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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131520
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】光走査装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/16 20060101AFI20240920BHJP
   G02B 26/10 20060101ALI20240920BHJP
   B41J 2/47 20060101ALI20240920BHJP
   G03G 15/04 20060101ALI20240920BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20240920BHJP
   G02B 26/12 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
G03G21/16 166
G02B26/10 F
G02B26/10 B
B41J2/47 101D
G03G15/04
B29C45/00
G02B26/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041839
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】成田 進
(72)【発明者】
【氏名】吉川 政昭
(72)【発明者】
【氏名】坂上 嘉信
(72)【発明者】
【氏名】加藤 裕司
【テーマコード(参考)】
2C362
2H045
2H171
4F206
【Fターム(参考)】
2C362BA04
2C362BB03
2C362CA18
2C362CA39
2C362DA01
2C362EA25
2H045AA01
2H045BA02
2H045BA22
2H045CA88
2H045DA04
2H045DA41
2H171FA12
2H171FA26
2H171FA27
2H171FA28
2H171FA30
2H171GA09
2H171GA31
2H171JA07
2H171JA23
2H171JA27
2H171JA29
2H171JA31
2H171MA02
2H171MA11
2H171PA03
2H171PA14
2H171QA04
2H171QA08
2H171QA24
2H171QB03
2H171QB14
2H171QB18
2H171QB30
2H171QB32
2H171QB52
2H171QC03
2H171QC22
2H171QC36
2H171SA11
2H171SA14
2H171SA22
2H171SA26
2H171SA31
2H171UA03
2H171UA08
2H171VA02
2H171VA06
2H171XA13
4F206AA50
4F206JA07
4F206JL02
4F206JQ81
(57)【要約】
【課題】発泡成形技術を利用して製造される部品を用いた光走査装置において熱による影響を低減させる。
【解決手段】射出成形により成形された樹脂部品と、樹脂部品において所定の位置及び姿勢を維持するように設置された電子部品及び光学部品と、を備え、電子部品又は光学部品の少なくともいずれかは、動作に供する電源の供給により発熱をする発熱部品に該当し、樹脂部品を含み、発熱部品の熱の影響を受ける可能性がある部位を被熱影響部位とした場合、樹脂部品の成形時に生ずるウェルドライン位置が、当該被熱影響部位を中心とした所定範囲には存在しない、光書込走査系に用いられる光走査装置による。
ことを特徴とする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形により成形された樹脂部品と、前記樹脂部品において所定の位置及び姿勢を維持するように設置された電子部品及び光学部品と、を備え、光書込走査系に用いられる光走査装置であって、
前記電子部品又は前記光学部品の少なくともいずれかは、動作に供する電源の供給により発熱をする発熱部品に該当し、
前記樹脂部品を含み、前記発熱部品の熱の影響を受ける可能性がある部位を被熱影響部位とした場合、
当該樹脂部品の成形時に生ずるウェルドライン位置が、当該被熱影響部位を中心とした所定範囲には存在しない、
ことを特徴とする光走査装置。
【請求項2】
前記所定範囲は、当該被熱影響部位を中心とする立方体状の空間範囲であって、当該被熱影響部位からの距離が60mm以内の範囲である、
請求項1に記載の光走査装置。
【請求項3】
前記樹脂部品は、微細発泡成形により形成されたものであって、一部品内において密度が異なる箇所を有する、
請求項1又は2に記載の光走査装置。
【請求項4】
前記樹脂部品は、樹脂成形体を粉砕して得られた再生材料を素材とし、当該素材は、前記再生材料が1重量%以上であり、前記再生材料ではない新規材料が99重量%以下であり、当該再生材料と当該新規材料の合計が100重量%からなる再生材料含有材料である、
請求項3に記載の光走査装置。
【請求項5】
前記樹脂部品は、前記所定範囲内に、当該樹脂部品の成形時に素材が射出された射出ゲート跡が存在する、
請求項1又は2に記載の光走査装置。
【請求項6】
前記樹脂部品は、成形時に素材が射出された射出ゲート跡が複数箇所に存在し、
前記被熱影響部位は、複数箇所の射出ゲート跡から等距離に相当する部分には存在しない、
請求項1又は2に記載の光走査装置。
【請求項7】
前記被熱影響部位は、前記電子部品を搭載した電子回路基板である、
請求項1又は2に記載の光走査装置。
【請求項8】
前記被熱影響部位は、前記電子部品に含まれるコンデンサである、
請求項1又は2に記載の光走査装置。
【請求項9】
前記被熱影響部位は、前記電子部品に含まれる集積回路である、
請求項1又は2に記載の光走査装置。
【請求項10】
前記光学部品は、複数のミラー面を有し回転しながら前記ミラー面で複数の光源からの光ビームを反射させてそれぞれ互いに異なる二方向に振り分け偏光走査する偏向器と、前記偏向器により偏向走査される光ビームをそれぞれ対応する被走査体上に導き結像させる光学素子と、
前記光ビームを出射する光源と、を含み、
前記被熱影響部位は前記光源又は当該光源の動作を制御する光源制御部である、
請求項1又は2に記載の光走査装置。
【請求項11】
潜像担持体の表面に光走査手段を用いて光を照射することにより該潜像担持体の表面に潜像を形成する作像装置と、
記録媒体を搬送する搬送手段と、
前記潜像を搬送されてきた前記記録媒体に転写する転写手段と、
当該作像装置、当該搬送手段、当該転写手段の動作を制御する制御手段と、
当該作像装置、当該搬送手段、当該転写手段及び当該制御手段を覆う筐体部品と、
を備え、
前記光走査手段は、請求項1又は2に記載の光走査装置であって、
前記筐体部品は射出により成形された樹脂部品であり、
動作により発熱をする発熱部品は、前記制御手段である、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
射出成形により成形された樹脂部品と、前記樹脂部品において所定の位置及び姿勢を維持するように設置された電子部品及び光学部品と、を備え、光書込走査系として用いられる走査装置であって、
前記電子部品又は前記光学部品の少なくともいずれかは、各部品の動作に供する電源の供給により発熱をする発熱部品に該当し、
前記樹脂部品は少なくとも一箇所以上において前記発熱部品と接触しており、
当該樹脂部品と当該発熱部品の接触部位を被熱影響部位とし、
当該被熱影響部位を中心とする所定範囲か、前記接触部位のいずれか又は両方には、当該樹脂部品の成形時に生ずるウェルドライン位置が存在しない、
ことを特徴とする光走査装置。
【請求項13】
前記樹脂部品は、表層と内部で密度が異なり、樹脂成形体を粉砕して得られた再生材料を素材とし、当該素材は、前記再生材料が1重量%以上であり、前記再生材料ではない新規材料が99重量%以下であり、当該再生材料と当該新規材料の合計が100重量%からなる再生材料含有材料である、
請求項12に記載の光走査装置。
【請求項14】
前記樹脂部品は、前記所定範囲であって、前記被熱影響部位を中心とする立方体状の空間範囲のうち、当該被熱影響部位からの距離が60mm以内の範囲に、当該樹脂部品の成形時に素材が射出された射出ゲート跡が存在する、
請求項12又は13に記載の光走査装置。
【請求項15】
前記樹脂部品は、成形時に素材が射出された射出ゲート跡が複数箇所に存在し、
前記被熱影響部位は、複数箇所の射出ゲート跡から等距離の相当する部分には存在しない、
請求項12又は13に記載の光走査装置。
【請求項16】
前記被熱影響部位は、前記電子部品を搭載した電子回路基板である、
請求項12又は13に記載の光走査装置。
【請求項17】
前記被熱影響部位は、前記電子部品に含まれるコンデンサである、
請求項12又は13に記載の光走査装置。
【請求項18】
前記被熱影響部位は、前記電子部品に含まれる集積回路である、
請求項12又は13に記載の光走査装置。
【請求項19】
前記光学部品は、複数のミラー面を有し回転しながら前記ミラー面で複数の光源からの光ビームを反射させてそれぞれ互いに異なる二方向に振り分け偏光走査する偏向器と、前記偏向器により偏向走査される光ビームをそれぞれ対応する被走査体上に導き結像させる光学素子と、
前記光ビームを出射する光源と、を含み、
前記被熱影響部位は前記光源又は当該光源の動作を制御する光源制御部である、
請求項12に記載の光走査装置。
【請求項20】
射出成形により成形された樹脂部品と、前記樹脂部品に設置された電子部品又は光学部品と、を備えた光走査装置であって、
当該樹脂部品の成形時に生ずるウェルドライン位置が、設置される前記電子部品又は前記光学部品の範囲に存在しない、
ことを特徴とする光走査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光走査装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の光源から発した光ビームを異なる二方向に振り分け偏向する偏向器と、偏向走査された光ビームをそれぞれ、対応する被走査体としての感光体上に結像させる光学素子とを備える光走査装置が知られている。また、従来の光ビームを用いた走査装置を用いて、電子写真方式による画像形成を行う画像形成装置が知られている。
【0003】
電子写真方式の画像形成装置において、環境負荷低減策の一環として、内部に搭載される光学部品や電子部品を所定の配置で保持するための部材を製造するときの材料に、樹脂材を再利用できる状態にした再生材(樹脂再生材)を利用することがある。樹脂再生材は、元になる回収材の品質にバラツキがあることが多く、射出成形技術を利用して成形したときに、再生材の溶融樹脂の流動性が、新規材料よりも不均一であって、成形不良の原因になりやすいことが知られている。
【0004】
樹脂再生材を利用したときの成形不良を低減させる目的で、樹脂再生材を用いた成形工程においてガスを発泡させて注入する技術が知られている。当該技術として、「微細発泡成形」、「超臨界発泡成形」などと呼ばれる方式が知られている。
【0005】
例えば、微細発泡成形技術を利用することで、射出成形において金型内で溶融樹脂の合流部分が線状の跡になる、いわゆる「ウェルドライン」を低減する技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、「SDGs」として、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals、持続可能な開発のための2030アジェンダ、平成27(2015)年9月25日国連サミット採択)の推進に向けた取り組みが行われている。その目標の一つにおいて「つくる責任 つかう責任」が掲げられており、資源の再利用を促進する要求は高まっている。
【0007】
特許文献1に開示の技術のように、樹脂再生材を利用して新規の樹脂成形品を製造する試みは、近年の要求に合致し得るものである。しかし、特許文献1に開示の技術を利用してウェルドラインの抑制を図ったとしても、熱対策の点で課題がある。
【0008】
例えば、特許文献1に開示の技術を利用しても、樹脂成形時には溶融樹脂の合流部分(ウェルドラインになりうる部分)は生ずる。そして、ウェルドラインになり得る箇所は他の箇所に比べて樹脂の密度が低くなりやすい。その結果、ウェルドラインになり得るような箇所(溶解樹脂の合流部分)は、熱への耐性(耐熱性)が他の部分に比べると低くなりやすい。耐熱性が低下する部分が、装置内部に配置される部品などのうち熱を発しやすい部品(発熱部品)、特に高熱になりやすい部品(高発熱部品)の近傍に存在すると、高発熱部品が発する熱の影響で樹脂成形部品の形状が変形するなどの影響が生ずる可能性がある。その結果、樹脂成形部品の強度低下や、周囲部品との整合不良などの影響に発展する虞がある。
【0009】
したがって、従来技術を適用しても、樹脂成形品を用いる装置に内部に用いられる部品の耐熱性低下箇所に対し、発熱部位からの熱の影響及び発熱部位による熱を受けた部位の周辺部位に対する熱の影響を低減させる点において課題がある。
【0010】
そこで本発明は、発泡成形技術を利用して製造される部品を用いた光走査装置において熱による影響を低減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、射出成形により成形された樹脂部品と、前記樹脂部品において所定の位置及び姿勢を維持するように設置された電子部品及び光学部品と、を備え、光書込走査系に用いられる走査装置であって、前記電子部品又は前記光学部品の少なくともいずれかは、動作に供する電源の供給により発熱をする発熱部品に該当し、前記樹脂部品を含み、前記発熱部品の熱の影響を受ける可能性がある部品を被熱影響部品とした場合、当該樹脂部品の成形時に生ずるウェルドラインが、当該被熱影響部品を中心とした所定範囲には存在しない、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、発泡成形技術を利用して製造される部品を用いた光走査装置において熱による影響を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る画像形成装置の実施形態を示す概略構成図。
図2】本発明に係る走査装置の実施形態としての光走査装置の概略構成図。
図3】上記光走査装置が備える光走査光学系の構成例を示す平面図。
図4】上記光走査装置が備える光走査光学系の概要を示す平面図。
図5】射出成形において生ずるウェルドラインの位置の例を示す図。
図6】熱源からの熱の伝達とその影響範囲との関係の例を示す図。
図7】熱源からの熱の伝達とその影響範囲との関係の別の例を示す図。
図8】熱源と熱の影響を受ける部位との関係の例を示す図。
図9】実施形態に係る光走査装置に用いられる樹脂部品の断面の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[画像形成装置の実施形態]
まず、本発明に係る走査装置を備える画像形成装置の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る画像形成装置の実施形態としてのプリンタ1の概略構成図である。
【0015】
図1に示すように、プリンタ1は、潜像担持体としての複数の感光体10を備えている。プリンタ1は、例えば、四つのドラム状をした感光体10Y、10C、10M、10Kをタンデム配列したフルカラー画像形成装置の例であって、いわゆる電子写真方式のものである。感光体10は画像形成手段たる各色に対応する作像装置7Y、7C、7M、7Kの一部として構成されている。これら作像装置7Y、7C、7M、7Kは順に、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色に対応し、これらの色の画像をつくるための構成である。
【0016】
図1に示すプリンタ1は、3つの支持ローラ15a、15b、15cなどに支持されて回転する表面移動部材としての中間転写ベルト14を備える。そして、この中間転写ベルト14の下側の張設ラインに沿って、図1中の矢印にて示す中間転写ベルト14の移動方向順に、上流側から、作像装置7Y、7C、7M、7Kが間隔をおいて配置されている。
【0017】
フルカラー画像の形成に際しては、これら作像装置7Y、7C、7M、7Kに設けられた感光体10Y、10C、10M、10Kに後述するように、各色のトナー画像が形成される。次に、これら異なる色のトナー画像は、中間転写ベルト14を間にして各感光体に対向して配置されている転写手段としての一次転写ローラ16の機能により中間転写ベルト14の移動とともに、中間転写ベルト14上に順次重ね転写される。詳しくは、中間転写ベルト14上の一次転写ローラ16が接している箇所は転写位置といい、この転写位置で転写が行なわれる。
【0018】
四つの重ね転写トナー像は、搬送手段により搬送されてくる最終記録媒体である記録媒体(用紙)に、支持ローラ15aと二次転写ローラ9とのニップ部で一括転写される。そして、定着装置6の定着対ローラ間を通紙したのち、搬送ローラを経て、排紙ローラ対より排紙トレイ19上に排紙される。こうして、用紙上にフルカラー画像が形成される。
【0019】
なお、中間転写ベルト14は、黒画像のみの一色形成モードに適合させるために、感光体10Kについては一次転写ローラ16により常時接触させる構成としてる。また、他の感光体については、可動のテンションローラの機能により中間転写ベルト14が接離する構成としている。中間転写ベルト14上の残トナーを除去するためのクリーニング装置17がローラ15b部に設けられている。
【0020】
図1において、各作像装置7Y、7C、7M、7Kは、扱うトナー(顕像材)の色が異なるだけであり、機械的な構成及び作像プロセスは共通である。したがって感光体以外の各構成部材は同一の符号を付し、任意の一つの作像装置、例えば作像装置7Yについて構成及び作像のプロセスを説明する。
【0021】
作像装置7Yの感光体10Yの周囲には、図1中、時計回りの回転方向順に、感光体10Yを帯電する帯電手段としての帯電ローラ11、光ビームLの照射位置、現像手段としての現像装置12、一次転写ローラ16、クリーニング装置13などが配置されている。
【0022】
光ビームLは、光走査手段としての光走査装置4から出射されるもので、内部には、光源としての半導体レーザ、カップリングレンズ、fθレンズ、トロイダルレンズ、ミラー、回転多面鏡などを装備している。各感光体に向けて各色用の光ビームLを出射し、感光体10Y上の書込位置に光ビームLを照射して静電潜像を形成する。なお、光走査装置4の詳細については、後述する。
【0023】
例えば、作像装置7Yの現像装置12については、イエローの現像剤が収納されていて、潜像をイエロー画像で可視像化する。他の作像装置についても、それぞれの色の現像剤が収納されていて、その収納されている現像剤の色で潜像を可視像化する。
【0024】
画像形成に際しては、感光体10Yが回転して帯電ローラ11により一様に帯電され、書込位置でイエロー画像の情報を含む光ビームLの照射を受けて静電潜像が形成され、この潜像が現像装置を通過する間にイエロートナーにより顕像化される。感光体10Y上のイエロートナー像は、一次転写ローラ16により中間転写ベルト14に転写される。中間転写ベルト14上の、このイエロートナー画像は、作像装置7Cでシアントナー画像、作像装置7Mでマゼンタトナー画像、作像装置7Kでブラックトナー画像と順次重ね転写される。これにより、フルカラートナー画像が形成される。
【0025】
この重ねトナー像が二次転写ローラ9部に達するのと同じタイミングで二次転写ローラ9部に至るように、用紙が給紙部5、レジストローラからタイミングを取って送り出され、前記したように、支持ローラ15aと二次転写ローラ9とのニップ部で一括転写される。
【0026】
一方、転写後の感光体10はクリーニング装置13により残留トナーが除去された後、除電ランプにより除電されて次の画像形成に備えられる。同様に、中間転写ベルト14についても、残留トナーなどがクリーニング装置17により除去される。
【0027】
本実施形態に係るプリンタ1は、各感光体10上のトナー画像を一旦、中間転写ベルト14上に重ね転写して、この重ねトナー画像をシート状媒体に一括転写する方式である。しかし、中間転写ベルト14に代えて表面移動部材たる記録紙搬送ベルトを設け、この記録紙搬送ベルトにより用紙を載せて搬送する方式を採用するカラー画像形成装置も知られている。このようなカラー画像形成装置は、用紙の搬送の過程で、各感光体から順次カラートナー像を用紙上に重ね転写することにより、フルカラー画像を合成する方式を採用する。本発明は、いずれの方式の画像形成装置に対しても、適用可能である。
【0028】
上記にて説明した本実施形態に係るプリンタ1が備える各構成には、樹脂成形部品を用いられるものも多く存在する。本実施形態に係るプリンタ1は、筐体部品を含む樹脂成形部品の熱への耐性を向上させる工夫を有するものであって、発熱部品を含むプリンタ1の内部における熱による悪影響を低減させることができるものに相当する。
【0029】
[走査装置の実施形態]
次に、本発明に係る走査装置の実施形態としての光走査装置4について図面を参照しながら説明する。まず、図2は、光走査装置4の構成を示す概略断面図である。図3は、光走査装置4を上から見たときの概略図である。
【0030】
図2及び図3に示すように、光走査装置4は、ポリゴンスキャナ50、各種の反射ミラー55、各種のレンズ等の光学部品を備える光書込走査系を備えるものである。ポリゴンスキャナ50は、光走査装置4の略中央に設けられ、防音ガラス51と防音壁56と、上壁42とで囲われた密閉空間に配置されている。
【0031】
ポリゴンスキャナ50は、六面のミラー面を有する偏向器たる上段ポリゴンミラー49a、偏向器たる下段ポリゴンミラー49bを備え、光ビームを反射させてそれぞれ互いに異なる二方向に振り分け偏光走査する。ポリゴンスキャナ50は、これらポリゴンミラーを回転するポリゴンモータ、ポリゴンモータを制御する制御手段としての制御基板などを有している。
【0032】
図2に示すように、ポリゴンスキャナ50の図2中の右側には、M用の光学系と、K用の光学系とが配設されている。ポリゴンスキャナ50の図2中の左側には、Y用の光学系と、C用の光学系とが配設されている。Y用の光学系は、ポリゴンスキャナ50の回転軸152を中心にしてK用の光学系と点対称の関係となる構成になっている。また、C用の光学系は、ポリゴンスキャナ50の回転軸152を中心にしてM用の光学系と点対称の関係となる構成になっている。
【0033】
また、図3に示すように、各感光体10K、10M、10C、10Yにそれぞれ対応する光ビームLk、Lm、Lc、Lyを射出する光源たる半導体レーザ41K、41M、41C、41Yを備えている。
【0034】
コリメートレンズ52Y,52M、52C、52K、結像レンズ(シリンダレンズ)53K、53M、53C、53Yと反射ミラー55K、55Yは、半導体レーザ41からポリゴンスキャナ50までの光ビームの光路上に配設されている。また、光学素子たる、走査レンズ(fθレンズ)25KM、25CY、複数のミラー45は、ポリゴンスキャナ50から被走査体である感光体10までの光路上に配置されている。また、ポリゴンスキャナ50から被照射体である感光体10までの光路上に各色にそれぞれ対応する長尺レンズを配設してもよい。
【0035】
図3中の右下方には、K色とM色の光ビームLm、Lkの先端を検知するビーム検知センサたる先端ビーム検知ユニット65KMが設けられている。また、図3中の右上方には、K色とM色の光ビームLm、Lkの後端を検知するビーム検知センサたるM、K用の後端ビーム検知ユニット44KMが設けられている。また、ポリゴンスキャナ50の回転軸152を中心にしてM、K用の先端ビーム検知ユニット65KMと点対称となる位置(図3中左上方)に、C、Y用の先端ビーム検知ユニット65CYが設けられている。同様に、ポリゴンスキャナ50の回転軸152を中心にしてM、K用の後端ビーム検知ユニット44KMと点対称となる位置(図3中左下方)に、C、Y用の後端ビーム検知ユニット44CYが設けられている。
【0036】
各半導体レーザ41K、41M、41C、41Yから出射された光ビームLy,Lc,Lm,Lkは、コリメートレンズ52Y,M,C,Kにより発散光束が平行光束に変換された後、結像レンズ53Y,M,C,Kを透過する。結像レンズ53Y,M,C,Kを透過することで、副走査方向(感光体表面上における感光体表面移動方向に相当する方向)に集光せしめられる。
【0037】
光ビームLkは、反射ミラー55Kに反射されて防音ガラス51KMを通過して下段ポリゴンミラー49bのミラー面に入射する。下段ポリゴンミラー49bの側面のミラー面に光ビームLkが入射すると、この光ビームが主走査線方向に偏向走査される。下段ポリゴンミラー49bで偏向走査された光ビームLkは、再び防音ガラス51を通過して走査レンズ25KM(fθレンズ)によって集光される。走査レンズ25KMによって集光されたK色の光ビームLkは、感光体10K上への走査に先立って折り返しミラー62KMに反射され、同期用結像レンズ63KMを通って先端ビーム検知ユニット65KMに入射して光ビームLkが検知される。先端ビーム検知ユニット65KMが光ビームLkを検知すると、同期信号が出力され、同期信号に応じて、画像データに基づいて変換された光源信号の出力のタイミングが調整される。
【0038】
入力された画像データに基づいて発光した光ビームLkは、上述同様、結像レンズ53Kなどを通過して、下段ポリゴンミラー49bに走査されて、走査レンズ25KMに入射する。走査レンズ25KMに入射した光ビームLkは、図2に示すように、ミラー45、防塵ガラス28を介して感光体10Kに照射される。
【0039】
結像レンズ53Mを透過した光ビームLmは、直接上段ポリゴンミラー49aのミラー面に入射し走査される。上段ポリゴンミラー49aに走査されたM色用の光ビームLmは、走査レンズ25KMに入射して、感光体10M上への走査に先立って先端ビーム検知ユニット65KMに入射して、同期信号を出力する。そして、同期が取れて発射された画像データに基づく光ビームLmが、上段ポリゴンミラー49a、走査レンズ25KM、ミラー45、防塵ガラス28を通って、感光体10Mに照射される。
【0040】
結像レンズ53Cを透過した光ビームLcは、そのまま、上段ポリゴンミラー49aのミラー面に入射し走査される。上段ポリゴンミラー49aに走査されたC色用の光ビームLcは、走査レンズ25CYに入射し、感光体10C上への走査に先立って折り返しミラー62CYに反射され、同期用結像レンズ63CYを通って先端ビーム検知ユニット65CYに入射し、同期信号を出力する。そして、同期が取れて発射された画像データに基づく光ビームLcが、結像レンズ53C、上段ポリゴンミラー49a、走査レンズ25CY、ミラー45、防塵ガラス28を通って、感光体10Cに照射される。
【0041】
結像レンズ53Yを透過した光ビームLyは、反射ミラー55Yに反射されて、下段ポリゴンミラー49bのミラー面に入射し走査される。下段ポリゴンミラー49bに走査されたY色用の光ビームLyは、走査レンズ25CYを通過した後、感光体10Y上への走査に先立って先端ビーム検知ユニット65CYに入射し同期信号が出力される。そして、同期が取れて発射された画像データに基づく光ビームLyが、結像レンズ53Y、下段ポリゴンミラー49b、走査レンズ25CY、ミラー45、防塵ガラス28を通って、感光体10Yに照射される。
【0042】
上記にて説明をした光源としての半導体レーザ41や、感光体10に光ビームを結像させるための光学系を構成する各種レンズ(走査レンズ25,コリメートレンズ52、結像レンズ53など)を含む構成部品は、各々の配置及び向きなどを保持するようにハウジング31によって保持される。
【0043】
ハウジング31は位置によって異形状となるので、樹脂成形技術を利用して形成されることが一般的であって、いわゆる、樹脂成形品(樹脂部品)の一例である。
【0044】
また、図4に示すように、ハウジング31に保持されるポリゴンスキャナ50や、各レンズの位置を調整するためのステッピングモータ131や、半導体レーザ41を制御する制御手段として、電子部品を搭載した電子回路基板としてのLD制御板121などは、動作に供する電源として一定の電流が流される部品である。したがって、これら部品は、電流による発熱が起きる発熱部品に相当する。
【0045】
したがって、樹脂成形品としてのハウジング31は発熱部品を保持する樹脂部品に相当し、発熱部品が発する熱による変形などの影響を受けやすい部品の一例に相当する。また、発熱部品の直近でなくとも、熱の影響を受ける部分が生ずる可能性はある。これらを鑑みると、ハウジング31を成形する際に、発熱部品との位置関係、及び、発熱部品からの熱による影響を受ける可能性がある範囲を考慮することが望ましい。すなわち、その熱源(発熱部品)からの熱の影響を最も受ける可能性が懸念される位置を「被熱影響部位」として想定して、これの耐熱性を低下させない工夫が望ましい。
【0046】
すなわち、被熱影響部位の中でも耐熱性が相対的に低い部位と熱源との位置関係を考慮することや、熱源の周囲を、相対的に耐熱性が高い部位にするなどの対策を講じることが望ましい。
【0047】
一方、環境負荷低減した製品供給への需要は高まっているので、プリンタ1に係るハウジング31のように樹脂成形品(樹脂部品)を使用する際には、新品の樹脂材(新規素材)のみを利用するのではなく、回収材を再利用することが求められる。しかし、回収材は様々な種類の樹脂(ABS,PS,POMなど)を含む樹脂成形体を粉砕して、これらから精製された再生材料である。したがって、新規材料よりも、特に、溶融樹脂にした際の流動性におけるバラツキが生じやすい。
【0048】
流動性にバラツキが生ずると、射出成形技術を利用して製造される樹脂部品の成形工程において、成形不良が生じやすくなる。例えば流動性が低いと型締め力不足による成形不良、流動性高いと射出後の保圧時に形状末端での残留応力による食いつきなどが起きる。
【0049】
そこで、再生材料を用いた樹脂成形工程において、微細発泡の窒素などのガスを封入することで、流動性改善や保圧不要の効果が見込める「微細発泡成形」といった成形方法が用いられることがある。
【0050】
これら手法を用いて再生材料を成形すると、流動性低い素材であっても流動性が改善する。また、流動性高い材料では保圧が不要となり、ガスの発泡により型内の残留応力が減り、食いつきが発生しにくくなる。これらの効果によって、再生材の流動性ばらつきに起因した成形不良の抑制が期待できる。
【0051】
例えば、ハウジング31を成形するときに、再生材料が1重量%以上であり、再生材料ではない新規材料が99重量%以下であり、再生材料と新規材料の合計が100重量%からなる再生材料含有材料を素材とする。そして、再生材料含有材料を溶融して微細発泡成形技術を利用してガスを封入することで、使用する材料量を減らすことができる。
【0052】
図9は、微細発泡成形された成形品(ハウジング31)の断面の例である。図9に示すように、空気に触れる表面部に相当する表層にはスキン層171が形成される。また、図9に示すように、スキン層171には、注入されたガスが存在せず、スキン層171よりも内部にガスの気泡181が存在する形となり、一部品内において、表層と内部で密度が異なる。しかし、密度が表層(スキン層171)と樹脂内部161において異なることで、ハウジング31の内部にガスの気泡が閉じ込められている状態となり、板厚が減少することと同様に耐熱性が低下する懸念がある。
【0053】
また、樹脂成形は、型内に溶融した樹脂(溶融樹脂)を射出ゲート部から流し込んでいくが、一の射出ゲートから流れ込んだ溶融樹脂と、他の射出ゲートから流れ込んだ溶融樹脂がぶつかり、冷え固まる位置が存在する。この衝突位置は、完成した樹脂部品においては「つなぎ目」のようになり、そのつなぎ目の位置は他の位置に比べて材料の結びつきが弱くなり、密度が低くなる。この位置については、「ウェルドライン」と呼ばれることがあり、一般的には強度低下や外観品質低下の原因として知られている。また、ウェルドラインが生ずる位置(ウェルドライン位置)では、耐熱性も低下することが知られている。
【0054】
したがって、ウェルドライン位置の近傍に発熱部品が配置されると、発熱部品が高熱になった場合に十分な耐熱性能を発揮することが困難であり、熱の影響による変形などが生ずるリスクがある。
【0055】
そこで、本実施形態に係る光走査装置4は、樹脂部品の一例としてのハウジング31において、ウェルドライン位置を、発熱部品に対して最も近い位置であって熱による影響を受ける可能性がある部位としての被熱影響部位を中心とする所定範囲には存在しないようにする。そうなるように製造されたハウジング31を用いることで、光走査装置4における耐熱性の低下による変形リスクや強度低下を抑制することができる。
【0056】
光走査装置4において、高熱になり、ハウジング31に対して熱の影響を生じさせる可能性が最も高い発熱部品(高発熱部品)は、ハウジング31に対して最も近い位置にあるものである。ここで、高発熱部品からの熱の影響を最も受ける位置にあるハウジング31の部位を、「被熱影響部位」とする。
【0057】
このように、樹脂部品としてのハウジング31が高発熱部品により影響を受ける度合いは、被熱影響部位の耐熱性能によって異なる。例えば、高発熱部品の一例として、半導体レーザ41の動作を制御する制御基板であって光源制御部としてのLD制御板121が想定される。
【0058】
仮に、LD制御板121の近傍に二つの樹脂部品(ハウジング31の部位)が存在すると仮定する。その一方の部位は、耐熱性能が他の部位に比べて相対的に高い部位(高耐熱性部位)とする。また他方の部位は、高耐熱性部位よりは相対的に耐熱性が低い低耐熱性部位とする。
【0059】
上記の仮定において、LD制御板121が高熱になった場合、その温度の高さと熱の伝わり方(方向や範囲)によっては、高発熱部品(LD制御板121)から遠い位置にある被熱影響部位としての低耐熱性部位の方が、高発熱部品(LD制御板121)に相対的に近い位置にある被熱影響部位としての高耐熱性部位よりも、変形や強度低下のリスクが高くなる可能性がある。
【0060】
本実施形態に係る光走査装置4及び同装置を備えるプリンタ1の場合、内部において、ハウジング31に代表される樹脂部品は多用されており、また、LD制御板121のような高発熱部品も多用されている。したがって、これらの相互の位置関係、各部品の材質、及び用いられる電子部品の種類も様々であるので、高発熱部品と、これの熱により影響を受ける位置にある樹脂部品との位置関係については特に限定しなくても、高発熱部品に近いほうがより変形や強度低下のリスクは可能性が高いと考えられる。
【0061】
ウェルドライン位置は、射出ゲート部分から射出された溶融樹脂の流動によって、溶融樹脂同士の衝突する位置に相当する。例えば、図5に例示するように、複数箇所の射出ゲートとしてのゲート141から樹脂材(溶融樹脂)が射出されて樹脂成形工程が行われる場合、ゲート141のそれぞれから放射状に樹脂材が流動する。そのため、二つのゲート141からの等距離の位置にウェルドライン位置151が生ずることになる。
【0062】
したがって、光走査装置4は、発熱部品により影響を受ける可能性がある部位(被熱影響部位)の位置が、ハウジング31を成形する際に利用された複数のゲート141から等距離となる位置に対して最も近くならない位置になるように構成されている。このような位置関係にすることで、被熱影響部位に対する熱の影響により生ずるリスクを低減することができる。
【0063】
また、ハウジング31を成形するときに、一つのゲートから射出された樹脂材によって成形される場合、完成したハウジング31の形状によりウェルドライン位置151が決定される。少なくとも、ゲート141の近傍にウェルドライン位置151が形成されることはない。したがって、熱源から最も近い位置とゲート141の跡(射出ゲート跡)の相対的な位置関係に基づいて、ウェルドライン位置151と熱源からの熱による影響を受ける可能性を有する部品(被熱影響部位)との位置関係を考慮することで、熱による変形や強度低下などリスクを抑制できる位置関係を得ることができる。
【0064】
なお、本明細書において発熱部品とは、プリンタ1及び光走査装置4に用いられるモータや定着ヒータ、電気電子部品の載ったエレキ制御基板、高圧基板など、電流や摩擦によって発熱の可能性がある部品であって、少なからず発した熱が相対的に高熱になり得る部品を意味している。
【0065】
近年、電気電子部品の載ったエレキ制御基板の回路構成が複雑化し、また、部品不良などによって、これらを原因とする発熱部品の熱が高くなる可能性がある。また、エレキ制御基板に搭載されている電気電子部品の中には、セラミックコンデンサや電解コンデンサなどのコンデンサや、FET(Feild Effect Transistor)や、集積回路(IC:Integrated Circuit)、DCDCコンバータ、レギュレータなど、熱源になり得るものが多く存在する。
【0066】
電源から接地端子までの回路中において短絡(ショート)が生じた場合は、回路基板を構成するガラスエポキシなどの素材が高熱を発するリスクもある。なお、高熱を発する原因については、例えば異物混入によるショートや部品不良により、電解コンデンサなどへ過電流・過電圧などが挙げられる。その他にも、様々な原因が存在する。
【0067】
また熱源の種類や原因についても、熱源となるものの種類や、その周囲に熱の影響を受けやすい素材が存在するのかどうかによっても大きく変わり、高発熱部品の設置向きによっても被熱影響部位に対して影響を与えるように伝熱するかどうかは変化するので、事前にそれを想定することは困難である。そのため、光走査装置4に用いられる発熱部品の中で高熱になる可能性のある部品、LD制御板121などに用いられる電解コンデンサなどの高発熱部品に対して、樹脂部品の中で最も近い位置(点)だけでなく、その付近にも熱の影響が及んでしまう。
【0068】
例えば、熱源となる高発熱部品からの熱による影響を受ける被熱影響部位との位置関係を、図6に例示するように、被熱影響部位が高発熱部品の上方に配置されていると仮定する。そして、高発熱部品としての熱源品20から発した熱であって伝達していく伝達熱21の影響を及ぼす範囲を、高さが20mm、幅が約10mmの立方空間と仮定する。
【0069】
この場合、熱源品20からの伝達熱21の伝熱方向を考慮すると、被熱影響部位として最も熱の影響を受けるのは、高発熱部品の鉛直方向に位置するものであり、その鉛直方向を中心として広がる一定の範囲となる。したがって、熱源品20の上方に被熱影響部位を含む被熱影響部品22を配置するときは、熱源品20の鉛直方向と、熱源品20の鉛直方向を中心とした所定の範囲(立方空間の範囲)に配置しないことが望ましい。
【0070】
図6に例示するように、伝達熱21が最も接近する最接近位置221を中心として、伝達熱21が被熱影響部品22に沿って広がる範囲を、伝達熱21の伝達範囲の幅(10mm)の二倍と想定する。この場合、伝達熱21が被熱影響部品22に対して広がる範囲は、最接近位置221を中心として20mmの範囲に相当する。この範囲を所定範囲とする。そうすると、この所定範囲にウェルドライン位置151が存在しないことが少なくとも必要となる。
【0071】
また、図7に例示するように、熱源品20を含む発熱源191が垂直に配置されていたとする。そして、発熱源191の水平方向に被熱影響部品22が配置されていたとする。この例のように、熱源品20を含む発熱源191が部品の側方に被熱影響部位を配置するときは、高発熱部品の水平方向から上方の向かう所定の範囲に、被熱影響部位を配置しないことが望ましい。すなわち、熱源品20の側方に被熱影響部位を含む被熱影響部品22を配置するときは、熱源品20の水平方向と、熱源品20の水平方向を中心とした所定の範囲(立方空間の範囲)に配置しないことが望ましい。
【0072】
すなわち、伝達熱21は鉛直方向に伝達されるので、伝達熱21が伝達する範囲に最接近する位置(最接近位置221)を中心にして、伝達熱21が被熱影響部品22に接触して広がる範囲は、伝達熱21が影響を与える範囲の幅(10mm)と伝達熱21が影響を与える範囲の高さ(20mm)の合計の二倍相当の60mm以内となる立方体状の空間範囲となる。この場合、この空間範囲にウェルドライン位置151が存在しないことが望ましい。
【0073】
また、図8に例示するように、熱源品20と、樹脂部品としての被熱影響部位に相当する被熱影響部品22が少なくとも一箇所以上において接触している場合、熱源品20において最も高熱を発する可能性がある位置(高熱位置201)と最も近い位置にある被熱影響部品22が熱源品20からの熱の影響を受けるリスクが高い。また、この高熱位置201に最も近い最接近位置221のみでなく、熱源品20と接触している被熱影響部品22の部位(接触部位222)における熱の影響が大きくなる。
【0074】
したがって、最接近位置221を中心とする所定範囲の他、接触部位222にもウェルドライン位置151が無いことが望ましい。
【0075】
以下、プリンタ1に用いられる光走査装置4を例に、上記のような熱の影響によるリスクについて説明する。
【0076】
図4は、図3を用いて説明した光走査装置4の構成を簡略化した図である。図4において、光走査装置4に用いられる部品のうち、発熱部品として、主に、ポリゴンスキャナ50、LD制御板121、光学部品位置調整用のステッピングモータ131を例示している。
【0077】
これら発熱部品に近接又は対向する樹脂部品として、例えばハウジング31が挙げられる。ハウジング31は、数多くの部品を決められた位置に保持するものであるから、複雑な形状を必要とし、樹脂成形品によって構成されることも多い部品である。特に、プリンタ1に用いるような光走査装置4の場合は、複数の感光体10までの光路を形成するために、ハウジング31が大型化することが多い、その分、ハウジング31としての樹脂使用量も多い。
【0078】
そのため、樹脂成形時のゲート141も多点ゲートとなることが多く、複数位置にウェルドライン位置151が発生することになる(図5参照)。このウェルドライン位置151の位置と発熱部品の位置が最も近いになると、熱によるリスクが高まるので、これら発熱部品の範囲をウェルドライン位置151に近接させないような位置関係にすること、すなわちウェルドライン位置151を、配置される発熱部品の近傍又は対向範囲からずらすことで、熱によるリスクを低減することができる。
【0079】
ハウジング31を形成するための素材となる樹脂材に再生材を用いて、成形方法として微細発泡成形を適用した場合、微細発泡により、耐熱性能がさらに低下することになるため、ウェルドライン位置151の位置での熱によるリスクが高まることになる。これを避けるには、発熱源からウェルドライン位置151の位置を遠ざけることが必要となる。
【0080】
また、プリンタ1を構成する部品のうち、光走査装置4以外の部品として、プリンタ1の外装を覆う筐体を構成する筐体部品がある。プリンタ1の動作を制御する制御部品のうち、電気制御を行っている制御基板や電源からの電流電圧を所望の値にコントロールする高圧基板には、コンデンサや集積回路(IC)などの発熱によるリスクのある電子部品(熱源)が多く搭載されている。これら制御基板や高圧基板の近くにある外装カバー(筐体部品)は、基板の発熱によるの影響を受けうる部品の一つである。そこで、外装カバー(筐体部品)の制御基板内のコンデンサなどの熱源から最も近い位置近傍にはウェルドライン位置151が存在しないようにすることで、発熱によるリスクを低減させることができる。
【0081】
また、外装カバーより内側に配置されるインナーカバーも外装カバーと同様で、基板近傍に配置されているものが多い。そこで、ウェルドライン位置151の位置との位置関係を、上記にて説明したように考慮することで、発熱によるリスクを低下させることができる。
【0082】
以上説明したとおり、本実施形態に係るプリンタ1及び光走査装置4によれば、発熱の可能性がある部品と最も近い位置にウェルドライン位置151が存在しないようにするので、発源からの熱によるリスクを低減できる。
【0083】
なお、本発明は、上記に例示する各実施形態に限定されるものではなく、その技術的要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項のすべてが本発明の対象となる。上記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者であれば、開示した内容から様々な変形例を実現することが可能である。そのような変形例も、特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【0084】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1>
射出成形により成形された樹脂部品と、前記樹脂部品において所定の位置及び姿勢を維持するように設置された電子部品及び光学部品と、を備え、光書込走査系に用いられる光走査装置であって、
前記電子部品又は前記光学部品の少なくともいずれかは、動作に供する電源の供給により発熱をする発熱部品に該当し、
前記樹脂部品を含み、前記発熱部品の熱の影響を受ける可能性がある部位を被熱影響部位とした場合、
当該樹脂部品の成形時に生ずるウェルドライン位置が、当該被熱影響部位を中心とした所定範囲には存在しない、
ことを特徴とする光走査装置である。
<2>
前記所定範囲は、当該被熱影響部位を中心とする立方体状の空間範囲であって、当該被熱影響部位からの距離が60mm以内の範囲である、
前記<1>に記載の光走査装置である。
<3>
前記樹脂部品は、微細発泡成形により形成されたものであって、一部品内において密度が異なる箇所を有する、
前記<1>又は前記<2>に記載の光走査装置である。
<4>
前記樹脂部品は、樹脂成形体を粉砕して得られた再生材料を素材とし、当該素材は、前記再生材料が1重量%以上であり、前記再生材料ではない新規材料が99重量%以下であり、当該再生材料と当該新規材料の合計が100重量%からなる再生材料含有材料である、
前記<3>に記載の光走査装置である。
<5>
前記樹脂部品は、前記所定範囲内に、当該樹脂部品の成形時に素材が射出された射出ゲート跡が存在する、
前記<1>乃至前記<4>のいずれか一つに記載の光走査装置である。
<6>
前記樹脂部品は、成形時に素材が射出された射出ゲート跡が複数箇所に存在し、
前記被熱影響部位は、複数箇所の射出ゲート跡から等距離に相当する部分には存在しない、
前記<1>乃至前記<4>のいずれか一つに記載の光走査装置である。
<7>
前記被熱影響部位は、前記電子部品を搭載した電子回路基板である、
前記<1>乃至前記<6>のいずれか一つに記載の光走査装置である。
<8>
前記被熱影響部位は、前記電子部品に含まれるコンデンサである、
前記<1>乃至<6>のいずれか一つに記載の光走査装置である。
<9>
前記被熱影響部位は、前記電子部品に含まれる集積回路である、
前記<1>乃至<6>に記載の光走査装置である。
<10>
前記光学部品は、複数のミラー面を有し回転しながら前記ミラー面で複数の光源からの光ビームを反射させてそれぞれ互いに異なる二方向に振り分け偏光走査する偏向器と、前記偏向器により偏向走査される光ビームをそれぞれ対応する被走査体上に導き結像させる光学素子と、
前記光ビームを出射する光源と、を含み、
前記被熱影響部位は前記光源又は当該光源の動作を制御する光源制御部である、
前記<1>乃至<10>のいずれか一つに記載の光走査装置である。
<11>
潜像担持体の表面に光走査手段を用いて光を照射することにより該潜像担持体の表面に潜像を形成する作像装置と、
記録媒体を搬送する搬送手段と、
前記潜像を搬送されてきた前記記録媒体に転写する転写手段と、
当該作像装置、当該搬送手段、当該転写手段の動作を制御する制御手段と、
当該作像装置、当該搬送手段、当該転写手段及び当該制御手段を覆う筐体部品と、
を備え、
前記光走査手段は、前記<1>乃至<10>のいずれか一つに記載の光走査装置であって、
前記筐体部品は射出により成形された樹脂部品であり、
動作により発熱をする発熱部品は、前記制御手段である、
ことを特徴とする画像形成装置である。
<12>
射出成形により成形された樹脂部品と、前記樹脂部品において所定の位置及び姿勢を維持するように設置された電子部品及び光学部品と、を備え、光書込走査系として用いられる走査装置であって、
前記電子部品又は前記光学部品の少なくともいずれかは、各部品の動作に供する電源の供給により発熱をする発熱部品に該当し、
前記樹脂部品は少なくとも一箇所以上において前記発熱部品と接触しており、
当該樹脂部品と当該発熱部品の接触部位を被熱影響部位とし、
当該被熱影響部位を中心とする所定範囲か、前記接触部位のいずれか又は両方には、当該樹脂部品の成形時に生ずるウェルドライン位置が存在しない、
ことを特徴とする光走査装置である。
<13>
前記樹脂部品は、表層と内部で密度が異なり、樹脂成形体を粉砕して得られた再生材料を素材とし、当該素材は、前記再生材料が1重量%以上であり、前記再生材料ではない新規材料が99重量%以下であり、当該再生材料と当該新規材料の合計が100重量%からなる再生材料含有材料である、
前記<12>に記載の光走査装置である。
<14>
前記樹脂部品は、前記所定範囲であって、前記被熱影響部位を中心とする立方体状の空間範囲のうち、当該被熱影響部位からの距離が60mm以内の範囲に、当該樹脂部品の成形時に素材が射出された射出ゲート跡が存在する、
前記<12>又は前記<13>に記載の光走査装置である。
<15>
前記樹脂部品は、成形時に素材が射出された射出ゲート跡が複数箇所に存在し、
前記被熱影響部位は、複数箇所の射出ゲート跡から等距離の相当する部分には存在しない、
前記<12>又は前記<13>に記載の光走査装置である。
<16>
前記被熱影響部位は、前記電子部品を搭載した電子回路基板である、
前記<12>乃至前記<15>のいずれか一つに記載の光走査装置である。
<17>
前記被熱影響部位は、前記電子部品に含まれるコンデンサである、
前記<12>乃至前記<15>のいずれか一つに記載の光走査装置である。
<18>
前記被熱影響部位は、前記電子部品に含まれる集積回路である、
前記<12>乃至前記<15>のいずれか一つに記載の光走査装置である。
<19>
前記光学部品は、複数のミラー面を有し回転しながら前記ミラー面で複数の光源からの光ビームを反射させてそれぞれ互いに異なる二方向に振り分け偏光走査する偏向器と、前記偏向器により偏向走査される光ビームをそれぞれ対応する被走査体上に導き結像させる光学素子と、
前記光ビームを出射する光源と、を含み、
前記被熱影響部位は前記光源又は当該光源の動作を制御する光源制御部である、
前記<12>乃至前記<18>のいずれか一つに記載の光走査装置である。
<20>
射出成形により成形された樹脂部品と、前記樹脂部品に設置された電子部品又は光学部品と、を備えた光走査装置であって、
当該樹脂部品の成形時に生ずるウェルドライン位置が、設置される前記電子部品又は前記光学部品の範囲に存在しない、
ことを特徴とする光走査装置である。
【符号の説明】
【0085】
1 :プリンタ
4 :光走査装置
5 :給紙部
6 :定着装置
7C、7K、7M、7Y :作像装置
9 :二次転写ローラ
10 :感光体
11 :帯電ローラ
12 :現像装置
13 :クリーニング装置
14 :中間転写ベルト
15a、15b、15c :支持ローラ
16 :一次転写ローラ
17 :クリーニング装置
19 :排紙トレイ
20 :部品
21 :高発熱部品
22 :被熱影響部品
25 :走査レンズ
28 :防塵ガラス
31 :ハウジング
41 :半導体レーザ
42 :上壁
45 :ミラー
50 :ポリゴンスキャナ
51 :防音ガラス
52 :コリメートレンズ
53 :結像レンズ
55 :反射ミラー
56 :防音壁
62CY :折り返しミラー
62KM :折り返しミラー
63CY :同期用結像レンズ
63KM :同期用結像レンズ
65CY :先端ビーム検知ユニット
65KM :先端ビーム検知ユニット
121 :LD制御板
131 :ステッピングモータ
141 :ゲート
151 :ウェルドライン位置
152 :回転軸
161 :樹脂内部
171 :スキン層
181 :気泡
191 :発熱源
201 :高熱位置
221 :第一部位
222 :第二部位
【先行技術文献】
【特許文献】
【0086】
【特許文献1】特許第4888162号明細書
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9