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特開2024-131167光ファイババンドル構造の製造方法、光ファイババンドル構造とマルチコアファイバの接続方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131167
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】光ファイババンドル構造の製造方法、光ファイババンドル構造とマルチコアファイバの接続方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/06 20060101AFI20240920BHJP
   G02B 6/38 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
G02B6/06 C
G02B6/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041261
(22)【出願日】2023-03-15
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度国立研究開発法人情報通信研究機構「Beyond 5G時代に向けた空間モード制御光伝送基盤技術の研究開発」産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 翼
(72)【発明者】
【氏名】杉崎 隆一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 正典
(72)【発明者】
【氏名】新子谷 悦宏
【テーマコード(参考)】
2H036
2H250
【Fターム(参考)】
2H036JA02
2H036JA04
2H036KA03
2H036LA07
2H036MA02
2H250AC23
2H250AC33
2H250AC64
2H250AC94
2H250AC95
2H250CA02
2H250CA42
2H250CA67
2H250CC28
(57)【要約】
【課題】 細径の光ファイバを用いた光ファイババンドル構造であっても、キャピラリや光ファイバの欠け等を抑制して端面研磨を行うことが可能な光ファイババンドル構造の製造方法等を提供する。
【解決手段】 まず、複数の光ファイバ心線1の細径部5bを細径キャピラリ7に挿入する。細径キャピラリ7の端面から光ファイバ心線の端面が少し出るまで光ファイバ心線1を細径キャピラリ7に挿入した状態で、次に、接着剤によって光ファイバ心線1と細径キャピラリ7とを固定する。次に、細径キャピラリ7の外周に太径キャピラリを固定する。次に、太径キャピラリと細径キャピラリ7と光ファイバ心線1(細径部5b)の端面を一括して研磨して、光ファイバ心線1の端面を鏡面化する。次に、細径キャピラリ7から太径キャピラリを除去する。以上により、光ファイババンドル構造13を得ることができる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光ファイバ心線が集合した光ファイババンドル構造の製造方法であって、
複数の前記光ファイバ心線を細径キャピラリに挿入して固定する工程と、
前記細径キャピラリの外周に、太径キャピラリを固定する工程と、
前記太径キャピラリ、前記細径キャピラリ及び前記光ファイバ心線の端面を研磨する工程と、
前記太径キャピラリを前記細径キャピラリから除去する工程と、
を具備することを特徴とする光ファイババンドル構造の製造方法。
【請求項2】
複数の光ファイバ心線が集合した光ファイババンドル構造の製造方法であって、
細径キャピラリと、前記細径キャピラリの外周に固定される太径キャピラリとを有する2層構造のキャピラリに複数の前記光ファイバ心線を挿入して固定する工程と、
前記太径キャピラリ、前記細径キャピラリ及び前記光ファイバ心線の端面を研磨する工程と、
前記太径キャピラリを前記細径キャピラリから除去する工程と、
を具備することを特徴とする光ファイババンドル構造の製造方法。
【請求項3】
前記太径キャピラリの周方向の一部に、全長にわたってスリットが形成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光ファイババンドル構造の製造方法。
【請求項4】
前記太径キャピラリが周方向に複数に分割されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光ファイババンドル構造の製造方法。
【請求項5】
前記太径キャピラリは、前記細径キャピラリの外周に溶融した樹脂を配置して固化することで形成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光ファイババンドル構造の製造方法。
【請求項6】
前記樹脂は熱可塑性樹脂であり、カップリング剤を含まないことを特徴とする請求項5記載の光ファイババンドル構造の製造方法。
【請求項7】
前記太径キャピラリは、インサート成形によって形成されることを特徴とする請求項5記載の光ファイババンドル構造の製造方法。
【請求項8】
請求項1又は請求項2に記載の光ファイババンドル構造の製造方法によって製造された光ファイババンドル構造とマルチコアファイバの接続方法であって、
前記マルチコアファイバは、クラッドに複数のコアが配置されており、
前記細径キャピラリの外径と、前記マルチコアファイバの外径が略同一であり、
前記光ファイババンドル構造の前記光ファイバ心線と前記マルチコアファイバの前記コアを調心し、前記光ファイババンドル構造と前記マルチコアファイバの端面を突き合わせて接続することを特徴とする光ファイババンドル構造とマルチコアファイバの接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の間隔でコアが配列されたマルチコアファイバと接続可能な、光ファイババンドル構造の製造方法等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の光通信におけるトラフィックの急増により、伝送容量の増大が求められている。そこで、さらに通信容量を拡大する手段として、シングルコアの光ファイバに代えて一本の光ファイバに複数のコアが形成されたマルチコアファイバが提案されている。
【0003】
マルチコアファイバを伝送路として用いた場合、このマルチコアファイバの各コアは、他のマルチコアファイバの対応するコアや、それぞれ別のシングルコアファイバや受発光素子等と接続されて伝送信号を送受する必要がある。マルチコアファイバとシングルコアファイバとを接続する方法としてマルチコアファイバのコアに対応する位置にシングルコアの光ファイバが配列されたバンドルファイバをキャピラリに挿入してマルチコアファイバと接続する方法が提案されている(特許文献1)。
【0004】
また、キャピラリを溶融延伸(一次延伸)し、ある程度細径化した複数本の光ファイバを一次延伸したキャピラリに挿入し、さらに溶融延伸(二次延伸)してキャピラリと光ファイバを溶融且つ細径化する製造方法が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開公報2012/121320
【特許文献2】国際公開公報2022/130974
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光ファイババンドル構造とマルチコアファイバとを低損失で接続し、且つ信頼性向上を図るためには、細径キャピラリを使用した光ファイババンドル構造の安定製造が不可欠である。また、通常、マルチコアファイバのコアピッチは40μm前後で設計可能であり、高密度化の観点でコアピッチを大きくすることは得策ではない。従って接続される光ファイババンドル構造を構成する光ファイバに対しても、外径を40μm程度の細径化が必要になってくる。
【0007】
さらにマルチコアファイバは後工程での取扱い性を考慮すると、既に市場にある標準ファイバの外径である125μmにすることが望まれる。このため、光ファイババンドル構造の外径も、できるだけマルチコアファイバの外径である125μmに合わせるのが接続部の信頼性向上の観点やコスト面で好ましい。
【0008】
ここで、例えば4つのコアを持つ外径125μmのマルチコアファイバに対して、光ファイババンドル構造を接続する場合、外径125μmの細径キャピラリに外径40μm前後の細径光ファイバを4本挿入し、光ファイバ端面の鏡面化が望まれる。しかし、上記要件を満たすには、細径キャピラリの肉厚は20μm程度の厚さとなる。この様なキャピラリを用いて複数本の細径光ファイバの端面を研磨すると、キャピラリや光ファイバのかけが発生してしまい安定して鏡面化された光ファイバの端面を得ることが困難である。
【0009】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、細径の光ファイバを用いた光ファイババンドル構造であっても、キャピラリや光ファイバの欠け等を抑制して端面研磨を行うことが可能な光ファイババンドル構造の製造方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、複数のシングルコアの光ファイバ心線が集合した光ファイババンドル構造の製造方法であって、複数の前記光ファイバ心線を細径キャピラリに挿入して固定する工程と、前記細径キャピラリの外周に、太径キャピラリを固定する工程と、前記太径キャピラリ、前記細径キャピラリ及び前記光ファイバ心線の端面を研磨する工程と、前記太径キャピラリを前記細径キャピラリから除去する工程と、を具備することを特徴とする光ファイババンドル構造の製造方法である。
【0011】
また、複数のシングルコアの光ファイバ心線が集合した光ファイババンドル構造の製造方法であって、細径キャピラリと、前記細径キャピラリの外周に固定される太径キャピラリとを有する2層構造のキャピラリに複数の前記光ファイバ心線を挿入して固定する工程と、前記太径キャピラリ、前記細径キャピラリ及び前記光ファイバ心線の端面を研磨する工程と、前記太径キャピラリを前記細径キャピラリから除去する工程と、を具備することを特徴とする光ファイババンドル構造の製造方法であってもよい。
【0012】
前記太径キャピラリの周方向の一部に、全長にわたってスリットが形成されていてもよい。
【0013】
前記太径キャピラリが周方向に複数に分割されていてもよい。
【0014】
前記太径キャピラリは、前記細径キャピラリの外周に溶融した樹脂を配置して固化することで形成されてもよい。
【0015】
前記樹脂は熱可塑性樹脂であり、カップリング剤を含まないことが望ましい。
【0016】
前記太径キャピラリは、インサート成形によって形成されてもよい。
【0017】
第1の発明によれば、細径キャピラリの外周部に太径キャピラリを固定して、太径キャピラリを固定した状態で研磨を行うため、安定して研磨を行うことができる。このため、研磨時の細径キャピラリや光ファイバの欠け等の発生を抑制することができる。また、研磨後は太径キャピラリを取り外すことで、その後のマルチコアファイバとの接続時には、細径キャピラリの外径とマルチコアファイバの外径とを合わせることができる。
【0018】
また、太径キャピラリにスリットを形成することで、研磨後の太径キャピラリの取り外し作業が容易となる。
【0019】
同様に、太径キャピラリを周方向に分割して、当該分割体を組み合わせることでキャピラリを構成することで、研磨後の太径キャピラリの取り外し作業が容易となる。
【0020】
また、太径キャピラリを、細径キャピラリの外周に溶融した樹脂を配置して固化することで形成することで、細径キャピラリの外周に容易に太径キャピラリを形成することができる。
【0021】
この際、樹脂が熱可塑性樹脂であれば、加熱によって容易に融解して太径キャピラリを細径キャピラリの外周から除去することができる。この際、樹脂にカップリング剤が含まれていなければ、細径キャピラリに対して高い離型性を確保することができるため、除去作業が容易となる。
【0022】
このような太径キャピラリは、細径キャピラリを金型内に配置してインサート成形を行うことで容易に成形することができる。
【0023】
第2の発明は、第1の発明にかかる光ファイババンドル構造の製造方法によって製造された光ファイババンドル構造とマルチコアファイバの接続方法であって、前記マルチコアファイバは、クラッドに複数のコアが配置されており、前記細径キャピラリの外径と、前記マルチコアファイバの外径が略同一であり、前記光ファイババンドル構造の前記光ファイバ心線と前記マルチコアファイバの前記コアを調心し、前記光ファイババンドル構造と前記マルチコアファイバの端面を突き合わせて接続することを特徴とする光ファイババンドル構造とマルチコアファイバの接続方法である。
【0024】
第2の発明によれば、細径キャピラリとマルチコアファイバの外径を略一致させて接続するため、接続の信頼性が高く、小型で軽量な接続構造を得ることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、細径の光ファイバを用いた光ファイババンドル構造であっても、キャピラリや光ファイバの欠け等を抑制して端面研磨を行うことが可能な光ファイババンドル構造の製造方法等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】光ファイバ心線1を示す概略図。
図2】(a)は、細径キャピラリ7に光ファイバ心線1を挿入した状態を示す断面図、(b)は細径キャピラリ7に光ファイバ心線1を接着剤9で固定した状態を示す断面図、(c)は細径キャピラリ7の外周に太径キャピラリ11を固定した状態を示す断面図。
図3】細径キャピラリ7に光ファイバ心線1を固定した状態を示す図。
図4】細径キャピラリ7に太径キャピラリ11を固定した状態を示す図。
図5】光ファイバ心線1の端面を研磨する工程を示す図。
図6】太径キャピラリ11が取り外された光ファイババンドル構造13を示す図。
図7】光ファイババンドル構造13とマルチコアファイバ17との光ファイバ接続構造15を示す図。
図8】(a)は図7のA-A線断面図、(b)は図7のB-B線断面図。
図9】(a)はスリット27が形成された太径キャピラリ11aを使用した状態を示す図、(b)は周方向に複数に分割された太径キャピラリ11bを使用した状態を示す図。
図10】(a)は細径キャピラリ7を金型31にセットした状態を示す図、(b)はインサート成形によって太径キャピラリ11cを形成した状態を示す図。
図11】細径キャピラリ7に太径キャピラリ11を固定した他の状態を示す図。
図12】太径キャピラリ11を除去してスリーブ33を固定した状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、光ファイババンドル構造の製造方法について説明する。図1は、本実施形態に使用される光ファイバの構造を示す概略図である。図1に示す光ファイバ心線1は、シングルコアのガラスファイバ5aの外周に被覆部3が形成されて構成される。
【0028】
光ファイバ心線1の先端部は所定長さの被覆部3が剥離されてガラスファイバ5aが露出する。また、光ファイバ心線1は、エッチングファイバであり、ケミカルエッチングによって、ガラスファイバ5aの先端部に細径部5bが形成される。例えばクラッド径125μmのガラスファイバ5aは、細径部5bにおいて40μmとなる。
【0029】
次に、複数の光ファイバ心線1が集合した光ファイババンドル構造の製造方法について説明する。まず、図2(a)に示すように、複数の光ファイバ心線1の細径部5bを細径キャピラリ7に挿入する。
【0030】
細径キャピラリ7の端面から光ファイバ心線の端面が少し出るまで光ファイバ心線1を細径キャピラリ7に挿入した状態で、次に、図2(b)に示すように、接着剤9によって光ファイバ心線1と細径キャピラリ7とを固定する。なお、光ファイバ心線1の先端を接着剤9に浸漬させることで、毛細管現象によって、光ファイバ心線1の間や光ファイバ心線1と細径キャピラリ7との間に接着剤9を導入することができる。その後、加熱乾燥することで、光ファイバ心線1と細径キャピラリ7とを接着固定することができる。なお、接着剤9の硬化方法は他の紫外線等によるものでものよい。
【0031】
図3は、光ファイバ心線1の先端(ガラスファイバ5a)に、細径キャピラリ7を固定した状態を示す軸方向断面図でさる。細径キャピラリ7は、例えばガラス製である。細径キャピラリ7の一端側は、細径部5bが挿通される部位の外径及び内径が小さく、細径キャピラリ7の他端側は、ガラスファイバ5aの定径部が挿通可能なように、内径及び外形が大きい。また、最小外径部と最大外径部との間は、テーパ状に徐々に径が変化する。
【0032】
細径部5bの外周の細径キャピラリ7の外径は、後述するマルチコアファイバの外径と略同一径であり、例えば外径は125μmである。また、細径部5bの外周の細径キャピラリ7の内径は、挿入される光ファイバ心線数に応じて設定され、40μm径の4本の細径部5bを挿入する場合には、例えば内径100μmである。
【0033】
なお、図示した例では、4本の光ファイバ心線1によるバンドル構造を示すが、光ファイバ心線1の本数は特に限定されない。また、細径キャピラリ7の形態は、少なくとも細径部5bを保持可能であれば、他の部位の形態は特に限定されない。
【0034】
次に、図2(c)、図4に示すように、細径キャピラリ7の外周に太径キャピラリ11を固定する。太径キャピラリ11は、例えばPMMAやABSなどの熱可塑性樹脂からなり、細径キャピラリ7との接着性や耐有機溶剤性を考慮すると、非結晶性の熱可塑性樹脂が好ましい。細径キャピラリ7と太径キャピラリ11との固定方法は特に限定されず、接着剤による固定であってもよく、熱可塑性樹脂の融着による固定であってもよい。
【0035】
太径キャピラリ11の外径は略一定で構成される。また、太径キャピラリ11の内径は、細径キャピラリ7の外径に対応する。例えば、図示した例では、太径キャピラリ11は、細径キャピラリ7の外径の変化と同様に、一端側の内径が小さく、他端側の内径が大きく、その中間部では、テーパ状に内径が変化する。
【0036】
なお、太径キャピラリ11の内径は、細径キャピラリ7を挿入可能であればよく、外径125μmの細径キャピラリ7を挿入する場合には、細径部5bに対応する部位の太径キャピラリ11の内径は例えば130μmである。また、太径キャピラリ11の外径は取り扱い性や研磨作業性を考慮して設定されるが、例えば1mmである。
【0037】
なお、太径キャピラリ11は、細径キャピラリ7の略全長にわたって、略同一長さに形成されることが望ましいが、少なくとも研磨端面側において、細径キャピラリ7と太径キャピラリ11との端面位置が揃っていれば、他端側は長さが多少ずれてもよい。
【0038】
次に、図5に示すように、太径キャピラリ11と細径キャピラリ7と光ファイバ心線1(細径部5b)の端面を一括して研磨して、光ファイバ心線1の端面を鏡面化する。
【0039】
次に、図6に示すように、細径キャピラリ7から太径キャピラリ11を除去する。なお、太径キャピラリ11を除去する方法としては、例えばアセトン等の有機溶剤によって太径キャピラリ11を溶解してもよく、加熱によって太径キャピラリ11を軟化させて除去してもよい。以上により、光ファイババンドル構造13を得ることができる。
【0040】
なお、太径キャピラリ11を熱可塑性樹脂で形成する場合において、熱可塑性樹脂にはカップリング剤が含まれないことが望ましい。このようにすることで、太径キャピラリ11(熱可塑性樹脂)と細径キャピラリ7の剥離性を高めることができる。また、細径キャピラリ7の外周面にプライマリ(カップリング剤)を使用しないことで、さらに剥離性を高めることができる。このため、太径キャピラリ11の除去作業が容易となる。
【0041】
なお、前述した実施形態では、細径キャピラリ7に光ファイバ心線1を挿入固定した後に、細径キャピラリ7の外周に太径キャピラリ11を固定したが、逆の手順であってもよい。例えば、まず、細径キャピラリ7の外周に太径キャピラリ11を形成して、細径キャピラリ7と、細径キャピラリ7の外周に固定される太径キャピラリ11とを有する2層構造のキャピラリを形成する。次に、この2層構造のキャピラリに複数の光ファイバ心線1を挿入して固定してもよい。この場合でも、その後同様の手順で研磨及び太径キャピラリ11の除去によって光ファイババンドル構造13を得ることができる。
【0042】
次に、上述した光ファイババンドル構造の製造方法によって製造された光ファイババンドル構造13とマルチコアファイバの接続方法について説明する。図7は、光ファイババンドル構造13とマルチコアファイバ17とが接続された光ファイバ接続構造15を示す図である。また、図8(a)は、図7のA-A線断面図であり、図8(b)は、図7のB-B線断面図である。
【0043】
図8(a)に示すように、マルチコアファイバ17は、クラッド19に複数のコア21が等間隔に配置される。なお、図示した例では、4心の光ファイババンドル構造13と接続されるマルチコアファイバ17を示すが、コア21の配置や個数は図示した例には限られない。
【0044】
また、図8(b)に示すように、光ファイババンドル構造13は、複数の光ファイバ心線1が細径キャピラリ7に挿入されて接着剤9によって固定される。なお、光ファイバ心線1は、クラッド23の中心に一つのコア25が配置されるシングルコアの光ファイバである。
【0045】
まず、光ファイババンドル構造13とマルチコアファイバ17とを対向して配置し、光ファイババンドル構造13の光ファイバ心線1のコア25とマルチコアファイバ17のコア21を調心する。次に、図7に示すように、光ファイババンドル構造13とマルチコアファイバ17の端面を突き合わせて、例えば光学接着剤などで接続することで、光ファイバ接続構造15を得ることができる。なお、前述したように、細径キャピラリ7の外径と、マルチコアファイバ17の外径は略同一であるため、接続時に高い信頼性で接続を行うことができる。また、細径キャピラリ7の外径が大きくないため、接続部の小型化や軽量化を達成することができる。
【0046】
以上、本実施の形態によれば、光ファイバ心線1の端面を研磨する際に、太径キャピラリ11を用いることで、研磨時の細径キャピラリ7や光ファイバ心線1の破損を抑制することができる。一方、マルチコアファイバ17と接続する際には、太径キャピラリ11を除去して細径キャピラリ7と接続することで、マルチコアファイバ17と同一径の光ファイババンドル構造13と接続を行うことができる。
【0047】
この際、太径キャピラリ11を熱可塑性樹脂等の樹脂で構成することで、ガラス製の細径キャピラリ7に対して容易に除去することができる。また、熱可塑性樹脂がカップリング剤を含まないようにすることで、細径キャピラリ7に対して剥離性を高めることができるため、さらに容易に太径キャピラリ11を除去することができる
【0048】
次に、第2の実施形態について説明する。図9(a)は、第2の実施形態にかかる光ファイババンドル構造の断面図である。なお、以下の説明において、第1の実施形態と同一の機能を発揮する構成については、図1図8と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0049】
第2の実施形態は、第1の実施形態と略同様であるが、太径キャピラリ11aが用いられる点で異なる。太径キャピラリ11aは、太径キャピラリ11の周方向の一部に、全長にわたってスリット27が形成されたものである。すなわち、太径キャピラリ11aは、周方向に連続せずに、一部に切れ目が存在する。
【0050】
このように、太径キャピラリ11aの一部にスリット27を設けることで、スリット27を基点として、太径キャピラリ11aの除去作業が容易となる。なお、スリット27には、隙間が形成されていてもよく、端面同士の一部が接触していてもよい。
【0051】
また、図9(b)に示すように、太径キャピラリ11bを用いてもよい。太径キャピラリ11bは、複数の分割部29によって周方向に複数に分割されている。例えば、図示したように、半割り状の一対の部材を対向させて組み合わせることで、全体として略筒状の太径キャピラリ11bが形成される。
【0052】
このように、太径キャピラリ11bを周方向に分割することで、分割部29を基点として、太径キャピラリ11bの除去作業が容易となる。なお、周方向への分割は、2分割には限られず、例えば3分割や4分割など複数に分割されればよい。
【0053】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、太径キャピラリの一部に、除去する際の基点となるスリット27や分割部29を設けることで、研磨後の太径キャピラリ除去作業が容易となる。
【0054】
次に、第3の実施形態について説明する。図10は、第3の実施形態にかかる光ファイババンドル構造の製造方法を示す図である。本実施形態では、まず、図10(a)に示すように、金型31の内部に細径キャピラリ7を配置する。この状態で、図10(b)に示すように、細径キャピラリ7の外周に、溶融した樹脂を注入して固化させる。すなわち、本実施形態の太径キャピラリ11cは、細径キャピラリ7の外周に溶融した樹脂を配置して固化することで形成される。
【0055】
このように、太径キャピラリ11cをインサート成形によって形成してもよい。なお、上述した実施形態では、細径キャピラリ7の外周に太径キャピラリ11cを形成後、光ファイバ心線1の挿入固定及び研磨を行う例を示すが、細径キャピラリ7に光ファイバ心線1を固定した後に、太径キャピラリ11cをインサート成形してもよい。
【0056】
第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、太径キャピラリ11cをインサート成形によって形成することで、容易に太径キャピラリ11cを細径キャピラリ7の外周に形成することができる。
【0057】
なお、第1の実施形態、第2の実施形態においても、予め成形された太径キャピラリ11、11a、11bを用いるのではなく、細径キャピラリ7の外周に溶融した樹脂を配置して固化することで形成してもよい。
【0058】
また、上述した各実施形態では、太径キャピラリの断面形状は円形である例を示したが、太径キャピラリの断面形状は図示したような円形でなくてもよい。例えば、太径キャピラリを多角形にするなど、太径キャピラリの外周面の少なくとも一部に平坦面を形成することで、太径キャピラリ11を治具等で取り扱う際の作業が容易となる。
【0059】
また、太径キャピラリは、全長にわたって、長手方向に同一の形態でなくてもよい。例えば、一端側の外径を、他端の外径よりも大きくなるように、側面視において太径キャピラリの外周面に段差を形成してもよい。このように、太径キャピラリの長手方向に対して、外径を変化させて段差を形成することで、段差を基点として、太径キャピラリの除去作業が容易となる。
【0060】
また、前述した例では、細径キャピラリ7の内径及び外径が変化する例を示したが、図11に示すように、細径キャピラリ7aを用いてもよい。細径キャピラリ7aは、内径及び外径が略一定であり、細径部5bのみが挿通される。
【0061】
この場合には、細径キャピラリ7aの外主には、細径キャピラリ7aよりも長い太径キャピラリ11dが用いられる。例えば、太径キャピラリ11dの一端側は細径キャピラリ7aが配置され、太径キャピラリ11dの他端側には、ガラスファイバ5aの定径部の一部が配置される。なお、太径キャピラリ11dの内径は、一定であってもよく、又はテーパ状に変化させてもよい。また、細径キャピラリ7aの配置部と、ガラスファイバ5aの配置部とで、内径を段差を介して変えてもよい。
【0062】
また、太径キャピラリ11dを用いて、研磨を行い、研磨後に太径キャピラリ11dを除去した後は、図12に示すように、細径キャピラリ7aから露出するガラスファイバ5aの少なくとも一部を覆うように、スリーブ33を配置してもよい。スリーブ33は筒状部材であり、細径部5bから定径部の範囲における光ファイバ心線1を覆い、補強するための部材である。スリーブ33としては、例えば、光ファイバ心線同士の融着接続部に用いられるような、熱収縮チューブの内部に熱可塑性樹脂と抗張力体が挿入された補強スリーブなどを適用することができる。
【0063】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0064】
1………光ファイバ心線
3………被覆部5………光ファイバ心線
5a………ガラスファイバ
5b………細径部
7、7a………細径キャピラリ
9………接着剤
11、11a、11b、11c、11d………太径キャピラリ
13………光ファイババンドル構造
15………光ファイバ接続構造
17………マルチコアファイバ
19、23………クラッド
21、25………コア
27………スリット
29………分割部
31………金型
33………スリーブ
図1
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