(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130705
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】外観検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/84 20060101AFI20240920BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20240920BHJP
F21V 23/00 20150101ALI20240920BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240920BHJP
【FI】
G01N21/84 E
F21S2/00 390
F21V23/00 140
F21V23/00 110
F21Y115:10
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040568
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000116655
【氏名又は名称】愛知製鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100195659
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 祐介
(72)【発明者】
【氏名】浅野 佳祐
(72)【発明者】
【氏名】豊田 千恵
(72)【発明者】
【氏名】岡田 大樹
(72)【発明者】
【氏名】江藤 政彦
【テーマコード(参考)】
2G051
3K014
【Fターム(参考)】
2G051BA01
2G051BB01
2G051BB07
2G051BC01
2G051CA04
2G051CB01
2G051EB01
2G051EC03
3K014AA01
(57)【要約】
【課題】対象物の表面に傾斜が異なる部位を含まれていても、それら傾斜が異なる部位を同時に検査することができる技術を提供する。
【解決手段】対象物の外観を検査する外観検査装置であって、対象物に光を照射する複数の光源と、光源の各々を同心円状に囲む複数の壁部と、光源の各々から照射される光によって画定される照明外径を制御することで、対象物に照射される光の照射角を変化させる照射変化部と、異なる照明外径で光が照射された際に対象物から反射する光を撮像することによって、各々の照明外径で光が照射された際の対象物の画像を取得する撮像部と、複数の画像における各画素の輝度値を対象物の位置ごとに積算した輝度積算値を用いて、対象物の外観の異常の有無を判定する判定部と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の外観を検査する外観検査装置であって、
前記対象物に光を照射する複数の光源と、
前記光源の各々を同心円状に囲む複数の壁部と、
前記光源の各々から照射される光によって画定される照明外径を制御することで、前記対象物に照射される光の照射角を変化させる照射変化部と、
異なる前記照明外径で光が照射された際に前記対象物から反射する光を撮像することによって、各々の前記照明外径で光が照射された際の前記対象物の画像を取得する撮像部と、
複数の前記画像における各画素の輝度値を前記対象物の位置ごとに積算した輝度積算値を用いて、前記対象物の外観の異常の有無を判定する判定部と、を備える、外観検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の外観検査装置であって、
前記輝度積算値は、複数の前記画像における各画素の輝度値を正規化したのち、正規化した輝度値を前記対象物の位置ごとに積算した値である、外観検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外観検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、光を照射した対象物からの反射光を撮像して対象物の外観を検査する技術が知られている。例えば、特許文献1には、面光源から照射された光が進む方向に沿って、第1の遮光マスク、第2の遮光マスク、レンズおよびハーフミラーが配置された検査用照明装置と撮像装置とを備えた検査システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
対象物の外観を検査する際、対象物の表面からの反射光を撮像装置が受光できるよう対象物の位置合わせを高い精度で行う必要がある。しかし、対象物のうち検査の対象となる表面に傾斜が異なる部位が含まれている場合、それら傾斜が異なる部位を同時に精度良く検査することについては十分に検討されていなかった。このため、傾斜が異なる部位を同時に検査することができる技術が望まれていた。なお、特許文献1においては、表面に傾斜が異なる部位を含む対象物を検査することについては何ら考慮されていない。
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、表面に傾斜が異なる部位を含む対象物を検査する際に、それら傾斜が異なる部位を同時に検査することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、対象物の外観を検査する外観検査装置が提供される。この外観検査装置は、前記対象物に光を照射する複数の光源と、前記光源の各々を同心円状に囲む複数の壁部と、前記光源の各々から照射される光によって画定される照明外径を制御することで、前記対象物に照射される光の照射角を変化させる照射変化部と、異なる前記照明外径で光が照射された際に前記対象物から反射する光を撮像することによって、各々の前記照明外径で光が照射された際の前記対象物の画像を取得する撮像部と、複数の前記画像における各画素の輝度値を前記対象物の位置ごとに積算した輝度積算値を用いて、前記対象物の外観の異常の有無を判定する判定部と、を備える。
【0008】
この構成によれば、壁部によって同心円状に囲まれた光源の各々から照射される光は、その光源を挟む壁部によって多重反射されてから壁部より外側に放出される。そのため、これら光源は円形の面光源を形成しているとみなすことができる。すなわち、この構成によれば、円形の面光源から円形状の均一な光を照射することができる。また、この構成によれば、円形の面光源の照明外径を変化させ、対象物に照射される光の照射角を変化させた際の対象物の画像を複数取得し、それら画像から算出した各画素の輝度積算値を対象物の外観異常の有無の判定に用いる。したがって、検査の対象となる表面に傾斜が異なる部位を含む対象物であっても、それら傾斜が異なる部位を同時に検査することができる。
【0009】
(2)上記形態の外観検査装置において、前記輝度積算値は、複数の前記画像における各画素の輝度値を正規化したのち、正規化した輝度値を前記対象物の位置ごとに積算した値であってもよい。
対象物が加工油で覆われている場合、対象物から反射する光の強度が減少することによって、その対象物を撮像した画像においても対象物を構成している画素の輝度値が減少する傾向にある。この構成によれば、正規化した各画素の輝度値を対象物の位置ごとに積算した輝度積算値が、対象物の外観異常の判定に用いられる。そのため、撮像された画像において加工油で覆われたもしくは加工油が部分的に付着した対象物を構成している画素の輝度値が正規化によって補正されることから、加工油による影響を軽減したうえで対象物の外観を検査することができる。
【0010】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、外観検査装置、外観検査システム、外観検査方法、外観検査操作の制御方法、これら装置や方法を実行するためのコンピュータプログラム、このコンピュータプログラムを配布するためのサーバ装置、コンピュータプログラムを記憶した一時的でない記憶媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態の外観検査装置の構成を例示した説明図である。
【
図2】光源ユニットの各断面を示した説明図である。
【
図3】外観検査装置によって検査される対象物の一例を示す説明図である。
【
図4】光源ユニットが壁部を備えることの利点を説明するための説明図である。
【
図5】光源ユニットから対象物に光が照射されている状態を示す説明図である。
【
図6】光源ユニットから対象物に光が照射されている状態を示す説明図である。
【
図7】光源ユニットから対象物に光が照射されている状態を示す説明図である。
【
図8】対象物の外観の異常の有無を判定する手法の説明図である。
【
図9】第2実施形態の外観検査装置が検査した対象物の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態としての外観検査装置1の構成を例示した説明図である。
図1には、相互に直交するXYZ軸を図示する。X軸は後述する光源ユニット5から照射された光が向かう方向に対応し、Y軸およびZ軸は、そのX軸に直交する方向に対応している。このXYZ軸は、
図1以降の各図においても共通する。外観検査装置1は、対象物OBの外観を検査する装置である。換言すれば、外観検査装置1は、対象物OBの外観における欠けや凹み、打痕等の異常の有無を判定する装置である。外観検査装置1は、光源ユニット5と、平凸レンズ40と、ハーフミラー50と、カメラ60と、制御部70と、を備えている。
図1において、光軸AXは、光源ユニット5の光軸を示している。
【0013】
図2(A)は、
図1のF2A―F2A線における光源ユニット5の横断面が示されている。
図2(B)は、
図2(A)のF2B―F2B線における光源ユニット5の横断面を示している。
図1に示すように、光源ユニット5は、板状部材10と、壁部材20と、拡散部材30と、がX軸方向に積層されたユニットである。
図2(B)に示すように、板状部材10のうち+X軸方向側を向いた面には、対象物OBに光を照射する光源11~15が配置されている。詳細には、
図2(A)に示すように、+X軸方向側から見て、中央に1つの光源11が配置され、その光源11を囲むように複数の光源12が円状に配置されている。また、複数の光源13は、複数の光源12を囲むように円状に配置されている。同様に、複数の光源14は、複数の光源13を囲むように円状に配置されており、複数の光源15は、その複数の光源14を囲むように円状に配置されている。すなわち、光源12~15は、板状部材10のうち+X軸方向側を向いた面において、同心円状に配置されている。本実施形態では、光源11~15は、LEDである。
【0014】
図2(A)に示すように、壁部材20は、+X軸方向側から見て、光源11~15の各々を同心円状に囲む壁部21~25を含む。壁部21~25の各々は、+X軸方向側から見て光源11~15を囲むように形成されるとともに、X軸方向に沿って伸びている(
図2(B)参照)。詳細には、壁部21~24の各々は、+X軸方向側から見て円状に形成され、光源11~14を囲むように配置されている。壁部25は、+X軸方向側から見て中央部分に円筒状の貫通孔(光源11~15および壁部21~24が配置される空間)を有する直方体状に形成され、光源15を囲むように配置されている。拡散部材30は、光源11~15から照射された光を拡散させる。なお、
図2(A)(B)において、壁部21~24は断面であることから本来ハッチングで示すべきであるが、図示の便宜上ハッチングを省略している。
【0015】
平凸レンズ40は、
図1に示すように、X軸方向において、光源ユニット5と後述するハーフミラー50との間に配置されている。平凸レンズ40は、拡散部材30を介して光源11~15から照射される光を集光する。ハーフミラー50は、X軸方向において、平凸レンズ40と対象物OBが配置される位置との間に配置されている。ハーフミラー50は、拡散部材30を介して光源11~15から照射される光の一部を対象物OBに向けて透過させるとともに対象物OBから反射する光の一部を後述するカメラ60に向けて反射する。
【0016】
カメラ60は、対象物OBから反射する光を撮像する撮像部である。カメラ60に取り付けられたテレセントリックレンズ62は、テレセントリックレンズ62の光軸に平行な光のみをカメラ60に透過させる。制御部70は、ROM、RAM及びCPUを含んで構成されるコンピュータであり、外観検査装置1の各種制御を行う。
【0017】
図3は、外観検査装置1によって検査される対象物OBの一例を示す説明図である。
図3に示す対象物OBは、表面に傾斜が異なる部位を含んでいる。詳細には、対象物OBのうち-X軸方向側を向いた側の表面は、面S0~S3を含む。面S1は、面S0に対して1°の角度で傾斜している傾斜面である。面S2および面S3は、それぞれ面S0に対して2°の角度および3°の角度で傾斜している傾斜面である。すなわち、これら面S0~S3は、対象物OBの表面に含まれる傾斜が異なる部位に相当する。
【0018】
図4(A)~(C)は、光源ユニット5が壁部21~25を備えることの利点を説明するための説明図である。
図4(A)~(C)の説明に用いる板状部材10,光源11~13、壁部21~23および拡散部材30の構成は、上述した同じ符号の構成と同じである。
図4(A)~(C)の左側には、-Y軸方向側(
図1と同じ視点)から見た板状部材10や拡散部材30が示されている。
図4(A)~(C)の右側には、+X軸方向側から見た拡散部材30が示されている。
図4(A)(B)では、板状部材10上に、光源11~13が配置されているが、壁部21~23は配置されていない。このように配置されている光源11,12から光が照射されると、
図4(A)の右側に示すように、拡散部材30から照射される光の外形は複数の円が重なった形状となる。このような形状においては、円の重なりがある部分と円の重なりがない部分とで明るさに差が生じていることから、明るさにムラがある。また、
図4(A)に示した状態から更に、光源13からも光が照射されると、
図4(B)の右側に示すように、拡散部材30から照射される光の外形は円形に近付く。しかし、光源13からの光の照射が追加されても、拡散部材30から照射される光の外縁は滑らかにはならず、拡散部材30から照射される光の外形は、依然として複数の円が重なった形状であり、明るさにムラがある。
【0019】
一方、
図4(C)では、上述した外観検査装置1のように、板状部材10上に、光源11~13が配置されるとともに、それら光源11~13の各々は壁部21~23によって覆われている。このような光源11~13から光が照射されると、
図4(C)の右側に示すように、拡散部材30から照射される光の外形は円形となる。これは、壁部21~23によって同心円状に囲まれた光源11~13の各々から照射される光が、壁部21~23によって多重反射されてから壁部21~23より外側に放出されるためである。すなわち、光源11~13は、壁部21~23が配置されていることにより、円形の面光源を形成しているとみなすことができる。
図4(C)で説明した構成と同様に、上述した外観検査装置1では、光源11~15の各々は壁部21~25によって同心円状に囲まれていることから、光源11~15は、円形の面光源を形成しているとみなすことができる。そして、このような面光源からは、円形状の均一な光が照射される。
【0020】
図5~7は、光源ユニット5から対象物OBに光が照射されている状態を示す説明図である。
図5~7の左側には、+X軸方向側(
図4(A)~(C)の右側と同じ視点)から見た光源ユニット5が示されている。
図5~7の中央から右側には、-Y軸方向側(
図1と同じ視点)から見た外観検査装置1が示されている。
図5~7において、+X軸方向側から見た光源ユニット5のうち壁部21~25は拡散部材30に隠れていることから、波線で示されている。
【0021】
図5には、壁部21の内側からのみ光が照射されている状態が示されている。換言すれば、壁部21に囲まれた光源11(
図5には不図示)からのみ光が照射されている状態が示されている。
図6には、壁部21~23の各々の間から光が照射されている状態が示されている。換言すれば、壁部21~23の各々に囲まれた光源11~13(
図5には不図示)から光が照射されている状態が示されている。
図7には、壁部21~25の各々の間から光が照射されている状態が示されている。換言すれば、壁部21~25の各々に囲まれた光源11~15(
図5には不図示)から光が照射されている状態が示されている。
図5~7の各々に示す照明外径D1,D3,D5は、それぞれの状態において光源ユニット5から照射される光の外径である。
【0022】
制御部70は、照射変化部として機能することにより、各々の光源11~15から照射される光によって画定される照明外径(
図5~7の照明外径D1,D3,D5参照)を制御することで、対象物OBに照射される光の照射角θを変化させる(
図5~7参照)。すなわち、制御部70は、同心円状に配置された光源11~15ごとにその照射を制御することによって、対象物OBに照射される光によって画定される照明角を変化させる。
図5~7に示すように、照明外径が大きくなるほど照射角θは大きくなる。そして、撮像部であるカメラ60は、異なる照明外径で光が照射された際に対象物OBから反射する光を撮像することによって、各々の照明外径で光が照射された際の対象物OBの画像を取得する。なお、照明外径を変化させて対象物OBの画像を複数取得する際、カメラ60と対象物OBとの位置関係は固定されているものとする。
図3に示した対象物OBのように、その表面に傾斜が異なる部位が含まれていても、対象物OBに照射される光の照射角θが大きくなるほど、それら部位から反射した各々の光がカメラ60に取り込まれやすくなる。換言すれば、大きな照明外径で光が照射された際の対象物OBの画像ほど、当該画像において対象物OBを構成している各々の画素のコントラストが低くなる。
【0023】
図8は、対象物OBの外観の異常の有無を判定する手法の説明図である。外観検査装置1において、制御部70は、判定部として機能することにより、カメラ60によって撮像された複数の画像における各画素の輝度値を対象物OBの位置ごとに積算した輝度積算値を用いて、対象物OBの外観の異常の有無を判定する。手法の詳細を以下に説明する。まず初めに、制御部70は、カメラ60によって撮像された画像群IG(各々の照明外径で光が照射された際の対象物OBの画像群)を用いて、輝度積算画像INを作成する。具体的には、制御部70は、画像の各々において対象物OBの各位置を構成している画素の輝度値を同じ位置ごとに積算して輝度積算値を算出したのち、算出された輝度積算値の各々を対象物OBの各位置に対応して配置することで輝度積算画像INを作成する。次に、制御部70は、後述する基準画像STと輝度積算画像INとの差分画像DFを作成する。基準画像STは、外観に異常の無い対象物OBを撮像した画像群IGから作成した輝度積算画像である。差分画像DFは、基準画像STおよび輝度積算画像INの各々において対象物OBの同じ位置を構成している画素同士の輝度値の差分をとることによって作成される。
【0024】
次に、制御部70は、差分画像DFを構成する各画素の輝度積算値の平均値を算出したのち、
図8中のグラフGRに示されるように、その平均値±kσ(kは任意の定数)に含まれる輝度積算値が配置された画素を正常部NMとし、その平均値±kσに含まれない輝度積算値が配置された画素を暫定異常部ABとして判別する。グラフGRは、差分画像DFを構成する各画素の輝度積算値に関するヒストグラムである。次に、制御部70は、差分画像DFを構成する各画素のうち暫定異常部ABと判別された画素のみを抽出することによって、抽出画像EXを作成する。次に、制御部70は、抽出画像EXのうち暫定異常部ABと判別された画素から構成された部位(
図8では2つの部位を図示)に外接する矩形を描画する。そして、この矩形の短辺SSが予め設定された長さ以上である場合に、制御部70は、対象物OBの外観に異常があると判定する。一方、この矩形の短辺SSが予め設定された長さより短い場合に、制御部70は、対象物OBの外観に異常がないと判定する。
【0025】
以上説明したように、第1実施形態の外観検査装置1によれば、壁部21~25によって同心円状に囲まれた光源11~15の各々から照射される光は、その光源11~15を挟む壁部21~25によって多重反射されてから壁部21~25より外側に放出される。そのため、これら光源11~15は円形の面光源を形成しているとみなすことができる。すなわち、第1実施形態の外観検査装置1によれば、円形の面光源から対象物OBに光を照射することができる。また、第1実施形態の外観検査装置1によれば、円形の面光源の照明外径を変化させ、対象物OBに照射される光の照射角θを変化させた際の対象物OBの画像を複数取得し、それら画像から算出した各画素の輝度積算値を対象物OBの外観異常の有無の判定に用いる。したがって、検査の対象となる表面に傾斜が異なる部位を含む対象物OBであっても、それら傾斜が異なる部位を同時に検査することができる。詳細には、対象物OBに照射される光の照射角θが大きくなるほど、対象物OBの表面に傾斜が異なる部位が含まれていても(
図3参照)、それら部位から反射した各々の光がカメラ60に取り込まれやすくなり、そのような画像を含む複数の画像から算出された輝度積算値が判定に用いられることから、傾斜が異なる部位であっても同時に検査することができるということである。
【0026】
従来の外観検査装置では、対象物に光を照射する光源として、画面の全部または一部を発光させることができるディスプレイが用いられることがあった。このようなディスプレイでは、発光する領域を指定することにより照明外径を変化させることができ、対象物に照射される光の照射角θを変化可能である。しかし、一般的にディスプレイから照射される光量は小さいことから、外観検査における撮像のために対象物に対して光を照射する時間が長くなる傾向にある。光量を増大させるためには、ディスプレイの代わりにアレイ状に配置したLEDを光源として用いることが考えられる。しかし、アレイ状に配置したLEDの各々からは光線が照射されるため、光線の各々の間には隙間が生じ得ることから、その隙間と光線との間で明るさに差が生じて、明るさのムラとなる。このようなアレイ状に配置されたLEDを面光源とするために、拡散板をLEDの照射方向側に配置することも考えられるが、この場合においても、
図4(A)(B)で説明したように、それらLEDから照射される光の外形は、複数の円が重なった形状となることから、明るさにムラがある。この点、第1実施形態の外観検査装置1では、光源11~15の各々は壁部21~25によって同心円状に囲まれていることから、光源11~15は、円形の面光源を形成しているとみなすことができ、このような面光源からは、円形状の均一な光を照射させることができる。
【0027】
<第2実施形態>
第2実施形態の外観検査装置は、第1実施形態の外観検査装置1と比べて、対象物OBの外観の異常の有無を判定する手法が異なる。第2実施形態では、輝度積算値は、複数の画像(
図8の画像群IG)における各画素の輝度値を各位置ごとに正規化したのち、正規化した輝度値を対象物OBの位置ごとに積算した値である。具体的には、第2実施形態において、制御部70は、当該輝度積算値の各々を対象物OBの各位置に対応して配置することで輝度積算画像INa(不図示)を作成する。また、輝度積算画像INaを作成したのち、
図8で説明した差分画像DFの作成以降の処理を行わない。
【0028】
正規化について説明する。正規化は、複数の画像において対象物OBの同じ位置を構成している画素の各々の輝度値と当該同じ位置を構成している画素の最小輝度値との差を、当該同じ位置を構成している画素の最大輝度値と最小輝度値との差で除する処理のことである。この正規化を経て、当該同じ位置を構成している各画素の輝度値は0~1の範囲内の値に変換される。
【0029】
図9は、第2実施形態の外観検査装置が検査した対象物OBの説明図である。
図9(A)は、第2実施形態の外観検査装置におけるカメラ60が撮像した対象物OBの画像群IG(
図8参照)のうちの1枚を示している。なお、このときカメラ60が撮像した対象物OBには、加工油が付着しているものとする。対象物OBが加工油で覆われているもしくは対象物OBに加工油が部分的に付着している場合、対象物OBから反射する光の強度が減少することによって、その対象物OBを撮像した画像においても対象物を構成している画素の輝度値が減少する傾向にある。
図9(A)の横軸は画像左端からの距離を示している。
【0030】
図9(B)は、当該画像群IGから正規化を経ることなく作成された輝度積算画像INの各位置における輝度積算値を示している。
図9(B)の横軸は
図9(A)の波線で示される位置のうち左端からの距離を示し、縦軸は各位置における輝度積算値を示している。
図9(C)は、当該画像群IGから正規化を経て作成された輝度積算画像INaの各位置における輝度積算値を示している。
図9(C)の横軸および縦軸は、
図9(B)と同様である。
【0031】
図9(A)に示すように、画像左端からの距離1~2mmの位置には、凹みDが存在している。
図9(B)には、凹みDの存在によって距離1~2mmの位置で輝度積算値が比較的大きく変化しているようであるが、加工油による影響のため判別しにくい。一方、
図9(C)では、正規化によって加工油による影響が軽減されているため、凹みDの存在によって距離1~2mmの位置で輝度積算値が比較的大きく変化していることを明確に判別することができる。具体的には、凹みDの左端および右端による輝度積算値の大幅な減少が2つの図面下側方向への突出部分として明確に判別することができる。第2実施形態の外観検査装置では、
図9(C)に示したような結果を用いて、対象物OBの外観の異常の有無を判定する。例えば、判定は、輝度積算値の傾きとその傾きの長さに基づいて実行されてもよい。具体的には、輝度積算値が減少する傾きにおいて設定傾き以下の傾きが設定長さ以上で続いている場合、もしくは、輝度積算値が増加する傾きにおいて設定傾き以上の傾きが設定長さ以上で続いている場合、異常があると判定してもよい。
【0032】
以上のような第2実施形態の外観検査装置によっても、対象物OBに含まれる傾斜が異なる部位を同時に検査することができる。また、第2実施形態の外観検査装置によれば、正規化した各画素の輝度値を対象物OBの位置ごとに積算した輝度積算値が、対象物OBの外観異常の判定に用いられる。そのため、撮像された画像において加工油で覆われたもしくは加工油が部分的に付着した対象物OBを構成している画素の輝度値が正規化によって補正されることから、加工油による影響を軽減したうえで対象物OBの外観を検査することができる。
【0033】
対象物OBが加工油で覆われているもしくは対象物OBに加工油が部分的に付着している例として、その対象物OBがプレス加工直後の部品である場合が挙げられる。プレス加工直後の部品は、プレス型内での潤滑のために加工油に覆われた状態でプレス加工された直後の部品のことである。プレス加工後の部品はプレス型によって連続して生産されるため、プレス型に異物の付着等の問題が生じた場合には、多数の同部品の外観に欠けや凹み、打痕等の異常が生じる虞がある。しかし、従来は加工油に覆われた状態での部品の検査は困難であったことから、このような異常を発見するためには、検査前に予め部品から加工油を除去する必要があった。そのため、検査に要する時間が長くなる傾向になり、その間に外観に異常のある部品が連続して生産された場合には、歩留まり低下の要因となる。この点、第2実施形態の外観検査装置によれば、加工油を除去することなくプレス加工直後の部品を検査できることから、プレス加工直後の部品の外観における異常の有無を早期に発見することができる。したがって、プレス型への異物の付着等の問題を作業者が早期に認識することができるため、歩留まりを向上させることができる。
【0034】
<第3実施形態>
第3実施形態の外観検査装置は、第1実施形態と比べて、
図8に示された手法で対象物OBの外観の異常の有無を判定する点は同じであるが、当該手法において、第2実施形態と同様に、画像群IGから正規化を経て作成された輝度積算画像INaを用いる点は異なる。また、第3実施形態の外観検査装置は、第1実施形態と比べて、基準画像STとは異なる基準画像STaが差分画像DFの作成に用いられる点が異なる。基準画像STaは、外観に異常の無い対象物OBを撮像した画像群IGから正規化を経て作成された輝度積算画像である。
【0035】
以上のような第3実施形態の外観検査装置によっても、対象物OBに含まれる傾斜が異なる部位を同時に検査することができる。また、加工油による影響を軽減したうえで対象物OBの外観を検査することができる。
【0036】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0037】
上述した実施形態では、光源11~15は、LEDであったが、これに限られない。光源11~15は、LEDとは異なる別の点光源(例えばハロゲンランプ等)であってもよい。
【0038】
上述した実施形態では、1つの光源11が壁部21に囲まれていたが、これに限られない。壁部21の内側において、複数の光源11が円状に配置されていてもよい。また、上述した実施形態では、壁部22~25の各々に囲まれた光源12~15は、それぞれ一重の円状に配置されていたが、それぞれ二重以上の円状に配置されていてもよい。すなわち、光源11~15は、壁部21~25によって同心円状に囲まれている限り、任意に配列されていてもよい。
【0039】
上述した実施形態では、光源11~15から照射された光を拡散させる部材として、拡散部材30が用いられていたが、これに限られない。例えば、拡散部材30の代わりに、樹脂材料に拡散材もしくは蛍光体を分散させたものが、壁部21~25の各々の間に充填されていてもよい。
【0040】
上述した実施形態では、検査される対象物OBは、表面に傾斜が異なる部位を含んでいる対象物であったが、これに限られない。上述した実施形態で検査される対象物OBは、表面に傾斜が異なる部位を含んでいない対象物であってもよい。すなわち、上述した実施形態で検査される対象物OBは、表面が平面の対象物であってもよい。
【0041】
上述した第2実施形態では、正規化を経て、複数の画像において対象物OBの同じ位置を構成している各画素の輝度値は0~1の範囲内の値に変換されるとしていたが、これに限られない。正規化を経た後の輝度値の範囲の最大値に1とは異なる数値を改めて割り当ててもよいし、最小値に0とは異なる数値を改めて割り当ててもよい。例えば、正規化を経た後、最大値に100を改めて割り当てるとともに最小値にー100を改めて割り当ててもよい。また、最小値を0のまま最大値のみに255を改めて割り当ててもよい。すなわち、最小値から最大値までの範囲に含まれる各画素の輝度値の分布が正規化を経る前と比べて変動しない限り、任意の値が最大値および最小値に改めて割り当てられてもよい。
【0042】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0043】
1…外観検査装置
5…光源ユニット
10…板状部材
11~15…光源
20…壁部材
21~25…壁部
30…拡散部材
40…平凸レンズ
50…ハーフミラー
60…カメラ
62…テレセントリックレンズ
70…制御部