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特開2024-131913エポキシ樹脂組成物およびその硬化物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131913
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂組成物およびその硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/02 20060101AFI20240920BHJP
   C08K 5/17 20060101ALI20240920BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20240920BHJP
   C08L 69/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
C08G59/02
C08K5/17
C08L63/00 A
C08L63/00 C
C08L69/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042483
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 愛子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 宏記
(72)【発明者】
【氏名】白井 一彰
【テーマコード(参考)】
4J002
4J036
【Fターム(参考)】
4J002CD001
4J002CD021
4J002CD031
4J002CD041
4J002CD051
4J002CD061
4J002CD131
4J002CD201
4J002CG012
4J002EN026
4J002EN036
4J002EN046
4J002ER026
4J002ET016
4J002FD142
4J002FD146
4J002GF00
4J036AB01
4J036AB07
4J036AC01
4J036AC09
4J036AD01
4J036AD07
4J036AD08
4J036AF01
4J036DB02
4J036DC03
4J036DC04
4J036DC05
4J036DC25
4J036DC31
4J036DC48
4J036JA08
(57)【要約】
【課題】優れた曲げ強度と曲げ弾性率を両立するエポキシ樹脂組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】エポキシ樹脂(A)、アミン系化合物(B)、及びポリカーボネートジオール(C)を含む硬化性樹脂組成物であって、前記ポリカーボネートジオール(C)が、下記式(1)で表される化合物に由来する構造単位(I)と、2つの2級水酸基を有し、環構成原子にヘテロ原子を有していてもよい環式脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(II)と、を有する、硬化性樹脂組成物。
HO-R-OH ・・・(1)
(上記式(1)において、Rは置換若しくは無置換の炭素数3~10のアルキレン基であって、Rのアルキレン基中の炭素原子は1~3級の炭素原子である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂(A)、アミン系化合物(B)、及びポリカーボネートジオール(C)を含む硬化性樹脂組成物であって、前記ポリカーボネートジオール(C)が、下記式(1)で表される化合物に由来する構造単位(I)と、2つの2級水酸基を有し、環構成原子にヘテロ原子を有していてもよい環式脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(II)と、を有する、硬化性樹脂組成物。
HO-R-OH ・・・(1)
(上記式(1)において、Rは置換若しくは無置換の炭素数3~10のアルキレン基であって、Rのアルキレン基中の炭素原子は1~3級の炭素原子である。)
【請求項2】
前記ポリカーボネートジオール(C)は、前記構造単位(I)及び前記構造単位(II)の含有割合がモル比で構造単位(I)/構造単位(II)=75/25~45/55である、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリカーボネートジオール(C)は、水酸基価から求めた数平均分子量が500~5000である、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記式(I)におけるRが炭素数4~6のアルキレン基である、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記硬化性樹脂組成物中のポリカーボネートジオール(C)の含有割合が、前記エポキシ樹脂(A)と前記アミン系化合物(B)の合計100質量部に対して2質量部~40質量部である請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物を硬化させてなる硬化物。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物と強化繊維とを含有する繊維強化複合材料。
【請求項8】
請求項6に記載の硬化物と、強化繊維とを含有する繊維強化樹脂成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂とアミン系化合物と特定の構造を有するポリカーボネートジオールとを含むエポキシ樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は、機械的強度、耐熱性、耐湿性、電気特性等に優れた硬化物を与えるために電気・電子部品の封止材料、成形材料、注型材料、積層材料、複合材料、接着剤及び塗料等の幅広い分野に利用されている。その中でも、複合材料分野では炭素繊維強化プラスチックのマトリックス樹脂として、機械特性、耐熱性及び炭素繊維との接着性に優れるエポキシ樹脂が広く利用されている。
【0003】
炭素繊維強化プラスチックはスポーツ・レジャー用途での採用から始まったが、軽量でありながら高強度・高剛性であるという特徴から、近年関心が高まっている環境問題を解決するための材料として、自動車、航空機及び風力発電ブレード等の様々な産業へとその用途を拡大しており、今後さらなる発展が期待される。中でも、軽量化要求などに応えるため、材料の強度を向上させる必要があり、マトリックス樹脂として使用されるエポキシ樹脂組成物は、硬化物の強度・弾性率などの機械物性に優れる硬化物を与えることが要求されている。
【0004】
従来、エポキシ樹脂としては、一般的には、ビスフェノールA型ジグリシジルエーテルが最も多く使用されているが、硬化物の機械物性において不十分であった。そのため、繊維強化複合材料の硬化物の機械物性を上げる為に、配合するエポキシ化合物として例えばアミン型グリシジル化合物を使用する方法が知られている(特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62-1717号公報
【特許文献2】特開2016-84451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者らの詳細な検討により、アミン型グリシジル化合物を有するエポキシ樹脂組成物は、引張強度や曲げ強度を改善するが、弾性率の改善は不十分であることが判明した。本発明は、優れた曲げ強度と曲げ弾性率を両立するエポキシ樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、エポキシ樹脂とアミン系化合物と特定の構造を有するポリカーボネートジオールとを含むエポキシ樹脂組成物から得られた硬化物は、優れた曲げ強度と曲げ弾性率を両立することを見出すに至った。すなわち、本発明は、以下の特徴を有する。
【0008】
[1]エポキシ樹脂(A)、アミン系化合物(B)、及びポリカーボネートジオール(C)を含む硬化性樹脂組成物であって、前記ポリカーボネートジオール(C)が、下記式(1)で表される化合物に由来する構造単位(I)と、2つの2級水酸基を有し、環構成原子にヘテロ原子を有していてもよい環式脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(II)と、を有する、硬化性樹脂組成物。
HO-R-OH ・・・(1)
(上記式(1)において、Rは置換若しくは無置換の炭素数3~10のアルキレン基であって、Rのアルキレン基中の炭素原子は1~3級の炭素原子である。)
[2]前記ポリカーボネートジオール(C)は、前記構造単位(I)及び前記構造単位(II)の含有割合がモル比で構造単位(I)/構造単位(II)=75/25~45/55である、[1]に記載の硬化性樹脂組成物。
[3]前記ポリカーボネートジオール(C)は、水酸基価から求めた数平均分子量が500~5000である、[1]又は[2]に記載の硬化性樹脂組成物。
[4]前記式(I)におけるRが炭素数4~6のアルキレン基である、[1]~[3]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
[5]前記硬化性樹脂組成物中のポリカーボネートジオール(C)の含有割合が、前記エポキシ樹脂(A)と前記アミン系化合物(B)の合計100質量部に対して2質量部~40質量部である[1]~[4]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
[6][1]~[5]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物を硬化させてなる硬化物。
[7][1]~[5]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物と強化繊維とを含有する繊維強化複合材料。
[8][6]に記載の硬化物と、強化繊維とを含有する繊維強化樹脂成形品。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、エポキシ樹脂にアミン系化合物と特定の構造を有するポリカーボネートジオールとを配合することで、優れた曲げ強度と曲げ弾性率を両立したエポキシ樹脂硬化物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
また、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後に記載される数値あるいは物理値は、その値を含む意味で用いることとする。
【0011】
[硬化性樹脂組成物]
本発明の硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂(A)、アミン系化合物(B)、及びポリカーボネートジオール(C)を含む硬化性樹脂組成物であって、前記ポリカーボネートジオール(C)が、下記式(1)で表される化合物に由来する構造単位(I)と、2つの2級水酸基を有し、環構成原子にヘテロ原子を有していてもよい環式脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(II)とを有する硬化性樹脂組成物である。
HO-R-OH ・・・(1)
(上記式(1)において、Rは置換若しくは無置換の炭素数3~10のアルキレン基であって、Rのアルキレン基中の炭素原子は1~3級の炭素原子である。)
【0012】
[エポキシ樹脂(A)]
硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂(A)を成分として含有する。エポキシ樹脂(A)としては、公知のものが使用できる。エポキシ樹脂(A)は、通常1分子当たりのエポキシ基の数が1個以上であり、好ましくは2個以上である。
【0013】
エポキシ樹脂(A)としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂及びグリシジルアミン型エポキシ樹脂が挙げられる。また、ウレタン変性エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、キレ
ート変性エポキシ樹脂等の変性エポキシ樹脂が挙げられる。
【0014】
これらのエポキシ樹脂(A)は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
エポキシ樹脂(A)のエポキシ当量は、好ましくは50g/eq以上であり、より好ましくは60g/eq以上、さらに好ましくは70g/eq以上であり、一方、好ましくは500g/eq以下であり、より好ましくは400g/eq以下、さらに好ましくは300g/eq以下である。エポキシ当量が上記下限値以上であると可撓性の観点で好ましく、上記上限値以下であるとエポキシ樹脂(A)の取り扱いが良好となる傾向にある。なお、本明細書において「エポキシ当量」とは、「1当量のエポキシ基を含むエポキシ樹脂の質量」と定義され、JIS K7236に準じて測定することができる。
【0016】
[アミン系化合物(B)]
硬化性樹脂組成物は、アミン系化合物(B)を成分として含有する。アミン系化合物(B)は、エポキシ樹脂(A)を硬化させるものであり、硬化性樹脂組成物の硬化性及び硬化物特性を調整するために用いられる。アミン系化合物(B)の例としては、脂肪族の一級、二級、三級アミン、芳香族の一級、二級、三級アミン、環状アミン、グアニジン類、尿素誘導体等があり、具体的には、2,5(2,6)-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、イソホロンジアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ビス(4-アミノ-3-メチルジシクロヘキシル)メタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(アミノメチル)ノルボルナン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジエチルジフェニルメタン、ジエチルトルエンジアミン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン(3,3’-DDS)、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(4,4’-DDS)のようなジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジフェニルエーテル(DADPE)、ビスアニリン、ジメチルアニリン、トリエチレンジアミン、ジメチルベンジルアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ベンジルジメチルアニリン、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(MOCA)、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジアミノビフェニル、2,4-ジアミノフェノール、2,5-ジアミノフェノール、o-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、m-キシリレンジアミン、2,3-トリレンジアミン、2,4-トリレンジアミン、2,5-トリレンジアミン、2,6-トリレンジアミン、3,4-トリレンジアミン、メチルチオトルエンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、ジシアンジアミド、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ(4,3,0)-5-ノネン、ジメチル尿素、グアニル尿素等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
硬化性樹脂組成物中、アミン系化合物(B)の含有量は、エポキシ樹脂(A)中の全エポキシ基に対するアミン系化合物(B)のアミノ基の当量比で0.8~1.5の範囲となるように用いることが好ましい。アミン系化合物(B)の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、硬化後の耐熱性が高くなる。アミン系化合物(B)の含有量が前記範囲の上限値以下であれば、硬化性樹脂組成物のポットライフが良好となる。
【0018】
[ポリカーボネートジオール(C)]
硬化性樹脂組成物は、ポリカーボネートジオール(C)を成分として含有する。ポリカーボネートジオール(C)は、分子の両末端に水酸基を有し、主鎖中にカーボネート結合
を有するものであり、下記式(1)で表される化合物に由来する構造単位(I)と、2つの2級水酸基を有し、構成原子にヘテロ原子を有していてもよい環式脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(II)とを有するものである。
HO-R-OH ・・・(1)
(上記式(1)において、Rは置換若しくは無置換の炭素数3~10のアルキレン基であって、Rのアルキレン基中の炭素原子は1~3級の炭素原子である。)
【0019】
式(1)におけるRのアルキレン基が置換基を有する場合、該置換基としては、エーテル基、チオエーテル基、アルキル基置換アミノ基が挙げられる。なお、Rのアルキレン基の上記炭素数はこれらの置換基を有する場合、該置換基を含めた全体の炭素数である。
のアルキレン基の炭素数はポリカーボネートジオール(C)の取扱い性と、硬化物としたときの曲げ強度の観点から4~6であることが好ましい。
【0020】
構造単位(II)を与える具体的な原料ジヒドロキシ化合物としては、イソソルビド、イソマンニド、イソイジド、1,2-シクロペンタンジオール、1,3-シクロペンタンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、3,4-テトラヒドロフランジオールなどが挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。中でも、分子内にヘテロ原子を有し、工業的に製造されているイソソルビドが好ましい。
【0021】
カーボネートジオール(C)中の構造単位(II)は、構成原子にヘテロ原子を有していてもよい環式脂肪族の構造と2つの2級水酸基とを有するジヒドロキシ化合物、好ましくはヘテロ原子を含む環式脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位であり、また、構造単位(I)は脂肪族炭素鎖を有するジオールに由来する構造単位である。
【0022】
ポリカーボネートジオール(C)中の構造単位(I)と構造単位(II)の含有割合は、モル比で構造単位(I)/構造単位(II)=75/25~45/55が好ましく、72/28~48/52がさらに好ましい。構造単位(I)と構造単位(II)の比率における、構造単位(I)が上記上限以下であれば、得られる硬化物の曲げ強度が良好となる。構造単位(I)が上記下限以上であれば、ポリカーボネートジオール(C)の粘度上昇が抑えられ、取扱いが良好となる。
【0023】
ポリカーボネートジオール(C)における構造単位(I)を与えるジオールとしては、例えば、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-1,6-ヘキサンジオールなどが挙げられる。これらの中でも、得られる硬化物の曲げ強度と耐熱性の観点から、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオールが好ましい。
【0024】
ポリカーボネートジオール(C)の水酸基価から求めた数平均分子量(Mn)は、500~5000が好ましく、600~3000がより好ましく、700~2000がさらに好ましい。ポリカーボネートジオール(C)の水酸基価から求めた数平均分子量が上記下限以上であれば、得られる硬化物の曲げ強度が良好となり、上記上限以下であれば、ポリカーボネートジオール(C)の粘度上昇が抑えられ、取扱いが容易となる。
【0025】
硬化性樹脂組成物におけるポリカーボネートジオール(C)の含有割合は、エポキシ樹脂(A)とアミン系化合物(B)の合計を100質量部とした場合、2~40質量部が好ましく、3~35質量部がより好ましく、4~25質量部が特に好ましい。ポリカーボネ
ートジオール(C)の含有割合が上記下限以上であれば、得られる硬化物の曲げ強度が良好となり、上記上限以下であれば、得られる硬化物のガラス転移点の低下を抑制できる。
【0026】
[その他の成分]
硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂(A)、アミン系化合物(B)、ポリカーボネートジオール(C)の他に、任意の成分として硬化促進剤(X)を含有してもよい。硬化促進剤(X)は、エポキシ樹脂(A)の硬化を促進する機能を有する。硬化性樹脂組成物が硬化促進剤(X)を含む場合、硬化促進剤(X)の含有量は、エポキシ樹脂(A)の100質量部に対し、1~20質量部が好ましく、2~10質量部がより好ましい。硬化促進剤(X)の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、硬化速度が良好となる。硬化促進剤(X)の含有量が前記範囲の上限値以下であれば、得られる硬化物の曲げ強度が良好となる。
【0027】
硬化促進剤(X)としては、エポキシ樹脂の熱硬化触媒として用いられている公知のものを使用することができ、例えば、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物;イミダゾール化合物とエポキシ樹脂のアダクト類;トリフェニルホスフィン等の有機リン化合物類;テトラフェニルホスフィンテトラフェニルボレート等のボレート類;ジアザビシクロウンデセン(DBU);テトラアルキルホスホニウム塩、テトラフェニルホスホニウム塩、アルキルトリフェニルホスホニウム塩等のホスホニウム塩;などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
硬化性樹脂組成物を製造する際、必要に応じて更に他の成分を添加してもよい。他の成分としては、例えば酸化防止剤;シリコーンオイル、天然ワックス、合成ワックス等の離型剤;ガラスビーズ、結晶質シリカ、溶融シリカ、ケイ酸カルシウム、アルミナ等の粉体;ガラス繊維、炭素繊維等の繊維;三酸化アンチモン等の難燃剤;ハイドロタルサイト、希土類酸化物等のハロゲントラップ剤;カーボンブラック、ベンガラ等の着色剤;シランカップリング剤;消泡剤、レオロジー調整剤、難燃剤、顔料、染料等が挙げられる。
【0029】
[硬化性樹脂組成物の製造方法]
硬化性樹脂組成物の製造方法に特に制限はなく、公知の方法を使用することができる。例えば、エポキシ樹脂(A)、アミン系化合物(B)及びポリカーボネートジオール(C)と、必要に応じて硬化促進剤(X)及び他の成分を同時に混合してもよく、一部の成分(例えばエポキシ樹脂(A)及びポリカーボネートジオール(C))を予め混合し、その混合物と残りの成分とを混合してもよい。混合方法は特に限定されず、自転・公転ミキサー、三本ロール等のミキシングロール、ニーダー等の公知の混合機を用いることができる。
【0030】
[硬化性樹脂組成物の硬化方法]
硬化性樹脂組成物を硬化させて硬化物とする際の硬化性樹脂組成物の硬化方法は、硬化性樹脂組成物中の配合成分や配合量によっても異なるが、通常80~200℃で1時間~20時間の加熱条件が挙げられる。この加熱は80~160℃で1時間~8時間の一次加熱と、一次加熱温度よりも40~120℃高い120~200℃で1時間~12時間の二次加熱との二段処理で行うことが、硬化不良を少なくするという点で好ましい。
【0031】
[用途]
硬化性樹脂組成物は上記効果を奏することから、硬化させた際の機械物性、特に弾性率と強度に優れる。これらの優れた効果を奏するため、炭素繊維強化プラスチックの分野において好適に用いることができる。
【実施例0032】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
【0033】
[評価方法]
以下の実施例及び比較例においては、下記の方法により各種物性を測定した。
【0034】
(1)ポリカーボネートジオール(C)の水酸基価
JIS K1557-1に準拠して、アセチル化試薬を用いた方法にて、ポリカーボネートジオール(C)の水酸基価を測定した。
また、水酸基価から、下記式(III)により数平均分子量(Mn)を求めた。
数平均分子量=2×56.1/(水酸基価×10-3) ・・・(III)
【0035】
(2)ポリカーボネートジオール(C)における、構造単位(I)と構造単位(II)のモル比率
ポリカーボネートジオールをCDClに溶解し、400MHz H-NMR(日本電子株式会社製「AL-400」)を測定し、各成分のシグナル位置より、構造単位(I)及び構造単位(II)のモル比率をそれぞれ求め、構造単位(I)/構造単位(II)を算出した。
【0036】
(3)曲げ試験(曲げ強度、歪み、弾性率)
下記実施例及び比較例で得られた厚さ4mmの硬化物を長さ100mm、幅10mmに切り出し、切り出した面をサンドペーパー#1200で処理して試験片を作製した。この試験片について、インストロン社製 精密万能試験機「INSTRON 5582型」を使用し、JIS K7161に準じて、温度23℃、湿度50%RHの環境下、3点曲げ治具で曲げ試験を行い、曲げ強度、曲げ弾性率を測定した。
【0037】
[原材料等]
以下の実施例及び比較例では、以下の原材料等を用いた。
828:ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製 jER(登録商標)828)
604:ジアミノジフェニルメタン型エポキシ化合物(三菱ケミカル株式会社製 jER(登録商標)604 エポキシ当量120)
DICY:ジシアンジアミド微粉砕品(三菱ケミカル株式会社製jERキュア(登録商標)DICY7)
DCMU:3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素(東京化成工業株式会社製)
4,4’-DDS:4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(東京化成株式会社製)
HS0850H:数平均分子量800のポリカーボネートポリオール(水酸基価:140mgKOH/g、イソソルビドと1,6-ヘキサンジオール(モル比1:1)の共重合ポリカーボネートジオール(構造単位(I)/構造単位(II)=50/50(モル比)))[三菱ケミカル株式会社製「BENEBiOL(登録商標)HS0850H」]
【0038】
[実施例1]
エポキシ樹脂(A)に828、アミン系化合物(B)にDICYおよびDCMU、ポリカーボネートジオール(C)にHS0850Hを表1に示す割合で均一になるまで混合し、この混合物を減圧下で脱泡し、硬化性樹脂組成物を得た。ガラス板の片面に離型PETフィルムを貼り付けたものを2枚用意し、その内の1枚を、フィルムを貼り付けた側が上にくるように置いた。この上にシリコン製チューブをU字型にセットし、またガラス板の四隅に金属製スペーサーを置いた上で、もう1枚のフィルム付ガラス板をフィルム側が向
かい合うようにして重ね合わせ、小型万力で2枚のガラス板を固定して硬化物作成用の型を準備した。なお樹脂板の厚みは金属スペーサーの厚みとシリコンチューブの径を変えることで、曲げ試験用に厚さ4mmの硬化物作成用の型を作った。この硬化物作成用の型に得られた硬化性樹脂組成物を注型し、セーフベンドライヤー中、80℃で1時間、その後130℃で1.5時間加熱して硬化物を得た。
得られた硬化物を用いて前述の物性評価を行った。結果を表1に示す。
【0039】
[実施例2]
エポキシ樹脂(A)に828および604を用いたこと以外は、実施例1と同様にして硬化物を得た。得られた硬化物の物性の評価結果を表1に示す。
【0040】
[実施例3]
アミン系化合物(B)に4,4’-DDSを用いたこと以外は、実施例1と同様にして硬化物を得た。得られた硬化物の物性の評価結果を表1に示す。
【0041】
[実施例4]
添加するポリカーボネートジオール(C)の量を表1に記載の量に変更した以外は、実施例3と同様にして硬化物を得た。得られた硬化物の物性の評価結果を表1に示す。
【0042】
[比較例1]
ポリカーボネートジオール(C)を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして硬化物を得た。得られた硬化物の物性の評価結果を表1に示す。
【0043】
[比較例2]
ポリカーボネートジオール(C)を添加しなかったこと以外は、実施例2と同様にして硬化物を得た。得られた硬化物の物性の評価結果を表1に示す。
【0044】
[比較例3]
ポリカーボネートジオール(C)を添加しなかったこと以外は、実施例3と同様にして硬化物を得た。得られた硬化物の物性の評価結果を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
表1に示す通り、実施例1~4に示す硬化性樹脂組成物から得られた硬化物は、高い曲げ強度と高い曲げ弾性率を有していることが明らかであり、炭素繊維強化樹脂(CFRP)等の分野において好適に用いることができる。
一方、比較例1~3の硬化性樹脂組成物から得られた硬化物は、高い曲げ強度は有するが、曲げ弾性率に劣る。