(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130080
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】観察方法、顕微鏡、及び、加工装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
H01L21/78 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039588
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】川澄 健人
【テーマコード(参考)】
5F063
【Fターム(参考)】
5F063AA48
5F063BA25
5F063CA02
5F063CA04
5F063CB03
5F063CB07
5F063DE03
5F063DE33
5F063DE34
5F063DE36
(57)【要約】
【課題】被加工物を透過する波長を有する照明光を用いて、表面側が保持されて裏面側が露出された被加工物の裏面を透かして表面側を撮像する場合に、同軸落射照明や従来の斜光照明に比べて、表面側に到達する光量を多くする。
【解決手段】板状の被観察物の一面に光を照射し、一面とは反対側に位置する被観察物の他面又は被観察物の内部を観察する観察方法であって、被観察物の他面側を保持テーブルの保持面で保持する保持工程と、保持工程の後、被観察物を透過する波長を有する光を照射する照明ユニットからの光の集光点を他面又は内部の所定位置に位置付けた状態で照明ユニットから被観察物に光を照射し、集光レンズの光軸に対して斜めに傾けて配置された光軸を有する対物レンズを含む撮像ユニットで被観察物からの反射光を検出する検出工程と、を備える観察方法を提供する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の被観察物の一面に光を照射し、該一面とは反対側に位置する該被観察物の他面又は該被観察物の内部を観察する観察方法であって、
該被観察物の該他面側を保持テーブルの保持面で保持する保持工程と、
該保持工程の後、該被観察物を透過する波長を有する該光を照射する照明ユニットからの該光の集光点を該他面又は該内部の所定位置に位置付けた状態で該照明ユニットから該被観察物に該光を照射し、集光レンズの光軸に対して斜めに傾けて配置された光軸を有する対物レンズを含む撮像ユニットで該被観察物からの反射光を検出する検出工程と、
を備えることを特徴とする観察方法。
【請求項2】
該検出工程では、該対物レンズの該光軸に対して該光軸が斜めに傾けて配置された該集光レンズをそれぞれ有し、該光をそれぞれ照射する複数の該照明ユニットを該対物レンズの該光軸を中心とする円の周方向において互いに異なる複数の位置に配置し、それぞれの該照明ユニットからの該光の該集光点を該他面又は該内部の該所定位置に位置付けた状態でそれぞれの該照明ユニットから該被観察物に該光を照射し、該撮像ユニットで該被観察物からの該反射光を検出することを特徴とする請求項1に記載の観察方法。
【請求項3】
板状の被観察物の一面に光を照射し、該一面とは反対側に位置する該被観察物の他面又は該被観察物の内部を観察するための顕微鏡であって、
該被観察物を透過する様に予め定められた所定の波長を有する該光を発する光源と、該光源からの該光を該被観察物の該他面又は該内部の所定位置に集光するための集光レンズと、を有し、該被観察物に該光を照射するための照明ユニットと、
該光が照射された該被観察物からの反射光が通過する対物レンズと、該対物レンズを経た該反射光を受光する撮像素子と、を有する撮像ユニットと、
を備え、
該集光レンズの光軸は、該対物レンズの光軸に対して斜めに傾けられていることを特徴とする顕微鏡。
【請求項4】
該照明ユニットの該集光レンズは、該対物レンズの該光軸上で該対物レンズを始点とし、且つ、該対物レンズの該光軸と該集光レンズの該光軸とが最近接となる領域を終点とする第1方向において、該対物レンズよりも該終点側に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の顕微鏡。
【請求項5】
該光源と、該集光レンズと、をそれぞれ有する1以上の該照明ユニットを更に備え、
各照明ユニットは、該対物レンズの該光軸を中心とする円の周方向において互いに異なる複数の位置に配置され、各照明ユニットにおける該集光レンズの該光軸は、該対物レンズの該光軸に対して斜めに傾けられていることを特徴とする請求項3又は4に記載の顕微鏡。
【請求項6】
板状の被加工物を加工する加工装置であって、
該被加工物の一面を露出させた状態で該一面とは反対側に位置する該該被加工物の他面側を保持する保持面を有する保持テーブルと、
該保持テーブルで保持された該被加工物に加工を施す加工ユニットと、
該他面又は該被加工物の内部を観察するための顕微鏡と、
メモリ及びプロセッサを有し、該保持テーブル、該加工ユニット及び該顕微鏡の動作を制御するコントローラと、
を備え、
該顕微鏡は、
該被加工物を透過する様に予め定められた所定の波長を有する光を発する光源と、該光源からの該光を該被加工物の該他面又は該内部の所定位置に集光するための集光レンズと、を有し、該被加工物に該光を照射するための照明ユニットと、
該光が照射された該被加工物からの反射光が通過する対物レンズと、該対物レンズを経た該反射光を受光する撮像素子と、を有する撮像ユニットと、
を有し、
該集光レンズの光軸は、該対物レンズの光軸に対して斜めに傾けられており、
該コントローラは、該顕微鏡で撮像された該被加工物の画像に基づいて該加工ユニットを制御することにより該被加工物に加工を施すことを特徴とする加工装置。
【請求項7】
該顕微鏡において、該照明ユニットの該集光レンズは、該対物レンズの該光軸上で該対物レンズを始点とし、且つ、該対物レンズの該光軸と該集光レンズの該光軸とが最近接となる領域を終点とする第1方向において、該対物レンズよりも該終点側に配置されていることを特徴とする請求項6に記載の加工装置。
【請求項8】
該顕微鏡は、該光源と、該集光レンズと、をそれぞれ有する1以上の該照明ユニットを更に備え、
各照明ユニットは、該対物レンズの該光軸を中心とする円の周方向において互いに異なる複数の位置に配置され、各照明ユニットにおける該集光レンズの該光軸は、該対物レンズの該光軸に対して斜めに傾けられていることを特徴とする請求項6又は7に記載の加工装置。
【請求項9】
該被加工物の該他面側において該被加工物の加工位置の検出を行う際に利用可能な所定パターンが形成されている場合に、
該コントローラは、該顕微鏡で該被加工物の該他面を撮像することで得られた該所定パターンを含む該他面の画像に基づいて該加工ユニットを制御することにより該被加工物に加工を施すことを特徴とする請求項6に記載の加工装置。
【請求項10】
該被加工物の該一面側において研削加工に起因するソーマークが形成されている場合に、
該コントローラは、該撮像ユニットの撮像領域に位置する該ソーマークの向きに沿う第1成分を有する光をそれぞれ照射する複数の第1の照明ユニットの光量と、平面視において該第1成分と直交する向きの第2成分を有する光をそれぞれ照射する複数の第2の照明ユニットの光量と、を調整して、各第2の照明ユニットからの光量を各第1の照明ユニットからの光量に比べて低くすることを特徴とする請求項9に記載の加工装置。
【請求項11】
該被加工物の該一面側において研削加工に起因するソーマークが形成されている場合に、
該コントローラは、
各照明ユニットの光量の段階的な調節により照明条件を変更して該他面を撮像することにより得られた、該所定パターン及び該ソーマークをそれぞれ含む複数の第1画像に基づいて、該所定パターンを含まず且つ該ソーマークを含む第2画像を各第1画像から作成すると共に、各第2画像における該ソーマークの面積を算出することで、該ソーマークの面積が最小になるときの該照明条件を特定することを特徴とする請求項9に記載の加工装置。
【請求項12】
該加工ユニットは、レーザー発振器を有するレーザービーム照射ユニット、又は、スピンドルを有し切削ブレードが該スピンドルの先端部に装着される切削ユニットを含むことを特徴とする請求項6に記載の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状の被観察物の一面から当該一面とは反対側に位置する被観察物の他面又は被観察物の内部を観察する観察方法、当該観察方法を実現するための顕微鏡、及び、当該顕微鏡を備えた加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハ等の被加工物を複数のデバイスチップに分割する際には、切削装置、レーザー加工装置等の加工装置が用いられる。被加工物を加工装置で分割する際には、通常、まず、円盤状の保持テーブルで被加工物の裏面側を吸引保持する。このとき、被加工物の表面が上方に露出する。
【0003】
被加工物の表面には、複数の分割予定ライン(即ち、ストリート)が格子状に設定されている。複数の分割予定ラインで区画される矩形状の領域の各々には、IC(Integrated Circuit)等のデバイスや、加工位置の検出に利用される所定パターン(キーパターン、アライメントパターン、アライメントマークとも呼ばれる)が形成されている。
【0004】
加工装置で被加工物を加工する際には、まず、可視光帯域の波長を有する光を利用して露出している被加工物の表面側を撮像することで、デバイスや所定パターンを含む画像を取得する。そして、1つの分割予定ラインに沿って離れた位置にある2つ以上の所定パターンに基づいて、加工位置の検出が行われる。
【0005】
ところで、近年では、被加工物の裏面が上方に露出する様に被加工物の表面側を保持テーブルで吸引保持することがある。この場合、被加工物の材質に応じて被加工物を透過する波長を有する光が照明光として利用される。
【0006】
例えば、被加工物がシリコンウェーハを有する場合、赤外線の波長を有する光を同軸落射照明に利用して、被加工物の裏面を透かして表面側の所定パターンの撮像を行うことが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
しかし、被加工物の材質によっては、照明光が被加工物の内部で吸収され、表面にまで達しないことがある。例えば、デバイスの電気抵抗率を下げるために被加工物の不純物濃度を高くした場合、裏面から表面へ向けて照射された照明光が被加工物の内部で吸収されて表面にまで到達しないという問題がある。
【0008】
また、レンズ鏡筒の外周部に沿って配置された複数の光源の各々から平行光を照射する斜光照明(例えば、特許文献2参照)を用いて暗視野顕微鏡の要領で被加工物を観察する場合にも、裏面から表面へ向けて照射された照明光が被加工物の内部で吸収されて表面にまで到達しないという問題がある。
【0009】
加えて、被加工物を複数のデバイスチップに分割する前には、デバイスチップを薄化するために被加工物の裏面側を研削することがあるが、研削に起因して裏面側に形成されたソーマーク(即ち、研削痕)により照明光が散乱されて表面側の画像のノイズとなり、表面側の鮮明な画像が得られないという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平7-75955号公報
【特許文献2】実用新案登録第3142994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は係る問題点に鑑みてなされたものであり、被加工物を透過する波長を有する照明光を用いて、表面側が保持されて裏面側が露出された被加工物の裏面を透かして表面側を撮像する場合に、同軸落射照明や従来の斜光照明に比べて、表面側に到達する光量を多くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様によれば、板状の被観察物の一面に光を照射し、該一面とは反対側に位置する該被観察物の他面又は該被観察物の内部を観察する観察方法であって、該被観察物の該他面側を保持テーブルの保持面で保持する保持工程と、該保持工程の後、該被観察物を透過する波長を有する該光を照射する照明ユニットからの該光の集光点を該他面又は該内部の所定位置に位置付けた状態で該照明ユニットから該被観察物に該光を照射し、集光レンズの光軸に対して斜めに傾けて配置された光軸を有する対物レンズを含む撮像ユニットで該被観察物からの反射光を検出する検出工程と、を備える観察方法が提供される。
【0013】
好ましくは、該検出工程では、該対物レンズの該光軸に対して該光軸が斜めに傾けて配置された該集光レンズをそれぞれ有し、該光をそれぞれ照射する複数の該照明ユニットを該対物レンズの該光軸を中心とする円の周方向において互いに異なる複数の位置に配置し、それぞれの該照明ユニットからの該光の該集光点を該他面又は該内部の該所定位置に位置付けた状態でそれぞれの該照明ユニットから該被観察物に該光を照射し、該撮像ユニットで該被観察物からの該反射光を検出する。
【0014】
本発明の他の態様によれば、板状の被観察物の一面に光を照射し、該一面とは反対側に位置する該被観察物の他面又は該被観察物の内部を観察するための顕微鏡であって、該被観察物を透過する様に予め定められた所定の波長を有する該光を発する光源と、該光源からの該光を該被観察物の該他面又は該内部の所定位置に集光するための集光レンズと、を有し、該被観察物に該光を照射するための照明ユニットと、該光が照射された該被観察物からの反射光が通過する対物レンズと、該対物レンズを経た該反射光を受光する撮像素子と、を有する撮像ユニットと、を備え、該集光レンズの光軸は、該対物レンズの光軸に対して斜めに傾けられている顕微鏡が提供される。
【0015】
好ましくは、該照明ユニットの該集光レンズは、該対物レンズの該光軸上で該対物レンズを始点とし、且つ、該対物レンズの該光軸と該集光レンズの該光軸とが最近接となる領域を終点とする第1方向において、該対物レンズよりも該終点側に配置されている。
【0016】
また、好ましくは、該光源と、該集光レンズと、をそれぞれ有する1以上の該照明ユニットを更に備え、各照明ユニットは、該対物レンズの該光軸を中心とする円の周方向において互いに異なる複数の位置に配置され、各照明ユニットにおける該集光レンズの該光軸は、該対物レンズの該光軸に対して斜めに傾けられている。
【0017】
本発明の更なる他の態様によれば、板状の被加工物を加工する加工装置であって、該被加工物の一面を露出させた状態で該一面とは反対側に位置する該該被加工物の他面側を保持する保持面を有する保持テーブルと、該保持テーブルで保持された該被加工物に加工を施す加工ユニットと、該他面又は該被加工物の内部を観察するための顕微鏡と、メモリ及びプロセッサを有し、該保持テーブル、該加工ユニット及び該顕微鏡の動作を制御するコントローラと、を備え、該顕微鏡は、該被加工物を透過する様に予め定められた所定の波長を有する光を発する光源と、該光源からの該光を該被加工物の該他面又は該内部の所定位置に集光するための集光レンズと、を有し、該被加工物に該光を照射するための照明ユニットと、該光が照射された該被加工物からの反射光が通過する対物レンズと、該対物レンズを経た該反射光を受光する撮像素子と、を有する撮像ユニットと、を有し、該集光レンズの光軸は、該対物レンズの光軸に対して斜めに傾けられており、該コントローラは、該顕微鏡で撮像された該被加工物の画像に基づいて該加工ユニットを制御することにより該被加工物に加工を施す加工装置が提供される。
【0018】
好ましくは、該顕微鏡において、該照明ユニットの該集光レンズは、該対物レンズの該光軸上で該対物レンズを始点とし、且つ、該対物レンズの該光軸と該集光レンズの該光軸とが最近接となる領域を終点とする第1方向において、該対物レンズよりも該終点側に配置されている。
【0019】
また、好ましくは、該顕微鏡は、該光源と、該集光レンズと、をそれぞれ有する1以上の該照明ユニットを更に備え、各照明ユニットは、該対物レンズの該光軸を中心とする円の周方向において互いに異なる複数の位置に配置され、各照明ユニットにおける該集光レンズの該光軸は、該対物レンズの該光軸に対して斜めに傾けられている。
【0020】
また、好ましくは、該被加工物の該他面側において該被加工物の加工位置の検出を行う際に利用可能な所定パターンが形成されている場合に、該コントローラは、該顕微鏡で該被加工物の該他面を撮像することで得られた該所定パターンを含む該他面の画像に基づいて該加工ユニットを制御することにより該被加工物に加工を施す。
【0021】
また、好ましくは、該被加工物の該一面側において研削加工に起因するソーマークが形成されている場合に、該コントローラは、該撮像ユニットの撮像領域に位置する該ソーマークの向きに沿う第1成分を有する光をそれぞれ照射する複数の第1の照明ユニットの光量と、平面視において該第1成分と直交する向きの第2成分を有する光をそれぞれ照射する複数の第2の照明ユニットの光量と、を調整して、各第2の照明ユニットからの光量を各第1の照明ユニットからの光量に比べて低くする。
【0022】
また、好ましくは、該被加工物の該一面側において研削加工に起因するソーマークが形成されている場合に、該コントローラは、各照明ユニットの光量の段階的な調節により照明条件を変更して該他面を撮像することにより得られた、該所定パターン及び該ソーマークをそれぞれ含む複数の第1画像に基づいて、該所定パターンを含まず且つ該ソーマークを含む第2画像を各第1画像から作成すると共に、各第2画像における該ソーマークの面積を算出することで、該ソーマークの面積が最小になるときの該照明条件を特定する。
【0023】
また、好ましくは、該加工ユニットは、レーザー発振器を有するレーザービーム照射ユニット、又は、スピンドルを有し切削ブレードが該スピンドルの先端部に装着される切削ユニットを含む。
【発明の効果】
【0024】
同軸落射照明の場合、照明ユニットの集光レンズの光軸と、撮像ユニットを構成する対物レンズの光軸とは、略平行である。それゆえ、被観察物に入射した光は、露出している一面側で正反射されて対物レンズに入る光量が比較的多い。
【0025】
本発明の一態様に係る観察方法では、照明ユニットの集光レンズの光軸は、撮像ユニットを構成する対物レンズの光軸に対して斜めに傾けられている。それゆえ、同軸落射照明の場合に比べて、一面側で反射されて対物レンズに入る光量を減らし、被観察物の他面又は内部で散乱されて対物レンズに入る光量を増やすことができる。
【0026】
この様に、一面側の反射光の影響を低減できるので、被観察物の他面又は内部からの反射光の光量を相対的に増加させることができる。それゆえ、被観察物の他面又は内部の画像を形成する際に、一面側の反射光に起因して生じるノイズを低減できる。
【0027】
更に、照明ユニットに集光レンズを用いることで、一面を通り他面側へ略一点に集光させた状態の照明光を提供できる。それゆえ、平行光を照射する従来の斜光照明に比べて、被観察物の他面又は内部に到達する光量を増加させることができる。
【0028】
本発明の他の態様に係る顕微鏡では、撮像ユニットの対物レンズの光軸に対して照明ユニットの集光レンズの光軸を斜めに傾けることで、同軸落射照明の場合に比べて、一面側の反射光の影響を低減できる。それゆえ、一面側の反射光に起因して生じるノイズを低減できる。加えて、平行光を照射する従来の斜光照明に比べて、被観察物の他面又は内部に到達する光量を増加させることができる。
【0029】
発明の他の態様に係る加工装置は、上述の顕微鏡を有するので、同軸落射照明の場合に比べて、一面側の反射光の影響を低減できる。それゆえ、一面側の反射光に起因して生じるノイズを低減できる。加えて、平行光を照射する従来の斜光照明に比べて、被加工物の他面又は内部に到達する光量を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1(A)は被観察物の表面側の斜視図であり、
図1(B)は表面側の一部の領域の拡大平面図である。
【
図2】
図1(A)のAAでの被観察物の断面図である。
【
図4】
図4(A)は顕微鏡の下端部の拡大斜視図であり、
図4(B)は
図4(A)のBBでの一部断面側面図である。
【
図5】集光レンズの光軸の傾き角度を示す模式図である。
【
図6】
図6(A)は傾き角度の一例を示す模式図であり、
図6(B)は傾き角度の他の例を示す模式図である。
【
図8】
図8(A)は保持工程を示す側面図であり、
図8(B)は検出工程を示す側面図である。
【
図9】レーザー加工装置を模式的に示す側面図である。
【
図10】ソーマークを有する被加工物の裏面側の平面図である。
【
図12】
図12(A)はソーマークを含む表面側の第1画像の模式図であり、
図12(B)は第1画像からソーマークのみが抽出された第2画像の模式図であり、
図12(C)は選定された照明条件に対応する表面側の画像の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(第1の実施形態)添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。
図1(A)は、被観察物11の表面(他面)11a側の斜視図である。被観察物11は、50μmから800μm程度の厚さを有する円盤状(即ち、板状)のシリコン単結晶基板(即ち、シリコンウェーハ)を有する。
【0032】
本実施形態のシリコンウェーハは、比較的高濃度の不純物を有する。それゆえ、シリコンウェーハの抵抗率は、例えば、0.001Ω・cm以上0.1Ω・cm以下である。なお、被観察物11の材質、形状、構造、大きさ等に制限はない。
【0033】
例えば、被観察物11は、シリコン(Si)に代えて、窒化ガリウム(GaN)、炭化珪素(SiC)、ダイヤモンド、酸化ガリウム(Ga2O3)等の他の半導体材料の単結晶基板を有してもよい。
【0034】
被観察物11の表面11a側には、金属層と相関絶縁膜(Low-k膜)とが交互に積層された積層構造が形成されている。また、表面11aには、それぞれ切断領域となる複数の分割予定ライン(ストリート)13が格子状に形成されている。
【0035】
分割予定ライン13は、金属層と相関絶縁膜との積層構造の部分的な凹凸により構成されてもよく、電子線描画装置(不図示)により描かれることで凹凸が略無い態様で構成されてもよい。
【0036】
複数の分割予定ライン13で区画される矩形状の各領域には、IC(Integrated Circuit)等のデバイス15が形成されている。但し、デバイス15の種類、数量、形状、構造、大きさ、配置等に制限はない。
【0037】
図1(B)は、表面11a側の一部の領域17の拡大平面図である。一部の領域17は、互いに直交する2つの分割予定ライン13の交差点13a近傍に位置しており、異なる4つのデバイス15を含む。
【0038】
デバイス15において交差点13a近傍の角部には、後述するレーザー加工装置32、切削装置52等の加工装置で加工位置の検出を行う際に利用可能な所定パターン15aが、表面11aに露出する態様で形成されている。
【0039】
図2は、
図1(A)のAAでの被観察物11の断面図である。表面11aとは反対側に位置する被観察物11の裏面(一面)11b側には、凹凸領域19が露出している。なお、
図2では、凹凸領域19の凹凸を誇張している。
【0040】
凹凸領域19は、裏面11b側に対してインフィード研削を施すことによりシリコンウェーハを薄化したことに伴い形成されている。インフィード研削では、シリコンウェーハと研削ホイールとをそれぞれ回転させながら、円環状の研削ホイール(不図示)の略1/4周の領域を用いてシリコンウェーハを研削する。
【0041】
凹凸領域19は、複数のソーマーク(即ち、研削痕)19aを含む(
図10参照)。
図10に示す様に、各ソーマーク19aは、円弧状の曲線であり、複数のソーマーク19aは、平面視において放射状に配置されている。
【0042】
次に、
図3から
図7(B)を参照し、被観察物11の裏面11bを透かして表面11a側を観察するための顕微鏡2について説明する。
図3は、顕微鏡2の拡大斜視図である。
【0043】
図3に示すZ軸方向は、顕微鏡2の高さ方向と略平行であり、例えば、鉛直方向と平行である。Z軸方向は、互いに逆向きの+Z方向(即ち、上方向)及び-Z方向(即ち、下方向)とも平行である。
【0044】
本実施形態の顕微鏡2は、近赤外領域の波長(例えば、1000nm以上1700nm以下の波長)を有する光を被観察物11の裏面11bに照射し、被観察物11の表面11a又は被観察物11の内部を観察するために用いられる。
【0045】
図3に示す様に、顕微鏡2は、対物レンズ4を有する。対物レンズ4は、レンズ及び鏡筒を含み、近赤外領域の波長の光を用いた被観察物11の観察に特化された仕様を有する。被観察物11からの反射光は対物レンズ4を通過し、対物レンズ4を経た反射光は、円筒状の鏡筒6を通り、近赤外カメラ8へ照射される。
【0046】
近赤外カメラ8は、直方体状の筐体8aを有する。筐体8a内には、CMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)イメージセンサ、CCD(Charge-Coupled Device)イメージセンサ等の撮像素子8bが配置されている。
【0047】
撮像素子8bは、例えば、2次元領域を撮像可能なエリアセンサである。撮像素子8bは、近赤外光を光電変換可能な複数のフォトダイオード(不図示)を有する。各フォトダイオードは、例えば、InGaAs(インジウム・ガリウム・ヒ素)で形成された光電変換領域を含む。撮像素子8bは、対物レンズ4及び鏡筒6を経た反射光を受光する。
【0048】
対物レンズ4、鏡筒6、近赤外カメラ8等は、被観察物11からの反射光を受光する撮像ユニット10を構成する。鏡筒6の下端部には、対物レンズ4の周囲を囲むように円筒状のブラケット12が設けられている。
【0049】
次に、
図4(A)及び
図4(B)を参照して、ブラケット12近傍の構造について説明する。
図4(A)は、顕微鏡2の下端部の拡大斜視図であり、
図4(B)は、
図4(A)のBBでの一部断面側面図である。
【0050】
本実施形態の顕微鏡2は、ブラケット12の周囲に配置された4つ(複数)の照明ユニット14を有する。4つの照明ユニット14は、Z軸方向と略平行に配置された対物レンズ4の光軸4a(即ち、対物レンズ4を構成する1以上のレンズの光軸)を中心とする円の周方向において互いに異なる複数の位置に配置されている。
【0051】
各照明ユニット14は、LED(Light Emitting Diode)等の光源16を有する。光源16は、被観察物11を透過する様に予め定められた所定の波長(例えば、中心波長1200nmの近赤外光)を有する光を発する高輝度LEDである。
【0052】
なお、本実施形態において、光源16からの光量は、第1段階(光量ゼロ)から第5段階(光量最大)まで段階的に調整可能であるが、6段階以上の多段階で光量を調整可能であってもよく、連続的に光量を調整可能であってもよい。
【0053】
本実施形態では、裏面11bから表面11aへの向きで光源16からの光を被観察物11に照射した上で、シリコンウェーハを透過する様に表面11a又はシリコンウェーハの内部を観察する。それゆえ、シリコンウェーハを透過可能な近赤外光を用いる。しかし、使用する波長は近赤外光に限定されない。
【0054】
例えば、被観察物11がSiCウェーハを有する場合には、近赤外光に代えて、360nm以上830nm以下の可視光の波長を有する光を光源16から照射する。この様に、被観察物11を構成するウェーハに応じて、光源16の波長は適宜選択される。また、光源16が発する光の波長に応じて、撮像素子8bには、当該波長の光を光電変換可能な複数のフォトダイオードが採用される。
【0055】
光源16は、円盤状の基台18の一面側に固定されている。基台18の一面側には、光源16を覆う様に円筒状の筐体20が固定されている。筐体20内には、平凸型のコリメートレンズ22が固定されている。
【0056】
筐体20内には、コリメートレンズ22に対して光源16とは反対側に、平凸型の集光レンズ24が固定されている。コリメートレンズ22の光軸と、集光レンズ24の光軸24aとは、略一致する様に配置されている。
【0057】
光源16から出射された光は、コリメートレンズ22及び集光レンズ24を経て、筐体20の開口20aから被観察物11へ照射される。そして、対物レンズ4の光軸4aと集光レンズ24の光軸24aとの交点4c近傍に配置された所定位置に集光される。この所定位置は、被観察物11の表面11a又は内部である。
【0058】
本実施形態では、照明ユニット14に集光レンズ24を用いることで、裏面11bを通り表面11a側へ略一点に集光させた状態の照明光を提供できる。それゆえ、平行光を照射する従来の斜光照明に比べて、被観察物11の表面11a又は内部に到達する光量を増加させることができる。
【0059】
加えて、複数の照明ユニット14から被観察物11における同じ所定位置に照明ユニット14からの光を集光させることで、1つの照明ユニット14のみを用いた場合に比べて多くの光量を被観察物11の略一点に提供できる。
【0060】
それゆえ、被観察物11が比較的高濃度の不純物を含むシリコンウェーハを有する場合であっても、1つの照明ユニット14のみを用いた場合に比べて高い光量を被観察物11の所定位置に照射できる。また、撮像に十分な光量が表面11a側に到達するので、鮮明な画像を得ることができる。
【0061】
なお、上述の交点4cは、光軸4a及び光軸24aが最近接となる領域の一形態である。光軸4a及び光軸24aは、必ずしも一点で交わらなくてもよい。例えば、光軸4a及び光軸24aが僅かに離れており、ねじれの位置にある場合、光源16からの光は、集光レンズ24により、光軸4a及び光軸24aが最近接となる領域に集光される。
【0062】
各集光レンズ24は、-Z方向(即ち、第1方向)において、対物レンズ4の下端4bよりも下方(即ち、交点4c側)に配置されている。なお、-Z方向は、対物レンズ4の光軸4a上で対物レンズ4の下端4bを始点とし、且つ、対物レンズ4の光軸4aと集光レンズ24の光軸24aとの交点4cを終点とする方向に対応する。
【0063】
ところで、より多くの光を被観察物11に照射するために、集光レンズ24の開口数(NA:Numerical Aperture)を大きくする方が好ましい。開口数はレンズ径に比例するが、集光レンズ24の径を大きくすると、集光レンズ24と対物レンズ4とが物理的に干渉するという問題がある。
【0064】
これに対して、本実施形態では、集光レンズ24を対物レンズ4の下方において被観察物11に非常に近い位置に配置するので、焦点距離(FD:Focal Distance)が小さい集光レンズ24を採用できる。焦点距離を小さくすることにより、集光レンズ24のレンズ径が比較的小さくても開口角θを比較的大きくできる。
【0065】
この様に、集光レンズ24のレンズ径が比較的小さくても比較的大きな開口数を実現できるので、集光レンズ24と対物レンズ4との干渉を抑制と、集光レンズ24における比較的大きな開口数と、を実現できる。
【0066】
なお、比較例として、対物レンズ4の側方において下端4bよりも上方に集光レンズ(不図示)を配置した上で集光レンズの焦点距離及びレンズ径を大きくすることで、
図4(B)に示す集光レンズ24の開口数と略同じ開口数を実現することも考えられる。
【0067】
しかし、顕微鏡2が大型化すると共に重量化する。それゆえ、
図4(B)に示す様に、焦点距離もレンズ径も小さい集光レンズ24を対物レンズ4と被観察物11との間に配置する方が、小型且つ軽量の顕微鏡2を実現する上で有利である。
【0068】
図4(B)に示す様に、集光レンズ24の光軸24aは、対物レンズ4の光軸4aに対して斜めに傾けられている(即ち、対物レンズ4の光軸4aは、集光レンズ24の光軸24aに対して斜めに傾けられている)。
【0069】
対物レンズ4の光軸4aと、集光レンズ24の光軸24aと、の成す傾き角度αは、20°以上80°以下であることが好ましい。
図5は、
図4(B)を簡略化した図であり、対物レンズ4の光軸4aに対する集光レンズ24の光軸24aの傾き角度αを示す模式図である。
【0070】
なお、
図5では、説明の便宜上、
図4(B)の紙面において左右方向に配置された一対の照明ユニット14及び光源16と、対物レンズ4と、を示し、筐体20、コリメートレンズ22等を省略している。また、被観察物11の表面11aを簡略化して破線で示す。
【0071】
更に、
図5では、説明の便宜上、開口角θを有する本実施形態の集光レンズ24で形成される入射光26と、開口角θよりも小さな開口角θ
Aを有する比較例の集光レンズ(不図示)で形成される入射光26Aと、を併せて示す。
【0072】
図5に示す様に、本実施形態では、集光レンズ24及び対物レンズ4の干渉の抑制と、集光レンズ24における比較的大きな開口数と、を実現できると共に、小型且つ軽量な顕微鏡2を実現できる。
【0073】
ところで、同軸落射照明(不図示)の場合、集光レンズは対物レンズと兼用されており、集光レンズの光軸と対物レンズの光軸とは平行である。同軸落射照明を用いて、裏面11bから表面11aへ照明光を照射する場合、裏面11b側で正反射され対物レンズ4に取り込まれる光量が比較的多い。
【0074】
しかし、本実施形態の様に、集光レンズ24の光軸24aを対物レンズ4の光軸4aに対して斜めに傾けることで、同軸落射照明の場合に比べて、裏面11b側で反射される反射光の光量を低減でき、被観察物11の表面11a又は内部へ透過する透過光の光量を相対的に増加させることができる。
【0075】
図6(A)及び
図6(B)では、
図5を更に簡略化し、1つの照明ユニット14と、対物レンズ4と、を示す。
図6(A)及び
図6(B)を参照し、傾き角度αと、対物レンズ4に取り込まれる被観察物11からの反射光と、の関係について説明する。
【0076】
本実施形態の顕微鏡2は、所謂、暗視野顕微鏡であり、対物レンズ4の光軸4aに対して斜めに入射する斜光線を裏面11bから表面11aへ照射して、被観察物11の表面11a又は内部からの反射光を対物レンズ4に取り込む。
【0077】
なお、本明細書において反射光とは、入射面において裏面11bに対する境界面法線と入射光とが成す角度と同じ角度を境界面法線と成す反射光(即ち、正反射光、鏡面反射光)のみに限定されず、入射光に起因する被観察物11からの拡散反射光を含む。
【0078】
図6(A)は、傾き角度αの一例を示す模式図である。傾き角度αが比較的大きい(例えば、20°以上である)場合、表面11a近傍に集光する様に被観察物11に照射された入射光26の一部は、裏面11bで反射されるが、傾き角度αが比較的大きいので、反射された光は対物レンズ4に取り込まれ難い。
【0079】
つまり、被観察物11の表面11a又は内部からの拡散反射光が、主として対物レンズ4に取り込まれるので、研削加工に起因して裏面11b側に形成されているソーマーク19a等の裏面11b側の形状の影響を低減できる。
【0080】
図6(B)は、傾き角度αの他の例を示す模式図である。
図6(B)に示す様に、傾き角度αが比較的小さい(例えば、20°未満である)場合、裏面11bで反射された比較的強度の高い光が、対物レンズ4に取り込まれ易い。
【0081】
それゆえ、裏面11b側の形状の影響を受けて被観察物11の表面11a又は内部からの反射光が相対的に減弱される。
図6(B)に示す例では、同軸落射照明に比べれば画質は上がるが、傾き角度αが比較的大きい
図6(A)に示す例に比べると画質が下がる。
【0082】
ところで、従来の斜光照明を用いる場合、光軸24aの傾き角度αを大きくするほど、被観察物11の表面11aに照射される照明光の被照射範囲が増加するので、単位面積当たりの光量が低下するという問題がある。
【0083】
特に、比較的高濃度の不純物を有するシリコンウェーハを含む被観察物11の様に、照明光が被観察物11を透過する過程で光量の減衰が生じやすい場合には、単位面積当たりの光量が低下すると、表面11a側の鮮明な画像が得られない。
【0084】
これに対して本実施形態では、照明ユニット14に集光レンズ24を採用し、照明光を略一点に集光する。それゆえ、光軸24aの傾き角度αを大きくしても、表面11aに照射される照明光の被照射範囲を略一定にでき、単位面積当たりの光量の低減を抑制できる。従って、従来の斜光照明を用いる場合に比べて、被観察物11の表面11a又は内部のより鮮明な画像を得ることができる。
【0085】
ここで、
図4(A)及び
図4(B)に戻って、照明ユニット14の放熱機構28について説明する。放熱機構28は、それぞれ矩形板状の複数(
図4(A)の例では5枚)のフィン28aを有する。各フィン28aの長手部は、Z軸方向に沿って配置されている。
【0086】
各フィン28aの一側面は、ベース基板28bの一面28b1に固定されている。また、複数のフィン28aは、ベース基板28bの横幅方向において等間隔に配置されている。ベース基板28bにおいて、一面28b1とは反対側に位置する他面28b2には、ブラケット28cが固定されている。
【0087】
ブラケット28cは、光源16を固定する基台18のうち光源16が配置された面とは反対側に接続されている。複数のフィン28a、ベース基板28b及びブラケット28cは、熱伝導率が比較的高い金属で形成されている。
【0088】
光源16で発生した熱は、ブラケット28c及びベース基板28bを経て、複数のフィン28aへと伝導する。それゆえ、複数のフィン28aと、複数のフィン28aの直下の領域と、の間には、温度勾配が形成される。
【0089】
隣り合うフィン28aの間の隙間には、温度勾配により+Z方向へ進む熱対流が生じる。これにより、ファン等により強制対流を形成しなくても、自然に形成される熱対流で光源16を冷却できる。なお、ベース基板28b及びブラケット28cからの熱放射も、光源16の冷却に寄与する。
【0090】
光源16には、比較的高い電流が流れており、発光中に光源16は発熱する。放熱機構28を利用して光源16を冷却することで、光源16の発光効率の低下の度合いを低減でき、更には、顕微鏡2に生じる熱影響(例えば、光源16の位置ずれ及び劣化、並びに、筐体20等の熱膨張による光軸24aのズレ等)の度合いを低減できる。
【0091】
図7は、顕微鏡2を用いて裏面11b側から被観察物11の表面11a及び内部を観察する本実施形態の観察方法のフロー図である。観察方法は、被観察物11を保持する保持工程S2と、被観察物11からの反射光を撮像ユニット10で検出する検出工程S4と、を備える。
【0092】
図8(A)は、保持工程S2を示す側面図である。保持工程S2では、円盤状の保持テーブル(即ち、チャックテーブル)30の保持面30aで、被観察物11の表面11a側を吸引保持する。保持テーブル30は、金属製で円盤状の枠体を有する。
【0093】
枠体の上面側には、枠体よりも小径の円盤状の凹部が形成されており、この凹部には、ポーラスセラミックス材料で形成された円盤状の多孔質板が固定されている。枠体の上面と、多孔質板の上面とは、略面一となっており、略平坦な保持面30aを形成している。
【0094】
枠体には、所定の流路が形成されており、この流路には、真空ポンプ等の吸引源(不図示)が接続されている。吸引源からの負圧を多孔質板に伝達させると、多孔質板の上面には負圧が発生する。
【0095】
本実施形態の保持工程S2では、表面11aが保持面30aと接する様に保持面30aで被観察物11を吸引保持するが、表面11a側に樹脂製の保護テープ(不図示)を貼り付けた上で、保護テープを介して保持面30aで表面11a側を吸引保持してもよい。
【0096】
保持工程S2の後、上述の顕微鏡2を用いて検出工程S4を行う。
図8(B)は、検出工程S4を示す側面図である。検出工程S4では、被観察物11を透過する波長を有する光の集光点を被観察物11の表面11a又は内部の所定位置に位置付けた状態で照明ユニット14から被観察物11に光を照射し、被観察物11からの反射光を撮像ユニット10で検出する。
【0097】
特に、対物レンズ4の光軸4aを保持面30aに対して略直交する様に配置し、対物レンズ4の光軸4aを基準にして集光レンズ24の光軸24aを傾き角度αだけ傾けるので、同軸落射照明の場合に比べて、裏面11b側で反射されて対物レンズ4に入る光量を減らし、被観察物11の表面11a又は内部で散乱されて対物レンズ4に入る光量を増加させることができる。
【0098】
この様に、裏面11b側の反射光の影響を低減できるので、被観察物11の表面11a又は内部からの反射光の光量を相対的に増加させることができる。それゆえ、被観察物11の表面11a又は内部の画像を形成する際に、裏面11b側の反射光に起因して生じるノイズを低減できる。
【0099】
更に、照明ユニット14に集光レンズ24を用いることで、裏面11bを通り表面11a側へ略一点に集光させた状態の照明光を提供できる。それゆえ、平行光を照射する従来の斜光照明に比べて、被観察物11の表面11a又は内部に到達する光量を増加させることができる。
【0100】
ところで、被観察物11の厚さが増加するほど、裏面11bを介する表面11a又は内部の撮像は、指数関数的に難しくなる。しかし、照明ユニット14を用いて照明光を略一点に集光させることで、被観察物11を構成するシリコンウェーハが比較的厚い場合であっても、被観察物11の表面11a又は内部を適切に撮像できる。
【0101】
例えば、本実施形態の顕微鏡2を用いれば、被観察物11を構成するシリコンウェーハが100μm以上800μm以下の厚さを有していたとしても表面11a又は内部を適切に撮像できる。
【0102】
本実施形態の顕微鏡2は、被観察物11を構成するシリコンウェーハが厚いほど効果的であり、シリコンウェーハは、200μm以上800μm以下の厚さを有していてもよく、300μm以上800μm以下の厚さを有していてもよい。
【0103】
(第2の実施形態)次に、
図9から
図13を参照し、顕微鏡2が搭載された加工装置の例を説明する。
図9は、レーザー加工装置(加工装置)32を示す斜視図である。なお、
図9では、レーザー加工装置32の一部を機能ブロックで示す。
【0104】
レーザー加工装置32では、上述の被観察物11が被加工物21としてレーザー加工される。レーザー加工装置32は、円盤状の保持テーブル34を有する。保持テーブル34は、上述の保持テーブル30と同じ構造を有するので、詳細な説明は省略する。
【0105】
保持テーブル34には真空ポンプ等の吸引源36が接続されており、保持テーブル34は、被加工物21の裏面11b側を露出させた状態で表面11a側を保持面34aで吸引保持する。なお、上述の様に、保護テープを介して被加工物21を保持面34aで吸引保持してもよい。
【0106】
保持テーブル34は、それぞれボールねじ式のY軸方向移動機構及びX軸方向移動機構(いずれも不図示)により、XY平面方向に移動可能に構成されている。また、保持テーブル34は、Z軸方向に略平行な所定の回転軸の周りに回転可能に構成されている。
【0107】
保持面34aの上方には、レーザービーム照射ユニット(加工ユニット)38のヘッド部38aが設けられている。ヘッド部38aは、レーザー発振器38bから出射したパルス状のレーザービームLを-Z方向へ照射する。
【0108】
レーザービームLは、被加工物21を透過する波長(シリコンウェーハの場合、例えば、1064nm)を有する。レーザービームLが被加工物21を透過する波長を有する場合、レーザービームLを被加工物21に照射することで、機械的強度が低減した改質領域と、改質領域を起点に延伸するクラックと、が被加工物21の内部に形成される。
【0109】
なお、レーザービームLは、非線形光学結晶を利用して、被加工物21に吸収される波長(シリコンウェーハの場合、例えば、355nm)に変換された上で、被加工物21に照射されてもよい。レーザービームLが被加工物21に吸収される波長を有する場合、被加工物21にはアブレーション加工が施される。
【0110】
ヘッド部38aは、円筒状のハウジング40の先端部に固定されている。ハウジング40の長手部は、Y軸方向に沿って配置されている。ハウジング40の側方には、X軸方向に延びる不図示のアームを介して上述の顕微鏡2が固定されている。顕微鏡2は、対物レンズ4の光軸4aがZ軸方向に沿う様に配置されている。
【0111】
ハウジング40は、ボールねじ式のZ軸方向移動機構(不図示)により、Z軸方向に沿って移動可能に構成されている。レーザービームLの集光点位置や、顕微鏡2の対物レンズ4の集光点は、例えば、Z軸方向移動機構により調整される。
【0112】
(i)顕微鏡2、(ii)保持テーブル34に関連する吸引源36、X軸方向移動機構、Y軸方向移動機構等、(iii)レーザービーム照射ユニット38、(iv)Z軸方向移動機構等の動作は、コントローラ42により制御される。
【0113】
コントローラ42は、例えば、CPU(Central Processing Unit)に代表されるプロセッサ42aと、メモリ42bと、を含むコンピュータによって構成されている。
【0114】
メモリ42bは、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の主記憶装置と、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ等の補助記憶装置と、を有する。
【0115】
補助記憶装置には、所定のプログラムを含むソフトウェアが記憶されている。このソフトウェアに従い処理装置等を動作させることによって、コントローラ42の機能が実現される。
【0116】
補助記憶装置には、後述するFFT工程S30を行うための第1のプログラムが記憶されている。プロセッサ42aが第1のプログラムを実行することで、後述する第1画像23に対して高速フーリエ変換が行われる。
【0117】
また、補助記憶装置には、後述する抽出算出工程S40を行うための第2のプログラムが記憶されている。第2のプログラムは、マスク処理を施すプログラム、逆フーリエ変換を施すプログラム、後述する第2画像25に対して所定の画素値を閾値とする白黒二値化処理を行うプログラム、ソーマーク19aの画素数をカウントするプログラム等を含む。
【0118】
加えて、補助記憶装置には、後述する光量変更工程S60において照明条件を変更するための第3のプログラムと、後述する比較工程S70においてカウントされたソーマーク19aの画素数を比較するための第4のプログラムと、後述する特定工程S80においてソーマーク19aの画素数が最小となった光量の組合せを特定するための第5のプログラムと、が記憶されている。
【0119】
コントローラ42は、顕微鏡2で撮像された被加工物21の画像に基づいて、レーザービーム照射ユニット38を制御することで、被加工物21の分割予定ライン13にレーザービームLを照射する(即ち、被加工物21に加工を施す)。
【0120】
具体的には、まず、レーザー加工装置32は、裏面11bが露出する様に表面11a側を保持面34aで吸引保持した状態で、顕微鏡2を用いて表面11a側を撮像することにより、分割予定ライン13を特定する。
【0121】
しかし、上述の様に、裏面11b側にはソーマーク19aを含む凹凸領域19が形成されている。
図10は、ソーマーク19aを有する被加工物21の裏面11b側の平面図である。
【0122】
図10は、被加工物21の裏面11b側を平面視した場合に、複数のソーマーク19aの見え方の一例を示すものであり、実際には、隣接する2つのソーマーク19aの間においてもそれぞれソーマーク19aと同じ形状の複数のソーマーク(不図示)が形成されている。
【0123】
なお、
図10では、顕微鏡2の位置を破線四角で示し、照明ユニット14の位置を丸で示す。
図10に示す顕微鏡2の位置A1は、ある時間における被加工物21に対する相対的な位置を示しており、別の時間における顕微鏡2の位置A2とは異なる位置にある。
【0124】
例えば、保持テーブル34を回転させることにより、顕微鏡2を位置A1から位置A2へ移動できる。それゆえ、被加工物21の周方向において位置A1及び位置A2の間に位置する領域Bを観察する場合には、顕微鏡2が領域B上に位置する様に保持テーブル34を回転させる。
【0125】
顕微鏡2を示す破線四角において、4つの丸は照明ユニット14を模式的に示す。4つの照明ユニット14は、平面視において向かい合う位置Cにある2つの照明ユニット14(即ち、第1の照明ユニット)と、平面視において向かい合う位置Dにある他の2つの照明ユニット14(即ち、第2の照明ユニット)と、を含む。
【0126】
位置Cにある一対の照明ユニット14は、被加工物21の裏面11bに対して直交する成分に加えて、被加工物21の平面視においてソーマーク19aの向きに沿う第1成分C1を有する光を顕微鏡2の撮像領域Eに照射する。
【0127】
これに対して、位置Dにある一対の照明ユニット14は、被加工物21の裏面11bに対して直交する成分に加えて、被加工物21の平面視において第1成分C1と直交する第2成分D2を有する光を顕微鏡2の撮像領域Eに照射する。
【0128】
位置Cにある照明ユニット14から裏面11b側へ照射される光は、撮像領域Eにおけるソーマーク19aの向きに沿う第1成分C1を有するので、位置Dにある照明ユニット14から裏面11b側へ照射される光に比べて、裏面11b側で反射される光量は少ない。
【0129】
これに対して、位置Dにある照明ユニット14から裏面11b側へ照射される光は、撮像領域Eにおけるソーマーク19aの向きと略直交する第2成分D2を有するので、位置Cにある照明ユニット14から裏面11b側へ照射される光に比べて、裏面11b側で反射され易い。特に、拡散反射される光量は多くなる。
【0130】
裏面11bからの反射光が対物レンズ4に取り込まれるのを抑制するためには、照明ユニット14と、ソーマーク19aとの位置関係に応じて、照明条件を変更し最適な条件で表面11a側を撮像することが好ましい。
【0131】
例えば、照明ユニット14と、ソーマーク19aと、の位置関係が予め判明している場合には、コントローラ42が各照明ユニット14の光量を調節し、第2成分D2を有する照明ユニット14(位置D)からの光量を、第1成分C1を有する照明ユニット14(位置C)からの光量に比べて低くする。
【0132】
一例において、位置Dの照明ユニット14の光量を、第1段階(光量ゼロ)とすることが好ましい。この場合、位置Cの照明ユニット14の光量は、第2段階から第5段階までの範囲で適宜調整される。例えば、得られる画像に、白飛びや黒つぶれが形成されない様に、光量が調整される。
【0133】
白飛びや黒つぶれを抑制するために、例えば、得られる画像の輝度(最小値0、最大値255)の分布の平均値が128±60となる様に、位置Cの照明ユニット14の光量を調整するとよい。
【0134】
この様な照明条件を選択することにより、表面11a側を撮像することで得られる画像において、裏面11b側からの反射光により画像に映り込むソーマーク19aの面積を低減できる。
【0135】
これに対して、照明ユニット14と、ソーマーク19aと、の位置関係が予め判明していない場合には、各照明ユニット14の光量を変更しながら最適な照明条件をコントローラ42が探索する。
【0136】
図11は、表面11a側を撮像することで得られる画像において、ソーマーク19aの面積を最小化する照明条件の選定方法のフロー図である。設定工程S10から特定工程S80までは、コントローラ42により自動で行われる。
【0137】
まず、コントローラ42は、各照明ユニット14の光量を所定値に設定する(設定工程S10)。コントローラ42の補助記憶装置には、設定工程S10で最初に使用される各照明ユニット14の光量の所定値が記憶されている。しかし、この所定値は、レーザー加工装置32に設けられた入力装置(例えば、タッチパネル)を通じて作業者により設定されてもよい。
【0138】
上述の様に、4つの照明ユニット14の光量は、第1段階から第5段階まで調整可能であるので、(1つ目の照明ユニット14の光量,2つ目の照明ユニット14の光量,3つ目の照明ユニット14の光量,4つ目の照明ユニット14の光量)を、例えば、(1,1,1,1)に設定する。
【0139】
光量の調整は、例えば、直流電源を用いる場合、直流電源から供給される電流量を調整する。また、例えば、交流電源を用いる場合、パルス幅を変調させるPWM(Pulse Width Modulation)制御方式等により、光源16の光量を調整する。
【0140】
設定工程S10の後、被加工物21の裏面11bを透過する様に表面11a側を顕微鏡2により設定された光量で撮像する(撮像工程S20)。
図12(A)はソーマーク19aを含む表面11a側の第1画像23の模式図である。
【0141】
第1画像23は、加工位置の検出に利用される所定パターン15aに加えて、ソーマーク19aを含む。次に、得られた第1画像23に対して、コントローラ42が画像処理を施す。
【0142】
具体的には、第1画像23に対して2次元高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)を施し、第1画像23に含まれるソーマーク19aの周期の分布を示すパターンを含む変換画像(不図示)を生成する(FFT工程S30)。
【0143】
第1画像23は、X軸方向を横軸としY軸方向を縦軸とするXY平面での画像であるのに対して、変換画像は、例えば、X軸方向の周波数成分を横軸(U軸)とし、Y軸方向の周波数成分を縦軸(V軸)とする画像である。なお、変換画像において、ソーマーク19aは、例えば、UV平面(不図示)の原点を通過する直線状の輝線として表示される。
【0144】
次に、第1画像23に基づいて、コントローラ42が、ソーマーク19aを抽出することで、所定パターン15a、分割予定ライン13、デバイス15等を含まず且つソーマーク19aを含む第2画像25を作成し、第1画像23におけるソーマーク19aの面積を算出する(抽出算出工程S40)。
【0145】
具体的には、まず、変換画像において、ソーマーク19aに対応する直線状の輝線以外をマスクする等の画像処理を施した後に、逆フーリエ変換を施すことで、ソーマーク19aのみが抽出された第2画像25を作成する。
図12(B)は、ソーマーク19aのみが抽出された第2画像25の模式図である。
【0146】
第2画像25を得た後、第2画像25に対して所定の画素値を閾値とする白黒二値化処理を行ったうえで、第2画像25を構成する全ての画素数(ピクセル数)におけるソーマーク19aを構成する画素数をカウントする。
【0147】
抽出算出工程S40の後、予め設定された全ての光量の組合せでの第1画像23を取得していない場合(S50でNO)、コントローラ42が、1以上の照明ユニット14の光量を変更する(光量変更工程S60)。
【0148】
例えば、上述の1つ目の照明ユニット14の光量を1段階だけインクリメントし、(2,1,1,1)に設定する。そして、撮像工程S20から抽出算出工程S40までを同様に行う。
【0149】
また、例えば、上述の1つ目の照明ユニット14の光量を1段階だけデクリメントし、(0,1,1,1)に設定する。そして、撮像工程S20から抽出算出工程S40までを同様に行う。
【0150】
この様にして、予め設定された全ての光量の組合せ(即ち、(0,0,0,0)から(4,4,4,4)までの625通り(=54)の組合せ)において、第2画像25のソーマーク19aの画素数をカウントする。
【0151】
全ての光量の組合せにおいて画素数をカウントした後(S50でYES)、ソーマーク19aの画素数の大小を比較する(比較工程S70)。そして、コントローラ42は、比較工程S70においてソーマーク19aの画素数が最小となった光量の組合せを特定する(特定工程S80)。この様にして、ソーマーク19aの面積を最小化する照明条件が選定される。
【0152】
つまり、コントローラ42は、各照明ユニット14の光量の段階的な調節により照明条件を変更して表面11aを撮像することにより得られた複数の第1画像23に基づいて各第1画像23から第2画像25を作成すると共に、各第2画像25におけるソーマーク19aの面積を算出することで、ソーマーク19aの面積が最小になるときの照明条件を特定する。
【0153】
なお、上述の様に、位置Dにある照明ユニット14からの光(第2成分D2を有する)は、位置Cにある照明ユニット14からの光(第1成分C1を有する)に比べて、裏面11b側で反射され易い。
【0154】
それゆえ、選定される照明条件では、位置Dにある照明ユニット14の光量が、位置Cにある照明ユニット14の光量に比べて小さくなる。例えば、位置Dにある照明ユニット14の光量は、第1段階(光量ゼロ)とされる。
【0155】
レーザー加工装置32で被加工物21に対してレーザー加工を施す際、コントローラ42は、選定された上述の照明条件を用いて撮像された所定パターン15aを含む第1画像23に基づいて、レーザービーム照射ユニット38を制御することで、被加工物21を加工する。
【0156】
具体的には、まず、裏面11bが露出する様に保持面34aで表面11a側が吸引保持され被加工物21の表面11a側を、選定された上述の照明条件を用いて顕微鏡2で撮像する。
【0157】
これにより、裏面11b側のソーマーク19aが比較的映り込み難い条件で、表面11a側を撮像できる。なお、コントローラ42は、新たに表面11a側を撮像せずに、選定された上述の照明条件に対応する表面11a側の画像を画像処理により得てもよい。
【0158】
図12(C)は、設定工程S10から特定工程S80までを経て選定されたソーマーク19aが比較的映り込み難い照明条件に対応する表面11a側の画像(即ち、第3画像27)の模式図である。なお、照明条件の選定(即ち、S10からS80まで)は、顕微鏡2の撮像位置を変更する度に行われる。
【0159】
所定パターン15aを利用して加工位置の検出を行う際には、第3画像27を利用するが、第3画像27ではソーマーク19aの映り込みが比較的抑制されているので、画像処理において所定パターン15aを正しく認識しやすくなる。
【0160】
加工位置の検出の後、保持テーブル34の回転角度を調整して、分割予定ライン13をX軸方向と略平行にする。そして、レーザービームLの集光点を被加工物21の裏面11b又は内部に位置付けると共に、保持テーブル34と集光点とを相対的にX軸方向に沿って移動させることで、被加工物21に対してレーザー加工を施す。
【0161】
第2の実施形態に係るレーザー加工装置では、上述の顕微鏡2を有するので、同軸落射照明の場合に比べて、裏面11b側で反射されて対物レンズ4に入る光量を減らし、被加工物21の表面11a又は内部で散乱されて対物レンズ4に入る光量を増やすことができる。
【0162】
この様に、裏面11b側の反射光の影響を低減できるので、裏面11b側の反射光に起因して生じるノイズを低減できる。加えて、平行光を照射する従来の斜光照明に比べて、被加工物21の表面11a又は内部に到達する光量を増加させることができる。
【0163】
(第3の実施形態)なお、顕微鏡2は、レーザー加工装置32だけでなく、切削装置(加工装置)52に設けられてもよい。
図13は、切削装置52を模式的に示す側面図である。なお、
図13では、切削装置52の一部を機能ブロックで示す。
【0164】
切削装置52は、円盤状の保持テーブル54を有する。保持テーブル54は、上述の保持テーブル34と略同じであるので詳細な説明を省略する。保持テーブル54には、真空ポンプ等の吸引源56が接続されている。保持テーブル54の保持面54aでは、裏面11b側が露出する様に被加工物21の表面11a側が吸引保持される。
【0165】
保持テーブル54は、ボールねじ式のX軸方向移動機構(不図示)により、X軸方向(加工送り方向)に沿って移動可能に構成されている。保持テーブル54の上方には、切削ユニット(加工ユニット)58が設けられている。
【0166】
切削ユニット58は、長手部がY軸方向に沿って配置された角筒状のスピンドルハウジング60を有する。スピンドルハウジング60内には、円柱状のスピンドル62の一部が回転可能に収容されている。
【0167】
スピンドル62の基端部近傍には、サーボモータ等の回転駆動源(不図示)が設けられている。スピンドル62の先端部は、スピンドルハウジング60から突出しており、この先端部には、円環状の切り刃を含む切削ブレード64が装着されている。
【0168】
スピンドルハウジング60の側方には、X軸方向に延びる不図示のアームを介して上述の顕微鏡2が固定されている。顕微鏡2は、対物レンズ4の光軸4aがZ軸方向に沿う様に配置されている。
【0169】
スピンドルハウジング60は、ボールねじ式のZ軸方向移動機構(不図示)により、Z軸方向(高さ方向)に沿って移動可能に構成されている。例えば、切削ブレード64の切り込み深さ位置や、顕微鏡2における対物レンズ4の集光点は、Z軸方向移動機構により調整される。
【0170】
Z軸方向移動機構は、ボールねじ式のY軸方向移動機構によりY軸方向(割り出し送り方向)に沿って移動可能に構成されている。Y軸方向移動機構により、切削ブレード64のY軸方向の位置が調整される。
【0171】
顕微鏡2、保持テーブル34(即ち、吸引源56、X軸方向移動機構等)、切削ユニット58、Y軸方向移動機構、Z軸方向移動機構等の動作は、コントローラ66により制御される。
【0172】
コントローラ66は、例えば、CPU(Central Processing Unit)に代表されるプロセッサ66aと、メモリ66bと、を含むコンピュータによって構成されている。メモリ66bは、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の主記憶装置と、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ等の補助記憶装置と、を有する。
【0173】
補助記憶装置には、所定のプログラムを含むソフトウェアが記憶されている。このソフトウェアに従い処理装置等を動作させることによって、コントローラ66の機能が実現される。
【0174】
コントローラ66も、コントローラ42と同様に、設定工程S10から特定工程S80までを経てソーマーク19aの面積が最小になるときの照明条件を選定する。コントローラ66にも、コントローラ42と同様に、設定工程S10から特定工程S80までを行うプログラムが記憶されている。
【0175】
コントローラ66は、設定工程S10から特定工程S80までを経て選定された照明条件の下、顕微鏡2で撮像された被加工物21の画像に基づいて、切削ユニット58を制御することで分割予定ライン13において被加工物21を切削する(即ち、被加工物21に加工を施す)。
【0176】
なお、照明ユニット14と、ソーマーク19aと、の位置関係が予め判明している場合には、コントローラ66が、第2成分D2を有する照明ユニット14(位置D)からの光量を、第1成分C1を有する照明ユニット14(位置C)からの光量に比べて低くする様に照明条件を設定してよい。
【0177】
第3の実施形態の切削装置52も、上述の顕微鏡2を有するので、同軸落射照明の場合に比べて、裏面11b側で反射されて対物レンズ4に入る光量を減らし、被加工物21の表面11a又は内部で散乱されて対物レンズ4に入る光量を増やすことができる。
【0178】
この様に、裏面11b側の反射光の影響を低減できるので、裏面11b側の反射光に起因して生じるノイズを低減できる。加えて、平行光を照射する従来の斜光照明に比べて、被加工物21の表面11a又は内部に到達する光量を増加させることができる。
【0179】
その他、上述の実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。顕微鏡2における照明ユニット14の数は、4つに限定されない。顕微鏡2は、2つ、3つ、又は、5つ以上の照明ユニット14を有してもよい。
【0180】
また、被加工物21の内部に改質領域を形成した場合、レーザー加工装置32に設けられた顕微鏡2を用いて、分割予定ライン13に沿って形成された改質領域及びクラックを撮像することもできる。
【符号の説明】
【0181】
2:顕微鏡
4:対物レンズ、4a:光軸、4b:下端、4c:交点(最近接となる領域)
6:鏡筒、8:近赤外カメラ、8a:筐体、8b:撮像素子
10:撮像ユニット
11:被観察物、11a:表面(他面)、11b:裏面(一面)
12:ブラケット
13:分割予定ライン、13a:交差点
14:照明ユニット、16:光源、18:基台
15:デバイス、15a:所定パターン
17:一部の領域、19:凹凸領域、19a:ソーマーク
20:筐体、20a:開口
22:コリメートレンズ、24:集光レンズ、24a:光軸
21:被加工物、23:第1画像、25:第2画像、27:第3画像
26,26A:入射光
28:放熱機構、28a:フィン
28b:ベース基板、28b1:一面、28b2:他面、28c:ブラケット
30:保持テーブル、30a:保持面
32:レーザー加工装置(加工装置)
34:保持テーブル、34a:保持面、36:吸引源
38:レーザービーム照射ユニット(加工ユニット)
38a:ヘッド部、38b:レーザー発振器
40:ハウジング
42:コントローラ、42a:プロセッサ、42b:メモリ
52:切削装置(加工装置)
54:保持テーブル、54a:保持面、56:吸引源
58:切削ユニット(加工ユニット)
60:スピンドルハウジング、62:スピンドル、64:切削ブレード
66:コントローラ、66a:プロセッサ、66b:メモリ
L:レーザービーム
S2:保持工程、S4:検出工程
S10:設定工程、S20:撮像工程、S30:FFT工程
S40:抽出算出工程、S60:光量変更工程、S70:比較工程
S80:特定工程
α:傾き角度、θ,θA:開口角
A1,A2:(顕微鏡2の)位置、B:領域
C,D:(照明ユニット14の)位置、C1:第1成分、D2:第2成分、E:撮像領域