(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131121
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】半導体ウェーハ研削装置および研削方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240920BHJP
B24B 1/04 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H01L21/304 601B
B24B1/04 C
H01L21/304 631
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041200
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】110003535
【氏名又は名称】スプリング弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】津留 太良
【テーマコード(参考)】
3C049
5F057
【Fターム(参考)】
3C049AA02
3C049AA17
3C049AC02
3C049BA09
3C049BC02
3C049CA01
3C049CB07
5F057AA02
5F057AA12
5F057AA14
5F057AA34
5F057BA12
5F057BB09
5F057CA09
5F057CA21
5F057DA11
5F057DA26
5F057EB20
5F057GA15
5F057GA30
5F057GB22
(57)【要約】
【課題】
半導体ウェーハの周縁部の加工を高効率に、歩留まり高く実現する。
【解決手段】
半導体ウェーハ研削装置は、半導体ウェーハを載置し回動可能なテーブルと、半導体ウェーハを研削可能な研削スピンドルと、半導体ウェーハに対して非接触に配置され半導体ウェーハの外形を計測し特徴部を検出可能な外形計測器を備える。研削スピンドルは、半導体ウェーハの外周部を研削する研削砥石と、研削砥石に超音波を印加する超音波印加手段と、超音波印加手段が印加する超音波の方向と周波数の少なくともいずれかを制御する超音波制御手段とを備える。超音波制御手段は、半導体ウェーハの特徴部から研削位置までの半導体ウェーハの周方向位置の変化に基づいて、研削位置にある研削砥石に印加する超音波の方向と周波数の少なくともいずれかを制御する。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウェーハの外周部を研削可能な半導体ウェーハ研削装置において、
半導体ウェーハを載置し回動可能なテーブルと、半導体ウェーハの外周部を研削可能な研削スピンドルと、半導体ウェーハに対して非接触に配置され半導体ウェーハ外形形状を測定する形状測定器を備え、
前記研削スピンドルは、半導体ウェーハの外周部を研削する研削砥石と、前記研削砥石に超音波を印加する超音波印加手段と、前記超音波印加手段が印加する超音波の方向と周波数の少なくともいずれかを制御する超音波制御手段と、を備え、
前記超音波制御手段は、前記形状測定器が測定して検出した半導体ウェーハの特徴部から研削位置までの周方向位置の変化に基づいて、研削位置にある前記研削砥石に印加する超音波の方向と周波数の少なくともいずれかを制御することを特徴とする半導体ウェーハ研削装置。
【請求項2】
前記超音波制御手段は、前記特徴部と前記研削位置とにおける結晶方位の違いに基づいて、前記研削位置にある前記研削砥石に印加する超音波の方向と周波数と強度の少なくとも1つを制御することを特徴とする請求項1に記載の半導体ウェーハ研削装置。
【請求項3】
前記超音波制御手段は、半導体ウェーハの前記特徴部を基準とした半導体ウェーハの周方向位置と結晶方位との関係を記述する結晶方位データを記憶する記憶手段を有し、前記記憶手段に記憶された前記結晶方位データを参照して、前記研削位置にある前記研削砥石に印加する超音波の方向と周波数の少なくともいずれかを制御することを特徴とする請求項2に記載の半導体ウェーハ研削装置。
【請求項4】
前記記憶手段に、結晶方位と研削条件の関係を記述する切削条件データを記憶し、前記研削条件は、前記研削砥石の研削速度と切り込み量を含み、さらに前記研削砥石に印加する超音波の方向と周波数の少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項3に記載の半導体ウェーハ研削装置。
【請求項5】
回転テーブルに載置された半導体ウェーハの外周部を研削する半導体ウェーハの研削方法において、
同一のインゴットから切り出された複数の半導体ウェーハの内の少なくとも1枚について、半導体ウェーハの外周部における結晶方位を計測し、半導体ウェーハの基準位置からの周方向変位に対応した結晶方位データとして記憶するステップと、
結晶方位を計測した半導体ウェーハについて、印加する超音波の方向と周波数を含む研削条件を結晶方位に応じて変えて研削し、有効な研削条件を学習データとして記憶するステップと、
同一のインゴットから切り出された他の半導体ウェーハについて基準位置を検出し、検出した基準位置に基づいて前記結晶方位データを参照してこの半導体ウェーハの研削位置の結晶方位を推定するステップと、
前記学習データを参照して、この半導体ウェーハの研削位置における研削条件を設定し、研削スピンドルに設定した研削条件を適用して半導体ウェーハの外周部を研削するステップと、を含むことを特徴とする半導体ウェーハの研削方法。
【請求項6】
回転テーブルに載置された半導体ウェーハの外周部を研削する半導体ウェーハの研削方法は、
複数の半導体ウェーハの内の1枚の半導体ウェーハについて、半導体ウェーハの外周部における結晶方位を計測し、半導体ウェーハの基準位置からの周方向変位に対応した結晶方位データとして記憶するステップと、
他の半導体ウェーハについて基準位置を検出し、検出した基準位置に基づいて前記結晶方位データを参照してこの半導体ウェーハの研削位置における結晶方位を推定するステップと、
予め学習データとして記憶された結晶方位と研削条件の関係を参照して、半導体ウェーハの研削位置における研削条件を設定するステップと、
設定した研削条件を研削砥石に適用して半導体ウェーハの外周部を研削するステップと、を含み、
ここで、研削条件は研削砥石に印加する超音波の向きと周波数の少なくともいずれかを含み、さらに研削砥石の研削速度と切り込み量を含むものである、ことを特徴とする半導体ウェーハの研削方法。
【請求項7】
前記半導体ウェーハは、同一のインゴットから切り出された複数枚の単結晶シリコンウェーハからなり、前記基準位置を各半導体ウェーハで実質的に同一の結晶方位位置に形成していることを特徴とする請求項6に記載の半導体ウェーハの研削方法。
【請求項8】
ウェーハの外周部を研削可能な半導体ウェーハ研削装置において、
前記ウェーハの外周部を研削する研削砥石と、
前記研削砥石に超音波を印加する超音波印加手段と、を備え、
前記研削砥石は、前記ウェーハの厚さ方向の第1方向に配置された第1砥石と、前記厚さ方向の第1方向と反対方向の第2方向に配置された第2砥石とを有する、ことを特徴とするウェーハ研削装置。
【請求項9】
前記第1砥石と前記第2砥石とは、前記厚さ方向において、互いに重なっている、ことを特徴とする請求項8に記載のウェーハ研削装置。
【請求項10】
前記研削砥石は、前記厚さ方向において前記第1砥石と前記第2砥石の間に位置する第3砥石を有する、ことを特徴とする請求項9に記載のウェーハ研削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハを研削する研削装置および研削方法に係り、特に半導体ウェーハの外周縁部を研削するのに好適な半導体ウェーハ研削装置および研削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インゴットから切り出されたウェーハの表裏面を平坦にするための研削砥石に、超音波を加えて研削中の砥石の目詰まりを防止することが知られている。例えば特許文献1に記載の研削装置は、研削砥石に超音波振動を効果的に付与するために、被加工物を保持するチャックテーブルと、チャックテーブルに保持された被加工物を研削する研削手段を備える。そして研削手段は、回転スピンドルと回転スピンドルの一端に設けられたホイールとを有し、研削ホイールはホイールマウントに取り付けられ、ホイール基台とホイール基台に装着された研削砥石を有する。ホイールマウントと研削砥石のいずれか一方に超音波振動子を配設し、超音波振動子に電力を印加する電力供給手段を回転スピンドルに配設している。
【0003】
また、特許文献2には研削砥石に超音波振動を適切に伝達してウェーハを良好に研削するために、保持テーブルに保持されたウェーハを研削する研削ホイールが以下の構成を備えることが記載されている。それらは、研削装置のマウントに装着される第1の円環板と、第1の円環板の外周から垂下する筒体と、筒体の下端に連結する第2の円環板と、第2の円環板の下面に環状に配設される研削砥石と、第2の円環板の上面で開口を囲繞するように配設された環状の超音波発振部と、超音波発振部から研削砥石に伝達された超音波振動を受振する超音波受振部とである。
【0004】
超音波振動を砥石に付与してウェーハを研削する他の例が、特許文献3に記載されている。この公報では、基板のテラス加工において、基板表層部の割れ等を無くして低ダメージで加工するために、被加工材の端面を研削する面取り装置が、以下の構成を有している。すなわち、研削ユニットのスピンドルに嵌合して固定された振動フランジと、外周の下面に砥石を有し振動フランジに嵌合された砥石ホイールと、振動フランジの外周側で砥石の上面より下側となる砥石ホイールの底面側に設けられ半径方向に超音波振動する圧電素子を備える。これにより、砥石に圧電素子から超音波振動を与えながら半径方向に切り込んで、被加工材の端面にテラス加工を施している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-23693号公報
【特許文献2】特開2018-47508号公報
【特許文献3】特開2017-177251号公報
【特許文献4】特開2021-141107号公報
【特許文献5】特開2017-183503号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】山田他、「SiCの精密レーザスライシング 第2報:操作方向とへき開伸展・連結の関係性」、砥粒加工学会誌、第65巻、第10号、第549頁~第555頁、2021年10月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
インゴットから切り出されたばかりのシリコン単結晶ウェーハのような硬い被加工材の研削においては、研削効率の向上と歩留まりの向上の観点から、ウェーハの表裏面を研削負荷の高い高速送り研削である粗研削と、送り量を低下させて研削負荷を低下させた精研削とを組み合わせている。ウェーハ表裏面の研削は平面研削であるので、単結晶ウェーハの場合には、研削砥石の送り方向をウェーハ面上で一定方向とすることで、常に同じ結晶方位への研削加工が可能になる。その結果、結晶方位の差異に起因する、へき開等の結合状態の違いの発生を回避できる。すなわち、ウェーハ面上を砥石が移動することによりウェーハに発生する応力は、理論的にはウェーハ面上の場所で相違することはなく、ウェーハ面上で一様な加工が可能であり、割れ等の不良の発生頻度を低く抑えることができる。
【0008】
これに対して、ウェーハの側面加工であるエッジ加工は、研削砥石をウェーハの周上に転がしての加工であり、エッジの断面形状をテーパ形状や円弧またはそれに近い弧状を含む形状とするので、研削部は絶えず結晶方位が変化する。結晶構造をとる材料において、結晶方位が相違すると、砥石に同一研削条件を与えても研削負荷または研削抵抗が変化する。そこで、シリコンウェーハ等の研削においては、研削不良となる意図しないへき開等の不具合が最も生じやすい結晶方位における、不具合が発生しない研削条件を経験的に得て、ウェーハの周方向各位置で一定の研削条件で研削するのが実状である。この場合、ウェーハの経歴等による微妙な強度の変化等にも対応できるように、研削条件を緩和した最も安全な研削条件まで送り速度を低下させること等が必要であり、加工機の能力を十分に活用していない。また、ウェーハの研削抵抗の挙動が予期したものと異なる場合には、研削条件を新たに経験的に求める必要がある。
【0009】
上記特許文献1に記載の研削装置は、研削砥石に超音波振動を付与することにより、研削によって生成される研削砥石の砥粒間に滞留して目詰まりの原因となる研削屑が、研削砥石に作用する微振動により流動されて除去され、脆性硬質材料であっても効率よく研削することを可能にしている。この研削装置は確かに平面研削においては有用な方法を用いている。しかし単結晶ウェーハでは、ウェーハの周方向側面において絶えず結晶方位が変化し、同一研削条件であってもウェーハに発生する研削応力やウェーハの研削抵抗が変化する。したがって、研削効率を向上させるためには、過大な研削抵抗を引き起こさずに、結果として同一の加工効果が得られる可変の研削条件が必要となる。
【0010】
特許文献2に記載の、粗研削と精研削の組合せによるウェーハの平面研削において、粗研削時には超音波の出力を増大して砥石の振幅を大きくし、精研削では超音波の出力を低下させて砥石を低下した目標振幅に収めることで加工効率を高めている。この特許文献2の研削装置では、平面研削であるので粗研削及び精研削にはそれぞれ1個の目標振幅を研削砥石に設定すればよい。ウェーハの外周エッジ研削においては、ウェーハが周方向位置に応じて異なる研削抵抗を示すので、研削砥石に単一の目標振幅を設定しただけでは研削条件が必ずしも最適条件にはならない。研削効率を向上するために、ウェーハの周方向位置に応じて超音波加振の目標振幅を設定することが望まれる。
【0011】
特許文献3に、ウェーハ等の面取りの際に、研削砥石に超音波振動を与えてクーラントの流入および流出を促進し、これにより研削面の洗浄や研削屑の排出を促進している。この特許文献3に記載の面取り装置は、必ずしも単結晶ウェーハの加工だけを対象とするものではなく、汎用的な面取り加工である。そのため、被加工材の周方向における研削抵抗や内部応力の変化の有無にかかわらず加工できるように、割れや欠け等の不良が発生しない、より安全側での(より緩和した)加工条件を付与していると思われる。
【0012】
本発明は上記従来技術の不具合に鑑みなされたものであり、その目的は、半導体ウェーハの周縁部の加工を効率よく歩留まり高く実現することにある。具体的には、外周面取り加工であるべべリング加工において、結晶方位が変化することに起因するへき開等の結合状態の変化に対応可能な加工方法及び加工装置を、超音波振動を適用して実現することにある。また他の目的は、上記目的において、べべリング加工の加工効率を高めるとともに加工精度を高めるようにする、または既存の面取り装置に容易に適用できるようにすることにあり、上記目的を含む複数の目的の少なくともいずれかを達成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成する本発明の特徴は、半導体ウェーハの外周部を研削可能な半導体ウェーハ研削装置において、半導体ウェーハを載置し回動可能なテーブルと、半導体ウェーハの外周部を研削可能な研削スピンドルと、半導体ウェーハに対して非接触に配置され半導体ウェーハ外形形状を測定する形状測定器を備え、前記研削スピンドルは、半導体ウェーハの外周部を研削する研削砥石と、前記研削砥石に超音波を印加する超音波印加手段と、前記超音波印加手段が印加する超音波の方向と周波数の少なくともいずれかを制御する超音波制御手段と、を備え、前記超音波制御手段は、前記形状測定器が測定して検出した半導体ウェーハの特徴部から研削位置までの周方向位置の変化に基づいて、研削位置にある前記研削砥石に印加する超音波の方向と周波数の少なくともいずれかを制御することにある。
【0014】
そしてこの特徴において、前記超音波制御手段は、前記特徴部と前記研削位置とにおける結晶方位の違いに基づいて、前記研削位置にある前記研削砥石に印加する超音波の方向と周波数と強度の少なくともいずれかを制御することが好ましく、前記超音波制御手段は、半導体ウェーハの前記特徴部を基準とした半導体ウェーハの周方向位置と結晶方位との関係を記述する結晶方位データを記憶する記憶手段を有し、前記記憶手段に記憶された前記結晶方位データを参照して、前記研削位置にある前記研削砥石に印加する超音波の方向と周波数の少なくともいずれかを制御することが望ましい。
【0015】
また、前記記憶手段は、結晶方位と研削条件の関係を記述する切削条件データを記憶し、前記研削条件は、前記研削砥石の研削速度と切り込み量を含み、さらに前記研削砥石に印加する超音波の方向と周波数の少なくともいずれかを含むことが好ましい。
【0016】
上記目的を達成する本発明の他の特徴は、回転テーブルに載置された半導体ウェーハの外周部を研削する半導体ウェーハの研削方法において、同一のインゴットから切り出された複数の半導体ウェーハの内の少なくとも1枚について、半導体ウェーハの外周部における結晶方位を計測し、半導体ウェーハの基準位置からの周方向変位に対応した結晶方位データとして記憶するステップと、結晶方位を計測した半導体ウェーハについて、印加する超音波の方向と周波数を含む研削条件を、結晶方位に応じて変えて研削し、有効な研削条件を学習データとして記憶するステップと、同一のインゴットから切り出された他の半導体ウェーハについて基準位置を検出し、検出した基準位置に基づいて前記結晶方位データを参照してこの半導体ウェーハの研削位置の結晶方位を推定するステップと、前記学習データを参照してこの半導体ウェーハの研削位置における研削条件を設定し、研削砥石(研削スピンドル)に設定した研削条件を適用して半導体ウェーハの外周部を研削するステップと、を含むことにある。
【0017】
上記目的を達成する本発明のさらに他の態様は、回転テーブルに載置された半導体ウェーハの外周部を研削する半導体ウェーハの研削方法は、複数の半導体ウェーハの内の1枚の半導体ウェーハについて、半導体ウェーハの外周部における結晶方位を計測し、半導体ウェーハの基準位置からの周方向変位に対応した結晶方位データとして記憶するステップと、他の半導体ウェーハについて基準位置を検出し、検出した基準位置に基づいて前記結晶方位データを参照してこの半導体ウェーハの研削位置における結晶方位を推定するステップと、予め学習データとして記憶された結晶方位と研削条件の関係を参照して、半導体ウェーハの研削位置における研削条件を設定するステップと、設定した研削条件を研削砥石に適用して半導体ウェーハの外周部を研削するステップと、を含み、ここで、研削条件は研削砥石に印加する超音波の向きと周波数の少なくともいずれかを含み、さらに研削砥石の研削速度と切り込み量を含むことにある。そして、前記半導体ウェーハは、同一のインゴットから切り出された複数枚の単結晶シリコンウェーハからなり、前記基準位置を各半導体ウェーハで実質的に同一の結晶方位位置に形成していることが望ましい。
【0018】
また、本発明のさらに別の態様は、ウェーハの外周部を研削可能な半導体ウェーハ研削装置において、前記ウェーハの外周部を研削する研削砥石と、前記研削砥石に超音波を印加する超音波印加手段と、を備え、前記研削砥石は、前記ウェーハの厚さ方向の第1方向に配置された第1砥石と、前記厚さ方向の第1方向と反対方向の第2方向に配置された第2砥石とを有する、ことを特徴とするウェーハ研削装置である。
【0019】
上記ウェーハ研削装置において、前記第1砥石と前記第2砥石とは、前記厚さ方向において、互いに重なっていることが望ましい。
【0020】
また、上記ウェーハ研削装置において、前記研削砥石は、前記厚さ方向において前記第1砥石と前記第2砥石の間に位置する第3砥石を有することが望ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ウェーハの外周研削装置において、研削装置に取り付けられたウェーハの周方向位置に応じて、研削砥石に加える超音波振動の方向や周波数を変化させるようにしたので、ウェーハの周方向における結晶方位の変化に応じて研削条件を変えた研削が可能になり、結晶方位の変化に起因する劈(へき)開等の結合状態の変化に容易に対応できる。また、ウェーハの周方向位置に応じて最適な研削条件を砥石軸を傾斜させたべべリング加工に適用できるので、加工効率が向上するとともに無理な加工条件の適用を回避でき加工精度及び歩留まりが向上する。また、超音波振動の方向や周波数をウェーハの周方向位置に応じて変化させるだけであるから、従来の超音波加振装置を用いた加工装置を使うことができるし、新たに外周面取り加工装置に超音波加振装置を追加して外周研削装置とする場合でも、平面研削装置へ追加する場合と同様であるから超音波加振装置の追加は容易である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1A】本発明に係る研削装置の一実施例のブロック図である。
【
図1B】
図1Αに示した研削装置の模式上面図である。
【
図2】
図1Bに示した研削装置の模式正面図である。
【
図3A】研削装置が備える研削スピンドルを用いて、ウェーハの面取り研削を説明する部分正面図である。
【
図3B】研削スピンドルの他の例を示す部分正面図である。
【
図4】ウェーハの端面を平坦に研削する例を説明する部分正面図である。
【
図5】ウェーハの端面研削と研削結果の検証(学習)を説明する模式上面図である。
【
図6】本発明に係る研削方法の一実施例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る半導体ウェーハ研削装置の一実施例(ウェーハ研削装置10)を、図面を用いて説明する。
図1Aは、ウェーハ研削装置10の一実施例のブロック図であり、
図1Bはその概略上面図である。
図2は、
図1A、1Bに示すウェーハ研削装置10の主要部である加工部16の正面図である。
【0024】
ウェーハ研削装置10は、ウェーハWをこのウェーハ研削装置10に供給および回収する供給回収部12、外周研削するウェーハWに形成されたノッチやオリフラ(オリエンタル・フラット)等の特徴部を検出してプリアライメントおよび加工前測定をする測定部14、ウェーハWの研削を実行する加工部16、ウェーハW研削後にウェーハWを洗浄および乾燥する洗浄・乾燥部80、ウェーハW研削前および/または研削後にウェーハWの主として結晶方位を測定する結晶状態測定部22、およびウェーハWをこのウェーハ研削装置10内で無人搬送する搬送部24を主要構成手段として有する。これらの各構成手段は、操作パネル17および制御装置15を介して制御される。
【0025】
制御装置15には、詳細を後述する超音波発振装置制御部100や研削砥石制御部90も含まれる。研削砥石制御部90(学習モデル格納部)には学習モデルが格納されており、学習モデルを利用して処理するための種々のプログラムやデータが記憶手段(メモリ)92に記憶されている。制御装置15は、例えば、超音波印加条件及び研削条件を入力し、これらの超音波印加条件及び研削条件で研削した結果得られるウェーハのエッジ形状が目標エッジ形状となっているかどうかを判定して学習モデルを生成する。なお、超音波発振装置制御部100や研削砥石制御部90は、加工部16に設けられていてもよい。
【0026】
供給回収部12には、同一インゴットから切り出された多数枚のウェーハWがウェーハカセット30に収納されて準備されている。また、面取り加工されたウェーハWは各種計測が終了したのちは、ウェーハカセット30に回収されて次工程に運ばれる。供給回収部12のウェーハカセット30から測定部14へ、結晶状態測定部22から供給回収部12のウェーハカセット30へウェーハWを移動させるために、カセットテーブルと搬送アーム36を有する供給回収ロボット34が備えられている。搬送アーム36は、ガイドレール38に沿って移動可能に構成されている。
【0027】
測定部14は、面取り加工するウェーハWの厚さ測定、オリフラ検出やプリアライメントを実行する。測定部14は、測定テーブル50、厚さセンサ51、及びオリフラ検出センサ54を備える。オリフラ検出センサ54は、レーザセンサであり、ウェーハWのオリフラ(特徴部)の位置を検出する。
なお、測定部14は、後述する加工部16とは、別に設けられている。これは、加工部16では、研削の際に研削液等が使用されることがあるためである。研削液等が使用される場合、ウェーハW及びその周囲に研削液等が付着する可能性があり、画像(レーザ)センサ等を使用する場合、加工部16とは別に測定部14を設ける方が、より正確な測定が行える。
一方で、加工部16において測定を行う(インプロセスで測定を行う)こともできる。この場合、測定部14は、接触式、及び/又は、渦電式センサによって、ウェーハWの特徴部の位置を検出する構成とすればよい。
【0028】
加工部16は、ウェーハ研削装置10の主要部であり、ウェーハWの外周研削の粗加工から仕上げ加工までを実行する。加工部16は、ウェーハ位置決め部60、外周研削装置62を備える。ウェーハ位置決め部60は、ウェーハWを吸着保持し、前後方向(Y軸方向)、左右方向(X軸方向)、及び上下方向(Z軸方向)と、中心軸(θ軸)回りの回転方向に移動可能なウェーハテーブル134(
図2)を有する。ウェーハテーブル134の裏面にはAEセンサ58が、ウェーハWの外周近傍には、ウェーハの外形を測定する形状測定器52、及び、オリフラ検出センサ54が設けられている。なお、加工部16は、オリフラ検出センサ54を備えているが、測定部14においてすでにオリフラが検出され、その位置座標が参照される場合、加工部16はオリフラ検出センサ54を備えていなくてもよい。
形状測定器52は、具体的には、レーザ変位計等である。また、後述する結晶状態測定用のセンサ、測定器類をオプションで設けてもよい。
【0029】
洗浄・乾燥部80は、研削加工後のウェーハWを洗浄し乾燥する。洗浄テーブル82に 保持したウェーハWを回転させながら、ウェーハWの表面に洗浄液を噴射して、ウェーハWの表面に付着した汚れを剥離除去する。なお、ウェーハ研削装置10は、独立した洗浄・乾燥部80を備えていなくてもよい。洗浄・乾燥機能は、他の部分が備えていてもよい。また、洗浄・乾燥機能自体を備えていなくてもよい。
【0030】
結晶状態測定部22は、面取り加工前および/または加工後のウェーハWの結晶状態を測定する。結晶状態測定部22は、ウェーハWを保持して回転及び上下動させる測定テーブル86とラマン顕微鏡のような精密光学測定器である結晶状態測定器84を有する。なお、結晶状態測定には、AEセンサ等も使用できる。
【0031】
搬送部24は、ウェーハ研削装置10の各部にウェーハWを搬送する。水平ガイド110、110に沿ってスライド移動可能なスライドブロック112、112上に、トランスファアーム114が設けられている。トランスファアーム114の先端には吸着パッドが取り付けられており、ウェーハWを吸着保持した状態で、水平移動及び上下移動する。
【0032】
次に、本発明の特徴的部分である加工部16の構成について、
図2を用いて説明する。加工部16は、上述したように、ウェーハ位置決め部60と外周研削装置62が備えられている。ウェーハ位置決め部60は、本体ベース141上に載置されたX軸ベース121、X軸ガイドレール122、X軸リニアガイド123、ボールねじとサーボモータを有するX軸駆動手段125により、
図2のX方向に移動されるXテーブル124を有する。Xテーブル124には、Y軸ガイドレール126、Y軸リニアガイド127、図示しないボールねじとサーボモータを有するY軸駆動手段により、
図2のY方向に移動されるYテーブル128が組込まれている。
【0033】
Yテーブル128の上部には、Z軸ガイドレール129と図示しないZ軸リニアガイドによって案内され、ボールねじおよびステッピングモータを備えるZ軸駆動手段130によって図のZ方向に移動されるZテーブル131が組込まれている。Zテーブル131には、θ軸モータ132とθスピンドルが組込まれおり、θスピンドルにはウェーハWを吸着載置するウェーハ保持手段としての真空チャックのウェーハテーブル134が取り付けられている。ウェーハ位置決め部60は、ウェーハWをθ方向に回転するとともに、X、Y、Z方向に移動させる。
【0034】
加工部16では、
図1Bに示すように、周方向に間隔を置いて外周研削装置62が2台配置されている。各外周研削装置62では、スピンドル電動機156の軸端部に研削砥石155が取り付けられている。スピンドル電動機156の反砥石側には、超音波によりこのスピンドル電動機156の軸を水平方向に加振する圧電アクチュエータ172および鉛直方向に加振する圧電アクチュエータ174が取り付けられている。圧電アクチュエータ172、174は超音波発振装置170に接続される。研削砥石155、スピンドル電動機156、圧電アクチュエータ172、174は、研削スピンドル180を形成する。
【0035】
このように構成した本実施例では、研削されるウェーハWとして、単結晶シリコンのインゴットからスライスされたシリコンウェーハであるウェーハWを用いており、その直径は、一形態として、φ50~300mm程度、厚さは900μm以下程度である。なお、ウェーハ研削装置10により検索可能なウェーハWの材質は、上記に制限されない。特に、パワーデバイス用途等に期待されるSiCウェーハにより適している。SiCは、加工困難な材質として知られているが、本実施例によれば、効率的な研削が可能となる。
【0036】
一般に、単結晶ウェーハでは、ウェーハWのエッジ面(外周面)で周方向に結晶方位が規則的に変化するので、X線回折や光像法を用いて、結晶の劈開が進行する劈開面を予め検出する。検出した劈開面に対して所定角度の位置に、ウェーハWの位置決め基準となるオリフラまたはノッチを、前工程で形成している。これらのデータについては、制御装置15が備える研削砥石制御部90に格納される。
【0037】
次に、
図3A及び
図5を用いて、本発明の一実施例によるウェーハWの外周研削(面取り)について説明する。外周研削装置62には上下に間隔を置いて、それぞれ研削砥石155Uまたは研削砥石155
Lを有する研削スピンドル180が取り付けられている。研削スピンドル180のスピンドル電動機156は互いに独立した2軸を有し、それぞれの先端に、ベルマウス状に形成された帽子型砥石である研削砥石155
U、155
Lが取り付けられている。スピンドル電動機156の各軸は水平軸である。
【0038】
ウェーハWの外周面形状は、多くの場合厚さ方向(上下方向)中央部からそれぞれ上方または下方へないしは内径側に進むにしたがって弧状にウェーハW厚さが増すような形状であり、この形状が形成されるように、水平軸周りに回転する研削砥石155U、155Lの断面形状が規定される。本実施例の場合には、研削砥石155U、155Lの断面形状は、先端径が小さく根本側に行くに従いすそ広がりになっている円錐形(帽子型)である。すなわち、ベルマウス状(金管楽器の「ベル」部分の形状)である。言い換えると、研削砥石155U、155Lの断面形状は、根本(裾野)から先端に向かって先細りになる山形の形状に形成されている。なお、ウェーハWの研削位置は、ウェーハ位置決め部60が有するθ軸モータ132を駆動して周方向に順次変化させられる。
【0039】
外周研削装置62の周囲には、ウェーハWに形成されたオリフラ位置を検出可能なオリフラ検出センサ54が配置されている。オリフラ検出センサ54で検出したオリフラ位置から研削位置におけるウェーハWの周方向位置(座標)を求める。求めた研削位置の周方向位置(座標)から、研削位置における結晶方位が、研削砥石制御部90に格納された結晶方位データを参照して判明する。なお、ウェーハWを載置するウェーハテーブル134には、AEセンサ58(
図1B、
図3A)が取り付けられており、研削加工時にウェーハWの研削位置で発生する音響エネルギを検出して、ウェーハWの塑性変形、亀裂、摩耗を常時モニタする。また、AEセンサの代わりに加速度センサ等の研削加工で発生する振動をモニタするセンサを設けてもよい。
【0040】
ところで、単結晶ウェーハであるウェーハWの外周部では、上下の平面部とは異なり結晶方位が一定ではなく変化するので、研削方向を1つの結晶方位に沿わせて研削することはできない。特許文献5や被特許文献1に記載のように、結晶方位が異なるとウェーハW内の結合状態が異なり、研削加工による劈開の進展具合が異なってくる。すなわち、一定の研削条件(例えば研削砥石155の回転速度一定、研削砥石155の切込み深さ一定等)でウェーハWを研削すると、劈開が進展するところと劈開の進展が遅れるところが生じ、また研削屑の発生量にも差が生じる。加工精度を保つためには研削量を低下させる必要があるが、その場合、研削効率が低下する。
【0041】
この不具合を解消するために本発明者は、結晶方位に応じた研削方法を実施することで、劈開の進展がウェーハWの周方向位置で均等になるように研削条件を設定し、加工精度や研削効率を向上させている。なお、研削砥石155の回転速度や切込み深さをウェーハWの研削位置に応じて制御して研削結果の一様化を図る方法は考えられるが、研削に要する時間が増大する虞がある。
【0042】
そこで、研削砥石155の基本的な研削条件は変えずに、言い換えればスピンドル電動機156自体の動作状態は変えずに、スピンドル電動機156を含む研削スピンドル180を超音波加振することで、実質的に研削条件を変える。そのため、スピンドル電動機156の軸方向反砥石側に、水平方向(または軸方向)加振用の圧電アクチュエータ172と鉛直方向加振用の圧電アクチュエータ174を取り付ける。各圧電アクチュエータ172、174が発生する超音波加振力の大きさを変化させると、各超音波加振力を組み合わせた結果として、大きさと向きが変化した加振力が得られ、この加振力が研削砥石155からウェーハWに印加され、研削条件を実質的に変化させる。
【0043】
上記実施例では、上下に間隔を置いて同一形状の2つの研削砥石155
U、155
Lを配置しているので、2つの研削砥石155
U、155
Lが接触しないようにそれらの間に僅かな隙間が形成され、帯状に未加工部分が生じる。この不具合は、2つの研削砥石155
U、155
Lの周方向位置を変化させることで解消される。
図3Bに、未加工部分を解消した例を示す。
【0044】
図3B(a)は研削砥石155
U、155
Lの配置状態を示す正面図であり、
図3B(b)は、
図3B(a)のA―A断面方向から観た研削砥石155
U、155
Lの配置状態を示す模式図である。同図(a)に示すように、研削砥石155
U、155
Lは、ウェーハWの厚さ方向において上下に配置される。言い換えると、研削砥石155
Uは、ウェーハWの厚さ方向において、ウェーハWの厚さの中心位置よりも上方向に配置され、研削砥石155
Lは、ウェーハWの厚さ方向において、ウェーハWの厚さの中心位置よりも下方向に配置される。研削砥石155
U、155
Lはほぼ同一形状であり、各研削砥石155
U、155
LはウェーハWの厚さ方向中央部を超えて研削することが可能である。つまり、2つの研削砥石155
U、155
L(の研削領域)は、加工部16の正面(2つの研削砥石155
U、155
Lの側面)から観た場合に、ウェーハWの厚さ方向において、互いにオーバーラップしている(重なっている)。言い換えると、なお、2つの研削砥石155
U、155
Lの研削領域は、加工部16の正面(2つの研削砥石155
U、155
Lの側面)から観た場合に、ウェーハWの厚さ方向において、オーバーラップしていなくともよい。研削砥石155
Uの下端と、研削砥石155
U、155
Lの上端とは、ウェーハWの厚さ方向において、間隔を置いて離間していてもよい。また、研削砥石155
U、155
Lはほぼ同一形状であるとしたが、異なる形状であってもよい。そして、同図(b)に示すように、2つの研削砥石155
U、155
Lの中心位置は、周方向にδ
2だけ位置が変化しており、上下方向にはδ
1だけ離れている。言い換えると、同図(b)に示すように、2つの研削砥石155
U、155
Lは、A-A断面方向から観た場合に、千鳥状に配置されている。これにより、ウェーハWの外周研削における研削漏れを回避できる。なお、この
図3Bに示した実施例でも、研削スピンドル180を超音波加振して、研削砥石155
U、155
Lの研削条件を実質的に変化させる。そのため、水平方向(または軸方向)加振用の圧電アクチュエータ172と鉛直方向加振用の圧電アクチュエータ174を研削スピンドル180の反砥石側に取り付けている。したがって、結晶方位に応じて研削条件を変化させる、ウェーハの外周研削が可能になる。
【0045】
研削砥石155の他の例を、
図4に正面図で示す。
図4に示した研削砥石155
Pは、上記実施例とは異なり、研削砥石155
Pを1個だけ使用している。ウェーハWの外周形状は、上記実施例の円弧形状から垂直面形状(すなわち円柱の側面形状)に変化している。ウェーハWの上下辺部で、ウェーハWの上下面と外周面とがなす稜部が90°の角度になると、ハンドリング中に亀裂等を発生しやすいので、上下稜部の極く近傍だけ丸みを帯びた加工をし、外周面のほとんどは円筒面に加工する。研削砥石155
Pの断面形状は、上下稜部の近傍に対応する部分だけ弧状に形成し、その間を垂直な線で結んだ皿型形状である。
【0046】
研削砥石155
Pの上下稜部に対応する弧状部分の曲率は、ウェーハWの外径曲率(1/R、R:ウェーハ半径)より小さい。このように研削砥石155
Pの形状を設定することで、研削砥石155
Pが回転しても、ウェーハWの他の部分を意図せずに加工する虞はない。研削砥石155
Pは、ウェーハWの先端部を研削する。研削砥石155
Pは、ウェーハWの厚さ方向において、2つの研削砥石155
U、155
Lの間の位置に配置される。例えば、研削砥石155
Pは、ウェーハWの厚さ方向において、ウェーハWの厚さの中心部に対向する位置に配置される。
図4に示した実施例でも、水平方向(または軸方向)加振用の圧電アクチュエータ172と鉛直方向加振用圧電アクチュエータ174を研削スピンドル180の反砥石側に取り付けて研削スピンドル180に超音波を印加し、研削砥石155
Pの研削条件を実質的に変化させている。これにより、結晶方位に応じて研削条件を変化させる、ウェーハWの外周研削が可能になる。
【0047】
図5に、円筒面研削用の研削スピンドル180
Pと、曲面研削用の2個の研削スピンドル180
U、180
Lを備えた外周研削装置62の一例を示す。形状測定器52、オリフラ検出センサ54で計測したウェーハの位置(座標)から加工位置における結晶方位を、学習モデル格納部(研削砥石制御部90)に格納された結晶方位データを参照して求める。
なお、学習モデル格納部には、上述のとおり学習モデル、及び、機械学習に使用される(訓練用)データ等が格納されている。機械学習に使用されるデータには、超音波印加条件、及び、研削条件と、その結果得られるウェーハのエッジ形状が含まれる。ウェーハにおける結晶方位は、その材質、(製品)種類等によって異なるが、その関係は明らかであり、任意の位置におけるウェーハの結晶方位は、予め上記データに含めて記憶される。
【0048】
求めた結晶方位から、各圧電アクチュエータが発生する超音波加振力の向きと周波数を求め、各研削スピンドル180U、180L、180Pが求められた加振力を印加することで外周研削が実行される。各研削スピンドル180U、180L、180Pは、ウェーハWの加工内容に応じて使い分けられる。これにより、結晶方位に応じた外周研削が、ウェーハWの全周にわたって可能になる。
【0049】
次に、
図6を用いて結晶方位に応じた超音波印加方法について説明する。単結晶のウェーハWでは、特許文献5に記載のように外周部の結晶方位が変化する。そこで、ウェーハWの外周位置に応じて超音波加振力の向きと周波数を変化させる。結晶の材料力学的性質から、ウェーハの結晶方向と劈開の進展の遅速は理論的に求められている。しかし現実のウェーハWでは理論からのずれを排除できないので、本実施例では学習効果を利用する。
【0050】
同一のインゴットから切り出された多数のウェーハWでは、実質的に同一の結晶方位の位置にオリフラが形成されているはずであるから、初めに1枚の基準となるウェーハWについて、オリフラ検出センサ54により検出されたオリフラを基準にして、形状測定器52により求めた加工すべき形状(エッジ目標形状)を、ステップS610で読み込む。そして、そのウェーハWに対して暫定的に研削条件を設定する(ステップS612)。暫定的な研削条件は、結晶の材料力学的性質に基づき設定する、もしくは以前に研削した同種のウェーハWについての研削結果に基づき設定する。
【0051】
設定された研削条件から、実際に超音波印加条件を設定する(ステップS614)。圧電アクチュエータ172、174を駆動して超音波を印加する効果については、事前に予備試験で求めておくか、もしくは同種のウェーハWについての以前の研削結果に基づき設定する。
【0052】
ウェーハWの研削条件及び圧電アクチュエータ172、174の印加条件が定まったので、実際にウェーハWの外周を研削加工(エッジ研削)する(ステップS620)。ここで、研削実施中は、AEセンサ58と形状測定器52を併用して、研削箇所の位置座標と、それに対応する結晶方位を確認、記録する(ステップS630)。ウェーハWの外周全体の研削が終了したら、研削後の形状、結晶状態を測定する(ステップS632)。このステップS632での計測は、加工部16(
図1B参照)で行ってもよいし、別途、結晶状態測定部22(
図1B参照)で行ってもよい。
【0053】
次に、ウェーハWの外周研削結果が、ステップS610で提示された目標形状に合致するかを、形状測定器52の測定結果や結晶状態の測定結果を用いて判断する(ステップS640)。目標形状に合致していれば、この時の研削条件及び超音波印加条件を制御装置15が有する研削砥石制御部90(学習モデル格納部)の記憶手段92に研削条件データとして記憶する。以後は、この研削条件データを用いて他のウェーハWの外周研削を実行する。その際、オリフラ位置等を基準として、研削位置の状態、すなわち結晶方位を定める。
ステップS640で目標形状を満足しないときには、超音波印加条件を変更する(ステップS650)。具体的には、研削条件データベースを参照(ステップS652)して、学習モデルを変更、新規作成する(ステップS654)。そして、ステップS614に戻り、ステップS614~S654を、目標エッジ形状(目標外周形状)が達成されるまで繰り返す。
【0054】
一旦、学習モデルが作成されたら、そのモデルで使用したデータを用いて他のウェーハの外周研削を実行する。その際、オリフラ位置の結晶方位が学習モデルに格納された方位と異なっていれば、その差分だけ補正してモデルを適用する。なお、基準となるウェーハW以外のウェーハWの加工中に、学習モデルに格納されたデータとは異なる劈開挙動を示すときには、随時学習モデルのデータを更新することも可能である。
【0055】
以上説明したように、本発明の各実施例によれば、ウェーハWの外周加工において、加工位置に応じて超音波印加の条件を変更しているので、結晶方位の違いよる劈開の進展の遅速を制御でき、均質な加工が可能になる。これにより、加工効率が増し、ウェーハの外周加工における歩留まりを高めることができる。
また、使用する各砥石はキャビティが形成されにくい構造であり、更に超音波印加を併用すれば、振動効果で砥石の目詰まりがより解消されやすくなる。すると、切れ味が維持された状態で研削を行えるため、結果として、凹凸のより少ない研削面を創成できる。
【符号の説明】
【0056】
10…ウェーハ研削装置、12…供給回収部、14…測定部、15…制御装置、16…加工部、17…操作パネル、22…結晶状態測定部、30…ウェーハカセット、34…供給回収ロボット、36…搬送アーム、38…ガイドレール、50…測定テーブル、51…厚さセンサ、52…形状測定器、54…オリフラ検出センサ、58…AEセンサ、60…ウェーハ位置決め部、62…外周研削装置、80…洗浄・乾燥部、82…洗浄テーブル、84…結晶状態測定器、86…測定テーブル、90…研削砥石制御部、92…記憶手段(メモリ)、100…超音波発振装置制御部、110…水平ガイド、112…スライドブロック、114…トランスファアーム、121…X軸ベース、122…X軸ガイドレール、123…X軸リニアガイド、124…Xテーブル、125…X軸駆動手段、126…Y軸ガイドレール、127…Y軸リニアガイド、128…Yテーブル、129…Z軸ガイドレール、130…Z軸駆動手段、131…Zテーブル、132…θ軸モータ、134…ウェーハテーブル、141…本体ベース、152…外周加工砥石、155、155U、155L…研削砥石、156、156U、156L…スピンドル電動機、170…超音波発振装置、172、172U、172L…圧電アクチュエータ(水平方向加振)、174、174U、174L…圧電アクチュエータ(鉛直方向加振)、180、180U、180L…研削スピンドル、W…ウェーハ、δ1…上下方向偏差、δ2…周方向偏差