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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131653
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】厚み調整装置及び厚み調整方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/31 20190101AFI20240920BHJP
   B29C 48/92 20190101ALI20240920BHJP
【FI】
B29C48/31
B29C48/92
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042056
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 陸
(72)【発明者】
【氏名】大杉 亮介
(72)【発明者】
【氏名】藤田 仁司
【テーマコード(参考)】
4F207
【Fターム(参考)】
4F207AG01
4F207AJ08
4F207AP11
4F207AR01
4F207AR12
4F207KA01
4F207KA17
4F207KK64
4F207KL76
4F207KL84
(57)【要約】
【課題】コストの増加を抑えつつ、フィルムの厚みを適切に調整すること。
【解決手段】厚み調整装置100は、離隔する一対のリップ部23同士の間に形成されるスリット25から樹脂フィルムFを吐出するダイ20と、リップ部23の延在方向に沿って複数が並んで配置され、リップ部23に対して付与する押圧力を調整することによりスリット25の間隔を調整する調整ボルト30と、調整ボルト30と嵌合するソケット53を有すると共にソケット53を調整ボルト30に嵌合させて調整ボルト30を回転させる回転装置50と、複数の調整ボルト30が並ぶ方向に沿って回転装置50を移動させる走行装置60と、ヒータ75を有すると共にリップ部23の延在方向に沿って複数が並んで配置され、ヒータ75の温度に応じて伸縮することにより伸縮に応じた押圧力をリップ部23に対して付与し、スリット25の間隔を調整するヒートボルト70と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
離隔する一対のリップ部同士の間に形成されるスリットから樹脂フィルムを吐出するダイと、
前記リップ部の延在方向に沿って複数が並んで配置され、前記リップ部に対して付与する押圧力を調整することにより前記スリットの間隔を調整する調整ボルトと、
前記調整ボルトと嵌合する嵌合部を有すると共に前記嵌合部を前記調整ボルトに嵌合させて前記調整ボルトを回転させる回転装置と、
複数の前記調整ボルトが並ぶ方向に沿って前記回転装置を移動させる走行装置と、
ヒータを有すると共に前記リップ部の延在方向に沿って複数が並んで配置され、前記ヒータの温度に応じて伸縮することにより伸縮に応じた押圧力を前記リップ部に対して付与し、前記スリットの間隔を調整するヒートボルトと、
を備える厚み調整装置。
【請求項2】
前記調整ボルトと前記ヒートボルトとは、前記ダイにおける、互いに異なる前記リップ部側に配置される請求項1に記載の厚み調整装置。
【請求項3】
前記調整ボルトと前記ヒートボルトとは、前記リップ部の延在方向における位置が互いに同じ位置に配置される請求項2に記載の厚み調整装置。
【請求項4】
前記調整ボルトと前記ヒートボルトとは、前記ダイにおける、互いに同じ前記リップ部側に配置される請求項1に記載の厚み調整装置。
【請求項5】
前記調整ボルトは前記ヒートボルトを兼ねる請求項4に記載の厚み調整装置。
【請求項6】
前記スリットを撮影する撮影装置と、
前記撮影装置を前記走行装置に対して着脱自在に連結する連結部材と、
を備え、
前記走行装置は、前記連結部材によって前記走行装置に連結された前記撮影装置を前記回転装置と共に移動させる請求項1又は2に記載の厚み調整装置。
【請求項7】
前記走行装置により前記回転装置と共に移動し、移動方向における前記調整ボルトの有無を検出するボルト検出部と、
前記ボルト検出部による前記調整ボルトの検出結果に基づいて、複数の前記調整ボルトが並ぶ方向における前記調整ボルトごとの位置を算出するボルト位置算出部と、
を備える請求項1又は2に記載の厚み調整装置。
【請求項8】
離隔する一対のリップ部同士の間に形成されるスリットから樹脂フィルムを吐出するダイに前記リップ部の延在方向に沿って複数が並んで配置される調整ボルトと嵌合する嵌合部を有する回転装置を、走行装置によって複数の前記調整ボルトが並ぶ方向に沿って移動させる手順と、
前記回転装置の前記嵌合部を前記調整ボルトに嵌合させて前記調整ボルトを回転させることにより、前記リップ部に対して付与する押圧力を前記調整ボルトごとに調整して前記スリットの間隔を調整する手順と、
ヒータを有すると共に前記リップ部の延在方向に沿って複数が並んで配置され、前記ヒータの温度に応じて伸縮することにより伸縮に応じた押圧力を前記リップ部に対して付与するヒートボルトの前記ヒータの温度を制御することにより、前記スリットの間隔を調整する手順と、
を含む厚み調整方法。
【請求項9】
前記スリットから吐出された前記樹脂フィルムの厚みを測定する手順と、
前記調整ボルトにより前記リップ部に対して付与する押圧力を、測定した前記樹脂フィルムの厚みに基づいて調整することにより前記スリットの間隔を調整する手順と、
前記樹脂フィルムの厚みが所定の基準を満たす状態における前記調整ボルトの回転情報を前記調整ボルトごとに記憶する手順と、
前記調整ボルトの前記回転情報を記憶した前記樹脂フィルムと同じ種類の前記樹脂フィルムの製造を開始する際に、記憶されている前記調整ボルトごとの前記回転情報に基づいて前記調整ボルトを回転させる手順と、
を含む請求項8に記載の厚み調整方法。
【請求項10】
前記回転情報に基づいて回転が調整された前記調整ボルトにより前記リップ部に対して押圧力が付与される前記ダイの前記スリットから吐出された前記樹脂フィルムの厚みを測定する手順と、
前記ヒートボルトによる押圧力を、測定した前記樹脂フィルムの厚みに基づいて調整することにより前記スリットの間隔を調整する手順と、
を含む請求項9に記載の厚み調整方法。
【請求項11】
前記調整ボルトと前記ヒートボルトとが互いに異なる前記リップ部に対して押圧力を付与する前記ダイにおける前記樹脂フィルムを吐出する前の前記スリットを撮影装置により撮影する手順と、
前記撮影装置によって撮影した前記スリットの画像データに対して、一対の前記リップ部同士の間を通る直線状の基準線を設定する手順と、
前記画像データに基づいて前記基準線からの前記リップ部の距離を前記リップ部の延在方向に亘って測定する手順と、
前記基準線からの前記リップ部の距離を、前記調整ボルトから前記リップ部に付与する押圧力と前記ヒートボルトから前記リップ部に付与する押圧力とを調整することにより前記リップ部の延在方向に亘って一定の距離にする手順と、
を含む請求項8又は9に記載の厚み調整方法。
【請求項12】
前記スリットから吐出された前記樹脂フィルムの幅方向における端部である耳部の厚みを測定する手順と、
前記樹脂フィルムにおける前記耳部以外の部分である製品部の厚みを、前記樹脂フィルムの流れ方向における前記耳部の厚みを測定した位置の下流側で測定する手順と、
前記製品部の厚みの測定結果と、前記樹脂フィルムの搬送方向における位置が前記製品部の厚みが測定された位置と同じ位置の前記耳部の厚みが測定された時刻における前記耳部の厚みの測定結果とを合わせて前記樹脂フィルムの幅方向における全域の厚みを求める手順と、
を含む請求項8又は9に記載の厚み調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚み調整装置及び厚み調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂からなる樹脂フィルムを製造するための手法として、ダイを用いた方法が挙げられる。ダイにはスリットが形成され、溶融した樹脂をスリットから吐出することにより、ダイによって薄膜状の樹脂フィルムを成形することが可能になっている。このように樹脂フィルムを成形するダイは、溶融した樹脂が通るスリットの間隔を調整することにより、樹脂フィルムの厚みを調整することが可能になっている。例えば、特許文献1には、アクチュエータと、アクチュエータの出力軸とTダイの可動リップとを連結する連結部材とを備えるリップ間隔調整機構を、Tダイの幅方向に複数配置し、リップ間隔調整機構のアクチュエータの出力軸を回転させることにより、可動リップを変位させてTダイのリップ間隔を調整することが記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、複数のヒートボルトが並列に配置されたヒートボルトユニットをスライド移動させるアクチュエータを備えるダイリップ調整装置を、押出成形用ダイに複数配置してそれぞれのヒートボルトの先端部を押出成形用ダイの可動リップに固定することが記載されている。また、特許文献2には、アクチュエータによってヒートボルトユニットをスライド移動させることにより押出成形用ダイのリップ間隔を粗調整し、ヒートボルトの加熱温度を制御することにより押出成形用ダイのリップ間隔を単一のヒートボルトの単位で局所的に微調整することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2022/195735号
【特許文献2】国際公開第2022/180850号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ダイに形成されるスリットの間隔を調整することによってダイを用いて製造するフィルムの厚みの調整を行う装置に、アクチュエータを複数設ける場合、アクチュエータの数の増加に伴って製造コストが増加し易くなる。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、コストの増加を抑えつつ、フィルムの厚みを適切に調整することのできる厚み調整装置及び厚み調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本開示の一態様の厚み調整装置は、離隔する一対のリップ部同士の間に形成されるスリットから樹脂フィルムを吐出するダイと、前記リップ部の延在方向に沿って複数が並んで配置され、前記リップ部に対して付与する押圧力を調整することにより前記スリットの間隔を調整する調整ボルトと、前記調整ボルトと嵌合する嵌合部を有すると共に前記嵌合部を前記調整ボルトに嵌合させて前記調整ボルトを回転させる回転装置と、複数の前記調整ボルトが並ぶ方向に沿って前記回転装置を移動させる走行装置と、ヒータを有すると共に前記リップ部の延在方向に沿って複数が並んで配置され、前記ヒータの温度に応じて伸縮することにより伸縮に応じた押圧力を前記リップ部に対して付与し、前記スリットの間隔を調整するヒートボルトと、を備える。
【0008】
これにより、厚み調整装置は、ダイに形成されるスリットの間隔を調整ボルトとヒートボルトとによって適切に調整することができ、樹脂フィルムの厚みを所望の厚みに調整することが可能になっている。また、厚み調整装置は、調整ボルトを回転させる回転装置と、複数の調整ボルトが並ぶ方向に沿って回転装置を移動させる走行装置とを備えているため、複数の調整ボルトを、1つの回転装置によって回転させることができる。このため、リップ部に対して付与する複数の調整ボルトの押圧力を、1つの回転装置によって調整することができる。従って、リップ部に対して付与する複数の調整ボルトの押圧力を調整するためのアクチュエータを、調整ボルトの数に応じて複数設ける必要がないため、多くのアクチュエータを設けることに起因する製造コストの増加を抑えることができる。これらの結果、コストの増加を抑えつつ、樹脂フィルムの厚みを適切に調整することができる。
【0009】
本開示の厚み調整装置の一態様として、前記調整ボルトと前記ヒートボルトとは、前記ダイにおける、互いに異なる前記リップ部側に配置される。
【0010】
これにより、調整ボルトとヒートボルトとの双方を設けることに起因する製造コストの増加を抑えることができる。つまり、調整ボルトとヒートボルトとを、ダイにおける互いに異なるリップ部側に配置することにより、調整ボルトの調整を行う回転装置や走行装置と、ヒートボルトのヒータに電流を流す配線を、ダイにおける互いに異なるリップ部側に配置することができる。このため、ダイにおける互いに異なるリップ部側で、回転装置と走行装置や、ヒートボルトのヒータに電流を流す配線を、それぞれ広いスペースで配置することができるため、製造時における組み立て性を確保することができる。これにより、ダイに複数の調整ボルトとヒートボルトとを配置する際における製造コストを抑えることができる。この結果、コストの増加を抑えつつ、樹脂フィルムの厚みを適切に調整することができる。
【0011】
本開示の厚み調整装置の一態様として、前記調整ボルトと前記ヒートボルトとは、前記リップ部の延在方向における位置が互いに同じ位置に配置される。
【0012】
これにより、リップ部の延在方向における位置ごとに、調整ボルトとヒートボルトとを併用してスリットの間隔を調整することができる。このため、リップ部の延在方向におけるいずれの位置においても、調整ボルトとヒートボルトとを併用してスリットの間隔を適切な間隔に調整することができる。この結果、樹脂フィルムの厚みを適切に調整することができる。
【0013】
本開示の厚み調整装置の一態様として、前記調整ボルトと前記ヒートボルトとは、前記ダイにおける、互いに同じ前記リップ部側に配置される。
【0014】
これにより、スリットの間隔を調整するための部材を、ダイの一方のリップ部側に全て配置することになる。これにより、スリットの間隔を調整する際に調整のための作業を、ダイの両方のリップ部側からそれぞれ行う必要がないため、スリットの間隔を調整する際における作業性を確保することができる。この結果、スリットの間隔を調整する際における作業性を確保しつつ、樹脂フィルムの厚みを適切に調整することができる。
【0015】
本開示の厚み調整装置の一態様として、前記調整ボルトは前記ヒートボルトを兼ねる。
【0016】
これにより、調整ボルトとヒートボルトとを、実質的にダイにおける互いに同じリップ部側に配置することができる。従って、スリットの間隔を調整するためのボルトの本数を抑えつつ、調整ボルトとしての機能によるスリットの間隔の調整と、ヒートボルトとしての機能によるスリットの間隔の調整とを併用することにより、スリットの間隔を適切な間隔に調整することができる。この結果、コストの増加を抑えつつ、樹脂フィルムの厚みを適切に調整することができる。
【0017】
本開示の厚み調整装置の一態様として、前記スリットを撮影する撮影装置と、前記撮影装置を前記走行装置に対して着脱自在に連結する連結部材と、を備え、前記走行装置は、前記連結部材によって前記走行装置に連結された前記撮影装置を前記回転装置と共に移動させる。
【0018】
これにより、撮影装置でスリットを撮影する際に、撮影装置を走行装置で移動させることにより、撮影装置を移動させるためのアクチュエータを追加することなく、スリットの延在方向における全域に亘ってスリットを撮影装置で撮影することができる。従って、複数の調整ボルトと複数のヒートボルトとを用いて間隔を調整するスリットの全域を、樹脂フィルムを製造する前に撮影装置で撮影してスリットの間隔を調整することができるため、樹脂フィルムの製造を開始する前に、スリットの間隔を適切な間隔に調整することができる。この結果、コストの増加を抑えつつ、樹脂フィルムの厚みを適切に調整することができる。
【0019】
本開示の厚み調整装置の一態様として、前記走行装置により前記回転装置と共に移動し、移動方向における前記調整ボルトの有無を検出するボルト検出部と、前記ボルト検出部による前記調整ボルトの検出結果に基づいて、複数の前記調整ボルトが並ぶ方向における前記調整ボルトごとの位置を算出するボルト位置算出部と、を備える。
【0020】
これにより、スリットの間隔を調整する調整ボルトを回転させる回転装置を走行装置によって移動させる際に、ボルト位置算出部で算出した調整ボルトごとの位置に基づいて移動させることにより、回転装置を目的とする調整ボルトの位置に高い精度で移動させることができる。従って、ダイのリップ部に対する調整ボルトの押圧力を調整してスリットの間隔を調整する際に、回転装置の嵌合部を目的の調整ボルトに対して嵌合させることができ、1つの回転装置によって目的の調整ボルトを回転させることができる。この結果、コストの増加を抑えつつ、樹脂フィルムの厚みを適切に調整することができる。
【0021】
上記の目的を達成するため、本開示の一態様の厚み調整方法は、離隔する一対のリップ部同士の間に形成されるスリットから樹脂フィルムを吐出するダイに前記リップ部の延在方向に沿って複数が並んで配置される調整ボルトと嵌合する嵌合部を有する回転装置を、走行装置によって複数の前記調整ボルトが並ぶ方向に沿って移動させる手順と、前記回転装置の前記嵌合部を前記調整ボルトに嵌合させて前記調整ボルトを回転させることにより、前記リップ部に対して付与する押圧力を前記調整ボルトごとに調整して前記スリットの間隔を調整する手順と、ヒータを有すると共に前記リップ部の延在方向に沿って複数が並んで配置され、前記ヒータの温度に応じて伸縮することにより伸縮に応じた押圧力を前記リップ部に対して付与するヒートボルトの前記ヒータの温度を制御することにより、前記スリットの間隔を調整する手順と、を含む。
【0022】
これにより、リップ部に対して付与する複数の調整ボルトの押圧力を、1つの回転装置によって調整することができる。このため、リップ部に対して付与する複数の調整ボルトの押圧力を調整するためのアクチュエータを、調整ボルトの数に応じて複数設ける必要がないため、多くのアクチュエータを設けることに起因する製造コストの増加を抑えることができる。また、厚み調整方法は、ヒートボルトのヒータの温度を制御することによりスリットの間隔を調整する手順を含んでいるため、スリットの間隔を調整ボルトとヒートボルトとによって適切に調整することができ、樹脂フィルムの厚みを所望の厚みに調整することが可能になっている。これらの結果、コストの増加を抑えつつ、樹脂フィルムの厚みを適切に調整することができる。
【0023】
本開示の厚み調整方法の一態様として、前記スリットから吐出された前記樹脂フィルムの厚みを測定する手順と、前記調整ボルトにより前記リップ部に対して付与する押圧力を、測定した前記樹脂フィルムの厚みに基づいて調整することにより前記スリットの間隔を調整する手順と、前記樹脂フィルムの厚みが所定の基準を満たす状態における前記調整ボルトの回転情報を前記調整ボルトごとに記憶する手順と、前記調整ボルトの前記回転情報を記憶した前記樹脂フィルムと同じ種類の前記樹脂フィルムの製造を開始する際に、記憶されている前記調整ボルトごとの前記回転情報に基づいて前記調整ボルトを回転させる手順と、を含む。
【0024】
これにより、樹脂フィルムの種類を切り替えて樹脂フィルムの製造を開始する際に、スリットの間隔を、新たに製造する樹脂フィルムに合わせた間隔に予め調整することができる。従って、樹脂フィルムの種類に合わせたスリットの間隔の調整作業を簡略化することができ、製造コストを抑えることができる。この結果、コストの増加を抑えつつ、樹脂フィルムの厚みを適切に調整することができる。
【0025】
本開示の厚み調整方法の一態様として、前記回転情報に基づいて回転が調整された前記調整ボルトにより前記リップ部に対して押圧力が付与される前記ダイの前記スリットから吐出された前記樹脂フィルムの厚みを測定する手順と、前記ヒートボルトによる押圧力を、測定した前記樹脂フィルムの厚みに基づいて調整することにより前記スリットの間隔を調整する手順と、を含む。
【0026】
これにより、樹脂フィルムの種類を切り替えて樹脂フィルムの製造を開始する際に、新たに製造する樹脂フィルムの種類に合わせて、スリットの間隔をより適切な間隔に調整することができる。この結果、樹脂フィルムの厚みを適切に調整することができる。
【0027】
本開示の厚み調整方法の一態様として、前記調整ボルトと前記ヒートボルトとが互いに異なる前記リップ部に対して押圧力を付与する前記ダイにおける前記樹脂フィルムを吐出する前の前記スリットを撮影装置により撮影する手順と、前記撮影装置によって撮影した前記スリットの画像データに対して、一対の前記リップ部同士の間を通る直線状の基準線を設定する手順と、前記画像データに基づいて前記基準線からの前記リップ部の距離を前記リップ部の延在方向に亘って測定する手順と、前記基準線からの前記リップ部の距離を、前記調整ボルトから前記リップ部に付与する押圧力と前記ヒートボルトから前記リップ部に付与する押圧力とを調整することにより前記リップ部の延在方向に亘って一定の距離にする手順と、を含む。
【0028】
これにより、複数の調整ボルトと複数のヒートボルトとを用いて間隔を調整するスリットの全域を、樹脂フィルムを製造する前に撮影装置で撮影してスリットの間隔を調整することができるため、樹脂フィルムの製造を開始する前に、スリットの間隔を適切な間隔に調整することができる。この結果、コストの増加を抑えつつ、樹脂フィルムの厚みを適切に調整することができる。
【0029】
本開示の厚み調整方法の一態様として、前記スリットから吐出された前記樹脂フィルムの幅方向における端部である耳部の厚みを測定する手順と、前記樹脂フィルムにおける前記耳部以外の部分である製品部の厚みを、前記樹脂フィルムの流れ方向における前記耳部の厚みを測定した位置の下流側で測定する手順と、前記製品部の厚みの測定結果と、前記樹脂フィルムの搬送方向における位置が前記製品部の厚みが測定された位置と同じ位置の前記耳部の厚みが測定された時刻における前記耳部の厚みの測定結果とを合わせて前記樹脂フィルムの幅方向における全域の厚みを求める手順と、を含む。
【0030】
これにより、樹脂フィルムの製品部の厚みと耳部の厚みとが、樹脂フィルムの搬送方向において互いに異なる位置でそれぞれ測定される場合でも、樹脂フィルムの搬送方向における位置が同じ位置となる製品部の厚みと耳部の厚みとに基づいて、樹脂フィルムの幅方向における全域の厚みを求めることができる。従って、樹脂フィルムの厚みに基づいてスリットの間隔を調整する際に、幅方向における全域に亘って適切な間隔に調整することができ、樹脂フィルムの厚みを適切に調整することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る厚み調整装置及び厚み調整方法は、コストの増加を抑えつつ、フィルムの厚みを適切に調整することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、実施形態1に係る押出成形装置の模式図である。
図2図2は、図1に示すダイの断面模式図である。
図3図3は、図1に示すダイの斜視図である。
図4図4は、図2のA-A矢視図である。
図5図5は、実施形態1に係る厚み調整装置の装置構成を示すブロック図である。
図6図6は、レーザ変位センサによって調整ボルトの位置を検出する状態を示す説明図であり、レーザ変位センサが調整ボルトを検出していない状態の模式図である。
図7図7は、レーザ変位センサによって調整ボルトの位置を検出する状態を示す説明図であり、レーザ変位センサが調整ボルトを検出している状態の模式図である。
図8図8は、調整ボルトの中心位置を取得する方法についての説明図である。
図9図9は、レーザ変位センサから照射するレーザ光が調整ボルトの軸方向に対して傾斜する向きで配置される状態を示す説明図である。
図10図10は、図9に示すレーザ変位センサで調整ボルトの検出を行う際の調整ボルトに対する検出位置を示す説明図である。
図11図11は、レーザ変位センサから照射するレーザ光が調整ボルトの軸方向に対して平行な向きで配置される状態を示す説明図である。
図12図12は、図11に示すレーザ変位センサで調整ボルトの検出を行う際の調整ボルトに対する検出位置を示す説明図である。
図13図13は、通信ラグによる情報のずれについての説明図である。
図14図14は、回転装置のソケットに形成される嵌合孔と調整ボルトのボルト頭との隙間についての説明図である。
図15図15は、厚み調整装置に撮影装置を取り付けた状態を示す模式図である。
図16図16は、スリットの画像データに設定する基準線の概念図である。
図17図17は、図16のB部詳細図である。
図18図18は、樹脂フィルムの製造時における厚み調整装置による樹脂フィルムの厚み調整方法の流れを示すフロー図である。
図19図19は、樹脂フィルムの品種を切り替えた場合における厚み調整装置による樹脂フィルムの厚み調整方法の流れを示すフロー図である。
図20図20は、実施形態2に係る押出成形装置の模式図である。
図21図21は、実施形態2に係る厚み調整方法の処理手順を示すフロー図である。
図22図22は、耳部の厚みの測定結果を示すグラフである。
図23図23は、製品部の厚みの測定結果を示すグラフである。
図24図24は、製品部の厚みの測定結果と耳部の厚みの測定結果とを合わせた樹脂フィルムの全域の厚みの測定結果を示すグラフである。
図25図25は、実施形態1に係る厚み調整装置の変形例であり、調整ボルトとヒートボルトとが同じリップ部側に配置される形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0034】
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係る押出成形装置1の模式図である。実施形態1に係る押出成形装置1は、合成樹脂を用いて薄膜状の樹脂フィルムFを製造するための装置である。押出成形装置1は、単層のフィルムを製造する装置である。単層のフィルムとは、1種類の原料で形成されたフィルムである。なお、押出成形装置1は、多層のフィルムを作成する装置であってもよい。
【0035】
図1に示すように、押出成形装置1は、押出機11と、押出成形用のダイ20と、冷却ロールであるキャストロール13と、搬送ロール14と、厚み計15と、巻取機16と、制御装置90と、を備える。
【0036】
押出機11は、溶融樹脂をダイ20に向かって押し出す装置である。押出機11のホッパーには、材料として樹脂が供給される。ホッパーに供給される樹脂は、予め加熱及び混練されペレット状に形成されたものであってもよいし、パウダー状であってもよいし、回収された製品等の破材であってもよい。ホッパーに供給される樹脂は、ホッパーから押出機11のシリンダーに導かれる。シリンダーにはスクリューが設けられている。樹脂は、スクリューによって溶融し、ダイ20に向かって押し出される。
【0037】
ダイ20は、溶融樹脂をフィルム状に成形する装置である。押出機11からダイ20の上側に溶融樹脂が供給される。押出機11からダイ20に供給される溶融樹脂は、ダイ20の内部を下側に移動し、ダイ20の下端部から吐出される。
【0038】
キャストロール13は、ダイ20から吐出されたフィルム状の樹脂に接触する。キャストロール13は、ダイ20から吐出されたフィルム状の樹脂を冷却し、固化させる。これにより、押出成形装置1は、樹脂材料からなるフィルムである樹脂フィルムFを製造する。なお、本実施形態1の説明では、ダイ20から吐出されてキャストロール13によって固化する前の樹脂も、薄膜状の形状で形成されているため、便宜上樹脂フィルムFとして説明する。
【0039】
搬送ロール14は、押出成形装置1に複数が配置されている。搬送ロール14は、キャストロール13で固化した樹脂フィルムFを、巻取機16が位置する側に向けて搬送する。
【0040】
厚み計15は、樹脂フィルムFの厚みを測定する装置である。厚み計15は、樹脂フィルムFの搬送方向におけるキャストロール13の下流に配置されており、樹脂フィルムFの幅方向における複数箇所において、樹脂フィルムFの厚みを測定する。厚み計15は、例えばレーザ光を使用し、樹脂フィルムFの幅方向における複数の位置で、それぞれの位置での樹脂フィルムFの厚みを非接触で測定することができる。厚み計15は、測定した樹脂フィルムFの厚みを、制御装置90に出力する。
【0041】
巻取機16は、樹脂フィルムFの搬送方向における厚み計15の下流に配置されている。巻取機16は、厚み計15を通過した樹脂フィルムFを巻き取る。
【0042】
制御装置90は、コンピュータであり、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入力インターフェース、及び出力インターフェースを含む。制御装置90において、CPU、ROM、RAM、入力インターフェース及び出力インターフェースは、内部バスに接続されている。CPU、ROM、RAM、入力インターフェース及び出力インターフェースが連携することによって、制御装置90の機能が実現される。本実施形態1では、制御装置90には、PLC(Programmable Logic Controller)が用いられる。
【0043】
図2は、図1に示すダイ20の断面模式図である。なお、以下のダイ20に関する説明では、ダイ20の通常の使用形態における上下方向をダイ20の上下方向Zとして説明する。また、ダイ20から吐出する樹脂フィルムF(図1参照)の幅方向をダイ20の幅方向Yとして説明し、上下方向Zと幅方向Yとに直交する方向をダイ20の厚さ方向Xとして説明する。
【0044】
ダイ20は、投入部21と、導入流路22と、リップ部23と、スリット25とを有している。投入部21は、押出機11から供給される溶融樹脂をダイ20に投入する部分になっており、孔状の形状でダイ20の上端に形成されている。投入部21には、押出機11からダイ20への溶融樹脂の供給経路を構成する供給部材12が連結されており、溶融樹脂は、供給部材12を通ってダイ20に供給される。
【0045】
導入流路22は、ダイ20における溶融樹脂を吐出する部分であるスリット25の上流側に形成される孔状の流路である。導入流路22は、投入部21とスリット25との間に形成されており、双方に繋がっている。
【0046】
導入流路22は、縦流路22aと、横流路22bとを有している。縦流路22aは、上下方向Zに延びており、縦流路22aの上端が投入部21になっている。縦流路22aは、上下方向Zに見た場合における形状が、例えば円形の孔になっている。縦流路22aの内径は、ダイ20の幅方向Yにおける大きさと比較して大幅に小さくなっており、ダイ20の幅方向Yにおける中央付近で、且つ、厚さ方向Xにおける中心付近に形成されている。
【0047】
横流路22bは、ダイ20の厚さ方向Xにおける中心付近に形成され、ダイ20の幅方向Yに延びている。縦流路22aは、上下方向Zにおける下側の端部が、横流路22bに接続されている。このため、縦流路22aを流れる樹脂は、横流路22bに至ると、横流路22bに沿って幅方向Yに拡がって流れる。横流路22bは、上下方向Zにおける下側寄りの部分では、下側に向かうに従って厚さ方向Xにおける大きさが小さくなっている。
【0048】
リップ部23は、上下方向Zにおける下端付近に配置されている。リップ部23は、調整ボルト30が配置される側のリップ部23である調整ボルト側リップ23aと、ヒートボルト70が配置される側のリップ部23であるヒートボルト側リップ23bとを有している。調整ボルト側リップ23aとヒートボルト側リップ23bとは、いずれも幅方向Yに延在しており、即ち、リップ部23は、ダイ20の幅方向Yに延在して形成されている。これらのように形成される調整ボルト側リップ23aとヒートボルト側リップ23bとは、ダイ20の厚さ方向Xに隙間をあけて配置されている。調整ボルト側リップ23aとヒートボルト側リップ23bとの間の隙間が、スリット25として形成されている。スリット25は、このように調整ボルト側リップ23aとヒートボルト側リップ23bとの間の隙間として形成されるため、スリット25は、リップ部23が延在する方向である幅方向Yに延在して形成されている。
【0049】
導入流路22が有する横流路22bは、幅方向Yにおける長さが、幅方向Yにおけるスリット25の長さに略等しい長さになっており、横流路22bは、上下方向Zにおける下側の端部が、スリット25に接続されている。スリット25は、導入流路22を流れる溶融樹脂をダイ20の外側に吐出する吐出口になっている。スリット25は、溶融樹脂を薄膜状の樹脂フィルムF(図1参照)の形態で吐出することができる。即ち、ダイ20は、離隔する一対のリップ部23同士の間に形成されるスリット25から樹脂フィルムFを吐出することが可能になっている。
【0050】
樹脂フィルムFは、樹脂フィルムFの幅が、幅方向Yにおけるスリット25の長さと同程度となり、樹脂フィルムFの厚みが、厚さ方向Xにおける調整ボルト側リップ23aとヒートボルト側リップ23bとの間隔と同程度の大きさで、スリット25から吐出される。このため、ダイ20の幅方向Yと樹脂フィルムFの幅方向は、実質的に同じ方向になっている。
【0051】
調整ボルト30とヒートボルト70は、いずれもリップ部23により形成されるスリット25から押し出される樹脂フィルムFの厚みを調整するための部材である。このうち、調整ボルト30は、ダイ20に取り付けられるボルト支持部31により、ボルト支持部31に対して回転自在に支持されている。調整ボルト30とボルト支持部31とは、ダイ20の厚さ方向Xにおいて、調整ボルト側リップ23aが位置する面側に配置されている。ボルト支持部31より支持される調整ボルト30は、一方の端部が調整ボルト側リップ23aに接続されている。調整ボルト30は、リップ部23に対して押圧力を付与することにより、スリット25の間隔を調整することが可能になっている。
【0052】
つまり、調整ボルト30は、ボルト支持部31に対して回転をすると、調整ボルト30は、ボルト支持部31と調整ボルト側リップ23aとの間に位置する部分の長さが変化する。これにより、調整ボルト30は、リップ部23に対する押圧力を変化させることができる。調整ボルト30からリップ部23に付与する押圧力が変化した場合、即ち、調整ボルト30から調整ボルト側リップ23aに付与する押圧力が変化した場合、調整ボルト側リップ23aは、ヒートボルト側リップ23bとの間の距離が変化する。調整ボルト30は、このようにリップ部23に付与する押圧力を調整することにより、調整ボルト側リップ23aとヒートボルト側リップ23bとの間に形成されるスリット25の間隔を調整することができ、スリット25から吐出される樹脂フィルムFの厚みを調整することが可能になっている。
【0053】
また、ヒートボルト70は、ダイ20に取り付けられるボルト支持部71により支持されている。ヒートボルト70とボルト支持部71とは、ダイ20の厚さ方向Xにおいて、ヒートボルト側リップ23bが位置する面側に配置されている。即ち、調整ボルト30とヒートボルト70とは、ダイ20における、互いに異なるリップ部23側に配置されている。ボルト支持部71より支持されるヒートボルト70は、一方の端部がヒートボルト側リップ23bに接続されている。ヒートボルト70は、リップ部23に対して押圧力を付与することにより、スリット25の間隔を調整することが可能になっている。調整ボルト30とヒートボルト70とは、これらのように互いに異なるリップ部23側に配置され、互いに異なるリップ部23に対して押圧力を付与することにより、それぞれスリット25の間隔を調整することが可能になっている。
【0054】
詳しくは、ヒートボルト70は、内側にヒータ75を有しており、ヒータ75の温度に応じて伸縮することが可能になっている。ヒータ75の温度は、後述するヒートボルト制御装置95(図5参照)によって制御可能になっている。ヒートボルト70は、ボルト支持部71に支持されている状態でヒータ75の温度に応じて伸縮することにより、ボルト支持部71とヒートボルト側リップ23bとの間に位置する部分の長さが変化する。これにより、ヒートボルト70は、伸縮に応じた押圧力をリップ部23に対して付与することができ、リップ部23に対する押圧力を伸縮に応じて変化させることができる。
【0055】
ヒートボルト70からリップ部23に付与する押圧力が変化した場合、即ち、ヒートボルト70からヒートボルト側リップ23bに付与する押圧力が変化した場合、ヒートボルト側リップ23bは、調整ボルト側リップ23aとの間の距離が変化する。ヒートボルト70は、このようにリップ部23に付与する押圧力を調整することにより、ヒートボルト側リップ23bと調整ボルト側リップ23aとの間に形成されるスリット25の間隔を調整することができ、スリット25から吐出される樹脂フィルムFの厚みを調整することが可能になっている。
【0056】
さらに、ヒートボルト70は、調整ボルト30と同様にボルト支持部71に対して回転自在に支持されており、通常のボルトと同様に、工具を用いてボルト支持部71に対して回転させることができる。このため、ヒートボルト70は、調整ボルト30と同様に、ボルト支持部71に対して回転をすることによっても、ヒートボルト側リップ23bに対する押圧力を変化させることができ、ヒートボルト側リップ23bと調整ボルト側リップ23aとの間に形成されるスリット25の間隔を調整することができる。従って、ヒートボルト70は、ヒータ75の温度に応じてヒートボルト70が伸縮することと、ボルト支持部71に対して回転をすることとの双方の手法によって、スリット25から吐出される樹脂フィルムFの厚みを調整することが可能になっている。
【0057】
図3は、図1に示すダイ20の斜視図である。ダイ20に設けられる調整ボルト30は、リップ部23の延在方向に沿って複数が並んで配置されている。即ち、調整ボルト30は、複数が幅方向Yに並んで配置されている。ダイ20には、調整ボルト30を用いたスリット25の間隔の調整を、アクチュエータを用いて行う自動調整装置40が配置されている。自動調整装置40は、調整装置支持部41と、回転装置50と、走行装置60とを有している。
【0058】
自動調整装置40は、ダイ20の厚さ方向Xにおいて調整ボルト30が配置される面側に配置されている。自動調整装置40は、幅方向Yにおける長さが、幅方向Yにおけるダイ20の幅と同程度になっている。自動調整装置40は、幅方向Yにおける両側に調整装置支持部41が配置されており、調整装置支持部41は、それぞれダイ20の幅方向Yにおける端面に取り付けられている。これにより、自動調整装置40は、調整装置支持部41によってダイ20に取り付けられている。
【0059】
回転装置50は、回転装置アクチュエータ51と、ソケット53とを有している。回転装置アクチュエータ51は、調整ボルト30を回転させるためのアクチュエータになっている。ソケット53は、調整ボルト30と嵌合することが可能な嵌合部になっている。調整ボルト30は、例えば、調整ボルト30におけるソケット53に嵌合する部分であるボルト頭30a(図8参照)が、調整ボルト30の軸方向に見た場合に略正六角形の形状で形成され、ソケット53は、内側部分が略正六角形の孔状に形成されて調整ボルト30に嵌めることができるソケット状の形状で形成されている。回転装置アクチュエータ51からは、軸状の部材である軸部52が延びており、ソケット53は、軸部の先端に配置されている。
【0060】
回転装置アクチュエータ51は、電動モータとリニアモータとが一体となって形成されており、これにより回転装置アクチュエータ51は、軸部52を回転させたり、軸部52の延在方向に軸部52を伸縮させたりすることができる。回転装置アクチュエータ51には、エンコーダ等のセンサが備えられており、回転装置アクチュエータ51は、軸部52の回転角及び回転量と、軸部52の伸縮量を検出することが可能になっている。回転装置アクチュエータ51は、軸部52を伸縮させることにより、軸部52の先端に配置されるソケット53を調整ボルト30に嵌合させたり、調整ボルト30に嵌合している状態のソケット53を調整ボルト30から外したりすることが可能になっている。また、回転装置アクチュエータ51は、ソケット53を調整ボルト30に嵌合させた状態でソケット53を回転させることにより、調整ボルト30を回転させることが可能になっている。
【0061】
走行装置60は、複数の調整ボルト30が並ぶ方向に沿って回転装置50を移動させる装置になっており、走行装置アクチュエータ61と、回転装置支持部62と、走行レール63と、ベルト64とを有している。走行装置アクチュエータ61は、走行装置60における動力源になっており、例えば、電力により動作する電動モータが用いられる。走行装置アクチュエータ61は、エンコーダを備えており、走行装置アクチュエータ61の回転角や回転数をエンコーダにより検出可能になっている。
【0062】
回転装置支持部62は、回転装置50を支持している。具体的には、回転装置支持部62には、回転装置アクチュエータ51が取り付けられている。回転装置アクチュエータ51は、ダイ20に配置される調整ボルト30の軸方向に対して軸部52が平行になり、調整ボルト30に対してソケット53が対向することができる向きで回転装置支持部62に取り付けられている。
【0063】
走行レール63は、回転装置支持部62を走行させるためのレールになっており、ダイ20の幅方向Yに延在して配置されている。即ち、走行レール63は、ダイ20に配置される複数の調整ボルト30が並ぶ方向に沿って延在しており、回転装置支持部62は、走行レール63に沿って移動することにより、複数の調整ボルト30が並ぶ方向に沿って移動することが可能になっている。
【0064】
ベルト64は、走行装置アクチュエータ61で発生した動力を回転装置支持部62に伝達することにより、走行レール63に沿って回転装置支持部62を移動させることが可能になっている。このため、回転装置支持部62で回転装置50を支持する走行装置60は、複数の調整ボルト30が並ぶ方向に沿って、回転装置50を移動させることが可能になっている。
【0065】
これらのように構成される自動調整装置40は、回転装置50や走行装置60の制御を行う制御部45(図5参照)を有している。制御部45は、コンピュータであり、例えばCPU、ROM、RAM、入力インターフェース、及び出力インターフェースを含む。制御部45において、CPU、ROM、RAM、入力インターフェース及び出力インターフェースは、内部バスに接続されており、内部バスを介して互いに連携している。制御部45の各機能の全部または一部は、ROMに保持されるアプリケーションプログラムをRAMにロードしてCPUで実行することによって、RAMやROMにおけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。
【0066】
制御部45は、回転装置50の回転装置アクチュエータ51を制御することにより、軸部52を伸縮させたり、軸部52を回転させることによってソケット53を回転させたりすることができる。その際に、制御部45は、回転装置アクチュエータ51が有する各センサの検出結果を取得することにより、軸部52の回転角や回転量、軸部52の伸縮量を取得することができる。
【0067】
また、制御部45は、走行装置60の走行装置アクチュエータ61を制御することにより、走行レール63に沿って回転装置50を移動させることができる。その際に、制御部45は、走行装置アクチュエータ61が有するエンコーダの検出結果を取得することにより、回転装置50の移動方向における回転装置50の位置、即ち、幅方向Yにおける回転装置50の位置を取得することができる。制御部45は、例えば、走行装置60によって移動する回転装置50の移動範囲における一方の端を基準位置とし、基準位置からの幅方向Yにおける回転装置50の位置を、走行装置アクチュエータ61のエンコーダの検出結果に基づいて取得する。
【0068】
また、自動調整装置40には、ダイ20に配置される調整ボルト30の有無を検出するボルト検出部であるレーザ変位センサ55が取り付けられている。レーザ変位センサ55は、レーザ光を照射する照射部(図示省略)と、照射部から照射して対象物で反射した反射光を受光する受光部(図示省略)とを備え、対象物で反射した反射光を受光部で受光することにより、対象物の有無を検出することが可能になっている。
【0069】
実施形態1では、レーザ変位センサ55は、ダイ20に配置される調整ボルト30に対向する位置に配置され、調整ボルト30に向けてレーザ光を照射すると共に、レーザ光で反射した反射光を検出することが可能になっている。つまり、レーザ変位センサ55は、ダイ20に配置される調整ボルト30を検出対象とし、調整ボルト30の有無を検出可能に配置されている。
【0070】
レーザ変位センサ55は、走行装置60が有する回転装置支持部62に取り付けられており、回転装置50と共に回転装置支持部62に支持されている。これによりレーザ変位センサ55は、走行装置60によって回転装置50と共に移動し、移動方向における調整ボルト30の有無、即ち、幅方向Yにおける位置ごとの調整ボルト30の有無を検出することが可能になっている。
【0071】
図4は、図2のA-A矢視図である。なお、図4では、調整ボルト30とヒートボルト70は、ダイ20の幅方向Yにおける両端付近に配置されるもの以外は図示を省略しているが、実際には調整ボルト30とヒートボルト70は、それぞれダイ20の幅方向Yにおける一端側から他端側に亘って一定の間隔で複数が配置されている(例えば、図3参照)。
【0072】
ダイ20に対して厚さ方向Xにおいて調整ボルト30が配置される側の反対側に設けられるヒートボルト70は、調整ボルト30と同様に、リップ部23の延在方向に沿って複数が並んで配置されている。即ち、ヒートボルト70は、複数が幅方向Yに並んで配置されている。また、ヒートボルト70は、調整ボルト30と同じ数でダイ20に配置されており、複数のヒートボルト70は、幅方向Yにおける間隔が、複数の調整ボルト30の幅方向Yにおける間隔と同じ間隔で配置されている。つまり、互いに同じ数で配置される調整ボルト30とヒートボルト70とは、幅方向Yにおける位置が互いに同じ位置、或いは、幅方向Yにおける位置が互いに対応する位置に配置されている。このため、ダイ20における、各調整ボルト30が配置されている位置の厚さ方向Xにおける反対側にはヒートボルト70が配置されており、換言すると、ダイ20における、各ヒートボルト70が配置されている位置の厚さ方向Xにおける反対側には調整ボルト30が配置されている。
【0073】
図5は、実施形態1に係る厚み調整装置100の装置構成を示すブロック図である。押出成形装置1のダイ20に取り付けられる自動調整装置40と、自動調整装置40に配置されるレーザ変位センサ55と、ヒートボルト70の温度制御を行うヒートボルト制御装置95と、制御装置90とは、実施形態1においては樹脂フィルムFの厚みを調整する厚み調整装置100を構成している。
【0074】
制御装置90は、コンピュータであり、例えばCPU、ROM、RAM、入力インターフェース、及び出力インターフェースを含む。制御装置90において、CPU、ROM、RAM、入力インターフェース及び出力インターフェースは、内部バスに接続されており、内部バスを介して互いに連携している。制御装置90の各機能の全部または一部は、ROMに保持されるアプリケーションプログラムをRAMにロードしてCPUで実行することによって、RAMやROMにおけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。
【0075】
制御装置90は、機能的に、調整ボルト30を用いてスリット25の間隔の調整を行う調整ボルト調整部91と、ヒートボルト70を用いてスリット25の間隔の調整を行うヒートボルト調整部92と、後述する撮影装置80(図15参照)で撮影した画像データを取得する画像処理部93とを有している。
【0076】
制御装置90は、自動調整装置40の制御部45と、レーザ変位センサ55と、ヒートボルト制御装置95と、それぞれ通信が可能になっている。自動調整装置40の制御部45と制御装置90の通信、レーザ変位センサ55と制御装置90との通信、ヒートボルト制御装置95と制御装置90の通信は、有線で行われてもよく、無線で行われてもよい。自動調整装置40の制御部45と制御装置90、レーザ変位センサ55と制御装置90、ヒートボルト制御装置95と制御装置90は、例えば、イーサネット(登録商標)によりそれぞれ接続され、通信が可能に構成される。
【0077】
制御装置90と通信を行う自動調整装置40の制御部45とレーザ変位センサ55とは、それぞれ制御装置90が有する調整ボルト調整部91との間で信号の送受信を行う。また、制御装置90と通信を行うヒートボルト制御装置95は、制御装置90が有するヒートボルト調整部92との間で信号の送受信を行う。
【0078】
レーザ変位センサ55は、自動調整装置40の走行装置60によってダイ20の幅方向Yに移動しながら検出した調整ボルト30の有無の検出結果を制御装置90の調整ボルト調整部91に伝達する。
【0079】
制御装置90の調整ボルト調整部91は、レーザ変位センサ55によって調整ボルト30の有無が検出されたことを自動調整装置40の制御部45に伝達し、制御部45は、制御装置90から調整ボルト30の有無の検出について伝達された時点での幅方向Yにおける回転装置50の位置を、制御装置90の調整ボルト調整部91に伝達する。これにより、調整ボルト調整部91は、自動調整装置40の制御部45から伝達された回転装置50の位置に基づいて、レーザ変位センサ55によって検出した調整ボルト30の幅方向Yにおける位置を算出する。
【0080】
制御装置90の調整ボルト調整部91は、このように、レーザ変位センサ55による調整ボルト30の検出結果に基づいて複数の調整ボルト30が並ぶ方向における調整ボルト30ごとの位置を算出する、ボルト位置算出部としての機能を有している。
【0081】
ヒートボルト制御装置95は、複数のヒートボルト70がそれぞれ有する各ヒータ75と、ヒータ75に電力を供給する電力源(図示省略)とに接続されており、ヒータ75に供給する電力を調整することが可能になっている。これにより、ヒートボルト制御装置95は、各ヒートボルト70が有するヒータ75の温度を制御することができ、各ヒートボルト70の温度制御が可能になっている。制御装置90のヒートボルト調整部92は、ヒートボルト制御装置95を介して各ヒートボルト70が有するヒータ75に供給する電力を調整することにより、ヒートボルト制御装置95を介して各ヒートボルト70の温度制御を行うことが可能になっている。
【0082】
その際に、ヒートボルト調整部92は、複数のヒートボルト70の温度を、個々のヒートボルト70ごとに独立して制御することが可能になっている。また、制御装置90の記憶部には、複数のヒートボルト70の、ダイ20の幅方向Yにおける配置位置がそれぞれ記憶されている。このため、ヒートボルト調整部92でヒートボルト70の温度を制御する際には、幅方向Yにおいてスリット25の間隔を調整する必要のある位置に配置されているヒートボルト70の温度を、ヒートボルト70ごとに独立して制御することができる。
【0083】
制御装置90の画像処理部93は、後述する撮影装置80(図15参照)で撮影したスリット25の画像データを取得し、画像データに基づいて、スリット25の間隔の状態を検出することが可能になっている。
【0084】
これらのように構成される押出成形装置1では、樹脂フィルムFの成形を行う前に、ダイ20に配置される複数の調整ボルト30の位置を、調整ボルト30ごとに取得する。調整ボルト30の位置の取得は、厚み調整装置100により行う。厚み調整装置100による調整ボルト30の位置の取得は、自動調整装置40の走行装置60によってレーザ変位センサ55を幅方向Yに移動させながら、レーザ変位センサ55で調整ボルト30の有無を検出することにより行う。
【0085】
図6は、レーザ変位センサ55によって調整ボルト30の位置を検出する状態を示す説明図であり、レーザ変位センサ55が調整ボルト30を検出していない状態の模式図である。図6と、後述する図7では、それぞれ図の上側に、ダイ20に配置される調整ボルト30と、調整ボルト30が並ぶ方向に沿って移動するレーザ変位センサ55を記載し、図の下側に、レーザ変位センサ55による測定値のグラフを図示している。それぞれの図のレーザ変位センサ55による測定値のグラフでは、レーザ変位センサ55によって調整ボルト30の有無を検出する際におけるレーザ変位センサ55の検出値の変位を図示している。つまり、それぞれの図のレーザ変位センサ55による測定値のグラフは、調整ボルト30が図示された上側の図と、図の左右方向における位置が対応しており、調整ボルト30が無い位置ではレーザ変位センサ55による測定値は低く、調整ボルト30が有る位置ではレーザ変位センサ55による測定値は高くなることを示している。
【0086】
レーザ変位センサ55によって調整ボルト30の位置を検出する際には、自動調整装置40が有する走行装置60によって、回転装置50をダイ20の幅方向Yに移動させながら行う。これにより、レーザ変位センサ55は、ダイ20の幅方向Y、つまり、複数の調整ボルト30が並んでいる方向に、回転装置50と共に移動する。レーザ変位センサ55が、幅方向Yに移動しながらダイ20が位置する側に向けてレーザ光Lを照射することにより、レーザ変位センサ55は調整ボルト30の有無を検出する。
【0087】
レーザ光Lを照射するレーザ変位センサ55が、ダイ20の幅方向において、調整ボルト30が無い位置にレーザ変位センサ55が位置する状態では、レーザ変位センサ55から照射するレーザ光Lは、調整ボルト30には当たらず、調整ボルト30で反射しない。このため、検出の対象物で反射したレーザ光Lを検出することにより対象物を検出するレーザ変位センサ55での検出状態Sは、図6の下側のグラフに示すように、測定値が低い状態になる。これにより、幅方向Yにおけるレーザ変位センサ55の現在の位置には、調整ボルト30が配置されていないことが検出される。
【0088】
図7は、レーザ変位センサ55によって調整ボルト30の位置を検出する状態を示す説明図であり、レーザ変位センサ55が調整ボルト30を検出している状態の模式図である。幅方向Yに移動しながらレーザ光Lを照射するレーザ変位センサ55が、ダイ20の幅方向において、調整ボルト30が配置されている位置に移動した状態では、レーザ変位センサ55から照射するレーザ光Lは調整ボルト30に当たり、調整ボルト30で反射する。レーザ変位センサ55は、調整ボルト30で反射したレーザ光Lの反射光を受光することにより、レーザ変位センサ55での検出状態Sは、図7の下側のグラフに示すように、測定値が高い状態になる。これにより、幅方向Yにおけるレーザ変位センサ55の現在の位置には、調整ボルト30が配置されていることが検出される。
【0089】
レーザ変位センサ55は、これらのように、ダイ20に向けてレーザ光Lを照射することにより、幅方向Yにおいてレーザ変位センサ55が現在位置する位置での調整ボルト30の有無を検出する。また、レーザ変位センサ55は、複数の調整ボルト30が並ぶ方向に沿って自動調整装置40の走行装置60によって移動しながらレーザ光Lを照射することにより、幅方向Yにおける位置ごとに調整ボルト30の有無を検出する。調整ボルト30の有無を検出するレーザ変位センサ55の検出結果は、制御装置90が有する調整ボルト調整部91に伝達される。
【0090】
制御装置90の調整ボルト調整部91は、レーザ変位センサ55で検出した検出結果を、自動調整装置40の制御部45に伝達する。制御部45は、調整ボルト調整部91からレーザ変位センサ55で検出した検出結果が伝達された時点での、走行装置60の走行装置アクチュエータ61が有するエンコーダの検出結果に基づいて回転装置50の位置を取得する。レーザ変位センサ55は、走行装置60によって回転装置50と共に移動するため、制御部45は、回転装置50の位置を取得することを介して、調整ボルト調整部91からレーザ変位センサ55で検出した検出結果が伝達された時点でのレーザ変位センサ55の位置を取得する。
【0091】
レーザ変位センサ55での検出結果と、幅方向Yにおけるレーザ変位センサ55の位置を取得した制御部45は、双方を紐づけて制御装置90の調整ボルト調整部91に伝達する。つまり、制御部45は、調整ボルト調整部91から伝達されたレーザ変位センサ55での検出結果と、当該レーザ変位センサ55での検出結果が伝達された時点でのレーザ変位センサ55の幅方向Yにおける位置とを関連付けて調整ボルト調整部91に伝達する。
【0092】
レーザ変位センサ55の幅方向Yにおける位置とレーザ変位センサ55での検出結果とが関連付けられた情報を自動調整装置40の制御部45から伝達された調整ボルト調整部91は、これらの情報を制御装置90が有するRAM等の記憶部で記憶して蓄積する。これにより、制御装置90の調整ボルト調整部91は、幅方向Yにおける位置ごとのレーザ変位センサ55での検出結果を取得し、複数の調整ボルト30が並ぶ方向における位置ごとの、調整ボルト30の有無を取得する。
【0093】
制御装置90は、さらに、幅方向Yに並ぶ複数の調整ボルト30のそれぞれの中心の位置を取得する。図8は、調整ボルト30の中心位置Cを取得する方法についての説明図である。図8は、調整ボルト30における、回転装置50のソケット53が嵌合する部分であるボルト頭30aが位置する側から、調整ボルト30の軸方向に調整ボルト30を見た状態を示している。
【0094】
レーザ変位センサ55は、走行装置60によって幅方向Yに移動しながら調整ボルト30の有無を検出する。レーザ変位センサ55は、例えば、調整ボルト30におけるレーザ変位センサ55に対向する部分であるボルト頭30aの有無を、幅方向Yに移動しながら検出する。具体的には、レーザ変位センサ55が調整ボルト30を検出する際には、レーザ変位センサ55の移動方向におけるボルト頭30aの上流側の端部と、ボルト頭30aの下流側の端部との間の部分を、調整ボルト30が配置されている位置として検出する。
【0095】
このうち、レーザ変位センサ55の移動方向におけるボルト頭30aの上流側の端部は、レーザ変位センサ55が幅方向Yに移動しながら調整ボルト30の有無を検出する際に、調整ボルト30を検出していない状態から、調整ボルト30の検出を開始する検出開始位置Pになっている。また、レーザ変位センサ55の移動方向におけるボルト頭30aの下流側の端部は、レーザ変位センサ55が幅方向Yに移動しながら調整ボルト30の有無を検出する際に、調整ボルト30を検出している状態から、調整ボルト30の検出が終了する検出終了位置Pになっている。
【0096】
自動調整装置40の制御部45より、幅方向Yにおける位置ごとのレーザ変位センサ55での検出結果を取得した調整ボルト調整部91は、検出開始位置Pと検出終了位置Pとより、調整ボルト30の中心位置Cを算出する。調整ボルト調整部91は、各調整ボルト30におけるそれぞれの検出開始位置Pと検出終了位置Pとの間の位置を、それぞれの調整ボルト30の中心位置Cとして算出する。これにより、調整ボルト調整部91は、ダイ20の幅方向Yに並んで配置される複数の調整ボルト30のそれぞれの中心位置Cの幅方向Yにおける位置を算出し、制御装置90が有するRAM等の記憶部で記憶する。
【0097】
制御装置90の調整ボルト調整部91で、これらのように調整ボルト30の中心位置Cを算出して制御装置90の記憶部に記憶する際には、調整ボルト調整部91は、レーザ変位センサ55の位置と回転装置50が有するソケット53の幅方向Yにおける距離を加算、または減算して記憶する。つまり、調整ボルト調整部91で算出する幅方向Yにおける調整ボルト30の中心位置Cは、自動調整装置40で走行装置60によって回転装置50を幅方向Yに移動させ、回転装置50のソケット53を調整ボルト30に嵌合させる際に用いる位置になっている。即ち、自動調整装置40で回転装置50のソケット53を調整ボルト30に嵌合させる際には、ソケット53の幅方向Yにおける位置が、幅方向Yにおける調整ボルト30の中心位置Cと同じ位置になるように走行装置60で回転装置50を移動させる。
【0098】
このように、調整ボルト調整部91で算出する調整ボルト30の中心位置Cは、回転装置50のソケット53を調整ボルト30に嵌合させる際に用いるため、制御装置90は、レーザ変位センサ55での検出結果に基づいて算出した調整ボルト30の中心位置Cの位置を、回転装置50のソケット53に対応する位置に換算して記憶部で記憶する。
【0099】
ここで、レーザ変位センサ55から照射するレーザ光Lは、レーザ変位センサ55からの距離に応じて僅かに拡散することがある。一方で、レーザ光Lが照射される調整ボルト30は、ダイ20のスリット25の間隔を調整する際には、調整ボルト30の軸方向に移動するため、レーザ変位センサ55に対するボルト頭30aの距離が変化する。レーザ光Lによって調整ボルト30の有無を検出する際における検出開始位置Pと検出終了位置Pとは、レーザ光Lの拡散が小さく、レーザ光Lが照射する範囲が小さくなるに従って、高い精度で検出することができる。このため、レーザ変位センサ55は、軸方向に移動する調整ボルト30のボルト頭30aに対して照射されるレーザ光Lが、ボルト頭30aの軸方向への移動範囲に位置するボルト頭30aに対しては拡散が小さくなり、照射する範囲が小さくなる位置に配置されるのが好ましい。
【0100】
制御装置90の調整ボルト調整部91は、レーザ変位センサ55での検出結果に基づいて調整ボルト30の有無を検出するのみでなく、これらのように、調整ボルト30の中心位置Cの算出も行う。このため、レーザ変位センサ55は、照射するレーザ光Lが調整ボルト30の軸方向に略平行となり、レーザ光Lが調整ボルト30の中心位置Cを通ることのできる位置関係で配置されている。
【0101】
図9は、レーザ変位センサ55から照射するレーザ光Lが調整ボルト30の軸方向に対して傾斜する向きで配置される状態を示す説明図である。図10は、図9に示すレーザ変位センサ55で調整ボルト30の検出を行う際の調整ボルト30に対する検出位置を示す説明図である。図10は、図9に示す調整ボルト30を、ボルト頭30aが位置する側から調整ボルト30の軸方向に見た状態を示している。図9に示すように、レーザ変位センサ55から照射されるレーザ光Lが、調整ボルト30の軸方向に対して傾斜している場合、レーザ変位センサ55から照射されるレーザ光Lは、調整ボルト30に対して中心位置Cから離れた位置に当たることがある。
【0102】
つまり、調整ボルト30は、ダイ20のスリット25の間隔を調整する際に回転させることにより、軸方向に移動する。このため、レーザ変位センサ55から照射されるレーザ光Lが、調整ボルト30の軸方向に対して傾斜している場合、ボルト頭30aにおけるレーザ変位センサ55に対向する面における、幅方向Yに直交する方向における位置が、レーザ変位センサ55からの調整ボルト30の距離に応じて変化する。これにより、調整ボルト30のボルト頭30aに対してレーザ光Lが当たる位置によっては、調整ボルト30の有無の検出に用いられるレーザ光Lは、ボルト頭30aの実際の中心位置Cを通らないことがある。この場合、調整ボルト30の中心位置Cを高い精度で算出し難くなる。
【0103】
例えば、図10においてレーザ光経路Laとして示すように、幅方向Yに移動しながらレーザ変位センサ55から照射されるレーザ光Lが、調整ボルト30の中心位置Cからずれた位置を通る場合、レーザ光Lによる検出開始位置Pと検出終了位置Pとより算出される算出中心Caは、幅方向Yにおける位置が調整ボルト30の実際の中心位置Cからずれることがある。即ち、調整ボルト30のボルト頭30aは、実施形態1では正六角形の形状で形成されているため、調整ボルト30の回転方向における向きによって、レーザ変位センサ55に対向するボルト頭30aの正六角形の向きも変わる。このため、調整ボルト30の回転方向における向きによって、ボルト頭30aの正六角形に対する、レーザ光Lによる検出開始位置Pと検出終了位置Pとの位置が変化する。
【0104】
その際に、図10のレーザ光経路Laで示すように、レーザ変位センサ55から照射されるレーザ光Lが、調整ボルト30の中心位置Cからずれた位置を通る場合は、検出開始位置Pと検出終了位置Pとは、調整ボルト30の実際の中心位置Cからの幅方向Yにおける距離が、互いに異なることがある。このため、検出開始位置Pと検出終了位置Pとより算出される算出中心Caの幅方向Yにおける位置が、調整ボルト30の実際の中心位置Cの幅方向Yにおける位置とは異なる位置になることがあり、調整ボルト30の中心位置Cの幅方向Yにおける位置を算出できない場合がある。このような場合は、レーザ光Lが調整ボルト30の中心を捉えるようにレーザ変位センサ55を設置すればよい。具体的には、例えば、図11及び図12において説明する態様等が挙げられる。
【0105】
図11は、レーザ変位センサ55から照射するレーザ光Lが調整ボルト30の軸方向に対して平行な向きで配置される状態を示す説明図である。図12は、図11に示すレーザ変位センサ55で調整ボルト30の検出を行う際の調整ボルト30に対する検出位置を示す説明図である。図12は、図11に示す調整ボルト30を、ボルト頭30aが位置する側から調整ボルト30の軸方向に見た状態を示している。図11に示すように、レーザ変位センサ55から照射されるレーザ光Lが、調整ボルト30の軸方向に対して平行となり、且つ、調整ボルト30を軸方向に見た場合における中心位置Cをレーザ光Lが通ることができる場合、レーザ変位センサ55から照射されるレーザ光Lは、調整ボルト30の軸方向における位置や回転角度に関わらず、中心位置Cを通ることができる。これにより、調整ボルト30の中心位置Cを高い精度で算出することができる。
【0106】
つまり、レーザ変位センサ55から照射されるレーザ光Lが、調整ボルト30の軸方向に対して平行となる場合は、幅方向Yに移動しながらレーザ変位センサ55から照射されるレーザ光Lは、調整ボルト30の軸方向における位置に関わらず調整ボルト30の中心位置Cを通ることができる。
【0107】
また、幅方向Yに移動しながらレーザ変位センサ55から照射されるレーザ光Lが、図12においてレーザ光経路Laで示すように調整ボルト30の中心位置Cを通る場合、レーザ光Lによる検出開始位置Pと検出終了位置Pとは、調整ボルト30の中心位置Cからの幅方向Yにおける距離が、互いに同じ大きさになる。即ち、検出開始位置Pと検出終了位置Pとは、ボルト頭30aの正六角形の向きに関わらず、調整ボルト30の中心位置Cからの幅方向Yにおける距離が互いに同じ大きさになる。
【0108】
このため、検出開始位置Pと検出終了位置Pとより算出される算出中心Caの幅方向Yにおける位置は、ボルト頭30aの形状である正六角形の回転方向における向きに関わらず、調整ボルト30の中心位置Cの幅方向Yにおける位置と同じ位置で算出される。従って、制御装置90は、各調整ボルト30の中心位置Cの幅方向Yにおける位置を、レーザ変位センサ55から照射するレーザ光Lによる検出開始位置Pと検出終了位置Pとに基づいて算出することができる。
【0109】
ここで、制御装置90の調整ボルト調整部91によって算出する調整ボルト30の幅方向Yにおける位置は、走行装置60によって幅方向Yに移動するレーザ変位センサ55による調整ボルト30の有無の検出結果と、走行装置60でレーザ変位センサ55を移動させる際における幅方向Yの位置とに基づいて算出する。レーザ変位センサ55と制御装置90との間や、自動調整装置40が有する制御部45と制御装置90との間では、それぞれ有線または無線の通信によって情報が伝達されるが、これらの通信では僅かに遅れが発生する。
【0110】
図13は、通信ラグDによる情報のずれについての説明図である。図13の(a)は、図6図7に示すグラフと同様に、レーザ変位センサ55が幅方向Yに移動しながら調整ボルト30の有無の検知を行う際における検出結果のグラフになっている。図13の(b)は、自動調整装置40の制御部45がレーザ変位センサ55での検出結果を取得した時点でのレーザ変位センサ55の幅方向Yにおける位置に基づいて、制御装置90で取得した調整ボルト30の幅方向Yにおける位置についてのグラフになっている。
【0111】
つまり、レーザ変位センサ55による調整ボルト30の有無の検出結果が制御装置90を介して自動調整装置40の制御部45に伝達されて、制御部45で取得する時刻は、通信の遅れによって、レーザ変位センサ55が調整ボルト30の有無を検知した時間よりも遅くなる。一方で、自動調整装置40の制御部45は、走行装置60によってレーザ変位センサ55を幅方向Yに移動させながら検知を行う。このため、レーザ変位センサ55による調整ボルト30の有無の検出結果が制御部45に伝達された時点でのレーザ変位センサ55の位置は、レーザ変位センサ55が調整ボルト30の有無の検知した時点における位置に対して、幅方向Yに移動した位置となる。
【0112】
従って、レーザ変位センサ55の幅方向Yにおける位置とレーザ変位センサ55での検出結果とに基づいて制御装置90の調整ボルト調整部91で取得する、複数の調整ボルト30の幅方向Yにおける位置は、レーザ変位センサ55が調整ボルト30の有無を検知した際における位置とは異なる位置になる。即ち、制御装置90で取得する調整ボルト30の幅方向Yにおける位置は、レーザ変位センサ55と制御装置90との間の通信の遅れや、自動調整装置40の制御部45と制御装置90との間の通信の遅れ、さらに、制御装置90や制御部45での処理時間による通信ラグDにより、レーザ変位センサ55が調整ボルト30の有無を検知した位置からは、僅かにずれた位置になる。
【0113】
実施形態1に係る厚み調整装置100では、通信ラグDに起因する、制御装置90の調整ボルト調整部91で取得する調整ボルト30の位置のずれが、回転装置50のソケット53を調整ボルト30に嵌合させる際に許容される、回転装置50の移動方向におけるソケット53と調整ボルト30とのずれの範囲内に収まるように制御を行う。つまり、厚み調整装置100は、レーザ変位センサ55の移動速度と、通信ラグDとを調整することにより、調整ボルト30にソケット53を嵌合させることが可能な、ソケット53と調整ボルト30との幅方向Yにおけるずれの範囲内に、制御装置90で取得する調整ボルト30の位置のずれが収まるように制御を行う。
【0114】
この場合における通信ラグDは、レーザ変位センサ55で調整ボルト30の有無を検出してから、調整ボルト30の有無の検出結果に基づいて調整ボルト30の幅方向Yにおける位置を制御装置90の調整ボルト調整部91で算出して取得するまでに要する時間であるボルト位置取得時間になっている。ボルト位置取得時間は、レーザ変位センサ55と制御装置90との間の通信時間、及び自動調整装置40の制御部45と制御装置90との間の通信時間と、制御装置90や制御部45における情報の処理時間とを合わせた時間になっている。
【0115】
詳しくは、レーザ変位センサ55の移動速度及びボルト位置取得時間を、制御装置90で算出した調整ボルト30の位置と、実際の調整ボルト30の位置とのずれが、ソケット53が調整ボルト30に嵌合する際に許容されるソケット53と調整ボルト30との間の許容隙間の範囲内となるような移動速度及びボルト位置取得時間にする。即ち、回転装置50のソケット53が、調整ボルト30のボルト頭30aに嵌合した際におけるソケット53とボルト頭30aとの間には隙間があるため、回転装置50と調整ボルト30とは、ソケット53とボルト頭30aとの間の隙間の分、双方のずれを許容することができる。
【0116】
このため、厚み調整装置100は、制御装置90の調整ボルト調整部91で算出した調整ボルト30の位置と、実際の調整ボルト30の位置とのずれが、ソケット53が調整ボルト30に嵌合する際に許容されるソケット53と調整ボルト30との間の許容隙間に収まるように、レーザ変位センサ55の移動速度と、制御装置90で調整ボルト30の位置を取得するまでのボルト位置取得時間とを調整する。つまり、制御装置90の調整ボルト調整部91で算出した調整ボルト30の位置と、実際の調整ボルト30の位置とのずれが、ソケット53とボルト頭30aとの間の隙間によって嵌合可能なソケット53と調整ボルト30との間の幅方向Yにおけるずれの範囲内に収まるように、レーザ変位センサ55の移動速度を遅めにし、レーザ変位センサ55と制御装置90との間や制御部45と制御装置90との間での通信時間を短くする。
【0117】
図14は、回転装置50のソケット53に形成される嵌合孔53aと調整ボルト30のボルト頭30aとの隙間についての説明図である。実施形態1では、回転装置50のソケット53はソケット状に形成されているため、ソケット53には、略正六角形の形状で形成されるボルト頭30aに嵌る嵌合孔53aが、略正六角形の形状で形成されている。ソケット53の嵌合孔53aは、ボルト頭30aよりも大きさが僅かに大きい略正六角形の形状で形成されている。このため、ソケット53は、嵌合孔53aをボルト頭30aに嵌めることにより、相対回転がほぼ不可となってボルト頭30aに嵌合することができる。これにより、回転装置50は、嵌合孔53aをボルト頭30aに嵌合させた状態でソケット53を回転させることにより、調整ボルト30を回転させることができる。
【0118】
ソケット53の嵌合孔53aと、ボルト頭30aとの間の隙間は、具体的には、図14に示すように、嵌合孔53aとボルト頭30aとのそれぞれの形状である正六角形が、回転方向において互いに1°ずれている状態で嵌り合うことができる程度の大きさになっている。ソケット53の嵌合孔53aは、ボルト頭30aに対して、このように回転方向において正六角形の向きが僅かにずれた状態で嵌ることができる隙間がボルト頭30aとの間に形成される大きさで、ボルト頭30aに対して僅かに大きくなっている。
【0119】
これにより、ソケット53の嵌合孔53aは、ソケット53の移動方向における位置が、ボルト頭30aに対して僅かにずれている状態でも、嵌合孔53aとボルト頭30aとの回転方向における正六角形の向きが同じ向きである場合には、嵌合孔53aはボルト頭30aに嵌ることが可能になっている。このように、嵌合孔53aとボルト頭30aとの回転方向における正六角形の向きが同じ向きである状態における嵌合孔53aとボルト頭30aと間の隙間によりソケット53が調整ボルト30に対して嵌合可能な、ソケット53の移動方向におけるソケット53と調整ボルト30との最大ずれ量が、許容隙間になっている。
【0120】
レーザ変位センサ55の移動速度と、ボルト位置取得時間とは、これらのように嵌合時に隙間があるソケット53の嵌合孔53aと調整ボルト30のボルト頭30aとの間の許容隙間の範囲内に、制御装置90の調整ボルト調整部91で算出した調整ボルト30の位置と、実際の調整ボルト30の位置とのずれが収まるように設定される。実施形態1では、例えば、レーザ変位センサ55の移動速度は20mm/secに設定され、レーザ変位センサ55で調整ボルト30の有無を検出してから制御装置90で調整ボルト30の位置を算出するまでの時間であるボルト位置取得時間は、1msに設定されている。
【0121】
実施形態1では、これらのようにレーザ変位センサ55を幅方向Yに移動させながら検出する調整ボルト30の有無に基づいて算出する、ダイ20に配置される複数の調整ボルト30が並ぶ方向における調整ボルト30ごとの位置の情報一式を、ボルト位置のレシピ、と称する。厚み調整装置100は、押出成形装置1によって樹脂フィルムFの製造を行う前に、レーザ変位センサ55での検出結果に基づいて調整ボルト30ごとの位置を制御装置90の調整ボルト調整部91により算出し、ボルト位置のレシピを作成する。ボルト位置のレシピは、例えば、回転装置50移動範囲における基準位置からの調整ボルト30の幅方向Yにおける位置を、調整ボルト30ごとに示す情報になっている。作成したボルト位置のレシピは、制御装置90の記憶部で記憶する。
【0122】
また、制御装置90は、自動調整装置40の回転装置50によって調整ボルト30を回転させた際には、回転装置アクチュエータ51が軸部52を回転させたり伸縮させたりした際における軸部52の回転角及び回転量と、軸部52の伸縮量とを、調整ボルト30ごとに取得することが可能になっている。つまり、回転装置アクチュエータ51には、軸部52の回転量や伸縮量を検出するセンサが設けられているため、回転装置50のソケット53を調整ボルト30に嵌合させて調整ボルト30を回転させた際には、最終的な軸部52の回転角及び回転量と軸部52の伸縮量とを、制御装置90の調整ボルト調整部91で調整ボルト30ごとに取得する。
【0123】
調整ボルト調整部91で調整ボルト30ごとに取得した軸部52の回転角及び回転量と軸部52の伸縮量とは、調整ボルト30の回転情報として、制御装置90の記憶部で記憶する。これにより、制御装置90は、自動調整装置40で調整ボルト30を回転させてスリット25の間隔を調整した後の調整ボルト30の回転情報や、現在の調整ボルト30の回転情報を制御装置90の記憶部で記憶する。
【0124】
また、実施形態1に係る厚み調整装置100は、ダイ20のスリット25を撮影し、撮影したスリット25の画像に基づいてスリット25の間隔を調整することが可能になっている。スリット25の撮影は、押出成形装置1によって樹脂フィルムFの製造を行う前に行う。
【0125】
図15は、厚み調整装置100に撮影装置80を取り付けた状態を示す模式図である。なお、図15は、撮影装置80に関する模式図であるため、調整ボルト30とヒートボルト70の図示は省略している。スリット25の撮影は、押出成形装置1によって樹脂フィルムFの製造を行う前に、図15に示すように撮影装置80を厚み調整装置100に取り付けることにより行う。撮影装置80は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)カメラが用いられ、撮影した画像データを電気信号によって制御装置90に送信することができる。撮影装置80から制御装置90への送信は、有線で行われてもよく、無線で行われてもよい。撮影装置80は、自動調整装置40が有する走行装置60に、連結部材85を用いて連結することにより厚み調整装置100に取り付ける。
【0126】
詳しくは、撮影装置80は、ブラケット86により支持され、ブラケット86は、連結部材85によって、走行装置60が有する回転装置支持部62に着脱自在に連結される。連結部材85は、走行装置60が有する回転装置支持部62に一端が連結され、他端がブラケット86に連結される。連結部材85における回転装置支持部62に連結される側の端部は、走行装置60が有する回転装置支持部62に対して、ボルト(図示省略)との締結部材により着脱自在に連結される。これにより、撮影装置80は、連結部材85によって走行装置60に着脱自在に連結される。
【0127】
連結部材85によって撮影装置80を走行装置60に連結した際には、撮影装置80は、ダイ20のスリット25に対して上下方向Zにおいて対向する向きでスリット25を撮影することのできる位置に配置される。つまり、連結部材85は、回転装置支持部62から下側に向けて延びて回転装置支持部62に取り付けられ、連結部材85によって走行装置60に連結される撮影装置80は、上下方向Zにおけるダイ20の下側からスリット25を撮影することのできる位置に配置される。
【0128】
また、撮影装置80を支持するブラケット86には、照明装置81が取り付けられている。照明装置81は、例えば、LED(Light Emitting Diode)等の光源を有しており、光源で発した光を、撮影装置80による撮影対象に対して照射することが可能になっている。つまり、照明装置81は、撮影装置80によって撮影をするダイ20のスリット25に対して、光を照射することが可能になっている。
【0129】
撮影装置80と照明装置81を支持するブラケット86は、連結部材85によって走行装置60の回転装置支持部62に連結されている。このため、走行装置60が、回転装置支持部62を走行レール63(図3参照)に沿って幅方向Yに移動させた際には、撮影装置80や照明装置81も、回転装置支持部62と一体となって幅方向Yに移動する。つまり、走行装置60は、回転装置支持部62に撮影装置80と照明装置81が連結部材85によって連結された状態では、回転装置50を支持する回転装置支持部62を走行レール63に沿って移動させることにより、撮影装置80と照明装置81を、回転装置50と共に幅方向Yに移動させることができる。
【0130】
ダイ20に形成されるスリット25を撮影する際には、樹脂フィルムFの製造を行う前に撮影装置80や照明装置81を連結部材85によって、走行装置60が有する回転装置支持部62に連結する。連結部材85によって撮影装置80を走行装置60に連結したら、走行装置60に連結された撮影装置80によって、ダイ20における、樹脂フィルムFを吐出する前のスリット25を撮影装置80により撮影する。
【0131】
走行装置60に連結された撮影装置80によってスリット25を撮影する際には、照明装置81を点灯させて照明装置81からの光をスリット25に照射し、連結部材85が連結される回転装置支持部62を幅方向Yに移動させながら複数回撮影することにより、幅方向Yにおけるスリット25の全域を撮影する。つまり、回転装置支持部62を、幅方向Yにおける回転装置支持部62の移動範囲の一方の端部から他方の端部に向かって幅方向Yに移動させ、複数回に亘って移動を停止して、移動を停止したタイミングで撮影装置80によって撮影を行うことにより、撮影装置80でスリット25を複数回撮影する。
【0132】
その際に、撮影装置80は、幅方向Yにおけるスリット25の一端側から他端側にかけて、いずれの位置も少なくとも1つの画像データに含まれるように、スリット25を撮影する。これにより、撮影装置80は、幅方向Yにおけるスリット25の一端側から他端側にかけた全範囲でスリット25を撮影し、撮影装置80で撮影した画像データは、制御装置90が有する画像処理部93で取得する。
【0133】
撮影装置80で撮影したスリット25の画像データを取得した画像処理部93は、スリット25の画像データに対して、一対のリップ部23同士の間を通る直線状の基準線Rを設定する。図16は、スリット25の画像データに設定する基準線Rの概念図である。なお、図16では、調整ボルト30とヒートボルト70は、図4と同様にダイ20の幅方向Yにおける両端付近に配置されるもの以外は図示を省略しているが、実際には調整ボルト30とヒートボルト70は、それぞれダイ20の幅方向Yにおける一端側から他端側に亘って一定の間隔で複数が配置されている(例えば、図3参照)。
【0134】
画像処理部93は、撮影装置80によって撮影したスリット25の画像データに対して、一対のリップ部23同士の間を通る直線状の基準線Rを設定する。詳しくは、画像処理部93は、まず、撮影装置80で撮影したスリット25の複数の画像データを結合して、スリット25を示す1つの画像データにする。
【0135】
画像処理部93は、このように結合したスリット25の画像データに対して、スリット25の大部分の位置で一対のリップ部23同士の中間を通り、幅方向Yにおけるスリット25の一方の端部から他方の端部にかけて直線状に延びる基準線Rを設定する。基準線Rは、例えば、幅方向Yにおけるスリット25の一方の端部の位置での調整ボルト側リップ23aとヒートボルト側リップ23bとの中間の位置と、幅方向Yにおけるスリット25の他方の端部の位置での調整ボルト側リップ23aとヒートボルト側リップ23bとの中間の位置とを結ぶ直線として設定される。
【0136】
即ち、スリット25の画像データに対して設定される基準線Rは、スリット25の全範囲でリップ部23同士の中間を通ってスリット25に対して平行に設定されるものではなく、幅方向Yにおけるスリット25の両端にかけて直線状に延びる線になっている。基準線Rは、例えば、画像処理ソフトを用いて、スリット25の画像データに対して設定される。
【0137】
図17は、図16のB部詳細図である。スリット25の画像データに対して基準線Rを設定したら、画像処理部93は、画像データに基づいて基準線Rからのリップ部23の距離Gを、リップ部23の延在方向に亘って測定する。つまり、画像処理部93は、基準線Rから調整ボルト側リップ23aまでの距離Gaと、基準線Rからヒートボルト側リップ23bまでの距離Gbとを、それぞれリップ部23の延在方向における全範囲に亘って測定する。基準線Rから調整ボルト側リップ23aまでの距離Gaと、基準線Rからヒートボルト側リップ23bまでの距離Gbとの距離は、幅方向Yにおける、調整ボルト30やヒートボルト70が配置されている位置ごとに測定する。
【0138】
画像処理部93で、基準線Rからのリップ部23の距離Gを測定したら、調整ボルト30からリップ部23に付与する押圧力と、ヒートボルト70からリップ部23に付与する押圧力とを調整することにより、基準線Rからのリップ部23の距離Gをリップ部23の延在方向に亘って一定の距離にする。
【0139】
調整ボルト30からリップ部23に付与する押圧力の調整は、自動調整装置40を動作させることにより行う。即ち、基準線Rから調整ボルト側リップ23aまでの距離Gaは、幅方向Yにおける調整ボルト30の位置ごとに測定されるため、調整ボルト30による押圧力の調整は、各調整ボルト30が配置される位置の基準線Rから調整ボルト側リップ23aまでの距離Gaに基づいて、調整ボルト30ごとに行う。
【0140】
例えば、基準線Rから調整ボルト側リップ23aまでの距離Gaが小さい位置に配置される調整ボルト30は、調整ボルト30から調整ボルト側リップ23aに付与する押圧力を小さくし、基準線Rから調整ボルト側リップ23aまでの距離Gaが大きい位置に配置される調整ボルト30は、調整ボルト30から調整ボルト側リップ23aに付与する押圧力を大きくする。調整ボルト30から調整ボルト側リップ23aに付与する押圧力をこのように調整することにより、調整ボルト側リップ23aが、基準線Rに対して平行になるように調整する。
【0141】
また、ヒートボルト70からリップ部23に付与する押圧力の調整は、押出成形装置1の操作を行う作業者が工具を使って、手動でヒートボルト70を回転させることにより行う。即ち、基準線Rからヒートボルト側リップ23bまでの距離Gbは、幅方向Yにおけるヒートボルト70の位置ごとに測定されるため、ヒートボルト70による押圧力の調整は、各ヒートボルト70が配置される位置の基準線Rからヒートボルト側リップ23bまでの距離Gbに基づいて、ヒートボルト70ごとに行う。
【0142】
例えば、基準線Rからヒートボルト側リップ23bまでの距離Gbが小さい位置に配置されるヒートボルト70は、ヒートボルト70からヒートボルト側リップ23bに付与する押圧力を小さくし、基準線Rからヒートボルト側リップ23bまでの距離Gbが大きい位置に配置されるヒートボルト70は、ヒートボルト70からヒートボルト側リップ23bに付与する押圧力を大きくする。ヒートボルト70からヒートボルト側リップ23bに付与する押圧力をこのように調整することにより、ヒートボルト側リップ23bが、基準線Rに対して平行になるように調整する。
【0143】
実施形態1に係る厚み調整装置100は、一対のリップ部23のうち、調整ボルト側リップ23aに対しては調整ボルト30によって押圧力を付与することができ、ヒートボルト側リップ23bに対してはヒートボルト70によって押圧力を付与することが可能になっている。このため、調整ボルト側リップ23aとヒートボルト側リップ23bとは、調整ボルト30やヒートボルト70からの押圧力により、それぞれ変形することが可能になっている。従って、調整ボルト30やヒートボルト70から付与される押圧力によっては、スリット25には、図16に示すようなうねりUが発生することが考えられる。
【0144】
実施形態1に係る厚み調整装置100では、スリット25の画像データに直線状の基準線Rを設定し、基準線Rからのリップ部23の距離Gが一定になるように調整ボルト30やヒートボルト70の押圧力を調整することにより、リップ部23同士の間隔が一定となる直線状のスリット25にすることができる。実施形態1に係る厚み調整装置100では、押出成形装置1によって樹脂フィルムFの製造を行う前に、このように撮影装置80によってスリット25の撮影を行い、撮影した画像データに基づいてリップ部23同士の間隔を一定にしてスリット25を直線状に調整した後、樹脂フィルムFの製造を開始する。
【0145】
次に、実施形態1に係る押出成形装置1の動作と、樹脂フィルムFの厚み調整方法について説明する。押出成形装置1で樹脂フィルムFの製造を行う際には、樹脂フィルムFの材料であるペレット状等の樹脂が押出機11に投入され、押出機11内で樹脂を溶融する。押出機11内で溶融された樹脂は、ダイ20に向けて押し出される。
【0146】
押出機11から押し出された溶融樹脂は、ダイ20の上面に形成される投入部21からダイ20に投入される。ダイ20に投入された溶融樹脂は、導入流路22の縦流路22aを通って横流路22bに流れ、横流路22bでダイ20の幅方向Yに広がって流れる。横流路22bに流れた溶融樹脂は、横流路22bに接続されるスリット25に流れ、スリット25で薄膜状になってスリット25からダイ20の下側に向けて吐出される。即ち、溶融樹脂は、ダイ20に形成されるスリット25から、薄膜状の樹脂フィルムFの形態で吐出される。
【0147】
スリット25から吐出された、固化前の樹脂フィルムFは、ダイ20の下側に配置されるキャストロール13に接触し、キャストロール13で搬送されながら冷却される。これにより、固化前で溶融状態だった樹脂フィルムFは固化する。キャストロール13で固化した搬送ロール14で樹脂フィルムFの搬送方向における下流側に搬送される。
【0148】
このように搬送される樹脂フィルムFの搬送経路には、厚み計15が配置されており、厚み計15は、ダイ20のスリット25から吐出されてキャストロール13で固化した樹脂フィルムFの厚みを測定する。その際に厚み計15は、樹脂フィルムFの厚みを、樹脂フィルムFの幅方向における複数の位置で測定する。樹脂フィルムFの厚みを測定した厚み計15は、測定した樹脂フィルムFの厚みを制御装置90に出力する。制御装置90は、厚み計15で測定した厚みを、樹脂フィルムFの幅方向における位置ごとに記憶する。
【0149】
厚み計15によって厚みが測定された樹脂フィルムFは、搬送ロール14で搬送されることにより巻取機16の位置まで搬送され、巻取機16により巻き取られる。
【0150】
押出成形装置1で、樹脂フィルムFの製造を行う際には、これらのように厚み計15により樹脂フィルムFの厚みを測定しながら行うが、厚み調整装置100では、測定した厚みに基づいて、ダイ20に形成されるスリット25の間隔を調整する。つまり、厚み調整装置100は、ダイ20に配置される複数の調整ボルト30や複数のヒートボルト70によってリップ部23に対して付与する押圧力を、測定した樹脂フィルムFの厚みに基づいて調整することにより、スリット25の間隔を調整する。調整ボルト30によるスリット25の間隔の調整は、押出成形装置1で樹脂フィルムFの製造を行う前に調整ボルト30ごとの位置を予め算出し、予め作成したボルト位置のレシピを用いて行う。
【0151】
厚み調整装置100によるスリット25の間隔を調整は、厚み計15により測定した、樹脂フィルムFの幅方向における位置ごとの厚みに基づいて、スリット25の幅方向Yにおける位置ごとに調整を行う。つまり、厚み調整装置100は、調整ボルト30によってスリット25の間隔を調整する際には、制御装置90の調整ボルト調整部91で算出した調整ボルト30ごとの位置に基づいて、回転装置50が有するソケット53を調整ボルト30に嵌合させて調整ボルト30を回転させることにより、スリット25の間隔の調整を行う。また、厚み調整装置100は、ヒートボルト70によってスリット25の間隔を調整する際には、制御装置90の記憶部に記憶されている、幅方向Yにおけるヒートボルト70の配置位置の情報を用いて、制御装置90のヒートボルト調整部92でヒートボルト制御装置95を介してヒートボルト70の温度制御を行ことにより、スリット25の間隔の調整を行う。
【0152】
例えば、調整ボルト30によるスリット25の間隔の調整について説明すると、樹脂フィルムFの幅方向におけるある位置の厚みが、所定の厚みよりも厚い場合には、スリット25の幅方向Yにおいて、当該厚い部分に対応する位置に配置される調整ボルト30による、ダイ20の調整ボルト側リップ23aに対する押圧力を大きくする。また、ヒートボルト70によってスリット25の間隔の調整する場合も同様に、樹脂フィルムFの幅方向におけるある位置の厚みが、所定の厚みよりも厚い場合には、厚い部分に対応する位置に配置されるヒートボルト70による、ダイ20のヒートボルト側リップ23bに対する押圧力を大きくする。これらにより、樹脂フィルムFの幅方向において、厚みが所定の厚みよりも厚くなっている部分に対応する部分のスリット25の間隔を狭くし、樹脂フィルムFにおける厚みが厚くなっている部分の厚みを薄くする。
【0153】
反対に、樹脂フィルムFの幅方向におけるある位置の厚みが、所定の厚みよりも薄い場合には、スリット25の幅方向Yにおいて、当該薄い部分に対応する位置に配置される調整ボルト30による、ダイ20の調整ボルト側リップ23aに対する押圧力を小さくする、または、薄い部分に対応する位置に配置されるヒートボルト70による、ダイ20のヒートボルト側リップ23bに対する押圧力を小さくする。これらにより、樹脂フィルムFの幅方向において、厚みが所定の厚みよりも薄くなっている部分に対応する部分のスリット25の間隔を広くし、樹脂フィルムFにおける厚みが薄くなっている部分の厚みを厚くする。
【0154】
調整ボルト側リップ23aに対する調整ボルト30の押圧力を調整することによるスリット25の間隔の調整は、自動調整装置40により行う。自動調整装置40は、制御装置90が有する調整ボルト調整部91により制御をする。制御装置90の調整ボルト調整部91は、自動調整装置40の制御部45を介して走行装置60を制御することにより走行装置60を作動させ、回転装置50を幅方向Yに移動させる。これにより、回転装置50のソケット53が、押圧力の調整を行う調整ボルト30の幅方向Yにおける位置に位置するように、回転装置50を幅方向Yに移動させる。
【0155】
走行装置60による回転装置50の幅方向Yへの移動は、予め作成したボルト位置のレシピを用いて行う。ボルト位置のレシピは、レーザ変位センサ55での検出結果に基づいて調整ボルト30ごとの幅方向Yにおける位置を高い精度で算出したものになっているため、制御装置90の調整ボルト調整部91は、ボルト位置のレシピを用いて走行装置60を制御することにより、回転装置50を高い精度で、目的とする調整ボルト30の位置に移動させることができる。
【0156】
回転装置50を、幅方向Yにおいて目的とする調整ボルト30が配置されている位置まで移動させたら、制御装置90の調整ボルト調整部91は、回転装置50の回転装置アクチュエータ51を制御して軸部52を伸ばし、ソケット53を調整ボルト30のボルト頭30aに嵌合させる。
【0157】
回転装置50のソケット53をボルト頭30aに嵌合させたら、制御装置90は、回転装置アクチュエータ51を動作させることにより軸部52を回転させ、ソケット53が嵌合する調整ボルト30を回転させる。これにより、ダイ20の調整ボルト側リップ23aに対する当該調整ボルト30による押圧力を調整し、幅方向Yにおいて当該調整ボルト30が配置されている位置のスリット25の間隔を調整する。
【0158】
ここで、回転装置50が有するソケット53に形成される嵌合孔53aと、調整ボルト30のボルト頭30aとは、いずれも略正六角形の形状で形成されているため、ソケット53とボルト頭30aとで、正六角形の向きが回転方向において互いに異なっている場合、ソケット53をボルト頭30aに嵌合させることができなくなる。即ち、ソケット53とボルト頭30aとは、回転方向における位相の差が、嵌合孔53aとボルト頭30aとの隙間により許容できる以上に大きい場合、双方を嵌合させることができなくなる。この場合、制御装置90は、ボルト頭30aに対してソケット53が嵌合するまで、回転装置50の軸部52を少しずつ回転させてソケット53を回転させることを繰り返す。
【0159】
つまり、制御装置90の調整ボルト調整部91は、回転装置50の軸部52を伸ばしてソケット53をボルト頭30aに嵌合させる動作を回転装置アクチュエータ51に行わせた際に、ソケット53がボルト頭30aに当接することにより軸部52を一定以上に伸ばすことが出来ない場合、ソケット53とボルト頭30aとで回転方向に位相が異なっている判断する。ソケット53とボルト頭30aとで回転方向に位相が異なっていると判断した場合、調整ボルト調整部91は、軸部52を一旦縮めて軸部52を僅かに回転させ、再度軸部52を伸ばしてソケット53をボルト頭30aに嵌合させる動作を行わせる。
【0160】
調整ボルト調整部91は、ソケット53とボルト頭30aとで回転方向に位相が異なっていると判断した場合は、例えば、軸部52を一旦縮めて軸部52を約1°回転させて、ソケット53をボルト頭30aに嵌合させる動作を再度行わせる。調整ボルト調整部91は、ソケット53がボルト頭30aに嵌合するまで、回転装置50に対してこの動作を繰り返し行わせる。
【0161】
制御装置90が有する調整ボルト調整部91は、スリット25の間隔を調整する際には、算出した調整ボルト30ごとの位置に基づいて、これらのように回転装置50が有するソケット53を調整ボルト30に嵌合させて調整ボルト30を回転させることにより、スリット25の間隔の調整を行う。即ち、調整ボルト調整部91は、厚み計15による樹脂フィルムFの検出結果に基づいて、自動調整装置40に対してこれらの動作を行わせることにより、ダイ20に配置される複数の調整ボルト30のうち所望の調整ボルト30を回転させて、樹脂フィルムFの厚みを調整する。
【0162】
調整ボルト30による樹脂フィルムFの厚みの調整は、このように調整ボルト30を回転させることによって調整ボルト側リップ23aに対する押圧力を調整し、スリット25の間隔の調整することにより行うため、厚みを調整する際における調整幅が大きくなっている。このため、調整ボルト30による樹脂フィルムFの厚みの調整は、ヒートボルト70による樹脂フィルムFの厚みの調整と比較した場合に相対的に大まかな調整を行う、厚みの粗調整にも用いられる。
【0163】
ヒートボルト側リップ23bに対するヒートボルト70の押圧力を調整することによるスリット25の間隔の調整は、ヒートボルト制御装置95により行う。ヒートボルト制御装置95は、制御装置90が有するヒートボルト調整部92により制御をする。制御装置90のヒートボルト調整部92は、ヒートボルト制御装置95を制御することを介して、任意のヒートボルト70が有するヒータ75の温度の調整を行う。
【0164】
つまり、制御装置90のヒートボルト調整部92は、ヒートボルト制御装置95を制御することによってヒータ75に供給する電力を調整し、ヒータ75の温度を調整する。内側にヒータ75が設けられるヒートボルト70は、ヒータ75の温度に応じてヒートボルト70自体の温度が変化することより、ヒートボルト70の全長が温度に応じて伸縮をする。これにより、ダイ20のヒートボルト側リップ23bに対する任意のヒートボルト70による押圧力を調整し、幅方向Yにおいて任意のヒートボルト70が配置されている位置のスリット25の間隔を調整する。即ち、ヒートボルト調整部92は、厚み計15による樹脂フィルムFの検出結果に基づいてヒートボルト制御装置95を制御することにより、ダイ20に配置される複数のヒートボルト70のうち所望のヒートボルト70の温度を変化させて、樹脂フィルムFの厚みを調整する。
【0165】
ヒートボルト70による樹脂フィルムFの厚みの調整は、このようにヒートボルト70の温度を制御することによってヒートボルト側リップ23bに対する押圧力を調整し、スリット25の間隔の調整することにより行うため、厚みを調整する際における調整幅が、調整ボルト30による厚みの調整幅と比較して小さくなっている。このため、ヒートボルト70による樹脂フィルムFの厚みの調整は、調整ボルト30による樹脂フィルムFの厚みの調整と比較した場合に相対的に細かな調整を行う、厚みの微調整にも用いられる。
【0166】
次に、樹脂フィルムFの製造時における調整ボルト30とヒートボルト70とを用いた樹脂フィルムFの厚み調整の制御について説明する。図18は、樹脂フィルムFの製造時における厚み調整装置100による樹脂フィルムFの厚み調整方法の流れを示すフロー図である。押出成形装置1による樹脂フィルムFを製造時には、樹脂フィルムFの製造を順次行いながら樹脂フィルムFの厚みを測定する(ステップST11)。樹脂フィルムFの厚みは、樹脂フィルムFの搬送方向におけるキャストロール13の下流側の位置で、厚み計15によって測定する。厚み計15は、樹脂フィルムFの厚みを幅方向Yにおける複数の位置で測定し、測定結果を制御装置90に出力する。
【0167】
樹脂フィルムFの厚みを測定したら、測定した樹脂フィルムFの厚みは、微調整での許容範囲内であるか否かを判定する(ステップST12)。つまり、厚み計15によって測定した樹脂フィルムFの厚みは、ヒートボルト70での微調整によって厚みの調整を行う際に許容される範囲内であるか否かを、制御装置90が有するヒートボルト調整部92で判定する。微調整によって厚みの調整を行う際における許容範囲は、目的とする樹脂フィルムFの厚み対して予め設定され、制御装置90の記憶部に記憶されている。つまり、微調整によって厚みの調整を行う際における許容範囲は、目的とする樹脂フィルムFの基準となる厚みや樹脂フィルムFの材料等に応じてそれぞれ設定され、制御装置90の記憶部に記憶されている。
【0168】
ヒートボルト調整部92での判定により、測定した樹脂フィルムFの厚みは、微調整での許容範囲内であると判定された場合(ステップST12、Yes判定)は、樹脂フィルムFは現在の厚みで問題が無いため、樹脂フィルムFの製造を継続する(ステップST19)。
【0169】
これに対し、ヒートボルト調整部92での判定により、測定した樹脂フィルムFの厚みは、微調整での許容範囲内ではないと判定された場合(ステップST12、No判定)は、ヒートボルト70の出力は100%であるか否かを判定する(ステップST13)。つまり、ヒートボルト制御装置95による現在のヒートボルト70の温度制御が、ヒートボルト制御装置95によって行うことのできる上限に達しているか否かを、制御装置90が有するヒートボルト調整部92で判定する。
【0170】
ヒートボルト調整部92での判定により、ヒートボルト70の出力は100%ではないと判定された場合(ステップST13、No判定)は、ヒートボルト70によるスリット25の間隔の微調整を行う(ステップST14)。つまり、厚み計15で測定した樹脂フィルムFの厚みが微調整での許容範囲内ではなく(ステップST12、No判定)、ヒートボルト70の出力は100%ではない(ステップST13、No判定)場合は、ヒートボルト70の温度制御を行うことにより、スリット25の間隔の微調整を行う。
【0171】
ヒートボルト70の温度制御によるスリット25の間隔の微調整は、厚み計15で測定した樹脂フィルムFの厚みに基づいて、ヒートボルト調整部92でヒートボルト制御装置95を制御してヒートボルト70の温度を制御することにより、ヒートボルト側リップ23bに対するヒートボルト70の押圧力を調整する。これにより、調整後のスリット25の間隔が、微調整での許容範囲内となる厚みで樹脂フィルムFを製造することのできる間隔になるように調整する。
【0172】
ヒートボルト70によってスリット25の間隔の微調整を行ったら、間隔の微調整を行ったスリット25から吐出された樹脂フィルムFの厚みを厚み計15で測定し(ステップST11)、樹脂フィルムFの厚みは微調整での許容範囲内であるかの判定(ステップST12)を再び行う。
【0173】
また、樹脂フィルムFの厚みは微調整での許容範囲内ではないと判定された後(ステップST12、No判定)、ヒートボルト70の出力は100%であると判定された場合(ステップST13、Yes判定)は、調整ボルト30によるスリット25の間隔の調整を行う(ステップST15)。調整ボルト30によるスリット25の間隔の調整は、制御装置90が有する調整ボルト調整部91で自動調整装置40を制御することにより行う。
【0174】
自動調整装置40を用いてスリット25の間隔の調整を行う際には、自動調整装置40が有する回転装置50を走行装置60によって複数の調整ボルト30が並ぶ方向に沿って移動させ、調整を行う調整ボルト30に回転装置50のソケット53を嵌合させて調整ボルト30を回転させる。これにより、調整ボルト30から調整ボルト側リップ23aに対して付与する押圧力を、厚み計15で測定した樹脂フィルムFの厚みに基づいて調整ボルト30ごとに調整し、スリット25の間隔を幅方向Yにおける位置ごとに調整する。
【0175】
調整ボルト30によってスリット25の間隔を調整したら、間隔を調整したスリット25から吐出された樹脂フィルムFの厚みを厚み計15で測定する(ステップST16)。
【0176】
樹脂フィルムFの厚みを測定したら、測定した樹脂フィルムFの厚みは許容範囲内であるか否かを、制御装置90が有する調整ボルト調整部91で判定する(ステップST17)。樹脂フィルムFの厚みの許容範囲は、目的とする樹脂フィルムFの厚み対して、製品として許容できる範囲として予め設定され、制御装置90の記憶部に記憶されている。つまり、製品として許容できる樹脂フィルムFの厚みの許容範囲は、目的とする樹脂フィルムFの基準となる厚みや樹脂フィルムFの材料等に応じてそれぞれ設定され、制御装置90の記憶部に記憶されている。
【0177】
調整ボルト調整部91での判定により、測定した樹脂フィルムFの厚みは許容範囲内ではないと判定された場合(ステップST17、No判定)は、調整ボルト30によるスリット25の間隔の調整を再び行い(ステップST15)、間隔を調整したスリット25から吐出された樹脂フィルムFの厚みを測定し(ステップST16)、樹脂フィルムFの厚みは許容範囲内であるか否かの判定(ステップST17)を再び行う。
【0178】
調整ボルト調整部91での判定により、測定した樹脂フィルムFの厚みは許容範囲内であると判定された場合(ステップST17、Yes判定)は、調整ボルト30の回転情報を記憶する(ステップST18)。つまり、自動調整装置40によって調整ボルト30の調整を行う際には、自動調整装置40によって調整を行った際における回転装置50の軸部52の回転角及び回転量と軸部52の伸縮量とを、調整ボルト30の回転情報として調整ボルト30ごとに取得し、制御装置90の記憶部で記憶する。
【0179】
このため、厚み計15で測定した樹脂フィルムFの厚みは許容範囲内であると判定された場合は、厚みが許容範囲となる樹脂フィルムFを製造した実績のある調整ボルト30の回転情報として、現在の調整ボルト30の回転情報を記憶する。即ち、厚み計15で測定した樹脂フィルムFの厚みは許容範囲内であると判定された場合は、現在の調整ボルト30の回転情報を、現在製造を行っている品種の樹脂フィルムFの厚みを許容範囲にして樹脂フィルムFを製造することのできる調整ボルト30の回転情報として記憶する。
【0180】
樹脂フィルムFの厚みは許容範囲内であると判定され(ステップST17、Yes判定)、調整ボルト30の回転情報を記憶したら(ステップST18)、樹脂フィルムFの製造を継続する(ステップST19)。これにより、厚みが許容範囲内となる樹脂フィルムFを継続して製造する。実施形態1に係る厚み調整方法では、これらの制御を繰り返すことにより、厚みが所定の範囲内となるように調整を行いながら、樹脂フィルムFを製造する。
【0181】
なお、押出成形装置1による樹脂フィルムFの製造時には、加熱して溶融した樹脂を押出機11からダイ20に供給し、ダイ20のスリット25から薄膜状にして吐出する。ダイ20には、このように加熱された樹脂が供給されるため、ダイ20の温度も上昇する。ダイ20の温度が上昇すると、ダイ20の熱膨張によって、ダイ20に配置される複数の調整ボルト30の、基準位置からの距離が変化することがある。
【0182】
このため、厚み調整装置100は、押出成形装置1によって樹脂フィルムFの製造を開始した後、定期的に調整ボルト30ごとの位置を制御装置90の調整ボルト調整部91により算出し、ボルト位置のレシピを更新する。この場合における調整ボルト30ごとの位置の算出は、押出成形装置1によって樹脂フィルムFの製造を行う前に、厚み調整装置100によって行う算出と同様の手法で行う。
【0183】
厚み調整装置100は、押出成形装置1によって樹脂フィルムFの製造を開始した後、定期的にボルト位置のレシピを更新し、調整ボルト30によってスリット25の間隔を調整する際には、更新したボルト位置のレシピを用いて、回転装置50によって所望の調整ボルト30を回転させる。これにより、押出成形装置1によって樹脂フィルムFの製造を行う際におけるダイ20の熱膨張によって、調整ボルト30の位置が樹脂フィルムFの製造開始前と比較して僅かに変化する場合でも、回転装置50のソケット53を適切に調整ボルト30の位置に移動させることができる。
【0184】
従って、調整ボルト30の位置が、樹脂フィルムFの製造開始前と比較して僅かに変化した場合でも、回転装置50によって調整ボルト30を回転させることができ、調整ボルト30によってスリット25の間隔を調整する際に、スリット25の間隔を適切に調整することができる。
【0185】
ここで、押出成形装置1は、様々な材料の樹脂フィルムF、即ち、様々な品種の樹脂フィルムFを製造することができる。このため、押出成形装置1は、必要に応じて製造する樹脂フィルムFの切り替えながら樹脂フィルムFの製造を行う。次に、押出成形装置1で製造する樹脂フィルムFの品種を切り替えた場合における樹脂フィルムFの厚み調整の制御について説明する。
【0186】
図19は、樹脂フィルムFの品種を切り替えた場合における厚み調整装置100による樹脂フィルムFの厚み調整方法の流れを示すフロー図である。樹脂フィルムFの製造を行う押出成形装置1で、樹脂フィルムFの前品種の製造を終了したら(ステップST21)、新たに製造を行う品種の樹脂フィルムFに適したスリット25の間隔を再現する(ステップST22)。つまり、樹脂フィルムFの製造時には、樹脂フィルムFの厚みが許容範囲内であると判断された際の調整ボルト30の回転情報が、制御装置90の記憶部で記憶される。このため、調整ボルト30の回転情報を記憶した樹脂フィルムFと同じ種類の樹脂フィルムFの製造を開始する際に、制御装置90の記憶部で記憶されている調整ボルト30ごとの回転情報に基づいて調整ボルト30を回転させることにより、スリット25の間隔を再現する。換言すると、樹脂フィルムFの品種を切り替える際には、新たに製造を行う品種と同じ品種の樹脂フィルムFを許容範囲内の厚みで製造した際における調整ボルト30の回転情報を取得し、取得した調整ボルト30の回転情報を用いてスリット25の間隔を調整する。
【0187】
取得した調整ボルト30の回転情報を用いたスリット25の間隔の調整は、制御装置90が有する調整ボルト調整部91で自動調整装置40を制御することにより行う。即ち、調整ボルト調整部91は、取得した調整ボルト30の回転情報に基づいて、自動調整装置40を制御する。自動調整装置40は、取得した調整ボルト30の回転情報に基づいて回転装置50を走行装置60で幅方向Yに移動させ、調整を行う調整ボルト30にソケット53を嵌合させて回転装置50で調整ボルト30を回転させる。これにより、調整ボルト30から調整ボルト側リップ23aに対して付与する押圧力を、取得した調整ボルト30の回転情報に基づいて調整ボルト30ごとに調整し、スリット25の間隔を幅方向Yにおける位置ごとに調整する。
【0188】
調整ボルト調整部91は、このように取得した調整ボルト30の回転情報に基づいて自動調整装置40を制御し、調整ボルト30によってスリット25の間隔を調整することにより、新たに製造を行う品種の樹脂フィルムFに適したスリット25の間隔を再現する。
【0189】
調整ボルト30によってスリット25の間隔を再現したら、押出成形装置1によって樹脂フィルムFの製造を開始し、間隔を再現したスリット25から吐出された樹脂フィルムFの厚みを厚み計15で測定する(ステップST23)。
【0190】
樹脂フィルムFの厚みを測定したら、測定した樹脂フィルムFの厚みは、粗調整での許容範囲内であるか否かを判定する(ステップST24)。つまり、厚み計15によって測定した樹脂フィルムFの厚みは、調整ボルト30での粗調整によって厚みの調整を行う際に許容される範囲内であるか否かを、制御装置90が有する調整ボルト調整部91で判定する。粗調整によって厚みの調整を行う際における許容範囲は、目的とする樹脂フィルムFの厚み対して予め設定され、制御装置90の記憶部に記憶されている。つまり、粗調整によって厚みの調整を行う際における許容範囲は、目的とする樹脂フィルムFの基準となる厚みや樹脂フィルムFの材料等に応じてそれぞれ設定され、制御装置90の記憶部に記憶されている。
【0191】
調整ボルト調整部91での判定により、測定した樹脂フィルムFの厚みは、粗調整での許容範囲内ではないと判定された場合(ステップST24、No判定)は、調整ボルト30によるスリット25の間隔の粗調整を行う(ステップST25)。調整ボルト30によるスリット25の間隔の粗調整は、制御装置90が有する調整ボルト調整部91で自動調整装置40を制御することにより行う。
【0192】
つまり、調整ボルト調整部91は、自動調整装置40を制御することによって走行装置60で回転装置50を幅方向Yに移動させ、調整を行う調整ボルト30に回転装置50のソケット53を嵌合させて調整ボルト30を回転させる。これにより、調整ボルト30から調整ボルト側リップ23aに対して付与する押圧力を、厚み計15で測定した樹脂フィルムFの厚みに基づいて調整ボルト30ごとに調整し、スリット25の間隔を幅方向Yにおける位置ごとに調整することにより、スリット25の間隔の粗調整を行う。
【0193】
調整ボルト30によってスリット25の間隔の粗調整を行ったら、間隔の粗調整を行ったスリット25から吐出された樹脂フィルムFの厚みを厚み計15で測定し(ステップST23)、樹脂フィルムFの厚みは粗調整での許容範囲内であるかの判定(ステップST24)を再び行う。
【0194】
調整ボルト調整部91での判定により、測定した樹脂フィルムFの厚みは、粗調整での許容範囲内であると判定された場合(ステップST24、Yes判定)は、次に、樹脂フィルムFの厚みは、微調整での許容範囲内であるか否かを判定する(ステップST26)。つまり、厚み計15によって測定した樹脂フィルムFの厚みは、ヒートボルト70での微調整によって厚みの調整を行う際に許容される範囲内であるか否かを、制御装置90が有するヒートボルト調整部92で判定する。
【0195】
ヒートボルト調整部92での判定により、厚み計15で測定した樹脂フィルムFの厚みは、微調整での許容範囲内ではないと判定された場合(ステップST26、No判定)は、ヒートボルト70によるスリット25の間隔の微調整を行う(ステップST27)。ヒートボルト70によるスリット25の間隔の微調整は、制御装置90が有するヒートボルト調整部92でヒートボルト70の温度制御を行うことによって行う。
【0196】
ヒートボルト70の温度制御によるスリット25の間隔の微調整は、厚み計15で測定した樹脂フィルムFの厚みに基づいてヒートボルト70の温度を制御することにより、ヒートボルト側リップ23bに対するヒートボルト70の押圧力を調整する。これにより、調整後のスリット25の間隔が、微調整での許容範囲内となる厚みで樹脂フィルムFを製造することのできる間隔になるように調整する。
【0197】
ヒートボルト70によってスリット25の間隔の微調整を行ったら、間隔の微調整を行ったスリット25から吐出された樹脂フィルムFの厚みを厚み計15で測定し(ステップST28)、樹脂フィルムFの厚みは微調整での許容範囲内であるかの判定(ステップST26)を再び行う。
【0198】
ヒートボルト調整部92での判定により、測定した樹脂フィルムFの厚みは、微調整での許容範囲内であると判定された場合(ステップST26、Yes判定)は、調整ボルト30の回転情報を記憶する(ステップST29)。つまり、樹脂フィルムFの厚みは微調整での許容範囲内であると判定された場合は、現在の調整ボルト30の回転情報を、現在製造を行っている品種の樹脂フィルムFの厚みの製造に適した、調整ボルト30の最新の回転情報として制御装置90の記憶部で記憶する。これにより、樹脂フィルムFの厚みが所定の基準を満たす状態における調整ボルト30の回転情報を、調整ボルト30ごとに制御装置90の記憶部で記憶する。
【0199】
樹脂フィルムFの厚みは微調整での許容範囲内であると判定され(ステップST26、Yes判定)、調整ボルト30の回転情報を記憶したら(ステップST29)、樹脂フィルムFの製品の製造を開始する(ステップST30)。つまり、現在の品種で製造を行っている樹脂フィルムFを、現在の厚みで製品として製造を開始する。
【0200】
以上の実施形態1に係る厚み調整装置100は、リップ部23に対して付与する押圧力を調整することによりスリット25の間隔を調整する複数の調整ボルト30と、ヒータ75の温度に応じて伸縮することにより伸縮に応じた押圧力をリップ部23に対して付与し、スリット25の間隔を調整する複数のヒートボルト70とを備えている。これにより、スリット25の間隔を調整ボルト30とヒートボルト70とによって適切に調整することができ、樹脂フィルムFの厚みを所望の厚みに調整することが可能になっている。
【0201】
また、厚み調整装置100は、ソケット53を調整ボルト30に嵌合させて調整ボルト30を回転させる回転装置50と、複数の調整ボルト30が並ぶ方向に沿って回転装置50を移動させる走行装置60とを備えているため、複数の調整ボルト30を、1つの回転装置50によって回転させることができる。このため、リップ部23に対して付与する複数の調整ボルト30の押圧力を、1つの回転装置50によって調整することができる。従って、リップ部23に対して付与する複数の調整ボルト30の押圧力を調整するためのアクチュエータを、調整ボルト30の数に応じて複数設ける必要がないため、多くのアクチュエータを設けることに起因する製造コストの増加を抑えることができる。これらの結果、コストの増加を抑えつつ、樹脂フィルムFの厚みを適切に調整することができる。
【0202】
また、調整ボルト30とヒートボルト70とは、ダイ20における、互いに異なるリップ部23側に配置されるため、調整ボルト30とヒートボルト70との双方を設けることに起因する製造コストの増加を抑えることができる。つまり、ダイ20に複数の調整ボルト30とヒートボルト70とを配置する際には、ダイ20にはこれら以外に、調整ボルト30の調整を行う自動調整装置40と、ヒートボルト70が有するヒータ75に電流を流す配線とが必要になる。このため、ダイ20には、多くの部材が配置されることになり、製造時の組み立て性が低下し易くなる。
【0203】
これに対し、調整ボルト30とヒートボルト70とを、ダイ20における互いに異なるリップ部23側に配置した場合には、調整ボルト30の調整を行う自動調整装置40と、ヒートボルト70のヒータ75に電流を流す配線も、ダイ20における互いに異なるリップ部23側に配置されることになる。このため、ダイ20における互いに異なるリップ部23側で、自動調整装置40や、ヒートボルト70のヒータ75に電流を流す配線を、それぞれ広いスペースで配置することができるため、製造時における組み立て性を確保することができる。これにより、ダイ20に複数の調整ボルト30とヒートボルト70とを配置する際における製造コストを抑えることができる。この結果、コストの増加を抑えつつ、樹脂フィルムFの厚みを適切に調整することができる。
【0204】
また、厚み調整装置100は、調整ボルト30とヒートボルト70とが、リップ部23の延在方向における位置、即ち、幅方向Yにおける位置が互いに同じ位置となって配置されるため、幅方向Yにおける位置ごとに、調整ボルト30とヒートボルト70とを併用してスリット25の間隔を調整することができる。これにより、幅方向Yにおけるいずれの位置においても、調整ボルト30とヒートボルト70とを併用してスリット25の間隔を適切な間隔に調整することができる。この結果、樹脂フィルムFの厚みを適切に調整することができる。
【0205】
また、厚み調整装置100は、ダイ20のスリット25を撮影する撮影装置80と、撮影装置80を走行装置60に着脱自在に連結する連結部材85とを備え、走行装置60は、連結部材85によって走行装置60に連結された撮影装置80を回転装置50と共に移動させることができる。これにより、撮影装置80でスリット25を撮影する際に、撮影装置80を複数の調整ボルト30が並ぶ方向に沿って走行装置60で移動させることにより、撮影装置80を移動させるためのアクチュエータを追加することなく、スリット25の延在方向における全域に亘ってスリット25を撮影装置80で撮影することができる。従って、複数の調整ボルト30と複数のヒートボルト70とを用いて間隔を調整するスリット25の全域を、樹脂フィルムFを製造する前に撮影装置80で撮影してスリット25の間隔を調整することができるため、樹脂フィルムFの製造を開始する前に、スリット25の間隔を適切な間隔に調整することができる。この結果、コストの増加を抑えつつ、樹脂フィルムFの厚みを適切に調整することができる。
【0206】
また、厚み調整装置100は、走行装置60により回転装置50と共に移動して調整ボルト30の有無を検出するレーザ変位センサ55と、レーザ変位センサ55による調整ボルト30の検出結果に基づいて調整ボルト30ごとの位置を算出する調整ボルト調整部91とを備えている。これにより、スリット25の間隔を調整する調整ボルト30を回転させる回転装置50を、複数の調整ボルト30が並ぶ方向に走行装置60によって移動させる際に、調整ボルト調整部91で算出した調整ボルト30ごとの位置に基づいて移動させることにより、回転装置50を目的とする調整ボルト30の位置に高い精度で移動させることができる。従って、ダイ20のリップ部23に対する調整ボルト30の押圧力を調整してスリット25の間隔を調整する際に、回転装置50のソケット53を目的の調整ボルト30に対して嵌合させることができ、1つの回転装置50によって目的の調整ボルト30を回転させることができる。この結果、コストの増加を抑えつつ、樹脂フィルムFの厚みを適切に調整することができる。
【0207】
また、実施形態1に係る厚み調整方法は、調整ボルト30と嵌合するソケット53を有する回転装置50を走行装置60によって複数の調整ボルト30が並ぶ方向に沿って移動させる手順と、ソケット53を調整ボルト30に嵌合させて調整ボルト30を回転させることにより、リップ部23に対して付与する押圧力を調整ボルト30ごとに調整してスリット25の間隔を調整する手順とを含んでいる。これにより、リップ部23に対して付与する複数の調整ボルト30の押圧力を、1つの回転装置50によって調整することができる。このため、リップ部23に対して付与する複数の調整ボルト30の押圧力を調整するためのアクチュエータを、調整ボルト30の数に応じて複数設ける必要がないため、多くのアクチュエータを設けることに起因する製造コストの増加を抑えることができる。
【0208】
また、実施形態1に係る厚み調整方法は、ヒータ75の温度に応じて伸縮することにより伸縮に応じた押圧力をリップ部23に対して付与するヒートボルト70のヒータ75の温度を制御することにより、スリット25の間隔を調整する手順を含んでいる。これにより、スリット25の間隔を調整ボルト30とヒートボルト70とによって適切に調整することができ、樹脂フィルムFの厚みを所望の厚みに調整することが可能になっている。これらの結果、コストの増加を抑えつつ、樹脂フィルムFの厚みを適切に調整することができる。
【0209】
また、実施形態1に係る厚み調整方法は、樹脂フィルムFの厚みを測定する手順と、調整ボルト30によりリップ部23に対して付与する押圧力を、測定した樹脂フィルムFの厚みに基づいて調整することによりスリット25の間隔を調整する手順とを含むため、樹脂フィルムFの厚みを適切に調整することができる。
【0210】
また、実施形態1に係る厚み調整方法は、樹脂フィルムFの厚みが所定の基準を満たす状態における調整ボルト30の回転情報を調整ボルト30ごとに記憶する手順と、調整ボルト30の回転情報を記憶した樹脂フィルムFと同じ種類の樹脂フィルムFの製造を開始する際に、記憶されている調整ボルト30ごとの回転情報に基づいて調整ボルト30を回転させる手順とを含んでいる。これにより、樹脂フィルムFの種類を切り替えて樹脂フィルムFの製造を開始する際に、スリット25の間隔を、新たに製造する樹脂フィルムFに合わせた間隔に予め調整することができる。従って、樹脂フィルムFの種類に合わせたスリット25の間隔の調整作業を簡略化することができ、製造コストを抑えることができる。この結果、コストの増加を抑えつつ、樹脂フィルムFの厚みを適切に調整することができる。
【0211】
また、実施形態1に係る厚み調整方法は、回転情報に基づいて回転が調整された調整ボルト30により押圧力が付与されるダイ20のスリット25から吐出された樹脂フィルムFの厚みを測定する手順と、測定した樹脂フィルムFの厚みに基づいてヒートボルト70による押圧力を調整することによりスリット25の間隔を調整する手順とを含んでいる。これにより、樹脂フィルムFの種類を切り替えて樹脂フィルムFの製造を開始する際に、新たに製造する樹脂フィルムFの種類に合わせて、スリット25の間隔をより適切な間隔に調整することができる。この結果、樹脂フィルムFの厚みを適切に調整することができる。
【0212】
また、実施形態1に係る厚み調整方法は、樹脂フィルムFを吐出する前のスリット25を撮影装置80により撮影する手順と、撮影したスリット25の画像データに対して一対のリップ部23同士の間を通る直線状の基準線Rを設定する手順と、基準線Rからのリップ部23の距離を、調整ボルト30の押圧力とヒートボルト70の押圧力とを調整することにより一定の距離にする手順とを含んでいる。これにより、複数の調整ボルト30と複数のヒートボルト70とを用いて間隔を調整するスリット25の全域を、樹脂フィルムFを製造する前に撮影装置80で撮影してスリット25の間隔を調整することができるため、樹脂フィルムFの製造を開始する前に、スリット25の間隔を適切な間隔に調整することができる。この結果、コストの増加を抑えつつ、樹脂フィルムFの厚みを適切に調整することができる。
【0213】
[実施形態2]
実施形態2に係る厚み調整装置100は、実施形態1に係る厚み調整装置100と略同様の構成であるが、樹脂フィルムFの厚みを、厚み計15の他に耳部厚み計17も用いて測定する点に特徴がある。他の構成は実施形態1と同様なので、その説明を省略すると共に、同一の符号を付す。
【0214】
図20は、実施形態2に係る押出成形装置1の模式図である。実施形態2に係る押出成形装置1は、樹脂フィルムFの厚みを測定する装置として厚み計15の他に、図20に示すように耳部厚み計17を備えている。詳しくは、実施形態2に係る押出成形装置1は、樹脂フィルムFの搬送方向における厚み計15が配置されている位置の上流側に、樹脂フィルムFの幅方向Yにおける両端に位置する部分である耳部Feを切り取るカット装置(図示省略)を備え、さらに、耳部Feの厚みを測定する耳部厚み計17を備えている。カット装置と耳部厚み計17は、いずれも樹脂フィルムFの搬送方向におけるキャストロール13と搬送ロール14との間の位置に配置され、また、樹脂フィルムFの幅方向Yにおける両端付近の位置に配置されている。
【0215】
これにより、カット装置は、樹脂フィルムFの搬送方向におけるキャストロール13と搬送ロール14との間の位置で、樹脂フィルムFの幅方向Yにおける両側の端部付近の位置をそれぞれ耳部Feとして切り出すことができる。
【0216】
また、耳部厚み計17はカット装置の近傍に配置され、カット装置で切り出した樹脂フィルムFの幅方向Yにおける両側の耳部Feの厚みを、それぞれ測定することが可能になっている。耳部厚み計17は、耳部Feの厚みを幅方向Yにおける複数の箇所で測定する。耳部厚み計17は、例えばレーザ光を使用し、カット装置で切り出した樹脂フィルムFの耳部Feの厚みを非接触で測定することができる。耳部厚み計17は、測定した樹脂フィルムFの耳部Feの厚みを、制御装置90に出力する。
【0217】
また、カット装置によって耳部Feを切り出した樹脂フィルムFにおける残りの部分、即ち、幅方向Yにおける両側の耳部Fe同士の間に位置する部分である樹脂フィルムFの大部分は、樹脂フィルムFにおいて製品として用いる製品部Fpになっている。樹脂フィルムFの搬送方向における、耳部Feを切り出す位置よりも下流側には、樹脂フィルムFにおける製品部Fpが搬送される。このため、樹脂フィルムFの厚みを測定する厚み計15は、樹脂フィルムFにおける製品部Fpの厚みを測定し、巻取機16は、樹脂フィルムFにおける製品部Fpを巻き取る。
【0218】
つまり、溶融樹脂がダイ20のスリット25から吐出されることにより製造される樹脂フィルムFは、幅方向Yにおける両端付近の部分の厚みが、樹脂フィルムFの幅方向Yにおける両端付近以外の部分の厚みと比較して厚くなり易くなっている。このため、実施形態2では、図20に示すようにカット装置によって樹脂フィルムFの耳部Feを切り出し、それ以外の部分を樹脂フィルムFの製品部Fpとして用いることにより、適切な厚みの樹脂フィルムFを製品として用いることができる。
【0219】
このように、樹脂フィルムFを製品部Fpと耳部Feとを切り分ける実施形態2に係る押出成形装置1においても、スリット25の間隔を幅方向Yにおける全域に亘って調整する。スリット25の間隔の調整は、厚み計15で測定した製品部Fpの厚みや、耳部厚み計17で測定した耳部Feの厚みに基づいて行う。
【0220】
ここで、厚み計15と耳部厚み計17とは、樹脂フィルムFの搬送方向における配置位置が異なっており、耳部厚み計17は厚み計15に対して、樹脂フィルムFの搬送方向における上流側に配置されている。このため、耳部厚み計17で測定する耳部Feの厚みは、厚み計15で測定する製品部Fpの厚みに対して、樹脂フィルムFの搬送方向における上流側の位置での厚みになっている。
【0221】
従って、同じ時刻に厚み計15で測定した製品部Fpの厚みと耳部厚み計17で測定した耳部Feの厚みとは、ダイ20のスリット25から互いに異なる時刻に吐出された部分の厚みになっている。これにより、同じ時刻に厚み計15と耳部厚み計17で測定した製品部Fpの厚みと耳部Feの厚みとに基づいてスリット25の間隔を調整した場合、実際には異なる時刻に吐出された製品部Fpと耳部Feの厚みに基づいて調整することになるため、適正な間隔に調整し難くなる可能性がある。
【0222】
これに対し、実施形態2に係る厚み調整装置100では、厚み計15で測定した製品部Fpの厚みと、当該製品部Fpの厚みを測定した時刻とは異なる時刻に耳部厚み計17で測定した耳部Feとに基づいて、スリット25の間隔を調整する。これにより、実施形態2に係る厚み調整装置100では、ダイ20のスリット25から同じ時刻に吐出された製品部Fpと耳部Feとのそれぞれの厚みに基づいて、スリット25の間隔の調整を行う。
【0223】
次に、実施形態2において樹脂フィルムFの製品部Fpと耳部Feの厚みをそれぞれ測定し、それぞれの測定結果に基づいてスリット25の間隔の調整を行う方法について説明する。図21は、実施形態2に係る厚み調整方法の処理手順を示すフロー図である。押出成形装置1による樹脂フィルムFの製造中に、実施形態2に係る厚み調整装置100でスリット25の間隔の調整を行う際には、カット装置によって樹脂フィルムFの耳部Feを切り出し、耳部Feの厚みを耳部厚み計17で測定する(ステップST41)。
【0224】
図22は、耳部Feの厚みの測定結果を示すグラフである。図22における横軸は樹脂フィルムFの幅方向Yを示し、縦軸は耳部Feの厚みを示している。また、耳部Feは、樹脂フィルムFの幅方向Yにおける両端に位置するため、図22の(a)は、両端に位置する耳部Feのうちの一方の耳部Feの厚みを示しており、図22の(b)は、両端に位置する耳部Feのうちの他方の耳部Feの厚みを示している。樹脂フィルムFの製造中は、樹脂フィルムFの幅方向Yにおける両側の耳部Feを切り出しながら、耳部厚み計17によってそれぞれの耳部Feの厚みを継続的に測定する。耳部厚み計17で測定した耳部Feの厚みは、制御装置90の記憶部で記憶する。
【0225】
また、樹脂フィルムFの製造中は、樹脂フィルムFの製品部Fpの厚みを厚み計15で測定する(ステップST42)。図23は、製品部Fpの厚みの測定結果を示すグラフである。図23における横軸は樹脂フィルムFの幅方向Yを示し、縦軸は製品部Fpの厚みを示している。樹脂フィルムFの製造中は、樹脂フィルムFの流れ方向における耳部Feの厚みを測定した位置の下流側の位置で、厚み計15によって製品部Fpの厚みを継続的に測定する。厚み計15で測定した製品部Fpの厚みは、制御装置90の記憶部で記憶する。
【0226】
樹脂フィルムFの耳部Feの厚みと製品部Fpの厚みを測定したら、製品部Fpの厚みの測定結果と耳部Feの厚みの測定結果とを合わせて樹脂フィルムFの幅方向Yにおける全域の厚みを制御装置90で求める(ステップST43)。図24は、製品部Fpの厚みの測定結果と耳部Feの厚みの測定結果とを合わせた樹脂フィルムFの全域の厚みの測定結果を示すグラフである。図24における横軸は樹脂フィルムFの幅方向Yを示し、縦軸は樹脂フィルムFの厚みを示している。図24は、製品部Fpの厚みのグラフの幅方向Yにおける両側に、耳部Feの厚みのグラフを足したものになっている。
【0227】
ここで、耳部厚み計17と厚み計15とは、樹脂フィルムFの流れ方向における異なる位置で耳部Feや製品部Fpの厚みを測定している。このため、耳部厚み計17で測定した耳部Feの厚みと厚み計15で測定した製品部Fpの厚みとは、樹脂フィルムFの流れ方向において異なる位置の厚みになっている。
【0228】
一方で、調整ボルト30やヒートボルト70によってダイ20のスリット25の間隔を調整する場合は、調整するスリット25の間隔は、樹脂フィルムFの流れ方向における同じ位置の樹脂フィルムFの厚みに対して影響する。耳部厚み計17で測定した耳部Feの厚みの測定結果と、厚み計15で測定した製品部Fpの厚みの測定結果とは、このように樹脂フィルムFの流れ方向における同じ位置の樹脂フィルムFの厚みに対して影響する、調整するスリット25の間隔の調整に用いる。従って、実施形態2に係る厚み調整方法では、樹脂フィルムFの流れ方向における同じ位置での製品部Fpの厚みと耳部Feの厚みのそれぞれの測定結果を合わせて、樹脂フィルムFの幅方向Yにおける全域の厚みを求める。
【0229】
具体的には、耳部Feの厚みは、製品部Fpの厚みよりも樹脂フィルムFの流れ方向における上流側で測定するため、製品部Fpと耳部Feとの樹脂フィルムFの流れ方向における同じ位置の厚みは、製品部Fpよりも耳部Feの方が早い時刻に測定される。このため、樹脂フィルムFの全域の厚みを求める際には、製品部Fpの厚みの測定結果と、樹脂フィルムFの搬送方向における位置が製品部Fpの厚みが測定された位置と同じ位置の耳部Feの厚みが測定された時刻における耳部Feの厚みの測定結果とを合わせて、図24に示すような、樹脂フィルムFの幅方向Yにおける全域の厚みを求める。
【0230】
つまり、同じ時刻に測定された製品部Fpの厚みと耳部Feの厚みとを取得する際には、樹脂フィルムFの搬送方向における耳部Feの厚みの測定位置と製品部Fpの厚みの測定位置との距離と樹脂フィルムFの搬送速度とより算出される、樹脂フィルムFの搬送方向における位置が互いに同じ位置の耳部Feの厚みが測定される時刻と製品部Fpの厚みが測定される時刻との時間差を算出する。製品部Fpの厚みと、このように算出される時間差で製品部Fpの厚みが測定された時刻よりも前に測定された耳部Feの厚みとを合わせることにより、樹脂フィルムFの全域の厚みを制御装置90で求める。
【0231】
樹脂フィルムFの全域の厚みを求めたら、樹脂フィルムFの全域の厚みに基づいてスリット25の間隔を調整する(ステップST44)。スリット25の間隔の調整は、実施形態1と同様に、調整ボルト30による調整とヒートボルト70による調整とを併用することにより、樹脂フィルムFの幅方向Yにおける全域の厚みに基づいて、スリット25の幅方向Yにおける全域に亘って行う。
【0232】
以上の実施形態2に係る厚み調整方法では、製品部Fpの厚みが測定される時刻と耳部Feの厚みが測定される時刻との時間差を算出し、算出した時間差に基づいて、樹脂フィルムFの流れ方向における位置が同じ位置となる製品部Fpの厚みと耳部Feの厚みと測定結果を合わせることにより、樹脂フィルムFの幅方向Yにおける全域の厚みを求める。これにより、樹脂フィルムFの製品部Fpの厚みと耳部Feの厚みとが、樹脂フィルムFの搬送方向において互いに異なる位置でそれぞれ測定される場合でも、樹脂フィルムFの搬送方向における位置が同じ位置となる製品部Fpの厚みと耳部Feの厚みとに基づいて、樹脂フィルムFの幅方向Yにおける全域の厚みを求めることができる。従って、樹脂フィルムFの厚みに基づいてスリット25の間隔を調整する際に、幅方向Yにおける全域に亘って適切な間隔に調整することができ、樹脂フィルムFの厚みを適切に調整することができる。
【0233】
[変形例]
なお、上述した実施形態1、2では、調整ボルト30とヒートボルト70とは、ダイ20における、互いに異なるリップ部23側に配置されているが、調整ボルト30とヒートボルト70とは、ダイ20における、互いに同じリップ部23側に配置されていてもよい。
【0234】
図25は、実施形態1に係る厚み調整装置100の変形例であり、調整ボルト30とヒートボルト70とが同じリップ部23側に配置される形態を示す模式図である。調整ボルト30とヒートボルト70とを、ダイ20における、互いに同じリップ部23側に配置する際には、例えば、図25に示すように、自動調整装置40によって調整される調整ボルト30が、ヒートボルト70を兼ねてもよい。換言すると、厚さ方向Xにおいてヒートボルト70が配置される側に自動調整装置40を配置し、ヒートボルト70を自動調整装置40によって回転させることができるようにして、リップ部23に対するヒートボルト70の押圧力を自動調整装置40によって調整することができるようにしてもよい。
【0235】
このように、調整ボルト30とヒートボルト70とを、ダイ20における互いに同じリップ部23側に配置することにより、スリット25の間隔を調整するための部材を、厚さ方向Xにおけるダイ20の一方側に全て配置することになる。これにより、スリット25の間隔を調整する際に、調整のための作業を、厚さ方向Xにおけるダイ20の両側から行う必要がないため、スリット25の間隔を調整する際における作業性を確保することができる。この結果、スリット25の間隔を調整する際における作業性を確保しつつ、樹脂フィルムFの厚みを適切に調整することができる。
【0236】
また、調整ボルト30とヒートボルト70とを、ダイ20における互いに同じリップ部23側に配置することにより、ダイ20におけるもう一方のリップ部23を、樹脂フィルムFの幅方向Yに対して完全にフラットにすることができる。これにより、樹脂フィルムFを製造する前にスリット25の間隔を調整する際の画像処理において、リップ部23の距離Gを求めればよく、基準線Rから調整ボルト側リップ23aまでの距離Gaと、基準線Rからヒートボルト側リップ23bまでの距離Gbをそれぞれ求める必要がなくなる。この結果、画像処理のステップ数を減らすことができ、調整にかかる時間を短縮することができる。
【0237】
また、ヒートボルト70が調整ボルト30を兼ねるようにすることにより、ヒートボルト70を配置するのみで、実質的に調整ボルト30とヒートボルト70とをダイ20における互いに同じリップ部23側に配置することができる。従って、スリット25の間隔を調整するためのボルトの本数を抑えつつ、調整ボルト30としての機能によるスリット25の間隔の調整と、ヒートボルト70としての機能によるスリット25の間隔の調整とを併用することにより、スリット25の間隔を適切な間隔に調整することができる。この結果、コストの増加を抑えつつ、樹脂フィルムFの厚みを適切に調整することができる。
【0238】
なお、調整ボルト30とヒートボルト70とを、ダイ20における同じリップ部23側に配置する場合は、調整ボルト30がヒートボルト70を兼ねずに、調整ボルト30とヒートボルト70との双方を、それぞれダイ20における同じリップ部23側に配置していてもよい。例えば、調整ボルト30とヒートボルト70とは、ダイ20における同じリップ部23側に上下方向Zにおける位置を互いに異ならせて配置し、同じリップ部23に対して押圧力を付与することができるように設けてもよい。調整ボルト30とヒートボルト70との配置の形態に関わらず、調整ボルト30とヒートボルト70とをダイ20における同じリップ部23側に配置することにより、スリット25の間隔を調整する際における作業性を確保することができる。
【0239】
また、上述した実施形態1、2では、レーザ変位センサ55による調整ボルト30の検出結果に基づいて調整ボルト30ごとの位置を算出する制御装置90と、自動調整装置40の動作を制御する制御部45とは、それぞれ独立して設けられているが、これらは1つ装置によって双方の機能を実現してもよい。例えば、自動調整装置40の動作を制御する制御部45がボルト位置算出部としても設けられ、複数の調整ボルト30が並ぶ方向における調整ボルト30ごとの位置をレーザ変位センサ55による調整ボルト30の検出結果に基づいて算出してもよい。
【0240】
これにより、調整ボルト30ごとの位置を算出するボルト位置算出部である制御部45と、レーザ変位センサ55との距離を短くすることができるため、レーザ変位センサ55と制御部45との間での通信の遅れを小さくすることができる。従って、レーザ変位センサ55と、調整ボルト30ごとの位置を算出する制御部45との間の通信の遅れが小さくなるのに伴って通信ラグDを小さくすることができ、制御部45で算出する調整ボルト30の位置と、実際の調整ボルト30の位置とのずれを小さくすることができる。この結果、樹脂フィルムFの厚みを容易に調整することができる。
【0241】
また、上述した実施形態1、2では、走行装置60により回転装置50と共に移動して移動方向における調整ボルト30の有無を検出するボルト検出部としてレーザ変位センサ55が用いられているが、ボルト検出部にはレーザ変位センサ55以外を用いてもよい。ボルト検出部には、例えば、撮影した映像を電気信号として出力するカメラを用いてもよい。ボルト検出部にカメラを用いることにより、調整ボルト30の位置のみでなく、撮影した画像データより、調整ボルト30が有するボルト頭30aの回転方向における位相も検出することができる。
【0242】
これにより、回転装置50が有するソケット53の回転方向における位相を、ボルト頭30aの回転方向における位相に合わせて予め回転させてからソケット53をボルト頭30aに嵌合させることができるため、ソケット53を容易にボルト頭30aに嵌合させることができる。従って、調整ボルト30からダイ20の調整ボルト側リップ23aに付与する押圧力を調整することによるスリット25の間隔の調整を容易に行うことができ、樹脂フィルムFの厚みを容易に調整することができる。
【0243】
また、上述した実施形態1、2では、回転装置50は、嵌合部がソケット53により形成され、調整ボルト30のボルト頭30aに対してソケット53を外側から嵌めることにより、調整ボルト30にソケット53を嵌合させることが可能になっているが、これ以外の形態で嵌合部を調整ボルト30に嵌合可能に構成されていてもよい。例えば、調整ボルト30のボルト頭30aに、略正六角形の孔が形成され、回転装置50の嵌合部は、軸方向に見た断面が略正六角形の棒状の形状で形成され、ボルト頭30aに形成される孔に挿し込まれることにより、嵌合部が調整ボルト30に嵌合可能に構成されていてもよい。回転装置50の嵌合部は、調整ボルト30に嵌合して調整ボルト30を回転させることができれば、嵌合の形態は問わない。
【符号の説明】
【0244】
1 押出成形装置
11 押出機
12 供給部材
13 キャストロール
14 搬送ロール
15 厚み計
16 巻取機
17 耳部厚み計
20 ダイ
21 投入部
22 導入流路
23 リップ部
25 スリット
30 調整ボルト
31 ボルト支持部
40 自動調整装置
41 調整装置支持部
45 制御部
50 回転装置
51 回転装置アクチュエータ
52 軸部
53 ソケット
55 レーザ変位センサ
60 走行装置
61 走行装置アクチュエータ
62 回転装置支持部
63 走行レール
64 ベルト
70 ヒートボルト
71 ボルト支持部
75 ヒータ
80 撮影装置
81 照明装置
85 連結部材
86 ブラケット
90 制御装置
91 調整ボルト調整部
92 ヒートボルト調整部
93 画像処理部
95 ヒートボルト制御装置
100 厚み調整装置
図1
図2
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図5
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