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特開2024-131531吸引力チェック装置および吸引力チェック方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131531
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】吸引力チェック装置および吸引力チェック方法
(51)【国際特許分類】
   B23Q 17/00 20060101AFI20240920BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240920BHJP
   B24B 49/08 20060101ALI20240920BHJP
   B24B 47/26 20060101ALI20240920BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20240920BHJP
   B23Q 3/08 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B23Q17/00 B
H01L21/304 631
B24B49/08
B24B47/26
B24B41/06 L
B23Q3/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041855
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 祐介
【テーマコード(参考)】
3C016
3C029
3C034
5F057
【Fターム(参考)】
3C016DA01
3C029EE06
3C034AA08
3C034BB73
3C034BB94
3C034CA30
5F057AA19
5F057AA37
5F057DA11
5F057FA13
5F057GB24
(57)【要約】
【課題】チャックテーブルの吸引力を定量化して、チャックテーブルの保持面の吸引力の低下を確実に知ることができるチャックテーブルの吸引力チェック装置を提供する。
【解決手段】エアーWを噴射するエアーノズル13と、エアーノズル13を摺動可能に支持しチャックテーブル4の保持面に平行であると共に保持面にエアーWを吹き付ける方向からエアーノズル13を接近及び離反させるガイドレール12と、エアーノズル13の位置を計測する計測部17と、を少なくとも備え、チャックテーブル4の保持面に吸引保持されたシートTに対してエアーWを噴射しながらエアーノズル13を接近させ、チャックテーブル4保持面からシートTが剥離した際の計測部17によって計測されるエアーノズル13の位置によってチャックテーブル4の吸引力をチェックする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を吸引保持する保持面を有するチャックテーブルの吸引力をチェックする吸引力チェック装置であって、
エアーを噴射するエアーノズルと、該エアーノズルを摺動可能に支持し該保持面に平行であると共に該保持面にエアーを吹き付ける方向から該エアーノズルを接近及び離反させるガイドレールと、
該エアーノズルの位置を計測する計測部と、を少なくとも備え、
該チャックテーブルの保持面に吸引保持されたシートに対してエアーを噴射しながら該エアーノズルを接近させ、該保持面から該シートが剥離した際の該計測部によって計測される該エアーノズルの位置によってチャックテーブルの吸引力をチェックすることができる吸引力チェック装置。
【請求項2】
該保持面から吸引源に至る経路に圧力計が配設され、該圧力計の検出値が上昇した場合に、該チャックテーブルから該シートが剥離したと判断する請求項1に記載の吸引力チェック装置。
【請求項3】
該エアーノズルが噴射するエアーの流量を調整する流量調整手段が配設される請求項1に記載の吸引力チェック装置。
【請求項4】
被加工物を吸引保持する保持面を有するチャックテーブルの吸引力をチェックする吸引力チェック方法であって、
エアーを噴射するエアーノズルを準備するエアーノズル準備工程と、
該チャックテーブルの保持面にシートを吸引保持するシート保持工程と、
該チャックテーブルの保持面に吸引保持されたシートに対して該保持面に平行であると共に該保持面にエアーを吹き付ける方向に該エアーノズルを位置付けるノズル位置付け工程と、
該エアーノズルからエアーを噴射しながら該チャックテーブルに接近させるノズル接近工程と、
該保持面から該シートが剥離した際の該エアーノズルの位置を計測する計測工程と、
を含み構成される吸引力チェック方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物を吸引保持する保持面を有するチャックテーブルの吸引力をチェックする吸引力チェック装置、及び被加工物を吸引保持する保持面を有するチャックテーブルの吸引力をチェックする吸引力チェック方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画されて表面に形成されたウエーハは、研削装置によって裏面が研削されて薄化された後、ダイシング装置、レーザー加工装置によって個々のデバイスチップに分割され、携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
研削装置は、ウエーハを吸引保持する保持面を有するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたウエーハを研削する研削ホイールを回転可能に備えた研削手段と、研削手段をチャックテーブルに接近及び離間する方向に移動する研削送り手段と、を含み構成されていて、ウエーハを所望の厚みに仕上げることができる(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-246098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、研削加工を実施する際に板状の被加工物(例えばウエーハ)を保持するチャックテーブルは、通気性を有する部材、例えばポーラスセラミックスにより構成されていて、被加工物を研削する際に発生する研削屑を含む研削水を保持面の外周側から吸い込み、チャックテーブルの外周領域に研削屑が徐々に詰まって、吸引力が徐々に低下するという問題がある。このように吸引力が低下すると、研削ホイールの回転によって発生する気流と、研削ホイールの回転力によって研削中に被加工物がチャックテーブルから離れて飛散するという問題が発生し、適宜のタイミングでチャックテーブルの研削屑の詰まりを解消する洗浄作業が必要となる。
【0006】
上記したチャックテーブルにおける研削屑の詰まりは、チャックテーブルの外周領域から徐々に進行するため、チャックテーブル上にウエーハ等を保持していない状態の吸引圧力を検査しても、上記のような研削屑の詰まりによる吸引力の低下を検出することは困難である。
【0007】
本発明は、上記事実に鑑みなされたものであり、その主たる技術課題は、チャックテーブルの吸引力を定量化して、チャックテーブルの保持面の吸引力の低下を確実に知ることができるチャックテーブルの吸引力チェック装置、及びチャックテーブルの吸引力チェック方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、被加工物を吸引保持する保持面を有するチャックテーブルの吸引力をチェックする吸引力チェック装置であって、エアーを噴射するエアーノズルと、該エアーノズルを摺動可能に支持し該保持面に平行であると共に該保持面にエアーを吹き付ける方向から該エアーノズルを接近及び離反させるガイドレールと、該エアーノズルの位置を計測する計測部と、を少なくとも備え、該チャックテーブルの保持面に吸引保持されたシートに対してエアーを噴射しながら該エアーノズルを接近させ、該保持面から該シートが剥離した際の該計測部によって計測される該エアーノズルの位置によってチャックテーブルの吸引力をチェックすることができる吸引力チェック装置が提供される。
【0009】
該保持面から吸引源に至る経路に圧力計が配設され、該圧力計の検出値が上昇した場合に、該チャックテーブルから該シートが剥離したと判断することができる。また、該エアーノズルが噴射するエアーの流量を調整する流量調整手段が配設されるようにしてもよい。
【0010】
また、上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、被加工物を吸引保持する保持面を有するチャックテーブルの吸引力をチェックする吸引力チェック方法であって、エアーを噴射するエアーノズルを準備するエアーノズル準備工程と、該チャックテーブルの保持面にシートを吸引保持するシート保持工程と、該チャックテーブルの保持面に吸引保持されたシートに対して該保持面に平行であると共に該保持面にエアーを吹き付ける方向に該エアーノズルを位置付けるノズル位置付け工程と、該エアーノズルからエアーを噴射しながら該チャックテーブルに接近させるノズル接近工程と、該保持面から該シートが剥離した際の該エアーノズルの位置を計測する計測工程と、を含み構成される吸引力チェック方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の吸引力チェック装置は、エアーを噴射するエアーノズルと、該エアーノズルを摺動可能に支持しチャックテーブルの保持面に平行であると共に該保持面にエアーを吹き付ける方向から該エアーノズルを接近及び離反させるガイドレールと、該エアーノズルの位置を計測する計測部と、を少なくとも備え、該保持面に吸引保持されたシートに対してエアーを噴射しながら該エアーノズルを接近させ、該保持面から該シートが剥離した際の該計測部によって計測される該エアーノズルの位置によってチャックテーブルの吸引力をチェックすることができることから、被加工物を吸引保持するチャックテーブルの吸引力が、チャックテーブルの保持面からシートが剥離した際に計測されるエアーノズルの位置で定量化され、チャックテーブルの保持面の吸引力の低下を確実に判定することができる。
【0012】
また、本発明の吸引力チェック方法は、エアーを噴射するエアーノズルを準備するエアーノズル準備工程と、該チャックテーブルの保持面にシートを吸引保持するシート保持工程と、該チャックテーブルの保持面に吸引保持されたシートに対して該保持面に平行であると共に該保持面にエアーを吹き付ける方向に該エアーノズルを位置付けるノズル位置付け工程と、該エアーノズルからエアーを噴射しながら該チャックテーブルに接近させるノズル接近工程と、該保持面から該シートが剥離した際の該エアーノズルの位置を計測する計測工程と、を含み構成されることから、被加工物を吸引保持するチャックテーブルの吸引力が、チャックテーブルの保持面からシートが剥離した際に計測されるエアーノズルの位置で定量化され、チャックテーブルの保持面の吸引力の低下を確実に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】研削装置の全体斜視図である。
図2図1に示す研削装置に適用される吸引力チェック装置の斜視図である。
図3】本実施形態の吸引力チェック方法におけるシート保持工程の実施態様を示す斜視図である。
図4】ノズル位置付け工程の実施態様を示す斜視図である。
図5】(a)チャックテーブルの吸引力の低下がない場合のノズル接近工程及び計測工程の実施態様を示す側面図、(b)(a)に示すノズル接近工程及び計測工程を実施した場合のエアーノズルの移動距離及び保持面から吸引源に至る経路の圧力値の関係を示す概念図である。
図6】(a)チャックテーブルの吸引力の低下がある場合のノズル接近工程及び計測工程の実施態様を示す側面図、(b)(a)に示すノズル接近工程及び計測工程を実施した場合のエアーノズルの移動距離及び保持面から吸引源に至る経路の圧力値の関係を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に基づいて構成されるチャックテーブルの吸引力チェック装置、及び該吸引力チェック装置を使用して実施されるチャックテーブルの吸引力チェック方法に係る実施形態について、添付図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0015】
図1には、本実施形態の吸引力チェック装置、及び吸引力チェック方法が適用される研削装置1の全体斜視図が示されている。
【0016】
研削装置1は、略直方体状の装置ハウジング2を備えている。装置ハウジング2の後端側には、支持壁21が立設されている。この支持壁21の内側面には、上下方向(Z軸方向)に延びる案内レール22、22が設けられている。案内レール22、22には研削手段としての研削ユニット3が上下方向に移動可能に装着されている。
【0017】
研削ユニット3は、ユニットハウジング31と、ユニットハウジング31に回転自在に支持された回転軸32と、回転軸32の下端に配設されたホイールマウント33と、ホイールマウント33に装着され下面に環状に複数の研削砥石35が配置された研削ホイール34と、ユニットハウジング31の上端に装着されホイールマウント33を回転させる電動モータ37と、ユニットハウジング31を、支持部材36を介して支持する移動基台38とを備えている。
【0018】
研削装置1は、研削ユニット3を支持する移動基台38を案内レール22、22に沿って昇降させる昇降手段として、パルスモータ391及び雄ネジロッド392を含む研削送り機構39を備えている。該研削送り機構39を作動することで、研削ユニット3をZ軸方向に移動させることができる。
【0019】
研削ユニット3において、電動モータ37によって回転させられる回転軸32には、研削砥石35と後述するチャックテーブル4に保持される被加工物とに研削水を供給する研削水供給手段(図示は省略する)が接続されている。研削装置1は、上記支持壁21の前側において装置ハウジング2の上面に配設されたカバーテーブル5の上面に突出するように配設されたチャックテーブル4を備えている。チャックテーブル4は、チャックテーブル4の保持面を構成する通気性を有するポーラスセラミックスで構成された吸着チャック41と該吸着チャック41を囲繞する枠体42によって構成されると共に、図示を省略する回転駆動手段によって回転可能に構成されている。チャックテーブル4には、後述する吸引手段6が接続されており(図3を参照)、吸引手段6を作動することで、吸着チャック41の上面に負圧を生成することができる。研削装置1は、カバーテーブル5と共にチャックテーブル4を図中Y軸方向に移動させる図示を省略する移動手段を備えており、図1で位置付けられている手前側の被加工物搬出入位置と、研削ユニット3によって研削加工が施される研削加工位置との間で移動させられる。
【0020】
研削装置1は、研削作業を指示したり、加工条件を指定したりするための図示を省略する制御手段を備えている。該制御手段は、制御プログラムに従って演算処理する中央処理装置(CPU)と、制御プログラム等を格納するリードオンリーメモリ(ROM)と、演算結果等を記憶する記憶手段としての読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)と、入力インターフェース及び出力インターフェースを備えている(いずれも図示は省略する)。このように構成された制御手段には、被加工物の研削加工を実施するための制御プログラムが記憶されており、上記の研削装置1の各作動部が制御される。
【0021】
本実施形態の研削装置1において加工される被加工物は、例えば直径が8インチのシリコン(Si)のウエーハであり、複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されている。該ウエーハを加工するに際しては、上記した被加工物搬出入位置にチャックテーブル4を移動させると共に、チャックテーブル4の保持面に、表面に保護テープが貼着されたウエーハの保護テープ側を載置して吸引保持して、チャックテーブル4を研削加工位置に移動する。次いで、チャックテーブル4を所定の方向に回転させると共に、研削ユニット3の電動モータ37を作動して研削ホイール34を回転して下降させ、研削砥石35を該ウエーハの裏面に当接させて研削加工を施し、所望の厚みになるまで薄化する(詳細な手順については省略する)。
【0022】
研削装置1によって上記した研削加工を繰り返し実施していると、チャックテーブル4の保持面を構成する吸着チャック41の外周領域から、研削屑を含む研削水が吸い込まれ、該研削屑によって徐々に吸着チャック41の詰まりが進行する。そこで、定期的に、又は任意のタイミングで、本発明に基づき構成される吸引力チェック装置10を使用して、チャックテーブルの吸引力チェック方法を実施し、上記したチャックテーブル4の吸引力が適正であるか、否かについてチェックを行う。図2には、本実施形態の吸引力チェック方法を実施するのに好適な吸引力チェック装置10の斜視図が示されている。この吸引力チェック装置10は、図1に示すように、吸引力チェック方法を実施する際にカバーテーブル5上に載置されるものであり、吸引力チェック方法を実施しない場合には、カバーテーブル5上から外して、図示を省略する収納位置に収納される。
【0023】
図2に示すように、吸引力チェック装置10は、基台11と、基台11に保持されるガイドレール12と、ガイドレール12の長手方向に摺動可能に支持されるエアーノズル13とを含み構成される。また、エアーノズル13には、エアーWを供給するエアー供給手段16が接続される。
【0024】
基台11は、ガイドレール12を長手方向に沿って保持する凹部11aを備えている。また、基台11には、ガイドレール12の高さを調整する高さ調整手段11bが配設されている。基台11の凹部11aの内部には、図示を省略するガイドレール12の昇降機構が配設され、高さ調整手段11bを矢印で示す方向のいずれかに回転させることにより、ガイドレール12を矢印R1で示す方向(上下方向)の所望の位置に昇降させることができる。
【0025】
ガイドレール12は、長手方向に延びる溝部12aと、チャックテーブル4の側面42a(図4を参照)に当接する当接部12bと、を備え、該溝部12aの内部には、後述するエアーノズル13を支持する摺動部13dが収容されている。該摺動部13dが溝部12aに摺動自在に支持されていることから、エアーノズル13は、溝部12aに沿う矢印R2で示す方向に移動可能であって、図示を省略する固定機構により所望の位置に固定可能に構成されている。
【0026】
エアーノズル13は、エアーノズル本体13aと、エアーノズル本体13aの一端部に形成されたノズル先端部13bと、エアーノズル本体13aに形成されてエアーノズル本体13aを支持する上記した摺動部13dと、を備えている。エアーノズル本体13aとノズル先端部13bの内部には、図示を省略するエアー連通路が形成されており、エアー供給手段16から供給されるエアーWは、エアーノズル本体13aの後端部13eから導入され、該エアー連通路を介してノズル先端部13bの噴射口13cから水平方向に噴射される。上記した高さ調整手段11bを回転することで、ガイドレール12と共に、エアーWを水平方向に噴射する姿勢を維持したままのエアーノズル13を昇降させることができる。
【0027】
ガイドレール12の上面には、溝部12aに沿う長さ寸法を示すメモリが刻まれたスケール17aが配設され、エアーノズル13の摺動部13dには、該スケール17aのメモリを指す指針部17bが配設されていて、該スケール17aと該指針部17bによって、ガイドレール12上のエアーノズル13の位置を計測する計測部17が構成されている。計測部17は、上記したエアーノズル13を、図2に示すように、溝部12aに沿って最も後端側に下げた状態で、該指針部17bの先端が該スケール17aの原点位置を示すように設定されている。この計測部17によって、エアーノズル13を溝部12aに沿って移動させた場合のエアーノズル13の位置が計測され、原点位置からの移動距離が検出される。なお、前記した計測部17は、上記したスケール17aと指針部17bによって構成されることに限定されず、ガイドレール12上におけるエアーノズル13の位置を特定可能なその他の計測手段を採用してもよい。例えば、溝部12aに沿うエアーノズル13の移動を、図示を省略するパルスモータとボールネジ機構によって行う構成とし、エアーノズル13を原点位置から移動させる際のパルスモータのパルス数をカウントし、該パルス数をエアーノズル13の位置に換算して計測値としてもよい。
【0028】
エアー供給手段16は、エアーWを供給するエアー源16aと、エアー源16aとエアーノズル本体13aの後端部13eとを接続するエアー供給路16bと、エアー供給路16bに配設される開閉弁16cとを備えている。エアー源16aによって供給されるエアーWの圧力は、例えば0.5MPaである。
【0029】
上記したエアーノズル13のエアーノズル本体13aには、エアーノズル本体13a内のエアー連通路を流れるエアーWの流量を表示する流量計14と、エアーノズル本体13aのエアー連通路に導入されるエアーWの流量を調整する流量調整手段15が配設されている。上記したエアー源16aからエアーノズル13に導入されるエアーWの流量は、上記の流量調整手段15を矢印R3で示す方向のいずれかに回転させることで調整可能であり、流量計14によって流量を確認しながら流量調整手段15を操作して、エアーノズル13の噴射口13cから噴射されるエアーWの流量が、所定の一定値になるように調整される。
【0030】
本実施形態の吸引力チェック装置10は、概ね上記したとおりの構成を備えており、吸引力チェック装置10を使用して、本発明に基づき構成される吸引力チェック方法を、以下の如く実施することができる。以下に説明する吸引力チェック方法は、定期的なタイミング、又は任意のタイミングで実施することが可能である。
【0031】
本実施形態において実施される吸引力チェック方法は、上記した研削装置1において、被加工物であるウエーハを吸引保持する保持面(吸着チャック41)の吸引力をチェックするものであり、まず、上記したエアーWを噴射するエアーノズル13を準備するエアーノズル準備工程を実施する。本実施形態のエアーノズル13は、図2に基づき説明した吸引力チェック装置10に含まれており、上記した吸引力チェック装置10を準備することで、エアーノズル13が準備される。
【0032】
エアーノズル準備工程が完了したならば、吸引力のチェック対象である研削装置1のチャックテーブル4の保持面に、シートを吸引保持するシート保持工程を実施する。より具体的には、図3に示すように、チャックテーブル4の吸着チャック41と同一の寸法で形成された柔軟性のある樹脂の薄膜であるシートTを用意し、吸着チャック41上に載置する。次いで、吸着チャック41上に負圧Vを生成する吸引手段6を作動する。吸引手段6は、吸引源61と、チャックテーブル4の吸着チャック41から吸引源61に至る経路として配設される連通路62と、連通路62に配設される開閉弁63とを備え、吸着チャック41から吸引源61に至る連通路62には、該連通路62の圧力を検出する圧力計64が設置されている。該開閉弁63を開として吸引源61を作動することにより、吸着チャック41の上面に負圧Vが形成されて、シートTが吸引保持されて、シート保持工程が完了する。なお、上記した実施形態では、エアーノズル準備工程の後にシート保持工程を実施するように説明したが、本発明はこれに限定されず、シート保持工程を先に実施してもよい。
【0033】
上記したように、エアーノズル準備工程、シート保持工程を実施したならば、チャックテーブル4の保持面、すなわち吸着チャック41に吸引保持されたシートTに対して、チャックテーブル4の吸着チャック41の上面に平行であると共に吸着チャック41の上面にエアーWを吹き付ける方向にエアーノズル13を位置付けるノズル位置付け工程を実施する。より具体的には、図4に示すように、予め準備したエアーノズル13を含む吸引力チェック装置10を、カバーテーブル5上に配置し、チャックテーブル4の枠体42の側面42aに、吸引力チェック装置10のガイドレール12の当接部12bを突き当てる。図2に示すように、当接部12bは、先端面が平面視で円弧状になっており、該円弧状の曲率は、チャックテーブル4の側面42aの曲率と一致する曲率で形成され、吸引力チェック装置1のエアーノズル13の方向が安定する。なお、ガイドレール12の当接部12bの形状は、上記した形態に限定されない。円弧状で形成する場合、その曲率は、チャックテーブル4の側面42aの曲率と一致することに限定されず、該側面42aの曲率と異なっていても良い。その場合は、チャックテーブル4の側面42aの曲率よりも小さいことが好ましい。また、該当接部12bを円弧状で形成することに限定されない。当接部12bが円弧状でない場合であっても、離間した2点でチャックテーブル4の側面42aに当接する形状であれば、エアーノズル13の方向を安定させることができる。
【0034】
ここで、吸引力チェック装置10の基台11に配設されている上記の高さ調整手段11bを回転して、図5(a)に示すように、エアーノズル13の高さを矢印R1で示す上下方向で調整し、エアーノズル13の噴射口13cから噴射されるエアーWの位置が、チャックテーブル4の保持面と略一致するように調整して、チャックテーブル4に吸引保持されたシートTに対して側方からエアーWが噴射されるようにする。このとき、エアーノズル13は、ガイドレール12の溝部12aにおいて後端位置とされ、計測部17によって計測される位置が、図中Z0で示す原点位置になるように位置付けられる。
【0035】
上記したように、ノズル位置付け工程を実施したならば、上記したエアー供給手段16を作動して、エアーノズル13のエアーノズル本体13aにエアー供給路16bを介してエアーWを導入して、噴射口13cからエアーWを噴射する。次いで、上記したエアーノズル13を、溝部12aに沿って矢印R4で示す方向に移動して、チャックテーブル4に徐々に接近させるノズル接近工程を実施する。
【0036】
ここで、図5(b)は、エアーノズル13をチャックテーブル4に接近させる際の原点位置(0mm)からの移動距離(mm)を横軸に示し、該移動距離に対応して吸引手段6の圧力計64によって検出される圧力値(MPa)を縦軸に示している。上記したように、エアーノズル13の噴射口13cから噴射されるエアーWの流量は一定になるように調整されており、該移動距離が延びて、エアーノズル13がチャックテーブル4に接近し、エアーノズル13の噴射口13cがシートTの外周縁Taに近づくに従い、該外周縁Taをチャックテーブル4の保持面から引き剥がそうとする力が増大する。シートTがチャックテーブル4の保持面から剥離されない状態では、圧力計64によって検出される圧力値は、大気圧(≒0.1MPa)よりも十分に低い所定の圧力(≒0.02MPa)で維持される。そして、エアーノズル13がチャックテーブル4にさらに接近して、該外周縁Taをチャックテーブル4の保持面から引き剥がそうとする力が、チャックテーブル4の保持面においてシートTを吸引する吸引力を上回った時点で、シートTがチャックテーブル4から剥離する。チャックテーブル4の保持面からシートTが剥離すると、チャックテーブル4の保持面から大気が吸引手段6の連通路62に導入されて、図5(b)に示すように、圧力計64によって検出される圧力が一気に上昇する。これにより、チャックテーブル4の保持面からシートTが剥離したことが検知され、この時のエアーノズル13の位置を計測部17によって計測することができる。本実施形態では、このようにして、上記したノズル接近工程を実施すると共に、チャックテーブル4の保持面からシートTが剥離する際のエアーノズル13の位置、すなわちエアーノズル13の原点位置からの移動距離を計測する計測工程を実施する。
【0037】
チャックテーブル4の保持面を構成する吸着チャック41に詰まりが無い場合、シートTの全域に適切に負圧Vが作用して吸引力が適正に発揮される。したがって、図5(b)に示すように、エアーノズル13の計測部17によって計測される移動距離が30mmを越えても、シートTの外周縁Taがチャックテーブル4の保持面から剥離せず、吸引手段6の圧力計64によって計測される圧力は、大気圧(≒0.1MPa)よりも十分に低い圧力(≒0.02MPa)で維持される。そして、図5に示す実施形態では、シートTの外周縁TaがエアーWの噴射によって剥離されるエアーノズル13の移動距離が、本実施形態において設定される判定基準(例えば30mm)を十分に越えており、チャックテーブル4の保持面におけるシートTに対する吸引力が適正に維持されていると判定される。
【0038】
これに対し、研削加工を繰り返し実施して、チャックテーブル4の保持面の外周領域において、研削屑による目詰まりが進行している場合は、チャックテーブル4の保持面の外周領域におけるシートTの外周縁Taに対する吸引力が低下する。このような状況において、上記したノズル接近工程を実施すると共に、上記の計測工程を実施すると、図6(a)に示すように、エアーノズル13の計測部17によって計測される原点位置Z0からの移動距離が短い位置(図中Z1で示す)で、シートTの外周縁Taが、エアーWの噴射によってチャックテーブル4の保持面から剥離される。上記したように、シートTの外周縁Taがチャックテーブル4の保持面から剥離することにより、大気が吸引手段6の連通路62に導入されて、図6(b)に示すように、圧力計64によって検出される圧力が一気に上昇する。そして、計測部17によって、その時点でのエアーノズル13の位置Z1が計測される(図示の実施形態では25mm)。このように、計測工程によって、圧力計64によって検出される圧力が一気に上昇した際のエアーノズル13の位置が、上記した判定基準未満であることが計測されることによって、チャックテーブル4の保持面を構成する吸着チャック41の詰まりがあると判定され、吸着チャック41に対し、適宜の洗浄工程が実施される。
【0039】
上記した吸引力チェック装置10、及び吸引力チェック方法によれば、被加工物を吸引保持するチャックテーブル4の吸引力が、チャックテーブル4の保持面からシートTが剥離した際のエアーノズル13の位置で定量化され、チャックテーブル4の保持面の吸引力の低下を確実に判定することができる。
【0040】
なお、チャックテーブル4の保持面に詰まりがあると判断するエアーノズル13の位置の判定基準(上記の実施形態では30mm)は、予め実験により設定されるものであり、チャックテーブル4の保持面に作用する吸引手段6の負圧V、及びエアーノズル13から噴射されるエアーWの流量に応じて適宜設定される。
【0041】
なお、上記した実施形態では、本発明に基づき構成される吸引力チェック方法、及び吸引力チェック装置を研削装置1のチャックテーブル4に適用した例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、図示を省略する研磨装置のチャックテーブルに適用されてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1:研削装置
2:装置ハウジング
21:支持壁
22:ガイドレール
3:研削ユニット
31:ユニットハウジング
32:回転軸
33:ホイールマウント
34:研削ホイール
35:研削砥石
36:支持部材
37:電動モータ
38:移動基台
39:研削送り機構
4:チャックテーブル
41:吸着チャック
42:枠体
42a:側面
6:吸引手段
61:吸引源
62:連通路
63:開閉弁
64:圧力計
10:吸引力チェック装置
11:基台
11a:凹部
11b:高さ調整手段
12:ガイドレール
12a:溝部
12b:当接部
13:エアーノズル
13a:エアーノズル本体
13b:ノズル先端部
13c:噴射口
13d:摺動部
13e:後端部
14:流量計
15:流量調整手段
16:エアー供給手段
16a:エアー源
16b:エアー供給路
16c:開閉弁
17:計測部
17a:スケール
17b:指針部
図1
図2
図3
図4
図5
図6