(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132067
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】整合器、基板処理装置、半導体装置の製造方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
C23C 16/505 20060101AFI20240920BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20240920BHJP
H05H 1/46 20060101ALI20240920BHJP
H01L 21/316 20060101ALN20240920BHJP
H01L 21/318 20060101ALN20240920BHJP
【FI】
C23C16/505
H01L21/31 C
H05H1/46 R
H01L21/316 X
H01L21/318 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042715
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】竹田 剛
(72)【発明者】
【氏名】原 大介
【テーマコード(参考)】
2G084
4K030
5F045
5F058
【Fターム(参考)】
2G084AA05
2G084BB26
2G084BB28
2G084CC05
2G084CC12
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2G084HH24
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5F058BG10
(57)【要約】
【課題】インピーダンス整合の不調を回避して、プラズマの生成を十分かつ安定にすることを可能とする技術を提供する。
【解決手段】高周波を入力する入力部と、高周波を出力する出力部と、インダクタンス量を可変可能とする可変インダクターを備える整合部と、可変インダクターのインダクタンスを可変にするインダクタンス可変機構部と、を有する技術が提供される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波を入力する入力部と、
前記高周波を出力する出力部と、
インダクタンス量を可変可能とする可変インダクターを備える整合部と、
前記可変インダクターのインダクタンスを可変にするインダクタンス可変機構部と、を有する、
整合器。
【請求項2】
前記可変インダクターはコイルで構成され、前記コイルのピッチを可変にすることで前記インダクタンスを可変とする、請求項1に記載の整合器。
【請求項3】
前記インダクタンス可変機構部は、前記コイルを固定する固定部と、前記コイルのピッチを可変にする可動部と、を有する、請求項2に記載の整合器。
【請求項4】
前記可動部は板形状である、請求項3に記載の整合器。
【請求項5】
前記可動部は、回転機構により可動される、請求項3に記載の整合器。
【請求項6】
前記回転機構は、前記可動部を可動させる回転軸と、前記回転軸を回転させる第1歯車と、前記第1歯車を回転させる第2歯車と、を有する、請求項5に記載の整合器。
【請求項7】
前記回転軸はネジ形状を有し、前記可動部にはネジ穴形状を有する、請求項6に記載の整合器。
【請求項8】
前記整合部は、キャパシターまたは可変キャパシターを有する、請求項1に記載の整合器。
【請求項9】
前記可変インダクターは、可動接続部に接続される、請求項1に記載の整合器。
【請求項10】
前記可変インダクターは、前記可動接続部を介して前記入力部に接続される請求項9に記載の整合器。
【請求項11】
前記可動接続部は、負荷整合部に接続する、請求項10に記載の整合器。
【請求項12】
前記可動接続部は、前記可変インダクターに接続される可動部材と、前記可動部材を固定するための固定部材と、を有する、請求項9に記載の整合器。
【請求項13】
前記可動接続部は、前記可動部材を固定するネジを有する、請求項12に記載の整合器。
【請求項14】
前記可変インダクターは、前記可動部材に接続され、前記可動部材が前記固定部材に固定されることで電気的に接続される、請求項12に記載の整合器。
【請求項15】
前記出力部は、基板を処理する処理室に設けられ、プラズマを生成するプラズマ生成部に設けられる電極に接続される、請求項1に記載の整合器。
【請求項16】
前記高周波を出力する高周波電源と、前記プラズマ生成部との間に設けられる、請求項15に記載の整合器。
【請求項17】
前記高周波電源と前記プラズマ生成部とは複数設けられ、複数の前記高周波電源と複数のプラズマ生成部との間、それぞれに設けられる、請求項16に記載の整合器。
【請求項18】
基板を処理する処理室と、
プラズマを生成する電極と、
前記電極に高周波を供給する高周波電源と、
前記電極と前記高周波電源の間に設けられ、高周波を入力する入力部と、前記高周波を出力する出力部と、インダクタンス量を可変可能とする可変インダクターを備える整合部と、前記可変インダクターのインダクタンスを可変にするインダクタンス可変機構部と、を有する整合器と、
を有する基板処理装置。
【請求項19】
基板を処理する処理室と、プラズマを生成する電極と、前記電極に高周波を供給する高周波電源と、前記電極と前記高周波電源の間に設けられ、高周波を入力する入力部と、前記高周波を出力する出力部と、インダクタンス量を可変可能とする可変インダクターを備える整合部と、前記可変インダクターのインダクタンスを可変にするインダクタンス可変機構部と、を有する整合器と、を有する基板処理装置の前記処理室に前記基板を搬入する工程と、
前記基板を処理する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項20】
基板を処理する処理室と、プラズマを生成する電極と、前記電極に高周波を供給する高周波電源と、前記電極と前記高周波電源の間に設けられ、高周波を入力する入力部と、前記高周波を出力する出力部と、インダクタンス量を可変可能とする可変インダクターを備える整合部と、前記可変インダクターのインダクタンスを可変にするインダクタンス可変機構部と、を有する整合器と、を有する基板処理装置の前記処理室に前記基板を搬入する手順と、
前記基板を処理する手順と、
をコンピュータにより前記基板処理装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、整合器、基板処理装置、半導体装置の製造方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程として、基板処理装置の処理室内に基板を搬入し、処理室内に原料ガスと反応ガスとを供給して基板上に絶縁膜や半導体膜、導体膜等の各種膜を形成したり、各種膜を除去したりする基板処理が行われることがある。
【0003】
微細パターン形成時のように低温処理が求められる量産デバイスにおいては、ウエハ処理の表面反応が律速状態に陥らないよう活性化された反応ガスを通常よりも非常に多く供給する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これに対して、高周波電源により生成されるプラズマを用いて基板処理を行うことが一般的に行われているが、整合器内の素子の個体差から、インピーダンス整合の不調により特性がバラつき活性種の生成量もバラつく場合がある。
【0006】
本開示は、前述したようなインピーダンス整合の不調を回避して、プラズマの生成を安定させることを可能とする技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様によれば、
高周波を入力する入力部と、
前記高周波を出力する出力部と、
インダクタンス量を可変可能とする可変インダクターを備える整合部と、
前記可変インダクターのインダクタンスを可変にするインダクタンス可変機構部と、を有する技術が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、インピーダンス整合の不調を回避して、プラズマの生成を安定させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の第1の実施形態で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を縦断面で示す図である。
【
図2】
図1に示す基板処理装置におけるA-A断面図である。
【
図3】本開示の実施形態における整合器の等価電気回路の一例を示す図である。
【
図4】本開示の実施形態における整合器の等価電気回路の変形例を示す図である。
【
図5】
図4に示す可動接続部とインダクタンス可変機構部の概略構成図である。
【
図6】
図1に示す基板処理装置におけるコントローラの概略構成図であり、コントローラの制御系の一例を示すブロック図である。
【
図7】
図1に示す基板処理装置を用いた基板処理プロセスの一例を示すフローチャートである。
【
図8】本開示の第2の実施形態で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を断面図で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の一形態について、主に、
図1から
図5を参照しながら説明する。なお、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0011】
(第1の実施形態)
(1)基板処理装置の構成
(加熱装置)
図1に示すように、縦型基板処理装置の処理炉202は加熱装置(加熱機構、加熱部)としてのヒータ207を有する。ヒータ207は円筒形状であり、保持板に支持されることにより垂直に据え付けられている。ヒータ207は、ガスを熱で活性化(励起)させる活性化機構(励起部)としても機能する。
【0012】
(処理室)
ヒータ207の内側には、後述する電極固定具301が配設され、更に電極固定具301の内側には、後述するプラズマ生成部の電極300が配設されている。更に、電極300の内側には、ヒータ207と同心円状に反応管203が配設されている。反応管203は、例えば石英(SiO2)や炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料により構成され、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管203の下方には、反応管203と同心円状に、マニホールド209が配設されている。マニホールド209は、例えばステンレス(SUS)等の金属により構成され、上端および下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド209の上端部は、反応管203の下端部に係合しており、反応管203を支持するように構成されている。マニホールド209と反応管203との間には、シール部材としてのOリング220aが設けられている。マニホールド209がヒータベースに支持されることにより、反応管203は垂直に据え付けられた状態となる。主に、反応管203とマニホールド209とにより処理容器(反応容器)が構成されている。処理容器の筒中空部には処理室201が形成されている。処理室201は、複数枚の基板としてのウエハ200を収容可能に構成されている。ウエハ200は処理室201内において処理される。なお、処理容器は上記の構成に限らず、反応管203のみを処理容器と称する場合もある。
【0013】
(ガス供給部)
処理室201内には、第1、第2供給部としてのノズル249a,249bが、マニホールド209の側壁を貫通するようにそれぞれ設けられている。ノズル249a、249bを、それぞれ第1、第2ノズルとも称する。ノズル249a、249bは、例えば石英またはSic等の耐熱性材料により構成されている。ノズル249a,249bには、ガス供給管232a,232bが、それぞれ接続されている。このように、処理容器には2本のノズル249a,249bと、2本のガス供給管232a,232bとが設けられており、処理室201内へ複数種類のガスを供給することが可能となっている。なお、反応管203のみを処理容器とした場合、ノズル249a,249bは反応管203の側壁を貫通するように設けられていてもよい。
【0014】
ガス供給管232a,232bには、ガス流の上流側から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241a,241bおよび開閉弁であるバルブ243a,243bがそれぞれ設けられている。ガス供給管232a,232bのバルブ243a,243bよりも下流側には、不活性ガスを供給するガス供給管232c,232dがそれぞれ接続されている。ガス供給管232c,232dには、上流方向から順に、MFC241c,241dおよびバルブ243c,243dがそれぞれ設けられている。
【0015】
図1、
図2に示すように、ノズル249a,249bは、反応管203の内壁とウエハ200との間における平面視において円環状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるようにそれぞれ設けられている。すなわち、ノズル249a,249bは、処理室201内へ搬入された各ウエハ200の端部(周縁部)の側方にウエハ200の表面(平坦面)と垂直にそれぞれ設けられている。ノズル249a,249bの側面には、ガスを供給するガス供給孔250a,250bがそれぞれ設けられている。ガス供給孔250aは、反応管203の中心を向くように開口しており、ウエハ200に向けてガスを供給することが可能となっている。ガス供給孔250a,250bは、それぞれ、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられている。
【0016】
このように、本実施形態では、反応管203の側壁の内壁と、反応管203内に配列された複数枚のウエハ200の端部(周縁部)と、で定義される平面視において円環状の縦長の空間内、すなわち、円筒状の空間内に配置したノズル249a,249bを経由してガスを搬送している。そして、ノズル249a,249bにそれぞれ開口されたガス供給孔250a,250bから、ウエハ200の近傍で初めて反応管203内にガスを噴出させている。そして、反応管203内におけるガスの主たる流れを、ウエハ200の表面と平行な方向、すなわち、水平方向としている。このような構成とすることで、各ウエハ200に均一にガスを供給でき、各ウエハ200に形成される膜の膜厚の均一性を向上させることが可能となる。ウエハ200の表面上を流れたガス、すなわち、反応後の残ガスは、排気口、すなわち、後述する排気管231の方向に向かって流れる。但し、この残ガスの流れの方向は、排気口の位置によって適宜特定され、垂直方向に限ったものではない。
【0017】
ガス供給管232aからは、原料(原料ガス)が、MFC241a、バルブ243a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。
【0018】
ガス供給管232bからは、反応体(反応ガス)が、MFC241b、バルブ243b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給される。
【0019】
ガス供給管232c,232dからは、不活性ガスが、それぞれMFC241c,241d、バルブ243c,243d、ノズル249a,249bを介して処理室201内へ供給される。
【0020】
主に、ガス供給管232a、MFC241a、バルブ243aにより、第1のガス供給系としての原料供給系が構成される。主に、ガス供給管232b、MFC241b、バルブ243bにより、第2のガス供給系としての反応体供給系(反応ガス供給系)が構成される。主に、ガス供給管232c,232d、MFC241c,241d、バルブ243c,243dにより、不活性ガス供給系が構成される。原料供給系、反応体供給系および不活性ガス供給系を単にガス供給系(ガス供給部)とも称する。
【0021】
(基板支持具)
図1に示すように基板支持具としてのボート217は、複数枚、例えば25~200枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に支持するように、すなわち、間隔を空けて配列させるように構成されている。ボート217は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成される。ボート217の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成される断熱板218が多段に支持されている。この構成により、ヒータ207からの熱がシールキャップ219側に伝わりにくくなっている。但し、本実施形態はこのような形態に限定されない。例えば、ボート217の下部に断熱板218を設けずに、石英やSiC等の耐熱性材料により構成される筒状の部材として構成された断熱筒を設けてもよい。
【0022】
(プラズマ生成部)
次にプラズマ生成部について、
図1から
図5を用いて説明する。
【0023】
反応管203の外部、すなわち、処理容器(処理室201)の外部には、プラズマ生成用の電極300が設けられている。電極300に電力を印加することにより、反応管203の内部、すなわち、処理容器(処理室201)の内部でガスをプラズマ化させて励起させること、すなわち、ガスをプラズマ状態に励起させることが可能となっている。以下、ガスをプラズマ状態に励起させることを、単に印加されることで、反応管203内、すなわち、処理容器(処理室201)内に、プラズマは容量結合プラズマ(Capacitively Coupled Plasma、略称:CCP)を生成させるように構成されている。
【0024】
具体的には、
図2に示すように、ヒータ207と反応管203との間に、電極300と、電極300を固定する電極固定具301と、が配設されている。ヒータ207の内側に、電極固定具301が配設され、電極固定具301の内側に、電極300が配設され、電極300の内側に、反応管203が配設されている。
【0025】
また、
図1、
図2に示すように、電極300および電極固定具301は、ヒータ207の内壁と、反応管203の外壁との間における平面視において円環状の空間に、反応管203の外壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の配列方向に延びるようにそれぞれ設けられている。電極300は、ノズル249a、249bと平行に設けられている。電極300および電極固定具301は、平面視において、反応管203およびヒータ207と同心円状に、また、ヒータ207とは非接触となるように、配列、配置されている。電極固定具301は、絶縁性物質(絶縁体)で構成され、電極300および反応管203の少なくとも一部をカバーするように設けられていることから、電極固定具301をカバー(石英カバー、絶縁壁、絶縁板)、または、断面円弧カバー(断面円弧体、断面円弧壁)と称することもできる。
【0026】
図2に示すように、電極300は複数設けられ、これら複数の電極300が、電極固定具301の内壁に、固定されて設置されている。電極固定具301の内壁面には、電極300を引っ掛けることが可能な突起部(フック部)310が設けられており、電極300には、突起部310を挿通可能な貫通孔である開口部305が設けられている。電極固定具301の内壁面に設けられた突起部310に、開口部305を介して電極300を引っ掛けることで、電極300を電極固定具301に固定することが可能となっている。なお、
図3では、1つの電極300につき、2つの開口部305が設けられ、1つの電極300につき、2つの突起部310を引っ掛けることで固定する例、すなわち、1つの電極を2箇所で固定する例を示している。なお、
図2では、9つの電極300を、1つの電極固定具301に固定し、その構成(ユニット)が2組から成り、3つの電極300-1、3つの電極300-2、3つの電極300-0を、1つの電極固定具301に固定する構成(ユニット)の例を示している。
【0027】
ここで、電極固定具301と電極300とを、電極ユニットと称することもできる。電極ユニットは、
図2に示すように、ノズル249a、249bおよび排気管231を避けた位置に配置されるようにすることが好ましい。
図2では、2つの電極ユニットが、ノズル249a、249bおよび排気管231を避けて、ウエハ200(反応管203)の中心を挟んで対抗(対面)するように配置される例を示している。なお、
図2では、2つの電極ユニットが、平面視において、直線Lを対称軸として線対称に、すなわちシンメトリに配置される例を示している。電極ユニットをこのように配置することで、ノズル249a、249b、温度センサ263および排気管231を、処理室201内におけるプラズマ生成領域外に配置することが可能となり、これらの部材へのプラズマダメージ、これらの部材の消耗、破損、これらの部材からのパーティクルの発生を抑制することが可能となる。本開示では特に区別して説明する必要のない場合には、電極300として記載して説明する。
【0028】
電極300には、高周波電源320から整合器325を介し、例えば25MHz以上35MHz以下、より具的には、周波数27.12MHzの高周波が入力されることによって反応管203内にプラズマ(活性種)302が生成される。このように生成されたプラズマによって、ウエハ200の周囲から基板処理のためのプラズマ302をウエハ200の表面に供給することが可能となる。高周波電源320は、電極300に高周波を供給する。
【0029】
主に、電極300、すなわち、第1種の電極300-1、第2種の電極300-2、第3種の電極300-3および第0種の電極300-0により、ガスをプラズマ状態に励起(活性化)させるプラズマ生成部(プラズマ励起部、プラズマ活性化機構)が構成され、電極固定具301、整合器325、RF電源320をプラズマ生成部に含めて考えてもよい。整合器325は、高周波を出力する高周波電源320とプラズマ生成部との間に設けられる。また、
図2に示すように、縦型基板処理装置には、高周波電源320とプラズマ生成部とは複数設けられおり、整合器325は、複数の高周波電源320と複数のプラズマ生成部との間のそれぞれに設けられる。
【0030】
電極300は、十分な強度を持ち、かつ、熱源によるウエハ加熱の効率を著しく下げないように、厚さは0.1mm以上、1mm以下、幅は5mm以上、30mm以下となる範囲で構成されることが好ましい。また、ヒータ207の加熱による変形防止のための変形抑制部としての曲げ構造を有することが好ましい。この場合の電極300は、石英反応管203とヒータ207の間に配置されるため、そのスペースの制約上、曲げ角は90°~175°が適切である。電極表面は熱酸化による被膜が形成されており、熱応力によりそれが剥れてパーティクルが発生することがあるので、曲げ過ぎに注意する必要がある。
【0031】
(整合器)
図3、
図4に示すように、整合器325は、入力(入力端子とも言う)2から出力(出力端子とも言う)3までのライン(配線)に対して並列に接続される第1整合部(ロード(負荷)整合部)331と、入力2から出力3までのライン(配線)に対して直列に接続される第2整合部(フェーズ(位相)整合部)335と、可動接続部334と、により構成されている。入力2は、高周波を入力する入力部と言い換えることができる。出力3は、高周波を出力する出力部と言い換えることができる。第1整合部331と第2整合部335は共に可動接続部334に接続されている。可動接続部334は入力側の入力端子2にも接続されている。第1整合部331はアース(GND)にも接続されている。第2整合部335は出力側の出力端子3にも接続されている。つまり、整合器325は、入力2と、出力3と、入力2に接続された可動接続部334と、可動接続部334とアース(GND)との間に接続された第1整合部331と、可動接続部334と出力3との間に接続された第2整合部335と、を有する。出力部である出力3は、基板200を処理する処理室201に設けられ、プラズマを生成するプラズマ生成部に設けられる電極300に接続される。
【0032】
第1整合部331は、可動接続部334とアース(GND)との間において、キャパシタンス量が可変の可変キャパシター(ロード(負荷)可変キャパシター)332とインダクタンス量が固定のインダクター(ロード(負荷)インダクター)333との直列接続により構成されている。第2整合部335は、可動接続部334と出力3との間において、インダクタンス量が可変の可変インダクター(フェーズ(位相)可変インダクター)336とキャパシタンス量が固定のキャパシター(フェーズ(位相)キャパシター)337(
図3参照)またはキャパシタンス量が可変の可変キャパシター(フェーズ(位相)可変キャパシター)338(
図4参照)の直列接続により構成されている。つまり、第2整合部335は、キャパシター337または可変キャパシター338を有する構成とされている。
【0033】
可変インダクター336は、後述する
図5のインダクタンス可変機構部340の内部に配置されて、そのインダクタンス量を変化(調整)させることが可能となっている。つまり、可変インダクター336はコイルで構成されており、コイルのピッチを可変にすることでインダクタンスを可変とすることができるように構成されている。また、可変キャパシター332と可変キャパシター338とは、図示しない可変機構を有し、そのキャパシタンス量を変化(調整)させることが可能となっている。
【0034】
各キャパシター(332,337,338)のキャパシタンス量と各インダクター(333,336)のインダクタンス量と高周波電源320の周波数とを適切に選択して調整する。このことで、整合器325の入力インピーダンスは、高周波電源320の出力インピーダンスと、整合器325の出力インピーダンスは、出力3側で接続されている電極300とプラズマ302の負荷インピーダンスと、同時にインピーダンス整合を取ることができる。このとき、高周波電源320は、出力する高周波が途中でほとんど反射されずに、電極300とプラズマ302にその電力を投入することができる。
【0035】
具体的には、
図3の整合器32の回路の場合では、整合器325の出力インピーダンスのレジスタンス成分を負荷インピーダンスのレジタンス成分と一致するよう可変キャパシター332のキャパシタンス量を調整し、整合器325の出力インピーダンスのリアクタンス成分を負荷インピーダンスのリアクタンス成分と正負を逆にして一致するよう高周波電源320の周波数を調整する。
図4の整合器32の回路の場合では、整合器325の出力インピーダンスのレジスタンス成分を負荷インピーダンスのレジタンス成分と一致するよう可変キャパシター332のキャパシタンス量を調整し、整合器325の出力インピーダンスのリアクタンス成分を負荷インピーダンスのリアクタンス成分と正負を逆にして一致するよう高周波電源320の周波数あるいは可変キャパシター338のキャパシタンス量を調整する。
【0036】
ここで、可変インダクター336は、インピーダンス整合範囲をシフトさせるためにインダクタンス量を事前調整するものとし、高周波電源320の高周波電力の出力と同時に、インダクタンス量を調整しないものとする。
図2に示すように、複数の高周波電源320を用いた場合は、相互に干渉し合って各々の整合器325でインピーダンス整合が不調となるのを避けるために、前述の調整によってお互いのインピーダンス整合位置、特にインピーダンス整合周波数を意図的にずらすことが可能となる。また、複数の半導体製造装置間においては、インピーダンス整合位置、特にインピーダンス整合周波数を一致させることが可能となる。これにより、インピーダンス整合の不調を回避して、プラズマの生成を安定させることが可能となる。したがって、安定なプラズマを発生させることが可能な基板処理装置を用いて、安定な基板処理により、半導体装置が製造可能となる。これにより、半導体装置の歩留まりの向上や半導体装置の品質の向上が達成できる。
【0037】
なお、第1整合部331は、インダクター333にインダクタンス可変機構部340を有してもよいし、インダクター333そのものを無くしてもよい。
【0038】
(インダクタンス可変機構部)
図5に示すインダクタンス可変機構部340は、ハウジング341と、大歯車342と、固定軸343と、小歯車344と、回転軸345と、押し板346と、により構成されている。ハウジング341は幌形状を有し、押し板346の外面はハウジング341の内側と同じ形状を有する。ハウジング341と押し板346とはお互いにハウジング341の内面と押し板346の外面とが接しており、押し板346がハウジング341の内部を直線移動できる構造を有している。大歯車342と小歯車344とは、同じピッチ間隔の歯形形状を有し、互いにかみ合う構造になっている。回転軸345は長さ半分以上の範囲でネジ形状を有し、押し板(単に板ともいう)346はネジ穴形状を有し、両者は同じピッチ間隔のネジ面で接続している。大歯車342は、ハウジング341に固定されている固定軸343を軸にして回転可能に構成されている。大歯車342は、外力によって、例えば、手の力によって回転することができ、大歯車342の回転力は歯車面で接している小歯車344に伝わり、小歯車344に固定されている回転軸345が回転するように構成されている。ハウジング341の側面よりハウジング341の内側に導入されている回転軸345は、小歯車344と一緒に回転しながら、ネジ穴面で接している押し板346を、ハウジング341の内側において、前方向または後方向に直線移動させることができるように構成されている。この作用により、コイル形状(単にコイルともいう)を有する可変インダクタンス336は伸縮が可能である。つまり、押し板346を、ハウジング341の内側において、前方向または後方向に直線移動させることで、可変インダクタンス336を構成するコイルにおいて、そのコイル間の前後方向の距離(間隔)を短くしたり、あるいは、長くしたりすることができる。つまり、インダクタンス可変機構部340は、コイルのピッチを可変にすることで、インダクタンスを可変とする。これにより、可変インダクタンス336のインダクタンス量を変化させることができる。なお、
図3、
図4、
図5に示すように、可変インダクター336は、第1接続部6と、第2接続部7と、を有する。第1接続部6は可動接続部334の後述する可動接続板348に接続されている。また、第2接続部7はキャパシター337、338に接続されている。なお、大歯車342は、外力を与えやすくするために、大歯車342の一部が整合器325の筐体の切り欠き部分から顔を出すように飛び出ていてもよい。
【0039】
言い換えると、インダクタンス可変機構部340は、可変インダクタンス336のコイルを固定する固定部としてのハウジング341と、コイルのピッチを可変にする可動部としての板形状の押し板346と、を有する。可動部である押し板346は、回転機構としての大歯車342と、固定軸343と、小歯車344と、回転軸345とにより可動されるように構成されている。回転機構は、押し板346を可動させる回転軸345と、回転軸345を回転させる第1歯車である小歯車344と、第1歯車である小歯車344を回転させる第2歯車である大歯車342と、を有する。
【0040】
(可動接続部)
図5に示す可動接続部334は、接続ネジ347と、可動接続板348と、固定接続板349と、により構成されている。可動接続板348には可変インダクター336の第1接続部6が接続され、固定接続板349には第1整合部331と入力側の接続端子2とが接続されている。接続ネジ347は同じピッチのネジ面を介して固定接続板349と接続され、接続ネジ347の締め込み量によって可動接続板348の可動を許すことができる。つまり、接続ネジ347の締め込みを緩めれば、前述のインダクタンス可変機構部340による可変インダクター336の伸縮量に応じて、可動接続板348が直線移動することができる。接続ネジ347を締め付けることにより、可動接続板348と固定接続板349とが接続され可変インダクター336が電気的に接続される。このようにして、可変インダクター336のインダクタンス量をある値で固定するためには、可動接続板348を接続ネジ347の頭と固定接続板349の間で挟むように接続ネジ347の締め込み量を最大にすればよい。なお、可動接続部334は、可変インダクター336とキャパシター337の間や、可変インダクター336と可変キャパシター338の間で、用いられてもよい。言い換えると、可変インダクター336は、可動接続部334に接続され、可動接続部334を介して入力部2に接続される。可動接続部334は、負荷整合部である第1整合部331に接続されている。可動接続部334は、可変インダクター336に接続される可動部材である可動接続板348と、可動部材である可動接続板348を固定するための固定部材である固定接続板349と、を有する。可動接続部334は、可動部材である可動接続板348を固定接続板349に固定する接続ネジ374を有する。可変インダクター336は、可動部材である可動接続板348に接続され、可動部材である可動接続板348が固定部材である固定接続板349に接続ネジ374固定されることで電気的に接続される。
【0041】
ここで、基板処理時の炉内圧力は、10Pa以上、300Pa以下の範囲で制御されることが好ましい。これは、炉内の圧力が10Paより低い場合、プラズマのデバイ長よりもガス分子の平均自由工程が長くなってしまい、炉壁を直接叩くプラズマが顕著化するため、パーティクルの発生を抑制することが困難となってしまうためである。また、炉内の圧力が300Paより高い場合、プラズマの生成効率が飽和してしまうため、反応ガスを供給してもプラズマの生成量は変化することがなく、反応ガスを無駄に消費することとなってしまうと同時に、ガス分子の平均自由行程が短くなることで、ウエハまでのプラズマ活性種の輸送効率が悪くなってしまうためである。
【0042】
基板温度500℃以下で高い基板処理能力を得るためには、電極固定具301の占有率を中心角30°以上240°以下の略円弧形状とし、また、パーティクルの発生を避けるために排気口である排気管231やノズル249a、249bなどを避けた配置が望ましい。つまり、電極固定具301は、反応管203内に設けられたガス供給部であるノズル249a、249bとガス排気部である排気管231が設置された位置以外の反応管203の外周に配置される。本実施形態においては中心角110°の電極固定具301を2台で左右対称に設置している。
【0043】
(排気部)
反応管203には、
図1に示すように処理室201内の雰囲気を排気する排気管231が設けられている。排気管231には、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245および排気バルブ(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ244を介して、真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。APCバルブ244は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気および真空排気停止を行うことができ、更に、真空ポンプ246を作動させた状態で、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいて弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整することができるように構成されているバルブである。主に、排気管231、APCバルブ244、圧力センサ245により、排気系が構成される。真空ポンプ246を排気系に含めて考えてもよい。排気管231は、反応管203に設ける場合に限らず、ノズル249a,249bと同様にマニホールド209に設けてもよい。
【0044】
(周辺装置)
マニホールド209の下方には、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、マニホールド209の下端に垂直方向下側から当接されるように構成されている。シールキャップ219は、例えばSUS等の金属からなり、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220bが設けられている。
【0045】
シールキャップ219の処理室201と反対側には、ボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、反応管203の外部に垂直に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ボート217を処理室201内外に搬入および搬出することが可能なように構成されている。
【0046】
ボートエレベータ115は、ボート217すなわちウエハ200を、処理室201内外に搬送する搬送装置(搬送機構)として構成されている。また、マニホールド209の下方には、ボートエレベータ115によりシールキャップ219を降下させている間、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシャッタ219sが設けられている。シャッタ219sは、例えばSUS等の金属により構成され、円盤状に形成されている。シャッタ219sの上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220cが設けられている。シャッタ219sの開閉動作(昇降動作や回動動作等)は、シャッタ開閉機構115sにより制御される。
【0047】
反応管203の内部には、温度検出器としての温度センサ263が設置されている。温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となる。温度センサ263は、ノズル249a,249bと同様に、反応管203の内壁に沿って設けられている。
【0048】
(制御装置)
次に制御装置について
図6を用いて説明する。
図6に示すように、制御部(制御装置)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
【0049】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する成膜処理の手順や条件等が記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する各種処理(成膜処理)における各手順をコントローラ121によって、基板処理装置に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、プロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。また、プロセスレシピを、単に、レシピともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、レシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0050】
I/Oポート121dは、上述のMFC241a~241d、バルブ243a~243d、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、ヒータ207、温度センサ263、回転機構267、ボートエレベータ115、シャッタ開閉機構115s、高周波電源320等に接続されている。
【0051】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからレシピを読み出すように構成されている。CPU121aは、読み出したレシピの内容に沿うように、回転機構267の制御、MFC241a~241dによる各種ガスの流量調整動作、バルブ243a~243dの開閉動作、APCバルブ244の開閉動作および圧力センサ245に基づくAPCバルブ244による圧力調整動作、真空ポンプ246の起動および停止、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、回転機構267によるボート217の正逆回転、回転角度および回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作、シャッタ開閉機構115sによるシャッタ219sの開閉動作、高周波電源320の電力供給等を制御するようことが可能なように構成されている。
【0052】
コントローラ121は、外部記憶装置(例えば、ハードディスク等の磁気ディスク、CD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリ等の半導体メモリ)123に格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0053】
(2)基板処理工程
上述の基板処理装置を用い、半導体装置(デバイス)の製造方法(基板処理方法)における製造工程の一工程として、基板上に膜を形成するプロセス例について、
図7を用いて説明する。以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0054】
本明細書では、
図7に示す成膜処理のシーケンスを、便宜上、以下のように示すこともある。以下の変形例や他の実施形態の説明においても、同様の表記を用いることとする。
【0055】
(原料ガス→反応ガス)×n
本明細書において「ウエハ」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものを意味する場合や、ウエハとその表面に形成された所定の層や膜等との積層体を意味する場合がある。本明細書において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものの表面を意味する場合や、ウエハ上に形成された所定の層や膜等の表面を意味する場合がある。本明細書において「ウエハ上に所定の層を形成する」と記載した場合は、ウエハそのものの表面上に所定の層を直接形成することを意味する場合や、ウエハ上に形成されている層等の上に所定の層を形成することを意味する場合がある。本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。本明細書において用いる「剤」という用語は、ガス状物質および液体状物質のうち少なくともいずれかを含む。液体状物質はミスト状物質を含む。すなわち、成膜剤、改質剤、エッチング剤は、ガス状物質を含んでいてもよく、ミスト状物質等の液体状物質を含んでいてもよく、それらの両方を含んでいてもよい。
【0056】
(搬入ステップ:S1)
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)されると、シャッタ開閉機構115sによりシャッタ219sが移動させられて、マニホールド209の下端開口が開放される(シャッタオープン)。その後、
図1に示すように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内へ搬入(ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219は、Oリング220bを介してマニホールド209の下端をシールした状態となる。
【0057】
(圧力・温度調整ステップ:S2)
処理室201の内部が所望の圧力(真空度)となるように、真空ポンプ246によって真空排気(減圧排気)される。この際、処理室201内の圧力は圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づきAPCバルブ244がフィードバック制御される(圧力調整)。真空ポンプ246は、少なくとも後述する成膜ステップが終了するまでの間は常時作動させた状態を維持する。
【0058】
また、処理室201内が所望の温度となるようにヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電具合がフィードバック制御される(温度調整)。ヒータ207による処理室201内の加熱は、少なくとも後述する成膜ステップが終了するまでの間は継続して行われる。但し、成膜ステップを室温以下の温度条件下で行う場合は、ヒータ207による処理室201内の加熱は行わなくてもよい。なお、このような温度下での処理だけを行う場合には、ヒータ207は不要となり、ヒータ207を基板処理装置に設置しなくてもよい。この場合、基板処理装置の構成を簡素化することができる。
【0059】
続いて、回転機構267によるボート217およびウエハ200の回転を開始する。回転機構267によるボート217およびウエハ200の回転は、少なくとも後述する成膜ステップが終了するまでの間は継続して行われる。
【0060】
(成膜ステップ:S3,S4,S5,S6)
その後、ステップS3,S4,S5,S6を順次実行することで成膜ステップを行う。
【0061】
(原料ガス供給ステップ:S3,S4)
ステップS3では、処理室201内のウエハ200に対して原料ガスを供給する。
【0062】
バルブ243aを開き、ガス供給管232a内へ原料ガスを流す。原料ガスは、MFC241aにより流量調整され、ノズル249aを介してガス供給孔250aから処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対して原料ガスが供給されることとなる。このとき同時にバルブ243cを開き、ガス供給管232c内へ不活性ガスを流すようにしてもよい。不活性ガスは、MFC241cにより流量調整され、原料ガスと一緒に処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。
【0063】
また、ノズル249b内への原料ガスの侵入を防止するため、バルブ243dを開き、ガス供給管232d内へ不活性ガスを流すようにしてもよい。不活性ガスは、ガス供給管232d、ノズル249bを介して処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。
【0064】
本ステップにおける処理条件としては、
処理温度:室温(25℃)~550℃、好ましくは400~500℃
処理圧力:1~4000Pa、好ましくは100~1000Pa
原料ガス供給流量:0.1~3slm
原料ガス供給時間:1~100秒、好ましくは1~50秒
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0~10slm
が例示される。
【0065】
なお、本明細書における「25~550℃」のような数値範囲の表記は、下限値および上限値がその範囲に含まれることを意味する。よって、例えば、「25~550℃」とは「25℃以上550℃以下」を意味する。他の数値範囲についても同様である。また、本明細書における処理温度とはウエハ200の温度または処理室201内の温度のことを意味し、処理圧力とは処理室201内の圧力のことを意味する。また、ガス供給流量:0slmとは、そのガスを供給しないケースを意味する。これらは、以下の説明においても同様である。
【0066】
上述の条件下でウエハ200に対して原料ガスを供給することにより、ウエハ200(表面の下地膜)上に、第1層が形成される。例えば、原料ガスとして、後述するシリコン(Si)含有ガスを用いる場合、第1層としてSi含有層が形成される。
【0067】
害1層が形成された後、バルブ243aを閉じ、処理室201内への原料ガスの供給を停止する。このとき、APCバルブ244を開いたままとし、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応もしくは第1層の形成に寄与した後の原料ガスや反応副生成物等を処理室201内から排除する(S4)。また、バルブ243c,243dを開き、処理室201内へ不活性ガスを供給する。不活性ガスはパージガスとして作用する。
【0068】
原料ガスとしては、例えば、テトラキス(ジメチルアミノ)シラン(Si[N(CH3)2]4、略称:4DMAS)ガス、トリス(ジメチルアミノ)シラン(Si[N(CH3)2]3H、略称:3DMAS)ガス、ビス(ジメチルアミノ)シラン(Si[N(CH3)2]2H2、略称:BDMAS)ガス、ビスジ(エチルアミノ)シラン(Si[N(C2H5)2]2H2、略称:BDEAS)ガス、ビス(ターシャリーブチル)アミノシラン(SiH2[NH(C4H9)]2、略称:BTBAS)ガス、(ジイソプロピルアミノ)シラン(SiH3[N(C3H7)2]、略称:DIPAS)ガス、等のアミノシラン系ガスを用いることができる、原料ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0069】
また、原料がとしては、例えば、モノクロロシラン(SiH3Cl、略称:MCS)ガス、ジクロロシラン(SiH2Cl2、略称:DCS)ガス、トリクロロシラン(SiHCl3、略称:TCS)ガス、テトラクロロシラン(SiCl4、略称:STC)ガス、ヘキサクロロジシラン(Si2Cl6、略称:HCDS)ガス、オクタクロロトリシラン(Si3Cl8、略称:OCTS)ガス等のクロロシラン系ガスや、テトラフルオロシラン(SiF4)ガス、ジフルオロシラン(SiH2F2)ガス等のフルオロシラン系ガスや、テトラブロモシラン(SiBr4)ガス、ジブロモシラン(SiH2Br2)ガス等のブロモシラン系ガスや、テトラヨードシラン(SiI4)ガス、ジヨードシラン(SiH2I2)ガス等のヨードシラン系ガスを用いることもできる。すなわち、原料ガスとしては、ハロシラン系ガスを用いることができる。原料ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0070】
また、原料ガスとしては、例えば、モノシラン(SiH4、略称:MS)ガス、ジシラン(Si2H6、略称:DS)ガス、トリシラン(Si3H8、略称:TS)ガス等の水素化ケイ素ガスを用いることができる。原料ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0071】
不活性ガスとしては、例えば、窒素(N2)ガスや、アルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、キセノン(Xe)ガス等の希ガスを用いることができる。この点は、後述する各ステップにおいても同様である。
【0072】
(反応ガス供給ステップ:S5,S6)
成膜処理が終了した後、処理室201内のウエハ200に対して反応ガスとしてのプラズマ励起させたO2ガスを供給する(S5)。
【0073】
このステップでは、バルブ243b~243dの開閉制御を、ステップS3におけるバルブ243a,243c,243dの開閉制御と同様の手順で行う。反応ガスは、MFC241bにより流量調整され、ノズル249bを介してガス供給孔250bから処理室201内へ供給される。このとき、高周波電源320から電極300へ高周波電力(RF電力、本実施の形態では周波数27.12MHz)を供給(印加)する。処理室201内へ供給された反応ガスは処理室201の内部でプラズマ状態に励起され、活性種としてウエハ200に対して供給され、排気管231から排気される。
【0074】
本ステップにおける処理条件としては、
処理温度:室温(25°)~550℃、好ましくは400~500℃
処理圧力:1~300Pa、好ましくは10~100Pa
反応ガス供給流量:0.1~10slm
反応ガス供給時間:1~100秒、好ましくは1~50秒
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0~10slm
RF電力:50~1000W
RF周波数:25~35MHz
が例示される。
【0075】
上述の条件下でウエハ200に対して反応ガスをプラズマ状態に励起させて供給することにより、プラズマ中で生成されたイオンと電気的に中性な活性種の作用により、ウエハ200の表面に形成された第1有層に対して改質処理が行われ、第1層は第2層へ改質される。
【0076】
反応ガスとして、例えば、酸素(O)含有ガス等の酸化ガス(酸化剤)を用いる場合、O含有ガスをプラズマ状態に励起させることで、O含有活性種が発生し、このO含有活性種がウエハ200に対して供給されることとなる。この場合、O含有活性種の作用により、ウエハ200の表面に形成された第1層に対して改質処理として酸化処理が行わる。この場合において、第1層が、例えばSi含有層である場合、第1層としてのSi含有層は、第2層としてのシリコン酸化層(SiO層)へと改質される。
【0077】
また、反応ガスとして、例えば、窒素(N)及び水素(H)含有ガス等の窒化ガス(窒化剤)を用いる場合、N及びH含有ガスをプラズマ状態に励起させることで、N及びH含有活性種が発生し、このN及びH含有活性種がウエハ200に対して供給されることとなる。この場合、N及びH含有活性種の作用により、ウエハ200の表面に形成された第1層に対して改質処理として窒化処理が行わる。この場合において、第1層が、例えばSi含有層である場合、第1層としてのSi含有層は、第2層としてのシリコン窒化層(SiN層)へと改質される。
【0078】
第1層を第2層へ改質させた後、バルブ243bを閉じ、反応ガスの供給を停止する。また、電極300へのRF電力の供給を停止する。そして、ステップS4と同様の処理手順、処理条件により、処理室201内に残留する反応ガスや反応副生成物を処理室201内から排除する(S6)。
【0079】
反応ガスとしては、上述のように、例えば、O含有ガスや、N及びH含有ガスを用いることができる。O含有ガスとしては、例えば、酸素(O2)ガス、亜酸化窒素(N2O)ガス、一酸化窒素(NO)ガス、二酸化窒素(NO2)ガス、オゾン(O3)ガス、過酸化水素(H2O2)ガス、水蒸気(H2O)、水酸化アンモニウム(NH4(OH))ガス、一酸化炭素(CO)ガス、二酸化炭素(CO2)ガス等を用いることができる。N及びH含有ガスとしては、アンモニア(NH3)ガス、ジアゼン(N2H2)ガス、ヒドラジン(N2H4)ガス、N3H8ガス等の窒化水素系ガスを用いることができる。反応ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0080】
不活性ガスとしては、例えば、ステップS4で例示した各種ガスを用いることができる。
【0081】
(所定回数実施:S7)
上述したステップS3,S4,S5,S6をこの順番に沿って非同時に、すなわち、同期させることなく行うことを1サイクルとし、このサイクルを所定回数(n回、nは1以上の整数)、すなわち、1回以上行うことにより、ウエハ200上に、所定組成および所定膜厚の膜を形成することができる。上述のサイクルは、複数回繰り返すことが好ましい。すなわち、1サイクルあたりに形成される第1層の厚さを所望の膜厚よりも小さくし、第2層を積層することで形成される膜の膜厚が所望の膜厚になるまで、上述のサイクルを複数回繰り返すことが好ましい。なお、第1層として、例えばSi含有層を形成し、第2層として、例えばSiO層を形成する場合、膜として、シリコン酸化膜(SiO膜)が形成されることとなる。また、第1層として、例えばSi含有層を形成し、第2層として、例えばSiN層を形成する場合、膜として、シリコン窒化膜(SiN膜)が形成されることとなる。
【0082】
(大気圧復帰ステップ:S8)
上述の成膜処理が完了したら、ガス供給管232c,232dのそれぞれから不活性ガスを処理室201内へ供給し、排気管231から排気する。これにより、処理室201内が不活性ガスでパージされ、処理室201内に残留する反応ガス等が処理室201内から除去される(不活性ガスパージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰:S8)。
【0083】
(搬出ステップ:S9)
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降されて、マニホールド209の下端が開口されるとともに、処理済のウエハ200が、ボート217に支持された状態でマニホールド209の下端から反応管203の外部に搬出(ボートアンロード)される。ボートアンロードの後は、シャッタ219sが移動させられ、マニホールド209の下端開口がOリング220cを介してシャッタ219sによりシールされる(シャッタクローズ)。処理済のウエハ200は、反応管203の外部に搬出された後、ボート217より取り出されることとなる(ウエハディスチャージ)。なお、ウエハディスチャージの後は、処理室201内へ空のボート217を搬入するようにしてもよい。
【0084】
ここで、基板処理時の炉内圧力は、10Pa以上、300Pa以下の範囲で制御されることが好ましい。これは、炉内の圧力が10Paより低い場合、プラズマのデバイ長よりもガス分子の平均自由工程が長くなってしまい、炉壁を直接叩くプラズマが顕著化するため、パーティクルの発生を抑制することが困難となってしまうためである。また、炉内の圧力が300Paより高い場合、プラズマの生成量が飽和してしまうため、反応ガスを無駄に消費することとなってしまうと同時に、ガス分子の平均自由行程が短くなることで、ウエハまでのプラズマ活性種の輸送効率が悪くなってしまうためである。
【0085】
(第2の実施形態)
以下、本開示の第2の実施形態について、主に
図8を参照しながら説明する。
【0086】
図8には、第2の実施形態に係る基板処理装置の処理炉202の断面図が示されている。処理炉202には、第1の実施形態と同様に、複数の高周波電源320と整合器325とが設けられている。
図8に示す整合器325は、
図3、
図4、
図5に示す整合器325を採用することができる。
図8の基板処理装置に設けられたプラズマ生成装置について説明する。
【0087】
(プラズマ生成装置)
バッファ室537b内には、
図8に示すように、導電体からなり、細長い構造を有する3本の棒状電極569,570,571が、反応管503の下部より上部にわたりウエハ200の配列方向に沿って配設されている。棒状電極569,570,571のそれぞれは、ノズル549bと平行に設けられている。棒状電極569,570,571のそれぞれは、上部より下部にわたって電極保護管575により覆われることで保護されている。棒状電極569,570,571のうち両端に配置される棒状電極569,571は、整合器325を介して高周波電源320に接続されている。棒状電極570は、基準電位であるアースに接続され、接地されている。すなわち、高周波電源320に接続される棒状電極と、接地される棒状電極と、が交互に配置され、高周波電源320に接続された棒状電極569,571の間に配置された棒状電極570は、接地された棒状電極として、棒状電極569,571に対して共通して用いられている。換言すると、接地された棒状電極570は、隣り合う高周波電源320に接続された棒状電極569,571に挟まれるように配置され、棒状電極569と棒状電極570、同じく、棒状電極571と棒状電極570がそれぞれ対となるように構成されてプラズマを生成する。つまり、接地された棒状電極570は、棒状電極570に隣り合う2本の高周波電源320に接続された棒状電極569,571に対して共通して用いられている。そして、高周波電源320から棒状電極569,571に高周波(RF)電力を印加することで、棒状電極569,570間のプラズマ生成領域524a、棒状電極570,571間のプラズマ生成領域524bにプラズマが生成される。
【0088】
同様に、バッファ室537c内には、
図8に示すように、導電体からなり、細長い構造を有する3本の棒状電極569,570,571が、反応管503の下部より上部にわたりウエハ200の配列方向に沿って配設されている。この3本の棒状電極569,570,571は、上記で説明した3本の棒状電極569,570,571と同様な構成となっている。
【0089】
そして、バッファ室537b内の棒状電極569,570,571によりプラズマ生成領域524a,524bにプラズマを生成する第1のプラズマ発生部が構成される。同様に、バッファ室537c内の棒状電極569,570,571によりプラズマ生成領域524a,524bにプラズマを生成する第2のプラズマ発生部が構成される。なお、電極保護管575をプラズマ発生部に含めて考えてもよい。そして、高周波電源320と、整合器325および上記で説明した第1および第2のプラズマ発生部によりプラズマ生成装置が構成される。
【0090】
プラズマ生成装置は、ガスをプラズマ励起、すなわち、プラズマ状態に励起(活性化)させるプラズマ励起部(活性化機構)として機能する。そして、プラズマ生成装置は、上述したように複数のプラズマ発生部を有して、この複数のプラズマ発生部により発生したプラズマを用いて基板処理を行うことにより成膜処理を行うために用いられる。
【0091】
そして、高周波電源320は、複数のプラズマ発生部のそれぞれに電源を供給する。また、整合器325は、2台の高周波電源320と、2つのプラズマ発生部との間に設けられ、プラズマ発生部の負荷インピーダンスと高周波電源320の出力インピーダンスとの整合をそれぞれとるために設けられている。
【0092】
なお、バッファ構造500、500は、排気管231を挟んで、排気管231と反応管503の中心を通る線に対して線対称に設けられている。また、ノズル549aは、排気管231のウエハ200を挟んで対向する位置に設けられている。また、ノズル549bとノズル549cは、それぞれバッファ室537b、537c内の排気管231から遠い位置に設けられている。
【0093】
ノズル549aは、
図8に示すように、反応管503の内壁とウエハ200との間における空間に、反応管503の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるように設けられている。すなわち、ノズル549aは、ウエハ200が配列(載置)されるウエハ配列領域(載置領域)の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うように設けられている。すなわち、ノズル549aは、処理室201内へ搬入された各ウエハ200の端部(周縁部)の側方にウエハ200の表面(平坦面)と垂直となる方向に設けられている。ノズル549aの側面には、ガスを供給するガス供給孔550aが設けられている。ガス供給孔550aは、反応管503の中心を向くように開口しており、ウエハ200に向けてガスを供給することが可能となっている。ガス供給孔550aは、反応管503の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれが同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。
【0094】
処理炉202には、ノズル549b,549cが、ガス分散空間であるバッファ室537b,537c内にそれぞれ設けられている。バッファ室537b,537cは、
図8に示すように、それぞれ反応管503の内壁とウエハ200との間における平面視において円環状の空間に、また、反応管503の内壁の下部より上部にわたる部分に、ウエハ200の積載方向に沿って設けられている。バッファ室537b,537cは、ウエハ配列領域の側方のウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うようにバッファ構造500,500によって形成されている。バッファ構造500,500は、石英などの絶縁物によって構成されており、バッファ構造500の円弧状に形成された壁面には、ガスを供給するガス供給口502,504が形成される。
【0095】
ガス供給口502,504は、
図8に示すように、棒状電極569,570間、棒状電極570,571間のプラズマ生成領域524a,524bに対向する位置にそれぞれ反応管503の中心を向くように開口しており、ウエハ200に向けてガスを供給することが可能となっている。ガス供給口502,504は、反応管503の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれが同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。
【0096】
ノズル549b,549cは、それぞれ反応管503の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるように設けられている。ノズル549b,549cは、それぞれバッファ構造500内側であって、ウエハ200が配列されるウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うように設けられている。
【0097】
ノズル549bの側面には、ガスを供給するガス供給孔550bが設けられている。ガス供給孔550bは、バッファ構造500の円弧状に形成された壁面に対して径方向に形成された壁面に向くように(すなわち、ガス供給口502,504の開口向きとは異なる周方向に)開口しており、壁面に向けてガスを供給することが可能となっている。これにより、反応ガスがバッファ室537b内で分散され、棒状電極569~571に直接吹き付けることがなくなり、パーティクルの発生が抑制される。ガス供給孔550bは、ガス供給孔550aと同様に、反応管503の下部から上部にわたって複数設けられている。なお、ノズル549cにおいてもノズル549bと同様の構造を有する。
【0098】
ガス供給管532aからは、所定元素を含む原料として、例えば、所定元素としてのシリコン(Si)を含むシラン原料ガスが、ノズル549aを介して処理室201内へ供給される様に構成することができる。ガス供給管532bからは、上述の所定元素とは異なる元素を含むリアクタント(反応体)として、例えば、反応ガスとしての窒素(N)含有ガスが、ノズル549bを介して処理室201内へ供給されるように構成することができる。ガス供給管532cからは、改質ガスとして例えば水素(H2)ガスが、ノズル549cを介して処理室201内へ供給されるように構成することができる。
【0099】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0100】
(3)本実施形態による効果
可動接続部334の接続ネジ347の締め込み量を調整しつつ、インダクタンス可変機構部340によって、可変インダクター336のインダクタンス量を調整することで、インピーダンス整合位置、特に、整合周波数を適切に調整することが可能となる。そのため、複数の高周波電源320を用いた場合は、相互に干渉し合って各々の整合器325でインピーダンス整合が不調となるのを避けるために、前述の調整によってお互いのインピーダンス整合位置、特にインピーダンス整合周波数を意図的にずらすことが可能となる。また、複数の半導体製造装置間においては、インピーダンス整合位置、特にインピーダンス整合周波数を一致させることが可能となる。したがって、安定なプラズマを発生させることが可能な基板処理装置を用いて、安定な基板処理により、半導体装置が製造可能となる。これにより、半導体装置の歩留まりの向上や半導体装置の品質の向上が達成できる。
【0101】
以上、本開示の実施形態について具体的に説明した。しかしながら、本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。上述の態様や変形例は、適宜組み合わせて用いることができる。このときの処理手順、処理条件は、例えば、上述の態様や変形例の処理手順、処理条件と同様とすることができる。
【0102】
また、例えば、上述の実施形態では、原料を供給した後に反応体を供給する例について説明した。本開示はこのような態様に限定されず、原料、反応体の供給順序は逆でもよい。すなわち、反応体を供給した後に原料を供給するようにしてもよい。供給順序を変えることにより、形成される膜の膜質や組成比を変化させることが可能となる。
【0103】
本開示は、ウエハ200上に、SiO膜やSiN膜を形成する場合だけでなく、ウエハ200上に、シリコン酸炭化膜(SiOC膜)、シリコン酸炭窒化膜(SiOCN膜)、シリコン酸窒化膜(SiON膜)等のSi系酸化膜を形成する場合にも、好適に適用可能である。
【0104】
成膜処理に用いられるレシピは、処理内容に応じて個別に用意し、電気通信回線や外部記憶装置123を介して記憶装置121c内に格納しておくことが好ましい。そして、各種処理を開始する際、CPU121aが、記憶装置121c内に格納された複数のレシピの中から、処理内容に応じて適正なレシピを適宜選択することが好ましい。これにより、1台の基板処理装置で様々な膜種、組成比、膜質、膜厚の薄膜を汎用的に、かつ、再現性よく形成することができるようになる。また、オペレータの負担を低減でき、操作ミスを回避しつつ、各種処理を迅速に開始できるようになる。
【0105】
上述のレシピは、新たに作成する場合に限らず、例えば、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを変更することで用意してもよい。レシピを変更する場合は、変更後のレシピを、電気通信回線や当該レシピを記録した記録媒体を介して、基板処理装置にインストールしてもよい。また、既存の基板処理装置が備える入出力装置122を操作し、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを直接変更するようにしてもよい。
【0106】
上述の態様では、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本開示は上述の態様に限定されず、例えば、一度に1枚または数枚の基板を処理する枚葉式の基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用することができる。また、上述の態様では、ホットウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本開示は上述の態様に限定されず、コールドウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用することができる。これらの基板処理装置を用いる場合においても、上述の態様や変形例と同様な処理手順、処理条件にて各処理を行うことができ、上述の態様や変形例と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0107】
325・・・整合器
335・・・第2整合部
336・・・可変インダクター
340・・・インダクタンス可変機構部