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特開2024-131069燃料の供給方法及び供給装置、並びに、セメントクリンカの製造方法及び製造設備
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131069
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】燃料の供給方法及び供給装置、並びに、セメントクリンカの製造方法及び製造設備
(51)【国際特許分類】
   F23N 1/00 20060101AFI20240920BHJP
   F23G 5/50 20060101ALI20240920BHJP
   F23G 5/033 20060101ALI20240920BHJP
   F23C 1/00 20060101ALI20240920BHJP
   F23C 1/02 20060101ALI20240920BHJP
   F23C 1/06 20060101ALI20240920BHJP
   F23K 3/00 20060101ALI20240920BHJP
   C04B 7/38 20060101ALI20240920BHJP
   C04B 7/44 20060101ALI20240920BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20240920BHJP
   G01N 23/04 20180101ALI20240920BHJP
   G01N 23/083 20180101ALI20240920BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240920BHJP
【FI】
F23N1/00 116
F23G5/50 R
F23G5/50 J
F23G5/50 Q
F23G5/033 A
F23C1/00 301
F23C1/02
F23C1/06
F23K3/00 302
F23G5/50 G
C04B7/38
C04B7/44
G01N21/27 A
G01N23/04
G01N23/083
G06T7/00 610
G06T7/00 250
【審査請求】未請求
【請求項の数】26
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041101
(22)【出願日】2023-03-15
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PYTHON
(71)【出願人】
【識別番号】521297587
【氏名又は名称】UBE三菱セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(72)【発明者】
【氏名】藤田 侑亮
(72)【発明者】
【氏名】藤井 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】天雲 勇佑
(72)【発明者】
【氏名】松井 洋高
(72)【発明者】
【氏名】表 誠治
(72)【発明者】
【氏名】古賀 明宏
(72)【発明者】
【氏名】鷲尾 知昭
(72)【発明者】
【氏名】上田 陽一
(72)【発明者】
【氏名】丸屋 英二
【テーマコード(参考)】
2G001
2G059
3K062
3K065
3K068
3K091
4G112
5L096
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA11
2G001CA01
2G001DA09
2G001HA13
2G001LA09
2G059AA03
2G059BB08
2G059EE01
2G059EE12
2G059FF01
2G059HH03
2G059KK01
2G059MM01
3K062AA07
3K062AC01
3K062AC13
3K062AC17
3K062BA01
3K062CA06
3K062CA08
3K062CB01
3K062DA36
3K062DB12
3K065AA07
3K065AC01
3K065AC13
3K065AC17
3K065CA02
3K068FA02
3K068FB01
3K068FB11
3K068GA00
3K068HA03
3K091AA20
3K091BB07
3K091CC02
3K091CC12
4G112KA02
5L096BA02
5L096BA18
5L096DA02
5L096JA11
5L096MA07
(57)【要約】
【課題】燃料として種々の成分を含有する廃棄物を用いてもセメントクリンカの製造を安定的に継続することが可能なセメントクリンカ製造設備の加熱装置への燃料の供給方法を提供すること。
【解決手段】廃棄物及び化石燃料を燃料とするセメントクリンカ製造設備の加熱装置への燃料の供給方法であって、廃棄物に電磁波を照射して、電磁波の吸収、散乱及び透過からなる群より選ばれる少なくとも一つに関する情報を取得し、当該情報を用いて廃棄物の発熱量を予測する予測工程と、発熱量の予測結果に基づいて、加熱装置に廃棄物とともに燃料として供給する化石燃料の供給量を調整する調整工程と、を有する、燃料の供給方法を提供する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントクリンカ製造設備の加熱装置への廃棄物及び化石燃料を含む燃料の供給方法であって、
前記廃棄物に電磁波を照射して、前記電磁波の吸収、散乱及び透過からなる群より選ばれる少なくとも一つに関する情報を取得し、当該情報を用いて前記廃棄物の発熱量を予測する予測工程と、
前記発熱量の予測結果に基づいて、前記加熱装置に供給する前記化石燃料の供給量を調整する調整工程と、を有する、燃料の供給方法。
【請求項2】
前記予測工程では前記情報を用いて前記廃棄物の含有成分、又は前記含有成分及びその含有量を予測し、
前記調整工程ではその予測結果に基づいて前記化石燃料の供給量を調整する、請求項1に記載の燃料の供給方法。
【請求項3】
前記予測工程では、レーザー、赤外線及びX線からなる群より選ばれる少なくとも一つの光源と検出器とを用いて、前記廃棄物のスペクトルを含む前記情報を取得する、請求項1又は2に記載の燃料の供給方法。
【請求項4】
前記予測工程は、前記廃棄物の画像を取得し、
前記画像をn個の領域に分割したときの各領域の近赤外線を含む電磁波の吸収情報と、を取得する情報取得工程と、
前記n個の前記吸収情報をクラスター分析によりk個のグループに分類する分析工程と、
前記近赤外線を含む電磁波の前記吸収情報に基づいて、前記k個のグループのそれぞれの発熱量を予測する第1予測工程と、
前記k個のグループそれぞれの発熱量の予測値に基づいて、前記画像に含まれる前記廃棄物の発熱量を予測する第2予測工程と、を有する、請求項1に記載の燃料の供給方法。
【請求項5】
前記第1予測工程では、前記吸収情報を用いて前記k個のグループのそれぞれの平均スペクトルを算出し、当該平均スペクトルに基づいて前記k個のグループのそれぞれの発熱量の予測値を導出する、請求項4に記載の燃料の供給方法。
【請求項6】
前記平均スペクトルと、発熱量が既知である複数の参照用吸収スペクトルと、を照合して類似度を算出し、前記類似度が最も高い前記参照用吸収スペクトルの発熱量を前記予測値として選択する、請求項5に記載の燃料の供給方法。
【請求項7】
前記類似度は、平均絶対誤差(MAE)、二乗平均平方根誤差(RMSE)又は決定係数(R2)によって判定する、請求項6に記載の燃料の供給方法。
【請求項8】
前記平均スペクトルと照合される前記複数の参照用吸収スペクトルの個数は前記k個の5倍以上である、請求項6に記載の燃料の供給方法。
【請求項9】
前記クラスター分析は、k平均法、DBSCAN法、及びスペクトラルクラスタリング法からなる群より選ばれる少なくとも一つの方法によって行う、請求項4に記載の燃料の供給方法。
【請求項10】
前記クラスター分析の前に、前記近赤外線の吸収情報の前処理を行う前処理工程を有し、
前記前処理は、最大値による規格化、トリミング、スムージング、及び2階微分からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む、請求項4に記載の燃料の供給方法。
【請求項11】
前記廃棄物は、プラスチック、紙、木屑、石、ガラス、金属、布、及び皮からなる群より選ばれる2つ以上を含んでおり、
前記予測工程では、前記廃棄物を搬送装置で搬送しながら前記電磁波を照射する、請求項1に記載の燃料の供給方法。
【請求項12】
前記予測工程の前に、前記廃棄物を破砕する破砕工程を有する、請求項1に記載の燃料の供給方法。
【請求項13】
前記電磁波が照射される前記廃棄物の粒径が35mm以下である、請求項1に記載の燃料の供給方法。
【請求項14】
前記化石燃料は、石炭、石炭コークス、重油、及びオイルコークスから選ばれる1種以上を含む、請求項1に記載の燃料の供給方法。
【請求項15】
前記調整工程では、前記発熱量の予測結果に基づいて、前記加熱装置に供給される燃料全体の発熱量の変動が小さくなるように前記化石燃料の供給量を制御装置を用いて自動制御する、請求項1に記載の燃料の供給方法。
【請求項16】
前記予測工程における前記発熱量の予測結果が所定の許容範囲から外れた場合に、前記調整工程において、前記燃料全体の発熱量の変動が小さくなるように前記化石燃料の供給量を調整する、請求項1に記載の燃料の供給方法。
【請求項17】
前記予測工程では、所定の時間間隔で前記発熱量を予測しており、
前記許容範囲は、w回~z回前の予測値の平均値に基づいて設定される、請求項16に記載の燃料の供給方法。[但し、w,zは自然数であり、w<zである。]
【請求項18】
前記加熱装置が仮焼炉であり、
前記調整工程では、前記仮焼炉の温度と前記発熱量の予測結果とに基づいて、前記化石燃料の供給量を調整する、請求項1に記載の燃料の供給方法。
【請求項19】
加熱装置を備えるセメントクリンカ製造設備を用いるセメントクリンカの製造方法であって、
前記加熱装置である仮焼炉及びセメントキルンの一方又は双方に、請求項1~18のいずれか一項に記載の燃料の供給方法によって、前記廃棄物及び前記化石燃料を供給する工程を有する、セメントクリンカの製造方法。
【請求項20】
加熱装置を備えるセメントクリンカ製造設備を用いるセメントクリンカの製造方法であって、
前記加熱装置に供給するプラスチックを含む廃棄物に電磁波を照射して、前記電磁波の吸収、散乱及び透過からなる群より選ばれる少なくとも一つに関する情報を取得し、当該情報を用いて前記廃棄物の発熱量を予測する予測工程と、
前記発熱量の予測結果に基づいて、前記加熱装置に供給する化石燃料の供給量を調整する調整工程と、を有する、セメントクリンカの製造方法。
【請求項21】
前記調整工程では、前記発熱量の予測結果に基づいて、前記加熱装置に供給される燃料全体の発熱量の変動が小さくなるように前記化石燃料の供給量を制御装置を用いて自動制御する、請求項20に記載のセメントクリンカの製造方法。
【請求項22】
前記予測工程における前記発熱量の予測結果が許容範囲から外れた場合に、前記調整工程において、前記加熱装置に供給される燃料全体の発熱量の変動が小さくなるように前記化石燃料の供給量を調整する、請求項20又は21に記載のセメントクリンカの製造方法。
【請求項23】
セメントクリンカ製造設備の加熱装置への廃棄物及び化石燃料を含む燃料の供給装置であって、
前記廃棄物に電磁波を照射して前記電磁波の吸収、散乱及び透過からなる群より選ばれる少なくとも一つに関する情報を取得し、当該情報を用いて発熱量を予測する予測装置と、
前記発熱量の予測結果に基づいて、前記加熱装置に供給する前記化石燃料の供給量を調整する調整装置と、を備える、燃料の供給装置。
【請求項24】
前記予測装置における前記発熱量の予測結果から前記化石燃料の供給量を決定し、前記調整装置に前記化石燃料の供給量に関する信号を出力する制御装置を備え、
前記調整装置は前記信号に基づいて前記化石燃料の供給量を調整する、請求項23に記載の燃料の供給装置。
【請求項25】
前記廃棄物を破砕する破砕装置と、前記破砕装置で破砕された前記廃棄物を搬送する搬送装置と、を備え、
前記予測装置では、前記搬送装置で搬送される前記廃棄物に対して前記電磁波を照射する、請求項23に記載の燃料の供給装置。
【請求項26】
請求項23~25のいずれか一項に記載の供給装置と、前記加熱装置として仮焼炉及びセメントキルンと、を備え、
前記セメントキルン及び前記仮焼炉の少なくとも一方に、前記供給装置が前記廃棄物及び前記化石燃料を供給する、セメントクリンカ製造設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料の供給方法及び供給装置、並びに、セメントクリンカの製造方法及び製造設備に関する。
【背景技術】
【0002】
セメントクリンカの製造設備の加熱装置では、化石燃料と、廃プラスチックを含む廃棄物等の非化石燃料を燃料として利用している。廃プラスチックを含む廃棄物には、プラスチック、紙、及び木屑などの種々の成分が含まれる。また、プラスチックとしても多様な種類がある。これらの割合は、原料受け入れ設備において受け入れた廃棄物ごとに大きく異なるのが現状である。例えば高発熱量のプラスチックが多く含有されている廃棄物もあれば、低発熱量の紙及び木屑が多く含有されている廃棄物もある。
【0003】
このような廃プラスチックを含む廃棄物をセメントクリンカの製造設備で燃料として利用する方法として、特許文献1では、発熱量の異なる廃棄物の使用量を、特定の関係式を満たすように都度調整し、セメントクリンカの焼成温度の変動を抑制する技術が提案されている。
【0004】
一方、非特許文献1では、家電及び自動車など、複雑な組成を有する製品の廃棄物の選別精度を高めるため、種々のセンサー選別技術が挙げられている。物体情報の検出には、γ線からマイクロ波までの電磁波を用いて、赤外吸収スペクトル、X線透過率、ラマンスペクトル等の種々の検出情報を取得し、これらの検出情報に基づいて物体を識別する方法が挙げられている。また、このような物体の識別は、ピークの高さ又は面積値等に基づいて閾値を設定すること、或いは、多変量解析又はニューラルネットワークといったデータ全域の類似性に基づいて行うことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-292200号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】古屋仲茂樹,“資源リサイクリングにおけるセンサー選別技術の最近の傾向”,Journal of MMIJ,Vol.129,2013年,No.10,11,p.615-624
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
セメントクリンカの製造設備は、今後も多量の廃棄物を処理することが求められる。一方で、これまでの処理方法では、使用する廃棄物の発熱量が変動した場合には、セメントクリンカ製造装置内の温度変動が生じ、運転調整の頻度が増加することが懸念される。
【0008】
そこで、本発明では、燃料として種々の成分を含有する廃棄物を用いても、セメントクリンカの製造を安定的に継続することが可能なセメントクリンカの製造方法、及び、セメントクリンカの製造設備を提供する。また、燃料として種々の成分を含有する廃棄物を燃料として用いてもセメントクリンカの製造を安定的に継続することが可能なセメントクリンカ製造設備の加熱装置への燃料の供給方法、及び、供給装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、一つの側面において、セメントクリンカ製造設備の加熱装置への廃棄物及び化石燃料を含む燃料の供給方法であって、廃棄物に電磁波を照射して、電磁波の吸収、散乱及び透過からなる群より選ばれる少なくとも一つに関する情報を取得し、当該情報を用いて廃棄物の発熱量を予測する予測工程と、発熱量の予測結果に基づいて、加熱装置に供給する化石燃料の供給量を調整する調整工程と、を有する、燃料の供給方法を提供する。
【0010】
上記供給方法では、廃棄物に電磁波を照射して取得した情報を用いて発熱量を予測し、その予測結果に基づいて加熱装置に供給する化石燃料の供給量を調整している。このため、セメントクリンカ製造設備の加熱装置において種々の成分を含む廃棄物を燃料として用いながらも、当該加熱装置の温度変動を抑制することができる。したがって、上記供給方法では、セメントクリンカ製造設備においてセメントクリンカの製造を安定的に継続することができる。また、廃棄物を有効活用できることから、化石燃料の消費量を低減することができる。
【0011】
本発明は、一つの側面において、加熱装置を備えるセメント製造設備を用いるセメントクリンカの製造方法であって、加熱装置である仮焼炉及びセメントキルンの一方又は双方に、上記燃料の供給方法によって、廃棄物及び化石燃料を供給する工程を有する、セメントクリンカの製造方法を提供する。
【0012】
このセメントクリンカの製造方法では、上記燃料の供給方法によって、廃棄物及び化石燃料を供給する。このため、仮焼炉及びセメントキルンの一方又は双方における温度変動を抑制することができる。したがって、上記製造方法では、セメントクリンカの製造を安定的に継続することができる。また、廃棄物を有効活用できることから、化石燃料の消費量を低減することができる。
【0013】
本発明は、一つの側面において、加熱装置を備えるセメント製造設備を用いるセメントクリンカの製造方法であって、加熱装置に供給するプラスチックを含む廃棄物に電磁波を照射して、電磁波の吸収、散乱及び透過からなる群より選ばれる少なくとも一つに関する情報を取得し、当該情報を用いて廃棄物の発熱量を予測する予測工程と、発熱量の予測結果に基づいて、加熱装置に供給する化石燃料の供給量を調整する調整工程と、を有する、セメントクリンカの製造方法を提供する。
【0014】
このセメントクリンカの製造方法では、廃棄物に電磁波を照射して取得した情報を用いて発熱量を予測し、その予測結果に基づいて加熱装置に供給する化石燃料の供給量を調整している。このため、セメントクリンカ製造設備の加熱装置において種々の成分を含む廃棄物を燃料として用いながらも、当該加熱装置の温度変動を抑制することができる。したがって、上記製造方法では、セメントクリンカ製造設備においてセメントクリンカの製造を安定的に継続することができる。また、廃棄物を有効活用できることから、化石燃料の消費量を低減することができる。
【0015】
本発明は、一つの側面において、セメントクリンカ製造設備の加熱装置への廃棄物及び化石燃料を含む燃料の供給装置であって、廃棄物に電磁波を照射して電磁波の吸収、散乱及び透過からなる群より選ばれる少なくとも一つに関する情報を取得し、当該情報を用いて発熱量を予測する予測装置と、発熱量の予測結果に基づいて、加熱装置に供給する化石燃料の供給量を調整する調整装置と、を備える、燃料の供給装置を提供する。
【0016】
上記供給装置では、廃棄物に電磁波を照射して取得した情報を取得して発熱量を予測する予測装置と、その予測結果に基づいて加熱装置に供給する化石燃料の供給量を調整する調整装置を備える。このため、セメントクリンカ製造設備の加熱装置に種々の成分を含む廃棄物を燃料として供給しても、当該加熱装置の温度変動を抑制することができる。したがって、上記供給装置では、セメントクリンカ製造設備においてセメントクリンカの製造を安定的に継続することができる。また、廃棄物を有効活用できることから、化石燃料の消費量を低減することができる。
【0017】
本発明は、一つの側面において、上記供給装置と、加熱装置として仮焼炉及びセメントキルンと、を備え、セメントキルン及び仮焼炉の少なくとも一方に、供給装置が廃棄物及び化石燃料を供給する、セメントクリンカ製造設備を提供する。
【0018】
上記セメントクリンカ製造設備は、上記供給装置を備える。このため、セメントクリンカ製造設備の加熱装置に種々の成分を含む廃棄物を燃料として供給しても、当該加熱装置の温度変動を抑制することができる。したがって、上記セメントクリンカ製造設備は、セメントクリンカの製造を安定的に継続することができる。また、廃棄物を有効活用できることから、化石燃料の消費量を低減することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、燃料として種々の成分を含有する廃棄物を用いても、セメントクリンカの製造を安定的に継続することが可能なセメントクリンカの製造方法、及び、セメントクリンカの製造設備を提供することができる。また、燃料として種々の成分を含有する廃棄物を燃料として用いてもセメントクリンカの製造を安定的に継続することが可能なセメントクリンカ製造設備の加熱装置への燃料の供給方法、及び、供給装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】燃料の供給方法の例を示すフローチャートである。
図2】燃料の供給装置の一例を模式的に示す図である。
図3】燃料の供給方法及び供給装置における情報処理の概要を模式的に示す図である。
図4】燃料の供給装置における情報処理部のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図5】燃料の供給装置の別の例を模式的に示す図である。
図6】燃料の供給装置のさらに別の例を模式的に示す図である。
図7】セメントクリンカの製造設備の一例を模式的に示す図である。
図8】実施例1における測定用試料の発熱量の予測値と実測値を示す図である。
図9】実施例2における測定用試料の発熱量の予測値と実測値を示す図である。
図10】実施例3における測定用試料の発熱量の予測値と実測値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、場合により図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。ただし、以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用い、場合により重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、各要素の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。なお、上限値と下限値の間が「~」で示される数値範囲は、上限値及び下限値を含む数値範囲である。
【0022】
一実施形態に係る燃料の供給方法は、セメントクリンカ製造設備の加熱装置への廃棄物及び化石燃料を含む燃料の供給方法であって、廃棄物に電磁波を照射して、電磁波の吸収、散乱及び透過からなる群より選ばれる少なくとも一つに関する情報を取得し、当該情報を用いて廃棄物の発熱量を予測する予測工程と、発熱量の予測結果に基づいて、加熱装置に供給する化石燃料の供給量を調整する調整工程と、を有する。電磁波としては、レーザー、赤外線及びX線が挙げられる。このうち、予測精度を高くする観点から、赤外線が好ましく、近赤外線がより好ましい。本明細書において「赤外線」は780nmから1mmの波長範囲の電磁波であり、「近赤外線」は780~2500nmの波長範囲の電磁波である。
【0023】
セメントクリンカ製造設備の加熱装置としては、セメントキルン及び仮焼炉が挙げられる。調製工程によって化石燃料の供給量が調整される加熱装置は、セメントキルン及び仮焼炉のどちらか一方であってよいし、両方であってもよい。加熱装置に燃料として供給される廃棄物は、不要になって廃棄された物を含んでいればよく、含有成分としては、ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、及びその他の汚物等が挙げられる。より具体的には、プラスチック、紙、木屑、石、金属、布、及び皮等が挙げられる。このうち、プラスチックは比較的高い発熱量を有しており、その種類によっては5000kcal/kg以上の発熱量を有するものもある。例えば、プラスチックのうち、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)は、9000~11000kcal/kgの発熱量を有する。ポリウレタン(PU)は、約7000kcal/kg、エポキシ樹脂は、約7500kcal/kg、フェノール樹脂は約8000kcal/kg、ポリエチレンテレフタレート(PET)は約5500kcal/kgの発熱量を有する。
【0024】
一方、5000kcal/kg未満のプラスチックとして、ポリ塩化ビニル(PVC)が4000~5000kcal/kgの発熱量を有し、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)が約2500kcal/kgの発熱量を有する。廃棄物はCFRP(炭素繊維強化プラスチック)を含んでいてもよい。プラスチック以外の廃棄物成分の発熱量は、通常は5000kcal/kg未満である。廃棄物は、このように種々の廃棄物成分を含むため、加熱装置における温度変動の要因となり得る。種々の廃棄物成分は、互いに発熱量が大きく異なるため、廃棄物の供給量を調整することによって加熱装置の温度を制御することは困難である。
【0025】
化石燃料としては、石炭、石炭コークス、重油、及びオイルコークスから選ばれる1種以上を含んでよい。石炭は、微粉炭であってもよい。これらは廃棄物よりも発熱量の変動が少ない。調整工程において、廃棄物の発熱量の予測結果に基づいて、加熱装置に供給する化石燃料の供給量を調整することによって、セメントキルン及び/又は仮焼炉の温度変動を抑制し、セメントクリンカの製造を安定的に継続することができる。
【0026】
図1に、本実施形態の燃料の供給方法の一例を示す。この例の燃料の供給方法は、廃棄物を破砕する破砕工程S1と、
搬送装置で搬送される廃棄物の画像と、当該廃棄物に対して近赤外線を含む電磁波を照射して、当該画像をn個の領域に分割したときの各領域の近赤外線の吸収情報と、を取得する情報取得工程S2と、
近赤外線の吸収情報の前処理を行う前処理工程S3と、
n個の領域の吸収情報のクラスター分析を行って、n個の領域の吸収情報をk個のグループに分類する分析工程S4と、
近赤外線の吸収情報に基づいて、k個のグループのそれぞれの発熱量を予測する第1予測工程S5と、
k個のグループそれぞれの発熱量の予測値に基づいて、上記画像に含まれる全体の廃棄物の発熱量を予測する第2予測工程S6と、
全体の廃棄物の発熱量の予測結果に基づいて、燃料を、加熱装置に供給する化石燃料の供給量を調整する調整工程S7と、を有する。
【0027】
図2は、セメントクリンカ製造設備の加熱装置への廃棄物及び化石燃料を含む燃料の供給装置の一実施形態を示している。上記例の燃料の供給方法は、図2の燃料の供給装置100で実施してもよい。燃料の供給装置100は、廃棄物の破砕を行う破砕装置10と、前処理された廃棄物11を搬送する搬送装置12と、廃棄物11に電磁波を照射して電磁波の吸収、散乱及び透過からなる群より選ばれる少なくとも一つに関する情報を取得し、当該情報を用いて発熱量を予測する予測装置20と、予測装置20から出力される発熱量の予測結果に基づく制御信号を調整装置40に出力する制御装置30と、制御信号に基づいて、加熱装置に供給する化石燃料の供給量を調整する調整装置40と、を備える。
【0028】
破砕装置10で破砕工程S1を行ってよい。破砕装置10は、破砕機の他に選別機を有していてよい。選別機としては、例えば風力で選別する風力選別機、及び/又は、磁力で選別する磁選機が挙げられる。破砕装置10に粗破砕機、風力選別機、磁選機等を設置して、廃棄物から金属等を除去する選別を行ってもよい。これによって、加熱装置に供給される廃棄物11の発熱量の変動を低減することができる。
【0029】
破砕工程S1では、破砕装置10で廃棄物の粉砕及び選別を行ってよい。破砕装置10に備えられる破砕機としては、例えば、ミル、シュレッダー、クラッシャ等が挙げられる。破砕装置10によって、廃棄物11の粒径を例えば35mm以下にすることができる。このようなサイズに破砕された廃棄物11に近赤外線を含む電磁波を照射すれば、十分に高い精度で発熱量を予測することができる。
【0030】
廃棄物11に含まれる物質(成分)を構成している分子(例えば、C-H、O-H)は、様々な運動をしており、運動している分子に赤外線を当てると運動状態に合わせて特定の波長の光のみが吸収される。例えば、ポリエチレンの場合、波長1200nm、1400nm、1725nm、1775nm、及び1850nm付近に特徴的なピークをもつ吸収スペクトルが得られる。このように近赤外領域には廃棄物11に含まれる成分のピークが検出されることが多いことから、近赤外線の吸収情報を用いることによって、高い精度で含有成分とその含有成分の含有量を予測し、その結果から発熱量を予測することができる。近赤外線の吸収情報は、近赤外吸収スペクトルを含むことが好ましい。
【0031】
一層高精度の予測結果を得る観点から、廃棄物11の粒径は30mm以下であってよく、25mm以下であってもよい。なお、廃棄物11の粒径は、二次元の画像で描かれる燃料に外接する外接円の直径として求めることができる。破砕工程を行うことは必須ではなく、受け入れられた廃棄物をそのまま搬送装置12で搬送して情報取得部26で情報取得工程S2を行ってもよい。
【0032】
予測装置20は、廃棄物11を搬送装置12で搬送しながら廃棄物11に近赤外線を含む電磁波を照射する光源24と、廃棄物11の画像と画像における近赤外線を検出する検出器を備える情報取得部26と、廃棄物11の画像をn個の領域に分割したときの各領域の近赤外線の吸収情報(n個の吸収情報)を処理して上記画像に含まれる廃棄物11の発熱量の予測結果を出力する情報処理部28とを有する。情報取得部26としては、例えば、RESONON社製のハイパースペクトルカメラを用いることができる。光源24及び情報取得部26を備える光学識別装置を用いてもよい。予測装置20では、情報取得工程S2、前処理工程S3、分析工程S4、第1予測工程S5及び第2予測工程S6を行ってよい。
【0033】
情報取得工程S2は、廃棄物11に近赤外線を含む電磁波を照射する光源24と情報取得部26とを用いて、廃棄物11の画像と、当該画像における画素毎の近赤外吸収スペクトル(吸収情報)を取得する。吸収情報は、画像をn個の領域に分割したときの各領域の近赤外線の吸収情報であってよい。画像を構成するn個の領域は、n個の画素(ピクセル)であってよい。すなわち、情報取得工程S2では、画像を構成する各画素において近赤外線の吸収情報を取得してよい。この場合、n=画素数となる。nは1万以上であってよく、5万以上であってよく、100万以上であってもよい。nの上限に特に制限はないが、情報処理の負荷低減の観点から、1000万以下であってよい。
【0034】
光源24としては、近赤外線を含む電磁波を照射可能なものが好ましい。廃棄物11に照射される電磁波が近赤外線を含むことによって、プラスチックの発熱量を精度よく予測することができる。近赤外線の吸収情報が近赤外吸収スペクトルを含むことによって、廃棄物11の発熱量を高い精度で予測することができる。情報取得工程で取得される近赤外吸収スペクトルの波長範囲は、800~2500nmであってよく、900~1700nmであってよい。これによって、不要なノイズを削減し発熱量の予測精度を向上することができる。以下、情報取得部26で取得される情報が近赤外吸収スペクトルである場合を例にして説明する。
【0035】
前処理工程S3では、近赤外吸収スペクトルを前処理する。前処理は、最大値による規格化、トリミング、スムージング、及び2階微分からなる群より選ばれる少なくとも一つを含んでいてよい。これによって、廃棄物11の発熱量の予測精度を十分に高くすることができる。例えば、画像における領域の数(n個)=画素数である場合、廃棄物11のサイズに応じて、隣接する複数の画素の情報の平均をとるようにスムージングを行うことによって、廃棄物11の発熱量の予測精度を高くすることができる。また、光源14等からのノイズの影響を低減するため、トリミングを行ってもよい。2階微分を行うことによって、反射光の強度によってスペクトルが上下にシフトすることの影響を低減することができる。
【0036】
最大値による規格化は、近赤外吸収スペクトルのデータ群を、そのうちの最大値を用いて正規化する方法である。予測装置20では、廃棄物11を搬送装置12で搬送しながら近赤外吸収スペクトルを取得するため、各赤外吸収スペクトルにはベルト等の振動に起因するノイズが含まれやすい。最大値による規格化は、2階微分よりもこのようなノイズの影響を受け難いため、発熱量をより高い精度で予測することができる。
【0037】
分析工程S4では、図3に示すように画素毎に取得された近赤外吸収スペクトルのクラスター分析を行って、n個の吸収情報D1(n個の近赤外吸収スペクトル)を、k個のグループ(クラスター)に分類する。クラスター分析は、非階層的クラスタリングによって行ってよい。クラスター分析のアルゴリズムとしては、k平均法(k-means法)、DBSCAN法、及びスペクトラルクラスタリング法等が挙げられる。このうち、分析工程における分類を高精度且つ迅速に行う観点から、k平均法を用いることが好ましい。
【0038】
分析工程S4のクラスター分析で分類されるグループ数(k個)は、廃棄物11の発熱量の予測精度を高くする観点から、3個以上であってよく、5個以上であってよく、8個以上であってもよい。図3には、n個の近赤外吸収スペクトルが、画像D2において4つのグループに分類されていることが示されている(k=4)。分析工程S4で分類されるグループ数(k個)は、発熱量の予測に伴う計算の負荷を低減する観点から、30個以下であってよく、20個以下であってもよい。グループ数(k個)の一例は、3~30個であってよい。
【0039】
画像における領域数又は画素数(n個)とクラスター分析によって分類されるグループ数(k個)の関係はn>kである。n/kは、発熱量の予測に伴う計算の負荷を低減する観点から、100以上であってよく、0.1万以上であってよく、0.5万以上であってよく、0.8万以上であってもよい。n/kは、発熱量の予測精度を十分に高くする観点から、1000万以下であってよく、500万以下であってよく、100万以下であってもよい。
【0040】
第1予測工程S5では、分類されたk個のグループのそれぞれの発熱量を予測する。例えば、あるグループ1にn1個の吸収情報(近赤外吸収スペクトル)が分類された場合、n1個の吸収情報(近赤外吸収スペクトル)の加重平均値(平均スペクトルD3)を算出する。この平均スペクトルD3に基づいて、グループ1の発熱量の予測値Q1を求めてもよい。同様にして、グループkの発熱量の予測値Qkを求めてもよい(kは2以上の整数であり、n>kである。)。
【0041】
各グループの発熱量の予測値Qkは、平均スペクトルD3と、データベースD4に含まれる発熱量が既知である複数の参照用吸収スペクトルDrのそれぞれとを照合して類似度を算出し、類似度が最も高い参照用吸収スペクトルDrの発熱量を選択して導出するようにしてもよい。データベースD4に含まれる参照用吸収スペクトルDrは、発熱量が既知の成分の近赤外吸収スペクトルである。
【0042】
廃棄物11には、多種多様なプラスチックが含まれ得る。このため、予め種々のプラスチック、紙、木屑、石、ガラス、布及び皮等、成分ごとの近赤外分光分析を行って、参照用吸収スペクトルDrを取得して近赤外吸収スペクトルのデータベースD4を構築する。参照用吸収スペクトルは、廃棄物又は廃プラスチックの近赤外吸収スペクトルであってもよいし、単一成分で構成されるプラスチックの近赤外吸収スペクトルであってもよい。
【0043】
情報取得工程S2で取得された近赤外吸収スペクトルが上記前処理工程によって前処理される場合、参照用吸収スペクトルDrも予め同じ前処理が施されたものであることが好ましい。参照用吸収スペクトルDrを得るための前処理の内容は、前処理工程で挙げたとおりである。これによって、燃料の発熱量の予測精度を十分に高くすることができる。
【0044】
参照用吸収スペクトルの個数は、上述のグループ数(k個)の5倍以上であってよく、10倍以上であってよく、50倍以上であってもよい。倍数を大きくすることによって、廃棄物11の発熱量の予測精度を十分に高くすることができる。データ処理の負荷低減の観点から、参照用吸収スペクトルの個数は、上述のグループ数(k個)の500倍以下であってよく、100倍以下であってもよい。これによって、廃棄物11の発熱量の予測の精度と計算量のバランスを調整しやすくすることができる。
【0045】
類似度は、例えば、平均絶対誤差(MAE)、二乗平均平方根誤差(RMSE)又は決定係数(R2)によって判定してよい。これによって、廃棄物11の発熱量の予測の精度を十分に維持することができる。廃棄物11の発熱量の予測に参照用吸収スペクトルDrの発熱量を用いることから、廃棄物11に含まれる各成分の発熱量を直接予測する場合に比べて、廃棄物11の発熱量の予測に必要な計算量を十分に低減することができる。したがって、廃棄物11の発熱量を迅速に予測することができる。
【0046】
第2予測工程S6では、各グループの発熱量の予測値Qkと、情報取得工程S2で取得された画像における各グループの存在割合とから、上記画像に含まれる燃料全体の発熱量を予測する。例えば、画像において、グループ1に属する吸収情報(近赤外吸収スペクトル)の存在割合は、n1/nとなり、このグループ1による発熱量の予測値は、Q1×(n1/n)となる。同様にして、グループ1~kのそれぞれグループの発熱量の予測値を算出し、これらを足し合わせることによって、画像に含まれる廃棄物11全体の発熱量の予測値Qを求めることができる。
【0047】
図3に示すように、クラスター分析によって、画像の各領域(各画素)に対応するn個の近赤外吸収スペクトルが、k=4個のグループに分類された場合、グループ1,2,3,4の発熱量の予測値は、Q1,Q2,Q3,Q4となる。画像D2で分類されたグループ1,2,3,4に含まれるそれぞれの領域の個数(画素の数)を、それぞれ、n1,n2,n3,n4とし、領域総数(画素の総数)をn個(n=n1+n2+n3+n4)とすると、4個のグループの存在割合は、それぞれ、n1/n,n2/n,n3/n,n4/nとなる。画像に含まれる廃棄物11の発熱量の予測値Qは、以下の計算式で算出される。
Q=Q1×(n1/n)+Q2×(n2/n)+Q3×(n3/n)+Q4×(n4/n)
【0048】
クラスター分析によって、画像の各領域(各画素)に対応するn個の近赤外吸収スペクトルが、k個のグループに分類された場合、各グループの発熱量の予測値は、Q1,Q2,Q3,・・・Qkとなる。画像におけるk個のグループのそれぞれの領域の個数(画素の数)を、それぞれ、n1,n2,n3,・・・nkとし、領域総数(画素の総数)をn個すると、k個のグループの存在割合は、それぞれ、n1/n,n2/n,n3/n,・・・nk/nとなる。画像に含まれる燃料全体の発熱量の予測値Qは、以下の計算式で算出される。
Q=Q1×(n1/n)+Q2×(n2/n)+Q3×(n3/n)+・・・+Qk×(nk/n)
【0049】
この例では、クラスター分析を行ってn個の吸収情報をn個よりも少ないk個のグループに分け、各グループの平均スペクトルを取得して廃棄物11の発熱量の予測計算を行う。このため、廃棄物11の発熱量の予測に必要となる計算量を十分に低減できる。したがって、迅速に発熱量を予測することができる。
【0050】
第2予測工程S6において、上記画像に含まれる廃棄物11全体の発熱量を予測する際に、当該画像における各グループの存在割合(nk/n)を用いることは必須ではない。例えば、一つの変形例では、各グループの発熱量の予測値Qkの全てが所定の閾値以上又は閾値未満であった場合は、k個の発熱量の予測値Qkの算術平均値を画像に含まれる廃棄物11全体の発熱量の予測値Qとしてもよい。この場合、発熱量の予測値Qは、以下の計算式で算出される。これによって、予測に必要な計算量をさらに低減することができる。
Q=(Q+Q+Q+・・・+Q)/k
【0051】
情報処理部28は、上述のようなクラスター分析を行って、n個の領域の近赤外吸収スペクトルをk個のグループに分類する分析部と、近赤外吸収スペクトルを用いてk個のグループのそれぞれの平均スペクトルを算出し、当該平均スペクトルに基づいてk個のグループのそれぞれの発熱量の予測値Qkを導出する第1予測部と、第1予測部で予測された発熱量の予測値Qkと、画像におけるk個のグループのそれぞれの存在割合と、から、画像に含まれる燃料全体の発熱量の予測値Qを導出する第2予測部と、を有してよい。このような情報処理部28において、分析工程S4、第1予測工程S5及び第2予測工程S6を行うことができる。分析部、第1予測部及び第2予測部において、上述の分析工程S4、第1予測工程S5及び第2予測工程S6を、それぞれ行ってもよい。したがって、分析工程S4、第1予測工程S5、第2予測工程S6及び変形例の説明内容は、分析部、第1予測部及び第2予測部にも適用される。
【0052】
前処理工程S3、分析工程S4、第1予測工程S5及び第2予測工程S6を行う情報処理部28は、通常のコンピュータシステムとして構成することができる。情報処理部28のハードウェア構成の一例は、図4に示すように回路70を備える。回路70は、少なくとも一つのプロセッサ72、メモリ74、ストレージ76、及び入出力ポート78を有する。ストレージ76には、各機能を実現するためのコンピュータソフトウェア(例えば解析ソフト)が記録されていてもよい。情報処理部28は、プロセッサ72及びメモリ74等のハードウェア上に、このようなコンピュータソフトウェアを読み込ませることによって、プロセッサ72の制御の下で入出力ポート78及び入出力デバイス82が動作するように構成されてよい。ストレージ76は、ハードディスク、不揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、光ディスク等の、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であってよい。
【0053】
ストレージ76には、参照用吸収スペクトルDrのデータベースD4が記憶されていてよい。メモリ74は、ストレージ76からロードされたプログラム、データ及びプロセッサ72の演算結果等を一時的に記憶する。プロセッサ72は、メモリ74と協働し、情報取得部26で取得された近赤外吸収スペクトルの前処理、クラスター分析、参照用吸収スペクトルDrとの照合、及び類似度の判定を行って、各グループの発熱量、並びに燃料全体の発熱量の予測値Qを出力するプログラムを実行する。入出力ポート78は、プロセッサ72からの指令に応じ、制御装置30及び入出力デバイス82等の間で電気信号の入出力を行う。
【0054】
情報処理部28は、近赤外吸収スペクトルのクラスター分析を行うため、クラスター分析を行わない場合に比べて、廃棄物11の発熱量の予測値Qを導出するための計算量を低減することができる。このため、情報処理部28の負荷を低減し、迅速に発熱量を予測することができる。ここでは、情報取得部26で取得される情報が近赤外吸収スペクトルである場合を例として説明したが、近赤外吸収スペクトル以外の情報である場合も同様にして廃棄物11の発熱量を予測すればよい。
【0055】
図2に示すように、情報処理部28は、発熱量の予測結果(予測値Q)を、制御装置30に出力する。制御装置30は、情報処理部28からの入力値に基づいて、加熱装置50に供給する化石燃料の供給量を調整する調整装置40を操作する制御信号を出力する。制御装置30は、情報処理部28と同様に、例えば、プロセッサ、メモリ、ストレージ、及び入出力ポート等を有していてよい。制御装置30は、制御信号を導出し、当該制御信号を出力できる構成を有していればよい。なお、予測装置20における情報処理部28及び制御装置30は、一つのハードウェアで構成されていてもよいし、複数のハードウェアで構成されていてもよい。
【0056】
調整工程S7は、図2の調整装置40で行うことができる。調整装置40は、化石燃料の供給量を調整できるものであれよい。化石燃料が、例えば、微粉炭等の石炭、或いはオイルコークス又は石炭コークス等の固形燃料であれば、ロードセル、サークルフィーダ、及びインパクトライン流量計等を用いることができる。重油等の液体燃料であれば、流量調節弁を用いることができる。このような調整装置40によって、加熱装置50への化石燃料の供給量を調整することができる。加熱装置50への廃棄物11の供給量も、ロードセル及びサークルフィーダ等によって調整することができる。
【0057】
調整装置40は、加熱装置50に供給される燃料全体(廃棄物11+化石燃料)の熱量が一定又は所定の範囲となるように化石燃料の供給量を調整することが好ましい。化石燃料の供給量は、廃棄物11の発熱量の予測値Qが単位重量当たりの予測値(kcal/kg)である場合、下記式(1)で算定される燃料全体の発熱量(kcal/時間)が、所定の範囲となるように、化石燃料の供給量(kg/時間)を調整装置40で調整することが好ましい。これによって、加熱装置50の温度変動を十分に抑制することができる。
【0058】
燃料全体の発熱量(kcal/時間)=廃棄物11の供給量(kg/時間)×廃棄物11の発熱量の予測値(kcal/kg)+化石燃料の供給量(kg/時間)×化石燃料の発熱量(kcal/kg) ・・・ (1)
【0059】
調製工程S7では、廃棄物11の熱量の予測結果(予測値Q)に基づいて、燃料全体の発熱量の変動が小さくなるように化石燃料の供給量を自動制御してもよい。これによって、オペレータの作業負荷を軽減することができる。
【0060】
調整工程S7では、発熱量の予測結果に変動が生じた場合に、制御装置30からの化石燃料の供給量に関する信号に基づいて、加熱装置50に供給される燃料全体の発熱量が目標値に近づくように化石燃料の供給量を調整することが好ましい。例えば、廃棄物11の発熱量の予測結果の許容範囲を予め設定しておき、予測結果が許容範囲から外れた場合に、調整装置40によって化石燃料の供給量を調整してもよい。この調整は、制御装置30が調整装置40を自動制御して行ってもよいし、オペレータが調整装置40をマニュアルで操作して行ってもよい。この場合、自動制御で行うかマニュアルで操作するかを通知する信号(アラート)が制御装置30から出力されてもよい。
【0061】
廃棄物11の発熱量の予測結果の許容範囲は、不変の数値範囲であってもよいし、例えば以下の手順で設定される可変の数値範囲であってもよい。第1予測工程S5及び第2予測工程S6(予測装置20)において、廃棄物11の発熱量の予測を所定の時間間隔で行っている場合、w回~z回前の予測値Qの平均値を中心として±10%を許容範囲と設定してよい。ここで、w,zは自然数であり、w<zである。wは1~5であってよい。z-wは3以上であってよく、5以上であってよく、10以上であってもよい。これによって、最新の予測値Qに見合った適切な許容範囲を設定することができる。例えば、w=1、z=5である場合に、w回~z回前の予測値Qの平均値は表1のとおり5700kcal/kgと計算される。そうすると、平均値±10%で求められる許容範囲は、5130~6270kcal/kgに設定される。なお、所定の時間間隔は、例えば5~1800秒間の範囲内、8~300秒間の範囲内、又は10~60秒間の範囲内で設定されてよい。
【0062】
【表1】
【0063】
最新の予測値Qが上記許容範囲内であれば化石燃料の供給量の自動制御を継続し、上記許容範囲を外れた場合は、制御装置30から出力されるアラートに基づいてオペレータが調整装置40をマニュアルで操作してもよい。例えば、最新の予測値Qが5130kcal/kgを下回った場合には、当該予測値Qと許容範囲との差異を相殺するように、調製工程S7において化石燃料の供給量を増やす。これによって、加熱装置50の温度が低下することを抑制することができる。廃棄物11には、発熱量が大きく異なる成分が含まれているため、このような調整方法は有用である。許容範囲の導出方法は上述の例に限定されない。例えば、許容範囲は、平均値±5%で設定してもよいし、平均値±15%で設定してもよい。
【0064】
加熱装置50には、燃料として、廃棄物11と化石燃料が供給される。加熱装置50は、例えば、仮焼炉及びセメントキルンである。本明細書では仮焼炉及びセメントキルンに設けられるバーナで燃料を燃焼する場合も、仮焼炉及びセメントキルンが加熱装置50である場合に含まれる。廃棄物11と化石燃料の供給割合に特に制限はないが、廃棄物11の有効利用及び化石燃料の消費量を削減する観点から、廃棄物11の供給割合を、加熱装置50の運転に支障がない範囲で増やすことが好ましい。廃棄物11は種々の成分を含むため、化石燃料よりも発熱量が大きく変動する。例えば、廃棄物11を一定量供給し、廃棄物11の発熱量の変動を相殺できる程度の化石燃料を供給しておけば、調整工程S7による化石燃料の供給量の調整によって、加熱装置50の温度変動を十分に低減しつつ、廃棄物11を燃料として最大限利用することができる。
【0065】
図2の例では、加熱装置50が一つであったが、上記実施形態の変形例では加熱装置50は複数あってよい。図5の燃料の供給装置101は、第1加熱装置50A及び第2加熱装置50Bの2つの加熱装置に、廃棄物及び化石燃料を含む燃料を供給する。破砕装置10で破砕(及び選別)された廃棄物は、分岐部13で2つに分けられそれぞれバッファ用のタンク14A,14Bに一旦保管される。分岐部13としては、1つのフローを2つに分岐させることができるものを適宜用いることができる。タンク14A,14Bに保管された廃棄物は、それぞれ、ベルトコンベア等の搬送装置12A,12Bによって搬送されながら、第1予測装置20A,第2予測装置20Bにおいて近赤外線を含む電磁波が照射される。第1予測装置20A,第2予測装置20Bの構成及び機能は、図2の予測装置20と同様であってよい。第1予測装置20Aと第2予測装置20Bにおける情報処理部28は、それぞれ別々のハードウェアで構成されていてもよいし、一つのハードウェアで構成されていてもよい。
【0066】
第1予測装置20A,第2予測装置20Bでは、近赤外吸収スペクトル(吸収情報)に基づいて、廃棄物の発熱量の予測値Q1,Q2をそれぞれ導出する。予測値Q1,Q2は同じであってもよいし、異なっていてもよい。第1予測装置20Aは、発熱量の予測値Q1を第1制御装置30Aに出力し、第1制御装置30Aは、第1予測装置20Aから入力される予測値Q1に基づいて、第1加熱装置50Aに供給する化石燃料の供給量を調整する第1調整装置40Aを操作する制御信号を出力する。第2予測装置20Bは、発熱量の予測値Q2を第2制御装置30Bに出力し、第2制御装置30Bは、第2予測装置20Bから入力される予測値Q2に基づいて、第2加熱装置50Bに供給する化石燃料の供給量を調整する第2調整装置40Bを操作する制御信号を出力する。第1制御装置30A及び第2制御装置30Bの構成及び機能は、図2の制御装置30と同様であってよい。第1調整装置40A及び第2調整装置40Bの構成及び機能は、図2の調整装置40と同様であってよい。
【0067】
燃料の供給装置101は、分岐部13よりも下流側が2系統に分かれているが、各予測装置20A,20B、制御装置30A,30B、及び調整装置40A,40Bは、同じ構成及び機能を有していてよい。分岐部13よりも下流側では、各系統において、情報取得工程S2、前処理工程S3、分析工程S4、第1予測工程S5、第2予測工程S6及び調整工程S7をそれぞれ行ってよい。
【0068】
燃料の供給装置101は、予測装置、制御装置、及び調整装置が2系統設けられている。このため、第1加熱装置50A及び第2加熱装置50Bのそれぞれに対する化石燃料の供給量を個別に調整することができる。調製工程S7における化石燃料の供給量の調整方法は、第1調整装置40Aと第2調整装置40Bとで異なっていてもよい。例えば、第1調整装置40Aは、第1制御装置30Aによって自動で制御され、第2調整装置40Bは、作業員によって手動で制御されてもよい。また例えば、第1調整装置40A及び第2調整装置40Bの両方が自動で制御されてもよいし、手動で制御されてもよい。運転状態に応じて最適な制御方法を選択できるようにしてもよい。このようにして、種々の成分を含有する廃棄物の発熱量変動に伴って第1加熱装置50A及び第2加熱装置50Bに温度変化が生じることを十分に抑制することができる。このため、セメントクリンカの製造を安定的に継続することができる。
【0069】
別の変形例では、図6に示される燃料の供給装置102のように、予測装置20の下流側における分岐部13で廃棄物が2系統に分かれ、搬送装置12A及び搬送装置12Bによって廃棄物が第1加熱装置50A及び第2加熱装置50Bに供給される。この例では、燃料の供給装置102では、予測装置20を一つにすることができる。第1制御装置30Aは、予測装置20から入力される発熱量の予測値Qに基づいて、第1加熱装置50Aに供給する化石燃料の供給量を調整する第1調整装置40Aを操作する制御信号を出力する。第2制御装置30Bは、予測装置20から入力される発熱量の予測値Qに基づいて、第2加熱装置50Bに供給する化石燃料の供給量を調整する第2調整装置40Bを操作する制御信号を出力する。
【0070】
この例でも、調製工程S7における化石燃料の供給量の調整方法は、第1調整装置40Aと第2調整装置40Bとで異なっていてもよい。例えば第1調整装置40Aは、第1制御装置30Aによって自動で制御され、第2調整装置40Bは、作業員によって手動で制御されてもよい。この例でも、種々の成分を含有する廃棄物の発熱量変動に伴って第1加熱装置50A及び第2加熱装置50Bに温度変化が生じることを十分に抑制することができる。このため、セメントクリンカの製造を安定的に継続することができる。
【0071】
一実施形態に係るセメントクリンカの製造方法は、加熱装置を備えるセメントクリンカ製造設備を用いるセメントクリンカの製造方法であって、加熱装置に供給するプラスチックを含む廃棄物に電磁波を照射して、電磁波の吸収、散乱及び透過からなる群より選ばれる少なくとも一つに関する情報を取得し、当該情報を用いて廃棄物の発熱量を予測する予測工程と、発熱量の予測結果に基づいて、加熱装置に供給する化石燃料の供給量を調整する調整工程と、を有する。
【0072】
このセメントクリンカの製造方法は、燃料の供給方法の上記実施形態又は各変形例によって行ってよい。すなわち、セメントクリンカの製造方法の一例は、図1に記載のとおり、破砕工程S1、情報取得工程S2、前処理工程S3、分析工程S4、第1予測工程S5、第2予測工程S6、及び調整工程S7を有していてよい。各工程の内容は、燃料の供給方法の実施形態又は各変形例で説明した内容と同じであってよい。上述の工程に加えて、セメント原料を加熱装置である仮焼炉及び/又はセメントキルンに導入して焼成し、セメントクリンカを得る工程を有していてもよい。
【0073】
一実施形態に係るセメントクリンカ製造設備は、上記実施形態の燃料の供給装置、又はその変形例と、加熱装置として仮焼炉及びセメントキルンと、を備え、セメントキルン及び仮焼炉の少なくとも一方に、上記供給装置が廃棄物及び化石燃料を供給するように構成されていてよい。
【0074】
図7は、セメントクリンカの製造設備の一例である。図7のセメントクリンカの製造設備300を用いて、上述の燃料の供給方法及びセメントクリンカの製造方法を行ってよい。セメントクリンカの製造設備300は、燃料の供給装置101Aと、セメントクリンカ製造装置200とを備える。セメントクリンカ製造装置200は、セメント原料が導入される導入口201と、導入口201から導入されたセメント原料を予熱する4つのサイクロンC1,C2,C3,C4(プレヒータ)と、セメント原料を仮焼する仮焼炉230(第1加熱装置)と、予熱及び仮焼されたセメント原料を焼成してセメントクリンカを生成するセメントキルン240(第2加熱装置)と、セメントキルン240で生成したセメントクリンカを冷却し、冷却されたセメントクリンカを導出するクリンカクーラ250とを備える。
【0075】
導入口201は、サイクロンC1とサイクロンC2との接続部に設けられている。導入口201から導入されるセメント原料は、例えば、焼却灰、石炭灰、石灰石、鉄源、スラグ及び廃棄物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでもよい。導入口201から導入されたセメント原料は、サイクロンC1、サイクロンC2、サイクロンC3、ライジングダクト234、仮焼炉230、サイクロンC4を流通しながら加熱され、セメントキルン240の窯尻242に導入される。
【0076】
セメントキルン240の窯尻242と仮焼炉230はライジングダクト234で接続されている。ライジングダクト234には、ライジングダクト234内のキルン排ガスを抽気する抽気管236が接続されている。抽気管236の下流には、クーラー及びバグフィルタ等を有する塩素バイパス部237が設置されており、抽気管236で抽気された抽気ガス(キルン排ガス)に含まれるダストが回収されるようになっている。塩素バイパス部237でダストが除去された後のガスは、クリンカクーラ250と仮焼炉230と接続する循環ガスライン252に導入され、仮焼炉230に導入される。塩素バイパス部237を有することによって、セメントクリンカ製造装置200内から、塩素系化合物及びアルカリ等の揮発分を低減することができる。なお、変形例では、抽気管236は窯尻242に接続されていてもよいし、ライジングダクト234と窯尻242の境界部分に接続されていてもよい。
【0077】
仮焼炉230内の温度は、例えば、850℃~900℃である。仮焼炉230には、タンク14Aから廃棄物と、化石燃料が供給される。仮焼炉230の温度は、第1制御装置30Aによって制御してよい。第1制御装置30Aには、第1予測装置20Aで求められた廃棄物の発熱量の予測値Q1が入力される。第1制御装置30Aは、発熱量の予測値Q1に基づいて、第1調整装置40Aで化石燃料の供給量を調整するための制御信号を出力する。第1調整装置40Aは、当該制御信号に基づいて、仮焼炉230に供給する化石燃料の供給量を調整する。仮焼炉230には、その発熱量が制御可能な範囲で、最大限の廃棄物を供給してよい。これによって、化石燃料に対する廃棄物の割合を十分に高くして運転を継続することが可能となり、化石燃料の使用量を低減することができる。
【0078】
第1制御装置30Aには、第1予測装置20Aで求められた廃棄物の発熱量の予測値Q1とともに、仮焼炉230の温度を測定する測定部Tから、仮焼炉230の温度に関する情報が入力されてもよい。第1制御装置30Aは、仮焼炉230の廃棄物の発熱量の予測値Qと温度とに基づいて、第1調整装置40Aを調整するための制御信号を出力してよい。この場合、第1制御装置30Aは、仮焼炉230の温度に基づくフィードバック制御と廃棄物の発熱量の予測値Qに基づくフィードフォワード制御とを組み合わせて第1調整装置40Aを制御し、仮焼炉230の温度を調整してよい。このようにして、廃棄物を仮焼炉230の燃料として有効活用しつつ、仮焼炉230の安定運転を継続することができる。廃棄物及び化石燃料は、それぞれ仮焼炉230に取り付けられたバーナに導入されて、仮焼炉230内で燃焼されてもよい。
【0079】
セメントキルン240内の温度は、例えば、1400℃~1500℃である。セメントキルン240の一端に設けられたバーナ244には、タンク14Bから廃棄物と化石燃料とが供給される。第2制御装置30Bには、第2予測装置20Bで求められた発熱量の予測値Q2が入力される。第2制御装置30Bは、発熱量の予測値Q2に基づいて、第2調整装置40Bを調整するための制御信号を出力する。このようにしてバーナ244に供給される燃料の発熱量の変動を低減し、セメントキルン240内の温度変動を抑制することができる。バーナ244には、その発熱量が制御可能な範囲で、最大限の廃棄物を供給してよい。これによって、化石燃料に対する廃棄物の割合を十分に高くして運転を継続することが可能となり、化石燃料の使用量を低減することができる。
【0080】
搬送装置12A,12Bに流量調節部を設けて、仮焼炉230及びセメントキルン240(バーナ244)への廃棄物の供給量を調整してもよい。流量調節部の構成は、流量を調節可能なものであれば特に限定されず、ロードセル、サークルフィーダ、及びインパクトライン流量計等を備えていてよい。廃棄物の供給量は、タンク14A,14Bの在庫見合いで調整してよい。
【0081】
この例のセメントクリンカ製造設備は、燃料の供給装置として、図5の供給装置101と同様の構成を有する供給装置101を備えているが、これとは異なる燃料の供給装置を備えていてよい。例えば、図6の燃料の供給装置102と同様の構成を有する供給装置を備えてもよい。或いは、図4のような燃料の供給装置100を備えてもよい。この場合、仮焼炉230及びセメントキルン240のどちらか一方に供給する化石燃料の供給量を燃料の供給装置100で調整するようにしてもよい。
【0082】
本実施形態のセメントクリンカの製造方法及びセメントクリンカ製造設備によれば、セメントクリンカ製造設備の仮焼炉及びセメントキルン等の加熱装置に種々の成分を含む廃棄物を燃料として供給しても、当該加熱装置の温度変動を抑制することができる。したがって、セメントクリンカ製造設備は、セメントクリンカの製造を安定的に継続することができる。また、廃棄物を有効活用できることから、化石燃料の消費量を低減することができる。
【0083】
以上、本開示の幾つかの実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に何ら限定されるものではない。両者ともに燃料として供給される廃棄物と化石燃料は、別々の流路で加熱装置又はそこに設けられたバーナに導入されてもよいし、合流した後に加熱装置又はそこに設けられたバーナに導入されてもよい。加熱装置はセメントキルン及び仮焼炉に限定されず、セメントクリンカ製造設備に設けられる、燃料を用いて加熱するその他の加熱装置であってもよい。燃料の供給装置と燃料の供給方法の説明内容はそれぞれ相互に適用され、セメントクリンカ製造設備とセメントクリンカの製造方法の説明内容もそれぞれ相互に適用される。燃料の供給装置と燃料の供給方法の説明内容は、セメントクリンカ製造設備とセメントクリンカの製造方法にも適用され、セメントクリンカ製造設備とセメントクリンカの製造方法の説明内容は、燃料の供給装置と燃料の供給方法にも適用される。
【0084】
本発明は、以下の[1]~[26]の実施形態を含む。
【0085】
[1]セメントクリンカ製造設備の加熱装置への廃棄物及び化石燃料を含む燃料の供給方法であって、
前記廃棄物に電磁波を照射して、前記電磁波の吸収、散乱及び透過からなる群より選ばれる少なくとも一つに関する情報を取得し、当該情報を用いて前記廃棄物の発熱量を予測する予測工程と、
前記発熱量の予測結果に基づいて、前記加熱装置に供給する前記化石燃料の供給量を調整する調整工程と、を有する、燃料の供給方法。
[2]前記予測工程では前記情報を用いて前記廃棄物の含有成分、又は前記含有成分及びその含有量を予測し、
前記調整工程ではその予測結果に基づいて前記化石燃料の供給量を調整する、[1]に記載の燃料の供給方法。
[3]前記予測工程では、レーザー、赤外線及びX線からなる群より選ばれる少なくとも一つの光源と検出器とを用いて、前記廃棄物のスペクトルを含む前記情報を取得する、[1]又は[2]に記載の燃料の供給方法。
[4]前記予測工程は、前記廃棄物の画像を取得し、
前記画像をn個の領域に分割したときの各領域の近赤外線を含む電磁波の吸収情報と、を取得する情報取得工程と、
前記n個の前記吸収情報をクラスター分析によりk個のグループに分類する分析工程と、
前記近赤外線を含む電磁波の前記吸収情報に基づいて、前記k個のグループのそれぞれの発熱量を予測する第1予測工程と、
前記k個のグループそれぞれの発熱量の予測値に基づいて、前記画像に含まれる前記廃棄物の発熱量を予測する第2予測工程と、を有する、[1]~[3]のいずれか一つに記載の燃料の供給方法。
[5]前記第1予測工程では、前記吸収情報を用いて前記k個のグループのそれぞれの平均スペクトルを算出し、当該平均スペクトルに基づいて前記k個のグループのそれぞれの発熱量の予測値を導出する、[4]に記載の燃料の供給方法。
[6]前記平均スペクトルと、発熱量が既知である複数の参照用吸収スペクトルと、を照合して類似度を算出し、前記類似度が最も高い前記参照用吸収スペクトルの発熱量を前記予測値として選択する、[5]に記載の燃料の供給方法。
[7]前記類似度は、平均絶対誤差(MAE)、二乗平均平方根誤差(RMSE)又は決定係数(R2)によって判定する、[6]に記載の燃料の供給方法。
[8]前記平均スペクトルと照合される前記複数の参照用吸収スペクトルの個数は前記k個の5倍以上である、[6]又は[7]に記載の燃料の供給方法。
[9]前記クラスター分析は、k平均法、DBSCAN法、及びスペクトラルクラスタリング法からなる群より選ばれる少なくとも一つの方法によって行う、[4]~[8]のいずれか一つに記載の燃料の供給方法。
[10]前記クラスター分析の前に、前記近赤外線の吸収情報の前処理を行う前処理工程を有し、
前記前処理は、最大値による規格化、トリミング、スムージング、及び2階微分からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む、[4]~[9]のいずれか一つに記載の燃料の供給方法。
[11]前記廃棄物は、プラスチック、紙、木屑、石、ガラス、金属、布、及び皮からなる群より選ばれる2つ以上を含んでおり、
前記予測工程では、前記廃棄物を搬送装置で搬送しながら前記電磁波を照射する、[1]~[10]のいずれか一つに記載の燃料の供給方法。
[12]前記予測工程の前に、前記廃棄物を破砕する破砕工程を有する、[1]~[11]のいずれか一つに記載の燃料の供給方法。
[13]前記電磁波が照射される前記廃棄物の粒径が35mm以下である、[1]~[12]のいずれか一つに記載の燃料の供給方法。
[14]前記化石燃料は、石炭、石炭コークス、重油、及びオイルコークスから選ばれる1種以上を含む、[1]~[13]のいずれか一つに記載の燃料の供給方法。
[15]前記調整工程では、前記発熱量の予測結果に基づいて、前記加熱装置に供給される燃料全体の発熱量の変動が小さくなるように前記化石燃料の供給量を制御装置を用いて自動制御する、[1]~[14]のいずれか一つに記載の燃料の供給方法。
[16]前記予測工程における前記発熱量の予測結果が所定の許容範囲から外れた場合に、前記調整工程において、前記燃料全体の発熱量の変動が小さくなるように前記化石燃料の供給量を調整する、[1]~[15]のいずれか一つに記載の燃料の供給方法。
[17]前記予測工程では、所定の時間間隔で前記発熱量を予測しており、
前記許容範囲は、w回~z回前の予測値の平均値に基づいて設定される、[16]に記載の燃料の供給方法。[但し、w,zは自然数であり、w<zである。]
[18]前記加熱装置が仮焼炉であり、
前記調整工程では、前記仮焼炉の温度と前記発熱量の予測結果とに基づいて、前記化石燃料の供給量を調整する、[1]~[17]のいずれか一つに記載の燃料の供給方法。
[19]加熱装置を備えるセメントクリンカ製造設備を用いるセメントクリンカの製造方法であって、
前記加熱装置である仮焼炉及びセメントキルンの一方又は双方に、[1]~[18]のいずれか一つに記載の燃料の供給方法によって、前記廃棄物及び前記化石燃料を供給する工程を有する、セメントクリンカの製造方法。
[20]加熱装置を備えるセメントクリンカ製造設備を用いるセメントクリンカの製造方法であって、
前記加熱装置に供給するプラスチックを含む廃棄物に電磁波を照射して、前記電磁波の吸収、散乱及び透過からなる群より選ばれる少なくとも一つに関する情報を取得し、当該情報を用いて前記廃棄物の発熱量を予測する予測工程と、
前記発熱量の予測結果に基づいて、前記加熱装置に供給する化石燃料の供給量を調整する調整工程と、を有する、セメントクリンカの製造方法。
[21]前記調整工程では、前記発熱量の予測結果に基づいて、前記加熱装置に供給される燃料全体の発熱量の変動が小さくなるように前記化石燃料の供給量を制御装置を用いて自動制御する、[20]に記載のセメントクリンカの製造方法。
[22]前記予測工程における前記発熱量の予測結果が許容範囲から外れた場合に、前記調整工程において、前記加熱装置に供給される燃料全体の発熱量の変動が小さくなるように前記化石燃料の供給量を調整する、[20]又は[21]に記載のセメントクリンカの製造方法。
[23]セメントクリンカ製造設備の加熱装置への廃棄物及び化石燃料を含む燃料の供給装置であって、
前記廃棄物に電磁波を照射して前記電磁波の吸収、散乱及び透過からなる群より選ばれる少なくとも一つに関する情報を取得し、当該情報を用いて発熱量を予測する予測装置と、
前記発熱量の予測結果に基づいて、前記加熱装置に供給する前記化石燃料の供給量を調整する調整装置と、を備える、燃料の供給装置。
[24]前記予測装置における前記発熱量の予測結果から前記化石燃料の供給量を決定し、前記調整装置に前記化石燃料の供給量に関する信号を出力する制御装置を備え、
前記調整装置は前記信号に基づいて前記化石燃料の供給量を調整する、[23]に記載の燃料の供給装置。
[25]前記廃棄物を破砕する破砕装置と、前記破砕装置で破砕された前記廃棄物を搬送する搬送装置と、を備え、
前記予測装置では、前記搬送装置で搬送される前記廃棄物に対して前記電磁波を照射する、[23]又は[24]に記載の燃料の供給装置。
[26]上記[23]~[25]のいずれか一つに記載の供給装置と、前記加熱装置として仮焼炉及びセメントキルンと、を備え、
前記セメントキルン及び前記仮焼炉の少なくとも一方に、前記供給装置が前記廃棄物及び前記化石燃料を供給する、セメントクリンカ製造設備。
【0086】
上記[1]、[19]、[20]、[23]又は[26]によれば、燃料として種々の成分を含有する廃棄物を用いても、加熱装置の温度変動を抑制し、セメントクリンカの製造を安定的に継続することができる。また、廃棄物を有効活用できることから、化石燃料の消費量を低減することができる。
【0087】
上記[2]によれば、セメントクリンカの製造において、含有成分又は成分含有量の予測結果に応じて、供給される燃料の時間当たりの熱量の変動が小さくなるように、化石燃料の供給量を調整することができる。したがって、廃棄物を用いても、セメントクリンカを製造する際の運転変動が一層抑制され、セメントクリンカの製造を一層安定的に継続することができる。
【0088】
上記[3]によれば、廃棄物の発熱量を一層高い精度で予測することができる。このように高い精度で予測された予測結果に基づいて化石燃料の供給量を調整することによって、セメントクリンカの製造の際の運転変動がより一層抑制され、セメントクリンカの製造をより一層安定的に継続することができる。
【0089】
上記[4]によれば、n>kであることから、n個の発熱量を予測する場合に比べて発熱量の予測数を減らすことが可能となり、予測に必要な計算量を低減することができる。このため、燃料の発熱量を迅速に予測することが可能となり、セメントクリンカの製造に用いられる種々の成分を含む廃棄物の発熱量の予測結果に基づき、円滑に化石燃料の供給量を調整することができる。
【0090】
上記[5]によれば、画像に含まれる廃棄物の発熱量を高い精度で予測することができる。このように高い精度で予測された予測結果に基づいて化石燃料の供給量を調整することによって、セメントクリンカの製造の際の運転変動がより一層抑制され、セメントクリンカの製造をより一層安定的に継続することができる。
【0091】
上記[6]、[7]又は[8]によれば、廃棄物の発熱量の予測の精度を十分に高く維持することができる。上記[9]によれば、廃棄物の発熱量の予測を高精度且つ迅速に行うことができる。上記[10]によれば、廃棄物の発熱量を十分に高い精度で予測することができる。
【0092】
上記[11]又は[25]によれば、廃棄物が種々の材質のものを含み且つ搬送装置で搬送されていても、発熱量の予測結果を用いることによって加熱装置の運転変動を十分に抑制できる。したがって、セメントクリンカの製造を十分安定的に継続することができる。
【0093】
廃棄物に電磁波を照射して得られる情報は、廃棄物片の内部よりも表面に依存する傾向にある。上記[12]又は[13]のように、破砕した粒径の小さい廃棄物に電磁波を照射すれば、より高い精度の予測結果を得ることができる。このように高い精度で予測された予測結果に基づいて化石燃料の供給量を調整することによって、セメントクリンカの製造の際の運転変動が十分に抑制され、セメントクリンカの製造を一層安定的に継続することができる。
【0094】
上記[14]によれば、廃棄物の発熱量が変動しても、加熱装置に供給される燃料全体の発熱量の変動が小さくなるように円滑に調整することができる。上記[15]、[21]又は[24]によれば、作業員の負荷を低減しながらセメントクリンカの製造を安定的に継続することができる。上記[16]、[17]又は[22]によれば、廃棄物の性状が大きく変動しても、セメントクリンカの製造を十分安定的に継続することができる。
【0095】
上記[18]によれば、仮焼炉で廃棄物を燃料として利用しつつ、仮焼炉を十分安定的に運転することができる。
【実施例0096】
実施例を参照して本発明の内容をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0097】
(実施例1)
供給装置における、搬送装置、光源、情報取得部及び情報処理部を構成する部材として以下のものを用いた。
・搬送装置:可動式移動台(ベルトコンベア)
・近赤外線を含む電磁波を照射する光源:ハロゲンランプ
・情報取得部:ハイパースペクトルカメラ(RESONON社製、商品名:PikaIR)
・情報処理部:パーソナルコンピュータ(Pythonプログラムで自動化して作成した自作ソフトをインストール済み)
【0098】
398種類の参照用試料(廃プラスチック、紙、木屑等)と、測定用試料(廃棄物を含むセメントクリンカ製造用燃料)を準備した。参照用試料の高位発熱量を、示差熱量計を用いて測定した。発熱量は、JIS Z 7302-2:1999「廃棄物固形化燃料-第2部:発熱量試験方法」に準拠して測定した。参照用試料の高位発熱量と含有成分の測定結果の例を表2に示す。
【0099】
【表2】
【0100】
上述の部材を用いて、搬送装置、情報取得部及び情報処理部を構成した。398種類の参照用試料のそれぞれについて、ハイパースペクトルカメラで画像(82268画素)を撮影するとともに、当該画像の1画素毎の近赤外吸収スペクトルを測定した。測定にあたっては、各参照用試料(約100g)をアルミニウム製のバットに収容し、可動式移動台の上に設置した。可動式移動台の上方にハロゲンランプ及びハイパースペクトルカメラを設置した。ハロゲンランプから参照用試料に近赤外線を含む電磁波を照射しながら可動式移動台でバットを移動させ、この移動方向とは垂直方法にラインスキャンすることによってバット内の参照用試料の画像と当該画像の画素毎の近赤外線スペクトル(測定波長域880~1710nm)を取得した(n=82268)。
【0101】
解析ソフトを用いて、取得した参照用試料(398種類)の近赤外線スペクトルの前処理を行った。前処理では、ベルトの側壁部分における画像を除き、ベルト中央部の平坦な部分の画像及び近赤外線スペクトルデータを選択した。さらに、近赤外線スペクトルのデータを波長960~1660nmの範囲に限定してノイズを低減するとともに、最大値によるスペクトル強度の規格化を行ってベースラインの変動の影響を低減した。
【0102】
参照用試料と同じ手順で、測定用試料のそれぞれについても、搬送装置で画素毎の近赤外吸収スペクトルを測定し(n=82268)、参照用試料のときに行った前処理と同じ前処理を行った。前処理後の画素毎の近赤外吸収スペクトルのクラスター分析を行った。クラスター分析は、k平均法(k=10)によって行い、近赤外吸収スペクトルデータを10個のグループ(1~10)に分類した。参照用吸収スペクトルの個数は、グループ数の39.8倍(=398/10)であった。
【0103】
画像における各グループの存在割合を定量化するため、画素数計測ソフトを用いて各グループの画素数を計測し、各グループの存在割合を計算した。各グループに属する近赤外吸収スペクトルを加重平均して平均スペクトルを算出した。平均スペクトルと398種類の参照用吸収スペクトルとを照合し、類似度を判定した。類似度の判定は、R2を用いて行った。判定手法において、最も類似度の近い参照用吸収スペクトルの発熱量を当該グループの発熱量の予測値Qkとした。
【0104】
画像におけるグループ1~10のそれぞれの存在割合と、グループ1~10のそれぞれの発熱量の予測値Qkから、測定用試料全体の発熱量の予測値Qを導出した。398種類の測定用試料のそれぞれについて同様の計算を行って各測定用試料の発熱量の予測値Qを導出した。
【0105】
予測値の精度の検証のため、搬送装置のベルト上の測定用試料を一定時間おきに抜き出してサンプルを得た。抜き出したサンプルの発熱量を、JIS Z 7302-2:1999「廃棄物固形化燃料-第2部:発熱量試験方法」に準拠して測定した。
【0106】
各測定用試料の発熱量の予測結果とサンプルの発熱量の実測値を、図8に示す。図8のグラフの横軸は近赤外吸収スペクトルの測定を開始してからの経過時間であり、縦軸は発熱量(予測値又は実測値)である。各測定用試料の発熱量の予測値Qを黒丸で、実測したサンプルの発熱量を白丸でプロットした。図8に示されるとおり、発熱量の予測値Qと実測値は、高い精度で一致していた。
【0107】
図8中、縦方向に延びる一点鎖線は、廃棄物のヤードが切り替わったタイミングを示している。このように、廃棄物の在庫がなくなりヤード又はタンクを切り替える際には廃棄物の含有成分が変わり、発熱量が大きく変動する。図8に示すような発熱量の予測値Qに基づいて加熱装置に供給する化石燃料の供給量を調整することによって、セメントクリンカ製造設備の加熱装置への廃棄物の供給を継続的に行っても、加熱装置における温度変動の発生を十分に抑制することができる。
【0108】
(実施例2)
前処理の手法として、最大値によるスペクトル強度の規格化に代えて、2階微分を行ったこと以外は、実施例1と同様にして各測定用試料の発熱量の予測値Qを導出した。各測定用試料の発熱量の予測結果とサンプルの発熱量の実測値を、図9に示す。実施例2の発熱量の予測精度は、実施例1よりも低かったものの、高いレベルで発熱量を予測できることが確認された。
【0109】
(実施例3)
最大値によるスペクトル強度の規格化を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして各測定用試料の発熱量の予測値Qを導出した。各測定用試料の発熱量の予測結果とサンプルの発熱量の実測値を、図10に示す。実施例3の発熱量の予測精度は、実施例1,2よりも低かったものの、発熱量の傾向を把握するには十分な精度を有することが確認された。
【符号の説明】
【0110】
10…破砕装置、11…廃棄物、12,12A,12B…搬送装置、13…分岐部、14…光源、14A,14B…タンク、20A,20B…予測装置、24…光源、26…情報取得部、28…情報処理部、30…制御装置、30A…制御装置(第1制御装置)、30B…制御装置(第2制御装置)、40…調整装置、40A…調整装置(第1調整装置)、40B…調整装置(第2調整装置)、50…加熱装置、50A…第1加熱装置、50B…第2加熱装置、70…回路、72…プロセッサ、74…メモリ、76…ストレージ、78…入出力ポート、82…入出力デバイス、100,101,101A,102…供給装置、200…セメントクリンカ製造装置、201…導入口、230…仮焼炉、234…ライジングダクト、236…抽気管、237…塩素バイパス部、240…セメントキルン、242…窯尻、244…バーナ、250…クリンカクーラ、252…循環ガスライン、300…セメントクリンカ製造設備。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10