(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130636
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】油分離器
(51)【国際特許分類】
B01D 45/16 20060101AFI20240920BHJP
F25B 43/02 20060101ALN20240920BHJP
【FI】
B01D45/16
F25B43/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040476
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000148357
【氏名又は名称】株式会社前川製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】冨山 靖司
(72)【発明者】
【氏名】安留 哲
【テーマコード(参考)】
4D031
【Fターム(参考)】
4D031AC03
4D031AC04
4D031BA07
4D031BA10
4D031EA01
(57)【要約】
【課題】油面変動を抑制するとともに、油が分離されずに下流側へ抜けることを防止することのできる油分離器を提供する。
【解決手段】
油分離器1は、ガスおよび油からなる気液混合物からガスと油を分離する竪型の油分離器であって、筒状の本体部10と、本体部に連結され、気液混合物が流入する配管20と、配管を挟むように、本体部内の上下に配置される一対のリング板60、70と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気液混合物に含まれるガスと油を分離する竪型の油分離器であって、
筒状の本体部と、
前記本体部に連結され、前記気液混合物が流入する配管と、
前記配管を挟むように、前記本体部内の上下に配置される一対のリング板と、を有する油分離器。
【請求項2】
前記配管から流入した前記気液混合物を、前記本体部の内壁に向けて案内する案内部をさらに有する、請求項1に記載の油分離器。
【請求項3】
前記案内部は、前記本体部に固定された板状の部材である、請求項2に記載の油分離器。
【請求項4】
前記案内部は、前記配管と一体的に構成された湾曲形状を備える内部配管である、請求項2に記載の油分離器。
【請求項5】
前記配管は、前記本体部の中心に対して、所定の距離だけオフセットして設けられる、請求項1または2に記載の油分離器。
【請求項6】
前記案内部は、直線状に構成され、前記一対のリング板に固定される、請求項5に記載の油分離器。
【請求項7】
前記案内部は、円弧状に構成され、前記一対のリング板に固定される、請求項5に記載の油分離器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気液混合物に含まれるガスと油を分離する竪型の油分離器に関する。
【背景技術】
【0002】
スクリュー圧縮機(以下、圧縮機とも称する)は、圧縮機に吸入されたガスに、冷却、潤滑等を目的として冷凍機油(以下、油とも称する)を注入しつつ用いられる。したがって、圧縮機から吐出されたガス中には、油が混在(気液混合物)している。
【0003】
このため、圧縮機から吐出された気液混合物は、一旦油分離器に導入されて、油分離器内においてガスおよび油を分離する必要がある。そして、差圧給油またはオイルポンプにより再循環して圧縮機に給油される。
【0004】
このような油分離器として、例えば下記の特許文献1には、筒状の本体部の中に、気液混合物を吹き込んで、ガスと油を遠心分離する油分離器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
圧縮機および油分離器を連結する吐出管には、多量の油が含まれる。一方、油分離器の底面には一定量の油を溜めておく必要がある。このため、圧縮機停止時に圧縮機および吐出管内に溜まった油が、次の起動時に一気に油分離器内に入って、油分離器の底面に溜められている油の油面を大きく変動させてしまう。そして、油面が変動すると油分離器内の油中において気泡が発生して、オイルポンプにキャビテーションが発生して圧縮機に十分な給油が行われなくなる可能性がある。かつ、気泡を含んだ油が圧縮機に給油されると、軸シールの油膜切れやベアリング、摺動面の潤滑系統の不具合が起こる。
【0007】
一方で、圧縮機停止時に圧縮機および吐出管内に溜まった油が、次の起動時に一気に油分離器内に入ると、油が分離されずに下流側へ抜けてしまう可能性もある。
【0008】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、起動時における油面変動を抑制するとともに、油が分離されずに下流側へ抜けることを防止することのできる油分離器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する本発明に係る油分離器は、気液混合物に含まれるガスと油を分離する竪型の油分離器であって、筒状の本体部と、前記本体部に連結され、前記気液混合物が流入する配管と、前記配管を挟むように、前記本体部内の上下に配置される一対のリング板と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
上述の油分離器によれば、起動時において、一対のリング板のうち下側のリング板が邪魔板として作用して、配管から流入した気液混合物が、本体部の下方に溜められている油の油面を変動させることを好適に抑制することができる。一方、一対のリング板のうち上側のリング板が邪魔板として作用して、配管から流入した気液混合物のうち油がガスと分離されることなく排気流路から排出されて下流側に抜けることを防止することができる。以上から、起動時における油面変動を抑制するとともに、油が分離されずに下流側へ抜けることを防止することのできる油分離器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る油分離器を示す概略斜視図である。
【
図2】本実施形態に係る油分離器を示す概略平面図である。
【
図3】本実施形態に係る油分離器を示す概略正面図である。
【
図4】比較例に係る油分離器を用いた際のシミュレーション結果である。
【
図5】実施形態に係る油分離器を用いた際のシミュレーション結果である。
【
図6】変形例1に係る油分離器を示す概略斜視図である。
【
図7】変形例1に係る油分離器を示す概略平面図である。
【
図8】変形例に係る油分離器でオフセット例1を示す概略平面図である。
【
図9】変形例に係る油分離器でオフセット例2を示す概略平面図である。
【
図10】変形例に係る油分離器でオフセット例3を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態を、
図1~
図3を参照しつつ説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る油分離器1を示す概略斜視図である。
図2は、本実施形態に係る油分離器1を示す概略平面図である。
図3は、本実施形態に係る油分離器1を示す概略正面図である。
【0014】
油分離器1は、気液混合物に含まれるガスと油を分離するためのものである。油分離器1は、鉛直方向に配置される竪型である。
【0015】
油分離器1は、
図1~
図3に示すように、筒状の本体部10と、本体部10に連結され、気液混合物が流入する配管20と、ガスが排気される排気流路30と、冷凍機油が排出される油排出流路40と、配管20から流入した気液混合物を本体部10の内壁11に向けて案内する案内部50と、配管20の上方に配置される第1リング板60と、配管20の下方に配置される第2リング板70と、排気流路30の直前に配置され、油滴をガス中から分離し凝集して沈降させるデミスタ80と、を有する。
【0016】
本体部10は、上下方向に延在するように筒状に構成されている。本体部10は、例えば鋳物や鋼材によって構成されているが、特に限定されない。本体部10の大きさは特に限定されないが、好適に気液を分離することのできる大きさにすることが好ましい。本体部10の内径は、特に限定されないが、例えば400~2000mmとすることができる。
【0017】
本体部10の下方には、一定量の油Lが予め溜められている。
【0018】
配管20は、
図1に示すように、本体部10に連結される。配管20は、スクリュー圧縮機から油分離器1の本体部10に向けて気液混合物が流入する際の通路となる。配管20は、
図2に示す平面視で、本体部10の、
図2の上下方向の中心となる位置に設けられる。なお、配管20は、
図2に示す平面視で、本体部10の中心に対して、
図2の上方向または下方向に所定の距離だけオフセットして設けられてもよい。
【0019】
配管20を上方向にオフセットした場合、
図8に示すように、案内部50の位置が変更されることが好ましい。この場合、案内部50は、第1リング板60の下面、および第2リング板70の上面の2か所に固定されている。これは、オフセットした場合に案内部50と本体部10の内壁11を固定すると、流路が過度に狭くならないようにするためである。この場合の角度θは配管20から流入した流体の流れの妨げにならないように、例えば45度である。
【0020】
配管20を上方向にオフセットした場合、
図9、
図10に示すように、案内部50は円弧状としても良い。
図9は第1リング板60と第2リング板70の内円縁に90度の範囲で案内部50を接合した場合、
図10は第1リング板60と第2リング板70の間に、リング内部に90度の範囲で案内部50を接合した場合である。
【0021】
排気流路30は、
図1に示すように、本体部10の上方に設けられる。排気流路30を介して、ガスのみが排気される。
【0022】
油排出流路40は、
図1に示すように、本体部10の下方に設けられる。油排出流路40を介して、油のみが排出される。
【0023】
案内部50は、
図1、
図2に示すように、板状の部材である。案内部50は、本体部10の内壁11、第1リング板60の下面、および第2リング板70の上面の3か所に固定されている。案内部50の固定方法は特に限定されないが、例えば溶接による固定である。
【0024】
案内部50は、
図2に示す平面視において、
図2の上下方向に対して傾斜するように配置されている。
図2に示す平面視において、破線で示される案内部50の、
図2の上下方向に対して傾斜する角度θは、特に限定されないが、10~60度であって、例えば30度である。
【0025】
第1リング板60は、
図1、
図3に示すように、配管20よりも上方に設けられる。第1リング板60は、本体部10の内径よりも小さい内径を備える。第1リング板60は、いわゆるドーナツ形状を備えている。第1リング板60の幅W(
図2参照)は、特に限定されないが、配管20の内径×1~1.8倍とする。
【0026】
第1リング板60は、本体部10に対して別体に構成されており、第1リング板60は、例えば溶接によって、本体部10に対して固定されている。
【0027】
第1リング板60は、
図1に示すように、水平となるように配置される。
【0028】
このように、第1リング板60が配管20の上方に配置されるため、第1リング板60が邪魔板として作用するので、配管20から流入した気液混合物のうち油がガスと分離されることなく排気流路30から排出されて下流側に抜けることを防止することができる。
【0029】
第2リング板70は、
図1、
図3に示すように、配管20よりも下方に設けられる。したがって、第1リング板60および第2リング板70は、配管20を挟むように、本体部10内の上下に配置される。第1リング板60および第2リング板70が、鉛直方向に沿って離間する距離L1(
図3参照)は、特に限定されないが、配管20の内径×1.5~4倍とする。
【0030】
第2リング板70は、本体部10の内径よりも小さい内径を備える。第2リング板70は、いわゆるドーナツ形状を備えている。第2リング板70の幅W(
図2参照)は、特に限定されないが、配管20の内径×1~1.8倍とする。すなわち、第2リング板70は、第1リング板60と略同一の構成を備えている。
【0031】
第2リング板70は、本体部10に対して別体に構成されており、第2リング板70は、例えば溶接によって、本体部10に対して固定されている。
【0032】
第2リング板70は、
図1に示すように、水平となるように配置される。
【0033】
このように、第2リング板70が配管20の下方に配置されるため、第2リング板70が邪魔板として作用して、配管20から流入した気液混合物が、本体部10の下方に溜められている油Lの油面を変動させることを好適に抑制することができる。
【0034】
以上説明したように、本実施形態に係る油分離器1は、ガスおよび油からなる気液混合物から前記ガスと前記油を分離する竪型の油分離器1である。油分離器1は、筒状の本体部10と、本体部10に連結され、気液混合物が流入する配管20と、配管20を挟むように、本体部10内の上下に配置される一対の第1リング板60、第2リング板70と、を有する。このように構成された油分離器1によれば、起動時において、第2リング板70が油面をガードする邪魔板として作用して、配管20から流入した気液混合物が、本体部10の下方に溜められている油Lの油面を変動させることを好適に抑制することができる。一方、第1リング板60がガスの流れを整える邪魔板として作用するので、配管20から流入した気液混合物のうち油がガスと分離されることなく排気流路30から排出されて下流側に抜けることを防止することができる。以上から、起動時における油面変動を抑制するとともに、油が分離されずに下流側へ抜けることを防止することのできる油分離器1を提供することができる。
【0035】
また、油分離器1は配管20から流入した気液混合物を、本体部10の内壁11に向けて案内する案内部50を有する。このように構成された油分離器1によれば、案内部50によって気液混合物を、本体部10の内壁11に向けて案内するため、起動時において、第2リング板70がより好適に邪魔板として作用して、配管20から流入した気液混合物が、本体部10の下方に溜められている油Lの油面を変動させることをより好適に抑制することができる。一方、第1リング板60がより好適に邪魔板として作用するので、配管20から流入した気液混合物のうち油がガスと分離されることなく排気流路30から排出されて下流側に抜けることをより好適に防止することができる。
【0036】
また、案内部50は、本体部10に固定された板状の部材である。このように構成された油分離器1によれば、簡易な構成で、気液混合物を、本体部10の内壁11に向けて案内することができる。
【0037】
次に、
図4、
図5を参照して、比較例に係る油分離器および実施形態に係る油分離器1を用いた際の、気液混合物が流入した際の油の挙動についてシミュレーションした結果を説明する。
【0038】
比較例に係る油分離器では、
図4に示すように、第1リング板60および第2リング板70が設けられない。また、比較例に係る油分離器では、
図4に示すように、後述する変形例に係る案内部150が構成されている。
【0039】
比較例に係る油分離器におけるシミュレーション結果では、
図4に示すように、スクリュー圧縮機停止時に圧縮機および吐出管内に溜まった油が、次の起動時に一気に油分離器内に入ると、油分離器の底面に溜められている油Lの油面が変動してしまう。そして油面が変動すると油中に気泡が発生して、オイルポンプにキャビテーションが発生したり、潤滑系統で不具合が発生したりしてしまう可能性がある。
【0040】
しかも、上方に飛散した油がデミスタ80まで到達しており、多量の油がデミスタ80を通過して排気流路30から流出してしまう。
【0041】
これに対して、実施形態に係る油分離器1におけるシミュレーション結果では、
図5に示すように、第2リング板70が邪魔板として作用して、配管20から流入した気液混合物が、本体部10の下方に溜められている油Lの油面を変動させることを好適に抑制することができる。
【0042】
しかも、上方に油が飛散しないので、デミスタ80まで多量の油が到達することが無い。
【0043】
<変形例1>
次に、
図6、
図7を参照して、変形例1に係る油分離器2の構成について説明する。
図6は、変形例1に係る油分離器2を示す概略斜視図である。
図7は、変形例1に係る油分離器2を示す概略平面図である。
【0044】
実施形態と共通する部分は説明を省略し、変形例1のみに特徴のある個所について説明する。なお、上述した実施形態と同一の部材には同一の符号を付して説明し、重複した説明は省略する。変形例1に係る油分離器2は、実施形態に係る油分離器1と比較して、案内部150の構成が異なる。
【0045】
変形例1に係る油分離器2は、
図6、
図7に示すように、筒状の本体部10と、本体部10に連結され、気液混合物が流入する配管20と、ガスが排気される排気流路30と、冷凍機油が排出される油排出流路40と、配管20から流入した気液混合物を本体部10の内壁11に向けて案内する案内部150と、配管20の上方に配置される第1リング板60と、配管20の下方に配置される第2リング板70と、を有する。本体部10、配管20、排気流路30、油排出流路40、第1リング板60、および第2リング板70は、上述した実施形態に係る油分離器1と同一の構成であるため、説明は省略する。
【0046】
案内部150は、配管20から流入した気液混合物を、本体部10の内壁11に向けて案内する。案内部150は、配管20と一体的に構成された内部配管である。
【0047】
案内部150は、
図7に示す平面視において、
図7の上方向に向けて気液混合物が流入するように、
図7の左から上方に向けて湾曲した構成を備える。なお、案内部150が湾曲する方向は、配管20から流入した気液混合物を、本体部10の内壁11に向けて案内する限りにおいて、特に限定されない。
【0048】
配管20および案内部150は、
図6、
図7に示すように、本体部10を突き抜けるように配置されている。
【0049】
以上説明したように、変形例1に係る油分離器2において、案内部150は、配管20と一体的に構成された内部配管である。このように構成された油分離器2によれば、実施形態に係る油分離器1の案内部50と異なり、配管20と一体的に構成されているため、意図せず案内部150が本体部10から脱落することを防止できる。
【0050】
なお、本発明は上述した実施形態および変形例に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で種々改変することができる。
【0051】
また、上述した実施形態では、第1リング板60および第2リング板70は略同一の構成を備えた。しかしながら、第1リング板および第2リング板は異なる構成を備えていてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1、2 油分離器、
10 本体部、
11 内壁、
20 配管、
50、150 案内部、
60 第1リング板、
70 第2リング板。