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特開2024-131919液体吐出ヘッド及び液体を吐出する装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131919
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド及び液体を吐出する装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20240920BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20240920BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B41J2/14 301
B41J2/14 607
B05C5/00 101
B05C11/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042493
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】倉持 譲
【テーマコード(参考)】
2C057
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
2C057AG29
2C057AG44
2C057AG76
2C057AJ10
2C057BA07
2C057BA08
2C057BA14
4F041AA02
4F041AA07
4F041AB01
4F041BA01
4F041BA10
4F041BA13
4F041BA22
4F041BA36
4F042AA02
4F042AA09
4F042BA06
4F042BA08
4F042BA12
4F042CA01
4F042CB03
4F042CB08
4F042CB10
(57)【要約】
【課題】弁体の移動に伴う抵抗のばらつきを低減させることで吐出性能がばらつくのを抑える。
【解決手段】
液体吐出するノズル孔と、ノズル孔に連通し液体を貯留する液室と、を有する筐体と、少なくとも一部が液室内にあり、ノズル孔と液室とを連通させる位置と、遮断する位置とに移動可能に設けられたニードル弁と、ニードル弁を移動させる移動手段と、を備え、筐体内に、移動手段を収容する移動手段収容部と、ニードル弁および液室の壁部の一部と当接することで移動手段収容部と液室との間を封止する封止部材と、を設け、封止部材は、ニードル弁の移動に伴いニードル弁の移動方向に変形可能である。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するノズル孔と、
前記ノズル孔に連通し前記液体を貯留する液室と、を有する筐体と、
少なくとも一部が前記液室内にあり、前記ノズル孔と前記液室とを連通させる位置と、遮断する位置とに移動可能に設けられたニードル弁と、
前記ニードル弁を移動させる移動手段と、を備え、
前記筐体内に、
前記移動手段を収容する移動手段収容部と、
前記ニードル弁および前記液室の壁部の一部と当接することで前記移動手段収容部と前記液室との間を封止する封止部材と、を設け、
前記封止部材は、前記ニードル弁の移動に伴い該ニードル弁の移動方向に変形可能であることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
液体を吐出するノズル孔と、
前記ノズル孔に連通し前記液体を貯留する液室と、を有する筐体と、
少なくとも一部が前記液室内にあり、前記ノズル孔と前記液室とを連通させる位置と、遮断する位置とに移動可能に設けられたニードル弁と、
前記ニードル弁を移動させる移動手段と、を備え、
前記筐体内に、
前記移動手段を収容する移動手段収容部と、
前記ニードル弁および前記液室の壁部の一部と当接することで前記移動手段収容部と前記液室との間を封止する封止部材と、を設け、
前記ニードル弁は前記移動方向に垂直な方向に延在し、前記封止部材を保持する第1の保持部を有し、
前記液室の壁部の一部は前記移動方向に垂直な方向に延在し、前記封止部材を保持する第2の保持部をし、
前記第1の保持部と前記第2の保持部とは前記ニードル弁の移動方向から見て一部が重なって位置することを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記ニードル弁は、前記ニードル弁の一部に前記ニードル弁の移動方向に垂直な方向において前記封止部材と対向する面であるニードル弁封止部材対向面を有し、
前記筐体は、前記筐体の一部に前記垂直な方向で前記封止部材と対向する面である筐体封止部材対向面を有し、
前記封止部材は、前記ニードル弁封止部材対向面と前記垂直な方向において所定の距離をおいて配置され、
前記筐体封止部材対向面と前記垂直な方向において所定の距離を置いて配置されることを特徴とする請求項1または2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記封止部材が前記ニードル弁の移動方向において圧縮されることにより液体を封止することを特徴とする請求項1または2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記封止部材は、前記ニードル弁の移動方向に垂直な方向に面する封止部および前記液室の壁部の前記ニードル弁の移動方向に垂直な方向に面する封止部に当接することを特徴とする請求項4に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記封止部材と前記ニードル弁との当接部が、前記封止部材と前記筐体の当接部よりも前記ノズル側に配置されていることを特徴とする請求項5に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記封止部材は、前記ニードル弁を前記ノズル孔側に付勢するように設けられていることを特徴とする請求項6に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
前記封止部材がチューブ形状であり、
前記ニードル弁は、前記封止部材の内周側と当接することで前記移動手段収容部と前記液室との間を封止する第一の径方向封止形状を有し、
前記筐体は、前記封止部材の内周側と当接することで前記移動手段収容部と前記液室との間を封止する第二の径方向封止形状を有することを特徴とする請求項1または2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
前記封止部材と前記ニードル弁の当接部が、前記封止部材と前記筐体との当接部よりも前記ノズル側に配置された構成であることを特徴とする請求項8に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項10】
前記封止部材が前記移動方向に伸縮可能な伸縮部を有していることを特徴とする請求項9に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項11】
請求項1または2に記載の液体吐出ヘッドを有する液体を吐出する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッド及び液体を吐出する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的にノズルからインクといった液滴を吐出し、ノズル(ノズル孔)に配設されたニードル弁といったノズル開閉弁と、そのノズル開閉弁をノズルに対して離接するノズル開閉駆動機構(アクチュエータ、圧電素子)と、ノズル開閉駆動機構を制御する制御手段を用いてノズルを開閉することによって液体を吐出させる液体吐出ヘッドが知られている。このような液体吐出ヘッドは、吐出する液体をノズルに加圧供給し、その状態でノズル開閉弁をノズルに対して離接することにより、ノズル開閉弁がノズルから離間している間だけ、加圧供給されている液体がノズルから液滴として吐出される。そして、インクを吐出させている際、圧電素子等の駆動機構にインクが流入することを防ぐため、インクが充填された液室と駆動機構との間にインクの流れを遮断するための封止部材を設ける必要がある。そして、ニードル弁と液室との間に封止部材としてのOリングを配置して、それを径方向に圧縮することによって、インクの流入防止を行っていることは既に知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、インクを吐出する吐出口に向けて、移動可能に形成された弁体を押圧することによりインクの吐出を制御する液体吐出ヘッドにおいて、弁体の吐出口に対向する位置に凹部が配置されている構成が開示されている。また、この液体吐出ヘッドは、弁体に外嵌されてインクがアクチュエータ側へ流入することを阻止するために封止部材が設けられている構成である。
【0004】
このような液体吐出ヘッドにおいては、ニードル弁を移動して吐出するために、封止部材はニードル弁またはハウジング(筐体)の内壁と摺動するように構成されている。その摺動抵抗は、封止部材、ニードル弁、あるいはハウジングの加工精度や組付け精度等によってノズル間でばらつきを生じさせ、このような摺動抵抗すなわちニードル弁の移動に伴う抵抗のばらつきがノズル間での吐出性能のばらつきが生じることにつながる。そこで、このようなノズル間での吐出性能のばらつきを抑える必要があり、そのためには摺動抵抗を低減させる必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、弁体の移動に伴う抵抗のばらつきを低減させることで吐出性能がばらつくのを抑えることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、液体を吐出するノズル孔と、前記ノズル孔に連通し前記液体を貯留する液室と、を有する筐体と、少なくとも一部が前記液室内にあり、前記ノズル孔と前記液室とを連通させる位置と、遮断する位置とに移動可能に設けられたニードル弁と、前記ニードル弁を移動させる移動手段と、を備え、前記筐体内に、前記移動手段を収容する移動手段収容部と、前記ニードル弁および前記液室の壁部の一部と当接することで前記移動手段収容部と前記液室との間を封止する封止部材と、を設け、前記封止部材は、前記ニードル弁の移動に伴い該ニードル弁の移動方向に変形可能であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、弁体の移動に伴う抵抗のばらつきを低減させることで吐出性能がばらつくのを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る液体吐出ヘッドの外観説明図。
図2】本発明の実施形態に係る液体吐出ヘッドの全体断面図。
図3】本発明の実施形態に係る液体吐出ヘッドの加熱手段との位置関係を示す説明図。
図4】比較例に係る液体吐出モジュールを示す図。
図5】比較例に係る課題を説明するための図。
図6】本発明に係る第1の実施形態(実施例1)を示した図。
図7A】ノズルの閉塞時における封止部材の構成を示す図。
図7B】ノズルの開放時における封止部材の構成を示す図。
図8】本発明に係る第2の実施形態(実施例2)を示した図。
図9A】本発明に係る第3の実施形態(実施例3)を示した図。
図9B】本発明に係る第4の実施形態(実施例4)を示した図。
図10】本発明に係る第5の実施形態(実施例5)を示した図。
図11A】本発明に係る第6の実施形態(実施例6)を示した図。
図11B】本発明に係る第7の実施形態(実施例7)を示した図。
図12】液体吐出装置の全体概略構成図。
図13】他の液体吐出装置の全体概略構成図。
図14】液体吐出装置の自動車に対する配置例を示す斜視図。
図15】液体吐出装置の自動車に対する他の配置例を示す斜視図。
図16】液体吐出装置により球面に液体を吐出した場合の説明図。
図17】実施形態に係る電極の製造方法を実現するための電極の製造装置の一例を示す模式図。
図18】実施形態に係る電極合材層の製造方法を実現するための電極の製造装置の他の一例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る実施形態を、図面を用いて以下に説明する。
【0010】
以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材及び構成部品などの構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係る液体吐出ヘッドの外観説明図である。図1(a)は、液体吐出ヘッドの全体斜視図、図1(b)は、同ヘッドの全体側面図である。本実施形態に係る液体吐出ヘッドは、液体としてのインクを吐出する。まず、図1を用いて本実施形態を説明する。ここで、図1(a)において、液体吐出ヘッドの幅方向(ノズルの配列方向、図1(b)では紙面へ向かう方向)をx方向、液体吐出ヘッドの奥行方向をy方向(図1(b)では左右方向)、液体吐出ヘッドの高さ方向をz方向(図1(b)では上下方向、後述する開閉弁(ニードル弁ともいう)の開閉方向、開閉弁(ニードル)の駆動(移動)方向、図2における上下方向)とする。そして、これ以降の図もこの座標の定義は、特に断りがない限り同様であるとする。
【0012】
液体吐出ヘッド10(液体吐出ヘッドの一例)は、第1ハウジング11aと、第2ハウジング11bとを備える。第2ハウジング11bは、第1ハウジング11aに積層及び接合される。第1ハウジング11aは、金属などの熱伝導性の高い材質から成り、第2ハウジング11bは、第1ハウジング11aと同材質から成る。以下の説明において2つのハウジングを総称する場合は、ハウジング11と記す。
【0013】
また、第1ハウジング11aは、その正面と背面に、加熱手段としてのヒータ12を備える。ヒータ12は温度制御が可能であり、第1ハウジング11aを加熱する。また、第2ハウジング11bは、その上部に電気信号の通信のためのコネクタ13を備える。
【0014】
図2は、本発明の実施形態に係る液体吐出ヘッド10の全体断面図で、図1(a)のA-A線矢視断面図である。第1ハウジング11aは、吐出口形成部材としてのノズル板15(ノズル板の一例)を保持する。ノズル板15は、液体を吐出する、吐出口としてのノズル14(ノズルの一例、吐出口ともよぶ)を備える。また、第1ハウジング11a(筐体の一例)は、液体供給部である流路(液室の一例、液室とも呼ぶこともある)17を備える。流路17は、供給ポート16側からのインクを、ノズル板15上を経て回収ポート18側へ送る。
【0015】
第2ハウジング11bは、供給ポート16及び回収ポート18を備える。供給ポート16及び回収ポート18は、流路17の一方側及び他方側にそれぞれ接続される。供給ポート16と回収ポート18との間には、複数の液体吐出モジュール30が配置されている。液体吐出モジュール30は、流路17内のインクをノズル14から吐出する。また、液体吐出モジュール30の上部に規制部材20が設けられる。
【0016】
液体吐出モジュール30は、第1ハウジング11aに設けられたノズル14の数に対応しており、本例では1列に並べた8個のノズル14に対応する8個の液体吐出モジュール30を備える構成が示されている。なお、ノズル14及び液体吐出モジュール30の数及び配列は、上記に限るものではない。例えば、ノズル14及び液体吐出モジュール30は、複数ではなく1個であってもよい。また、ノズル14及び液体吐出モジュール30の配列は、1列ではなく、複数列であってもよい。
【0017】
なお、図2において符号19は、第1ハウジング11aと第2ハウジング11bとの接合部に設けたハウジングシール部材である。本例ではハウジングシール部材としてOリングが用いられており、Oリングは、第1ハウジング11aと第2ハウジング11bとの接合部からのインクの漏れを防いでいる。
【0018】
上記の構成により、供給ポート16は、加圧した状態のインクを外部から取り込み、インクを矢印a1方向へ送り、インクを流路17に供給する。流路17は、供給ポート16からのインクを矢印a2方向へ送る。そして、回収ポート18は、流路17に沿って配置したノズル14から吐出しなかったインクを矢印a3方向へ回収する。
【0019】
液体吐出モジュール30は、開閉弁31(ニードル弁の一例)と、駆動体としての圧電素子32(移動手段の一例)を備える。そして、開閉弁31は、ノズル14を開閉する。圧電素子32は、開閉弁31を駆動する。また、圧電素子32は、電圧の印加により、図2の上下方向(z方向)である長手方向に伸縮作動する。なお、圧電素子32は、コントローラ等の制御手段によって制御される。
【0020】
上記の構成において、圧電素子32が作動して開閉弁31が上方向へ動かされた場合は、開閉弁31によって閉じていたノズル14が開いた状態になり、ノズル14からインクを吐出することができる。また、圧電素子32が作動して開閉弁31が下方向へ動かされた場合は、開閉弁31の先端部がノズル14を封止してノズル14が閉じた状態になり、ノズル14からインクが吐出しなくなる。なお、以下説明では、ノズルが開いたときをノズルの開放、ノズルが閉じたときをノズルの閉塞とよぶこともある。
【0021】
図3は、本発明の実施形態に係る液体吐出ヘッド10の加熱手段との位置関係を示す説明図である。第1ハウジング11aは、ヒータ12を備えている。図3中の破線で示されるように、ヒータ12は、複数のノズル14を横断するようにしてノズル14の近傍に設けられている。
【0022】
<比較例について>
次に、液体吐出モジュールの詳細について説明する。そして、本発明に係る液体吐出モジュールの詳細について説明する前に、比較対象となる構成(比較例)を挙げたうえで、その課題について説明する。そして、それを踏まえて本発明に至った経緯について説明する。
【0023】
まず、図4は、比較例に係る液体吐出モジュール1030を示す図である。また、図4は、単一の液体吐出モジュールの断面図を示している。図5は、比較例に係る構成の課題を説明するための図であり、図4の要部拡大図である。具体的にいえば、図5は、図4における一点鎖線の丸で囲った部位(液体吐出モジュールのノズル付近の部位)を拡大した図である。そして、開閉弁1031の軸部外周には、高圧インクの漏出防止用に封止部材であるOリング1034が装着されている。
【0024】
液体吐出モジュール1030は、前述の開閉弁1031及び圧電素子32と、固定部材33と、保持体35と、プラグ36などを主に備える。
【0025】
保持体35は、その内部に駆動体収容部35aを有し、駆動体収容部35aに圧電素子32を収容して保持する。保持体35は、圧電素子32の長手方向に弾性伸縮可能な金属で構成されている。弾性伸縮可能な金属として、例えばSUS304又はSUS316Lなどのステンレス鋼を使用可能である。保持体35は、長手方向に延びた細長部材が圧電素子32の周囲に複数本配置(例えば90°間隔で4本配置)された枠体であり、圧電素子32は、保持体35を構成する細長部材の相互間を通して保持体35の内側に挿入される。
【0026】
圧電素子32の長手方向は、図4に示される両矢印方向Aであり、この長手方向Aは、開閉弁1031、液体吐出モジュール1030及び第2ハウジング11bの長手方向でもある。また、長手方向Aは、開閉弁1031の移動方向であり、図1における液体吐出ヘッドの高さ方向(z方向)であり、図2における上下方向である。
【0027】
保持体35のノズル14側の先端部に開閉弁1031が連結されている。また、保持体35のノズル14側に蛇腹部35bが形成されている。蛇腹部35bは、圧電素子32が伸縮作動する際に、保持体35の先端側を圧電素子32と同じように長手方向に伸縮作動させるためのものである。
【0028】
また、保持体35のノズル14側と反対側である基端側に固定部材33が連結されている。別の言い方をすると、固定部材33は、第2ハウジング11bの上端部に収容されている。
【0029】
固定部材33は、径方向に延在する貫通ネジ穴33aを有する。貫通ネジ穴33aに第2ハウジング11b外から位置決めネジ60がねじ込まれている。
【0030】
位置決めネジ60は、第2ハウジング11bの上端部に形成された長手方向の長穴11b1に挿通されている。このため、位置決めネジ60は、第2ハウジング11bの長手方向に所定長さ移動可能である。位置決めネジ60は、固定部材33を長手方向に位置決めした状態にして締め付けられる。
【0031】
図4に示されるように、第2ハウジング11bの上端開口部には、雌ネジ穴11b2が形成されている。この雌ネジ穴11b2に、図2の規制部材20に当接するプラグ36が螺合されている。プラグ36は、位置決めネジ60によって長手方向に位置決めされた固定部材33の上端部に当接して、固定部材33を最終的に位置固定する。
【0032】
また、第2ハウジング11bの下端部には、圧縮バネ37が配設されている。この圧縮バネ37で、圧電素子32及び圧電素子32を保持した保持体35などが上方に付勢されている。
【0033】
図5に示されるように、開閉弁1031は軸状のニードル1310を有しており、そのニードル1310のノズル14側の先端部には、ゴム等の弾性部材より形成される弁部材1040が取り付けられる。また、軸状のニードル1310は、ステンレスなどの金属材料により形成される。
【0034】
駆動部は、開閉弁1031を往復運動させる駆動部材である圧電素子32を有する。また、開閉弁1031のニードル1310は圧電素子32と連結しており、駆動運動を弁部材1040に連動させる機能を持つ。
【0035】
そして、ニードル1310の先端部に取り付けられた弁部材1040は、圧電素子32が作動することにより開閉弁31が図4における下方向(ノズル14側)へ動かされると、開閉弁1031(ニードル1310)の先端部に設けられる弁部材1040がノズル板15に押し当てられ、弁部材1040によってノズル14が封止される。反対に、開閉弁1031が図4における上方向(圧電素子側)へ動かされると、弁部材1040がノズル板15から離間してノズル14が開放される。このように、開閉弁1031が、弁部材1040を吐出口形成部材であるノズル板15に押し当てる(当接させる)位置とノズル板15から離間した位置との間で移動することにより、ノズル14(吐出口)が開閉される。
【0036】
ここで、図5を用いて、比較例に係る構成についての課題を説明する。封止部材であるOリング1034は、圧電素子32が収容されている圧電素子収容部330にインクが侵入しないようにインク170を封止する機能を持つ。また、Oリング1034は、Oリング1034の径方向に圧縮する。そして、Oリング1034は、圧縮時にハウジング11aと当接し、これによって開閉弁1031の移動によってハウジング11aに対して摺動して摺動抵抗を生じ、摺動性が低下する。また、液体吐出モジュールは大きさが小さく、一般的に組み立てが難しい。そのため、設計どおりの組み立てができず、開閉弁のニードルの軸ずれや、Oリングの装着時の傾きや捩れ等が生じることで摺動性が変動し、これによってCH(チャネル)間でニードルの移動量にばらつきが生じることがある。具体的には、ニードル1310の中心軸とハウジング11aのOリングが摺動する内壁面の中心軸との同軸度や平行度や、Oリングが摺動する面の平面度や表面粗さ等が、摺動抵抗のばらつきに影響する。図5に示す比較例に係る液体吐出ヘッドは、このような開閉弁1031の移動に伴う摺動抵抗がばらつく。これによって、開閉弁の移動量や移動速度にばらつきが生じるため、CH間で吐出性能にもばらつきが生じてしまう。
【0037】
そこで、本発明に係る液体吐出モジュールについては、以下に述べるような構成としている。
【0038】
<実施例1について>
図6は、本発明に係る第1の実施形態(実施例1)を示した図である。そして、この図を用いて、本発明に係る実施形態1について説明する。
【0039】
本発明においては、上記した課題に対して、液体吐出モジュール30のノズル付近の部位について、図6に示すように大きくいうと封止部材であるOリングを開閉弁のニードルと液室の壁部で保持する構成にした。これについて、以下詳細を説明する。なお、液体吐出モジュールのノズル付近の部位以外の構成については、比較例に係る構成と同じである。
【0040】
まず、本実施形態における開閉弁31のニードル310は、移動方向(z軸方向)に対して垂直となる方向(y軸方向)に延在した封止部材保持部311を設けている。また、本実施形態では、筐体であるハウジング11aと接続する流路(液室)17の壁部の一部であり、これを当該移動方向に対して垂直となる方向に延在させた部位である封止部材保持用壁部320を設けている。そして、本実施形態では、これらの封止部材保持部311(第1の保持部の一例)と封止部材保持用壁部320(第2の保持部の一例)とで封止部材34(封止部材の一例)を保持する構成としている。また、封止部材保持部311と封止部材保持用壁部320とは、開閉弁31(ニードル310)の移動方向から見て、一部が重なって位置している。そして、封止部材34とハウジング11aとは所定の距離(ここでは、距離D1)が設けられている。これは、封止部材34が、開閉弁31の移動方向に垂直な方向(X-Y面内の方向)において封止部材34と対向するハウジング11aの一部の内壁面である筐体封止部材対向面340(筐体封止部材対向面の一例)と、所定の距離(距離D1)だけ離間して設けられることに対応する。また、封止部材34とニードル310とも所定の距離(ここでは、距離K1)が設けられている。これは、封止部材34が、ニードル310の当該垂直な方向において封止部材34と対向するニードル310の一部の面である開閉弁封止部材対向面350(ニードル弁封止部材対向面の一例)と所定の距離(距離K1)だけ離間して設けられることに対応する。なお、これらの構成をいいかえると、封止部材34は開閉弁31の移動方向に垂直な断面において、ニードル310と筐体部品との両方に同時に接続した同一断面はないともいえる。
【0041】
ここで、本実施形態に係る封止部材について説明する。封止部材34の形状は、ニードル310とハウジング11a、流路(液室)17の壁部、あるいは封止部材保持用壁部320との各接続部でインクを封止することが可能なであり、ニードル310を通過させるための孔(空間)を有する形状である。なお、封止部材としては、Oリング形状、円筒形状、多角柱に穴を空けた形状が適用でき、本実施形態ではOリングを用いている。
【0042】
封止部材34は、封止部材保持用壁部320に設けられた封止部材を入れるような部位、例えば、溝のような部位に入れることで設置される。そして、封止部材34は、封止部材保持部311と封止部材保持用壁部320とは、特に接着剤等を用いて固定されずに配置できる。なお、固定することも可能である。
【0043】
また、封止部材34の大きさは、開閉弁31(ニードル310)の移動方向に垂直な断面上においてはハウジング11a等と所定の距離が確保できれば、特に制限はないが、開閉弁31の移動方向における大きさは、1mm以上が好ましい。また、封止部材34の穴部の内径の大きさが最小で1mm、外径が3mm程度としている。
【0044】
そして、封止部材34の開閉弁31(ニードル310)の移動方向の封止代は、以下で述べる弁部材40の封止代以上になるように構成されている。また、封止部材34は、ニードル310の移動方向に対して圧縮等の変形をするようになるが、その変形量としてはニードル310の移動量が20~50μm、大きくても100μmであることから、それ以上に設定することが望ましい。本実施形態においては、変形量は、300~500μmとしている。
【0045】
そして、封止部材34の材質としては、ゴム、樹脂、エラストマー等が好ましく、インクの封止が可能であれば他の材質を採用しても構わない。また、封止部材34の材質には、耐薬品性、耐溶剤性等の特性が必要とされる。これらを踏まえ、具体例として、パーフロ(4275B、(株)森清化工社製)が挙げられる。
【0046】
封止部材34は、本実施形態ではOリングを使用しているが、封止部材34をニードル310と封止部材保持用壁部320との間に設置する際には、ニードル310の移動方向に圧縮されているように設置している。これは、ニードル310と封止部材保持用壁部320のどちらか一方にのみに封止部材34の径方向に接触させることにより、封止部材34のニードル310の移動方向と垂直をなす方向の断面上の位置を固定することができ、組み立てを容易にすることができるからである。そのため、封止部材34は、初めからある程度は圧縮された状態で配置されている。なお、本実施形態におけるOリングである封止部材34の圧縮率は30±10%程度としている。
【0047】
次に、開閉弁31について説明する。まず、開閉弁31は、ニードル310を有し、そのニードル310には、その先端部に弁部材40が設けられている。ニードル310の先端部に設けた弁部材40は、ノズル14を封止可能であり、ニードル310と接続できる形状となっている。ここで、弁部材40の材質は、ゴム、樹脂、エラストマー等が好ましく、インクの封止が可能であれば他の材質を採用してもよい。
【0048】
そして、ニードル310は、形状としては円筒形状が好ましく、封止部材34との接続部(接触部)でインク170を封止可能な形状を有している。また、ニードル310の材質は、ステンレスが好ましく、インクに対する耐性があれば他の金属や、あるいは樹脂を採用してもよい。また、ニードル310は、駆動機構であって、ニードル310を含めた開閉弁31の移動手段である圧電素子32と接続している。
【0049】
また、筐体に関して説明する。筐体をなすハウジング11a、流路(液室)17の壁部、あるいは封止部材保持用壁部320は、ニードル310が通過する空間と封止部材34との接続部でインク170を封止可能な形状となっている。また、筐体をなすこれらの材質は、ステンレスが好ましく、インクに対する耐性があれば他の金属、あるいは樹脂を採用してもよい。
【0050】
なお、本実施形態に係る構成は、封止部材34やニードル310を、ハウジング11a等を有する筐体に挿入すればよいだけなので、組み立て易いものとなっている。
【0051】
ここで、本実施形態におけるニードル径や圧電素子収容部(移動手段収容部の一例)等の大きさについて説明する。図6に示すように、圧電素子収容部330の内径の大きさをR1、ニードル310の圧電素子側の部位(ニードル310の外径が大きい部位)の外径の大きさをR2、そして、封止部材保持用壁部320においてニードル310のノズル側の部位(ニードル310の外径が小さい部位)が挿入される穴部の内径の大きさをR3、ニードル310のノズル側の部位の外径の大きさをR4とする。そして、ノズル14の高密度配置の観点から、ニードル310の全体の外径の大きさ、ニードル310とハウジング11aとの距離は極力小さくすることが望ましい。この観点を踏まえて、本実施形態においては、R2は2~5mm、R4は1~2mm、R1はR1-R2(すなわち、距離D1)=0.5~1.5mmを満たすように、R3はR3-R4=0.5~1.5mmを満たすように設定している。
【0052】
<ノズルの開放時および閉塞時の封止部材の機能について>
次に、本実施形態におけるノズルの開放時および閉塞時における封止部材について図7を用いて説明する。図7Aはノズルの閉塞時における封止部材の構成を示す図である。また、図7Bはノズルの開放時における封止部材の構成を示す図である。
【0053】
まず、ノズルの閉塞時(インクを吐出しないとき)は、図7Aに示すように、弁部材40がノズル板15と当接し、開閉弁31(ニードル310)がノズル14を封止している。このとき、封止部材34は、開閉弁31(ニードル310)の移動の向き(黒い矢印の向き)に変形する。そして、封止部材34は、ニードル310と封止部材保持用壁部320とに接続した状態でインク170を封止している。ここで、封止部材34は、配置された当初からある程度は圧縮された状態ではあるが、ノズルの閉塞時においては、封止部材34を挟持するニードル310と封止部材保持用壁部320とによって押圧されるため、より圧縮され、つぶされることとなる。
【0054】
そして、ノズルの開放時(インクが吐出するとき)だが、図7Bに示すように、圧電素子32によって開閉弁31(ニードル310)とノズル板15とが離間した状態になる。ここで、封止部材34は、開閉弁31(ニードル310)の移動の向き(白い矢印の向き)に変形する。そして、封止部材34は、ノズル閉塞時と同様にニードル310と封止部材保持用壁部320とに接続した状態(接触した状態)でインク170を封止している。
【0055】
ここで、インク170の吐出時に、開閉弁31とノズル板15との距離(ギャップ量)が封止部材34の開閉弁31の移動方向における封止代を超えないようにする必要がある。なぜならば、仮に、これを超えるとインク170が駆動機構を有する圧電素子収容部330側に流入し、圧電素子32等の駆動機構が破損する可能性があり、これを防止する観点からである。
【0056】
封止部材34は、開閉弁31が図7Bの閉塞する位置と図7Aの開放する位置との間を移動する際に開閉弁31の移動方向に変形するのみである。従って、封止部材34が開閉弁31とハウジング11aとのいずれとも摺動することは無いので、開閉弁31の移動に伴う封止部材34による摺動抵抗は生じることがない。また、封止部材34が開閉弁31の移動方向に圧縮変形されることによる反発力は、開閉弁31が閉塞する際の移動に反発するように作用し、開放する際の移動を助長するように作用する。封止部材34の反発力は、封止部材34がつぶされる量に依存し、開閉弁31の軸ずれや傾きに依存しない。従って、開閉弁31の軸ずれや傾きが生じた場合であっても、開閉弁31の移動量や移動速度は変動しづらくなる。
【0057】
本発明に係る実施形態おいては、封止部材保持部311と封止部材保持用壁部320とで封止部材34を保持し、封止部材保持部311と封止部材保持用壁部320とは、開閉弁31(ニードル310)の移動方向から見て、一部が重なって位置している。さらに、封止部材34とハウジング11aとは所定の距離(ここでは、距離D1)が設けられている構成になっている。このような構成をとることから、本発明においては、ニードル310の軸ずれによる封止部材34の径方向の圧縮不均一、装着時の傾きあるいは捩れ等の発生を防止することができる。従って、本実施形態の液体吐出ヘッドは、ニードル310の組付け状態である軸ずれや傾きがばらついた場合であっても、開閉弁31の移動に伴う抵抗のばらつきの影響を受けにくく、開閉弁の移動量や移動速度のばらつきが低減されるので、吐出性能のばらつきを低減することができる。
【0058】
<実施例2について>
図8は、本発明に係る第2の実施形態(実施例2)を示した図である。そして、この図を用いて、本発明に係る実施形態2について説明する。また、以下では、主に実施形態1に係る構成との違いを説明することとする。
【0059】
まず、本実施形態における開閉弁31のニードル310aは、移動方向(z軸方向)に対して垂直となる方向(y軸方向)に延在した封止部材保持部311aを設けている。また、本実施形態では、筐体であるハウジング11aと接続する流路(液室)17の壁部の一部であり、これを当該移動方向に対して垂直となる方向に延在させた部位である封止部材保持用壁部320aを設けている。そして、本実施形態では、これらの封止部材保持部311aと封止部材保持用壁部320aとで封止部材34を保持する構成としている。また、封止部材保持部311aと封止部材保持用壁部320aとは、開閉弁31(ニードル310a)の移動方向から見て、一部が重なって位置している。そして、封止部材34とハウジング11aとは所定の距離D2が設けられている。これは、封止部材34が、開閉弁31の移動方向に垂直な方向(X-Y面内の方向)において封止部材34と対向するハウジング11aの一部の内壁面である筐体封止部材対向面340aと、所定の距離(距離D2)だけ離間して設けられることに対応する。また、封止部材34とニードル310aとも所定の距離(ここでは、距離K2)が設けられている。これは、封止部材34が、ニードル310aの当該垂直な方向において封止部材34と対向するニードル310aの一部の面である開閉弁封止部材対向面350aと所定の距離(距離K2)だけ離間して設けられることに対応する。なお、これらの構成をいいかえると、封止部材34は開閉弁31の移動方向に垂直な断面において、ニードル310と筐体部品との両方に同時に接続した同一断面はないともいえる。
【0060】
また、本実施形態に係る構成は、ニードルの封止部材保持部が筐体をなす封止部材保持用壁部よりもノズル側に位置している点で実施例1に係る構成と主に異なっている。すなわち、封止部材34とニードル310aの封止部材保持部311aとの接続部(接触部)が、封止部材保持用壁部320aとの接続部(接触部)よりもノズル14側に配置された構成になっている。そして、封止部材34については、配置された当初からある程度は圧縮された状態であり、この点は実施例1での場合と同様となっている。
【0061】
また、本実施形態において、封止部材34は、例えば、ノズルの開放時といったニードル310aが上方向(図8におけるz軸のマイナス方向)に移動する場合には、封止部材34を挟持するニードル310aと封止部材保持用壁部320aとによって押圧されるため、より圧縮されることとなる。
【0062】
そして、本実施形態に係る構成において、封止部材34は圧縮されて配置されているが、封止部材34が持つ弾性力によって変形して、ニードル310aを下方向(図8におけるz軸のプラス方向)に付勢する。これによって、封止部材34は、ニードル310aをノズル14側に押し込むようになる。そのため、弁部材のノズルへの押し当て力を増加して、弁部材とノズルとの間の封止性を高めることができるという効果を得ることができる。
【0063】
<実施例3、4について>
図9は、本発明に係る第3、4の実施形態(実施例3、4)を示した図である。そして、この図を用いて、本発明に係る実施形態3、4について説明する。ここで、図9Aは本発明に係る第3の実施形態の構成を示す図である。また、図9Bは本発明に係る第4の実施形態の構成を示す図である。なお、以下では、主に実施形態1に係る構成との違いを説明することとする。
【0064】
まず、第3の実施形態から説明する。図9Aに示すように本実施形態における開閉弁31のニードル310bは、移動方向(z軸方向)に対して垂直となる方向(y軸方向)に延在した封止部材保持部311bを設けている。また、本実施形態では、筐体であるハウジング11aと接続する流路(液室)17の壁部の一部であり、これを当該移動方向に対して垂直となる方向に延在させた部位である封止部材保持用壁部320bを設けている。そして、本実施形態では、これらの封止部材保持部311bと封止部材保持用壁部320bとで封止部材34aを保持する構成としている。また、封止部材保持部311bと封止部材保持用壁部320bとは、開閉弁31(ニードル310b)の移動方向から見て、一部が重なって位置している。そして、封止部材34aと、ハウジング11aの圧電素子収容部330の内壁面であって封止部材34aと対向する面である筐体封止部材対向面340bとは、開閉弁31(ニードル310b)の移動方向に垂直な方向(X-Y面内の方向)において所定の距離D3が設けられている。また、封止部材34は、ニードル310baの当該垂直な方向において封止部材34aと対向するニードル310bの一部の面である開閉弁封止部材対向面350bと、所定の距離K3だけ離間して設けられている。なお、これらの構成をいいかえると、封止部材34aは開閉弁31の移動方向に垂直な断面において、ニードル310bと筐体部品との両方に同時に接続した同一断面はないともいえる。
【0065】
ここで、本実施形態に係る封止部材について説明する。封止部材34aは、円筒状のチューブ形状となっている。このことから、これまでの実施形態で示されていたOリングとは異なり、封止部材34は、ニードル310bの移動によって伸長等するようになる。また、封止部材34aの材質としては、ゴム、樹脂、エラストマー等が好ましく、インクの封止が可能であれば他の材質を採用しても構わない。また、封止部材の材質には、耐薬品性、耐溶剤性等の特性が必要とされる。具体例として、パーフロ(4275B、(株)森清化工社製)が挙げられる。そして、封止部材34aの張力は、ニードル310abの駆動(移動)時の摺動抵抗の低減のため、極力小さくすることが好ましい。そして、ニードル310bとハウジング11a、流路(液室)17の壁部、あるいは封止部材保持用壁部320bとの各接続部でインクを封止することが可能なである。
【0066】
次に、ニードル310bについて説明する。ニードル310bは、形状としては円筒形状が好ましい。また、ニードル310bは、封止部材34aと径方向でインク170を封止することが可能な形状を有している。これについて具体的には、ニードル310bには、上記したようにニードル310bの移動方向に対して垂直となる方向に延在した封止部材保持部311bを設けている。そして、チューブ状の封止部材34aの穴部を封止部材保持部311bに挿入し、封止部材保持部311bで封止部材34aを保持できるようになる。これによって、封止部材保持部311bは、ニードル310bの移動方向と平行な方向の部位で封止部材34aが有する穴部の内周側(内側)と接続(接触)するようになる。そして、インク170が圧電素子収容部330へ入ることを防止できるようになる。
【0067】
また、ニードル310bの材質は、ステンレスが好ましく、インクに対する耐性があれば他の金属や、あるいは樹脂を採用してもよい。また、ニードル310bは、駆動機構であって、ニードル310bを含めた開閉弁31の移動手段である圧電素子32と接続している。
【0068】
次に、筐体に関して説明する。筐体をなすハウジング11a、流路(液室)17の壁部、あるいは封止部材保持用壁部320bは、ニードル310bが通過する空間と封止部材34aとの接続部でインク170を封止可能な形状となっている。ここで、封止部材保持用壁部320bを具体的に説明する。封止部材保持用壁部320bは、上記したようにニードル310bの移動方向に対して垂直となる方向に延在している。また、封止部材保持用壁部320bは、ニードル310b近傍にニードル310bの移動方向に対して平行な方向に延びる垂直壁部3200bを有する。当該垂直壁部3200bは、封止部材保持用壁部320bのニードル310bの移動方向に対して垂直となる方向の部位から圧電素子32側に突出するように延びて形成されている。
【0069】
そして、チューブ状の封止部材34aの穴部を封止部材保持用壁部320bの垂直壁部3200bに挿入することで、封止部材保持用壁部320bで封止部材34aを保持できるようになる。これによって、封止部材保持用壁部320bは、ニードル310bの移動方向と平行な方向の部位で封止部材34aが有する穴部の内周側(内側)と接続(接触)するようになる。そして、インク170が圧電素子収容部330へ入ることを防止できるようになる。
【0070】
また、筐体をなすこれらの材質は、ステンレスが好ましく、インクに対する耐性があれば他の金属、あるいは樹脂を採用してもよい。
【0071】
本実施形態によれば、封止部材をチューブ形状にすることによって、その径方向でインクを封止することが可能となる。また、封止部材がニードルの駆動(移動)方向に変形する際に発生するニードルへの摺動負荷を低減することができる。
【0072】
次に、第4の実施形態を説明する。ここで、本実施形態は、第3の実施形態とは封止部材の形状が異なっており、その他については第3の実施形態に係る構成と共通している。そこで、以下では、主に実施形態3に係る構成との違いを説明することとする。
【0073】
図9Bに示すように、本実施形態に係る封止部材34bだが、円筒状のチューブ形状であり、さらにニードル310bの駆動(移動)方向に伸縮可能な伸縮部を設けている。この伸縮部の形状としては、蛇腹形状、薄肉形状等が挙げられる。
【0074】
そして、封止部材34bの材質としては、インクの封止が可能であれば特に限定はないが伸縮部については、他の封止部材34bの部位と同じ応力で、より大きく変形可能な高弾性にすることが望ましい。そのため、材質としては、ゴム、樹脂、エラストマー等が好ましい。また、封止部材34bの材質には、耐薬品性、耐溶剤性等の特性が必要とされる。具体例として、パーフロ(4275B、(株)森清化工社製)が挙げられる。
【0075】
本実施形態によれば、封止部材がニードルの駆動(移動)方向に変形する際に発生する応力を封止部材の伸縮部で緩和することができて、ニードルへの摺動負荷を低減することができる。
【0076】
<実施例5について>
図10は、本発明に係る第5の実施形態(実施例5)を示した図である。そして、この図を用いて、本発明に係る実施形態5について説明する。ここで、本実施形態は、第3の実施形態とはニードルの形状および筐体の形状が異なっており、その他については第3の実施形態に係る構成と共通している。そこで、以下では、主に実施形態3に係る構成との違いを説明することとする。
【0077】
まず、図10に示すように本実施形態における開閉弁31のニードル310cは、移動方向(z軸方向)に対して垂直となる方向(y軸方向)に延在した封止部材保持部311cを設けている。また、本実施形態では、筐体であるハウジング11aと接続する流路(液室)17の壁部の一部であり、これを当該移動方向に対して垂直となる方向に延在させた部位である封止部材保持用壁部320cを設けている。そして、本実施形態では、これらの封止部材保持部311cと封止部材保持用壁部320cとで封止部材34aを保持する構成としている。また、封止部材保持部311cと封止部材保持用壁部320cとは、開閉弁31(ニードル310c)の移動方向から見て、一部が重なって位置している。そして、封止部材34aとハウジング11aの封止部材34aと、ハウジング11aの一部であり、封止部材34aと対向する面である筐体封止部材対向面340cとは、開閉弁31(ニードル310c)の移動方向に垂直な方向(X-Y面内の方向)において所定の距離D4が設けられている。また、封止部材34aは、ニードル310cの当該垂直な方向において封止部材34aと対向するニードル310cの一部の面である開閉弁封止部材対向面350cと、所定の距離K4だけ離間して設けられている。なお、これらの構成をいいかえると、封止部材34aは開閉弁31の移動方向に垂直な断面において、ニードル310cと筐体部品との両方に同時に接続した同一断面はないともいえる。
【0078】
また、本実施形態に係る構成は、ニードルの封止部材保持部が筐体をなす封止部材保持用壁部よりもノズル側に位置している点で実施例3に係る構成と主に異なっている。すなわち、封止部材34aとニードル310cの封止部材保持部311cとの接続部(接触部)が、封止部材保持用壁部320cとの接続部(接触部)よりもノズル14側に配置された構成になっている。
【0079】
ここで、本実施形態に係る封止部材について説明する。封止部材34aは、実施例3と同様に円筒状のチューブ形状となっている。このことから、封止部材34aは、ニードル310cの移動によって伸長等するようになる。また、封止部材34aの材質としては、ゴム、樹脂、エラストマー等が好ましく、インクの封止が可能であれば他の材質を採用しても構わない。また、封止部材の材質には、耐薬品性、耐溶剤性等の特性が必要とされる。具体例として、パーフロ(4275B、(株)森清化工社製)が挙げられる。そして、封止部材34aの張力は、実施例3と同様にニードル310cの駆動(移動)時の摺動抵抗の低減のため、極力小さくすることが好ましい。そして、ニードル310cとハウジング11a、流路(液室)17の壁部、あるいは封止部材保持用壁部320cとの各接続部でインクを封止することが可能なである。
【0080】
次に、ニードル310cについて説明する。ニードル310cは、形状としては円筒形状が好ましい。また、ニードル310cは、封止部材34aと径方向でインク170を封止することが可能な形状を有している。これについて具体的には、ニードル310cには、上記したようにニードル310cの移動方向に対して垂直となる方向に延在した封止部材保持部311cを設けている。そして、チューブ状の封止部材34aの穴部を封止部材保持部311cに挿入し、封止部材保持部311cで封止部材34aを保持できるようになる。これによって、封止部材保持部311cは、ニードル310cの移動方向と平行な方向の部位で封止部材34aが有する穴部の内周側(内側)と接続(接触)するようになる。そして、インク170が圧電素子収容部330へ入ることを防止できるようになる。
【0081】
また、ニードル310cの材質は、ステンレスが好ましく、インクに対する耐性があれば他の金属や、あるいは樹脂を採用してもよい。また、ニードル310cは、駆動機構であって、ニードル310cを含めた開閉弁31の移動手段である圧電素子32と接続している。
【0082】
次に、筐体に関して説明する。筐体をなすハウジング11a、流路(液室)17の壁部、あるいは封止部材保持用壁部320cは、ニードル310cが通過する空間と封止部材34aとの接続部でインク170を封止可能な形状となっている。ここで、封止部材保持用壁部320cを具体的に説明する。封止部材保持用壁部320cは、上記したようにニードル310cの移動方向に対して垂直となる方向に延在している。また、封止部材保持用壁部320cは、ニードル310c近傍にニードル310cの移動方向に対して平行な方向に延びる垂直壁部3200cを有する。当該垂直壁部3200cは、封止部材保持用壁部320cのニードル310cの移動方向に対して垂直となる方向の部位からノズル14側に突出するように延びて形成されている。
【0083】
そして、チューブ状の封止部材34aの穴部を封止部材保持用壁部320cの垂直壁部3200cに挿入することで、封止部材保持用壁部320cで封止部材34aを保持できるようになる。これによって、封止部材保持用壁部320cは、ニードル310cの移動方向と平行な方向の部位で封止部材34aが有する穴部の内周側(内側)と接続(接触)するようになる。そして、インク170が圧電素子収容部330へ入ることを防止できるようになる。
【0084】
また、筐体をなすこれらの材質は、ステンレスが好ましく、インクに対する耐性があれば他の金属、あるいは樹脂を採用してもよい。
【0085】
本実施形態によれば、ニードルが移動して開閉弁31とノズル板15との距離(ギャップ量)を形成する際は、封止部材におけるニードルの駆動(移動)方向の封止代を増加させる方向に動くため、封止部材と他の部品との封止性を高めることができる。
【0086】
<実施例6、7について>
図11は、本発明に係る第6、7の実施形態(実施例6、7)を示した図である。なお、図11は、複数のCH(チャネル)を有する構成(アレイ形状ともよぶ)としており、この点で第1の実施形態と異なっている。そして、この図を用いて、本発明に係る実施形態6、7について説明する。ここで、図11Aは本発明に係る第6の実施形態の構成を示す図である。また、図11Bは本発明に係る第7の実施形態の構成を示す図である。なお、上記した実施例に係る構成については、第6、7の実施形態のようなアレイ形状に適用することが可能である。
【0087】
まず、図11Aを使用し、第6の実施形態から説明する。第6の実施形態においては、ハウジングであるアレイハウジング110内の空間(圧電素子収容部330L)で各CH間がつながっており、一体化されたアレイ形状となっている。そして、本実施形態における他の構成については、第1の実施形態と同じである。そのため、この異なる点を中心に以下説明していく。なお、本実施形態では、CH数が2つの場合を例に挙げて説明しているが、本発明は3つ以上でも適用可能である。
【0088】
そして、本実施形態においては、ノズルやニードルを含めた駆動部を複数備えた構成としている。具体的にいうと、本実施形態は、ノズル板15Lに複数のノズル14Lと、各ノズルに対応するように弁部材40Lとニードル310Lとを有する開閉弁と、Oリングである封止部材34Lとを複数有するものとなっている。
【0089】
また、各開閉弁のニードル310Lは、移動方向(z軸方向)に対して垂直となる方向(x軸方向)に延在した封止部材保持部311Lを設けている。また、本実施形態では、筐体であるアレイハウジング110と接続する流路(液室)17の壁部の一部であり、これを当該移動方向に対して垂直となる方向に延在させた部位である封止部材保持用壁部320Lを設けている。この封止部材保持用壁部320Lには、各ニードル310Lを挿入することが可能な穴部がニードルの数に対応するように設けられている。
【0090】
そして、本実施形態では、これらの封止部材保持部311Lと封止部材保持用壁部320Lとで封止部材34Lを保持する構成としている。また、封止部材保持部311Lと封止部材保持用壁部320Lとは、ニードル310Lの移動方向から見て、一部が重なって位置している。そして、封止部材34Lと、ハウジング110の一部であり、封止部材34Lと対向する面である筐体封止部材対向面340Lとは、開閉弁31(ニードル310L)の移動方向に垂直な方向(X-Y面内の方向)において所定の距離D5が設けられている。また、封止部材34Lは、ニードル310Lの当該垂直な方向において封止部材34Lと対向するニードル310Lの一部の面である開閉弁封止部材対向面350Lと、所定の距離K5だけ離間して設けられている。なお、これらの構成をいいかえると、封止部材34Lは開閉弁31の移動方向に垂直な断面において、ニードル310Lと筐体部品との両方に同時に接続した同一断面はないともいえる。
【0091】
ここで、アレイ形状に対して、例えば、実施例1に係る構成のようにニードルやノズルが一つずつ備わっている構成、すなわちアレイ形状になっていない構成を、ここでは単体形状とよぶことにする。そして、アレイ形状にした場合に得られる効果について、単体形状と比較して、以下のようなことが挙げられる。まず、単体形状の場合は、個別に液室や、その液室にインク等の液体を注入するような部位を各々に設ける必要があり、その設備分のコストが増大する。また、単体形状を設けるにあたりネジによる締結や位置決め等の調整プロセスが必要となるが、これらにかかるコストの方が部材のコストが増大する。このことは、アレイ形状よりも単体形状の方が顕著である。
【0092】
これに対して、アレイ形状だと、個別に設けた液室にインク等の液体を注入するような部位を一つ設ければよいといった部材の点数を低減できる。また、部材の点数が低減できることに伴い、ネジによる締結や位置決め等の調整プロセスも低減でき、その分のコストも抑えられるといった効果を得ることができる。
【0093】
次に、第7の実施形態を説明する。ここで、本実施形態は、図11Bに示すように、第6の実施形態とはアレイハウジング110の内の空間に仕切り部110Sを設け、CHごとに個別の空間である圧電素子収容部330Sとした点で異なっている。なお、その他については第3の実施形態に係る構成と共通している。このように、本発明はアレイ形状において、ニードル310Lと接続する圧電素子を含めた駆動部を収容する圧電素子収容部をCHごとに個別の空間にすることも可能である。
【0094】
<本発明に係る実施形態と比較例に係る構成との効果の違いについて>
ここで、これまで説明した本発明に係る実施形態と比較例に係る構成との効果の違いを説明する。まず、比較例に係る構成は、封止部材が開閉弁(ニードル)の移動方向に対して垂直な方向に押圧される構成となっている。そのため、比較例に係る構成は、開閉弁(ニードル)の移動時にニードルと封止部材の間または封止部材と筐体との間で摺動するため摺動抵抗が生じる。さらにニードルの移動に伴い封止部材が捩れ等の変形が生じた場合は、封止部材の変形によりニードルの該移動方向に対して垂直な方向に荷重がかかるようになる。そのため、比較例に係る構成は、ニードルの軸ずれが生じ易く、姿勢が不安定になってしまう。これに対して本発明に係る実施形態においては、開閉弁(ニードル)の移動時に封止部材からニードルにかかる荷重が、開閉弁(ニードル)の移動方向に対して平行な荷重のみとなるように構成されている。そのため、本発明に係る実施形態においては、ニードルの軸ずれが生じにくく姿勢が安定し易くなる。
【0095】
<液体を吐出する装置の実施例の構成について>
次に、液体を吐出する装置の実施例の構成について、図を参照して説明する。なお、以下説明する構成は、上記した実施例に係る構成を適用することが可能である。また、本実施例以降の図で示すX,Y,X方向はこれまでの座標の定義と異なるものとする。
【0096】
図12は、液体を吐出する装置100(液体を吐出する装置の一例)の全体概略構成図である。図12(a)は液体を吐出する装置の側面図、図12(b)は同装置の平面図である。液体を吐出する装置100は、対象物の一例である液体付与対象500に対向して設置されている。液体を吐出する装置100は、X軸レール101と、このX軸レール101と交差するY軸レール102と、X軸レール101及びY軸レール102と交差するZ軸レール103を備える。特に、本実施形態においては、各レール101,102,103は互いに直交する方向に延在する。
【0097】
Y軸レール102は、X軸レール101がY軸方向に移動可能なようにX軸レール101を保持する。また、X軸レール101は、Z軸レール103がX軸方向に移動可能なようにZ軸レール103を保持する。そして、Z軸レール103は、吐出ヘッドの支持部であるキャリッジ1がZ軸方向に移動可能なようにキャリッジ1を保持する。
【0098】
液体を吐出する装置100は、キャリッジ1をZ軸レール103に沿ってZ軸方向に動かす第1のZ方向駆動部92と、Z軸レール103をX軸レール101に沿ってX軸方向に動かすX方向駆動部72を備える。また、液体を吐出する装置100は、X軸レール101をY軸レール102に沿ってY軸方向に動かすY方向駆動部82を備える。さらに、液体を吐出する装置100は、キャリッジ1に対してヘッド保持体70をZ軸方向に動かす第2のZ方向駆動部93を備える。
【0099】
前述した液体吐出ヘッドは、液体吐出ヘッド10のノズル14(図2参照)が液体付与対象500に対向するようにヘッド保持体70に取り付けられる。このように構成された 液体を吐出する装置100は、キャリッジ1をX軸、Y軸及びZ軸の方向に動かしながら、ヘッド保持体70に取り付けられた液体吐出ヘッドから液体付与対象500に向けて液体の一例であるインクを吐出し、液体付与対象500に描画を行う。
【0100】
次に、液体吐出装置の別の実施例であるインクジェットプリンタ201の構成について、図を参照して、以下に説明する。
【0101】
図13に示されるように、本実施形態に係るインクジェットプリンタ201は、プリントヘッド202と、X-Yテーブル203と、カメラ204と、制御部209と、駆動部211などを備えている。
【0102】
プリントヘッド202は、被塗装物Mの被塗装面に向けてインク(液体)を吐出するインクジェット方式の液体吐出ヘッドである。なお、ここでいう「インク」には「塗料」も含まれるものとする。プリントヘッド202は、複数の弁型ノズルを備え、インクは各弁型ノズルからプリントヘッド202の吐出面とは垂直な方向に吐出される。すなわち、プリントヘッド202のインクの吐出面は、X-Yテーブル203の移動によって形成されるXY平面と平行であり、各弁型ノズルから吐出されるインクドットはX-Y平面に対して垂直な方向に吐出される。また、各弁型ノズルから吐出されるインクの吐出方向はそれぞれ平行に吐出される。各弁型ノズルは、それぞれ所定の色のインクタンクと連結されている。また、インクタンクが加圧装置によって加圧されていることにより、各弁型ノズルと被塗装物Mのプリント対象面との距離が20cm程度であれば、問題なく各弁型ノズルからインクドットをプリント対象面に吐出することができる。
【0103】
X-Yテーブル203は、プリントヘッド202及びカメラ204を互いに直交するX方向及びY方向に移動させる機構を備えている。具体的に、X-Yテーブル203は、プリントヘッド202及び後述のカメラ204を保持するスライダをX方向に移動させるX軸移動機構205と、X軸移動機構205を2つのアームで保持しつつY方向に移動させるY軸移動機構206とを備えている。また、Y軸移動機構206にはシャフト207が 設けられており、このシャフト207をロボットアーム208が保持して駆動することにより、プリントヘッド202を被塗装物Mに対してプリントを行うべき所定位置に自由に配置できる。例えば、被塗装物Mが自動車である場合、ロボットアーム208は、プリントヘッド202を図14に示されるような自動車の上部あるいは図15に示されるような 自動車の横位置などに配置できる。なお、ロボットアーム208の動作は、予め制御部209に格納されたプログラムに基づいて制御される。
【0104】
カメラ204は、被塗装物Mのプリント対象面を撮影するデジタルカメラなどの撮像手段である。カメラ204は、X軸移動機構205及びY軸移動機構206によってX方向及びY方向に移動しながら被塗装物Mのプリント対象面の所定の範囲を一定の微小な間隔で撮影する。カメラ204のレンズ及び解像度などの仕様は、プリント対象面の所定の範囲について複数の細分割画像の撮影が可能なように適宜選択される。カメラ204による プリント対象面の複数の細分割画像の撮影は、後述の制御部209によって連続的、かつ、自動的に行われる。
【0105】
制御部209は、カメラ204によって撮影された画像を編集する画像編集ソフトウエアSと予め設定された制御プログラムに基づいてX-Yテーブル203を動作させてプリントヘッド202のプリント動作(インク吐出動作)を制御する。制御部209は、いわゆるマイクロコンピュータによって構成され、各種のプログラム及び撮影済みの画像のデータのほかプリントすべき画像のデータなどを記録保存する記憶装置、プログラムに従って各種の処理を実行する中央処理装置、キーボードやマウスなどの入力装置、必要に応じてDVDプレイヤーなどを備えている。さらに、制御部209は、モニタ210を備えている。モニタ210は、制御部209への入力情報や制御部209による処理結果などを表示する。
【0106】
制御部209は、カメラ204によって撮影された複数の細分割画像データを、画像処理ソフトを用いて画像処理を行い、被塗装物Mの平面でないプリント対象面を平面に投影された合成プリント面として生成する。また、制御部209は、既にプリント対象面にプリントされた画像に対して連続するようにプリントされる描画対象画像を、合成プリント面に重ね、描画対象画像がプリント済み画像の縁端部と連続するように編集を行い、描画対象編集画像を生成する。例えば、図12(c)に示した描画対象画像であるプリント画像252bについて、隣接するプリント画像252aとの間に非プリント領域253が形成されないようにプリント画像252bを合成プリント面に整合するように編集することにより、描画対象編集画像を生成する。そして、生成された描画対象編集画像に基づいて プリントヘッド202からプリント対象面にインクが吐出されることにより、新しい画像がプリント済みの画像との間に隙間を生じることなくプリントされる。なお、カメラ204による複数の細分割画像の撮影及びプリントヘッド202の各ノズルからのインクの吐出によるプリントの動作は、制御部209によって動作制御された駆動部211によって行われる。
【0107】
図12(a)においては、球状物の液体付与対象251の球面状の表面にインクジェットノズルによって二次元の四角形を形成するような場合に、ノズルヘッド250に搭載された各インクジェットノズルから噴射されるインクの吐出方向が図示されている。図12(b)においては、ノズルヘッド250に搭載された各インクジェットノズルから噴射されるインクはノズルヘッド250に対して垂直方向に吐出されるので、液体付与対象251の表面にプリントされたプリント画像252aが、周辺が歪んだ形状の四角形となることが図示されている。
【0108】
<電極の製造装置>
本発明に係る実施形態は、電極および電気化学素子の製造装置を含む。以下、電極の製造装置について説明する。図17は、本実施形態に係る電極の製造装置の一例を示す模式図である。電極の製造装置は、上記した液体を吐出する装置を用いて液体組成物を吐出することで電極材料を有する層を有する電極を製造する装置である。
【0109】
<電極材料を有する層形成手段、電極材料を有する層形成工程>
本実施形態における吐出手段は、上記した液体を吐出する装置である。前記吐出により、対象物上に液体組成物を付与して、液体組成物層を形成することができる。前記対象物(以下、「吐出対象物」と称することがある。)としては、電極材料を有する層を形成する対象であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、電極基体(集電体)や活物質層、固体電極材料を有する層などが挙げられる。また、吐出手段及び吐出工程は、吐出対象物に対して電極材料を有する層を形成することが可能であれば、直接液体組成物を吐出することで電極材料を有する層を形成する構成であってもよく、間接的に液体組成物を吐出することで電極材料を有する層を形成する構成であってもよい。
【0110】
<その他の構成、その他の工程>
電極合材層の製造装置におけるその他の構成としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、加熱手段などが挙げられる。電極合材層の製造方法におけるその他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、加熱工程などが挙げられる。
【0111】
<加熱手段、加熱工程>
前記加熱手段は、前記吐出手段により吐出された液体組成物を加熱する手段である。加熱工程は、前記吐出工程で吐出された液体組成物を加熱する工程である。前記加熱により、前記液体組成物層を乾燥させることができる。
【0112】
<直接液体組成物を吐出することで電極材料を有する層を形成する構成>
ここで、電極の製造装置の一例として、電極基体(集電体)上に活物質を含む電極合材層を形成する電極製造装置を説明する。電極製造装置は、吐出対象物を有する印刷基材704上に、液体組成物を付与して液体組成物層を形成する工程を含む吐出工程部120と、液体組成物層を加熱して電極合材層を得る加熱工程を含む加熱工程部130を備える。電極製造装置は、印刷基材704を搬送する搬送部705を備え、搬送部705は、吐出工程部120、加熱工程部130の順に印刷基材704をあらかじめ設定された速度で搬送する。前記活物質層などの吐出対象物を有する印刷基材704の製造方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができる。吐出工程部120は、印刷基材704上に液体組成物を付与する付与工程を実現する本発明の印刷装置281aと、液体組成物を収容する収容容器281bと、収容容器281bに貯留された液体組成物を印刷装置281aに供給する供給チューブ281cを備える。
【0113】
収容容器281bは液体組成物707を収容し、吐出工程部120は、印刷装置281aから液体組成物707を吐出して、印刷基材704上に液体組成物707を付与して液体組成物層を薄膜状に形成する。なお、収容容器281bは、電極合材層の製造装置と一体化した構成であってもよいが、電極合材層の製造装置から取り外し可能な構成であってもよい。また、電極合材層の製造装置と一体化した収容容器や電極合材層の製造装置から取り外し可能な収容容器に添加するために用いられる容器であってもよい。
【0114】
収容容器281bや供給チューブ281cは、液体組成物707を安定して貯蔵及び供給できるものであれば任意に選択可能である。
【0115】
加熱工程部130は、図18に示すように、加熱装置703を有し、液体組成物層に残存する溶媒を、加熱装置703により加熱して乾燥させて除去する溶媒除去工程を含む。これにより電極合材層を形成することができる。加熱工程部130は、溶媒除去工程を減圧下で実施してもよい。
【0116】
加熱装置703としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、基板加熱、IRヒータ、温風ヒータなどが挙げられ、これらを組み合わせてもよい。また、加熱温度や時間に関しては、液体組成物707に含まれる溶媒の沸点や形成膜厚に応じて適宜選択可能である。
【0117】
図18は、本実施形態に係る電極製造装置(液体を吐出する装置)の他の一例を示す模式図である。液体を吐出する装置100は、ポンプ810と、制御バルブ811、812を制御することにより、液体組成物が吐出ヘッド1、タンク807、チューブ808を循環することが可能である。また、液体を吐出する装置100は、外部タンク813が設けられており、タンク807内の液体組成物が減少した際に、ポンプ810と、制御バルブ811、812、814を制御することにより、外部タンク813からタンク807に液体組成物を供給することも可能である。本実施形態に係る電極製造装置を用いると、吐出対象物の狙ったところに液体組成物を吐出することができる。前記電極合材層は、例えば、電気化学素子の構成の一部として、好適に用いることができる。前記電気化学素子における前記電極合材層以外の構成としては、特に制限はなく、公知のものを適宜選択することができ、例えば、正極、負極、セパレータなどが挙げられる。
【0118】
以上説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
【0119】
[第1態様]
第1態様は、液体(例えば、インク170)を吐出するノズル孔(例えば、ノズル14、14L)と、前記ノズル孔に連通し前記液体を貯留する液室(例えば、流路17、17L)と、を有する筐体(例えば、ハウジング11a、ハウジング110)と、少なくとも一部が前記液室内にあり、前記ノズル孔と前記液室とを連通させる位置と、遮断する位置とに移動可能に設けられたニードル弁(例えば、開閉弁31)と、前記ニードル弁を移動させる移動手段(例えば、圧電素子32)と、を備え、前記筐体内に、前記移動手段を収容する移動手段収容部(例えば、圧電素子収容部330、330L、330S)と、前記ニードル弁および前記液室の壁部の一部(例えば、封止部材保持用壁部320、320a、320b、320c、320L)と当接することで前記移動手段収容部と前記液室との間を封止する封止部材(例えば、封止部材34、34a、34b、34L)と、を設け、前記封止部材は、前記ニードル弁の移動に伴い該ニードル弁の移動方向に変形可能であることを特徴としている。
【0120】
[第2態様]
第2態様は、液体を吐出するノズル孔と、前記ノズル孔に連通し前記液体を貯留する液室と、を有する筐体と、少なくとも一部が前記液室内にあり、前記ノズル孔と前記液室とを連通させる位置と、遮断する位置とに移動可能に設けられたニードル弁と、前記ニードル弁を移動させる移動手段と、を備え、前記筐体内に、前記移動手段を収容する移動手段収容部と、前記ニードル弁および前記液室の壁部の一部と当接することで前記移動手段収容部と前記液室との間を封止する封止部材と、を設け、前記ニードル弁は前記移動方向に垂直な方向に延在し、前記封止部材を保持する第1の保持部(例えば、封止部材保持部311、311a、311b、311c、311L)を有し、前記液室の壁部の一部は前記移動方向に垂直な方向に延在し、前記封止部材を保持する第2の保持部(例えば、封止部材保持用壁部320、320a、320b、320c、320L)をし、前記第1の保持部と前記第2の保持部とは前記ニードル弁の移動方向から見て一部が重なって位置することを特徴としている。
【0121】
[第3態様]
第3態様は、第1態様または第2態様において、前記ニードル弁は、前記ニードル弁の一部に前記ニードル弁の移動方向に垂直な方向において前記封止部材と対向する面であるニードル弁封止部材対向面(例えば、開閉弁封止部材対向面 350、350a、350b、350c、350L)を有し、前記筐体は、前記筐体の一部に前記垂直な方向で前記封止部材と対向する面である筐体封止部材対向面(例えば、筐体封止部材対向面340、340a、340b、340c、340L)を有し、前記封止部材は、前記ニードル弁封止部材対向面と前記垂直な方向において所定の距離をおいて配置され、前記筐体封止部材対向面と前記垂直な方向において所定の距離を置いて配置されることを特徴としている。
【0122】
[第4態様]
第4態様は、第1態様乃至第3態様のいずれかにおいて、前記封止部材が前記ニードル弁の移動方向において圧縮されることにより液体を封止することを特徴としている。
【0123】
[第5態様]
第5態様は、第4態様において、前記封止部材は、前記ニードル弁の移動方向に垂直な方向に面する封止部および前記液室の壁部の前記ニードル弁の移動方向に垂直な方向に面する封止部に当接することを特徴としている。
【0124】
[第6態様]
第6態様は、第5態様において、前記封止部材は、前記封止部材と前記ニードル弁の当接部が、前記封止部材と前記筐体の当接部よりも前記ノズル側に配置されていることを特徴としている。
【0125】
[第7態様]
第7態様は、第6態様において、前記封止部材は、前記ニードル弁を前記ノズル孔側に付勢するように設けられていることを特徴としている。
【0126】
[第8態様]
第8態様は、第1態様乃至第7態様のいずれかにおいて、前記封止部材(例えば、封止部材34a、34b)がチューブ形状であり、前記ニードル弁は、前記封止部材の内周側と当接することで前記移動手段収容部と前記液室との間を封止する第一の径方向封止形状を有し、前記筐体は、前記封止部材の内周側と当接することで前記移動手段収容部と前記液室との間を封止する第二の径方向封止形状を有することを特徴としている。
【0127】
[第9態様]
第9態様は、第8態様において、前記封止部材と前記ニードル弁との当接部が、前記封止部材と前記筐体との当接部よりも前記ノズル側に配置された構成であることを特徴としている。
【0128】
[第10態様]
第10態様は、第9態様において、前記封止部材(例えば、封止部材34b)が前記移動方向に伸縮可能な伸縮部を有していることを特徴としている。
【0129】
[第11態様]
第11態様は、第1態様乃至第10態様のいずれかの液体吐出ヘッドを有する液体を吐出する装置であることを特徴としている。
【符号の説明】
【0130】
10 液体吐出ヘッド
11a 第1ハウジング
11b 第2ハウジング
14、14L、ノズル(吐出口)
15、15L、ノズル板
17、17L、流路(液室)
30、30L、1030 液体吐出モジュール
31、1031 開閉弁(ニードル弁)
32 圧電素子(駆動体)
34、34a、34b、34L、1034 封止部材
40、40L、1040 弁部材
100 液体を吐出する装置
110 アレイハウジング
110S 仕切り部
170 インク(液体)
310、310a、310b、310c、310L、1310 ニードル
311、311a、311b、311c、311L 封止部材保持部
320、320a、320b、320c、320L 封止部材保持用壁部
330、330L、330S 圧電素子収容部
340、340a、340b、340c、340L 筐体封止部材対向面
350、350a、350b、350c、350L 開閉弁封止部材対向面
3200b、3200c 垂直壁部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0131】
【特許文献1】特開2020-023177号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18