(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131223
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】移動体検出装置、システム、プログラム及び方法
(51)【国際特許分類】
G01S 13/06 20060101AFI20240920BHJP
G01S 13/34 20060101ALI20240920BHJP
G01S 7/02 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
G01S13/06
G01S13/34
G01S7/02 216
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041349
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100173716
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】笹原 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】菅 良太
(72)【発明者】
【氏名】城本 一馬
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AB17
5J070AC02
5J070AC13
5J070AD05
5J070AE09
5J070AF01
(57)【要約】
【課題】本開示は、室内と室外との間の境界が、電波を透過する素材を使用しているときにも、室内のレーダセンサを用いて、室内の移動体を高精度に検出する一方で、室外の移動体を高精度に棄却することを目的とする。
【解決手段】本開示は、室内の測距センサ1を用いて、室内の移動体を検出する移動体検出装置2であって、物標と測距センサ1との間の距離を測定する距離測定部21と、室内と室外との間の境界と、測距センサ1と、の間の距離を、室内に移動体が存在するか否かを判定するための距離閾値として設定する距離閾値設定部22と、移動体と測距センサ1との間の距離が、距離閾値と比べて近いときに、室内に移動体が存在することを判定し、移動体と測距センサ1との間の距離が、距離閾値と比べて遠いときに、室内に移動体が存在しないことを判定する移動体判定部23と、を備える移動体検出装置2である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内の測距センサを用いて、前記室内の移動体を検出する移動体検出装置であって、
物標と前記測距センサとの間の距離を測定する距離測定部と、
前記室内と室外との間の境界と、前記測距センサと、の間の距離を、前記室内に移動体が存在するか否かを判定するための距離閾値として設定する距離閾値設定部と、
移動体と前記測距センサとの間の距離が、前記距離閾値と比べて近いときに、前記室内に移動体が存在することを判定し、移動体と前記測距センサとの間の距離が、前記距離閾値と比べて遠いときに、前記室内に移動体が存在しないことを判定する移動体判定部と、
を備えることを特徴とする移動体検出装置。
【請求項2】
前記距離閾値設定部は、物標と前記測距センサとの間の距離が、所定期間にわたり変化していないときに、当該物標と前記測距センサとの間の距離を、前記室内と前記室外との間の前記境界と、前記測距センサと、の間の距離として認識する
ことを特徴とする、請求項1に記載の移動体検出装置。
【請求項3】
前記距離閾値設定部は、前記測距センサが受信したレーダ反射信号についての前記所定期間にわたる平均強度が、強度閾値と比べて高くなったときに、当該物標と前記測距センサとの間の距離が、前記所定期間にわたり変化していないと認識する
ことを特徴とする、請求項2に記載の移動体検出装置。
【請求項4】
前記距離閾値設定部は、物標と前記測距センサとの間の距離が、複数の候補を有するときに、最も近い(ただし、所定距離以上)物標と前記測距センサとの間の距離を、前記室内と前記室外との間の前記境界と、前記測距センサと、の間の距離として認識する
ことを特徴とする、請求項2又は3に記載の移動体検出装置。
【請求項5】
前記距離測定部は、前記測距センサとして、FMCW(Frequency-Modulation Continuous-Wave)方式のレーダを用いる
ことを特徴とする、請求項1に記載の移動体検出装置。
【請求項6】
前記距離測定部は、前記測距センサ及び方位センサとして、MIMO(Multiple-Input Multiple-Output)方式のレーダを用いる
ことを特徴とする、請求項1に記載の移動体検出装置。
【請求項7】
請求項1に記載の移動体検出装置と、前記測距センサと、
を備えることを特徴とする移動体検出システム。
【請求項8】
請求項1に記載の移動体検出装置が備える各処理部が行なう各処理ステップ、
をコンピュータに順に実行させるための移動体検出プログラム。
【請求項9】
請求項1に記載の移動体検出装置が備える各処理部が行なう各処理ステップ、
を順に備えることを特徴とする移動体検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、室内の測距センサを用いて、室内の移動体を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
室内のドップラセンサ(マイクロ波等)を用いて、室内の移動体(人間等)を検出する技術が、特許文献1に開示されている。特許文献1では、移動体とドップラセンサとの間の距離を測定していないが、ドップラセンサに対する移動体の速度を測定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、室内と室外との間の境界(壁、扉、天井又は床等)は、電波を透過する素材(木材、石膏ボード又はプラスティック等)を使用していることがある。
【0005】
特許文献1では、室内の移動体を検出する一方で、室外の移動体を棄却するようにする。つまり、移動体からドップラセンサへの反射強度が、強度閾値と比べて高いときに、室内に移動体が存在することを判定する。一方で、移動体からドップラセンサへの反射強度が、強度閾値と比べて低いときに、室内に移動体が存在しないことを判定する。
【0006】
特許文献1では、室内の移動体とドップラセンサとの間の距離は短いが、室内の移動体の動きは小さく、室内の移動体からドップラセンサへの反射強度は高いとは限らない。一方で、室外の移動体とドップラセンサとの間の距離は遠いが、室外の移動体の動きは大きく、室外の移動体からドップラセンサへの反射強度は低いとは限らない。よって、室内の移動体を高精度に検出する一方で、室外の移動体を高精度に棄却することができない。
【0007】
そこで、前記課題を解決するために、本開示は、室内と室外との間の境界が、電波を透過する素材を使用しているときにも、室内のレーダセンサを用いて、室内の移動体を高精度に検出する一方で、室外の移動体を高精度に棄却することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、室内に移動体が存在するか否かを判定するにあたり、移動体からドップラセンサへの反射強度が強度閾値と比べて高いか否かを判定するのではなく、移動体と測距センサとの間の距離が距離閾値と比べて近いか否かを判定することとした。ここで、室内に移動体が存在するか否かを判定するための距離閾値として、室内と室外との間の境界と、測距センサと、の間の距離を設定することとした。
【0009】
具体的には、本開示は、室内の測距センサを用いて、前記室内の移動体を検出する移動体検出装置であって、物標と前記測距センサとの間の距離を測定する距離測定部と、前記室内と室外との間の境界と、前記測距センサと、の間の距離を、前記室内に移動体が存在するか否かを判定するための距離閾値として設定する距離閾値設定部と、移動体と前記測距センサとの間の距離が、前記距離閾値と比べて近いときに、前記室内に移動体が存在することを判定し、移動体と前記測距センサとの間の距離が、前記距離閾値と比べて遠いときに、前記室内に移動体が存在しないことを判定する移動体判定部と、を備えることを特徴とする移動体検出装置である。
【0010】
この構成によれば、室内と室外との間の境界が、電波を透過する素材を使用しているときにも、室内の測距センサを用いて、室内の移動体を高精度に検出する一方で、室外の移動体を高精度に棄却することができる。そして、測距センサの設置者が、距離閾値を物差し等で測定する手順を実行する負担を低減することができ、測距センサの製造者が、距離閾値を表示器等で入力する構成を製造するコストを低減することができる。
【0011】
また、本開示は、前記距離閾値設定部は、物標と前記測距センサとの間の距離が、所定期間にわたり変化していないときに、当該物標と前記測距センサとの間の距離を、前記室内と前記室外との間の前記境界と、前記測距センサと、の間の距離として認識することを特徴とする移動体検出装置である。
【0012】
この構成によれば、室内に移動体が存在するか否かを判定するための距離閾値として、室内と室外との間の境界と、測距センサと、の間の一定距離を設定することができる。
【0013】
また、本開示は、前記距離閾値設定部は、前記測距センサが受信したレーダ反射信号についての前記所定期間にわたる平均強度が、強度閾値と比べて高くなったときに、当該物標と前記測距センサとの間の距離が、前記所定期間にわたり変化していないと認識することを特徴とする移動体検出装置である。
【0014】
この構成によれば、室内と室外との間の境界と、測距センサと、の間の一定距離を認識するとともに、移動体と測距センサとの間の非一定距離を棄却することができる。
【0015】
また、本開示は、前記距離閾値設定部は、物標と前記測距センサとの間の距離が、複数の候補を有するときに、最も近い(ただし、所定距離以上)物標と前記測距センサとの間の距離を、前記室内と前記室外との間の前記境界と、前記測距センサと、の間の距離として認識することを特徴とする移動体検出装置である。
【0016】
この構成によれば、室内に移動体が存在するか否かを判定するための距離閾値として、室内と室外との間の境界と、測距センサと、の間の最近距離を設定することができる。
【0017】
また、本開示は、前記距離測定部は、前記測距センサとして、FMCW(Frequency-Modulation Continuous-Wave)方式のレーダを用いることを特徴とする移動体検出装置である。
【0018】
この構成によれば、室内の移動体及び室内と室外との間の境界は、測距センサから見て近距離に位置しているところ、高分解能で検出することができる。
【0019】
また、本開示は、前記距離測定部は、前記測距センサ及び方位センサとして、MIMO(Multiple-Input Multiple-Output)方式のレーダを用いることを特徴とする移動体検出装置である。
【0020】
この構成によれば、室内と室外との間の境界は、測距センサから見て2次元方向又は3次元方向に位置しているところ、2次元的又は3次元的に検出することができる。
【0021】
また、本開示は、以上に記載の移動体検出装置と、前記測距センサと、を備えることを特徴とする移動体検出システムである。
【0022】
この構成によれば、以上の効果を有するシステムを提供することができる。
【0023】
また、本開示は、以上に記載の移動体検出装置が備える各処理部が行なう各処理ステップ、をコンピュータに順に実行させるための移動体検出プログラムである。
【0024】
この構成によれば、以上の効果を有するプログラムを提供することができる。
【0025】
また、本開示は、以上に記載の移動体検出装置が備える各処理部が行なう各処理ステップ、を順に備えることを特徴とする移動体検出方法である。
【0026】
この構成によれば、以上の効果を有する処理手順を提供することができる。
【0027】
なお、上記各開示の発明は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0028】
このように、本開示は、室内と室外との間の境界が、電波を透過する素材を使用しているときにも、室内のレーダセンサを用いて、室内の移動体を高精度に検出する一方で、室外の移動体を高精度に棄却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本開示の移動体検出システムの構成を示す図である。
【
図2】本開示の移動体検出処理の手順を示す図である。
【
図3】本開示の移動体検出処理の具体例を示す図である。
【
図4】本開示の距離閾値設定処理の手順を示す図である。
【
図5】本開示の移動体を棄却して静止体を認識する処理の具体例を示す図である。
【
図6】本開示のFMCW方式のレーダを用いる処理の具体例を示す図である。
【
図7】本開示のパルス方式のレーダを用いる処理の具体例を示す図である。
【
図8】本開示の最も近い距離の静止体を認識する処理の具体例を示す図である。
【
図9】本開示のMIMO方式のレーダを用いる処理の具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
添付の図面を参照して本開示の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本開示の実施の例であり、本開示は以下の実施形態に制限されるものではない。
【0031】
(本開示の移動体検出システムの構成)
本開示の移動体検出システムの構成を
図1に示す。移動体検出システムDは、測距センサ1及び移動体検出装置2を備える。移動体検出装置2は、距離測定部21、距離閾値設定部22及び移動体判定部23を備える。ここで、移動体検出装置2は、
図2、4に示す移動体検出プログラムを、コンピュータにインストールし実現することができる。
【0032】
本開示では、室内の測距センサ1(マイクロ波等)を用いて、室内の移動体(人間等)を検出している。ここで、測距センサ1として、FMCW方式のレーダ、パルス方式のレーダ、又は、MIMO方式のレーダ(方位センサでもある)を用いることができる。
【0033】
ところで、室内と室外との間の境界(壁、扉、天井又は床等)は、電波を透過する素材(木材、石膏ボード又はプラスティック等)を使用していることがある。
【0034】
本開示では、室内に移動体が存在するか否かを判定するにあたり、移動体からドップラセンサへの反射強度が強度閾値と比べて高いか否かを判定するのではなく、移動体と測距センサ1との間の距離が距離閾値と比べて近いか否かを判定することとした。ここで、本開示では、室内に移動体が存在するか否かを判定するための距離閾値として、室内と室外との間の境界と、測距センサ1と、の間の距離を設定することとした。
【0035】
(本開示の移動体検出処理の手順)
本開示の移動体検出処理の手順を
図2に示す。距離測定部21は、物標と測距センサ1との間の距離d
tを測定する(ステップS1)。ここで、距離測定部21は、FMCW方式のビート周波数又はパルス方式の反射時間に基づいて、距離d
tを測定する。
【0036】
距離閾値設定部22は、室内と室外との間の境界と、測距センサ1と、の間の距離d
bを、室内に移動体が存在するか否かを判定するための距離閾値d
thとして設定する(ステップS2)。ここで、距離閾値設定部22は、
図4に従って、距離閾値d
thを設定する。
【0037】
移動体判定部23は、移動体と測距センサ1との間の距離dmが、距離閾値dthと比べて近いときに(ステップS3、YES)、室内に移動体が存在することを判定する(ステップS4)。そして、移動体検出システムDは、室内の照明の点灯等を制御する。
【0038】
移動体判定部23は、移動体と測距センサ1との間の距離dmが、距離閾値dthと比べて遠いときに(ステップS3、NO)、室内に移動体が存在しないことを判定する(ステップS5)。そして、移動体検出システムDは、室内の照明の消灯等を制御する。
【0039】
本開示の移動体検出処理の具体例を
図3に示す。
図3の左欄及び右欄では、部屋Rの室内と室外との間の境界と、移動体検出システムDと、の間の距離d
bを、距離閾値d
thとして設定する。
図3の左欄では、移動体Mと移動体検出システムDとの間の距離d
mが、距離閾値d
thと比べて近いため、部屋Rの室内に移動体Mが存在することを判定する。
図3の右欄では、移動体Mと移動体検出システムDとの間の距離d
mが、距離閾値d
thと比べて遠いため、部屋Rの室内に移動体Mが存在しないことを判定する。
【0040】
このように、室内と室外との間の境界が、電波を透過する素材を使用しているときにも、室内の測距センサ1を用いて、室内の移動体を高精度に検出する一方で、室外の移動体を高精度に棄却することができる。そして、測距センサ1の設置者が、距離閾値を物差し等で測定する手順を実行する負担を低減することができ、測距センサ1の製造者が、距離閾値を表示器等で入力する構成を製造するコストを低減することができる。
【0041】
(本開示の距離閾値設定処理の手順)
本開示の距離閾値設定処理の手順を
図4に示す。ここで、本開示の距離閾値設定処理は、測距センサ1が初期設置されるときに実行されてもよく、測距センサ1が常時使用されるときに実行されてもよい。そして、本開示の距離閾値設定処理は、室内に移動体が存在しないときに実行されてもよく、室内に移動体が存在するときに実行されてもよい。
【0042】
距離閾値設定部22は、物標と測距センサ1との間の距離dtが、所定期間にわたり変化していないときに(ステップS6、NO)、当該物標と測距センサ1との間の距離dtを、室内と室外との間の境界と、測距センサ1と、の間の距離dbとして認識する(ステップS8)。なお、距離閾値設定部22は、ステップS7も経て、ステップS8を実行する。
【0043】
距離閾値設定部22は、物標と測距センサ1との間の距離dtが、所定期間にわたり変化しているときに(ステップS6、YES)、当該物標と測距センサ1との間の距離dtを、室内と室外との間の境界と、測距センサ1と、の間の距離dbとして棄却する(ステップS9)。なお、距離閾値設定部22は、ステップS7を経ず、ステップS9を実行する。
【0044】
本開示の移動体を棄却して静止体を認識する処理の具体例を
図5に示す。
図5の左欄から右欄へと、所定期間にわたる時間変化が生じている。
図5の左欄から右欄へと、静止体と移動体検出システムDとの間の距離d
t1が、所定期間にわたり変化していないため、静止体と移動体検出システムDとの間の距離d
t1を、部屋Rの室内と室外との間の境界と、移動体検出システムDと、の間の距離d
bとして認識する。
図5の左欄から右欄へと、移動体Mと移動体検出システムDとの間の距離d
t2が、所定期間にわたり変化しているため、移動体Mと移動体検出システムDとの間の距離d
t2を、部屋Rの室内と室外との間の境界と、移動体検出システムDと、の間の距離d
bとして棄却する。
【0045】
このように、室内に移動体が存在するか否かを判定するための距離閾値として、室内と室外との間の境界と、測距センサ1と、の間の一定距離を設定することができる。
【0046】
本開示のFMCW方式のレーダを用いる処理の具体例を
図6に示す。距離測定部21は、測距センサ1として、FMCW方式のレーダを用いる(ステップS1)。
【0047】
図6の左欄(及び
図5)では、距離閾値設定部22は、測距センサ1が生成したビート信号についての所定期間(FMCW方式のチャープ周期p
1~p
n)にわたる平均強度が、強度閾値と比べて高くなったときに、当該物標と測距センサ1との間の距離d
t1が、当該所定期間にわたり変化していないと認識する(ステップS6、NO)。
【0048】
図6の右欄(及び
図5)では、距離閾値設定部22は、測距センサ1が生成したビート信号についての所定期間(FMCW方式のチャープ周期p
1~p
n)にわたる平均強度が、強度閾値と比べて低くなったときに、当該物標と測距センサ1との間の距離d
t2が、当該所定期間にわたり変化していると認識する(ステップS6、YES)。
【0049】
本開示のパルス方式のレーダを用いる処理の具体例を
図7に示す。距離測定部21は、測距センサ1として、パルス方式のレーダを用いる(ステップS1)。
【0050】
図7の左欄(及び
図5)では、距離閾値設定部22は、測距センサ1が受信したパルス信号についての所定期間(パルス方式の送受信周期p
1~p
n)にわたる平均強度が、強度閾値と比べて高くなったときに、当該物標と測距センサ1との間の距離d
t1が、当該所定期間にわたり変化していないと認識する(ステップS6、NO)。
【0051】
図7の右欄(及び
図5)では、距離閾値設定部22は、測距センサ1が受信したパルス信号についての所定期間(パルス方式の送受信周期p
1~p
n)にわたる平均強度が、強度閾値と比べて低くなったときに、当該物標と測距センサ1との間の距離d
t2が、当該所定期間にわたり変化していると認識する(ステップS6、YES)。
【0052】
このように、室内と室外との間の境界と、測距センサ1と、の間の一定距離を認識するとともに、移動体と測距センサ1との間の非一定距離を棄却することができる。
【0053】
特に、FMCW方式によれば、室内の移動体及び室内と室外との間の境界は、測距センサ1から見て近距離に位置しているところ、高分解能で検出することができる。
【0054】
距離閾値設定部22は、物標と測距センサ1との間の距離が、複数の候補を有するときに、最も近い物標と測距センサ1との間の距離dtを、室内と室外との間の境界と、測距センサ1と、の間の距離dbとして認識する(ステップS7、YES、ステップS8)。
【0055】
距離閾値設定部22は、物標と測距センサ1との間の距離が、複数の候補を有するときに、近くない物標と測距センサ1との間の距離dtを、室内と室外との間の境界と、測距センサ1と、の間の距離dbとして棄却する(ステップS7、NO、ステップS9)。
【0056】
本開示の最も近い距離の静止体を認識する処理の具体例を
図8に示す。部屋Rの室内と室外との間の境界(測距センサ1のメインローブ方向)と、移動体検出システムDと、の間の距離d
t1が、
図8のうちでは最も近い距離であるため、部屋Rの室内と室外との間の境界と、移動体検出システムDと、の間の距離d
bとして認識される。
【0057】
一方で、部屋Rの室内と室外との間の境界(測距センサ1のサイドローブ方向)と、移動体検出システムDと、の間の距離d
t2が、
図8のうちでは近くない距離であるため、部屋Rの室内と室外との間の境界と、移動体検出システムDと、の間の距離d
bとして棄却される。そして、静止体S(部屋Rの室外に存在する)と、移動体検出システムDと、の間の距離d
t3が、
図8のうちでは近くない距離であるため、部屋Rの室内と室外との間の境界と、移動体検出システムDと、の間の距離d
bとして棄却される。
【0058】
ここで、測距センサ1のアンテナと、測距センサ1のケースと、の間の距離が、
図8のうちでは最も近い距離として測定されないように、物標と移動体検出システムDとの間の距離d
tとして、所定距離以上は候補に挙がるが、所定距離未満は候補に挙がらない。
【0059】
このように、室内に移動体が存在するか否かを判定するための距離閾値として、室内と室外との間の境界と、測距センサ1と、の間の最近距離を設定することができる。
【0060】
(本開示のMIMO方式のレーダを用いる処理)
本開示のMIMO方式のレーダを用いる処理の具体例を
図9に示す。距離測定部21は、測距センサ1及び方位センサ(複数の受信アンテナの受信信号の位相差に基づいて、物標の方位を測定する)として、MIMO方式のレーダを用いる(ステップS1)。
【0061】
図9の左欄及び右欄では、部屋Rの室内と室外との間の右側の境界と、移動体検出システムDと、の間の距離d
b1を、右側の距離閾値d
th1として設定する。そして、部屋Rの室内と室外との間の上側の境界と、移動体検出システムDと、の間の距離d
b2を、上側の距離閾値d
th2として設定する。さらに、部屋Rの室内と室外との間の下側の境界と、移動体検出システムDと、の間の距離d
b3を、下側の距離閾値d
th3として設定する。
【0062】
図9の左欄では、移動体Mと移動体検出システムDとの間の距離d
m及び方向θ
mが、右側の距離閾値d
th1及び下側の距離閾値d
th3が張る領域の内側にあるため、部屋Rの室内に移動体Mが存在することを判定する。
図9の右欄では、移動体Mと移動体検出システムDとの間の距離d
m及び方向θ
mが、右側の距離閾値d
th1及び下側の距離閾値d
th3が張る領域の外側にあるため、部屋Rの室内に移動体Mが存在しないことを判定する。
【0063】
このように、室内と室外との間の境界は、測距センサ1から見て2次元方向又は3次元方向に位置しているところ、2次元的又は3次元的に検出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本開示の移動体検出装置、システム、プログラム及び方法は、室内と室外との間の境界が、電波を透過する素材を使用しているときにも、室内のレーダセンサを用いて、室内の移動体を高精度に検出する一方で、室外の移動体を高精度に棄却することができる。
【符号の説明】
【0065】
D:移動体検出システム
1:測距センサ
2:移動体検出装置
21:距離測定部
22:距離閾値設定部
23:移動体判定部
R:部屋
M:移動体
S:静止体