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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131519
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】ウェーハの研削装置及び研削方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 49/14 20060101AFI20240920BHJP
   B24B 49/12 20060101ALI20240920BHJP
   B24B 55/02 20060101ALI20240920BHJP
   B24B 49/04 20060101ALI20240920BHJP
   B24B 7/04 20060101ALI20240920BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B24B49/14
B24B49/12
B24B55/02 B
B24B49/04 Z
B24B7/04 A
H01L21/304 622R
H01L21/304 631
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041835
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 篤史
(72)【発明者】
【氏名】阿部 公亮
(72)【発明者】
【氏名】ユ テソプ
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友亮
(72)【発明者】
【氏名】竹川 真弘
【テーマコード(参考)】
3C034
3C043
3C047
5F057
【Fターム(参考)】
3C034AA08
3C034BB73
3C034BB87
3C034BB92
3C034BB93
3C034CA02
3C034CA19
3C034CA22
3C034CA24
3C034CB01
3C034CB14
3C043BA03
3C043BA09
3C043BA14
3C043BA16
3C043CC04
3C043CC13
3C043DD02
3C043DD03
3C043DD04
3C043DD05
3C043DD06
3C043EE04
3C047FF04
3C047GG01
3C047GG08
5F057AA02
5F057AA19
5F057AA31
5F057BA11
5F057BA28
5F057BB03
5F057CA14
5F057DA11
5F057EB20
5F057FA01
5F057FA13
5F057FA45
5F057GA04
5F057GA16
5F057GA27
5F057GB02
5F057GB13
(57)【要約】
【課題】面内厚み差を小さく抑えてウェーハを全面に亘って均一な厚みに研削することができるウェーハの研削方法を提供すること。
【解決手段】チャックテーブル10に保持されたテスト用の第1ウェーハW1を仕上げ厚みに研削する第1研削工程と、該第1研削工程において研削された第1ウェーハW1の厚みを半径方向の複数箇所で測定する厚み測定工程と、該厚み測定工程において測定した第1ウェーハW1の複数箇所での厚みのうち、予め設定した基準厚みよりも大きな厚み部分または小さな厚み部分の直上に噴射ノズル60を位置づけるノズル位置づけ工程と、チャックテーブル10に次に保持された第2ウェーハW2に噴射ノズル60から冷水または温水を噴射しながら該第2ウェーハW2を研削する第2研削工程と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心を頂点とする円錐状の保持面によってウェーハを保持するチャックテーブと、
該頂点を通るテーブル回転軸心とする軸で該チャックテーブルを回転させるテーブル回転機構と、
環状の研削砥石の中心を通る砥石回転軸心とする軸で該研削砥石を回転させてウェーハを研削する研削ユニットと、
該研削ユニットを該保持面に接近及び離間する方向に昇降させる昇降機構と、
該研削ユニットによって研削されたウェーハの厚みを測定する厚み測定器と、
該研削砥石の内側に研削水を供給する研削水供給手段と、
を備え、該ウェーハの半径部分に接触させた該研削砥石の下面で該ウェーハを研削するウェーハの研削装置であって、
研削加工中の該研削砥石の外側において該ウェーハの上面の少なくとも一部に冷水または温水を噴射する噴射ノズルを備え、
研削後の常温となったウェーハが均一な厚みとなるように、該テーブル回転機構による該チャックテーブルの回転動作と、該噴射ノズルから噴射した冷水または温水とによってウェーハの少なくとも一部をリング状に収縮または膨張させた状態で研削する、ウェーハの研削装置。
【請求項2】
請求項1記載のウェーハの研削装置を用いて実施されるウェーハの研削方法であって、
該チャックテーブルに保持された第1ウェーハを仕上げ厚みに研削する第1研削工程と、
該第1研削工程において研削された第1ウェーハの厚みを半径方向の複数箇所で測定する厚み測定工程と、
該厚み測定工程において測定した第1ウェーハの複数箇所での厚みのうち、予め設定した基準厚みよりも大きな厚み部分または小さな厚み部分の直上に噴射ノズルを位置づけるノズル位置づけ工程と、
該チャックテーブルに次に保持された第2ウェーハに該ノズル位置づけ工程において該基準厚みよりも大きな厚み部分に位置付けられた該噴射ノズルから温水を噴射させ、該位置づけ工程において該基準厚みよりも小さな厚み部分の直上に位置付けられた該噴射ノズルから冷水を噴射させ、第2ウェーハを研削する第2研削工程と、
を備える、ウェーハの研削方法。
【請求項3】
厚み測定工程の後から該第2研削工程の前までに、該テーブル回転軸心と該砥石回転軸心との傾き関係を調整して、該第1研削工程において研削した該第1ウェーハの外周部分の厚みを小さくまたは大きくし、外周部分以外の部分の厚みを基準厚みにする傾き調整工程を備える、請求項2記載のウェーハの研削方法。
【請求項4】
請求項1記載のウェーハの研削装置を用いて実施されるウェーハの研削方法であって、
該チャックテーブルに保持されたウェーハを仕上げ厚みに達する前まで研削する第1研削工程と、
該第1研削工程において研削された該ウェーハの厚みを半径方向の複数箇所で測定する厚み測定工程と、
該厚み測定工程において測定した該ウェーハの複数箇所での厚みのうち、予め設定した基準厚みよりも大きな厚み部分または小さな厚み部分の直上に噴射ノズルを位置づけるノズル位置づけ工程と、
該ノズル位置づけ工程において該基準厚みよりも大きな厚み部分に位置付けられた該噴射ノズルから温水を噴射させ、該ノズル位置づけ工程において該基準厚みよりも小さな厚み部分の直上に位置付けられた該噴射ノズルから冷水を噴射させ、該ウェーハを仕上げ厚みまで研削する第2研削工程と、
を備える、ウェーハの研削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャックテーブルの保持面に保持されたウェーハを研削砥石によって研削するウェーハの研削装置及び研削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種電子機器に用いられるICやLSIなどの半導体デバイスの製造工程においては、半導体デバイスの小型化と軽量化のために、ウェーハの裏面が研削されて該ウェーハが所定の厚さまで薄化されている。ウェーハを研削する研削装置においては、中心を頂点として外周に沿って下方に向かって僅かに傾斜する円錐状の保持面を有するチャックテーブルが使用され、このチャックテーブルの保持面上にウェーハを保持し、ウェーハの半径部分を環状の研削砥石の下面に接触させて該ウェーハの裏面全面を研削する方法が採用されている(例えば、特許文献1~3参照)。このような研削方法においては、チャックテーブルの保持面が研削砥石の研削面と平行になるようにチャックテーブルの傾きを調整することによって、ウェーハが均一な面内厚みとなるように研削している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-264913号公報
【特許文献2】特開2013-119123号公報
【特許文献3】特開2014-226749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、研削加工時の加工熱を受けたチャックテーブル単体の熱変形が起因して、チャックテーブルの回転軸と研削砥石の回転軸との傾き関係を調整するだけでは、ウェーハを均一な厚みに研削することができないことがある。また、チャックテーブルは、ウェーハを加工後のウェーハを離間させても、加工熱を除去しきれないため、ウェーハを研削するたびに、加工熱を蓄熱して熱変形を起こしている。特に、近年はウェーハの面内の厚み差を0.1μm以下に抑えることが要求されており、従来のチャックテーブルと研削砥石との傾き関係を調整してウェーハ全面の厚みを調整する研削方法では、この要求に応えることができない。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、面内厚み差を小さく抑えてウェーハを全面に亘って均一な厚みに研削することができるウェーハの研削装置及び研削方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明は、中心を頂点とする円錐状の保持面によってウェーハを保持するチャックテーブと、該頂点を通るテーブル回転軸心とする軸で該チャックテーブルを回転させるテーブル回転機構と、環状の研削砥石の中心を通る砥石回転軸心とする軸で該研削砥石を回転させてウェーハを研削する研削ユニットと、該研削ユニットを該保持面に接近及び離間する方向に昇降させる昇降機構と、該研削ユニットによって研削されたウェーハの厚みを測定する厚み測定器と、該研削砥石の内側に研削水を供給する研削水供給手段と、を備え、該ウェーハの半径部分に接触させた該研削砥石の下面で該ウェーハを研削するウェーハの研削装置であって、研削加工中の該研削砥石の外側において該ウェーハの上面の少なくとも一部に冷水または温水を噴射する噴射ノズルを備え、研削後の常温となったウェーハが均一な厚みとなるように、該テーブル回転機構による該チャックテーブルの回転動作と、該噴射ノズルから噴射した冷水または温水とによってウェーハの少なくとも一部をリング状に収縮または膨張させた状態で研削することを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、上記ウェーハの研削装置を用いて実施されるウェーハの研削方法であって、該チャックテーブルに保持された第1ウェーハを仕上げ厚みに研削する第1研削工程と、該第1研削工程において研削された第1ウェーハの厚みを半径方向の複数箇所で測定する厚み測定工程と、該厚み測定工程において測定した第1ウェーハの複数箇所での厚みのうち、予め設定した基準厚みよりも大きな厚み部分または小さな厚み部分の直上に噴射ノズルを位置づけるノズル位置づけ工程と、該チャックテーブルに次に保持された第2ウェーハに該ノズル位置づけ工程において該基準厚みよりも大きな厚み部分に位置付けられた該噴射ノズルから温水を噴射させ、該位置づけ工程において該基準厚みよりも小さな厚み部分の直上に位置付けられた該噴射ノズルから冷水を噴射させ、第2ウェーハを研削する第2研削工程と、を備えることを特徴とする。
【0008】
さらに、本発明は、前記ウェーハの研削装置を用いて実施されるウェーハの研削方法であって、該チャックテーブルに保持されたウェーハを仕上げ厚みに達する前まで研削する第1研削工程と、該第1研削工程において研削された該ウェーハの厚みを半径方向の複数箇所で測定する厚み測定工程と、該厚み測定工程において測定した該ウェーハの複数箇所での厚みのうち、予め設定した基準厚みよりも大きな厚み部分または小さな厚み部分の直上に噴射ノズルを位置づけるノズル位置づけ工程と、該ノズル位置づけ工程において該基準厚みよりも大きな厚み部分に位置付けられた該噴射ノズルから温水を噴射させ、該ノズル位置づけ工程において該基準厚みよりも小さな厚み部分の直上に位置付けられた該噴射ノズルから冷水を噴射させ、該ウェーハを仕上げ厚みまで研削する第2研削工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る研削装置を用いて実施される本発明に係るウェーハの研削方法によれば、第1研削工程において所定厚みに研削した第1ウェーハ(テスト用)の半径方向の複数箇所の厚みを次の厚み測定工程において測定し、次の第2研削工程において、厚み測定工程において測定された複数箇所での厚みのうち、予め設定した基準厚みより第1ウェーハの厚みが大きくなった部分と第2ウェーハ(製品用)の同じ部分に噴射ノズルから温水を噴射しながら、つまり、研削後の第2ウェーハの基準厚みより大きい厚みとなる部分を温水によって加熱して膨張させながら、第2ウェーハを研削するようにしたため、加熱によって膨張した部分(大きい厚み部分)の第2研削工程における研削量が他の部分よりも大きくなる。したがって、研削加工後に第2ウェーハの温度が常温に戻ると、元々厚みが他の部分よりも大きかった部分の厚みが他の部分と同等となり、面内厚み差を小さく抑えて第2ウェーハを全面に亘って均一な厚みに研削することができる。
【0010】
他方、第2研削工程において、前の厚み測定工程において測定された第1ウェーハの複数箇所での厚みのうち、予め設定した基準厚みより第1ウェーハに厚みが小さくなった部分と第2ウェーハ(製品用)の同じ部分に噴射ノズルから冷水を噴射しながら、つまり、研削後の第2ウェーハの基準厚みより小さい厚みとなる部分を冷水によって冷却して収縮させながら、第2ウェーハを研削するようにしたため、冷却によって収縮した部分(小さい厚み部分)の第2研削工程における研削量が他の部分よりも小さくなる。したがって、研削加工後に第2ウェーハの温度が常温に戻ると、元々厚みが他の部分よりも小さかった部分の厚みが他の部分と同等となり、面内厚み差を小さく抑えて第2ウェーハを全面に亘って均一な厚みに研削することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係るウェーハの研削装置の一部を破断して示す斜視図である。
図2】第1発明の第1実施形態に係るウェーハの研削方法における第1研削工程を示す研削装置要部の側断面図である。
図3】(a)は第1発明の第1実施形態に係るウェーハの研削方法における厚み測定工程を示す研削装置要部の側断面図、(b)は第1ウェーハの厚みの径方向分布を示す図である。
図4】第1発明の第1実施形態に係るウェーハの研削方法における位置づけ工程と第2研削工程を示す研削装置要部の側断面図である。
図5】第1発明の第1実施形態に係るウェーハの研削方法における傾き調整工程を示す研削装置要部の側断面図である。
図6】第1発明の第2実施形態に係るウェーハの研削方法における第1研削工程を示す研削装置要部の側断面図である。
図7】(a)は第1発明の第2実施形態に係るウェーハの研削方法における厚み測定工程を示す研削装置要部の側断面図、(b)は第1ウェーハの厚みの径方向分布を示す図である。
図8】第1発明の第2実施形態に係るウェーハの研削方法における位置づけ工程と第2研削工程を示す研削装置要部の側断面図である。
図9】第1発明の第2実施形態に係るウェーハの研削方法における傾き調整工程を示す研削装置要部の側断面図である。
図10】(a)は第1発明の別形態に係るウェーハの研削方法における厚み測定工程を示す研削装置要部の側断面図、(b)は第3ウェーハの厚みの径方向分布を示す図である。
図11】第2発明に係るウェーハの研削方法における第1研削工程を示す研削装置要部の側断面図である。
図12】(a)は第2発明に係るウェーハの研削方法における厚み測定工程を示す研削装置要部の側断面図、(b)は第3ウェーハの厚みの径方向分布を示す図である。
図13】第2発明に係るウェーハの研削方法における第2研削工程を示す研削装置要部の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0013】
[研削装置の構成]
まず、本発明に係るウェーハの研削装置の構成について説明する。なお、以下の説明においては、図1に示す矢印方向をそれぞれX軸方向(左右方向)、Y軸方向(前後方向)、Z軸方向(上下方向)とする。
【0014】
図1に示す研削装置1は、被加工物である円板状のウェーハWを研削加工するものであって、次の構成要素を備えている。
【0015】
すなわち、研削装置1は、ウェーハWを保持して回転するチャックテーブル10と、該チャックテーブル10を回転駆動するテーブル回転機構12(図2参照)と、チャックテーブル10に保持されたウェーハWを研削加工する研削ユニット20と、該研削ユニット20をチャックテーブル10の保持面10a(図2参照)に対して垂直方向(Z軸方向)に昇降させる昇降機構30と、ウェーハWの研削加工中に円環状の研削砥石25b(図2参照)の内側に研削水を供給する研削水供給手段40と、研削加工中のウェーハWの厚みを測定する厚み測定器50と、研削加工中のウェーハWの上面の少なくとも1箇所(本実施形態では、外周部)に冷水または温水を噴射する噴射ノズル60を主要な構成要素として備えている。
【0016】
ここで、ウェーハWは、単結晶のシリコン母材で構成されており、図1に示す状態において下方を向いている表面には、複数の不図示のデバイスが形成されており、これらのデバイスは、ウェーハWの表面に貼着された不図示の保護テープによって保護されている。そして、ウェーハWは、その表面(図1においては下面)が保護テープを介してチャックテーブル10の保持面10aに吸引保持され、裏面(図1においては上面が研削水供給手段40から研削水の供給を受けながら研削ユニット20の研削砥石25bによって研削される。
【0017】
次に、研削装置1の主要な構成要素であるチャックテーブル10とテーブル回転機構12、研削ユニット20、昇降機構30、研削水供給手段40、厚み測定器50及び噴射ノズル60の構成についてそれぞれ説明する。
【0018】
(チャックテーブル及びテーブル回転機構)
チャックテーブル10は、円板状の部材であって、図2に示すように、その中央部には円板状のポーラス部材11が組み込まれている。なお、ポーラス部材11は、多孔質のセラミックなどで構成されており、真空ポンプなどの不図示の吸引源に選択的に接続される。
【0019】
ここで、チャックテーブル10の上面は、図2に示すように、中心を頂点として外周に向かって下方に傾斜する円錐状の保持面10aを構成しており、この保持面10aにウェーハWの表面(図2においては、下面)が不図示の保護テープを下にして保持される。なお、図2においては、チャックテーブル10の円錐状の保持面10aの傾斜を誇張して図示しているが、実際には、この傾斜は、肉眼で視認することができない程度の僅かなものである。
【0020】
そして、チャックテーブル10は、図2に示すテーブル回転機構12によって保持面10aの頂点を通るテーブル回転軸心CL1を中心として矢印方向(反時計方向)に回転駆動される。すなわち、チャックテーブル10は、その中心から下方に向かって垂直に一体に延びる不図示のテーブル回転軸を備えており、このテーブル回転軸がテーブル回転機構12によってテーブル回転軸心CL1として所定の速度で回転駆動される。ここで、テーブル回転機構12は、駆動源である不図示のサーボモータや、該サーボモータの回転数や回転方向、回転角度などを検出する不図示のエンコーダなどを含んで構成されている。
【0021】
ところで、図1に示すように、本実施形態に係る研削装置1は、Y軸方向(前後方向)に長い矩形ボックス状のベース100を備えており、このベース100に開口するY軸方向に長い矩形の開口部100aにはチャックテーブル10が臨んでいる。そして、開口部100aのチャックテーブル10の周囲は、矩形プレート状のカバー2によって覆われており、開口部100aのカバー2の前後(-Y方向と+Y方向)の部分は、カバー2と共に移動して伸縮する蛇腹状の伸縮カバー3,4によってそれぞれ覆われている。したがって、チャックテーブル10がY軸上のどの位置にあっても、開口部100aは、カバー2と伸縮カバー3,4によって常に閉じられており、開口部100aからベース100内への異物の侵入が防がれる。
【0022】
また、チャックテーブル10は、不図示の傾き調整機構によって傾きが調整可能である。すなわち、チャックテーブル10のテーブル回転軸心CL1を鉛直線に対して図示の角度αだけ傾斜させ、該チャックテーブル10の保持面10aの水平面に対する傾きを調整することができる。
【0023】
さらに、チャックテーブル10は、ベース100内に収容された水平移動機構13(図2参照)によって水平方向(Y軸方向)に移動可能である。なお、水平移動機構13は、公知のボールネジ機構によって構成されているため、これについての詳細な説明は省略する。
【0024】
(研削ユニット)
研削ユニット20は、図1に示すように、ホルダ21に収容された回転駆動源であるスピンドルモータ22と、該スピンドルモータ22によって回転駆動される垂直なスピンドル23と、該スピンドル23の下端に取り付けられた円板状のマウント24と、該マウント24の下面に着脱可能に装着された研削ホイール25とを備えている。ここで、研削ホイール25は、円板状の基台25aと、該基台25aの下面に円環状に取り付けられた加工具である複数の研削砥石25bによって構成されている。ここで、研削砥石26bは、ウェーハWを研削するための矩形ブロック状の加工具であって、その下面は、ウェーハWの上面(被研削面)に接触する研削面を構成している。
【0025】
なお、研削ユニット20のスピンドル23は、マウント24と研削ホイール25と共に砥石回転軸心CL2として回転するが、本実施形態に係る研削装置1においては、砥石回転軸心CL2は鉛直に配置されて傾動不能である。これに対して、チャックテーブル10のテーブル回転軸心CL1は、不図示の傾き調整機構によって鉛直の砥石回転軸心CL2に対して例えば図2に示すように所定角度αだけ傾斜することができ、これによってチャックテーブル10の保持面10aが水平面に対して角度αだけ傾斜する。
【0026】
(昇降機構)
昇降機構30は、研削ユニット20をチャックテーブル10の保持面10aに接近及び離間させる機構であって、図1に示すように、ベース100の上面の+Y軸方向端部(後端部)上に垂直に立設された矩形ボックス状のコラム101の-Y軸方向端面(前面)に配置されている。この昇降機構30は、研削ユニット20のホルダ21の背面に取り付けられた矩形プレート状の昇降板31を、ホルダ21及び該ホルダ21に保持されたスピンドル23と研削ホイール25と共に左右一対のガイドレール32に沿ってZ軸方向に昇降させるものである。ここで、左右一対のガイドレール32は、コラム101の前面に垂直且つ互いに平行に配設されている。
【0027】
また、左右一対のガイドレール32の間には、回転可能なボールネジ33がZ軸方向(上下方向)に沿って垂直に立設されており、該ボールネジ33の上端は、駆動源である正逆転可能なサーボモータ34に連結されている。ここで、サーボモータ34は、コラム101の上面に取り付けられた矩形プレート状のブラケット35を介してコラム101に縦置き状態で取り付けられている。また、ボールネジ33の下端は、コラム101に回転可能に支持されており、このボールネジ33には、昇降板31の背面に後方(+Y軸方向)に向かって水平に突設された不図示のナット部材が螺合している。
【0028】
したがって、サーボモータ34を起動してボールネジ33を正逆転させれば、このボールネジ33に螺合する不図示のナット部材が取り付けられた昇降板31が一対のガイドレール32に沿って研削ユニット20と共に上下動するため、研削ユニット20が昇降して研削砥石26bのウェーハWに対する研削量(研削代)が設定される。
【0029】
(研削水供給手段)
研削水供給手段40は、研削加工中の研削砥石25bとウェーハWとの接触部である研削領域に向けて純水などの研削水を供給するものであって、研削加工中に回転する円環状の研削砥石26bの内側から研削水を噴出するものである。より詳細には、研削水供給手段40は、図1に示すように、ウォータポンプなどの研削水供給源41を備えており、この研削水供給源41から延びる配管42は、スピンドルモータ22の軸心に垂直に形成された不図示の供給路に接続されている。そして、スピンドルモータ22に形成された不図示の供給路は、図2に示すスピンドル23の軸心に垂直に形成された供給路23aに接続されており、供給路23aは、マウント24の中心から径方向外方に向かって放射状に延びる複数の供給路24aに接続されている。また、研削ホイール25の基台25aには、マウント24に形成された各供給路24aから垂直下方に向かって延びる複数のノズル25cが形成されている。
【0030】
したがって、研削水供給源41から配管42を経てスピンドルモータ22へと供給される研削水は、図2に示すスピンドル23に形成された供給路23aとマウント24に形成された複数の供給路24aを通って研削ホイール25の基台25aに形成された複数のノズル25cからウェーハWの上面に向かって噴射される。なお、本実施形態においては、後述のように、ウェーハWには、テスト用(ダミー)の第1ウェーハW1と製品としての第2ウェーハW2が含まれる。
【0031】
(厚み測定器)
厚み測定器50は、ウェーハW(本実施形態では、テスト用(ダミー)のウェーハW1)の厚みを非接触で光学的に測定するものであって、図1に示すように、ベース100上のチャックテーブル10の近傍に回動可能に垂直に立設された支軸51の上端から水平に延びるアーム52の先端に取り付けられた厚みセンサ53を備えている。ここで、支軸51には、該支軸51を回転させる駆動源であるモータ54と該モータの回転角度と回転方向を検出するエンコーダ55が内蔵されている。なお、厚みセンサ53は、第1ウェーハW1に向けて測定光である赤外光を第1ウェーハW1に向けて出射し、第1ウェーハW1の上面(裏面)と下面(表面)とでそれぞれ反射した反射光の干渉光を解析することによって第1ウェーハW1の厚みを非接触で測定するものである(図3参照)。なお、厚み測定器50は、超音波振動をウェーハWに向けて発振させ、ウェーハWの上面と下面とでそれぞれ反射した超音波振動を受振し、ウェーハWの厚みを測定するものでもよい。
【0032】
したがって、モータ54を起動してアーム52を、支軸51を中心として第1ウェーハW1の上方で揺動させることによって、該アーム52の先端に取り付けられた厚みセンサ53を第1ウェーハW1の半径方向に移動させて該第1ウェーハW1の半径方向の任意の箇所の厚みを測定することができる。
【0033】
(噴射ノズル)
噴射ノズル60は、図1に示す冷水供給源61または温水供給源62からウェーハW(本実施形態では、第2ウェーハW2)の上面の少なくとも1箇所(本実施形態では、外周部(図4参照))に冷水または温水を噴射するものであって、ベース100上のチャックテーブル10の近傍に回動可能に垂直に立設された支軸63の上端から水平に延びるアーム64の先端に取り付けられている。ここで、支軸63には、該支軸63を回転させる駆動源であるモータ65と該モータ65の回転角度と回転方向を検出するエンコーダ66が内蔵されている。
【0034】
ところで、図1に示すように、冷水供給源61と温水供給源62からそれぞれ延びる配管67,68は、1つの配管69に合流しており、配管69は、噴射ノズル60に接続されている。なお、各配管67,68には、開閉弁V1,V2がそれぞれ設けられている。
【0035】
したがって、モータ65を起動してアーム64を、支軸63を中心として第2ウェーハW2の上方で揺動させることによって、該アーム64の先端に取り付けられた噴射ノズル60を第2ウェーハW2の半径方向に移動させて該第2ウェーハW2の上面の半径方向の任意の箇所に冷水または温水を噴射することができる(図4参照)。
【0036】
[ウェーハの研削方法]
次に、以上のように構成された研削装置1を用いて実施される第1発明に係るウェーハW(W1,W2)の研削方法の実施形態について説明する。
【0037】
「第1発明」
<第1実施形態>
まず、ウェーハWの研削方法の第1実施形態を図2図5に基づいて以下に説明する。
【0038】
本実施形態に係るウェーハW(W1,W2)の研削方法は、1)第1研削工程と、2)厚み測定工程と、3)ノズル位置づけ工程と、4)第2研削工程を経てウェーハW(W1,W2)を研削する方法である。以下、これらの第1研削工程、厚み測定工程、ノズル位置づけ工程及び第2研削工程についてそれぞれ説明する。
【0039】
1)第1研削工程:
第1研削工程は、テスト用(ダミー)の第1ウェーハW1を研削する工程であって、この第1研削工程においては、図2に示すように、チャックテーブル10が、その回転軸心CL1が鉛直に対して図示の角度αだけ傾くように不図示の傾き調整機構によって傾けられ、このチャックテーブル10の保持面10a上に第1ウェーハW1が載置される。そして、チャックテーブル10のポーラス部材11が不図示の吸引源に接続される。すると、ポーラス部材11が不図示の吸引源によって真空引きされるため、該ポーラス部材11に負圧が発生し、この負圧に引かれて第1ウェーハW1がチャックテーブル10の円錐状の保持面10aに吸引保持される。この場合、薄い第1ウェーハW1は、チャックテーブル10の保持面10aの形状に沿って中心を頂点とする傘状に変形する。
【0040】
次に、水平移動機構13によってチャックテーブル10がこれに保持された第1ウェーハW1と共に+Y軸方向(図2の右方)へと水平移動し、第1ウェーハW1の中心を研削ホイール25の円環状の研削砥石25bの外接円が通るようにチャックテーブル10が位置決めされる。なお、チャックテーブル10の傾き角αは、図2に示すように、該チャックテーブル10の保持面10aの半径部分(図2の右半分)が研削ホイール25の水平な下面(研削面)と平行になるような値に設定される。
【0041】
上記状態において、テーブル回転機構12によってチャックテーブル10とこれに保持された第1ウェーハW1がテーブル回転軸心CL1とするテーブル回転軸で図示矢印方向(反時計方向)に所定の速度で回転駆動されるとともに、図1に示す研削ユニット20のスピンドルモータ22によって研削ホイール25が砥石回転軸心CL2としてチャックテーブル10の回転方向と同方向(反時計方向)に所定の速度で回転駆動される。そして、この状態から昇降機構30によって研削ユニット20が下降し、研削ホイール25の研削砥石25bが第1ウェーハW1の上面の半径部分に接触すると、該第1ウェーハW1の全面が研削砥石25bによって研削(第1研削)される。なお、このとき、研削水供給手段40の研削水供給源41から研削水が配管42(図1参照)と、スピンドルモータ22の軸心に形成された不図示の供給路、図2に示すスピンドル23の軸心に形成された供給路23a、マウント24に形成された複数の供給路24aを順次通って研削ホイール25の基台25aに垂直に形成された複数のノズル25cから第1ウェーハW1の上面に向かって噴射される。このため、第1ウェーハW1の研削によって発生した研削屑が研削水によって除去されるとともに、研削砥石25bと第1ウェーハW1との接触部に発生する摩擦熱が研削水によって奪われて該接触部が冷却される。
【0042】
以上の第1研削工程において、第1ウェーハW1の上面(裏面)の全面が研削砥石25bによって研削されても、研削加工時の加工熱を受けたチャックテーブル10単体の熱変形が起因して第1ウェーハW1が半径方向に均一な厚みとならず、厚み差が不可避的に発生する。
【0043】
2)厚み測定工程:
厚み測定工程は、前記第1研削工程において研削された第1ウェーハW1の半径方向の複数箇所の厚みを測定して該第1ウェーハW1の半径方向の厚み分布を求める工程であって、この厚み測定工程においては、図3(a)に示すように、昇降機構30によって研削ホイール25が上昇し、研削砥石25bが第1ウェーハW1から離間する。なお、このとき、研削ホイール25は、回転しているが、停止させてもよい。
【0044】
上記状態において、図1に示す厚み測定器50の支軸51がモータ54によって所定の角度範囲で回動すると、該支軸51の上端に取り付けられたアーム52が支軸51を中心として水平に旋回するため、該アーム52の先端に取り付けられた厚みセンサ53が図3(a)に示すように第1ウェーハW1の上方を中心部から外周部に向かって移動する。本実施形態においては、第1ウェーハW1の厚みが該第1ウェーハW1の中心部Aと外周部Bと両者の中間部Cと中心部Aと中間部Cとの間の測定部D及び中間部Cと外周部Bとの間の測定部Eの5点において厚みセンサ53によって光学的に非接触でそれぞれ測定される。つまり、チャックテーブル10と研削砥石25bとの傾き関係を調整する際に使用していた測定箇所(中心部A、中間部C、外周部B)以外の2箇所D,EにおいてもウェーハWの厚みを測定する。なお、測定箇所は、5点に限定するものではない。
【0045】
上述のように、第1ウェーハW1の中心部A、測定部D、中間部C、測定部E、外周部Bにおける厚みが厚みセンサ53によって測定された結果を図3(b)に示すが、本実施形態では、該第1ウェーハW1の外周部Bにおける厚みtが最も大きい。
【0046】
なお、本実施の形態では、厚み測定器50として、支軸51を中心として水平旋回するアーム52の先端に厚みセンサ53を取り付けて構成されるものを使用したが、旋回しない水平なアームの5点に厚みセンサを取り付けたものを使用してもよい。
【0047】
3)ノズル位置づけ工程:
ノズル位置づけ工程においては、チャックテーブル10の保持面10aに保持されていた第1ウェーハW1が取り外され、図4に示すように、チャックテーブル10の保持面10aには製品としての第2ウェーハW2が吸引保持される。そして、図3(b)に示す予め設定した基準厚みtよりも大きい厚みt(>t)を示す第2ウェーハW2の外周部(第1ウェーハW1の大きい厚みtを示す外周部Bに対応する第2ウェーハW2の外周部)の直上に噴射ノズル60が位置づけられる。すなわち、図1に示すモータ65を起動して支軸63を所定角度だけ回転させると、該支軸63の上端に取り付けられたアーム64が水平旋回するため、該アーム64の先端に取り付けられた噴射ノズル60が第2ウェーハW2の上方を水平に移動し、図4に示すように、該噴射ノズルが第2ウェーハW2の外周部の直上に位置づけられる。
【0048】
4)第2研削工程:
第2研削工程においては、図4に示すように、前記ノズル位置決め工程において第2ウェーハW2の外周部(厚みが基準厚みよりも大きい部分)の直上に位置づけられた噴射ノズル60から温水が研削砥石25bの外側から第2ウェーハW2の外周部に向けて噴射されて該外周部が加熱される。すなわち、図1に示す一方の開閉弁V1が閉じられ、他方の開閉弁V2が開かれて温水供給源62からの温水が噴射ノズル60へと供給され、該噴射ノズル60から第2ウェーハW2の外周部に向かって温水が噴射される。なお、第2ウェーハW2の厚みが予め設定された仕上げ厚みの5μmから1μm手前になったら、噴射ノズル60から温水を噴射するように制御している。
【0049】
そして、上述のように、噴射ノズル60から第2ウェーハW2の外周部に向かって温水を噴射しながら、第1研削工程と同様に、チャックテーブル10と第2ウェーハW2を回転させながら、研削ホイール25の回転する研削砥石25bによって第2ウェーハW2の上面(裏面)を研削(第2研削)する。
【0050】
而して、第2研削工程においては、厚み測定工程において測定された複数の厚みのうち、予め設定した基準厚みより大きい第2ウェーハW2の外周部に噴射ノズル60から温水を噴射しながら、つまり、第2ウェーハW2の基準厚みより大きい厚み部分を温水によって加熱して膨張させながら、該第2ウェーハW2を研削するようにしたため、第2ウェーハW2の加熱によって膨張した外周部分(大きい厚み部分)の第2研削工程における研削量が他の部分よりも大きくなる。したがって、研削加工後に第2ウェーハW2の温度が常温に戻ると、元々厚みが他の部分よりも大きかった部分の厚みが他の部分と同等となり、面内厚み差が小さく抑えられて第2ウェーハW2が全面に亘って均一な厚みに研削される。
【0051】
ところで、第2研削工程において第2ウェーハW2をより均一な厚みに研削することができるように、厚み測定工程の後から第2研削工程の前までに、以下に説明する傾き調整工程を実施してもよい。
【0052】
5)傾き調整工程:
傾き調整工程は、チャックテーブル10のテーブル回転軸心CL1と研削ホイール25の砥石回転軸心CL2との傾き関係を調整して、第1研削工程において研削した第1ウェーハW1の外周部分(厚みが基準厚みよりも大きい部分)の厚みを小さくするようにする工程である。具体的には、図5に示すように、不図示の傾き調整機構によってチャックテーブル10のテーブル回転軸心CL1の傾き角βを図2図4に示す傾き角αよりも大きく設定する(β>α)。
【0053】
上述のように、傾き調整工程において、第1研削工程において研削した第1ウェーハW1の外周部分の厚みを基準厚みよりも大きくし、外周部分以外の部分の厚みを基準厚みにすると、次の第2研削工程において、第2ウェーハW2の外周部に噴射ノズル60から温水を噴射して該外周部を加熱して膨張させ研削するので、該第2ウェーハW2の厚みの大きな外周部の研削量を大きくすることができるため、第2研削工程において第2ウェーハW2を全面に亘ってより一層均一な厚みに研削することができる。なお、上述のように傾き調整工程によって、第1研削工程において研削した第1ウェーハW1の外周部分のみ厚みを基準厚みよりも大きくしているので、噴射ノズル60は、常にウェーハWの外周部に噴射するように、固定されていてもよい。
【0054】
<第2実施形態>
次に、本発明に係るウェーハWの研削方法の第2実施形態を図6図9に基づいて以下に説明する。
【0055】
本実施形態に係るウェーハWの研削方法も前記第1実施形態に係る研削方法と同様に、1)第1研削工程と、2)厚み測定工程と、3)ノズル位置づけ工程と、4)第2研削工程を経てウェーハWを研削する方法である。以下、これらの第1研削工程、厚み測定工程、ノズル位置づけ工程及び第2研削工程についてそれぞれ説明する。
【0056】
1)第1研削工程:
第1研削工程は、テスト用(ダミー)の第1ウェーハW1を研削する工程であって、この第1研削工程は、図6に示すように、前記第1実施形態の第1研削工程と同様に実施されるが、この第1研削工程においても、研削加工時の加工熱を受けたチャックテーブル10単体の熱変形が起因して第1ウェーハW1が半径方向に均一な厚みとならず、半径方向において厚み差が不可避的に発生する。
【0057】
2)厚み測定工程:
厚み測定工程は、前記第1研削工程において研削された第1ウェーハW1の半径方向の複数箇所の厚みを測定して該第1ウェーハW1の半径方向の厚み分布を求める工程であって、この厚み測定工程においては、図7(a)に示すように、昇降機構30によって研削ホイール25が上昇し、研削砥石25bが第1ウェーハW1から離間する。なお、このとき、研削ホイール25の回転は停止している。
【0058】
上記状態において、図1に示す厚み測定器50の支軸51がモータ54によって所定の角度範囲で回動すると、該支軸51の上端に取り付けられたアーム52が支軸51を中心として水平に旋回するため、該アーム52の先端に取り付けられた厚みセンサ53が図7(a)に示すように第1ウェーハW1の上方を中心部から外周部に向かって移動する。本実施形態においても、前記第1実施形態と同様に、第1ウェーハW1の厚みが該第1ウェーハW1の中心部A、測定部D、中間部C、測定部E、外周部Bの5点において厚みセンサ53によって光学的に非接触でそれぞれ測定される。
【0059】
上述のように、第1ウェーハW1の中心部A、測定部D、中間部C、測定部E、外周部Bにおける厚みが厚みセンサ53によって測定された結果を図7(b)に示すが、本実施形態では、第1ウェーハW1の外周部Bにおける厚みtが最も小さい。
【0060】
3)ノズル位置づけ工程:
ノズル位置づけ工程においては、チャックテーブル10の保持面10aに保持されていた第1ウェーハw1が取り外され、図8に示すように、チャックテーブル10の保持面10aには製品としての第2ウェーハW2が吸引保持される。そして、図7(b)に示す予め設定した基準厚みtよりも小さい厚みt(<t)を示す第2ウェーハW2の外周部Bの直上に噴射ノズル60が前記第1実施形態と同様に位置づけられる。
【0061】
4)第2研削工程:
第2研削工程においては、図8に示すように、前記ノズル位置決め工程において第2ウェーハW2の外周部(厚みが基準厚みよりも小さい部分)の直上に位置づけられた噴射ノズル60から冷水が第2ウェーハW2の外周部に向けて噴射されて該外周部が冷却される。すなわち、図1に示す一方の開閉弁V2が閉じられ、他方の開閉弁V1が開かれて冷水供給源61からの冷水が噴射ノズル60へと供給され、該噴射ノズル60から第2ウェーハW2の外周部に向かって冷水が噴射される。
【0062】
そして、上述のように、噴射ノズル60から第2ウェーハW2の外周部に向かって冷水を噴射しながら、第1研削工程と同様に、チャックテーブル10と第2ウェーハW2を回転させながら、研削ホイール25の回転する研削砥石25bによって第2ウェーハW2の上面(裏面)を研削(第2研削)する。
【0063】
而して、第2研削工程においては、厚み測定工程において測定された複数の厚みのうち、予め設定した基準厚みより小さい第2ウェーハW2の外周部に噴射ノズル60から冷水を噴射しながら、つまり、第2ウェーハW2の基準厚みより小さい厚み部分を冷水によって冷却して収縮させながら、該第2ウェーハW2を研削するようにしたため、第2ウェーハW2の冷却によって収縮した部分(小さい厚み部分)の第2研削工程における研削量が他の部分よりも小さくなる。したがって、研削加工後に第2ウェーハW2の温度が常温に戻ると、元々厚みが他の部分よりも小さかった部分の厚みが他の部分と同等となり、面内厚み差を小さく抑えて第2ウェーハW2を全面に亘って均一な厚みに研削することができる。
【0064】
ところで、第2研削工程において第2ウェーハW2をより均一な厚みに研削することができるように、厚み測定工程の後から第2研削工程の前までに、以下に説明する傾き調整工程を実施してもよい。
【0065】
5)傾き調整工程:
傾き調整工程は、チャックテーブル10のテーブル回転軸心CL1と研削ホイール25の砥石回転軸心CL2との傾き関係を調整して、第1研削工程において研削した第1ウェーハW1の外周部分の厚みを小さくするようにする工程である。具体的には、図9に示すように、不図示の傾き調整機構によってチャックテーブル10のテーブル回転軸心CL1の傾き角γを図8に示す傾き角αよりも小さく設定する(γ<α)。また、図8の紙面方向に直交する方向においても、傾きを変更している。
【0066】
上述のように、この傾き調整工程において、第1研削工程において研削した第1ウェーハW1の外周部分の厚みを小さくすると、次の第2研削工程において、第2ウェーハW2の外周部に噴射ノズル60から冷水を噴射して該外周部を冷却し、該第2ウェーハW2の外周部の研削量を小さくすることができるため、第2研削工程において第2ウェーハW2を全面に亘ってより一層均一な厚みに研削することができる。
【0067】
なお、温水、冷水を噴射する位置は、外周部に限定するものではない。例えば、測定部Eの厚みが厚い場合には、測定部Eの直上に噴射ノズル60を位置づけ、温水を噴射しながら所定の厚みに研削することで、第2ウェーハW2を均一な厚みに研削することができる。
【0068】
また、温水、冷水を噴射する箇所の数は、1箇所に限定するものではない。第2ウェーハW2の半径部分において、2箇所に噴射するように構成していてもよい。例えば、図10に示すように、測定部Dと測定部Eの厚みが厚い場合には、測定部Dと測定部Eの直上に各々噴射ノズル60を位置づける。そして、2つの噴射ノズル60から温水を噴射しながら所定の厚みに研削することで、第2ウェーハW2を均一な厚みに研削することができる。なお、噴射ノズル60は、冷水を噴射する冷水噴射ノズルと、温水を噴射する温水噴射ノズルとを備える構成であってもよい。
【0069】
「第2発明」
次に、第2発明に係るウェーハWの研削方法を図11図13に基づいて説明する。
【0070】
第2発明に係るウェーハWの研削方法も前記第1発明に係る研削方法と同様であり、1)第1研削工程と、2)厚み測定工程と、3)ノズル位置づけ工程と、4)第2研削工程を経てウェーハWを仕上げ厚みに研削する方法である。以下、これらの第1研削工程、厚み測定工程、ノズル位置づけ工程及び第2研削工程についてそれぞれ説明する。
【0071】
1)第1研削工程:
第1研削工程は、図11に示すように、製品であるウェーハW3を予め設定した仕上げ厚みに達しない厚みTに研削する工程であって、この第1研削工程においても、研削加工時の加工熱を受けたチャックテーブル10単体の熱変形が起因してウェーハW3が半径方向に均一な厚みとならず、半径方向において厚み差が不可避的に発生する。なお、仕上げ厚みに達しない厚みtは、研削装置の研削条件に設定されている(図12(b)参照)。
【0072】
2)厚み測定工程:
厚み測定工程は、図12に示すように、前記第1研削工程において研削されたウェーハW3の半径方向の複数箇所の厚みを測定(本実施形態においては、A~Eの5箇所の厚みを測定)してウェーハW3の半径方向の厚み分布を求める工程であって、この厚み測定工程においては、昇降機構30によって研削ホイール25を上昇させ、研削砥石25bをウェーハW3から離間させ、該ウェーハW3と研削砥石25bの下面との間において厚み測定器50の厚みセンサ53をウェーハW3の上面に平行な方向に移動させ、A~Eの5箇所の厚みを測定する。なお、このとき、研削ホイール25の回転は停止していてもよいし、回転したままでもよい。ここで、5箇所で測定した厚みはいずれも、予め設定した仕上げ厚みより厚い。
【0073】
上記状態において、図1に示す厚み測定器50の支軸51がモータ54によって所定の角度範囲で回動すると、該支軸51の上端に取り付けられたアーム52が支軸51を中心として水平に旋回するため、該アーム52の先端に取り付けられた厚みセンサ53が図12(a)に示すようにウェーハW3の上方を中心部から外周部に向かって移動する。本実施形態においても、前記第1発明と同様に、ウェーハW3の厚みが該ウェーハW3の中心部A、測定部D、中間部C、測定部E、外周部Bの5点において厚みセンサ53によって光学的に非接触でそれぞれ測定される。なお、厚みセンサ53は、接触式で上面高さを測定するハイトゲージであってもよい。その際は、ウェーハW3を保持する保持面高さとの差を求める算出部を備え、算出部が算出した差をウェーハW3の厚みとするとよい。
【0074】
上述のように、ウェーハW3の中心部A、測定部D、中間部C、測定部E、外周部Bにおける厚みが厚みセンサ53によって測定された結果を図12(b)に示すが、本実施形態では、ウェーハW3の外周部Bにおける厚みが最も小さい。
【0075】
3)ノズル位置づけ工程:
図13に示すように、チャックテーブル10の保持面10aに保持されて仕上げ厚みに達しない厚みtに研削され仕上げ厚みtまで研削されていないウェーハW3の外周部Bの直上に噴射ノズル60が前記第1発明と同様に位置づけられる。なお、図12(b)に予め設定した仕上げ厚みに達しない厚みtよりも小さい厚みt(<t)を示す。
【0076】
4)第2研削工程:
第2研削工程においては、図13に示すように、前記ノズル位置決め工程においてウェーハW3の外周部(厚みが仕上げ厚みに達しない厚みtよりも小さい部分)の直上に位置づけられた噴射ノズル60から冷水がウェーハW3の外周部に向けて噴射されて該外周部が冷却される。すなわち、図1に示す一方の開閉弁V2が閉じられ、他方の開閉弁V1が開かれて冷水供給源61からの冷水が噴射ノズル60へと供給され、該噴射ノズル60からウェーハW3の外周部に向かって冷水が噴射される。
【0077】
そして、上述のように、噴射ノズル60からウェーハW3の外周部に向かって冷水を噴射しながら、第1研削工程と同様に、チャックテーブル10とウェーハW3を回転させながら、研削ホイール25の回転する研削砥石25bによってウェーハW3の上面(裏面)を研削(第2研削)する。
【0078】
而して、第2研削工程においては、厚み測定工程において測定された複数の厚みのうち、予め設定した仕上げ厚みに達しない厚みtより小さい厚みtを測定したウェーハW3の外周部に噴射ノズル60から冷水を噴射しながら、つまり、ウェーハW3の仕上げ厚みに達しない厚みtより小さい厚み部分を冷水によって冷却して収縮させながら、該ウェーハW3を研削するようにしたため、ウェーハW3の冷却によって収縮した部分(小さい厚み部分)の第2研削工程における研削量が他の部分よりも小さくなる。したがって、研削加工後にウェーハW3の温度が常温に戻ると、元々厚みが他の部分よりも小さかった部分の厚みが他の部分と同等となり、面内厚み差を小さく抑えてウェーハW3を全面に亘って均一な厚みに研削することができる。
【0079】
なお、以上の実施の形態では、ウェーハW(W1,W2,W3)の外周部にのみ着目し、この外周部の厚みが基準厚みよりも大きい場合と小さい場合について説明したが、ウェーハWの中心部または中間部が基準厚みよりも大きい場合と小さい場合についても、第2研削工程において、基準厚みより大きい中心部または中間部に温水または冷水を噴射しながら第2研削を実施することによって、前記と同様の効果を得ることができる。
【0080】
その他、本発明は、以上説明した実施の形態に適用が限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0081】
1:研削装置、2:カバー、3,4:伸縮カバー、10:チャックテーブル、
10a:保持面、11:ポーラス部材、12:テーブル回転機構、13:水平移動機構、
20:研削ユニット、21:ホルダ、22:スピンドルモータ、23:スピンドル、
24:マウント、25:研削ホイール、25a:基台、25b:研削砥石、
30:昇降機構、31:昇降板、32:ガイドレール、33:ボールネジ、
34:サーボモータ、35:ブラケット、40:研削水供給手段、41:研削水供給源、
42:配管、50:厚み測定器、51:支軸、52:アーム、53:厚みセンサ、
54:モータ、55:エンコーダ、60:噴射ノズル、61:冷水供給源、
62:温水供給源、63:支軸、64:アーム、65:モータ、66:エンコーダ、
67~69:配管、100:ベース、100a:開口部、101:コラム、
CL1:テーブル回転軸心、CL2:砥石回転軸心、V1,V2:開閉弁、
W:ウェーハ、W1:第1ウェーハ、W2:第2ウェーハ、
α,β,γ:チャックテーブルの傾斜角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13