(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130759
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】紙おむつ
(51)【国際特許分類】
A61F 13/15 20060101AFI20240920BHJP
A61F 13/505 20060101ALI20240920BHJP
A61F 13/53 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
A61F13/15 130
A61F13/505
A61F13/53 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040653
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】水口 克
(72)【発明者】
【氏名】林 伸匡
(72)【発明者】
【氏名】水成 隆之
(72)【発明者】
【氏名】山口 大介
(72)【発明者】
【氏名】徳富 孝明
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200BB17
3B200CA03
3B200CB03
3B200DB02
(57)【要約】
【課題】環境への悪影響を抑えることができ、使用後にマテリアルリサイクルすることが可能な紙おむつを提供する。
【解決手段】本開示は、液透過性のトップシート21と、液不透過性のバックシート22と、トップシート21とバックシート22との間に配置される吸収体23と、を備え、使用後に洗浄し分離してリサイクル可能な紙おむつ10であって、吸収体は23、生分解性の高吸収性ポリマーである生分解性高吸収性ポリマーを含み、生分解性高吸収性ポリマーの総重量は、紙おむつ10に使用されている全ての高吸収性ポリマーの総重量の80%以上100%以下である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に配置される吸収体と、を備え、使用後に洗浄し分離してリサイクル可能な紙おむつであって、
前記吸収体は、生分解性の高吸収性ポリマーである生分解性高吸収性ポリマーを含み、
前記生分解性高吸収性ポリマーの総重量は、前記紙おむつに使用されている全ての高吸収性ポリマーの総重量の80%以上100%以下である
ことを特徴とする紙おむつ。
【請求項2】
前記吸収体は、吸収性繊維と前記生分解性高吸収性ポリマーとを含有し、
前記吸収体の前記吸収性繊維の坪量は、100g/m2以上500g/m2以下であり、
前記吸収体の前記高吸収性ポリマーの坪量は、30g/m2以上300g/m2以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の紙おむつ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、紙おむつに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、パンツ型吸収性物品が開示されている。このパンツ型吸収性物品の外装体は、腹側部及び背側部(ウエスト領域、腸骨領域、胴周り領域)に対応する部分に、複数の胴周りギャザー形成用弾性部材が横方向に伸縮可能に配置されている。複数の弾性部材は、外装体を構成する外層シートと内層シートとの間において横方向に伸長可能に接着剤により固定され、且つ縦方向に間欠配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、紙おむつの使用量、廃棄量は、社会の高齢化の進行に伴って年々増加傾向にある。使用済みの紙おむつは、現状大部分が焼却処理されており、一部がリサイクルされている。リサイクルの内訳は、RPF(Refuse derived paper and plastics densified Fuel)等に加工してサーマルリサイクルされているものが主流で、マテリアルリサイクルされている分は少ない。
【0005】
一般に、使用済みの紙おむつをマテリアルリサイクルする場合、水中で紙おむつを撹拌して汚物を除去し、紙おむつの構成材料を分離して洗浄し、再利用可能な原料を回収する。しかし、紙おむつの吸収体に配合されている高吸収性ポリマーを排水から完全に除去することが難しく、高吸収性ポリマーが排水中に残留してしまい、環境に悪影響を抑えてしまう可能性がある。このことは、使用済みの紙おむつのマテリアルリサイクルされる量が少ない一因となっている。
【0006】
そこで、本開示は、環境への悪影響を抑えることができ、使用後にマテリアルリサイクルすることが可能な紙おむつの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に配置される吸収体と、を備え、使用後に洗浄し分離してリサイクル可能な紙おむつであって、前記吸収体は、生分解性の高吸収性ポリマーである生分解性高吸収性ポリマーを含み、前記生分解性高吸収性ポリマーの総重量は、前記紙おむつに使用されている全ての高吸収性ポリマーの総重量の80%以上100%以下である。
【0008】
本発明の第2の態様は、上記第1の態様の紙おむつであって、前記吸収体は、吸収性繊維と前記生分解性高吸収性ポリマーとを含有し、前記吸収体の前記吸収性繊維の坪量は、100g/m2以上500g/m2以下であり、前記吸収体の前記高吸収性ポリマーの坪量は、30g/m2以上300g/m2以下である。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、環境への悪影響を抑えることができ、使用後にマテリアルリサイクルすることが可能な紙おむつを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る紙おむつの前方からの外観斜視図である。
【
図2】
図1の紙おむつを展開した状態を示す肌側からの平面図である。
【
図3】
図2の概略的なIII-III矢視断面図である。
【
図4】リサイクル処理に使用する回転式ドラム装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る紙おむつ10について説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る紙おむつの前方からの外観斜視図である。
図2は、
図1の紙おむつを展開した状態を示す肌側からの平面図である。
図3は、
図2の概略的なIII-III矢視断面図である。なお、各図は、紙おむつの構成部材の寸法の大小関係を規定するものではなく、各構成部材の寸法は、紙おむつの用途、使用対象とする着用者の年齢等に応じてそれぞれ広い範囲から適宜選択できる。
【0013】
本明細書において、紙おむつの着用とは、体液の吸収前、吸収時、及び吸収後を問わず、紙おむつを身体に装着した状態を意味する。また、「前側」とは、紙おむつを着用したときに着用者の腹側となる方向を意味し、「後側」とは、着用者の背側となる方向を意味する。また、「上側」とは、紙おむつを着用したときに着用者の頭側となる方向を意味し、「下側」とは、着用者の足側となる方向を意味する。また、左右方向は、前方を向いた状態の着用者から視た左右方向を意味する。また、紙おむつの各構成部材の長手方向とは、紙おむつを展開した状態(
図2に示す状態)における長手の方向(前後に沿った方向)をいい、
図2の矢印Xに沿った方向である。また、紙おむつの各構成部材の幅方向とは、紙おむつを展開した状態における長手方向と直交する方向(左右に沿った方向)をいい、
図2の矢印Yに沿った方向である。また、紙おむつの各構成部材の厚み方向とは、各構成部材を積層する方向をいい、
図3の矢印Zに沿った方向である。また、紙おむつの各構成部材の「肌側」とは、厚み方向のうち紙おむつを着用したときの着用者の身体に向かう方向をいい、「非肌側」とは、厚み方向のうち肌側とは反対の方向をいう。また、体液とは、尿や血液、軟便中の水分等の体内から体外に排出された液体をいう。
【0014】
[紙おむつ]
図1~
図3に示すように、本実施形態に係る紙おむつ10は、使用後に洗浄し分離してリサイクル可能な紙おむつであって、着用者の股間部の下方で前後方向に略帯状に延びて体液を吸収する吸収性本体20と、吸収性本体20を支持する外装体30と、紙おむつ10に伸縮性を付与する複数の弾性部材50と、を備える。外装体30は、着用した際に紙おむつ10の外形形状を構成する。なお、本実施形態では、紙おむつの一例として、パンツ型の紙おむつ10を説明するが、紙おむつはパンツ型に限定されるものではなく、例えば左右にファスニングテープ及びターゲットテープ等を設けたテープ止め型の紙おむつであってもよい。
【0015】
紙おむつ10に使用される複数の弾性部材50は、吸収性本体20に使用される弾性部材24bと、外装体30に使用される弾性部材35とを含む。弾性部材24b,35の詳細については、後述する。なお、紙おむつ10に使用される複数の弾性部材50は、本実施形態で説明する弾性部材24b,35に加えて、紙おむつ10に伸縮性を付与する他の弾性部材を含んでいてもよい。
【0016】
外装体30は、着用時に着用者の腹部の前方に位置する前側胴回り領域31と、着用者の背部の後方に位置する後側胴回り領域32と、着用者の股下に位置する股下領域33とを有する。吸収性本体20は、主として外装体30の股下領域33の内面側に配置されるが、その一部(前後の端部)が外装体30の前側胴回り領域31又は後側胴回り領域32にまで延在してもよい。
【0017】
[吸収性本体]
吸収性本体20は、肌側の液透過性のトップシート21と、非肌側の液不透過性のバックシート22と、トップシート21及びバックシート22の間に配置される吸収体23とを有する。更に、本実施形態の吸収性本体20は、立体ギャザー24を有する。吸収性本体20は、外装体30の主に股下領域33の肌側の面(以下、「肌側面」という。)に、前側胴回り領域31から後側胴回り領域32に向けて延びるように配置されている。吸収性本体20は、ホットメルト接着剤、熱融着、超音波接着等により、外装体30に固着されている。
【0018】
(トップシート)
トップシート21は、体液が吸収体23へと移動するような液透過性を備えた基材から形成されていればよい。基材の一例としては、例えば、サーマルボンド不織布等の不織布、サーマルボンド不織布/スパンボンド不織布を積層した複合不織布、開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム、あるいは、これらを積層した複合シートなどが挙げられる。トップシート21には、液透過性を向上させるために、表面にエンボス加工や穿孔加工を施してもよい。これらのエンボス加工や穿孔加工を施すための方法としては、公知の方法を制限なく実施することができる。また、肌への刺激を低減させるため、トップシート21には、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等を含有させてもよい。強度及び加工性の観点から、トップシート21の坪量は、例えば、下限値18g/m2以上であることが好ましく、上限値100g/m2以下であることが好ましい。トップシート21の形状は、特に制限されるものではないが、体液を漏れがないように吸収体23へと誘導するため、吸収体23を覆う形状であればよい。
【0019】
(バックシート)
バックシート22は、吸収体23が保持している体液の非肌側への漏れがないように液不透過性を備えた基材を用いて形成されていればよく、樹脂フィルムや、樹脂フィルムと不織布とを積層した複合シートといった材料から形成される。複合シートに用いられる不織布としては、製法を特に限定せず、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布等の複数の同種及び/又は異種の不織布を積層した複合不織布及びこれらの複合材料が挙げられる。また、樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンの複合フィルム等が挙げられる。
【0020】
バックシート22の坪量は、強度及び加工性の観点から、下限値15g/m2以上であることが好ましく、上限値40g/m2以下であることが好ましい。また、着用時の蒸れを防止するため、バックシート22には、通気性を持たせることが好ましい。バックシート22に通気性を備えさせるためには、例えば、基材の樹脂フィルムにフィラーを配合したり、バックシート22にエンボス加工を施したりすればよい。なお、フィラーとしては炭酸カルシウムを挙げることができ、その配合方法は、公知の方法を制限なく行うことができる。例えば、樹脂とフィラーとを混練し、得られた混練物をフィルム状に成形し、得られたフィルムからフィラーを除去することにより、多孔性(通気性)樹脂フィルムを得ることができる。
【0021】
(吸収体)
吸収体23は、体液吸収材料を含み、好ましくは、基材としての吸収性繊維と、吸収性繊維に保持された体液吸収材料と、を含む。
【0022】
吸収体23の基材としての吸収性繊維は、一般に生理用ナプキン、おむつ、尿取りパッド等の吸収性物品に使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、フラッフパルプ、コットン、レーヨン、アセテート、ティシュ、吸収紙、親水性不織布といった材料から形成される。また、吸収体23の吸収性繊維の坪量は、リサイクルの観点から、下限値100g/m2以上であることが好ましく、上限値500g/m2以下であることが好ましい。吸収体23の吸収性繊維の坪量が500g/m2よりも大きいと、吸収性繊維の分離処理に関する労力(時間、費用)大きくなってしまう可能性があるので、好ましくない。
【0023】
吸収体23の体液吸収材料としては、体液を吸収及び保持するものであれば特に限定されないが、例えば、高吸収性ポリマー(Super Absorbent Polymer(SAP))等が挙げられる。高吸収性ポリマーの坪量は、リサイクルの観点から、下限値30g/m2以上であることが好ましく、上限値300g/m2以下であることが好ましい。高吸収性ポリマーの坪量が300g/m2よりも大きいと、高吸収性ポリマーの分離処理に関する労力(時間、費用)大きくなってしまう可能性があるので、好ましくない。
【0024】
吸収体23は、吸収性繊維と高吸収性ポリマーとを含有するものが好ましく、その構成は、吸収性繊維中にSAP粒子を混合して形成したもの、吸収性繊維の起毛した部分の繊維間にSAP粒子を固着したSAPシート等が挙げられる。また、高吸収性ポリマーを繊維状に成形し、基材としての吸収性繊維に混合して用いてもよい。
【0025】
高吸収性ポリマーは、体液を吸収し、かつ、逆流を防止できるものである。紙おむつ10に使用される高吸収性ポリマーには、マテリアルリサイクルの観点から、デンプン系、セルロース系、アミノ酸系等の生分解性を有する高吸収性ポリマー(以下、「生分解性高吸収性ポリマー」という場合がある。)が含まれる。生分解性とは、物質が微生物などの生物の作用により分解する性質をいい、生物分解性といわれる場合もある。すなわち、生分解性高吸収性ポリマーは、土壌や水中の微生物により分解される性質を有する高吸収性ポリマーである。
【0026】
吸収体23に含まれる生分解性高吸収性ポリマーの総重量は、紙おむつ10に使用されている全ての高吸収性ポリマー(生分解性高吸収性ポリマーを含む)の総重量の下限値80%以上であることが好ましく、上限値100%以下であることが好ましく、100%であることが最も好ましい。すなわち、紙おむつ10に使用されている全ての高吸収性ポリマーの総重量に対する生分解性高吸収性ポリマーの総重量の割合は、下限値80%以上であることが好ましく、上限値100%以下であることが好ましく、100%であることが最も好ましい。吸収体23に含まれる生分解性高吸収性ポリマーの総重量を、上記範囲に設定することによって、リサイクル時に紙おむつ10を撹拌機で撹拌した際に排水に高吸収性ポリマーが残留する場合であっても、環境への影響を大きく抑えることができる。
【0027】
(立体ギャザー)
立体ギャザー24は、例えば、体液の横漏れ等を防止するために設けられる。本実施形態の立体ギャザー24は、立体ギャザーシート24aと、糸状の弾性部材(短尺弾性部材)24bと、を含む。立体ギャザーシート24aには、例えば各種不織布を使用できる。立体ギャザーシート24aは、幅方向の一端側がバックシート22の肌側面の幅方向の両端付近に長手方向に沿って固定され、幅方向の中間部分がトップシート21の肌側面の幅方向の両端付近に長手方向に沿って固定され、幅方向の他端側が自由端となっている。糸状の弾性部材24bには、例えば、天然ゴム、合成ゴム、ポリウレタン等の糸状の弾性部材を適宜使用することができる。糸状の弾性部材24bは、立体ギャザーシート24aの幅方向の他端(自由端)付近に長手方向に沿って配設され、立体ギャザーシート24aの他端(自由端)に伸縮性及び起立性を付与する。立体ギャザーシート24aの伸縮性及び起立性を有する他端は、着用者の体型に合わせて伸縮自在かつ変形可能である。
【0028】
立体ギャザー24に使用される糸状の弾性部材24bは、短尺弾性部材を含むことが好ましい。「短尺弾性部材」とは、非伸長状態での1本あたりの長さが100mm以上200mm以下の弾性部材を意味する。本実施形態では、立体ギャザー24に使用される糸状の弾性部材24bの全てが、短尺弾性部材である。すなわち、紙おむつ10に伸縮性を付与する複数の弾性部材50は、短尺弾性部材(弾性部材24b)を含む。例えば、本実施形態では、吸収性本体20を長手方向の略中央(
図2に二点鎖線Aで示す位置)を境とした2つの領域に長手方向に分け、当該2つの領域のそれぞれに弾性部材24bを設けることによって、非伸長状態での弾性部材24bの長さが200mmを超えないようにしている。この場合、上記2つの領域に亘って延びる長尺の弾性部材を立体ギャザーシート24aに接着した後、当該長尺の弾性部材を上記二点鎖線Aで示す位置で切断することによって、直列的に線状に並んだ複数の弾性部材(短尺弾性部材)24bを形成してもよい。このとき、立体ギャザーシート24aの切断を最小限に抑えることが好ましい。なお、本実施形態では、立体ギャザー24に使用される糸状の弾性部材24bの全てを短尺弾性部材としたが、これに限定されるものではなく、短尺弾性部材を含んでいればよい。
【0029】
なお、弾性部材24bの配置位置は、上述した長手方向の略中央(
図2に二点鎖線Aで示す位置)を境とした吸収性本体20の長手方向の両側の2つの領域に限定されるものではなく、非伸長状態での弾性部材24bの長さが100mm以上200mm以下となっていればよい。例えば、弾性部材(短尺弾性部材)24bを、立体ギャザー24を長手方向に3つ以上に分けた領域のそれぞれに配置してもよい。また、本実施形態では、吸収性本体20に立体ギャザー24を設けたが、これに限定されるものではなく、吸収性本体20に立体ギャザー24を設けなくてもよい。
【0030】
[外装体]
図1及び
図2に示すように、外装体30は、紙おむつ10の外形形状を構成する部材であって、不織布シート34と複数の糸状の弾性部材(短尺弾性部材)35を積層して形成される。なお、不織布シート34を複数枚積層してもよい。
【0031】
不織布シート34には、サーマルボンド不織布、エアスルー不織布、スパンボンド不織布等の不織布、好ましくはエアスルー不織布又はスパンボンド不織布であって、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂からなる不織布を用いることができる。
【0032】
上述したように外装体30は、着用時に着用者の腹部の前方に位置する前側胴回り領域31と、着用者の背部の後方に位置する後側胴回り領域32と、着用者の股下に位置する股下領域33とを有する。
【0033】
図2に示すように、展開した状態の外装体30は、左右対称の形状を有する。前側胴回り領域31及び後側胴回り領域32は、長手方向に互いに離間した位置に配置される。股下領域33は、前側胴回り領域31と後側胴回り領域32との間に配置される。前側胴回り領域31及び後側胴回り領域32は、長手方向に沿って延びるサイドシール部36を幅方向の両端部にそれぞれ有する。前側胴回り領域31の幅方向の両端部と後側胴回り領域32の幅方向の両端部とを、サイドシール部36によって互いに固定することによって、外装体30は、
図1に示すように、前側胴回り領域31の左右の両端部と後側胴回り領域32の左右の両端部とが連続し、全体としてパンツ状に構成される。なお、以下の説明では、外装体30についての方向は、着用者に着用された際の方向を示す。
【0034】
図1に示すように、外装体30は、前側胴回り領域31及び後側胴回り領域32の上部のウエスト開口部37と、股下領域33の左右両側の脚開口部38a,38bとを有する。ウエスト開口部37は、着用時に着用者の胴が挿通する部分であって、前側胴回り領域31及び後側胴回り領域32の双方の上端縁部によって構成される。ウエスト開口部37には、後述する弾性部材35aが設けられ、周方向に伸縮性を有する。左右の脚開口部38a,38bは、着用者の脚が挿通する部分であって、股下領域33の左右の両端縁部によって構成される。左右の脚開口部38a,38bには、後述する弾性部材35cが設けられ、周方向に伸縮性を有する。
【0035】
(モノマテリアル化)
紙おむつ10に使用される不織布やフィルムに用いられる樹脂については、プラスチック原料へのマテリアルリサイクルを容易にするために、樹脂の種類を少なくすることが好ましい。例えば、吸収性本体20のトップシート21、立体ギャザーシート24a、外装体30等に使用される不織布や、吸収性本体20のバックシート22等に使用されるフィルムに用いられる樹脂の種類を少なくすることが好ましい。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタン等の紙おむつ10に使用する樹脂の種類の合計を、4種類以下にすることが好ましく、3種類以下にすることがより好ましく、2種類以下にすることが更に好ましい。紙おむつ10に使用する樹脂の種類の合計を上記範囲に設定することによって、プラスチック分のマテリアルリサイクルの効率を向上させることができる。
【0036】
(弾性部材)
図1及び
図2に示すように、複数の弾性部材35は、前側胴回り領域31、後側胴回り領域32、股下領域33のそれぞれに配置され、不織布シート34に接合されている。不織布シート34と弾性部材35とは、各弾性部材35にのみ介在するホットメルト接着剤を介して互いに接着されることが好ましい。糸状の弾性部材35としては、例えば、天然ゴム、合成ゴム、ポリウレタン等の伸縮性を有する弾性部材を適宜使用することができ、その太さは、下限値500dtex以上であることが好ましく、上限値2000dtex以下であることが好ましい。前側胴回り領域31、後側胴回り領域32、及び股下領域33に使用される弾性部材35は、短尺弾性部材を含むことが好ましい。本実施形態では、前側胴回り領域31、後側胴回り領域32、及び股下領域33に使用される複数の弾性部材35の全てが、短尺弾性部材である。すなわち、紙おむつ10に伸縮性を付与する複数の弾性部材50は、短尺弾性部材(弾性部材35)を含むことが好ましい。なお、本実施形態では、前側胴回り領域31、後側胴回り領域32、及び股下領域33に使用される複数の弾性部材35の全てを短尺弾性部材としたが、これに限定されるものではなく、短尺弾性部材を含んでいればよい。
【0037】
複数の弾性部材35のうち、前側胴回り領域31及び後側胴回り領域32の上端部に設けられる複数の弾性部材35aは、着用者の胴回りの周方向に伸縮性を付与する。複数の弾性部材35aは、ウエスト開口部37の近傍でウエスト開口部37の周方向に延びる帯状の第1伸縮領域39を構成する。第1伸縮領域39は、ウエスト開口部37を周方向に伸縮可能とする。第1伸縮領域39の複数の弾性部材35aは、上下に互いに離間して複数段配置される。本実施形態では、前側胴回り領域31及び後側胴回り領域32を、幅方向の中央(
図2に二点鎖線Bで示す位置)を境とした2つの領域に幅方向に分け、当該2つの領域のそれぞれに弾性部材35aを設けることによって、非伸長状態での弾性部材35aの長さが200mmを超えないようにしている。この場合、上記2つの領域に亘って幅方向に延びる長尺の弾性部材を不織布シート34に接着した後、当該長尺の弾性部材を上記二点鎖線Bで示す位置で切断することによって、直列的に線状に並んだ複数の弾性部材(短尺弾性部材)35aを形成してもよい。このとき、不織布シート34の切断を最小限に抑えることが好ましい。
【0038】
複数の弾性部材35のうちの複数の弾性部材35bは、前側胴回り領域31及び後側胴回り領域32の第1伸縮領域39から下方へ離間した位置に設けられ、着用者の胴回りの周方向に伸縮性を付与する。複数の弾性部材35bは、前側胴回り領域31及び後側胴回り領域32で幅方向に延びる帯状の第2伸縮領域40を構成する。第2伸縮領域40は、前側胴回り領域31及び後側胴回り領域32を周方向に伸縮可能とする。第2伸縮領域40の複数の弾性部材35bは、上下に互いに離間して複数段配置される。本実施形態では、前側胴回り領域31及び後側胴回り領域32を所定の位置(
図2に二点鎖線Cで示す位置)を境とした3つの領域に幅方向に分け、当該3つの領域に弾性部材35bをそれぞれ設けることによって、非伸長状態での弾性部材35bの長さが200mmを超えないようにしている。この場合、上記3つの領域に亘って幅方向に延びる長尺の弾性部材を不織布シート34に接着した後、当該長尺の弾性部材を上記二点鎖線Cで示す位置で切断することによって、直列的に線状に並んだ複数の弾性部材(短尺弾性部材)35bを形成してもよい。このとき、不織布シート34の切断を最小限に抑えることが好ましい。
【0039】
複数の弾性部材35のうち、股下領域33の左右の脚開口部38a,38bの周囲に設けられる複数の弾性部材35cは、左右の脚開口部38a,38bの周方向に伸縮性を付与する。本実施形態では、複数の弾性部材35cは、前側で幅方向に延びる第3伸縮領域41と後側で幅方向に延びる第4伸縮領域42とを構成する。左右の脚開口部38a,38bは、第3伸縮領域41及び第4伸縮領域42によって周方向に伸縮可能となっている。
【0040】
第3伸縮領域41は、左側領域41a(
図2に示す二点鎖線Dよりも幅方向の外側の領域)と、中央領域41b(
図2に示す二点鎖線Dと二点鎖線Eとの間の領域)と、右側領域41c(
図2に示す二点鎖線Eよりも幅方向の外側の領域)とを有する。左側領域41aは、前側胴回り領域31の左側の下端部から左側の脚開口部38aに沿って下方へ延びる。中央領域41bは、左側領域41aの下端から股下領域33を左側から右側へ横断する。右側領域41cは、中央領域41bの右端から右側の脚開口部38bに沿って上方へ延びて前側胴回り領域31の右側の下端部へ連続する。第3伸縮領域41の複数の弾性部材35cは、上下に互いに離間して複数段配置される。本実施形態では、第3伸縮領域41を、左側領域41aと、右側領域41cと、中央領域41bの幅方向の中央(
図2に二点鎖線Fで示す位置)を境とした左右の両側の領域との計4つの領域に分け、当該4つの領域のそれぞれに弾性部材35cを設けることによって、非伸長状態での弾性部材35cの長さが200mmを超えないようにしている。この場合、上記4つの領域に亘って延びる長尺の弾性部材を不織布シート34に接着した後、当該長尺の弾性部材を上記二点鎖線D,E,Fで示す位置で切断することによって、直列的に線状に並んだ複数の弾性部材(短尺弾性部材)35cを形成してもよい。このとき、不織布シート34の切断を最小限に抑えることが好ましい。
【0041】
第4伸縮領域42は、左側領域42a(
図2に示す二点鎖線Dよりも幅方向の外側の領域)と、中央領域42b(
図2に示す二点鎖線Dと二点鎖線Eとの間の領域)と、右側領域42c(
図2に示す二点鎖線Eよりも幅方向の外側の領域)とを有する。左側領域42aは、後側胴回り領域32の左側の下端部から左側の脚開口部38aに沿って下方へ延びる。中央領域42bは、左側領域42aの下端から股下領域33を左側から右側へ横断する。右側領域42cは、中央領域42bの右端から右側の脚開口部38bに沿って上方へ延びて後側胴回り領域32の右側の下端部へ連続する。第4伸縮領域42の複数の弾性部材35cは、上下に互いに離間して複数段配置される。本実施形態では、第4伸縮領域42を、左側領域42aと、右側領域42cと、中央領域42bの幅方向の中央(
図2に二点鎖線Fで示す位置)を境とした左右の両側の領域との計4つの領域に分け、当該4つの領域のそれぞれに弾性部材35cを設けることによって、非伸長状態での弾性部材35cの長さが200mmを超えないようにしている。この場合、上記4つの領域に亘って延びる長尺の弾性部材を不織布シート34に接着した後、当該長尺の弾性部材を上記二点鎖線D,E,Fで示す位置で切断することによって、直列的に線状に並んだ複数の弾性部材(短尺弾性部材)35cを形成してもよい。このとき、不織布シート34の切断を最小限に抑えることが好ましい。
【0042】
なお、本実施形態では、股下領域33を横断して幅方向に延びる第3伸縮領域41及び第4伸縮領域42を設けたが、これに限定されるものではなく、例えば、股下領域33を横断することなく左右の脚開口部38a,38bの縁部に沿って延びる左右の伸縮領域を設けてもよい。
【0043】
また、本実施形態では、外装体30に4つの伸縮領域(第1伸縮領域39~第4伸縮領域42)を設けたが、その数及び位置はこれに限定されるものではなく、紙おむつ10に所望の方向及び強さの伸縮性を付与可能な伸縮領域であればよい。
【0044】
また、本実施形態では、4つの伸縮領域(第1伸縮領域39~第4伸縮領域42)を、所定の位置(
図2に二点鎖線B~Fで示す位置)で分け、分けられた各領域に弾性部材35をそれぞれ配置したが、伸縮領域を分ける位置は上記位置に限定されるものではなく、非伸長状態での弾性部材35の長さが200mmを超えないように配置可能であればよい。
【0045】
短尺弾性部材(弾性部材24b,35)によって形成される弾性部材の列同士の間隔が10mm以内である場合には、各列の短尺弾性部材の分割部分の位置を、互いに幅方向に20mm以上ズラして配置することが好ましい。なお、弾性部材の列とは、短尺弾性部材が直列的に線状に並んでいる部分を意味する。
【0046】
長尺の弾性部材をシート(立体ギャザーシート24a及び不織布シート34を含む)に接着した後、当該長尺の弾性部材を所定の位置で切断することによって、直列的に線状に並んだ複数の短尺弾性部材(弾性部材24b,35)を形成する場合には、切断した箇所から弾性部材の抜けないように、シート又は長尺の弾性部材に塗工するホットメルト接着剤を、隙間のないように塗工することが好ましい。
【0047】
紙おむつ10に伸縮性を付与する複数の弾性部材50の全ては、短尺弾性部材であることが好ましい。更に、紙おむつ10に使用される短尺弾性部材(弾性部材24b,35)の合計重量は、紙おむつ10の総重量の下限値1%以上であることが好ましく、上限値5%以下であることが好ましい。すなわち、紙おむつ10の重量に対する短尺弾性部材(弾性部材24b,35)の合計重量の割合は、下限値1%以上であることが好ましく、上限値5%以下であることが好ましい。紙おむつ10に使用される弾性部材50の全てを短尺弾性部材とし、紙おむつ10の総重量に対する短尺弾性部材(弾性部材24b,35)の合計重量の割合を、1%以上5%以下にすることによって、リサイクルの工程で撹拌機や排水ポンプ等(以下、「撹拌機等」という。)への弾性部材の絡み付きを大きく減少させることができるとともに、吸収性繊維等の回収物への異物としての弾性部材の混入を減少させることができる。
【0048】
(ホットメルト接着剤)
紙おむつ10には、上記各種の構成材料を接着するためにホットメルト接着剤が使用される。紙おむつ10に使用されるホットメルト接着剤としては、例えば、SBC(スチレン系ブロック共重合体)系ホットメルト接着剤、EVA(エチレン酢酸ビニル)系ホットメルト接着剤、オレフィン系ホットメルト接着剤等が挙げられる。ホットメルト接着剤の塗布方法としては、ノズルから溶融状態のホットメルト接着剤を非接触式で塗布するカーテンコート法やスパイラル法、接触式で塗布するスロット法等、公知の方法が利用できる。
【0049】
紙おむつ10に使用されるホットメルト接着剤は、軟化点が60℃以上90℃以下であるホットメルト接着剤(以下、「低軟化点ホットメルト接着剤」という。)を含むことが好ましい。低軟化点ホットメルト接着剤の総重量は、紙おむつ10に使用されている全てのホットメルト接着剤(低軟化点ホットメルト接着剤を含む)の総重量の下限値70%以上であることが好ましく、上限値100%以下であることが好ましい。すなわち、紙おむつ10に使用されている全てのホットメルト接着剤の総重量に対する低軟化点ホットメルト接着剤の総重量の割合は、下限値70%以上であることが好ましく、上限値100%以下であることが好ましい。低軟化点ホットメルト接着剤の総重量を、上記範囲に設定することによって、温水中で構成材料同士が剥がれ易くなり、構成材料同士の分離が容易になるので、使用後の紙おむつ10を効率的にマテリアルリサイクルすることができる。なお、接着剤の軟化点とは、接着剤を加熱溶融させるときに接着剤が固体から液体に変わる境界温度域を意味する。ホットメルト接着剤の軟化点は、例えばJISK2351に基づく環球法で測定することができる。
【0050】
(リサイクル処理)
次に、使用済みの紙おむつ10のリサイクル処理について説明する。
図4は、リサイクル処理に使用する回転式ドラム装置の説明図である。
【0051】
本実施形態の使用済みの紙おむつ10のリサイクル処理は、撹拌機、例えば、回転式ドラム装置100を使用して行う。この回転式ドラム装置100は、尿取りパッドなど、合成樹脂製フィルム部分と、該フィルム部分に取り付けられた吸液性部分とを有した各種の衛生用品に適用可能である。
【0052】
図4に示すように、回転式ドラム装置100は、ケーシング101内に配置された水槽部としての円筒形の水槽102と、水槽102内に配置された回転ドラム103と、回転ドラム103を回転させるためのモータ104等を有する。回転ドラム103の周面には、多数の小孔が設けられている。回転ドラム103の内周面に、各種袋を破るための刃を設置してもよい。
【0053】
ケーシング101の一端面に開口105が設けられ、開閉式の扉106が取り付けられている。水槽102及び回転ドラム103は、筒軸心方向を水平方向(又は開口105側ほど高位となる斜め方向)として配置されている。
【0054】
水槽102及びモータ104は、支持部材(図示略)によってケーシング101に支持されている。回転ドラム103は軸107によってモータ104に連結されている。軸107は軸受(図示略)によって水槽102に支持されている。
【0055】
水槽102の天部には、水道水等の清浄水を供給するための給水管108が接続されている。水槽102の底部には排水ピット109が設けられており、排水ピット109に排水管110が接続されている。排水管110に排水バルブ111及び排水ポンプ112が設けられている。排水バルブ111を閉とすることにより、水槽102内に水を溜めることができ、開とすることにより水槽102内から排水することができる。
【0056】
この回転式ドラム装置100を用いて使用済みの紙おむつ10を処理する場合、扉106を開け、使用済みの紙おむつ10と処理用薬品を回転ドラム103内に投入した後、扉106を閉める。給水管108から所定量の水を水槽102内に供給した後、モータ104によって回転ドラム103を回転させる。回転開始後、蒸気を注入して水温を80℃まで昇温し、回転混合処理を行う。これにより、使用済みの紙おむつ10の処理が行われる。なお、モータ104は一方向にのみ回転されてもよく、往復(正逆)回転されてもよい。
【0057】
所定時間(例えば0.01時間~5時間、特に0.08時間~2時間)経過して処理が十分に行われた後、排水バルブ111を開けて排水する。この際、モータ104により回転ドラム103を高速回転させ、遠心力により脱水してもよい。
【0058】
その後、必要に応じ給水管108から水槽102内に注水し、回転ドラム103内の残留物をすすいでもよい。このすすぎは、注水すすぎであってもよく、溜めすすぎであってもよい。
【0059】
すすぎ終了後、扉106を開けて内容物を取り出し、次の処理工程に送る。
【0060】
なお、回転ドラム式洗濯機のように、温風による乾燥機構を設けてもよく、この場合、すすぎ後に内容物を乾燥させることができる。また、温風の温度を高くし、内容物を加熱殺菌するようにしてもよい。
【0061】
このように、本実施形態に係る紙おむつ10をリサイクル処理する場合、使用済みの紙おむつ10と、水分吸収剤を処理する薬品と、水とを回転式ドラム装置100に投入し、使用済みの紙おむつ10を殺菌・分解・分離処理する。
【0062】
水分吸収剤を処理する薬品は、紙おむつ10に含まれる高吸収性ポリマー(SAP)から水分を排出(脱水)させる成分を含む。この成分は、カチオン(ナトリウム、カルシウム、マグネシウム)、有機酸(クエン酸、シュウ酸)、無機酸(硝酸、硫酸、塩酸)を含むことが好ましい。カルシウム源としては、消石灰、塩化カルシウム等を使用できる。また、薬品は、殺菌を行うために、殺菌剤成分を含んでいても良い。殺菌剤成分に特に制限はないが、安価なものとしては次亜塩素酸カルシウム(さらし粉)などがある。
【0063】
上記のように構成された紙おむつ10では、吸収体は、生分解性の高吸収性ポリマーである生分解性高吸収性ポリマーを含む。このように、紙おむつ10に使用される高吸収性ポリマーには、マテリアルリサイクルの観点から、デンプン系、セルロース系、アミノ酸系等の生分解性を有する生分解性高吸収性ポリマーが含まれる。生分解性高吸収性ポリマーは、土壌や水中の微生物により分解される性質を有するので、仮に撹拌機で撹拌後の排水に高吸収性ポリマーが残留する場合であっても、環境への影響を抑えることができる。
【0064】
また、吸収体23に含まれる生分解性高吸収性ポリマーの総重量を、紙おむつ10に使用されている全ての高吸収性ポリマー(生分解性高吸収性ポリマーを含む)の総重量の80%以上100%以下の範囲に設定することによって、リサイクル時に紙おむつ10を撹拌機で撹拌した際に排水に高吸収性ポリマーが残留する場合であっても、環境への影響を大きく抑えることができる。
【0065】
したがって、本実施形態によれば、環境への悪影響を抑えることができ、使用後にマテリアルリサイクルすることが可能な紙おむつ10を提供することができる。
【0066】
また、吸収体23の吸収性繊維の坪量を、100g/m2以上500g/m2以下の範囲に設定することによって、吸収性繊維の分離処理に関する労力(時間、費用)を抑えることができる。
【0067】
また、吸収体23の高吸収性ポリマーの坪量を、30g/m2以上300g/m2以下の範囲に設定することによって、吸収性繊維の分離処理に関する労力(時間、費用)を抑えることができる。
【0068】
また、紙おむつ10に使用される弾性部材24b,35を、非伸長状態での1本あたりの長さが200mm以下の短尺弾性部材にすることによって、撹拌機を用いて水中で使用済みの紙おむつ10を撹拌する際に、弾性部材24b,35が撹拌機等(例えば、回転式ドラム装置100や排水ポンプ112等)に絡み難い。これにより、絡みついた弾性材料を撹拌機等から除去するために撹拌機等を停止する回数を抑えることができ、作業性が向上する。
【0069】
また、紙おむつ10の上記各種の構成材料を接着するために使用されるホットメルト接着剤に、軟化点が60℃以上90℃以下の低軟化点ホットメルト接着剤を含めることによって、温水中で構成材料同士が剥がれ易くなるので、撹拌機を用いた構成材料同士の分離が容易になり、使用後の紙おむつ10を効率的にマテリアルリサイクルすることができる。
【0070】
以上、本発明について、上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではなく、当然に本発明を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【実施例0071】
実施例1、2及び比較例1、2の紙おむつ(パンツ型紙おむつ(Lサイズ))を、回転式ドラム装置(撹拌機)を用いてリサイクル処理し、処理時に排出される排水について、排水処理時(活性汚泥での処理)の評価を行った。
【0072】
回転式ドラム装置(撹拌機)は、以下のような構成とした。
水槽の直径:180cm
水槽の長さ:120cm
回転ドラムの直径:160cm
回転ドラムの長さ:110cm
回転ドラムの小孔の直径:0.7cm
槽及び回転ドラムの軸心方向:水平方向
【0073】
リサイクル処理の処理手順としては、先ず、回転式ドラム装置の回転ドラム内に紙おむつと薬品(消石灰:15000g、次亜塩素酸カルシウム:800g)とを投入した後、水道水を800L注水して溜める。そして、回転ドラムを30rpmにて回転させ、かつ120秒毎に回転方向を切り替える。回転開始後、蒸気を注入して水温を80℃まで昇温し、回転混合処理を行う。0.5時間後、回転ドラムを停止し、排水した後、回転ドラムを300rpmで4min回転させて脱水する。回転ドラムを停止した後、水道水800Lを注水して溜めすすぎ(15分)を行い、その後、上記と同様にして排水及び脱水を行う。
【0074】
リサイクル処理時の排水は、パルプ、吸収剤を高濃度に含んでおり、スクリーン、脱水機、等でパルプの除去を行う。パルプは、繊維長が長い物が多く使われているため、スクリーン、脱水機での除去率が高い。一方、吸収剤は、非常に小さな粒子となっているため、パルプ除去後の排水にも混入し易い。
【0075】
リサイクル時の排水の水質例を表1に示す。
【0076】
【0077】
上記排水について、分解性と環境への影響を確認するため、活性汚泥を用いた試験装置への通水を行った。
【0078】
容量10Lの曝気槽に、BOD容積負荷として0.2gBOD/L/dを目標としてリサイクル処理時の排水を通水した。BOD濃度400mg/Lの場合には、5L/dの通水となる。汚泥滞留時間(Sludge Retention Time:SRTは20~30日に設定し、SS成分の残留影響について確認した。
【0079】
いずれの試験系列でも、BOD成分の分解、硝化反応には差が出ず、水処理としては十分な処理が実施できた。
【0080】
実施例1(生分解性吸収剤90%)、実施例2(生分解性吸収剤100%)からの排水を通水した場合には、汚泥濃度は、通常の活性汚泥の適正範囲と言われている、2000~3000mg/Lを維持できた。
【0081】
実施例1では、曝気槽内で吸水性を回復し、ゲル化した吸収剤の量が実施例2よりも若干多かった。
【0082】
比較例1、2では、汚泥濃度は実施例よりも高い濃度となり(3000~5000mg/L)、沈降性不良を引き起こす場合もあった。生物分解性が無い吸収剤が蓄積したことによる影響と考えられた。また、ゲル化した吸収剤が実施例1、2よりも多く、沈殿槽での脱窒による浮上、等の運転上のトラブルが発生した。
【0083】
排水が下水道等の処理設備、あるいは環境中に排出された場合の影響を考えると、生物分解性のある吸収剤の割合が高いほど非分解性化合物の残留による影響が少なく、設備や環境に対してやさしいといえる。
【0084】
得られた結果を表2に示す。
【0085】
【0086】
なお、「処理安定性」の評価基準は以下のとおりである。
◎:運転上問題なし
○:運転上問題ないが、汚泥中にゲル状物質を確認
△:汚泥濃度上昇、運転トラブル発生
×:汚泥濃度上昇、運転トラブル発生(多)
【0087】
以上より、本発明の紙おむつは、環境への悪影響を抑えることができ、使用後にマテリアルリサイクル可能であることが確認された。