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特開2024-132066便器装置、水洗式便器、発泡剤及び水洗式便器の洗浄方法
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  • 特開-便器装置、水洗式便器、発泡剤及び水洗式便器の洗浄方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132066
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】便器装置、水洗式便器、発泡剤及び水洗式便器の洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   E03D 11/02 20060101AFI20240920BHJP
   E03D 9/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
E03D11/02 A
E03D9/00 C
E03D9/00 Z
E03D11/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042711
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 康宏
(72)【発明者】
【氏名】茶谷 和久
(72)【発明者】
【氏名】ロリス・ガルスタ・パディリア
(72)【発明者】
【氏名】小塚 恭平
(72)【発明者】
【氏名】小鍛治 泰斗
(72)【発明者】
【氏名】吉田 慶太郎
【テーマコード(参考)】
2D038
2D039
【Fターム(参考)】
2D038AA03
2D038KA00
2D039AA02
2D039AC04
2D039AC06
2D039FC09
(57)【要約】
【課題】固形物を排出時に詰まりにくくできる便器装置、水洗式便器、発泡剤及び水洗式便器の洗浄方法を提供する。
【解決手段】便器装置は、水洗式便器10に設けられ、前記水洗式便器10において洗浄水を便鉢内に流入させて便器洗浄を実行する際に発泡剤11を投入し、発泡剤11が体積膨張を伴う発泡反応を前記便鉢内で発生させる。このような構成によれば、便鉢部21の固形物12は、洗浄水13に含まれた泡によって分散されて排水路23に流されるから、固形物12を排出時に詰まりにくくできる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水洗式便器に設けられ、前記水洗式便器において洗浄水を便鉢内に流入させて便器洗浄を実行する際に発泡剤を投入し、発泡剤が体積膨張を伴う発泡反応を前記便鉢内で発生させる、便器装置。
【請求項2】
前記発泡剤を収納する収納部と、
前記発泡剤を前記洗浄水に投入する投入口と、を有している、請求項1に記載の便器装置。
【請求項3】
前記便鉢の下部に溜められた溜水より上流側において前記発泡剤を前記洗浄水に投入する、請求項1に記載の便器装置。
【請求項4】
前記便鉢内に前記洗浄水の供給を開始するための操作を検知してから、所定時間経過した後に前記発泡剤を前記洗浄水に投入する、請求項1に記載の便器装置。
【請求項5】
前記発泡剤を前記洗浄水に投入することによって単位時間当たりに発生する泡の体積は、前記便鉢の下部に溜められた溜水に到達する時点において最大値の半分以上を維持している、請求項1に記載の便器装置。
【請求項6】
前記発泡剤は、水と反応すると炭酸ガスを出す、請求項1に記載の便器装置。
【請求項7】
前記便鉢の下部に溜められた溜水の水中に水を吐出するジェット吐水口を有した水洗式便器であって、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の便器装置を備えており、
前記発泡剤を投入した洗浄水は、前記ジェット吐水口からの吐出開始より前に、前記溜水に到達する、水洗式便器。
【請求項8】
洗浄水を便鉢内に流入させて便器洗浄を実行する際に投入され、体積膨張を伴う発泡反応を前記便鉢内で発生させる、発泡剤。
【請求項9】
洗浄水を便鉢内に流入させて便器洗浄を実行する際に発泡剤を投入し、体積膨張を伴う発泡反応を前記便鉢内で発生させて前記便鉢を洗浄する、水洗式便器の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、便器装置、水洗式便器、発泡剤及び水洗式便器の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記特許文献1に記載されているように、便鉢内に供給した洗浄水によって、便鉢内の糞尿や紙等を排水路へ排出させる水洗式便器が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-11639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような水洗式便器は、糞尿や紙等の固形物を排出時に詰まりにくくしたいという要望がある。
【0005】
本開示は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、固形物を排出時に詰まりにくくできる便器装置、水洗式便器、発泡剤及び水洗式便器の洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の便器装置は、水洗式便器に設けられ、前記水洗式便器において洗浄水を便鉢内に流入させて便器洗浄を実行する際に発泡剤を投入し、発泡剤が体積膨張を伴う発泡反応を前記便鉢内で発生させるものである。
【0007】
本開示の水洗式便器は、前記便鉢の下部に溜められた溜水の水中に水を吐出するジェット吐水口を有した水洗式便器であって、前記便器装置を備えており、前記発泡剤を投入した洗浄水は、前記ジェット吐水口からの吐出開始より前に、前記溜水に到達するものである。
【0008】
本開示の発泡剤は、洗浄水を便鉢内に流入させて便器洗浄を実行する際に投入され、体積膨張を伴う発泡反応を前記便鉢内で発生させるものである。
【0009】
本開示の水洗式便器の洗浄方法は、洗浄水を便鉢内に流入させて便器洗浄を実行する際に発泡剤を投入し、体積膨張を伴う発泡反応を前記便鉢内で発生させて前記便鉢を洗浄する方法である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態1における水洗式便器を示す側面図
図2】水洗式便器を示す断面図であって、図1のA-A位置における断面に相当する断面図
図3】水洗式便器を示す断面図であって、図2のB-B位置における断面に相当する断面図
図4】水洗式便器を示す一部拡大断面図であって、図2のC-C位置における断面に相当する断面図
図5】クエン酸及び重曹の配合比率と発泡量との関係を示す表
図6】発泡開始から単位時間あたりに発泡する泡の体積を示す表
図7】発泡開始から単位時間あたりに発泡する泡の体積の推移を示すグラフ
図8】発泡剤を用いる場合と用いない場合とで固形物の詰まりにくさを比較した結果を示す表
図9】発泡剤を用いる場合と用いない場合とで固形物の詰まりにくさを比較した結果を示すグラフ
図10】実施形態2における水洗式便器を示す側面図
図11】水洗式便器を示す一部拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。下記の複数の実施形態を矛盾を生じない範囲で任意に組み合わせたものも発明を実施するための形態に含まれる。
[1]本開示の便器装置は、水洗式便器に設けられ、前記水洗式便器において洗浄水を便鉢内に流入させて便器洗浄を実行する際に発泡剤を投入し、体積膨張を伴う発泡反応を前記便鉢内で発生させる。
[2]上記[1]において、前記発泡剤を収納する収納部と、前記発泡剤を前記洗浄水に投入する投入口と、を有している。
[3] 上記[1]から[2]までの何れかにおいて、前記便鉢の下部に溜められた溜水より上流側において前記発泡剤を前記洗浄水に投入する。
[4] 上記[1]から[3]までの何れかにおいて、前記便鉢内に前記洗浄水の供給を開始するための操作を検知してから、所定時間経過した後に前記発泡剤を前記洗浄水に投入する。
[5] 上記[1]から[4]までの何れかにおいて、前記発泡剤を前記洗浄水に投入することによって単位時間当たりに発生する泡の体積は、前記便鉢の下部に溜められた溜水に到達する時点において最大値の半分以上を維持している。
[6]本開示の水洗式便器は、前記便鉢の下部に溜められた溜水の水中に水を吐出するジェット吐水口を有した水洗式便器であって、[1]から[5]のいずれかに記載の便器装置を備えており、前記発泡剤を投入した洗浄水は、前記ジェット吐水口からの吐出開始より前に、前記溜水に到達する。
[7]本開示の発泡剤は、洗浄水を便鉢内に流入させて便器洗浄を実行する際に投入され、体積膨張を伴う発泡反応を前記便鉢内で発生させる。
[8]本開示の水洗式便器の洗浄方法は、洗浄水を便鉢内に流入させて便器洗浄を実行する際に発泡剤を投入し、体積膨張を伴う発泡反応を前記便鉢内で発生させて前記便鉢を洗浄する。
【0012】
<実施形態1>
本開示を具体化した実施形態1の水洗式便器10は、図1図3に示すように、便器本体20、発泡剤11及び便器装置30を有している。便器本体20は、便鉢部21、導水部22、及びトラップ部23を有している。便器本体20は陶器製である。便器装置30は、洗浄水を便鉢内に流入させて便器洗浄を実行する際に発泡剤11を投入し、体積膨張を伴う発泡反応を便鉢内で発生させる。便器洗浄を実行する際に発泡剤11を投入するとは、便器洗浄時に発泡剤11を投入すること、発泡剤11を投入した後に便器洗浄を行うことを含む。
【0013】
以下、各構成部材において、便鉢部21が設けられている側を前側、その反対側を後側、水洗式便器10を床面に設置した状態における床面側を下側、その反対側を上側、水洗式便器10を前側から見て右側を右側、左側を左側とする。各図において、X軸の正方向側は右側、X軸の負方向側は左側、Y軸の正方向側は上側、Y軸の負方向側は下側、Z軸の正方向側は前側、Z軸の負方向側は後側を示す。Y軸は、鉛直方向に延びている。
【0014】
便鉢部21は、図3に示すように、上方に開口している。便鉢部21は、立面部24、鉢面部25及び溜水部26を備えている。立面部24及び鉢面部25は、環状に連続している。立面部24は、便鉢部21の上端部に設けられている。立面部24は、鉛直に近い角度で立っている。鉢面部25は、立面部24の下側に繋がっている。鉢面部25は、溜水部26に向けて下り勾配で傾斜している。溜水部26は、鉢面部25の下側に繋がっている。溜水部26は、便鉢部21において溜水を溜める部分である。溜水は、洗浄を開始する前から便鉢部21の下部に溜まっている洗浄水である。溜水部26の底部の後方領域には、トラップ部23の入口が形成されている。トラップ部23は、便鉢部21の下流側に形成されている。トラップ部23は、便鉢部21から洗浄水及び固形物12を排出するための排水路を構成する。固形物12は、汚物や紙等であり、例えば大便やトイレットペーパである。
【0015】
導水部22は、図2及び図3に示すように、導水空間27を形成している。導水空間27の後部は、左右方向に広がっている。導水空間27の後部の上面は開放されている。導水空間27の前部は、後部の左右両端部から前方に延びている。導水空間27は、便鉢部21の吐水口28に連続している。吐水口28は、立面部24の後側領域の左右に形成されている。
【0016】
洗浄水は、図示しないタンク等から導水空間27の後部に供給され、導水空間27の前部を通って吐水口28へ向かう。図2には、導水空間27において吐水口28へ向かう洗浄水を黒色の矢印で模式的に示した。
【0017】
発泡剤11は、導水空間27において吐水口28へ向かう途中の洗浄水に投入される。発泡剤11は、洗浄水に触れるとすぐに反応し、炭酸ガスの泡を発生させる。発泡剤11を投入することによって発生した泡を含む洗浄水を発泡洗浄水13と称する。図面には、発泡洗浄水13を模式的に示す。発泡洗浄水13は、洗浄水に発泡剤11を投入した直後から発生する。導水空間27にて発生した発泡洗浄水13は、吐水口28から便鉢部21へ流入する。発泡剤11は、発泡洗浄水13に流されつつ反応し続け、トラップ部23に排出されるまでに大部分の反応を終える。吐水口28から便鉢部21に流入した洗浄水は、鉢面部25に沿って旋回しながら、溜水部26へ流れ込む。発泡洗浄水13は、大量の泡を含んだ状態で溜水部26へ到達する。
【0018】
発泡剤11は、有機酸及び炭酸塩を圧縮成形などの方法により一定の形に成形した固形の錠剤である。発泡剤11は、円盤状をなしている。有機酸は、クエン酸やその他の固形の酸(リンゴ酸、コハク酸、フマル酸、アジピン酸、スルファミン酸等)を採用できる。炭酸塩は、重曹(炭酸水素ナトリウム)やソーダ灰(炭酸ナトリウム)を採用できる。発泡剤11は、界面活性剤を含まない。
【0019】
発泡剤11のクエン酸及び重曹の質量比の配合比率R1であるクエン酸:重曹は、7:3~1:4の範囲となるように配合されている。この発泡剤11によれば、大量の泡を発生できる。配合比率R1=1:1~2:3の範囲で配合された発泡剤11は、更に大量の泡を発生できる。発泡剤11の配合比率R1と発泡量との関係については後ほど詳しく説明する。発泡量は、発泡開始から発泡終了までに各発泡剤11が発生する泡の体積の全体の量である。
【0020】
洗浄水に発泡剤11を投入することによって単位時間当たりに発生する泡の体積は、全発泡継続時間の早い段階で最大値になり、早い段階で最大値の半分になる。単位時間あたりに発生する泡の体積を発泡剤11の発泡強さと称する。全発泡継続時間は、発泡開始から発泡反応がゼロになるまでに要する時間である。
【0021】
発泡剤11の発泡強さは、吐水口28からの洗浄水の流出が止まるまでに最大値になると良い。発泡剤11の発泡強さは、洗浄水が溜水に到達する時点において最大値の半分以上を維持しているとよい。発泡剤11の発泡強さは、洗浄水が溜水に到達する時点において最大値の3/4以上を維持しているとなおよい。発泡剤11は、発泡量の大半を発泡し終えてからトラップ部23に排出されると良い。
【0022】
発泡剤11の発泡強さが最大となる時間T1、発泡剤11の発泡強さが半減する時間T2、及び発泡剤11が発泡量の半分を発泡し終える時間T3は、便器洗浄の開始から終了までに要する時間より短いと良い。時間T1、T2、T3は、発泡剤11の発泡開始からの経過時間である。発泡剤11は、時間T3を経過後、弱い発泡を続ける。発泡剤11の発泡強さについては後ほど詳しく説明する。
【0023】
便器装置30は、図1及び図2に示すように、便器本体20の導水部22に取り付けられている。便器装置30は、導水空間27に発泡剤11を投入する。便器装置30は、便器本体20に着脱自在なサイドカバー29によって覆われている。
【0024】
便器装置30は、図4に示すように、収納部31と、蓋部32と、押し部33と、を備えている。収納部31は、複数の発泡剤11を収納する。複数の発泡剤11は、収納部31において上下方向に重ねられる。収納部31は、発泡剤11を投入する投入口34を有している。投入口34は、収納部31の上端部に設けられている。蓋部32は、投入口34を開閉する。蓋部32は、常には投入口34を閉じている。蓋部32は、発泡剤11の投入時に投入口34を開く。押し部33は、発泡剤11を押し上げる。押し部33は、例えばバネである。発泡剤11は、押し部33によって押し上げられ、投入口34から導水空間27へ落とされる。
【0025】
便器装置30は、図示しない制御装置によって制御されている。制御装置は、発泡剤11を投入するタイミングを制御する。発泡剤11を投入するタイミングは、洗浄開始と同時であってもよいし、洗浄開始の直後であってもよい。発泡剤11を投入するタイミングは、便器洗浄を開始する操作部の操作時点から所定時間経過した後であってもよい。操作部は、例えばトイレルームの壁面に備えられたリモコンのボタンやタンクのレバー等であってよい。発泡剤11を投入するタイミングは、タンクから導水空間27に洗浄水が流入し始めたときであってもよい。
【0026】
発泡剤11の配合比率R1と発泡量との関係について、図5を用いて説明する。図5は、配合比率R1が異なる実施例1~6及び比較例の発泡剤それぞれについて発泡量を記載した表である。実施例1~6及び比較例1において、クエン酸及び重曹の質量の合計は20gである。各発泡剤11には、発生した炭酸ガスを泡として可視化するために界面活性剤(α-オレフィンスルホン酸ナトリウム)を0.5g加えた。
【0027】
比較例の発泡剤は、クエン酸16g、重曹4g、配合比率R1=7:3、配合比率R2=4である。配合比率R2は、クエン酸の質量を重曹の質量で除した比率であり、重曹に対するクエン酸の割合を示す。実施例1~6の発泡剤11の配合比率R1は、7:3~1:4である。具体的には、実施例1の発泡剤11は、クエン酸14g、重曹6g、配合比率R1=7:3、配合比率R2≒2.33である。実施例2の発泡剤11は、クエン酸12g、重曹8g、配合比率R1=3:2、配合比率R2=1.5である。実施例3の発泡剤11は、クエン酸10g、重曹10g、配合比率R1=1:1、配合比率R2=1である。実施例4の発泡剤11は、クエン酸8g、重曹12g、配合比率R1=2:3、配合比率R2≒0.67である。実施例5の発泡剤11は、クエン酸6g、重曹14g、配合比率R1=3:7、配合比率R2≒0.43である。実施例6の発泡剤11は、クエン酸4g、重曹16g、配合比率R1=1:4、配合比率R2=0.25である。
【0028】
発泡量は、次のような手順によって得た。まず、実施例1~6及び比較例の発泡剤11を1つずつメスシリンダに投入する。次に、メスシリンダに水を投入し、発泡剤11を発泡させる。発泡剤11が水と反応して発泡する様子を撮影し、メスシリンダの値から単位時間あたりの泡の体積を読み取る。メスシリンダに投入した水は、200mLの水道水であり、水の温度は約25℃である。
【0029】
図5の表には、実施例1~6及び比較例1それぞれについて、クエン酸の質量(g)、重曹の質量(g)、配合比率R1、配合比率R2、発泡量(mL)、及び判定を示した。判定は、発泡量を1,2,3,4の4段階で評価した。発泡量1000mL未満を判定の1とした。発泡量1000mL以上を判定の2とした。発泡量1500mL以上を判定の3とした。発泡量2000mL以上を判定の4とした。
【0030】
比較例の発泡量は700mL、判定は1であった。実施例1の発泡量は1200mL、判定は2であった。実施例2の発泡量は1600mL、判定は3であった。実施例3の発泡量は2000mL、判定は4であった。実施例4の発泡量は2200mL、判定は4であった。実施例5の発泡量は1900mL、判定は3であった。実施例6の発泡量は1250mL、判定は2であった。
【0031】
配合比率R1=7:3~1:4の範囲の発泡剤11は、配合比率R1=4:1の発泡剤よりも大量の泡を発生した。配合比率R1=3:2~3:7の範囲の発泡剤11は、更に大量の泡を発生した。配合比率R1=1:1~2:3の範囲の発泡剤11は、更に大量の泡を発生した。
【0032】
発泡剤11の発泡強さについて、図6及び図7を用いて説明する。図6及び図7は、実施例3の発泡剤11の発泡強さを表す表、及び発泡強さの推移を示すグラフである。実施例3の発泡剤11において発泡強さの最大値は300mL/secであり、時間T1は2秒であった。発泡剤11の発泡強さの半減値は150mL/secであり、時間T2は3秒であった。時間T3までの発泡強さは、毎秒100mL以上であった。時間T3は6秒であった。時間T3より後の発泡強さは、最大値の6分の1以下であった。発泡強さはその後、次第に低減しゼロに近づいた。
【0033】
水洗式便器10を洗浄する洗浄方法の一例を説明する。まず、洗浄開始の操作部を操作する。洗浄水は、タンクから導水空間27に流入する。便器装置30は、操作部が操作された時点の数秒後に、発泡剤11を導水空間27に投入する。発泡剤11は洗浄水に触れて反応し、泡を発生する。発泡剤11は、洗浄水の先端に触れても良いし、洗浄水の先端より下流側に触れても良い。発泡洗浄水13は、便鉢部21に流入し、鉢面に沿って旋回する。発泡剤11は大量の泡を発生しながら発泡洗浄水13とともに鉢面に沿って流れる。大量の泡は、鉢面に付着した汚物を鉢面から剥がす。発泡洗浄水13に含まれる泡の量は、便鉢部21を旋回中に急速に増え、大量の泡を含んだ状態を維持して溜水部26の全周から溜水部26へ流れ込む。
【0034】
発泡洗浄水13は、図3に示すように、溜水部26に到達し水位を上げる。これによって固形物12は上昇し、発泡剤11や発泡洗浄水13は、固形物12の間や下側に入り込みやすくなる。発泡洗浄水13の大量の泡は、固形物12の隙間に入り込み、固形物12を分散させる。例えば固形物12が重なり合った紙である場合、発泡洗浄水13の泡は、重なりあった紙の隙間に入り込み、紙を分散させる。便鉢部21の固形物12は、発泡洗浄水13に含まれる大量の泡によって分散され、トラップ部23に排出される。発泡洗浄水13は、トラップ部23に流れ込み、トラップ部23内で固形物12を分散させる。
【0035】
発泡剤11を用いることによって固形物12を詰まりにくくする効果について図8及び図9を用いて説明する。図8には、発泡剤11を用いない場合と、発泡剤11を用いた場合とで固形物12の詰まりを比較した結果を示す。ケース1及びケース2において、固形物12の量は異なる。ケース1の固形物12は、トイレットペーパ15枚とした。ケース2の固形物12は、トイレットペーパ20枚とした。ケース1及びケース2のトイレットペーパの枚数は、水洗式便器10の通常の便器洗浄において詰まりを発生させやすい枚数である。ケース1及びケース2について、発泡剤11を投入しない便器洗浄と、発泡剤11を投入した便器洗浄とを100回ずつ行った。便器洗浄の洗浄水は、5Lの水を用いた。発泡剤11は、配合比率R1=10:9、配合比率R2=1.11のものを用いた。
【0036】
水洗式便器10の便鉢部21の所定領域内に、所定枚数のトイレットペーパを無作為に投入し、投入後すぐに便器洗浄を実行した。発泡剤11を用いる場合、発泡剤11は、導水空間27において洗浄水に投入した。便器洗浄の終了後、トイレットペーパの排出状態を確認した。固形物12の詰まりを生じなかったケースを排出成功とした。
【0037】
ケース1の発泡剤11を投入しない場合の排出成功回数は、全100回中80回であり、排出成功率は80%であった。発泡剤11を投入した場合の排出成功回数は全100回中100回であり、排出成功率は100%であった。排出成功率は、発泡剤11を投入することによって、20%向上した。
【0038】
ケース2の発泡剤11を投入しない場合の排出成功回数は、全100回中75回であり、排出成功率は75%であった。発泡剤11を投入した場合の排出成功回数は、全100回中の100回であり、排出成功率は100%であった。排出成功率は、発泡剤11を投入することによって25%向上した。固形物12の量が多いほど、発泡剤11を用いた詰まり防止効果は大きかった。
【0039】
上記のように構成された実施形態によれば、以下の効果を奏する。便器装置30は、水洗式便器10に設けられている。便器装置30は、水洗式便器10において洗浄水を便鉢内に流入させて便器洗浄を実行する際に発泡剤11を投入し、発泡剤11が体積膨張を伴う発泡反応を便鉢内で発生させる。この構成によれば、便鉢部21の固形物12は、発泡洗浄水13に含まれた泡によって分散されてトラップ部23に流されるから、固形物12を排出時に詰まりにくくできる。
【0040】
便器装置30は、収納部31と、投入口34とを有している。収納部は、発泡剤11を収納する。投入口34は、洗浄水に発泡剤11を投入する。この構成によれば、発泡剤11を手で投入しなくてよいから、発泡剤11が手に付着することを防止できる。
【0041】
投入口34は、溜水部26に溜められた溜水より上流側において洗浄水に発泡剤11を投入する。この構成によれば、発泡洗浄水13を溜水に流入させ、固形物12を分散することができる。
【0042】
水洗式便器10に対する便鉢内に洗浄水の供給を開始するための操作を検知してから所定時間経過した後に発泡剤11を投入する。この構成によれば、発泡剤11は洗浄水の供給を開始する操作に付随して自動的に洗浄水に投入されるから、手間なく発泡剤11を投入できる。
【0043】
洗浄水に発泡剤11を投入することによって単位時間当たりに発生する泡の体積は、溜水に到達する時点において最大値の半分以上である。この構成によれば、便鉢部21の固形物12を大量の泡で効果的に分散することができる。
【0044】
<実施形態2>
本開示を具体化した実施形態2に係る水洗式便器50を図10及び図11によって説明する。本実施形態の水洗式便器50は、発泡剤11を粉末にした点で、実施形態1とは相違する。なお、実施形態1と同様の構成には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0045】
水洗式便器50は、実施形態1と同様、便器本体20、発泡剤11及び便器装置30を有している。便器装置30は、実施形態1と同様、洗浄水を便鉢内に流入させて便器洗浄を実行する際に発泡剤11を投入し、体積膨張を伴う発泡反応を便鉢内で発生させる。
【0046】
発泡剤11は、2種の粉末51,52を洗浄水に投入する際に混ぜあわせるものである。2種の粉末51,52は、有機酸である第1粉末51と、炭酸塩である第2粉末52である。実施形態1と同様、有機酸は、クエン酸を採用できる。炭酸塩は、重曹を採用できる。2種の粉末51,52は、配合比率R1となるように規定量ずつ投入される。
【0047】
便器装置30は、2つの粉末投入部53,54を有している。粉末投入部53,54はそれぞれ、実施例1と同様、収納部31と、蓋部32と、押し部33と、を備えている。粉末投入部53は第1粉末51を収容し、粉末投入部54は第2粉末52を収容する。2つの粉末投入部53,54は、前後に並んで配置されている。2つの粉末投入部53,54は、固定部55によって互いに離れないように固定されている。
【0048】
便器装置30は、実施形態1と同様、所定のタイミングで第1粉末51及び第2粉末52を導水空間27に投入する。投入された第1粉末51及び第2粉末52は混ざり合い、洗浄水に触れて反応する。便鉢部21の固形物12は、実施形態1と同様、発泡洗浄水13に含まれる大量の泡によって分散され、トラップ部23に排出される。
【0049】
以上のように本実施形態においては、実施形態1と同様、洗浄水を便鉢内に流入させて便器洗浄を実行する際に発泡剤11を投入し、体積膨張を伴う発泡反応を便鉢内で発生させる。この構成によれば、便鉢部21の固形物12は、発泡洗浄水13に含まれた泡によって分散されてトラップ部13に流されるから、固形物12を排出時に詰まりにくくできる。
【0050】
<他の実施形態>
本開示は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本開示の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態において発泡剤11は導水空間27に投入される。これに限らず、発泡剤11は便鉢部21に投入されて良い。この場合、発泡剤11は、吐水口28の近傍において洗浄水に投入されてもよいし、鉢面部25に沿って流下する洗浄水に投入されてよい。
(2)上記実施形態において発泡剤11は、便器装置30によって投入される。これに限らず、発泡剤11は、人の手によって投入されてもよい。
(3)上記実施形態において発泡剤11は、溜水部26より上流側において洗浄水に触れて反応する。これに限らず、発泡剤11は溜水部26の溜水に触れて反応してもよい。
(4)上記実施形態において発泡剤11は、必要に応じて石鹸や界面活性剤を配合してもよい。
(5)上記実施形態において水洗式便器10,50は、溜水部26に溜められた溜水の水中に水を吐出するジェット吐水口を有してもよい。この場合、発泡洗浄水13は、ジェット吐水口からの洗浄水の吐出開始より前に、溜水に到達すると良い。この構成によれば、固形物12はジェット吐水口からの吐出開始より前に、発泡洗浄水13の泡によって分散されるから、固形物12を排出時により詰まりにくくできる。
(6)上記実施形態において洗浄水に発泡剤11を投入するタイミングは、洗浄水の水量によって適宜変更してもよい。例えば洗浄水の水量が多い便器装置では、洗浄水の洗浄開始直後ではなく、洗浄水の洗浄開始から所定時間経過後に投入してもよい。
(7)上記実施形態において便器装置30は便器本体20に取り付けられている。これに限らず、便器装置は、便器本体自身の一部であってもよく、便器本体自身に形成された収納部及び投入口を有してもよい。
(8)上記実施形態において便器装置30は便器本体20に取り付けられている。これに限らず、便器装置は、例えばトイレ室の床面に設置されてもよい。
【符号の説明】
【0051】
10,50…水洗式便器、11…発泡剤、26…溜水部(便鉢の下部)、30…便器装置、31…収納部、34…投入口
図1
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図4
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図7
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図9
図10
図11