(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130229
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】ハーネスカバー、その固定構造およびその固定方法
(51)【国際特許分類】
H02G 3/22 20060101AFI20240920BHJP
H02G 3/04 20060101ALI20240920BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H02G3/22
H02G3/04 062
B60R16/02 620B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039851
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】米山 龍一郎
【テーマコード(参考)】
5G357
5G363
【Fターム(参考)】
5G357DA06
5G357DC12
5G357DD05
5G357DD12
5G357DE08
5G363AA16
5G363BA02
5G363CB08
(57)【要約】
【課題】導出部と、該導出部から導出するワイヤーハーネスとの段差部を縮小又は解消することで導出部と、該導出部から導出するワイヤーハーネスとを簡単かつ確実にテープを巻き付けて固定すること。
【解決手段】ワイヤーハーネス2が内部に挿通され、車両パネル6に設けた貫通孔7に装着されるグロメット3において筒状の導出部34から導出されたワイヤーハーネス2に装着され、導出部34の側Ybから先端側Yaに向かって外面13が縮径するとともに、内部にワイヤーハーネス2が挿通される挿通空間21を有する縮径筒状に形成された縮径筒状部11を有し、縮径筒状部11の導出部34の側は、導出部34との外径差(Δd1)が導出部34とワイヤーハーネス2との外径差(Δd2)より小さくなる外径で形成された。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤーハーネスが内部に挿通され、車両パネルに設けた貫通孔に装着されるグロメットにおいて筒状の導出部から導出された前記ワイヤーハーネスに装着され、
前記導出部の側から先端側に向かって外面が縮径するとともに、内部に前記ワイヤーハーネスが挿通される挿通空間を有する縮径筒状に形成された縮径筒状部を有し、
前記縮径筒状部の前記導出部の側は、前記導出部との外径差が前記導出部と前記ワイヤーハーネスとの外径差より小さくなる外径で形成された
ハーネスカバー。
【請求項2】
前記縮径筒状部における周方向の一部に、厚み方向に貫通するスリットが設けられた
請求項1に記載のハーネスカバー。
【請求項3】
前記縮径筒状部より前記先端側に延びる、筒状の延出部が設けられた
請求項1に記載のハーネスカバー。
【請求項4】
前記延出部は、前記縮径筒状部における、前記導出部の側と反対側の端部を除く厚みより薄く形成された
請求項3に記載のハーネスカバー。
【請求項5】
前記挿通空間は、前記先端側に向かって縮径された錐台形状の空間である
請求項1に記載のハーネスカバー。
【請求項6】
前記縮径筒状部の内面から前記挿通空間に向かって突出する弾性突出片が設けられた
請求項5に記載のハーネスカバー。
【請求項7】
前記弾性突出片は、前記挿通空間に向かって突出するほど前記先端側に向かって傾斜するように形成された
請求項6に記載のハーネスカバー。
【請求項8】
前記弾性突出片は、前記挿通空間に対する前記ワイヤーハーネスの挿通方向から視て前記ワイヤーハーネスを挿通する挿通孔が中心に設けられた円盤状に形成された
請求項7に記載のハーネスカバー。
【請求項9】
円盤状に形成された前記弾性突出片は、径内側と径外側とを結ぶ分割スリットが設けられた
請求項8に記載のハーネスカバー。
【請求項10】
前記弾性突出片は、前記挿通空間の内面に沿って半周分にわたって形成された略半円状の半円状弾性突出片であり、
前記半円状弾性突出片は、挿通方向に所定間隔を隔てて複数設けるとともに、
前記挿通方向において隣り合う前記半円状弾性突出片は、前記縮径筒状部の周方向において中心に対して一方側と他方側とに配設され、
前記挿通方向から視て、前記一方側と前記他方側との夫々に配設された前記半円状弾性突出片の間に、前記挿通孔が設けられた
請求項8に記載のハーネスカバー。
【請求項11】
車両パネルに設けた貫通孔に装着され、筒状の導出部を有するグロメットと、
前記グロメットの内部に挿通され、前記導出部から導出されるワイヤーハーネスと、
導出された前記ワイヤーハーネスに装着されるハーネスカバーと、
前記導出部に対して前記ワイヤーハーネスを固定するテープとが備えられ、
前記ハーネスカバーは、前記導出部の側から先端側に向かって外面が縮径するとともに、内部に前記ワイヤーハーネスが挿通される挿通空間を有する縮径筒状に形成された縮径筒状部を有し、
前記縮径筒状部の前記導出部の側が前記導出部に近接するように、前記ワイヤーハーネスに対して前記ハーネスカバーが配置され、
前記導出部、前記ハーネスカバー及び前記ハーネスカバーから露出する前記ワイヤーハーネスに前記テープを巻き付けて固定された
ハーネスカバーの固定構造。
【請求項12】
ワイヤーハーネスが内部に挿通され、車両パネルに設けた貫通孔に装着されるグロメットにおいて筒状の導出部から導出された前記ワイヤーハーネスを前記導出部と固定するハーネスカバーの固定方法であって、
前記導出部の側から先端側に向かって外面が縮径するとともに、内部に前記ワイヤーハーネスが挿通される挿通空間を有する縮径筒状に形成された縮径筒状部を有する前記ハーネスカバーを前記ワイヤーハーネスに装着し、
前記ハーネスカバーの前記導出部の側を前記導出部に近接させて配置し、
前記導出部、前記ハーネスカバー及び前記ハーネスカバーから露出する前記ワイヤーハーネスに対してテープを巻き付けて固定する
ハーネスカバーの固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば自動車のダッシュパネル等の車両パネルにおける貫通孔に嵌着されたグロメットに挿通した状態で弾性支持されるワイヤーハーネスにおける、グロメットからの導出部分に固定されるハーネスカバー、その固定構造およびその固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車の車室内とエンジンルームとの間において、ワイヤーハーネスを配索する際、車室内とエンジンルームとを隔てるダッシュパネルに設けた貫通孔にワイヤーハーネスを挿通して配索している。
【0003】
この際、ゴムなどの弾性部材で形成されたグロメットをダッシュパネルの貫通孔に嵌着し、このグロメットにワイヤーハーネスを挿通して弾性支持することで、ダッシュパネルとの接触によるワイヤーハーネスの損傷を防止している。
【0004】
グロメットに保護されたワイヤーハーネスは、グロメットに設けられた筒状の導出部からグロメットの外側へ導出される。そして、特許文献1に示すように、グロメットの内部からワイヤーハーネスが車室外側へ導出する筒状の導出部と、該導出部から導出するワイヤーハーネスとは、互いを固定するため両者に跨ってテープ巻きが施される。
【0005】
しかし、特許文献1のように、導出部と、該導出部から導出するワイヤーハーネスとの外径差により、両者の間に段差部が生じるため、テープを適切に巻き付けることが困難となる。このため、段差部を跨いで巻き付けたテープ間に隙間が発生するおそれや、隙間を塞ぐためにテープを強引に引っ張ったり、余分に巻き付ける必要が生じ、テープ巻きの作業効率が低下するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、導出部と、該導出部から導出するワイヤーハーネスとの段差部を縮小又は解消することで導出部と、該導出部から導出するワイヤーハーネスとを簡単かつ確実にテープを巻き付けて固定することができるハーネスカバー、その固定構造およびその固定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、ワイヤーハーネスが内部に挿通され、車両パネルに設けた貫通孔に装着されるグロメットにおいて筒状の導出部から導出された前記ワイヤーハーネスに装着され、前記導出部の側から先端側に向かって外面が縮径するとともに、内部に前記ワイヤーハーネスが挿通される挿通空間を有する縮径筒状に形成された縮径筒状部を有し、前記縮径筒状部の前記導出部の側は、前記導出部との外径差が前記導出部と前記ワイヤーハーネスとの外径差より小さくなる外径で形成されたハーネスカバーであることを特徴とする。
【0009】
前記先端側とは、前記縮径筒状部の前記ワイヤーハーネスに沿った長手方向における前記導出部の側の端部と反対側の端部を示す。
【0010】
この発明により、前記導出部に近接するように配置した前記縮径筒状部の前記導出部の側によって、外径差のある前記導出部と前記ワイヤーハーネスとの段差を縮小もしくは解消することができる。
【0011】
これにより、前記導出部及び前記導出部から導出する前記ワイヤーハーネスに対してテープを巻き付けて固定する際に、前記導出部、前記縮径筒状部及び前記縮径筒状部から露出する前記ワイヤーハーネスに対してテープを巻き付けて固定することで、簡単かつ確実にテープを巻き付けて固定することができる。
【0012】
詳述すると、外径差を有する前記導出部と前記ワイヤーハーネスとの段差部を跨いでテープを巻き付ける場合、巻き付けたテープ間に隙間が生じたり、隙間を塞ぐためにテープを強引に引っ張ったり、余分に巻き回すなどの不具合が生じるが、前記導出部の側が、前記導出部との外径差が前記導出部と前記ワイヤーハーネスとの外径差より小さくなる外径で形成された縮径筒状部によって、前記導出部と前記ワイヤーハーネスとの段差が縮小あるいは解消するため、簡単かつ確実にテープを巻き付けて固定することができる。
すなわち、前記導出部と前記ワイヤーハーネスとの間に隙間が発生することがなくテープを巻き付けることができるため、該隙間からの水入りを防止することができる。
【0013】
この発明の態様として、前記縮径筒状部における周方向の一部に、厚み方向に貫通するスリットが設けられてもよい。
この発明により、前記ワイヤーハーネスを端部から挿通空間に挿通せずとも前記スリットを通じて前記縮径筒状部の外側から前記挿通空間に差し込むことにより、前記ワイヤーハーネスが挿通空間に挿通された状態に前記ワイヤーハーネスに対して前記ハーネスカバーを装着できる。
【0014】
またこの発明の態様として、前記縮径筒状部より前記先端側に延びる、筒状の延出部が設けられてもよい。
この発明により、前記ワイヤーハーネスと前記ハーネスカバーとの位置を規制できるとともに、前記ワイヤーハーネスとの間の水入りを防ぐことができる。
詳述すると、前記縮径筒状部より前記先端側に設けた筒状の延出部の内部に前記ワイヤーハーネスが挿通されるため、前記ワイヤーハーネスとの接触面積が増大し、前記ワイヤーハーネスとの位置をより確実に規制できるとともに、延出部とワイヤーハーネスとの間からの水入りを防止できる。
【0015】
またこの発明の態様として、前記延出部は、前記縮径筒状部における、前記導出部の側と反対側の端部を除く厚みより薄く形成されてもよい。
この発明により、前記延出部と前記ワイヤーハーネスとの外径差を極力小さくすることができる。これにより、前記延出部の先端と前記ワイヤーハーネスとの段差部が小さくなり、該段差部を跨いでテープを巻き付けて固定する際に、簡単かつ確実にテープを巻き付けて固定することができる。すなわち、前記導出部と前記ワイヤーハーネスとの間に隙間が発生することがなくテープを巻き付けることができるため、該隙間からの水入りを防止することができる。
【0016】
またこの発明の態様として、前記挿通空間は、前記先端側に向かって縮径された錐台形状の空間としてもよい。
この発明により、前記導出部の内径と前記縮径筒状部の前記導出部の側の内径との段差を小さくしながら、前記挿通空間の先端側において、前記縮径筒状部の厚みを確保しながら外径を縮径することができる。
【0017】
また、前記ワイヤーハーネスに装着した前記ハーネスカバーを前記導出部に接近させるための位置調整を行う際に、前記挿通空間が前記先端側に向かって縮径された錐台形状であるため、前記先端側から前記導出部に向かってスムーズに位置調整することができる。
【0018】
またこの発明の態様として、前記縮径筒状部の内面から前記挿通空間に向かって突出する弾性突出片が設けられてもよい。
この発明により、前記挿通空間に挿通された様々な径の前記ワイヤーハーネスの断面方向の位置を規制することができる。
【0019】
またこの発明の態様として、前記弾性突出片は、前記挿通空間に向かって突出するほど前記先端側に向かって傾斜するように形成されてもよい。
この発明により、前記ワイヤーハーネスに装着した前記ハーネスカバーを前記導出部に接近させるための位置調整を行う際に、前記弾性突出片が支障することなく、前記導出部に向かってスムーズに位置調整することができる。
【0020】
また、前記導出部に接近するように位置調整された前記ハーネスカバーに対して前記先端側の外力、すなわち前記導出部から離間する方向の外力が作用しても、前記挿通空間に向かって突出するほど前記先端側に向かって傾斜するように形成された前記弾性突出片が抗するため、前記導出部から前記ハーネスカバーが離間することを防止できる。
【0021】
またこの発明の態様として、前記弾性突出片は、前記挿通空間に対する前記ワイヤーハーネスの挿通方向から視て前記ワイヤーハーネスを挿通する挿通孔が中心に設けられた円盤状に形成されてもよい。
この発明により、前記弾性突出片は、前記ワイヤーハーネスに対して全周にわたって当接するため、前記ワイヤーハーネスの位置規制効果をより一層高めることができる。
【0022】
またこの発明の態様として、円盤状に形成された前記弾性突出片は、径内側と径外側とを結ぶ分割スリットが設けられてもよい。
この発明により、前記分割スリットが設けられた前記弾性突出片は、前記分割スリットが設けられていない場合と比較して弾性変形し易くなるため、様々な外径の前記ワイヤーハーネスを前記挿通空間に挿通し易くなる。
【0023】
さらに、前記ワイヤーハーネスに装着した前記ハーネスカバーを前記導出部に接近させるための位置調整を行う際に、前記弾性突出片が支障することなく、前記導出部に向かってより一層スムーズに位置調整することができる。
【0024】
またこの発明の態様として、前記弾性突出片は、前記挿通空間の内面に沿って半周分にわたって形成された略半円状の半円状弾性突出片であり、前記半円状弾性突出片は、挿通方向に所定間隔を隔てて複数設けるとともに、前記挿通方向において隣り合う前記半円状弾性突出片は、前記縮径筒状部の周方向において中心に対して一方側と他方側とに配設され、挿通方向から視て、前記一方側と前記他方側との夫々に配設された前記半円状弾性突出片の間には、前記挿通孔が設けられてもよい。
【0025】
この発明により、前記一方側の半円状弾性突出片と前記他方側の半円状弾性突出片とで、前記挿通空間に挿通した前記ワイヤーハーネスをしっかりと位置規制できるとともに、前記挿通空間に前記弾性突出片を備えても、前記一方側の半円状弾性突出片と前記他方側の半円状弾性突出片との間に設けられた前記挿通孔によって、前記挿通空間に対する前記ワイヤーハーネスの挿通し易さを確保することができる。
できる。
【0026】
またこの発明は、車両パネルに設けた貫通孔に装着され、筒状の導出部を有するグロメットと、前記グロメットの内部に挿通され、前記導出部から導出されるワイヤーハーネスと、導出された前記ワイヤーハーネスに装着されるハーネスカバーと、前記導出部に対して前記ワイヤーハーネスを固定するテープとが備えられ、前記ハーネスカバーは、前記導出部の側から先端側に向かって外面が縮径するとともに、内部に前記ワイヤーハーネスが挿通される挿通空間を有する縮径筒状に形成された縮径筒状部を有し、前記縮径筒状部の前記導出部の側が前記導出部に近接するように、前記ワイヤーハーネスに対して前記ハーネスカバーが配置され、前記導出部、前記ハーネスカバー及び前記ハーネスカバーから露出する前記ワイヤーハーネスに前記テープを巻き付けて固定されたハーネスカバーの固定構造であることを特徴とする。
【0027】
この発明により、前記グロメットの前記導出部に近接するように配置した前記ハーネスカバーの前記縮径筒状部の前記導出部の側によって、外径差のある前記導出部と前記ワイヤーハーネスとの段差を縮小もしくは解消することができる。
【0028】
これにより、前記グロメットの前記導出部、前記ハーネスカバー及び前記ハーネスカバーから露出する前記ワイヤーハーネスに対してテープを巻き付けて固定する際に、簡単かつ確実にテープを巻き付けて固定することができる。
【0029】
またこの発明は、ワイヤーハーネスが内部に挿通され、車両パネルに設けた貫通孔に装着されるグロメットにおいて筒状の導出部から導出された前記ワイヤーハーネスを前記導出部と固定するハーネスカバーの固定方法であって、前記導出部の側から先端側に向かって外面が縮径するとともに、内部に前記ワイヤーハーネスが挿通される挿通空間を有する縮径筒状に形成された縮径筒状部を有する前記ハーネスカバーを前記ワイヤーハーネスに装着し、前記ハーネスカバーの前記導出部の側を前記導出部に近接させて配置し、前記導出部、前記ハーネスカバー及び前記ハーネスカバーから露出する前記ワイヤーハーネスに対してテープを巻き付けて固定するハーネスカバーの固定方法であることを特徴とする。
【0030】
この発明により、前記グロメットの前記導出部に近接するように前記ハーネスカバーの前記縮径筒状部の前記導出部の側を配置することによって、外径差のある前記導出部と前記ワイヤーハーネスとの段差を縮小もしくは解消することができる。
【0031】
これにより、前記グロメットの前記導出部、前記ハーネスカバー及び前記ハーネスカバーから露出する前記ワイヤーハーネスに対してテープを巻き付けて固定する際に、テープを簡単かつ確実に巻き付けて固定することができる。
【発明の効果】
【0032】
この発明によれば、導出部と、該導出部から導出するワイヤーハーネスとの段差部を縮小又は解消することで導出部と、該導出部から導出するワイヤーハーネスとを簡単かつ確実にテープを巻き付けて固定することができるハーネスカバー、その固定構造およびその固定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】X1部を拡大して断面で示すとともに本実施形態のハーネスカバーの固定構造を示す側面図
【
図2】(a)は本実施形態のハーネスカバーの側面図、(b)は同じく正面図、(c)は同じく背面図、(d)は同じく底面図、(e)は(a)中のA-A線に沿った断面図
【
図3】(a)は本実施形態の装着工程を側面視で示した説明図、(b)は本実施形態の装着工程を(a)中のB-B線矢視により示した説明図
【
図4】(a)は本実施形態の配置工程の説明図、(b)は本実施形態のテープ巻き付け工程の説明図
【
図5】(a)は変形例1のハーネスカバーの側面図、(b)は同じく正面図、(c)は同じく背面図、(d)は同じく底面図、(e)は(a)中のA-A線に沿った断面図
【
図6】(a)は変形例2のハーネスカバーの側面図、(b)は同じく正面図、(c)は同じく背面図、(d)は同じく底面図、(e)は(a)中のA-A線に沿った断面図
【
図7】(a)は
図2(b)に対応して示した他の変形例3のハーネスカバーの正面図、(b)は
図2(b)に対応して示した他の変形例4のハーネスカバーの正面図
【
図8】本実施形態の固定構造の他の適用例を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0034】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
図1に示すように、本実施形態のハーネスカバー固定構造1(以下、「固定構造1」と略記する)は、ワイヤーハーネス2とグロメット3とハーネスカバー10とテープ4とを備えている。
ワイヤーハーネス2は、複数本の電線が束ねられた構成であり、車室内とエンジンルームとを隔てるダッシュパネル等の車両パネル6に設けた貫通孔7に挿通して配索されている。
【0035】
グロメット3は、ゴム又は軟質樹脂等の弾性材料を用いた成形により一体又は一体的に形成されている。本実施形態のグロメット3は、エチレンプロピレンジエンゴム、すなわちEPDMで形成されている。
【0036】
グロメット3は、車両パネル6に設けた貫通孔7に嵌着され、内部にワイヤーハーネス2を挿通する挿通空間35を備えた筒状に形成されている。グロメット3は、車両パネル6の貫通孔7に挿通されたワイヤーハーネス2を弾性支持している。
【0037】
ここで、図中、矢印Xはワイヤーハーネス2の径方向を示し、矢印Yはワイヤーハーネス2の長手方向、すなわち配索方向を示すものとする。矢印Yaはワイヤーハーネス2の一方側、矢印Ybはワイヤーハーネス2の他方側を夫々示すものとする。また、ワイヤーハーネス2の径方向、長手方向は、グロメット3およびハーネスカバー10の径方向、長手方向と夫々一致するものとする。
【0038】
図1に示すように、グロメット3は、一方側フランジ部31と他方側フランジ部32とパネル嵌合部33と導出部34とを備えている。挿通空間35は、グロメット3の長手方向Yの全長にわたって形成され、一方側フランジ部31と他方側フランジ部32とパネル嵌合部33と導出部34にわたって連通している。
【0039】
一方側フランジ部31は、車両パネル6に対して一方側Yaに配置され、車両パネル6の貫通孔7に他方側Ybから挿入し易いように一方側Yaに向けて徐々に外径が小さくなる円錐台形状に形成されている。一方側フランジ部31は、車両パネル6の貫通孔7へ挿入時に縮径変形し易いように他方側フランジ部32よりも薄肉に形成されている。
他方側フランジ部32は、車両パネル6に対して他方側Ybに配置されるとともに円板状に形成されている。
【0040】
一方側フランジ部31と他方側フランジ部32とは、何れも車両パネル6の貫通孔7より大きい外径を有している。
パネル嵌合部33は、一方側フランジ部31と他方側フランジ部32との間に介在し、車両パネル6の貫通孔7に嵌合可能に全周にわたって外面が溝状に形成されている。
【0041】
一方側フランジ部31を車両パネル6の貫通孔7に挿入することで、パネル嵌合部33に車両パネル6の貫通孔7の縁部が嵌った状態となる。その際、車両パネル6の貫通孔7の縁部に対して、一方側フランジ部31が一方側Yaから当接するとともに、他方側フランジ部32が他方側Ybから当接する。これにより、グロメット3は、車両パネル6の貫通孔7に嵌着される。
【0042】
導出部34は、挿通空間35に挿通されたワイヤーハーネス2をグロメット3の一方側Yaへ導出可能に一方側フランジ部31の一方側Yaの端部に位置する一端部31aから一方側Yaへ延出する円筒状に形成されている。
【0043】
導出部34は、長手方向Yの全長にわたってワイヤーハーネス2の外径と同じ或いは若干大きな内径で形成され、内部に挿通するワイヤーハーネス2を保持可能に形成されている。導出部34は、一方側フランジ部31の一端部31aから一方側Yaへ同じ外径で延出する本体部341と、導出部34の一方側Yaの端部、すなわち先端部に位置し、本体部341より外径が大きい拡径部342とを備えている。導出部34の先端部に拡径部342が形成されていることで、後述のテープ4を外れにくくしている。
【0044】
また、
図1中仮想線にて示すように、テープ4は、導出部34、ハーネスカバー10およびハーネスカバー10から露出するワイヤーハーネス2に対して巻き付けて固定する粘着テープである。
図1、
図2(a)(b)(c)(d)(e)に示すように、ハーネスカバー10は、縮径筒状部11と延出部20とを備え、
図2(e)に示すように、内部にワイヤーハーネス2が挿通される挿通空間21を有する筒状に形成されている。挿通空間21は、ハーネスカバー10の長手方向Yにおいて縮径筒状部11と延出部20とに連通している。
【0045】
縮径筒状部11は、他方側Ybの端部に位置する他方側端部14bから一方側Yaに向かって外面13および内面12がテーパ形状に縮径する円錐台状に形成されている。
【0046】
ただし、縮径筒状部11の内面12は、外面13よりも長手方向Yに対する傾斜角度が緩やかなテーパ形状に形成されている。これにより、縮径筒状部11は、長手方向Yにおいて他方側端部14bが最も肉厚に形成され、他方側端部14bから一方側Yaへ向かって徐々に薄肉となり、一方側Yaの端部に位置する一方側端部14aが最も薄肉に形成されている。
【0047】
また、縮径筒状部11の内面12は、上述したようにテーパ形状に形成されているため、縮径筒状部11の挿通空間21は、一方側Yaに向けて縮径する円錐台形状の空間である。そして、縮径筒状部11の内面12の長手方向Yにおいて最も小径となる一方側端部14aは、ワイヤーハーネス2の外径と同一または若干大きな内径で形成されている。
【0048】
図1中のX1部拡大部に示すように、ハーネスカバー10がワイヤーハーネス2に装着された状態において、縮径筒状部11の他方側端部14bは、導出部34の拡径部342との外径差(Δd1)が導出部34の拡径部342とワイヤーハーネス2との外径差(Δd2)より小さくなる外径で形成されている。換言すると、縮径筒状部11の他方側端部14bの外面13は、径方向Xにおいてワイヤーハーネス2の外面と導出部34の拡径部342の外面との間に位置する。
【0049】
図2(b)(e)に示すように、縮径筒状部11には、内面12から挿通空間21に向かって突出するとともに内面12の全周にわたって設けられた弾性突出片16を備えている。弾性突出片16は、長手方向Yにおいて所定間隔を隔てて複数設けられている。本実施形態において、4つの弾性突出片16が弾性変形時に互いに干渉しない間隔を隔てて等間隔に配設されている。複数の弾性突出片16は、縮径筒状部11の挿通空間21が一方側Yaに向けて縮径することにより、一方側Yaほど小さくなる相似形状に形成されている。
【0050】
弾性突出片16は、挿通空間21に向かって突出するほど一方側Yaに向かって縮径するように傾斜する円錐台状に形成されている。弾性突出片16は、挿通空間21に挿通したワイヤーハーネス2の外面13に先端が当接する突出長さに、すなわち、縮径筒状部11の一方側端部14aの内径よりも径内側に突出する長さに形成されるとともに、突出方向ほど薄肉になるように形成されている。
【0051】
図2(b)(d)(e)に示すように、円錐台状に形成された弾性突出片16の径内側、すなわち円錐台状の一方側Yaの端面に相当する部位には、ワイヤーハーネス2を挿通する円形状の挿通孔17が設けられている。複数の弾性突出片16の夫々に設けられた挿通孔17は、互いに同じ径で形成されている。
【0052】
さらに、円錐台状の弾性突出片16は、該弾性突出片16の径内側の端部と径外側の端部とを直線状に結ぶ分割スリット18によって周方向に互いに分離して配設される複数の分割弾性突出片160を備えている。本実施形態において弾性突出片16は、4つの分割スリット18により、周方向に4等分された形状で形成されることにより、周方向に4つの分割弾性突出片160を備えている。4つの分割弾性突出片160は、何れも縮径筒状部11の内面12の周方向に沿う90度の円弧状に形成されている。
【0053】
図2(a)(c)(d)(e)に示すように、延出部20は、縮径筒状部11の一方側端部14aから一方側Yaへ延出する円筒状に形成されている。延出部20は、長手方向Yの全長にわたって縮径筒状部11の一方側端部14aと同じ肉厚で形成されている。すなわち、延出部20は、縮径筒状部11の他方側端部14bよりも薄肉に形成されている。
【0054】
さらに、延出部20の外径は、縮径筒状部11の他方側端部14bの外径よりも小径に形成されている。また、延出部20の内径は、挿通したワイヤーハーネス2保持可能に該ワイヤーハーネス2の外径と同じ又は若干大径にグロメット3の導出部34と同じ内径に形成されている。
【0055】
図1、
図2(b)(c)(d)に示すように、ハーネスカバー10における周方向の一部には、長手方向Yの全長にわたって厚み方向に貫通するスリット15が長手方向Yと一致する方向に直線状に設けられている。すなわち、スリット15は、縮径筒状部11と延出部20に跨って連続して形成されている。
【0056】
図2(b)(c)に示すように、スリット15は、縮径筒状部11の周方向において、弾性突出片16に設けた4つの分割スリット18のうち、所定の分割スリット18と一致する部位に設けられている。これにより、スリット15の径内側、すなわち径方向Xにおける弾性突出片16に対応する部位については、所定の分割スリット18で形成されている。
ハーネスカバー10は、スリット15の間隔がワイヤーハーネス2の径よりも広がるように弾性変形可能に形成されている。
【0057】
続いて、本実施形態のハーネスカバー10のワイヤーハーネス2に対する固定方法について説明する。
なお、ワイヤーハーネス2は、車両パネル6に設けた貫通孔7に嵌装されたグロメット3の挿通空間35に挿通された状態でグロメット3に弾性支持されているものとする。
【0058】
本実施形態の固定方法は、ハーネスカバー10をワイヤーハーネス2に装着する装着工程と、ハーネスカバー10をグロメット3の導出部34に近接させて配置する配置工程と、導出部34、ハーネスカバー10、およびハーネスカバー10から露出するワイヤーハーネス2に対してテープ4を巻き付けるテープ巻き付け工程とをこの順で行う。
【0059】
図3(a)(b)に示すように、装着工程において、作用者は、ハーネスカバー10をスリット15の間隔がワイヤーハーネス2の径よりも広がるように弾性変形させ、スリット15を通じてハーネスカバー10をグロメット3の導出部34から一方側Yaへ導出されたワイヤーハーネス2に差し込む。
【0060】
弾性変形したハーネスカバー10が復元することで、ハーネスカバー10は、
図3(a)(b)中の仮想線で示すように、挿通空間21にワイヤーハーネス2が挿通された状態でワイヤーハーネス2に装着される。
また、挿通孔17は、弾性突出片16の中心に設けられ、ワイヤーハーネス2よりも小径であるため、弾性突出片16は先端が挿通孔17に挿通されるワイヤーハーネス2の外面に当接するように弾性変形する。
【0061】
図4(a)に示すように、配置工程において、作業者は、ハーネスカバー10を一方側Yaから他方側Ybへワイヤーハーネス2に沿って移動させることで
図4(a)中の仮想線で示すように、グロメット3の導出部34に対して一方側Yaから近接させて配置する。
【0062】
その際、ハーネスカバー10は、他方側端部14bを導出部34の一方側Yaの端部に対して当接させることでグロメット3の導出部34に対して一方側Yaで近接するように確実かつ容易に位置決めすることができる。
【0063】
図4(b)に示すように、テープ巻き付け工程において、作業者は、導出部34、導出部34に近接させて配置されたハーネスカバー10、ハーネスカバー10から露出するワイヤーハーネス2に対してテープ4を長手方向Yに沿って螺旋状に巻き付ける。その際、テープ4は、長手方向Yにおいて隣接する部分の一部が重なるようにして巻き付けられている。
上述により、本実施形態のハーネスカバー10をワイヤーハーネス2に対して固定することができる。
なお、テープ4は、上述したように1重巻きに限らず、2重巻き以上の螺旋状に巻き付けてもよい。
【0064】
また、上述した固定方法は、グロメット3を車両パネル6に設けた貫通孔7に嵌装する前に実行し、ハーネスカバー10をワイヤーハーネス2に固定した状態でグロメット3を貫通孔7に嵌装してもよいが、これに限らず、グロメット3が車両パネル6に設けた貫通孔7に嵌装された状態で実行してもよい。
以下、本実施形態のハーネスカバー10の作用効果について説明する。
【0065】
図1に示すように、本実施形態のハーネスカバー10は、導出部34に対して一方側Yaで近接するように配置した縮径筒状部11の他方側端部14bによって、外径差のある導出部34とワイヤーハーネス2との段差を縮小もしくは解消することができる。
【0066】
これにより、導出部34、ハーネスカバー10及びハーネスカバー10から露出するワイヤーハーネス2に対してテープ4を巻き付けて固定する際に、簡単かつ確実にテープ4を巻き付けて固定することができる。
【0067】
詳述すると、外径差(Δd2)を有する導出部34とワイヤーハーネス2との段差部を跨いでテープ4を巻き付ける場合、巻き付けたテープ4間に隙間が生じ、例えば、水入り対策が不十分となることや、隙間を塞ぐためにテープ4を強引に引っ張ったり、余分に巻き回すなどの不具合が生じるおそれがある。
【0068】
これに対して、本実施形態においては、他方側端部14bが、導出部34との外径差(Δd1)が導出部34とワイヤーハーネス2との外径差(Δd2)より小さくなる外径で形成された縮径筒状部11によって、導出部34とワイヤーハーネス2との段差部を縮小あるいは解消できる。従って、導出部34と、導出部34から導出するワイヤーハーネス2とに跨って簡単かつ確実にテープ4を巻き付けて固定することができる。
【0069】
また、
図1、
図2(b)(c)(d)に示すように、ハーネスカバー10は、周方向の一部に、厚み方向に貫通するスリット15が設けられたため、ワイヤーハーネス2を端部から挿通空間21に挿通せずともスリット15を通じて外側から挿通空間21に差し込むことにより、ワイヤーハーネス2が挿通空間21に挿通された状態でハーネスカバー10をワイヤーハーネス2に対して装着できる。
【0070】
また、
図1、
図2(a)(c)(d)(e)に示すように、ハーネスカバー10は、縮径筒状部11より一方側Yaに延びてワイヤーハーネス2を保持する筒状の延出部20が設けられたため、ワイヤーハーネス2に対する位置を規制できるとともに、ワイヤーハーネス2との間からの水入りを防止できる。
【0071】
詳述すると、縮径筒状部11より一方側Yaに設けた筒状の延出部20の内部にワイヤーハーネス2が挿通されるため、ワイヤーハーネス2との接触面積が増大し、ワイヤーハーネス2との位置をより確実に規制できるとともに、延出部20とワイヤーハーネス2との間からの水入りを防止できる。
【0072】
また、
図2(e)に示すように、延出部20は、縮径筒状部11の一方側端部14aを除く厚みより薄く形成されたため、ワイヤーハーネス2との外径差を極力小さくすることができる。
【0073】
これにより、延出部20の先端とワイヤーハーネス2との段差が小さくなり、延出部20の先端とワイヤーハーネス2との段差部を跨いでテープ4を巻き付けて固定する際に、テープ4をハーネスカバー10を介して簡単かつ確実に巻き付けることができる。
【0074】
また、
図2(e)に示すように、縮径筒状部11の内部の挿通空間21は、一方側Yaに向かって縮径された円錐台状の空間であるため、ワイヤーハーネス2に装着したハーネスカバー10を導出部34に対して一方側Yaから接近するように位置調整を行う際に、スムーズに他方側Ybへ移動させて位置調整することができる。
【0075】
さらに、配置工程において、縮径筒状部11は、他方側端部14bが一方側端部14aによりも肉厚に形成できるため、導出部34に対して近接させて配置する際に、他方側端部14bが導出部34に当接しても不用意に変形することがなく導出部34に対して近接させて配置することができる。
【0076】
また、
図2(b)(e)に示すように、縮径筒状部11は、内面12から挿通空間21に向かって突出する弾性突出片16が設けられたため、挿通空間21におけるワイヤーハーネス2の断面方向の位置を規制できる。
【0077】
詳しくは、ワイヤーハーネス2の外径が縮径筒状部11の内径に対して小径であっても、弾性突出片16がワイヤーハーネス2の外面13に当接することで、弾性突出片16の弾性力を活かして縮径筒状部11に対するワイヤーハーネス2の位置を規制することができる。
【0078】
また、
図2(e)に示すように、弾性突出片16は、挿通空間21に向かって突出するほど一方側Yaに向かって傾斜するように形成されたため、ワイヤーハーネス2に装着したハーネスカバー10を導出部34に接近させるために導出部34に対して一方側Yaから長手方向Yに沿って移動させて位置調整を行う際に、弾性突出片16が支障することなく、導出部34に向かってスムーズに位置調整することができる。
【0079】
また、導出部34に近接するように位置調整されたハーネスカバー10に対して一方側Yaの外力、すなわち導出部34から離間する方向の外力が作用しても、挿通空間21に向かって突出するほど一方側Yaに向かって傾斜するように形成された弾性突出片16がワイヤーハーネス2の外面に当接する摩擦力を利用して抗するため、導出部34からハーネスカバー10が離間することを防止できる。
【0080】
従って、テープ巻き付け工程においてハーネスカバー10が導出部34に対して一方側Yaへ不用意に移動して両者の間の隙間が広がることを阻止し、確実かつスムーズにテープ4を巻き付けることができる。
【0081】
また、
図2(b)(e)に示すように、弾性突出片16は、挿通空間21に対して他方側Ybから視てワイヤーハーネス2を挿通する挿通孔17が中心に設けられた円錐台状に形成されたため、ワイヤーハーネス2に対して略全周にわたって当接し、ワイヤーハーネス2の位置規制効果をより一層高めることができる。
【0082】
また、
図2(b)(e)に示すように、円錐台状に形成された弾性突出片16は、径内側と径外側とを結ぶ分割スリット18が設けられたため、分割スリット18が設けられていない場合と比較して弾性変形し易くなるため、様々な外径のワイヤーハーネス2を挿通空間21に挿通し易くなる。
【0083】
さらに、ワイヤーハーネス2に装着したハーネスカバー10を導出部34に対して一方側Yaから接近させるための位置調整を行う際に、弾性突出片16が支障することなく、導出部34に向かってよりスムーズに位置調整することができる。
【0084】
続いて、上述した実施形態のハーネスカバー10の変形例に係るハーネスカバー10a,10b,10c,10dについて説明する。但し、上述した実施形態と同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0085】
(変形例1)
変形例1のハーネスカバー10aは、
図5(a)(b)(c)(d)(e)に示すように、上述した実施形態の弾性突出片16と異なる弾性突出片16aを備えている。
図5(b)(e)に示すように、変形例1の弾性突出片16aは、複数の半円状弾性突出片160aを備えている。半円状弾性突出片160aは、内部に挿通空間21を有する縮径筒状部11の内面12の周方向における半周分にわたって突出する略半円状の突出片で形成され、何れも縮径筒状部11の内面12から挿通空間21に挿通されるワイヤーハーネス2の外径よりも径内側まで突出している。
【0086】
図5(e)に示すように、複数の半円状弾性突出片160aは、挿通空間21において長手方向Yに所定間隔を隔てて配設されている。複数の半円状弾性突出片160aは、挿通空間21の長手方向Yにおいて隣り合う一組の半円状弾性突出片160aのうち一方の半円状弾性突出片161は、挿通空間21の中心に対して一方側に配設されるとともに、他方の半円状弾性突出片162は、縮径筒状部11の中心に対して他方側に配設されている。
【0087】
図5(b)に示すように、弾性突出片16aの径内側の端部、すなわち先端部は、ワイヤーハーネス2の外周面に対応して円弧状に形成されている。これにより、挿通空間21を他方側Ybから視て、一方の半円状弾性突出片161と他方の半円状弾性突出片162との夫々の径内側の端部の間には、ワイヤーハーネス2を挿通する挿通孔17aが設けられている。
【0088】
上述したように、弾性突出片16aは、一方の半円状弾性突出片161と他方の半円状弾性突出片162とが、挿通空間21の中心に対して一方側と他方側とに交互に配置されたため、一方の半円状弾性突出片161と他方の半円状弾性突出片162とで、挿通空間21に挿通したワイヤーハーネス2をしっかりと位置規制できる。
【0089】
さらに、ハーネスカバー10を他方側Ybから視て、中心に対して一方側と他方側との夫々に配設された半円状弾性突出片160a(161,162)の間には、ワイヤーハーネス2を挿通する挿通孔17aが設けられたため、縮径筒状部11の内面12から挿通空間21に向けて突出する弾性突出片16aを備えても、挿通空間21に対するワイヤーハーネス2の挿通し易さを確保することができる。
【0090】
この発明は、上述した実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施形態を得ることができる。
例えば、本発明の弾性突出片は、
図2(b)(e)に示すような上述した実施形態の弾性突出片16のように、4つの分割スリット18によって周方向に互いに分離して配設される4つの分割弾性突出片160を備えた形態に限らない。
【0091】
具体的に、本発明の弾性突出片は、
図6(a)(b)(c)(d)(e)に示す変形例2のハーネスカバー10bに備えた弾性突出片16bのように、1つの分割スリット18によって周方向に分離された分割弾性突出片160bを備えた形態とするなど、4つ以外の分割弾性突出片160bを備えた形態としてもよい。
【0092】
また、本発明の弾性突出片は、円錐台形状が好ましいが、円錐台形状以外の形状で形成してもよい。
例えば、
図7(a)に示すハーネスカバー10cに備えた弾性突出片16cのように、縮径筒状部11の内面12の全周にわたって形成されるとともに、周方向において1つの分割スリット18により分割して形成されているが、挿通空間21を他方側Ybから視て挿通孔17cが矩形状となるように形成されている。
【0093】
また、
図7(b)に示すハーネスカバー10dに備えた弾性突出片16dのように、中心に対して一方側と他方側とに分割された2つの分割弾性突出片161d,162dを備え、2つの分割弾性突出片161d,162dの先端部を何れも直線状に形成してもよい。
【0094】
また、本発明の弾性突出片は、挿通空間21の長手方向Yにおいて、所定間隔を隔てて複数配設する場合には、長手方向Yにおける弾性突出片の配設箇所ごとに分割スリット18の数が異なる弾性突出片を備えてもよい。さらにまた、本発明の弾性突出片は、縮径筒状部11の内面12に限らず、縮径筒状部11の内面12と延出部20の内面とのうち少なくとも何れか一方に形成されてもよい。
【0095】
また、上述した実施形態のハーネスカバー10は、導出部34に対して一方側Yaから当接するように配置したが、本発明のハーネスカバーは、導出部34とに跨ってテープ4巻きする際に、巻き付けたテープ4間に隙間が生じなければ、必ずしも導出部34に対して一方側Yaから当接させる必要はなく、導出部34に対して僅かな隙間を隔てて近接させて配置してもよい。また、本発明のハーネスカバーは、他方側端部14bを導出部34に対して一方側Yaから外嵌してもよい。
【0096】
また、本発明の固定構造は、上述した実施形態の固定構造1のように、グロメット3の導出部34から導出するワイヤーハーネス2が、一方側Yaへ直線状に配索する実施形態に限らず、屈曲する実施形態に適用してもよい。
【0097】
例えば、上述した実施形態のハーネスカバー10を例にとり説明すると、ハーネスカバー10は、弾性材料で形成されているため、例えば、cに示すように、グロメット3の導出部34から一方側Yaへ導出した直後において略直角に曲げ変形させたワイヤーハーネス2に対しても、曲げ部2aに対応して変形し、曲げ部2aに跨って装着することができる。
【0098】
そして、本実施形態のハーネスカバー10は、このように曲げ部2aに跨って装着した装着形態であっても、導出部34に近接するように配置できるため、外径差のある導出部34とワイヤーハーネス2との段差部を縮小もしくは解消することができる。
【0099】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、縮径筒状部の導出部の側は、縮径筒状部11の他方側Ybに対応し、同様に
縮径筒状部の先端側は、縮径筒状部11の一方側Yaに対応し、
導出部の側と反対側の端部は、縮径筒状部11の一方側端部14aに対応し、
円盤状は、円錐台状に対応し、
挿通方向は、長手方向Yに対応する。
【符号の説明】
【0100】
1…ハーネスカバーの固定構造
2…ワイヤーハーネス
3…グロメット
4…テープ
6…車体パネル
7…貫通孔
10,10a,10b,10c,10d…ハーネスカバー
11…縮径筒状部
12…縮径筒状部の内面
13…外面
15…スリット
16,16b,16c,16d…弾性突出片
160a…半円状弾性突出片
17,17a,17c…挿通孔
18…分割スリット
20…延出部
34…導出部
21…縮径筒状部の挿通空間
14a…縮径筒状部の一方側端部
Δd1…(ハーネスカバーと)導出部との外径差
Δd2…導出部とワイヤーハーネスとの外径差
Yb…縮径筒状部の他方側
Ya…縮径筒状部より一方側
Y…長手方向