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特開2024-130690ヘテロファジックプロピレン重合材料、プロピレン系樹脂組成物、および、フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130690
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】ヘテロファジックプロピレン重合材料、プロピレン系樹脂組成物、および、フィルム
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/10 20060101AFI20240920BHJP
   C08L 23/16 20060101ALI20240920BHJP
   C08F 10/06 20060101ALI20240920BHJP
   C08F 210/06 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
C08L23/10
C08L23/16
C08F10/06
C08F210/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040551
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】大西 健介
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4J002BB121
4J002BB152
4J002GG02
4J100AA02P
4J100AA03Q
4J100CA01
4J100CA04
4J100DA09
4J100FA09
4J100FA22
4J100JA58
4J100JA59
(57)【要約】
【課題】透明性に比較的優れると共に、アルミニウムとの蒸着強度に比較的優れるフィルムを与えるヘテロファジックプロピレン重合材料、プロピレン系樹脂組成物、および、フィルムを提供することを課題とする。
【解決手段】
本発明に係るヘテロファジックプロピレン重合材料は、プロピレンに由来する構造単位が主成分であるプロピレン系重合体(1)と、プロピレンに由来する構造単位およびエチレンに由来する構造単位からなるプロピレン-エチレン共重合体(2)と、からなり、20℃キシレン可溶部の含有量が8.0~20.0質量%であり、20℃キシレン可溶部の極限粘度が1.00~1.40dl/gであり、20℃キシレン可溶部の極限粘度と20℃キシレン不溶部の極限粘度との比が0.50~1.50であり、赤外分光法(IR)で測定されるエチレンに由来する構造単位の含有量が3.0~7.0質量%である。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレンに由来する構造単位が主成分であるプロピレン系重合体(1)と、
プロピレンに由来する構造単位およびエチレンに由来する構造単位からなるプロピレン-エチレン共重合体(2)と、
からなるヘテロファジックプロピレン重合材料であり、
20℃キシレン可溶部(CXS)の含有量が8.0質量%以上20.0質量%以下であり、
20℃キシレン可溶部の極限粘度([η]CXS)が1.00dl/g以上1.40dl/g以下であり、
20℃キシレン可溶部の極限粘度([η]CXS)と20℃キシレン不溶部の極限粘度([η]CXIS)との比([η]CXS/[η]CXIS)が0.50以上1.50以下であり、
赤外分光法(IR)で測定されるエチレンに由来する構造単位の含有量が3.0質量%以上7.0質量%以下である、ヘテロファジックプロピレン重合材料。
【請求項2】
プロピレンに由来する構造単位が97質量%以上であるプロピレン系重合体(1)と、
プロピレンに由来する構造単位が75質量%以上90質量%以下であり、かつ、エチレンに由来する構造単位が10質量%以上25質量%以下であるプロピレン-エチレン共重合体(2)と、
からなる、請求項1に記載のヘテロファジックプロピレン重合材料。
【請求項3】
プロピレン系重合体(1)の含有量が60.0質量%以上90.0質量%以下であり、
プロピレン-エチレン共重合体(2)の含有量が10.0質量%以上40.0質量%以下である、請求項1に記載のヘテロファジックプロピレン重合材料。
【請求項4】
プロピレン-エチレン共重合体(2)の極限粘度([η]B)が1.00dl/g以上2.00dl/g以下であり、
プロピレン-エチレン共重合体(2)の極限粘度([η]B)とプロピレン系重合体(1)の極限粘度([η]A)との比([η]B/[η]A)が0.50以上1.50以下である、請求項1に記載のヘテロファジックプロピレン重合材料。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のヘテロファジックプロピレン重合材料を含む、プロピレン系樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載のヘテロファジックプロピレン重合材料を含む、フィルム。
【請求項7】
アルミニウム蒸着用である、請求項6に記載のフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘテロファジックプロピレン重合材料、該ヘテロファジックプロピレン重合材料を含むプロピレン系樹脂組成物、および、前記ヘテロファジックプロピレン重合材料を含むフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アルミニウムを蒸着させたフィルム(「アルミ蒸着フィルム」と称する)は、軽量でバリア性に優れるため、食品軽包装用の包装材として好適に用いられている。アルミニウムを蒸着させるフィルム(「原反フィルム」と称する)としては、無延伸のポリプロピレンフィルムが用いられている。そして、このポリプロピレンフィルムに使用できる樹脂組成物として、種々のプロピレン系樹脂組成物が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、(a1)メルトフローレートが特定範囲、(a2)パラキシレン不溶部の割合と極限粘度[η]が特定範囲、(a3)パラキシレン可溶部の割合と極限粘度[ηEP]が特定範囲、[η]と[ηEP]が特定の関係、かつ可溶部のエチレン含有率が特定範囲にあるプロピレン-エチレンブロック共重合体と、アンチブロッキング剤を含有するポリプロピレン樹脂組成物と、該組成物からなり、アンチブロッキング性と透明性と耐屈曲白化性のバランスに優れるレトルト食品包装フィルムが開示されている。そして、レトルト食品包装フィルムには、アルミ箔を貼り合わせてもよいことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-261921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アルミ蒸着フィルムには、良好な外観として、光沢性に優れることが求められる。アルミ蒸着フィルムの光沢性は、原反フィルムが平滑であれば、良好になる。そして、原反フィルムの平滑性は、該原反フィルムの透明性と相関する。そのため、原反フィルムには、該原反フィルムを平滑にするため、透明性に優れることが求められる。さらに、アルミ蒸着フィルムには、原反フィルムとアルミニウムとの密着強度である蒸着強度に優れることも求められる。
【0006】
しかしながら、上記の特許文献1に開示されているようなポリプロピレン樹脂組成物を含む原反フィルムをアルミ蒸着フィルムとして使用するには、原反フィルムの平滑性、すなわち原反フィルムの透明性、および、原反フィルムとアルミニウムとの密着強度である蒸着強度の点で、さらなる改良が求められている。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、透明性に比較的優れると共に、アルミニウムとの蒸着強度に比較的優れるフィルムを与えるヘテロファジックプロピレン重合材料、該ヘテロファジックプロピレン重合材料を含むプロピレン系樹脂組成物、および、前記ヘテロファジックプロピレン重合材料を含むフィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るヘテロファジックプロピレン重合材料は、プロピレンに由来する構造単位が主成分であるプロピレン系重合体(1)と、プロピレンに由来する構造単位およびエチレンに由来する構造単位からなるプロピレン-エチレン共重合体(2)と、からなるヘテロファジックプロピレン重合材料であり、20℃キシレン可溶部(CXS)の含有量が8.0質量%以上20.0質量%以下であり、20℃キシレン可溶部の極限粘度([η]CXS)が1.00dl/g以上1.40dl/g以下であり、20℃キシレン可溶部の極限粘度([η]CXS)と20℃キシレン不溶部の極限粘度([η]CXIS)との比([η]CXS/[η]CXIS)が0.50以上1.50以下であり、赤外分光法(IR)で測定されるエチレンに由来する構造単位の含有量が3.0質量%以上7.0質量%以下である。
【0009】
本発明に係るプロピレン系樹脂組成物は、上述のヘテロファジックプロピレン重合材料を含む。
【0010】
本発明に係るフィルムは、ヘテロファジックプロピレン重合材料を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、透明性に比較的優れると共に、アルミニウムとの蒸着強度に比較的優れるフィルムを与えるヘテロファジックプロピレン重合材料、該ヘテロファジックプロピレン重合材料を含むプロピレン系樹脂組成物、および、前記ヘテロファジックプロピレン重合材料を含むフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0013】
<ヘテロファジックプロピレン重合材料>
本実施形態に係るヘテロファジックプロピレン重合材料は、プロピレンに由来する構造単位が主成分であるプロピレン系重合体(1)と、プロピレンに由来する構造単位およびエチレンに由来する構造単位からなるプロピレン-エチレン共重合体(2)と、からなる。
【0014】
プロピレンに由来する構造単位が主成分であるプロピレン系重合体(1)において、プロピレンに由来する構造単位が主成分であるとは、プロピレンに由来する構造単位が95質量%以上であることを意味する。プロピレン系重合体(1)は、プロピレンに由来する構造単位が、好ましくは97質量%以上であり、より好ましくは99質量%以上である。プロピレン系重合体(1)は、さらに好ましくは、プロピレンに由来する構造単位が100質量%であり、すなわち、プロピレン単独重合体である。ただし、プロピレン系重合体(1)の全質量を100質量%とする。
【0015】
プロピレン系重合体(1)は、プロピレン以外のオレフィンに由来する構造単位を含んでいてもよい。プロピレン以外のオレフィンとしては、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン等が挙げられる。なお、プロピレン系重合体(1)がプロピレン以外のオレフィンに由来する構造単位を含む場合であっても、後述するプロピレン-エチレン共重合体(2)とは、プロピレンに由来する構造単位の含有量が相違する。
【0016】
プロピレンに由来する構造単位およびエチレンに由来する構造単位からなるプロピレン-エチレン共重合体(2)とは、プロピレンに由来する構造単位が50質量%超95質量%未満であり、エチレンに由来する構造単位が5質量%超50質量%未満であることを意味する。プロピレン-エチレン共重合体(2)は、プロピレンおよびエチレン以外のオレフィンに由来する構造単位を含んでいてもよい。ただし、プロピレン-エチレン共重合体(2)の全質量を100質量%とする。プロピレンおよびエチレン以外のオレフィンとしては、例えば、1-ブテン、1-ヘキセン等が挙げられる。なお、プロピレン-エチレン共重合体(2)は、上述のプロピレン系重合体(1)とは、プロピレンに由来する構造単位の含有量が相違する。
【0017】
プロピレン-エチレン共重合体(2)において、プロピレンに由来する構造単位の含有量は、好ましくは75質量%以上90質量%以下であり、より好ましくは80質量%以上85質量%以下である。エチレンに由来する構造単位の含有量は、蒸着強度を向上させるという観点から、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは14質量%以上である。また、エチレンに由来する構造単位の含有量は、透明性を向上させるという観点から、好ましくは25質量%以下であり、より好ましくは24質量%以下である。
【0018】
本実施形態に係るヘテロファジックプロピレン重合材料は、一態様として、プロピレンに由来する構造単位が97質量%以上であるプロピレン系重合体(1)と、プロピレンに由来する構造単位が75質量%以上90質量%以下であり、かつ、エチレンに由来する構造単位が10質量%以上25質量%以下であるプロピレン-エチレン共重合体(2)と、からなる。
【0019】
本実施形態に係るヘテロファジックプロピレン重合材料に含まれるプロピレン系重合体(1)の含有量は、好ましくは60.0質量%以上90.0質量%以下であり、より好ましくは70.0質量%以上85.0質量%以下である。また、ヘテロファジックプロピレン重合材料に含まれるプロピレン-エチレン共重合体(2)の含有量は、蒸着強度を向上させるという観点から、好ましくは10.0質量%以上であり、より好ましくは15.0質量%以上であり、フィルムのべたつきを抑制するという観点から、好ましくは40.0質量%以下であり、より好ましくは30.0質量%以下である。本実施形態に係るヘテロファジックプロピレン重合材料は、一態様として、プロピレン系重合体(1)の含有量が60.0質量%以上90.0質量%以下であり、プロピレン-エチレン共重合体(2)の含有量が10.0質量%以上40.0質量%以下である。ただし、ヘテロファジックプロピレン重合材料の全質量を100質量%とする。
【0020】
本実施形態に係るヘテロファジックプロピレン重合材料は、20℃キシレン可溶部(CXS)の含有量が8.0質量%以上20.0質量%以下であり、好ましくは9.0質量%以上18.0質量%以下であり、より好ましくは9.0質量%以上16.0質量%以下である。ただし、ヘテロファジックプロピレン重合材料の全質量を100質量%とする。20℃キシレン可溶部(CXS)が8.0質量%以上20.0質量%以下であることにより、透明性および蒸着強度のバランスに優れたフィルムを得ることができる。
【0021】
本実施形態に係るヘテロファジックプロピレン重合材料は、20℃キシレン可溶部の極限粘度([η]CXS)が1.00dl/g以上1.40dl/g以下であり、好ましくは1.00dl/g以上1.30dl/g以下である。20℃キシレン可溶部の極限粘度([η]CXS)が1.00dl/g以上であることにより、蒸着強度に優れたフィルムが得られ、1.40dl/g以下であることにより、透明性に優れたフィルムが得られる。
【0022】
本実施形態に係るヘテロファジックプロピレン重合材料は、20℃キシレン可溶部の極限粘度([η]CXS)と20℃キシレン不溶部の極限粘度([η]CXIS)との比([η]CXS/[η]CXIS)が0.50以上1.50以下であり、好ましくは0.60以上1.00以下であり、より好ましくは0.60以上0.90以下である。20℃キシレン可溶部の極限粘度([η]CXS)と20℃キシレン不溶部の極限粘度([η]CXIS)との比([η]CXS/[η]CXIS)が0.50以上であることにより、蒸着強度に優れたフィルムが得られ、1.50以下であることにより、透明性に優れたフィルムが得られる。
【0023】
本実施形態に係るヘテロファジックプロピレン重合材料は、赤外分光法(IR)で測定されるエチレンに由来する構造単位の含有量が3.0質量%以上7.0質量%以下であり、好ましくは4.0質量%以上7.0質量%以下である。エチレンに由来する構造単位の含有量が3.0質量%以上であることにより、蒸着強度に優れたフィルムが得られ、7.0質量%以下であることにより、透明性に優れたフィルムが得られる。
【0024】
本実施形態に係るヘテロファジックプロピレン重合材料は、プロピレン-エチレン共重合体(2)の極限粘度([η]B)が、好ましくは1.00dl/g以上2.00dl/g以下であり、より好ましくは1.30dl/g以上1.80dl/g以下である。また、プロピレン-エチレン共重合体(2)の極限粘度([η]B)とプロピレン系重合体(1)の極限粘度([η]A)との比([η]B/[η]A)が、好ましくは0.50以上1.50以下であり、より好ましくは0.60以上1.20以下であり、さらに好ましくは0.60以上1.00以下である。本実施形態に係るヘテロファジックプロピレン重合材料は、一態様として、プロピレン-エチレン共重合体(2)の極限粘度([η]B)が1.00dl/g以上2.00dl/g以下であり、プロピレン-エチレン共重合体(2)の極限粘度([η]B)とプロピレン系重合体(1)の極限粘度([η]A)との比([η]B/[η]A)が0.50以上1.50以下である。
【0025】
<ヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法>
本実施形態に係るヘテロファジックプロピレン重合材料は、好ましくは、主にプロピレンを含むオレフィンを重合してプロピレン系重合体(1)を製造する工程と、プロピレンおよびエチレンを含むオレフィンを重合してプロピレン-エチレン共重合体(2)を製造する工程と、からなる、少なくとも二段の多段重合方法により製造される。
【0026】
例えば、少なくとも2槽の重合槽を直列に配置し、液体プロピレンの存在下に、主にプロピレンを含む単量体を重合する第1工程と、引き続いて、第1工程で製造されたプロピレン系重合体(1)を次の重合槽へ移送し、第1工程で製造されたプロピレン系重合体(1)の存在下に、プロピレンおよびエチレンを共重合する第2工程からなる連続式重合方法が挙げられる。より好ましくは、第2工程を気相法で共重合する連続重合法である。また、第1工程および第2工程のそれぞれで用いられる重合槽は、1槽でもよく、少なくとも2槽でもよい。
【0027】
本実施形態に係るヘテロファジックプロピレン重合材料の製造で用いられる触媒としては、例えば、マグネシウム化合物にTi化合物を複合化させた固体触媒成分等からなるTi-Mg系触媒、この固体触媒成分に、有機アルミニウム化合物および必要に応じて電子供与性化合物等の第3成分を組み合わせた触媒系、および、メタロセン系触媒等が挙げられ、好ましくはマグネシウム、チタンおよびハロゲンを必須成分とする固体触媒成分、有機アルミニウム化合物および電子供与性化合物からなる触媒系であり、例えば、特開昭61-218606号公報、特開昭61-287904号公報、特開平7-216017号公報等に記載された触媒系である。
【0028】
<プロピレン系樹脂組成物>
本実施形態に係るプロピレン系樹脂組成物は、上述のヘテロファジックプロピレン重合材料を含む。
【0029】
本実施形態に係るプロピレン系樹脂組成物は、添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、中和剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、造核剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、メルトフローレート調整剤等が挙げられる。
【0030】
酸化防止剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、亜リン酸エステル系酸化防止剤、アクリレート系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、ヒドロキシルアミン系酸化防止剤、金属不活性化剤等が挙げられる。酸化防止剤は、好ましくは、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤または硫黄系酸化防止剤である。酸化防止剤の市販品としては、例えば、スミライザーGP(住友化学社製)、スミライザーGS(住友化学社製)等が挙げられる。
【0031】
アンチブロッキング剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、シリカ微粒子、アルミノシリケート微粒子等の無機微粒子等が挙げられる。アンチブロッキング剤は、好ましくは、シリカ微粒子またはアルミノシリケート微粒子である。
【0032】
本実施形態に係るプロピレン系樹脂組成物に、添加剤を含有させる方法としては、例えば、ヘテロファジックプロピレン重合材料と添加剤とを加熱溶融混合する方法が挙げられる。加熱溶融混合に用いる装置としては、公知の押出機、バンバリーミキサー、バッチ式混練機等が用いられる。加熱溶融混合は、好ましくは、窒素、アルゴン等の不活性ガスの存在下で行われる。加熱溶融混合の温度は、300℃未満であり、好ましくは、180℃以上280℃以下である。
【0033】
本実施形態に係るプロピレン系樹脂組成物には、必要に応じてその他の樹脂が含まれていてもよい。その他の樹脂としては、オレフィン系樹脂、エチレンとα-オレフィンとの共重合体であるエラストマー等が挙げられる。オレフィン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンが挙げられる。また、その他の樹脂として、ヘテロファジックプロピレン重合材料以外のその他のプロピレン系共重合体を含んでいてもよい。その他のプロピレン系共重合体としては、例えば、プロピレン-1-ブテンランダム共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体等が挙げられる。
【0034】
<フィルム>
本実施形態に係るフィルムは、上述のヘテロファジックプロピレン重合材料を含む。
【0035】
本実施形態に係るフィルムは、好ましくは、アルミニウム蒸着用である。本実施形態に係るフィルムは、原反フィルムである。斯かる原反フィルムを製膜する方法としては、通常用いられるインフレーション法、Tダイ法、カレンダー法等を用いて、単独で本実施形態に係るプロピレン系樹脂組成物を製膜する方法、または、本実施形態に係るプロピレン系樹脂組成物を用いて得られる多層フィルムの少なくとも1層として製膜する方法等が挙げられる。多層フィルムを製膜する方法としては、通常用いられる共押出法、押出ラミネート法、熱ラミネート法、ドライラミネート法等が挙げられる。多層フィルムを製膜する方法は、好ましくは、押出機、Tダイ、冷却ロールを備えるTダイフィルム製膜装置を用いたTダイ法である。
【0036】
例えば、本実施形態に係るフィルムが単層フィルムである場合には、本実施形態に係るプロピレン系樹脂組成物を押出機で加熱溶融し、Tダイから押出し、冷却ロールに密着させて冷却固化して製造される。
【0037】
例えば、本実施形態に係るフィルムが、ポリプロピレン系樹脂材料からなる基材層の一方の表層として、本実施形態に係るプロピレン系樹脂組成物からなる層を有し、前記基材層のもう一方の表層としてポリプロピレン系樹脂材料からなる層を有する多層フィルムである場合には、本実施形態に係るプロピレン系樹脂組成物を多層Tダイ装置の表層へとつながる押出機で加熱溶融し、基材層として用いられるポリプロピレン系樹脂材料を多層Tダイ装置の基材層へとつながる押出機で加熱溶融し、もう一方の表層となるポリプロピレン系樹脂材料を前記基材層のもう一方の表層へとつながる押出機で加熱溶融し、多層Tダイから共押出し、冷却ロールに密着させて冷却固化して製造される。
【0038】
本実施形態に係るフィルムが単層フィルムである場合、斯かるフィルムの厚みは、好ましくは10μm以上500μm以下であり、より好ましくは10μm以上100μm以下であり、さらに好ましくは20μm以上50μm以下である。
【0039】
本実施形態に係るフィルムが多層フィルムである場合、本実施形態に係るプロピレン系樹脂組成物からなる層の厚みは、好ましくは1μm以上50μm以下であり、より好ましくは1μm以上10μm以下であり、さらに好ましくは4μm以上10μm以下である。
【0040】
本実施形態に係るフィルムの用途としては、例えば、食品、繊維、雑貨等の包装用途が挙げられる。本実施形態に係るフィルムは、特に、食品軽包装に好適に用いられる。
【0041】
本発明は、以下の態様を含む。
[1]プロピレンに由来する構造単位が主成分であるプロピレン系重合体(1)と、
プロピレンに由来する構造単位およびエチレンに由来する構造単位からなるプロピレン-エチレン共重合体(2)と、
からなるヘテロファジックプロピレン重合材料であり、
20℃キシレン可溶部(CXS)の含有量が8.0質量%以上20.0質量%以下であり、
20℃キシレン可溶部の極限粘度([η]CXS)が1.00dl/g以上1.40dl/g以下であり、
20℃キシレン可溶部の極限粘度([η]CXS)と20℃キシレン不溶部の極限粘度([η]CXIS)との比([η]CXS/[η]CXIS)が0.50以上1.50以下であり、
赤外分光法(IR)で測定されるエチレンに由来する構造単位の含有量が3.0質量%以上7.0質量%以下である、ヘテロファジックプロピレン重合材料。
[2]プロピレンに由来する構造単位が97質量%以上であるプロピレン系重合体(1)と、
プロピレンに由来する構造単位が75質量%以上90質量%以下であり、かつ、エチレンに由来する構造単位が10質量%以上25質量%以下であるプロピレン-エチレン共重合体(2)と、
からなる、前記[1]に記載のヘテロファジックプロピレン重合材料。
[3]プロピレン系重合体(1)の含有量が60.0質量%以上90.0質量%以下であり、
プロピレン-エチレン共重合体(2)の含有量が10.0質量%以上40.0質量%以下である、前記[1]または[2]に記載のヘテロファジックプロピレン重合材料。
[4]プロピレン-エチレン共重合体(2)の極限粘度([η]B)が1.00dl/g以上2.00dl/g以下であり、
プロピレン-エチレン共重合体(2)の極限粘度([η]B)とプロピレン系重合体(1)の極限粘度([η]A)との比([η]B/[η]A)が0.50以上1.50以下である、前記[1]~[3]のいずれか一つに記載のヘテロファジックプロピレン重合材料。
[5]前記[1]~[4]のいずれか一項に記載のヘテロファジックプロピレン重合材料を含む、プロピレン系樹脂組成物。
[6]前記[1]~[4]のいずれか一項に記載のヘテロファジックプロピレン重合材料を含む、フィルム。
[7]アルミニウム蒸着用である、前記[6]に記載のフィルム。
【実施例0042】
以下、実施例および比較例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0043】
実施例および比較例で用いた重合体および組成物の測定は、以下のとおりの方法で行った。なお、以下、プロピレン系重合体(1)を成分A、プロピレン-エチレン共重合体(2)を成分Bと記載する。
【0044】
(1)極限粘度(単位:dl/g)
ウベローデ型粘度計を用いて135℃テトラリン中で測定を行った。
【0045】
(2)成分Aの極限粘度(単位:dL/g)
成分Aの極限粘度は、成分Aの重合後に重合槽から重合体パウダーを抜き出し、上記(1)の方法で測定して求めた。
【0046】
(3)成分Bの極限粘度(単位:dL/g)
成分Bの極限粘度は、成分Aと成分Bとからなるヘテロファジックプロピレン重合材料全体の極限粘度および成分Aの極限粘度を、それぞれ上記(1)の方法で測定し、成分Bのヘテロファジックプロピレン重合材料全体に対する重合比率(χ)を用いて、次式から計算によって求めた(成分Bのヘテロファジックプロピレン重合材料全体に対する重合比率(χ)は、下記(4)に記載の方法によって求めた)。
[η]B=[η]T/χ-(1/χ-1)[η]A
[η]A:成分Aの極限粘度(dL/g)
[η]B:成分Bの極限粘度(dL/g)
[η]T:成分Aと成分Bとからなるヘテロファジックプロピレン重合材料全体の極限粘度(dL/g)
χ:成分Bのヘテロファジックプロピレン重合材料全体に対する重合比率
【0047】
(4)成分Aおよび成分Bのヘテロファジックプロピレン重合材料全体に対する重合比率(単位:質量%)
ヘテロファジックプロピレン重合材料における成分Aおよび成分Bの含有量は、成分Aおよび成分Bの重合時の物質収支から得られたものである。
【0048】
(5)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
JIS K7210-1に規定されたA法に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgで測定した。
【0049】
(6)成分Bおよびヘテロファジックプロピレン重合材料のエチレンに由来される構造単位の含有量(単位:質量%)
ヘテロファジックプロピレン重合材料におけるエチレンに由来する構造単位の含有量は、ヘテロファジックプロピレン重合材料の全体のIRスペクトル測定を行い、高分子分析ハンドブック(1995年、紀伊国屋書店発行)の第616頁に記載されている「(ii)ブロック共重合体に関する方法」に従い、算出されたものである。また、成分Bにおけるエチレンに由来する構造単位の含有量は、下記式に基づき、算出した。
=(E-E×P)/P
(式中、E、EおよびEは、それぞれ、ヘテロファジックプロピレン重合材料、成分Aおよび成分Bにおけるエチレンに由来する構造単位の含有量を示し、PおよびPは、それぞれ、成分Aおよび成分Bの含有量を示す。)
【0050】
(7)HAZE(単位:%)
JIS K7105に従い測定した。なお、HAZEが低いほど、透明性に優れることを意味する。
【0051】
(8)蒸着強度(単位:N/15mm)
酢酸エチル、エステル系接着剤の主剤(タケラックA-310;武田薬品製)および硬化剤(タケネートA-3;武田薬品製)を、36:12:1の質量比で混合し、接着剤溶液を作成した。康井精機製卓上型テストコーターを用いて、厚さ15μmの延伸ナイロン基材フィルム(ユニチカ製エンブレム)に接着剤溶液を塗布した後、85℃で乾燥させた。ナイロン基材フィルム上に存在する接着剤の、乾燥後の質量は、3.7g/mであった。片面にアルミニウム蒸着フィルムの蒸着面と、ナイロン基材フィルムの接着剤塗布面を接触させ、40℃、3kg/cmで圧着させた。圧着後のフィルムを、40℃で2日間、加熱熟成することによりドライラミネーションフィルムを得た。ドライラミネーションフィルムを幅15mm×長さ80mm(製膜方向と長辺方向が一致)で切り取り、ORIENTEC社製STA-1225型引張試験機を用いて、引張速度1000mm/分で引張試験を行い、剥離進行時の引張荷重を蒸着強度とした。
【0052】
[実施例1]
第一工程として、チーグラー・ナッタ型触媒を用いて、気相重合法により、プロピレンを重合し、プロピレン単独重合体(成分A)を得た。得られたプロピレン単独重合体(成分A)の極限粘度は2.00dl/gであった。次いで、第二工程として、得られたプロピレン単独重合体(成分A)の存在下で、気相重合法により、プロピレンとエチレンとを共重合し、ヘテロファジックプロピレン重合材料を得た。得られたヘテロファジックプロピレン重合材料は、プロピレン単独重合体(成分A)の含有量が75.0質量%であり、プロピレン-エチレン共重合体(成分B)の含有量が25.0質量%であり、ヘテロファジックプロピレン重合材料の極限粘度が1.95dl/gであり、230℃で測定したメルトフローレートが2.5g/10分であった。また、プロピレン-エチレン共重合体(成分B)におけるエチレンに由来する構造単位の含有量が15.2質量%であり、成分Bの極限粘度([η]B)が1.70dl/gであった。また、ヘテロファジックプロピレン重合材料は、エチレンに由来する構造単位の含有量が4.4質量%であり、冷キシレン可溶成分(CXS)の含有量が10.1質量%であり、冷キシレン可溶成分の極限粘度([η]CXS)が1.25dl/gであり、冷キシレン不溶成分の極限粘度([η]CXIS)が1.56dl/gであった。ヘテロファジックプロピレン重合材料の物性を表1に示し、成分Aおよび成分Bの物性を表2に示す。
【0053】
得られたヘテロファジックプロピレン重合材料100質量部、ハイドロタルサイトDHT-4C(協和化学工業社製)0.01質量部、イルガノックス1010(BASF社製)0.10質量部、イルガフォス168(BASF社製)0.05質量部、および、メルトフローレート調整剤(2,5-ジメチル-2,5ジ(ターシャリ-ブチルパーオキシ)ヘキサン)適量を、ヘンシェルミキサーで混合した後、40mm単軸造粒機(田辺プラスチックス機械社製VS40-28V型ペレット製造装置)を用い、設定温度270℃、押出量10kg/hで溶融押出を行ってペレット状のプロピレン系樹脂組成物(1)を得た。得られたプロピレン系樹脂組成物(1)は、230℃で測定したメルトフローレートが6.1g/10分であった。
【0054】
得られたプロピレン系樹脂組成物(1)を、50mmTダイ製膜装置(田辺プラスチックス機械社製V-50-F600型フィルム成型装置、400mm幅Tダイ付き)を用いて、樹脂温度280℃で溶融押出を行い、次いで、50℃の冷却水を通水したチルロールで巻き取りながら冷却固化させ、厚さ30μmのフィルムを得た。得られたフィルムを用いて、HAZEを測定した。測定結果を表3に示す。
【0055】
得られた厚さ30μmのフィルムの片面にコロナ放電処理を施した後、真空蒸着装置(佐藤真空機械工業株式会社製)を用いてコロナ処理面にアルミニウムを蒸着し、アルミニウム蒸着フィルムを得た。得られたフィルムの蒸着強度を表3に示す。
【0056】
[実施例2]
第一工程として、チーグラー・ナッタ型触媒を用いて、気相重合法により、プロピレンを重合し、プロピレン単独重合体(成分A)を得た。得られたプロピレン単独重合体(成分A)の極限粘度は2.31dl/gであった。次いで、第二工程として、得られたプロピレン単独重合体(成分A)の存在下で、気相重合法により、プロピレンとエチレンとを共重合し、ヘテロファジックプロピレン重合材料を得た。得られたヘテロファジックプロピレン重合材料は、プロピレン単独重合体(成分A)の含有量が72.8質量%であり、プロピレン-エチレン共重合体(成分B)の含有量が27.2質量%であり、ヘテロファジックプロピレン重合材料の極限粘度が2.06dl/gであり、230℃で測定したメルトフローレートが2.2g/10分であった。また、プロピレン-エチレン共重合体(成分B)におけるエチレンに由来する構造単位の含有量が18.4質量%であり、成分Bの極限粘度([η]B)が1.40dl/gであった。また、ヘテロファジックプロピレン重合材料は、エチレンに由来する構造単位の含有量が5.8質量%であり、冷キシレン可溶成分(CXS)の含有量が15.1質量%であり、冷キシレン可溶成分の極限粘度([η]CXS)が1.06dl/gであり、冷キシレン不溶成分の極限粘度([η]CXIS)が1.50dl/gであった。ヘテロファジックプロピレン重合材料の物性を表1に示し、成分Aおよび成分Bの物性を表2に示す。
【0057】
得られたヘテロファジックプロピレン重合材料100質量部、ハイドロタルサイトDHT-4C(協和化学工業社製)0.01質量部、イルガノックス1010(BASF社製)0.10質量部、イルガフォス168(BASF社製)0.05質量部、および、メルトフローレート調整剤(2,5-ジメチル-2,5ジ(ターシャリ-ブチルパーオキシ)ヘキサン)適量を、ヘンシェルミキサーで混合した後、田辺プラスチックス機械製40mm単軸造粒機を用い、設定温度270℃、押出量10kg/hで溶融押出を行ってペレット状のプロピレン系樹脂組成物(2)を得た。得られたプロピレン系樹脂組成物(2)は、230℃で測定したメルトフローレートが7.7g/10分であった。
【0058】
得られたプロピレン系樹脂組成物(2)を用いて、実施例1と同様の方法で厚さ30μmのフィルムを得た。得られたフィルムを用いて、HAZEを測定した。測定結果を表3に示す。さらに、実施例1と同様の方法でアルミニウム蒸着フィルムを得た。得られたアルミニウム蒸着フィルムの蒸着強度を表3に示す。
【0059】
[実施例3]
第一工程として、チーグラー・ナッタ型触媒を用いて、気相重合法により、プロピレンを重合し、プロピレン単独重合体(成分A)を得た。得られたプロピレン単独重合体(成分A)の極限粘度は1.68dl/gであった。次いで、第二工程として、得られたプロピレン単独重合体(成分A)の存在下で、気相重合法により、プロピレンとエチレンとを共重合し、ヘテロファジックプロピレン重合材料を得た。得られたヘテロファジックプロピレン重合材料は、プロピレン単独重合体(成分A)の含有量が72.3質量%であり、プロピレン-エチレン共重合体(成分B)の含有量が27.7質量%であり、ヘテロファジックプロピレン重合材料の極限粘度が1.66dl/gであり、230℃で測定したメルトフローレートが5.8g/10分であった。また、プロピレン-エチレン共重合体(成分B)におけるエチレンに由来する構造単位の含有量が19.5質量%であり、成分Bの極限粘度([η]B)が1.61dl/gであった。また、ヘテロファジックプロピレン重合材料は、エチレンに由来する構造単位の含有量が6.2質量%であり、冷キシレン可溶成分(CXS)の含有量が15.9質量%であり、冷キシレン可溶成分の極限粘度([η]CXS)が1.22dl/gであり、冷キシレン不溶成分の極限粘度([η]CXIS)が1.45dl/gであった。ヘテロファジックプロピレン重合材料の物性を表1に示し、成分Aおよび成分Bの物性を表2に示す。
【0060】
得られたヘテロファジックプロピレン重合材料100質量部、ハイドロタルサイトDHT-4C(協和化学工業社製)0.01質量部、イルガノックス1010(BASF社製)0.10質量部、イルガフォス168(BASF社製)0.05質量部、および、メルトフローレート調整剤(2,5-ジメチル-2,5ジ(ターシャリ-ブチルパーオキシ)ヘキサン)適量を、ヘンシェルミキサーで混合した後、田辺プラスチックス機械製40mm単軸造粒機を用い、設定温度270℃、押出量10kg/hで溶融押出を行ってペレット状のプロピレン系樹脂組成物(3)を得た。得られたプロピレン系樹脂組成物(3)は、230℃で測定したメルトフローレートが7.4g/10分であった。
【0061】
得られたプロピレン系樹脂組成物(3)を用いて、実施例1と同様の方法で厚さ30μmのフィルムを得た。得られたフィルムを用いて、HAZEを測定した。測定結果を表3に示す。さらに、実施例1と同様の方法でアルミニウム蒸着フィルムを得た。得られたアルミニウム蒸着フィルムの蒸着強度を表3に示す。
【0062】
[実施例4]
第一工程として、チーグラー・ナッタ型触媒を用いて、気相重合法により、プロピレンを重合し、プロピレン単独重合体(成分A)を得た。得られたプロピレン単独重合体(成分A)の極限粘度は1.70dl/gであった。次いで、第二工程として、得られたプロピレン単独重合体(成分A)の存在下で、気相重合法により、プロピレンとエチレンとを共重合し、ヘテロファジックプロピレン重合材料を得た。得られたヘテロファジックプロピレン重合材料は、プロピレン単独重合体(成分A)の含有量が80.7質量%であり、プロピレン-エチレン共重合体(成分B)の含有量が19.3質量%であり、ヘテロファジックプロピレン重合材料の極限粘度が1.66dl/gであり、230℃で測定したメルトフローレートが6.2g/10分であった。また、プロピレン-エチレン共重合体(成分B)におけるエチレンに由来する構造単位の含有量が22.6質量%であり、成分Bの極限粘度([η]B)が1.49dl/gであった。また、ヘテロファジックプロピレン重合材料は、エチレンに由来する構造単位の含有量が4.2質量%であり、冷キシレン可溶成分(CXS)の含有量が9.7質量%であり、冷キシレン可溶成分の極限粘度([η]CXS)が1.27dl/gであり、冷キシレン不溶成分の極限粘度([η]CXIS)が1.60dl/gであった。ヘテロファジックプロピレン重合材料の物性を表1に示し、成分Aおよび成分Bの物性を表2に示す。
【0063】
得られたヘテロファジックプロピレン重合材料100質量部、ハイドロタルサイトDHT-4C(協和化学工業社製)0.01質量部、イルガノックス1010(BASF社製)0.10質量部、イルガフォス168(BASF社製)0.05質量部、および、メルトフローレート調整剤(2,5-ジメチル-2,5ジ(ターシャリ-ブチルパーオキシ)ヘキサン)適量を、ヘンシェルミキサーで混合した後、田辺プラスチックス機械製40mm単軸造粒機を用い、設定温度270℃、押出量10kg/hで溶融押出を行ってペレット状のプロピレン系樹脂組成物(4)を得た。得られたプロピレン系樹脂組成物(4)は、230℃で測定したメルトフローレートが5.3g/10分であった。
【0064】
得られたプロピレン系樹脂組成物(4)を用いて、実施例1と同様の方法で厚さ30μmのフィルムを得た。得られたフィルムを用いて、HAZEを測定した。測定結果を表3に示す。さらに、実施例1と同様の方法でアルミニウム蒸着フィルムを得た。得られたアルミニウム蒸着フィルムの蒸着強度を表3に示す。
【0065】
[比較例1]
第一工程として、チーグラー・ナッタ型触媒を用いて、気相重合法により、プロピレンを重合し、プロピレン単独重合体(成分A)を得た。得られたプロピレン単独重合体(成分A)の極限粘度は1.77dl/gであった。次いで、第二工程として、得られたプロピレン単独重合体(成分A)の存在下で、気相重合法により、プロピレンとエチレンとを共重合し、ヘテロファジックプロピレン重合材料を得た。得られたヘテロファジックプロピレン重合材料は、プロピレン単独重合体(成分A)の含有量が77.0質量%であり、プロピレン-エチレン共重合体(成分B)の含有量が23.0質量%であり、ヘテロファジックプロピレン重合材料の極限粘度が2.10dl/gであり、230℃で測定したメルトフローレートが2.5g/10分であった。また、プロピレン-エチレン共重合体(成分B)におけるエチレンに由来する構造単位の含有量が30.0質量%であり、成分Bの極限粘度([η]B)が3.20dl/gであった。また、ヘテロファジックプロピレン重合材料は、エチレンに由来する構造単位の含有量が7.1質量%であり、冷キシレン可溶成分(CXS)の含有量が15.4質量%であり、冷キシレン可溶成分の極限粘度([η]CXS)が2.85dl/gであり、冷キシレン不溶成分の極限粘度([η]CXIS)が1.83dl/gであった。ヘテロファジックプロピレン重合材料の物性を表1に示し、成分Aおよび成分Bの物性を表2に示す。
【0066】
得られたヘテロファジックプロピレン重合材料100質量部、ハイドロタルサイトDHT-4C(協和化学工業社製)0.01質量部、イルガノックス1010(BASF社製)0.10質量部、イルガフォス168(BASF社製)0.05質量部、および、メルトフローレート調整剤(2,5-ジメチル-2,5ジ(ターシャリ-ブチルパーオキシ)ヘキサン)適量を、ヘンシェルミキサーで混合した後、田辺プラスチックス機械製40mm単軸造粒機を用い、設定温度270℃、押出量10kg/hで溶融押出を行ってペレット状のプロピレン系樹脂組成物(5)を得た。得られたプロピレン系樹脂組成物(5)は、230℃で測定したメルトフローレートが3.1g/10分であった。
【0067】
得られたプロピレン系樹脂組成物(5)を用いて、実施例1と同様の方法で厚さ30μmのフィルムを得た。得られたフィルムを用いて、HAZEを測定した。測定結果を表3に示す。さらに、実施例1と同様の方法でアルミニウム蒸着フィルムを得た。得られたアルミニウム蒸着フィルムの蒸着強度を表3に示す。
【0068】
[比較例2]
第一工程として、チーグラー・ナッタ型触媒を用いて、気相重合法により、プロピレンを重合し、プロピレン単独重合体(成分A)を得た。得られたプロピレン単独重合体(成分A)の極限粘度は1.80dl/gであった。次いで、第二工程として、得られたプロピレン単独重合体(成分A)の存在下で、気相重合法により、プロピレンとエチレンとを共重合し、ヘテロファジックプロピレン重合材料を得た。得られたヘテロファジックプロピレン重合材料は、プロピレン単独重合体(成分A)の含有量が73.7質量%であり、プロピレン-エチレン共重合体(成分B)の含有量が26.3質量%であり、ヘテロファジックプロピレン重合材料の極限粘度が2.09dl/gであり、230℃で測定したメルトフローレートが1.9g/10分であった。また、プロピレン-エチレン共重合体(成分B)におけるエチレンに由来する構造単位の含有量が18.6質量%であり、成分Bの極限粘度([η]B)が2.90dl/gであった。また、ヘテロファジックプロピレン重合材料は、エチレンに由来する構造単位の含有量が5.8質量%であり、冷キシレン可溶成分(CXS)の含有量が7.4質量%であり、冷キシレン可溶成分の極限粘度([η]CXS)が0.79dl/gであり、冷キシレン不溶成分の極限粘度([η]CXIS)が1.57dl/gであった。ヘテロファジックプロピレン重合材料の物性を表1に示し、成分Aおよび成分Bの物性を表2に示す。
【0069】
得られたヘテロファジックプロピレン重合材料100質量部、ハイドロタルサイトDHT-4C(協和化学工業社製)0.01質量部、イルガノックス1010(BASF社製)0.10質量部、イルガフォス168(BASF社製)0.05質量部、および、メルトフローレート調整剤(2,5-ジメチル-2,5ジ(ターシャリ-ブチルパーオキシ)ヘキサン)適量を、ヘンシェルミキサーで混合した後、田辺プラスチックス機械製40mm単軸造粒機を用い、設定温度270℃、押出量10kg/hで溶融押出を行ってペレット状のプロピレン系樹脂組成物(6)を得た。得られたプロピレン系樹脂組成物(6)は、230℃で測定したメルトフローレートが6.3g/10分であった。
【0070】
得られたプロピレン系樹脂組成物(6)を用いて、実施例1と同様の方法で厚さ30μmのフィルムを得た。得られたフィルムを用いて、HAZEを測定した。測定結果を表3に示す。さらに、実施例1と同様の方法でアルミニウム蒸着フィルムを得た。得られたアルミニウム蒸着フィルムの蒸着強度を表3に示す。
【0071】
[比較例3]
第一工程として、チーグラー・ナッタ型触媒を用いて、気相重合法により、プロピレンを重合し、プロピレン単独重合体(成分A)を得た。得られたプロピレン単独重合体(成分A)の極限粘度は2.46dl/gであった。次いで、第二工程として、得られたプロピレン単独重合体(成分A)の存在下で、気相重合法により、プロピレンとエチレンとを共重合し、ヘテロファジックプロピレン重合材料を得た。得られたヘテロファジックプロピレン重合材料は、プロピレン単独重合体(成分A)の含有量が87.9質量%であり、プロピレン-エチレン共重合体(成分B)の含有量が12.1質量%であり、ヘテロファジックプロピレン重合材料の極限粘度が2.24dl/gであり、230℃で測定したメルトフローレートが1.1g/10分であった。また、プロピレン-エチレン共重合体(成分B)におけるエチレンに由来する構造単位の含有量が16.6質量%であり、成分Bの極限粘度([η]B)が0.63dl/gであった。また、ヘテロファジックプロピレン重合材料は、エチレンに由来する構造単位の含有量が0.5質量%であり、冷キシレン可溶成分(CXS)の含有量が3.5質量%であり、冷キシレン可溶成分の極限粘度([η]CXS)が0.61dl/gであり、冷キシレン不溶成分の極限粘度([η]CXIS)が1.91dl/gであった。ヘテロファジックプロピレン重合材料の物性を表1に示し、成分Aおよび成分Bの物性を表2に示す。
【0072】
得られたヘテロファジックプロピレン重合材料100質量部、ハイドロタルサイトDHT-4C(協和化学工業社製)0.01質量部、イルガノックス1010(BASF社製)0.10質量部、イルガフォス168(BASF社製)0.05質量部、および、メルトフローレート調整剤(2,5-ジメチル-2,5ジ(ターシャリ-ブチルパーオキシ)ヘキサン)適量を、ヘンシェルミキサーで混合した後、田辺プラスチックス機械製40mm単軸造粒機を用い、設定温度270℃、押出量10kg/hで溶融押出を行ってペレット状のプロピレン系樹脂組成物(7)を得た。得られたプロピレン系樹脂組成物(7)は、230℃で測定したメルトフローレートが6.0g/10分であった。
【0073】
得られたプロピレン系樹脂組成物(7)を用いて、実施例1と同様の方法で厚さ30μmのフィルムを得た。得られたフィルムを用いて、HAZEを測定した。測定結果を表3に示す。さらに、実施例1と同様の方法でアルミニウム蒸着フィルムを得た。得られたアルミニウム蒸着フィルムの蒸着強度を表3に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】
【0077】
<まとめ>
表1を見ると、比較例1および2のフィルムのHAZEが実施例1~4のHAZEより大きいことから、実施例1~4のフィルムは、透明性に比較的優れることが分かる。すなわち、実施例1~4のフィルムは、平滑性に比較的優れると言える。そして、比較例3のフィルムの蒸着強度が実施例1~4の蒸着強度より小さいことから、実施例1~4のフィルムは、アルミニウムとの蒸着強度に比較的優れることが分かる。すなわち、実施例1~4のフィルムは、アルミニウムとの密着強度に比較的優れると言える。