(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131564
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】半導体装置及び評価方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
H01L21/66 L
H01L21/66 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041908
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】308033711
【氏名又は名称】ラピスセミコンダクタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桑木 裕大
(72)【発明者】
【氏名】山出 勝博
(72)【発明者】
【氏名】辻本 雅夫
【テーマコード(参考)】
4M106
【Fターム(参考)】
4M106AA01
4M106CA10
4M106CB02
4M106DJ14
4M106DJ27
(57)【要約】
【課題】不純物拡散工程における不純物の濃度プロファイルの評価を非破壊で行うことができる半導体装置と、その半導体装置を用いた不純物の濃度プロファイルの評価方法とを提供する。
【解決手段】第1導電型の不純物が拡散された拡散層を備える半導体素子が形成された半導体基板と、拡散層の特性評価用に半導体基板上に形成された第1構造部であって、拡散層と共に半導体基板上に形成された第1拡散層を備え、第1拡散層の上部の抵抗値を測定するための第1構造部と、拡散層の特性評価用に半導体基板上に形成された第2構造部であって、拡散層と共に半導体基板上に形成された第1拡散層とは異なる第2拡散層を備え、第2拡散層の下部の抵抗値を測定するための第2構造部と、を備える半導体装置とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の不純物が拡散された拡散層を備える半導体素子が形成された半導体基板と、
前記拡散層の特性評価用に前記半導体基板上に形成された第1構造部であって、前記拡散層と共に前記半導体基板上に形成された第1拡散層を備え、前記第1拡散層の上部の抵抗値を測定するための第1構造部と、
前記拡散層の特性評価用に前記半導体基板上に形成された第2構造部であって、前記拡散層と共に前記半導体基板上に形成された前記第1拡散層とは異なる第2拡散層を備え、前記第2拡散層の下部の抵抗値を測定するための第2構造部と、
を備える半導体装置。
【請求項2】
前記第1構造部は、前記第1拡散層の表面から予め定めた深さに前記第1構造部を横切るように埋め込まれた第2導電型の第1埋め込み層を備え、前記第1埋め込み層により、前記第1拡散層の上部を通る電流経路を前記第1拡散層の下部から分離し、
前記第2構造部は、前記第2拡散層の表面から予め定めた深さに前記第2拡散層の一部を横切るように埋め込まれた第2導電型の第2埋め込み層と、前記第2埋め込み層の上方を前記第2導電型の不純物で埋めるように設けられた前記第2導電型の遮断層とを備え、前記第2埋め込み層及び前記遮断層により、前記第2拡散層の下部を通る電流経路を形成する、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1構造部は、前記第1拡散層の表面に配置され、前記第1導電型の不純物を前記第1拡散層より高い濃度で含む一対の第1コンタクト層を備え、前記一対の第1コンタクト層を介して前記第1拡散層の上部の抵抗値を測定可能とし、
前記第2構造部は、前記第2拡散層の表面に配置され、前記第1導電型の不純物を前記第2拡散層より高い濃度で含む一対の第2コンタクト層を備え、前記一対の第2コンタクト層を介して前記第2拡散層の下部の抵抗値を測定可能とする、
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2構造部の前記第2埋め込み層及び前記遮断層は、前記一対の第2コンタクト層の下方を除いて形成される、請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1構造部及び前記第2構造部の表面は、前記一対の第1コンタクト層及び前記一対の第2コンタクト層を除いてフィールド酸化膜で覆われている、請求項3に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記特性評価は、前記半導体素子の前記拡散層の不純物の濃度プロファイルの評価である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
請求項1に記載の半導体装置を用いて、前記半導体素子の前記拡散層の不純物の濃度プロファイルを評価する評価方法であって、
前記第1構造部における前記第1拡散層の上部の抵抗値を測定することと、
前記第2構造部における前記第2拡散層の下部の抵抗値を測定することと、
前記第1拡散層の上部の抵抗値と前記第2拡散層の下部の抵抗値とに基づいて、前記拡散層の不純物の濃度プロファイルを評価することと、
を含む、評価方法。
【請求項8】
前記不純物の濃度プロファイルを評価することは、前記第1拡散層の上部の抵抗値と前記第2拡散層の下部の抵抗値との比を求め、得られた比を予め定めた目標値と比較することにより行われる、請求項7に記載の評価方法。
【請求項9】
前記予め定めた目標値は、前記半導体素子の性能と前記比との関係に基づいて設定される、請求項8に記載の評価方法。
【請求項10】
前記得られた比が予め定めた目標値と等しい場合は、前記不純物の濃度プロファイルを適正と評価し、前記得られた比が予め定めた目標値より大きい場合は、前記不純物の濃度プロファイルを拡散不十分と評価し、前記得られた比が予め定めた目標値より小さい場合は、前記不純物の濃度プロファイルを拡散過剰と評価する、請求項8又は請求項9に記載の評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、評価用構造を備えた半導体装置と、その半導体装置を用いた不純物の濃度プロファイルの評価方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造プロセスでは、半導体基板には不純物を拡散させた拡散層が形成される。このような拡散層としては、例えば、電界効果トランジスタであるMOSFETのP型シリコン基板に形成されるN型ウェル等が挙げられる。N型ウェルは、イオン注入法によりN型不純物をシリコン基板に打ち込んだ後、高温で熱処理することにより形成される。この熱処理工程は「ドライブイン」と呼ばれる工程であり、基板を高温で長時間熱処理することにより、不純物を深くまで拡散させる。不純物の深さ方向の拡がり、すなわち、不純物の濃度プロファイルは、この工程における温度や時間等の処理条件により制御される。
【0003】
処理条件を決めるには、まず不純物の濃度プロファイルを評価する必要がある。不純物の濃度は、半導体層の抵抗値から求めることができる。
図11に示す従来の抵抗測定方法では、シリコン基板100に形成されたN型ウェル102の抵抗値は、フィールド酸化膜104の開口部の形成された一対のコンタクト層106から測定される。各コンタクト層106と接続される一対の端子108が形成され、一対の端子108間に電流を流して、N型ウェル102の抵抗値が測定される。しかしながら、この方法では、N型ウェル102の抵抗値を深さ毎に測定できないため、不純物の濃度プロファイルを評価することができない。
【0004】
不純物の濃度プロファイルを求める方法の1つとして、特許文献1に記載される拡がり抵抗測定法、いわゆるSR法(Spreading Resistance Profiling)が知られている。SR法では、測定試料を斜め研磨し、研磨面に2本のプローブを接触させて、プローブ間の拡がり抵抗を測定し、得られた拡がり抵抗から深さ方向の抵抗値や不純物濃度を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、SR法は、研磨による測定試料の破壊を伴い、半導体装置に形成された拡散層の不純物の濃度プロファイルを評価するためには、製造プロセス終了後のウエハ1枚を評価用試料として抜き取る必要がある。また、研磨を行うため抵抗値の測定に時間がかかる。以上の通り、SR法を含む従来の評価方法は、半導体装置の製造プロセスの工程管理として十分な機能を果たすことができないという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、不純物拡散工程における不純物の濃度プロファイルの評価を非破壊で行うことができる半導体装置と、その半導体装置を用いた不純物の濃度プロファイルの評価方法とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の半導体装置に係る態様は、第1導電型の不純物が拡散された拡散層を備える半導体素子が形成された半導体基板と、前記拡散層の特性評価用に前記半導体基板上に形成された第1構造部であって、前記拡散層と共に前記半導体基板上に形成された第1拡散層を備え、前記第1拡散層の上部の抵抗値を測定するための第1構造部と、前記拡散層の特性評価用に前記半導体基板上に形成された第2構造部であって、前記拡散層と共に前記半導体基板上に形成された前記第1拡散層とは異なる第2拡散層を備え、前記第2拡散層の下部の抵抗値を測定するための第2構造部と、を備える半導体装置である。
【0009】
本発明の評価方法に係る態様は、本発明の半導体装置を用いて、前記半導体素子の前記拡散層の不純物の濃度プロファイルを評価する評価方法であって、前記第1構造部における前記第1拡散層の上部の抵抗値を測定することと、前記第2構造部における前記第2拡散層の下部の抵抗値を測定することと、前記第1拡散層の上部の抵抗値と前記第2拡散層の下部の抵抗値とに基づいて、前記拡散層の不純物の濃度プロファイルを評価することと、を含む、評価方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、不純物拡散工程における不純物の濃度プロファイルの評価を非破壊で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】(A)~(C)は不純物の濃度プロファイルを示すグラフである。
【
図2】本発明の実施形態に係る半導体装置の構成の一例を示す部分断面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る不純物の濃度プロファイルの評価方法を説明するための説明図である。
【
図4】製品素子の性能と抵抗値の比との関係を示すグラフである。
【
図5】
図2に示す半導体装置の製造工程の一例を説明するための断面図である。
【
図6】
図2に示す半導体装置の製造工程の一例を説明するための断面図である。
【
図7】
図2に示す半導体装置の製造工程の一例を説明するための断面図である。
【
図8】
図2に示す半導体装置の製造工程の一例を説明するための断面図である。
【
図9】
図2に示す半導体装置の製造工程の一例を説明するための断面図である。
【
図10】
図2に示す半導体装置の製造工程の一例を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。
【0013】
<不純物の濃度プロファイル>
まず、不純物の濃度プロファイルについて説明する。
不純物拡散は、イオン注入法により不純物をシリコン基板に打ち込んだ後、熱処理することにより形成される。不純物としては、ヒ素、リン、アンチモン等のN型不純物と、ホウ素等のP型不純物とがある。「ドライブイン」と呼ばれる熱処理工程では、熱処理は900℃~1300℃の高温で行われる。不純物の濃度プロファイルは、不純物拡散工程における、熱処理の温度や時間等の処理条件により制御される。
【0014】
図1(A)~(C)は不純物の濃度プロファイルを示すグラフである。縦軸は不純物濃度を表し、横軸は深さを表す。深さは、拡散層の表面からの深さである。
図1(A)に示すように、拡散層における不純物の濃度は、深さ方向に略一定となることが好ましい。これに対して、不純物の拡散が不十分であると、
図1(B)に示すように深さ方向に向かって不純物の濃度が低下し、不純物の拡散が過剰であると、
図1(C)に示すように深さ方向に向かって不純物の濃度が増加する。
【0015】
<半導体装置>
次に、
図2を参照して、本発明の実施形態に係る半導体装置の構成について説明する。
本実施の形態に係る半導体装置1は、シリコンウエハである半導体基板10上に評価用構造が形成されたものである。評価用構造は、第1構造部20と第2構造部30とを備えている。
図2はこの評価用構造の部分の断面図である。
【0016】
第1構造部20は、半導体基板10内にN型不純物の拡散により形成されたN型ウェル22を備えている。また、第2構造部30は、半導体基板10内にN型不純物の拡散により形成されたN型ウェル32を備えている。ここでは、第1導電型をN型とし、第2導電型をP型として説明するが、第1導電型をP型とし、第2導電型をN型としてもよいことは言うまでもない。N型ウェル22が「第1拡散層」に相当し、N型ウェル32が「第2拡散層」に相当する。
【0017】
図示はしていないが、半導体基板10上には製品である半導体素子も形成されている。評価用構造は、製品である半導体素子の製造工程中に、半導体素子と共に作製される。N型ウェル22とN型ウェル32の各々は、半導体素子の不純物拡散工程において形成されたものであり、半導体素子のN型ウェル(図示せず)と同じ拡散プロファイルを備えている。本実施形態では、N型ウェル22及びN型ウェル32の不純物の濃度プロファイルを評価することで、半導体素子のN型ウェルの不純物の濃度プロファイルを間接的に評価する。
【0018】
第1構造部20は、P型不純物を含むP型埋め込み層24を備えている。P型埋め込み層24は、第1構造部20全体を横切るように、予め定めた深さに配置されている。N型ウェル22は、P型埋め込み層24によって上部ウェル22Aと下部ウェル22Bとに分断されている。P型埋め込み層24が「第1埋め込み層」に相当する。
【0019】
N型ウェル22の上部には、N型ウェル22よりもN型不純物を高濃度で含む2つのN+型コンタクト層26A、26Bが配置されている。N+型コンタクト層26A、26Bは、抵抗測定用のプローブや金属配線(図示せず)との接触抵抗を低下させるための層である。N+型コンタクト層26AとN+型コンタクト層26Bとは、予め定めた距離だけ離間されている。N+型コンタクト層26A、26Bの各々は、N型ウェル22の表面に露出している。第1構造部20の表面は、N+型コンタクト層26A、26Bの上方を除いて、フィールド酸化膜12で覆われている。
【0020】
第2構造部30は、P型不純物を含むP型半導体層34を備えている。P型半導体層34は、P型埋め込み層34Bと、P型埋め込み層34BよりもP型不純物を高濃度で含むP型遮断層34Aとを含む。P型埋め込み層34Bは、第1構造部20のP型埋め込み層24と同じ深さに配置されると共に、N型ウェル32の一部を横切るように配置されている。P型埋め込み層34Bは、次に説明するN+型コンタクト層36A、36Bの下方以外の部分に配置される。P型遮断層34Aは、P型埋め込み層34Bの上方をP型不純物層で埋めるように配置されている。P型埋め込み層34Bが「第2埋め込み層」に相当する。
【0021】
N型ウェル32の上部には、N型不純物を高濃度で含む2つのN+型コンタクト層36A、36Bが配置されている。N+型コンタクト層36A、36Bは、接触抵抗を低下させるための層である。N+型コンタクト層36AとN+型コンタクト層36Bとは、P型遮断層34Aを挟んで予め定めた距離だけ離間されている。N+型コンタクト層36A、36Bの各々は、N型ウェル32の表面に露出している。第2構造部30の表面は、N+型コンタクト層36A、36Bの上方を除いて、フィールド酸化膜12で覆われている。
【0022】
<不純物の濃度プロファイルの評価方法>
次に、
図3を参照して、上記の半導体装置1を用いて、半導体素子のN型ウェルの不純物の濃度プロファイルを評価する方法について説明する。
【0023】
第1構造部20において、N+型コンタクト層26A、26Bの各々に、対応する端子28A、28Bを接続する。端子28A、28B間に電流を流すと、P型埋め込み層24が障壁となり、点線の矢印で示すように上部ウェル22Aを通る電流経路が形成される。したがって、端子28A、28B間に電流を流して、上部ウェル22Aの抵抗値R1を測定する。
【0024】
また、第2構造部30において、N+型コンタクト層36A、36Bの各々に、対応する端子38A、38Bを接続する。端子38A、38B間に電流を流すと、P型遮断層34A及びP型埋め込み層34Bが障壁となり、点線の矢印で示すようにウェル32の下部を通る電流経路が形成される。したがって、端子38A、38B間に電流を流して、ウェル32の下部の抵抗値R2を測定する。
【0025】
N型ウェル22とN型ウェル32とは、半導体素子のN型ウェルと同じ拡散プロファイルを備えているので、上部ウェル22Aの抵抗値R1とウェル32の下部の抵抗値R2とは、半導体素子のN型ウェルの上部及び下部について測定された抵抗値とみなすことができる。上部ウェル22Aの抵抗値R1とウェル32の下部の抵抗値R2とから、下記式で表される比Dを求める。
【0026】
【0027】
上部の抵抗値R
1と下部の抵抗値R
2とが略等しいとき(R
1≒R
2、D≒1)、不純物の濃度プロファイルは、
図1(A)に示すものとなり、「適正」と評価される。一方、上部の抵抗値R
1が下部の抵抗値R
2より大きいとき(R
1>R
2で、D>1)、不純物の濃度プロファイルは、
図1(C)に示すものとなり、「拡散過剰」と評価される。また、上部の抵抗値R
1が下部の抵抗値R
2より小さいとき(R
1<R
2で、D<1)、不純物の濃度プロファイルは、
図1(B)に示すものとなり、「拡散不十分」と評価される。
【0028】
また、抵抗値の比Dの目標値D
tを設定し、評価用構造から得られた比D
mを目標値D
tと比較して評価を行うことができる。目標値D
tは実験的に設定することができる。例えば、
図4に示すように、複数の半導体素子について比Dに対して耐圧等の性能の値をプロットする。
図4から分かるように、比Dが「1.0」から離れるほど、性能のばらつきが大きくなる。複数の半導体素子における性能のばらつきが最小又は予め定めたスペック以内となる比Dの値を、目標値D
tとすることができる。
【0029】
このように目標値Dtを設定した場合は、評価用構造から得られた比Dmが目標値Dtと略等しいとき(Dm≒Dt)、不純物の濃度プロファイルは「適正」と評価される。一方、比Dmが目標値Dtより大きいとき(Dm>Dt)、不純物の濃度プロファイルは「拡散過剰」と評価される。また、比Dmが目標値Dtより小さいとき(Dm<Dt)、不純物の濃度プロファイルは「拡散不十分」と評価される。半導体装置の製造プロセスの工程管理という観点からは、このように半導体素子の性能に基づいて評価を行うことがより好ましい。
【0030】
「拡散不十分」という評価の場合は、不純物拡散工程における処理条件が、例えば、熱処理の温度を高くする、熱処理の時間を長くする等、不純物の拡散を促進するように変更される。一方、「拡散過剰」という評価の場合は、不純物拡散工程における処理条件が、例えば、熱処理の温度を低くする、熱処理の時間を短くする等、不純物の拡散を抑制するように変更される。
【0031】
<半導体装置の製造工程>
次に、
図5~
図10を参照して
図2に示す半導体装置の製造工程について説明する。
上述した通り、評価用構造は、製品素子構造の製造工程中に、製品素子構造と共に作製される。ここでは、評価用構造の製造工程として説明する。半導体基板10は「シリコン基板10」と言い換える。
【0032】
まず、シリコン基板10の表面を熱酸化して、シリコン基板10の表面に酸化ケイ素(SiO
2)からなるプレ酸化膜14を形成する。次に、プレ酸化膜14上にフォトレジストを塗布し、フォトリソグラフィによりパターニングして、N型ウェル22及びN型ウェル32に対応する部分に開口を有するマスクを形成する。その後、このマスクを用いてプレ酸化膜14をエッチングして、開口が形成されたプレ酸化膜14を得る(
図5参照)。
【0033】
次に、プレ酸化膜14の開口から、イオン注入法によりN型不純物を打ち込み、高温で熱処理するドライブインを行い、N型不純物を深くまで熱拡散させて、N型ウェル22及びN型ウェル32を形成する。その後、プレ酸化膜14をエッチング等により除去する(
図6参照)。
【0034】
次に、シリコン基板10の表面を熱酸化して、シリコン基板10の表面にSiO
2からなるパッド酸化膜(図示せず)を形成する。次に、パッド酸化膜(図示せず)上に、減圧CVD法等により窒化ケイ素(SiN)からなるロコス窒化膜16を形成する。次に、ロコス窒化膜16上にフォトレジストを塗布し、フォトリソグラフィによりパターニングして、フィールド酸化膜12に対応する部分に開口を有するマスクを形成する。その後、このマスクを用いてロコス窒化膜16をエッチングして、開口が形成されたロコス窒化膜16を得る(
図7参照)。
【0035】
次に、シリコン基板10上にフォトレジストを塗布し、フォトリソグラフィによりパターニングして、P型遮断層34Aに対応する部分に開口を有するマスクを形成する。その後、このマスクを用いて、ロコス窒化膜16の開口の一部から、イオン注入法によりP型不純物を打ち込み、P型遮断層34Aを形成する。次に、開口が形成されたロコス窒化膜16をマスクとして、シリコン基板10の表面を熱酸化して、フィールド酸化膜12を形成する。その後、パッド酸化膜(図示せず)及びロコス窒化膜16をエッチング等により除去する(
図8参照)。
【0036】
次に、シリコン基板10上にフォトレジストを塗布し、フォトリソグラフィによりパターニングして、P型埋め込み層24及びP型埋め込み層34Bに対応する部分に開口を有するマスクを形成する。その後、このマスクを用いて、イオン注入法によりフィールド酸化膜12を介して高エネルギーでP型不純物を打ち込み、P型埋め込み層24及びP型埋め込み層34Bを形成する(
図9参照)。
【0037】
次に、シリコン基板10上にフォトレジストを塗布し、フォトリソグラフィによりパターニングして、N
+型コンタクト層26A、26B、36A、及び36Bに対応する部分に開口を有するマスクを形成する。その後、このマスクを用いて、フィールド酸化膜12の開口から露出したN型ウェル22及びN型ウェル32の表面に、イオン注入法によりN型不純物を打ち込み、N
+型コンタクト層26A、26B、36A、及び36Bを形成する(
図10参照)。
【0038】
図示はしていないが、最後に、N+型コンタクト層26A、26B、36A、及び36Bの各々に電気的に接続するための端子や金属配線を形成してもよい。
【0039】
以上の通り、本実施形態によれば、N型ウェル(すなわち、拡散層)の上部の抵抗値と下部の抵抗値とを別々に測定することができる。また、評価用構造における上部の抵抗値と下部の抵抗値との比に基づいて、半導体素子の拡散層における不純物の濃度プロファイルを評価することができる。また、半導体装置の表面に設けられたコンタクト層から拡散層の上部の抵抗値と下部の抵抗値とを測定することができ、拡散層の不純物の濃度プロファイルの評価を非破壊で行うことができる。この評価方法は、SR法のような従来の評価方法と比較して、簡便で実用的である。
【0040】
また、本実施形態によれば、上部の抵抗値と下部の抵抗値との比について、製品である半導体素子の性能に基づいて目標値を具体的に設定し、目標値との比較で不純物の濃度プロファイルを評価することができる。これにより、不純物拡散工程の処理条件を、製品において良好な性能が得られるように改善することができ、製造される半導体素子の性能のばらつきを低減することができる。
【0041】
また、本実施形態によれば、評価用構造は、製品である半導体素子の製造工程中に半導体素子と共に作製されるので、SR法のように測定試料を用意する必要がなく、本実施形態に係る評価方法は、半導体装置の製造プロセス終了後、すぐに評価を行うことができる。このため、製品の特性確認に要する期間を短縮することができる。また、評価用構造は、ウエハ毎に作製されるので、ウエハ毎に評価を行うことができる。このため、本実施形態に係る評価方法は、製造プロセスの工程管理に最適である。
【0042】
<変形例>
上記実施の形態で説明した半導体装置及び不純物の濃度プロファイルの評価方法の構成は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内においてその構成を変更してもよいことは言うまでもない。
【0043】
本実施形態では、第1構造部ではP型埋め込み層を形成してN型ウェルの上部の抵抗値を測定できるようにし、第2構造部ではP型遮断層及びP型埋め込み層を形成してN型ウェルの下部の抵抗値を測定できるようにしているが、N型ウェルの上部を通る電流経路と下部を通る電流経路とが生成されればよく、評価用構造はこれに限定される訳ではない。例えば、第2構造部では、P型遮断層及びP型埋め込み層を形成する代わりに、電流を遮断するトレンチや絶縁層を形成してもよい。
【0044】
また、本実施形態では、上部の抵抗値と下部の抵抗値との比に基づいて評価を行っているが、上部の抵抗値と下部の抵抗値との差や、上部の抵抗値と下部の抵抗値から求められる他のパラメータに基づいて評価を行ってもよい。
【0045】
[付記]なお、以上の実施形態の説明に関して、更に以下の付記を開示する。
本発明の第1態様は、第1導電型の不純物が拡散された拡散層を備える半導体素子が形成された半導体基板と、前記拡散層の特性評価用に前記半導体基板上に形成された第1構造部であって、前記拡散層と共に前記半導体基板上に形成された第1拡散層を備え、前記第1拡散層の上部の抵抗値を測定するための第1構造部と、前記拡散層の特性評価用に前記半導体基板上に形成された第2構造部であって、前記拡散層と共に前記半導体基板上に形成された前記第1拡散層とは異なる第2拡散層を備え、前記第2拡散層の下部の抵抗値を測定するための第2構造部と、を備える半導体装置である。
本発明の第2態様は、前記第1構造部は、前記第1拡散層の表面から予め定めた深さに前記第1構造部を横切るように埋め込まれた第2導電型の第1埋め込み層を備え、前記第1埋め込み層により、前記第1拡散層の上部を通る電流経路を前記第1拡散層の下部から分離し、前記第2構造部は、前記第2拡散層の表面から予め定めた深さに前記第2拡散層の一部を横切るように埋め込まれた第2導電型の第2埋め込み層と、前記第2埋め込み層の上方を前記第2導電型の不純物で埋めるように設けられた前記第2導電型の遮断層とを備え、前記第2埋め込み層及び前記遮断層により、前記第2拡散層の下部を通る電流経路を形成する、第1態様に係る半導体装置である。
本発明の第3態様は、前記第1構造部は、前記第1拡散層の表面に配置され、前記第1導電型の不純物を前記第1拡散層より高い濃度で含む一対の第1コンタクト層を備え、前記一対の第1コンタクト層を介して前記第1拡散層の上部の抵抗値を測定可能とし、前記第2構造部は、前記第2拡散層の表面に配置され、前記第1導電型の不純物を前記第2拡散層より高い濃度で含む一対の第2コンタクト層を備え、前記一対の第2コンタクト層を介して前記第2拡散層の下部の抵抗値を測定可能とする、第1態様又は第2態様に係る半導体装置である。
本発明の第4態様は、前記第2構造部の前記第2埋め込み層及び前記遮断層は、前記一対の第2コンタクト層の下方を除いて形成される、第3態様に係る半導体装置である。
本発明の第5態様は、前記第1構造部及び前記第2構造部の表面は、前記一対の第1コンタクト層及び前記一対の第2コンタクト層を除いてフィールド酸化膜で覆われている、第3態様に係る半導体装置である。
本発明の第6態様は、前記特性評価は、前記半導体素子の前記拡散層の不純物の濃度プロファイルの評価である、第1態様から第5態様までのいずれか1つに係る半導体装置である。
本発明の第7態様は、第1態様から第6態様までのいずれか1つに係る半導体装置を用いて、前記半導体素子の前記拡散層の不純物の濃度プロファイルを評価する評価方法であって、前記第1構造部における前記第1拡散層の上部の抵抗値を測定することと、前記第2構造部における前記第2拡散層の下部の抵抗値を測定することと、前記第1拡散層の上部の抵抗値と前記第2拡散層の下部の抵抗値とに基づいて、前記拡散層の不純物の濃度プロファイルを評価することと、を含む、評価方法である。
本発明の第8態様は、前記不純物の濃度プロファイルを評価することは、前記第1拡散層の上部の抵抗値と前記第2拡散層の下部の抵抗値との比を求め、得られた比を予め定めた目標値と比較することにより行われる、第7態様に係る評価方法である。
本発明の第9態様は、前記予め定めた目標値は、前記半導体素子の性能と前記比との関係に基づいて設定される、第8態様に係る評価方法である。
本発明の第10態様は、前記得られた比が予め定めた目標値と等しい場合は、前記不純物の濃度プロファイルを適正と評価し、前記得られた比が予め定めた目標値より大きい場合は、前記不純物の濃度プロファイルを拡散不十分と評価し、前記得られた比が予め定めた目標値より小さい場合は、前記不純物の濃度プロファイルを拡散過剰と評価する、第8態様又は第9態様に係る評価方法である。
【符号の説明】
【0046】
10 半導体基板(シリコン基板)
12 フィールド酸化膜
14 プレ酸化膜
16 ロコス窒化膜
20 第1構造部
22 N型ウェル
22A 上部ウェル
22B 下部ウェル
24 P型埋め込み層
26A、26B N+型コンタクト層
28A、28B 端子
30 第2構造部
32 N型ウェル
34 P型半導体層
34A P型遮断層
34B P型埋め込み層
36A、36B N+型コンタクト層
38A、38B 端子