(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130139
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】棒鋼
(51)【国際特許分類】
C22C 38/00 20060101AFI20240920BHJP
C22C 38/44 20060101ALN20240920BHJP
C21D 8/06 20060101ALN20240920BHJP
【FI】
C22C38/00 301Y
C22C38/44
C21D8/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039677
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000180070
【氏名又は名称】山陽特殊製鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗田 俊
【テーマコード(参考)】
4K032
【Fターム(参考)】
4K032AA05
4K032AA11
4K032AA12
4K032AA14
4K032AA16
4K032AA19
4K032AA23
4K032AA24
4K032AA27
4K032AA29
4K032AA31
4K032BA02
4K032CC04
4K032CD05
(57)【要約】
【課題】加工性に優れた棒鋼2の提供。
【解決手段】棒鋼2の、長さ方向に直交する断面に、この断面の中心が原点であるX-Y平面が想定される。このX-Y平面上にあり、かつ座標(mm)が(-10,0)、(-5,0)、(0,0)、(5,0)及び(10,0)である5点(P1、P2、Po、P3及びP4)にて測定されたロックウェル硬さ(HRB)の、最大値と最小値との差は、4.0以下である。このX-Y平面上にあり、かつ座標(mm)が(0,-10)、(0,-5)、(0,0)、(0,5)及び(0,10)である5点(P5、P6、Po、P7及びP8)にて測定されたロックウェル硬さの、最大値と最小値との差は、4.0以下である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さ方向に直交する断面に、この断面の中心が原点であるX-Y平面が想定されたとき、
このX-Y平面上にあり、かつ座標(mm)が(-10,0)、(-5,0)、(0,0)、(5,0)及び(10,0)である5点にて測定されたロックウェル硬さ(HRB)の、最大値と最小値との差が、4.0以下であり、
このX-Y平面上にあり、かつ座標(mm)が(0,-10)、(0,-5)、(0,0)、(0,5)及び(0,10)である5点にて測定されたロックウェル硬さ(HRB)の、最大値と最小値との差が、4.0以下である、棒鋼。
【請求項2】
金属組織がフェライトを含んでおり、
「JIS G 0551」の規定に準拠して測定された、上記フェライトの平均粒度番号が、8.0以上である、請求項1に記載の棒鋼。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、機械部品等の材料である棒鋼を開示する。
【背景技術】
【0002】
多くの自動車部品は、棒鋼が加工されて得られうる。典型的な加工方法は、冷間塑性加工である。棒鋼の主な材質は、合金鋼である。自動車部品に適した合金鋼が、特開2006-265704公報に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の棒鋼の加工性は、不十分である。従って、棒鋼の加工に先立ち、この棒鋼に熱処理が施される。典型的な熱処理は、球状化焼なまし及び焼きならしである。この熱処理は、自動車部品の製造コストを押し上げる。コストに関する同様の問題は、自動車以外の輸送機器の部品においても、生じうる。コストに関する同様の問題はさらに、建設機械及び産業機械の部品においても生じうる。
【0005】
本出願人の意図するところは、加工性に優れた棒鋼の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、新規な棒鋼を開示する。この棒鋼の、長さ方向に直交する断面に、この断面の中心が原点であるX-Y平面が想定されたとき、このX-Y平面上にあり、かつ座標(mm)が(-10,0)、(-5,0)、(0,0)、(5,0)及び(10,0)である5点にて測定されたロックウェル硬さ(HRB)の、最大値と最小値との差は、4.0以下である。このX-Y平面上にあり、かつ座標(mm)が(0,-10)、(0,-5)、(0,0)、(0,5)及び(0,10)である5点にて測定されたロックウェル硬さ(HRB)の、最大値と最小値との差は、4.0以下である。
【0007】
この棒鋼の金属組織は、フェライトを含む。好ましくは、「JIS G 0551」の規定に準拠して測定された、フェライトの平均粒度番号は、8.0以上である。
【発明の効果】
【0008】
この棒鋼は、加工性に優れる。この棒鋼の加工に先立つ熱処理は、省略又は簡略化されうる。この棒鋼から、低コストで、機械部品が得られうる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る棒鋼の一部が示された斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1のII-II線に沿った拡大断面図である。
【
図3】
図3は、
図1の棒鋼の中心軸に沿った断面が示された拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に、棒鋼2が示されている。この棒鋼2は、端面4及び外周面6を有している。この棒鋼2は、長尺である。
図1において、矢印Aは棒鋼2の長さ方向を表し、矢印Leは棒鋼2の長さを表す。この棒鋼2は、圧延によって得られうる。矢印Aは、圧延方向も表す。この棒鋼2は、機械部品のための材料である。
【0011】
図2は、
図1のII-II線に沿った拡大断面図である。
図2の断面は、棒鋼2の長さ方向Aに直交する。
図2から明らかなように、この断面の形状は、概して円である。本実施形態では、この断面に、X-Y平面が想定される。
図2において、符号XはこのX-Y平面を規定するX軸を表し、符号YはこのX-Y平面を規定するY軸を表す。X軸とY軸とは、互いに直交している。X軸とY軸との交点は、原点Poである。原点Poは、断面の中心(面積重心)と一致している。X軸は、原点Poを通過する直線の中から、無作為に選定される。
図2では、X軸が左右方向に延在しているが、X軸が他の方向に延在してもよい。Y軸は、X軸と直交する方向に延在する。
図2では、Y軸が上下方向に延在しているが、Y軸が他の方向に延在してもよい。このX-Y平面上の座標(X,Y)の単位は、「mm」である。
【0012】
図2に、第一点P1、第二点P2、第三点P3及び第四点P4が示されている。これらの点は、X軸上に位置している。第一点P1の座標は、(-10,0)である。この第一点P1と原点Poとの距離は、10.0mmである。第二点P2の座標は、(-5,0)である。この第二点P2と原点Poとの距離は、5.0mmである。第三点P3の座標は、(5,0)である。この第三点P3と原点Poとの距離は、5.0mmである。第四点P4の座標は、(10,0)である。この第四点P4と原点Poとの距離は、10.0mmである。
【0013】
図2にはさらに、第五点P5、第六点P6、第七点P7及び第八点P8が示されている。これらの点は、Y軸上に位置している。第五点P5の座標は、(0,-10)である。この第五点P5と原点Poとの距離は、10.0mmである。第六点P6の座標は、(0,-5)である。この第六点P6と原点Poとの距離は、5.0mmである。第七点P7の座標は、(0,5)である。この第七点P7と原点Poとの距離は、5.0mmである。第八点P8の座標は、(0,10)である。この第八点P8と原点Poとの距離は、10.0mmである。
【0014】
[ロックウェル硬さ]
本実施形態では、原点Po、第一点P1、第二点P2、第三点P3、第四点P4、第五点P5、第六点P6、第七点P7及び第八点P8において、ロックウェル硬さ(HRB)が測定される。原点Poにけるロックウェル硬さは、Hoである。第一点P1にけるロックウェル硬さは、H1である。第二点P2にけるロックウェル硬さは、H2である。第三点P3にけるロックウェル硬さは、H3である。第四点P4にけるロックウェル硬さは、H4である。第五点P5にけるロックウェル硬さは、H5である。第六点P6にけるロックウェル硬さは、H6である。第七点P7にけるロックウェル硬さは、H7である。第八点P8にけるロックウェル硬さは、H8である。ロックウェル硬さは、常温において測定される。
【0015】
原点Po、第一点P1、第二点P2、第三点P3及び第四点P4の5つの点は、X軸上に存在する。本明細書では、これらの点の硬さHo、H1、H2、H3及びH4の中で最も大きい硬さは、第一最大値Ma1と称される。これらの点の硬さHo、H1、H2、H3及びH4の中で最も小さい硬さは、第一最小値Mi1と称される。第一最大値Ma1から第一最小値Mi1が減じられた値は、第一硬度差D1である。第一最小値Mi1が第一最大値Ma1と同じである場合、第一硬度差D1はゼロである。
【0016】
原点Po、第五点P5、第六点P6、第七点P7及び第八点P8の5つの点は、Y軸上に存在する。本明細書では、これらの点の硬さHo、H5、H6、H7及びH8の中で最も大きい硬さは、第二最大値Ma2と称される。これらの点の硬さHo、H5、H6、H7及びH8の中で最も小さい硬さは、第二最小値Mi2と称される。第二最大値Ma2から第二最小値Mi2が減じられた値は、第二硬度差D2である。第二最小値Mi2が第二最大値Ma2と同じである場合、第二硬度差D2はゼロである。
【0017】
この棒鋼2では、第一硬度差D1は4.0以下であり、第二硬度差D2も4.0以下である。この棒鋼2では、外周面6から中心(原点Po)へ向かう方向の圧縮応力の、異方性が、小さい。この棒鋼2は、加工性に優れる。この棒鋼2は、焼なまし、焼きならし等の熱処理が省略(又は簡略化)されても、冷間塑性加工において、容易に変形しうる。熱処理の省略及び簡略化は、機械部品の低い製造コストに寄与しうる。
【0018】
加工性の観点から、第一硬度差D1は3.5以下がより好ましく、3.2以下が特に好ましい。理想的な第一硬度差D1は、0.0である。加工性の観点から、第二硬度差D2は3.5以下がより好ましく、3.2以下が特に好ましい。理想的な第二硬度差D2は、0.0である。
【0019】
本明細書では、第一硬度差D1と第二硬度差D2とのうちの大きい方は、最大硬度差Dmaと称される。最大硬度差Dmaは4.0以下が好ましく、3.5以下がより好ましく、3.2以下が特に好ましい。理想的な最大硬度差Dmaは、0.0である。
【0020】
図2の断面は、端面4の近傍を避けて、無作為に決定される。この1つの断面においてロックウェル硬さが測定され、第一硬度差D1、第二硬度差D2及び最大硬度差Dmaが算出される。
【0021】
好ましくは、以下の第一断面、第二断面及び第三断面のそれぞれにおいて、4.0以下である第一硬度差D1と、4.0以下である第二硬度差D2とが、達成される。
第一断面:端面4からの距離が(1/4・Le)である位置の近傍において、無作為に決定された断面。
第二断面:端面4からの距離が(2/4・Le)である位置の近傍において、無作為に決定された断面。
第三断面:端面4からの距離が(3/4・Le)である位置の近傍において、無作為に決定された断面。
【0022】
棒鋼2の平均硬さHavは、78.0以上94.0以下が好ましい。平均硬さHavが78.0以上である棒鋼2から、高強度の機械部品が得られうる。この観点から、平均硬さHavは80.0以上がより好ましく、82.0以上が特に好ましい。平均硬さHavが94.0以下である棒鋼2から、高強度の機械部品が得られうる。この観点から、平均硬さHavは92.0以下がより好ましく、90.0以下が特に好ましい。
【0023】
平均硬さHavは、無作為に決定された断面(例えば第二断面)でのロックウェル硬さの測定に基づき、下記の数式によって算出されうる。
Hav = (H1 + H4 + H5 + H8) / 4
換言すれば、平均硬さHavは、原点Poからの距離が10mmである4つの点の硬さの平均値である。
【0024】
[材質]
棒鋼2の材質は、炭素鋼又は合金鋼である。好ましい材質は、機械構造用合金鋼である。機械構造用合金鋼として、SMn、SMnC、SCr、SCM、SNC及びSNCMが例示される。
【0025】
SMnは、0.17質量%以上0.46質量%以下のC、0.15質量%以上0.35質量%以下のSi、1.20質量%以上1.65質量%以下のMn、0.030質量%以下のP、0.030質量%以下のS、0.25質量%以下のNi、0.35質量%以下のCr、及び0.30質量%以下のMoを含有する。好ましくは、残部はFe及び不可避的不純物である。
【0026】
SMnCは、0.17質量%以上0.46質量%以下のC、0.15質量%以上0.35質量%以下のSi、1.20質量%以上1.65質量%以下のMn、0.030質量%以下のP、0.030質量%以下のS、0.25質量%以下のNi、0.35質量%以上0.70質量%以下のCr、及び0.30質量%以下のMoを含有する。好ましくは、残部はFe及び不可避的不純物である。
【0027】
SCrは、0.13質量%以上0.48質量%以下のC、0.15質量%以上0.35質量%以下のSi、0.60質量%以上0.90質量%以下のMn、0.030質量%以下のP、0.030質量%以下のS、0.25質量%以下のNi、0.90質量%以上1.20質量%以下のCr、及び0.30質量%以下のMoを含有する。好ましくは、残部はFe及び不可避的不純物である。
【0028】
SCMは、0.13質量%以上0.25質量%以下のC、0.15質量%以上0.35質量%以下のSi、0.30質量%以上1.00質量%以下のMn、0.030質量%以下のP、0.030質量%以下のS、0.25質量%以下のNi、0.90質量%以上1.50質量%以下のCr、0.15質量%以上0.45質量%以下のMo及び0.30質量%以下のCuを含有する。好ましくは、残部はFe及び不可避的不純物である。
【0029】
SNCは、0.12質量%以上0.40質量%以下のC、0.15質量%以上0.35質量%以下のSi、0.35質量%以上0.80質量%以下のMn、0.030質量%以下のP、0.030質量%以下のS、1.00質量%以上3.50質量%以下のNi、0.20質量%以上1.00質量%以下のCr、及び0.30質量%以下のMoを含有する。好ましくは、残部はFe及び不可避的不純物である。
【0030】
SNCMは、0.12質量%以上0.50質量%以下のC、0.15質量%以上0.35質量%以下のSi、0.30質量%以上1.20質量%以下のMn、0.030質量%以下のP、0.030質量%以下のS、0.40質量%以上4.50質量%以下のNi、0.40質量%以上3.50質量%以下のCr、0.15質量%以上0.70質量%以下のMo及び0.30質量%以下のCuを含有する。好ましくは、残部はFe及び不可避的不純物である。
【0031】
[結晶粒度]
図3に、
図1の棒鋼2の中心軸CLに沿った断面が示されている。
図3の断面は、端面4の近傍を避けて、無作為に決定される。
図3において、矢印Aは棒鋼2の長さ方向を表し、矢印Diは棒鋼2の直径を表す。
図3には、原点Po、第九点P9、第十点P10、第十一点P11及び第十二点P12が示されている。第九点P9と原点Poとの距離は、1/16・Diである。第十点P10と原点Poとの距離は、2/16・Diである。第十一点P11と原点Poとの距離は、3/16・Diである。第十二点P12と原点Poとの距離は、4/16・Diである。直径Diは、25mm以上45mm以下が好ましく、30mm以上40mm以下が特に好ましい。
【0032】
棒鋼2の金属組織は、フェライトとパーライトとを併有する。この金属組織は、フェライトの結晶粒を含む。本実施形態では、原点Po、第九点P9、第十点P10、第十一点P11及び第十二点P12において、フェライトの結晶粒度が測定される。測定に先立ち、断面は研磨され、かつナイタル腐食が施される。測定には、光学顕微鏡が使用される。この測定結果に基づき、平均粒度番号Gavが算出される。
【0033】
フェライトの平均粒度番号Gavは、8.0以上が好ましい。平均粒度番号Gavが8.0以上である金属組織は、小さな硬度差D1及びD2に寄与しうる。この観点から、平均粒度番号Gavは9.0以上がより好ましく、9.5以上が特に好ましい。平均粒度番号Gavは、大きいほど好ましい。
【0034】
[製造方法]
棒鋼2は、圧延によって製造されうる。典型的には、熱間圧延により、棒鋼2が製造される。この製造方法では、精錬、造塊、分塊圧延等の工程を経て、鋼片が得られる。この鋼片は、加熱炉によって加熱される。この鋼片に、粗列圧延機による連続圧延が施される。この圧延によって鋼片は長尺化及び細径化し、中間品が得られる。この中間品にさらに、連続で、中間列圧延機及び仕上列圧延機による圧延が施される。この中間品が空冷されて、棒鋼2が得られる。
【0035】
棒鋼2の金属組織は、仕上列圧延機における中間品の温度に、大きく依存する。この温度が比較的低く設定されることで、平均粒度番号Gavが大きく、かつ硬度差D1及びD2が小さい棒鋼2が得られうる。仕上列圧延機に導入される直前の、中間品の表面温度は、1000℃以下が好ましく、980℃以下がより好ましく、960℃以下が特に好ましい。
【実施例0036】
以下、実施例に係る棒鋼の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本明細書で開示された範囲が限定的に解釈されるべきではない。
【0037】
[実験1]
[実施例1]
溶製により、鋼種がSCR420である鋼片を得た。この鋼片は、0.20質量%のC、0.20質量%のSi、0.80質量%のMn、0.015質量%のP、0.020質量%のS、0.10質量%のCu、0.95質量%のCr、0.030質量%のAl、0.0142質量%のN、及び0.10質量%のNiを含有していた。この鋼片に、粗列圧延機、中間列圧延機及び仕上列圧延機による連続圧延を施して、中間品を得た。仕上列圧延機に導入される直前の中間品の表面温度は、960℃であった。この中間品を空冷し、直径Diが30mmである棒鋼を得た。
【0038】
[実施例2]
圧延温度を1150℃とした他は実施例1と同様にして、棒鋼を得た。
【0039】
[実施例3]
鋼種がSCM418である鋼片を用いた他は実施例1と同様にして、棒鋼を得た。この鋼片は、0.17質量%のC、0.23質量%のSi、0.80質量%のMn、0.010質量%のP、0.015質量%のS、0.13質量%のCu、1.05質量%のCr、0.030質量%のAl、0.0138質量%のN、0.09質量%のNi、及び0.15質量%のMoを含有していた。
【0040】
[比較例1]
鋼種がSCM418である鋼片を用い、圧延温度を1150℃とした他は実施例1と同様にして、棒鋼を得た。
【0041】
[変形抵抗]
棒鋼に切削加工を施し、円柱状の試験片を得た。この試験片では、直径は14mmであり、高さは21mmであった。この試験片を、端面拘束状態で高さ方向に圧縮し、変形抵抗を測定した。据込み率が60%であるときの変形抵抗が、下記の表1に示されている。
【0042】
【0043】
実施例1-3の棒鋼では、最大硬度差Dma(HRB)は4.0以下である。換言すれば、これらの棒鋼では、第一硬度差D1は4.0以下であり、第二硬度差D2も4.0以下である。比較例1の棒鋼では、最大硬度差Dma(HRB)は4.0を超えている。換言すれば、比較例1の棒鋼では、第一硬度差D1及び第二硬度差D2の少なくとも一方は、4.0を超えている。実施例1-3の棒鋼の変形抵抗は、比較例1の棒鋼の変形抵抗よりも小さい。実施例1-3の棒鋼は、加工性に優れている。この評価結果から、実施例1-3の棒鋼の優位性は、明らかである。
【0044】
[実験2]
[実施例4]
溶製により、鋼種が前述のSCR420である鋼片を得た。この鋼片に、粗列圧延機、中間列圧延機及び仕上列圧延機による連続圧延を施して、中間品を得た。仕上列圧延機に導入される直前の中間品の表面温度は、960℃であった。この中間品を空冷し、直径Diが32mmである棒鋼を得た。
【0045】
[比較例2]
圧延温度を1150℃とした他は実施例4と同様にして、棒鋼を得た。
【0046】
[実施例5]
鋼種が前述のSCM418である鋼片を用いた他は実施例4と同様にして、棒鋼を得た。
【0047】
[比較例3]
鋼種が前述のSCM418である鋼片を用い、圧延温度を1150℃とした他は実施例4と同様にして、棒鋼を得た。
【0048】
[変形抵抗]
実験1と同様の方法で、棒鋼の変形抵抗を測定した。この結果が、下記の表2に示されている。
【0049】
【0050】
実施例4の棒鋼では、最大硬度差Dma(HRB)は4.0以下である。換言すれば、実施例4の棒鋼では、第一硬度差D1は4.0以下であり、第二硬度差D2も4.0以下である。比較例2の棒鋼では、最大硬度差Dma(HRB)は4.0を超えている。換言すれば、比較例2の棒鋼では、第一硬度差D1及び第二硬度差D2の少なくとも一方は、4.0を超えている。実施例4の棒鋼の変形抵抗は、比較例2の棒鋼の変形抵抗よりも小さい。実施例4の棒鋼は、加工性に優れている。この評価結果から、実施例4の棒鋼の優位性は、明らかである。
【0051】
実施例5の棒鋼では、最大硬度差Dma(HRB)は4.0以下である。換言すれば、実施例5の棒鋼では、第一硬度差D1は4.0以下であり、第二硬度差D2も4.0以下である。比較例3の棒鋼では、最大硬度差Dma(HRB)は4.0を超えている。換言すれば、比較例3の棒鋼では、第一硬度差D1及び第二硬度差D2の少なくとも一方は、4.0を超えている。実施例5の棒鋼の変形抵抗は、比較例3の棒鋼の変形抵抗よりも小さい。実施例5の棒鋼は、加工性に優れている。この評価結果から、実施例5の棒鋼の優位性は、明らかである。
【0052】
[実験3]
[実施例6]
溶製により、鋼種が前述のSCR420である鋼片を得た。この鋼片に、粗列圧延機、中間列圧延機及び仕上列圧延機による連続圧延を施して、中間品を得た。仕上列圧延機に導入される直前の中間品の表面温度は、960℃であった。この中間品を空冷し、直径Diが40mmである棒鋼を得た。
【0053】
[比較例4]
圧延温度を1150℃とした他は実施例6と同様にして、棒鋼を得た。
【0054】
[実施例7]
鋼種が前述のSCM418である鋼片を用いた他は実施例6と同様にして、棒鋼を得た。
【0055】
[比較例5]
鋼種が前述のSCM418である鋼片を用い、圧延温度を1150℃とした他は実施例6と同様にして、棒鋼を得た。
【0056】
[変形抵抗]
実験1と同様の方法で、棒鋼の変形抵抗を測定した。この結果が、下記の表3に示されている。
【0057】
【0058】
実施例6の棒鋼では、最大硬度差Dma(HRB)は4.0以下である。換言すれば、実施例6の棒鋼では、第一硬度差D1は4.0以下であり、第二硬度差D2も4.0以下である。比較例4の棒鋼では、最大硬度差Dma(HRB)は4.0を超えている。換言すれば、比較例2の棒鋼では、第一硬度差D1及び第二硬度差D2の少なくとも一方は、4.0を超えている。実施例6の棒鋼の変形抵抗は、比較例4の棒鋼の変形抵抗よりも小さい。実施例6の棒鋼は、加工性に優れている。この評価結果から、実施例6の棒鋼の優位性は、明らかである。
【0059】
実施例7の棒鋼では、最大硬度差Dma(HRB)は4.0以下である。換言すれば、実施例7の棒鋼では、第一硬度差D1は4.0以下であり、第二硬度差D2も4.0以下である。比較例5の棒鋼では、最大硬度差Dma(HRB)は4.0を超えている。換言すれば、比較例3の棒鋼では、第一硬度差D1及び第二硬度差D2の少なくとも一方は、4.0を超えている。実施例7の棒鋼の変形抵抗は、比較例5の棒鋼の変形抵抗よりも小さい。実施例7の棒鋼は、加工性に優れている。この評価結果から、実施例7の棒鋼の優位性は、明らかである。