され第1凝縮器2に経路37から導入され、第1窒素ガスと間接熱交換を行い、第1窒素ガスが凝縮液化して第1液化窒素になると同時に、第1酸素富化液化流体が蒸発ガス化して第1酸素富化ガス流体となる。第1液化窒素は、経路38を通って第1精留塔1の上部に導入されて還流液となる。
【0027】
一方、第1凝縮器2から経路39に導出した第1酸素富化ガス流体は、一部が装置運転の調節代として、第2精留塔3に向かう経路40に分岐される。また、第1酸素富化ガス流体の大部分は、経路41を通って主熱交換器7に導入され、中間温度まで昇温して抜き出され、膨張タービン6に流入して断熱膨張することにより、装置の運転に必要な寒冷を発生した後、経路42を通って、上述の分岐した経路40において減圧弁9cにより減圧された第1酸素富化ガス流体と合流して第2精留塔3に導入される。
【0028】
膨張タービン6を経て第2精留塔3の下部に導入された第1酸素富化ガス流体は、低温蒸留により塔上部の第2窒素ガスと塔底部の第2酸素富化液化流体とに分離される。塔上部から経路43に抜き出された第2窒素ガス16は、第2凝縮器4に導入される。この第2凝縮器4には、第2精留塔3の下部から抜き出されて前述の第1酸素富化液化流体の一部と合流した後に減圧弁9bで所定圧力に減圧された第2酸素富化液化流体17が経路44から導入され、この第2酸素富化液化流体と第2窒素ガスとが間接熱交換を行い、第2窒素ガスが凝縮液化して第2液化窒素になると同時に、第2酸素富化液化流体が蒸発ガス化して第2酸素富化ガス流体となる。
【0029】
第2液化窒素の一部は、経路45を通って第2精留塔3の上部に導入されて還流液となり、残部は経路45から分岐する経路46を通り、液化窒素ポンプ5で加圧され、その一部が製品液化窒素導出経路50より製品液化窒素として導出された後、残部は加圧還流第2液化窒素として、経路47から第1精留塔1の上部に導入され、第1液化窒素と共に還流液となる。
【0030】
そして、第2凝縮器4から導出した第2酸素富化ガス流体は、主熱交換器7で原料空気と熱交換を行って熱回収された後、廃ガスとして廃ガス導出経路31から導出される。
【0031】
このように形成したプロセスは、
図3に示すような従来技術と同じく精留塔を2塔備えているが、膨張タービン6が設けられる位置が異なり、後述するように、原料空気の圧力が下限より高い場合に生じた圧力の余裕をより有効に利用できる。
【0032】
図2は、本発明の窒素製造方法を適用した窒素製造装置の第2形態例を示す系統図である。第1形態例では、第2精留塔3から導出された第2液化窒素を第1精留塔1に送るのに対し、第2形態例の窒素製造装置200では、第2精留塔の塔頂部から導出された第2窒素ガスの一部は経路43を通って第2凝縮器4に導入され、残部は第2製品回収経路48を通って第2製品窒素ガスとして取り出している。第2製品窒素ガスを第2製品回収経路48に設けた窒素圧縮機8で圧縮し、第1製品窒素ガスに合流させることもできる。なお、第2液化窒素の一部は、経路45を通って第2精留塔3の上部に導入されて還流液とともに、残部は製品液化窒素導出経路51から製品液化窒素として導出される。
【0033】
第2形態例のように形成したプロセスであっても、精留塔と凝縮器の機能及び従来と比べて得られる効果は第1形態例と同じである。
【0034】
なお、第1形態例及び第2形態例のいずれにおいても、第2液化窒素の一部を製品液化窒素として導出しているが、第1液化窒素の一部を製品液化窒素として導出してもよい。
【実施例0035】
図1に示した構成の窒素製造装置100を実施例1として、また
図3に示した特許文献1で開示されている窒素製造装置を比較例として、両者についてシミュレーションを行った結果を表1に示す。
【0036】
【0037】
表1中で、各部の流量は比較例における原料空気の流量を100とした相対値で示し、圧力(MPa)は絶対圧力を示す。この2つのシミュレーションでは、同じ流量、圧力及び純度(酸素濃度)の製品窒素ガスを製造し、製品液化窒素は製造しない。また発明の効果を明示するために、原料空気の圧力及び経路の圧力損失を同じとして、それぞれの消費動力を表2に示す。
【0038】
【0039】
表2中の各機器の消費動力は、比較例の消費動力の合計を100とした相対値で表している。
【0040】
比較例では、原料空気の流量が100、空気圧力が1.3MPaにおいて、流量が56の製品窒素ガス(第1製品窒素ガス(C)と第2製品窒素ガス(K)の合計)を製造する。第2精留塔3から発生する第2製品窒素ガスは、比較のために窒素圧縮機8で第1製品窒素ガスと同じ圧力まで圧縮し、表2にはその消費動力を含めている。対する実施例1では、原料空気の流量が102、空気圧力が1.3MPaにおいて流量が56の製品窒素ガス(第1製品窒素ガス(C)のみ)を製造する。第2精留塔3から発生する第2液化窒素は液化窒素ポンプ5で第1精留塔1に送るので、表2にはその消費動力を含めている。
【0041】
より詳細に見ると、比較例、実施例1ともに原料空気、第1酸素富化ガス流体、及び廃ガスの圧力は同じとしている。比較例では、第2凝縮器4で気化した第2酸素富化ガス流体を膨張タービン6に導入するので、その膨張比が大きくなるように第2酸素富化ガス流体及び第2窒素ガスの圧力を可能な限り上げている。対する実施例1は、第1凝縮器2で気化した第1酸素富化ガス流体を膨張タービン6に導入した後に第2精留塔3へ導入するので、その膨張比を大きくするために第2酸素富化ガス流体及び第2窒素ガスの圧力を可能な限り下げている。
【0042】
このように、どちらの例も膨張タービン6の膨張比が最大限となるように設定した結果、比較例では第2酸素富化ガス流体の流量の26%を膨張タービン6に導入し、残りは有効利用せず減圧しているのに対して、実施例1では第1酸素富化ガス流体の流量の56%を膨張タービンに導入しており、有効利用している割合が大きい。表2を見ると、実施例1の方が窒素収率では劣るため空気圧縮機の消費動力は大きいものの、第2精留塔3の製品を圧縮する分も含めた全体の消費動力は実施例1の方が小さくなり、より効率的に窒素を製造できていることが分かる。
【0043】
以上は原料空気圧力1.3MPaにおいて比較したが、原料空気圧力を変えて同様に消費動力を比較した結果を
図4に示す。ここでは、
図2に示した構成の窒素製造装置200を用いた実施例2も比較に含める。
【0044】
その結果、圧力が低い領域では実施例1の消費動力が比較例より大きい範囲もあるが、高い圧力では逆転して実施例1が有利となり、実施例2は比較した領域全体で消費動力が同等以下となる。以上より、本発明は、1.1MPa以上、特に1.2MPa以上の比較的高い圧力において従来と同等以下の消費動力で窒素を供給する窒素製造方法及び装置を提供できることが分かる。
1…第1精留塔、2…第1凝縮器、3…第2精留塔、4…第2凝縮器、5…液化窒素ポンプ、6…膨張タービン、7…主熱交換器、8…窒素圧縮機、9a,b,c,d…減圧弁、11…フィルター、12…原料空気圧縮機、13…精製器、14…保冷外槽、31…廃ガス導出経路、32…第1製品回収経路、33…原料空気流入経路、34~47…経路、48…第2製品回収経路、50,51…製品液化窒素導出経路、100,200…窒素製造装置