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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131550
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】水素供給システム及びその運転方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 4/00 20060101AFI20240920BHJP
   C01B 3/26 20060101ALI20240920BHJP
   B01J 7/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B01J4/00 102
C01B3/26
B01J7/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041885
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003285
【氏名又は名称】千代田化工建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川上 円
(72)【発明者】
【氏名】河合 裕教
(72)【発明者】
【氏名】岡田 将尭
(72)【発明者】
【氏名】仁平 雅之
(72)【発明者】
【氏名】小日山 輝泉
【テーマコード(参考)】
4G068
4G140
【Fターム(参考)】
4G068AA01
4G068AB01
4G068AC20
4G068AF12
4G068AF36
4G068DA10
4G068DB17
4G068DD01
4G068DD11
4G068DD15
4G140DA02
4G140DA03
4G140DC03
(57)【要約】
【課題】 水素ガスの供給量を迅速に変化させることができる水素生成システム及びその運転方法を提供する。
【解決手段】 水素供給システム1は、液体の水素キャリアを気化する気化器3と、気化器において気化された水素キャリアの供給を受け、水素キャリアの脱水素反応によって水素を生成する脱水素反応器4と、気化器の出口を流れる気体の水素キャリアの流量を制御する制御装置30とを有する。制御装置は、水素キャリアの加熱量を調節することによって気化器の出口を流れる気体の水素キャリアの流量を調節してもよい。水素供給システム1は、脱水素反応器の出口に接続され、第1気化器を通過するメイン通路L6と、メイン通路に接続され、第1気化器を迂回するバイパス通路L7と、メイン通路及びバイパス通路の少なくとも一方に設けられた第1流量制御弁V6とを更に有する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素供給システムであって、
液体の水素キャリアを気化する気化器と、
前記気化器において気化された前記水素キャリアの供給を受け、前記水素キャリアの脱水素反応によって水素を生成する脱水素反応器と、
前記気化器の出口を流れる気体の前記水素キャリアの流量を制御する制御装置とを有する水素供給システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記水素キャリアの加熱量を調節することによって前記気化器の前記出口を流れる気体の前記水素キャリアの流量を調節する請求項1に記載の水素供給システム。
【請求項3】
前記気化器は、第1気化器と、前記第1気化器と異なる熱源を有する第2気化器とを有する請求項2に記載の水素供給システム。
【請求項4】
前記脱水素反応器の前記出口に接続され、前記第1気化器を通過するメイン通路と、
前記メイン通路に接続され、前記第1気化器を迂回するバイパス通路と、
前記メイン通路及び前記バイパス通路の少なくとも一方に設けられた第1流量制御弁とを更に有し、
前記第1気化器は、前記脱水素反応器の前記出口から流出した流体を熱源とする請求項3に記載の水素供給システム。
【請求項5】
前記第2気化器には、前記脱水素反応器を加熱するための熱源が供給される請求項3に記載の水素供給システム。
【請求項6】
前記気化器に供給する液体の前記水素キャリアの流量を制御する第2流量制御弁と、
前記気化器内の前記水素キャリアの液位を検出する液位センサとを有し、
前記第2流量制御弁は、前記気化器内の液体の前記水素キャリアの液位が一定になるように制御される請求項2に記載の水素供給システム。
【請求項7】
水素供給システムの運転方法であって、
前記水素供給システムは、
水素キャリアを気化する気化器と、
前記気化器において気化された前記水素キャリアの供給を受け、前記水素キャリアの脱水素反応によって水素を生成する脱水素反応器とを有し、
前記運転方法は、前記脱水素反応器の出口を流れる水素の流量を調節するために、前記気化器の出口を流れる気体の前記水素キャリアの流量を調節する水素供給システムの運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素供給システム及びその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、有機ハイドライドを原料として水素ガスを製造する水素供給システムを開示している。水素供給システムは、有機ハイドライドを気化する気化器と、気化された有機ハイドライドの脱水素反応を行う脱水素反応器と、脱水素反応によって生成した有機物から水素ガスを分離する気液分離装置とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第7198048号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水素供給システムにガスタービン発電機等の水素使用装置を接続し、水素供給システムが生成した水素を水素使用装置が使用する場合、水素使用装置の要求水素ガス流量に応じて水素供給システムは水素ガスの生成量を変動させる必要がある。しかし、水素供給システムでは、原料である有機ハイドライドを気化するのに遅れが生ずるため、原料の供給量を制御しても水素ガスの供給量を迅速に変化させることができないという問題がある。
【0005】
本発明は、以上の背景を鑑み、水素ガスの供給量を迅速に変化させることができる水素生成システム及びその運転方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、水素供給システム(1)であって、液体の水素キャリアを気化する気化器(3)と、前記気化器において気化された前記水素キャリアの供給を受け、前記水素キャリアの脱水素反応によって水素を生成する脱水素反応器(4)と、前記気化器の出口を流れる気体の前記水素キャリアの流量を制御する制御装置(30)とを有する。
【0007】
この態様によれば、気化器の出口を流れる気体の水素キャリアの流量を制御することによって、脱水素反応器に供給する気体の水素キャリアの流量を迅速に調節することができる。これにより、脱水素反応器における水素ガスの生成量を迅速に変化させることができる。すなわち、水素ガスの供給量を迅速に変化させることができる水素生成システムを提供することができる。
【0008】
上記の態様において、前記制御装置は、前記水素キャリアの加熱量を調節することによって前記気化器の前記出口を流れる気体の前記水素キャリアの流量を調節してもよい。
【0009】
この態様によれば、気化器における水素キャリアの加熱量を調節することによって、気化器の出口を流れる気体の水素キャリアの流量を迅速に調節することができる。
【0010】
上記の態様において、前記気化器は、第1気化器(3A)と、前記第1気化器と異なる熱源を有する第2気化器(3B)とを有してもよい。
【0011】
この態様によれば、熱源が異なる第1気化器及び第2気化器を使用して水素キャリアを気化させるため、仮に第1気化器及び第2気化器の一方の熱源が不足したとしても、第1気化器及び第2気化器の他方によって水素キャリアを迅速に気化させることができる。
【0012】
上記の態様において、前記脱水素反応器の前記出口に接続され、前記第1気化器を通過するメイン通路(L6)と、前記メイン通路に接続され、前記第1気化器を迂回するバイパス通路(L7)と、前記メイン通路及び前記バイパス通路の少なくとも一方に設けられた第1流量制御弁(V6)とを更に有し、前記第1気化器は、前記脱水素反応器の前記出口から流出した流体を熱源としてもよい。
【0013】
この態様によれば、バイパス通路を流れる高温の流体の流量を制御することによって、第1気化器における水素キャリアの加熱量を制御することができる。
【0014】
上記の態様において、前記第2気化器には、前記脱水素反応器を加熱するための熱源が供給されてもよい。
【0015】
この態様によれば、脱水素反応器を加熱する熱源を利用して第2気化器を加熱することができる。
【0016】
上記の態様において、前記気化器に供給する液体の前記水素キャリアの流量を制御する第2流量制御弁(V1)と、前記気化器内の前記水素キャリアの液位を検出する液位センサ(LV1)とを有し、前記第2流量制御弁は、前記気化器内の液体の前記水素キャリアの液位が一定になるように制御されてもよい。
【0017】
この態様によれば、気化器内の水素キャリアの液位が一定に制御されているため、水素キャリアの加熱量に応じて水素キャリアの気化量を調節することができる。
【0018】
本発明の他の態様は、水素供給システム(1)の運転方法であって、前記水素供給システムは、水素キャリアを気化する気化器(3)と、前記気化器において気化された前記水素キャリアの供給を受け、前記水素キャリアの脱水素反応によって水素を生成する脱水素反応器(4)とを有し、前記脱水素反応器の出口を流れる水素の流量を調節するために、前記気化器の出口を流れる気体の前記水素キャリアの流量を調節するステップを含む。
【0019】
この態様によれば、気化器の出口を流れる気体の水素キャリアの流量を調節することによって、脱水素反応器に供給する気体の水素キャリアを迅速に調節することができる。これにより、脱水素反応器における水素ガスの生成量を迅速に変化させることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上の態様によれば、水素ガスの供給量を迅速に変化させることができる水素生成システム及びその運転方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1実施形態に係る水素供給システムを示す説明図
図2】制御装置が実行する制御手順を示すフロー図
図3】要求水素ガス流量に対する、気化器の出口における水素キャリアの質量流量、及びメイン通路の下流端における水素ガスの質量流量を示すグラフ
図4】要求水素ガス流量に対する、メイン通路の下流端における水素ガスの圧力及びその目標値を示すグラフ
図5】第1実施形態の変形例に係る水素供給システムを示す説明図
図6】第2実施形態に係る水素供給システムを示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る水素供給システム及びその運転方法の実施形態について説明する。水素供給システムは、水素キャリアの脱水素反応によって水素を生成し、生成した水素を水素使用装置に供給する。水素使用装置は、例えば水素ガスタービン、燃料電池、水素内燃機関等であってよい。
【0023】
水素キャリアは、脱水素反応によって水素分子を放出する化合物であり、水素化物ともいう。水素キャリアは、有機ハイドライド、アンモニア、ギ酸等であってよい。有機ハイドライドは、水素化芳香族類を含む。水素化芳香族類は、単環芳香族類の水素化物、2環芳香族類の水素化物、及び3環以上の芳香環を有する化合物の水素化物を含む。水素化芳香族類は、具体的には、メチルシクロヘキサン(MCH)、シクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、テトラリン、デカリン、メチルデカリン、ビフェニル、ジフェニルメチル、ジベンゾトリオール、テトラデカヒドロアントラセンからなる群から選ばれる1種又は2種以上の混合物であるとよい。脱水素化された水素キャリアは、水素化反応によって元の水素を含む水素キャリアに復元する。例えば、メチルシクロヘキサンの脱水素化反応によって水素及びトルエンが生成し、トルエンの水素化反応によってメチルシクロヘキサンが生成される。
【0024】
(第1実施形態)
図1に示すように、第1実施形態に係る水素供給システム1は、原料容器2と、気化器3と、脱水素反応器4と、気液分離装置5と、水素ガスホルダ6とを有する。各装置は、通路によって接続されている。通路は管によって形成されているとよい。原料容器2は、原料としての水素キャリアを液体の状態で貯留する。原料容器2は、タンクやベッセルであるとよい。
【0025】
気化器3は、液体の水素キャリアを気化する。気化器3は、第1気化器3Aと、第2気化器3Bとを含む。第1気化器3Aと第2気化器3Bとは、互いに並列に配置されている。第1気化器3A及び第2気化器3Bは、液体の水素キャリアが供給されるドラム11と、ドラム11を加熱する熱源(熱媒体)が供給される加熱部12とを有する。各ドラム11は、液体の水素キャリアが流入するドラム入口と、ドラム11内で気化された気体の水素キャリアが流出するドラム出口とを有する。加熱部12は、ドラム11内を通過する管やドラム11の周囲に設けられたジャケットであるとよい。
【0026】
原料容器2は、通路L1によって第1気化器3Aのドラム入口に接続され、通路L2によって第2気化器3Bのドラム入口に接続されている。通路L1には流量制御弁V1が設けられている。通路L2には流量制御弁V2が設けられている。
【0027】
第1気化器3Aのドラム出口は、通路L3によって脱水素反応器4の入口に接続されている。第2気化器3Bのドラム出口は、通路L4を介して通路L3に接続されている。通路L3には、第1気化器3A側から、通路L4との接続部、第1加熱器16、第2加熱器17が順に設けられている。
【0028】
第1加熱器16及び第2加熱器17は、通路L3を流れる気体の水素キャリアを加熱する。第1加熱器16及び第2加熱器17は、高温の熱媒体が供給される熱交換器や、燃料の燃焼熱によって加熱するボイラであってよい。通路L3には、第1加熱器16及び第2加熱器17の少なくとも一方を迂回するバイパス通路L5が設けられている。本実施形態では、第1加熱器16には、第1加熱器16に供給される熱媒体の流量を制御する流量制御弁V3が設けられている。また、第2加熱器17には、バイパス通路L5が第2加熱器17と並列に接続されている。第2加熱器17には、例えば、他の加熱炉の排熱が供給されるとよい。他の加熱炉は、例えば、脱水素反応器4を加熱するために使用されるホットオイルを加熱するホットオイル加熱炉であるとよい。バイパス通路L5には、バイパス通路L5を流れる気体の水素キャリアの流量を調節する流量制御弁V4が設けられている。
【0029】
脱水素反応器4は、連続操作を行う管型反応器であり、内部に脱水素触媒が充填されている。脱水素触媒は、例えばアルミナ担体に白金を担持させた白金担持アルミナ触媒であるとよい。アルミナ担体は、例えば、表面積が150m/g以上、細孔容積が0.40cm/g以上、平均細孔径が40Å以上300Å以下、及び全細孔容積に対して平均細孔径±30Å以下の細孔が占める割合が60%以上であるとよい。白金の含有量は、例えば白金元素として0.05以上5.0wt%以下であるとよい。脱水素触媒は、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属を更に含んでもよい。
【0030】
脱水素反応器4の入口には、通路L3が接続され、気化され、かつ加熱された水素キャリアが供給される。脱水素反応器4は、水素キャリアの脱水素反応によって水素を生成する。水素キャリアは、脱水素反応器4内において、脱水素触媒の作用による脱水素反応によって脱水素化され、水素ガスを放出する。水素キャリアがメチルシクロヘキサンである場合、脱水素反応によって、トルエンと水素が生成される。脱水素反応は、吸熱反応であるため、高温下で反応が促進される。脱水素反応器4には熱媒体が供給され、脱水素反応器4中の水素キャリアは熱媒体と熱交換し、加熱される。熱媒体は、例えばホットオイルであるとよい。脱水素反応器4内の温度は、250℃以上350℃以下に維持されるとよい。
【0031】
脱水素反応器4の出口には、未反応の水素キャリアガスと、水素ガスと、脱水素化された水素キャリアガスとを含む混合流体が流れる。脱水素反応器4の出口には、メイン通路L6が接続されている。メイン通路L6の下流端は、水素を使用する水素使用装置20に接続されている。
【0032】
メイン通路L6には、第1気化器3A、気液分離装置5、圧縮機21、冷却器22と、メイン流量制御弁V5とが設けられている。気液分離装置5は、メイン通路L6を流れる混合流体から水素ガスを分離する。気液分離装置5は、第1気液分離装置5A及び第2気液分離装置5Bを含む。圧縮機21は、メイン通路L6を流れる混合流体及び水素ガスを圧縮する。圧縮機21は、第1圧縮機21A、第2圧縮機21B、及び第3圧縮機21Cを含む。冷却器22は、メイン通路L6を流れる混合流体及び水素ガスを冷却する。冷却器22は、第1冷却器22A、第2冷却器22B、第3冷却器22C、及び第4冷却器22Dを含む。第1気化器3A、第1冷却器22A、第1気液分離装置5A、第1圧縮機21A、第2冷却器22B、第2気液分離装置5B、第2圧縮機21B、第3冷却器22C、第3圧縮機21C、第4冷却器22D、メイン流量制御弁V5は、記載の順序で上流側から順にメイン通路L6に配置されている。
【0033】
メイン通路L6は、第1気化器3Aを通過している。これにより、脱水素反応器4の出口から流出した混合流体は、第1気化器3Aの加熱部12を通過し、第1気化器3Aを加熱する。すなわち、第1気化器3Aは、脱水素反応器4の出口から流出した流体を熱源とする。第1気化器3Aの加熱部12に供給される混合流体の温度は、例えば200℃以上350℃以下であるとよい。混合流体は、第1気化器3Aに熱を供給することによって冷却される。
【0034】
メイン通路L6には、第1気化器3Aを迂回するバイパス通路L7が接続されている。バイパス通路L7の上流端はメイン通路L6における脱水素反応器4と第1気化器3Aとの間の部分に接続され、バイパス通路L7の下流端はメイン通路L6における第1気化器3Aと第1冷却器22Aとの間の部分に接続されている。メイン通路L6及びバイパス通路L7の少なくとも一方にはバイパス流量制御弁V6が設けられている。バイパス流量制御弁V6は、第1気化器3Aに供給される混合流体の流量を調節する。バイパス通路L7を流れる高温の混合流体の流量を制御することによって、第1気化器3Aにおける水素キャリアの加熱量を制御することができる。バイパス流量制御弁V6は、第1気化器3Aを構成する要素の1つである。本実施形態では、バイパス流量制御弁V6はバイパス通路L7に設けられている。他の実施形態では、バイパス流量制御弁V6は、メイン通路L6とバイパス通路L7との接続部に設けられた三方弁であってもよい。
【0035】
第2気化器3Bは、第1気化器3Aと異なる熱源を有する。本実施形態では、第2気化器3Bには、脱水素反応器4を加熱するための熱源、すなわちホットオイルが供給される。これにより、脱水素反応器4を加熱する熱源を利用して第2気化器3Bを加熱することができる。第2気化器3Bには、ホットオイルの流量を制御するための流量制御弁V7が設けられている。
【0036】
第1冷却器22Aは、第1気化器3Aを通過した混合流体を水素キャリアの露点以下、かつ脱水素化された水素キャリアの露点以下に冷却する。これにより、混合流体中の水素キャリア及び脱水素化された水素キャリアが凝縮する。これにより、混合流体は、液体の水素キャリア及び脱水素化された水素キャリアと、水素ガスとを含む。第1冷却器22Aは、水を冷媒とした熱交換器であるとよい。
【0037】
第1気液分離装置5Aは、第1冷却器22Aにおいて冷却された混合流体を、水素ガスと、液体の水素キャリア及び脱水素化された水素キャリアとに分離する。第1気液分離装置5Aは、ノックアウトドラムであるとよい。水素ガスは、第1気液分離装置5Aの気体出口からメイン通路L6の下流側に流れる。液体の水素キャリア及び脱水素化された水素キャリアは、第1気液分離装置5Aの液体出口から回収される。
【0038】
第1気液分離装置5Aの気体出口から流出した水素ガスは、第1圧縮機21Aにおいて圧縮され、第2冷却器22Bにおいて冷却される。これにより、水素ガス中に残留した水素キャリア及び脱水素化された水素キャリアが凝縮する。第2冷却器22Bを通過した水素ガスは、第2気液分離装置5Bにおいて、凝縮した水素キャリア及び脱水素化された水素キャリアが分離される。第2気液分離装置5Bは第1気液分離装置5Aと同様であってよい。水素ガスは、第2気液分離装置5Bの気体出口からメイン通路L6の下流側に流れる。液体の水素キャリア及び脱水素化された水素キャリアは、第2気液分離装置5Bの液体出口から回収される。
【0039】
第2気液分離装置5Bを通過した水素ガスは、第2圧縮機21Bにおいて圧縮され、その後に第3冷却器22Cにおいて冷却される。水素ガスは第3冷却器22Cによって冷却されることによって、体積が減少するため、その後の圧縮が容易になる。第3冷却器22Cを通過した水素ガスは、第3圧縮機21Cにおいて圧縮され、その後に第4冷却器22Dにおいて冷却される。
【0040】
メイン流量制御弁V5は、メイン通路L6の下流端に設けられ、水素使用装置20に供給する水素ガスの流量を調節する。
【0041】
水素ガスホルダ6は、メイン通路L6における気液分離装置5よりも下流側の部分に、メイン通路L6に対して分岐した第1接続通路L8を介して接続されている。水素ガスホルダ6は、加圧された水素ガスを受容可能な圧力容器である。本実施形態では、第1接続通路L8は、メイン通路L6における第4冷却器22Dとメイン流量制御弁V5との間の部分に接続されている。これにより、第1圧縮機21A、第2圧縮機21B、及び第3圧縮機21Cは、メイン通路L6における第1気液分離装置5Aと第1接続通路L8の接続部との間の部分に設けられている。
【0042】
また、水素ガスホルダ6は、第2接続通路L9によって、メイン通路L6における第1気液分離装置5Aと第2圧縮機21Bとの間の部分に接続されている。本実施形地では、第2接続通路L9は、メイン通路L6における第2気液分離装置5Bと第2圧縮機21Bとの間の部分に接続されている。
【0043】
第1接続通路L8には、メイン通路L6から水素ガスホルダ6に流れる水素ガスの流量を制御する流入流量制御弁V8が設けられている。第2接続通路L9には、水素ガスホルダ6からメイン通路L6に流れる水素ガスの流量を制御する戻し流量制御弁V9が設けられている。
【0044】
メイン通路L6における第2気液分離装置5Bと第2圧縮機21Bとの間の部分と、メイン通路L6における第1気液分離装置5Aと第1圧縮機21Aとの間の部分とは、戻し通路L10によって接続されている。戻し通路L10には、流量制御弁V10が設けられている。
【0045】
メイン通路L6における第4冷却器22Dと第1接続通路L8の間の部分と、メイン通路L6における第3冷却器22Cと第3圧縮機21Cとの間の部分とは、戻し通路L11によって接続されている。戻し通路L11には、流量制御弁V11が設けられている。
【0046】
通路L3における通路L4の接続部と第1加熱器16との間の部分には、その部分を流れる流体の流量を測定する流量センサF1が設けられている。メイン通路L6における第1接続通路L8の接続部とメイン流量制御弁V5との間の部分には、その部分を流れる流体の流量を測定する流量センサF2が設けられている。通路L3における第2加熱器17と脱水素反応器4との間の部分には、その部分を流れる流体の温度、すなわち水素キャリアの脱水素反応器4の入口における温度を測定する温度センサT1が設けられている。
【0047】
メイン通路L6における第1気液分離装置5Aと第1圧縮機21Aとの間の部分には、その部分の圧力を測定する圧力センサP1が設けられている。メイン通路L6における第2気液分離装置5Bと第2圧縮機21Bとの間の部分には、その部分の圧力を測定する圧力センサP2が設けられている。メイン通路L6における第3冷却器22Cと第3圧縮機21Cとの間の部分には、その部分の圧力を測定する圧力センサP3が設けられている。メイン通路L6における第1接続通路L8の接続部とメイン流量制御弁V5との間の部分には、その部分の圧力を測定する圧力センサP4が設けられている。水素ガスホルダ6には、水素ガスホルダ6内の圧力を測定する圧力センサP5が設けられている。
【0048】
第1気化器3Aのドラム11には、内部の液体の水素キャリアの液位を測定する液位センサLV1が設けられている。第2気化器3Bのドラム11には、内部の液体の水素キャリアの液位を測定する液位センサLV2が設けられている。
【0049】
水素供給システム1は、気化器3及びメイン流量制御弁V5を少なくとも制御する制御装置30を有する。制御装置30は、プロセッサ、メモリ、プログラムを記憶する記憶装置を有し、プログラムを実行することによって各種のアプリケーションを実行するコンピュータである。制御装置30は、単一のユニットによって構成されてもよく、互いに分離した複数のユニットによって構成されてもよい。本実施形態では、制御装置30は、各弁V1~V11に接続され、各弁V1~V11を制御する。また、制御装置30は、流量センサF1、F2、温度センサT1、圧力センサP1~P5、及び液位センサLV1、LV2に接続され、これらから信号を受信する。
【0050】
制御装置30は、温度センサT1が取得した水素キャリアの脱水素反応器4の入口における温度に基づいて、流量制御弁V3、V4を制御するとよい。制御装置30は、例えば、流量制御弁V4を優先的に制御し、流量制御弁V3を補助的に制御するとよい。制御装置30は、通常時には流量制御弁V3を全閉にして第1加熱器16を停止させ、温度センサT1が取得した温度の低下に応じて、流量制御弁V4の開度を小さくするとよい。これにより、第2加熱器17を通過する水素キャリアの流量が増加し、水素キャリアの温度が上昇する。そして、制御装置30は、流量制御弁V4が全閉となった後に、流量制御弁V3を開くとよい。これにより、第1加熱器16に供給される熱媒体の流量が増加し、第1加熱器16において、水素キャリアの温度が上昇する。
【0051】
制御装置30は、圧力センサP1が取得した圧力、すなわち第1気液分離装置5Aと第1圧縮機21Aとの間の部分の水素ガスの圧力に基づいて、流量制御弁V10を制御するとよい。制御装置30は、圧力センサP1の圧力が目標値PT1になるように、流量制御弁V10を制御するとよい。流量制御弁V10が開くと、第1圧縮機21Aで圧縮された水素ガスは、戻し通路L10を介して第1圧縮機21Aの上流側に戻り、第1気液分離装置5Aと第1圧縮機21Aとの間の部分の水素ガスの圧力が上昇する。制御装置30は、圧力センサP1の圧力の低下に応じて、流量制御弁V10の開度を大きくするとよい。また、制御装置30は、圧力センサP1の圧力の上昇に応じて、流量制御弁V10の開度を小さくするとよい。
【0052】
制御装置30は、圧力センサP3が取得した圧力、すなわち第3冷却器22Cと第3圧縮機21Cとの間の部分の水素ガスの圧力に基づいて、流量制御弁V11を制御するとよい。制御装置30は、圧力センサP3の圧力が目標値PT2になるように、流量制御弁V11を制御するとよい。目標値PT2は、目標値PT1より高い値に設定されている。流量制御弁V11が開くと、第3圧縮機21Cで圧縮された水素ガスは、戻し通路L11を介して第3圧縮機21Cの上流側に戻り、第3冷却器22Cと第3圧縮機21Cとの間の部分の水素ガスの圧力が上昇する。制御装置30は、圧力センサP3の圧力の低下に応じて、流量制御弁V11の開度を大きくするとよい。また、制御装置30は、圧力センサP3の圧力の上昇に応じて、流量制御弁V11の開度を小さくするとよい。
【0053】
制御装置30は、水素使用装置20が要求する要求水素ガス流量に基づいてメイン流量制御弁V5の開度を制御する。制御装置30は、水素使用装置20と通信し、水素使用装置20が設定した要求水素ガス流量を取得するとよい。なお、要求水素ガス流量は、水素使用装置20の運転状態に基づいて、オペレータが手動で制御装置30に入力してもよい。制御装置30は、流量センサF2によって取得された流量、すなわちメイン通路L6の下流端における水素ガスの流量と、要求水素ガス流量とに基づいて、流量センサF2によって取得された流量が要求水素ガス流量と一致するようにメイン流量制御弁V5を制御するとよい。
【0054】
メイン通路L6の圧縮機21とメイン流量制御弁V5との間の部分の圧力を下流側圧力とする。本実施形態では、下流側圧力は、第3圧縮機21Cとメイン流量制御弁V5との間の部分の圧力であり、圧力センサP4によって取得される。メイン通路L6の気液分離装置5と圧縮機21との間の部分の圧力を上流側圧力とする。本実施形態では、上流側圧力は、第2気液分離装置5Bと第2圧縮機21Bとの間の部分の圧力であり、圧力センサP2によって取得される。
【0055】
制御装置30は、下流側圧力が第1閾値PT5以上であるときに、流入流量制御弁V8を開き、下流側圧力が第1閾値PT5未満であるときに、流入流量制御弁V8を閉じる。流入流量制御弁V8が開くと、水素ガスがメイン通路L6の第4冷却器22Dとメイン流量制御弁V5との間の部分から第1接続通路L8を通過して水素ガスホルダ6に流れる。これにより、メイン通路L6の第4冷却器22Dとメイン流量制御弁V5との間の部分の水素ガスの圧力が低下する。
【0056】
制御装置30は、上流側圧力が第2閾値PT6未満であるときに、戻し流量制御弁V9を開き、上流側圧力が第2閾値PT6以上であるときに、戻し流量制御弁V9を閉じる。第2閾値PT6は、第1閾値PT5よりも低い値に設定されている。また、第2閾値PT6は、目標値PT1より高く、かつ目標値PT2よりも低い値に設定されている。戻し流量制御弁V9が開くと、水素ガスが水素ガスホルダ6から第2接続通路L9を通過して、メイン通路L6の第2気液分離装置5Bと第2圧縮機21Bとの間の部分に流れる。これにより、メイン通路L6のメイン通路L6の第2気液分離装置5Bと第2圧縮機21Bとの間の部分の水素ガスの圧力が上昇する。
【0057】
制御装置30は、圧力センサP4が取得した圧力、すなわちメイン通路L6の下流側圧力が第1閾値以上である場合に、制御装置30は流入流量制御弁V8を開く。一方、メイン通路L6の下流側圧力が第1閾値未満である場合に、制御装置30は流入流量制御弁V8を閉じる。これにより、メイン通路L6の下流側圧力が第1閾値PT5より上昇することが抑制される。
【0058】
制御装置30は、圧力センサP2が取得した圧力、すなわちメイン通路L6の上流側圧力が第2閾値未満である場合に、戻し流量制御弁V9を開く。一方、メイン通路L6の上流側圧力が第2閾値以上である場合に、制御装置30は戻し流量制御弁V9を閉じる。これにより、メイン通路L6の上流側圧力が第2閾値PT6より低下することが抑制される。
【0059】
制御装置30は、第1気化器3A及び第2気化器3Bの出口を流れる気体の水素キャリアの流量を制御する。制御装置30は、第1気化器3A及び第2気化器3Bによる水素キャリアの加熱量を調節することによって第1気化器3A及び第2気化器3Bの出口を流れる気体の水素キャリアの流量を調節する。第1気化器3Aのドラム11内の液体の水素キャリアの液位及び第2気化器3Bのドラム11内の液体の水素キャリアの液位は、それぞれ一定に維持される。
【0060】
制御装置30は、液位センサLV1が取得した第1気化器3Aのドラム11内の液体の水素キャリアの液位に基づいて、流量制御弁V1を制御する。制御装置30は、液位センサLV1が取得した液位が所定値となるように、流量制御弁V1を制御するとよい。これにより、第1気化器3Aのドラム11内の液体の水素キャリアの液位が、液体の水素キャリアの気化量に関わらず一定に維持される。
【0061】
同様に、制御装置30は、液位センサLV2が取得した第2気化器3Bのドラム11内の液体の水素キャリアの液位に基づいて、流量制御弁V2を制御する。制御装置30は、液位センサLV2が取得した液位が所定値となるように、流量制御弁V2を制御するとよい。これにより、第2気化器3Bのドラム11内の液体の水素キャリアの液位が、液体の水素キャリアの気化量に関わらず一定に維持される。第1気化器3A及び第2気化器3B内の水素キャリアの液位が一定に制御されているため、水素キャリアの加熱量に応じて水素キャリアの気化量を調節することができる。
【0062】
制御装置30は、要求水素ガス流量に基づいて、気化器3の出口を流れる気化された水素キャリアの流量を調節するべく、気化器3を制御するとよい。気化器3は、第1気化器3A及び第2気化器3Bを含む。気化器3の出口を流れる気化された水素キャリアの流量は、第1気化器3Aの出口を流れる気化された水素キャリアの流量と、第2気化器3Bの出口を流れる気化された水素キャリアの流量との合計であり、流量センサF1によって取得される。また、制御装置30は、要求水素ガス流量と水素ガスホルダ6の圧力とに基づいて、気化器3の出口を流れる気化された水素キャリアの流量を調節するべく、気化器3を制御するとよい。
【0063】
制御装置30は、要求水素ガス流量が大きいほど気化器3の出口を流れる気化された水素キャリアの流量が増加するように気化器3を制御すると共に、水素ガスホルダ6の圧力が高いほど気化器3の出口を流れる気化された水素キャリアの流量が減少するように気化器3を制御するとよい。
【0064】
制御装置30は、図2に示すフロー図に基づいて、気化器3を制御するとよい。制御装置30は、最初に、水素使用装置20と通信し、水素使用装置20の要求水素ガス流量を取得する(S1)。次に、制御装置30は、要求水素ガス流量に基づいて、水素ガスホルダ6の目標圧力PT7を設定する(S2)。制御装置30は、要求水素ガス流量の増加に応じて目標圧力PT7を低下させる。
【0065】
次に、制御装置30は、要求水素ガス流量と、圧力センサP5によって取得される水素ガスホルダ6の圧力とに基づいて、気化器3の目標出口流量である目標気化原料流量を設定する(S3)。制御装置30は、例えば、要求水素ガス流量に係数を乗じることによって目標気化原料流量を算出するとよい。このとき、制御装置30は、水素ガスホルダ6の圧力に基づいて係数を変更するとよい。制御装置30は、水素ガスホルダ6の圧力から水素ガスホルダ6の目標圧力PT7を減算した値の増加に応じて係数を小さくするとよい。また、制御装置30は、水素ガスホルダ6の圧力から水素ガスホルダ6の目標圧力PT7を減算した値の低下に応じて係数を大きくするとよい。他の例では、制御装置30は、要求水素ガス流量と、水素ガスホルダ6の圧力と、目標気化原料流量との関係が規定されたマップを使用して、要求水素ガス流量及び水素ガスホルダ6の圧力に基づいて、目標気化原料流量を設定してもよい。
【0066】
次に、制御装置30は、流量センサF1によって取得される、気化器3の出口流量が、目標気化原料流量未満であるか否かを判定する(S4)。気化器3の出口流量が、目標気化原料流量未満である場合(S4の判定結果がYes)、制御装置30は第1気化器3Aのバイパス流量制御弁V6が全閉であるか否かを判定する(S5)。バイパス流量制御弁V6が全閉である場合、熱源としての混合ガスは全て第1気化器3Aに供給される。そのため、バイパス流量制御弁V6の制御によって第1気化器3Aの加熱量を更に増加させることができない。
【0067】
バイパス流量制御弁V6が全閉である場合(S5の判定結果がYes)、制御装置30は、流量センサF1によって取得される気化器3の出口流量が目標気化原料流量と一致するように、第2気化器3Bの流量制御弁V7を制御する(S6)。流量制御弁V7の開度が大きくなると第2気化器3Bに供給される熱源が増加する。これにより、第2気化器3Bにおいて気化される水素キャリアが増加し、流量センサF1によって取得される気化器3の出口流量が増加する。
【0068】
バイパス流量制御弁V6が全閉でない場合(S5の判定結果がNo)、制御装置30は、流量センサF1によって取得される気化器3の出口流量が目標気化原料流量と一致するように、第1気化器3Aのバイパス流量制御弁V6を制御する(S7)。バイパス流量制御弁V6の開度が小さくなると第1気化器3Aに供給される熱源が増加する。これにより、第1気化器3Aにおいて気化される水素キャリアが増加し、流量センサF1によって取得される気化器3の出口流量が増加する。
【0069】
気化器3の出口流量が、目標気化原料流量未満でない場合(S4の判定結果がNo)、制御装置30は第2気化器3Bの流量制御弁V7が全閉であるか否かを判定する(S8)。流量制御弁V7が全閉である場合、流量制御弁V7の制御によって第2気化器3Bの加熱量を更に低下させることができない。
【0070】
流量制御弁V7が全閉である場合(S8の判定結果がYes)、制御装置30は、流量センサF1によって取得される気化器3の出口流量が目標気化原料流量と一致するように、第1気化器3Aのバイパス流量制御弁V6を制御する(S9)。
【0071】
流量制御弁V7が全閉でない場合(S8の判定結果がNo)、制御装置30は、流量センサF1によって取得される気化器3の出口流量が目標気化原料流量と一致するように、第2気化器3Bの流量制御弁V7を制御する(S10)。
【0072】
上記の制御装置30の制御手順から、水素供給システム1の運転方法は以下のように表すことができる。水素供給システム1の運転方法は、脱水素反応器4の出口を流れる水素の流量を調節するために、気化器3の出口を流れる気体の水素キャリアの流量を調節するステップを含む。また、水素供給システム1の運転方法は、水素使用装置20が要求する要求水素ガス流量に基づいてメイン流量制御弁V5の開度を制御すると共に、要求水素ガス流量と水素ガスホルダ6の圧力とに基づいて、気化器3の出口を流れる気化された水素キャリアの流量を調節するべく気化器3を制御するステップを含む。
【0073】
上記の水素供給システム1によれば、気化器3の出口を流れる気体の水素キャリアの流量を制御することによって、脱水素反応器4に供給する気体の水素キャリアの流量を迅速に調節することができる。これにより、脱水素反応器4において生成される水素の流量を迅速に変化させることができる。すなわち、水素ガスの供給量を迅速に変化させることができる水素生成システムを提供することができる。
【0074】
水素供給システム1は、気化器3における水素キャリアの加熱量を調節することによって、気化器3の出口を流れる気体の水素キャリアの流量を迅速に調節することができる。気化器3における水素キャリアの加熱量は、熱源の気化器3への供給量を変化させることによって調節することができる。
【0075】
水素供給システム1は、熱源が異なる第1気化器3A及び第2気化器3Bを使用して水素キャリアを気化させるため、仮に第1気化器3A及び第2気化器3Bの一方の熱源が不足したとしても、第1気化器3A及び第2気化器3Bの他方によって水素キャリアを迅速に気化させることができる。
【0076】
水素供給システム1では、水素ガスホルダ6がメイン通路L6の下流部に設けられているため、要求水素ガス流量の変動に対応して水素ガス供給量を迅速に変化させることができる。また、水素ガスホルダ6がメイン通路L6から分岐した位置に設けられているため、水素ガスホルダ6を小型化することができる。特に、水素ガスホルダ6が第2圧縮機21B及び第3圧縮機21Cに対して並列に配置されているため、水素ガスホルダ6を小型化することができる。
【0077】
制御装置30が、要求水素ガス流量に加えて水素ガスホルダ6の圧力を考慮して目標気化原料流量を設定し、目標気化原料流量に基づいて気化器3を制御するため、要求水素ガス流量に応じて水素ガス供給量を適切に変化させることができる。水素ガスホルダ6の圧力が高い場合には水素ガスホルダ6から水素ガスを供給することができるため、脱水素反応器4において生成する水素ガス量を低減することができる。
【0078】
水素ガスホルダ6の圧力から水素ガスホルダ6の目標圧力PT7を減算した値の増加に応じて、目標気化原料流量を算出するための係数を小さくするため、水素ガスホルダ6の圧力が目標圧力PT7に対して高いほど、目標気化原料流量が低下する。これにより、上流側圧力を維持するために戻し流量制御弁V9が開き、水素ガスホルダ6の圧力が目標圧力PT7に近づく。また、水素ガスホルダ6の圧力が目標圧力PT7に対して低いほど、目標気化原料流量が増加するため、下流側圧力を維持するために流入流量制御弁V8が開き、水素ガスホルダ6の圧力が目標圧力PT7に近づく。また、要求水素ガス流量が急激に増加したときには、要求水素ガス流量の増加に応じて目標圧力PT7が低下し、水素ガスホルダ6の圧力が目標圧力PT7に近づくため、目標気化原料流量の急激な増加が抑制される。これにより、気化器3の出口流量(気化原料流量)がオーバーシュートすることが抑制される。
【0079】
図3は、要求水素ガス流量[t/h]に対する、気化器3の出口における水素キャリアの質量流量[t/h]、及びメイン通路L6の下流端における水素ガスの質量流量[t/h]を示すグラフである。図4は、要求水素ガス流量[t/h]に対する、メイン通路L6の下流端における水素ガスの圧力[MPaG]及びその目標値[MPaG]を示すグラフである。図4における要求水素ガス流量[t/h]の変化は、図3と同様である。図3及び図4は、水素キャリアをメチルシクロヘキサンとして、シミュレーションによって得られたものである。気化器3の出口における水素キャリアの質量流量は流量センサF1によって取得される値であり、メイン通路L6の下流端における水素ガスの質量流量は流量センサF2によって取得される値である。図3に示すように、要求水素ガス流量の変化に追従して、気化器3の出口における水素キャリアの質量流量及びメイン通路L6の下流端における水素ガスの質量流量が迅速に変化していることが確認された。図4に示すように、メイン通路L6の下流端における水素ガスの圧力は、要求水素ガス流量が変化しても、目標値に概ね一致することが確認された。
【0080】
第1実施形態に係る水素供給システム1の変形例として、図5に示すように第2接続通路L9は、メイン通路L6における第1気液分離装置5Aと第1圧縮機21Aとの間の部分に接続されてもよい。また、他の例では、第2接続通路L9は、メイン通路L6における第3冷却器22Cと第3圧縮機21Cとの間の部分に接続されてもよい。
【0081】
(第2実施形態)
図6に示すように、第2実施形態に係る水素供給システム100は、第1実施形態に係る水素供給システム1と比較して、水素ガスホルダ6と、第2気化器3Bと、これらに関係する要素が省略されている。水素供給システム100において、水素供給システム1と同一の符号が付された要素は、同様の構成及び機能を有する。
【0082】
水素供給システム100の制御装置30は、流量センサF2によって取得されるメイン通路L6の下流端の水素ガスの流量が、水素使用装置20から取得した要求水素ガス流量に一致するようにメイン流量制御弁V5を制御する。また、制御装置30は、圧力センサP4によって取得される、メイン通路L6の下流端の水素ガスの圧力に基づいて、目標気化原料流量を設定し、流量センサF1によって取得される、気化器3の出口を流れる気化された水素キャリアの流量が目標気化原料流量と一致するように、バイパス流量制御弁V6を制御する。目標気化原料流量は、メイン通路L6の下流端の水素ガスの圧力の低下に応じて、増加するように設定されるとよい。
【0083】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、第1加熱器16及び第2加熱器17の一方は省略されてもよい。また、第2気液分離装置5Bは省略されてもよい。第1~第3圧縮機21A~21Cの1つ又は2つは省略されてもよい。この場合、水素ガスホルダ6はメイン通路L6に設けられる少なくとも1つの圧縮機21と並列に接続されるとよい。また、第2~第4冷却器22B~22Dの1つ又は2つは省略されてもよい。
【符号の説明】
【0084】
1 :水素供給システム
3 :気化器
3A :第1気化器
3B :第2気化器
4 :脱水素反応器
5 :気液分離装置
5A :第1気液分離装置
5B :第2気液分離装置
20 :水素使用装置
21 :圧縮機
21A :第1圧縮機
21B :第2圧縮機
21C :第3圧縮機
30 :制御装置
F1、F2 :流量センサ
L6 :メイン通路
L7 :バイパス通路
L8 :第1接続通路
L9 :第2接続通路
LV1 :液位センサ
LV2 :液位センサ
P1-P5 :圧力センサ
V5 :メイン流量制御弁
V6 :バイパス流量制御弁
V8 :流入流量制御弁
V9 :戻し流量制御弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6