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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130337
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】基板搬送方法及び基板搬送装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20240920BHJP
   H01L 21/677 20060101ALI20240920BHJP
   G03F 7/20 20060101ALN20240920BHJP
【FI】
H01L21/30 562
H01L21/30 502J
H01L21/68 A
G03F7/20 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040002
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002756
【氏名又は名称】弁理士法人弥生特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松山 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】只友 浩貴
(72)【発明者】
【氏名】酒田 洋司
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 慎介
【テーマコード(参考)】
2H197
5F131
5F146
【Fターム(参考)】
2H197CD24
2H197CD25
2H197DA10
2H197HA03
2H197HA04
2H197JA12
5F131AA02
5F131AA03
5F131AA32
5F131AA33
5F131BA11
5F131BA14
5F131BB02
5F131BB03
5F131CA06
5F131CA32
5F131CA42
5F131DA02
5F131DA22
5F131DA42
5F131DB02
5F131DB52
5F131DB62
5F131GB12
5F131HA02
5F131JA05
5F131JA08
5F131JA14
5F131JA15
5F131JA34
5F131JA35
5F131KA22
5F131KA23
5F146CD01
5F146CD05
5F146JA27
(57)【要約】
【課題】基板に形成する金属含有レジスト膜について、変質を抑制する。
【解決手段】本開示の基板搬送方法は、金属含有レジスト膜が形成された基板を、第1載置部から第2載置部に搬送する搬送経路において、前記搬送経路における異常に応じて、前記第2載置部へ前記基板を搬送する代わりに、前記第1載置部の第1雰囲気とは異なる第2雰囲気が形成される待機室に前記基板を搬送して当該第2雰囲気にて待機させる工程を含む。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属含有レジスト膜が形成された基板を、第1載置部から第2載置部に搬送する搬送経路において、
前記搬送経路における異常に応じて、前記第2載置部へ前記基板を搬送する代わりに、前記第1載置部の第1雰囲気とは異なる第2雰囲気が形成される待機室に前記基板を搬送して前記第2雰囲気にて待機させる待機工程を含む基板搬送方法。
【請求項2】
前記金属含有レジスト膜は金属酸化物レジスト膜であり、前記第2雰囲気は不活性ガス雰囲気である請求項1記載の基板搬送方法。
【請求項3】
前記第1雰囲気は、前記第2雰囲気に比べて前記金属含有レジスト膜における反応が促進される雰囲気である請求項1記載の基板搬送方法。
【請求項4】
前記搬送経路に設けられる露光機に前記基板を搬送する工程と、
前記搬送経路において前記第1載置部から搬送されて前記露光機に搬送される直前の前記基板を前記第2載置部に搬送して、当該第2載置部で当該基板の温度を調整する工程と、
を備える請求項1記載の基板搬送方法。
【請求項5】
前記異常の検出として、前記搬送経路における前記第2載置部以降の区間での前記基板の搬送の停滞を検出する工程を含む請求項4記載の基板処理方法。
【請求項6】
検出された異常の種類に応じて、前記搬送経路に設けられる前記第1載置部以外のモジュールにおける前記基板を前記待機室に搬送する工程を含む請求項1記載の基板搬送方法。
【請求項7】
前記待機室は複数設けられ、一方の待機室における異常の発生時に、他方の待機室に前記基板を搬送する工程を含む請求項1記載の基板搬送方法。
【請求項8】
前記第1載置部、前記待機室の各々について1つまたは複数設けられ、
前記待機室における前記基板の収容可能数の合計は、前記第1載置部における前記基板の収容可能数の合計以上である請求項1記載の基板搬送方法。
【請求項9】
前記搬送経路は、
前記金属含有レジスト膜についての形成及び現像のうちの少なくとも一方を行う処理ブロック、及び前記処理ブロックと前記金属含有レジスト膜を露光する露光機との間に介在するインターフェイスブロックによって形成される経路であり、
前記第1載置部、前記第2載置部及び前記待機室は、前記インターフェイスブロックに設けられる請求項1記載の基板搬送方法。
【請求項10】
前記異常の検出時に、前記搬送経路における前記金属含有レジスト膜を成膜する成膜モジュールへの前記基板の搬送を停止する工程を含む請求項1記載の基板搬送方法。
【請求項11】
前記搬送経路にて、露光済みの前記金属含有レジスト膜が形成された基板を、第1露光後加熱モジュール、第1現像モジュール、第2露光後加熱モジュール、第2現像モジュールの順で搬送し、露光後の加熱処理及び現像処理を繰り返す工程を含み、
前記待機室には、前記第1現像モジュールから搬送され、且つ前記第2露光後加熱モジュールに搬送される前の前記基板が搬送される請求項1記載の基板搬送方法。
【請求項12】
前記搬送経路において前記第1載置部または当該第1載置部よりも後段のモジュールとして、前記基板に金属含有レジスト膜を形成するレジスト膜形成モジュールが含まれ、
前記異常の検出時に、当該レジスト膜形成モジュールへの前記基板の搬送を停止する工程を含む請求項1記載の基板搬送方法。
【請求項13】
前記搬送経路には、前記第1雰囲気とは異なる雰囲気が形成される雰囲気制御モジュールが設けられ、前記雰囲気形成モジュールは前記待機室を含み、
前記搬送経路において前記雰囲気制御モジュールに滞在していない時間が、複数の前記基板間で揃うように前記基板の搬送制御を行う工程を含む請求項1記載の基板搬送方法。
【請求項14】
前記第1雰囲気は真空雰囲気であり、前記第2雰囲気は不活性ガス雰囲気である請求項1記載の基板搬送方法。
【請求項15】
前記待機工程は、
前記第2載置部への前記基板の搬送が行えない異常の検出時に行われる請求項1記載の基板搬送方法。
【請求項16】
前記待機工程は、前記第1載置部について予見される異常に応じて実施される請求項1記載の基板搬送方法。
【請求項17】
前記待機工程は、第2載置部について予見される異常に応じて実施される請求項1記載の基板搬送方法。
【請求項18】
金属含有レジスト膜が形成された基板を、第1載置部から第2載置部に搬送する搬送経路において搬送する搬送機構と、
前記搬送経路における異常に応じて、前記第1載置部の第1雰囲気とは異なる第2雰囲気が形成される待機室にて前記基板を待機させるために、前記第2載置部へ前記基板を搬送する代わりに前記待機室に前記基板を搬送するように前記搬送機構の動作を制御する制御部と、
を備える基板搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板搬送方法及び基板搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスを製造するにあたり、半導体ウエハ(以下、ウエハと記載する)に対してフォトリソグラフィが行われる。このフォトリソグラフィに用いられるレジストとしては金属を含有するレジストが用いられる場合が有り、特許文献1には当該レジストによるレジスト膜の形成、及び当該レジスト膜の露光後の現像を行う装置について示されている。この装置は、露光後の加熱処理時の各ウエハ間でレジスト膜に含まれる水分量の差を縮小させるために、レジスト膜形成後で露光前のウエハを内部に複数待機させることが可能であると共に、内部の湿度(水分量)が調整される基板収容ユニットを備えるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-119961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、基板に形成する金属含有レジスト膜について、変質を抑制することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の基板搬送方法は、金属含有レジスト膜が形成された基板を、第1載置部から第2載置部に搬送する搬送経路において、
前記搬送経路における異常に応じて、前記第2載置部へ前記基板を搬送する代わりに、前記第1載置部の第1雰囲気とは異なる第2雰囲気が形成される待機室に前記基板を搬送して当該第2雰囲気にて待機させる工程を含む。
【発明の効果】
【0006】
本開示は、基板に形成する金属含有レジスト膜について、変質を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の基板処理装置の第1実施形態に係る塗布、現像装置の平面図である。
図2】前記塗布、現像装置の縦断正面図である。
図3】前記塗布、現像装置に設けられるバッファモジュールの斜視図である。
図4】前記バッファモジュールの斜視図である。
図5】前記バッファモジュールの斜視図である。
図6】前記バッファモジュールの概略側面図である。
図7】前記塗布、現像装置におけるウエハの搬送経路を示す説明図である。
図8】異常発生時の露光前のウエハの搬送例を示す説明図である。
図9】異常発生時の露光前のウエハの搬送例を示す説明図である。
図10】異常解消時の露光前のウエハの搬送例を示す説明図である。
図11】異常発生時の露光前のウエハの搬送例を示す説明図である。
図12】異常発生時の露光前のウエハの搬送例を示す説明図である。
図13】異常解消時の露光前のウエハの搬送例を示す説明図である。
図14】第2実施形態に係る基板処理装置の平面図である。
図15】第3実施形態に係る基板処理装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔塗布、現像装置における搬送の概要〕
本開示の基板搬送方法の一実施形態としての搬送方法を実施する塗布、現像装置1について、図1図2に夫々平面図、縦断正面図を示している。この塗布、現像装置1は、基板搬送装置を含む基板処理装置の第1実施形態であり、キャリアブロックD1と、左側処理ブロックD2と、右側処理ブロックD3、インターフェイスブロックD4と、この順に左側から右側に向けて一列に接続して構成されている。インターフェイスブロックD4の右側には、露光機D5が接続されている。これらのキャリアブロックD1、左側処理ブロックD2、右側処理ブロックD3、インターフェイスブロックD4、露光機D5は各々筐体を備え、当該筐体によって各々の内部は互いに区画されている。
【0009】
塗布、現像装置1は、大気雰囲気である半導体装置製造工場のクリーンルーム内に設置されており、図示しない搬送機構によって、複数枚の基板であるウエハWを格納し、各々載置可能なキャリアCが搬送される。キャリアCは、例えばFOUP(Front Opening Unify Pod)と呼ばれる搬送容器である。そして、当該キャリアCから取り出されたウエハWは、塗布、現像装置1内に設けられる各種のモジュールを順番に搬送されて処理されて、キャリアCに戻される。従って、キャリアCに至るまでの各所で、ウエハWは処理を受ける。なお、モジュールとは搬送機構以外でのウエハWが載置される場所であり、ウエハWに処理を行うモジュールについては、処理モジュールとして記載する場合が有る。この処理には、ウエハWの温度調整や、検査のための画像の取得も含まれる。
【0010】
塗布、現像装置1で行われる処理には、金属含有レジストの塗布によるウエハWへのレジスト膜の形成と、露光機D5でレジスト膜が所定のパターンに沿って露光された後の加熱(PEB[Post Exposure Bake])と、レジスト膜の現像と、が含まれる。PEB及び現像については2回行われ、1回目の処理でレジスト膜に所望の形状に近似するパターンを形成し、2回目の処理でそのパターンを整形して所望の形状にする。
【0011】
上記の金属含有レジスト膜は、より具体的には例えば金属酸化物レジスト(Metal Oxide Resist、MOR)である。このMORは、例えば金属としてスズ(Sn)を含む、EUV(Extreme Ultraviolet)向けネガ型レジストである。なお、ここでの金属を含むとは、構成成分として金属を含む意味であり、不純物として金属を含有することを意味するものではない。以降は、特に説明しない限り、レジストと記載した場合にはMORの意味であるものとする。
【0012】
ところでMORはウエハWに塗布された後、大気に含まれる各種の成分と反応することで変質する。この変質によってレジストパターンの形状が所望の形状とはならず、線幅(Critical Dimension、CD)の所望の値からのずれが大きくなってしまうおそれや、レジストパターンの硬度が低下するおそれが有る。その一方で、搬送経路においてウエハWを順番に搬送して順次処理する基板処理装置においては、予定された搬送先への搬送が一時的に不可となる異常が発生し、その搬送が不可となった位置の上流側における搬送が停滞することが生じ得る。つまり、基板処理装置内でMORが塗布されたウエハWを順番に搬送して当該塗布後の処理を行うにあたり、搬送の停滞が発生することによってレジスト膜の変質が起こり、上記したレジストパターンについてCDや硬度の異常が発生するおそれが有る。
【0013】
上記したレジスト膜の変質による異常は、レジスト膜をマスクとして当該レジスト膜の下方に形成された下層膜をエッチングしてパターンを当該下層膜に転写するにあたって、不具合を招くおそれが有る。具体的には、上記のレジストパターンのCDのずれに起因して下層膜のパターンのCDにも異常が生じたり、レジストパターンの硬度の低下によるエッチング耐性の低下に起因してエッチング中にレジスト膜が消失したりするなどの不具合が生じてしまうおそれが有る。このような事情から、ウエハWに形成される金属含有レジスト膜について、パターンの形成が完了する前の変質を抑制することが求められている。そして、塗布、現像装置1は、そのような要請に応えられるように構成されている。
【0014】
有機スズ酸化物ベースのMORについては一般的に大気中の水、酸性ガス(二酸化炭素、硫化水素、二酸化窒素、硝酸ガスなど)、塩化水素、塩素、二酸化硫黄、アンモニア、アミン、有機物等の成分と反応して上記の変質を起こす。そのため変質を防止するにあたっては、MORが塗布されたウエハWはこれらの成分の含有率が低く抑えられるように、不活性ガス雰囲気に置かれることが特に有効である。そこで塗布、現像装置1におけるレジスト膜形成後のウエハWの搬送経路をなすモジュールのうちのいくつかのモジュールについては、不活性ガスであるN(窒素)ガス雰囲気が形成された空間にウエハWを滞留させたり、当該空間でウエハWを処理したりする構成とされる。それらのモジュールは、例えば後述するバッファモジュール4のようにウエハWを収納する筐体と、筐体の内外を区画するシャッタとが設けられ、筐体内が第2雰囲気であるNガス雰囲気とされるように構成される。
【0015】
ただしモジュールの中には、そのようなNガス雰囲気を形成する構成とすることが難しいものがある。例えばウエハWに対して膜形成のための薬液塗布、洗浄液による洗浄、現像液による現像などの処理を行う液処理モジュールについては、ウエハWが収容される空間の容積が比較的大きくなる故に、そのようなNガス雰囲気を形成しにくい。容積が大きくなるのは液処理モジュールが、ウエハWを液処理するためのノズル、ブラシなどを移動させる移動領域や、供給された液をウエハWの各所に行き渡らせたり、処理後にウエハWから振り切ったりするために当該ウエハWを回転させる回転機構などを備えることによる。
【0016】
そこで塗布、現像装置1においては、多数のウエハWを内部に収容して退避させることが可能なバッファモジュールが設けられており、このバッファモジュール内はNガス雰囲気とされている。そして、Nガス雰囲気が形成されないモジュールに滞留するレジスト膜形成後のウエハWについて、予定された搬送先のモジュールへの搬送が不可となる異常が発生した場合には、当該モジュールに搬送される代わりにバッファモジュールに搬送される。それによって、レジストパターンの形成が完了する前(上記した整形が完了する前)の金属含有レジスト膜の変質を防ぐ。なお、予定された搬送先への搬送が可能である場合にはウエハWはバッファモジュールへは搬送されないが、これは搬送機構の搬送工程数(モジュール間での搬送の回数)を抑えることによって、スループットの低下を防止するためである。
【0017】
バッファモジュールを含めて、Nガス雰囲気が形成される各モジュールを雰囲気制御モジュールと呼称する。以上のように塗布、現像装置1では、必要に応じてバッファモジュールへのウエハWの搬送が行われることで、ウエハW間においてレジスト膜の形成後、2回目の現像が完了するまでの雰囲気制御モジュールに滞在していない時間のばらつきを抑える。それによって、ウエハW間で形成されるレジストパターンの形状等のばらつきを抑える。
【0018】
〔塗布、現像装置における構成〕
以下、塗布、現像装置1の各ブロック(キャリアブロック、左側処理ブロック、右側処理ブロック、インターフェイスブロック)D1~D4について、具体的に説明する。これらのブロックD1~D4は筐体内に搬送機構を備え、左側処理ブロックD2、右側処理ブロックD3及びインターフェイスブロックD4については、筐体内に各種のモジュールを備える。
【0019】
〔キャリアブロックの構成〕
キャリアブロックD1は当該キャリアブロックD1を構成する筐体の外部に、キャリアCを載置する複数のステージ11を備える。そして、キャリアブロックD1は搬送機構12を備えており、ステージ11上のキャリアCに対してアクセスし、塗布、現像装置1に対するウエハWの搬入出を行う。なおキャリアCは、その側方にウエハWの収容空間に連なる開口部と、この開口部を開閉するための蓋と、を備える。キャリアCに対するウエハWの搬入出を行うにあたり、キャリアブロックD1の筐体の側壁に設けられる基板搬送口を開閉するドア13が、この側壁に開口部の口縁が密着する状態のキャリアCの蓋と共に移動する。それによって、キャリアCへの蓋の着脱が行われる。
【0020】
また、ステージ11には、キャリアCの下面に接続されるコネクタ11A、11Bが設けられている。キャリアCの内部におけるウエハWの収容空間は密閉空間であるが、キャリアCのステージ11における載置時には、当該コネクタ11A、11Bから当該収容空間に対するNガス供給、排気を夫々行うことができ、それによって当該収容空間をNガス雰囲気とすることができる。ただし、この図1図2で説明する装置の構成例ではウエハWについて、キャリアCからの搬出時にはレジスト膜は形成されておらず、キャリアCへの搬入時には現像処理が完了している。従って、キャリアC内の雰囲気がレジストに与える影響が少ないので、コネクタ11A、11Bを介してのNガス雰囲気の形成は行われなくてもよい。
【0021】
〔処理ブロックの構成〕
続いて、処理ブロックである左側処理ブロックD2及び右側処理ブロックD3について説明する。左側処理ブロックD2については、ウエハWに液処理及び加熱処理を行う2つの階層E1、2つの階層E2が下から順に積層されることで、計4つの階層を備えており、これらの階層において、互いに並行してウエハWの搬送及び処理が行われる。2つの階層E1は互いに同様に構成され、2つの階層E2は互いに同様に構成されている。
【0022】
図1に示す階層E2について説明する。階層E2の前後の中央には、左右に伸びるウエハWの搬送路14が形成されている。搬送路14の前方には、液処理モジュールである現像モジュール35が左右に並んで設けられており、2回目の現像処理を行う。搬送路14の後方には、ウエハWを加熱する加熱モジュールが積層され、この加熱モジュールの積層体が左右に多数並べて設けられている。各加熱モジュールは、ウエハWを載置して加熱する熱板を備える。この加熱モジュールとしては、2回目のPEBを行う加熱モジュール25、及び2回目の現像後の加熱処理(ポストベーク)を行う現像後加熱モジュール26が含まれる。上記の搬送路14には、階層E2でウエハWを搬送する搬送機構F2が設けられている。
【0023】
階層E1について、液処理モジュール、加熱モジュール、搬送路14、搬送機構のレイアウトは、階層E2と同様であり、液処理モジュールとしては、薬液をウエハWに供給して反射防止膜を形成する反射防止膜形成モジュール31が設けられる。加熱モジュールとしては、反射防止膜形成後のウエハWを加熱する加熱モジュール22、及び加熱中にウエハWの表面に処理ガスを供給して疎水化処理する疎水化処理モジュール21が設けられる。階層E1における搬送機構F2に対応する搬送機構を搬送機構F1とする。
【0024】
階層E1~E2の搬送路14の左側には、多数のモジュールが積層されたタワーT1が各階層を貫くように設けられている。タワーT1の各モジュールには、搬送機構12と、搬送機構F1、F2のうちモジュールと同じ高さに位置する階層の搬送機構と、がアクセス可能である。
【0025】
右側処理ブロックD3については搭載されるモジュールの種類が、左側処理ブロックD2におけるモジュールと異なることを除いて、当該左側処理ブロックD2と同様の構成であり、階層E1、E2に各々対応する階層を、E11、E12として夫々示している。階層E12について階層E2との差異点を述べると、液処理モジュールとしては現像モジュール34が左右に並んで設けられており、初回の現像処理を行う。加熱モジュールとしては、初回のPEBを行う加熱モジュール24が設けられている。搬送機構F2に対応する搬送機構をF12として示している。
【0026】
階層E11について階層E1との差異点を述べると、液処理モジュールでとしては既述したMORを塗布してレジスト膜を形成するレジスト膜形成モジュール32が設けられている。加熱モジュールとしては、PAB(Pre Applied Bake)と呼ばれるレジスト膜形成後の加熱を行う加熱モジュール22が設けられている。搬送機構F1に対応する搬送機構をF11として示している。なお、レジスト膜形成モジュール32、反射防止膜形成モジュール31、現像モジュール34、35は、ウエハWに供給する薬液が異なることを除いて概ね同様の構成であり、既述したカップ、ノズル及びウエハWの回転機構を備える。レジスト膜形成モジュール32及び反射防止膜形成モジュール31については、ウエハWの裏面及び周縁部への溶剤の供給がなされ、これらの部位に形成された不要な膜が除去される。
【0027】
そして、右側処理ブロックD3におけるタワーT1に対応するタワーをT2として示しており、このタワーT2の後方には、階層を跨いで昇降可能な搬送機構である搬送機構16が設けられている。タワーT2の各モジュールには、搬送機構16と、搬送機構F1、F2、F11、F12のうちでモジュールと同じ高さに位置する階層の搬送機構と、がアクセス可能である。このタワーT2を構成するモジュールとしては、バッファモジュール4Dが含まれる。このバッファモジュール4D及び後述するバッファモジュール4A~4Cについては、既述したようにN2ガス雰囲気に複数のウエハWを格納するモジュールであり、各々搬送経路の異なる段でウエハWを格納するが、詳しくは後述する。
【0028】
なお、搬送機構F1、F2、F11、F12については、搬送路14を移動自在な基台と、当該基台に設けられてウエハWを各々保持すると互いに独立した進退が可能な2つの保持部と、を備える。そしてこれらの搬送機構F1、F2、F11、F12は、モジュールを順番に繰り返し移動し、搬送を担う区間の入口のモジュール及び出口のモジュールを除いた各モジュールに対して、上記のウエハWの入れ替えを行う。従って、これらの搬送機構F1、F2、F11、F12は、搬送路14を周回移動すると共に、ウエハWが1枚ずつ、搬送経路の上流側のモジュールから下流側のモジュールへ順次搬送される、入れ替え搬送がなされる。
【0029】
〔インターフェイスブロックの構成〕
続いて、インターフェイスブロックD4について説明する。インターフェイスブロックD4には、バッファモジュール4A~4Cが含まれている。また、インターフェイスブロックD4には、タワーT3、搬送機構17~19及び裏面洗浄モジュール33が設けられている。タワーT3はタワーT1、T2と同様に、多数のモジュールが積層されることで構成されており、バッファモジュール4A、4Bを含み、右側処理ブロックD3の搬送路14の右方に設けられている。
【0030】
タワーT3の右方に搬送機構17が設けられ、タワーT3の後方、前方に夫々搬送機構18、19が設けられている。搬送機構18の後方には、液処理モジュールである裏面洗浄モジュール33が複数、例えば4つ積層されて設けられている。裏面洗浄モジュール33は、既述したカップ、ブラシ、ノズル及び回転機構を備える。カップ内に収容されたウエハWの裏面に対して、ノズルからの洗浄液の供給と、ブラシによる摺動とによる洗浄処理がなされる。なお、1つの裏面洗浄モジュール33に収容可能なウエハWの枚数は1枚であるため、計4つの裏面洗浄モジュール33には最大で計4枚のウエハWが収容される。搬送機構18の前方には、バッファモジュール4Cが設けられている。
【0031】
搬送機構17~19は、タワーT3に対してウエハWを受け渡せるように、各々昇降自在である。搬送機構17は、タワーT3と露光機D5との間でウエハWを受け渡す。搬送機構18は、タワーT3を構成する各モジュールと裏面洗浄モジュール33との間でウエハWを受け渡し、搬送機構19はタワーT3を構成する各モジュールとバッファモジュール4Cとの間でウエハWを受け渡す。
【0032】
タワーT1、T2、T3においては、モジュール間での受け渡しのためにウエハWが仮置きされる受け渡しモジュールTRS、及び温度調整モジュールが含まれる。以降の説明で、受け渡しモジュールTRSについては、単にTRSとして記載する場合が有る。温度調整モジュールはウエハWが載置されるステージを備え、このステージにはチラーにより冷却水が通流される流路が設けられている。ステージに対する熱交換によってステージに載置されたウエハWが冷却され、当該ウエハWの温度が所定の温度になるように調整される。
【0033】
上記の温度調整モジュールについて、レジスト膜形成前にウエハWが載置されるものをS1、露光機D5に搬送される直前のウエハWが載置されるものをS2、露光機D5に搬入後のウエハWが載置されるものをS3として互いに区別する。従って、温度調整モジュールS2について、当該モジュールから搬送されたウエハWは他のモジュールを経由することなく露光機D5に搬送される。この温度調整モジュールS2については、露光前温度調整モジュールと記載する場合が有る。なお、露光機D5に搬送される直前のウエハWとは、搬送経路において露光機D5の1つ前のモジュールにおけるウエハWであって、当該モジュール以外の他のモジュールに搬送されることなく、直接、露光機D5に搬送されるウエハWである。
【0034】
露光前温度調整モジュールS2はタワーT3に設けられ、温度調整モジュールS1及びS3はタワーT1及びT2に設けられる。なお、受け渡しモジュールTRS、温度調整モジュールS1、S3については、ウエハWが搬送される順番に従って、互いを区別するために異なる番号を付して示す場合が有る。また、搬送経路の同じ段における受け渡しモジュールTRS、温度調整モジュールS1~S3については夫々多数設けられるが、図2では図示の便宜上1つまたは2つのみ表示している。例えば温度調整モジュールS2については例えば3つ設けられ、各々1つずつウエハWを収容可能であるが、図2では1つのみ表示している。
【0035】
以上に述べたモジュールのうち、バッファモジュール4A~4D、露光前温度調整モジュールS2、S3及びPEB用の加熱モジュール24、25については、上記した雰囲気制御モジュールであり、モジュール内が第2雰囲気であるNガス雰囲気とされる。キャリアCから搬出され、当該キャリアCに戻されるまでのウエハWは、これらのモジュールに滞在している時間以外の時間において、第1雰囲気である大気雰囲気に曝される。なお、レジスト膜形成済みで、且つ2回目の現像用の現像モジュール35に搬送される前のウエハWが搬送される雰囲気制御モジュール以外のモジュールについては、第1雰囲気である大気雰囲気が形成されるため、雰囲気形成モジュールに比べてレジスト膜の反応が促進される。具体的には裏面洗浄モジュール33、現像モジュール34等は、レジスト膜の反応が促進される雰囲気となるモジュールである。
【0036】
〔バッファモジュールについて〕
バッファモジュール4A~4Dについて説明すると、バッファモジュール4Aはレジスト膜形成後で裏面洗浄モジュール33に搬送前のウエハWを格納する。バッファモジュール4Bは、裏面洗浄モジュール33で処理後、温度調整モジュールS2に搬送前のウエハWを格納する。バッファモジュール4Cは、露光機D5による露光後で初回のPEBを行う前のウエハWを格納する。バッファモジュール4Dは、初回の現像後で、2回目のPEBを行う前のウエハWを格納する。以降は、4A、4B、4C、4Dについて夫々洗浄前バッファモジュール、露光前バッファモジュール、露光後バッファモジュール、初回現像後バッファモジュールとして、夫々記載する場合がある。これらのうちバッファモジュール4B~4Dへの搬送は、不要な場合には行われない。
【0037】
バッファモジュール4A~4Dの構成は、互いに同じである。代表してバッファモジュール4Dの構成について、図3図5の斜視図を参照して説明する。バッファモジュール4Dは方形の筐体41を備えているが、この筐体41は四方に向かう側壁のうちの一方に向かう側壁が除去された構成になっている。そのように側壁が除去されて開放される側を、筐体41の手前側として説明する。
【0038】
筐体41内は、ウエハWの格納領域42として構成されている。筐体41の側壁には、ウエハWを支持する支持部43が多段に設けられており、この支持部43は平面視で矩形をなす格納領域42の4つの各角部から、格納領域42の中央部に向けて突出する。同じ高さに位置する4つの支持部43が1つの組となって1枚のウエハWの裏面の周縁部を支持し、ウエハWを水平な姿勢で待機させることができる。そのように同じ組の支持部43によって形成されるウエハWの待機領域をスロットと呼称すると、このスロットは多数、例えば18個設けられ、下から上に向けてスロット1、スロット2、スロット3・・・として、各スロットに番号を付して呼称する場合が有る。筐体41内の奥側にはガス供給部44が設けられ、筐体41内の手前に向けてNガスを供給し、スロット1~18の各ウエハWが、このNガスの気流に曝される。
【0039】
筐体41の手前側に4枚のシャッタ45が設けられている。この4枚のシャッタ45の手前側から奥側に向けた各位置は、互いに異なっている。シャッタ45は各々昇降可能であって、一部のスロットが筐体41の外部の搬送領域に開放される状態(図3図4の状態)と、全てのスロットが当該筐体41の外部から区画される状態(図5の状態)とを切り替えることができる。なお、外部に開放されるスロットについては変更可能である。シャッタ45の構成について詳しく述べると、4つのシャッタ45は互いに同様に構成されており、上下に並ぶ横長の4つの貫通口46を各々備えている。そのように4つの貫通口46を備えることで、手前から奥に向けて見ると、シャッタ45については左端部、右端部を左右に接続する橋部47が、上下に5つ設けられると見ることもできる。図6は、各シャッタ45の昇降による橋部47の高さを模式的に示しており、図6(a)、図6(b)、図6(c)は、夫々図3図4図5の状態における橋部47の位置を夫々示している。なお、図6(a)~図6(c)の矢印は、上記したNガスの気流を示している。
【0040】
説明の便宜上、4つのシャッタ45をシャッタ45A~45Dとする。筐体41の手前側に昇降機構51~54が設けられている。手前から奥に見て昇降機構51、52が筐体41の左方に、昇降機構53、54が筐体41の右方に設けられている。昇降機構51はシャッタ45A及び昇降機構52に接続され、これらを昇降させることができ、昇降機構52はシャッタ45Bに接続され、当該シャッタ45Bを昇降させることができる。なお、昇降機構52を介して昇降機構51に接続されることで、シャッタ45Bは昇降機構51によっても昇降される。昇降機構53はシャッタ45C及び昇降機構54に接続され、これらを昇降させることができ、昇降機構54はシャッタ45Dに接続されている。従って、昇降機構53によってシャッタ45C、45Dが昇降する。なお、昇降機構54を介して昇降機構53に接続されることで、シャッタ45Dは昇降機構53によっても昇降される。以上の構成であるため、シャッタ45A~45Dについては、互いの相対的な昇降が可能である。
【0041】
昇降機構51~54は例えばシリンダにより構成され、接続されるシャッタ45を上昇位置と下降位置との間で移動させることができる。上記したように昇降機構51、53については、シャッタ45と共に昇降機構52、54も移動させるが、シャッタ45の移動距離と、昇降機構52、54の移動距離と、は同じである。また、昇降機構51~54間で、接続されるシャッタ45の上昇位置と下降位置との間の距離は同じである。昇降機構51~54について、接続されるシャッタ45を上昇位置に位置させる状態をUP状態、下降位置に位置させる状態をDOWN状態とすると、図3図6(a)に示すバッファモジュール4Dについては、昇降機構51~54のすべてがDOWN状態となっている。この状態では、シャッタ45A~45Dの4つの貫通口46が互いに重なっており、スロット1、2、5、6、9、10、13、14、17、18が筐体41の外部のウエハWの搬送領域に開放され、これらのスロットに対してウエハWの搬送が可能になる。
【0042】
また、図4図6(b)に示すバッファモジュール4Dについては、昇降機構51、53がUP状態、昇降機構52、54がDOWN状態となっている。この状態では、スロット3、4、7、8、11、12、15、16が筐体41の外部のウエハWの搬送領域に開放され、これらのスロットに対してウエハWの搬送が可能になる。従ってスロット1~18の各々に対して、図3図4のうちのいずれかの状態とされることで、ウエハWの搬送が可能である。なお、この図4図6(b)の状態は、図3図6(a)の状態と同じくシャッタ45A~45Dの4つの貫通口46が互いに重なるが、筐体41に対するシャッタ45A~45Dの高さが異なっている。そして、図5図6(c)に示すバッファモジュール4Dについては、昇降機構51がDOWN状態、昇降機構52~54がUP状態となっている。この状態では、各シャッタ45の橋部47の高さが互いにずれることで、格納領域42が筐体41の外部に対して区画される。つまり、スロット1~18が、筐体41の外部に対して閉じられる。
【0043】
このようにバッファモジュール4Dについては、ウエハWの搬送を行うにあたり限られたスロットのみが筐体41の外部に開放されるように各シャッタ45が昇降する。そのため筐体41内におけるNガスの濃度が比較的高いものとなり、レジスト膜の変質がより確実に抑えられる。
【0044】
また、図1に示すように塗布、現像装置1は、制御部10を備えている。制御部10はコンピュータにより構成されており、プログラムを備えている。プログラムには、後述する塗布、現像装置1における一連の搬送及び処理を実施することができるように、ステップ群が組み込まれており、当該プログラムによって制御部10は、塗布、現像装置1の各部に制御信号を出力し、当該各部の動作が制御される。具体的には、各搬送機構による動作、処理モジュールにおけるウエハWの処理動作が、制御信号によって制御される。また、制御部10は、後述する搬送が停滞する要因となる異常の発生の有無を検出する。この検出動作には、ウエハWを搬送元から搬送先へ搬送できるか否かを判定することが含まれる。上記の搬送機構の動作制御としては、この異常の有無の検出結果に基づいて行われる搬送機構12、16~19、F1、F2、F11、F12の動作制御が含まれ、後に具体例を述べる。上記のプログラムは、例えばコンパクトディスク、ハードディスク、メモリーカード、DVDなどの記憶媒体に格納されて、制御部10にインストールされる。
【0045】
〔塗布、現像装置における搬送経路〕
塗布、現像装置1におけるウエハWの搬送経路について、図7を参照して説明する。この図7ではモジュール間を接続する実線の矢印によってウエハWの搬送経路を表示し、その矢印の近傍には当該モジュール間の搬送に用いられる搬送機構を示している。また、既述したNガス雰囲気が形成される雰囲気制御モジュールについては、図7中で多数のドットを付すことで、ウエハWが大気雰囲気に曝されるモジュールと区別して示している。
【0046】
ステージ11上のキャリアCから搬送機構12によりウエハWが搬出され、左側処理ブロックD2におけるタワーT1のTRS1に搬送される。そして2つの階層E1のうちウエハWが搬送されたTRS1における高さの階層の搬送機構F1が、当該ウエハWを受け取る。その後ウエハWは、疎水化処理モジュール21→タワーT1の温度調整モジュールS1-1→反射防止膜形成モジュール31→加熱モジュール22→右側処理ブロックD3におけるタワーT2のTRS2の順で搬送される。それによってウエハWに対しては、疎水化処理、反射防止膜の形成、加熱処理が順に行われる。
【0047】
続いてウエハWは搬送機構16により、タワーT2の温度調整モジュールS1-2に搬送される。2つの階層E11のうち、ウエハWが搬送されたS1-2に対応する高さの階層の搬送機構F11がウエハWを受け取り、当該ウエハWは、レジスト膜形成モジュール32→加熱モジュール23→インターフェイスブロックD4におけるタワーT3のTRS3の順で搬送される。それによりウエハWについては、レジスト膜の形成、PABが順に行われる。
【0048】
その後、ウエハWは搬送機構18により、洗浄前バッファモジュール4A→裏面洗浄モジュール33→露光前温度調整モジュールS2の順で搬送され、続いて、搬送機構17により露光機D5へ搬送される。それによりウエハWは、裏面が洗浄され且つ温度調整がなされた状態で、露光される。なお、異常の発生によってウエハWは、裏面洗浄モジュール33から露光前温度調整モジュールS2に直接搬送される代わりに、裏面洗浄モジュール33から露光前バッファモジュール4Bを経由して露光前温度調整モジュールS2に搬送される場合が有る。
【0049】
このように露光されたウエハWは、搬送機構17によりタワーT3のTRS4に搬送された後、搬送機構18によりTRS5に搬送される。そして、当該ウエハWは2つの階層E12のうち、ウエハWが搬送されたTRS5に対応する高さの階層の搬送機構F12に受け取られ、右側処理ブロックD3に取込まれる。なお、異常の発生によってウエハWは、TRS4からTRS5に直接搬送される代わりに、TRS4から露光後バッファモジュール4Cを経由してTRS5に搬送される場合が有る。そしてウエハWは、加熱モジュール24→温度調整モジュールS3-1→現像モジュール34→タワーT2のTRS6の順に搬送され、当該ウエハWに対して初回のPEB、温度調整、初回の現像処理が順に行われて、レジスト膜にパターンが形成される。
【0050】
そしてウエハWは搬送機構16により、TRS6からTRS7に搬送される。なお、異常の発生によってウエハWは、TRS6からTRS7に直接搬送される代わりに、TRS6から初回現像後バッファモジュール4Dを経由してTRS7に搬送される場合が有る。2つの階層E2のうち、ウエハWが搬送されたTRS7に対応する高さの階層E2の搬送機構F2がウエハWを受け取り、当該ウエハWは左側処理ブロックD2に取込まれる。続いてウエハWは、加熱モジュール25→温度調整モジュールS3-2→現像モジュール35→タワーT1のTRS8の順に搬送され、2回目のPEB、温度調整、2回目の現像処理、現像処理後の加熱処理が順に行われ、レジストパターンの整形が行われる。そして、当該ウエハWは搬送機構12により、キャリアCに戻される。
【0051】
以上に説明した搬送経路を、ウエハWはキャリアCから搬出された順番が維持されるように後段のモジュールへと搬送されていく。キャリアCからの搬出はウエハWのロット毎に行われる。以下の説明で、任意の一のロットに属するウエハWについてキャリアCからの搬出順にA1、A2、A3・・・として表記する場合が有る。同じロットのウエハWは同じ処理モジュールで同じ処理条件で処理を受ける。なお、レジスト膜の形成後における処理モジュールである加熱モジュール23~25、裏面洗浄モジュール33、現像モジュール34、35、温度調整モジュールS2、S3は処理部に該当する。そして、加熱モジュール24、25は夫々第1露光後加熱モジュール、第2露光後加熱モジュールに該当し、現像モジュール34、35は夫々第1現像モジュール、第2現像モジュールに該当する。
【0052】
〔搬送の停滞の異常の要因例〕
既述したように予定された搬送先への搬送が一時的に不可となり、上記した搬送経路での搬送が停滞する場合が有る。この要因としては、露光機D5へのウエハWの搬送が一時的に行えなくなること、搬送機構が一時的に動作不良となること、搬送経路で同じ段におけるすべてのモジュールへの搬送が一時的に行えなくなることなどが挙げられる。同じ段におけるすべてのモジュールの搬送が行えないとは、具体的には例えば現像モジュール35が4つ設けられるとする。そして、その現像モジュール35の搬送元である温度調整モジュールS2-2からウエハWを搬送する際にその4つのすべてが使用不可であることで、搬送が行えないケースである。
【0053】
〔インターフェイスブロックにおける露光前のウエハの搬送〕
続いて、インターフェイスブロックD4における露光前のウエハWの搬送制御について説明する。なお、以下の搬送制御に関する説明を行う図8図13についても、図7と同様に、Nガス雰囲気が形成される雰囲気制御モジュールについてはドットを付して示す。
【0054】
ウエハWの搬送経路を大気雰囲気である裏面洗浄モジュール33から下流側に見て直近の雰囲気制御モジュールは露光前温度調整モジュールS2(第2載置部)であるが、この露光前温度調整モジュールS2へのウエハWの搬送が行えないとする。この場合に大気雰囲気の裏面洗浄モジュール33(第1載置部)からバッファモジュール4B(待機室)へとウエハWを搬送し、待機させる。そして、第2載置部である露光前温度調整モジュールS2への搬送が可能となったら、バッファモジュール4Bから露光前温度調整モジュールS2へ当該ウエハWを搬送する。
【0055】
図を参照して、上記の搬送制御をさらに具体的に説明する。図8は、ウエハWが既述した搬送経路で正常に搬送されていた(即ち、搬送経路の各所での搬送の停滞が起きていない)状態から、露光機D5へのウエハWの搬送が不可になった状態を示している。従って、制御部10によって、搬送経路における露光前温度調整モジュールS2以降の区間における搬送が不可となる(停滞する)異常が検出された状態である。そのように露光機D5への搬送が不可になった時点で、計3つの露光前温度調整モジュールS2にはウエハA1~A3が、4つの裏面洗浄モジュール33にはウエハA4~A7が、洗浄前バッファモジュール4AにはウエハA8が、夫々搬入されているとする。なお、異常発生前には正常にウエハWが搬送されているため、露光前バッファモジュール4BにはウエハWが搬入されていない。
【0056】
このような場合、大気雰囲気である裏面洗浄モジュール33の各ウエハWは、搬送先であるNガス雰囲気の露光前温度調整モジュールS2について空いているものが無いため、当該露光前温度調整モジュールS2へ搬送することができない。仮に各ウエハWが裏面洗浄モジュール33で待機すると、レジスト膜の変質が進行してしまう。そこで、裏面洗浄モジュール33のウエハA4~A7は処理を終えたものから順に、搬送機構18によって露光前バッファモジュール4Bに搬送され、Nガス雰囲気で待機する。従ってウエハA4から番号順に、露光前バッファモジュール4Bに搬送されることになり、図9では裏面洗浄モジュール33のウエハA4~A7のすべてが露光前バッファモジュール4Bに搬送された例を示している。その一方で、Nガス雰囲気が形成される洗浄前バッファモジュール4AにおけるウエハA8については、裏面洗浄モジュール33への搬送が行われず、洗浄前バッファモジュール4Aにて待機する。
【0057】
図9の状態から露光機D5への搬送が可能になると、露光前温度調整モジュールS2におけるウエハA1~A3は、搬送機構17によって番号順に露光機D5へ搬送される。それによって、露光前温度調整モジュールS2が空いた状態(ウエハWが搬入されていない状態)となるので、そのように空いた露光前温度調整モジュールS2に、搬送機構18によって露光前バッファモジュール4BからウエハA4~A7が順番に搬送される。図10ではウエハA4が、露光前温度調整モジュールS2に搬送された状態を示している。
【0058】
その一方で、洗浄前バッファモジュール4Aから裏面洗浄モジュール33へのウエハA8の搬送が可能となり、当該ウエハA8は搬送機構18によって裏面洗浄モジュール33から露光前バッファモジュール4Bを経由せずに露光前温度調整モジュールS2に搬送される。なお、バッファモジュール4BからのウエハA4~A7の搬送が完了してから、バッファモジュール4AからのウエハA8の搬送を行ってもよいし、当該ウエハA4~A7の搬送が完了する前にウエハA8の搬送を行ってもよい。ウエハA8以降の後続のウエハWについても当該ウエハA8と同様に、露光前バッファモジュール4Bを経由せずに露光前温度調整モジュールS2に搬送される。露光機D5には、ウエハA1、A2、A3、A4・・・A7、A8・・・と、番号順にウエハWが搬入される。
【0059】
なお図8で示したケースでは、露光前温度調整モジュールS2に空きが無いことで当該露光前温度調整モジュールS2への搬送が不可であるが、露光前温度調整モジュールS2が空いている場合には、裏面洗浄モジュール33のウエハWは露光前温度調整モジュールS2へと搬送する。従って、露光機D5への搬入が不可となる異常発生時に、ウエハA1が露光機D5へ搬送済みで、3つの露光前温度調整モジュールS2のうち2つにウエハA2、A3が搬送され、1つが空いているという点のみ、図8で説明した状態と異なるとする。その場合、裏面洗浄モジュール33のウエハA4については、空いている露光前温度調整モジュールS2に搬送される。ウエハA5~A7については、露光機D5への搬送が不可の状態のままで露光前温度調整モジュールS2が空いていないとすると、図9に示したように露光前バッファモジュール4Bに搬送される。
【0060】
このように露光前温度調整モジュールS2への搬送が可能である限り、露光前バッファモジュール4Bへの搬送を行わないように制御するのは、当該バッファモジュール4Bにアクセスする搬送機構18の搬送工程数の増加を防ぐためである。つまり、異常が解消されて露光前バッファモジュール4BからウエハWを搬出するにあたり、露光前バッファモジュール4Bに溜められたウエハWの枚数分、搬送機構18の搬送工程数が増えるが、この工程数の増加が抑制され、スループットの低下が防止されるように搬送制御が行われる。
【0061】
なお図8図9で示すようにウエハA8は、搬送経路の後段である裏面洗浄モジュール33への搬送が可能であるが、上記したように洗浄前バッファモジュール4Aに留める。これは、裏面洗浄モジュール33へ搬送すると、露光前温度調整モジュールS2への搬送が可能とならない限り、露光前バッファモジュール4Bに搬送されることになり、上記したように搬送機構18の搬送工程数が増えてしまうためである。
【0062】
ところで露光前バッファモジュール4Bについて、設置する数は1つに限られず、複数設けてもよいし、スロットの数も上記した18個には限られない。また、裏面洗浄モジュール33の数も既述した4つに限られない。ただし図8で例示したように、異常の発生時に裏面洗浄モジュール33のすべてにウエハWが滞在したとして、それらのウエハWのすべてをバッファモジュール4Bに搬送可能であるようにすることが好ましい。そのため、バッファモジュール4BにおけるウエハWの収容可能数の合計は、裏面洗浄モジュール33における前記基板の収容可能数の合計以上であるようにすることが好ましい。バッファモジュール4Bが1つのみ設けられる場合にはその1つのスロットの数、バッファモジュール4Bが複数設けられる場合にはその複数のバッファモジュール4Bのスロットの数の合計が、バッファモジュール4BのウエハWの収容可能数の合計である。裏面洗浄モジュール33における前記基板の収容可能数の合計は、裏面洗浄モジュール33は1枚のウエハWを収容するので、裏面洗浄モジュール33の合計数である。
【0063】
〔初回現像後のウエハWの左右の処理ブロック間でのウエハの搬送〕
続いて初回の現像が終了したウエハWについて、右側処理ブロックD3から左側処理ブロックD2への搬送するケースについて説明する。右側処理ブロックD3における初回現像用の現像モジュール34及びタワーT2のTRS6のウエハWについて、左側処理ブロックD2への搬送を行えない場合は、当該ウエハWを初回現像後バッファモジュール4Dへ搬送して退避させる。左側処理ブロックD2へのウエハWの搬送を行えない場合とは、具体的には例えば、搬送経路において左側処理ブロックD2の搬送機構F2が搬送を受け持つ区間のいずれかの箇所で搬送が行えない場合である。即ち、左側処理ブロックD2の各搬送機構F2が一時的に動作不可となることや、搬送経路において搬送機構F2が搬送を受け持つ区間の同じ段のすべての処理モジュールが一時的に使用不可となって、その処理モジュールよりも後段にウエハWを搬送できない場合が該当する。
【0064】
図11図13を参照して具体的に説明する。なお図1図2で説明したように、右側処理ブロックD3、左側処理ブロックD2の各々で、初回現像後のウエハWが通過する搬送経路の各段のモジュールは、上下2つの階層に分かれて設けられているが、図11図13では階層毎に分けずにモジュールを示している。また、右側処理ブロックD3のモジュールを左に、左側処理ブロックD2のモジュールを右に夫々示している。そして、初回現像前のウエハWの温度を調整する温度調整モジュールS3-1は2つ、初回現像用の現像モジュール34が4つ、右側処理ブロックD3からの出口となるTRS6が2つ、左側処理ブロックD2の入口となるTRS7が2つ設けられるものとして示している。
【0065】
図11は、ウエハWが既述した搬送経路で正常に搬送されていた(即ち、搬送経路の各所での搬送の停滞が起きていない)状態から、左側処理ブロックD2へのウエハWの搬送が不可になった異常が検出された状態を示している。そのように異常が検出された時点で、2つのTRS6にはウエハA1、A2が、4つの現像モジュール34にはウエハA3~A6が、2つの温度調整モジュールS3-1にはウエハA7、A8が夫々滞留しているとする。なお、異常発生前には正常にウエハWが搬送されているため、初回現像後バッファモジュール4Dには、ウエハWが搬入されていない。
【0066】
大気雰囲気である現像モジュール34及びTRS6でウエハWが待機するとレジスト膜の変質が進行してしまう。そのため、第1載置部であるこれらの現像モジュール34及びTRS6のウエハA1~A6は図12に示すように、TRS6から搬送機構16によって待機室である初回現像後バッファモジュール4Dに順番に搬送されて待機する。このように、モジュール間を周回移動する搬送機構F2が搬送を受け持つ区間で搬送が不可になると、その区間の入口のモジュール(TRS7)にはウエハWを搬送しない。そして、モジュール間を周回移動する右側処理ブロックD3の搬送機構F12が搬送を受け持つ区間で、その区間の出口のモジュール(TRS6)からバッファモジュール4DにウエハWを搬送して退避させる。つまり、周回移動する搬送機構F2が搬送を受け持つ前段の区間と、周回移動する搬送機構F12が搬送を受け持つ後段の区間との間での搬送が行われないようにし、前段の区間からバッファモジュール4DへとウエハWを退避させる。それにより、レジスト膜の変質が防止されるようにしている。その一方で、Nガス雰囲気が形成される温度調整モジュールS3-1におけるウエハA7、A8については、現像モジュール34への搬送が行われず、温度調整モジュールS3-1で待機する。
【0067】
そして図12の状態から、左側処理ブロックD2へのウエハWの搬送が可能になると、図13に示すように初回現像後バッファモジュール4DにおけるウエハA1~A6は、搬送機構16によって順番に第2載置部であるTRS7に搬送される。その一方で、温度調整モジュールS3-1から現像モジュール34へ、ウエハA7、A8が順番に搬送される。
【0068】
なお、左側処理ブロックD2へのウエハWの搬送が不可の間、温度調整モジュールS3-1のウエハA7、A8を現像モジュール34へ搬送しないのは、図8図10で説明した、異常が解消されるまで洗浄前バッファモジュール4AのウエハWの搬送を行わない理由と同様の理由による。つまり、ウエハA7、A8が現像モジュール34へ搬送後にTRS6を介してバッファモジュール4Dに搬送されることで、バッファモジュール4DにおけるウエハWの収容枚数が増加することを防止する。それによって、異常の解消後に搬送機構16がバッファモジュール4Dへアクセスする回数が抑えられるので、スループットの低下が防止される。
【0069】
この初回現像後バッファモジュール4Dについても露光前バッファモジュール4Bと同様に、搬送元となるモジュールのウエハWの収容可能数の合計以上の数のウエハWを収容できるように個数及び1個あたりのスロットの数が設定されることが好ましい。つまり、TRS6、現像モジュール34に1枚ずつウエハWが収容されるので、初回現像後バッファモジュール4Dは、これらのモジュールの合計数以上のウエハWを収容できるようにすることが好ましい。なお、後述のバッファモジュール4Cも同様に個数及び1個あたりのスロットの数が設定される。
【0070】
〔露光後、初回現像前のウエハのバッファモジュールへの搬送〕
インターフェイスブロックD4における、露光後バッファモジュール4Cに対する搬送制御について説明する。図11図13で説明したように、左側処理ブロックD2へ初回現像後のウエハWの搬送が可能であるか否かによって、初回現像後バッファモジュール4DにウエハWを搬送するか否か決定する。これと同様に、右側処理ブロックD3へ露光後のウエハWの可能であるか否かによって、バッファモジュール4DにウエハWを搬送するか否か決定すればよい。具体的には、右側処理ブロックD3の搬送機構F12がウエハWの搬送を受け持つ区間の何れかの箇所で搬送が行えない異常が検出された場合には、TRS4(第1載置部)からウエハWを搬送機構19によって露光後バッファモジュール4C(待機室)に搬送すればよい。そして異常の解消後に、搬送機構19によって露光後バッファモジュール4Cから、搬送機構F12が搬送を受け持つ区間の入口であるTRS5(第2載置部)へとウエハWを搬送すればよい。
【0071】
〔バッファモジュールへウエハを格納することの効果〕
以上に述べた塗布、現像装置1によれば、異常の検出時にNガス雰囲気が形成されたバッファモジュール4B~4DにウエハWが搬送されて待機することで、大気雰囲気となるモジュールでウエハWが長時間待機することが防止される。その結果として、レジスト膜の各種の反応の進行による変質が防止されるので、レジストパターンのCDが設計値から変動することが抑制される。そのため、レジスト膜を用いて下層膜をエッチングするにあたり、下層膜に形成されるパターンのCDについても設計値からずれることが抑制される。また、レジスト膜の硬度の低下も抑制されるので、上記したエッチング中のレジスト膜の消失も防止することができる。なお、バッファモジュール4B、4C、4Dに対してこのように搬送を行う搬送機構18、19、16は、制御部10と共に各々基板搬送装置を構成する。
【0072】
バッファモジュール4C~4DにウエハWの格納することの効果について、さらに述べておく。仮に大気雰囲気にて図7で示した一連のウエハWの搬送、処理が行われるとした場合、レジスト膜の形成から露光を行うまでの時間(PCD時間)、露光からPEBを行うまでの時間(PED時間)、及び/またはPEBを行ってから現像を行うまでの時間(PPD時間)がレジスト膜の変質に影響する。なお、PCD、PED、PPDは夫々、Post Coating Delay、PED:Post Exposure Delay、Post PEB Delayの略称である。
【0073】
そして、上記したようにNガス雰囲気が形成される露光前バッファモジュール4Bに必要に応じてウエハWが搬送されて待機が行われる。バッファモジュール4Bに格納することで、ウエハW間で上記したPCD時間がばらついたとしても、Nガス雰囲気でウエハWが待機するため、レジスト膜に対するPCD時間のばらつきの影響はキャンセルされる。
【0074】
また、露光後バッファモジュール4C、初回現像後バッファモジュール4Dの各々に必要に応じてウエハWを待機させることで、搬送機構F2、F12の正常な動作中に、これらの搬送機構が搬送を受け持つ区間の入口となるモジュール(TRS5、TRS7)にウエハWを搬送することができる。そのように搬送機構F2、F12の正常な動作中がなされていることで、1回目のPEB及び現像、2回目のPEB及び現像の各々について、PEBを行う加熱モジュールから現像モジュールに搬送するまでの時間(即ち上記のPPD時間)が異常となることが防止される。また、バッファモジュール4C、4Dに格納することで、ウエハW間でPED時間のばらつきが生じたとしても、Nガス雰囲気で格納されるため、そのPED時間のばらつきの影響はキャンセルされる。
【0075】
このように各段のバッファモジュールはPCD時間の影響を抑えるものと、PED時間及びPPD時間の影響を抑えるものとに分かれる。そのためPCD時間と、PED時間及びPPD時間との間でいずれか一方の影響が小さく他方が大きい場合には、その時間に合わせたバッファモジュールのみを設けてもよい。つまりPED時間及びPPD時間の影響が大きい場合には、バッファモジュール4Bは設けずにバッファモジュール4C、4Dのみを設けるようにしてもよいし、PCD時間の影響が大きい場合にはバッファモジュール4C、4Dは設けず、バッファモジュール4Bのみを設けてもよい。
【0076】
なお、使用するレジストや現像液の種類によっては、大気に曝されることでのレジスト膜の変質性が初回現像後に低くなることが考えられる。その場合、右側処理ブロックD3の搬送機構F12がウエハWの搬送を受け持つ区間の何れかの箇所で搬送が行えない異常が検出されたとすると、上記したように露光後バッファモジュール4CへのウエハWの搬送を行い、待機させるとする。その一方、左側処理ブロックD2の搬送機構F2がウエハWの搬送を受け持つ区間の何れかの箇所で搬送が行えない異常が検出されたとしても、初回現像後バッファモジュール4DへウエハWを退避させず、TRS6からTRS7へとウエハWを搬送するようにしてもよい。つまり、図11図13で説明した搬送制御を行わず、ウエハWを搬送経路のより後段側のモジュールへと早く搬送することで、スループットの向上を図ってもよい。
【0077】
〔各バッファモジュールへの搬送制御の補足〕
ところで図8図9では露光前温度調整モジュールS2から露光機D5への搬送が不可となる異常が検出されたことで、裏面洗浄モジュール33のウエハWを露光前バッファモジュール4Bへ搬送する例を示した。しかし、バッファモジュール4Bへの搬送は、露光機D5へのウエハWの搬送が不可となる場合に行われるようにすることには限られない。搬送経路において温度調整モジュールS2以降の区間(露光前バッファモジュール4Bよりも後段の区間)で搬送が不可となった場合には、各所でのウエハWの滞留により裏面洗浄モジュール33のウエハWを温度調整モジュールS2へ搬送できなくなるおそれが有る。そのため、温度調整モジュールS2以降の区間で、露光前温度調整モジュールS2と露光機D5との間以外の箇所において搬送の異常が検出される場合においても、裏面洗浄モジュール33のウエハWを露光前バッファモジュール4Bへ搬送してよい。例えば図11図13で示したように搬送機構F2によるウエハWの搬送が行えない異常となった場合においても、露光前バッファモジュール4BへウエハWを搬送するようにしてもよい。
【0078】
バッファモジュール4B~4Dへの搬送について補足する。例示したようにバッファモジュール4B~4Dについては、当該バッファモジュール4B~4Dの各々から搬送経路を上流側に見て、直近のNガス雰囲気が形成されるモジュールよりも下流側であると共に大気雰囲気とされるモジュールに滞在するウエハWが搬送されることになる。従って、異常の検出時においてこれらのバッファモジュール4B~4Dに搬送されるウエハWの搬送元となるモジュールの種類としては、図8の例のように1つであったり、図11の例のように2つであったりする。
【0079】
仮に塗布、現像装置1の右側処理ブロックD3に、1回目の現像処理後、右側処理ブロックD3の出口となるTRS6に搬送される前のウエハWの表面を検査するために撮像する検査モジュールが設けられ、この検査モジュールが大気雰囲気であるとする。即ちウエハWは、図11で示したように現像モジュール34→TRS6と搬送される代わりに、現像モジュール34→検査モジュール→TRS6と搬送されるとする。この場合には、異常の検出時に現像モジュール34、検査モジュール及びTRS6から(つまり3種類のモジュールから)ウエハWが、バッファモジュール4Dへと搬送されることになる。
【0080】
〔塗布、現像装置のその他の構成及び運用〕
既述した搬送経路における異常が検出された場合に、各バッファモジュール4へのウエハWの搬送を行うことに並行して、レジスト膜形成モジュール32へのウエハWの搬送を停止してもよい。そのようにすることで、異常の発生後にウエハWにレジスト膜が形成されること、及び当該異常が継続することで搬送の停滞も続いて当該レジスト膜が変質してしまうことを防止することができる。
【0081】
そのようにレジスト膜形成モジュール32へのウエハWの搬送を停止するにあたっては、例えばキャリアCからウエハWの払い出しを停止する。そして既に塗布、現像装置1に搬入済みのウエハWのうち、レジスト膜形成モジュール32よりも搬送経路の前段のモジュール(TRS1~S1-2)に位置する各ウエハWについては後段のモジュールへの搬送を行わず、位置しているモジュールに滞留させればよい。異常が解消したら、各モジュールからのウエハWの搬送を再開する。
【0082】
なお、インターフェイスブロックD4のレイアウトを例示したが、このようなレイアウトとすることには限られず、各モジュールの配置や搬送機構の数について、適宜変更可能である。また現像モジュールについては、現像液による現像を行う例を示したが、ガス供給によって1回目及び/または2回目の現像を行うようにしてもよい。また、PEB及び現像について2回行う装置構成とすることに限られず、1回のみ行う装置構成であってもよいし、3回以上行う装置構成であってもよい。
【0083】
また、バッファモジュール4Dについて1つのみ設けることに限られず、複数設けてもよいことを述べた。図11図13で説明したようにバッファモジュール4DにウエハWを搬送するにあたって、複数のバッファモジュール4Dの各々について異常が無い場合には、例えばそれらのバッファモジュール4Dの各々にウエハWを搬送する。そして複数のうちのいずれかのバッファモジュール4D(一方のバッファモジュール)が異常となった場合には、その異常となったバッファモジュール4Dを除外して、他の各バッファモジュール4D(他方のバッファモジュール)のみにウエハWを搬送する運用とすることができる。バッファモジュール4A~4Cについても各々バッファモジュール4Dと同様に、複数設けると共に異常となったバッファモジュールを除外して使用することができる。
【0084】
塗布、現像装置1において予め決められた異常が検出された際に、キャリアCからのウエハWの搬出を停止し、既に塗布、現像装置1に搬入済みのウエハWについては搬送経路の下流側の直近のバッファモジュール4に搬送し、Nガス雰囲気で待機させる運用とすることができる。即ち、図7の搬送経路においてTRS1~TRS3に各々位置するウエハWは、TRS3に到達したらバッファモジュール4Aに搬送される。裏面洗浄モジュール33におけるウエハWは、図8図9で示した例と同様、バッファモジュール4Bに搬送される。露光前温度調整モジュールS2~TRS4に各々位置するウエハWは、TRS4に到達したらバッファモジュール4Cに搬送される。TRS5~TRS6に各々位置するウエハWは、TRS6に到達したらバッファモジュール4Dに搬送される。各バッファモジュール4よりも後段のTRS7~TRS8におけるウエハWは、キャリアCへと搬送する。
【0085】
つまり、バッファモジュール4A~4Dの各々の上流側のウエハWがすべて、バッファモジュール4A~4Dの各々に搬送される。当該搬送を非常用退避搬送と呼称する。なお、この非常用退避搬送の実行によってバッファモジュール4C、4Dについては、図11等で説明した第1載置部であるモジュール以外のモジュールからもウエハWが搬送される。即ち、異常の種別に応じてバッファモジュールに対する搬送元が変化する。
【0086】
例えば塗布、現像装置1は主電源からの電力供給を受け、工場の停電などにより主電源からの電力供給が停止した場合には非常用電源からの電力供給を受けるように構成される。
非常用退避搬送が実行されるトリガーとなる予め決められた異常とは、例えばこの主電源からの電力供給の停止であり、主電源からの電力供給の再開後は、各バッファモジュール4からのウエハWの搬出による当該各ウエハWへの処理の続行と、キャリアCからのウエハWの搬出の再開と、がなされる。制御部10は、主電源からの電力供給の有無を検出できるように構成され、その検出結果に基づいて上記の非常用退避搬送が実行されるように制御を行う。その他に、予め決められた異常の例としては、既述した搬送経路の複数の箇所でウエハWの搬送が停滞した場合が挙げられる。より具体的には例えば図で説明した露光機D5への搬送が不可になるケースと、図で説明した搬送機構F2による搬送が不可になるケースとが同時に発生した場合、非常用退避搬送を行うようにしてもよい。なお、非常用退避搬送としてバッファモジュール4A~4Dの各々にウエハWを退避させることに限られず、これらのうちのいずれか一つのバッファモジュールにウエハWを退避させてもよい。
【0087】
[雰囲気制御モジュールに形成される雰囲気]
ところでバッファモジュール4(4A~4D)を含む雰囲気制御モジュールについて、不活性ガス雰囲気としてNガス雰囲気を形成することを示したが、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノンなどの希ガスなどのNガス以外の不活性ガス雰囲気を形成してもよい。また、上記したように大気中の水やCOなどの成分とレジスト膜とが反応する場合がある。レジスト膜と反応するガスの種類は、レジスト膜の組成により異なる。そのため、雰囲気制御モジュールにおいて、レジスト膜の反応を抑制するために形成する雰囲気は、不活性ガス雰囲気に限られない。
【0088】
具体的には、不活性ガスの代わりに低湿度の空気(ドライエア)をバッファモジュール4等の雰囲気制御モジュールに供給し、当該雰囲気制御モジュールにおいて、この大気による雰囲気が形成されるようにしてもよい。この低湿度の空気は、さらに具体的には例えば塗布、現像装置1が設置されるクリーンルームの湿度よりも低い湿度の空気であり、例えば塗布、現像装置1の稼働中において無作為に互いに異なるタイミングで10回以上湿度を測定し、その湿度よりもキャリアC内に供給する空気の湿度が低いのであれば、当該空気は低湿度の空気に該当する。なお本明細書での湿度は、特に説明が無い限り相対湿度である。水分の代わりにCO2や酸性ガスの濃度がクリーンルームの大気のそれらの濃度よりも低くなるように成分が調整された大気を供給して、その大気による雰囲気を形成してもよい。
【0089】
従って、バッファモジュール4を含む雰囲気形成モジュールに形成する雰囲気としては、雰囲気形成モジュールの外部とは異なる雰囲気である。さらに補足すると、この雰囲気形成モジュールに形成される外部とは異なる雰囲気とは偶然に形成される雰囲気ではなく、金属含有レジストの反応が抑えられるように意図して形成される雰囲気であって、水やCOなどの特定の成分が外部の雰囲気に比べて低下するように制御された雰囲気である。ただし、既述したように様々な成分に対してレジスト膜は反応するため、雰囲気形成モジュールに形成される雰囲気は、不活性ガス雰囲気とすることが、レジスト膜の変質を抑制する上でより好ましい。
【0090】
[塗布、現像装置のバリエーション及びウエハの大気雰囲気に接する時間]
処理ブロックとして、塗布、現像装置1ではレジスト膜の形成及び現像の両方のみを行えるように構成されているが、後述の基板処理装置6、7のようにいずれか一方のみを行う構成としてもよい。即ち、処理ブロックにおいてレジスト膜形成モジュール及び現像モジュールのうち一方のみを備える構成としてもよい。従って、キャリアCから搬出されたウエハWは、レジスト膜の形成後に現像が行われずに当該キャリアCに戻されてもよい。つまり、塗布装置として基板処理装置を構成してもよい。レジスト膜が露光されたウエハWがキャリアCから装置に搬送され、現像が行われてキャリアCに戻されてもよい。つまり、現像装置として基板処理装置を構成してもよい。そのような塗布装置、現像装置において、塗布、現像装置1と同様にインターフェイスブロックD4を介して露光機D5が接続される構成としてもよい。そのようにインターフェイスブロックD4を設けた場合には、図8図10で説明した搬送制御を行えばよい。
【0091】
ところで、上記したように塗布、現像装置1においてはウエハW間で、レジスト膜の形成後、現像が完了するまでの雰囲気制御モジュールに滞在していない時間のばらつきが抑えられるように搬送が行われるが、当該滞在していない時間については互いに揃うことが好ましい。この時間が揃うことについて補足する。例えば同じキャリアCから搬出されるウエハW間で、レジスト膜形成モジュール32から搬出される時点t1から現像モジュールに搬送される時点t2までの間で、雰囲気制御モジュールに滞在していない時間の差が60秒以内であるとする。この場合は、当該ウエハW間で雰囲気制御モジュールに滞在していない時間が揃うことに該当する。
【0092】
なお、上記した塗布装置の場合、レジスト膜の形成後、現像が行われずにウエハWが、ステージ11によってNガス雰囲気を形成可能なキャリアCに戻されることになる。例えば同じキャリアCから搬出されるウエハW間で、上記の時点t1からキャリアCに搬送されるまでの時点までの間で、雰囲気制御モジュールに滞在していない時間の差が60秒以内であるとすると、当該ウエハW間で雰囲気制御モジュールに滞在していない時間が揃うことに該当する。
【0093】
そして上記した現像装置の場合、ステージ11によってNガス雰囲気とされたキャリアCから、ウエハWが現像モジュールへ向けて搬出することになる。同じキャリアCから搬出されるウエハW間で、キャリアCから搬送された時点から現像モジュールに搬送される時点t2までの間で、雰囲気制御モジュールに滞在していない時間の差が例えば60秒以内であるとすると、当該ウエハW間で雰囲気制御モジュールに滞在していない時間が揃うことに該当する。
【0094】
なお、上記したように現像については1回のみ行われてもよいし複数回行われてもよい。塗布、現像装置1及び現像装置について、上記した現像モジュールに搬送される時点t2とは、最後に現像を行う現像モジュールに搬送される時点である。つまり、図7の搬送経路で示したように現像モジュール34、35に搬送する場合は、2回目の現像を行う現像モジュール35に搬送される時点、現像モジュール34のみに搬送する場合は、この現像モジュール34に搬送する時点が夫々時点t2である。
【0095】
上記の塗布装置について、レジスト膜形成モジュール32でウエハWを処理後、TRSを介してキャリアCにウエハWが戻される。このTRSへの搬送が行えない場合に、TRSへの搬送を行う代わりに、バッファモジュール4へのウエハWの退避が行われる構成であってもよい。つまり、バッファモジュール4へのウエハWの搬送元となる第1載置部について、上記の各例ではレジスト膜形成モジュール32とは別のモジュールとして示してきたが、レジスト膜形成モジュール32が第1載置部であってもよい。従って、レジスト膜形成モジュールは、第1載置部または第1載置部よりも後段のモジュールである。そして、第1載置部がレジスト膜形成モジュール32である場合にも、既述したように異常の発生時には、このレジスト膜形成モジュール32へのウエハWの搬送を停止するようにしてよい。
【0096】
また、基板処理装置について、レジスト膜の形成及び/または現像を行うものとして述べてきたが、そのような装置構成であることに限られず、レジスト膜のパターニングの各工程のうちのレジスト塗布、現像以外の工程を行う装置として構成されてもよい。つまり、PABのみを行ったりする装置や、裏面洗浄のみを行う装置であってもよい。なお、上記したパターニングとは、レジスト膜を形成してから最初にレジスト膜の下層における膜(下層膜)のエッチングを行う前の一連の処理が、上記のパターニングに該当する。従って、そのように最初の下層膜をエッチングする前に行う、PEB、現像を繰り返すにあたっての2回目以降のPEB及び現像や、現像後の加熱(ポストベーク)や、現像後のレジストを改質するための紫外線処理なども、上記したパターニングの工程に該当する。2回目の現像液の供給後もMORの変質が進行するおそれがある。そのため、上記したポストベークや紫外線処理を行う装置において、既述した実施形態で述べたように搬送経路の異常に応じてウエハWをバッファモジュール4に退避させるようにして、レジスト膜の変質を抑えるようにもよい。
【0097】
[バッファモジュール以外の待機室]
上記したようにステージ11のガス供給及び排気により、ステージ11上のキャリアCをNガス雰囲気とすることができる。そのようにNガス雰囲気が形成されたキャリアCを待機室としてもよい。つまり、異常の検出時に所定の搬送先にウエハWを搬送する代わりに、このキャリアCにウエハWを搬送して待機させる。具体例を挙げると、上記した現像装置において、キャリアCから搬送機構12がレジスト膜形成済みのウエハWを取り出し、処理ブロックのタワーT1のTRSに向けて搬送する。そのTRSに向う途中に異常が検出される。その場合に搬送機構12はTRSへの搬送を中止し、キャリアCにウエハWを戻して待機させる。即ち、キャリアCが待機室として扱われる。
【0098】
[第2実施形態の装置の構成]
続いて第2実施形態の基板処理装置6について、図14の平面図を参照しながら塗布、現像装置1との差異点を中心に説明する。基板処理装置6は、レジスト膜の形成からPABに至るまでの処理を真空雰囲気で行う。基板処理装置6は、その内部雰囲気が例えば乾燥した窒素ガスにより常圧雰囲気とされる横長の常圧搬送室61を備え、この常圧搬送室61の手前には、ステージ11が左右方向に複数並んで設けられている。そして、常圧搬送室61の側壁は、塗布、現像装置1のキャリアブロックD1の側壁と同様にドア13を備え、ステージ11上のキャリアCの蓋を着脱することができる。常圧搬送室61には、昇降可能な多関節アームで構成された常圧搬送機構62が設けられている。
【0099】
ステージ11から見て、常圧搬送室61の左側の壁には、ウエハWの向きや中心の検出を光学的に行うアライメント室63が設けられており、アライメント室63から搬出される際に、常圧搬送機構62の所定の位置に所定の向きでウエハWが受け取られる。右側の壁には、上記のバッファモジュール4と同様の構成のバッファモジュール64が設けられている。上記の常圧搬送機構62は、ステージ11上のキャリアC、バッファモジュール4、アライメント室63、後述のロードロック室66A、66B間でのウエハWの受け渡しを行うことができる。
【0100】
常圧搬送室61におけるステージ11の反対側(後方側)には、2個のロードロック室66A、66Bが左右に並ぶように配置されており、ロードロック室66A、66Bの後方側には真空搬送室67が配置されている。ロードロック室66A、66Bと常圧搬送室61との間にはドアバルブ68が介在し、ロードロック室66A、66Bと真空搬送室との間にはゲートバルブ69が介在する。
【0101】
ロードロック室66A、66Bは、ウエハWを載置する載置台を備えており、当該載置台は、常圧搬送機構62、後述の真空搬送機構75の各々に対してウエハWを受け渡せるように当該載置台の上面に突没して、当該ウエハWを昇降させるピンを備える。またロードロック室66A、66Bについては、ドアバルブ68及びゲートバルブ69が共に閉じられた状態でNガスの供給と、排気とが各々独立して行われることで、真空雰囲気と大気圧雰囲気とを切替え自在である。
【0102】
真空搬送室67は、所定の圧力の真空雰囲気とされている。この真空搬送室67に対して、ゲートバルブ70を各々介して、レジスト膜形成モジュール71、膜除去モジュール72、加熱モジュール73及び真空バッファモジュール74が接続されている。真空搬送室67には多関節アームからなる真空搬送機構75が設けられており、レジスト膜形成モジュール71、膜除去モジュール72、加熱モジュール73、真空バッファモジュール74、ロードロック室66A、66Bの各々に対してウエハWの受け渡しが可能である。なお、上記したドアバルブ68、ゲートバルブ69、70は、ウエハWの搬送を行うにあたって必要な場合を除いて閉鎖され、各モジュール間を区画する。
【0103】
レジスト膜形成モジュール71は、ウエハWを格納するチャンバと、チャンバ内に設けられる載置台と、載置台上のウエハWを所望の温度に調整するヒーターなどの温度調整部と、載置台上のウエハWに処理ガスを供給するガスシャワーヘッドなどのガス供給部と、を備える。チャンバ内は所定の圧力の真空雰囲気とされ、成膜ガスである処理ガスを用いたALDあるいはCVDにより、ウエハWの表面にレジスト膜が形成される。なお、処理ガスがプラズマ化されて処理が行われるように、プラズマ形成機構が設けられていてもよい。載置台については、ロードロック室66A、66Bの載置台と同様に昇降するピンを備えており、真空搬送機構75に対してウエハWの受け渡しが可能である。
【0104】
膜除去モジュール72及び加熱モジュール73について、レジスト膜形成モジュール71との差異点を中心に述べる。膜除去モジュール72は、ウエハWにおける不要部分に成膜されたレジスト膜を限定的に除去するためのモジュールであり、具体的にはウエハWの表面の周縁部におけるレジスト膜、及び意図せず裏面に形成されたレジスト膜を除去する。そのために膜除去モジュール72では処理ガスとして、成膜ガスの代わりにエッチングガスが供給される。
【0105】
例えば、ウエハWの表面の周縁部に対して限定的に処理ガスの吐出口が開口するように、ガス供給部を構成する。そして、例えばその処理ガスの供給中に載置台からウエハWの裏面側の排気が行われる構成とし、処理ガスの一部がウエハWの表面の周縁部から下面に回り込むようにする。そのようにモジュールを構成することで、エッチングガスが当該周縁部及びウエハWの裏面に限定的に供給されて、上記した膜の限定的な除去が行われるようにする。
【0106】
加熱モジュール73はPABを行うモジュールであり、例えば処理ガスの代わりにNガスがチャンバ内に供給される。そしてNガス雰囲気において、載置台上のウエハWを所定の温度に加熱され、PABが行われる。
【0107】
真空バッファモジュール74は、Nガスが供給されて内部がNガス雰囲気とされると共に、排気によって真空雰囲気とされるチャンバと、棚と、を備える。この棚は、例えばバッファモジュール4と同様に支持部43を多段に備え、当該棚には多数のスロットが形成される。そして、例えばこの棚は昇降機構に接続されることでチャンバ内を昇降可能であり、棚の昇降によって任意のスロットと真空搬送機構75との間で、ウエハWの受け渡しが行われる。この真空バッファモジュール74は、バッファモジュール4と同様に、異常の検出時にウエハWを待機させるために用いられる。
【0108】
[第2実施形態の装置における基板の搬送経路]
基板処理装置6におけるウエハWの搬送経路について説明する。ステージ11上のキャリアCから搬出されたウエハWは、常圧搬送室61→アライメント室63→常圧搬送室61→ロードロック室66A→真空搬送室67に搬送される。その後、ウエハWは、レジスト膜形成モジュール71→真空搬送室67→膜除去モジュール72→真空搬送室67→加熱モジュール73→真空搬送室67の順で搬送されて、レジスト膜の形成、不要部位におけるレジスト膜の除去、PABが順に行われる。続いてウエハWは、ロードロック室66B→バッファモジュール64→キャリアCの順で搬送される。キャリアCに対しては、ウエハWが戻されてステージ11上から退避するまで、Nガスの供給と排気とが行われ、内部がNガス雰囲気とされる。
【0109】
[異常検出時における搬送及び搬送の効果]
レジスト膜形成モジュール71にてレジスト膜が形成され、且つロードロック室66Bに搬送される前のウエハWについて、モジュールの一時的なトラブルや、モジュールが空いていないなどの要因により、上記の搬送経路における次の搬送先への搬送が行えない異常が発生したとする。そのような場合ウエハWは、次の搬送先に搬送される代わりに真空バッファモジュール74へ搬送され、次の搬送先への搬送が可能になるまで真空バッファモジュール74にて待機する。具体的には、レジスト膜形成モジュール71で処理済みのウエハW、膜除去モジュール72で処理済みのウエハW、加熱モジュール73で処理済みのウエハWについて、膜除去モジュール72、加熱モジュール73、ロードロック室66Bが夫々空いていなければ、真空バッファモジュール74に搬送される。処理済みのウエハWの搬送元となる各モジュールが第1載置部、処理済みのウエハWの搬送先となる各モジュール及びロードロック室66Bが第2載置部、バッファモジュール74が待機室である。このような真空バッファモジュール74への搬送を行うか否かについては、塗布、現像装置1と同様に制御部10が、搬送先への搬送が可能であるか否かの判定を行い、その結果に応じて実施される。
【0110】
真空雰囲気ではレジスト膜についての脱水反応が起こり、変質が進行すると考えられる。従って、上記したように真空バッファモジュール74にてウエハWが待機されることで、この基板処理装置6においても塗布、現像装置1と同様に、搬送の停滞によるレジスト膜の変質が抑制される。
【0111】
なお、本例では常圧搬送室61はNガス雰囲気であるため、キャリアCの蓋が開放されていてもキャリアC内が大気雰囲気となることは抑制されるので、常圧搬送室61に接続されるバッファモジュール64は設けない構成としてもよい。しかし、常圧搬送室61が大気雰囲気である場合にはバッファモジュール64を設けることが好ましい。詳しく述べると、ステージ11上のキャリアCにはNガス雰囲気を形成できるが、キャリアCの蓋の開放によって常圧搬送室61の大気が当該キャリアC内に流れ込み、当該キャリアC内のNガス濃度が比較的低くなるおそれが有る。そのためバッファモジュール64に複数枚のウエハWを滞留させておき、適切なタイミングで常圧搬送機構62が当該ウエハWをキャリアCに連続的に戻すことで、蓋が開放される時間が長くなることを防止する。それにより、この基板処理装置6において、レジスト膜の変質をより確実に抑えることができる。この場合、第2載置部に該当するキャリアC内のNガス濃度が低くなる異常を予見して搬送経路を変更したと言える。常圧搬送機構62、真空搬送機構75の各々は、制御部10と共に基板搬送装置を構成する。
【0112】
[第3実施形態の装置の構成]
第3実施形態に係る基板処理装置8について、図15の平面図を参照しながら、第2実施形態の基板処理装置6との差異点を中心に説明する。基板処理装置8にはレジスト膜が露光されたウエハWが搬送され、1回目のPEB~2回目の現像までの処理が、真空雰囲気で行われる。基板処理装置8は基板処理装置6と概ね同様の構成であるが、真空搬送室67に接続されるモジュールが異なり、加熱モジュール81、現像モジュール82、加熱モジュール83、現像モジュール84及び真空バッファモジュール74が接続されている。加熱モジュール81は、PAB用の加熱モジュール73と同様の構成である。現像モジュール82、84は、レジスト膜形成モジュール71と概ね同様の構成であるが、処理ガスとして現像ガスをウエハWに供給することで、パターンの形成、整形を夫々行う。
【0113】
基板処理装置8では、キャリアCから搬出されたウエハWは、バッファモジュール64→アライメント室63→ロードロック室66Aの順で搬送される。そして、ロードロック室66Aから真空搬送室67に搬送されたウエハWは、当該真空搬送室67を介して、加熱モジュール81→現像モジュール82→加熱モジュール83→現像モジュール84の順で搬送される。それによって当該ウエハWに対して、1回目のPEB、1回目の現像、2回目のPEB、2回目の現像が順に行われる。現像モジュール84から搬出されたウエハWは、ロードロック室66B→キャリアCの順で搬送される。ロードロック室66A、加熱モジュール81、現像モジュール82、加熱モジュール83における各ウエハWについて、次の搬送先へ搬送できない場合には、真空バッファモジュール74に搬送された後、次の搬送先へと搬送される。
【0114】
常圧搬送室61は、第2実施形態で述べたように大気雰囲気としてもよい。その場合には、キャリアCからウエハWを常圧搬送室61に接続されるバッファモジュール64にすべて搬送した後、このバッファモジュール64から搬送することで、Nガス濃度が比較的低くなるキャリアC内でのウエハWの滞在時間が抑えられるようにしてもよい。この場合、第1載置部に該当するキャリアC内のNガス濃度が低くなる異常を予見して搬送経路を変更したと言える。
【0115】
また、常圧搬送室61を大気雰囲気とするにあたって、バッファモジュール64については、真空バッファモジュール74と同様、搬送の異常が検出された際にウエハWの搬送が行われる運用であってもよい。具体的に述べると、異常が検出されない場合は、キャリアCから搬出されたウエハWについてアライメント室63→ロードロック室66A→真空搬送室67の順で搬送し、加熱モジュール81等の各処理モジュールへ搬送する。上記したようにロードロック室66A、加熱モジュール81、現像モジュール82または加熱モジュール83のいずれかから次の搬送先へとウエハWを搬送できない場合には、ウエハWをアライメント室63からバッファモジュール64に搬送して待機させる。そして、異常の解消後にバッファモジュール64→ロードロック室66A→真空搬送室67の順で搬送して処理を行う。従って、この例ではキャリアC及びアライメント室63がバッファモジュール64の搬送元であって、第1載置部と見ることができる。このようにキャリアCが第1載置部に該当する装置構成であってもよい。なお、このバッファモジュール64を第1実施形態の現像装置のキャリアブロックD1に設けて、同様の運用が行われるようにしてもよい。
【0116】
搬送対象の基板としてはウエハに限られず、フラットパネルディスプレイ製造用の基板等の他の基板であってもよい。また、MORによるレジスト膜が形成されたウエハWの搬送制御を述べたが、MOR以外の金属含有レジストによって膜を形成した場合にも、既述した搬送制御をもってウエハWを搬送することができる。そして、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更及び組み合わせがなされてもよい。
【符号の説明】
【0117】
C キャリア
W ウエハ
4B バッファモジュール
33 裏面洗浄モジュール
34 露光前温度調整モジュール
図1
図2
図3
図4
図5
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図15