(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131906
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】着火制御方法、成膜方法及び基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H05H 1/46 20060101AFI20240920BHJP
C23C 16/505 20060101ALI20240920BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20240920BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H05H1/46 M
C23C16/505
H01L21/31 C
H01L21/302 101G
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042466
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】小林 健
【テーマコード(参考)】
2G084
4K030
5F004
5F045
【Fターム(参考)】
2G084AA05
2G084AA13
2G084BB07
2G084BB14
2G084CC04
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2G084DD02
2G084DD15
2G084DD55
2G084FF02
2G084HH32
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5F045GB08
(57)【要約】
【課題】基板処理装置内のプラズマを着火させる領域の選択性を高める。
【解決手段】基板を収容する処理容器と、前記処理容器に形成されたプラズマボックスと、前記プラズマボックスに配置された電極と、整合器を介して前記電極に接続されたRF電源と、前記整合器と前記電極との間に配置されたスイッチと、を有する基板処理装置にて実行される着火制御方法が提供される。着火制御方法は、レシピに基づき前記基板処理装置により実行されるプロセスの間に前記スイッチを設定するステップと、前記スイッチの設定後、前記RF電源から高周波電圧を印加することにより、ガスから生成するプラズマを着火させる領域を選択するステップと、を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を収容する処理容器と、
前記処理容器に形成されたプラズマボックスと、
前記プラズマボックスに配置された電極と、
整合器を介して前記電極に接続されたRF電源と、
前記整合器と前記電極との間に配置されたスイッチと、を有する基板処理装置にて実行される着火制御方法であって、
レシピに基づき前記基板処理装置により実行されるプロセスの間に前記スイッチを設定するステップと、
前記スイッチの設定後、前記RF電源から高周波電圧を印加することにより、ガスから生成するプラズマを着火させる領域を選択するステップと、を含む着火制御方法。
【請求項2】
前記プラズマを着火させる領域を選択するステップは、プラズマを着火させる領域を前記プラズマボックスと前記処理容器とから選択する、
請求項1に記載の着火制御方法。
【請求項3】
更に、前記プロセスの前に前記スイッチを設定するステップを有し、
前記プロセスの間に再度前記スイッチを設定する、
請求項1に記載の着火制御方法。
【請求項4】
前記スイッチは、前記プラズマボックスを挟んで配置された一対の前記電極のうちの一方と前記整合器とを接続する電圧供給ラインに配置された第1スイッチと、一対の前記電極のうちの他方と前記整合器とを接続する電圧供給ラインに配置された第2スイッチと、を有する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の着火制御方法。
【請求項5】
前記スイッチは、前記プラズマボックスを挟んで配置された一対の前記電極のうちの一方と前記整合器のグランド電位とを接続する給電ラインに配置された第3スイッチを有する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の着火制御方法。
【請求項6】
前記プロセスは、複数のステップを繰り返し実行するALDプロセスであり、
前記複数のステップのうちプラズマを生成するステップにおいて前記プラズマを生成する前に前記スイッチを設定する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の着火制御方法。
【請求項7】
基板を収容する処理容器と、
前記処理容器に形成されたプラズマボックスと、
前記プラズマボックスに配置された電極と、
整合器を介して前記電極に接続されたRF電源と、
前記整合器と前記電極との間に配置されたスイッチと、を有する基板処理装置にて実行される成膜方法であり、前記成膜方法は、レシピに基づき以下のプロセスを実行し、
前記プロセスは、
(a)原料ガスを供給し、前記原料ガスを基板に吸着させるステップと、
(b)反応ガスを供給し、前記反応ガスから生成されたプラズマにより前記基板に吸着した前記原料ガスを反応させるステップと、を含み、
前記(b)のステップにおいて前記スイッチの設定後、前記RF電源から高周波電圧を印加することにより、プラズマを着火させる領域を選択する、
成膜方法。
【請求項8】
前記プロセスは、
(c)前記(a)のステップと前記(b)のステップとを繰り返し実行するステップを含み、
前記(c)のステップにおいて、前記(b)のステップを実行するたびに前記スイッチの設定後、前記RF電源から高周波電圧を印加することにより、プラズマを着火させる領域を選択する、
請求項7に記載の成膜方法。
【請求項9】
基板を収容する処理容器と、
前記処理容器に形成されたプラズマボックスと、
前記プラズマボックスに配置された電極と、
整合器を介して前記電極に接続されたRF電源と、
前記整合器と前記電極との間に配置されたスイッチと、を有する基板処理装置にて実行される成膜方法であり、前記成膜方法は、レシピに基づき以下のプロセスを実行し、
前記プロセスは、
少なくとも1つのステップを含む第1シーケンスを第1設定回数実行するステップと、
前記第1シーケンスの実行後、少なくとも1つのステップを含む第2シーケンスを第2設定回数実行するステップと、を含み、
前記第1シーケンスのステップと前記第2シーケンスのステップのうちガスからプラズマを生成するステップにおいて前記スイッチの設定後、前記RF電源から高周波電圧を印加することにより、プラズマを着火させる領域を選択する、
成膜方法。
【請求項10】
基板を収容する処理容器と、
前記処理容器に形成されたプラズマボックスと、
前記プラズマボックスに配置された電極と、
整合器を介して前記電極に接続されたRF電源と、
前記整合器と前記電極との間に配置されたスイッチと、
以下のプロセスを実行する制御装置と、を有する基板処理装置であって、
前記プロセスは、
レシピに基づき前記基板処理装置により実行されるプロセスの間に前記スイッチを設定するステップと、
前記スイッチの設定後、前記RF電源から高周波電圧を印加することにより、ガスから生成するプラズマを着火させる領域を選択するステップと、を含む、基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、着火制御方法、成膜方法及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に開示する高周波電源は、高周波電力が所定周期でパワー変調されるパワー変調モードで動作可能であり、このパワー変調モードの際に、整合器における整合動作をパワー変調に同期させて切り替える。これにより、整合器内の第1可変コンデンサ及び第2可変コンデンサが微動を繰り返すことなくその制御が円滑に行われ、プラズマの安定化と、第1可変コンデンサ及び第2可変コンデンサの高寿命化を図る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、基板処理装置内のプラズマを着火させる領域の選択性を高めることができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一の態様によれば、基板を収容する処理容器と、前記処理容器に形成されたプラズマボックスと、前記プラズマボックスに配置された電極と、整合器を介して前記電極に接続されたRF電源と、前記整合器と前記電極との間に配置されたスイッチと、を有する基板処理装置にて実行される着火制御方法が提供される。着火制御方法は、レシピに基づき前記基板処理装置により実行されるプロセスの間に前記スイッチを設定するステップと、前記スイッチの設定後、前記RF電源から高周波電圧を印加することにより、ガスから生成するプラズマを着火させる領域を選択するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0006】
一の側面によれば、基板処理装置内のプラズマを着火させる領域の選択性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態に係る基板処理装置の構造図である。
【
図2】実施形態に係る整合器及び電極との接続回路例を示す図である。
【
図3】実施形態に係る基板処理装置のガス供給源及び制御装置を示す図である。
【
図4】実施形態に係る電圧供給ライン及び電極間の電圧の一例を示す図である。
【
図5】変形例1に係る整合器及び電極との接続回路例を示す図である。
【
図6】変形例1に係る電圧供給ライン及び電極間の電圧の一例を示す図である。
【
図7】変形例2、3に係る整合器及び電極との接続回路例を示す図である。
【
図8】第1実施形態に係る着火制御方法及び成膜方法を示すフローチャートである。
【
図9】第1実施形態に係る着火制御方法及び成膜方法を示すタイムチャートである。
【
図10】第2実施形態に係る着火制御方法及び成膜方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0009】
[基板処理装置]
まず、実施形態に係る基板処理装置10について、
図1を参照しながら説明する。
図1は、実施形態に係る基板処理装置10を示す図である。基板処理装置10は、複数のウェハ2を処理容器11に収容し、ALD(Atomic Layer Deposition))法により複数のウェハに膜を成膜する。基板処理装置10は、かかる成膜方法を実行する装置の一例である。
【0010】
基板処理装置10は、複数枚のウェハ2を処理するバッチ式の縦型熱処理装置である。ただし、基板処理装置10は、係る熱処理装置に限らない。例えば、基板処理装置10は、ウェハを一枚ずつ処理する枚葉式の装置であってもよい。また、基板処理装置10は、数枚の基板を一括処理するセミバッチ式の装置であってもよい。セミバッチ式の装置は、回転テーブルの回転中心線の周りに配置した複数枚のウェハを、回転テーブルと共に回転させ、異なるガスが供給される複数の領域を順番に通過させる装置でもよい。
【0011】
複数のウェハ2に形成する膜は、窒化膜、酸化膜、酸窒化膜等、いずれの膜であってもよい。これまでの成膜方法では、ウェハ2の面内膜厚がウェハ2の例えばエッジ領域において厚くなり、均一性に欠ける場合があり、更なる膜厚調整が望まれている。そこで、後述する実施形態に係る着火制御方法及び成膜方法では、基板処理装置内のプラズマを着火させる領域の選択性を高め、これにより、ウェハ2上に形成された膜の膜厚及び膜質を更に向上させることができる技術を提供する。
【0012】
以下では、一例としてシリコン窒化膜(SiN)の成膜を挙げて説明する。シリコン窒化膜は、原料ガス(例えばジクロロシランガス(DCS:SiH2Cl2))と、窒化ガス(例えばアンモニア(NH3)ガス)のプラズマとを交互にウェハに供給することにより、ウェハ上に形成される。窒化ガスは、反応ガスの一例である。
【0013】
基板処理装置10は、ウェハ2を収容し、ウェハ2が処理される空間を内部に形成する処理容器11と、処理容器11の下端の開口を気密に塞ぐ蓋体20と、ウェハ2を保持する基板保持具30とを有する。ウェハ2は、例えば半導体基板であって、より詳細には例えばシリコンウェハである。基板保持具30は、ウェハボートとも呼ばれる。
【0014】
処理容器11は、下端が開放された有天井の円筒形状の処理容器の本体12を有する。処理容器の本体12は、例えば石英により形成される。処理容器の本体12の下端には、フランジ部13が形成される。また、処理容器11は、例えば円筒形状のマニホールド14を有する。マニホールド14は、例えばステンレス鋼により形成される。マニホールド14の上端にはフランジ部15が形成され、そのフランジ部15には処理容器の本体12のフランジ部13が設置される。フランジ部15とフランジ部13との間には、Oリング等のシール部材16が配置される。
【0015】
蓋体20は、マニホールド14の下端の開口に、Oリング等のシール部材21を介して気密に取り付けられる。蓋体20は、例えばステンレス鋼により形成される。蓋体20の中央部には、蓋体20を鉛直方向に貫通する貫通穴が形成される。その貫通穴には、回転軸24が配置される。蓋体20と回転軸24の隙間は、磁性流体シール部23によってシールされる。回転軸24の下端部は、昇降部25のアーム26に回転自在に支持される。回転軸24の上端部には、回転プレート27が設けられる。回転プレート27上には、保温台28を介して基板保持具30が設置される。
【0016】
基板保持具30は、複数枚のウェハ2を鉛直方向に間隔をおいて保持する。複数枚のウェハ2は、それぞれ、水平に保持される。基板保持具30は、例えば石英(SiO2)または炭化珪素(SiC)により形成される。昇降部25を上昇させると、蓋体20および基板保持具30が上昇し、基板保持具30が処理容器11の内部に搬入され、処理容器11の下端の開口が蓋体20で密閉される。また、昇降部25を下降させると、蓋体20および基板保持具30が下降し、基板保持具30が処理容器11の外部に搬出される。また、回転軸24を回転させると、回転プレート27と共に基板保持具30が回転する。
【0017】
基板処理装置10は、3本のガス供給管40A、40B、40Cを有する。ガス供給管40A、40B、40Cは、例えば石英(SiO2)により形成される。ガス供給管40A、40B、40Cは、処理容器11の内部にガスを供給する。ガスの種類については後述する。なお、1本のガス供給管が1種類又は複数種類のガスを順番に吐出してもよい。また、複数本のガス供給管が同じ種類のガスを吐出してもよい。
【0018】
ガス供給管40A、40B、40Cは、マニホールド14を水平に貫通する水平管43A、43B、43Cと、処理容器11の内部に鉛直に配置される鉛直管41A、41B、41Cを有する。鉛直管41A、41B、41Cは、鉛直方向に間隔をおいて複数の給気口42A、42B、42Cを有する。水平管43A、43B、43Cに供給されたガスは、鉛直管41A、41B、41Cに送られ、複数の給気口42A、42B、42Cから水平に吐出される。鉛直管41Cは、プラズマボックス19内に配置されている。鉛直管41A、41Bは、処理容器11内に配置されている。
【0019】
基板処理装置10は、排気管45を有する。排気管45は、図示しない排気装置に接続される。排気装置は、真空ポンプを含み、処理容器11の内部を排気する。処理容器11の内部を排気すべく、処理容器の本体12には排気口18が形成される。その排気口18は、給気口42A、42B、42Cと対向するように配置される。給気口42A、42B、42Cから水平に吐出されたガスは、排気口18を通った後、排気管45から排気される。排気装置は、処理容器11の内部のガスを吸引して除害装置に送る。除害装置は、排気ガスの有害成分を除去したうえで排気ガスを大気に放出する。
【0020】
基板処理装置10は、更に加熱部60を有する。加熱部60は、処理容器11の外部に配置され、処理容器11の外側から処理容器11の内部を加熱する。例えば、加熱部60は、処理容器の本体12を取り囲むように円筒形状に形成される。加熱部60は、例えば電気ヒータで構成される。加熱部60は、処理容器11の内部を加熱することにより、処理容器11内に供給されるガスの処理能力を向上させる。
【0021】
[プラズマボックス]
図2は、実施形態に係る整合器及び電極との接続回路例を示す図である。
図1及び
図2に示すように、処理容器の本体12の周方向の一部には開口部17が形成される。その開口部17を囲むように、プラズマボックス19が処理容器11の側面に形成される。プラズマボックス19は、処理容器の本体12から径方向外方に突き出すように形成され、例えば鉛直方向視でU字状に形成される。
【0022】
プラズマボックス19を挟むように一対の電極対91、92が配置される。電極対91、92は、プラズマボックス19の外側に対面して設置した一対の並行電極である。電極対91、92は、鉛直管41Cと同様に、互いに対向して鉛直方向に細長く形成される。電極対91、92は、整合器53を介してRF電源55に接続され、RF電源55から高周波電圧を印加される。
【0023】
整合器53は、電圧供給ラインLD1、LD2及び電圧供給ライン54を介してRF電源55と電極対91、92との間に直列に接続されている。整合器53と電極対91、92との間には第1スイッチa及び第2スイッチbが配置されている。第1スイッチa及び第2スイッチbは、整合器53の内部に設けられてもよく、整合器53の外部に設けられてもよい。本実施形態では、第1スイッチa及び第2スイッチbは、整合器53の外部に設けられている。整合器53は、第1可変コンデンサ57(C1)、第2可変コンデンサ58(C2)及びコイル61,62(L1、L2:固定インダクタンス)を含む。さらに、整合器53は、センサー59及びVppセンサー56を含む。第1スイッチa、コイル61及びセンサー59は、電極91側から順に、電圧供給ラインLD1に直列に接続されている。第2スイッチb及びコイル62は、電極92側から順に、電圧供給ラインLD2に直列に接続されコイル62の一端は接地されている。Vppセンサー56、第1可変コンデンサ57及び第2可変コンデンサ58は、電極対91,92側から順に、電圧供給ラインLD1、LD2に並列に接続されている。
【0024】
図1に示すように、基板処理装置10は、制御装置100を有する。制御装置100は、後述する着火制御方法により第1スイッチa及び第2スイッチbの設定を制御する。また、制御装置100は、センサー59にRF電源55から電極対91,92に印加された高周波電圧に対する反射波を検出させ、検出した反射波に応じて第1可変コンデンサ57及び第2可変コンデンサ58の機械調整位置を変更する。機械調整位置の変更は、第1可変コンデンサ57及び第2可変コンデンサ58用のそれぞれのモータ(図示しない)の回動を制御する。これにより、第1可変コンデンサ57及び第2可変コンデンサ58の容量C1,C2をそれぞれ調整する。これにより、整合器53は自身のインピーダンスを調節することで、RF電源55の出力インピーダンスとプラズマ側の負荷インピーダンスとの整合を行う。Vppセンサー56は、電極対91、92の間にかかる電圧(
図2の距離D1間の電圧)を検出する。第1スイッチaが配置された電圧供給ラインLD1にかかる電圧、第2スイッチbが配置された電圧供給ラインLD2にかかる電圧を別々に検出するセンサーが設けられてもよい。
【0025】
[ガス供給]
プラズマボックス19は、反応ガスの一例である改質ガス及び窒化ガス用の鉛直管41Cを収容する。改質ガスは、鉛直管41Cの給気口42Cから開口部17に向けて水平に吐出され、開口部17を介して処理容器の本体12の内部に供給される。同様に、窒化ガスは、鉛直管41Cの給気口42Cから開口部17に向けて水平に吐出され、開口部17を介して処理容器の本体12の内部に供給される。
【0026】
原料ガス用の鉛直管41A、41Bは、プラズマボックス19の外部であって、処理容器の本体12の内部の開口部17の外側に配置される。なお、鉛直管41Bを窒化ガス用としてプラズマボックス19の内部に配置し、改質ガス用の鉛直管41Cと分けて各ガスを供給してもよい。
【0027】
電極対91、92の間に高周波電圧を印加することにより、プラズマボックス19の内部空間に高周波電界が印加される。改質ガスは、プラズマボックス19の内部空間において、高周波電界によってプラズマ化される。改質ガスが窒素ガスを含む場合、窒素ガスがプラズマ化され、窒素ラジカルが生成される。改質ガスが水素ガスを含む場合、水素ガスがプラズマ化され、水素ラジカルが生成される。改質ガスがアンモニアガスを含む場合、アンモニアガスがプラズマ化され、アンモニアラジカルが生成される。これらの活性種は、開口部17を介して処理容器の本体12の内部に供給され、Si含有層を改質する。
【0028】
Si含有層の改質は、例えば、Si含有層に含まれるハロゲン元素を除去することを含む。ハロゲン元素を除去することで、Siの未結合手を形成できる。その結果、Si含有層を活性化でき、Si含有層の窒化を促進できる。Si含有層の窒化は、実施形態ではSi含有層の改質の後に行われる。
【0029】
図3は、実施形態に係る基板処理装置10のガス供給部及び制御装置の説明図である。基板処理装置10では、ガス供給部は、原料ガス供給源70と、改質ガス供給源75と、窒化ガス供給源80とを有する。原料ガス供給源70は、処理容器11の内部に原料ガスを供給する。原料ガスは、窒化される元素(例えばシリコン)を含むものである。
【0030】
原料ガスとしては、例えば、ジクロロシラン(DCS)ガスが用いられる。なお、実施形態の原料ガスはDCSガスであるが、本開示の技術はこれに限定されない。原料ガスとして、DCSガスの他にモノクロロシラン(MCS:SiH3Cl)ガス、トリクロロシラン(TCS:SiHCl3)ガス、シリコンテトラクロライド(STC:SiCl4)ガス、ヘキサクロロジシラン(HCDS:Si2Cl6)ガス等を使用できる。これらのガスをウェハ2に供給することにより、シリコン(Si)を含む層(Si含有層)をウェハ2に形成できる。原料ガスがハロゲン元素を含むため、Si含有層はSiの他にハロゲン元素を含む。
【0031】
原料ガス配管72は、原料ガス供給源70とガス供給管40A、40Bとを接続し、原料ガス供給源70からガス供給管40A、40Bに原料ガスを送る。原料ガスは、鉛直管41A、41Bの給気口42A、42Bから、ウェハ2に向けて水平に吐出される。原料ガス流量制御弁73は、原料ガス配管72の途中に設けられ、原料ガスの流量を制御する。
【0032】
改質ガス供給源75は、処理容器11の内部に改質ガスを供給することにより、Si含有層を改質する。Si含有層の改質は、例えば、Si含有層に含まれるハロゲン元素を除去することを含む。ハロゲン元素を除去することで、Siの未結合手(Dangling Bond)を形成できる。その結果、Si含有層を活性化でき、Si含有層の窒化を促進できる。改質ガスは、窒素ガス、水素ガス、アンモニアガス、又はこれらのガスのいずれかを含むガスを用いることができる。
【0033】
改質ガス配管77は、改質ガス供給源75とガス供給管40Cとを接続し、改質ガス供給源75からガス供給管40Cに改質ガスを送る。改質ガスは、鉛直管41Cの給気口42Cから、ウェハ2に向けて水平に吐出される。改質ガス流量制御弁78は、改質ガス配管77の途中に設けられ、改質ガスの流量を制御する。
【0034】
窒化ガス供給源80は、処理容器11の内部に窒化ガスを供給することにより、Si含有層を窒化する。窒化ガスとしては、例えば、アンモニア(NH3)ガス、有機ヒドラジン化合物ガス、アミン系ガス、NOガス、N2Oガス、またはNO2ガスが用いられる。有機ヒドラジン化合物ガスとしては、例えば、ヒドラジン(N2H4)ガス、ジアゼン(N2H2)ガス、またはモノメチルヒドラジン(MMH)ガスなどが用いられる。アミン系ガスとしては、例えば、モノメチルアミンガスなどが用いられる。
【0035】
窒化ガス配管82は、窒化ガス供給源80とガス供給管40Cとを接続し、窒化ガス供給源80からガス供給管40Cに窒化ガスを送る。窒化ガスは、鉛直管41Cの給気口42Cから、ウェハ2に向けて水平に吐出される。窒化ガス流量制御弁83は、窒化ガス配管82の途中に設けられ、窒化ガスの流量を制御する。
【0036】
更に、図示しないパージガス供給源が設けられてもよい。処理容器11の内部にパージガスを供給することにより、処理容器11の内部に残留する原料ガス、改質ガス、および窒化ガスを除去する。パージガスとしては、例えば不活性ガスが用いられる。不活性ガスとしては、Arガス等の希ガス、またはN2ガスが用いられる。
【0037】
図3に示すように、基板処理装置10を制御する制御装置100は、例えばコンピュータで構成され、CPU(Central Processing Unit)101と、メモリ102とを備える。メモリ102には、基板処理装置10において実行される各種の処理を制御するプログラムが格納される。制御装置100は、メモリ102に記憶されたプログラムをCPU101に実行させることにより、基板処理装置10の動作を制御する。また、制御装置100は、メモリ102に記憶されたレシピをCPU101に実行させることにより、基板処理装置10に所望のプロセスを実行させる。レシピには、着火制御方法及び成膜方法の各ステップの条件が設定されている。また、制御装置100は、入力インターフェース103と、出力インターフェース104とを備える。制御装置100は、入力インターフェース103で外部からの信号を受信し、出力インターフェース104で外部に信号を送信する。
【0038】
かかるプログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体に記憶されていたものであって、その記憶媒体から制御装置100のメモリ102にインストールされたものであってもよい。コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体としては、例えば、ハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルデスク(MO)、メモリーカードなどが挙げられる。なお、プログラムは、インターネットを介してサーバからダウンロードされ、制御装置100のメモリ102にインストールされてもよい。
【0039】
[スイッチの設定]
基板処理装置10にて実行される着火制御方法は、レシピに基づき基板処理装置10により実行されるプロセスの間に第1スイッチa及び第2スイッチbを設定するステップと、第1スイッチa及び第2スイッチbの設定後、RF電源55から高周波電圧を印加することにより、改質ガス又は窒化ガスから生成するプラズマを着火させる領域を選択するステップと、を含む。
【0040】
図2に示すように、第1スイッチaは、プラズマボックス19を挟んで配置された電極対91、92のうちの一方の電極91と整合器53とを接続する電圧供給ラインLD1に配置された第1スイッチの一例である。第2スイッチbは、電極対91、92のうちの他方の電極91と整合器53とを接続する電圧供給ラインLD2に配置された第2スイッチの一例である。
【0041】
制御装置100は、第1スイッチa及び第2スイッチbの設定を制御することにより、プラズマを着火させる領域をプラズマボックス19と処理容器11とから選択するように制御することができる。第1スイッチa及び第2スイッチbの設定と、プラズマ着火領域の選択について、
図4を参照しながら説明する。
図4は、実施形態に係る電圧供給ラインLD1、LD2及び電極間の電圧の一例を示す図である。
【0042】
図4は、第1スイッチa及び第2スイッチbのオン及びオフを設定したときの電圧供給ラインLD1の電圧、電圧供給ラインLD2の電圧、電極間電圧Vppを示す。Vppは、
図2の距離D1の電極対91,92間の電圧であり、LD1の電圧に、LD2の逆位相の電圧を加算した値を持つ。
【0043】
図4(a)は、第1スイッチa及び第2スイッチbをオン(接続)したときの電圧供給ラインLD1の電圧、電圧供給ラインLD2の電圧、電極間電圧Vppを示す。LD1の電圧とLD2の電圧とは、位相が180°反転しており、LD1の電圧に、LD2の逆位相の電圧を加算した電極間電圧Vppのピーク・ツー・ピークの電圧は最大となる。
【0044】
図4(b)は、第1スイッチaをオフ(切断)し、第2スイッチbをオンしたときの電圧供給ラインLD1の電圧、電圧供給ラインLD2の電圧、電極間電圧Vppを示す。第1スイッチaをオフしているため、電圧供給ラインLD1の電圧は0であり、電圧供給ラインLD2の電圧の逆位相の電圧が電極間電圧Vppとなる。
【0045】
図4(c)は、第1スイッチaをオンし、第2スイッチbをオフしたときの電圧供給ラインLD1の電圧、電圧供給ラインLD2の電圧、電極間電圧Vppを示す。第2スイッチbをオフしているため、電圧供給ラインLD2の電圧は0であり、電圧供給ラインLD1の電圧が電極間電圧Vppとなる。
【0046】
図4(a)に示すように、第1スイッチa及び第2スイッチbをオンしたとき、電極間電圧Vppのピーク・ツー・ピークの電圧(振幅)は最大になる。このため、電極対91,92に、プラズマボックス19にてプラズマが着火し易い最大電圧がかかり、プラズマボックス19に選択的にプラズマが着火される。
【0047】
図4(b)及び(c)に示すように、第1スイッチa及び第2スイッチbの一方をオンし、他方をオフしたとき、電極間電圧Vppのピーク・ツー・ピークの電圧(振幅)は第1スイッチa及び第2スイッチbをオンしたときの半分程度になる。この結果、第1スイッチa及び第2スイッチbのいずれか一方をオン、他方をオフに設定することにより、プラズマボックス19よりも処理容器11の領域にてプラズマが着火し易い電圧がかかり、処理容器11に選択的にプラズマが着火される。このようにして、プロセス中に第1スイッチa及び第2スイッチbのオン・オフを設定することにより、基板処理装置10内にてプラズマを着火させる領域の選択性を高めることができる。
【0048】
なお、プロセスの前(プロセスの開始時)に、第1スイッチa及び第2スイッチbを設定するステップを有し、プロセスを開始した後であってプロセスの間に再度第1スイッチa及び第2スイッチbを設定する。例えば、プロセスの開始時には、第1スイッチa及び第2スイッチbをオンの状態に設定してもよいし、オフの状態に設定してもよい。
【0049】
[整合器:変形例1]
基板処理装置10にて実行される着火制御方法は、
図5に示す変形例1に係る整合器及び電極との接続回路を用いて実行してもよい。
図5は、変形例1に係る整合器53a及び電極対91、92との接続回路例を示す図である。
【0050】
変形例1では、整合器53aの構成は、
図2に示す整合器53の構成と同じである。変形例1では、第1スイッチa及び第2スイッチbは存在せず、第3スイッチcが設けられる。第3スイッチcは、プラズマボックス19を挟んで配置された電極対91、92のうちの一方と整合器53aのグランド電位GDとを接続する電圧供給ラインLD3に配置される。電圧供給ラインLD3は、電圧供給ラインLD2から分岐し、グランド電位に接続されている。第3スイッチcは、整合器53aの内部に設けられてもよいし、整合器53aの外部に設けられてもよい。本実施形態では、第3スイッチcは、整合器53aの外部に設けられている。なお、変形例1では、電圧供給ラインLD1にスイッチは設けられていない。
【0051】
図6は、変形例1に係る電圧供給ライン及び電極間の電圧の一例を示す図である。
図6(a)は、第3スイッチcをオフ(切断)したときの電圧供給ラインLD1の電圧、電圧供給ラインLD2の電圧、電極間電圧Vppを示す。電圧供給ラインLD1の電圧と電圧供給ラインLD2の電圧とは、位相が180°反転しており、LD1の電圧に、LD2の逆位相の電圧を加算した電極間電圧Vppのピーク・ツー・ピークの電圧は最大となる。
【0052】
図6(b)は、第3スイッチcをオン(接続)したときの電圧供給ラインLD1の電圧、電圧供給ラインLD2の電圧、電極間電圧Vppを示す。第3スイッチcをオンしているため、電圧供給ラインLD2の電圧は0であり、電圧供給ラインLD1の電圧が電極間電圧Vppとなる。
【0053】
図6(a)に示すように、第3スイッチcをオフしたとき、電極間電圧Vppのピーク・ツー・ピークの電圧(振幅)は最大になる。このため、電極対91,92にプラズマボックス19にてプラズマが着火し易い電圧がかかり、プラズマボックス19にてプラズマが着火される。
【0054】
図6(b)に示すように、第3スイッチcをオンしたとき、電極間電圧Vppのピーク・ツー・ピークの電圧(振幅)は第3スイッチcをオフしたときの半分程度になる。この結果、第3スイッチcの設定により、プラズマボックス19よりも処理容器11にてプラズマが着火し易い電圧に制御される。このため、処理容器11にてプラズマが着火される。このようにして、プロセス中に第3スイッチcの設定を制御することにより、基板処理装置10内のプラズマを着火させる領域をプラズマボックス19と処理容器11とから選択することができ、プラズマ着火領域の選択性を高めることができる。
【0055】
図7(a)は、変形例2に係る整合器53b及び電極対91、92との接続回路例を示す図である。
図7(b)は、変形例3に係る整合器53c及び電極対91、92との接続回路例を示す図である。
【0056】
図7(a)に示す変形例2の整合器53bと
図2に示す整合器53との構成上の相違は、変形例2では、
図2に示す整合器53のコイル62の替わりにコンデンサ63(C3)が配置されている点であり、他の構成は同一である。
【0057】
図7(b)に示す変形例3の整合器53cと
図5に示す整合器53aとの構成上の相違は、変形例3では、
図5に示す整合器53aのコイル62の替わりにコンデンサ63(C3)が配置されている点であり、他の構成は同一である。
【0058】
図7(a)及び(b)のコンデンサ63は、可変コンデンサであってもよいし、固定コンデンサであってもよい。本実施径債では、コンデンサ63は、固定コンデンサである。
【0059】
図2、
図5及び
図7に示す回路は、着火制御方法を実現するための整合器及び電極との接続回路の一例にすぎず、構成はこれに限らない。例えば、第1可変コンデンサ57及び第2可変コンデンサ58は、可変コイルであってもよい。また、整合器は、電子マッチャーでもよい。
【0060】
<第1実施形態>
[着火制御方法及び成膜方法]
次に、第1実施形態に係る着火制御方法及び成膜方法について、
図8及び
図9を参照しながら説明する。
図8は、第1実施形態に係る着火制御方法及び成膜方法を示すフローチャートである。
図9は、第1実施形態に係る着火制御方法及び成膜方法を示すタイムチャートである。本例の着火制御方法は、基板処理装置10により実行され、制御装置100により制御される。基板処理装置10は、複数のウェハ2を処理容器に収容し、複数のステップを繰り返し実行するALD(Atomic Layer Deposition)法で複数のウェハ2に窒化膜を成膜するプロセスを実行する。なお、成膜される膜は、窒化膜に限られない。また、本例の着火制御方法は、
図2の回路構成を例に挙げて説明する。ただし、本例の着火制御方法は、
図5、
図7(a)(b)のいずれかの回路構成を用いて実行してもよい。
【0061】
本方法が開始されると、ステップS1において制御装置100は、ウェハ2を保持する基板保持具30を処理容器11の内部に搬入し、準備する。ステップS1では、処理容器11の外部で、搬送装置が複数のウェハ2を基板保持具30に載せる。基板保持具30は、複数のウェハ2を鉛直方向に間隔をおいて水平に保持する。次いで、昇降部25を上昇させ、蓋体20および基板保持具30を上昇させる。基板保持具30と共にウェハ2が処理容器11の内部に搬入され、処理容器11の下端の開口が蓋体20で密閉される。
【0062】
図9のタイムチャートの時刻t0は初期状態を示し、第1スイッチa及び第2スイッチbはオフの状態になっている。また、時刻t0において、原料ガス、改質ガス、窒化ガス、プラズマ化(RF電源55からの高周波電圧の印加)は行われておらず、パージガスのみ供給されている。パージガスは、窒素ガスであってもよいし、アルゴンガスであってもよいし、その他の不活性ガス又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0063】
次に、ステップS2において制御装置100は、第1スイッチaをオフ(切断)の状態に設定し、第2スイッチbをオン(接続)の状態に初期設定する。
【0064】
次に、ステップS3において制御装置100は、原料ガスを供給し、原料ガスを基板に吸着させる。ステップS3では、制御装置100は、Si含有層を形成する。原料ガスの供給は、
図9に示す時刻t1から時刻t2まで行われる。時刻t1から時刻t2の間、パージガスの供給は停止される。
【0065】
ステップS3では、排気管45に接続された排気装置によって処理容器11の内部を排気しつつ、原料ガス供給源70から原料ガスを処理容器11の内部に供給する。原料ガスは、例えばジクロロシラン(DCS)ガスである。これにより、Si含有層がウェハ2上に形成される。ステップS3の時間は、例えば1秒以上10秒以下である。
【0066】
次に、ステップS4において制御装置100は、パージステップを行う。ステップS4は、
図9に示す時刻t2から時刻t3まで行われる。制御装置100は、
図9の時刻t2にて原料ガスの供給を停止し、排気装置によって処理容器11の内部を排気しつつ、パージガスを処理容器11の内部に供給する。これにより、処理容器11の内部に残留するガスをパージガスで置換する。ステップS4の時間は、例えば3秒以上10秒以下である。パージガスは、窒化ガス供給源80等から供給されてよい。
【0067】
次に、ステップS5~S7において制御装置100は、スイッチの設定及び改質ステップを行う。制御装置100は、プラズマを生成するステップS6、S7においてプラズマを生成する前に、ステップS5においてスイッチを設定する。ステップS5は、
図9に示す時刻t3に行われ、第1スイッチaをオンに設定する。これにより、第1スイッチa及び第2スイッチbがオンに設定されることによって、電極対91,92にはプラズマボックス19にてプラズマが着火し易い最大電圧がかかり、ステップS7においてプラズマボックス19に選択的にプラズマが着火される。
【0068】
ステップS6、S7は、
図9に示す時刻t3から時刻t4まで行われる。時刻t3から時刻t4の間、パージガスの供給は停止される。ステップS6では、排気装置によって処理容器11の内部を排気しつつ、改質ガス供給源75によって改質ガスを処理容器11の内部に供給する。また、ステップS6において、RF電源55から高周波電圧を印加する。これにより、プラズマボックス19においてプラズマ着火させ、改質ガスをプラズマ化し、ウェハ2上のSi含有層を改質する。
【0069】
ステップS5~S7により、実施形態に係る着火制御方法が実行される。このとき、制御装置100は、プラズマ着火する領域が、プラズマボックス19又は処理容器11のいずれかに選択されるように第1スイッチa及び第2スイッチbのオン・オフの状態を制御する。ステップS5~S7は、第1スイッチa及び第2スイッチbをオンに設定し、プラズマ着火する領域がプラズマボックス19になるよう選択する例である。
【0070】
改質ガスは、例えば窒素ガスである。改質ガスは、水素ガスまたはアンモニアガスであってもよい。改質ガスは、窒素ガスを含むガス又は水素ガスを含むガスであってもよい。プラズマ化した改質ガスで、Si含有層を改質する。Si含有層の改質は、例えば、Si含有層に含まれるハロゲン元素を除去することを含む。ハロゲン元素を除去することで、Siの未結合手を形成できる。その結果、Si含有層を活性化でき、Si含有層の窒化を促進できる。RF電源55の高周波の周波数は、例えば13.56MHz又は14.56MHzである。ステップS7~S9の時間は、例えば3秒以上60秒以下である。
【0071】
次に、ステップS8において制御装置100は、パージステップを行う。ステップS8は、
図9に示す時刻t4から時刻t5まで行われる。制御装置100は、
図9の時刻t4に改質ガスの供給を停止し、高周波電圧の印加を停止する。また、排気装置によって処理容器11の内部を排気しつつ、パージガスを処理容器11に供給し、処理容器11の内部に残留するガスをパージガスで置換する。ステップS8の時間は、例えば3秒以上10秒以下である。パージガスは、窒素ガス等であってよく、窒化ガス供給源80等から供給されてよい。
【0072】
次に、ステップS9~S11において制御装置100は、スイッチの設定及び窒化ステップを行う。ステップS9~S11は、
図9に示す時刻t5から時刻t6まで行われる。時刻t5から時刻t6の間、パージガスの供給は停止される。制御装置100は、プラズマを生成するステップS10、S11においてプラズマを生成する前に、ステップS9において第1スイッチa及び第2スイッチbをオンに設定する。これにより、電極対91,92にプラズマボックス19にてプラズマが着火し易い最大電圧がかかり、ステップS11においてプラズマボックス19に選択的にプラズマが着火される。ただし、ステップS9は、第1スイッチa及び第2スイッチbがすでにオンの状態であれば、省略することができる。
図9の例では時刻t5に第1スイッチa及び第2スイッチbはオンの状態であるため、ステップS9を省略する。
【0073】
ステップS10では、排気装置によって処理容器11の内部を排気しつつ、窒化ガス供給源80によって窒化ガスを処理容器11の内部に供給する。また、ステップS10において、RF電源55から高周波電圧を印加する。これにより、プラズマボックス19においてプラズマ着火させ、窒化ガスをプラズマ化し、ウェハ2上のSi含有層を窒化する。
【0074】
ステップS9~S11により、実施形態に係る着火制御方法が実行される。このとき、制御装置100は、プラズマ着火する領域が、プラズマボックス19又は処理容器11のいずれかに選択されるように第1スイッチa及び第2スイッチbのオン・オフの状態を制御する。ステップS9~S11は、第1スイッチa及び第2スイッチbをオンに設定し、プラズマ着火する領域がプラズマボックス19になるよう選択する例である。
【0075】
窒化ガスは、例えばアンモニアガスである。プラズマ化したアンモニアガスで、Si含有層を窒化する。ステップS9~S11の時間は、例えば5秒以上120秒以下である。
【0076】
次に、ステップS12において制御装置100は、パージステップを行う。ステップS12は、
図9に示す時刻t6から時刻t7まで行われる。制御装置100は、
図9の時刻t6にて窒化ガスの供給を停止し、高周波電圧の印加を停止する。また、排気装置によって処理容器11の内部を排気しつつ、パージガスを処理容器11の内部に供給し、処理容器11の内部に残留するガスをパージガスで置換する。ステップS12の時間は、例えば3秒以上10秒以下である。パージガスは、窒素ガス等であってよく、窒化ガス供給源80等から供給されてよい。
【0077】
次に、ステップS13において制御装置100は、設定回数N(N≧1)より多く繰り返したかを判定する。設定回数Nは予め設定されている。制御装置100は、設定回数Nより多く繰り返していないと判定すると、ステップS14に進み、スイッチの設定を行った後、ステップS3に戻り、ステップS3~ステップS12のサイクルを繰り返す。ステップS14では、制御装置100は、第1スイッチaをオフに設定する。ただし、第1スイッチa又は第2スイッチbのいずれかをオフに設定してもよい。
【0078】
ステップS13において制御装置100は、設定回数Nより多く繰り返したと判定すると、面内均一性の高い所望の膜厚及び膜質のシリコン窒化膜が形成されたので、本処理を終了する。
【0079】
[効果]
以上に説明した成膜方法では、パージステップは省略できる。また、改質ステップ(S5~S7)を省略できる場合がある。実施形態に係る成膜方法は、レシピに基づき次のプロセスを実行する成膜方法であり、そのプロセスは、(a)原料ガスを供給し、原料ガスを基板に吸着させるステップと、(b)反応ガスを供給し、反応ガスから生成されたプラズマにより基板に吸着した原料ガスを反応させるステップと、を含み、(b)のステップにおいて、実施形態に係る着火制御方法を実行する。つまり、(b)のステップにおいて、スイッチを設定し、これによりプラズマ着火させる領域をプラズマボックスと処理容器とから選択することができる。
【0080】
また、本実施形態にかかる成膜方法は、基板処理装置10にて実行され、レシピに基づき以下のプロセスを実行する成膜方法であってもよい。このプロセスは、少なくとも1つのステップを含む第1シーケンスを第1設定回数実行するステップと、第1シーケンスの実行後、少なくとも1つのステップを含む第2シーケンスを第2設定回数実行するステップと、を含む。第1シーケンスのステップと第2シーケンスのステップのうちガスからプラズマを生成するステップにおいてスイッチの設定後、RF電源から高周波電圧を印加することにより、プラズマを着火させる領域を選択することができる。
【0081】
例えば、第1シーケンスと第2シーケンスとの間に、高周波電圧をオンに設定したままで、ガス種を一のガスから他のガスに変え、プラズマ着火領域を変えたい場合がある。これまでは、第1シーケンスと第2シーケンスとの間でガスを変えると、高周波電圧の反射波が大きくなり、異常放電が発生する場合がある。このため、高周波電圧をオフに設定した後にガスを変えて、その後再び高周波電圧をオンに設定し、プラズマ着火領域を変えるシーケンスを行っていた。この方法では、生産性を高めることが困難である。
【0082】
これに対して、本実施形態に係る着火制御方法では、高周波電圧をオフにせずにガスを変えてプラズマ着火領域を制御しても異常放電を生じさせずに、プラズマ着火させる領域をプラズマボックス19と処理容器11とから選択することができる。これにより、ウェハ2上に形成された膜の膜厚及び膜質の制御性を高めることができる。
【0083】
例えば、
図9の時刻t4から時刻t5の間のパージを行わずに、ガスを改質ガスから窒化ガスに変え、時刻t4から時刻t5まで高周波電圧をオフせずにオンの状態を維持し、プラズマを生成することができる。この場合にも、第1スイッチa及び第2スイッチbのオン・オフを設定することにより、基板処理装置10内にてプラズマを着火させる領域をプラズマボックス19と処理容器11とから選択することができる。
【0084】
これにより、プラズマボックス19でプラズマ着火し、次に処理容器11でプラズマ着火するような2段階のプロセスやALD法のようにガスをサイクリックに変えるプロセスにおいても、プロセス中に基板保持具30を処理容器11外に出す必要がない。例えば、次の第2実施形態のように、プロセス中にガス種の変更や圧力の変更等、プロセス条件に応じて、プラズマ着火領域を確実に制御できるため、ウェハ2上に形成された膜の膜厚の面内均一性及び膜質の向上の要求をより満足するプロセスを実現できる。
【0085】
<第2実施形態>
[着火制御方法及び成膜方法]
次に、第2実施形態に係る着火制御方法及び成膜方法について、
図10を参照しながら説明する。
図10は、第2実施形態に係る着火制御方法及び成膜方法を示すフローチャートである。本例の着火制御方法は、基板処理装置10により実行され、制御装置100により制御される。基板処理装置10は、制御装置100による制御に従い、第1シーケンス、第2シーケンス、第3シーケンスの順にALD法による成膜処理を行う。本例の着火制御方法は、
図2の整合器53の構成を例に挙げて説明する。成膜処理により形成される膜はガスA~ガスGによる。
【0086】
本方法が開始されると、ステップS21において制御装置100は、ウェハ2を保持する基板保持具30を処理容器11の内部に搬入し、準備する。
【0087】
次に、ステップS22において制御装置100は、第1スイッチa及び第2スイッチbを設定する。プラズマ着火したい領域がプラズマボックス19である場合、第1スイッチa及び第2スイッチbをオンに設定する。制御装置100は、プラズマ着火したい領域が処理容器11内である場合、第1スイッチa及び第2スイッチbの一方又は両方をオフに設定する。
【0088】
次に、ステップS23において制御装置100は、ガスAを供給し、ガスAを用いて処理P1を実行する。例えば、ステップS23の処理P1ではではプラズマを用いず、ガスAをウェハ2に吸着させる。次に、ステップS24において制御装置100は、ガスAの供給を停止し、パージガスを処理容器11の内部に供給し、処理容器11の内部に残留するガスAをパージガスで置換する。
【0089】
次に、ステップS25において制御装置100は、ガスBを供給し、高周波電圧を印加する。そして、ステップS26において制御装置100は、ガスBをプラズマ化し、ガスBにより生成されたプラズマを用いて処理P2を実行する。例えば、処理P2ではガスBのプラズマによりウェハ2に形成された膜を改質させたり、膜の化学反応を促進させたりする。次に、ステップS27において制御装置100は、高周波電圧の印加を停止し、ガスBの供給を停止し、パージガスを処理容器11の内部に供給し、処理容器11の内部に残留するガスBをパージガスで置換する。
【0090】
次に、ステップS28において制御装置100は、ガスCを供給し、高周波電圧を印加する。そして、ステップS29において制御装置100は、ガスCをプラズマ化し、ガスCにより生成されたプラズマを用いて処理P3を実行する。例えば、処理P3ではガスCのプラズマによりウェハ2に形成された膜を改質させたり、膜の窒化や酸化等、膜の化学反応を促進させたりする。次に、ステップS30において制御装置100は、高周波電圧の印加を停止し、ガスCの供給を停止し、パージガスを処理容器11の内部に供給し、処理容器11の内部に残留するガスCをパージガスで置換する。
【0091】
次に、ステップS31において制御装置100は、第1設定回数N1(N1≧1)より多く繰り返したかを判定する。制御装置100は、第1設定回数N1より多く繰り返していないと判定すると、ステップS23に戻り、ステップS23~ステップS30のサイクルを繰り返す。
【0092】
ステップS31において制御装置100は、第1設定回数N1より多く繰り返したと判定すると、所望の膜厚及び膜質の膜が形成されたので、第1シーケンスから第2シーケンスに移行し、ステップS32においてスイッチを設定する。
【0093】
ステップS32において制御装置100は、ステップS36及びS39においてプラズマ着火したい領域がプラズマボックス19である場合、第1スイッチa及び第2スイッチbをオンに設定する。制御装置100は、プラズマ着火したい領域が処理容器11内である場合、第1スイッチa及び第2スイッチbの一方をオフに設定し、他方をオンに設定する。
【0094】
次に、ステップS33において制御装置100は、ガスDを供給し、ガスDを用いて処理P4を実行する。次に、ステップS34において制御装置100は、ガスDの供給を停止し、パージガスを処理容器11の内部に供給し、処理容器11の内部に残留するガスDをパージガスで置換する。
【0095】
次に、ステップS35において制御装置100は、ガスEを供給し、高周波電圧を印加する。そして、ステップS36において制御装置100は、ガスEをプラズマ化し、ガスEにより生成されたプラズマを用いて処理P5を実行する。次に、ステップS37において制御装置100は、高周波電圧の印加を停止し、ガスEの供給を停止し、パージガスを処理容器11の内部に供給し、処理容器11の内部に残留するガスEをパージガスで置換する。
【0096】
次に、ステップS38において制御装置100は、ガスFを供給し、高周波電圧を印加する。そして、ステップS39において制御装置100は、ガスFをプラズマ化し、ガスFにより生成されたプラズマを用いて処理P6を実行する。次に、ステップS40において制御装置100は、高周波電圧の印加を停止し、ガスFの供給を停止し、パージガスを処理容器11の内部に供給し、処理容器11の内部に残留するガスFをパージガスで置換する。
【0097】
次に、ステップS41において制御装置100は、第2設定回数N2(N2≧1)より多く繰り返したかを判定する。制御装置100は、第2設定回数N2より多く繰り返していないと判定すると、ステップS33に戻り、ステップS33~ステップS40のサイクルを繰り返す。
【0098】
ステップS41において制御装置100は、第2設定回数N2より多く繰り返したと判定すると、所望の膜厚及び膜質の膜が形成されたので、第2シーケンスから第3シーケンスに移行し、ステップS42においてスイッチを設定する。
【0099】
ステップS42において制御装置100は、第1スイッチa及び第2スイッチbを設定する。プラズマ着火したい領域がプラズマボックス19である場合、第1スイッチa及び第2スイッチbをオンに設定する。制御装置100は、プラズマ着火したい領域が処理容器11内である場合、第1スイッチa及び第2スイッチbの一方をオフに設定し、他方をオンに設定する。
【0100】
次に、ステップS43において制御装置100は、ガスGを供給し、高周波電圧を印加する。そして、ステップS44において制御装置100は、ガスGをプラズマ化し、ガスGにより生成されたプラズマを用いて処理P7を実行する。次に、ステップS45において制御装置100は、高周波電圧の印加を停止し、ガスGの供給を停止し、パージガスを処理容器11の内部に供給し、処理容器11の内部に残留するガスGをパージガスで置換する。
【0101】
次に、ステップS46において制御装置100は、第3設定回数N3(N3≧1)より多く繰り返したかを判定する。制御装置100は、第3設定回数N3より多く繰り返していないと判定すると、ステップS43に戻り、ステップS43~ステップS45のサイクルを繰り返す。
【0102】
ステップS46において制御装置100は、第3設定回数N3より多く繰り返したと判定すると、所望の膜厚及び膜質の積層膜が形成されたので、本処理を終了する。
【0103】
なお、
図10の第2実施形態にかかる着火制御方法及び成膜は一例であり、複数のシーケンスを有していれば、シーケンスの数は3つに限られない。また、各シーケンスはALD法による成膜に限られず、CVD法による成膜、エッチング、クリーニング等であってもよい。
【0104】
各シーケンスの間にスイッチの設定を行い、着火制御方法を実行することにより、各シーケンスにおいてプラズマを着火させる領域を選択することができる。これにより、異常放電を生じさせずにプラズマ着火領域を選択的に変更することができ、ウェハ上に形成された膜の膜厚の面内均一性及び膜質の向上させることができる。
【0105】
以上に説明したように、実施形態の着火制御方法、成膜方法及び基板処理装置によれば、プラズマ着火させる領域をプラズマボックスと処理容器とから選択できる。これにより、ウェハ2上に形成された膜の膜厚及び膜質の制御性を高めることができる。
【0106】
今回開示された実施形態に係る着火制御方法、成膜方法及び基板処理装置は、すべての点において例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で変形及び改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で他の構成も取り得ることができ、また、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【0107】
今回開示された実施形態に係る着火制御方法、成膜方法及び基板処理装置は、すべての点において例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で変形及び改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で他の構成も取り得ることができ、また、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【0108】
本開示の基板処理装置は、Atomic Layer Deposition(ALD)装置、Capacitively Coupled Plasma(CCP)、Inductively Coupled Plasma(ICP)、Radial Line Slot Antenna(RLSA)、Electron Cyclotron Resonance Plasma(ECR)、Helicon Wave Plasma(HWP)のいずれのタイプの装置でも適用可能である。
【符号の説明】
【0109】
10 基板処理装置
11 処理容器
19 プラズマボックス
53、53a~53c 整合器
57 第1可変コンデンサ
58 第2可変コンデンサ
100 制御装置
a 第1スイッチ
b 第2スイッチ
c 第3スイッチ