(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130804
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】プラズマ処理方法及びプラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20240920BHJP
H05H 1/46 20060101ALN20240920BHJP
【FI】
H01L21/302 105A
H01L21/302 101B
H05H1/46 M
H05H1/46 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040709
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126480
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100140431
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100135677
【弁理士】
【氏名又は名称】澤井 光一
(74)【代理人】
【識別番号】100131598
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 和宗
(72)【発明者】
【氏名】王 湯貴
【テーマコード(参考)】
2G084
5F004
【Fターム(参考)】
2G084AA02
2G084BB11
2G084CC12
2G084CC13
2G084CC15
2G084CC16
2G084CC17
2G084CC33
2G084DD23
2G084DD24
2G084DD38
2G084FF15
5F004AA09
5F004BA09
5F004BB12
5F004BB13
5F004BB22
5F004BB23
5F004BB25
5F004BB26
5F004BB28
5F004CA03
5F004CA06
5F004CA08
5F004DB03
5F004DB07
5F004EA03
5F004EA28
5F004EB05
(57)【要約】
【課題】エッチング処理において閉塞を抑制する技術を提供する。
【解決手段】本開示に係るプラズマ処理方法は、プラズマ処理チャンバを備えるプラズマ処理装置において実行されるプラズマ処理方法であって、(a)プラズマ処理チャンバ内に基板を配置する工程と、(b)第1の周波数を有する第1のRF信号によってプラズマ処理チャンバ内にプラズマを形成する工程と、(c)第1のRF信号及び第1の周波数よりも低い第2の周波数を有する第2のRF信号によって基板上に形成された堆積物を改質する工程と、(d)第1のRF信号によってプラズマ処理チャンバ内にプラズマを形成し、第2の周波数よりも低い第3の周波数を有する第3のRF信号によってプラズマ中に形成された活性種を基板に引き込む工程であって、第3の周波数は1MHz未満である、工程と、(e)(d)の工程の後に、工程(d)において形成されたプラズマ中の活性種を第3のRF信号によって基板に引き込む工程と、を含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理チャンバを備えるプラズマ処理装置において実行されるプラズマ処理方法であって、
(a)前記プラズマ処理チャンバ内に基板を配置する工程と、
(b)第1の周波数を有する第1のRF信号によって前記プラズマ処理チャンバ内にプラズマを形成する工程と、
(c)前記第1のRF信号及び前記第1の周波数よりも低い第2の周波数を有する第2のRF信号によって前記基板上に形成された堆積物を改質する工程と、
(d)前記第1のRF信号によって前記プラズマ処理チャンバ内にプラズマを形成し、前記第2の周波数よりも低い第3の周波数を有する第3のRF信号によって当該プラズマ中に形成された活性種を前記基板に引き込む工程であって、前記第3の周波数は1MHz未満である、工程と、
(e)前記の(d)の工程の後に、前記(d)の工程において形成されたプラズマ中の活性種を前記第3のRF信号によって前記基板に引き込む工程と、
を含む、プラズマ処理方法。
【請求項2】
前記(b)の工程において、前記第1のRF信号の電力レベルは第1の電力レベルであり、
前記(c)の工程において、前記第1のRF信号の電力レベルは、前記第1の電力レベルよりも低い第2の電力レベルである、請求項1に記載のプラズマ処理方法。
【請求項3】
前記(d)の工程において、前記第1のRF信号の電力レベルは、前記第1の電力レベルと前記第2の電力レベルの間の第3の電力レベルである、請求項2に記載のプラズマ処理方法。
【請求項4】
前記(c)の工程において、前記第2のRF信号の電力レベルは、前記第1のRF信号の電力レベルよりも高い、請求項1に記載のプラズマ処理方法。
【請求項5】
前記(d)の工程において、前記3のRF信号の電力レベルは、前記(c)の工程における前記第2のRF信号の電力レベルよりも低い、請求項1に記載のプラズマ処理方法。
【請求項6】
前記(d)の工程が実行される期間は、前記(b)の工程が実行される期間よりも長い、請求項1に記載のプラズマ処理方法。
【請求項7】
前記(d)の工程が実行される期間は、前記(c)の工程が実行される期間よりも長い、請求項1に記載のプラズマ処理方法。
【請求項8】
前記(d)の工程が実行される期間は、前記(e)の工程が実行される期間よりも長い、請求項1に記載のプラズマ処理方法。
【請求項9】
前記プラズマ処理装置は、前記プラズマ処理チャンバ内に配置された上部電極及び下部電極を備え、
前記第1のRF信号は前記上部電極に供給され、
前記第2のRF信号及び前記第3のRF信号は前記下部電極に供給される、請求項1に記載のプラズマ処理方法。
【請求項10】
前記(b)の工程から前記(e)の工程が複数回繰り返される、請求項1に記載のプラズマ処理方法。
【請求項11】
プラズマ処理チャンバ及び制御部を備えるプラズマ処理装置であって、
前記制御部は、
(a)前記プラズマ処理チャンバ内に基板を配置する制御と、
(b)第1の周波数を有する第1のRF信号によって前記プラズマ処理チャンバ内にプラズマを形成する制御と、
(c)前記第1のRF信号及び前記第1の周波数よりも低い第2の周波数を有する第2のRF信号によって前記基板上に形成された堆積物を改質する制御と、
(d)前記第1のRF信号によって前記プラズマ処理チャンバ内にプラズマを形成し、前記第2の周波数よりも低い第3の周波数を有する第3のRF信号によって当該プラズマ中に形成された活性種を前記基板に引き込む制御であって、前記第3の周波数は1MHz未満である、制御と、
(e)前記(d)の制御の後に、前記(d)の制御において形成されたプラズマ中の活性種を前記第3のRF信号によって前記基板に引き込む制御と、
を実行するように構成された、プラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の例示的実施形態は、プラズマ処理方法及びプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板処理に用いられる、RF電力を供給する技術として、特許文献1に記載されたRF電力供給方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2017/0099722号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、エッチング処理において閉塞を抑制する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一つの例示的実施形態において、プラズマ処理方法が提供される。プラズマ処理方法は、プラズマ処理チャンバを備えるプラズマ処理装置において実行されるプラズマ処理方法であって、(a)プラズマ処理チャンバ内に基板を配置する工程と、(b)第1の周波数を有する第1のRF信号によってプラズマ処理チャンバ内にプラズマを形成する工程と、(c)第1のRF信号及び第1の周波数よりも低い第2の周波数を有する第2のRF信号によって基板上に形成された堆積物を改質する工程と、(d)第1のRF信号によってプラズマ処理チャンバ内にプラズマを形成し、第2の周波数よりも低い第3の周波数を有する第3のRF信号によってプラズマ中に形成された活性種を基板に引き込む工程であって、第3の周波数は1MHz未満である、工程と、(e)(d)の工程の後に、(d)の工程において形成されたプラズマ中の活性種を第3のRF信号によって基板に引き込む工程と、を含む。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一つの例示的実施形態によれば、エッチング処理において閉塞を抑制する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】プラズマ処理システムの構成例を説明するための図である。
【
図2】容量結合型のプラズマ処理装置の構成例を説明するための図である。
【
図3】本処理方法の一例を示すフローチャートである。
【
図4】工程ST1で提供される基板Wの断面構造の一例を示す図である。
【
図5】本処理方法におけるRF1、RF2及びRF3のタイミングチャートの一例である。
【
図6】工程ST31における基板W及び活性種RDの状態を模式的に示す図である。
【
図7】工程ST32における基板W及び活性種RDの状態を模式的に示す図である。
【
図8】工程ST33における基板W及び活性種RDの状態を模式的に示す図である。
【
図9】工程ST34における基板W及び活性種RDの状態を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の各実施形態について説明する。
【0009】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理方法が提供される。プラズマ処理方法は、プラズマ処理チャンバを備えるプラズマ処理装置において実行されるプラズマ処理方法であって、(a)プラズマ処理チャンバ内に基板を配置する工程と、(b)第1の周波数を有する第1のRF信号によってプラズマ処理チャンバ内にプラズマを形成する工程と、(c)第1のRF信号及び第1の周波数よりも低い第2の周波数を有する第2のRF信号によって基板上に形成された堆積物を改質する工程と、(d)第1のRF信号によってプラズマ処理チャンバ内にプラズマを形成し、第2の周波数よりも低い第3の周波数を有する第3のRF信号によってプラズマ中に形成された活性種を基板に引き込む工程であって、第3の周波数は1MHz未満である、工程と、(e)(d)の工程の後に、(d)の工程において形成されたプラズマ中の活性種を第3のRF信号によって基板に引き込む工程と、を含む。
【0010】
一つの例示的実施形態において、(b)の工程において、第1のRF信号の電力レベルは第1の電力レベルであり、(c)の工程において、第1のRF信号の電力レベルは、第1の電力レベルよりも低い第2の電力レベルである。
【0011】
一つの例示的実施形態において、(d)の工程において、第1のRF信号の電力レベルは、第1の電力レベルと第2の電力レベルの間の第3の電力レベルである。
【0012】
一つの例示的実施形態において、(c)の工程において、第2のRF信号の電力レベルは、第1のRF信号の電力レベルよりも高い。
【0013】
一つの例示的実施形態において、(d)の工程において、3のRF信号の電力レベルは、(c)の工程における第2のRF信号の電力レベルよりも低い。
【0014】
一つの例示的実施形態において、(d)の工程が実行される期間は、(b)の工程が実行される期間よりも長い。
【0015】
一つの例示的実施形態において、(d)の工程が実行される期間は、(c)の工程が実行される期間よりも長い。
【0016】
一つの例示的実施形態において、(d)の工程が実行される期間は、(e)の工程が実行される期間よりも長い。
【0017】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理装置は、プラズマ処理チャンバ内に配置された上部電極及び下部電極を備え、第1のRF信号は上部電極に供給され、第2のRF信号及び第3のRF信号は下部電極に供給される。
【0018】
一つの例示的実施形態において、(b)の工程から(e)の工程が複数回繰り返される。
【0019】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理装置が提供される。プラズマ処理装置は、プラズマ処理チャンバ及び制御部を備えるプラズマ処理装置であって、制御部は、(a)プラズマ処理チャンバ内に基板を配置する制御と、(b)第1の周波数を有する第1のRF信号によってプラズマ処理チャンバ内にプラズマを形成する制御と、(c)第1のRF信号及び第1の周波数よりも低い第2の周波数を有する第2のRF信号によって基板上に形成された堆積物を改質する制御と、(d)第1のRF信号によってプラズマ処理チャンバ内にプラズマを形成し、第2の周波数よりも低い第3の周波数を有する第3のRF信号によってプラズマ中に形成された活性種を基板に引き込む制御であって、第3の周波数は1MHz未満である、制御と、(e)(d)の制御の後に、(d)の制御において形成されたプラズマ中の活性種を第3のRF信号によって基板に引き込む制御と、を実行するように構成される。
【0020】
以下、図面を参照して、本開示の各実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一または同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づいて上下左右等の位置関係を説明する。図面の寸法比率は実際の比率を示すものではなく、また、実際の比率は図示の比率に限られるものではない。
【0021】
図1は、プラズマ処理システムの構成例を説明するための図である。一実施形態において、プラズマ処理システムは、プラズマ処理装置1及び制御部2を含む。プラズマ処理システムは、基板処理システムの一例であり、プラズマ処理装置1は、基板処理装置の一例である。プラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、基板支持部11及びプラズマ生成部12を含む。プラズマ処理チャンバ10は、プラズマ処理空間を有する。また、プラズマ処理チャンバ10は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間に供給するための少なくとも1つのガス供給口と、プラズマ処理空間からガスを排出するための少なくとも1つのガス排出口とを有する。ガス供給口は、後述するガス供給部20に接続され、ガス排出口は、後述する排気システム40に接続される。基板支持部11は、プラズマ処理空間内に配置され、基板を支持するための基板支持面を有する。
【0022】
プラズマ生成部12は、プラズマ処理空間内に供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマを生成するように構成される。プラズマ処理空間において形成されるプラズマは、容量結合プラズマ(CCP;Capacitively Coupled Plasma)、誘導結合プラズマ(ICP;Inductively Coupled Plasma)、ECRプラズマ(Electron-Cyclotron-resonance plasma)、ヘリコン波励起プラズマ(HWP:Helicon Wave Plasma)、又は、表面波プラズマ(SWP:Surface Wave Plasma)等であってもよい。また、AC(Alternating Current)プラズマ生成部及びDC(Direct Current)プラズマ生成部を含む、種々のタイプのプラズマ生成部が用いられてもよい。一実施形態において、ACプラズマ生成部で用いられるAC信号(AC電力)は、100kHz~10GHzの範囲内の周波数を有する。従って、AC信号は、RF(Radio Frequency)信号及びマイクロ波信号を含む。一実施形態において、RF信号は、 100kHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。
【0023】
制御部2は、本開示において述べられる種々の工程をプラズマ処理装置1に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御部2は、ここで述べられる種々の工程を実行するようにプラズマ処理装置1の各要素を制御するように構成され得る。一実施形態において、制御部2の一部又は全てがプラズマ処理装置1に含まれてもよい。制御部2は、処理部2a1、記憶部2a2及び通信インターフェース2a3を含んでもよい。制御部2は、例えばコンピュータ2aにより実現される。処理部2a1は、記憶部2a2からプログラムを読み出し、読み出されたプログラムを実行することにより種々の制御動作を行うように構成され得る。このプログラムは、予め記憶部2a2に格納されていてもよく、必要なときに、媒体を介して取得されてもよい。取得されたプログラムは、記憶部2a2に格納され、処理部2a1によって記憶部2a2から読み出されて実行される。媒体は、コンピュータ2aに読み取り可能な種々の記憶媒体であってもよく、通信インターフェース2a3に接続されている通信回線であってもよい。処理部2a1は、CPU(Central Processing Unit)であってもよい。記憶部2a2は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。通信インターフェース2a3は、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介してプラズマ処理装置1との間で通信してもよい。
【0024】
以下に、プラズマ処理装置1の一例としての容量結合型のプラズマ処理装置の構成例について説明する。
図2は、容量結合型のプラズマ処理装置の構成例を説明するための図である。
【0025】
容量結合型のプラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、ガス供給部20、電源30及び排気システム40を含む。また、プラズマ処理装置1は、基板支持部11及びガス導入部を含む。ガス導入部は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理チャンバ10内に導入するように構成される。ガス導入部は、シャワーヘッド13を含む。基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10内に配置される。シャワーヘッド13は、基板支持部11の上方に配置される。一実施形態において、シャワーヘッド13は、プラズマ処理チャンバ10の天部(ceiling)の少なくとも一部を構成する。プラズマ処理チャンバ10は、シャワーヘッド13、プラズマ処理チャンバ10の側壁10a及び基板支持部11により規定されたプラズマ処理空間10sを有する。プラズマ処理チャンバ10は接地される。シャワーヘッド13及び基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10の筐体とは電気的に絶縁される。
【0026】
基板支持部11は、本体部111及びリングアセンブリ112を含む。本体部111は、基板Wを支持するための中央領域111aと、リングアセンブリ112を支持するための環状領域111bとを有する。ウェハは基板Wの一例である。本体部111の環状領域111bは、平面視で本体部111の中央領域111aを囲んでいる。基板Wは、本体部111の中央領域111a上に配置され、リングアセンブリ112は、本体部111の中央領域111a上の基板Wを囲むように本体部111の環状領域111b上に配置される。従って、中央領域111aは、基板Wを支持するための基板支持面とも呼ばれ、環状領域111bは、リングアセンブリ112を支持するためのリング支持面とも呼ばれる。
【0027】
一実施形態において、本体部111は、基台1110及び静電チャック1111を含む。基台1110は、導電性部材を含む。基台1110の導電性部材は下部電極として機能し得る。静電チャック1111は、基台1110の上に配置される。静電チャック1111は、セラミック部材1111aとセラミック部材1111a内に配置される静電電極1111bとを含む。セラミック部材1111aは、中央領域111aを有する。一実施形態において、セラミック部材1111aは、環状領域111bも有する。なお、環状静電チャックや環状絶縁部材のような、静電チャック1111を囲む他の部材が環状領域111bを有してもよい。この場合、リングアセンブリ112は、環状静電チャック又は環状絶縁部材の上に配置されてもよく、静電チャック1111と環状絶縁部材の両方の上に配置されてもよい。また、後述するRF電源31及び/又はDC電源32に結合される少なくとも1つのRF/DC電極がセラミック部材1111a内に配置されてもよい。この場合、少なくとも1つのRF/DC電極が下部電極として機能する。後述するバイアスRF信号及び/又はDC信号が少なくとも1つのRF/DC電極に供給される場合、RF/DC電極はバイアス電極とも呼ばれる。なお、基台1110の導電性部材と少なくとも1つのRF/DC電極とが複数の下部電極として機能してもよい。また、静電電極1111bが下部電極として機能してもよい。従って、基板支持部11は、少なくとも1つの下部電極を含む。
【0028】
リングアセンブリ112は、1又は複数の環状部材を含む。一実施形態において、1又は複数の環状部材は、1又は複数のエッジリングと少なくとも1つのカバーリングとを含む。エッジリングは、導電性材料又は絶縁材料で形成され、カバーリングは、絶縁材料で形成される。
【0029】
また、基板支持部11は、静電チャック1111、リングアセンブリ112及び基板のうち少なくとも1つをターゲット温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、ヒータ、伝熱媒体、流路1110a、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。流路1110aには、ブラインやガスのような伝熱流体が流れる。一実施形態において、流路1110aが基台1110内に形成され、1又は複数のヒータが静電チャック1111のセラミック部材1111a内に配置される。また、基板支持部11は、基板Wの裏面と中央領域111aとの間の間隙に伝熱ガスを供給するように構成された伝熱ガス供給部を含んでもよい。
【0030】
シャワーヘッド13は、ガス供給部20からの少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10s内に導入するように構成される。シャワーヘッド13は、少なくとも1つのガス供給口13a、少なくとも1つのガス拡散室13b、及び複数のガス導入口13cを有する。ガス供給口13aに供給された処理ガスは、ガス拡散室13bを通過して複数のガス導入口13cからプラズマ処理空間10s内に導入される。また、シャワーヘッド13は、少なくとも1つの上部電極を含む。なお、ガス導入部は、シャワーヘッド13に加えて、側壁10aに形成された1又は複数の開口部に取り付けられる1又は複数のサイドガス注入部(SGI:Side Gas Injector)を含んでもよい。
【0031】
ガス供給部20は、少なくとも1つのガスソース21及び少なくとも1つの流量制御器22を含んでもよい。一実施形態において、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスを、それぞれに対応のガスソース21からそれぞれに対応の流量制御器22を介してシャワーヘッド13に供給するように構成される。各流量制御器22は、例えばマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。さらに、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスの流量を変調又はパルス化する少なくとも1つの流量変調デバイスを含んでもよい。
【0032】
電源30は、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介してプラズマ処理チャンバ10に結合されるRF電源31を含む。RF電源31は、少なくとも1つのRF信号(RF電力)を少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に供給するように構成される。これにより、プラズマ処理空間10sに供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマが形成される。従って、RF電源31は、プラズマ生成部12の少なくとも一部として機能し得る。また、バイアスRF信号を少なくとも1つの下部電極に供給することにより、基板Wにバイアス電位が発生し、形成されたプラズマ中のイオン成分を基板Wに引き込むことができる。
【0033】
一実施形態において、RF電源31は、第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bを含む。第1のRF生成部31aは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に結合され、プラズマ生成用のソースRF信号(ソースRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、ソースRF信号は、10MHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第1のRF生成部31aは、異なる周波数を有する複数のソースRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のソースRF信号は、少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に供給される。
【0034】
第2のRF生成部31bは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して少なくとも1つの下部電極に結合され、バイアスRF信号(バイアスRF電力)を生成するように構成される。バイアスRF信号の周波数は、ソースRF信号の周波数と同じであっても異なっていてもよい。一実施形態において、バイアスRF信号は、ソースRF信号の周波数よりも低い周波数を有する。一実施形態において、バイアスRF信号は、100kHz~60MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第2のRF生成部31bは、異なる周波数を有する複数のバイアスRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のバイアスRF信号は、少なくとも1つの下部電極に供給される。また、種々の実施形態において、ソースRF信号及びバイアスRF信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。
【0035】
また、電源30は、プラズマ処理チャンバ10に結合されるDC電源32を含んでもよい。DC電源32は、第1のDC生成部32a及び第2のDC生成部32bを含む。一実施形態において、第1のDC生成部32aは、少なくとも1つの下部電極に接続され、第1のDC信号を生成するように構成される。生成された第1のDC信号は、少なくとも1つの下部電極に印加される。一実施形態において、第2のDC生成部32bは、少なくとも1つの上部電極に接続され、第2のDC信号を生成するように構成される。生成された第2のDC信号は、少なくとも1つの上部電極に印加される。
【0036】
種々の実施形態において、第1及び第2のDC信号がパルス化されてもよい。この場合、電圧パルスのシーケンスが少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に印加される。電圧パルスは、矩形、台形、三角形又はこれらの組み合わせのパルス波形を有してもよい。一実施形態において、DC信号から電圧パルスのシーケンスを生成するための波形生成部が第1のDC生成部32aと少なくとも1つの下部電極との間に接続される。従って、第1のDC生成部32a及び波形生成部は、電圧パルス生成部を構成する。第2のDC生成部32b及び波形生成部が電圧パルス生成部を構成する場合、電圧パルス生成部は、少なくとも1つの上部電極に接続される。電圧パルスは、正の極性を有してもよく、負の極性を有してもよい。また、電圧パルスのシーケンスは、1周期内に1又は複数の正極性電圧パルスと1又は複数の負極性電圧パルスとを含んでもよい。なお、第1及び第2のDC生成部32a,32bは、RF電源31に加えて設けられてもよく、第1のDC生成部32aが第2のRF生成部31bに代えて設けられてもよい。
【0037】
排気システム40は、例えばプラズマ処理チャンバ10の底部に設けられたガス排出口10eに接続され得る。排気システム40は、圧力調整弁及び真空ポンプを含んでもよい。圧力調整弁によって、プラズマ処理空間10s内の圧力が調整される。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0038】
<プラズマ処理方法の一例>
図3は、一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理方法(以下「本処理方法」ともいう。)を示すフローチャートである。
図3に示すように、本処理方法は、基板を配置する工程ST1と、処理ガスを供給する工程ST2と、RF信号を供給する工程ST3とを含む。各工程における処理は、
図1に示すプラズマ処理システム及び/又は
図2に示すプラズマ処理装置で実行されてよい。以下では、制御部2がプラズマ処理装置1の各部を制御して、基板Wに対して本処理方法を実行する場合を例に説明する。なお、工程ST2及び工程ST3は、同時に実行され得る。
【0039】
工程ST1において、基板Wが、プラズマ処理装置1のプラズマ処理空間10s内に提供される。基板Wは、基板支持部11の中央領域111aに配置される。そして、基板Wは、静電チャック1111により基板支持部11に保持される。
【0040】
図4は、工程ST1で提供される基板Wの断面構造の一例を示す図である。基板Wは、下地膜UF上に、エッチング膜EF、中間膜MF及びフォトレジスト膜PRがこの順で積層されている。エッチング膜EFは、本処理方法においてエッチングの対象となる膜の一例である。中間膜MF及び/又はフォトレジスト膜PRは、エッチング膜EFのエッチングにおいて、マスクとして機能し得る膜の一例である。基板Wは、半導体デバイスの製造に用いられてよい。半導体デバイスは、例えば、DRAM、3D-NANDフラッシュメモリ等の半導体メモリデバイスを含む。
【0041】
下地膜UFは、一例では、シリコンウェハやシリコンウェハ上に形成された有機膜、誘電体膜、金属膜、半導体膜等である。下地膜UFは、複数の膜が積層されて構成されてよい。
【0042】
エッチング膜EFは、下地膜UFとは異なる膜である。エッチング膜EFは、例えば、有機膜、誘電膜、半導体膜、金属膜でよい。エッチング膜EFは、一つの膜で構成されてよく、また複数の膜が積層されて構成されてもよい。例えば、エッチング膜EFは、シリコン含有膜、炭素含有膜、スピンオングラス(SOG)膜、Si含有反射防止膜(SiARC)等の膜が1又は複数積層されて構成されてよい。一例として、エッチング膜EFは、シリコン酸化膜又はシリコン酸化膜であり得る。また、エッチング膜EFは、シリコン酸化膜及びシリコン窒化膜の積層膜であり得る。
【0043】
中間膜MFは、エッチング膜EFと異なる膜である。中間膜MFは、エッチング膜EFのエッチングにおいて、マスクとして機能し得る膜であり得る。中間膜MFは、複数種の膜が積層された積層膜であり得る。一例として、中間膜MFは、炭素含有膜であり得る。炭素含有膜は、例えば、スピンオングラス(SOG)膜であり得る。
【0044】
フォトレジスト膜PRは、中間膜MF及び/又はエッチング膜EFのエッチングにおいて、マスクとして機能し得る膜であり得る。一例として、フォトレジスト膜PRは、EUVレジストを含む膜であり得る。フォトレジスト膜PRは、金属含有膜であり得る。金属含有膜は、スズを含有する膜である。フォトレジスト膜PRは、酸化スズ又は水酸化スズの少なくともいずれかを含んでよい。スズ含有膜は、有機物を含んでよい。
【0045】
基板Wは、開口OP1及び開口OP2を含む開口パターンを含み得る。開口OP1及び開口OP2は、異なる開口径を有し得る(以下、開口OP1及び開口OP2を総称して「開口OP」ともいう。)。開口OPは、基板Wの平面視(基板Wを
図4の上から下に向かう方向に見た場合)において、任意の形状を有してよい。当該形状は、例えば、線、矩形、円、楕円やこれらの1種類以上を組み合わせた形状であってよい。
【0046】
(工程ST2:処理ガスの供給)
工程ST2において、ガス供給部20からプラズマ処理空間10sに処理ガスが供給される。処理ガスは、フォトレジスト膜PR、中間膜MF及び/又はエッチング膜EFの種類に応じて、適宜選択され得る。一例として、処理ガスは、炭素含有ガスを含み得る。炭素含有ガスは、フルオロカーボンガス(CF系ガス)及び/又はハイドロフルオロカーボンガス(CHF系)ガスを含み得る。
【0047】
(工程ST3:RF信号の供給)
工程ST3において、上部電極及び下部電極に、複数のRF信号が供給される。工程ST3は、第1のRF信号RF1を供給する工程ST31、第1のRF信号RF1及び第2のRF信号RF2を供給する工程ST32、第1のRF信号RF1及び第3のRF信号RF3を供給する工程ST33、及び、第3のRF信号RF3を供給する工程ST34を含む。
【0048】
第1のRF信号RF1(以下「RF1」ともいう。)は、ソースRF信号として機能する信号であり得る。すなわち、RF1は、プラズマ処理空間10sに供給された処理ガスからプラズマを形成し得る信号であり得る。RF1は、上部電極に供給されてよい。一例として、RF1は、40MHz~150MHzの周波数を有し得る。一例として、RF1は、100MHzの周波数を有し得る。
【0049】
第2のRF信号RF2(以下「RF2」ともいう。)は、ソースRF信号及びバイアスRF信号として機能する信号であり得る。すなわち、RF2は、プラズマ処理空間10sに供給された処理ガスからプラズマを形成し得る信号であり得る。また、RF2は、プラズマ処理空間10sにおいて形成されたプラズマ中に含まれる活性種を、基板Wに引き寄せる信号であり得る。当該活性種は、RF1及び/又はRF2によって形成された活性種であり得る。一例として、RF2は、13MHz~60MHzの周波数を有し得る。一例として、RF2は、40MHzの周波数を有し得る。
【0050】
第3のRF信号RF3(以下「RF3」ともいう。)は、バイアスRF信号として機能する信号であり得る。すなわち、RF3は、プラズマ処理空間10sにおいて形成されたプラズマ中に含まれる活性種を、基板Wに引き寄せる信号であり得る。当該活性種は、RF1及び/又はRF2によって形成された活性種であり得る。一例として、RF3は、1MHz未満の周波数を有し得る。一例として、RF3は、400kHzの周波数を有し得る。RF3は、プラズマ処理空間10sにおいてプラズマを形成しない周波数を有してよい。
【0051】
図5は、本処理方法におけるRF1、RF2及びRF3のタイミングチャートの一例である。
図5において、横軸は時間を示す。また、
図5において、縦軸(縦方向)は、RF1からRF3の各信号における電力レベルの相対関係を示す。すなわち、電力レベルP1からP8は、RF1からRF3の電力レベルの絶対値を必ずしも示すものではない。
図5において、P1はP2よりも相対的に電力レベルが高いことを示しているものの、
図5におけるP1とP2との差が、P1とP2との絶対的な差を必ずしも示すものではない。また、
図5において、P5はP6よりも相対的に電力レベルが高いことを示しているものの、
図5におけるP5とP6との差が、P5とP6との絶対的な差を必ずしも示すものではない。
図5において、P7はP8よりも相対的に電力レベルが高いことを示しているものの、
図5におけるP7とP8との差が、P7とP8との絶対的な差を必ずしも示すものではない。
【0052】
図6から
図9は、工程ST31から工程ST34の各工程における基板W及び活性種RDの状態を模式的に示す図である。なお、工程ST3において、工程ST31から工程ST34のサイクルが繰り返し実行され得る。
図6は、当該サイクルが1回以上実行されて、工程ST31が再度実行された状態を示している。すなわち、
図6は、当該サイクルが1回以上実行されて、エッチング膜EFに凹部RC1及び凹部RC2が形成された後に、工程ST31が再度実行された状態を示している。凹部RC1及び凹部RC2は、それぞれ開口OP1及び開口OP2の開口径に応じた径を有し得る。凹部RC1及び凹部RC2は異なる深さを有し得る。また、
図6から
図9において、活性種RDに含まれる矢印は、活性種RDが有するエネルギーのベクトルを模式的に示している。例えば、プラズマ中に存在する活性種RDは、主に拡散によって等方的に移動し得る。他方で、シースに到達した活性種RDは、主にプラズマと基板Wとの間に発生するバイアス電圧の影響によって異方的に移動して、凹部RCに到達し得る。
【0053】
(工程ST31:RF1の供給)
図5における時間t
0において工程ST31が開始すると、RF1が上部電極に供給される。工程ST31において、RF1の電力レベルは、電力レベルP1であり得る。電力レベルP1は、第1の電力レベルの一例である。電力レベルP1は、本処理方法において、RF1が取り得る最大の電力レベルであってよい。一例として、電力レベルP1は、100W~2,000Wであり得る。また、電力レベルP1は、1,000Wであり得る。
【0054】
工程ST31において、RF1が供給されると、プラズマ処理空間10sにおいてプラズマが形成される。すなわち、
図6に示すように、上部電極と基板Wとの間において、処理ガスから複数の活性種RDが生成される。処理ガスが例えばCF系ガスである場合、活性種RDは、炭素(C)及びフッ素(F)を含む活性種であり得る。一例として、活性種RDは、CF
+、CF2
+及び/又はCF3
+を含み得る。また、工程ST31において生成された活性種RDの少なくとも一部が、工程ST31の間において、凹部RC1及び/又は凹部RC2の一部に堆積し得る。
【0055】
なお、工程ST31において、RF2の電力レベルは、電力レベルP6である。また、RF3の電力レベルは、電力レベルP8である。電力レベルP6及びP8は、いずれもゼロ電力レベル(0W)であり得る。
【0056】
(工程ST32:RF1及びRF2の供給)
図5における時刻t
1において、工程ST31が終了すると共に、工程ST32が開始する。工程ST32において、RF1は上部電極に供給される。また、工程ST32において、RF1の電力レベルは、電力レベルP1よりも低い電力レベルP3である。電力レベルP3は、第2の電力レベルの一例である。一例として、電力レベルP3は、10W~300Wであり得る。また、電力レベルP3は、100Wであり得る。
【0057】
また、工程ST32において、RF2が下部電極に供給される。工程ST32において、RF2の電力レベルは、電力レベルP6よりも高い電力レベルP5である。一例として、電力レベルP5は、100W~1,000Wであり得る。また、電力レベルP5は、600Wであり得る。
【0058】
なお、工程ST32において、RF3の電力レベルは、電力レベルP8である。電力レベルP8は、ゼロ電力レベル(0W)であり得る。
【0059】
工程ST32において、RF1及びRF2が供給されると、プラズマ処理空間10sにおいてプラズマが形成される。すなわち、
図7に示すように、上部電極と基板Wとの間において、処理ガスから複数の活性種RDが生成される。処理ガスが例えばCF系ガスである場合、活性種RDは、炭素(C)及びフッ素(F)を含む活性種であり得る。一例として、活性種RDは、CF
+、CF2
+及び/又はCF3
+を含み得る。また、工程ST32において、RF2が供給されると、プラズマと基板Wとの間に、工程ST31よりも高いバイアス電圧が生じ得る。当該バイアス電圧によって、活性種RDは、工程ST31よりも高い入射エネルギーを有し得る。当該入射エネルギーにより、プラズマ中の活性種RDの少なくとも一部が、凹部RCに到達し、凹部RCの表面の一部に、堆積物DFが形成され得る。なお、当該入射エネルギーは、適宜調整され得る。例えば、
図7に示すように、活性種RDによって凹部RCの上部に堆積物DFが形成されるように、活性種RDが有する入射エネルギーが調整されてよい。また、堆積物DFは、凹部RCから中間膜MFに亘って形成されてよい。
【0060】
また、工程ST32において、堆積物DFが改質され得る。工程ST32において改質される堆積物DFは、工程ST31及び/又は工程ST32において堆積した堆積物であり得る。堆積物DFを改質することは、一例として、堆積物DFに含まれるフッ素原子数に対する炭素原子数の比(C/F比)を上げることであり得る。一例として、工程ST32において、堆積物DF中の炭素原子の数を増やすことによりC/F比を上げてよい。また、工程ST32において、堆積物DF中のフッ素原子の数を減らすことによりC/F比を上げてよい。また、工程ST32において、堆積物DF中の炭素原子の数を増やすとともに、堆積物DF中のフッ素原子の数を減らして、C/F比を上げてもよい。
【0061】
なお、工程ST32において、活性種RDによって、エッチング膜EFの一部がエッチングされてもよい。
【0062】
(工程ST33:RF1及びRF3の供給)
図5における時刻t
2において、工程ST32が終了すると共に、工程ST33が開始する。工程ST33において、RF1は上部電極に供給される。また、工程ST33において、RF1の電力レベルは、電力レベルP1と電力レベルP3との間の電力レベルP2である。電力レベルP2は、第3の電力レベルの一例である。一例として、電力レベルP2は、200W~800Wであり得る。また、電力レベルP3は、400Wであり得る。
【0063】
また、工程ST33において、RF3が下部電極に供給される。工程ST33において、RF3の電力レベルは、電力レベルP8よりも高い電力レベルP7である。一例として、電力レベルP7は、200W~800Wであり得る。また、電力レベルP7は、400Wであり得る。
【0064】
なお、工程ST33において、RF2の電力レベルは、電力レベルP6である。電力レベルP6は、ゼロ電力レベル(0W)であり得る。
【0065】
工程ST33において、RF1が供給されると、プラズマ処理空間10sにおいてプラズマが形成される。すなわち、
図8に示すように、上部電極と基板Wとの間において、処理ガスから複数の活性種RDが生成される。処理ガスが例えばCF系ガスである場合、活性種RDは、炭素(C)及びフッ素(F)を含む活性種であり得る。一例として、活性種RDは、CF
+、CF2
+及び/又はCF3
+を含み得る。また、工程ST33において、RF3が供給されると、プラズマと基板Wとの間に、工程ST32よりも高いバイアス電圧が生じ得る。当該バイアス電圧によって、活性種RDは、工程ST32よりも高い入射エネルギーを有し得る。すなわち、工程ST33において、活性種RDは、工程ST32よりも高い異方性を持って基板Wに引き寄せられる。このように、活性種RDが高い入射エネルギー及び高い異方性を有するので、凹部RCに到達した活性種RDは、エッチング膜EFと反応して、エッチング膜EFをエッチングする。
【0066】
本処理方法では、工程ST32において、凹部RCの一部に堆積物DFが形成される。堆積物DFは、凹部RCの上部、例えば、エッチング膜EFと中間膜MFとの境界近傍に形成され得る。そして、当該堆積物DFにより、工程ST33において、凹部RCの上部が保護され得る。従って、工程ST33においてエッチング膜EFがエッチングされるときに、凹部RCの上部においてボウイングの発生を抑制することができる。なお、工程ST33において、堆積物DFの一部が除去されてもよい。例えば、エッチング膜EFに、径が異なる凹部RC1及び凹部RC2が形成される場合において、
図8に示すように、凹部RC1において堆積物DFの少なくとも一部が残る一方で、凹部RC2において堆積物DFの一部又は全部が除去されてよい。
【0067】
(工程ST34:RF3の供給)
図5における時刻t
3において、工程ST33が終了すると共に、工程ST34が開始する。工程ST33において、RF3が下部電極に供給される。工程ST34において、RF3の電力レベルは、電力レベルP7である。すなわち、工程ST34において、RF3の電力レベルは、工程ST33と同じ電力レベルであり得る。
【0068】
また、工程ST34において、RF1の電力レベルは、電力レベルP4である。電力レベルP4は、電力レベルP2及びP3よりも低い電力レベルである。電力レベルP4は、ゼロ電力レベル(0W)であり得る。また、工程ST34において、RF2の電力レベルは、工程ST33と同じく電力レベルP6である。
【0069】
工程ST34では、工程ST33において生成されたプラズマが、プラズマ処理空間10sに残留する。すなわち、工程ST34におけるプラズマは、工程ST33におけるプラズマよりも、低いプラズマ密度を有する。従って、工程ST34において、RF3が引き続き下部電極に供給されると、プラズマと基板Wとの間に生じたバイアス電圧によって、活性種RDは、工程ST33よりも高い異方性を持って基板Wに引き寄せられる。このように、活性種RDが高い入射エネルギー及び高い異方性を有するので、凹部RCに到達した活性種RDは、エッチング膜EFと反応して、エッチング膜EFをエッチングする。また、活性種RDは、凹部RC1及び/又は凹部RC2において、堆積物DFを除去し得る。
【0070】
本処理方法では、工程ST34において、工程ST33よりも密度の低いプラズマが存在する一方で、例えば1MHz未満の比較的低い周波数を有するRF3によって、活性種RDが基板Wに引き寄せられる。これにより、工程ST34において堆積物DFを除去できるので、工程ST31から工程ST34のサイクルを繰り返すことによって生じ得る、凹部RCの上部における閉塞を抑制することができる。すなわち、本処理方法では、工程ST31から工程ST34のサイクルを繰り返してエッチング膜EFをエッチングする過程において、工程ST34で堆積物DFを除去することができる。本処理方法では、当該除去によって、凹部RCの閉塞を抑制しつつ、エッチング膜EFにおいて下地膜UFが露出するまで凹部RCを深く形成することができる。
【0071】
本開示は、例えば、以下の構成を含み得る。
【0072】
(付記1)
プラズマ処理チャンバを備えるプラズマ処理装置において実行されるプラズマ処理方法であって、
(a)前記プラズマ処理チャンバ内に基板を配置する工程と、
(b)第1の周波数を有する第1のRF信号によって前記プラズマ処理チャンバ内にプラズマを形成する工程と、
(c)前記第1のRF信号及び前記第1の周波数よりも低い第2の周波数を有する第2のRF信号によって前記基板上に形成された堆積物を改質する工程と、
(d)前記第1のRF信号によって前記プラズマ処理チャンバ内にプラズマを形成し、前記第2の周波数よりも低い第3の周波数を有する第3のRF信号によって当該プラズマ中に形成された活性種を前記基板に引き込む工程であって、前記第3の周波数は1MHz未満である、工程と、
(e)前記の(d)の工程の後に、前記(d)の工程において形成されたプラズマ中の活性種を前記第3のRF信号によって前記基板に引き込む工程と、
を含む、プラズマ処理方法。
【0073】
(付記2)
前記(b)の工程において、前記第1のRF信号の電力レベルは第1の電力レベルであり、
前記(c)の工程において、前記第1のRF信号の電力レベルは、前記第1の電力レベルよりも低い第2の電力レベルである、付記1に記載のプラズマ処理方法。
【0074】
(付記3)
前記(d)の工程において、前記第1のRF信号の電力レベルは、前記第1の電力レベルと前記第2の電力レベルの間の第3の電力レベルである、付記2に記載のプラズマ処理方法。
【0075】
(付記4)
前記(c)の工程において、前記第2のRF信号の電力レベルは、前記第1のRF信号の電力レベルよりも高い、付記1から3のいずれか1つに記載のプラズマ処理方法。
【0076】
(付記5)
前記(d)の工程において、前記3のRF信号の電力レベルは、前記(c)の工程における前記第2のRF信号の電力レベルよりも低い、付記1から4のいずれか1つに記載のプラズマ処理方法。
【0077】
(付記6)
前記(d)の工程が実行される期間は、前記(b)の工程が実行される期間よりも長い、付記1から5のいずれか1つに記載のプラズマ処理方法。
【0078】
(付記7)
前記(d)の工程が実行される期間は、前記(c)の工程が実行される期間よりも長い、付記1から6のいずれか1つに記載のプラズマ処理方法。
【0079】
(付記8)
前記(d)の工程が実行される期間は、前記(e)の工程が実行される期間よりも長い、付記1から7のいずれか1つに記載のプラズマ処理方法。
【0080】
(付記9)
前記プラズマ処理装置は、前記プラズマ処理チャンバ内に配置された上部電極及び下部電極を備え、
前記第1のRF信号は前記上部電極に供給され、
前記第2のRF信号及び前記第3のRF信号は前記下部電極に供給される、付記1から8のいずれか1つに記載のプラズマ処理方法。
【0081】
(付記10)
前記(b)の工程から前記(e)の工程が複数回繰り返される、付記1から8のいずれか1つに記載のプラズマ処理方法。
【0082】
(付記11)
プラズマ処理チャンバ及び制御部を備えるプラズマ処理装置であって、
前記制御部は、
(a)前記プラズマ処理チャンバ内に基板を配置する制御と、
(b)第1の周波数を有する第1のRF信号によって前記プラズマ処理チャンバ内にプラズマを形成する制御と、
(c)前記第1のRF信号及び前記第1の周波数よりも低い第2の周波数を有する第2のRF信号によって前記基板上に形成された堆積物を改質する制御と、
(d)前記第1のRF信号によって前記プラズマ処理チャンバ内にプラズマを形成し、前記第2の周波数よりも低い第3の周波数を有する第3のRF信号によって当該プラズマ中に形成された活性種を前記基板に引き込む制御であって、前記第3の周波数は1MHz未満である、制御と、
(e)前記(d)の制御の後に、前記(d)の制御において形成されたプラズマ中の活性種を前記第3のRF信号によって前記基板に引き込む制御と、
を実行するように構成された、プラズマ処理装置。
【0083】
以上の例示的実施形態において、本プラズマ処理方法は、本開示の範囲及び趣旨から逸脱することなく種々の変形をなし得る。例えば、当業者の通常の創作能力の範囲内で、ある実施形態における一部の構成要素を、他の実施形態に追加することができる。また、ある実施形態における一部の構成要素を、他の実施形態の対応する構成要素と置換することができる。
【符号の説明】
【0084】
1……プラズマ処理装置、2……制御部、10……プラズマ処理チャンバ、DF……堆積物、P1からP8……電力レベル、RD……活性種、RF1……第1のRF信号、RF2……第2のRF信号、RF3……第3のRF信号、W……基板