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特開2024-13002高分子電解質、蓄電素子、液体組成物、収容容器、高分子電解質膜の製造装置、蓄電素子の製造装置、高分子電解質膜の製造方法、及び蓄電素子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013002
(43)【公開日】2024-01-31
(54)【発明の名称】高分子電解質、蓄電素子、液体組成物、収容容器、高分子電解質膜の製造装置、蓄電素子の製造装置、高分子電解質膜の製造方法、及び蓄電素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0565 20100101AFI20240124BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20240124BHJP
【FI】
H01M10/0565
H01M4/139
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114889
(22)【出願日】2022-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】國澤 由佳
(72)【発明者】
【氏名】野村 正宜
(72)【発明者】
【氏名】中島 聡
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ06
5H029AJ11
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL01
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM16
5H029BJ12
5H029CJ22
5H029CJ30
5H029HJ01
5H050AA12
5H050AA14
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB01
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB12
5H050FA02
5H050GA22
5H050GA29
(57)【要約】
【課題】優れた金属イオン移動度、金属イオン輸率、及び機械強度を有し、高い電池性能を得ることができる高分子電解質の提供。
【解決手段】電解質基材モノマーとアミド基含有モノマーとの共重合体である重合体を含み、前記電解質基材モノマーが、(メタ)アクリルモノマー、ニトリルモノマー、フッ素モノマー、及びポリエーテルモノマーの少なくともいずれかであり、前記アミド基含有モノマー由来の構成単位の割合が、前記重合体全体に対して、0質量%超40質量%以下である高分子電解質。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質基材モノマーとアミド基含有モノマーとの共重合体である重合体を含み、
前記電解質基材モノマーが、(メタ)アクリルモノマー、ニトリルモノマー、フッ素モノマー、及びポリエーテルモノマーの少なくともいずれかであり、
前記アミド基含有モノマー由来の構成単位の割合が、前記重合体全体に対して、0質量%超40質量%以下であることを特徴とする高分子電解質。
【請求項2】
前記アミド基含有モノマーが、N-アルキルアクリルアミド、及びN,N-ジアルキルアクリルアミドの少なくともいずれかである、請求項1に記載の高分子電解質。
【請求項3】
金属イオンを更に含み、
前記金属イオンが、リチウムイオンである、請求項1に記載の高分子電解質。
【請求項4】
可塑剤を更に含み、
前記可塑剤が、エーテル系化合物、ラクトン、環状カーボネート、鎖状カーボネート、及びイオン液体の少なくともいずれかである、請求項1に記載の高分子電解質。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の高分子電解質を備えることを特徴とする蓄電素子。
【請求項6】
電解質基材モノマー、及びアミド基含有モノマーからなる重合体前駆体を含み、
前記電解質基材モノマーが、(メタ)アクリルモノマー、ニトリルモノマー、フッ素モノマー、及びポリエーテルモノマーの少なくともいずれかであり、
前記アミド基含有モノマーの割合が、モノマーの総量に対して、0質量%超40質量%以下であることを特徴とする液体組成物。
【請求項7】
電解質基材モノマーとアミド基含有モノマーとの共重合体である重合体を含み、
前記電解質基材モノマーが、(メタ)アクリルモノマー、ニトリルモノマー、フッ素モノマー、及びポリエーテルモノマーの少なくともいずれかであり、
前記アミド基含有モノマー由来の構成単位の割合が、前記重合体全体に対して、0質量%超40質量%以下であることを特徴とする液体組成物。
【請求項8】
請求項6から7のいずれかに記載の液体組成物が収容されたことを特徴とする収容容器。
【請求項9】
請求項8に記載の収容容器と、
前記収容容器に収容された前記液体組成物を付与対象物上に付与する付与手段と、
を有することを特徴とする高分子電解質膜の製造装置。
【請求項10】
前記付与対象物が、集電体又は集電体上に設けられた活物質層である請求項9に記載の高分子電解質膜の製造装置。
【請求項11】
請求項10に記載の高分子電解質膜の製造装置により電極を製造する電極製造部と、
前記電極を用いて蓄電素子を製造する蓄電素子化部と、を有することを特徴とする蓄電素子の製造装置。
【請求項12】
請求項6から7のいずれかに記載の液体組成物を付与対象物上に付与する付与工程を含む、ことを特徴とする高分子電解質膜の製造方法。
【請求項13】
前記付与対象物が、集電体又は集電体上に設けられた活物質層である請求項12に記載の高分子電解質膜の製造方法。
【請求項14】
請求項13に記載の高分子電解質膜の製造方法により電極を製造する電極製造工程と、
前記電極を用いて蓄電素子を製造する蓄電素子化工程と、を含むことを特徴とする蓄電素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子電解質、蓄電素子、液体組成物、収容容器、高分子電解質膜の製造装置、蓄電素子の製造装置、高分子電解質膜の製造方法、及び蓄電素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二次電池の電解質としては、カーボネート系の有機電解液が使用されているが、有機電解液を使用した場合は、電解液の液漏れが生じ得るという問題がある。
【0003】
上記の問題を解決するために、高分子に金属塩を分散させ、セパレータと電解液を兼ねる固体高分子電解質が提案されている。固体高分子電解質は、電解液を含まないため液漏れの心配がない。
【0004】
しかしながら、固体高分子電解質のイオン移動度は、有機電解液のイオン移動度に比べて遙に低いため、二次電池性能を著しく低下させてしまう問題がある。
【0005】
一方、液漏れが生じずイオン移動度が高い電解質として、有機電解液に難溶性の高分子と有機電解液に可溶性の高分子とを混合し又は相溶させて得たポリマーアロイフィルムに有機電解液を含浸させゲル状にしたゲル状高分子電解質が提案され(例えば、特許文献1参照)、前記ゲル状高分子電解質が、固体高分子電解質と比較して大きなイオン移動度を得ることが示されている。
また、高分子電解質として、アクリレート基及び/又はメタクリレート基を3以上有する化合物と、N,Nジメチルアクリルアミドと、を含むモノマーの共重合体を含む高分子電解質を備え、前記化合物の全モノマーに占める割合が10~30質量%である高分子電解質二次電池が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、優れた金属イオン移動度、金属イオン輸率、及び機械強度を有し、高い電池性能を得ることができる高分子電解質を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段としての本発明の高分子電解質は、電解質基材モノマーとアミド基含有モノマーとの共重合体である重合体を含み、前記電解質基材モノマーが、(メタ)アクリルモノマー、ニトリルモノマー、フッ素モノマー、及びポリエーテルモノマーの少なくともいずれかであり、前記アミド基含有モノマー由来の構成単位の割合が、前記重合体全体に対して、0質量%超40質量%以下である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、優れた金属イオン移動度、金属イオン輸率、及び機械強度を有し、高い電池性能を得ることができる高分子電解質を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態の高分子電解質膜の製造装置である液体吐出装置の一例を示す模式図である。
図2図2は、図1の液体吐出装置の変形例を示す模式図である。
図3図3は、本実施形態の高分子電解質膜の製造装置である液体吐出装置の他の例を示す模式図である。
図4図4は、図3の液体吐出装置の変形例を示す模式図である。
図5図5は、本実施形態の高分子電解質膜の製造装置としてのドラム状の中間転写体を用いた印刷部の一例を示す構成図である。
図6図6は、本実施形態の高分子電解質膜の製造装置としての無端ベルト状の中間転写体を用いた印刷部の一例を示す構成図である。
図7図7は、液体吐出ヘッドの一例を示す概略分解図である。
図8図8は、液体吐出ヘッドの流路構成の一例を示す説明図である。
図9図9は、液体吐出ヘッドの流路構成の一例を示す断面斜視図である。
図10図10は、平行四辺形状のノズル板を備えたヘッドの一例を示す構成図である。
図11図11は、図10のヘッドを複数並べた状態を示す説明図である。
図12図12は、本実施形態の高分子電解質を用いた二次電池の一例を示す全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(高分子電解質)
本発明の高分子電解質は、電解質基材モノマーとアミド基含有モノマーとの共重合体である重合体を含み、前記電解質基材モノマーが、(メタ)アクリルモノマー、ニトリルモノマー、フッ素モノマー、及びポリエーテルモノマーの少なくともいずれかであり、前記アミド基含有モノマー由来の構成単位の割合が、前記重合体全体に対して、0質量%超40質量%以下である。
【0011】
本発明の高分子電解質は、従来技術における以下の問題を見出したことに基づくものである。
すなわち、従来技術におけるポリエチレンオキサイド(PEO)系ゲル状高分子電解質では、ゲル状高分子電解質の基材物質骨格中の酸素に金属イオンが束縛されてしまうため、イオン移動度に占める金属イオン移動の割合(以下、「金属イオン輸率」と称することがある)が著しく低いことが知られている。このため、金属イオンの移動度自体が低くなり、二次電池性能を低下させてしまうという実用上の問題がある。
また、従来技術である特許文献2(特開2009-032635号公報)に開示される、アクリレート基及び/又はメタクリレート基を3以上有する化合物と、N,Nジメチルアクリルアミドと、を含むモノマーの共重合体を含む高分子電解質を備え、前記化合物の全モノマーに占める割合が10~30質量%である高分子電解質二次が報告される。当該電池高分子電解質二次電池では、放電特性に優れた電池が得られると報告されるが、アミド基含有モノマーを、40質量%を超えて多量に用いた場合、アミド基間の水素結合により高分子電解質中での結晶化が進んでしまい、電池特性が低下するという問題があることを、本発明者らが見出した。
【0012】
本発明者が鋭意検討した結果、高分子電解質が、電解質基材モノマーとアミド基含有モノマーとの共重合体である重合体を含み、前記電解質基材モノマーが、(メタ)アクリルモノマー、ニトリルモノマー、フッ素モノマー、及びポリエーテルモノマーの少なくともいずれかであり、前記アミド基含有モノマー由来の構成単位の割合が、前記重合体全体に対して、0質量%超40質量%以下であることによって、金属イオン移動度が向上し、かつ、機械強度が向上し、アミド基含有モノマー未添加の系と比較して高い電池性能が得られることを知見した。
【0013】
前記高分子電解質は、重合体を含み、更に必要に応じて、金属イオン、可塑剤、重合開始剤、溶媒などのその他の成分を含む。
【0014】
<重合体>
前記重合体が、電解質基材モノマーとアミド基含有モノマーとの共重合体であり、前記アミド基含有モノマー由来の構成単位の割合が、前記重合体全体に対して、0質量%超40質量%以下である。
前記重合体は、有機高分子であって、前記高分子電解質の形状保持、及びイオン移動能を有する。
【0015】
<<電解質基材モノマー>>
前記電解質基材モノマーは、重合性反応基を有し、重合体を形成することで高分子電解質の形状保持、及びイオン移動能を有する化合物であり、(メタ)アクリルモノマー、ニトリルモノマー、フッ素モノマー、及びポリエーテルモノマーの少なくともいずれかである。
前記(メタ)アクリルモノマーとしては、アクリル基を有するモノマーであれば、特に制限はなく適宜選択することができ、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル(例えば、アクリル酸エチル、2-シアノアクリル酸エチル等)、メタクリル酸エステル(例えば、メタクリル酸メチル等)などが挙げられる。
前記ニトリルモノマーとしては、ニトリル基を有するモノマーであれば、特に制限はなく適宜選択することができ、例えば、アクリロニトリルなどが挙げられる。
フッ素含有モノマーとしては、フッ素を含有するモノマーであれば、特に制限はなく適宜選択することができ、例えば、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、メタクリル酸2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチルなどが挙げられる。
前記ポリエーテルモノマーとしては、アルキレンオキシド由来の構造を有するモノマーであれば、特に制限はなく適宜選択することができ、例えば、ポリエチレングリコールジアクリレート(例えば、エチレングリコールの繰り返し数n=14のポリエチレングリコールジアクリレート等)、エチレンオキサイド(EO)変性ビスフェノールaジアクリレートなどが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、リチウムイオンとの親和性が良好である点から、ポリエーテルモノマーが好ましい。
【0016】
<<アミド基含有モノマー>>
前記アミド基含有モノマーとしては、アミド基を含有する重合性モノマーであれば、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、N-アルキルアクリルアミド、N,N-ジアルキルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、アクリルアミド等のアクリルアミド類;N-アルキルメタクリルアミド、N,N-ジアルキルメタクリルアミド、メタクリルアミド等のメタクリルアミド類などが挙げられる。
前記N-アルキルアクリルアミドとしては、例えば、ヒドロキシエチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-tert-ブチルアクリルアミドなどが挙げられる。
前記N,N-ジアルキルアクリルアミドとしては、例えば、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-エチル-N-メチルアクリルアミドなどが挙げられる。
前記N-アルキルメタクリルアミドとしては、例えば、N-メチルメタクリルアミドなどが挙げられる。
これらの中でも、N-アルキルアクリルアミド、N,N-ジアルキルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、アクリルアミドが好ましく、N-アルキルアクリルアミド、N,N-ジアルキルアクリルアミドがより好ましい。
これらは、1種単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0017】
[アミド基含有モノマー由来の構成単位の割合]
前記アミド基含有モノマー由来の構成単位の割合としては、前記重合体全体に対して、0質量%超40質量%以下であり、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、3質量%以上が更に好ましく、5質量%以上が特に好ましく、10質量%以上が最も好ましい。
前記割合が、0.5質量%以上であると、得られる高分子電解質の金属イオン移動度、金属イオン輸率、及び機械強度が向上し、アミド基含有モノマー未添加の系と比較して高い電池性能が得られる。
一方、前記割合が、40質量%超であると、得られる高分子電解質を用いた電池における0.2C放電容量、レート特性、0.2Cサイクル維持率などの電池性能が劣り、高い電池性能が得られない。
【0018】
前記重合体における各モノマー由来の構成単位の種類、及び割合については、核磁気共鳴(NMR)装置を用いた解析により同定することができる。
具体的には、NMR装置(ECX-500、日本電子株式会社製)を用いて、水素核H、及び炭素核13Cにより測定を行い、得られたシグナルを帰属することにより、重合体を構成する各モノマー由来の構成単位の種類、及び割合を同定することができる。
また、高分子電解質に含有される重合体の分離方法としては、例えば、有機溶剤による攪拌洗浄、乾燥による重合体と他の構成材料の分離、ソックスレー抽出、乾燥による重合体と他の構成材料の分離などが挙げられる。
重合体の分離に使用される有機溶剤は特に制限はなく、本発明で使用される可塑剤や、非水溶媒、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、アセトン、2-ブタノンなどのケトン類などを用いることができる。分離された重合体はNMR測定で使用される重水素置換溶媒には不溶であり、測定分解能を著しく低下させてしまうため、分散、解砕処理により均一に分散させてNMR測定を行う。分散、解砕処理はボールミル、ビーズミル、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザーなどを用いて行うことができる。また、分散、解砕された重合体は凝集を起こす場合があるため、適宜分散安定化剤を添加してNMR測定を行うことができる。分散安定化剤は公知のものを使用することができる。解析をより詳細にするために、固体NMR法、赤外吸収分光法、質量分析法等を組み合わせて使用することができる。
【0019】
前記重合体の分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5,000以上1,000,000以下が好ましい。
前記分子量が5,000以上であると高分子特有の粘弾性挙動が発現し、機械強度に優れる高分子電解質となる。一方、分子量が1,000,000以下であると、ガラス点移転が上昇し過ぎてポリマー主鎖の分子運動が抑えられることによる金属イオンの移動度の低下を抑制することができる。
【0020】
前記重合体の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記高分子電解質の総量に対して、5質量%以上50質量%以下が好ましい。
前記含有量が、5質量%以上50質量%以下であると、電解質をゲル化させて液漏れを防ぐことができる。
【0021】
<金属イオン>
前記金属イオンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオンなどが挙げられる。
これらの中でも、エネルギー密度の観点から、リチウムイオン、ナトリウムイオンが好ましく、リチウムイオンがより好ましい。
前記金属イオンを含む金属塩としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などが挙げられる。
【0022】
前記リチウム塩としては、高いイオン伝導度を示すものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)、過塩素酸リチウム(LiClO)、塩化リチウム(LiCl)、ホウ弗化リチウム(LiBF)、六弗化砒素リチウム(LiAsF)、トリフルオロメタスルホン酸リチウム(LiCFSO)、リチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(LiN(SOCF)、リチウムビスパーフルオロエチルスルホニルイミド(LiN(SO)、リチウムビスフルオロスルホニルイミド(LiN(SOF))などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、イオン移動度の大きさの観点から、LiPF、LiBF、LiN(SOF)、LiN(SOCFが好ましい。
前記金属イオンの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、高分子電解質中での金属イオン移動度の観点から、高分子電解質中で、0.5mol/Kg以上6mol/Kg以下が好ましく、0.5mol/Kg以上4mol/Kg以下がより好ましい。
【0023】
<可塑剤>
前記可塑剤は、前記高分子電解質中において前記金属イオンの移動を助ける効果がある。
前記可塑剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エーテル系化合物、ラクトン、環状カーボネート、鎖状カーボネート等の非水溶媒;イオン液体などが挙げられる。
これらは、1種単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
前記可塑剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記高分子電解質の総量に対して、20質量%以上70質量%以下が好ましい。
前記含有量が、20質量%以上70質量%以下であると、金属イオンの移動度が良好である。
【0024】
-非水溶媒-
前記エーテル系化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1,2-ジメトシキエタン(DME)、エチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、トリエチレングリコールジアルキルエーテル、テトラエチレングリコールジアルキルエーテル等のグライム(R-O(CHCHO)n-R’(R、R’は飽和炭化水素、nは整数)で表される対称グリコールジエーテルの総称)などが挙げられる。
イオン移動度の観点から、テトラグライム(テトラエチレンジメチルグリコール、G4)、トリグライム(トリエチレングリコールジメチルエーテル、G3)、ペンタグライム(ペンタエチレングリコールジメチルエーテル、G5)、ヘキサグライム(ヘキサエチレングリコールジメチルエーテル、G6)が好ましく、電解質塩と錯体構造を形成できる点で、テトラグライム、トリグライムがより好ましい。
前記ラクトンとしては、例えば、γ-ブチルラクトン、前記環状カーボネートとしては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、前記鎖状カーボネートとしては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートなどが挙げられる。
これらの中でも、Liイオンとの親和性の観点から、グライム、環状カーボネートが好ましい。
【0025】
-イオン液体-
前記イオン液体を構成するカチオンとしては、例えば、テトラエチルアンモニウムイオン、トリエチルメチルアンモニウムイオン、N,N,N-トリメチル-N-プロピルアンモニウムイオン、N,N-ジエチル-N-メチル-メトキシエチルアンモニウムイオン、1-メチル-1-プロピルピロリジニウムイオン、1-メチル-1-ブチルピロリジニウムイオン、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムイオン、1-メチル-3-ブチルイミダゾリウムイオン、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムイオン、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムイオン、1-メチル-3-ヘキシルイミダゾリウムイオン、1-オクチル-3-メチルイミダゾリウムイオン、1-メチル-3-オクチルイミダゾリウムイオン、1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムイオン、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムイオン、1-ヘキシル-2,3-ジメチルイミダゾリウムイオン、1-メチル-1-プロピルピペリジウムイオン、1-メチル-1-ブチルピペリジウムイオン、1-エチルピリジニウムイオン、1-ブチルピリジニウムイオン、1-ヘキシルピリジニウムイオン、トリブチル-n-オクチルホスホニウムイオン、テトラフェニルホスホニウムイオン、テトラエチルホスホニウムイオン、テトラ-n-オクチルホスホニウムイオン、メチルトリフェニルホスホニウムイオン、イソプロピルトリフェニルホスホニウムイオン、メトキシカルボニルホスホニウムイオン、(1-ナフチルメチル)トリフェニルホスホニウムイオン、トリメチルスルホニウムイオン、(2-カルボキシエチル)ジメチルスルホニウムイオン、ジフェニルメチルスルホニウムイオン、トリ-n-ブチルスルホニウムイオン、トリ-p-トリルスルホニウムイオン、トリフェニルスルホニウムイオン、シクロプロピルジフェニルスルホニウムイオンなどが挙げられる。
これらの中でも、1-メチル-1-ブチルピロリジニウムイオン、又は1-メチル-1-プロピルピロリジニウムイオンが特に好ましい。
【0026】
前記イオン液体を構成するアニオンとしては、例えば、PF6-、BF4-、N(SOF)2-、N(SOCF2-、N(SOF5)2-、SOCF3-などが挙げられる。
これらの中でも、ビスフルオロスルホニルイミドイオン(N(SOF)2-)及びテトラフロオロボレートイオン(BF4-)が好ましい。
【0027】
(液体組成物)
本発明の液体組成物は、重合体前駆体を含み、金属イオン、可塑剤、重合開始剤を含んでもよく、更に必要に応じて、溶媒などのその他の成分を含む。
また別の実施形態として、本発明の液体組成物は、上記した本発明の高分子電解質を含み、更に必要に応じて、溶媒などのその他の成分を含む。
前記重合体前駆体が、電解質基材モノマー、及びアミド基含有モノマーからなり、前記電解質基材モノマーが、(メタ)アクリルモノマー、ニトリルモノマー、フッ素モノマー、及びポリエーテルモノマーの少なくともいずれかであり、前記アミド基含有モノマーの割合が、モノマーの総量に対して、0質量%超40質量%以下である。
前記各モノマーの種類、及び割合については、核磁気共鳴(NMR)装置を用いた解析により同定することができる。
具体的には、NMR装置(ECX-500、日本電子株式会社製)を用いて、水素核H、及び炭素核13Cにより測定を行い、得られたシグナルを帰属することにより、各モノマーの種類、及び割合を同定することができる。
前記重合体前駆体を重合させることにより、電解質基材モノマーとアミド基含有モノマーとの共重合体である前記重合体が得られる。すなわち、前記液体組成物に含まれる前記重合体前駆体を重合させることにより、重合体を含む前記高分子電解質が得られる。
電解質基材モノマー、及びアミド基含有モノマーとしては、本発明の高分子電解質において説明した事項を適宜選択することができる。
【0028】
前記重合開始剤としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱重合開始剤、光重合開始剤などが挙げられる。
前記熱重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル(別名、V-601)などが挙げられる。
前記光重合開始剤としては、例えば、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノンなどが挙げられる。
【0029】
前記液体組成物の25℃での粘度としては、200mPa・s以下が好ましく、100mPa・s以下がより好ましく、50mPa・s以下が更に好ましい。粘度が200mPa・s以下であると、液体吐出装置で吐出しても吐出不良を起こしにくいという利点がある。なお、本明細書において、粘度が200mPa・s以下であることを、低粘度と記載することがある。
また、本明細書において粘度とは、25℃における粘度を表す。
前記液体組成物の粘度の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、JIS Z 8803に準じて測定することができる。前記測定に用いる装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばTV25型粘度計(コーンプレート型粘度計、東機産業株式会社製)などが挙げられる。
【0030】
(収容容器)
本発明の収容容器は、上記した本発明の液体組成物が収容された収容容器である。
容器としては、例えば、ガラス瓶、プラスチック容器、プラスチックボトル、ステンレスボトル、一斗缶、ドラム缶などが挙げられる。
【0031】
(高分子電解質膜の製造装置、及び高分子電解質膜の製造方法)
本発明の高分子電解質膜の製造装置は、上記した本発明の収容容器と、前記収容容器に収容された前記液体組成物を付与対象物上に付与する付与手段と、を含み、前記液体組成物に熱又は光を付与して重合させる重合手段を含むことが好ましく、必要に応じて、更にその他の手段を含む。
本発明の高分子電解質膜の製造方法は、上記した本発明の液体組成物を付与対象物上に付与する付与工程を含み、前記液体組成物に熱又は光を付与して重合させる重合工程を含むことが好ましく、必要に応じて、更にその他の工程を含む。
前記付与対象物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、集電体(電極基体)、活物質層などが挙げられる。
前記高分子電解質が、付与対象物上に層状に形成された高分子電解質である、電解質層であることが好ましい。
付与対象物を、集電体、又は集電体上に設けられた活物質層とすることにより、電解質層を有する電極を製造する製造装置及び製造方法とすることができる。このとき得られる電解質層を有する電極は、集電体又は活物質層と、前記高分子電解質と、が一体化された電解質層一体型電極であってもよい。
電極の製造方法及び電極の製造方法においては、例えば、電極の裁断などを行う電極加工工程を設けてもよい。
【0032】
<付与手段、付与工程>
前記付与手段は、前記収容容器に収容された前記液体組成物を付与対象物上に付与する手段である。
前記吐出工程は、前記液体組成物を付与対象物上に付与する工程であり、前記付与手段により好適に実施できる。
前記付与手段及び付与工程としては、前記液体組成物をインクジェット方式で吐出する付与手段及び付与工程であることが好ましい。
前記付与により、付与対象物上に液体組成物を付与して、液体組成物層を形成することができる。
前記付与対象物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、基材、電極などが挙げられる。これらの中でも、電極が好ましい。
【0033】
<重合手段、重合工程>
前記重合手段は、前記液体組成物に熱又は光を付与して重合させる手段である。
前記重合工程は、前記液体組成物に熱又は光を付与して重合させる工程であり、前記重合手段により好適に実施できる。
前記重合により、前記液体組成物中の前記重合体前駆体が重合し、電解質基材モノマーとアミド基含有モノマーとの共重合体である前記重合体を製造することができる。また、前記液体組成物に含まれる重合体前駆体が重合し、前記高分子電解質膜を製造することができる。
前記重合の手段及び方法としては、特に制限はなく、用いる重合開始剤や重合様式などの目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱重合の場合、80℃ホットプレート上で5分間加熱する加熱手段及び加熱方法、光重合の場合、波長365nmの紫外線を30秒間照射する光照射手段及び光照射方法などが挙げられる。
【0034】
[付与対象物に液体組成物を直接的に付与吐出することで電解質層を形成する実施形態]
図1は、本実施形態の高分子電解質膜の製造方法を実現するための高分子電解質膜の製造装置(液体吐出装置)の一例を示す模式図である。
高分子電解質膜の製造装置は、上記した液体組成物を用いて高分子電解質膜を製造する装置である。高分子電解質膜の製造装置は、付与対象物を有する印刷基材14上に、液体組成物を付与して液体組成物層を形成する付与工程を実施する付与手段110と、液体組成物層に熱又は光を付与して重合させる重合工程を実施する重合手段130を備える。高分子電解質膜の製造装置は、印刷基材14を搬送する搬送部15を備え、搬送部15は、付与手段110、重合手段130の順に印刷基材14をあらかじめ設定された速度で搬送する。
【0035】
前記集電体などの付与対象物を有する印刷基材14の製造方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができる。
付与手段110は、印刷基材14上に液体組成物を付与するインクジェット印刷法に応じた任意の印刷装置11aと、液体組成物を収容する収容容器11bと、収容容器11bに貯留された液体組成物を印刷装置11aに供給する供給チューブ11cを備える。
収容容器11bは液体組成物17を収容し、付与手段110は、印刷装置11aから液体組成物17を吐出して、印刷基材14上に液体組成物17を付与して液体組成物層を薄膜状に形成する。なお、収容容器11bは、高分子電解質膜の製造装置と一体化した構成であってもよいが、高分子電解質膜の製造装置から取り外し可能な構成であってもよい。また、高分子電解質膜の製造装置と一体化した収容容器や高分子電解質膜の製造装置から取り外し可能な収容容器に添加するために用いられる容器であってもよい。
収容容器11bや供給チューブ11cは、液体組成物17を安定して貯蔵及び供給できるものであれば任意に選択可能である。
重合手段130は、図3に示すように、熱重合の場合、加熱装置13aを有し、液体組成物中の重合体前駆体を、加熱装置13aにより加熱して重合させて重合体を形成する重合工程を実施する。これにより基材上に高分子電解質からなる電解質層を形成し、電極を形成することができる。重合手段130は、光重合の場合、光照射装置であってもよい。
加熱装置13aとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、基板加熱(例えば、ホットプレート)、IRヒータ、温風ヒータなどが挙げられ、これらを組み合わせてもよい。
光照射装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、紫外線照射装置などが挙げられる。
また、加熱又は光照射の条件(温度や時間)に関しては、液体組成物17に含まれる重合体前駆体や形成膜厚に応じて適宜選択可能である。
【0036】
図2は、本実施形態の高分子電解質膜の製造方法を実現するための高分子電解質膜の製造装置(液体吐出装置)の他の一例を示す模式図である。
液体吐出装置300’は、ポンプ310と、バルブ311、312を制御することにより、液体組成物が液体吐出ヘッド306、タンク307、チューブ308を循環することが可能である。
また、液体吐出装置300’は、外部タンク313が設けられており、タンク307内の液体組成物が減少した際に、ポンプ310と、バルブ311、312、314を制御することにより、外部タンク313からタンク307に液体組成物を供給することも可能である。
前記高分子電解質膜の製造装置を用いると、付与対象物の狙ったところに液体組成物を吐出することができる。
【0037】
本実施形態の高分子電解質膜の製造方法の他の例を図3に示す。
高分子電解質が設けられた電極210の製造方法は、液体吐出装置300’を用いて、集電体211上に、液体組成物12Aを、順次吐出する工程を含む。
まず、細長状の集電体211を準備する。そして、集電体211を筒状の芯に巻き付け、高分子電解質212を形成する側が、図3中、上側になるように、送り出しローラ304と巻き取りローラ305にセットする。ここで、送り出しローラ304と巻き取りローラ305は、反時計回りに回転し、集電体211は、図3中、右から左の方向に搬送される。そして、送り出しローラ304と巻き取りローラ305の間の集電体211の上方に設置されている液体吐出ヘッド306から、図1と同様にして、液体組成物12Aの液滴を、順次搬送される集電体211上に吐出する。
なお、液体吐出ヘッド306は、集電体211の搬送方向に対して、略平行な方向又は略垂直な方向に、複数個設置されていてもよい。次に、液体組成物12Aの液滴が吐出された集電体211は、送り出しローラ304と巻き取りローラ305によって、重合手段309に搬送される。その結果、高分子電解質212が形成され、高分子電解質が設けられた電極210が得られる。その後、高分子電解質が設けられた電極210は、打ち抜き加工等により、所望の大きさに切断される。
重合手段309は、集電体211の上下の何れか一方に設置されてもよいし、複数個設置されていてもよい。
重合手段309としては、液体組成物12Aに直接接触しなければ、特に制限はなく、例えば、熱重合の場合、抵抗加熱ヒータ、赤外線ヒータ、ファンヒータ等;光重合の場合、紫外線照射装置などが挙げられる。なお、重合手段309は、複数個設置されていてもよい。
【0038】
加熱又は光照射の条件は、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。重合により液体組成物12Aが重合されて高分子電解質が形成される。
また、図4のように、タンク307Aは、タンク307Aに接続されたタンク313Aから液体組成物を供給してもよく、液体吐出ヘッド306は、複数の液体吐出ヘッド306A、306Bを有してもよい。
【0039】
[付与対象物に液体組成物を間接的に付与吐出することで電解質層を形成する実施形態]
図5~6は、本実施形態の高分子電解質膜の製造装置としての、付与手段としてインクジェット方式、及び転写方式を採用した印刷部の一例を示す構成図であり、図5は、ドラム状の中間転写体を用いた印刷部、図6は、無端ベルト状の中間転写体を用いた印刷部を示す構成図である。
図5に示した印刷部400´は、中間転写体4001を介して基材に電解質組成物を転写することで付与対象物である基材の表面に電解質膜を形成する、インクジェットプリンタである。
【0040】
印刷部400´は、インクジェット部420、転写ドラム4000、前処理ユニット4002、吸収ユニット4003、加熱ユニット4004および清掃ユニット4005を備える。
インクジェット部420は、複数のヘッド101を保持したヘッドモジュール422を備える。ヘッド101は、転写ドラムに4000に支持された中間転写体4001に液体組成物を吐出し、中間転写体4001上に液体組成物層を形成する。各ヘッド101は、ラインヘッドであり、使用可能な最大サイズの基材の記録領域の幅をカバーする範囲にノズルが配列されている。ヘッド101は、その下面に、ノズルが形成されたノズル面を有しており、ノズル面は、微小間隙を介して中間転写体4001の表面と対向している。本実施形態の場合、中間転写体4001は円軌道上を循環移動する構成であるため、複数のヘッド101は、放射状に配置される。
【0041】
転写ドラム4000は、圧胴621と対向し、転写ニップ部を形成する。前処理ユニット4002は、ヘッド101による液体組成物の吐出前に、例えば、中間転写体4001上に、液体組成物の粘度を高めるための反応液を付与する。吸収ユニット4003は、転写前に、中間転写体4001上の液体組成物層から液体成分を吸収する。加熱ユニット4004は、転写前に、中間転写体4001上のインク層を加熱する。液体組成物層を加熱することで、液体組成物を熱重合させて、高分子電解質を形成する。また、溶媒が除去され、基材への転写性が向上する。清掃ユニット4005は、転写後に中間転写体4001上を清掃し、中間転写体4001上に残留したインクやごみ等の異物を除去する。
圧胴621の外周面は、中間転写体4001に圧接しており、圧胴621と中間転写体4001との転写ニップ部を基材が通過するときに、中間転写体4001上の電解質膜が基材に転写される。なお、圧胴621は、その外周面に基材の先端部を保持するグリップ機構を少なくとも1つ備えた構成としてもよい。
【0042】
図6に示した印刷部400´´は、中間転写ベルト4006を介して基材に電解質組成物を転写することで基材の表面に電解質膜を形成する、インクジェットプリンタである。
印刷部400´´は、インクジェット部420に設けた複数のヘッド101から液体組成物の液滴を吐出して、中間転写ベルト4006の外周表面上に液体組成物層を形成する。中間転写ベルト4006に形成された液体組成物層は、加熱ユニット4007によって加熱され、熱重合することで高分子電解質膜を形成し、中間転写ベルト4006上で膜化する。
【0043】
中間転写ベルト4006が転写ローラ622と対向する転写ニップ部において、中間転写ベルト4006上の膜化した高分子電解質膜は基材に転写される。転写後の中間転写ベルト4006の表面は、清掃ローラ4008によって清掃される。
中間転写ベルト4006は、駆動ローラ4009a、対向ローラ4009b、複数(本例では4つ)の形状維持ローラ4009c,4009d,4009e,4009f、および複数(本例では4つ)の支持ローラ4009gに架け渡され、図中矢印方向に移動する。ヘッド101に対向して設けられる支持ローラ4009gは、ヘッド101からインク滴が吐出される際の中間転写ベルト4006の引張状態を維持する。
【0044】
以上、図5~6について「電解質組成物」が、熱重合性のモノマーを含む液体組成物である実施形態について説明したが、「電解質組成物」としては、重合体(ポリマー)を含む液体組成物を転写する実施形態であってもよく、重合体前駆体(モノマー)を含む液体組成物を転写する実施形態であってもよい。重合体前駆体を含む液体組成物を転写する実施形態である場合、重合工程及びそのタイミングとしては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、転写前後又は転写中に加熱又は光照射により前記液体組成物を重合させてもよい。
【0045】
次に、図7~9を用いて付与手段の一例としての液体吐出ヘッドの構成を説明する。図7は液体吐出ヘッドの一例を示す概略分解図、図8は液体吐出ヘッドの流路構成の一例を示す説明図、図9は液体吐出ヘッドの流路構成の一例を示す断面斜視図である。
ヘッド101は、ノズル板10、流路板(個別流路部材)20、振動板部材30、共通流路部材50、ダンパ部材60、フレーム部材80および駆動回路104を実装した基板(フレキシブル配線基板)105などを備える。
ノズル板10は、インクを吐出する複数のノズル37を備え、複数のノズル37は、ノズル板短手方向およびこれと直交するノズル板長手方向に二次元状に並んで配置されている。
【0046】
流路板20には、複数のノズル37に各々連通する複数の液室(個別圧力室)26と、複数の液室26に各々通じる複数の供給流路(個別供給流路)27および回収流路(個別回収流路)28とが設けられている。なお、以降の説明では便宜上、1つの液室26と、当該液室26に通じる供給流路27および回収流路28とを併せて個別流路25とも称する。
振動板部材30は、液室26の変形が可能な壁面である振動板35を形成し、振動板35には圧電素子36が一体に設けられている。振動板部材30には、供給流路27に通じる供給側開口32と、回収流路28に通じる回収側開口33とが形成されている。圧電素子36は、振動板35を変形させて液室26内のインクを加圧する。
【0047】
なお、流路板20と振動板部材30は、別部材であることに限定されるものではない。例えばSOI(Silicon on Insulator)基板を使用して流路板20および振動板部材30を同一部材で一体に形成することも可能である。
つまり、シリコン基板上に、シリコン酸化膜、シリコン層、シリコン酸化膜の順に成膜されたSOI基板を使用し、シリコン基板を流路板20とし、シリコン酸化膜、シリコン層およびシリコン酸化膜で振動板35を形成できる。この構成では、SOI基板のシリコン酸化膜、シリコン層およびシリコン酸化膜の層構成が振動板部材30となる。このように、振動板部材30は流路板20の表面に成膜された材料で構成されるものを含む。
【0048】
共通流路部材50は、2以上の供給流路27に通じる複数の共通供給流路支流52と、2以上の回収流路28に通じる複数の共通回収流路支流53とを、ノズル板長手方向において交互に隣接して形成している。共通流路部材50には、供給流路27の供給側開口32と共通供給流路支流52を通じる供給口54となる貫通孔と、回収流路28の回収側開口33と共通回収流路支流53を通じる回収口55となる貫通孔が形成されている。
共通流路部材50は、複数の共通供給流路支流52に通じる1または複数の共通供給流路本流56と、複数の共通回収流路支流53に通じる1または複数の共通回収流路本流57を形成している。
【0049】
ダンパ部材60は、共通供給流路支流52の供給口54と対面する供給側ダンパ62と、共通回収流路支流53の回収口55と対面する回収側ダンパ63を備える。共通供給流路支流52および共通回収流路支流53は、同じ部材である共通流路部材50に交互に並べて配列された溝部を、ダンパ部材60の供給側ダンパ62または回収側ダンパ63で封止することで構成している。なお、ダンパ部材60のダンパ材料としては、有機溶剤に強い金属薄膜または無機薄膜を用いることが好ましい。ダンパ部材60の供給側ダンパ62、回収側ダンパ63の部分の厚みは10μm以下が好ましい。
【0050】
共通供給流路支流52と共通回収流路支流53の内壁面、および共通供給流路本流56と共通回収流路本流57の内壁面には、流路内を流れるインクに対して内壁面を保護するための保護膜が形成されている。例えば、共通供給流路支流52と共通回収流路支流53の内壁面、および共通供給流路本流56と共通回収流路本流57の内壁面は、Si基板が熱処理されることで、表面に酸化シリコン膜が形成される。酸化シリコン膜の上にはインクに対してSi基板の表面を保護するタンタルシリコン酸化膜が形成される。
【0051】
フレーム部材80は、その上部に供給ポート81と排出ポート82を備える。供給ポート81は共通供給流路本流56にインクを供給し、排出ポート82は共通回収流路本流57より排出されるインクを排出する。
上述のようにヘッド101は、インクを吐出するノズル37、ノズル27に通じる液室26、液室26にインクを供給する供給流路27、および液室26からインクを回収する回収流路28を有する。ここで、ヘッド101は「液体吐出ヘッド」の一例、液室26は「液室」の一例、供給流路27は「供給流路」の一例、回収流路28は「回収流路」の一例である。
【0052】
なお、ヘッド101の構成として、ノズル板10のノズル面(ノズル37が形成された面)の形状は長方形に限らず、台形、ひし形、平行四辺形など、長方形以外の形状であってもよい。
その一例を、図10~11を用いて説明する。図10は、平行四辺形状のノズル板を備えたヘッドの一例を示す構成図、図11は、図10のヘッドを複数並べた状態を示す説明図である。
【0053】
ヘッド1Rは、ノズル板短手方向に対して角度θ傾斜した外形(稜線)を有し、ヘッド1Rの液体吐出部101Rおよびノズル板10Rもこの稜線に沿う形状に形成されている。つまり、液体吐出部101Rは、外形形状が平行四辺形をしたノズル板10Rを有し、ノズル板10Rには複数のノズル37Rが規則的に二次元状に配列されている。ノズル37Rの配列は、例えば、N個のノズル37Rによって1列のノズル列37Nが構成され、このノズル列37Nを、上述の稜線と平行に、且つノズル板短手方向と直交するノズル板長手方向に複数列設けた配列となっている。
上記構成のヘッド1Rは、図11に示すように複数のヘッド1Ra,1Rbをノズル板長手方向に1列に並べることが可能であり、これにより、使用する基材の記録幅に合わせて、所望の長さのラインヘッドを得ることができる。
【0054】
(蓄電素子)
本発明の蓄電素子は、電極、及び本発明の高分子電解質、又は本発明の高分子電解質を有する電極を有し、正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に配置され、前記高分子電解質を保持するセパレータを有してもよく、更に必要に応じてその他の部材を有する。
前記高分子電解質としては、本発明の高分子電解質において説明した事項を適宜選択することができる。
なお、「蓄電素子」を「二次電池」とも称する。
【0055】
(蓄電素子の製造装置、及び蓄電素子の製造方法)
本発明の蓄電素子の製造装置は、上述した本発明の高分子電解質膜の製造装置により電極を製造する電極製造部と、前記電極を用いて蓄電素子を製造する蓄電素子化部と、を有し更に必要に応じて、その他の手段を有する。
本発明の蓄電素子の製造方法は、上述した本発明の高分子電解質膜の製造装置により電極を製造する電極製造工程と、前記電極を用いて蓄電素子を製造する蓄電素子化工程と、を含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
【0056】
<電極製造部、及び電池製造工程>
前記電極製造部は、上記した本発明の収容容器と、前記収容容器に収容された前記液体組成物を付与対象物としての集電体、又は集電体上に設けられた活物質層上に付与する付与手段と、を含み、前記液体組成物に熱又は光を付与して重合させる重合手段を含むことが好ましく、更に必要に応じて、電極加工手段などのその他の手段を有する。
前記電極製造工程は、上記した本発明の液体組成物を付与対象物としての集電体、又は集電体上に設けられた活物質層上に付与する付与工程を含み、前記液体組成物に熱又は光を付与して重合させる重合工程を含むことが好ましく、更に必要に応じて、電極加工工程などのその他の手段を有する。
前記電極製造部、及び前記電極製造工程により、集電体、又は集電体上に設けられた活物質層と、その上に本発明の高分子電解質からなる電解層とを有する電極を製造することができる。電解質層を有する電極は、集電体又は活物質層と、前記高分子電解質と、が一体化された電解質層一体型電極であってもよい。
前記付与手段、及び付与工程としては、高分子電解質膜の製造装置、及び高分子電解質膜の製造方法において説明した事項を適宜選択することができる。
前記重合手段、及び重合工程としては、高分子電解質膜の製造装置、及び高分子電解質膜の製造方法において説明した事項を適宜選択することができる。
前記電極加工手段、及び電極加工工程としては、例えば、電極の裁断などが挙げられる。
【0057】
<蓄電素子化部、及び蓄電素子化工程>
前記蓄電素子化部は、前記電池を用いて蓄電素子を製造する手段である。
前記蓄電素子化工程は、前記電池を用いて蓄電素子を製造する工程である。
電池を用いて蓄電素子を製造する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜公知の蓄電素子の製造方法を選択することができ、例えば、対向電極の設置、巻回又は積層、容器への収容の少なくともいずれかを行い蓄電素子とする方法が挙げられる。
なお、セル化工程としては、蓄電素子化の全行程を備える必要はなく、蓄電素子化の一部の工程を含むものであってもよい。
【0058】
本実施形態に係る蓄電素子の形状については、特に制限はなく、図12に示すような形状の他にも、一般的に採用されている各種形状の中から、その用途に応じて適宜選択することができる。
【0059】
前記形状としては、例えば、シート電極及び高分子電解質をスパイラル状にしたシリンダータイプ、ペレット電極及び高分子電解質を組み合わせたインサイドアウト構造のシリンダータイプ、ペレット電極及び高分子電解質を積層したコインタイプなどが挙げられる。
本実施形態に係る蓄電素子は、図12に示すように、正極1と、正極1に対向して設けられた負極2と、正極1と負極2との間に配置された高分子電解質3と、を有している。高分子電解質3としては、正極1及び負極2とは独立して設けられてもよく、正極1又は負極2に一体化された形で設けられてもよい。
蓄電素子10は、正極1と、負極2と、高分子電解質3とを囲繞して保持する外装缶としての容器5と、容器5を貫いて正極1と接続された正極線6と、同様に容器5を貫いて負極2と接続された負極線7と、を有している。
【0060】
<電極>
本実施形態に係る電極は、必要に応じてその他の部材を有する。
前記電極としては、正極及び負極のいずれであってもよい。
【0061】
-正極-
正極は、正極集電体と、正極材と、を備えた平板状の電極部である。
正極材は、正極活物質、バインダ、導電助剤、及び増粘剤を含有し、更に必要に応じて固体電解質、例えば本実施形態に係る高分子電解質、酸化物系固体電解質、硫化物系固体電解質、ゲル状高分子系固体電解質、その他の成分を含有する。
【0062】
-正極活物質-
本実施形態に係る正極活物質は、アルカリ金属を含む酸化物、遷移金属を含む酸化物、又はアルカリ金属及び遷移金属を含む酸化物であることが好ましく、アルカリ金属を含む酸化物がより好ましい。アルカリ金属は、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)及びカリウム(K)から選択される1種以上であることが好ましい。
アルカリ金属を含む酸化物としては、AMO、AM、AMO、又はAMBOで表されるアルカリ金属含有複合酸化物を用いてもよい。式中のAは、アルカリ金属であり、好ましくはLiである。式中のMは、主として遷移金属であり、Co、Mn、Ni、Cr、Fe、Tiからなる群から選択される1種以上を含むことが好ましい。Mは、遷移金属以外にもAl、Ga、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Si、P、B等の非遷移金属を含んでもよい。 式中のBは、P及びSiからなる群から選択される1種以上を含むことが好ましい。
【0063】
アルカリ金属を含む酸化物である正極活物質の好ましい具体例としては、LixCoO,LixNiO,LixMnO,LixCrO,LixCoaNi1-aO,LixMnaNi1-aO,LixCobMncNi1-b-cO,LixMn,LiyMnO,LiyMneFe1-eO,LiyMneTi1-eO,LixCoPO,LixMnPO,LixNiPO,LixFePO,LixMnfFe1-fPO等のリチウム含有複合酸化物を挙げることができる。上記において、x=0.01~1.2,y=0.01~2.2,a=0.01~0.99,b=0.01~0.98,c=0.01~0.98である。但し、b+c=0.02~0.99,d=1.49~1.99,e=0.01~0.99,f=0.01~0.99,g=0.01~0.99,h=0.01~0.99である。なお、上記のx,yの値は充放電によって増減する。
【0064】
-バインダ及び増粘剤-
バインダは、正極活物質同士、又は正極活物質と正極集電体とを結着させ、電極構造を維持するためのバインダである。
バインダの材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フッ素系バインダ、アクリレート系ラテックス、カルボキシメチルセルロース(CMC)、エチレン-プロピレン-ブタジエンゴム(EPBR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム、アクリレート系ラテックス、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、アルギン酸、酸化スターチ、リン酸スターチ、カゼインなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記フッ素系バインダとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などが挙げられる。
なお、バインダは、電極製造時に用いる溶媒、及び印加される電位に対して安定な材料であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択される。
【0065】
-導電助剤-
前記導電助剤とは、電極中に分散して電極の抵抗を低減するために使用される導電性材料を指し、電極材料間の導電性を補助する役割を担い、導電ネットワークの形成機能を有する。
前記導電助剤は、金属材料、又は正極活物質に合わせて炭素質材料を用いることが好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記導電助剤に用いられる金属材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、銅、アルミニウムなどが挙げられる。
前記導電助剤に用いられる炭素質材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、人造黒鉛、天然黒鉛、グラフェン、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブなどが挙げられる。これらの中でも、アセチレンブラック、ケッチェンブラックが好ましい。
これら導電助剤は活物質と複合化して使用することもでき、これにより導電性を向上させることができる。
【0066】
-正極集電体-
正極集電体は、蓄電素子に使用可能な大きさであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記正極集電体の材質としては、導電性材料で形成されたもので、印加される電位に対して安定であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ニッケル、アルミニウム、チタン、タンタルなどが挙げられる。これらの中でも、ステンレススチール、アルミニウムが好ましい。
前記正極集電体の種類(形状や加工の有無)としては、後述する正極の製造方法の工程において、使用可能な耐久性があれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、プレーン箔、孔空箔、エッジド箔、貫通箔、突起箔、エキスパンドメタルなどが挙げられる。これらの中でも、プレーン箔、孔空箔、エッジド箔、貫通箔、突起箔が好ましい。
前記正極集電体上に、前記導電助剤に用いられる炭素質材料があらかじめ塗布されているコーティング箔を正極集電体として使用してもよい。この際にコーティング層として使用される炭素質材料は導電助剤で既に説明した導電助剤として使用される炭素質材料と同様の炭素質材料を用いることができる。これらの中でも、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、人造黒鉛、天然黒鉛が好ましい。
【0067】
<正極の製造方法>
正極の製造方法としては、正極活物質に、必要に応じて、バインダ、増粘剤、導電助剤、溶媒を加えてスラリー状とした正極材を、正極集電体上に塗布し、乾燥させる方法などが挙げられる。
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、アルコール等の水系溶媒;N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、トルエン、アニソール等の有機系溶媒;などが挙げられる。
なお、正極活物質をロール成形してシート電極としたり、圧縮成形によりペレット電極としてもよい。
【0068】
-負極-
負極は、負極集電体と、負極材と、を備えた平板状の電極部である。
負極材は、負極活物質、バインダ、導電助剤、増粘剤、及び導電助剤を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
【0069】
-負極活物質-
負極活物質は、非水溶媒系でカチオンを吸蔵及び放出可能であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記負極活物質に用いられる材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カチオンとしてのリチウムイオンを吸蔵、放出可能な炭素質材料、金属酸化物、リチウムと合金化可能な金属又は金属合金、リチウムと合金化可能な金属とリチウムとを含む合金とリチウムとの複合合金化合物、チッ化金属リチウムなどが挙げられる。
金属酸化物としては、例えば、酸化アンチモン錫、一酸化珪素などが挙げられる。
リチウムと合金化可能な金属又は金属合金としては、例えば、リチウム、アルミニウム、錫、珪素、亜鉛などが挙げられる。
リチウムと合金化可能な金属とリチウムとを含む合金とリチウムとの複合合金化合物としては、例えば、チタン酸リチウムなどが挙げられる。
チッ化金属リチウムとしては、例えば、チッ化コバルトリチウムなどが挙げられる。
これらのうち、安全性とコストの点から、炭素質材料が好ましい。炭素質材料としては、例えば、黒鉛(グラファイト)、様々な熱分解条件での有機物の熱分解物、活性炭などが挙げられる。前記黒鉛(グラファイト)としては、例えば、コークス、人造黒鉛、天然黒鉛、易黒鉛化性炭素、難黒鉛化性炭素などが挙げられる。
【0070】
これらの負極活物質に用いられる材料は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、人造黒鉛、天然黒鉛、チタン酸リチウムが好ましい。
なお、カチオンとしては、リチウムイオンが汎用されている。
【0071】
-導電助剤-
負極に用いられる導電助剤としては、正極で既に説明した導電助剤と同様の導電助剤を用いることができる。
【0072】
-バインダ及び増粘剤-
負極に用いられるバインダ及び増粘剤としては、前記正極のバインダと同様のバインダ及び増粘剤を用いることができる。
前記バインダ及び増粘剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、フッ素系バインダ、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)が好ましい。
【0073】
-負極集電体-
負極集電体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記負極集電体の材質としては、導電性材料で形成されたものであり、印加される電位に対して安定であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ステンレススチール、ニッケル、アルミニウム、銅などが挙げられる。これらの中でも銅が好ましい。
前記負極集電体の形状は、平板状の他、目的に応じて適宜選択してよい。
前記負極集電体の大きさは、蓄電素子に使用可能な大きさであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0074】
-負極の製造方法-
負極の製造方法としては、例えば、負極活物質に、必要に応じてバインダ、増粘剤、導電助剤、溶媒などを加えてスラリー状とした負極材を、負極集電体上に塗布して乾燥する方法が用いられる。
なお、スラリー状とした負極材をそのままロール成形してシート電極とする方法、圧縮成形によりペレット電極とする方法、蒸着、スパッタ、メッキ等により負極集電体上に負極活物質の薄膜を形成する方法などを用いてもよい。
負極の製造方法に用いる溶媒としては、正極の製造方法と同様の溶媒を用いることができる。
【0075】
-セパレータ-
前記セパレータは、正極と負極との短絡を防ぐために正極と負極との間に設けることができる。前記セパレータの材質、形状、大きさ、及び構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記セパレータの材質としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン等の合成樹脂製の不織布;ガラスフィルター、多孔質セラミックフィルム、多孔質薄膜フィルムなどを用いることができる。
前記セパレータとしては、単層構造であってもよく、複数のセパレータを重ね合わせた積層構造であってもよい。前記セパレータは正極上、負極上、高分子電解質内のいずれかの箇所に配置することができる。
【0076】
-固体電解質-
本発明において、高分子電解質と固体電解質を合わせて使用することができる。本発明において固体電解質とは電極中に分散して電極のイオン移動抵抗を低減するために使用される電解質を指し、電極材料間のイオン導電性を補助する役割を担う。
前記固体電解質の例としては、リチウムを含む固体電解質、例えば、Li10GePS1、Li13、70LiS-30P、La0.1Li0.34TiO2.94、Li1.1Al0.7Ti1.5(PO、LiLaZr12、Li1.5Al0.5Ge1.5(PO、Li1.3Al0.3Ti1.7(PO、LiO-Al-SiO-P-TiO-GeO、La0.51Li0.34Ti2.94、Li2.9PO3.30.46などを好ましく用いることができる。高分子電解質と固体電解質を合わせて使用することで、柔軟性に乏しい固体電解質に柔軟性を付与し蓄電素子の用途を広げることができ、さらにイオン移動度を向上させることができる。
【0077】
<用途>
前記蓄電素子の用途には、特に制限はなく、各種用途に用いることができ、例えば、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー、ラジオ、モーター、照明器具、玩具、ゲーム機器、時計、ストロボ、カメラ等の電源、バックアップ電源などが挙げられる。
本実施形態に係る高分子電解質は、優れた金属イオン移動度、金属イオン輸率、及び機械強度を有し、高い電池性能を得ることができる。
【実施例0078】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。
高分子電解質前駆体の調製、高分子電解質の作製、コインセル組み立てはすべて、水分、酸素濃度ともに<0.1ppmのグローブボックス内で行った。
【0079】
(実施例1)
<高分子電解質の作製>
<<高分子電解質前駆体の調製>>
LIFSI(キシダ化学株式会社製)を0.58g、可塑剤としてのトリグライム(キシダ化学株式会社製)を1.48g、熱重合開始剤としてのV-601(富士フイルム和光純薬株式会社製)を8.8mg混合し、溶解した。その後、アミド基含有モノマーとしてのN,N-ジメチルアクリルアミド(KJケミカルズ株式会社製;以下、「DMAA」と記載)0.12gを混合し、溶解した後、ポリエーテルモノマーとしてのポリエチレングリコールジアクリレート(東京化成工業株式会社製、エチレングリコールの繰り返し数n=14;以下、「PEGDAn=14」と記載)を1.03g混合して溶解し、実施例1の高分子電解質前駆体(液体組成物)を調製した。
【0080】
<<高分子電解質の作製>>
調製した高分子電解質前駆体をアルミ箔上にブレード塗工(箔とブレードのギャップを200μmに設定)し、80℃ホットプレート上で5分間加熱することで実施例1の高分子電解質を作製した。
アミド基含有モノマーの割合及び種類などの高分子電解質の組成を表1に示す。
【0081】
<評価>
作製した高分子電解質について、以下のように金属イオン移動度、金属イオン輸率、及び機械強度を測定し、評価した。結果を表1に示す。
【0082】
<<金属イオン移動度の測定>>
実施例1の高分子電解質を直径16mmの円形に打ち抜き、直径16mm、厚さ0.5mmのSUS製スペーサーで挟み込んだ。これを2032コインセル外挿に組み込みイオン移動度評価用コインセルを組み立てた。
組み立てたコインセルを23℃においてインピーダンスアナライザーで交流インピーダンスを7MHzから4mHzまで測定し、高周波数側の円弧と低周波数側の直線との交点の実数成分インピーダンスを求め、以下の式に基づいて金属イオン移動度を算出した。
【化1】
【0083】
<金属イオン輸率t+の測定>
高分子電解質前駆体を直径8cmのシャーレに底面が完全に覆われる量をいれ、80℃ホットプレート上で5分間加熱することで実施例1の高分子電解質を作製した。高分子電解質をシャーレからはがしとり、直径16mmの円形に打ち抜き、直径16mmのLi箔で両側から挟み込んだ。これを2032コインセル外挿に組み込み金属イオン輸率測定用コインセルを組み立てた。
組み立てたコインセルを23℃においてインピーダンスアナライザーで交流インピーダンスを7MHzから4mHzまで測定し、初期状態のバルク抵抗R(0)を測定した。続いて、10mVの直流分極電圧Vを加えてセルを流れる電流の経時変化を3時間測定し、直流分極電圧を加え始めた際の電流値を初期電流値I(0)、3時間経過後に流れる電流値を定常電流値I(s)とした。3時間後に再び交流インピーダンス測定を行い定常状態のバルク抵抗R(s)を求めた。以下の式に基づいてLiイオン輸率t+を算出した。
【化2】
【0084】
<<機械強度特性の測定>>
実施例1の高分子電解質を直径16mmの円形に打ち抜き、アルミ箔で挟んだ後、錠剤成型機用ミニプレスセットを用いて、14.5MPaの圧力を印可し、プレス前後での高分子電解質層の破壊有無を確認し、破壊されなかった場合は〇(良好)、破壊された場合は×(不良)と評価した。
【0085】
(実施例1)
<二次電池の作製>
<<正極の作製>>
正極活物質であるニッケル、コバルト、アルミの混合粒子94質量部と、導電助剤としてのケッチェンブラック3質量部と、バインダ樹脂としてのポリフッ化ビニリデン3質量部を、溶媒としてのN-メチルピロリドン中に均一に分散して、正極スラリーを得た。
次に、得られた正極スラリーを、正極集電体としての平均厚み20μmのプレーンアルミニウム箔にドクターブレードを用いて片面に塗布した。これを120℃に設定した温風乾燥機で20分間乾燥することで正極を得た。
【0086】
<<正極上への高分子電解質層の形成>>
実施例1の高分子電解質前駆体を作製した正極上にドクターブレードを用いて塗布し、80℃ホットプレート上で5分間加熱することで正極上に高分子電解質層を作製した。
【0087】
<<コインセルの作製>>
得られた高分子電解質を有する正極を直径16mmの円形に打ち抜き、直径16mmのLi箔(Li-フォイル、本城金属株式会社製、厚み:0.2mm)を高分子電解質層上に配置した。これを2032コインセル外挿(宝泉株式会社製)に組み込み、実施例1の二次電池としての評価用コインセルを組み立てた。
【0088】
<評価>
作製した二次電池について、以下のように電池性能として、0.05C放電容量、0.2C放電容量、レート特性、及びサイクル維持率を測定し、評価した。結果を表1に示す。
【0089】
<<充放電試験>>
実施例1のコインセルを25℃の恒温槽中に保持し、自動電池評価装置(1024B-7V0.1A-4、株式会社エレクトロフィールド製)を用いて、以下のとおりの充放電試験を実施した。
充電レート0.05C換算の電流値において、充電終止電圧として4.2Vまで定電流充電を行った。5分間休止後、0.05C換算の電流値において、放電終止電圧として3.0Vまで定電流放電を行った。その後、0.2C換算の電流値において、同様の充放電操作を行った。それぞれのレートにおける容量を正極活物質1g当たりの換算値(mAh/g)として、「0.05C放電容量」、「0.2C放電容量」として算出した。
また、0.05C放電容量に対する、0.2C放電容量の出現率を「レート特性」として算出した。
また、0.2Cレートにて、4.2Vまで充電した後、5分間休止し、3.0Vまで放電する操作を20回繰り返した。初回における放電容量に対する、20回目の放電容量の出現率を「サイクル維持率」として算出した。
【0090】
なお、0.05C換算の電流値とは、公称容量値の容量を有するコインセルを定電流放電して、20時間で放電終了となる電流値であり、0.2C換算の電流値とは、5時間で放電終了となる電流値のことである。
「0.05C放電容量」が、175[mAh/g]未満、「0.2C放電容量」が、140[mAh/g]未満、「レート特性」が、70[%]未満、「サイクル維持率」が、90[%]未満の少なくとも1項目に該当する場合は、電池特性が不良であると評価する。
一方、「0.05C放電容量」が、175[mAh/g]以上、「0.2C放電容量」が、140[mAh/g]以上、「レート特性」が、70[%]以上、「サイクル維持率」が、90[%]以上である場合は、それぞれの項目において良好な評価結果であると判断できる。
【0091】
(実施例2)
実施例1の高分子電解質前駆体の調製において、DMAAを0.23g、PEGDAn=14を0.92gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例2の高分子電解質前駆体、高分子電解質、及び二次電池を作製し、実施例1と同様に評価した。組成及び結果を表1及び表2にそれぞれ示す。
【0092】
(実施例3)
実施例1の高分子電解質前駆体の調製において、DMAAを0.35g、PEGDAn=14を0.81gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例3の高分子電解質前駆体、高分子電解質、及び二次電池を作製し、実施例1と同様に評価した。組成及び結果を表1及び表2にそれぞれ示す。
【0093】
(実施例4)
実施例1の高分子電解質前駆体の調製において、DMAAを0.46g、PEGDAn=14を0.69gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例4の高分子電解質前駆体、高分子電解質、及び二次電池を作製し、実施例1と同様に評価した。組成及び評価結果を表1及び表2にそれぞれ示す。
【0094】
(実施例5)
実施例1の高分子電解質前駆体の調製において、DMAAをジエチルアクリルアミド(KJケミカルズ株式会社製;以下、「DEAA」と記載)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例5の高分子電解質前駆体、高分子電解質、及び二次電池を作製し、実施例1と同様に評価した。組成及び評価結果を表1及び表2にそれぞれ示す。
【0095】
(実施例6)
実施例1の高分子電解質前駆体の調製において、DMAAをヒドロキシエチルアクリルアミド(KJケミカルズ株式会社製;以下、「HEAA」と記載)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例6の高分子電解質前駆体、高分子電解質、及び二次電池を作製し、実施例1と同様に評価した。組成及び評価結果を表1及び表2にそれぞれ示す。
【0096】
(実施例7)
実施例1の高分子電解質前駆体の調製において、DMAAをジメチルアミノプロピルアクリルアミド(KJケミカルズ株式会社製;以下、「DMAPAA」と記載)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例7の高分子電解質前駆体、高分子電解質、及び二次電池を作製し、実施例1と同様に評価した。組成及び評価結果を表1及び表2にそれぞれ示す。
【0097】
(実施例8)
実施例1の高分子電解質前駆体の調製において、DMAAをN-イソプロピルアクリルアミド(富士フイルム和光純薬株式会社製;以下、「NIPAAm」と記載)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例8の高分子電解質前駆体、高分子電解質、及び二次電池を作製し、実施例1と同様に評価した。組成及び評価結果を表1及び表2にそれぞれ示す。
【0098】
(実施例9)
実施例1の高分子電解質前駆体の調製において、熱重合開始剤を光重合開始剤である2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン8.8mg使用に変更し、高分子電解質の作製においてホットプレート加熱の代わりに波長365nmのUV光を30秒間照射したこと以外は、実施例1と同様にして実施例9の高分子電解質前駆体、高分子電解質、及び二次電池を作製し、実施例1と同様に評価した。組成及び評価結果を表1及び表2にそれぞれ示す。
【0099】
(実施例10)
実施例9の高分子電解質前駆体の調製において、PEGDAn=14を0.77gに変更し、(メタ)アクリルモノマーとしてのメタクリル酸メチル(富士フイルム和光純薬株式会社製;以下、「MMA」と記載)を0.26g加えたこと以外は、実施例9と同様にして実施例10の高分子電解質前駆体、高分子電解質、及び二次電池を作製し、実施例1と同様に評価した。組成及び評価結果を表1及び表2にそれぞれ示す。
【0100】
(実施例11)
実施例9の高分子電解質前駆体の調製において、PEGDAn=14をポリエーテルモノマーとしてのEO変性ビスフェノールaジアクリレート(第一工業製薬株式会社製)に変更したこと以外は、実施例9と同様にして実施例11の高分子電解質前駆体、高分子電解質、及び二次電池を作製し、実施例1と同様に評価した。組成及び評価結果を表1及び表2にそれぞれ示す。
【0101】
(実施例12)
実施例9の高分子電解質前駆体の調製において、PEGDAn=14をフッ素含有モノマー及び(メタ)アクリルモノマーとしてのメタクリル酸2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチル(東京化成工業株式会社製)に変更したこと以外は、実施例9と同様にして実施例12の高分子電解質前駆体、高分子電解質、及び二次電池を作製し、実施例1と同様に評価した。組成及び評価結果を表1及び表2にそれぞれ示す。
【0102】
(実施例13)
実施例9の高分子電解質前駆体の調製において、PEGDAn=14を0.77gに変更し、(メタ)アクリルモノマーとしての2-シアノアクリル酸エチル(ALDRICH社製)を0.26g加えたこと以外は、実施例9と同様にして実施例13の高分子電解質前駆体、高分子電解質、及び二次電池を作製し、実施例1と同様に評価した。組成及び評価結果を表1及び表2にそれぞれ示す。
【0103】
(実施例14)
実施例1の高分子電解質前駆体の調製において、可塑剤として、トリグライム0.55gに変更してエチレンカーボネート(キシダ化学株式会社製;以下、「EC」と記載)を0.93g加えたこと以外は、実施例1と同様にして実施例14の高分子電解質前駆体、高分子電解質、及び二次電池を作製し、実施例1と同様に評価した。組成及び評価結果を表1及び表2にそれぞれ示す。
【0104】
(実施例15)
実施例1の高分子電解質前駆体の調製において、可塑剤として、トリグライム0.55gに変更してエチルメチルカーボネート(キシダ化学株式会社製;以下、「EMC」と記載)を0.93g加えたこと以外は、実施例1と同様にして実施例15の高分子電解質前駆体、高分子電解質、及び二次電池を作製し、実施例1と同様に評価した。組成及び評価結果を表1及び表2にそれぞれ示す。
【0105】
(実施例16)
実施例1の高分子電解質前駆体の調製において、可塑剤として、トリグライム0.55gに変更し、γ-ブチルラクトン(キシダ化学株式会社製;以下、「GBL」と記載)を0.93g加えたこと以外は、実施例1と同様にして実施例16の高分子電解質前駆体、高分子電解質、及び二次電池を作製し、実施例1と同様に評価した。組成及び評価結果を表1及び表2にそれぞれ示す。
【0106】
(比較例1)
実施例1の高分子電解質前駆体の調製において、LIFSIを0.58g、トリグライムを1.48g、V-601を8.8mg混合して溶解した後、PEGDAn=14を1.15g混合して溶解したこと以外は、実施例1と同様にして比較例1の高分子電解質前駆体、高分子電解質、及び二次電池を作製し、実施例1と同様に評価した。組成及び評価結果を表1及び表2にそれぞれ示す。
【0107】
(比較例2)
実施例1の高分子電解質前駆体の調製において、DMAAを0.58g、PEGDAn=14を0.58gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして比較例2の高分子電解質前駆体、高分子電解質、及び二次電池を作製し、実施例1と同様に評価した。組成及び評価結果を表1及び表2にそれぞれ示す。
【0108】
(比較例3)
実施例1の高分子電解質前駆体の調製において、DMAAを0.92g、PEGDAn=14を0.23gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして比較例3の高分子電解質前駆体、高分子電解質、及び二次電池を作製し、実施例1と同様に評価した。組成及び評価結果を表1及び表2にそれぞれ示す。
【0109】
(比較例4)
実施例1の高分子電解質前駆体の調製において、LIFSIを0.58g、トリグライムを1.48g、V-601を8.8mg混合して溶解した後、DMAAを1.15g混合して溶解したこと以外は、実施例1と同様にして比較例4の高分子電解質前駆体、高分子電解質、及び二次電池を作製し、実施例1と同様に評価した。組成及び評価結果を表1及び表2にそれぞれ示す。
【0110】
【表1】
【0111】
【表2】
【0112】
高分子電解質特性の評価では、実施例1~4、比較例2~4において、アミド基含有モノマーとしてDMAAを用いて、金属イオン移動度、金属イオン輸率、及び機械強度の評価を行った。表2の結果から、アミド基含有モノマーを添加していない比較例1と比べて、金属イオン移動度、及び金属イオン輸率の向上がみられることがわかった。ただし、アミド基含有モノマーの割合が100質量%である比較例4では、金属イオン移動度の低下が起こることがわかった。また、機械強度については、比較例1では圧力印可により、高分子電解質の破壊が生じたのに対し、アミド基含有モノマーを添加した実施例1~4では機械強度特性の向上が確認された。
これは、重合体中に存在するアミド基と、金属塩中のアニオンの相互作用が生じることでアニオンが安定化され、リチウムイオンの移動度向上効果が得られることに加え、アミド基同士の水素結合により機械強度の向上がみられるためと考えられる。一方で、比較例2~4のように高分子電解質中のアミド基比率が高すぎる場合、高分子電解質中での結晶化が生じ、機械強度の低下が起こらないものの、後述するように電池特性が低下すると考えられる。
【0113】
実施例5~8の高分子電解質では、アミド基含有モノマーをDMAAから変更し、金属イオン移動度、金属イオン輸率、及び機械強度の評価を行った。いずれにおいても、アミド基含有モノマーを添加していない比較例1と比べて、金属イオン移動度、金属イオン輸率、及び機械強度特性の向上がみられることがわかった。
実施例9では、熱重合開始剤を光重合開始剤に変更し、高分子電解質の特性を評価した結果、重合開始剤の種類によらず、金属イオン移動度、金属イオン輸率、及び機械強度に優れることがわかった。
実施例10~13では、電解質基材モノマーを種々のモノマーに変更し、高分子電解質の特性を評価した。その結果、各種電解質基材モノマーを用いた際も、同等の性能が得られることがわかった。
実施例14~16では、可塑剤に各種非水溶媒を用いて、高分子電解質の特性を評価した。その結果、いずれの可塑剤においても、金属イオン移動度、金属イオン輸率、及び機械強度特性の向上がみられた。
【0114】
電池特性の評価では、表2の結果から、アミド基含有モノマーとしてDMAAを用い、アミド基含有モノマー割合が40質量%以下である実施例1~4は、アミド基含有モノマーを添加していない比較例1と比べて、高い0.05C放電容量、0.2C放電容量、及びレート特性を示していることがわかった。
アミド基含有モノマー割合が40質量%よりも多い、比較例2~4では0.2C放電容量の低下が確認され、特に、比較例3~4では0.2C放電容量が大幅に低下し、0.2Cサイクル維持率を評価することができないことがわかった。
実施例5~8では、アミド基含有モノマーをDMAAから変更し、電池評価を行った。いずれのアミド基含有モノマーにおいても、比較例1と比べて、高い0.05C放電容量、0.2C放電容量、及びレート特性を示し、0.2Cサイクル維持率の評価においても90%以上の高い電池特性を有することがわかった。
実施例9では、重合開始剤を光重合開始剤に変更し、電池評価を行った結果、重合開始剤を変更しても実施例1と同等の電池性能が得られることが分かった。
実施例10~13では、電解質基材モノマーを種々のモノマーに変更し、電池評価を行った。その結果、各種電解質基材モノマーを用いた際も、実施例1と同等の電池性能が得られることがわかった。
実施例14~16では、可塑剤に各種非水溶媒を用いて、電池評価を行った。その結果、いずれの可塑剤においても、実施例1と同等の電池性能が得られることがわかった。
【0115】
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1> 電解質基材モノマーとアミド基含有モノマーとの共重合体である重合体を含み、
前記電解質基材モノマーが、(メタ)アクリルモノマー、ニトリルモノマー、フッ素モノマー、及びポリエーテルモノマーの少なくともいずれかであり、
前記アミド基含有モノマー由来の構成単位の割合が、前記重合体全体に対して、0質量%超40質量%以下であることを特徴とする高分子電解質である。
<2> 前記アミド基含有モノマーが、N-アルキルアクリルアミド、及びN,N-ジアルキルアクリルアミドの少なくともいずれかである、前記<1>に記載の高分子電解質である。
<3> 金属イオンを更に含み、
前記金属イオンが、リチウムイオンである、前記<1>から<2>のいずれかに記載の高分子電解質である。
<4> 可塑剤を更に含み、
前記可塑剤が、エーテル系化合物、ラクトン、環状カーボネート、鎖状カーボネート、及びイオン液体の少なくともいずれかである、前記<1>から<3>のいずれかに記載の高分子電解質である。
<5> 前記<1>から<4>のいずれかに記載の高分子電解質を備えることを特徴とする蓄電素子である。
<6> 電解質基材モノマー、及びアミド基含有モノマーからなる重合体前駆体を含み、
前記電解質基材モノマーが、(メタ)アクリルモノマー、ニトリルモノマー、フッ素モノマー、及びポリエーテルモノマーの少なくともいずれかであり、
前記アミド基含有モノマーの割合が、モノマーの総量に対して、0質量%超40質量%以下であることを特徴とする液体組成物である。
<7> 電解質基材モノマーとアミド基含有モノマーとの共重合体である重合体を含み、
前記電解質基材モノマーが、(メタ)アクリルモノマー、ニトリルモノマー、フッ素モノマー、及びポリエーテルモノマーの少なくともいずれかであり、
前記アミド基含有モノマー由来の構成単位の割合が、前記重合体全体に対して、0質量%超40質量%以下であることを特徴とする液体組成物である。
<8> 前記<6>から<7>のいずれかに記載の液体組成物が収容されたことを特徴とる収容容器である。
<9> 前記<8>に記載の収容容器と、
前記収容容器に収容された前記液体組成物を付与対象物上に付与する付与手段と、
を有することを特徴とする高分子電解質膜の製造装置である。
<10> 前記付与対象物が、集電体又は集電体上に設けられた活物質層である前記<8>に記載の高分子電解質膜の製造装置である。
<11> 前記<10>に記載の高分子電解質膜の製造装置により電極を製造する電極製造部と、
前記電極を用いて蓄電素子を製造する蓄電素子化部と、を有することを特徴とする蓄電素子の製造装置である。
<12> 前記<6>から<7>のいずれかに記載の液体組成物を付与対象物上に付与する付与工程を含む、ことを特徴とする高分子電解質膜の製造方法である。
<13> 前記付与対象物が、集電体又は集電体上に設けられた活物質層である前記<8>に記載の高分子電解質膜の製造方法である。
<14> 前記<13>に記載の高分子電解質膜の製造方法により電極を製造する電極製造工程と、
前記電極を用いて蓄電素子を製造する蓄電素子化工程と、を含むことを特徴とする蓄電素子の製造方法である。
【0116】
前記<1>から<4>のいずれかに記載の高分子電解質、前記<5>に記載の蓄電素子、前記<6>に記載の液体組成物、前記<7>に記載の収容容器、前記<8>から<10>のいずれかに記載の高分子電解質膜の製造装置、前記<11>に記載の蓄電素子の製造装置、前記<12>から<14>のいずれかに記載の高分子電解質膜の製造方法、及び前記<15>に記載の蓄電素子の製造方法は、従来における前記諸問題を解決し、前記本発明の目的を達成することができる。
【符号の説明】
【0117】
1 正極
2 負極
3 高分子電解質
5 容器
6 正極線
7 負極線
100 蓄電素子
300、300’ 液体吐出装置(高分子電解質膜の製造装置)
306 液体吐出ヘッド
307 タンク(収容容器)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0118】
【特許文献1】特開平9-97618号公報
【特許文献2】特開2009-032635号公報
図1
図2
図3
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図5
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図10
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