(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131222
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】感熱記録媒体、感熱記録媒体の製造方法及び物品
(51)【国際特許分類】
B41M 5/41 20060101AFI20240920BHJP
B41M 5/40 20060101ALI20240920BHJP
B41M 5/42 20060101ALI20240920BHJP
B41M 5/333 20060101ALI20240920BHJP
B41M 5/337 20060101ALI20240920BHJP
D21H 21/14 20060101ALI20240920BHJP
G09F 3/10 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B41M5/41 200
B41M5/40 220
B41M5/42 221
B41M5/333 220
B41M5/337 212
D21H21/14 Z
G09F3/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041348
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 暁
(72)【発明者】
【氏名】北野 亨
【テーマコード(参考)】
2H026
4L055
【Fターム(参考)】
2H026AA07
2H026BB02
2H026BB24
2H026DD02
2H026DD48
2H026DD58
2H026EE03
2H026FF11
2H026FF17
2H026FF29
4L055AG52
4L055AG58
4L055AG59
4L055AG63
4L055AG64
4L055AG71
4L055AG74
4L055AG76
4L055AG85
4L055AG89
4L055AJ01
4L055EA10
4L055FA11
4L055GA12
(57)【要約】
【課題】発色ムラを抑制できる感熱記録媒体を提供する。
【解決手段】本発明の感熱記録媒体は、粘着剤層と、紙支持体と、感熱記録層とを、この順に積層して備える感熱記録媒体であって、前記粘着剤層は、前記紙支持体の一部に設けられ、前記紙支持体は、JIS P 8122に準拠するステキヒトサイズ度が17秒以上である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤層と、紙支持体と、感熱記録層とを、この順に積層して備える感熱記録媒体であって、
前記粘着剤層は、前記紙支持体の一部に設けられ、
前記紙支持体は、JIS P 8122に準拠するステキヒトサイズ度が17秒以上である感熱記録媒体。
【請求項2】
前記紙支持体と前記粘着剤層の間に裏面バリア層を有し、
前記紙支持体の、前記裏面バリア層を有する面において、JAPAN TAPPI No.51に準拠したブリストー法により測定された、表面張力が38mN/mの液体の吸収係数が1.0ml/m2・s1/2以下である請求項1に記載の感熱記録媒体。
【請求項3】
前記裏面バリア層が、アクリル酸エステル共重合体、スチレン/ブタジエン/アクリル系共重合体、スチレン/アクリル酸エステル共重合体、天然ゴム系樹脂、スチレン/ブタジエン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン共重合体、ポリクロロプレン、エチレン/酢酸ビニル、ポリオレフィン系樹脂及びポリウレタン系樹脂から選択される少なくとも1種の樹脂を含有する請求項2に記載の感熱記録媒体。
【請求項4】
最表層に離型層を有する請求項1に記載の感熱記録媒体。
【請求項5】
前記粘着剤層は、アクリル系エマルジョンを含み、最小粒径で直径10μm以上の微球を含まない請求項1に記載の感熱記録媒体。
【請求項6】
前記感熱記録層は、下記式(I)で表される化合物を、非フェノール系顕色剤として少なくとも1種含有する請求項1に記載の感熱記録媒体。
【化1】
(式中、Xは、CH
2、NH又はOを表し、R
1~R
3は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、直鎖、炭素数が1個~6個のアルキル基、炭素数が1個~6個のアルキルカルボニル基、炭素数が1個~6個のアルコキシル基、炭素数が2個~6個のアルケニル基、炭素数が1個~6個のフルオロアルキル基、N(R
4)2基(R
4は、水素原子、フェニル基、ベンジル基、又は炭素数が1個~6個のアルキル基を表す)、NHCOR
5基(R
5は、炭素数が1個~6個のアルキル基を表す)、置換されていてもよいフェニル基、又は置換されていてもよいベンジル基を表し、n1~n3は、それぞれ独立して、1~5の何れかの整数を表す。)
【請求項7】
前記感熱記録層が、増感剤として少なくとも脂肪酸アミドを含有し、かつ前記増感剤における前記脂肪酸アミドの含有量が60質量%以上である請求項1に記載の感熱記録媒体。
【請求項8】
前記粘着剤層が設けられた粘着剤塗布領域の面積比率が、45%以下である請求項1に記載の感熱記録媒体。
【請求項9】
紙支持体の一方の面側に感熱記録層を設ける工程と、
粘着剤層を前記紙支持体の前記感熱記録層側とは異なる面側の一部に設ける工程と、
を含み、
前記紙支持体は、JIS P 8122に準拠するステキヒトサイズ度が17秒以上である感熱記録媒体の製造方法。
【請求項10】
請求項1に記載の感熱記録媒体を有する物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱記録媒体、感熱記録媒体の製造方法及び物品に関する。
【背景技術】
【0002】
感熱記録媒体は、無色又は淡色のロイコ染料と、フェノール類又は有機酸との加熱発色反応を利用し、加熱するだけで発色画像を形成できるため、現像及び定着等の処理を行うことなく、比較的簡単な装置を用いて短時間で発色画像を形成できる上、画像形成に要する費用が抑えられるという利点を有している。そのため、感熱記録媒体は、例えば、生鮮食料品、弁当、惣菜用等のPOS分野、図書、文書等の複写分野;ファクシミリ等の通信分野、券売機、レシート、領収書等の発券分野、航空機業界のバッゲージ用タグ等における各種情報記録材料として広く使用されている。
【0003】
このような感熱記録媒体として、例えば、支持体の一方の面に離型層を有し、支持体の他方の面に裏面バリア層を介して粘着層を設けたライナーレスラベルが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、ロール状に巻かれたライナーレスラベルにおいては、粘着剤に含まれる成分が離型層及び紙支持体を通過して感熱記録層へ移行し、発色感度を低下させる場合がある。特に、粘着剤を部分的に塗工したライナーレスラベルの場合、粘着剤が塗工された領域と粘着剤が塗工されていない領域で粘着剤に含まれる成分の移行度合いに差が生じ、印字した際には発色ムラが発生し易くなる、という問題があった。
【0005】
特許文献1のライナーレスラベルのように、支持体と粘着層との間に裏面バリア層を設けても、サイズが小さい紙支持体を使用すると、塗工時にバリア層自体が紙支持体に浸透してしまい、粘着層に含まれる成分の移行の抑制効果が十分に発揮されず、発色ムラが発生する可能性がある、という問題があった。
【0006】
本発明の一態様は、発色ムラを抑制できる感熱記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、
粘着剤層と、紙支持体と、感熱記録層とを、この順に積層して備える感熱記録媒体であって、
前記粘着剤層は、前記紙支持体の一部に設けられ、
前記紙支持体は、JIS P 8122に準拠するステキヒトサイズ度が17秒以上である感熱記録媒体である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様は、発色ムラを抑制できる感熱記録媒体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係る感熱記録媒体の一例を示す断面図である。
【
図2】粘着剤層の粘着剤塗布領域の一例を示す図である。
【
図3】粘着剤層の粘着剤塗布領域の他の一例を示す図である。
【
図4】粘着剤層の粘着剤塗布領域の他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の符号を付して、重複する説明は省略する。また、図面における各部材の縮尺は実際とは異なる場合がある。本明細書において数値範囲を示す「~」は、別段の断わりがない限り、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0011】
<感熱記録媒体>
一実施形態に係る感熱記録媒体について説明する。一実施形態に係る感熱記録媒体は、支持体と、支持体の一方の面上に、感熱記録層を有し、支持体の他方の面上の一部に粘着剤層を有し、粘着剤層、紙支持体及び感熱記録層を、粘着剤層側からこの順に積層して備える。一実施形態に係る感熱記録媒体は、支持体の一方の面及び他方の面の上にさらに必要に応じて、その他の層を有してよい。
【0012】
図1は、一実施形態に係る感熱記録媒体の一例を示す断面図である。
図1に示すように、感熱記録媒体1は、紙支持体11と、紙支持体11の一方の面(
図1中、上面)側に感熱記録層12を有し、紙支持体11の他方の面(
図1中、下面)側の一部に粘着剤層13を有し、被着体2に貼り付けられる。感熱記録媒体1は、紙支持体11の一方の面側に、アンダーコート層(保温層)14、保護層(バリア層)15及び離型層(剥離層)16を有し、紙支持体11の他方の面側に裏面バリア層17を有してよい。アンダーコート層14は、紙支持体11と感熱記録層12との間に設けられ、保護層15及び離型層16は、感熱記録層12のアンダーコート層14とは反対側の面(
図1中、上面)側に設けられてよい。裏面バリア層17は、紙支持体11と粘着剤層13との間に設けられてよい。
【0013】
即ち、感熱記録媒体1は、紙支持体11、感熱記録層12、粘着剤層13、アンダーコート層14、保護層15、離型層16及び裏面バリア層17を、粘着剤層13、裏面バリア層17、紙支持体11、アンダーコート層14、感熱記録層12、保護層15及び離型層16の順に積層して備えてよい。
【0014】
[紙支持体]
紙支持体11としては、その形状、構造、大きさ、色調、材質等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。形状は、例えば、平板状及びシート状等としてよい。構造は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。大きさは、感熱記録媒体1の大きさ等に応じて適宜選択できる。
【0015】
紙支持体11の材質としては、例えば、上質紙、アート紙、コート紙、合成紙等の紙を用いることができる。紙支持体11は、上記の紙を含んでいれば、目的に応じて適宜、無機材料、紙以外の有機材料等を含んでよい。
【0016】
紙支持体11は、JIS P 8122に準拠するステキヒトサイズ度が17秒以上である。紙支持体11のステキヒトサイズ度が17秒より小さいと、紙支持体11の他方の面に裏面バリア層17の形成に用いられる裏面バリア層塗布液の塗工時に裏面バリア層塗布液が紙支持体11に浸透し、粘着剤層13に含まれる粘着剤成分が紙支持体11を通過して感熱記録層12側へ移行する。
【0017】
紙支持体11の平均厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20μm~2000μmが好ましく、40μm~1000μmがより好ましい。
【0018】
[感熱記録層]
感熱記録層12は、ロイコ染料、顕色剤及びバインダー樹脂を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
【0019】
(ロイコ染料)
ロイコ染料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリフェニルメタン系、フルオラン系、フェノチアジン系、オーラミン系、スピロピラン系、インドリノフタリド系等の染料のロイコ化合物等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
ロイコ化合物としては、例えば、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-フタリド、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド(別名クリスタルバイオレットラクトン)、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-ジエチルアミノフタリド、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-クロルフタリド、3,3-ビス(p-ジブチルアミノフェニル)フタリド、3-シクロヘキシルアミノ-6-クロルフルオラン、3-ジメチルアミノ-5,7-ジメチルフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-クロロフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-メチルフルオラン、3-ジエチルアミノ-7,8-ベンズフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-クロルフルオラン、3-(N-p-トリル-N-エチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、2-{N-(3'-トリフルオルメチルフェニル)アミノ}-6-ジエチルアミノフルオラン、2-{3,6-ビス(ジエチルアミノ)-9-(o-クロルアニリノ)キサンチル安息香酸ラクタム}、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(m-トリクロロメチルアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(o-クロルアニリノ)フルオラン、3-ピロリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジ-n-ブチルアミノ-7-o-クロルアニリノ)フルオラン、3-N-メチル-N,n-アミルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-メチル-N-シクロヘキシルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-5-メチル-7-(N,N-ジベンジルアミノ)フルオラン、ベンゾイルロイコメチレンブルー、6'-クロロ-8'-メトキシ-ベンゾインドリノ-スピロピラン、6'-ブロモ-3'-メトキシ-ベンゾインドリノ-スピロピラン、3-(2'-ヒドロキシ-4'-ジメチルアミノフェニル)-3-(2'-メトキシ-5'クロルフェニル)フタリド、3-(2'-ヒドロキシ-4'-ジメチルアミノフェニル)-3-(2'-メトキシ-5'-ニトロフェニル)フタリド、3-(2'-ヒドロキシ-4'-ジエチルアミノフェニル)-3-(2'-メトキシ-5'-メチルフェニル)フタリド、3-(2'-メトキシ-4'-ジメチルアミノフェニル)-3-(2'-ヒドロキシ-4'-クロル-5'-メチルフェニル)フタリド、3-(N-エチル-N-テトラヒドロフルフリル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-エチル-N-(2-エトキシプロピル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-メチル-N-イソブチル-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-モルホリノ-7-(N-プロピル-トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3-ピロリジノ-7-トリフルオロメチルアニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-5-クロロ-7-(N-ベンジル-トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3-ピロリジノ-7-(ジ-p-クロルフェニル)メチルアミノフルオラン、3-ジエチルアミノ-5-クロル-7-(α-フェニルエチルアミノ)フルオラン、3-(N-エチル-p-トルイジノ)-7-(α-フェニルエチルアミノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(o-メトキシカルボニルフェニルアミノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-5-メチル-7-(α-フェニルエチルアミノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-ピペリジノフルオラン、2-クロロ-3-(N-メチルトルイジノ)-7-(p-n-ブチルアニリノ)フルオラン、3-ジ-n-ブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3,6-ビス(ジメチルアミノ)フルオレンスピロ(9,3')-6'-ジメチルアミノフタリド、3-(N-ベンジル-N-シクロヘキシルアミノ)-5,6-ベンゾ-7-α-ナフチルアミノ-4'-プロモフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-クロル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-メシチジノ-4',5'-ベンゾフルオラン、3-N-メチル-N-イソプロピル-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-エチル-N-イソアミル-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(2',4'-ジメチルアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-5-クロル-(α-フェニルエチルアミノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-ピベリジノフルオラン、3-(N-ベンジル-N-シクロヘキシルアミノ)-5,6-ベンゾ-7-α-ナフチルアミノ-4'-ブロモフルオラン、3-N-エチル-N-テトラヒドロフルフリルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-p-ジメチルアミノフェニル)-3-{1,1-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)エチレン-2-イル}フタリド、3-(p-ジメチルアミノフェニル)-3-{1,1-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)エチレン-2-イル}-6-ジメチルアミノフタリド、3-(p-ジメチルアミノフェニル)-3-(1-p-ジメチルアミノフェニル-1-フェニルエチレン-2-イル)フタリド、3-(p-ジメチルアミノフェニル)-3-(1-p-ジメチルアミノフェニル-1-p-クロロフェニルエチレン-2-イル)-6-ジメチルアミノフタリド、3-(4'-ジメチルアミノ-2'-メトキシ)-3-(1''-p-ジメチルアミノフェニル-1''-p-クロロフェニル-1'',3''-ブタジエン-4''-イル)ベンゾフタリド、3-(4'-ジメチルアミノ-2'-ベンジルオキシ)-3-(1''-p-ジメチルアミノフェニル-1''-フェニル-1'',3''-ブタジエン-4''-イル)ベンゾフタリド、3-ジメチルアミノ-6-ジメチルアミノ-フルオレン-9-スピロ-3'-(6'-ジメチルアミノ)フタリド、3,3-ビス(2-(p-ジメチルアミノフェニル)-2-p-メトキシフェニル)エテニル)-4,5,6,7-テトラクロロフタリド、3-ビス{1,1-ビス(4-ピロリジノフェニル)エチレン-2-イル}-5,6-ジクロロ-4,7-ジプロモフタリド、ビス(p-ジメチルアミノスチリル)-1-ナフタレンスルホニルメタン、ビス(p-ジメチルアミノスチリル)-1-p-トリルスルホニルメタン等が挙げられる。
【0021】
ロイコ染料の50%累積体積粒径(D50)としては、0.1μm~0.5μmが好ましく、0.1μm~0.4μmがより好ましい。
【0022】
ロイコ染料の50%累積体積粒径(D50)を測定する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(装置名:LA-920、株式会社堀場製作所製)等が挙げられる。
【0023】
ロイコ染料の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、感熱記録層全量100質量部に対し、5質量部~40質量部が好ましく、10質量部~30質量部がより好ましい。
【0024】
(顕色剤)
顕色剤としては、前記ロイコ染料が加熱時に反応して発色させるための種々の電子受容性物質を適用することができる。顕色剤は、フェノール系顕色剤でもよいし、非フェノール系顕色剤でもよい。非フェノール系とは、フェノール骨格を有しないことを意味する。感熱記録媒体1は、非フェノール系顕色剤を含有することで、内分泌攪乱物質に該当する可能性があるフェノール系顕色剤を含有する必要がないため、環境への影響の点で優れる。
【0025】
非フェノール系顕色剤は、以下の式(I)で表される化合物を少なくとも1種含有することが好ましい。
【0026】
【化1】
(式中、Xは、CH
2、NH又はOを表し、R
1~R
3は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、直鎖、炭素数が1個~6個のアルキル基、炭素数が1個~6個のアルキルカルボニル基、炭素数が1個~6個のアルコキシル基、炭素数が2個~6個のアルケニル基、炭素数が1個~6個のフルオロアルキル基、N(R
4)2基(R
4は、水素原子、フェニル基、ベンジル基、又は炭素数が1個~6個のアルキル基を表す)、NHCOR
5基(R
5は、炭素数が1個~6個のアルキル基を表す)、置換されていてもよいフェニル基、又は置換されていてもよいベンジル基を表し、n1~n3は、それぞれ独立して、1~5の何れかの整数を表す。)
【0027】
顕色剤としては、例えば、没食子酸、サリチル酸、3-イソプロピルサリチル酸、3-シクロへキシルサリチル酸、3,5-ジ-tert-ブチルサリチル酸、3,5-ジ-α-メチルベンジルサリチル酸、4,4'-イソプロピリデンジフェノール、1,1'-イノプロピリデンビス(2-クロロフェノール)、4,4'-イソプロピリデンビス(2,6-ジブロモフェノール)、4,4'-イソプロピリデンビス(2,6-ジクロロフェノール)、4,4'-イソプロピリデンビス(2-メチルフェノール)、4,4'-イソプロピリデンビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4-イソプロピリデンビス(2-tert-ブチルフェノール)、4,4'-sec-ブチリデンジフェノール、4,4'-シクロへキシリデンビスフェノール、4,4'-シクロへキシリデンビス(2-メチルフェノール)、4-tert-ブチルフェノール、4-フェニルフェノール、4-ヒドロキシジフェノキシド、α-ナフトール、β-ナフトール、3,5-キシレノール、チモール、メチル-4-ヒドロキシベンゾエート、4-ヒドロキシアセトフェノン、ノボラック型フェノール樹脂、2,2'-チオビス(4,6-ジクロロフェノール)、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、ピロガロール、フロログリシン、フロログリシンカルボン酸、4-tert-オクチルカテコール、2,2'-メチルンビス(4-クロロフェノール)、2,2'-メチルンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2,-ジヒドロキシジフェニル、2,4'-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4'-[オキシビス(エチレンオキシ-P-フェニレンスルホニル)]ジフェノール、p-ヒドロキシ安息香酸エチル、p-ヒドロキシ安息香酸プロピル、p-ヒドロキシ安息香酸ブチル、p-ヒドロキシ安息香酸ベンジル、p-ヒドロキシ安息香酸-p-クロロベンジル、p-ヒドロキシ安息香酸-o-クロロベンジル、p-ヒドロキシ安息香酸-p-メチルベンジル、p-ヒドロキシ安息香酸-n-オクチル、安息香酸、サリチル酸亜鉛、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸、2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸亜鉛、4-ヒドロキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4'-クロロジフェニルスルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、2-ヒドロキシ-p-トルイル酸、3,5-ジ-tert-ブチルサリチル酸亜鉛、3,5-ジ-tert-ブチルサリチル酸スズ、酒石酸、シュウ酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、ステアリン酸、4-ヒドロキシフタル酸、ホウ酸、チオ尿素誘導体、4-ヒドロキシチオフェノール誘導体、ビス(4-ヒドロキシフェニル)酢酸、ビス(4-ヒドロキシフェニル)酢酸エチル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)酢酸n-プロピル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)酢酸m-ブチル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)酢酸フェニル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)酢酸ベンジル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)酢酸フェネチル、ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)酢酸、ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)酢酸メチル、ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)酢酸n-プロピル、1,7-ビス(4-ヒドロキシフェニルチオ)3,5-ジオキサへプタン、1,5-ビス(4-ヒドロキシフェニルチオ)3-オキサヘプタン、4-ヒドロキシフタル酸ジメチル、4-ヒドロキシ-4'-メトキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4'-エトキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4'-イソプロポキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4'-プロポキシジフェニルスルホン、4,4'-ビス(3-(フェノキシカルボニルアミノ)メチルフェニルウレイド)ジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4'-ブトキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4'-イソブトキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4-ブトキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4'-tert-ブトキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4'-ベンジロキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4'-フェノキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4'-(m-メチルベンジロキシ)ジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4'-(p-メチルベンジロキシ)ジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4'-(O-メチルベンジロキシ)ジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4'-(p-クロロベンジロキシ)ジフェニルスルホン、N-[2-(3-フェニルウレイド)フェニル]ベンゼンスルホンアミド、4-メチル-N-[[[3-[[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ]フェニル]アミノ]カルボニル]ベンゼンスルホンアミド、N-[2-[[(フェニルアミノ)カルボニル]アミノ]フェニル]ベンゼンスルホンアミド、N-3-[(p-トルエンスルホニル)オキシ]フェニル-N'-(p-トルエンスルホニル)-尿素等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
顕色剤の50%累積体積粒径(D50)としては、0.1μm~0.5μmが好ましく、0.1μm~0.4μmがより好ましい。
【0029】
顕色剤の50%累積体積粒径(D50)を測定する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(装置名:LA-920、株式会社堀場製作所製)等が挙げられる。
【0030】
顕色剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ロイコ染料1質量部に対して、0.05質量部~10質量部が好ましく、1質量部~5質量部がより好ましい。
【0031】
(増感剤)
増感剤としては、脂肪酸アミドを含有し、必要に応じて脂肪酸アミド以外の増感剤を含有できる。感熱記録層12中に増感剤を含有することで、非フェノール系顕色剤の発色感度を向上させることができる。特に、増感剤として脂肪酸アミドを用いることで、非フェノール系顕色剤の発色感度をより向上させることができ、また、感熱記録媒体1が粘着剤層13を有する場合には、粘着剤層13中の粘着剤成分による増感剤の発色感度の向上作用の低下を抑制できる。
【0032】
脂肪酸アミドとしては、例えば、脂肪酸モノアミド、脂肪酸ビスアミド等が挙げられる。これらの中でも、優れた発色感度を有する感熱記録媒体を実現できる点から、脂肪酸モノアミドが好ましい。
【0033】
脂肪酸モノアミドとしては、例えば、ステアリン酸アミド、パルチミン酸アミド、アラキジン酸アミド、ベヘン酸アミド、N-ベンゾイルステアリン酸アミド、N-メチロールステアリン酸アミド、ラウリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、N,N'-ジステアリルアジピン酸アミドなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0034】
脂肪酸ビスアミドとしては、例えば、エチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミドなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0035】
感熱記録層12が、増感剤として少なくとも上記の脂肪酸アミドを含有する際、増感剤における脂肪酸アミドの含有量は、60質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることがさらに好ましい。前記含有量が60質量%以上であると、優れた発色感度を有する感熱記録媒体を実現することができ、また、経時保管後であっても優れた発色感度を有する感熱記録媒体を実現することができる。
【0036】
感熱記録層における脂肪酸アミドの含有量としては、0.1質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。前記含有量が0.1質量%以上であると、優れた発色感度を有する感熱記録媒体を実現することができ、また、経時保管後であっても優れた発色感度を有する感熱記録媒体を実現することができる。
【0037】
-脂肪酸アミド以外の増感剤-
脂肪酸アミド以外の増感剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジフェニルスルホン、ジュウ酸ジ(p-メチルベンジル)エステル、1,2-ビス(3-メチルフェノキシ)エタン、1,2-ジフェノキシエタン、2-ベンジルオキシナフタレンなどが挙げられる。
【0038】
増感剤における脂肪酸アミド以外の増感剤の含有量は、40質量%未満であり、20質量%未満が好ましい。前記含有量が40質量%未満であると、優れた発色感度を有する感熱記録媒体を実現することができ、また、経時保管後であっても優れた発色感度を有する感熱記録媒体を実現することができる。
【0039】
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリビニルアルコール樹脂、澱粉又はその誘導体;ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体;ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド-アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド-アクリル酸エステル-メタクリル酸三元共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、イソブチレン-無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、ポリアクリルアミド、アルギン酸ソーダ、ゼラチン、カゼイン等の水溶性高分子;ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリブチルメタクリレート、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のエマルション、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-ブタジエン-アクリル共重合体等のラテックス、スチレン/ブタジエン共重合ラテックス等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、透明性や基材結着の観点から、ポリビニルアルコール樹脂が好ましい。
【0040】
(その他の成分)
その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、感度向上剤として種々の熱可融性物質、補助添加剤、界面活性剤、滑剤、填剤、紫外線吸収剤、着色顔料等が挙げられる。
【0041】
-熱可融性物質-
熱可融性物質としては、例えば、ステアリン酸、ベヘン酸等の脂肪酸類;ステアリン酸アミド、パルチミン酸アミド等の脂肪酸アミド類;ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、パルチミン酸亜鉛、ベヘン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩類;p-ベンジルビフェニル、ターフェニル、トリフェニルメタン、p-ベンジルオキシ安息香酸ベンジル、β-ベンジルオキシナフタレン、β-ナフトエ酸フェニル、1-ヒドロキシ-2-ナフト酸フェニル、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸メチル、ジフェニルカーボネート、グリコールカーボネート、テレフタル酸ジベンジル、テレフタル酸ジメチル、1,4-ジメトキシナフタレン、1,4-ジエトキシナフタレン、1,4-ジベンジロキシナフタレン、1,2-ジフェノキシエタン、1,2-ビス(3-メチルフェノキシ)エタン、1,2-ビス(4-メチルフェノキシ)エタン、1,4-ジフェノキシ-2-ブテン、1,2-ビス(4-メトキシフェニルチオ)エタン、ジベンゾイルメタン、1,4-ジフェニルチオブタン、1,4-ジフェニルチオ-2-ブテン、1,3-ビス(2-ビニルオキシエトキシ)ベンゼン、1,4-ビス(2-ビニルオキシエトキシ)ベンゼン、p-(2-ビニルオキシエトキシ)ビフェニル、p-アリールオキシビフェニル、p-プロパギルオキシビフェニル、ジベンゾイルオキシメタン、ジベンゾイルオキシプロパン、ジベンジルジスルフィド、1,1-ジフェニルエタノール、1,1-ジフェニルプロパノール、p-ベンジルオキシベンジルアルコール、1,3-フェノキシ-2-プロパノール、N-オクタデシルカルバモイル-p-メトキシカルボニルベンゼン、N-オクタデシルカルバモイルベンゼン、1,2-ビス(4-メトキシフェノキシ)プロパン、1,5-ビス(4-メトキシフェノキシ)-3-オキサペンタン、シュウ酸ジベンジル、シュウ酸ビス(4-メチルベンジル)、シュウ酸ビス(4-クロロベンジル)等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0042】
-補助添加剤-
補助添加剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
補助添加剤としては、例えば、2,2'-メチレンビス(4-エチル-6-ターシャリーブチルフェノール)、4,4'-ブチリデンビス(6-ターシャリーブチル-2-メチルフェノール)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-ターシャリーブチルフェニル)ブタン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-シクロヘキシルフェニル)ブタン、4,4'-チオビス(6-ターシャリーブチル-2-メチルフェノール)、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールS、4,4」チオビス(2-メチルフェノール)、4,4'-チオビス(2-クロロフェノール)、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
-界面活性剤-
界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0045】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0046】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、アセチレングリコール系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0047】
アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-ジオール、2,5,8,11-テトラメチル-6-ドデシン-5,8-ジオール等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0048】
-滑剤-
滑剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、高級脂肪酸又はその金属塩、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステル、動物性ワックス、植物性ワックス、鉱物性ワックス、石油系ワックス等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0049】
-填剤-
填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、硫酸バリウム、クレー、カオリン、タルク、表面処理されたカルシウム、表面処理されたシリカ等の無機系微粉末;尿素-ホルマリン樹脂、スチレン-メタクリル酸共重合体、ポリスチレン樹脂、塩化ビニリデン樹脂等の有機系微粉末等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0050】
填剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記バインダー樹脂1質量部に対して、0.5質量部以上5.0質量部以下であることが好ましく、1.0質量部以上4.0質量部以下であることがより好ましい。
【0051】
-紫外線吸収剤-
紫外線吸収剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、サリチル酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0052】
紫外線吸収剤としては、例えば、フェニルサリシレート、p-tert-ブチルフェニルサリシレート、p-オクチルフェニルサリシレート、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2'-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2'-ジヒドロキシ-4,4'-ジメトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホベンゾフェノン、ビス(2-メトキシ-4-ヒドロキシ-5-ベンゾイルフェニル)メタン、2-(2'-ヒドロキシ-5'-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-5'-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-tert-ブチルフェニル)クロロベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-3'-tert-ブチル-5'-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-{2'-ヒドロキシ-3'-(3'',4'',5'',6''-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5'-メチルフェニル}ベンゾトリアゾール、2,2'-メチレンビス{4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール}、2-(2'-ヒドロキシ-5'-メタアクリロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジーt-アミル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-5'-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0053】
-着色顔料-
着色顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、クロムイエロー、酸化鉄顔料、モリブデン酸オレンジ、カドミウムレッド、硫化亜鉛化合物、ハンザイエロー、ハンザオレンジ、バラレッド、ピラゾロンレッド、リノールレッド、コーパーフタロシアニンブルー、コパールポリブロロフタロシアニンブルー、インダストロンブルー、イソジベンザトロンバイオレット、アンタントロンオレンジ等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0054】
感熱記録層12の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。感熱記録層12の形成方法としては、例えば、前記ロイコ染料及び前記顕色剤を、前記バインダー樹脂と共に、ボールミル、アトライター、サンドミル等の分散機により粉砕分散した後、さらに必要に応じて前記その他の成分等と共に混合して感熱記録層用塗布液を調製し、前記感熱記録層用塗布液を前記透明基材の上に塗布した後、乾燥させる方法等が挙げられる。
【0055】
塗布の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ブレードコート法、グラビアコート法、グラビアオフセットコート法、バーコート法、ロールコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、Uコンマコート法、AKKUコート法、スムージングコート法、マイクログラビアコート法、リバースロールコート法、4本又は5本ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法等が挙げられる。
【0056】
感熱記録層用塗布液の50%累積体積粒径(D50)は、0.10μm~3μmが好ましく、0.10μm~0.50μmがより好ましく、0.10μm~0.40μmが特に好ましい。
【0057】
感熱記録層12の乾燥後の付着量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、1.0g/m2~20.0g/m2が好ましく、2.0g/m2~10.0g/m2より好ましく、2.0g/m2~4.0g/m2がさらに好ましい。
【0058】
[粘着剤層]
粘着剤層13は、紙支持体11の他方の面に設けられた裏面バリア層17の紙支持体11とは反対側の表面の一部に設けられた、粘着剤を含む層である。
【0059】
粘着剤層13に用いられる粘着剤としては、特に制限は無く、目的に応じて適宜選択することができる。粘着剤層13に用いられる粘着剤としては、例えば、アクリル系エマルジョン、アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの少なくとも1種を主体とする単量体を乳化重合して得られるアクリル樹脂、アクリル酸エステル-スチレン共重合体、アクリル酸エステル-メタクリル酸エステル-スチレン共重合体等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、本明細書において「(メタ)アクリル」とは、「アクリル又はメタクリル」を意味する。
【0060】
アクリル系エマルジョンとしては、一般に使用されるアクリル系エマルジョンを用いてよいが、例えば、ヘンケルジャパン株式会社製、AQUENCE PS AQ590 NACOR等が挙げられる。
【0061】
粘着剤層13がアクリル系エマルジョンを含む場合、粘着剤層13は、最小粒径で直径10μm以上の微球を含まないことが好ましい。なお、微球の最大粒径は特に限定されないが、例えば、直径80μm以下であればよい。
【0062】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、前記成分以外に、必要に応じてカルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体、及び(メタ)アクリル酸アルキルエステル及びカルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体の各不飽和単量体と共重合可能なラジカル重合性不飽和単量体を加えてもよい。
【0063】
粘着剤は、バーコート法、ロールコート法、コンマコート法、グラビアコート法等により塗布できるが、指定のパターンを塗布するためには、グラビアコート法によって塗布することが好ましい。
【0064】
粘着剤層13は、グラビア塗工等によって、粘着剤を任意の形状、パターンに塗布することで形成できる。粘着剤層13は、粘着剤を任意の形状、パターンに塗布することで形成された複数の粘着剤塗布領域(糊塗工部)131で構成されてよい。粘着剤塗布領域131の形状は、例えば、円形、楕円形、三角形、四角形、その他の多角形、文字及びそれらを組み合わせた形状を適宜選択してよい。
【0065】
粘着剤の塗布パターンは、粘着剤塗布領域131と、粘着剤が塗布されていない非粘着剤塗布領域(非糊塗工部)132が交互に形成されたパターンとしてよい。
【0066】
例えば、粘着剤塗布領域131の形状が、
図2に示すように、円形である場合、粘着剤層13は、複数の円形に形成された粘着剤塗布領域131の間に非粘着剤塗布領域132を有するように形成されてよい。
【0067】
粘着剤塗布領域131の形状が、
図3に示すように、菱形である場合、粘着剤層13は、複数の菱形に形成された粘着剤塗布領域131の間に非粘着剤塗布領域132を有するように形成されてよい。
【0068】
粘着剤塗布領域131の形状が、
図4に示すように、ライン状である場合、粘着剤層13は、複数のライン状に形成された粘着剤塗布領域131の間に非粘着剤塗布領域132を有するように形成されてよい。
【0069】
粘着剤塗布領域131は、一定の周期で均等に配列して形成されることが好ましい。これにより、感熱記録媒体1の粘着剤層13の全面で見た時に粘着剤の塗布率を略均一にすることができる。例えば、粘着剤塗布領域131が連続して直線状に配列した列が感熱記録媒体1の巻き方向に対して垂直となるように配列させてもよいし、水平又は斜め方向に配列されていてもよい。さらに、同一又は1つ以上のパターンが複数集合したブロックを1つの単位として、一定周期に均等に配列させてもよい。
【0070】
粘着剤塗布領域131の面積比率は、粘着剤塗布領域131の大きさと配置間隔によって、0%~100%の範囲で任意に設定でき、45%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましく、35%以下であることがさらに好ましい。粘着剤塗布領域131の比率が45%以下であれば、感熱記録媒体1の再剥離性が高められる。
【0071】
粘着剤塗布領域131が、例えば、
図2に示すように円形である場合、円形の糊塗布領域が連続したパターンにおいて、円同士の距離を固定したまま、粘着剤塗布領域の直径を小さくすることで、塗布領域比率を調整できる。
【0072】
粘着剤塗布領域が、
図3に示すように菱形である場合、菱形の糊塗布領域が連続したパターンにおいて、菱形同士の距離を固定したまま、長軸を小さくすることで、塗布領域比率を調整できる。
【0073】
粘着剤塗布領域が、
図4に示すようにライン状である場合、ライン状の糊塗布領域が連続したパターンにおいて、ライン同士の距離を固定したまま、ラインの幅を小さくすることで、塗布領域比率を調整できる。
【0074】
粘着剤層13の乾燥後の付着量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、全面に糊が付着したと換算した場合に5g/m2~30g/m2が好ましく、10g/m2~25g/m2がより好ましい。
【0075】
[アンダーコート層]
アンダーコート層14としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、接着樹脂、熱可塑性中空樹脂粒子等を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有することが好ましい。
【0076】
熱可塑性中空樹脂粒子は、熱可塑性樹脂を殻とし、内部に空気その他の気体を含有するもので、既に発泡状態となっている微小中空粒子である。
【0077】
熱可塑性中空樹脂粒子の平均粒径(平均粒子径)は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.2μm~20μmが好ましく、2μm~5μmがより好ましい。平均粒径が0.2μm以上であれば、技術的に中空構造を有する熱可塑性中空樹脂粒子を形成できるので、アンダーコート層としての機能が発揮できる。平均粒径が20μm以下であれば、塗布乾燥後の表面の平滑性の低下が抑えられるため、感熱記録層の塗布を均一にでき、均一にするために必要量以上の感熱記録層用塗布液を塗布することが抑えられる。よって、熱可塑性中空樹脂粒子の平均粒径は、上記範囲内にあると同時に、バラツキの少ない均一な分布ピークを有していることが好ましい。
【0078】
なお、熱可塑性中空樹脂粒子の平均粒径とは、熱可塑性中空樹脂粒子の粒子外形の平均値である。平均粒径とは、有効径による体積平均粒径をいう。平均粒径は、例えば、レーザ回折・散乱法又は動的光散乱法等によって熱可塑性中空樹脂粒子の粒度分布を測定して求めた粒度分布曲線において、その積算量が粒子の小さい方から累積して体積基準で50%を占める時の粒子径(メディアン径)である。
【0079】
熱可塑性中空樹脂粒子の中空率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50%~95%が好ましく、80%~95%がより好ましい。中空率が30%以上であれば、断熱性が十分であるため、サーマルヘッドからの熱エネルギーが支持体を通じて感熱記録媒体の外へ放出されることが抑えられ、感度向上効果が十分である。なお、中空率とは、中空粒子の外径と内径(中空部の直径)の比であり、下記式で表わされる。
中空率[%]=(中空粒子の内径/中空粒子の外径)×100
【0080】
なお、熱可塑性中空樹脂粒子は、上述のように、熱可塑性樹脂を殻とするものである。熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スチレン-アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアセタール樹脂、塩素化ポリエーテル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデンとアクリロニトリルを主体とする共重合体樹脂等が挙げられる。これらの中でも、スチレン-アクリル樹脂、塩化ビニリデンとアクリロニトリルを主体とする共重合体樹脂が、中空率が高く、粒子径のバラツキが小さくなり、ブレード塗工に適している点で、好ましい。
【0081】
また、熱可塑性物質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂類、尿素-ホルムアルデヒド樹脂類、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂類、フラン樹脂類等や付加重合によって生成する不飽和ポリエステル樹脂や架橋MMA樹脂等が挙げられる。
【0082】
プラスチック中空粒子の塗布量は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択できるが、感度及び塗布均一性を保つ点から、支持体1m2当り1g~3gであることが好ましい。塗布量が支持体1m2当り1g以上であると、十分な感度が得られ、また、塗布量が支持体1m2当り3g以下であると、層の結着性を維持できる。
【0083】
[保護層]
保護層15は、感熱記録層12の上に設けることが好ましい。保護層15が設けられることにより、通常、ロール形状で保管又は使用される感熱記録媒体1中の発色性阻害要因が、感熱記録層12に悪影響を及ぼすことを抑制できる。一方、感熱記録層12上に保護層15がないと、十分なバリア性が得られず、使用環境によっては、発色性の低下を起こす原因となる。
【0084】
保護層15は、例えば、ポリビニルアルコール樹脂及びフィラーを主成分とする層とすることができる。ポリビニルアルコール樹脂は、例えば公知の方法で製造されるポリ酢酸ビニルの鹸化物以外に、他のビニルエステルと共重合しうる単量体を含有していてもよい。係る単量体としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和酸類、或いはその塩、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル類、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸、又はその塩が挙げられる。
【0085】
前記フィラーとしては、ホスフェートファイバー、チタン酸カリウム、針状水酸化マグネシウム、ウィスカー、タルク、マイカ、ガラスフレーク、炭酸カルシウム、板状炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、板状水酸化アルミニウム、シリカ、クレー、カオリン、焼成クレー、ハイドロタルサイト等の無機フィラーや、架橋ポリスチレン樹脂、尿素樹脂、シリコーン樹脂、架橋ポリメタクリル酸メチル樹脂、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂等の有機フィラー等が挙げられる。
【0086】
また、保護層15の耐水性を向上させるため、耐水化剤を共に用いることが特に好ましく、その具体例としては、グリオキザール、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミド-エピクロルヒドリン樹脂等が挙げられる。
【0087】
さらに、保護層15には上記の樹脂及びフィラーの他に、従来から用いられている補助添加成分、例えば、界面活性剤、熱可融性物質、滑剤、圧力発色防止剤等を併用することができる。 この場合、熱可融性物質の具体例としては、前述の感熱記録層の説明で例示するものと同様なもの等が挙げられる。
【0088】
前記保護層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記樹脂、前記フィラー、及び必要に応じてその他の成分と共に、分散機により分散させて保護層塗布液を調製し、該保護層塗布液を前記感熱記録層上に塗布し、乾燥させることにより、形成することができる。
【0089】
保護層15の付着量は、乾燥後に1.0g/m2~5.0g/m2であることが好ましい。付着量が1.0g/m2以上であれば、記録画像が食品に含まれる水及び酸性成分物質、包装に使用される有機高分子材料に含まれる可塑剤や油脂類等に対して保存安定性を維持でき、付着量が5.0g/m2以下であれば、発色感度特性の悪化を抑制できる。
【0090】
[離型層]
離型層16は、感熱記録媒体1の紙支持体11の一方の面側に設けられ、感熱記録媒体1の最表層である。離型層16としては、例えば、剥離剤を用いることができる。離型層16に用いる剥離剤としては、紫外線硬化型のシリコーン、熱硬化型のシリコーン、無溶剤型シリコーン、溶剤型のシリコーン、エマルジョン型シリコーン、フッ素系、アルキルペンダント型の剥離剤等が挙げられる。
【0091】
[裏面バリア層]
裏面バリア層17は、紙支持体11と粘着剤層13との間に設けられ、粘着剤層13に含まれる粘着剤成分が紙支持体11に移行することを抑制するバリア機能を有する。
【0092】
裏面バリア層17のバリア機能は、紙支持体11の裏面バリア層17を有する面である下面における液体の吸収係数を測定することで確認できる。紙支持体11の下面において、液体吸収性試験方法により測定される液体の吸収係数は、1.0ml/m2・s1/2以下であることが好ましく、0.9ml/m2・s1/2以下であることが好ましく、0.80ml/m2・s1/2以下であることがさらに好ましい。液体吸収性試験方法により測定される液体の吸収係数が1.0ml/m2・s1/2以下であれば、粘着剤層13に含まれる粘着剤成分は、裏面バリア層17内で抑えられ、紙支持体11に移行することが抑えられていると評価できる。
【0093】
液体吸収性試験方法としては、JAPAN TAPPI No.51に準拠したブリストー法が用いられる。
【0094】
液体吸収性試験方法により測定される液体は、表面張力が38mN/mの液体である。表面張力が38mN/mの液体として、ぬれ張力試験用混合液(No.38.0、富士フイルム和光純薬株式会社製)等がある。
【0095】
裏面バリア層17としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、結着性樹脂、フィラー等を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有することが好ましい。
【0096】
裏面バリア層17に含まれる樹脂としては、例えば、ポリクロロプレン、アクリル酸エステル共重合体、スチレン/ブタジエン/アクリル系共重合体、スチレン/アクリル酸エステル共重合体、天然ゴム系樹脂、スチレン/ブタジエン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン共重合体、エチレン/酢酸ビニル(EVA)、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルアルコール、澱粉及びその誘導体、メトキシセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、アルギン酸ソーダ、ゼラチン、カゼイン、メチルメタクリレートブタジエン共重合体、酢酸ビニル系樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0097】
これらの中でも、アクリル酸エステル共重合体、スチレン/ブタジエン/アクリル系共重合体、スチレン/アクリル酸エステル共重合体、天然ゴム系樹脂、スチレン/ブタジエン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン共重合体、ポリクロロプレン、エチレン/酢酸ビニル、ポリオレフィン系樹脂及びポリウレタン系樹脂がより好ましく、スチレン/アクリル酸エステル共重合体及びスチレン/ブタジエン共重合体、ポリウレタン系樹脂がさらに好ましい。
【0098】
裏面バリア層17に含まれる樹脂は、乾燥後の重量を0.5g/m2~5.0g/m2にすることが好ましい。乾燥後の重量が0.5g/m2~~5.0g/m2であると、紙支持体11の他方の面に形成し易くなるため、バリア機能を発揮でき、粘着剤層13の粘着剤成分が紙支持体11へ染み込みを抑えることができる。
【0099】
裏面バリア層17は、塗工性向上や、感熱記録ラベルの製造時において保護層15とのブロッキングを防止する目的でカオリンや水酸化アルミ等のフィラーを含有してもよい。この他にも下記に示す無機フィラー又は有機フィラーを用いることができる。
【0100】
無機フィラーとしては、例えば、炭酸塩、ケイ酸塩、金属酸化物、硫酸化合物等が挙げられる。有機フィラーとしては、例えば、シリコーン樹脂、セルロース樹脂、エポキシ樹脂、ナイロン樹脂(登録商標)、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエチレン樹脂、ホルムアルデヒド系樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂等が挙げられる。
【0101】
感熱記録媒体1の製造方法は、特に制限されず、一般に知られている方法により製造できる。感熱記録媒体1の製造方法は、紙支持体11の一方の面(上面)側に感熱記録層12を設ける工程(感熱記録層の設置工程)と、粘着剤層13を紙支持体11の感熱記録層12側とは異なる面(下面)側の一部に設ける工程(粘着剤層の設置工程)とを含む。感熱記録媒体1の製造方法は、感熱記録層の設置工程と、粘着剤層の設置工程とを逆の順番に行ってもよいし、これらの工程を同時に行ってもよい。
【0102】
また、感熱記録媒体1の製造方法は、経済性の要求、塗工層の均一性向上の観点から、感熱記録層12と保護層15及び離型層16等のその他の層とを多層同時カーテン法により塗布する方法、又は感熱記録層12とその他の層との間に少なくとも1層のアンダーコート層14を設け、それらを多層同時カーテン法により塗布する方法等を用いることが好ましい。
【0103】
このように、感熱記録媒体1は、紙支持体11、感熱記録層12及び粘着剤層13とを備え、粘着剤層13は紙支持体11の他方の面の一部に設け、紙支持体11の、JIS P 8122に準拠するステキヒトサイズ度を17秒以上としている。紙支持体11のJIS P 8122に準拠するステキヒトサイズ度を17秒以上とすることで、粘着剤層13に含まれる粘着剤成分が紙支持体11に対して粘着剤層13と反対側へ移行することを抑制できる。よって、感熱記録媒体1は、感熱記録層の発色感度低下に起因する発色ムラを抑制できる。
【0104】
また、感熱記録媒体1は、粘着剤層13を紙支持体11の他方の面の一部に設けることで、被着体2に対する粘着性を抑え、剥離し易くすると共に、粘着剤層13の粘着性の低下を抑えることができる。よって、感熱記録媒体1は、粘着剤層13の再剥離性を有することができる。
【0105】
感熱記録媒体1は、紙支持体11と粘着剤層13の間に裏面バリア層17を有し、紙支持体11の裏面バリア層17を有する面において、JAPAN TAPPI No.51に準拠したブリストー法により測定された、表面張力が38mN/mの液体の吸収係数を1.0ml/m2・s1/2以下とすることができる。これにより、感熱記録媒体1は、紙支持体11と粘着剤層13の間に裏面バリア層17を設けることで、粘着剤層13に含まれる粘着剤成分が紙支持体11に対し粘着剤層13と反対側へ移行するのをさらに抑制できる。よって、感熱記録媒体1は、感熱記録層の発色感度低下に起因する発色ムラ防止効果を確実に発揮できる。
【0106】
感熱記録媒体1は、裏面バリア層17に、アクリル酸エステル共重合体、スチレン/ブタジエン/アクリル系共重合体、スチレン/アクリル酸エステル共重合体、天然ゴム系樹脂、スチレン/ブタジエン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン共重合体、ポリクロロプレン、ポリビニルアルコール、エチレン/酢酸ビニル、ポリオレフィン系樹脂及びポリウレタン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含有できる。これにより、感熱記録媒体1は、裏面バリア層17に粘着剤層13に含まれる粘着剤成分の移行を抑制するのに適した材料を含めることで、粘着剤層13に含まれる粘着剤成分の移行抑制効果をさらに高めることができる。
【0107】
感熱記録媒体1は、最表層として離型層16を有することができる。これにより、感熱記録媒体1は、剥離紙が不要となるため、ライナーレスラベルとして使用できる。
【0108】
感熱記録媒体1は、粘着剤層13に、アクリル系エマルジョンを含み、最小粒径で直径10μm以上の微球を含まないようにすることができる。感熱記録媒体1は、粘着剤層13に下限値で粒子径10μm以上の粒子を含まないため、より安価な粘着剤を使用したラベルを形成できる。
【0109】
感熱記録媒体1は、感熱記録層12は、上記式(I)で表される化合物を含む非フェノール系顕色剤を少なくとも1種含有できる。これにより、感熱記録媒体1は、内分泌攪乱物質として懸念されているフェノール系顕色剤を使用しない、非フェノール系顕色剤を含有するため、安全性を高めることができる。
【0110】
感熱記録媒体1は、感熱記録層12に、増感剤として少なくとも脂肪酸アミドを含有し、かつ増感剤における脂肪酸アミドを60質量%以上含むことができる。感熱記録媒体1は、増感剤として少なくとも脂肪酸アミドを含有するため、非フェノール系顕色剤を使用した場合においても、発色感度を向上させることができる。
【0111】
感熱記録媒体1は、粘着剤層13が設けられた粘着剤塗布領域の面積比率を45%以下とすることができる。これにより、感熱記録媒体1は、粘着剤層13に剥離し易くしつつ、粘着剤層13の粘着性の低下を抑えることができるため、再度、被着体2に貼り付けた後でも容易に剥離できる。よって、感熱記録媒体1は、より高い再剥離性を有することができる。
【0112】
感熱記録媒体1の態様は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択できる。例えば、一実施形態に係る感熱記録媒体は、このままラベルとして用いてもよいし、バリア層上又は支持体上に、文字、マーク、絵、バーコード又はQRコード(登録商標)等の二次元コード等の情報をプリントする層を設けた態様としてよい。
【0113】
感熱記録媒体1の形状は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。感熱記録媒体1の形状としては、例えば、ラベル状、シート状、ロール状等が挙げられる。
【0114】
以下、感熱記録媒体1の態様の具体例について説明する。
【0115】
[ライナーレス型感熱記録媒体]
感熱記録媒体1は、ライナーレス型感熱記録媒体として使用できる。ライナーレス型感熱記録媒体は、離型層16を有する態様(離型層有りタイプ)、又は離型層16を有しない態様(離型層無しタイプ)として使用できる。
【0116】
ライナーレス型感熱記録媒体が離型層有りタイプである場合、ライナーレス型感熱記録媒体は、離型層16の上に粘着剤層13が重なるように巻かれたロール状の形態として取り扱うことができる。
【0117】
ライナーレス型感熱記録媒体が離型層無しタイプである場合、粘着剤層13が加熱によって粘着性を発現する感熱粘着剤層である場合、感熱粘着剤層は、熱可塑性樹脂及び熱溶融性物質を含有し、更に必要に応じて、粘着付与剤を含有してよい。
【0118】
熱可塑性樹脂は、粘着力及び接着力を付与する。熱溶融性物質は、常温では固体であるため、樹脂に可塑性は与えないが、加熱により溶融して樹脂を膨潤乃至軟化させて粘着性を発現させる。粘着付与剤は、粘着性を向上させる働きを有する。熱可塑性樹脂、熱溶融性物質及び粘着付与剤は、一般的に用いられる熱可塑性樹脂、熱溶融性物質及び粘着付与剤を用いてよい。
【0119】
[感熱磁気記録紙]
感熱記録媒体1は、紙支持体11が感熱記録層12を有する面とは反対側の面上に磁気記録層を有し、更に必要に応じてその他の層を有してなる感熱磁気記録紙であってよい。
【0120】
磁気記録層は、酸化鉄及びバリウムフェライト等と、塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂及びナイロン樹脂等とを用い、支持体上に塗工する方法、又は蒸着若しくはスパッタリング等の方法により、樹脂を用いずに形成してよい。磁気記録層は、支持体における感熱記録層を有する面とは反対側の面上に設けることが好ましいが、支持体と感熱記録層との間に設けてもよい。磁気記録層は、感熱記録層上の少なくとも一部に設けてもよい。
【0121】
[記録方法]
感熱記録媒体1を用いた記録方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、サーマルヘッド、レーザー等が挙げられる。
【0122】
サーマルヘッドの、形状、構造、大きさ等は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択してよい。
【0123】
レーザーの種類は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、9.3μm~10.6μmの波長を有するCO2レーザー、半導体レーザー等が挙げられる。
【0124】
(用途)
一実施形態に係る感熱記録媒体は、発色ムラを抑制できるため、例えば、生鮮食料品、弁当、惣菜用等のPOS分野;図書、文書等の複写分野;ファクシミリ等の通信分野;券売機、レシート、領収書等の発券分野;空港用手荷物タグ等の航空分野;ピルケース、ピルボトル等のような医療用容器等の医療分野等の多方面に用いることができる。
【0125】
(物品)
一実施形態に係る物品は、一実施形態に係る感熱記録媒体を有する。感熱記録媒体としては、一実施形態に係る感熱記録媒体を好適に用いることができる。一実施形態に係る感熱記録媒体を有するとは、一実施形態に係る感熱記録媒体を貼付、装着等をしている状態を意味する。
【0126】
一実施形態に係る物品は、一実施形態に係る感熱記録媒体を有していれば、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。一実施形態に係る物品としては、例えば、梱包材、包装資材、包装紙、容器等が挙げられる。より具体的には、生鮮食料品、弁当、惣菜、図書、文書等の包装資材、ピルケース、ピルボトル等の医療用容器等が挙げられる。
【0127】
以上の通り、実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の組み合わせ、省略、置き換え、変更等を行うことが可能である。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【実施例0128】
以下、実施例及び比較例を示して実施形態を更に具体的に説明するが、実施形態はこれらの実施例及び比較例により限定されるものではない。
【0129】
<実施例1>
[アンダーコート層形成液[A液]の調製]
下記組成を混合攪拌して、アンダーコート層形成液を調製した。
([A液]の組成)
・微小中空粒子(中空率50%) 80質量部
・スチレン/ブタジエン共重合ラテックス(固形分濃度47.5%) 10質量部
・水 54質量部
【0130】
[感熱記録層形成液の調製]
主顕色剤分散液[B液]15質量部、補助顕色剤分散液[C液]45質量部、及び増感剤分散液[D液]45質量部、イソブチレン/無水マレイン酸共重合体の20%アルカリ水溶液5質量部で混合した混合物を撹拌し、感熱記録層形成液を調製した。[B液]、[C液]及び[D液]は、下記の通り、調製した。
【0131】
([B液](主顕色剤分散液)の調製)
下記組成の混合物を磁性ボールミル中で2日間粉砕し、[B液]を調製した。
-[B液]の組成-
・3-ジブチルアミノ-6-メチル-N-7-アニリノフルオラン 20質量部
・ポリビニルアルコールの10%水溶液 20質量部
・水 60質量部
【0132】
([C液](補助顕色剤分散液)の調製)
下記組成の混合物を磁性ボールミル中で2日間粉砕し、[C液]を調製した。
-[C液]の組成-
・4-ヒドロキシ-4'-イソプロポキシジフェニルスルホン(4,4'-BPS) 20質量部
・ポリビニルアルコールの10%水溶液 20質量部
・非晶質シリカ 15質量部
・水 65質量部
【0133】
([D液](増感剤分散液)の調製)
下記組成の混合物を磁性ボールミル中で2日間粉砕し、[D液]を調製した。
-[D液]の組成-
・増感剤(ジフェニルスルホン(DPS)) 20質量部
・ポリビニルアルコールの10%水溶液 20質量部
・水 50質量部
【0134】
[[E液](保護層塗布液)の調製]
下記成分を下記組成で混合した混合物を磁性ボールミル中で2日間粉砕し、保護層塗布液[E液]を調製した。
-[E液]の組成-
・水酸化アルミニウム 20質量部
・ポリビニルアルコールの10%水溶液 20質量部
・水 60質量部
【0135】
[[F液](裏面バリア層塗布液)の調製]
下記成分を下記組成で混合して攪拌し、裏面バリア層塗布液[F液]を調製した。
-[F液]の組成-
・スチレン/アクリル酸エステル共重合体(BASF社製、JONCRYL PDX7440、固形分濃度48.5%、Tg:40℃) 50質量部
・水 50質量部
【0136】
[離型層塗布液の調整]
下記成分を下記組成で混合して攪拌し、離型層塗布液[G液]を調製した。
([G液](離型層塗布液)の組成)
・カチオン硬化型UVシリコーン樹脂(荒川化学工業株式会社製、シリコリースUV POLY215) 100質量部
・軽剥離調整剤(荒川化学工業株式会社製、シリコリースRCA200) 40質量部
・反応開始剤(荒川化学工業株式会社製、シリコリースUV CATA211) 5質量部
【0137】
[感熱記録材料の作製]
支持体として市販の上質紙1(坪量64g、ステキヒトサイズ度:28秒、紙厚78μm)の表面に、アンダーコート層形成液を乾燥後の付着量が3.0g/m2になるように塗布して乾燥させ、アンダーコート層(中間層)を形成した。アンダーコート層上に、感熱記録層形成液を乾燥後の付着量が0.35g/m2となるように塗布して乾燥させ、感熱記録層を形成した。感熱記録層上に、保護層塗布液を乾燥後の付着量が1.6g/m2になるように塗布して乾燥させ、保護層を形成した。また、裏面バリア層塗布液を支持体の裏面に乾燥後の付着量が0.7g/m2となるように塗布して乾燥し、裏面バリア層を形成した。その後、保護層及び裏面バリア層をスーパーキャレンダーにて表面処理した。
【0138】
次に、保護層上に離型層塗布液[G液]を重量が1.0g/m2となるように塗布した。その後、下記条件で紫外線照射して離型層塗布液の硬化を行い、離型層を設けた感熱記録材料を得た。なお、離型層を指で擦り、液状でなく硬化したことを確認した。
(紫外線照射条件)
・紫外線照射装置:東芝電材株式会社製、TOSURE2000(形式名:KUV-20261-1X)
・紫外線照射条件:全光状態(電流計で10~12アンペア)で、照射速度5m/minで5回照射。
【0139】
次に、支持体の裏面の裏面バリア層上に感圧粘着剤としてのアクリルエマルジョン(ヘンケルジャパン株式会社製、AQUENCE PS AQ590 NACOR、固形分濃度54質量%)を、グラビア塗工方式によって、塗布率が44%となるようなドットパターンに塗布して乾燥し、粘着剤層を形成した。
【0140】
これにより、ライナーレス感熱記録シートである感熱記録材料を作製した。
【0141】
(紙支持体の裏面バリア層を有する面における液体の吸収係数)
紙支持体の裏面バリア層を有する面において、JAPAN TAPPI No.51に準拠したブリストー法により、表面張力が38mN/mの液体の吸収係数を測定した。
【0142】
(粘着剤層中の微球の有無)
粘着剤層中に最小粒径で直径10μm以上の微球を含んでいるか否かを、走査型電子顕微鏡(製品番号:S-3700、日立社製)により確認した。
【0143】
<実施例2>
実施例1において、粘着剤層に微球を含まないこと以外は、実施例1と同様にして行い、感熱記録材料を得た。
【0144】
<実施例3>
実施例1において、粘着剤層に微球を含まず、支持体と粘着剤層の間に乾燥後の付着量が2.0g/m2となるように、裏面バリア層塗布液[F液]を塗布して乾燥させ、裏面バリア層を設けたこと以外は実施例1と同様にして行い、感熱記録材料を作製した。
【0145】
<実施例4>
実施例1において、粘着剤層に微球を含まず、支持体と粘着剤層の間に乾燥後の付着量が2.0g/m2となるように、裏面バリア層塗布液[F液]を塗布して乾燥させ、裏面バリア層を設け、感熱記録層塗布液の調製の[C液]中の4-ヒドロキシ-4'-イソプロポキシジフェニルスルホンの代わりに、N-[2-(3-フェニルウレイド)フェニル]ベンゼンスルホンアミド(NKK-1304、日本曹達株式会社製)を使用したこと以外は実施例1と同様にして行い、感熱記録材料を作製した。
【0146】
<実施例5>
実施例4において、増感剤をステアリン酸アミドエマルジョン(L-271)に変更したこと以外は、実施例4と同様にして行い、感熱記録材料を作製した。
【0147】
<実施例6>
実施例5において、粘着剤層の糊部塗布面積比率を30%としたこと以外は実施例5と同様にして行い、感熱記録材料を作製した。
【0148】
<実施例7>
実施例3において、支持体として上質紙2(坪量70g、ステキヒトサイズ度:20.27秒、紙厚:89.3μm)を使用し、粘着剤層の糊部塗布面積比率を30%としたこと以外は実施例3と同様にして行い、感熱記録材料を作製した。
【0149】
<実施例8>
実施例7において、粘着剤の塗工パターンを円形から
図3に示すような菱形に変更し、粘着剤層の糊部塗布面積比率を35%に変更したこと以外は実施例7と同様にして行い、感熱記録材料を作製した。
【0150】
<実施例9>
実施例3において、支持体として上質紙3(坪量:65g、ステキヒトサイズ度:17.28秒、紙厚:73.67μm)を使用したこと以外は実施例3と同様にして行い、感熱記録材料を作製した。
<実施例10>
実施例3において、裏面バリア層塗布液[F液]の代わりに下記の裏面バリア層塗布液[F'液]を使用したこと以外は実施例3と同様にして行い、感熱記録材料を作製した。
-[F'液]の組成-
・ポリウレタン系樹脂(第一工業製薬社製、スーパーフレックス800、固形分濃度35.2%、Tg:46℃) 60質量部
・水 40質量部
【0151】
<実施例11>
実施例3において、裏面バリア層塗布液[F液]の代わりに下記の裏面バリア層塗布液[F''液]を使用したこと以外は実施例3と同様にして行い、感熱記録材料を作製した。
-[F''液]の組成-
・完全ケン化型ポリビニルアルコールの10%水溶液 50質量部
・水 50質量部
【0152】
<実施例12>
実施例2において、支持体として上質紙2(坪量70g、ステキヒトサイズ度:20.27秒、紙厚:89.3μm)を使用したこと以外は実施例2と同様にして行い、感熱記録材料を作製した。
【0153】
<実施例13>
実施例2において、支持体として上質紙3(坪量:65g、ステキヒトサイズ度:17.28秒、紙厚:73.67μm)を使用したこと以外は実施例2と同様にして行い、感熱記録材料を作製した。
【0154】
<比較例1>
実施例1において、支持体として上質紙4(坪量:59g、ステキヒトサイズ度:13.90秒、紙厚:73.00μm)を使用したこと以外は実施例1と同様にして行い、感熱記録材料を作製した。
【0155】
<比較例2>
実施例5において、支持体として上質紙4(坪量:59g、ステキヒトサイズ度:13.90秒、紙厚:73.00μm)を使用したこと以外は実施例5と同様にして行い、感熱記録材料を作製した。
【0156】
各製造例の感熱記録材料を構成する、紙支持体の種類、ステキヒトサイズ度、坪量及び紙厚と、裏面バリア層の吸収係数及びバリア層の有無と、粘着剤層のパターン、粘着剤塗布領域の面積比率及び微球の有無と、感熱記録層に含まれる顕色剤、主増感剤(全増感剤中の含有量が最多である増感剤)、全増感剤に対する脂肪酸アミドの含有量を表1に示す。なお、表1では、顕色剤に用いた、4-ヒドロキシ-4'-イソプロポキシジフェニルスルホンを「4,4'-BPS」、N-[2-(3-フェニルウレイド)フェニル]ベンゼンスルホンアミドを「NKK-1304」、と表す。増感剤に用いた、ジフェニルスルホンを「DPS」、ステアリン酸アミドを「L-271」と表す。
【0157】
<特性の評価>
次に、作製した各感熱記録材料の特性を評価した。感熱記録材料の特性として、感度、発色濃度、発色ムラ及び再剥離性を評価した。各特性の評価結果を表1に示す。
【0158】
[感度]
各感熱記録材料を印字シミュレーター(大倉電機株式会社製)にて、ヘッド電力0.45w/ドット、1ライン記録時間20ms/line、走査線密度8×3.85ドット/mmの条件下で、パルス巾0.2ms~1.2msで印字し、印字濃度をマクベス反射濃度計RD-914(マクベス社製)にて測定した。この時、画像濃度1.0を得るために必要としたエネルギー値を算出し、そのエネルギー値から、以下の数式にしたがって比較例1のサンプルを基準とした場合の感度倍率を算出した。この感度倍率の値が大きいほど発色感度(熱応答性)が良好である。
感度倍率=(比較例1のエネルギー値)/(測定したサンプルのエネルギー値)
【0159】
[発色濃度]
各感熱記録材料を、各感熱記録材料をイシダ製のプリンターIP-Uniで印字し、糊塗工部と糊非塗工部の印字部画像濃度をマクベス反射濃度計RD-914(マクベス社製)でそれぞれ測定した。それぞれの値から、下記式に基づいて、発色濃度比率Aを算出し、発色濃度を評価した。この発色濃度比率が1.0に近いほど、発色濃度差が小さく、発色ムラが小さくなる。
A=(糊塗工部発色濃度)/(糊非塗工部発色濃度)
【0160】
[発色ムラ]
各感熱記録材料をイシダ製のプリンターIP-Uniで印字し、上記発色濃度比率が1.1以上、又はサンプルを目視で確認した結果、糊塗工部の発色濃度と糊非塗工部の発色濃度に差が認められるものを発色ムラ有りと判定し、認められないものを発色ムラ無しと判定した。糊塗工部の発色濃度と糊非塗工部の発色濃度との差が小さい程、発色ムラが無く良好である。
【0161】
[再剥離性]
上記感熱記録材料を縦30mm×横60mmにカットしてサンプルとした。サンプルを、紙コップ(サンナップ株式会社製、C2080AA)を平面に展開した被着体に対して、ローラーを一往復させて密着させた。感熱記録材料の他端を、引張りスピード300mm/分の条件下で、基板に対して180度方向に引っ張り、剥がした時の感熱記録材料の破壊様式を観察し、下記評価基準で評価した。
(評価基準)
A:剥離時に、基材への粘着剤を含む感熱記録材料の一部残骸の残留、感熱記録材料の破れ、又は基材の破れのいずれも発生することなく、綺麗に剥離できる。
B:剥離時に、感熱記録材料又は基材の破れのいずれも発生することなく、剥離できる。
【0162】
【0163】
表1より、実施例1~13の感熱記録材料では、感度及び発色濃度は高く、発色ムラは無く、再剥離性は良好であることが確認された。これに対して、比較例1及び2の感熱記録材料では、感度及び発色濃度は低めであり、発色ムラがあることが確認された。
【0164】
よって、各実施例の感熱記録材料は、粘着剤層を紙支持体11の他方の面の一部に設け、紙支持体の、JIS P 8122に準拠するステキヒトサイズ度を17秒以上とすることで、優れた、感度、発色濃度、発色ムラ及び再剥離性を有することができる。よって、各実施例の感熱記録材料は、発色ムラが抑えられ、剥離性に優れたライナーレス型感熱記録媒体として提供できるといえる。
【0165】
なお、本発明の実施形態の態様は、例えば、以下の通りである。
<1> 粘着剤層と、紙支持体と、感熱記録層とを、この順に積層して備える感熱記録媒体であって、
前記粘着剤層は、前記紙支持体の一部に設けられ、
前記紙支持体は、JIS P 8122に準拠するステキヒトサイズ度が17秒以上である感熱記録媒体。
<2> 前記紙支持体と前記粘着剤層の間に裏面バリア層を有し、
前記紙支持体の、前記裏面バリア層を有する面において、JAPAN TAPPI No.51に準拠したブリストー法により測定された、表面張力が38mN/mの液体の吸収係数が1.0ml/m
2・s
1/2以下である<1>に記載の感熱記録媒体。
<3> 前記裏面バリア層が、アクリル酸エステル共重合体、スチレン/ブタジエン/アクリル系共重合体、スチレン/アクリル酸エステル共重合体、天然ゴム系樹脂、スチレン/ブタジエン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン共重合体、ポリクロロプレン、エチレン/酢酸ビニル、ポリオレフィン系樹脂及びポリウレタン系樹脂から選択される少なくとも1種の樹脂を含有する<2>に記載の感熱記録媒体。
<4> 最表層に離型層を有する<1>~<3>の何れか一つに記載の感熱記録媒体。
<5> 前記粘着剤層は、アクリル系エマルジョンを含み、最小粒径で直径10μm以上の微球を含まない<1>~<4>の何れか一つに記載の感熱記録媒体。
<6> 前記感熱記録層は、下記式(I)で表される化合物を、非フェノール系顕色剤として少なくとも1種含有する<1>~<5>の何れか一つに記載の感熱記録媒体。
【化2】
(式中、Xは、CH
2、NH又はOを表し、R
1~R
3は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、直鎖、炭素数が1個~6個のアルキル基、炭素数が1個~6個のアルキルカルボニル基、炭素数が1個~6個のアルコキシル基、炭素数が2個~6個のアルケニル基、炭素数が1個~6個のフルオロアルキル基、N(R
4)2基(R
4は、水素原子、フェニル基、ベンジル基、又は炭素数が1個~6個のアルキル基を表す)、NHCOR
5基(R
5は、炭素数が1個~6個のアルキル基を表す)、置換されていてもよいフェニル基、又は置換されていてもよいベンジル基を表し、n1~n3は、それぞれ独立して、1~5の何れかの整数を表す。)
<7> 前記感熱記録層が、増感剤として少なくとも脂肪酸アミドを含有し、かつ前記増感剤における前記脂肪酸アミドの含有量が60質量%以上である<1>~<6>の何れか一つに記載の感熱記録媒体。
<8> 前記粘着剤層が設けられた粘着剤塗布領域の面積比率が、45%以下である<1>~<7>の何れか一つに記載の感熱記録媒体。
<9> 紙支持体の一方の面側に感熱記録層を設ける工程と、
粘着剤層を前記紙支持体の前記感熱記録層側とは異なる面側の一部に設ける工程と、
を含み、
前記紙支持体は、JIS P 8122に準拠するステキヒトサイズ度が17秒以上である感熱記録媒体の製造方法。
<10> <1>~<8>の何れか一つに記載の感熱記録媒体を有する物品。