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特開2024-130807機能剤含有重合体の製造方法、機能剤含有共重合体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130807
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】機能剤含有重合体の製造方法、機能剤含有共重合体
(51)【国際特許分類】
   C08F 20/18 20060101AFI20240920BHJP
   C08F 8/30 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
C08F20/18
C08F8/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040715
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142309
【弁理士】
【氏名又は名称】君塚 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】井戸 栄善
(72)【発明者】
【氏名】茶谷 俊介
【テーマコード(参考)】
4J100
【Fターム(参考)】
4J100AA02Q
4J100AA03Q
4J100AB02Q
4J100AL02P
4J100AM02Q
4J100CA01
4J100CA03
4J100DA01
4J100DA28
4J100FA02
4J100FA03
4J100FA08
4J100FA19
4J100GC07
4J100GD11
4J100HA35
4J100HA61
4J100HC09
4J100HC43
4J100HC59
4J100HE05
4J100HE14
4J100JA15
(57)【要約】
【課題】機能剤含有重合体の機能剤の導入効率に優れる製造方法、およびメタクリレート系樹脂との相容性が改善された機能剤含有共重合体の提供。
【解決手段】機能剤含有重合体の製造方法は、アクリレートに基づく単位を有する重合体と、水酸基およびアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種を有する機能剤とをグアニジン化合物の存在下で反応させることを含む。機能剤含有共重合体は、メタクリレートに基づく単位と、アクリレートに基づく単位に結合した機能剤に基づく化学構造と、を有する。機能剤は、紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤からなる群から選ばれる少なくとも一種である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリレートに基づく単位を有する重合体と、水酸基およびアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種を有する機能剤とをグアニジン化合物の存在下で反応させることを含み、
前記機能剤が、紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤からなる群から選ばれる少なくとも一種である、機能剤含有重合体の製造方法。
【請求項2】
アクリレートに基づく単位を有する重合体と、水酸基およびアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種を有する機能剤とをグアニジン化合物の存在下で反応させること、および、次いで、前記グアニジン化合物を除去すること、
を含み、
前記機能剤が、紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤からなる群から選ばれる少なくとも一種である、機能剤含有重合体の製造方法。
【請求項3】
水を含む溶媒、および求核剤を捕捉可能な化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種を用いて前記グアニジン化合物を除去する、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記機能剤が、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、サリシレート系化合物およびベンゾフェノン系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記機能剤が、下記式(1)で表される化合物、下記式(2)で表される化合物、下記式(3)で表される化合物および下記式(4)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項4に記載の製造方法。
【化1】
式(1)~式(4)中、R~Rはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数が1~10のアルキル基、芳香族化合物またはエステル化合物である。
【請求項6】
前記グアニジン化合物が、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンである、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記アクリレートに基づく単位の割合が、前記重合体の全構成単位の10~80質量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記重合体の数平均分子量が、10,000以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記重合体が、メチルアクリレートに基づく単位とメチルメタクリレートに基づく単位とを有する共重合体、およびn-ブチルアクリレートに基づく単位とメチルメタクリレートに基づく単位とを有する共重合体からなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
メタクリレートに基づく単位と、
アクリレートに基づく単位に結合した機能剤に基づく化学構造と、
を有し、
前記機能剤が、紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤からなる群から選ばれる少なくとも一種である、機能剤含有共重合体。
【請求項11】
前記機能剤が、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、サリシレート系化合物およびベンゾフェノン系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項10に記載の機能剤含有共重合体。
【請求項12】
前記機能剤が、下記式(1)で表される化合物、下記式(2)で表される化合物、下記式(3)で表される化合物および下記式(4)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項11に記載の機能剤含有共重合体。
【化2】
式(1)~式(4)中、R~Rはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数が1~10のアルキル基、芳香族化合物またはエステル化合物である。
【請求項13】
前記化学構造が、下式(5)、下式(6)および下式(7)からなる群から選ばれる少なくとも一種で表される、請求項10~12のいずれか一項に記載の機能剤含有共重合体。
【化3】
式(5)~式(7)中、Rはそれぞれ独立に、水酸基またはアミノ基である。
【請求項14】
メチルメタクリレートに基づく単位、メチルアクリレートに基づく単位およびn-ブチルアクリレートに基づく単位からなる群から選ばれる少なくとも一種を有する、請求項10~12のいずれか一項に記載の機能剤含有共重合体。
【請求項15】
前記化学構造の割合が、全構成単位の1~90質量%である、請求項10~12のいずれか一項に記載の機能剤含有共重合体。
【請求項16】
数平均分子量が、10,000以上である、請求項10~12のいずれか一項に記載の機能剤含有共重合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能剤含有重合体の製造方法、機能剤含有共重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂物品の品質維持等を目的として、紫外線吸収剤等の機能剤が利用されている。該機能剤がポリマー構造中に導入された機能剤含有重合体の例がある(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-54183号公報
【特許文献2】特開2001-19711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1、2の手法では機能剤の導入効率に改善の余地がある。また、特許文献1、2の各実施例に開示される機能剤含有共重合体においては、メタクリレート系樹脂との相容性に改善の余地がある。
【0005】
本発明の一態様は、機能剤含有重合体の機能剤の導入効率に優れる製造方法を提供することを目的とする。
本発明の他の態様は、メタクリレート系樹脂との相容性が改善された機能剤含有共重合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記の態様を有する。
[1]アクリレートに基づく単位を有する重合体と、水酸基およびアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種を有する機能剤とをグアニジン化合物の存在下で反応させることを含み、前記機能剤が、紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤からなる群から選ばれる少なくとも一種である、機能剤含有重合体の製造方法。
[2]アクリレートに基づく単位を有する重合体と、水酸基およびアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種を有する機能剤とをグアニジン化合物の存在下で反応させること、および、次いで、前記グアニジン化合物を除去すること、を含み、前記機能剤が、紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤からなる群から選ばれる少なくとも一種である、機能剤含有重合体の製造方法。
[3]水を含む溶媒、および求核剤を捕捉可能な化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種を用いて前記グアニジン化合物を除去する、[2]に記載の製造方法。
[4]前記機能剤が、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、サリシレート系化合物およびベンゾフェノン系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種である、[1]~[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5]前記機能剤が、下記式(1)で表される化合物、下記式(2)で表される化合物、下記式(3)で表される化合物および下記式(4)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種である、[4]に記載の製造方法。
【0007】
【化1】
【0008】
式(1)~式(4)中、R~Rはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数が1~10のアルキル基、芳香族化合物またはエステル化合物である。
【0009】
[6]前記グアニジン化合物が、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンである、[1]~[5]のいずれかに記載の製造方法。
[7]前記アクリレートに基づく単位の割合が、前記重合体の全構成単位の10~80質量%である、[1]~[6]のいずれかに記載の製造方法。
[8]前記重合体の数平均分子量が、10,000以上である、[1]~[7]のいずれかに記載の製造方法。
[9]前記重合体が、メチルアクリレートに基づく単位とメチルメタクリレートに基づく単位とを有する共重合体、およびn-ブチルアクリレートに基づく単位とメチルメタクリレートに基づく単位とを有する共重合体からなる群から選ばれる少なくとも一種である、[1]~[8]のいずれかに記載の製造方法。
【0010】
[10]メタクリレートに基づく単位と、アクリレートに基づく単位に結合した機能剤に基づく化学構造と、を有し、前記機能剤が、紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤からなる群から選ばれる少なくとも一種である、機能剤含有共重合体。
[11]前記機能剤が、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、サリシレート系化合物およびベンゾフェノン系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種である、[10]に記載の機能剤含有共重合体。
[12]前記機能剤が、下記式(1)で表される化合物、下記式(2)で表される化合物、下記式(3)で表される化合物および下記式(4)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種である、[11]に記載の機能剤含有共重合体。
【0011】
【化2】
【0012】
式(1)~式(4)中、R~Rはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数が1~10のアルキル基、芳香族化合物またはエステル化合物である。
【0013】
[13]前記化学構造が、下式(5)、下式(6)および下式(7)からなる群から選ばれる少なくとも一種で表される、[10]~[12]のいずれかに記載の機能剤含有共重合体。
【0014】
【化3】
【0015】
式(5)~式(7)中、Rはそれぞれ独立に、水酸基またはアミノ基である。
【0016】
[14]メチルメタクリレートに基づく単位、メチルアクリレートに基づく単位およびn-ブチルアクリレートに基づく単位からなる群から選ばれる少なくとも一種を有する、[10]~[13]のいずれかに記載の機能剤含有共重合体。
[15]前記化学構造の割合が、全構成単位の1~90質量%である、[10]~[14]のいずれか一項に記載の機能剤含有共重合体。
[16]数平均分子量が、10,000以上である、[10]~[15]のいずれかに記載の機能剤含有共重合体。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一態様によれば、機能剤含有重合体の機能剤の導入効率に優れる製造方法が提供される。
本発明の他の態様によれば、メタクリレート系樹脂との相容性が改善された機能剤含有共重合体が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
用語の意味は、以下の通りである。
数平均分子量は、実施例に記載の方法によって求められる値である。
数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値および上限値として含むことを意味する。
式(1)で表される化合物は化合物(1)と記す。他の式で表される化合物も同様に記す。
【0019】
<機能剤含有重合体の製造方法>
本発明の機能剤含有重合体の製造方法は、アクリレートに基づく単位を有する重合体(以下「重合体(A)」と記す。)と、水酸基およびアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種を有する機能剤(B)とをグアニジン化合物(C)の存在下で反応させることを含む。該機能剤(B)は、紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤からなる群から選ばれる少なくとも一種である。
【0020】
本発明の機能剤含有重合体の製造方法においては、グアニジン化合物(C)の存在下で重合体(A)および機能剤(B)を反応させるため、機能剤(B)の水酸基、アミノ基と重合体(A)のアクリレートに基づく単位(以下、「アクリレート単位(a1)」と記す。)の反応効率がよくなる。よって、機能剤(B)を重合体(A)の化学構造に効率よく導入できる。本発明の製造方法で得られる機能剤含有重合体(D)は、アクリレート単位(a1)に結合した機能剤(B)に基づく化学構造を有する。
【0021】
以下、いくつかの実施形態について詳細に説明するが、以下の記載は実施形態の代表例に関するものであり、本発明はこれらに限定されない。
【0022】
(重合体(A))
重合体(A)は、アクリレート単位(a1)を有する。重合体(A)は、アクリレート単位(a1)の単独重合体であってもよく、2種以上のアクリレート単位(a1)を有する共重合体であってもよい。
【0023】
アクリレートとは、ヒドロキシ基、アミノ基およびエポキシ基を含有しないアクリル酸エステルである。例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸イソステアリル、アクリル酸ヘキサデシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸イソノニル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸3,5,5-トリメチルシクロヘキシル、アクリル酸ジシクロペンタニル、アクリル酸ジシクロペンテニル、アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、テルペンアクリレートおよびその誘導体、水添ロジンアクリレートおよびその誘導体、アクリル酸ドコシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸2-メトキシエチルが挙げられる。ただし、アクリレートはこれらの例示に何ら限定されない。
アクリレートは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
重合体(A)は、アクリレート単位(a1)と、アクリレート以外の他のモノマーに基づく単位(以下、「他のモノマー単位(a2)」と記す。)とを有する共重合体であってもよい。
他のモノマーは、アクリレートと共重合可能なモノマーであれば特に限定されない。例えば、エチレン、プロピレン、メタクリレート、スチレンおよびその誘導体、アクリロニトリルが挙げられる。ただし、他のモノマーはこれらの例示に何ら限定されない。
他のモノマーは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
他のモノマーとしては、メタクリレート系樹脂との相容性が改善された後述する機能剤含有共重合体(D1)が得られる点から、メタクリレートが好ましい。
メタクリレートとは、ヒドロキシ基、アミノ基およびエポキシ基を含有しないメタクリル酸エステルである。例えば、メタクリル酸メチル(メチルメタクリレート)、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸イソステアリル、メタクリル酸ヘキサデシル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸イソノニル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸3,5,5-トリメチルシクロヘキシル、メタクリル酸ジシクロペンタニル、メタクリル酸ジシクロペンテニル、メタクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、テルペンアクリレートおよびその誘導体、水添ロジンアクリレートおよびその誘導体、メタクリル酸ドコシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸2-メトキシエチルが挙げられる。ただし、メタクリレートはこれらの例示に何ら限定されない。
メタクリルクリレートは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
重合体(A)としては、下記の共重合体(A1)および共重合体(A2)からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
共重合体(A1):メチルアクリレートに基づく単位とメチルメタクリレートに基づく単位とを有する共重合体、
共重合体(A2):n-ブチルアクリレートに基づく単位とメチルメタクリレートに基づく単位とを有する共重合体。
【0027】
重合体(A)は2種以上のアクリレート単位(a1)を有する共重合体であってもよいが、重合体(A)が他のモノマー単位(a2)を有する場合、アクリレート単位(a1)の割合は重合体(A)の全構成単位の10~80質量%が好ましく、10~50質量%がより好ましい。アクリレート単位(a1)の割合が前記数値範囲内の下限値以上であると、より多くの機能剤を重合体(A)のアクリレート単位(a1)に導入しやすい。アクリレート単位(a1)の割合が前記数値範囲内の上限値以下であると、機能剤に基づく化学構造を側鎖に有する機能剤含有重合体(D)の収率が向上しやすい。
【0028】
重合体(A)が他のモノマー単位(a2)をさらに有する共重合体の場合、他のモノマー単位(a2)の割合は重合体(A)の全構成単位の20~90質量%が好ましく、50~90質量%がより好ましい。他のモノマー単位(a2)の割合が前記数値範囲内の下限値以上であると、機能剤に基づく化学構造を側鎖に有する機能剤含有重合体(D)の収率が向上しやすい。他のモノマー単位(a2)の割合が前記数値範囲内の上限値以下であると、より多くの機能剤を重合体(A)のアクリレート単位(a1)に導入しやすい。
【0029】
重合体(A)の数平均分子量は10,000以上が好ましく、10,000~500000がより好ましく、30000~200000がさらに好ましい。重合体(A)の数平均分子量が前記数値範囲内の下限値以上であると、反応後に得られる機能剤含有重合体(D)を機能剤として用いたときにブリードアウトが生じにくい。重合体(A)の数平均分子量が前記数値範囲内の上限値以下であると、過度な増粘を抑制でき、取扱性が良好となる。
【0030】
重合体(A)のガラス転移点は10~150℃が好ましく、10~120℃がより好ましい。ガラス転移点が複数存在する場合は、最も温度の高いガラス転移点を重合体(A)のガラス転移点とする。重合体(A)のガラス転移点が前記数値範囲内の下限値以上であると、反応後に得られる機能剤含有重合体(D)を成型材料等の用途に適用しやすい。重合体(A)のガラス転移点が前記数値範囲内の上限値以下であると、反応後に得られる機能剤含有重合体(D)を塗料、粘接着剤等の用途に適用しやすい。
【0031】
ガラス転移点(℃)は、示差走査熱量計(X-DSC7000、日立ハイテクサイエンス社製)を使用して測定される値である。サンプルを-30~150℃まで10℃/分で昇温し、その後150℃から-30℃まで10℃/分で降温するサイクルを2度行い、2度目の昇温過程よりガラス転移点(℃)を測定した。
【0032】
以上説明したいくつかの例に係る重合体(A)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
(機能剤(B))
機能剤(B)は、紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤からなる群から選ばれる少なくとも一種である。機能剤(B)は水酸基およびアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種を有するため、重合体(A)のアクリレート単位(a1)と反応することで、重合体(A)の側鎖に導入される。機能剤(B)が水酸基を有する場合、典型的にはアクリレート単位(a1)とのエステル交換反応によって、重合体(A)の側鎖に導入される。機能剤(B)がアミノ基を有する場合、典型的にはアクリレート単位(a1)とのアミド化反応によって、重合体(A)の側鎖に導入される。
【0034】
機能剤(B)は、アクリレート単位(a1)と反応可能な水酸基、アミノ基を有していれば特に限定されるものではないが、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、サリシレート系化合物、ベンゾフェノン系化合物、フェノール系化合物およびヒンダードアミン系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種が好ましい。なかでも、化合物(1)、化合物(2)、化合物(3)および化合物(4)からなる群から選ばれる少なくとも一種が好ましい。
【0035】
【化4】
【0036】
式(1)~式(4)中、R~Rはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数が1~10のアルキル基、芳香族化合物またはエステル化合物である。
【0037】
機能剤(B)のうち、紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、サリシレート系化合物、ベンゾフェノン系化合物が挙げられる。
紫外線吸収剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
機能剤(B)のうち、ラジカル捕捉剤としては、例えば、フェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物が挙げられる。
ラジカル捕捉剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
(グアニジン化合物(C))
グアニジン化合物(C)は、重合体(A)と機能剤(B)との反応において触媒として機能する。本発明においてはグアニジン化合物(C)を触媒として使用するため、重合体(A)と機能剤(B)の反応効率が向上する。
【0040】
グアニジン化合物としては、例えば、下記の化合物(11)、化合物(12)、化合物(13)、化合物(14)が挙げられる。
【0041】
【化5】
【0042】
式(14)中、R21、R22、R23、R24は水素原子、メチル基、エチル基またはtert-ブチル基である。
【0043】
なかでも、グアニジン化合物としては化合物(11)、すなわち、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(TBD)が好ましい。
【0044】
(エステル交換反応)
水酸基を有する機能剤(B)の場合、アクリレート単位(a1)と機能剤(B)との間でエステル交換反応が起きる。アクリレート単位(a1)を-(CHCH(C(=O)O-Ra1))-で表し、水酸基を有する機能剤(B)をX-OHで表すとき、Ra1とXとの間でエステル交換反応が起きる。結果、重合体(A)のアクリレート単位(a1)のうち、少なくとも一部のRa1がXに変換される。この場合、エステル結合を介して機能剤(B)に基づく化学構造が側鎖に結合した機能剤含有重合体(D)が得られる。
機能剤含有重合体(D)は、重合体(A)のアクリレート単位(a1)のすべてがエステル交換反応したものでもよく、アクリレート単位(a1)の一部がエステル交換反応したものでもよい。
【0045】
エステル交換反応の反応温度は特に限定されないが、例えば、70~200℃が好ましい。エステル交換反応の反応温度が前記数値範囲内の下限値以上であると、エステル交換反応の変換率が向上しやすい。エステル交換反応の反応温度が前記数値範囲内の上限値以下であると、グアニジン化合物の分解が抑制される。
【0046】
エステル交換反応の反応時間は特に限定されないが、例えば、0.5~24時間が好ましい。エステル交換反応の反応時間が前記数値範囲内の下限値以上であると、エステル交換反応の変換率が向上しやすい。エステル交換反応の反応時間が前記数値範囲内の上限値以下であると、生産性が向上しやすい。
【0047】
エステル交換反応は溶媒中で行ってもよく、溶媒を用いずに行ってもよい。溶媒は、エステル交換反応に不活性な化合物であればよく、特に限定されない。
溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル等の極性溶媒が挙げられる。溶媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
エステル交換反応を行う際、反応によって生成されるアルコール類を取り除く目的でモレキュラーシーブを加えてもよい。モレキュラーシーブの使用量は重合体(A)に対して5~50質量部が好ましく、10~30質量部がより好ましい。モレキュラーシーブの使用量が前記数値範囲内の下限値以上であると、エステル交換反応の変換率が向上しやすい。モレキュラーシーブの使用量が前記数値範囲内の上限値以下であると、反応溶液を撹拌しやすい。
【0049】
(アミド化反応)
アミノ基を有する機能剤(B)の場合、アクリレート単位(a1)と機能剤(B)との間でアミド化反応が起きる。アクリレート単位(a1)を-(CHCH(C(=O)O-Ra1))-で表し、機能剤(B)をN(X)(X)Hで表すとき、Ra1とX、Xとの間でアミド化反応が起きる(X、Xは同時に水素原子ではない。)。結果、重合体(A)のアクリレート単位(a1)のうち、少なくとも一部のRa1がXまたはXに変換される。そのため、アミド結合を介して機能剤(B)に基づく化学構造が側鎖に結合した機能剤含有重合体(D)が得られる。
機能剤含有重合体(D)は、重合体(A)のアクリレート単位(a1)のすべてがアミド化反応したものでもよく、アクリレート単位(a1)の一部がアミド化反応したものでもよい。
【0050】
アミド化反応の反応温度は特に限定されないが、例えば、70~200℃が好ましい。アミド化反応の反応温度が前記数値範囲内の下限値以上であると、アミド化反応の収率が向上しやすい。アミド化反応の反応温度が前記数値範囲内の上限値以下であると、触媒の分解を抑制しやすい。
【0051】
アミド化反応の反応時間は特に限定されないが、例えば、0.5~24時間が好ましい。アミド化反応の反応時間が前記数値範囲内の下限値以上であると、アミド化反応の変換率が向上しやすい。アミド化反応の反応時間が前記数値範囲内の上限値以下であると、生産性が向上しやすい。
【0052】
アミド化反応は溶媒中で行ってもよく、溶媒を用いずに行ってもよい。溶媒は、アミド化反応に不活性な化合物であればよく、特に限定されない。溶媒の例としては、エステル交換反応について説明した化合物と同じものが挙げられる。
【0053】
(グアニジン化合物の除去)
好適例に係る機能剤含有重合体(D)の製造方法は、重合体(A)と機能剤(B)とをグアニジン化合物(C)の存在下で反応させた後、次いで、グアニジン化合物(C)を除去することをさらに含み得る。
グアニジン化合物(C)の除去方法は特に限定されるものではないが、例えば、水を含む溶媒、および求核剤を捕捉可能な化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種を用いてグアニジン化合物(C)を除去することは、充分にグアニジン化合物(C)を除去できるため有用である。
【0054】
<機能剤含有共重合体>
以上説明した本発明の機能剤含有重合体の製造方法において、重合体(A)としてアクリレート単位(a1)とメタクリレートに基づく単位とを有する共重合体を用いたとき、以下に説明する本発明の機能剤含有共重合体(D1)を得ることができる。機能剤含有共重合体(D1)は、メタクリレートに基づく単位を有するため、メタクリレート系樹脂との相容性が改善される。
重合体(A)および機能剤(B)の詳細および好ましい態様は、<機能剤含有重合体の製造方法>の項で説明した内容と同じである。
【0055】
本発明の機能剤含有共重合体(D1)は、メタクリレートに基づく単位と、アクリレート単位(a1)に結合した機能剤(B)に基づく化学構造とを少なくとも有する。好適例に係る機能剤含有共重合体(D1)は、メチルメタクリレートに基づく単位、メチルアクリレートに基づく単位およびn-ブチルアクリレートに基づく単位からなる群から選ばれる少なくとも一種を有し得る。
【0056】
好適例に係る機能剤含有共重合体(D1)において、アクリレート単位(a1)に結合した機能剤(B)に基づく化学構造は、下式(5)、下式(6)および下式(7)からなる群から選ばれる少なくとも一種で表され得る。
【0057】
【化6】
【0058】
式(5)~式(7)中、Rはそれぞれ独立に、水酸基またはアミノ基である。
【0059】
好適例に係る機能剤含有共重合体(D1)においては、アクリレート単位(a1)に結合した機能剤(B)に基づく化学構造の割合が共重合体の全構成単位の1~90質量%であり、好ましくは10~80質量%、より好ましくは20~70質量%である。該割合が前記数値範囲内の下限値以上であると、機能剤(B)による特性が機能剤含有共重合体(D1)において発現しやすい。該割合が前記数値範囲内の上限値以上であると、良好な収率で機能剤含有共重合体(D1)を得やすい。
【0060】
機能剤含有共重合体(D1)の数平均分子量は10,000以上が好ましく、10,000~500000がより好ましく、30000~200000がさらに好ましい。機能剤含有共重合体(D1)の数平均分子量が前記数値範囲内の下限値以上であると、機能剤含有共重合体(D1)を機能剤として用いたときにブリードアウトが生じにくい。機能剤含有共重合体(D1)の数平均分子量が前記数値範囲内の上限値以下であると、過度な増粘を抑制でき、取扱性が良好となる。
【実施例0061】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載に限定されない。
【0062】
<略称>
(アクリレート)
・MA:メチルアクリレート
・BA:n-ブチルアクリレート
【0063】
(メタクリレート)
・MMA:メチルメタクリレート
【0064】
(グアニジン化合物)
TBD:1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(1,5,7―Triazabicyclo[4.4.0]dec―5-ene)
【0065】
(紫外線吸収剤)
Tinuvin405:2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-(2’-エチル)ヘキシル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス-(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン(BASF社製)
【0066】
<測定方法>
(Mn、Mw)
数平均分子量:Mn、質量平均分子量:Mwは、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を使用し、ポリメチルメタクリレートの検量線から算出した値である。より詳細には、テトラヒドロフラン5mlに測定対象のポリマー5mgを溶解させ、0.45μmフィルターで濾過した溶液をGPC測定用のサンプルとした。
ゲル浸透クロマトグラフィー測定装置(東ソー社製、製品名「HLC-8420GPC」)に、高分子測定ガードカラム(東ソー社製、製品名「TSK-guardcolumn SUPER H-H 4.6mmφ×35mm」)と2本の高分子測定カラム(東ソー社製、製品名「TSK-GEL SUPER HM-H 6.0mmφ×150mm」)を直列に接続して使用した。
検出器には示差屈折計(RI)を用いた。分離カラム温度:40℃、移動相:テトラヒドロフラン、移動相の流量:0.6mL/分、サンプル注入量:10μlの条件で測定を行った。分子量既知のポリメチルメタクリレート数種類(三菱ケミカル社製品)を標準ポリマーとして、検量線を作成し、MnおよびMwを求めた。
【0067】
(重合体(A)と反応した紫外線吸収剤に基づく化学構造の割合、未反応の紫外線吸収剤の割合、残存TBD触媒量)
HNMR(日本電子株式会社製品「ECZ400S」)より解析して求めた。
【0068】
(HAZE値)
JIS K 7136に従い、ヘイズメーター NDH4000(NIPPON DENSHOKU製)を用いて測定した。
【0069】
<実施例1>
表1に示す組成となるよう、反応器中に重合体(A)、溶媒のトルエン、Tinuvin405およびTBDを加え、120℃に加熱し、6時間攪拌した。反応終了後、反応溶液を再沈溶媒(ヘキサン)に滴下し、攪拌することで機能剤含有重合体(D)を得た。
熱媒の温度計の計測値を反応温度とした。また、反応溶液を熱媒に浸漬した時点から熱媒から取り出した時点までの間を反応時間とした。
実施例1で使用した重合体(A)は、MMA-MA共重合体であり、MA単位とMMA単位とを有する。
【0070】
<実施例2~4、比較例1~4>
重合体(A)の組成、Tinuvin405、TBDの使用量を表1に示すように変更した以外は実施例1と同じ手法によって実験を行った。
実施例2、比較例2で使用した重合体(A)は、クラレ社製品「Kurarity」であり、BA単位とMMA単位とを有する。
実施例3、4および比較例1、3、4で使用した重合体(A)は、MMA-MA共重合体であり、MA単位とMMA単位とを有する。
【0071】
<実施例5>
TBD触媒が残存している実施例1で得た機能剤含有重合体(D)を溶媒のN,N-ジメチルホルムアミドに溶解した後、溶媒温度50℃で1時間攪拌した。溶解後の機能剤含有重合体(D)の濃度は9質量%である。その後、再沈澱溶媒(水)に滴下し、攪拌することでTBDを除去した。
【0072】
<実施例6>
TBD触媒が残存している実施例1で得た機能剤含有重合体(D)を溶媒のトルエンに溶解した。溶解後の機能剤含有重合体(D)の濃度は9質量%である。その後、求核剤スカベンジャー(バイオタージ・ジャパン株式会社製品「PS-Isocyanate」)を加えて、室温で1時間攪拌した。その後、再沈澱溶媒(水)に滴下し、攪拌することでTBDを除去した。
【0073】
<実施例7~11>
溶媒、溶媒温度および再沈澱溶媒を表2に示すように変更した以外は実施例6と同じ手法によって実験を行った。
【0074】
<参考例1>
TBD触媒が残存している実施例1の機能剤含有重合体(D)を分析した。
【0075】
<参考例2、3>
溶媒と再沈澱溶媒を表2に示すように変更した以外は実施例5と同じ手法によって実験を行った。
【0076】
<実施例12>
実施例3の機能剤含有重合体(D)を酢酸ブチル(固形分:20%)に溶解し、ガラス基板に設けた3×3cm四方の厚さ2mmの枠に流し込み、酢酸ブチルを気化させることで、厚さ0.1mm厚の機能剤含有重合体(D)のフィルムを得た。
【0077】
<実施例13>
実施例4の機能剤含有重合体(D)を酢酸ブチル(固形分:20%)に溶解し、ガラス基板に設けた3×3cm四方の厚さ2mmの枠に流し込み、酢酸ブチルを気化させることで、厚さ0.1mm厚の機能剤含有重合体(D)のフィルムを得た。
【0078】
<比較例5>
比較例3で用いた重合体(A)と紫外線吸収剤(8.2質量%)を酢酸ブチル(固形分:20%)に溶解し、ガラス基板に設けた3×3cm四方の厚さ2mmの枠に流し込み、酢酸ブチルを気化させることで、厚さ0.1mm厚のフィルムを得た。
【0079】
<比較例6>
比較例4で用いた重合体(A)と紫外線吸収剤(9.6質量%)を酢酸ブチル(固形分:20%)に溶解し、ガラス基板に設けた3×3cm四方の厚さ2mmの枠に流し込み、酢酸ブチルを気化させることで、厚さ0.1mm厚のフィルムを得た。
【0080】
<比較例7>
比較例3で用いた重合体(A)と紫外線吸収剤(20.1質量%)を酢酸ブチル(固形分:20%)に溶解し、ガラス基板に設けた3×3cm四方の厚さ2mmの枠に流し込み、酢酸ブチルを気化させることで、厚さ0.1mm厚のフィルムを得た。
【0081】
<比較例8>
比較例4で用いた重合体(A)と紫外線吸収剤(26.0質量%)を酢酸ブチル(固形分:20%)に溶解し、ガラス基板に設けた3×3cm四方の厚さ2mmの枠に流し込み、酢酸ブチルを気化させることで、厚さ0.1mm厚のフィルムを得た。
【0082】
<参考例4>
比較例3で用いた重合体(A)を酢酸ブチル(固形分:20%)に溶解し、ガラス基板に設けた3×3cm四方の厚さ2mmの枠に流し込み、酢酸ブチルを気化させることで、厚さ0.1mm厚のフィルムを得た。
【0083】
<参考例5>
比較例4で用いた重合体(A)を酢酸ブチル(固形分:20%)に溶解し、ガラス基板に設けた3×3cm四方の厚さ2mmの枠に流し込み、酢酸ブチルを気化させることで、厚さ0.1mm厚のフィルムを得た。
【0084】
<結果>
【表1】
【0085】
触媒として使用した実施例1~4では、エステル交換反応が進行し、紫外線吸収効果を有する構造を有する機能剤含有重合体(D)が得られた。対して、触媒を用いなかった比較例1~4では、エステル交換反応が進行しなかった。
【0086】
【表2】
【0087】
実施例5では、実施例1で得たTBDが残存する機能剤含有重合体(D)(参考例1)をN,N-ジメチルホルムアミドに溶解して1時間攪拌し、水で再沈澱を行った。実施例5では機能剤含有重合体(D)に含まれるTBD残存量が減少した。
実施例6~8では、機能剤含有重合体(D)をトルエン、テトラヒドロフランまたはN,N-ジメチルホルムアミドに溶解し、求核剤スカベンジャーを加えて1時間攪拌し、各種溶媒で再沈澱した。実施例6~8では機能剤含有重合体(D)に含まれるTBD残存量が減少した。
実施例9~11では、攪拌する際の温度を高くした実施例9~11では、機能剤含有重合体(D)に含まれるTBD残存量がさらに減少した。
【0088】
参考例2、3では、機能剤含有重合体(D)をトルエンまたはテトラヒドロフランに溶解して1時間攪拌し、ヘキサンで再沈澱した。参考例2、3の機能剤含有重合体(D)に含まれるTBD残存量はTBD触媒の除去作業前と比べてほぼ変化しなかった。
【0089】
【表3】
【0090】
実施例12のHAZE値は、実施例12と同量の未反応の紫外線吸収剤を含む比較例5のそれより小さく、実施例12の紫外線吸収剤に基づく化学構造と同量の未反応の紫外線吸収剤を含む比較例7のそれより著しく小さい値を示した。
【0091】
実施例13のHAZE値は、実施例13と同量の未反応の紫外線吸収剤を含む比較例6のそれより小さく、実施例13の紫外線吸収剤に基づく化学構造と同量の未反応の紫外線吸収剤を含む比較例8のそれより著しく小さい値を示した。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明の一態様によれば、機能剤含有重合体の機能剤の導入効率に優れる製造方法が提供される。
本発明の他の態様によれば、メタクリレート系樹脂との相容性が改善された機能剤含有共重合体が提供される。