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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131872
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】被覆物除去装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/36 20140101AFI20240920BHJP
   B23K 26/082 20140101ALI20240920BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20240920BHJP
【FI】
B23K26/36
B23K26/082
B23K26/00 M
B23K26/00 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042361
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西井 諒介
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 愛実
(72)【発明者】
【氏名】柵山 慶太
(72)【発明者】
【氏名】西潟 由博
(72)【発明者】
【氏名】梅野 和行
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AD00
4E168CA03
4E168CA05
4E168CB03
4E168CB04
4E168CB22
4E168DA02
4E168DA03
4E168EA17
(57)【要約】
【課題】例えば、埋設物が被覆物で覆われた物体の被覆物にレーザ光を照射して、当該被覆物をより精度良く除去することが可能となるような、改善された新規な被覆物除去装置を得る。
【解決手段】被覆物除去装置は、例えば、埋設物と当該埋設物を覆う被覆物とを有した物体の被覆物の表面に向けてレーザ光を照射し、当該レーザ光によって被覆物を除去する光学ヘッドと、レーザ光の照射状態を変更する照射状態可変機構と、埋設物を検出するセンサによる検出値および埋設物の形状を示す情報のうち少なくとも一方に基づいて、照射状態可変機構の作動を制御する、制御部と、を備える。照射状態可変機構は、光学ヘッドからのレーザ光の出力方向および照射位置のうち少なくとも一つを変更してもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋設物と当該埋設物を覆う被覆物とを有した物体の前記被覆物の表面に向けてレーザ光を照射し、当該レーザ光によって前記被覆物を除去する光学ヘッドと、
前記レーザ光の照射状態を変更する照射状態可変機構と、
前記埋設物を検出するセンサによる検出値および前記埋設物の形状を示す情報のうち少なくとも一方に基づいて、前記照射状態可変機構の作動を制御する、制御部と、
を備えた、被覆物除去装置。
【請求項2】
前記照射状態可変機構は、前記物体に対する前記レーザ光の照射位置を変更する、請求項1に記載の被覆物除去装置。
【請求項3】
前記照射状態可変機構は、ガルバノスキャナを有する、請求項2に記載の被覆物除去装置。
【請求項4】
固定部材に対して移動可能に構成され前記光学ヘッドと接続された可動部材を備え、
前記照射状態可変機構は、前記固定部材に対する前記可動部材の位置、姿勢、および形状のうち少なくとも一つを変更する、請求項2または3に記載の被覆物除去装置。
【請求項5】
前記照射状態可変機構は、前記光学ヘッドから出力される前記レーザ光の強度を変更する、請求項1に記載の被覆物除去装置。
【請求項6】
前記埋設物の形状を示す情報を記憶する記憶部を備えた、請求項1に記載の被覆物除去装置。
【請求項7】
前記センサは、前記被覆物によって被覆された状態で前記埋設物を検出する、請求項1に記載の被覆物除去装置。
【請求項8】
前記センサは、電磁波センサを含む、請求項7に記載の被覆物除去装置。
【請求項9】
前記センサは、X線センサを含む、請求項7に記載の被覆物除去装置。
【請求項10】
前記センサは、超音波センサを含む、請求項7に記載の被覆物除去装置。
【請求項11】
前記センサは、前記被覆物が除去されて露出した前記埋設物の表面を検出する、請求項7に記載の被覆物除去装置。
【請求項12】
前記センサは、非接触センサを含む、請求項11に記載の被覆物除去装置。
【請求項13】
前記センサは、光センサを含む、請求項12に記載の被覆物除去装置。
【請求項14】
前記制御部は、前記光センサによって検出された反射光、散乱光、または熱放射光の強度に基づいて、前記照射状態可変機構の作動を制御する、請求項13に記載の被覆物除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆物除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ光の照射によって構造物の表面の塗膜や付着物を除去する方法が知られている(例えば、特許文献1)。また、レーザ光と液体の噴射流とを利用して工作物を加工する方法が知られている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5574354号公報
【特許文献2】特許第4364974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者らの検討によれば、埋設物が被覆物で覆われた物体から被覆物を取り除いて埋設物を露出させる場合に、特許文献1や特許文献2の方法を適用しようとすると、各文献に記載された方法のままでは、埋設物が損傷してしまう虞があることが判明した。
【0005】
そこで、本発明の課題の一つは、例えば、埋設物が被覆物で覆われた物体の被覆物にレーザ光を照射して、当該被覆物をより精度良く除去することが可能となるような、改善された新規な被覆物除去装置を得ること、である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の被覆物除去装置は、例えば、埋設物と当該埋設物を覆う被覆物とを有した物体の前記被覆物の表面に向けてレーザ光を照射し、当該レーザ光によって前記被覆物を除去する光学ヘッドと、前記レーザ光の照射状態を変更する照射状態可変機構と、前記埋設物を検出するセンサによる検出値および前記埋設物の形状を示す情報のうち少なくとも一方に基づいて、前記照射状態可変機構の作動を制御する、制御部と、を備える。
【0007】
前記被覆物除去装置では、前記照射状態可変機構は、前記物体に対する前記レーザ光の照射位置を変更してもよい。
【0008】
前記被覆物除去装置では、前記照射状態可変機構は、ガルバノスキャナを有してもよい。
【0009】
前記被覆物除去装置は、固定部材に対して移動可能に構成され前記光学ヘッドと接続された可動部材を備え、前記照射状態可変機構は、前記固定部材に対する前記可動部材の位置、姿勢、および形状のうち少なくとも一つを変更してもよい。
【0010】
前記被覆物除去装置では、前記照射状態可変機構は、前記光学ヘッドから出力される前記レーザ光の強度を変更してもよい。
【0011】
前記被覆物除去装置は、前記埋設物の形状を示す情報を記憶する記憶部を備えてもよい。
【0012】
前記被覆物除去装置では、前記センサは、前記被覆物によって被覆された状態で前記埋設物を検出してもよい。
【0013】
前記被覆物除去装置では、前記センサは、電磁波センサを含んでもよい。
【0014】
前記被覆物除去装置では、前記センサは、X線センサを含んでもよい。
【0015】
前記被覆物除去装置では、前記センサは、超音波センサを含んでもよい。
【0016】
前記被覆物除去装置では、前記センサは、前記被覆物が除去されて露出した前記埋設物の表面を検出してもよい。
【0017】
前記被覆物除去装置では、前記センサは、非接触センサを含んでもよい。
【0018】
前記被覆物除去装置では、前記センサは、光センサを含んでもよい。
【0019】
前記被覆物除去装置では、前記制御部は、前記光センサによって検出された反射光、散乱光、または熱放射光の強度に基づいて、前記照射状態可変機構の作動を制御してもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、例えば、埋設物が被覆物で覆われた物体の被覆物にレーザ光を照射して、当該被覆物をより精度良く除去することが可能となるような、改善された新規な被覆物除去装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、実施形態の被覆物除去装置の例示的な概略構成図である。
図2図2は、第1実施形態の被覆物除去装置に含まれる光学ヘッドの例示的な概略構成図である。
図3図3は、実施形態の被覆物除去装置の例示的な制御ブロック図である。
図4図4は、第1実施形態の被覆物除去装置のセンサの使用状態における物体の例示的かつ模式的な断面図である。
図5図5は、第2実施形態の被覆物除去装置のセンサの使用状態における物体の例示的かつ模式的な断面図である。
図6図6は、第3実施形態の被覆物除去装置のセンサの使用状態における物体の例示的かつ模式的な断面図である。
図7図7は、第4実施形態の被覆物除去装置に含まれる光学ヘッドの例示的な概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および結果(効果)は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、構成によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
【0023】
以下の複数の実施形態は、同様の構成要素を有している。以下では、それら同様の構成要素については、共通の符号を付与するとともに、重複する説明を省略する場合がある。
【0024】
また、図1において、X方向を矢印Xで表し、Y方向を矢印Yで表し、Z方向を矢印Zで表している。X方向、Y方向、およびZ方向は、互いに交差するとともに、互いに直交している。なお、X方向およびY方向は、例えば、水平方向であり、Z方向は、例えば、鉛直上方であるが、これには限定されない。
【0025】
[第1実施形態]
図1は、実施形態の被覆物除去装置100A(100)の概略構成を示す図である。
【0026】
被覆物除去装置100は、埋設物11と、当該埋設物11を覆う被覆物12と、を有した物体10の、当該被覆物12の表面12aに向けて、光学ヘッド120からレーザ光Lを適宜に照射し、当該レーザ光Lによって、被覆物12を除去して、埋設物11を露出させる。この際、被覆物除去装置100は、埋設物11の表面11aが露出する直前あるいは露出した時点で、レーザ光Lを停止したり弱めたり逸らしたりすることにより、埋設物11が極力傷つかないようにする。埋設物11の表面11aの位置、言い換えると被覆物12を除去する厚さは、センサ150による検出値に基づいて取得することができる。
【0027】
処理対象としての物体10は、例えば、建物や、建造物、建築物、建材、製品、部品、物体等、多岐に亘る。
【0028】
埋設物11と被覆物12とは、異なる材料で作られている。埋設物11は、例えば、金属や、合成樹脂等であり、被覆物12は、例えば、コンクリート、モルタル等であるが、これらには限定されない。
【0029】
被覆物除去装置100は、光源装置110と、光学ヘッド120と、光ファイバケーブル130と、移動装置200と、を備えている。
【0030】
光源装置110は、レーザ発振器を備えており、一例としては、6000[W]のパワーのレーザ光を出力できるよう構成されている。レーザ発振器は、レーザ装置の一例である。レーザ発振器が出力するレーザ光の波長は、例えば、400[nm]以上かつ1200[nm]以下である。
【0031】
光源装置110と光学ヘッド120とは、光ファイバケーブル130を介して、光学的に接続されている。光ファイバケーブル130は、コアおよび当該コアを取り囲むクラッドを有した光ファイバ131(図2参照)を有している。光ファイバ131は、光源装置110から出力されたレーザ光を光学ヘッド120へ伝送する。
【0032】
移動装置200は、光学ヘッド120の位置や姿勢を変更可能とする装置であり、本実施形態では、例えば、車両とロボットアームとを組み合わせた構成を備えている。
【0033】
車両としてのボディ210は、当該ボディ210を移動可能とするホイール211を備えている。処理中は、例えば、ブレーキ(不図示)等の作動によってホイール211の回転が停止することによりボディ210が停止してもよいし、ホイール211を浮かせる支持脚(不図示)の下方への突出によってボディ210が停止してもよい。ボディ210は、固定部材の一例である。
【0034】
ロボットアームとしての可動アーム220は、複数のアームが結節点を介して回動可能に接続された構成を有している。また、可動アーム220は、結節点を介してボディ210に回動可能に接続されるとともに、結節点を介して光学ヘッド120にも回動可能に接続されている。したがって、結節点で接続される二つのアーム間、アームとボディ210との間、およびアームと光学ヘッド120との間の、少なくともいずれか一つの角度を変更することにより、ボディ210に対する光学ヘッド120の位置や姿勢を変更することができる。可動アーム220は、可動部材の一例である。
【0035】
移動装置200は、ボディ210に対する可動アーム220の位置、姿勢、および形状のうち少なくとも一つを変更可能に構成されている。移動装置200は、当該変更によって光学ヘッド120から物体10へのレーザ光Lの出力状態、すなわち物体10に対するレーザ光Lの照射位置や照射方向を変更する。移動装置200は、照射状態可変機構の一例である。なお、ボディ210は、車両には限定されず、例えば、ホイール211に替えてクローラのような無限軌道を備えてもよい。また、可動アーム220は、ロボットアームには限定されず、例えば、レールとスライダとの組み合わせを有した構成を備えてもよい。
【0036】
図2は、光学ヘッド120A(120)の概略構成図である。光学ヘッド120は、光源装置110から光ファイバ131を介して入力されたレーザ光を、物体10に向けて照射するための光学装置である。光学ヘッド120は、コリメートレンズ121と、ガルバノスキャナ126と、集光レンズ122と、を備えている。これらコリメートレンズ121、ガルバノスキャナ126、および集光レンズ122は、光学部品とも称されうる。
【0037】
コリメートレンズ121は、光ファイバ131を介して入力されたレーザ光をコリメートする。コリメートされたレーザ光は、平行光になる。
【0038】
コリメートレンズ121を経由したレーザ光は、ガルバノスキャナ126へ向かう。ガルバノスキャナ126は、2枚のミラー126a,126bを有しており、当該2枚のミラー126a,126bの角度を制御することで、物体10の表面上でのレーザ光Lの照射位置を移動し、当該表面上でレーザ光Lを走査することができる装置である。ミラー126a,126bの角度は、それぞれ、例えばモータを含む不図示のアクチュエータによって変更されうる。
【0039】
集光レンズ122は、ガルバノスキャナ126を経由したレーザ光を集光し、レーザ光L(出力光)として、物体10へ照射する。
【0040】
ガルバノスキャナ126は、光学ヘッド120からのレーザ光Lの出力方向を変更することができる。当該レーザ光Lの出力方向の変化により、当該レーザ光Lの物体10への照射位置や照射方向が変化する。ガルバノスキャナ126は、照射状態可変機構の一例である。
【0041】
被覆物除去装置100は、ガルバノスキャナ126および移動装置200のうち少なくとも一方の作動により、物体10の表面におけるレーザ光Lの照射位置や照射方向を変更することができる。
【0042】
また、被覆物除去装置100は、ガルバノスキャナ126および移動装置200のうち少なくとも一方の作動により、物体10の表面上で、レーザ光Lのスポットを走査することができる。ガルバノスキャナ126および移動装置200は、走査機構とも称されうる。
【0043】
図3は、被覆物除去装置100の制御装置140のブロック図である。制御装置140は、演算処理部141と、主記憶部142と、補助記憶部143と、を有している。
【0044】
演算処理部141は、例えば、CPU(central processing unit)のようなプロセッサ(回路)である。主記憶部142は、例えば、RAM(random access memory)や、ROM(read only memory)である。また、補助記憶部143は、例えば、SSD(solid state drive)やHDD(hard disk drive)のような不揮発性の書き換え可能な記憶装置である。
【0045】
演算処理部141は、主記憶部142や補助記憶部143に記憶されたプログラムを読み出して各処理を実行することにより、検出処理部141a、データ処理部141b、および制御部141cとして作動する。プログラムは、それぞれインストール可能な形式または実行可能な形式のファイルで、コンピュータで読み取り可能な記録媒質に記録されて提供されうる。記録媒質は、プログラムプロダクトとも称されうる。プログラムおよびプロセッサによる演算処理で用いられる値や、マップ、テーブル等の情報は、主記憶部142や補助記憶部143に予め記憶されてもよいし、通信ネットワークに接続されたコンピュータの記憶部に記憶され、当該通信ネットワーク経由でダウンロードされることによって補助記憶部143に記憶されてもよい。補助記憶部143は、プロセッサによって書き込まれたデータを記憶する。また、演算処理部141による演算処理は、少なくとも部分的に、ハードウエアによって実行されてもよい。この場合、演算処理部141には、例えば、FPGA(field programmable gate array)や、ASIC(application specific integrated circuit)等が含まれてもよい。
【0046】
検出処理部141aは、センサ150Aの検出値に基づいて、当該センサ150Aから埋設物11までの例えばZ方向における距離を取得することができる。センサ150Aについては後述する。そして、検出処理部141aは、XY座標が異なる複数の位置における当該センサ150Aから埋設物11までのZ方向における距離と、当該複数のセンサ150Aの位置座標とから、埋設物11の形状を示す情報、すなわち3次元形状データを、取得することができる。なお、検出処理部141aは、例えば、センサ150の検出値に対するフィルタリングや、無次元化等の処理を実行してもよい。
【0047】
データ処理部141bは、補助記憶部143に対するデータのリードおよびライトを制御する。
【0048】
制御部141cは、検出処理部141aから出力されたセンサ150による検出値に対応した情報、および埋設物11の形状を示す情報のうち少なくとも一方に基づいて、光源装置110、ガルバノスキャナ126、および可動アーム220の駆動機構220aの作動を制御する。駆動機構220aは、例えば、モータや運動変換機構等を有した電動アクチュエータや、電動空気圧弁、電動油圧弁、シリンダ等を有し電気的に作動する油空圧アクチュエータである。
【0049】
制御部141cは、例えば、光源装置110の作動と非作動との切り換えを制御することができる。また、制御部141cは、光源装置110が出力するレーザ光の強度を変更するドライバ回路を制御し、光源装置110に供給する電力を制御することができる。光源装置110が出力するレーザ光の強度が変化すると、光学ヘッド120から出力されるレーザ光Lの強度が変化する。すなわち、この場合、当該ドライバ回路は、光学ヘッド120から出力されるレーザ光Lの強度を変更することが可能な、照射状態可変機構の一例である。
【0050】
物体10の、埋設物11または被覆物12を検出するセンサ150としては、種々のセンサを採用することができる。
【0051】
図4は、被覆物12によって被覆された状態で埋設物11を検出するセンサ150A(150)の使用状態における物体10の断面図である。この場合、センサ150Aは、被覆物12の表面12aに接触した状態で、電磁波や超音波を出力し、被覆物12内で伝播するとともに埋設物11の表面11aで反射した当該電磁波や超音波を検出する。検出処理部141aは、例えば、出力波の出力から反射波の受信までの時間や出力波の出力方向等に基づいて、当該センサ150Aから埋設物11までの距離を取得することができる。この形態にあっては、電磁波としては、X線や、ガンマ線、マイクロ波等を採用することができる。
【0052】
制御部141cは、例えば、レーザ変位計のような距離センサ(不図示)の検出値から、レーザ光Lによって被覆物12が除去された部位の深さひいては除去された部位の底部の位置を取得し、当該底部の位置が埋設物11の表面11aに到達する直前と想定される時点で、レーザ光Lを停止したり弱めたり逸らしたりするよう、照射状態可変機構を制御する。
【0053】
なお、埋設物11の形状を示す情報は、例えば、物体10の処理に先立って、データ処理部141bの作動により、外部装置160からケーブルもしくは通信ネットワークを介して、あるいは情報記録媒体等から、制御装置140へ入力され、補助記憶部143に記憶されてもよい。補助記憶部143は、記憶部の一例である。
【0054】
以上、説明したように、本実施形態では、制御部141cが、埋設物11の形状を示す情報に基づいて、レーザ光Lの照射状態を変更する照射状態可変機構の作動を制御する。照射状態可変機構は、例えば、移動装置200や、ガルバノスキャナ126のような、物体10に対するレーザ光Lの照射位置や照射方向を変更する機構や、例えば、半導体光増幅器のような、レーザ光Lの強度を変更する機構である。このような構成により、レーザ光Lの照射により被覆物12を除去して埋設物11を露出する処理において、より精度良く被覆物12を除去することができ、レーザ光Lによる埋設物11へのダメージを減らすあるいは無くすことができる。なお、上述したように、埋設物11の形状を示す情報は、センサ150による検出値に基づいて得ることができる。すなわち、本実施形態では、制御部141cは、埋設物11を検出するセンサ150による検出値に基づいて照射状態可変機構を制御しているとも言える。
【0055】
[第2実施形態]
図5は、被覆物12によって被覆された状態で埋設物11を検出する第2実施形態のセンサ150B(150)の使用状態における物体10の断面図である。この場合、センサ150Bは、被覆物12の表面12aから離隔し、当該表面12aに接触しない状態で、電磁波を出力し、物体10外および被覆物12内で伝播するとともに埋設物11の表面11aで反射した当該電磁波を検出する。この場合も、検出処理部141aは、例えば、出力波の出力から反射波の受信までの時間や出力波の出力方向等に基づいて、当該センサ150Bから埋設物11までの距離を取得することができ、さらに、XY座標が異なる複数の位置における当該センサ150Bから埋設物11までのZ方向における距離と、当該複数のセンサ150Bの位置座標とから、埋設物11の形状を示す情報、すなわち3次元形状データを、取得することができる。この形態にあっては、電磁波としては、X線や、ガンマ線等を採用することができる。
【0056】
本実施形態は、センサ150Bが上記第1実施形態と相違している点を除き、上記第1実施形態と同様の構成を備えている。本実施形態によっても、上記第1実施形態と同様の構成に基づく同様の作用および効果が得られる。
【0057】
また、本実施形態では、センサ150が被覆物12の表面12aに接触できないような状況にあっても、被覆物12をより精度良く除去することができるという利点が得られる。
【0058】
[第3実施形態]
図6は、露出した埋設物11を検出する第3実施形態のセンサ150C(150)の使用状態における物体10の断面図である。この場合、センサ150Cは、被覆物12の表面12aから離隔し、当該表面12aに接触しない状態で、電磁波を出力し、物体10外および被覆物12内で伝播するとともに埋設物11の表面11aで反射した当該電磁波を検出する。この場合、電磁波としては、赤外光や可視光を採用することができる。センサ150Cは、非接触センサの一例であり、光センサの一例である。また、センサ150Cは、物体10からの反射光や、散乱光、あるいは熱放射光を検出することができる。
【0059】
本実施形態の構成では、レーザ光Lによって被覆物12の除去が進み、埋設物11の表面11aが露出した際に、センサ150Cによる検出状態、例えば検出強度が、露出する前と後で変化することを利用する。例えば、埋設物11が金属であり、被覆物12がコンクリートである場合、レーザ光Lの照射によって被覆物12の除去が進行し電磁波が露出した埋設物11の表面で反射している場合の強度は、埋設物11の表面が露出せず電磁波が被覆物12で反射している場合の強度よりも高くなる。他方、埋設物11が合成樹脂であり、被覆物12がコンクリートである場合、レーザ光Lの照射によって被覆物12の除去が進行し電磁波が露出した埋設物11の表面で反射している場合の強度は、埋設物11の表面が露出せず電磁波が被覆物12で反射している場合の強度よりも低くなる。したがって、制御部141cは、センサ150による反射波の検出強度の変化に基づいて、埋設物11の表面11aが露出したか否かを判別することができ、当該表面11aが露出したと判定した時点で、レーザ光Lを停止したり弱めたり逸らしたりするよう、照射状態可変機構を制御する。
【0060】
本実施形態では、制御部141cが、埋設物11を検出するセンサ150Cによる検出値に基づいて、レーザ光Lの照射状態を変更する照射状態可変機構の作動を制御する。このような構成により、レーザ光Lの照射により被覆物12を除去して埋設物11を露出する処理において、より精度良く被覆物12を除去することができ、レーザ光Lによる埋設物11へのダメージを減らすあるいは無くすことができる。
【0061】
[第4実施形態]
図7は、第4実施形態の光学ヘッド120D(120)の概略構成図である。図7に示されるように、光学ヘッド120Dは、フィルタ123を備えている。フィルタ123は、コリメートレンズ121からガルバノスキャナ126へ向かうレーザ光を透過するとともに、ガルバノスキャナ126からコリメートレンズ121へ向かうレーザ光を反射する。フィルタ123で反射されたレーザ光は、物体10からの反射光である。センサ150D(150)は、光学ヘッド120Dをよりに設けられており、当該反射光を検出する。
【0062】
本実施形態のセンサ150Dとしては、上記第3実施形態のセンサ150Cと同種のものを採用することができる。
【0063】
本実施形態は、光学ヘッド120Dの構成が相違している点を除き、上記第3実施形態と同様の構成を備えている。本実施形態によっても、上記第3実施形態と同様の構成に基づく同様の作用および効果が得られる。
【0064】
また、本実施形態では、センサ150Dが光学ヘッド120D(120)に設けられているため、例えば、センサ150が光学ヘッド120とは別に設けられている場合に比べて、被覆物除去装置100をよりコンパクトに構成できるという利点が得られる。
【0065】
なお、光学ヘッド120Dをよりコンパクトに構成することが望ましい場合には、センサ150Dと光学ヘッド120Dとの間に、光ファイバを含む光ファイバケーブルが介在してもよい。
【0066】
以上、本発明の実施形態が例示されたが、上記実施形態は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、等のスペック(構造や、種類、方向、型式、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【0067】
例えば、制御部は、埋設物を検出するセンサによる検出値と、予め取得された埋設物の形状を示す情報と、の両方に基づいて、照射状態可変機構の作動を制御してもよい。具体的には、例えば、埋設物を検出するセンサによる検出値から得られた埋設物の形状を示す情報を、予め取得された埋設物の形状を示す情報に対応して修正したり、埋設物を検出するセンサによる検出値から得られた埋設物の形状と、予め取得された埋設物の形状を示す情報との平均値に基づいて照射状態可変機構の作動を制御したりしてもよい。
【符号の説明】
【0068】
10…物体
11…埋設物
11a…表面
12…被覆物
12a…表面
100…被覆物除去装置
110…光源装置
120,120A,120D…光学ヘッド
121…コリメートレンズ
122…集光レンズ
123…フィルタ
126…ガルバノスキャナ(照射状態可変機構)
126a,126b…ミラー
130…光ファイバケーブル
131…光ファイバ
140…制御装置
141…演算処理部
141a…検出処理部
141b…データ処理部
141c…制御部
142…主記憶部
143…補助記憶部(記憶部)
150,150A~150D…センサ
160…外部装置
200…移動装置(照射状態可変機構)
210…ボディ(固定部材)
211…ホイール
220…可動アーム(可動部材)
220a…駆動機構
L…レーザ光
X…方向
Y…方向
Z…方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7