IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 藤森工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-包装袋 図1
  • 特開-包装袋 図2
  • 特開-包装袋 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131858
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】包装袋
(51)【国際特許分類】
   B65D 30/02 20060101AFI20240920BHJP
   B65D 33/38 20060101ALI20240920BHJP
   A61J 1/05 20060101ALI20240920BHJP
   A61J 1/10 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B65D30/02
B65D33/38
A61J1/05 313J
A61J1/10 331C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042338
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 潤
(72)【発明者】
【氏名】林 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 雅也
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 真哉
(72)【発明者】
【氏名】澤口 巧太
【テーマコード(参考)】
3E064
4C047
【Fターム(参考)】
3E064AA01
3E064BA17
3E064BA24
3E064BA27
3E064BA28
3E064BA30
3E064BA38
3E064BA55
3E064BA60
3E064BB03
3E064BC08
3E064BC20
3E064EA18
3E064FA04
3E064HM01
3E064HS04
3E064HS05
4C047AA11
4C047BB12
4C047BB30
4C047CC03
4C047CC04
4C047FF06
4C047GG04
4C047GG34
(57)【要約】
【課題】酸素バリア性及び水蒸気バリア性を維持できる包装袋を提供する。
【解決手段】本発明の包装袋は、シーラント層と、酸素バリア層と、水蒸気バリア層とをこの順で有する積層体を前記シーラント層側が対向するように重ね合わせて互いの外周縁部同士を溶着した接合部と、前記積層体及び前記接合部によって画定され、内容物が充填される収容室とを備えた袋本体を有し、前記水蒸気バリア層が、フッ素系樹脂を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シーラント層と、酸素バリア層と、水蒸気バリア層とをこの順で有する積層体を前記シーラント層側が対向するように重ね合わせて互いの外周縁部同士を溶着した接合部と、前記積層体及び前記接合部によって画定され、内容物が充填される収容室とを備えた袋本体を有し、
前記水蒸気バリア層が、フッ素系樹脂を含む包装袋。
【請求項2】
前記酸素バリア層が、エチレン-ビニルアルコール共重合体を含む請求項1に記載の包装袋。
【請求項3】
前記フッ素系樹脂が、ポリクロロ三フッ化エチレンを含む請求項1に記載の包装袋。
【請求項4】
前記水蒸気バリア層の厚さが、10μm~100μmである請求項1に記載の包装袋。
【請求項5】
前記酸素バリア層の厚さが、15μm以上である請求項1に記載の包装袋。
【請求項6】
前記袋本体に接合された注出口を有し、
前記注出口は、対向する前記シーラント層同士に挟持されて接合される請求項1に記載の包装袋。
【請求項7】
前記内容物が、医薬品である請求項1に記載の包装袋。
【請求項8】
前記包装袋が、輸液バッグである請求項1に記載の包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野、食料分野、化粧分野等の様々な分野において、医薬品、食料品、化粧品等の内容品を充填するための包装体として、複数種の樹脂フィルムを積層した積層体を重ね合わせて外周をヒートシール等によって接合されることで形成された袋状の包装体が使用されている。
【0003】
このような包装体として、例えば、無機層状化合物を含有する高水素結合性樹脂からなる酸素バリア樹脂層の両面に、水蒸気透過度20g/(m・d)以下の水蒸気バリア樹脂層が配置されたガスバリア層を有するガスバリア性フィルムを用いて形成された包装袋が開示されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-36215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の包装袋では、水蒸気バリア樹脂層で水蒸気を吸収するとバリア性が低下する場合があった。水蒸気が水蒸気バリア樹脂層を通過して酸素バリア樹脂層に到達すると、酸素バリア樹脂層が水蒸気を吸収して酸素バリア性が低下するという問題があった。
【0006】
包装袋は、内容物を使用するまでの間、酸化して劣化しない状態を維持できるように酸素透過性を低く維持して酸素バリア性を維持すると共に、内容物の濃度変化が生じないように水蒸気透過性を低く維持して水蒸気バリア性を維持できることが重要である。
【0007】
本発明の一態様は、酸素バリア性及び水蒸気バリア性を維持できる包装袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、
シーラント層と、酸素バリア層と、水蒸気バリア層とをこの順で有する積層体を前記シーラント層側が対向するように重ね合わせて互いの外周縁部同士を溶着した接合部と、前記積層体及び前記接合部によって画定され、内容物が充填される収容室とを備えた袋本体を有し、
前記水蒸気バリア層が、フッ素系樹脂を含む包装袋を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、酸素バリア性及び水蒸気バリア性を維持できる包装袋が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施形態に係る包装袋の平面図である。
図2図1のI-I方向視の断面図である。
図3】本発明の第2の本実施形態に係る包装袋の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の符号を付して、重複する説明は省略する。また、図面における各部材の縮尺は実際とは異なる場合がある。本明細書において数値範囲を示す「~」は、別段の断わりがない限り、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0012】
<第1の実施形態>
[包装袋]
本発明の第1の実施形態に係る包装袋について説明する。図1は、本実施形態に係る包装袋の平面図であり、図2は、図1のI-I方向視の断面図である。図1に示すように、本実施形態に係る包装袋1Aは、袋本体10Aを有し、袋本体10Aに接合された注出口20を有してよい。包装袋1Aは、袋本体10A内に内容物を収容する。なお、本実施形態では、包装袋1Aは、袋本体10A及び注出口20から構成されているが、他の部材を有してもよい。
【0013】
内容物は、医薬品(薬剤)、細胞、組織、臓器、生体材料、血液、体液、酵素、抗体、美容製品、栄養剤、保健剤、化粧品、食品等が挙げられる。中でも、医薬品が好ましい。医薬品としては、例えば、バイオ薬品が好ましく挙げられる。バイオ薬品としては、例えば、タンパク質製剤が好ましく挙げられる。
【0014】
内容物の形態は、特に限定されず、例えば、固体、液体、気体、粉体、粒体、混合物、組成物、分散物等であってもよい。また、内容物が液体である場合、液体は、薬剤を含んだ水溶液であってもよい。
【0015】
内容物を袋本体10A内に収容する際、袋本体10A内には窒素等の不活性ガス又は液体を充填してもよい。
【0016】
包装袋1Aは、パウチとしているが、包装袋1Aの形態は、特に限定されず、例えば、三方袋、四方袋、合掌貼り袋、ガゼット袋、自立袋、バッグインボックス用の内袋、ドラム缶内装袋等であってもよい。
【0017】
図2に示すように、袋本体10Aは、一対の積層体11Aで形成され、一対の積層体11A同士を対向するように重ね合わせて互いの外周縁部同士を貼り合わせることで袋状に成形されている。
【0018】
袋本体10Aは、一対の積層体11A同士を対向するように重ね合わせて互いの外周縁部同士を溶着した接合部101と、一対の積層体11A及び接合部101によって画定された収容室102とを有する。
【0019】
接合部101は、袋本体10Aの周縁部に閉環状に設けられている。接合部101は、積層体11Aと注出口20とが接合した第1接合部101-1と、積層体11A同士が接合した第2接合部101-2とを有する。袋本体10Aの平面視において、第1接合部101-1と第2接合部101-2とは連続して形成されている。
【0020】
収容室102は、内容物が充填されるための空間である。なお、図面において、内容物の具体的な状態、形状等は図示しない。内容物を充填する前において、袋本体10Aは、接合部101の一部等に収容室102内に内容物を充填するための充填口を有していてもよい。
【0021】
(積層体)
図2に示すように、積層体11Aは、シーラント層111、酸素バリア層112、水蒸気バリア層113をこの順に積層して備える。袋本体10Aは、一対の積層体11Aのシーラント層111同士を対向させ、シーラント層111の外周縁部同士を貼り合わせたものである。
【0022】
((シーラント層))
シーラント層111は、積層体11Aをヒートシール等により貼り合わせて袋状に形成する際に用いられる。シーラント層111は、収容室102に面しており、内容物と接触する層である。
【0023】
シーラント層111は、非吸着を有する点から、環状オレフィン系樹脂を含むことが好ましい。
【0024】
環状オレフィン系樹脂としては、環状オレフィンポリマー(COP)、環状オレフィンコポリマー(COC)等が挙げられる。シーラント層111を構成する樹脂成分は、環状オレフィン系樹脂の1種又は2種以上であってもよく、環状オレフィン系樹脂と他の樹脂又はエラストマー等との混合物であってもよい。
【0025】
COPとしては、例えば、環状オレフィンの単独重合体若しくは2種以上の環状オレフィンの共重合体、又はその水素添加物が挙げられる。COPは、好ましくは非結晶性の重合体であり、より好ましくは、メタセシス等による環状オレフィンの開環重合体、又はその水素添加物である。COPは、環状オレフィンコポリマー等に比べて脂環式構造を含有する比率が高く、収容室102内に収容される内容物に対する非吸着性に優れる。
【0026】
COCとしては、例えば、1種若しくは2種以上の環状オレフィンと、1種若しくは2種以上の非環状オレフィンとの共重合体、又はその水素添加物が挙げられる。環状オレフィンコポリマーは、好ましくは非結晶性の重合体であり、より好ましくは、環状オレフィンとエチレンとの共重合体、又はその水素添加物である。
【0027】
環状オレフィン系樹脂の構成モノマーとして使用される環状オレフィンは、少なくとも1つの環構造を有する不飽和炭化水素(オレフィン)である。例えば、炭素原子数が3~20のシクロアルカンを有するビニルシクロアルカン及びその誘導体、炭素原子数が3~20のモノシクロアルケン及びその誘導体、ノルボルネン骨格を有する環状オレフィン(ノルボルネン系モノマー)等が挙げられる。
【0028】
ノルボルネン系モノマーとしては、ビシクロ[2.2.1]-2-ヘプテン(ノルボルネン)及びその誘導体が挙げられる。誘導体としては、アルキル基等の置換基を有する化合物、ノルボルナジエンのように不飽和結合を2以上有する化合物、3つ以上の環構造を有し、そのうち2つの環構造がノルボルネン骨格を構成する化合物が挙げられる。3つ以上の環構造を有するノルボルネン系モノマーとしては、トリシクロ[5.2.1.02,6]デセン(ジヒドロジシクロペンタジエン)や、ノルボルネン又はジヒドロジシクロペンタジエンに1分子以上のシクロペンタジエンがディールス・アルダー反応により付加した化合物(例えば、テトラシクロドデセン、ペンタシクロペンタデセン、ヘキサシクロヘプタデセン等)、これらの水素添加物、二重結合の位置が異なる異性体、アルキル置換体等が挙げられる。
【0029】
COCの構成モノマーとして使用される非環状オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン等のα-オレフィン、3-デセン、3-ドデセン等のアルケン類が挙げられる。
【0030】
シーラント層111の厚さは、10μm~100μmであることが好ましく、20μm~60μmであることがより好ましく、30μm~50μmであることがさらに好ましい。シーラント層111の厚さが10μm~100μmであれば、積層体11Aのシーラント層111同士をヒートシール等により貼り合わせて、積層体11Aを袋状に形成できる。なお、シーラント層111の厚さにおける、上限値と下限値とは任意に組み合わせてよい。
【0031】
シーラント層111が環状オレフィン系樹脂を含む場合、シーラント層111が厚くなるほど、袋本体10Aの水蒸気透過度(水蒸気透過率)は低くなる傾向にある。一方、シーラント層111が厚くなるほど、シーラント層111が割れ易くなる傾向にある。シーラント層111が環状オレフィン系樹脂を含む場合、シーラント層111の厚さが、20μm~60μmであれば、シーラント層111は、水蒸気透過度を低くしつつ強度の低下を抑えることができる。
【0032】
なお、本明細書において、シーラント層111の厚さとは、シーラント層111の主面に垂直な方向の長さをいう。シーラント層111の厚さは、例えば、シーラント層111の断面において、任意の場所を測定した時の厚さとしてもよいし、任意の場所で数カ所測定し、これらの測定値の平均値としてもよい。以下、厚さの定義は、他の部材でも同様に定義する。
【0033】
((酸素バリア層))
酸素バリア層112は、水蒸気バリア層113とシーラント層111との間に設けられている。
【0034】
酸素バリア層112を形成する材料としては、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)及び塩化ビニリデン等を用いることができる。これらは、一種単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。これらの中でも、酸素バリア層112は、EVOHを含むことが好ましい。酸素バリア層112がEVOHを含むことで、袋本体10Aは、機械的強度及び光学的性質に優れ、低い水蒸気透過度を有することができる。
【0035】
EVOHのエチレン含有量は、特に限定されないが、酸素バリア層112が酸素バリア性を発揮する点から、1%~50%であることが好ましく、30%~46%であることが好ましく、32%~44%であることがより好ましい。
【0036】
一対の積層体11Aを、シーラント層111にてヒートシールする際には、シーラント層111に含まれる樹脂が溶融するまでシーラント層111を加熱する必要がある。その際、積層体11Aの変形や劣化を抑制するため、ヒートシール時の加熱温度は、酸素バリア層112が含む樹脂の溶融温度よりも低い必要がある。そのため、酸素バリア層112が含む樹脂の種類によって、シーラント層111が含む樹脂の種類が制限される。本実施形態の積層体11Aにおいては、フッ素系樹脂として、これまで水蒸気バリア層に適用されてきた樹脂と比べてガラス転移温度Tgが高いものを使用することで、シーラント層111を形成する材料の選択肢を広くすることができる。
【0037】
酸素バリア層112の酸素透過度は、15cc/(m・24hrs・atm)以下であることが好ましい。酸素バリア層112の酸素バリア性が15cc/(m・24hrs・atm)以下であれば、積層体11Aは、十分な酸素バリア性を有することができる。なお、酸素バリア層112の酸素バリア性の下限値は、特に限定されず、包装袋1Aの用途等に応じて適宜任意の厚さとしてよい。
【0038】
酸素バリア層112の厚さは、15μm以上であればよい。酸素バリア層112の厚さが15μm以上であれば、積層体11Aは、酸素透過度を15cc/(m・24hrs・atm)以下に抑えることができると共に、積層体11Aを袋状に形成できる。なお、酸素バリア層112の厚さの上限値は、特に限定されず、酸素バリア層112の種類、包装袋1Aの用途等に応じて適宜任意の厚さとしてよい。
【0039】
酸素バリア層112は、1層からなる単層でもよいし、2層以上積層されてもよい。
【0040】
((水蒸気バリア層))
水蒸気バリア層113は、収容室102の外側に露出する層であり、フッ素系樹脂を含む。
【0041】
フッ素系樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル(EPA)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロ三フッ化エチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体(ECTFE)等が挙げられる。これらの中でも、ポリクロロ三フッ化エチレン(PCTFE)が好ましい。上述した樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0042】
水蒸気バリア層113は、フッ素系樹脂以外に、水蒸気バリア性を有する材料として一般に使用される材料を含んで形成されてよい。フッ素系樹脂以外に水蒸気バリア性を有する材料としては、例えば、アルミ箔等の金属箔;アルミニウム、シリカ、アルミナ等の無機物を蒸着させた蒸着層;ポリオレフィン系樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)及びフッ素系樹脂の樹脂層等を用いることができる。これらは、一種単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0043】
オレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、環状オレフィン系重合体等が挙げられる。ポリエチレン系樹脂として、ポリプロピレン(PP)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等が挙げられる。
【0044】
水蒸気バリア層113は、フッ素系樹脂を含み、フッ素系樹脂の中でもPCTFEを含むことが好ましい。水蒸気バリア層113がフッ素系樹脂を含むことで、袋本体10Aは、機械的強度及び光学的性質に優れ、低い水蒸気透過率を有すると共に、水蒸気の吸収によるバリア性の低下を抑えることができる。
【0045】
また、水蒸気バリア層113は、シーラント層111のシール温度よりも融点が高い樹脂で形成されることが好ましい。フッ素系樹脂は、一般に、シーラント層111に用いられる樹脂よりも高い溶融温度を有するため、水蒸気バリア層113は、フッ素系樹脂を含んで形成されることで、一対の積層体11Aをシーラント層111にてヒートシールする際に基材として機能することができると共に、シーラント層111を形成する材料の選択を広げることができる。
【0046】
水蒸気バリア層113の厚さは、10μm~100μmが好ましく、15μm~80μmがより好ましく、20μm~60μmがさらに好ましい。水蒸気バリア層113の厚さが10μm~100μmであれば、積層体11Aは袋状に簡易に形成し易い。
【0047】
水蒸気バリア層113は、1層からなる単層でもよいし、2層以上積層されてもよい。
【0048】
(その他の層)
積層体11Aは、シーラント層111、酸素バリア層112及び水蒸気バリア層113の何れかの層間又はこれらの何れかの層の表面に、その他の層を含んでもよい。その他の層の種類は、適宜選択可能であり、例えば、補強層、遮光層、印刷層、金属箔、合成紙等画が挙げられる。
【0049】
補強層としては、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(O-PET)、二軸延伸ナイロン(O-Ny)、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)等の補強樹脂層が挙げられる。
【0050】
積層体11Aは、水蒸気バリア層113の酸素バリア層112とは反対の面(表面)113aに、印刷層又はコート層を有してもよい。
【0051】
印刷層は、水蒸気バリア層113の表面113aにインキを印刷することにより、包装袋1Aに識別性や意匠性を付与できる。
【0052】
コート層は、水蒸気バリア層113又は水蒸気バリア層113上に設けられた印刷層等のその他の層を保護するためのものである。このようなコート層としては、薄膜の樹脂層(樹脂フィルム)や紫外線硬化型の樹脂等が挙げられる。
【0053】
接合部101は、上述の通り、一対の積層体11A同士を対向するように重ね合わせて形成されており、一対の積層体11Aのそれぞれのシーラント層111に含まれる樹脂が融着することで形成される。接合部101は、積層体11Aの一方の水蒸気バリア層113の表面側から他方の水蒸気バリア層113の表面側に向かって、「水蒸気バリア層113/酸素バリア層112/シーラント層111/シーラント層111/酸素バリア層112/水蒸気バリア層113」の順に積層された積層構成を有する。
【0054】
[注出口]
図2に示すように、注出口20は、対向するシーラント層111同士に挟持されて接合されている。注出口20は、環状オレフィン系樹脂を含むことが好ましく、少なくとも内容物と接する部分に環状オレフィン系樹脂を含むことが好ましい。注出口20を形成する環状オレフィン系樹脂としては、シーラント層111を形成する環状オレフィン系樹脂と同様のものが挙げられる。注出口20を形成する材料と、シーラント層111を形成する材料とは、同じであってもよいし、異なっていてもよいが、注出口20及びシーラント層111は同一の材料から形成されていることが好ましい。なお、成形品は、一色成形品でもよいし、二色成形品等の多色成形品でもよい。
【0055】
注出口20は、筒状の形状を有し、内部に内容物を取り出すための流路201を有する。注出口20は、少なくとも収容室102に収容された部分を有する。注出口20は、形成材料として環状オレフィン系樹脂又はポリオレフィン樹脂を含むことが好ましく、環状オレフィン系樹脂を含むことがより好ましい。注出口20が環状オレフィン系樹脂から形成されると、注出口20は、内容物に対して優れた非吸着性を有することができる。
【0056】
ポリオレフィン樹脂としては、1種のオレフィンの単独重合体(ホモポリマー)でもよく、2種以上のオレフィンの共重合体(コポリマー)でもよい。オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、α-オレフィン等の非環状オレフィンが挙げられる。ポリオレフィンの具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-α-オレフィンコポリマー等が挙げられる。これらのポリオレフィンは、酢酸ビニル、塩化ビニル、ビニルアルコール等、非オレフィン系のビニルモノマーを少量含むコポリマーであってもよい。オレフィンの由来は、石油由来オレフィン、植物由来オレフィン、又は両者の併用でもよい。
【0057】
注出口20を形成するポリオレフィン樹脂が、ポリエチレンである場合、ポリエチレンとしては、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が好ましい。注出口20がLLDPEで形成されると、袋本体10Aを形成する積層体11Aと注出口20とが接合し易く、包装袋1Aの取扱性や耐久性を向上できる。
【0058】
第1接合部101-1は、1対の積層体11Aのそれぞれの積層体11Aのシーラント層111と注出口20とに含まれる樹脂が融着することで形成される。第1接合部101-1のうち、積層体11Aと注出口20との接合部分の積層構成は、積層体11Aの一方の水蒸気バリア層113の表面側から他方の水蒸気バリア層113の表面側に向かって、「水蒸気バリア層113/酸素バリア層112/シーラント層111/注出口20/シーラント層111/酸素バリア層112/水蒸気バリア層113」の順となる。
【0059】
積層体11Aは、図2に示すように、第1接合部101-1に、注出口20と接合する部分を有してよい。
【0060】
また、包装袋1Aは、注出口20以外に、注入口、コック、ラベル、開封用ツマミ、取っ手等の付属物を有してもよい。付属物が樹脂成形品である場合は、上述の注出口20と同様の構成としてもよい。
【0061】
[包装袋の製造方法]
包装袋1Aの製造方法の一例について説明する。包装袋1Aの製造方法では、水蒸気バリア層113の原料となる樹脂と、酸素バリア層112の原料となる樹脂と、シーラント層111の原料となる樹脂を順番に積層することで、積層体11Aを形成する(積層体11Aの形成工程)。
【0062】
シーラント層111、酸素バリア層112及び水蒸気バリア層113は、ドライラミネート法、押出ラミネート法等の方法により積層して、積層体11Aを形成してよい。
【0063】
次に、積層体11Aと注出口20とを接合する(接合工程)。
【0064】
まず、積層体11Aのシーラント層111同士を対向させた状態で、積層体11Aの間に注出口20を挟み込む。
【0065】
次に、積層体11Aと注出口20とを接合して第1接合部101-1を形成する。
【0066】
次に、積層体11A同士を接合して第2接合部101-2を形成する。
【0067】
これにより、包装袋1Aが製造される。
【0068】
このように、包装袋1Aは、接合部101と収容室102とを備える袋本体10Aを有し、袋本体10Aを構成する積層体11Aに含まれる水蒸気バリア層113は、水蒸気透過度の低いフッ素系樹脂を形成材料として含む。これにより、水蒸気バリア層113は、水蒸気透過度を十分低くすることができると共に、水蒸気に対するバリア性(水蒸気バリア性)が低下することを抑制できる。このため、水蒸気バリア層113の収容室102内側に位置する酸素バリア層112が水蒸気バリア層113を通過した水蒸気を吸収することを抑制できる。よって、包装袋1Aは、酸素透過性を低く維持して酸素に対するバリア性(酸素バリア性)を維持すると共に、水蒸気透過性を低く維持して水蒸気バリア性を維持することができる。
【0069】
包装袋1Aは、酸素バリア層112に、EVOHを含むことができる。これにより、酸素バリア層112は、低い酸素透過度を有することができるため、包装袋1Aは、酸素バリア性を確実に発揮することができる。
【0070】
包装袋1Aは、水蒸気バリア層113に含まれるフッ素系樹脂としてPCTFEを含むことができる。PCTFEは、フッ素系樹脂の中でも、特に、低い水蒸気透過度を有すると共に、吸湿を抑え、水蒸気バリア性を維持できる。このため、包装袋1Aは、水蒸気バリア層113に含めるフッ素系樹脂としてPCTFEを用いれば、水蒸気バリア層113で吸湿を確実に抑制できるので、水蒸気バリア層113の水蒸気バリア性及び酸素バリア層112の酸素バリア性の低下をより確実に抑制できる。よって、包装袋1Aは、酸素バリア性及び水蒸気バリア性をさらに確実に維持できる。
【0071】
包装袋1Aは、水蒸気バリア層113の厚さを10μm~100μmとすることができる。これにより、水蒸気バリア層113は、包装袋1Aに柔軟性を与えつつ水蒸気透過度を低くすることができる。よって、包装袋1Aは、水蒸気バリア性を発揮すると共に、袋状の形状に容易に形成することができる。
【0072】
包装袋1Aは、酸素バリア層112の厚さを15μm以上とすることができる。これにより、酸素バリア層112は、包装袋1Aに柔軟性を与えつつ酸素透過度を低く抑えることができる。よって、包装袋1Aは、酸素バリア性を発揮すると共に、袋状の形状に容易に形成することができる。
【0073】
包装袋1Aは、注出口20を備え、注出口20を一対の対向する積層体10の対向するシーラント層111同士に挟持させた状態で接合させることができる。これにより、注出口20のシーラント層111との間から水蒸気や空気が外部から収容室102内に侵入することを抑制できるため、包装袋1Aは、水蒸気バリア性及び酸素バリア性を維持することができる。また、注出口20は、シーラント層111と同様、COP、COC等の環状オレフィン系樹脂で形成できるため、包装袋1Aは、内容物に対する非吸着性をより確実に高めることができる。
【0074】
以上のように、包装袋1Aは、上記のような特性を有することから、医薬品(薬剤)、栄養剤、飲食物、医療用容器、医療機器、医療用品及び化粧品等を収容し、滅菌処理が施される輸液バッグとして好適に用いることができる。
【0075】
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態に係る包装袋について説明する。図3は、本実施形態に係る包装袋の断面図であり、図1のI-I方向視の断面図である。図3に示すように、本実施形態に係る包装袋1Bは、図1に示す第1の実施形態に係る包装袋1Aの袋本体10Aを構成する積層体11Aを積層体11Bに変更したものである。
【0076】
積層体11Bは、シーラント層111、酸素バリア層112及び水蒸気バリア層113の各層間に接着層(接着性樹脂層)114を有する。
【0077】
[接着層]
接着層114は、シーラント層111と酸素バリア層112との間に設けられる接着層114Aと、酸素バリア層112と水蒸気バリア層113との間に設けられる接着層114Bとを有する。接着層114Aと接着層114Bは、同一種類の材料で形成されてもよいし、異なる種類の材料で形成されてもよい。
【0078】
接着層114は、ポリエチレン系樹脂及び変性ポリエチレン系樹脂を含む第1接着層であるか、ポリエチレン系樹脂、エラストマー成分と、エポキシ基を含む樹脂組成物とを含む第2接着層であることが好ましい。
【0079】
(第1接着層)
第1接着層に含まれるポリエチレン樹脂としては、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)が挙げられ、低密度ポリエチレンであることが好ましい。
【0080】
第1接着層に含まれる変性ポリエチレン樹脂は、不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性されたポリエチレン樹脂であって、ポリエチレン樹脂中に、カルボキシ基や無水カルボン酸基等の酸官能基を有する。第1接着層に含まれる変性ポリエチレン樹脂は、ポリエチレン樹脂を酸変性して得られたものであることが好ましい。
【0081】
酸変性方法としては、有機過酸化物や脂肪族アゾ化合物等のラジカル重合開始剤の存在下で、ポリエチレン樹脂と酸官能基含有モノマーとを溶融混練するグラフト変性が挙げられる。
【0082】
変性前のポリエチレン樹脂材料は、原料モノマーとしてエチレンを含むものであれば限定されず、公知のポリエチレン樹脂が適宜用いられる。具体的には、ポリエチレン樹脂として上述した例の他、;エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-1-ブテン共重合体、エチレン-4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-1-オクテン共重合体等のエチレン・α-オレフィン共重合体;エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のエチレン系共重合樹脂等が挙げられる。
【0083】
酸官能基含有モノマーは、エチレン性二重結合と、カルボキシ基又はカルボン酸無水物基とを同一分子内に持つ化合物であって、各種の不飽和モノカルボン酸、ジカルボン酸、又はジカルボン酸の酸無水物が挙げられる。
【0084】
カルボキシ基を有する酸官能基含有モノマー(カルボキシ基含有モノマー)としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、ナジック酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、テトラヒドロフタル酸、エンド-ビシクロ[2.2.1]-5-ヘプテン-2,3-ジカルボン酸(エンディック酸)等のα,β-不飽和カルボン酸モノマーが挙げられる。
【0085】
カルボン酸無水物基を有する酸官能基含有モノマー(カルボン酸無水物基含有モノマー)としては、無水マレイン酸、無水ナジック酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水エンディック酸等の不飽和ジカルボン酸無水物モノマーが挙げられる。
【0086】
これらの酸官能基含有モノマーは、酸素バリア層112を構成する成分において1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0087】
中でも、酸官能基含有モノマーとしては、酸無水物基を有する酸官能基含有モノマーが好ましく、カルボン酸無水物基含有モノマーがより好ましく、無水マレイン酸が特に好ましい。
【0088】
酸変性に用いた酸官能基含有モノマーの一部が未反応である場合は、未反応の酸官能基含有モノマーによる接着力の低下を防ぐため、予め未反応の酸官能基含有モノマーを除去したものを用いることが好ましい。
【0089】
第1接着層に含まれる変性ポリエチレン樹脂は、無水マレイン酸変性ポリエチレンであることが好ましい。
【0090】
第1接着層においては、ポリエチレン樹脂と変性ポリエチレン樹脂の合計を100質量%としたとき、ポリエチレン樹脂と変性ポリエチレン樹脂の合計量に対するポリエチレン樹脂の割合の下限値は、10%以上が好ましく、20%以上がさらに好ましい。また、ポリエチレン樹脂と変性ポリエチレン樹脂の合計量に対するポリエチレン樹脂の割合の上限値は、70%以下が好ましく、60%以下がさらに好ましい。例えば、ポリエチレン樹脂と変性ポリエチレン樹脂との混合比は、ポリエチレン樹脂:変性ポリエチレン樹脂=20:80~60:40を取ることができる。
【0091】
酸素バリア層112にポリエチレン樹脂と変性ポリエチレン樹脂との混合材料を用いることにより、シーラント層111、酸素バリア層112及び水蒸気バリア層113の各層間の密着性が向上する。このため、酸素バリア層112に層間剥離が生じることを抑制できる。
【0092】
(第2接着層)
第2接着層は、ポリエチレン系樹脂と、エラストマー成分と、エポキシ基を有する成分とを含む樹脂組成物を含む。
【0093】
第2接着層に含まれるポリエチレン系樹脂は、ポリエチレン系樹脂及び変性ポリエチレン系樹脂の混合物に含まれるポリエチレン系樹脂と同様である。上記樹脂組成物に含まれるポリエチレン系樹脂は、バイオマスポリエチレン、石油由来のポリエチレン、両者の混合物のいずれでもよい。
【0094】
第2接着層に含まれるポリエチレン系樹脂においては、上記樹脂組成物中のポリエチレン系樹脂はメタロセン系触媒により重合されたポリエチレンが好ましい。中でも、メタロセン系触媒により重合されたC4-LLDPE、C6-LLDPE、C8-LLDPE等のエチレン-αオレフィン共重合体、長鎖分岐ポリエチレン等が好適な例である。
【0095】
メタセロン系触媒により重合されたポリエチレン系樹脂は、分子量分布が狭い傾向にある。このため接着阻害要因となりうる低分子量成分が少なく、接着剤として用いた場合に高い接着性が得られると考えられる。
【0096】
上記樹脂組成物中のポリエチレン系樹脂の密度は、0.890g/cm以上0.940g/cm以下が好ましく、0.910cm以上0.930g/cm以下がより好ましい。
【0097】
上記樹脂組成物中のポリエチレン系樹脂の含有量は、55質量部~90質量部であり、60質量部~80質量部が好ましい。ポリエチレン系樹脂の含有量が90質量部以下であると、後述のエラストマー成分との粘着性を発揮し、接着性が高くなる。
【0098】
第2接着層に含まれるエラストマー成分としては、スチレン系エラストマー、アクリル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、エステル系エラストマー等が挙げられる。但し、エラストマー成分は後述するエポキシ基を有する成分を除く。
【0099】
中でも、スチレン系エラストマーが好ましく、例えば、ポリスチレン等からなるハードセグメントと、ポリエチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン等からなるソフトセグメントとを有するブロック共重合体が挙げられる。スチレン系エラストマーに使用可能なスチレン系重合体としては、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-エチレン共重合体等の芳香族オレフィン-脂肪族オレフィンの共重合体が挙げられる。
【0100】
スチレン系エラストマーは、スチレン-ブチレン-スチレン共重合体(SBS)に水素添加して完全に分子内の不飽和結合を開環させたスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体(SEBS)であることが好ましい。
【0101】
また、そのスチレン含有率は、8質量%~24質量%であることが好ましく、10質量%~20質量%がより好ましい。スチレン含有率が20質量%以下であると、樹脂の硬化を抑制でき、接着性の低下を抑制できる。
【0102】
第2接着層に含まれるエラストマー成分の具体的な例としては、JSR株式会社のダイナロン、旭化成ケミカルズ株式会社のタフテックHシリーズ、クレイトンポリマー株式会社のクレイトンGポリマー等が挙げられる。
【0103】
第2接着層において、エラストマー成分の含有量は、10質量部~45質量部であり、20質量部~40質量部が好ましい。エラストマー成分の含有量が45質量部以下であると、第2接着層を形成したときの引張強度の低下を抑制し、接着強度の低下を防止できる。
【0104】
上記ポリエチレン系樹脂と上記エラストマー成分との合計は、100質量部とする。
【0105】
第2接着層に含まれるエポキシ基を有する成分は、エポキシ基及びビニル基を有する成分が好ましい。エポキシ基及びビニル基を有する成分は、1,2-ビニル構造を有する成分が好ましく、ブタジエンを部分的にエポキシ化した、エポキシ化ポリブタジエンが好ましい。1,2-ポリブタジエンを部分的にエポキシ化したものが特に好ましい。
【0106】
エポキシ基を有する成分の具体的な例としては、日本曹達株式会社の液状ポリブタジエンJP-100、JP-200や株式会社アデカのアデカサイザーBF-1000等が挙げられる。
【0107】
エポキシ基を有する成分の数平均分子量は500~4000であることが好ましい。エポキシ基を有する成分の数平均分子量が4000以下であると、常温で固形状態となることによる粘着性の低下を抑制でき、接着性の低下を防止できる。
【0108】
本実施形態において、数平均分子量は、GPC(ゲルパーミネーションクロマトグラフィー)によって測定されるポリスチレン換算の値とする。
【0109】
第2接着層においては、上記ポリエチレン系樹脂及び上記エラストマー成分の総量100質量部に対する、エポキシ基を有する成分の含有量が0.1質量部~1.5質量部であり、0.5質量部~1.0質量部が好ましい。エポキシ基を有する成分の含有量が1.5質量部以下であると、接着阻害の要因となる樹脂組成物中の低分子成分を低減できる。
【0110】
第2接着層において、上記エラストマー成分と、エポキシ基を有する成分とは共通する繰り返し単位を有し、互いに相溶する。エラストマー成分とエポキシ基を有する成分とは、スチレン系エラストマー同士、アクリル系エラストマー同士の組み合わせが好ましい。
【0111】
第2接着層の樹脂組成物は、ポリエチレン系樹脂、エラストマー成分及びエポキシ基を有する成分を、それぞれ特定の配合比で混合してよい。第2接着層の樹脂組成物は、エポキシ基を有する成分中のエポキシ基がフッ素系樹脂のフッ素成分と相溶し、フッ素系樹脂との接着性に優れる。エポキシ基を有すると、金属材料との接着も可能となる。
【0112】
第2接着層においては、ポリエチレン系樹脂、エラストマー成分及びエポキシ基を有する成分を、それぞれ特定の配合比で混合することにより、ポリエチレン系樹脂が「海」、エラストマー成分が「島」に相当する、いわゆる海島構造を形成する。さらに、エラストマー成分にエポキシ基を有する成分が相溶することにより、エポキシ基を有する成分を樹脂組成物中に均一に分散させることができる。これにより、エポキシ基が、ポリエチレン系樹脂とエラストマー成分とで保護され、水分によるエポキシ基の開環を抑制できると推察される。
【0113】
酸素バリア層112にポリエチレン系樹脂、エラストマー成分及びエポキシ基を有する成分の混合材料を用いることにより、シーラント層111、酸素バリア層112及び水蒸気バリア層113の各層間の密着性が向上する。このため、積層体11Aに層間剥離を生じ難くすることができる。
【0114】
このように、包装袋1Bは、袋本体10Aの積層体11Bが接着層114を含むことで、シーラント層111、酸素バリア層112及び水蒸気バリア層113の各層間で層間剥離が生じることを抑制しつつ、酸素バリア性及び水蒸気バリア性を維持できる。
【0115】
以上の通り、実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の組み合わせ、省略、置き換え、変更等を行うことが可能である。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【実施例0116】
以下に本実施形態を例により説明するが、本実施形態はこれらの例に限定されるものではない。
【0117】
<積層体(積層フィルム)の作製>
[例1]
積層体(積層フィルム)を構成する、シーラント層、酸素バリア層、水蒸気バリア層及び接着層(AD)の形成に、それぞれ、シクロオレフィンポリマー(COP)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(「EVOH1」とする。エチレン含有量:32%)、ポリクロロ三フッ化エチレン樹脂(PCTFE)及び無水マレイン酸変性ポリエチレン接着樹脂を用いた。Tダイ式多層製膜機を用いて、COP、AD、EVOH1、AD及びPCTFEを共押出工法により押し出して、シーラント層、接着層、酸素バリア層、接着層及び水蒸気バリア層が、それぞれ表1に示す厚さとなるように、この順に積層された積層フィルムを作製した。
【0118】
[例2]
例1において、酸素バリア層を、EVOH1に代えて、EVOH1とはエチレン含有量が異なるEVOH(「EVOH2」とする。エチレン含有量:44%)を用いたこと以外、例1と同様に行い、積層フィルムを作製した。
【0119】
[例3]
例2において、シーラント層の厚さを16μmに変更したこと以外、例2と同様に行い、積層フィルムを作製した。
【0120】
[例4]
例1において、酸素バリア層を、EVOH1に代えて、メタキシリレンジアミンとアジピン酸とを重合して得られる芳香族ポリアミド樹脂(相対粘度:2.65、溶融粘度:500Pa・sec、水分300ppm)を用いたこと以外、例1と同様に行い、積層フィルムを作製した。
【0121】
[例5]
例1において、水蒸気バリア層を形成する樹脂をCOPに変更して、水蒸気バリア層の厚さを表1に示す厚さに変更したこと以外、例1と同様に行い、積層フィルムを作製した。
【0122】
[例6]
例1において、積層フィルムをシーラント層、接着層及び酸素バリア層の3層で構成したこと以外、例1と同様に行い、シーラント層、接着層及び酸素バリア層がこの順に積層された積層フィルムを作製した。
【0123】
[例7]
例2において、水蒸気バリア層を形成する樹脂をCOPに変更して、水蒸気バリア層の厚さを表1に示す厚さに変更したこと以外、例1と同様に行い、積層フィルムを作製した。
【0124】
[例8]
例2において、積層フィルムをシーラント層、接着層及び酸素バリア層の3層で構成したこと以外、例2と同様に行い、シーラント層、接着層及び酸素バリア層がこの順に積層された積層フィルムを作製した。
【0125】
各例において、積層フィルムを構成する各層の材料の種類と厚さを表1に示す。
【0126】
<評価>
各例の積層フィルムの酸素透過度及び水蒸気透過度を測定し、酸素バリア性及び水蒸気バリア性を評価した。
【0127】
[酸素透過度]
JIS K7126-2:2006「プラスチック-フィルム及びシート-ガス透過度測定試験方法-第2部:等圧法(モコン法)」の電解センサ法(付属書A)に準拠して、酸素透過度測定装置を用いて、温度40℃、相対湿度70%RHの条件下で、得られた積層フィルムに酸素ガスを透過させた。積層フィルムを透過した酸素ガス量(酸素透過度)を電解センサ法で測定した。積層フィルムは、シーラント層側が酸素ガスを導入するチャンバ側となるように配置して、酸素ガスを積層フィルムのシーラント層側から水蒸気バリア層側に透過させた。酸素は積層フィルムを透過するため、積層フィルムの酸素透過度を包装体の酸素透過度とみなした。各例の積層フィルムの酸素透過度の測定結果を表1に示す。
【0128】
[水蒸気透過度]
得られた積層フィルムの水蒸気透過度は、赤外線センサ法(モコン法)を用いて測定した。即ち、JIS K7129-2008 B法に準拠して、水蒸気透過率測定装置を用いて、温度40℃、相対湿度100%RHの条件下で、得られた積層フィルムに水蒸気を透過させた。積層フィルムを透過した水蒸気量を赤外線センサで検出して、水蒸気透過度を算出した。積層フィルムは、水蒸気バリア層側が水蒸気を導入するチャンバ側となるように配置して、水蒸気を積層フィルムの水蒸気バリア層側からシーラント層側に透過させた。水蒸気は積層フィルムを透過するため、積層フィルムの水蒸気透過度を包装体の水蒸気透過度とみなした。各例の積層フィルムの水蒸気透過度の測定結果を表1に示す。
【0129】
【表1】
【0130】
表1に示すように、例1の積層フィルムは、例5及び例6の積層フィルムよりも、酸素透過度及び水蒸気透過度が低く、酸素バリア性及び水蒸気バリア性に優れていた。これは、例5及び例6の積層フィルムでは、例1の積層フィルムよりも、水蒸気バリア層が吸湿し、防湿性に劣るため、酸素バリア層が水蒸気バリア層を通過した水蒸気を吸湿して酸素バリア性能が低下するためと考えられる。
【0131】
例2~例4の積層フィルムは、例7及び例8の積層フィルムよりも、酸素透過度及び水蒸気透過度が低く、酸素バリア性及び水蒸気バリア性に優れていた。これは、例7及び例8の積層フィルムでは、例2~例4の積層フィルムよりも、水蒸気バリア層が吸湿し、防湿性に劣るため、酸素バリア層が水蒸気バリア層を通過した水蒸気を吸湿して酸素バリア性能が低下するためと考えられる。
【0132】
よって、包装体は、積層フィルムを構成する水蒸気バリア層にPCTFEを用いれば、水蒸気バリア層及び酸素バリア層の劣化が抑えられ、優れた水蒸気バリア性及び酸素バリア性を発揮できるといえる。
【0133】
なお、本発明の実施形態に係る態様は、例えば、以下の通りである。
<1> シーラント層と、酸素バリア層と、水蒸気バリア層とをこの順で有する積層体を前記シーラント層側が対向するように重ね合わせて互いの外周縁部同士を溶着した接合部と、前記積層体及び前記接合部によって画定され、内容物が充填される収容室とを備えた袋本体を有し、
前記水蒸気バリア層が、フッ素系樹脂を含む包装袋。
<2> 前記酸素バリア層が、エチレン-ビニルアルコール共重合体を含む<1>に記載の包装袋。
<3> 前記フッ素系樹脂が、ポリクロロ三フッ化エチレンを含む<1>又は<2>に記載の包装袋。
<4> 前記水蒸気バリア層の厚さが、10μm~100μmである<1>~<3>の何れか一つに記載の包装袋。
<5> 前記酸素バリア層の厚さが、15μm以上である<1>~<4>の何れか一つに記載の包装袋。
<6> 前記袋本体に接合された注出口を有し、
前記注出口は、対向する前記シーラント層同士に挟持されて接合される<1>~<5>の何れか一つに記載の包装袋。
<7> 前記内容物が、医薬品である<1>~<6>の何れか一つに記載の包装袋。
<8> 前記包装袋が、輸液バッグである<1>~<7>の何れか一つに記載の包装袋。
【符号の説明】
【0134】
1A、1B 包装袋
10A、10B 袋本体
101 接合部
101-1 第1接合部
101-2 第2接合部
102 収容室
11A、11B 積層体
111 シーラント層
112 酸素バリア層
113 水蒸気バリア層
114 接着層
20 注出口
図1
図2
図3