(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130806
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】アクリル系樹脂、粘着剤組成物、粘着剤、粘着シートおよび離型フィルム付き粘着シート
(51)【国際特許分類】
C08F 220/38 20060101AFI20240920BHJP
C09J 133/14 20060101ALI20240920BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240920BHJP
C08F 220/30 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
C08F220/38
C09J133/14
C09J7/38
C08F220/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040714
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142309
【弁理士】
【氏名又は名称】君塚 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】浅野 鉄也
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
4J100
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AB01
4J004BA02
4J004DB02
4J004EA03
4J004FA08
4J040DF061
4J040JA09
4J040JB09
4J040MA10
4J040MB03
4J040MB09
4J040NA17
4J040NA19
4J100AL03R
4J100AL04Q
4J100AL05Q
4J100AL08P
4J100AL09S
4J100BC84P
4J100CA03
4J100CA06
4J100DA01
4J100DA25
4J100JA05
(57)【要約】
【課題】可視光による優れた硬化性、更に優れた多段硬化性を示し、かつ硬化後の粘着物性、光学特性に優れる粘着剤が得られるアクリル系樹脂および粘着剤組成物の提供。
【解決手段】本発明のアクリル系樹脂(A)は、下式(I)で表される(メタ)アクリレート(a1)に基づく単位(a1)を有する。アクリル系樹脂(A)は、炭素数5~30のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(a2)に基づく単位(a2)をさらに有してもよい。
[化1]
式(I)中、R
1は、水素原子または炭素数1~3のアルキル基であり、Xは2価の連結基である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式(I)で表される(メタ)アクリレート(a1)に基づく単位(a1)を有する、アクリル系樹脂(A)。
【化1】
式(I)中、R
1は、水素原子または炭素数1~3のアルキル基であり、Xは2価の連結基である。
【請求項2】
前記単位(a1)の割合が、アクリル系樹脂(A)に対して0.001~10重量%である、請求項1に記載のアクリル系樹脂(A)。
【請求項3】
炭素数が5~30のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(a2)に基づく単位(a2)をさらに有する、請求項1に記載のアクリル系樹脂(A)。
【請求項4】
前記単位(a2)の割合が、アクリル系樹脂(A)に対して20~90重量%である、請求項3に記載のアクリル系樹脂(A)。
【請求項5】
炭素数が1~4のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(a3)に基づく単位(a3)をさらに有する、請求項1に記載のアクリル系樹脂(A)。
【請求項6】
前記単位(a3)の割合が、アクリル系樹脂(A)に対して5~60重量%である、請求項5に記載のアクリル系樹脂(A)。
【請求項7】
極性基含有エチレン性不飽和モノマー(a4)に基づく単位(a4)をさらに有する、請求項1に記載のアクリル系樹脂(A)。
【請求項8】
前記単位(a4)の割合が、アクリル系樹脂(A)に対して1~30重量%である、請求項7に記載のアクリル系樹脂(A)。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のアクリル系樹脂(A)を含有する、粘着剤組成物。
【請求項10】
架橋剤(B)をさらに含有する、請求項9に記載の粘着剤組成物。
【請求項11】
請求項9に記載の粘着剤組成物が架橋されてなる、粘着剤。
【請求項12】
波長380nm以上の光の照射により架橋される、請求項11に記載の粘着剤。
【請求項13】
請求項11に記載の粘着剤からなる粘着剤層を有する、粘着シート。
【請求項14】
前記粘着剤層が、複数の段階で硬化する多段硬化性である、請求項13に記載の粘着シート。
【請求項15】
請求項13に記載の粘着シートの少なくとも片面に、離型フィルムが積層された積層構造を備えた、離型フィルム付き粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル系樹脂、粘着剤組成物、粘着剤、粘着シートおよび離型フィルム付き粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル系樹脂は透明性、耐久性に優れる。アクリル系樹脂はその特性を活かして、成形材料、塗料、粘着剤等の幅広い用途に使用されている。例えば、パソコン、モバイル端末(PDA)、ゲーム機、テレビ(TV)、カーナビ、タッチパネル、ペンタブレット等のような画像表示装置においては、部材同士の接着のための粘着剤にアクリル系樹脂が好適に用いられている。
【0003】
画像表示装置においては、ディスプレイと位置入力装置を組み合わせたタッチパネルが広く用いられており、なかでも、静電容量式タッチパネルが一般的に普及している。
タッチパネルは、通常、有機ELまたは液晶からなるディスプレイ、ITO基板、偏光板、保護フィルム(保護ガラス)を有する積層体として構成される。タッチパネルのこれらの部材の貼り合せにも、硬化性のアクリル系樹脂を含有する粘着剤組成物の層を有する透明粘着シートが用いられている。
【0004】
近年の有機ELディスプレイのように、その形状の設計自由度が向上したために、曲面等の複雑な形状のディスプレイが開発されている。このような部材を貼り合わせる場合、耐久性の観点から粘着剤組成物には2回以上段階的に硬化できること、つまり、多段硬化性が求められる。
一般的な多段硬化の一次硬化では、熱架橋または活性エネルギー線の照射により、アクリル系樹脂を含有する粘着剤組成物を架橋して硬化する。その後、最終硬化では活性エネルギー線の照射により該粘着剤組成物を架橋して硬化する。かかる多段硬化性の粘着剤組成物は、例えば、特許文献1~3に提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2013-522393号公報
【特許文献2】特開2022-063964号公報
【特許文献3】国際公開第2021/181767号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
画像表示装置をさらに軽くすることやそのコントラストを最適化することを目的として、積層体全体を薄くすることが試みられている。その一つとして、例えば、偏光板を省略することが検討されている。しかし、偏光板を省略した場合、積層体の構成部材は紫外線に曝されやすくなる。
そこで、紫外線により劣化しやすい部材を貼り合わせる際には、その劣化防止のために粘着シート等に紫外線吸収剤を配合することが提案されている。ところが、粘着シートに紫外線吸収剤を配合すると、粘着剤組成物を紫外線照射により硬化する際に紫外光が吸収されてしまう。そのため、紫外光領域の光による硬化は困難になる。
以上の理由から、可視光領域の光で硬化する粘着剤組成物が求められている。
【0007】
しかし、特許文献1、2の各粘着シートにおいては、可視光による硬化性が不十分である。特許文献3の粘着シートには、可視光による多段硬化性に改善の余地がある。硬化性や多段硬化性が不十分であると、貼り合わせた部材同士の層間剥離のような不具合の原因となる。よって、特許文献1~3の粘着シートにおいては、粘着力、保持力のような粘着物性にも改善の余地がある。
【0008】
加えて、特許文献1~3の粘着剤に含まれるアクリル系樹脂は、可視光領域での硬化のために光重合開始剤を必要とする。このような光重合開始剤は、可視光領域に吸収をもつことが多い。また、可視光照射により生成する化合物が光学特性に影響を及ぼすこともある。結果、硬化後の粘着剤の黄色味が強くなり、透明粘着シートの透明性が損なわれるという問題もある。
【0009】
本発明は、可視光による優れた硬化性、更に優れた多段硬化性を示し、かつ硬化後の粘着力、保持力といった粘着物性、耐黄変性、透明性といった光学特性に優れる粘着剤が得られるアクリル系樹脂および粘着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、下記の態様を有する。
[1]下式(I)で表される(メタ)アクリレート(a1)に基づく単位(a1)を有する、アクリル系樹脂(A)。
【0011】
【0012】
式(I)中、R1は、水素原子または炭素数1~3のアルキル基であり、Xは2価の連結基である。
[2]前記単位(a1)の割合が、アクリル系樹脂(A)に対して0.001~10重量%である、[1]に記載のアクリル系樹脂(A)。
[3]炭素数が5~30のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(a2)に基づく単位(a2)をさらに有する、[1]または[2]に記載のアクリル系樹脂(A)。
[4]前記単位(a2)の割合が、アクリル系樹脂(A)に対して20~90重量%である、[3]に記載のアクリル系樹脂(A)。
[5]炭素数が1~4のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(a3)に基づく単位(a3)をさらに有する、[1]~[4]のいずれかに記載のアクリル系樹脂(A)。
[6]前記単位(a3)の割合が、アクリル系樹脂(A)に対して5~60重量%である、[5]に記載のアクリル系樹脂(A)。
[7]極性基含有エチレン性不飽和モノマー(a4)に基づく単位(a4)をさらに有する、[1]~[5]のいずれかに記載のアクリル系樹脂(A)。
[8]前記単位(a4)の割合が、アクリル系樹脂(A)に対して1~30重量%である、[7]に記載のアクリル系樹脂(A)。
[9][1]~[8]のいずれかに記載のアクリル系樹脂(A)を含有する、粘着剤組成物。
[10]架橋剤(B)をさらに含有する、[9]に記載の粘着剤組成物。
[11][9]または[10]に記載の粘着剤組成物が架橋されてなる、粘着剤。
[12]波長380nm以上の光の照射により架橋される、[11]に記載の粘着剤。
[13][11]または[12]に記載の粘着剤からなる粘着剤層を有する、粘着シート。
[14]前記粘着剤層が、複数の段階で硬化する多段硬化性である、[13]に記載の粘着シート。
[15][13]または[14]に記載の粘着シートの少なくとも片面に、離型フィルムが積層された積層構造を備えた、離型フィルム付き粘着シート。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、可視光による優れた硬化性、更に優れた多段硬化性を示し、かつ硬化後の粘着力、保持力といった粘着物性、耐黄変性、透明性といった光学特性に優れる粘着剤が得られるアクリル系樹脂および粘着剤組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書における以下の用語の意味は以下の通りである。
本明細書において、式(1)で示す化合物を化合物(1)と記す。他の化合物も同様に記す。
数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値および上限値として含むことを意味する。
【0015】
本明細書における以下の用語の意味は以下の通りである。
「(メタ)アクリル」とはアクリルまたはメタクリルの総称である。
「(メタ)アクリロイル」とはアクリロイルまたはメタクリロイルの総称である。
「(メタ)アクレート」とはアクリレートまたはメタクリレートの総称である。
数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値および上限値として含むことを意味する。
【0016】
以下、いくつかの好適な実施形態を詳細に説明するが、これらは望ましい一例を示すものであり、本発明は以下の記載に限定されるものではない。
【0017】
<アクリル系樹脂(A)>
本発明のアクリル系樹脂(A)は、下式(I)で表される(メタ)アクリレート(a1)に基づく単位(a1)を有する。単位(a1)を有するアクリル系樹脂(A)は可視光領域での硬化のために光重合開始剤を必要としない。つまり、光重合開始剤を必要とせずとも、可視光領域で硬化可能である。
よって、本発明のアクリル系樹脂(A)によれば、光重合開始剤の使用により光学特性が影響を受けることを防止できる。また、硬化後の粘着剤の黄色味が強くなることも防止できる。そして、透明粘着シートの透明性も損なわれないという利点がある。
【0018】
【0019】
式(I)中、R1は、水素原子または炭素数1~3のアルキル基であり、Xは2価の連結基である。R1およびXの詳細については後述する。
【0020】
アクリル系樹脂(A)は、単位(a1)に加えて、下記の単位(a2)、単位(a3)、単位(a4)および単位(a5)からなる群から選ばれる少なくとも1種をさらに有してもよい。
・炭素数が5~30のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(a2)に基づく単位(a2)。
・炭素数が1~4のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(a3)に基づく単位(a3)。
・極性基含有エチレン性不飽和モノマー(a4)に基づく単位(a4)。
・その他のエチレン性不飽和モノマー(a5)に基づく単位(a5)。
【0021】
((メタ)アクリレート(a1))
(メタ)アクリレート(a1)は、前記式(I)で表される。式(I)中、R1は、水素原子または炭素数1~3のアルキル基である。炭素数1~3のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。R1としては、水素原子が好ましい。
【0022】
式(I)中、Xは2価の連結基である。例えば、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、フェニレン基、ナフチレン基等の炭化水素基が挙げられる。炭化水素基は、その水素原子の少なくとも一部がフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲンで置換されていてもよい。
他にも、Xとしては、-CO-、-COCO-、-CO(CH2)mCO-(mは1~10である。)が挙げられる。
【0023】
好適な(メタ)アクリレート(a1)としては、例えば、下記の化合物(1)~(4)が挙げられる。
【0024】
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】
(メタ)アクリレート(a1)は例えば、Journal of Polymer Science Part A:Polymer Chemistry Volume 28,Issue 5 p.967-972に記載の方法で製造できる。
【0029】
(炭素数が5~30のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(a2))
アルキル(メタ)アクリレート(a2)は、炭素数が5~30のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルである。アルキル(メタ)アクリレート(a2)が有するアルキル基の炭素数は5~18が好ましく、6~14がより好ましく、8~12がさらに好ましい。アルキル(メタ)アクリレート(a2)の炭素数が前記数値範囲内の下限値以上であると、可視光領域での活性エネルギー線硬化性に優れる粘着剤が得られやすい。アルキル(メタ)アクリレート(a2)の炭素数が前記数値範囲内の上限値以下であると、粘着力に優れる粘着剤が得られやすい。
【0030】
アルキル(メタ)アクリレート(a2)としては、例えば、アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレートが挙げられる。
アルキル(メタ)アクリレート(a2)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なかでも、アルキル(メタ)アクリレート(a2)としては、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0031】
(炭素数が1~4のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(a3))
アルキル(メタ)アクリレート(a3)は、炭素数が1~4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルである。
アルキル(メタ)アクリレート(a3)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
アルキル(メタ)アクリレート(a3)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なかでも、アルキル(メタ)アクリレート(a3)としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレートが好ましく、メチルアクリレート、エチルメタクリレートがより好ましい。
【0032】
(極性基含有エチレン性不飽和モノマー(a4))
極性基含有エチレン性不飽和モノマー(a4)としては、例えば、水酸基含有モノマー、アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、シアノ基含有モノマー等が挙げられる。極性基含有エチレン性不飽和モノマー(a4)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、得られた粘着剤を硬化する際に効率よく硬化可能な点、光学透明性に優れる粘着剤が得られる点で水酸基含有モノマー、アミド基含有モノマーが好ましい。
【0033】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有アルキル(メタ)アクリレート;
カプロラクトン変性2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のカプロラクトン変性モノマー;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のオキシアルキレン変性モノマー;
2-アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタル酸、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド等の1級水酸基含有モノマー;
2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-クロロ2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の2級水酸基含有モノマー;
2,2-ジメチル2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の3級水酸基含有モノマー;
が挙げられる。
なかでも、最終硬化時に効率よく硬化可能な点、硬化後の信頼性に優れる点で、1級水酸基含有アルキル(メタ)アクリレートが好ましく、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートおよび4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートを併用すること、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートを単独で用いることが特に好ましい。
【0034】
アミド基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等の1級及び2級アミド基含有モノマー、N,N′-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N′-エチル(メタ)アクリルアミド、N,N′-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N′-ジブチル(メタ)アクリルアミド、N,N′-ジヘキシル(メタ)アクリルアミド、N,N′-ジオクチル(メタ)アクリルアミド等のN,N′-二置換(メタ)アクリルアミドやアクリロイルモルフォリン、メタクリロイルモルフォリンが挙げられる。
なかでも、最終硬化時に効率よく硬化可能な点、硬化後の信頼性に優れる点で、3級アミド基含有エチレン性不飽和モノマー(a3-1)が好ましく、N,N’-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N′-ジエチル(メタ)アクリルアミドが特に好ましい。
【0035】
アミノ基含有モノマーとしては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートやその4級化物等が挙げられる。
カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、グルタコン酸、イタコン酸、N-グリコール酸、ケイ皮酸等が挙げられる。
上記シアノ基含有モノマーとしては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。
【0036】
(その他のエチレン性不飽和モノマー(a5))
その他の共重合可能なエチレン性不飽和モノマー(a5)としては、例えば、
フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェニルジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール-(メタ)アクリレート、オルトフェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノールエチレンオキサイド付加物(メタ)アクリレート等の芳香環含有モノマー;
シクロヘキシルオキシアルキル(メタ)アクリレート、tert-ブチルシクロヘキシルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニルメタクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等の脂環含有モノマー;
2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、2-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のエーテル鎖含有モノマー;
4-(メタ)アクリロイルオキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン含有モノマー;
スチレン、α-メチルスチレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アルキルビニルエーテル、ビニルトルエン、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、イタコン酸ジアルキルエステル、フマル酸ジアルキルエステル、アリルアルコール、アクリルクロライド、メチルビニルケトン、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアリルビニルケトン等が挙げられる。
その他のエチレン性不飽和モノマー(a5)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
エチレン性不飽和基を二つ以上有するエチレン性不飽和モノマーとして、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン等を併用することもできる。
【0038】
(アクリル系樹脂(A)の性状)
アクリル系樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は100,000以上が好ましく、150,000~1,500,000がより好ましく、170,000~1,000,000がさらに好ましく、180,000~750,000が特に好ましく、200,000~650,000がさらに好ましい。アクリル系樹脂(A)のMwが小さすぎると、凝集力が低くなり粘着性が低下しやすい。アクリル系樹脂(A)のMwが大きすぎると、溶融粘度が高くなりすぎるため、ホットメルト塗工に不適である。
【0039】
また、アクリル系樹脂(A)の分散度[重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)]は、10以下が好ましく、7以下がより好ましい。アクリル系樹脂(A)の分散度が高すぎると凝集力が低下する傾向がある。分散度の下限は通常1である。
【0040】
アクリル系樹脂(A)の重量平均分子量は、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量である。重量平均分子量は、高速液体クロマトグラフ(日本ウォーターズ社製品「Waters 2695(本体)」と「Waters 2414(検出器)」)を用いて測定される。高速液体クロマトグラフに、カラム:Shodex GPC KF-806L(排除限界分子量:2×107、分離範囲:100~2×107、理論段数:10000段/本、充填剤材質:スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:10μm)を3本直列に接続して用いることにより測定する。
数平均分子量も重量平均分子量と同じ方法で測定できる。分散度は、上記重量平均分子量と数平均分子量の測定値より求めることができる。
【0041】
アクリル系樹脂(A)の動的粘弾性に基づくTg、すなわち動的粘弾性の損失正接が最大となる温度は、-40℃以上が好ましく、-35~30℃がより好ましく、-30~25℃が特に好ましく、-15~15℃がさらに好ましい。アクリル系樹脂(A)のTgが低すぎると、硬化後の接着強度が低下する傾向にある。アクリル系樹脂(A)のTgが高すぎると硬化前のタックが低くなる傾向がある。
【0042】
動的粘弾性に基づくTgは、下記の測定法により求められる。
適当な有機溶媒を添加することによりアクリル系樹脂(A)と有機溶媒のみを含有するアクリル系樹脂溶液を調製する。アクリル系樹脂溶液の濃度を調整した後、離型シート上に乾燥後の厚みが50μmになるように該アクリル系樹脂溶液を塗工する。その後、90~105℃、5~10分間加熱処理等により乾燥させることで、有機溶媒を除去した後、これを離型シートに貼付し、アクリル系樹脂(A)を99重量%以上含有するアクリル系樹脂シートを作製する。その後、複数のアクリル系樹脂シートを積層することで、厚さ約800μmのアクリル系樹脂シートを作製する。
作製したシートの動的粘弾性を以下の条件にて測定し、損失正接(損失弾性率G’’/貯蔵弾性率G’=tanδ)が最大となった温度を読み取り、動的粘弾性に基づくアクリル系樹脂(A)のガラス転移温度とする。
【0043】
動的粘弾性の測定条件は以下の通りである。
測定機器:動的粘弾性測定装置(商品名:DVA-225、アイティー計測制御社製)
変形モード:せん断
歪み:0.1%
測定温度:-100~60℃
測定周波数:1Hz
【0044】
これに対し、計算ガラス転移温度(計算Tg)は下記のFoxの式より算出されるものである。「アクリル系樹脂(A)の動的粘弾性に基づくTg」は、計算Tgとは異なる。
計算Tg=(Tg1×W1+Tg2×W2・・・+Tgn×Wn)
【0045】
Tg1:モノマーm1のホモポリマーのガラス転移温度(℃)
W1:モノマーm1の重量割合
Tg2:モノマーm2のホモポリマーのガラス転移温度(℃)
W2:モノマーm2の重量割合
Tgn:モノマーnのホモポリマーのガラス転移温度(℃)
Wn:モノマーnの重量割合(W1+W2+・・・+Wn=1)
【0046】
上記のFoxの式の通り、アクリル系樹脂(A)の計算Tgは、アクリル系樹脂(A)を構成するそれぞれのモノマーのホモポリマーのガラス転移温度および重量分率をFoxの式に当てはめて算出した値である。
アクリル系樹脂(A)を構成するモノマーのホモポリマーとした際のガラス転移温度は、通常、示差走査熱量計(DSC)により測定されるものであり、JIS K7121-1987や、JIS K 6240に準拠した方法で測定することができる。
【0047】
有機溶媒により固形分濃度が45%に希釈されたアクリル系樹脂(A)の25℃での粘度は、500~50000mPa・sが好ましく、1000~20000mPa・sがより好ましい。粘度が低すぎると、塗工時に塗膜のはじきや面荒れが発生しやすくなる傾向がある。粘度が高すぎると、塗工時に塗膜形成が困難になったり、溶媒を揮発させて無溶剤化する際に作業性が低下する傾向がある。
【0048】
有機溶媒により固形分濃度が45%に希釈されたアクリル系樹脂(A)の25℃での粘度は、B型粘度計により、適切な回転数で測定される値である。
【0049】
(アクリル系樹脂(A)の組成)
単位(a1)の割合はアクリル系樹脂(A)のすべての単位100重量%に対して0.001~10重量%が好ましく、0.05~5重量%がより好ましく、0.1~2重量%がさらに好ましい。単位(a1)の割合が前記数値範囲内の下限値以上であると、可視光領域での活性エネルギー線硬化性に優れる粘着剤が得られやすい。単位(a1)の割合が前記数値範囲内の上限値以下であると、着色が少ない粘着剤が得られやすい。
【0050】
単位(a2)の割合はアクリル系樹脂(A)のすべての単位100重量%に対して20~90重量%が好ましく、30~85重量%がより好ましく、40~80重量%がさらに好ましい。単位(a2)の割合が前記数値範囲内の下限値以上であると、活性エネルギー線硬化性に優れる粘着剤が得られやすい。単位(a2)の割合が前記数値範囲内の上限値以下であると、粘着力に優れる粘着剤が得られやすい。
【0051】
単位(a3)の割合はアクリル系樹脂(A)のすべての単位100重量%に対して5~60重量%が好ましく、10~50重量%がより好ましく、15~45重量%がさらに好ましい。単位(a3)の割合が前記数値範囲内であると、粘着力や耐久性に優れる粘着剤が得られやすい。
【0052】
単位(a4)の割合はアクリル系樹脂(A)のすべての単位100重量%に対して1~30重量%が好ましく、5~25重量%がより好ましく、8~20重量%がさらに好ましい。単位(a4)の割合が前記数値範囲内の下限値以上であると、活性エネルギー線硬化性や耐久性に優れる粘着剤が得られやすい。単位(a4)の割合が前記数値範囲内の上限値以下であると、粘着物性に優れる粘着剤が得られやすい。
【0053】
単位(a5)の割合はアクリル系樹脂(A)のすべての単位100重量%に対して20重量%以下が好ましく、より好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下である。単位(a5)の割合が前記数値範囲内の上限値以下であると粘着物性のバランスに優れる粘着剤が得られやすい。
【0054】
(アクリル系樹脂(A)の製法)
アクリル系樹脂(A)は、少なくとも(メタ)アクリレート(a1)を含有する重合成分(a)を重合させることで製造できる。重合成分(a)は、(メタ)アクリレート(a1)に加えて、アルキル(メタ)アクリレート(a2)、アルキル(メタ)アクリレート(a3)、極性基含有エチレン性不飽和モノマー(a4)およびその他のエチレン性不飽和モノマー(a5)から選ばれる少なくとも1種を必要に応じてさらに含有してもよい。
【0055】
重合成分(a)の組成の詳細および好ましい態様は、アクリル系樹脂(A)の組成について説明した内容と同じである。アクリル系樹脂(A)の組成は、重合成分(a)の組成に基づいて決定され、基本的には一致する。
【0056】
重合成分(a)の重合法は特に限定されない。溶液ラジカル重合、懸濁重合、塊状重合、乳化重合等のような種々の方法を用いることができる。例えば、有機溶媒中に、重合成分(a)、重合開始剤を混合あるいは滴下し、所定の重合条件にて重合する方法等が挙げられる。なかでも、溶液ラジカル重合、塊状重合が好ましく、安定にアクリル系樹脂(A)が得られる点で、溶液ラジカル重合が特に好ましい。
【0057】
溶液ラジカル重合に用いられる有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ヘキサン等の脂肪族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の脂肪族アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;等が挙げられる。有機溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0058】
これらの有機溶媒の中でも、重合反応のしやすさ、連鎖移動の効果、粘着剤組成物の塗工時の乾燥のしやすさ、安全上の点から、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類:アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類が好ましく、なかでも酢酸エチルが好ましい。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
有機溶媒の使用量は、通常、重合成分(a)100重量部に対して10~900重量部である。
【0059】
重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2’-アゾビス(メチルプロピオン酸)等のアゾ系開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物が挙げられる。重合開始剤は、使用モノマーに合わせて適宜選択して用いることができる。重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
重合開始剤の使用量は、通常、重合成分(a)100重量部に対して0.01~10重量部である。
【0060】
(作用機序)
以上説明したアクリル系樹脂(A)は、上述の単位(a1)を有する。そのため、可視光領域での硬化のために光重合開始剤を必要としない。
よって、本発明のアクリル系樹脂(A)によれば、光重合開始剤の使用により光学特性が影響を受けることを防止できる。また、硬化後の粘着剤の黄色味が強くなることを防止できる。そして、透明粘着シートの透明性も損なわれないという利点がある。また、本発明のアクリル系樹脂(A)によれば、可視光による優れた多段硬化性を示し、かつ、硬化後の粘着物性に優れる粘着剤が得られる。
【0061】
<粘着剤組成物>
本発明の粘着剤組成物は、上述のアクリル系樹脂(A)を含有する。よって、本発明の粘着剤組成物を架橋することで、可視光による優れた多段硬化性を示し、かつ、硬化後の粘着物性、光学特性に優れる粘着剤が得られる。
【0062】
本発明の粘着剤組成物は、上述のアクリル系樹脂(A)に加えて、架橋剤(B)、シランカップリング剤(C)、カルボジイミド系化合物(D)および任意成分を必要に応じてさらに含有してもよい。以下、粘着剤組成物を構成し得る各成分について説明する。
【0063】
(架橋剤(B))
架橋剤(B)としては、活性エネルギー線架橋剤(b1)、熱架橋剤(b2)が挙げられる。活性エネルギー線架橋剤(b1)、熱架橋剤(b2)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0064】
架橋剤(B)として活性エネルギー線架橋剤(b1)のみを含有する場合は、活性エネルギー線量を制御することのみで多段硬化が可能となる。また架橋剤(B)として活性エネルギー線架橋剤(b1)と熱架橋剤(b2)とを含有する場合は、熱硬化と活性エネルギー線硬化を併用することでも多段硬化が可能となる。
このように架橋反応を制御することで、粘着剤層全体の凝集力を調整できる。そのため、一次硬化後や最終硬化後において安定した粘着物性を得ることができる。
【0065】
〔活性エネルギー線架橋剤(b1)〕
活性エネルギー線架橋剤(b1)としては、例えば、1分子内に2つ以上のエチレン性不飽和基を含有する多官能性架橋剤が挙げられる。
例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)ブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)ペンタメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)ヘキサメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、EO変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、多官能ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なかでも、硬化後の粘着物性のバランスの点で、2つのエチレン性不飽和基を含有する(メタ)アクリレートが好ましく、特には、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレートが好ましい。
多官能性架橋剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0066】
〔熱架橋剤(b2)〕
熱架橋剤(b2)は、主としてアクリル系樹脂(A)の構成モノマーである官能基含有モノマー由来の官能基と反応することで、優れた粘着力を発揮できる。例えば、イソシアネート系架橋剤(b2-1)、エポキシ系架橋剤(b2-2)、アジリジン系架橋剤(b2-3)、メラミン系架橋剤(b2-4)、アルデヒド系架橋剤(b2-5)、アミン系架橋剤(b2-6)、金属キレート系架橋剤(b2-7)が挙げられる。これらのなかでも、基材との密着性を向上させる点やアクリル系樹脂(A)との反応性の点で、イソシアネート系架橋剤(b2-1)が好適に用いられる。
熱架橋剤(b2)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0067】
イソシアネート系架橋剤(b2-1)としては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート等のトリレンジイソシアネート系化合物;
1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等のキシリレンジイソシアネート系化合物;
1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等の芳香族イソシアネート系化合物;
ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等のヘキサメチレンジイソシアネート系化合物、リジンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート系化合物;
イソホロンジイソシアネート等の脂環式イソシアネート系化合物;
これらのイソシアネート系化合物とトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体;
これらイソシアネート化合物のビュレット体やイソシアヌレート体;
等が挙げられる。
【0068】
イソシアネート系架橋剤(b2-1)のなかでも、反応性に優れる点からは芳香族イソシアネート系化合物を用いることが好ましく、特に好ましくはトリレンジイソシアネート系化合物である。また、黄変を抑制する点からは脂肪族イソシアネート系化合物を用いることが好ましく、特に好ましくはヘキサメチレンジイソシアネート系化合物である。
【0069】
エポキシ系架橋剤(b2-2)としては、例えば、ビスフェノールA・エピクロルヒドリン型のエポキシ樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエリスリトール、ジグリセロールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0070】
アジリジン系架橋剤(b2-3)としては、例えば、テトラメチロールメタン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、N,N′-ジフェニルメタン-4,4′-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、N,N′-ヘキサメチレン-1,6-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)等が挙げられる。
【0071】
メラミン系架橋剤(b2-4)としては、例えば、へキサメトキシメチルメラミン、ヘキサエトキシメチルメラミン、ヘキサプロポキシメチルメラミン、ヘキサプトキシメチルメラミン、ヘキサペンチルオキシメチルメラミン、ヘキサヘキシルオキシメチルメラミン、メラミン樹脂等が挙げられる。
【0072】
アルデヒド系架橋剤(b2-5)としては、例えば、グリオキザール、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、マレインジアルデヒド、グルタルジアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。
【0073】
アミン系架橋剤(b2-6)としては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、トリエチルジアミン、ポリエチレンイミン、ヘキサメチレンテトラアミン、ジエチレントリアミン、トリエチルテトラアミン、イソフォロンジアミン、アミノ樹脂、ポリアミド等が挙げられる。
【0074】
金属キレート系架橋剤(b2-7)としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、パナジウム、クロム、ジルコニウム等の多価金属のアセチルアセトンやアセトアセチルエステル配位化合物等が挙げられる。
【0075】
(シランカップリング剤(C))
粘着剤組成物は、アクリル系樹脂(A)、光重合開始剤および架橋剤(B)以外の化合物としてシランカップリング剤(C)をさらに含有することが耐久性を向上させる点で好ましい。
【0076】
シランカップリング剤(C)は、その構造中に、反応性官能基と、ケイ素原子に結合したアルコキシ基とをそれぞれ1つ以上含有する有機ケイ素化合物である。シランカップリング剤(C)としては、モノマー型とオリゴマー型が挙げられる。
【0077】
シランカップリング剤(C)中の反応性官能基としては、例えば、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、アミド基、イソシアネート基等が挙げられる。これらのなかでも、耐久性、リワーク性に優れる点からエポキシ基、メルカプト基が好ましい。
【0078】
シランカップリング剤(C)中の反応性官能基の含有割合としては、3,000g/mol以下が好ましく、1,500g/mol以下がより好ましく、1000g/mol以下がさらに好ましい。反応性官能基が前記数値範囲内であると、耐久性およびリワーク性のバランスが向上する。シランカップリング剤(C)中の反応性官能基の含有割合の下限値は、200g/molである。
【0079】
シランカップリング剤(C)中のケイ素原子に結合したアルコキシ基としては、耐久性と保存安定性の点から、炭素数1~8のアルコキシ基が好ましい。なかでもメトキシ基、エトキシ基がより好ましい。
シランカップリング剤(C)は、反応性官能基およびケイ素原子と結合したアルコキシ基以外の有機官能基、例えば、アルキル基、フェニル基等を有していてもよい。
【0080】
シランカップリング剤(C)としては、例えば、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、メチルトリ(グリシジル)シラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。なかでも、耐熱性の点からγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
シランカップリング剤(C)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0081】
(カルボジイミド系化合物(D))
粘着剤組成物は、アクリル系樹脂(A)、光重合開始剤、架橋剤(B)およびシランカップリング剤(C)以外の化合物としてカルボジイミド系化合物(D)をさらに含有することが耐熱性の点から好ましい。
カルボジイミド系化合物(D)としては、例えば、ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジメチルカルボジイミド、ジイソブチルカルボジイミド、ジオクチルカルボジイミド、tert-ブチルイソプロピルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド、ジ-tert-ブチルカルボジイミド、ジドデシルカルボジイミド等のモノカルボジイミド、カルボジイミドが複数存在するポリカルボジイミドや環状カルボジイミド等が挙げられる。なかでも、耐熱性の点から、モノカルボジイミド系化合物が好ましく、ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)カルボジイミドがより好ましい。
カルボジイミド系化合物(D)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0082】
(任意成分)
粘着剤組成物は、必要に応じて、その他の任意成分としての粘着剤を含有してもよい。粘着剤組成物は、架橋促進剤、帯電防止剤、粘着付与剤、機能性色素等の従来公知の添加剤を含有してもよい。
【0083】
粘着剤組成物は、光学特性を損なわない範囲内の量であれば、光重合開始剤をさらに含有してもよい。
光重合開始剤は、光学特性を損なわない範囲内の量であれば、分子内水素引抜型光重合開始剤および分子間水素引抜型光重合開始剤以外の他の光重合開始剤をさらに含有してもよい。
【0084】
〔分子内水素引抜型光重合開始剤〕
分子内水素引抜型光重合開始剤は、光重合開始剤自身の水素を引き抜くことでラジカルを発生させることが可能な構造を有する。例えば、分子内水素引抜型光重合開始剤はフェニルグリオキシレート構造等を有し得る。
分子内水素引抜型光重合開始剤としては、例えば、オキシ-フェニル-酢酸2-[2-オキソ-2-フェニル-アセトキシ-エトキシ]-エチルエステル、フェニルグリオキシル酸メチル等が挙げられる。
これらのなかでも最終硬化時の架橋効率の点で、分子内に架橋点が複数存在するオキシ-フェニル-酢酸2-[2-オキソ-2-フェニル-アセトキシ-エトキシ]-エチルエステルが好ましい。
市販品としては、IGM RESINS B.V.社製の「Omnirad MBF」、「Omnirad 754」が挙げられる。
【0085】
〔分子間水素引抜型光重合開始剤〕
分子間水素引抜型光重合開始剤は、光重合開始剤自身以外から水素を引き抜くことでラジカルを発生させることが可能な構造を有する。分子間水素引抜型光重合開始剤は、例えばベンゾフェノン構造、チオキサントン構造等を有し得る。
例えば、ベンゾフェノン、4-メチル-ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、3,3‘-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、4-(メタ)アクリロイルオキシベンゾフェノン、4-[2-((メタ)アクリロイルオキシ)エトキシ]ベンゾフェノン、4-(メタ)アクリロイルオキシ-4’-メトキシベンゾフェノン、カルボキシメトキシメトキシベンゾフェノン-ポリエチレングリコール250ジエステル、2-ベンゾイル安息香酸メチル、4-(1,3-アクリロイル-1,4,7,10,13-ペンタオキソトリデシル)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;
2,4-ジエチルチオキサンソン、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサンソン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン等のチオキサントン類が挙げられる。
【0086】
これらのなかでも低粘度の液体であり、取り扱いが容易である点で、2,4,6-トリメチルベンゾフェノンが好ましい。また高架橋が可能な点で、分子内に架橋点が複数存在する4-(メタ)アクリロイルオキシベンゾフェノン、4-[2-((メタ)アクリロイルオキシ)エトキシ]ベンゾフェノン、4-(メタ)アクリロイルオキシ-4’-メトキシベンゾフェノン、カルボキシメトキシメトキシベンゾフェノン-ポリエチレングリコール250ジエステルが好ましい。
市販品としては、新菱社製の「MBP」、IGM RESINS B.V.社製の「OmniradBP」、「Omnirad 4MBZ」、「Esacure TZT」、「Omnipol BP」が挙げられる。
【0087】
〔他の光重合開始剤〕
他の光重合開始剤としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマー等のアセトフェノン類;
ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;
2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフォンオキサイド類;
が挙げられる。
【0088】
光重合開始剤の助剤として、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4,4’-ジメチルアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン、2-ジメチルアミノエチル安息香酸、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸(n-ブトキシ)エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4-ジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル等を併用することも可能である。
光重合開始剤の助剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0089】
(粘着剤組成物の組成)
アクリル系樹脂(A)は、粘着剤組成物の主成分である。アクリル系樹脂(A)の割合は、粘着剤組成物に対し50重量%以上が好ましく、80重量%以上がより好ましく、90重量%以上がさらに好ましく、95重量%以上が特に好ましい。アクリル系樹脂(A)の組成物中の割合が前記数値範囲外であると、発明の効果が得られにくくなる傾向がある。上限は100重量%である。
【0090】
粘着剤組成物が架橋剤(B)を含有する場合、架橋剤(B)の含有量は、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、通常20重量部以下が好ましく、0.001~10重量部がより好ましく、0.1~7.5重量部がさらに好ましい。架橋剤(B)の含有量が多すぎると、粘着力が低下する傾向がある。架橋剤(B)の含有量が少なすぎると、耐久性が低下する傾向がある。
【0091】
粘着剤組成物が活性エネルギー線架橋剤(b1)を含有する場合、活性エネルギー線架橋剤(b1)の含有量は、通常は、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して0.01~20重量部が好ましく、0.1~10重量部がより好ましく、0.5~7.5重量部がさらに好ましい。
活性エネルギー線架橋剤(b1)の含有量が少なすぎると、凝集力が不足するために充分な耐久性が得られない傾向がある。活性エネルギー線架橋剤(b1)の含有量が多すぎると一次硬化時における粘着物性が低下する傾向がある。
【0092】
粘着剤組成物が熱架橋剤(b2)を含有する場合、熱架橋剤(b2)の含有量は、通常は、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して0.001~5重量部が好ましく、0.02~1重量部がより好ましく、0.05~0.5重量部がさらに好ましい。
熱架橋剤(b2)の含有量が少なすぎると、凝集力が不足し、一次硬化時において粘着物性が低下する傾向がある。熱架橋剤(b2)の含有量が多すぎると最終硬化時において粘着力が低下する傾向がある。
【0093】
粘着剤組成物がシランカップリング剤(C)を含有する場合、シランカップリング剤(C)の含有量は、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して0.001~3重量部が好ましく、0.005~1重量部がより好ましく、0.01~0.5重量部がさらに好ましく、0.015~0.3重量部が特に好ましい。
シランカップリング剤(C)の含有量が少なすぎると耐久性を向上させる効果が得られにくい傾向がある。シランカップリング剤(C)の含有量が多すぎるとブリードアウト等の影響で粘着力が低下する傾向がある。
【0094】
粘着剤組成物がカルボジイミド系化合物(D)を含有する場合、カルボジイミド系化合物(D)の含有量は、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して0.01~10重量部が好ましく、0.1~5重量部がより好ましく、0.2~2重量部がさらに好ましく、0.3~1重量部が特に好ましい。
カルボジイミド系化合物(D)の含有量が少なすぎるとアクリル系樹脂(A)の熱安定性が低下する傾向がある。カルボジイミド系化合物(D)の含有量が多すぎるとブリードアウト等の影響で耐久性が低下する傾向がある。
【0095】
粘着剤組成物が他の粘着剤や添加剤を含有する場合、他の粘着剤や添加剤の含有量は、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して10重量部以下が好ましく、5重量部以下がより好ましい。
【0096】
(粘着剤組成物の調製)
アクリル系樹脂(A)、必要に応じて、架橋剤(B)、シランカップリング剤(C)、カルボジイミド系化合物(D)、その他の任意成分を混合することにより粘着剤組成物を得ることができる。
混合方法は特に限定されるものではなく、各成分を一括で混合する方法、任意の成分を混合した後、残りの成分を一括または順次混合する方法等、種々の方法を採用することができる。
【0097】
(用途)
粘着剤組成物は、複数の段階で硬化する多段硬化性粘着シートの粘着剤に好適に用いることができる。粘着剤組成物によれば、優れた多段硬化性、粘着物性が得られる。また、硬化後の黄変が少なく、透明シートの透明性を損なわない。そのため、特にタッチパネルおよび画像表示装置等に用いられる粘着剤や粘着シートの用途に好適に適用できる。
【0098】
<粘着剤>
粘着剤は、上述した粘着剤組成物が架橋されてなるものである。本発明の粘着剤組成物が架橋(硬化)することにより、粘着剤組成物中に含有されるアクリル系樹脂(A)が分子内および分子間の少なくとも一方で架橋構造を形成する。その結果、本発明の粘着剤組成物が架橋されて粘着剤となる。
【0099】
粘着剤は、複数の段階で硬化させることができる多段硬化性を示す。粘着剤は、最終硬化前の一次硬化により低架橋状態となる。最終硬化と一次硬化は、必ずしも明確に区別できるものではないが、例えば、ゲル分率や動的粘弾性の相違により区別され得る。
【0100】
一次硬化工程および最終硬化工程のいずれの工程においても硬化手段は特に限定されず、加熱や活性エネルギー線の照射のいずれでもよい。また一次硬化工程を複数回に分けて行ってもよく、また最終硬化状態とするために多段硬化を行ってもよい。
粘着剤は、一次硬化後の粘着物性に優れるため、タッチパネルや画像表示装置等を構成する光学部材の貼り合せに好適に用いられる。
【0101】
粘着剤は、アクリル系樹脂(A)の架橋物を少なくとも含有するとも言える。架橋物は、アクリル系樹脂(A)の少なくとも一部が部分的に架橋した部分架橋物であってもよく、アクリル系樹脂(A)の全てが全体的に架橋した完全架橋物であってもよい。また、粘着剤は、アクリル系樹脂(A)の部分架橋物および完全架橋物の両方を含有してもよい。
【0102】
<粘着シート>
粘着シートは、粘着剤からなる粘着剤層を有する。粘着シートは、粘着剤層が複数の段階で硬化する多段硬化性を示し得る。
【0103】
粘着剤からなる粘着剤層を基材シート上に設けることにより粘着シートとすることができる。また、粘着剤層を離型シート上に設けることにより両面粘着シートとすることができる。
さらに、基材シートに替えて離型シート上に粘着剤層を形成し、反対側の粘着剤層面に離型シートを貼り合わせることにより、基材レスの両面粘着シートを作製することもできる。形成された粘着剤層上に、粘着剤層をさらに形成して、厚膜の粘着剤層をさらに形成してもよい。
得られた粘着シートや両面粘着シートは、使用時には離型シートを粘着剤層から剥離して使用に供される。
【0104】
粘着シートの作製方法として、例えば、以下の(i)、(ii)等の方法が挙げられる。
(i)粘着剤組成物を溶媒に溶解した塗工液を塗工した後に粘着シートとする方法。
(ii)粘着剤組成物を加熱により溶融した後に粘着シートとする方法。
【0105】
(i)の方法について説明する。
粘着剤組成物を溶媒に溶解した塗工液を塗工した後に粘着シートとする際には、適当な有機溶剤により粘着剤組成物を含有する塗工液の濃度を調整し、基材シート上に直接塗工する。その後、例えば80~105℃、0.5~10分間加熱処理等により乾燥させ、これを基材シートまたは離型シートに貼付する。その後、活性エネルギー線照射またはエージングすることによって粘着剤組成物を架橋(硬化)させ、粘着剤からなる粘着剤層を有する粘着シートを作製することができる。
【0106】
濃度調整に用いられる有機溶剤としては、アクリル系樹脂(A)の重合反応に用いられる有機溶媒として挙げられたものを使用することができる。粘着剤組成物の濃度は、固形分として通常、20~60重量%であり、好ましくは30~50重量%である。
【0107】
(ii)の方法について説明する。
粘着剤組成物を加熱により溶融した後に粘着シートとする場合、溶融した状態で基材シートの片面または両面に塗工し、その後に冷却する方法や、Tダイ等により基材シート上に押出しラミネートする方法等によって、基材シート上の片面または両面に所望の厚みとなるように粘着剤層を形成する。次いで、必要に応じて粘着剤層面に離型シートを貼り合わせることにより粘着シートを作製することができる。
【0108】
また、基材シート上に粘着剤層を形成した後、必要に応じて活性エネルギー線照射処理を行ない、さらにエージングすることで粘着剤組成物が硬化(架橋)してなる粘着剤層を有する粘着シートを作製することができる。
さらに、離型シート上に粘着剤層を形成し、反対側の粘着剤層面に離型シートを貼り合わせることにより、基材レスの両面粘着シートを作製することもできる。
得られた粘着シートや両面粘着シートは、使用時には離型シートを粘着剤層から剥離して使用に供される。
【0109】
基材シートとしては、特に限定されるものではないが、例えば、以下のものが挙げられる。
ポリエチレンナフタート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化エチレン等のポリフッ化エチレン樹脂;ナイロン6、ナイロン6,6等のポリアミド;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロン等のビニル重合体;三酢酸セルロース、セロファン等のセルロース系樹脂;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系樹脂;ポリスチレン;ポリカーボネート;ポリアリレート;ポリイミド等の合成樹脂シート、
アルミニウム、銅、鉄等の金属箔、
上質紙、グラシン紙等の紙、
硝子繊維、天然繊維、合成繊維等からなる織物や不織布。
基材シートは、単層体としてまたは2種以上が積層された複層体として用いることができる。これらのなかでも軽量化等の点から、合成樹脂シートが好ましい。
【0110】
離型シートとしては、例えば、基材シートで例示した各種の合成樹脂シート、紙、織物、不織布等に離型処理したものを使用することができる。離型シートとしては、例えば、シリコン系の離型シートを用いることが好ましい。
【0111】
粘着剤組成物の塗工方法は特に限定されない。例えば、ロールコーティング、ダイコーティング、グラビアコーティング、コンマコーティング、スロットコーティング、スクリーン印刷等の方法が挙げられる。
【0112】
活性エネルギー線としては、遠紫外線、紫外線、近紫外線、赤外線等の光線;X線、γ線等の電磁波の他;電子線;プロトン線;中性子線等が利用できる。硬化速度、照射装置の入手のしやすさ、価格等から紫外線による硬化が好ましい。
【0113】
粘着シートの粘着剤層の最終硬化前のゲル分率については、被着体の形状に依らず、容易に貼り合わせることが可能な点と、貼り合わせた後に粘着層が被着体を保持できる点から、0.1~60重量%が好ましく、より好ましくは1~50重量%、特に好ましくは5~45重量%である。
【0114】
粘着シートの粘着剤層の最終硬化後のゲル分率については、耐久性能と粘着力の点から、50~95重量%であることが好ましく、より好ましくは55~90重量%、特に好ましくは60~85重量%である。ゲル分率が低すぎると凝集力が低下することにより耐久性が低下する傾向がある。ゲル分率が高すぎると凝集力の上昇により粘着力が低下する傾向がある。
【0115】
ゲル分率は、例えば、以下の手法で適宜調整できる。
・活性エネルギー線照射量を調整すること。
・アクリル系樹脂(A)中の活性エネルギー線架橋性構造部位の含有量を調整すること。
・架橋剤(B)の種類や量を調整すること。
【0116】
ゲル分率は、架橋度(硬化度合い)の目安となるもので、例えば、以下の方法にて算出される。すなわち、基材となる高分子シート(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等)に粘着剤層が形成されてなる粘着シート(離型シートを設けていないもの)を200メッシュのSUS製金網で包み、23℃に保持したトルエン中に24時間浸漬したとき、金網中に残存した不溶解の粘着剤成分の重量百分率をゲル分率とする。ただし、トルエン溶解の前後における重量から基材の重量は差し引いて算出する。
【0117】
粘着シートの粘着剤層の厚みは、通常、50~3000μmが好ましく、より好ましくは75~1000μm、特に好ましくは100~350μmである。粘着剤層の厚みが薄すぎると衝撃吸収性が低下する傾向がある。粘着剤層の厚みが厚すぎると、例えば光学部材に貼り付けた際に全体の厚みが増して実用性が低下する傾向がある。
【0118】
粘着剤層の厚みは、ミツトヨ社製「ID-C112B」を用いて、粘着剤層含有積層体全体の厚みの測定値から、粘着剤層以外の構成部材の厚みの測定値を差し引くことにより求めた値である。
【0119】
粘着シートの粘着剤層は、粘着剤層の厚みが100μmの場合のヘイズ値が2%以下であることが好ましく、より好ましくは0~1.5%、特に好ましくは0~1%である。ヘイズ値が高すぎると粘着剤層が白化して透明性が低下する傾向がある。
ヘイズ値は、拡散透過率および全光線透過率を、HAZE MATER NDH4000(日本電色工業社製)を用いて測定し、得られた拡散透過率(DT)と全光線透過率(TT)の値を下式に代入して算出した。本機はJIS K7361-1に準拠している。
ヘイズ値(%)=(DT/TT)×100
【0120】
粘着剤層を光学部材上に積層形成することにより、粘着剤層付き光学部材を得ることができる。例えば、離型シート上に粘着剤層が形成された粘着シートの粘着剤層面を光学部材に貼り付けた後、離型シートを剥離することによって、粘着剤層付き光学部材を得ることができる。また、上記の両面粘着シートを用いて光学部材同士を貼合することもできる。
【0121】
光学部材としては、タッチパネルや画像表示装置を構成する部材が挙げられる。例えば、ディスプレイ(有機EL、液晶)、透明電導膜基板(ITO基板)、保護フィルム(ガラス)、透明アンテナ(フィルム)、透明配線等が挙げられる。
【実施例0122】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載に限定されない。例中、「部」、「%」とあるのは、重量基準を意味する。また、アクリル系樹脂(A)の重量平均分子量、動的粘弾性に基づくTg、粘着剤層の厚みに関しては、上述の実施形態に記載の方法に従って測定した。
【0123】
<原料および略称>
((メタ)アクリレート(a1))
・ATX:2-アクリロイルオキシチオキサントン
【0124】
(アルキル(メタ)アクリレート(a2))
・2EHA:2-エチルヘキシルアクリレート(ホモポリマーのTg:-70℃)
・2EHMA:2-エチルヘキシルメタクリレート(ホモポリマーのTg:-10℃)
【0125】
(アルキル(メタ)アクリレート(a3))
・MA:メチルメタクリレート(ホモポリマーのTg:8℃)
・EMA:エチルメタクリレート(ホモポリマーのTg:65℃)
【0126】
(極性基含有エチレン性不飽和モノマー(a4))
・4HBA:4-ヒドロキシブチルアクリレート
・HEA:2-ヒドロキシエチルアクリレート
【0127】
(重合開始剤)
・ADVN:2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(10時間半減期
温度52℃)
【0128】
(架橋剤(B))
・APG400:ポリプロピレングリコール♯400ジアクリレート(NKエステルAPG400、新中村化学工業社製の製品)
・TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート(アロニックスM309、東亜合成株式会社製の製品)
【0129】
(水素引抜型光重合開始剤)
・TZT:2-4-6トリメチルベンゾフェノンおよび4-メチルベンゾフェノンのブレンド品 IGM Resins B.V.社製品「Esacure TZT」
・DETX:2,4-ジエチルチオキサントン IGM Resins B.V.社製品「OmniradDETX」
【0130】
(分子内開裂型光重合開始剤)
・Omn379:2-(ジメチルアミノ)-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン IGM Resins B.V.社製品「Omnirad379」
・TPO:ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィンオキシド)IGM Resins B.V.社製品「OmniradTPO」
【0131】
<アクリル系樹脂(A)およびその比較例の合成>
(アクリル系樹脂(A-1))
冷却器付きの2Lフラスコに、重合溶媒として酢酸エチル:24部(沸点77℃)、メチルエチルケトン:16部(沸点80℃)、テトラヒドロフラン:0.27部(沸点66℃)、ADVN:0.01部、2EHA:4.5部、MA:1.5部、EMA:2.5部、HEA:1.5部、ATX:0.03部を入れ、フラスコ内で加熱還流させた後、アセトン:10部、テトラヒドロフラン:2.4部、ADVN:0.18部、2EHA:40.5部、MA:13.5部、EMA:22.5部、HEA:13.5部、ATX:0.27部を3時間かけて滴下した。さらに、1時間後、酢酸エチル:10部、ADVN:0.13部の混合物を1時間かけて滴下し、アクリル系樹脂(A-1)の溶液を得た。アクリル系樹脂(A-1)のポリマー組成を表1に示す。また、アクリル系樹脂(A-1)の重量平均分子量(Mw)、分散度(PDI)、動的粘弾性に基づくガラス転移温度を表1に示す。
【0132】
(アクリル系樹脂(A-2)~(A-5))
重合成分を下記の表1の通りとした以外は実施例1と同様にしてアクリル系樹脂(A-2)~(A-5)を製造した。各アクリル系樹脂の物性を下記の表1に示す。
【0133】
(アクリル系樹脂(A’-1))
重合成分を下記の表1の通りとした以外は実施例1と同様にしてアクリル系樹脂(A’-1)を製造した。その物性を下記の表1に示す。
【0134】
【0135】
<粘着剤組成物の調製、基材レス両面粘着シート、粘着剤層付きPETシートの作製>
(実施例1)
アクリル系樹脂(A-1)の溶液をトルエンにて固形分濃度45%に希釈することで粘着剤組成物を得た。ポリエステル系離型シートに、乾燥後の厚みが約50μmとなるように粘着剤組成物を塗布した。その後、100℃で5分間乾燥し、粘着剤組成物からなる粘着剤組成物層を形成した。その後、粘着剤組成物層側を別のポリエステル系離型シートに貼り合わせた。粘着剤組成物層の両側がポリエステル系離型シートに挟まれた、粘着剤組成物層の厚みが50μmの基材レス両面粘着シートを得た。
その後、UVカットフィルム(透過率:波長200nm~380nmの範囲で1%以下、波長410nm~500nmの範囲で80%以上)を貼合したガラス越しに高圧水銀UV照射装置にて、ピーク照度:150mW/cm2、積算露光量:1000mJ/cm2(500mJ/cm2×2パス)で紫外線照射を行うことで粘着剤層を形成した(一次硬化)。粘着剤層の厚みが50μmの基材レス両面粘着シートを得た。
次いで、得られた基材レス両面粘着シートの粘着剤層から一方の面の離型シートを剥がした。露出した粘着剤層側を易接着処理ポリエチレンテレフタレート(PET)シート(厚み125μm)に押圧した。粘着剤層の厚みが50μmの粘着剤層付きPETシートを得た。
【0136】
(実施例2~5)
表2に示す通りに、アクリル系樹脂(A)を変更した以外は実施例1と同様にして各例の粘着剤組成物を調製した。次いで、実施例1と同様にして粘着剤層の厚みが50μmの基材レス両面粘着シート、粘着剤層付きPETシートを順次作製した。
【0137】
(実施例6)
アクリル系樹脂(A-1)の溶液100部(固形分換算)に対して、APG400:5部(固形分換算)を混合し、粘着剤組成物を得た。得られた粘着剤組成物をトルエンにて固形分濃度45%に調整し、ポリエステル系離型シートに、乾燥後の厚みが約50μmとなるように塗布し、100℃で5分間乾燥し、粘着剤組成物層を形成した。次いで、実施例1と同様にして粘着剤層の厚みが50μmの基材レス両面粘着シート、粘着剤層付きPETシートを順次作製した。各例の粘着剤組成物の組成を表2に示す。
【0138】
(実施例7、8)
表2に示す通りに、アクリル系樹脂(A)を変更した以外は実施例6と同様にして各例の粘着剤組成物を調製した。次いで、実施例1と同様にして粘着剤層の厚みが50μmの基材レス両面粘着シート、粘着剤層付きPETシートを順次作製した。
【0139】
(比較例1)
アクリル系樹脂(A’-1)の溶液100部(固形分換算)に対して、Esacure TZT:2部(固形分換算)、TMPTA:10部(固形分換算)を混合し、粘着剤組成物を得た。得られた粘着剤組成物をトルエンにて固形分濃度45%に調整し、ポリエステル系離型シートに、乾燥後の厚みが約50μmとなるように塗布し、100℃で5分間乾燥し、粘着剤組成物層を形成した。次いで、実施例1と同様にして粘着剤層の厚みが50μmの基材レス両面粘着シート、粘着剤層付きPETシートを順次作製した。各例の粘着剤組成物の組成を表2に示す。
【0140】
(比較例2~6)
表2に示す通りに、架橋剤(B)、光重合開始剤を変更した以外は比較例1と同様にして各例の粘着剤組成物を調製した。次いで、比較例1と同様にして粘着剤層の厚みが50μmの基材レス両面粘着シート、粘着剤層付きPETシートを順次作製した。各例の粘着剤組成物の組成を表2に示す。
【0141】
【0142】
<測定方法、評価方法>
粘着組成物の測定方法、評価方法は以下の通りである。
【0143】
(一次硬化後かつ最終硬化前のゲル分率)
各例の基材レス両面粘着シートを40mm×40mmに裁断し、23℃、50%RHの条件下で30分静置した後、一方の離型シートを剥がし、露出した粘着剤層側を50mm×100mmのSUSメッシュシート(200メッシュ)に貼合した。残りの離型シートを剥離し、SUSメッシュシートの長手方向に対して中央部より折り返して粘着剤層をSUSメッシュシートで包み込んだ。これを23℃に保持したトルエン250gの入った密封容器にて24時間浸漬したときの重量変化からゲル分率(%)を算出した。
【0144】
(最終硬化後のゲル分率)
各例の基材レス両面粘着シートについてUVカットフィルムを貼合したガラス越しに高圧水銀UV照射装置にて、ピーク照度:150mW/cm2、積算露光量:1500mJ/cm2(500mJ/cm2×3パス)で紫外線照射を行った後、40mm×40mmに裁断し、23℃、50%RHの条件下で30分静置した。その後、一方の離型シートを剥がし、露出した粘着剤層側を50mm×100mmのSUSメッシュシート(200メッシュ)に貼合した。残りの離型シートを剥離し、SUSメッシュシートの長手方向に対して中央部より折り返して粘着剤層をSUSメッシュシートで包み込んだ。これを23℃に保持したトルエン250gの入った密封容器にて24時間浸漬したときの重量変化からゲル分率(%)を算出した。
【0145】
(多段硬化性)
多段硬化性は(最終硬化後のゲル分率)-(一次硬化後のゲル分率)で求められるゲル分率差(%)に基づいて評価した。
一次硬化の後、最終硬化にてゲル分率が上昇するということは、硬化が多段階(少なくとも2段階以上)で進行可能ということになる。つまり、多段硬化性が示されていることになる。
【0146】
多段硬化性の評価基準は下記の通りである。
A(優良):ゲル分率差が30%以上である。
B(合格):ゲル分率差が15%以上30%未満である。
C(不合格):ゲル分率差が15%未満である。
【0147】
(粘着力)
粘着力は、最終硬化後に測定した以下の180度剥離強度(N/25mm)に基づいて評価した。
各例の粘着剤層付きPETシートについて、幅25mm×長さ100mmの大きさに裁断し、UVカットフィルムを貼合したガラス越しに高圧水銀UV照射装置にて、ピーク照度:150mW/cm2、積算露光量:1500mJ/cm2(500mJ/cm2×3パス)で紫外線照射を行った後、離型シートを剥離した。露出した粘着剤層側を無アルカリガラス(コーニング社製「イーグルXG」、厚み1.1mm)に、23℃、50%RHの雰囲気下、2kgゴムローラー2往復で加圧して貼付し、同雰囲気下で30分間静置した。この後、常温(23℃)下、剥離速度60mm/minで180度剥離強度(N/25mm)を測定した。
【0148】
180度剥離強度の評価基準は下記の通りである。
A(優良):剥離強度が20(N/25mm)以上である。
C(不合格):剥離強度が20(N/25mm)未満である。
【0149】
(保持力)
保持力は、最終硬化後に測定した以下のズレの結果に基づいて評価した。
各例の粘着剤層付きPETシートについて、25mm×50mmの大きさに裁断し、UVカットフィルムを貼合したガラス越しに高圧水銀UV照射装置にて、ピーク照度:150mW/cm2、積算露光量:1500mJ/cm2(500mJ/cm2×3パス)で紫外線照射を行った後、離型シートを剥離した。露出した粘着剤層側にステンレス鋼板(SUS304)を静置し、2kgローラーを往復させて加圧して貼付(貼り付け面積25mm×25mm)し、クリープテスター(テスター産業社製、恒湿槽付保持力試験機BE-501)を用いて、80℃雰囲気下で24時間、荷重1kgを加えて保持力を測定した。
【0150】
保持力の評価基準は下記の通りである。
A(優良):ズレなし(N.C)。
B(合格):ズレが0.5mm未満である。
C(不合格):ズレが0.5mm以上であるか、PETシートが落下した。
【0151】
[光学特性]
光学特性は、最終硬化後に以下の通り測定したヘイズ値、色差b*値に基づいて評価した。
各例の基材レス両面粘着シートを30mm×50mmの大きさに裁断した。UVカットフィルムを貼合したガラス越しに高圧水銀UV照射装置にて、ピーク照度:150mW/cm2、積算露光量:1500mJ/cm2(500mJ/cm2×3パス)で紫外線照射を行った。その後、一方の離型シートを剥離した。露出した粘着剤層側を無アルカリガラス(コーニング社製「イーグルXG」、厚み1.1mm)に貼り合わせた。その後、50℃、0.5MPa、20分間の条件でオートクレーブ処理を行い、23℃、50%RHの雰囲気下で30分間静置し、残りの離型シートを剥離することで「無アルカリガラス/粘着剤層」の層構成を有する試験片を作製した。
得られた試験片を用いてヘイズ値、色差b*値を測定した。ヘイズ値、色差b*値は、粘着剤層のみを無アルカリガラスに貼着した状態で測定した値である。該無アルカリガラスのヘイズ値は0.06、色差b*値は0.16である。
【0152】
(透明性)
ヘイズ値は、拡散透過率および全光線透過率を、HAZE MATER NDH4000(日本電色工業社製)を用いて測定し、得られた拡散透過率(DT)と全光線透過率(TT)の値を下記式に代入して算出した。
ヘイズ値(%)=(DT/TT)×100
【0153】
(耐黄変性)
色差b*値は、JIS K7105に準拠して測定した。その測定は、分光色差計(SE6000:日本電色工業社製)を用いて、透過条件で行った。
【0154】
色差の評価基準は下記の通りである。
A(優良):△b*値が1.0未満
C(不合格):△b*値が1.0以上
【0155】
<結果>
各例の測定結果を表3に示す。
【0156】
【0157】
実施例1~8では、可視光による優れた多段硬化性を示し、かつ、硬化後の粘着物性、光学特性に優れる粘着剤が得られた。対して比較例1~6では、可視光による多段硬化性、粘着力および透明性の全てを同時に満足することがなかった。
本発明によれば、可視光による優れた多段硬化性を示し、かつ、硬化後の粘着物性、光学特性に優れる粘着剤が得られるアクリル系樹脂および粘着剤組成物が提供される。