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特開2024-131034医療支援装置、医療支援装置の作動方法及び作動プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131034
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】医療支援装置、医療支援装置の作動方法及び作動プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
A61B8/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041051
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桝本 潤
(72)【発明者】
【氏名】流石 朗子
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601BB03
4C601DD14
4C601EE11
4C601FF02
4C601FF03
4C601KK31
(57)【要約】
【課題】簡便な構成で、かつ、より表示の自由度が高い態様で、医療機器の位置又は姿勢に応じた適切な位置に医療支援情報の表示が可能な医療支援装置、作動方法及び作動プログラムを提供する。
【解決手段】医療支援装置のプロセッサは、被検体の体外にある体外カメラによって撮影された撮影画像であって、挿入部が被検体の体内に挿入された医療機器と、医療機器の挿入部を除く部分に設けられた画像認識可能なマーカとが撮影範囲に含まれる撮影画像を取得し、マーカに基づいて、撮影画像内における医療機器の位置及び姿勢のうちの少なくとも1つを含む位置姿勢情報を導出し、位置姿勢情報に基づいて撮影画像内において特定される位置に医療支援情報を重ね合わせた合成画像を表示部に表示する制御を実行する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを備え、
前記プロセッサは、
被検体の体外にある体外カメラによって撮影された撮影画像であって、挿入部が前記被検体の体内に挿入された医療機器と、前記医療機器の前記挿入部を除く部分に設けられた画像認識可能なマーカとが撮影範囲に含まれる撮影画像を取得し、
前記マーカに基づいて、前記撮影画像内における前記医療機器の位置及び姿勢のうちの少なくとも1つを含む位置姿勢情報を導出し、
前記位置姿勢情報に基づいて前記撮影画像内において特定される位置に医療支援情報を重ね合わせた合成画像を表示部に表示する制御を実行する
医療支援装置。
【請求項2】
前記医療機器は、鏡視下手術に用いられる医療機器であって、前記被検体の体表に形成された穴から体内に挿入される挿入部を先端側に有し、前記マーカは体外に挿入されない基端側に設けられており、
前記プロセッサは、前記マーカに基づいて、前記医療機器の前記挿入部の前記位置姿勢情報を導出する
請求項1に記載の医療支援装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記マーカと前記医療機器の寸法情報に基づいて、前記挿入部の前記位置姿勢情報を導出する
請求項2に記載の医療支援装置。
【請求項4】
前記医療機器は、体外にある操作部の操作によって前記挿入部の位置及び姿勢を変化させることが可能である場合において、
前記プロセッサは、前記寸法情報に加えて、前記操作部の操作量を取得し、
取得した前記操作量を、前記挿入部の前記位置姿勢情報の導出に用いる
請求項3に記載の医療支援装置。
【請求項5】
前記医療機器は、前記体内を撮影する体内カメラを有する第1医療機器であり、
前記第1医療機器の前記挿入部を第1挿入部、前記第1医療機器の前記マーカを第1マーカ、前記撮影画像を第1撮影画像、及び前記位置姿勢情報を第1位置姿勢情報とし、
さらに、前記第1医療機器とは別の第2医療機器であって、前記体内に挿入される第2挿入部と、前記第2挿入部に画像認識可能な第2マーカとが設けられた第2医療機器が、前記第1医療機器とともに手術に用いられる場合において、
前記プロセッサは、
前記体内カメラによって撮影された第2撮影画像であって、前記第2挿入部と、前記第2マーカとが撮影範囲に含まれる第2撮影画像を取得し、
前記第2マーカに基づいて、前記第2撮影画像内における前記第2挿入部の位置及び姿勢のうちの少なくとも1つを含む第2位置姿勢情報を導出し、
前記第1位置姿勢情報及び前記第2位置姿勢情報に基づいて前記第1撮影画像内において特定される位置に、前記医療支援情報を前記第1撮影画像に重ね合わせた合成画像を表示部に表示する制御を実行する
請求項2に記載の医療支援装置。
【請求項6】
前記医療機器は、臓器の内部構造を観察可能な医用プローブである
請求項2に記載の医療支援装置。
【請求項7】
前記第1医療機器は、内視鏡であり、
前記第2医療機器は、臓器の内部構造を観察可能な医用プローブである
請求項5に記載の医療支援装置。
【請求項8】
前記医療支援情報は、前記医用プローブを通じて観察される前記臓器内の目標位置に向けて体外から挿入される処置具の挿入支援情報であって、挿入位置及び挿入経路の少なくとも1つを含む挿入支援情報である
請求項6または請求項7に記載の医療支援装置。
【請求項9】
前記医用プローブは、超音波プローブである
請求項8に記載の医療支援装置。
【請求項10】
前記処置具は、穿刺針である
請求項8に記載の医療支援装置。
【請求項11】
前記挿入位置は、前記穿刺針が挿入される前記被検体の体表上の位置を示すマークで表示される
請求項10に記載の医療支援装置。
【請求項12】
前記挿入経路は線で示される
請求項10に記載の医療支援装置。
【請求項13】
前記医用プローブは、前記挿入部に設けられ、前記処置具との係合により、前記処置具の前記目標位置への挿入をガイドするためのガイド溝を有しており、
前記プロセッサは、前記第2マーカと前記ガイド溝の相対的な位置関係に基づいて、前記撮影画像に前記挿入支援情報を重ね合わせる位置を特定する
請求項7を引用する請求項8に記載の医療支援装置。
【請求項14】
前記プロセッサは、前記医用プローブによって取得される前記臓器の内部画像において特定される前記目標位置と、前記位置姿勢情報に基づいて導出される、前記内部画像の座標系と前記撮影画像の座標系との相関関係とに基づいて、前記撮影画像に前記挿入支援情報を重ね合わせる位置を特定する
請求項8に記載の医療支援装置。
【請求項15】
手術前に予め取得された前記臓器の三次元画像に、手術前のシミュレーションによって前記挿入支援情報が設定されている場合において、
前記プロセッサは、前記医用プローブによって取得される前記臓器の内部画像の座標系と前記三次元画像の座標系との相関関係と、前記第2位置姿勢情報に基づいて導出される、前記内部画像の座標系と前記第2撮影画像内の座標系との相関関係とを利用して、前記挿入支援情報を前記第1撮影画像に重ね合わせる
請求項7を引用する請求項8に記載の医療支援装置。
【請求項16】
前記体外カメラは前記処置具の基端側に設けられ、前記撮影画像を動画で出力することが可能であり、
前記プロセッサは、前記挿入支援情報として、前記動画に前記挿入経路を示す線を表示する
請求項8に記載の医療支援装置。
【請求項17】
前記処置具は穿刺針であり、体外カメラの撮影光軸は前記穿刺針の軸方向に沿って配置されている
請求項16に記載の医療支援装置。
【請求項18】
前記撮影画像は、異なる視点から撮影された少なくとも2枚の撮影画像であり、
前記プロセッサは、前記2枚の前記撮影画像に写る前記挿入経路の交点を求めることにより、前記被検体の体表上の前記挿入位置を導出する
請求項8に記載の医療支援装置。
【請求項19】
プロセッサを備えた医療支援装置の作動方法であって、
前記プロセッサは、
被検体の体外にある体外カメラによって撮影された撮影画像であって、挿入部が前記被検体の体内に挿入された状態の医療機器と、前記医療機器の前記挿入部を除く部分に設けられた画像認識可能なマーカとが撮影範囲に含まれる撮影画像を取得し、
前記マーカに基づいて、前記撮影画像内における前記医療機器の位置及び姿勢のうちの少なくとも1つを含む位置姿勢情報を導出し、
前記位置姿勢情報に基づいて前記撮影画像内において特定される位置に医療支援情報を重ね合わせた合成画像を表示部に表示する制御を実行する
医療支援装置の作動方法。
【請求項20】
コンピュータを医療支援装置として機能させる作動プログラムであって、
被検体の体外にある体外カメラによって撮影された撮影画像であって、挿入部が前記被検体の体内に挿入された状態の医療機器と、前記医療機器の前記挿入部を除く部分に設けられた画像認識可能なマーカとが撮影範囲に含まれる撮影画像を取得し、
前記マーカに基づいて、前記撮影画像内における前記医療機器の位置および姿勢のうちの少なくとも1つを含む位置姿勢情報を導出し、
前記位置姿勢情報に基づいて前記撮影画像内において特定される位置に医療支援情報を重ね合わせた合成画像を表示部に表示する制御を、
コンピュータに実行させる医療支援装置の作動プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、医療支援装置、医療支援装置の作動方法及び作動プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
鏡視下手術では、超音波プローブを用いて肝臓内部の超音波画像を取得し、超音波画像で腫瘍の位置である穿刺目標を把握する。しかし、超音波画像において穿刺目標が表示されていても、超音波画像は、体内にある臓器内部を示す画像であるため、体表のどの位置からどの方向で穿刺針を挿入してよいかがわかりにくい。
【0003】
こうした問題を解決するために、穿刺を支援する技術が用いられる。例えば、特許文献1には、先端に磁気ポジションセンサを設けた穿刺針を用いた磁気ナビゲーションシステムを用いて、体内に挿入された穿刺針の先端の位置及び姿勢をリアルタイムで表示する技術が開示されている。特許文献2には、穿刺針の挿入をガイドするガイド溝が設けられた超音波プローブの先端に、ガイド溝の傾斜に沿って体表側に向けてレーザ光を照射するレーザポインタを用いる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許公報第8688196号
【特許文献2】欧州特許公報第3136940号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、磁気ナビゲーションシステムといった大掛かりな装置が必要になるという問題がある。特許文献2は、ガイド溝の傾斜に合わせた方向にレーザ光を照射するのみであるため、支援情報の表示内容及び表示位置に関して表示の自由度が低いという問題がある。このように、従来技術では、体内への挿入部を有する医療機器を用いる場合において、簡便な構成で、かつ、より表示の自由度が高い態様で、医療機器の位置又は姿勢に応じた適切な位置に医療支援情報を表示することができないという問題があった。
【0006】
本開示に係る技術は、簡便な構成で、かつ、より表示の自由度が高い態様で、医療機器の位置又は姿勢に応じた適切な位置に医療支援情報の表示が可能な医療支援装置、作動方法及び作動プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の技術に係る医療支援装置は、プロセッサを備え、プロセッサは、被検体の体外にある体外カメラによって撮影された撮影画像であって、挿入部が被検体の体内に挿入された医療機器と、医療機器の挿入部を除く部分に設けられた画像認識可能なマーカとが撮影範囲に含まれる撮影画像を取得し、マーカに基づいて、撮影画像内における医療機器の位置及び姿勢のうちの少なくとも1つを含む位置姿勢情報を導出し、位置姿勢情報に基づいて撮影画像内において特定される位置に医療支援情報を重ね合わせた合成画像を表示部に表示する制御を実行する。
【0008】
医療機器は、鏡視下手術に用いられる医療機器であって、被検体の体表に形成された穴から体内に挿入される挿入部を先端側に有し、マーカは体外に挿入されない基端側に設けられており、プロセッサは、マーカに基づいて、医療機器の挿入部の位置姿勢情報を導出することが好ましい。
【0009】
プロセッサは、マーカと医療機器の寸法情報に基づいて、挿入部の位置姿勢情報を導出することが好ましい。
【0010】
医療機器は、体外にある操作部の操作によって挿入部の位置及び姿勢を変化させることが可能である場合において、プロセッサは、寸法情報に加えて、操作部の操作量を取得し、取得した操作量を、挿入部の位置姿勢情報の導出に用いることが好ましい。
【0011】
医療機器は、体内を撮影する体内カメラを有する第1医療機器であり、第1医療機器の挿入部を第1挿入部、第1医療機器のマーカを第1マーカ、撮影画像を第1撮影画像、及び位置姿勢情報を第1位置姿勢情報とし、さらに、第1医療機器とは別の第2医療機器であって、体内に挿入される第2挿入部と、第2挿入部に画像認識可能な第2マーカとが設けられた第2医療機器が、第1医療機器とともに手術に用いられる場合において、プロセッサは、体内カメラによって撮影された第2撮影画像であって、第2挿入部と、第2マーカとが撮影範囲に含まれる第2撮影画像を取得し、第2マーカに基づいて、第2撮影画像内における第2挿入部の位置及び姿勢のうちの少なくとも1つを含む第2位置姿勢情報を導出し、第1位置姿勢情報及び第2位置姿勢情報に基づいて第1撮影画像内において特定される位置に、医療支援情報を第1撮影画像に重ね合わせた合成画像を表示部に表示する制御を実行することが好ましい。
【0012】
医療機器は、臓器の内部構造を観察可能な医用プローブであることが好ましい。
【0013】
第1医療機器は、内視鏡であり、第2医療機器は、臓器の内部構造を観察可能な医用プローブであることが好ましい。
【0014】
医療支援情報は、医用プローブを通じて観察される臓器内の目標位置に向けて体外から挿入される処置具の挿入支援情報であって、挿入位置及び挿入経路の少なくとも1つを含む挿入支援情報であることが好ましい。
【0015】
医用プローブは、超音波プローブであることが好ましい。
【0016】
処置具は、穿刺針であることが好ましい。
【0017】
挿入位置は、穿刺針が挿入される被検体の体表上の位置を示すマークで表示されることが好ましい。
【0018】
挿入経路は線で示されることが好ましい。
【0019】
医用プローブは、挿入部に設けられ、処置具との係合により、処置具の目標位置への挿入をガイドするためのガイド溝を有しており、プロセッサは、第2マーカとガイド溝の相対的な位置関係に基づいて、撮影画像に挿入支援情報を重ね合わせる位置を特定することが好ましい。
【0020】
プロセッサは、医用プローブによって取得される臓器の内部画像において特定される目標位置と、位置姿勢情報に基づいて導出される、内部画像の座標系と撮影画像の座標系との相関関係とに基づいて、撮影画像に挿入支援情報を重ね合わせる位置を特定することが好ましい。
【0021】
手術前に予め取得された臓器の三次元画像に、手術前のシミュレーションによって挿入支援情報が設定されている場合において、プロセッサは、医用プローブによって取得される臓器の内部画像の座標系と三次元画像の座標系との相関関係と、第2位置姿勢情報に基づいて導出される、内部画像の座標系と第2撮影画像内の座標系との相関関係とを利用して、挿入支援情報を第1撮影画像に重ね合わせることが好ましい。
【0022】
体外カメラは処置具の基端側に設けられ、撮影画像を動画で出力することが可能であり、プロセッサは、挿入支援情報として、動画に挿入経路を示す線を表示することが好ましい。
【0023】
処置具は穿刺針であり、体外カメラの撮影光軸は穿刺針の軸方向に沿って配置されていることが好ましい。
【0024】
撮影画像は、異なる視点から撮影された少なくとも2枚の撮影画像であり、プロセッサは、2枚の撮影画像に写る挿入経路の交点を求めることにより、被検体の体表上の挿入位置を導出することが好ましい。
【0025】
本開示の技術に係る医療支援装置の作動方法は、プロセッサを備えた医療支援装置の作動方法であって、プロセッサは、被検体の体外にある体外カメラによって撮影された撮影画像であって、挿入部が被検体の体内に挿入された状態の医療機器と、医療機器の挿入部を除く部分に設けられた画像認識可能なマーカとが撮影範囲に含まれる撮影画像を取得し、マーカに基づいて、撮影画像内における医療機器の位置及び姿勢のうちの少なくとも1つを含む位置姿勢情報を導出し、位置姿勢情報に基づいて撮影画像内において特定される位置に医療支援情報を重ね合わせた合成画像を表示部に表示する制御を実行する。
【0026】
本開示の技術に係る医療支援装置の作動プログラムは、コンピュータを医療支援装置として機能させる作動プログラムであって、被検体の体外にある体外カメラによって撮影された撮影画像であって、挿入部が被検体の体内に挿入された状態の医療機器と、医療機器の挿入部を除く部分に設けられた画像認識可能なマーカとが撮影範囲に含まれる撮影画像を取得し、マーカに基づいて、撮影画像内における医療機器の位置および姿勢のうちの少なくとも1つを含む位置姿勢情報を導出し、位置姿勢情報に基づいて撮影画像内において特定される位置に医療支援情報を重ね合わせた合成画像を表示部に表示する制御を、コンピュータに実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】医療支援装置を含む医療支援システムの概略を示す図ある。
図2】鏡視下手術における体内の様子を示す図である。
図3】術超音波プローブと超音波画像を示す図である。
図4】医療支援装置のハードウェア構成を示す図である。
図5】医療支援処理の全体の手順を示すフローチャートである。
図6】体外の第1マーカに基づく位置姿勢情報の導出方法を示す図である。
図7】第1マーカと医療機器の位置及び姿勢の関係を示す図である。
図8】第1マーカと医療機器の位置及び姿勢の関係を示す別の図である。
図9】体内の第2マーカに基づく位置姿勢情報の導出方法を示す図である。
図10】体内術野画像と体外術野画像の座標変換を示す図である。
図11】体外カメラの視点移動による表示の変化を示す図である。
図12】ステレオ撮影を示す図である。
図13】超音波画像と体外術野画像の相関関係を利用する方法を示す図である。
図14】第2実施形態を示す図である。
図15】開腹手術の例を示す図である。
図16】体外カメラをロボットに設ける例を示す図である。
図17】術前3D画像の作成方法を示す図である。
図18】術前準備情報の作成方法を示す図である。
図19】超音波3D画像の作成方法を示す図である。
図20】超音波3D画像と術前3D画像の相関関係を利用する方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[第1実施形態]
図1及び図2に示すように、医療支援システム10は、一例として、患者PTに対して、内視鏡13等を用いた鏡視下手術を施す際に用いられる。鏡視下手術は、開腹手術と異なり、患者PTの体に小さな穴を開けて、そこから内視鏡13等の医療機器を入れて行う手術をいう。医療支援システム10は、医師を含む医療スタッフSTに対して、術野の視野を提供する。ここでは、術野として、患者PTの体内の体内術野SFinと、体内術野SFinに対応する体外の領域である体外術野SFexとを区別して説明する。後述するとおり、医療スタッフSTに対しては体内及び体外のどちらの視野も提供される。さらに、医療支援システム10は、術野の視野に加えて、手術及び検査等の診療を支援する支援情報を提供する。このような医療支援システム10は、手術中にリアルタイムで支援情報を提供する機能を有することから、手術ナビゲーションシステムなどとも呼ばれる。医療支援システム10は、一例として、医療支援装置11と、内視鏡13、超音波プローブ14、体外カメラ15及びディスプレイ16を備えている。医療支援装置11は、本開示の技術に係る「医療支援装置」の一例であり、患者PTは、「被検体」の一例である。
【0029】
医療支援装置11は、内視鏡13、超音波プローブ14、体外カメラ15及びディスプレイ16と通信可能に接続されている。鏡視下手術においては、内視鏡13及び超音波プローブ14は、それぞれの先端部を含む一部が、トラカール17を介して体内に挿入される。トラカール17は、内視鏡13等を挿通する挿通孔と挿通孔内に設けられガス漏れを防止するバルブとが設けられた挿通具である。鏡視下手術においては、腹腔内には炭酸ガスの注入によって気腹が行われるため、内視鏡13及び超音波プローブ14等の体内への挿入にトラカール17が用いられる。
【0030】
また、本例では、手術の対象部位は肝臓LVであり、図2は、患者PTの腹部に内視鏡13及び超音波プローブ14を挿入している様子を示している。符号18は、穿刺針である。穿刺針18は、一例として、臓器に含まれる腫瘍27等の病変を穿刺対象として穿刺し、病変を焼灼する処置具である。後述するように、本例では、手術として、超音波画像22によって肝臓LVの腫瘍27を可視化し、可視化された腫瘍27を穿刺針18で焼灼することにより、腫瘍27を壊死させる治療を行う例で説明する。穿刺針18は、針部18Aと針部18Aの基端側に設けられた把持部18Bとを有する。把持部18Bには、体外カメラ15が設けられている。体外カメラ15の撮影光軸は、穿刺針18の軸方向に沿って配置されている。これにより、体外カメラ15の視点の方向と、穿刺針18の針先の方向がほぼ一致する。
【0031】
内視鏡13は、患者PTの体内に挿入される挿入部13Aを有しており、挿入部13Aの先端部13Bには、カメラ13Cと、照明用の光源(LED(Light Emitting Diode)など)とが内蔵されている。内視鏡13は、一例として、挿入部13Aが硬質な硬性内視鏡であり、腹腔観察に多く用いられることから腹腔鏡などとも呼ばれる。カメラ13Cは、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ及びCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサなどのイメージセンサと、被写体像をイメージセンサの撮像面に結像するレンズを含む結像光学系とを有する。イメージセンサは例えばカラー画像を撮像可能なイメージセンサである。内視鏡13は、本開示の技術に係る「医療機器」及び「第1医療機器」の一例であり、挿入部13Aは「第1挿入部」の一例である。カメラ13Cは、本開示の技術に係る「体内カメラ」の一例である。
【0032】
内視鏡13は、患者PTの体内の対象部位(本例では肝臓LV)を含む体内術野SFinをカメラ13Cによって光学的に撮影する。内視鏡13は、図示しない内視鏡用の画像処理プロセッサに接続されており、画像処理プロセッサは、イメージセンサが出力する撮像信号に対して信号処理を行って、体内術野SFinの体内術野画像21を生成する。体内術野画像21は、本開示の技術に係る「体内カメラによって撮影された第2撮影画像」の一例である。
【0033】
内視鏡13の照明光としては、紫外線及び赤外光などの特殊光が用いられる場合もあるが、白色光などの可視光が用いられる。なお、内視鏡13の照明光は、紫外線及び赤外光などの特殊光を用いてもよい。特殊光としては、紫外線領域などの短波長域の光を狭帯域化した短波長狭帯域光などの特定波長に制限された光を用いてもよい。体内術野画像内視鏡13によって撮影された体内術野画像21は、内視鏡用の画像処理プロセッサを介してリアルタイムで医療支援装置11に送信される。体内術野画像21は、ディスプレイ16に動画として表示される。図2において、符号Xin及びYinは、体内術野画像21の座標系を示す。
【0034】
また、内視鏡13の基端側には把持部13Dが設けられている。把持部13Dには、画像認識可能なマーカM1が設けられている。マーカM1は、光学的に撮影された画像において認識可能なマーカであり、すなわち、光学的に検出可能なマーカである。マーカM1は、体内に挿入される挿入部13Aを除く部分に設けられている。把持部13Dは、本開示の技術に係る「挿入部を除く部分」の一例である。すなわち、マーカM1は、体外から視認可能な位置に設けられており、本例においては体外カメラ15によって撮影される。医療支援装置11は、マーカM1を利用することにより、体内に挿入される挿入部13Aの位置及び姿勢を推定する。
【0035】
マーカM1は、一例として、格子パターンまたはドットパターンなどの形態的な特徴を有するパターンによって構成されている。マーカM1を用いた位置及び姿勢の推定については、後述する。マーカM1は、本開示の技術に係る「マーカ」及び「第1マーカ」の一例である。
【0036】
超音波プローブ14は、内視鏡13と同様に患者PTの体内に挿入される挿入部14Aと、挿入部14Aの基端側に操作部14Dとを有している。挿入部14Aの先端部14Bには、超音波トランスデューサ14Cが内蔵されている。超音波トランスデューサ14Cは、対象部位に対して超音波を送信し、対象部位で反射した反射波を受信する。超音波プローブ14は、図示しない超音波プローブ用の画像処理プロセッサに接続されている。超音波プローブ用の画像処理プロセッサは、超音波プローブ14が受信した反射波に応じた信号に基づいて、反射波に基づいて画像再構成処理を行う。画像再構成処理により、超音波プローブ14によって走査された対象部位の内部構造を示す超音波画像22(図6参照)を生成する。超音波画像22は、対象部位において超音波が到達する表層から深層までの内部構造を輝度情報として可視化した、いわゆるB(Brightness)モード画像である。超音波画像22は、光学的な撮影によって得られる体内術野画像21では観察が不可能な対象部位の内部構造を可視化する。
【0037】
超音波プローブ14は、一例として、放射状に超音波を送信するコンベックスタイプであり、超音波トランスデューサ14Cを基点にした扇形の画像が取得される。超音波プローブ14を走査することにより、走査方向に沿って操作位置に応じた超音波画像22が撮影される。超音波画像22は、超音波プローブ用の画像処理プロセッサを介してリアルタイムで医療支援装置11に送信される。超音波画像22は、ディスプレイ16に動画として表示される。図2において、符号Xpb及びYpbは、超音波画像22の座標系を示す。
【0038】
超音波プローブ14において、挿入部14Aの先端部14Bには、穿刺針18の挿入をガイドするガイド溝29が設けられている。
【0039】
図3に示すように、ガイド溝29は、先端部14Bにおいて、超音波トランスデューサ14Cよりも基端側に設けられている。ガイド溝29は、先端部14Bの軸方向AXpbに対してθの角度をつけて傾斜している。ガイド溝29は、患者PTの体表側から挿入された穿刺針18の針先が、超音波トランスデューサ14Cが配置される先端側に向くように基端側に後傾している。穿刺針18の挿入は、超音波画像22によって腫瘍27を確認しながら行われる。超音波画像22によって可視化される領域は、超音波トランスデューサ14Cを基点とする放射状の領域であるため、ガイド溝29が傾斜していることにより、穿刺針18の針先を超音波画像22によって可視化される腫瘍27に向けることが可能となっている。
【0040】
先端部14Bには、マーカM2が設けられている。マーカM2は、マーカM1と同様に画像認識可能なマーカである。マーカM2は、内視鏡13のカメラ13Cによって撮影可能である。医療支援装置11は、マーカM2を利用することにより、挿入部14Aの先端部14Bの位置及び姿勢を推定する。本例においては、マーカM2によって先端部14Bに設けられたガイド溝29の位置及び姿勢を推定する情報として利用される。
【0041】
マーカM2は、一例として、マーカM1と同様に、格子パターンまたはドットパターンなどの形態的な特徴を有するパターンによって構成されている。マーカM2を用いた位置及び姿勢の推定については、後述する。マーカM2は、本開示の技術に係る「第2マーカ」の一例である。超音波プローブ14は、本開示の技術に係る「第2医療機器」の一例であり、挿入部14Aは「第2挿入部」の一例である。
【0042】
体外カメラ15は、内視鏡13のカメラ13Cと同様に、光学的な撮影が可能な光学カメラであり、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ及びCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサなどのイメージセンサと、被写体像をイメージセンサの撮像面に結像するレンズを含む結像光学系とを有する。イメージセンサは例えばカラー画像を撮像可能なイメージセンサである。体外カメラ15は、本開示の技術に係る「体外カメラ」の一例である。
【0043】
体外カメラ15は、内視鏡13及び超音波プローブ14を含む体外術野SFexを光学的に撮影する。体外カメラ15は、図示しない画像処理プロセッサに接続されており、画像処理プロセッサは、イメージセンサが出力する撮像信号に対して信号処理を行って、体外術野SFexの体外術野画像23を生成する。体外術野画像23は、画像処理プロセッサを介してリアルタイムで医療支援装置11に送信される。体外術野画像23は、ディスプレイ16に動画として表示される。図2において、符号Xex及びYexは、体外術野画像23の座標系を示す。体外術野画像23は、本開示の技術に係る「体外カメラによって撮影された撮影画像」及び「第1撮影画像」の一例である。
【0044】
医療支援装置11は、内視鏡13から体内術野画像21を取得し、超音波プローブ14から超音波画像22を取得し、体外カメラ15から体外術野画像23を取得する。図1に示すように、ディスプレイ16は、一例として、3つ用意されており、体内術野画像21、超音波画像22、及び体外術野画像23の3つの画像がそれぞれのディスプレイ16に表示される。
【0045】
超音波プローブ14が体内術野SFinに挿入されている場合は、体内術野画像21には、超音波プローブ14が写り込む。医療支援装置11は、超音波プローブ14の挿入部14A(先端部14B及びマーカM2を含む)が写り込んだ体内術野画像21を、ディスプレイ16に出力する。ディスプレイ16の画面を通じて、患者PTの体内術野SFinの視野が医療スタッフSTに提供される。
【0046】
超音波画像22には、図3に示すように、穿刺針18の挿入経路を示す情報として、ガイド溝29の傾斜角θに沿った穿刺ライン30を重畳表示することが可能である。穿刺ライン30は、いわば、ガイド溝29の延長線である。穿刺ライン30は、穿刺針18を挿入する際の目安として用いられ、例えば、超音波画像22内において穿刺ライン30と腫瘍27とが重なるように、超音波プローブ14の位置決めが行われる。
【0047】
また、体外カメラ15の視野内に、超音波プローブ14の操作部14D、内視鏡13の把持部13D及びマーカM1が入ると、これらを撮影範囲に含んだ体外術野画像23が撮影される。医療支援装置11は、このような体外術野画像23をディスプレイ16に出力する。ディスプレイ16の画面を通じて、患者PTの体外術野SFexの視野が医療スタッフSTに提供される。
【0048】
上述のとおり、超音波画像22に穿刺ライン30が表示されても、超音波画像22は臓器の内部画像であるため、体外から穿刺針18をどの位置にどういう姿勢で挿入すればよいかがわかりにくい。具体的には、図3に示すように、患者PTの体表上の挿入位置NP及び挿入角度を含む挿入経路がわかりにくい。そこで、医療支援装置11は、体外術野SFexにおいて、穿刺針18の挿入経路NR及び挿入位置NPの少なくとも1つを重畳表示する。これにより、医療スタッフSTに、挿入経路NR及び挿入位置NPといった挿入支援情報を提供する。このような挿入支援情報は、本開示の技術に係る「挿入支援情報」及び「医療支援情報」の一例である。
【0049】
このような医療支援装置11の機能は、概念的には次のとおりである。すなわち、図2に示すように、医療支援装置11は、体外カメラ15によって撮影され、撮影範囲に内視鏡13のマーカM1を含む体外術野画像23から、体外カメラ15と把持部13Dとの相対的な位置関係RP1-1を把握する。具体的には、体外カメラ15によって撮影した体外術野画像23内におけるマーカM1の位置及び姿勢を把握する。そして、内視鏡13の寸法情報は既知であるため、マーカM1と、内視鏡13の先端部13Bに設けられたカメラ13Cとの距離等の相対的な位置関係RP1-2は既知である。医療支援装置11は、位置関係RP1-2に基づいて、マーカM1の位置及び姿勢から、カメラ13Cの位置及び姿勢を把握する。医療支援装置11は、カメラ13Cの位置及び姿勢を把握することにより、カメラ13Cの撮影方向(より具体的には撮影光軸の向き)を把握する。
【0050】
そして、医療支援装置11は、カメラ13Cによって撮影され、撮影範囲に超音波プローブ14のマーカM2を含む体内術野画像21から、カメラ13CとマーカM2との相対的な位置関係RP2を把握する。超音波プローブ14の寸法情報は既知であるため、マーカM2とガイド溝29との相対的な位置関係も既知である。これらの相対的な位置関係RP1-1、RP1-2、及びRP2等を用いることにより、体外カメラ15とガイド溝29との相対的な位置関係RP1-3を把握することが可能である。医療支援装置11は、このようにマーカM1に基づいて、体外術野画像23内における内視鏡13の挿入部13Aの先端部13Bの位置姿勢情報を導出し、マーカM2に基づいて、体内術野画像21内におけるガイド溝29の位置姿勢情報を導出する。そして、医療支援装置11は、内視鏡13の先端部13Bのカメラ13Cの位置姿勢情報、及びガイド溝29の位置姿勢情報に基づいて、体外術野画像23において特定される位置に、穿刺針18の挿入経路NR及び挿入位置NPのうちのいずれかを含む挿入支援情報を重ね合わせる。これにより、体外術野画像23が表示されるディスプレイ16を通じて挿入支援情報が医療スタッフSTに提供される。以下において、詳細に説明する。
【0051】
図4において、医療支援装置11のハードウェア構成の一例を示す。医療支援装置11は、本開示の技術に係る「医療支援装置」及び「コンピュータ」の一例であり、プロセッサ41、受付デバイス42、ディスプレイ16、RAM(Random access memory)43、ストレージ44、通信I/F45、及び外部I/F46を備えている。これらの各部は、バス48に接続されており、相互に通信可能である。
【0052】
医療支援装置11は、受付デバイス42を通じて医療スタッフSTなどの操作者によって操作される。受付デバイス42は、図示しないキーボード及びマウス等を有しており、操作者からの指示を受け付ける。受付デバイス42としては、タッチパネル等のタッチ入力を受け付けるデバイス、マイク等の音声入力を受け付けるデバイス、及びカメラ等のジェスチャ入力を受け付けるデバイス等でもよい。
【0053】
ディスプレイ16としては、例えば、EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ又は液晶ディスプレイ等が挙げられる。上述のとおり、ディスプレイ16は3台あり、各ディスプレイ16に、体内術野画像21、超音波画像22及び体外術野画像23の他、各種の情報が表示される。
【0054】
プロセッサ41は、例えば、CPU(Central Processing Unit)であり、制御プログラムに従って医療支援装置11の各部を統括的に制御し、かつ各種のアプリケーションプログラムに従って各種の処理を実行する。
【0055】
ストレージ44は、各種プログラム及び各種パラメータ等を記憶する不揮発性の記憶装置である。ストレージ44としては、例えば、HDD(Hard Disk Drive)及びSSD(Solid State Drive)が挙げられる。また、ストレージ44には、コンピュータを医療支援装置11として機能させるための医療支援プログラム49が格納されている。
【0056】
RAM43は、一時的に情報が記憶されるメモリであり、プロセッサ41によってワークメモリとして用いられる。RAM43としては、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)又はSRAM(Static Random Access Memory)等が挙げられる。
【0057】
通信I/F45は、LAN(Local Area Network)及び/又はWAN(Wide Area Network)等のネットワーク(図示省略)に接続されており、有線又は無線の各種の通信規格で規定された通信プロトコルに従って伝送制御を行う。
【0058】
外部I/F46は、例えばUSB(Universal Serial Bus)インタフェースであり、プリンタ及びメモリカードなどの周辺機器との接続に用いられる。
【0059】
プロセッサ41は、ストレージ44から医療支援プログラム49を読み出し、医療支援
プログラム49をRAM43上で実行することにより医療支援処理を行う。医療支援処理は、プロセッサ41が画像取得部41A、位置姿勢情報導出部41B、合成画像生成部41C、及び表示制御部41Dとして動作することによって実現される。医療支援プログラム49は、本開示の技術に係る「医療支援装置の作動プログラム」の一例である。
【0060】
寸法情報50は、内視鏡13及び超音波プローブ14の寸法情報を含む。内視鏡13の寸法情報は、具体的には、内視鏡13のマーカM1とカメラ13Cの間隔を示す直線距離、相対的な姿勢の関係等、マーカM1とカメラ13Cとの相対的な位置関係を表す情報である。超音波プローブ14の寸法情報は、具体的には、超音波プローブ14のマーカM2とガイド溝29の間隔を示す直線距離、相対的な姿勢の関係等、マーカM2とガイド溝29との相対的な位置関係を表す情報である。さらに、超音波プローブ14の寸法情報には、ガイド溝29の軸方向に対する傾斜角θなども含まれる。
【0061】
画像取得部41Aは、体内術野画像21、超音波画像群22G及び体外術野画像23を取得する画像取得処理を実行する。例えば、画像取得部41Aは、内視鏡13のプロセッサ又は/及び超音波プローブ14のプロセッサを含む装置から外部I/F46又は通信I/F45を介して体内術野画像21又は/及び超音波画像群22Gを取得する。なお、内視鏡13のプロセッサ又は/及び超音波プローブ14のプロセッサを医療支援装置11が有してもよい。また、同様に、画像取得部41Aは、体外カメラ15のプロセッサを含む装置から外部I/F46又は通信I/F45を介して体外術野画像23を取得する。体外カメラ15のプロセッサを医療支援装置11が有してもよい。
【0062】
位置姿勢情報導出部41Bは、マーカM1に基づいて内視鏡13のカメラ13Cの位置及び姿勢を含む位置姿勢情報を導出する処理と、マーカM2に基づいて超音波プローブ14のガイド溝29の位置及び姿勢を含む位置姿勢情報を導出する処理とを実行する。
【0063】
合成画像生成部41Cは、導出された位置姿勢情報に基づいて、体外術野画像23内において挿入支援情報を重ね合わせる位置を特定し、特定した位置に挿入支援情報を重ね合わせた合成画像を生成する。挿入経路NRなどの情報を重ね合わせた体外術野画像23は、本開示の技術に係る「合成画像」の一例である。
【0064】
表示制御部41Dは、体内術野画像21、超音波画像22、及び体外術野画像23をディスプレイ16に表示する制御を実行する。体外術野画像23に挿入経路NRを重ね合わせた合成画像を生成し、生成した合成画像を表示することを、以下において重畳表示と呼ぶ場合もある。
【0065】
図5図12を用いて、本開示の医療支援装置11のプロセッサ41が実行する処理を具体的に説明する。図5は、全体的な処理手順を示すフローチャートであり、図6図12において個々の処理を説明している。
【0066】
図5に示すように、医療支援処理において、プロセッサ41は、ステップS1100において体外カメラ15が撮影した体外術野画像23を取得する。そして、ステップS1200において、プロセッサ41は、体外術野画像23から内視鏡13のマーカM1を検出する。ステップS1300において、プロセッサ41は、マーカM1に基づいて、カメラ13Cが設けられている内視鏡13の先端部13Bの位置姿勢情報を導出する。
【0067】
一方、プロセッサ41は、ステップS1400において、内視鏡13のカメラ13Cが撮影した体内術野画像21を取得する。そして、ステップS1500において、プロセッサ41は、体内術野画像21から、超音波プローブ14のマーカM2を検出する。ステップS1600において、プロセッサ41は、マーカM2に基づいて、超音波プローブ14のガイド溝29の位置姿勢情報を導出する。ステップS1700において、プロセッサ41は、ガイド溝29の位置姿勢情報に基づいて、体内術野画像21における穿刺針18の挿入経路NRを導出する。
【0068】
ここで、体外術野画像23の座標系(以下、第1座標系という)と、体内術野画像21の座標系(以下、第2座標系という)は異なる。ステップS1800において、プロセッサ41は、第2座標系の体内術野画像21における穿刺針18の挿入経路NRを、体外術野画像23の第1座標系に変換する。そして、ステップS1900において、プロセッサ41は、第1座標系に変換した挿入経路NRを体外術野画像23に重畳表示する。プロセッサ41は、こうした処理を表示終了まで繰り返す(ステップS2000)。
【0069】
以下、個別の処理ステップをより具体的に説明する。まず、図6は、図5に示すステップS1200のマーカM1の検出と、ステップS1300の内視鏡13の先端部13Bの位置情報導出とを概念的に示す図である。図6の補足説明として、図8及び図9を適宜参照しながら説明する。
【0070】
図6に示すように、プロセッサ41は、ステップS1200において、第1座標系の体外術野画像23に基づいて、例えば、パターンマッチング等の画像処理手法を用いて、マーカM1を検出する。マーカM1は、一例として、内視鏡13の把持部13Dの軸方向に延びる第1ラインと、軸方向と直交し、把持部13Dの外周面に沿って周方向に形成される第2ラインとによって構成される格子パターン56のマーカである。格子パターン56の格子間隔は一定である。符号56Aは、第1ラインと第2ラインとの複数の交点を示す。プロセッサ41は、体外術野画像23の中から、格子パターン56のようなマーカM1の形態的な特徴を探索することにより、マーカM1を検出する。もちろん、パターンマッチングなどのルールベースの手法に代えて、人工知能技術を用いてマーカM1を検出してもよい。
【0071】
プロセッサ41は、マーカM1の検出により、体外術野画像23内のマーカM1が存在する領域を特定する。そして、ステップS1300において、まず、マーカM1の格子パターン56などの形態的な特徴に基づいて、把持部13Dの位置及び姿勢を推定する。次に、プロセッサ41は、推定した把持部13Dの位置及び姿勢と内視鏡13の寸法情報とに基づいて、先端部13Bの位置及び姿勢を推定する。具体的には次のとおりである。
【0072】
図7及び図8は、体外術野画像23内のマーカM1を有する把持部13Dの位置及び姿勢と、三次元空間として定義した体外術野SFex内の把持部13Dの位置及び姿勢との対応関係を示す。三次元空間である体外術野SFexのZex軸は、体外カメラ15の撮影光軸と平行な方向であり、Xex-Yex平面(以下、単にXY平面という)は体外カメラ15の撮像面と平行な面であり、撮影光軸と直交する。XY平面は体外術野画像23の画面と平行である。なお、図7及び図8は概念図であり、体外術野SFexにおいて、体内に存在する先端部13Bも示している。
【0073】
図7においては、三次元空間の体外術野SFex内で内視鏡13の把持部13Dの軸方向が体外カメラ15の撮影光軸と直交している状態(より具体的には軸方向がXex軸と平行な状態)を示す。内視鏡13の把持部Dがこうした姿勢の場合は、体外術野画像23においてマーカM1の格子パターン56の直交するラインはそれぞれXex軸及びYex軸に平行な状態であり、隣接する交点56A同士の間隔も同じになる。
【0074】
一方、図8においては、三次元空間の体外術野SFex内で内視鏡13の把持部13Dの軸方向が撮影光軸と直交しておらず、撮影光軸と平行な奥行き方向に傾斜している状態を示す。図8に示す姿勢は、把持部13Dが図7に示す姿勢からY軸回りに-15°程度回転している状態である。把持部13Dがこうした姿勢の場合は、体外術野画像23において、マーカM1の格子パターン56のラインのうち周方向に延びるラインは、奥行方向において体外カメラ15から遠いほど短くなる。さらに、隣接する交点56A同士の間隔も体外カメラ15から遠い位置にある交点56A同士の間隔ほど短くなる。
【0075】
このように、把持部13Dの姿勢によって体外術野画像23に写り込むマーカM1の形態が変化する。プロセッサ41は、このような体外術野画像23内のマーカM1の形態に基づいて、内視鏡13の把持部13Dの姿勢を検出する。さらに、マーカM1と内視鏡13の先端部13Bとの相対的な位置関係は既知である。プロセッサ41は、把持部13Dの位置及び姿勢と内視鏡13の寸法情報とに基づいて、体外術野SFex内における内視鏡13の先端部13Bを位置及び姿勢を推定する。体外術野画像23は、体外術野SFexを1つの視点から投影した投影画像である。そのため、体外術野SFexにおける先端部13Bの位置及び姿勢を推定することにより、体外術野画像23内における先端部13Bの位置及び姿勢を推定することができる。先端部13Bの位置及び姿勢を把握できれば、内視鏡13の寸法情報に基づいて、先端部13B内のカメラ13Cの撮影方向も推定することができる。
【0076】
図7の例の位置姿勢情報では、例えば、内視鏡13の先端部13Bの軸方向の向きは、XY平面及びXZ平面と平行で、かつYZ平面と直交するといった情報となる。そして、先端部13Bの基準点の位置の座標は、X1、Y1、Z1といった情報となる。図8の例の位置姿勢情報では、例えば、先端部13Bの軸方向の向きは、XY平面に対して75°、XZ平面と平行、かつYZ平面に対して-15°といった情報となる。そして、先端部13Bの基準点の位置の座標は、X2、Y2、Z2といった情報となる。
【0077】
図9に示すように、プロセッサ41は、ステップS1500において、第2座標系の体内術野画像21に基づいて、例えば、マーカM1の検出方法と同様にパターンマッチング等の画像処理手法を用いて、マーカM2を検出する。マーカM2のパターンも、一例として、マーカM1と同様の格子パターン56である。
【0078】
プロセッサ41は、マーカM2の検出により、体内術野画像21内のマーカM2が存在する領域を特定すると、ステップS1600において、まず、マーカM2の格子パターン56などの形態的な特徴に基づいて、超音波プローブ14の先端部14Bの位置及び姿勢を推定する。そして、プロセッサ41は、推定した先端部14Bの位置及び姿勢と超音波プローブ14の寸法情報とに基づいて、ガイド溝29の位置及び姿勢を推定する。マーカM2に基づくガイド溝29の位置及び姿勢の推定方法は、マーカM1を例に図7及び図8で示した方法と同様である。
【0079】
そして、ステップS1700において、プロセッサ41は、ガイド溝29の位置及び姿勢に基づいて、体内術野画像21における穿刺針18の挿入経路NRを導出する。プロセッサ41は、ガイド溝29の傾斜角θといった寸法情報に応じて、体内術野画像21において、ガイド溝29の延長線となる挿入経路NRを導出する。例えば、ガイド溝29の位置を基点として、そこからガイド溝29の傾斜角θの角度をつけた線分を挿入経路NRとする。
【0080】
図10に示すように、ステップS1800において、プロセッサ41は、挿入経路NRの座標変換を行う。プロセッサ41は、体外術野画像23の第1座標系における内視鏡13の先端部13B内のカメラ13Cの撮影方向に基づいて、体外術野画像23の第1座標系と、カメラ13Cによって撮影した体内術野画像21の第2座標系との相関関係を導出する。プロセッサ41は、第1座標系と第2座標系との相関関係に基づいて、第2座標系の体内術野画像21内の挿入経路NRの位置及び姿勢を、第1座標系に変換する。これにより、第1座標系の体外術野画像23内における挿入経路NRの位置及び姿勢が特定される。そして、ステップS1900において、プロセッサ41は、第1座標系に変換した挿入経路NRを、第1座標系の体外術野画像23に重畳表示する。すなわち、プロセッサ41は、先端部13Bの位置姿勢情報及びガイド溝29の位置姿勢情報に基づいて体外術野画像23内において特定される位置に挿入経路NRを重ね合わせた合成画像をディスプレイ16に表示する制御を実行する。プロセッサ41は、医療支援装置11の起動終了など、表示終了指示が入力されるまで、上記の処理を繰り返し実行する。
【0081】
体外術野画像23は、動画として出力されるから、三次元の実空間である体外術野SFexにおける、内視鏡13、超音波プローブ14及び体外カメラ15等の位置を反映して、ディスプレイ16に表示される体外術野画像23内の挿入経路NRの位置及び姿勢も更新される。
【0082】
医療スタッフSTは、穿刺針18を腫瘍27に穿刺する場合は、図3に示すように、超音波画像22を観察しながら、超音波プローブ14の先端部14Bに設けられている超音波トランスデューサ14Cの位置及び姿勢を調整する。具体的には、ガイド溝29の延長線となる穿刺ライン30が腫瘍27を通過する位置に超音波トランスデューサ14Cの位置及び姿勢を調整する。体外術野画像23に重畳表示される挿入経路NRの位置及び姿勢は、こうした超音波プローブ14の位置及び姿勢の変化に応じて変化する。超音波画像22において腫瘍27を通過するように穿刺ライン30が表示されている場合、穿刺ライン30は、穿刺針18の理想的な挿入経路を示している。この状態で、超音波プローブ14の位置及び姿勢が固定される。そして、この状態における体外術野画像23内の挿入経路NRも穿刺針18の理想的な挿入経路を示していることになる。
【0083】
図11に示すように、理想的な挿入経路NRが重畳表示されている体外術野画像23を観察しながら、医療スタッフSTは、体外術野SFexにある穿刺針18が、理想的な挿入経路NRに沿うように穿刺針18の位置及び姿勢を調整する。
【0084】
本例において、体外カメラ15は、穿刺針18の基端部に設けられている。そのため、穿刺針18の位置及び姿勢に応じて体外カメラ15の視点も変化するので、体外術野画像23に表示される挿入経路NRに合わせて穿刺針18の位置及び姿勢を調整しやすい。
【0085】
さらに、本例では、体外カメラ15の撮影光軸は穿刺針18の軸方向に沿って配置されている。この場合、挿入経路NRと穿刺針18の軸方向を一致させるように穿刺針18の位置及び姿勢を調整すると、穿刺針18の基端の体外カメラ15の視点も変化する。その結果、穿刺針18の位置及び姿勢によって、図11の下段左側の体外術野画像23において線として表示されていた挿入経路NRが、図11の下段右側の体外術野画像23に示すように点として表示される場合が生じる。挿入経路NRが点として表示される場合、その点は患者PTの体表上の挿入位置NPを示す。プロセッサ41は、挿入経路NRが点として表示される場合は、挿入位置NPを、図11に一例として示すように、円形と十字形状を組み合わせたマーク57で表示する。挿入位置NPが表示されている場合は、穿刺針18の位置及び姿勢を保った状態で、マーク57で示される挿入位置NPに向けて穿刺針18を挿入すれば、医療スタッフSTは、超音波プローブ14のガイド溝29を介して、穿刺針18の針先を、目標位置である腫瘍27に穿刺することができる。なお、マーク57の形態は一例であり、もちろん、他の形態でもよい。
【0086】
以上説明したように、本開示の技術に係る医療支援装置11は、プロセッサ41を備え、プロセッサ41は、患者PT(被検体の一例)の体外にある体外カメラ15によって撮影された体外術野画像23(撮影画像の一例)であって、挿入部13Aが患者PTの体内に挿入された内視鏡13(医療機器の一例)と、内視鏡13の把持部13D(挿入部13Aを除く部分の一例)に設けられた画像認識可能なマーカM1とが撮影範囲に含まれる体外術野画像23を取得する。そして、プロセッサ41は、マーカM1に基づいて、体外術野画像23内における内視鏡13の先端部13Bの位置及び姿勢のうちの少なくとも1つを含む位置姿勢情報を導出する。さらに、プロセッサ41は、位置姿勢情報に基づいて体外術野画像23内において特定される位置に挿入支援情報(医療支援情報の一例)を重ね合わせた体外術野画像23(合成画像の一例)をディスプレイ16(表示部の一例)に表示する制御を実行する。そのため、医療支援装置11は、簡便な構成で、かつより表示の自由度が高い態様で、医療機器の位置又は姿勢に応じた適切な位置に医療支援情報の表示が可能となる。
【0087】
より具体的には、本開示の技術に係る医療支援装置11は、マーカM1を用いることにより、従来の磁気ナビゲーション装置といった大掛かりな装置を用いる必要がなく、簡便な構成で医療支援情報の提供が可能となる。また、レーザポインタのように医療支援情報の種類が限定的ではなく、より自由度の高い情報を提供することができる。
【0088】
また、上記実施形態では、医療機器は、鏡視下手術に用いられる内視鏡13を一例として示した。内視鏡13は、患者PTの体表に形成された穴から体内に挿入される挿入部13Aを先端側に有し、マーカM1は体外に挿入されない基端側に設けられている。プロセッサ41は、マーカM1に基づいて、体内にある挿入部13Aの位置姿勢情報を導出する。内視鏡13のように医療機器が鏡視下手術に用いられる場合は、体内に挿入される挿入部13Aの位置は体外から認識しづらいため、本開示の技術は特に有効である。鏡視下手術に用いられる医療機器としては、上記実施形態で示した硬性内視鏡の他、挿入部13Aが可撓性を有する軟性内視鏡でもよい。内視鏡は、観察する部位に基づく分類として、腹腔鏡の他、胸腔鏡及び関節鏡等もあり、本開示の技術はこうした医療機器にも適用することができる。
【0089】
また、上記実施形態では、プロセッサ41は、マーカM1と内視鏡13(医療機器の一例)の寸法情報に基づいて、挿入部13Aの位置姿勢情報を導出する。寸法情報を用いることで、体外にあるマーカM1から、体内の挿入部13Aの位置及び姿勢の推定が容易になる。
【0090】
また、上記実施形態では、内視鏡13には、マーカM1(第1マーカの一例)、挿入部13A(第1挿入部の一例)、及びカメラ13C(体内カメラの一例)が設けられており、このような内視鏡13が第1医療機器の一例として用いられる。さらに、内視鏡13とは別の第2医療機器の一例として、体内に挿入される挿入部14A(第2挿入部の一例)と、マーカM2(第2マーカの一例)とが設けられた超音波プローブ14が、内視鏡13とともに手術に用いられる。この場合において、プロセッサ41は、以下の処理を実行する。すなわち、プロセッサ41は、カメラ13Cによって撮影された体内術野画像21(第2撮影画像の一例)であって、挿入部14Aと、マーカM2とが撮影範囲に含まれる体内術野画像21を取得する。そして、マーカM2に基づいて、体内術野画像21内における挿入部14Aの位置及び姿勢のうちの少なくとも1つを含む位置姿勢情報を導出する。さらに、プロセッサ41は、挿入部13Aの先端部13Bの位置姿勢情報(第1位置姿勢情報の一例)及び挿入部14Aのガイド溝29の位置姿勢情報(第2位置姿勢情報の一例)に基づいて体外術野画像23内において特定される位置に、挿入支援情報(医療支援情報の一例)を体外術野画像23に重ね合わせた合成画像を表示部に表示する制御を実行する。
【0091】
このように、内視鏡13と超音波プローブ14といった第1医療機器と第2医療機器の2つの医療機器を用いる場合でも、マーカM1とマーカM2の2つのマーカを用いることにより、複数の医療機器間の相対的な位置関係(図3の相対的な位置関係RP1-1、RP1-2、RP1-3、及びRP2を参照)を把握することが可能となる。これにより、各医療機器の位置及び姿勢に応じた適切な位置に、医療支援情報を表示することができる。
【0092】
上記実施形態では、第1医療機器は内視鏡13であり、第2医療機器は、肝臓LV等の臓器の内部構造を観察可能な超音波プローブ14(医用プローブの一例)である。内視鏡13と超音波プローブ14とはどちらも体内に挿入される挿入部を有するため、体外の情報から体内の情報を推定する本開示の技術は特に有効である。なお、医用プローブとしては、超音波プローブ14の代わりに、光干渉断層撮影(OCT:Optical Coherence Tomography)等でもよい。
【0093】
上記実施形態では、医療支援情報は、超音波プローブ14(医用プローブの一例)を通じて観察される肝臓LV(臓器の一例)内の腫瘍27の位置(目標位置の一例)に向けて体外から挿入される穿刺針18(処置具の一例)の挿入支援情報であって、挿入位置NP及び挿入経路NRの少なくとも1つを含む挿入支援情報である。これにより、処置具の挿入をより正確に行うことができる。
【0094】
また、超音波プローブ14は、穿刺針18等の処置具と組み合わされて使用されることが比較的多い。そのため、上記実施形態のように、医用プローブとして超音波プローブ14を使用する場合には、本開示の技術は特に有効である。また、穿刺針18は、目標位置への正確な穿刺が求められることが多い。そのため、挿入支援情報のような医療支援情報を提供する本開示の技術は、処置具として穿刺針18を使用する場合に特に有効である。
【0095】
また、上記実施形態では、図11に示したように、挿入位置NPは、穿刺針18が挿入される患者PTの体表上の位置を示すマーク57で表示される。そのため、体外からでも、穿刺針18の挿入位置の確認が容易であり、マーク57で表示しない場合と比べて、穿刺針18の挿入を正確に行うことができる。また、上記実施形態では、挿入経路NRが線で示されるため、挿入経路NRを線で表示しない場合と比べて、穿刺針18の挿入を正確に行うことができる。
【0096】
また、上記実施形態では、医用プローブの一例である超音波プローブ14は、挿入部14Aに設けられ、穿刺針18(処置具の一例)との係合により、穿刺針18の目標位置への挿入をガイドするためのガイド溝29を有している。プロセッサ41は、マーカM2とガイド溝29の相対的な位置関係に基づいて、体外術野画像23に挿入支援情報を重ね合わせる位置を特定する。相対的な位置関係は、一例として超音波プローブ14の寸法情報が使用される。そのため、相対的な位置関係を用いない場合と比べて、比較的簡単な処理で挿入支援情報を重ね合わせる位置を特定することができる。
【0097】
また、上記実施形態では、体外カメラ15は穿刺針18(処置具の一例)の基端側に設けられ、体外術野画像23を動画で出力することが可能であり、プロセッサ41は、挿入支援情報として、動画に挿入経路NRを示す線を表示する。そのため、穿刺針18の位置及び姿勢に応じて体外カメラ15の視点も変化するので、体外術野画像23に表示される挿入経路NRに合わせて穿刺針18の位置及び姿勢を調整しやすい。
【0098】
さらに、穿刺針18の軸方向と体外カメラ15の撮影光軸は一致している。そのため、図11で示したように、体外カメラ15が撮影する体外術野画像23に表示される挿入経路NRと、穿刺針18の軸方向が一致するように穿刺針18の位置及び姿勢を調整することにより、挿入経路NRの線が挿入位置NPを示す点として表示される。このため、簡単な構成で、穿刺針18の体表上の挿入位置NPを的確に表示することができる。
【0099】
また、図11に示すような患者PTの体表上の挿入位置NPを導出する効果は、図12に示す方法によっても得ることが可能である。すなわち、図12に示すように、体外カメラ15の視点を変えて、異なる視点の2枚以上の体外術野画像23を取得し、それぞれに挿入経路NRを表示する。一方の視点の体外術野画像23の挿入経路NRをNR1、他方の視点の挿入経路NRをNR2とする。プロセッサ41は、2枚の体外術野画像23に写る2つの挿入経路NR1及びNR2の交点を求めることにより、この交点を、患者PTの体表上の挿入位置NPとして導出する。図12に示す方法は、要するに、視差を利用したステレオ撮影の要領で挿入位置NPを導出する方法である。
【0100】
図12に示す例では、1台の体外カメラ15を移動させることにより、異なる視点の体外術野画像23を取得しているが、視点が異なる2台以上の体外カメラ15を用いてもよい。
【0101】
また、上記実施形態では、体外術野画像23内において挿入経路NR等の挿入支援情報を重ね合わせる位置の特定方法としては、図10に示す方法を用いた。すなわち、内視鏡13のカメラ13Cが撮影した第2座標系の体内術野画像21内の挿入経路NRを、体外術野画像23の第1座標系に変換することにより、体外術野画像23に重ね合わせる位置を特定する方法である。
【0102】
こうした特定方法の他に、図13に示す方法を用いてもよい。まず、図3にも示したように、超音波プローブ14によって取得される超音波画像22においては、目標位置となる腫瘍27が検出されており、かつ、超音波プローブ14の位置及び姿勢は、穿刺ライン30が腫瘍27を通過する理想的な状態になっている場合を考える。図13に示す方法は、超音波画像22の座標系を第3座標系とした場合、超音波画像22内の第3座標系の穿刺ライン30を、体外術野画像23の第1座標系に変換する方法である。図10に示したとおり、マーカM2を用いることにより、体外術野画像23の第1座標系と、超音波プローブ14の先端部14Bが写る体内術野画像21の第2座標系との相関関係を把握することが可能である。そして、先端部14Bの位置及び姿勢を推定できれば、寸法情報から、先端部14Bの超音波トランスデューサ14Cの位置及び姿勢を推定することも可能である。そうすると、超音波プローブ14の先端部14Bが写る体内術野画像21の第2座標系と、超音波プローブ14が取得する超音波画像22の第3座標系との相関関係も把握することが可能である。
【0103】
すなわち、プロセッサ41は、超音波プローブ14(医用プローブの一例)によって取得される肝臓LV(臓器の一例)の超音波画像22(内部画像の一例)において特定される腫瘍27(目標位置の一例)と、先端部14Bの位置姿勢情報に基づいて導出される、超音波画像22の第3座標系と体外術野画像23の第1座標系との相関関係とに基づいて、体外術野画像23に挿入支援情報を重ね合わせる位置を特定する。こうした方法によれば、超音波プローブ14のような医用プローブで取得した内部画像を、挿入支援情報を重ね合わせる位置の特定に有効活用することができる。
【0104】
[第2実施形態]
上記実施形態は、第1マーカであるマーカM1を有する第1医療機器として内視鏡13を用い、第2マーカであるマーカM2を有する第2医療機器として超音波プローブ14を用いる例で説明したが、マーカを有する医療機器は1つだけでもよい。図14に示す第2実施形態は、マーカを有する医療機器が1つの例である。図14において、マーカを有する医療機器は、臓器の内部構造を観察可能な超音波プローブ14である。超音波プローブ14には、マーカM1が設けられている。マーカM1は、超音波プローブ14において、挿入部14Aを除く部分である基端側の操作部14Dに設けられている。
【0105】
体外カメラ15は、超音波プローブ14の挿入部14Aが患者PTの体内に挿入されている状態で、操作部14DのマーカM1が撮影範囲に含まれるように体外術野SFexを撮影する。プロセッサ41は、体外カメラ15が撮影した体外術野画像23を取得する。プロセッサ41は、第1実施形態において内視鏡13の先端部13Bの位置姿勢情報の導出と同じ要領で、体内に挿入されている超音波プローブ14の先端部14Bにあるガイド溝29の位置及び姿勢を導出する。
【0106】
すなわち、プロセッサ41は、体外術野画像23から検出したマーカM1と、超音波プローブ14の寸法情報とに基づいて超音波プローブ14のガイド溝29の位置及び姿勢を推定し、先端部14Bの位置姿勢情報を導出する。そして、プロセッサ41は、寸法情報に基づいて、先端部14Bのガイド溝29の位置及び姿勢を推定する。プロセッサ41は、体外術野画像23におけるガイド溝29の位置及び姿勢に応じて、挿入経路NRを重ね合わせる位置を特定し、特定した位置に挿入経路NRを重ね合わせた合成画像を生成する。
【0107】
このように第2実施形態は、概念的には、体外カメラ15と超音波プローブ14のマーカM1との相対的な位置関係RP1-4と、既知の寸法情報によって規定されるマーカM1と先端部14Bとの位置関係RP1-5とに基づいて、体外カメラ15と先端部14Bとの相対的な位置関係RP1-3を把握する方法である。
【0108】
また、超音波プローブ14のように体内に挿入される先端部14Bが湾曲可能な場合は、先端部14Bの湾曲操作の操作量を考慮することが好ましい。図14に示すように、体外カメラ15は、マーカM1とともに、超音波プローブ14の操作部14Dに設けられたアングルノブ14Eが撮影範囲に含まれるように体外術野画像23を撮影する。アングルノブ14Eは、例えば回転操作によって先端部14Bを湾曲させることにより、先端部14Bの位置及び姿勢を変化させる操作部である。
【0109】
プロセッサ41は、体外術野画像23を画像解析することにより、アングルノブ14Eの操作量として回転量を検出する。例えば、アングルノブ14Eには、回転量を検出するための検出マーカが設けられており、プロセッサ41は、検出マーカの位置及び姿勢の変化及び変化量を画像認識することにより、操作量を検出する。回転量には回転方向も含まれる。
【0110】
プロセッサ41は、寸法情報で推定した先端部14Bの位置及び姿勢を、操作量に基づいて補正することにより、操作量に応じた先端部14Bの位置及び姿勢を推定する。
【0111】
このように、第2実施形態の超音波プローブ14のように、マーカM1を有する医療機器が、体外にある操作部(アングルノブ14E等)の操作によって挿入部の位置及び姿勢を変化させることが可能である場合において、プロセッサ41は、寸法情報に加えて、操作部の操作量を取得し、取得した操作量を、挿入部の位置姿勢情報の導出に用いる。これによれば、挿入部の位置及び姿勢についてより正確な推定が可能となる。
【0112】
なお、操作部の操作量の検出は、検出マーカの代わりに、電気的な信号を用いてもよい。例えば、アングルノブ14Eの回転操作に応じて、回転量に応じたパルス数のパルス信号が超音波プローブ14からプロセッサ41に送信されるようにしておく。プロセッサ41は、パルス信号に基づいてアングルノブ14Eの回転量を検出することができる。パルス信号の送信は、無線でも有線でもよい。
【0113】
<その他の変形例>
上記の各実施形態は一例であり、本開示の技術は各種の変形が可能である。上記実施形態では、鏡視下手術を例に説明したが、開腹手術に適用することも可能である。
【0114】
(開腹手術の例)
図15に示す例は、開腹手術に適用する例である。開腹手術か鏡視下手術かといった違いはあるものの、図15に示す例でも、基本的な構成は図14と同様であるので、相違点のみ説明する。開腹手術の場合は、術野は体外と体内の境界が不分明であるため、体外カメラ15は、体内と体外が混在した術野SFの術野画像25を撮影する。術野画像25の撮影範囲には、マーカM1が含まれる。プロセッサ41は、術野画像25に基づいて超音波プローブ14の先端部14Bの位置姿勢情報を導出する。そして、術野画像25内において、導出した位置姿勢情報に基づいて特定される位置に、挿入経路NRといった挿入支援情報を重ね合わせた合成画像を生成する。
【0115】
(ロボット手術に用いる例)
また、図16に示すように、本開示の技術を、ロボットRBを用いた手術に適用することも可能である。ロボットRBは、例えば、変位自在なアームを有しており、アームの先端部には体外カメラ15が設けられている。体外カメラ15は、超音波プローブ14のマーカM1を撮影する。プロセッサ41は、超音波プローブ14のマーカM1に基づいて、先端部14Bの位置姿勢情報を導出し、術野画像25内において、位置姿勢情報に基づいて特定される位置に、挿入経路NRといった挿入支援情報を重ね合わせた合成画像を生成する。
【0116】
図16に示す例では、ロボットRBに体外カメラ15を設けた例で説明したが、これに限らず、各種の利用の仕方が可能である。例えば、超音波プローブ14のように、ロボットRBがマーカM1を有する医療機器であってもよい。この場合、ロボットRBのアームの一部が体内に挿入される挿入部となっていて、挿入部を除く部分にマーカM1が設けられる。そして、ロボットRBとは独立して設けられた体外カメラ15によってマーカM1を撮影する。プロセッサ41は、術野画像25からマーカM1を検出し、検出したマーカM1に基づいてロボットRBの挿入部の位置及び姿勢を推定する。プロセッサ41は、術野画像25に対して、位置姿勢情報に基づいて特定される位置に挿入支援情報を重ね合わせた合成画像を生成する。
【0117】
[第3実施形態]
上記実施形態では、体外術野画像23に重ね合わせる挿入経路NRといった挿入支援情報を、超音波画像22又は体内術野画像21において生成し、これを体外術野画像23の座標系に変換する例で説明した。しかし、図17図20に示す第3実施形態に示すように、挿入支援情報の生成方法は、それ以外でもよく、挿入支援情報を手術前に予め準備しておき、準備した挿入支援情報を体外術野画像23に重ね合わせてもよい。
【0118】
(術前準備情報の作成)
第3実施形態では、例えば、手術前に、仮想内視鏡の3D(三次元:3Dimension)データを用いて術前シミュレーションを行い、術前シミュレーションにおいて、穿刺針18の挿入経路NRといった挿入支援情報を準備する。また、第3実施形態は、第1実施形態と同様に、第1医療機器として内視鏡13を用い、第2医療機器として超音波プローブ14を用いる例である。以下、図17図20を参照しながら説明する。
【0119】
まず、図17及び図18を参照しながら、仮想内視鏡の3Dデータを用いた術前シミュレーションにおいて、肝臓LVに穿刺する穿刺針18の挿入経路NRを挿入支援情報として作成する作成方法を説明する。また、仮想内視鏡の3Dデータは、CT(Computed Tomography)装置及びMRI(Magnetic Resonance Imaging)装置などの断層撮影装置131によって予め撮影された断層画像群132に基づいて生成される。断層撮影装置131がCT装置の場合は、放射線源と放射線検出器とを患者PTの体軸回りに回転させながらCT値が取得される。CT値の取得は、放射線源と放射線検出器とを患者PTの体軸方向に走査することにより体軸方向の各位置で行われる。CT値は、患者PTの体内の放射線吸収値である。断層撮影装置131は、体軸回りの各方向で取得したCT値に基づいて画像再構成処理を行うことにより断層画像132Aを生成する。各断層画像132Aは体軸方向のスライス厚に応じて生成された二次元の画像であり、断層画像群132は、体軸方向の各位置に対応する複数の断層画像132Aの集合である。断層画像群132は、PACS(Picture Archiving and Communication System)などの画像データベース133に出力される。
【0120】
図示しない情報処理装置は、断層撮影装置131によって得られた断層画像群132に基づいて、患者PTの体の三次元的な形状を数値的に記述する3Dモデリングを行うことにより、ボクセルデータ134Aの集合である三次元画像134を生成する。ボクセルデータ134Aは、三次元空間内の画素の単位であり、三次元座標情報及び画素値を有する。3Dモデリングによって生成される三次元画像134は三次元ボリュームデータなどとも呼ばれる。断層画像群132において、各断層画像132Aの画素間隔と各断層画像132Aのスライス厚が異なる場合がある。この場合は、一例として、3Dモデリングにおいて、隣接する断層画像132A間で補間処理を行うことにより、三次元の各方向の長さが等しい等方的なボクセルデータ134Aを持つ三次元画像134が生成される。ここで、断層画像群132に基づいて生成される三次元画像134は、術前に作成される情報であるため、ここでは、便宜上、術前3D画像134と呼ぶ。術前3D画像134は、仮想内視鏡の3Dデータの一例であり、さらに、本開示の技術に係る「手術前に予め取得された臓器の三次元画像」の一例である。
【0121】
術前3D画像134は、患者PTの体の外形、体内の臓器等の解剖学的部位及びそれらの内部構造を再現可能な画像である。図17及び図18に示す術前3D画像134は、解剖学的部位の一例として肝臓LVのデータを示している。術前3D画像134には、肝臓LVの内部構造の一例である血管構造を再現可能なデータも含まれている。
【0122】
また、本例の術前3D画像134はカラー画像であり、ボクセルデータ134Aの画素値として、赤(R)、緑(G)、青(B)の各画素値が与えられる。なお、術前3D画像134はモノクロ画像であってもよい。例えば、ボクセルデータ134Aの画素値は、CT値に基づく輝度(Y)のみで表されてもよい。また、ボクセルデータ134Aの画素値は、予め設定されたLUT(Look Up Table)や演算式を利用してCT値を変換した値を用いてもよい。また、ボクセルデータ134Aの画素値は、術前3D画像134において特定された臓器又は病変等の特定の部位毎に対応付けられた色が設定されてもよい。また、ボクセルデータ134Aには不透明度も設定されている。不透明度は、ボリュームレンダリングに用いられるデータである。レンダリングは、術前3D画像134の一部を二次元の投影像に変換する処理であり、ボリュームレンダリングは、術前3D画像134に含まれる物体の内部情報も投影像に投影するレンダリング手法である。各ボクセルデータ134Aに不透明度を設定することにより、ボリュームレンダリングを行う場合において、内部情報のうち、投影像に不透明で投影する、半透明で投影する、及び透明にする等の表現の使い分けが可能になる。
【0123】
図18に示すように、挿入経路NRを含む情報123は、術前に予め準備される情報であるため、以下において術前準備情報と呼ぶ。術前準備情報123は、術前3D画像134に基づいて生成される。挿入経路NRは、術前に術前3D画像134を用いて行われる手術シミュレーションにおいて、術前3D画像134に付与される。術前準備情報123は、挿入経路NR以外に、挿入対象の肝臓LVの内部構造として、血管構造137及び腫瘍27を含んでいる。こうした挿入経路NRと、血管構造137及び腫瘍27といった内部構造とを含む術前準備情報123が、術前3D画像134から抽出される。
【0124】
このように、術前準備情報123は、術前3D画像134内の三次元位置が規定された情報である。術前準備情報123に含まれる血管構造137は、超音波プローブ14によって取得される超音波画像22との位置合わせに利用される。
【0125】
(超音波3D画像の取得)
図19に示すように、プロセッサ41は、超音波プローブ14によって撮影された超音波画像22の集合である超音波画像群22Gに基づく超音波3D(三次元)画像151を取得する。プロセッサ41は、手術中に取得した超音波3D画像151を位置合わせに利用する。超音波3D画像151は、本開示の技術に係る「医用プローブによって取得される臓器の内部画像」の一例である。
【0126】
図19に示すように、まず、肝臓LV等の対象部位の表面に沿って超音波プローブ14を走査させると、走査軌跡S上の各位置における複数の超音波画像22を取得することができる。プロセッサ41は、超音波画像群22Gを取得し、取得した超音波画像群22Gに基づいて3Dモデリングを行うことにより、超音波3D画像151を生成する。超音波画像22は、図17に示した断層画像132Aと同様に断層画像であり、超音波画像群22Gは、断層画像群132と同様である。超音波画像群22Gにおいても、肝臓LVの血管構造137などの対象部位の内部構造が描出される。
【0127】
プロセッサ41は、図17において説明した3Dモデリングと同様の処理を実行することにより、超音波3D画像151を生成する。超音波3D画像151は、術前3D画像134と同様に、三次元空間内の画素であるボクセルデータ151Aの集合である。ボクセルデータ151Aも、図17で示したボクセルデータ134Aと同様であり、三次元座標、画素値及び不透明度が設定される。
【0128】
図20に示すように、プロセッサ41は、内視鏡13を通じて取得した体内術野画像21の座標系と、超音波3D画像151の座標系との相関関係である第1位置関係情報159と、超音波3D画像151の座標系と、術前3D画像134の座標系との相関関係である第2位置関係情報159とを導出する。
【0129】
まず、第1位置関係情報158の導出方法について説明する。プロセッサ41は、第1実施形態で示したのと同じ要領で、体内術野画像21に写る超音波プローブ14のマーカM2に基づいて、超音波トランスデューサ14Cの位置及び姿勢を推定する。そして、プロセッサ41は、推定した超音波トランスデューサ14Cの位置及び姿勢に基づいて、体内術野画像21内における超音波3D画像151の位置及び姿勢を推定する。体内術野画像21内における超音波3D画像151の位置及び姿勢が、第1位置関係情報158となる。第1位置関係情報158は、本開示の技術に係る「第2位置姿勢情報に基づいて導出される、内部画像の座標系と第2撮影画像の座標系との相関関係」の一例である。
【0130】
次に、第2位置関係情報159の導出方法について説明する。プロセッサ41は、超音波3D画像151と、術前3D画像134とのそれぞれに描出されている血管構造137を比較する。具体的には、両者の血管構造137の類似構造を探索し、両者の類似構造が一致するように超音波3D画像151と術前3D画像134との位置合わせを行う。血管構造137の類似構造の探索は、パターンマッチング等のルールベースの画像解析手法を用いてもよいし、セマンティックセグメンテーションといった人工知能技術を利用した手法を用いてもよい。プロセッサ41は、このような血管構造137を用いた位置合わせを行うことで、第2位置関係情報159を導出することができる。
【0131】
そして、プロセッサ41は、第1位置関係情報158と第2位置関係情報159とに基づいて、術前3D画像134に基づいて生成された、挿入経路NRを含む術前準備情報123と、体内術野画像21とを合成する。肝臓LVの血管構造137によって位置合わせがおこなわれているため、挿入経路NRは腫瘍27に対して適切な位置に重ね合わされる。プロセッサ41は、第1実施形態のステップS1800(図5及び図10参照)で説明した座標変換を行うことにより、第2座標系の体内術野画像21内の挿入経路NRを第1座標系の体外術野画像23に重ね合わせた合成画像を生成する。第2位置関係情報159は、本開示の技術に係る「医用プローブによって取得される臓器の内部画像の座標系と三次元画像の座標系との相関関係」の一例である。
【0132】
このように、手術前に予め取得された術前3D画像134(臓器の三次元画像の一例)に、手術前のシミュレーションによって挿入経路NR(挿入支援情報の一例)が設定されている場合において、プロセッサ41は、第2位置関係情報159と第1位置関係情報158とを利用して、挿入経路NRを体外術野画像23に重ね合わせる。これにより、医用プローブの内部画像及び術前シミュレーションの結果を有効利用することができる。術前シミュレーションにおいては、例えば、血管構造137を傷つけないような適切な挿入経路NRを設定することが可能である。このような挿入経路NRを体外術野画像23において提供することにより、より適切な医療支援を行うことが可能となる。
【0133】
図20の例では、挿入経路NRに加えて、血管構造137及び腫瘍27の情報も、体内術野画像21内に重畳表示されている。図20においては、血管構造137等の情報は、体内術野画像21に重畳表示されているが、これらを体外術野画像23に重畳表示してもよい。
【0134】
また、上記各実施形態では、穿刺針の機能として、焼灼を例に説明したが、穿刺針の機能としては、焼灼以外でもよい。また、処置具として穿刺針を例に説明したが、穿刺針以外でも、ICG(Indocyanine Green)などの蛍光剤を注入する処置具、バイオプシーを行うための組織収集用に用いられる生検針及び鉗子等でもよい。
【0135】
また、上記各実施形態では、医療支援情報として、穿刺針の挿入位置NP及び挿入経路NRといった挿入支援情報を例示したが、医療支援情報としては、体内に挿入している医療機器の先端位置や形状、姿勢情報などを表す情報でもよい。
【0136】
また、上記各実施形態では、体外カメラ15を穿刺針18又はロボットRBに設けた例で説明したが、体外カメラ15の設置位置は上記に限定されない。例えば、手術室の天井等、体外術野SFexを撮影できる位置に設定されていればよい。
【0137】
また、上記各実施形態では、体内として腹腔内を例に説明したが、体内は、腹腔内に限らず、胸腔などの腹腔以外の体腔でもよいし、食道などの上部消化管、腸などの下部消化管、及び気管支などの管道内でもよい。管道内の術野に対して本開示の技術を適用する場合は、例えば、管道内に挿入される軟性内視鏡の基端部にマーカM1を設ける。
【0138】
また、上記各実施形態では、挿入部を有する医療機器としては、内視鏡13及び医用プローブ(超音波プローブ14又はOCTプローブ)の他、トラカール17でもよい。
【0139】
また、上記実施形態において、例えば、画像取得、位置姿勢情報導出、合成画像生成及び表示制御といった各種の処理を実行するプロセッサ41のハードウェア的な構造としては、下記に示す各種のプロセッサ(Processer)を用いることができる。各種プロセッサとしては、ソフトウェア(プログラム)を実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPUに加えて、FPGA(Field‐Programmable Gate Array)などの製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路などが含まれる。
【0140】
また、上記各種処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせなど)で実行してもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、システムオンチップ(System On Chip:SOC)などのように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。
【0141】
このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて構成される。
【0142】
さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた電気回路(Circuitry)を用いることができ
る。
【0143】
また、本開示の技術は、医療支援装置の作動プログラムに加えて、医療支援装置の作動プログラムを非一時的に記憶するコンピュータで読み取り可能な記憶媒体(USBメモリ又はDVD(Digital Versatile Disc)-ROM(Read Only Memory)など)にもおよぶ。
【0144】
以上に示した記載内容及び図示内容は、本開示の技術に係る部分についての詳細な説明であり、本開示の技術の一例に過ぎない。例えば、上記の構成、機能、作用、及び効果に関する説明は、本開示の技術に係る部分の構成、機能、作用、及び効果の一例に関する説明である。よって、本開示の技術の主旨を逸脱しない範囲内において、以上に示した記載内容及び図示内容に対して、不要な部分を削除したり、新たな要素を追加したり、置き換えたりしてもよいことは言うまでもない。また、錯綜を回避し、本開示の技術に係る部分の理解を容易にするために、以上に示した記載内容及び図示内容では、本開示の技術の実施を可能にする上で特に説明を要しない技術常識等に関する説明は省略されている。
【0145】
本明細書において、「A及び/又はB」は、「A及びBのうちの少なくとも1つ」と同義である。つまり、「A及び/又はB」は、Aだけであってもよいし、Bだけであってもよいし、A及びBの組み合わせであってもよい、という意味である。また、本明細書において、3つ以上の事柄を「及び/又は」で結び付けて表現する場合も、「A及び/又はB」と同様の考え方が適用される。
【0146】
本明細書に記載された全ての文献、特許出願及び技術規格は、個々の文献、特許出願及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
【符号の説明】
【0147】
10 医療支援システム
11 医療支援装置
13 挿入部
13 内視鏡
13A 挿入部
13B 先端部
13C カメラ
13D 把持部
14 超音波プローブ
14A 挿入部
14B 先端部
14C 超音波トランスデューサ
14D 操作部
14E アングルノブ
15 体外カメラ
16 ディスプレイ
17 トラカール
18 穿刺針
18A 針部
18B 把持部
21 体内術野画像
22 超音波画像
22G 超音波画像群
23 体外術野画像
25 術野画像
27 腫瘍
29 ガイド溝
30 穿刺ライン
41 プロセッサ
41A 画像取得部
41B 位置姿勢情報導出部
41C 合成画像生成部
41D 表示制御部
42 受付デバイス
44 ストレージ
45 通信I/F
46 外部I/F
48 バス
49 医療支援プログラム
50 寸法情報
56 格子パターン
56A 交点
57 マーク
123 術前準備情報
131 断層撮影装置
132 断層画像群
132A 断層画像
133 画像データベース
134 術前3D画像
134A ボクセルデータ
137 血管構造
151 超音波3D画像
151A ボクセルデータ
158 第1位置関係情報
159 第2位置関係情報
θ 傾斜角
AXpb 軸方向
LV 肝臓
M1 マーカ(第1マーカ)
M2 マーカ(第2マーカ)
NP 挿入位置
NR、NR1、NR2 挿入経路
PT 患者
RP1-1、RP1-2、RP1-3、RP1-4、RP1-5、RP2 位置関係
RB ロボット
S 走査軌跡
SF 術野
SFex 体外術野
SFin 体内術野
ST 医療スタッフ
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