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特開2024-131966防食組成物、金属材料の腐食抑制方法及び鉄筋コンクリート構造物の補修方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131966
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】防食組成物、金属材料の腐食抑制方法及び鉄筋コンクリート構造物の補修方法
(51)【国際特許分類】
   C23F 11/00 20060101AFI20240920BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20240920BHJP
   C09D 109/00 20060101ALI20240920BHJP
   C09D 109/08 20060101ALI20240920BHJP
   E04G 23/02 20060101ALI20240920BHJP
   C08K 3/28 20060101ALI20240920BHJP
   C08L 9/06 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
C23F11/00 H
C23F11/00 F
C09D7/61
C09D109/00
C09D109/08
E04G23/02 A
C08K3/28
C08L9/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042569
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】596045155
【氏名又は名称】福徳技研株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132964
【弁理士】
【氏名又は名称】信末 孝之
(72)【発明者】
【氏名】徳納 剛
(72)【発明者】
【氏名】大森 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】須藤 裕司
【テーマコード(参考)】
2E176
4J002
4J038
4K062
【Fターム(参考)】
2E176AA01
2E176BB03
4J002AC081
4J002DF036
4J002GH02
4J002GL00
4J002HA07
4J038CA021
4J038HA336
4J038KA05
4J038MA08
4J038MA10
4J038NA03
4J038PB05
4J038PC02
4K062BA08
4K062BA20
4K062BC04
4K062BC09
4K062BC10
4K062CA04
4K062FA08
4K062GA10
(57)【要約】
【課題】作業負担が小さく、補修後の経年再劣化を抑制することの可能な、防食組成物、金属材料の腐食抑制方法及び鉄筋コンクリート構造物の補修方法を提供する。
【解決手段】亜硝酸塩、熱可塑性樹脂、及び水を含む防食組成物である。熱可塑性樹脂がSBR樹脂であることが好ましい。熱可塑性樹脂の含有量が5~50質量%であることが好ましい。亜硝酸塩が亜硝酸リチウムであることが好ましい。亜硝酸塩の含有量が1~30質量%であることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜硝酸塩、熱可塑性樹脂、及び水を含む、防食組成物。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂がSBR樹脂である、請求項1に記載の防食組成物。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂の含有量が5~50質量%である、請求項1に記載の防食組成物。
【請求項4】
前記亜硝酸塩が亜硝酸リチウムである、請求項1に記載の防食組成物。
【請求項5】
前記亜硝酸塩の含有量が1~30質量%である、請求項1に記載の防食組成物。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のうちいずれか1つに記載の防食組成物を、金属材料の錆に塗布することを特徴とする、金属材料の腐食抑制方法。
【請求項7】
請求項1乃至請求項5のうちいずれか1つに記載の防食組成物を、鉄筋コンクリート構造物の露出した鉄筋表面に塗布することを特徴とする、鉄筋コンクリート構造物の補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防食組成物、これを用いた金属材料の腐食抑制方法及び鉄筋コンクリート構造物の補修方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリートによって形成された壁、橋脚、防波堤等の鉄筋コンクリート構造物においては、かぶりコンクリートの劣化により、内部の鉄筋が露出する場合がある。例えば、全国に多数存在する長さ2~5m程度の小規模橋梁においては、橋板底面のかぶりコンクリートの劣化により鉄筋が露出するケースが散見される。
【0003】
鉄筋が露出した橋梁は状態が酷ければ架け替えが必要となるが、露出した鉄筋に十分な太さ(芯)が残っていれば、錆進行を遅らせる補修を行うことにより応急対応して経過観察することができる。
【0004】
劣化して表面に錆が生じた鉄筋コンクリート構造物の補修は、錆びた部分をケレン作業により素地調整してから、エポキシ樹脂等を用いた硬化型塗料を塗布するのが一般的である。例えば特許文献1には、構造物等の補修において、適切な強度と柔軟性、作業性とを兼ね備える2液型硬化性樹脂組成物に関する発明が記載されている。
【0005】
一方、コンクリート中に含まれる塩分や、空気中の炭酸ガスの影響によるコンクリートpHの低下(中性化、炭酸化)により、コンクリート中の鉄筋に腐食が発生し、その結果、鉄筋コンクリート構造物にひび割れ等が生じる原因となっている。また、コンクリート中に含まれるナトリウムやカリウム等のアルカリ金属成分が骨材と反応してアルカリ骨材反応(ASR)が生じ、その結果、鉄筋コンクリート構造物が内部で異常膨張してひび割れ等が生じる原因となっている。
【0006】
このような鉄筋腐食やアルカリ骨材反応を抑制する方法としては、亜硝酸リチウム水溶液等を鉄筋コンクリート構造物に浸透させる方法が提案されており、例えば特許文献2には、作業負担が小さく、鉄筋コンクリート構造物への含浸速度の速い、コンクリート補修液及びコンクリートの補修方法に関する発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019-183090号公報
【特許文献2】特開2021-161018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、エポキシ樹脂等を用いた硬化型塗料を用いて補修する場合には、硬化型塗料の塗布前にケレン作業により素地調整して、塗膜を被塗面にしっかり密着させる必要があるため、作業負担が大きい。
【0009】
また、硬化型塗料はコンクリート内外の水分や空気の流れを遮断するとともに、塗料そのものも経年劣化(初期性能からの低下)するものであり、補修後に塗料被着体が経年再劣化するという問題がある。
【0010】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、作業負担が小さく、補修後の経年再劣化を抑制することの可能な、防食組成物、金属材料の腐食抑制方法及び鉄筋コンクリート構造物の補修方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の防食組成物は、亜硝酸塩、熱可塑性樹脂、及び水を含むものである。
【0012】
また、前記熱可塑性樹脂がSBR樹脂であることが好ましい。
【0013】
また、前記熱可塑性樹脂の含有量が5~50質量%であることが好ましい。
【0014】
また、前記亜硝酸塩が亜硝酸リチウムであることが好ましい。
【0015】
また、前記亜硝酸塩の含有量が1~30質量%であることが好ましい。
【0016】
また、本発明の金属材料の腐食抑制方法は、上記本発明の防食組成物を、金属材料の錆に塗布することを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明の鉄筋コンクリート構造物の補修方法は、上記本発明の防食組成物を、鉄筋コンクリート構造物の露出した鉄筋表面に塗布することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、作業負担が小さく、補修後の経年再劣化を抑制することの可能な、防食組成物、金属材料の腐食抑制方法及び鉄筋コンクリート構造物の補修方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明者らは、劣化して鉄筋が露出した鉄筋コンクリート構造物の補修のために、亜硝酸塩を含む防食組成物を塗布する方法を検討した結果、バインダーとして熱可塑性樹脂を加えて錆組織に浸透するプライマー(下地処理剤)とし、鉄筋コンクリート構造物に塗布する方法に想到した。そして、熱可塑性樹脂及び亜硝酸塩の種類と含有量を変化させながら試験を行った。
【0020】
本発明の防食組成物は、亜硝酸塩、熱可塑性樹脂、及び水を含む。
【0021】
前記熱可塑性樹脂としては、SBR(スチレンブタジエンゴム)樹脂、アクリル樹脂、EVA(エチレン-酢酸ビニル共重合体)樹脂、ウレタン樹脂が好ましく用いられる。これらの中でも、錆層への浸透性及び塩水噴霧試験後の錆表面の均一性の観点から、SBR樹脂が特に好ましい。また、これらの熱可塑性樹脂は、水性エマルション又は水性ディスパーションの形態で使用することが好ましい。
【0022】
熱可塑性樹脂の含有量は5~50質量%であることが好ましく、10~30質量%であることがより好ましく、10~20質量%であることがさらに好ましい。
【0023】
前記亜硝酸塩としては、亜硝酸リチウムを使用することができる。また、亜硝酸塩は固体のまま配合しても水溶液の形態で配合しても構わず、水溶液とした場合の濃度は問わない。ただし、例えば亜硝酸リチウムの場合、水溶液の濃度は通常5~43質量%程度であり、ハンドリングの観点から、25~40質量%が好ましい。
【0024】
亜硝酸塩の含有量は1~30質量%であることが好ましく、2~20質量%であることがより好ましく、3~15質量%であることがさらに好ましい。
【0025】
本発明の防食組成物は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、添加剤等の他の成分を含んでいても良い。
【0026】
劣化して鉄筋が露出した鉄筋コンクリート構造物の露出した鉄筋表面に上記防食組成物を塗布すると、露出した鉄筋の表面に生じた錆と錆との間の凹部が、酸化鉄の不動態被膜により修復されて均一になる。従って、エポキシ樹脂等を用いた硬化型塗料を用いて補修する場合に比べて、塗布前のケレン作業が不要であり作業負担が小さい。
【0027】
また、上記防食組成物はエポキシ樹脂等を用いた硬化型塗料と比較して粘度が低いため浸透しやすく、錆の下にある鉄骨表面に亜硝酸塩を高濃度で到達させることができる。従って、補修後の経年再劣化を抑制することが可能である。
【0028】
また、上記防食組成物は、金属材料の錆に塗布することにより金属材料の腐食を抑制することができるので、鉄筋コンクリート構造物の補修以外にも用いることができる。例えば表面に錆の生じた機械装置、屋外のベンチや遊具等の金属材料を用いた様々な道具や構造物に塗布して、金属材料の腐食を抑制することができる。金属材料としては、鉄を含む金属材料が好ましく、鉄を主成分とする金属材料がより好ましく、鉄がことさら好ましい。
【0029】
本出願の防食組成物の塗布方法は、一般的な方法から選択される。具体的には捌け塗り、ロールコート、スプレー塗布などが挙げられる。
【0030】
以下、実施例に基づいて説明する。
【実施例0031】
(試験方法)
熱可塑性樹脂、亜硝酸塩、及び水を含む防食組成物を調製し、発錆させた鋼板に塗布して乾燥させた。得られた塗装鋼板について、塩水噴霧試験機を用いた耐塩水試験を実施した。
【0032】
(塗料の調製)
・調製例1
SBR樹脂水性ディスパージョン(アイカ工業(株)製 クロスレンCMX-02:固形分濃度45質量%)107g、亜硝酸リチウム40質量%水溶液(日産化学(株)製 LN-40)120g、イオン交換水73gを秤量し、プラスチックボトルにて順次撹拌混合し、防食組成物を調製した。この際、水分散液中のSBR濃度は16質量%、亜硝酸リチウム濃度は16質量%であった。
・調製例2
SBR樹脂水性ディスパージョン(アイカ工業(株)製 クロスレンCMX-02F:固形分濃度45質量%)107g、亜硝酸リチウム40質量%水溶液(日産化学(株)製 LN-40)120g、イオン交換水73gを秤量し、プラスチックボトルにて順次撹拌混合し、防食組成物を調製した。この際、水分散液中のSBR濃度は16質量%、亜硝酸リチウム濃度は16質量%であった。
・調製例3
アクリル樹脂水性ディスパージョン(アイカ工業(株)製 クロスレンCMX-43:固形分濃度37質量%)105g、亜硝酸リチウム40質量%水溶液(日産化学(株)製 LN-40)120g、イオン交換水75gを秤量し、プラスチックボトルにて順次撹拌混合し、防食組成物を調製した。この際、水分散液中のアクリル樹脂濃度は16質量%、亜硝酸リチウム濃度は16質量%であった。
・調製例4
エチレン-酢酸ビニル共重合体エマルジョン(アイカ工業(株)製 アイボンフレックスAE-Z37:固形分濃度37質量%)130g、亜硝酸リチウム40質量%水溶液(日産化学(株)製 LN-40)120g、イオン交換水50gを秤量し、プラスチックボトルにて順次撹拌混合し、防食組成物を調製した。この際、水分散液中のアクリル樹脂濃度は16質量%、亜硝酸リチウム濃度は16質量%であった。
・調製例5
SBR樹脂水性ディスパージョン(アイカ工業(株)製 クロスレンCMX-02:固形分濃度45質量%)132g、亜硝酸リチウム40質量%水溶液(日産化学(株)製 LN-40)37.5g、イオン交換水131gを秤量し、プラスチックボトルにて順次撹拌混合し、防食組成物を調製した。この際、水分散液中のSBR濃度は20質量%、亜硝酸リチウム濃度は5質量%であった。
・調製例6
SBR樹脂水性ディスパージョン(アイカ工業(株)製 クロスレンCMX-02:固形分濃度45質量%)132g、亜硝酸リチウム40質量%水溶液(日産化学(株)製 LN-40)75g、イオン交換水93gを秤量し、プラスチックボトルにて順次撹拌混合し、防食組成物を調製した。この際、水分散液中のSBR濃度は20質量%、亜硝酸リチウム濃度は10質量%であった。
・調製例7
SBR樹脂水性ディスパージョン(アイカ工業(株)製 クロスレンCMX-02:固形分濃度45質量%)132g、亜硝酸リチウム40質量%水溶液(日産化学(株)製 LN-40)150g、イオン交換水18gを秤量し、プラスチックボトルにて順次撹拌混合し、防食組成物を調製した。この際、水分散液中のSBR濃度は20質量%、亜硝酸リチウム濃度は20質量%であった。
・調製例8
SBR樹脂水性ディスパージョン(アイカ工業(株)製 クロスレンCMX-02:固形分濃度45質量%)132g、イオン交換水168gを秤量し、プラスチックボトルにて順次撹拌混合し、防食組成物を調製した。この際、水分散液中のSBR濃度は20質量%であった。
【0033】
表1に各調整例の樹脂濃度及び亜硝酸リチウム濃度を示す。
【0034】
【表1】
略号の説明
CMX-02:クロスレンCMX-02,SBR,固形分濃度=45質量%
CMX-02F:クロスレンCMX-02F,SBR,固形分濃度=45質量%
CMX-43:クロスレンCMX-43,アクリル樹脂,固形分濃度=45.5質量%
AE-Z37:アイボンフレックスAE-Z37,EVA樹脂,固形分濃度=37質量%
いずれもアイカ工業(株)製
【0035】
実施例1~4として、樹脂濃度及び亜硝酸リチウム濃度が同一の防食組成物を使用し、熱可塑性樹脂の種類の違いによる防食効果について試験した
【0036】
(実施例1)
縦150mm×横70mm×厚み2.3mmの冷間圧延鋼板を屋外に立て掛けて並べ、1か月間静置し、発錆させた。この発錆鋼板に調製例1で得た防食組成物を0.067kg/mの塗布量で刷毛塗りし、常温乾燥させた(室温20℃、10日間)。乾燥後の鋼板の非磁性層(錆層+防食組成物層)を電磁膜厚計((株)サンコウ電子研究所製 SWT-9000)で測定し、初期値(0時間)とした。非磁性層の厚みは、各鋼板につき同箇所の5点を測定し、その平均値を測定値とした。得られた塗装鋼板について、塩水噴霧試験機(スガ試験機(株)製)を用いた耐塩水試験を実施した。試験方法はJISZ2371:塩水噴霧試験方法に準拠し、槽内温度35±1℃、噴霧圧力を0.098MPaとした。
【0037】
(実施例2)
調製例2の防食組成物を用いた以外は、実施例1と同様の方法で試験した。
【0038】
(実施例3)
調製例3の防食組成物を用いた以外は、実施例1と同様の方法で試験した。
【0039】
(実施例4)
調製例4の防食組成物を用いた以外は、実施例1と同様の方法で試験した。
【0040】
(比較例1)
実施例1と同様に準備した発錆鋼板に防食組成物を塗布せずに、塩水噴霧試験を行った。
【0041】
表2に塩水噴霧試験結果(熱可塑性樹脂の種類の違い)を示す。
【0042】
【表2】
【0043】
時間経過に伴い非磁性層の厚みが増し、これは錆層の成長と見積もることができる。比較例1に対して、複数の樹脂種において防食効果が確認できた。
【0044】
実施例5~7として、熱可塑性樹脂の種類及び樹脂濃度が同一の防食組成物を使用し、亜硝酸リチウム濃度の違いによる防食効果について試験した。
【0045】
(実施例5)
縦150mm×横70mm×厚み2.3mmの冷間圧延鋼板を屋外に立て掛けて並べ、1か月間静置し、発錆させた。この発錆鋼板に調製例5で得た防食組成物を0.086kg/mの塗布量で刷毛塗りし、常温乾燥させた(室温20℃、10日間)。乾燥後の鋼板の非磁性層(錆層+防食組成物層)を電磁膜厚計((株)サンコウ電子研究所製 SWT-9000)で測定し、初期値(0時間)とした。非磁性層の厚みは、各鋼板につき同箇所の5点を測定し、その平均値を測定値とした。得られた塗装鋼板について、塩水噴霧試験機(スガ試験機(株)製)を用いた耐塩水試験を実施した。試験方法はJISZ2371:塩水噴霧試験方法に準拠し、槽内温度35±1℃、噴霧圧力を0.098MPaとした。
【0046】
(実施例6)
調製例6の防食組成物を用いた以外は、実施例5と同様の方法で試験した。
【0047】
(実施例7)
調製例7の防食組成物を用いた以外は、実施例5と同様の方法で試験した。
【0048】
(比較例2)
実施例5と同様に準備した発錆鋼板に防食組成物を塗布せずに、塩水噴霧試験を行った。
【0049】
表3に塩水噴霧試験結果(亜硝酸リチウム濃度の違い)を示す。
【0050】
【表3】
【0051】
時間経過に伴い非磁性層の厚みが増し、これは錆層の成長と見積もることができる。比較例2に対して、複数の亜硝酸リチウム濃度において防食効果が確認できた。
【0052】
実施例8として、熱可塑性樹脂の種類及び樹脂濃度が同一の防食組成物を使用し、複層塗料における有無亜硝酸リチウムの有無による防食効果について試験した。複層塗料とは下塗り+上塗り塗料を積層した複層構造の塗料を指す。
【0053】
(実施例8)
縦150mm×横70mm×厚み2.3mmの冷間圧延鋼板を屋外に立て掛けて並べ、1か月間静置し、発錆させた。この発錆鋼板に調製例5で得た防食組成物を0.086kg/mの塗布量で刷毛塗りし、常温乾燥させた(室温20℃、10日間)。さらに上塗り塗料として、アイゾールEX((株)アイゾールテクニカ製)を0.25kg/mの塗布量で刷毛塗りし、7日間乾燥させた。乾燥後の鋼板の非磁性層(錆層+防食組成物層)を電磁膜厚計((株)サンコウ電子研究所製 SWT-9000)で測定し、初期値(0時間)とした。非磁性層の厚みは、各鋼板につき同箇所の5点を測定し、その平均値を測定値とした。得られた塗装鋼板について、塩水噴霧試験機(スガ試験機(株)製)を用いた耐塩水試験を実施した。試験方法はJISZ2371:塩水噴霧試験方法に準拠し、槽内温度35±1℃、噴霧圧力を0.098MPaとした。
【0054】
(比較例3)
調製例8の防食組成物を用いた以外は、実施例8と同様の方法で試験した。
【0055】
表4に塩水噴霧試験結果(複層塗料における有無亜硝酸リチウムの有無)を示す。
【0056】
【表4】
【0057】
時間経過に伴い非磁性層の厚みが増し、これは錆層の成長と見積もることができる。亜硝酸リチウムが存在しない場合は(比較例3)錆層が成長するのに対して、亜硝酸リチウム濃度が存在する場合は(実施例8)錆層が成長せず防食効果が確認できた。
【0058】
このように、本実施形態に係る防食組成物は防食効果を有するものであり、鉄筋コンクリート構造物の補修方法に適用すれば、作業負担が小さく、補修後の経年再劣化も抑制することができる。
【0059】
また、例えば表面に錆の生じた機械装置、屋外のベンチや遊具等の金属材料を用いた様々な道具や構造物に塗布して、金属材料の腐食を抑制することができる。
【0060】
以上、本発明の実施形態に係る防食組成物、金属材料の腐食抑制方法及び鉄筋コンクリート構造物の補修方法について説明したが、本発明は上述した実施の形態に限定されるわけではなく、その他種々の変更が可能である。