(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132137
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】電極検査装置、電極製造装置、電極製造システム、電極検査方法、プログラム及び蓄電デバイス製造装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/892 20060101AFI20240920BHJP
H01M 4/04 20060101ALI20240920BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20240920BHJP
H01M 4/88 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
G01N21/892 Z
H01M4/04 Z
H01M4/139
H01M4/88 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042815
(22)【出願日】2023-03-17
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
2.BLU―RAY DISC
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】根本 佳実
【テーマコード(参考)】
2G051
5H018
5H050
【Fターム(参考)】
2G051AA32
2G051AB02
2G051AC02
2G051CA04
2G051CA07
2G051CB01
2G051CB05
2G051DA06
2G051EA11
2G051EA14
2G051EB01
2G051EC01
2G051ED05
5H018AA01
5H050AA19
5H050BA14
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA03
5H050CA05
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB16
5H050FA02
5H050GA22
5H050GA28
5H050GA29
5H050HA12
(57)【要約】
【課題】従来の技術では、集電体上に設けられた電極合材層上及び集電体上のうちの少なくとも一方に形成された機能層の表面状態に応じて、機能層の表面を検査する検査条件を設定することは考慮されていない、という課題がある。
【解決手段】電極製造装置3の検査ユニット400は、機能層の表面を撮像するエリアセンサカメラ410、ライン型照明420及びラインセンサカメラを備え、ライン型照明420及びラインセンサカメラを含めた検査手段により行われる機能層の表面に対する検査の検査条件を、エリアセンサカメラ410により撮像された機能層の表面状態に応じて設定する(ステップS14,S18)。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体上に設けられた電極合材層上及び前記集電体上のうちの少なくとも一方に形成された機能層を検査する電極検査装置であって、
前記機能層の表面を撮像する第1の撮像手段と、
前記第1の撮像手段で撮像した撮像情報に基づき、前記機能層の表面状態を検査する検査手段と、
前記検査手段による前記機能層の表面に対する検査条件を、前記第1の撮像手段により撮像された前記機能層の表面状態に応じて設定する制御手段と、
を備える、
ことを特徴とする電極検査装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記第1の撮像手段により撮像された前記機能層の領域が前記検査手段で検査される検査位置に到達するまでの間において、前記検査条件を設定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電極検査装置。
【請求項3】
前記検査手段は更に、第2の撮像手段と、前記第2の撮像手段が前記機能層の表面を撮像する際に前記機能層の表面に光を照射する照射手段と、を含み、
前記制御手段は、
前記検査条件として、前記第2の撮像手段により前記機能層の表面が撮像される際に照射される前記光の照射強度を含む条件を設定する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電極検査装置。
【請求項4】
前記検査手段は更に、第2の撮像手段と、前記第2の撮像手段が前記機能層の表面を撮像する際に前記機能層の表面に光を照射する照射手段と、を含み、
前記制御手段は、
前記検査条件として、前記第2の撮像手段の撮像解像度を含む条件を設定する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電極検査装置。
【請求項5】
前記検査手段は更に、第2の撮像手段と、前記第2の撮像手段が前記機能層の表面を撮像する際に前記機能層の表面に光を照射する照射手段と、を含み、
前記制御手段は、
前記検査条件として、前記第1の撮像手段による撮像で得られた撮像画像に対する画像処理条件を含む条件を設定する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電極検査装置。
【請求項6】
前記第1の撮像手段は、前記機能層の表面の所定の領域を撮像するエリアセンサカメラであり、
前記第2の撮像手段は、前記機能層の表面における当該第2の撮像手段の解像度に応じた所定の幅を撮像するラインセンサカメラである、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電極検査装置。
【請求項7】
集電体上に設けられた電極合材層上及び前記集電体上のうちの少なくとも一方に機能層を形成する層形成手段と、
請求項1又は2に記載の電極検査装置と、
を備える、
ことを特徴とする電極製造装置。
【請求項8】
前記電極製造装置は更に、
前記機能層の表面状態が所定の条件を満たすか否かを判断する判断手段を備え、
前記判断手段により、前記機能層の表面状態に対する検査結果が所定の条件を満たさないことで前記表面状態が異常又は欠陥と判断された場合に、
前記制御手段は、前記検査条件を設定する、
ことを特徴とする請求項7に記載の電極製造装置。
【請求項9】
前記判断手段によって、前記電極合材層上及び前記集電体上のうちの少なくとも一方に前記機能層が形成されていないと判断された場合に、
前記制御手段は、
前記検査手段による前記機能層の表面状態の検査を停止する、
ことを特徴とする請求項8に記載の電極製造装置。
【請求項10】
前記判断手段は、
前記第1の撮像手段により撮像される前記機能層の表面における色相又は明度の違いに応じて、前記機能層の表面状態を判断する、
ことを特徴とする請求項8に記載の電極製造装置。
【請求項11】
前記検査装置は更に、
前記検査手段により検査された前記機能層の表面状態に対する検査結果のうち、前記異常又は前記欠陥が発生した位置の座標、及び前記異常又は前記欠陥の程度を含む検査結果を生成する生成手段、
を備える、
ことを特徴とする請求項7に記載の電極製造装置。
【請求項12】
集電体上に設けられた電極合材層上及び前記集電体上のうちの少なくとも一方に形成された機能層を検査する電極検査装置と、前記電極合材層上及び前記集電体上のうちの少なくとも一方に機能層を形成する層形成手段と、を有する電極製造装置と、前記電極製造装置と通信可能な情報管理装置と、を含む電極製造システムであって、
前記電極製造装置は、
前記機能層の表面を撮像する第1の撮像手段と、
前記機能層の表面状態を検査する検査手段と、
前記第1の撮像手段により撮像された撮像画像を、前記情報管理装置に対して送信する第1の送信手段と、
を備え、
前記情報管理装置は、
前記電極製造装置が送信した前記撮像画像を受信する第1の受信手段と、
受信した前記撮像画像に基づいて、前記検査手段による検査条件を設定する条件制御手段と、
前記検査条件を前記電極製造装置に対して送信する第2の送信手段と、
を備え、
前記電極製造装置は更に、
前記情報管理装置が送信した前記検査条件を受信する第2の受信手段と、
を備え、
前記検査手段は、
受信した前記検査条件に基づいて、前記機能層の表面状態を検査する、
ことを特徴とする電極製造システム。
【請求項13】
集電体上に設けられた電極合材層上及び前記集電体上のうちの少なくとも一方に形成された機能層を検査する電極検査装置が実行する電極検査方法であって、
前記機能層の表面を撮像する第1の撮像ステップと、
前記第1の撮像ステップで撮像した撮像情報に基づき、前記機能層の表面状態を検査する検査ステップと、
前記検査ステップによる前記機能層の表面に対する検査条件を、前記第1の撮像ステップにより撮像された前記機能層の表面状態に応じて設定する制御ステップと、
を実行する、
ことを特徴とする電極検査方法。
【請求項14】
集電体上に設けられた電極合材層上及び前記集電体上のうちの少なくとも一方に形成された機能層を検査する電極検査装置に、
前記機能層の表面を撮像する第1の撮像ステップと、
前記第1の撮像ステップで撮像した撮像情報に基づき、前記機能層の表面状態を検査する検査ステップと、
前記検査ステップによる前記機能層の表面に対する検査条件を、前記第1の撮像ステップにより撮像された前記機能層の表面状態に応じて設定する制御ステップと、
を実行させるプログラム。
【請求項15】
請求項7に記載の電極製造装置を有する、
ことを特徴とする蓄電デバイス製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極検査装置、電極製造装置、電極製造システム、電極検査方法、プログラム及び蓄電デバイス製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一様な照明手段からの投射光を被検査物表面に照射し、その正反射光、拡散光あるいは散乱光等の反射光から得られる画像に対して、塗膜物表面の欠陥を検出する技術が知られている。
【0003】
例えば、ロール紙やシート等の平面状被検査物やローラ等の円筒被検査物においては、撮像素子としてラインセンサを用い、被検査物の相対的な移動や回転によって副走査を行い、表面画像を得た後、画像処理により欠陥を検出する検査方法が存在する。
【0004】
また、被検査物の表面欠陥を検出する表面欠陥検査方法として、第1の撮像手段(ラインセンサカメラ)による撮像条件を可変とし、被検査物表面にて反射する反射光分布を検出するための第2の撮像手段(エリアセンサカメラ)を設け、第2の撮像手段によって得られた画像から反射光位置を特定し、その位置変動に対応し第1の撮像手段の撮像条件を制御し、その結果得られる第1の撮像手段による第1の画像を用いて第1の欠陥検出処理を行い、さらに第2の撮像手段によって得られた第2の画像を用いて第2の欠陥検出処理を行う技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、内部短絡や釘刺し試験において安全性が高く、かつ高容量で充放電特性耐熱性に優れたリチウムイオン二次電池を提供するために、リチウム複合酸化物粒子を含む正極活物質層を備えた正極板、または負極活物質粒子を含む負極活物質層を備えた負極板のうち、少なくともいずれかの活物質層上に無機酸化物フィラーと樹脂バインダーとを含む多孔質絶縁層が形成されており、多孔質絶縁層は微細な形成領域と非形成領域とを有するリチウムイオン二次電池に係る技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2で開示されている技術では、集電体上に設けられた電極合材層上及び集電体上のうちの少なくとも一方に形成された機能層の表面状態に応じて、機能層の表面を検査する検査条件を設定することは考慮されていない、という課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、請求項1に係る発明は、集電体上に設けられた電極合材層上及び前記集電体上のうちの少なくとも一方に形成された機能層を検査する検査装置であって、前記機能層の表面を撮像する第1の撮像手段と、前記機能層の表面状態を検査する検査手段と、前記検査手段による前記機能層の表面に対する検査条件を、前記第1の撮像手段により撮像された前記機能層の表面状態に応じて設定する制御手段と、を備える、ことを特徴とする電極検査装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように本発明によれば、集電体上に設けられた電極合材層上及び集電体上のうちの少なくとも一方に形成された機能層の表面状態に応じて、機能層の表面を検査する検査条件を設定することが可能になる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】電極を構成する層構造の一例を示す図である。
【
図3】実施形態に係る電極製造装置の全体構成(側面図)の一例を示す図である。
【
図4】実施形態に係る電極製造装置の検査ユニットの構成(側面図)の一例を示す図である。
【
図5】実施形態に係る電極製造システムの全体構成の一例を示す図である。
【
図6】実施形態に係る情報管理装置のハードウエア構成の一例を示す図である。
【
図7】実施形態に係る電極製造装置の制御部を含むハードウエア構成の一例を示す図である。
【
図8】実施形態に係る電極製造装置の検査ユニットのハードウエア構成の一例を示す図である。
【
図9A】実施形態に係る電極製造システムの機能構成の一例を示す図であり、特に情報管理装置の機能構成を示す図である。
【
図9B】実施形態に係る電極製造システムの機能構成の一例を示す図であり、特に電極製造装置の機能構成を示す図である。
【
図10】情報管理装置で管理される検査条件管理テーブルの一例を示す概念図である。
【
図11】電極製造装置で管理される検査条件管理テーブルの一例を示す概念図である。
【
図12】実施形態に係る欠陥情報管理テーブルの一例を示す概念図である。
【
図13】第1の実施形態に係る検査処理の一例を示すフローチャートである。
【
図14】実施形態に係る機能層の表面に異常が生じている一例を示す模式図であり、(a)は正常な塗膜状態を表す撮像データの一例を示す図、(b)は異常な塗膜状態を表す撮像データの一例を示す図である。
【
図15】実施形態に係る検査条件の違いによる検査結果の一例を示す図であり、(a)は被検査物が正常塗膜部のみだった場合の検査結果の一例を示す図、(b)、(c)は被検査物の搬送方向中間部に異常塗膜部が存在している場合の検査結果の一例を示す図である。
【
図16】実施形態に係る塗膜領域の違いによる検査結果の一例を示す図であり、(a)は被検査物が塗膜部のみだった場合の検査結果の一例を示す図、(b)、(c)は被検査物の搬送方向先端部と後端部に非塗膜部が存在している場合の検査結果の一例を示す図である。
【
図17】第2の実施形態に係る検査処理の一例を示すフローチャートである。
【
図18】第3の実施形態に係る検査処理を示すシーケンス図の一例である。
【
図19】第3の実施形態に係る検査条件の変更/設定、決定処理の一例を示すフローチャートである。
【
図20】第4の実施形態に係る電極製造装置の全体構成(側面図)の一例を示す図である。
【
図21】電極製造装置の全体構成(側面図)の他の一例を示す図である。
【
図22】転写方式を採用した印刷部の一例を示す図であり、(a)はドラム状の中間転写体を用いた印刷部を示す図、(b)は無端ベルト状の中間転写体を用いた印刷部を示す図である。
【
図23】液体吐出ヘッドの一例を示す概略分解図である。
【
図24】液体吐出ヘッドの流路構成の一例を示す説明図である。
【
図25】液体吐出ヘッドの流路構成の一例を示す断面斜視図である。
【
図26】平行四辺形状のノズル板を備えたヘッドの一例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて、発明を実施するための形態について説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する部分があればその説明を省略する。
【0011】
〔第1の実施形態〕
以下、
図1乃至
図16を用いて本実施形態について説明する。
【0012】
〔電極を構成する層構造〕
本実施形態では、電極製造装置の一例として電極印刷装置について説明する。但し、以降の説明においては、電極製造装置として記載する。電極製造装置は、集電体と、集電体上に設けられた電極合材層と、電極合材層上及び集電体上のうちの少なくとも一方に形成された機能層と、を有する電極を製造するための装置である。具体的には、電極製造装置は、樹脂層又は無機層を形成するための液体組成物を用いて、集電体Bの表面上に形成された電極合材層L1の表面における一部若しくは全体、又は集電体上の少なくとも一部に機能層L2としての樹脂層又は無機層を形成するものである。なお、電極合材層L1は活物質を含み、集電体と、当該集電体上に形成された電極合材層L1と、を有する電極基体は液体吐出対象に対応する。電極合材層L1は第1の膜領域に対応し、樹脂層又は無機層を含む機能層L2は第2の膜領域に対応する。また、この材料は、例えば絶縁性材料である。なお本明細書及び特許請求の範囲において機能層とは、電極又は上述した電極を有する電気化学素子としたときに、絶縁性や電気化学素子特性、例えば出力特性やサイクル特性等に寄与する機能を発現する層である。
【0013】
なお、液体を吐出することで電極基体上に機能層(樹脂層又は無機層)を形成するとは、液体を吐出することのみで電極基体上に機能層(樹脂層又は無機層)を形成する場合だけでなく、液体を吐出することで機能層前駆体(樹脂層前駆体又は無機層前駆体)が形成され、その後の工程(例えば、加熱工程等)で機能層(樹脂層又は無機層)が形成される場合等も含む。以下、電極を構成する各構成要素について説明する。
【0014】
<電極基体>
電極基体は、集電体と、当該集電体上に設けられた電極合材層と、を有する。
【0015】
<集電体>
集電体は、例えばアルミ箔、銅箔などで構成される。
【0016】
<電極合材層>
電極合材層L1は、集電体上に設けられた活物質を含む層である。電極合材層L1は、粉体状の活性物質や触媒組成物を液体中に分散及び又は溶解し、この液体を集電体B上に塗布、固定、乾燥することによって形成されている。電極合材層L1を形成するには、スプレー、ディスペンサ、ダイコータや引き上げ塗工等を用いられ、塗布後に乾燥して電極合材層を形成する。
【0017】
更に電極合材層L1は、例えば電子写真方式や、液体現像型電子写真等のオンデマンド印刷によって形成される場合、電極形状が自由に変えられることに加えて、更に、集電体がアルミ箔のような薄い導電性箔である場合、非接触で特定のパターンを位置制御して印刷できることから、液体吐出ヘッドを用いたインクジェット法や、ディスペンサ、ジェットノズル等、液体吐出系の手法で印刷することが好ましく、特にインクジェット法は好ましいものとなる。
【0018】
正極活物質は、アルカリ金属イオンを可逆的に吸蔵及び放出できる材料であれば特に限定されない。典型的には、アルカリ金属含有遷移金属化合物を正極用活物質として使用できる。例えばリチウム含有遷移金属化合物として、コバルト、マンガン、ニッケル、クロム、鉄及びバナジウムからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素とリチウムとを含む複合酸化物が挙げられる。例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム等のリチウム含有遷移金属酸化物、LiFePO4等のオリビン型リチウム塩、二硫化チタン、二硫化モリブデン等のカルコゲン化合物、二酸化マンガン等が挙げられる。
【0019】
リチウム含有遷移金属酸化物は、リチウムと遷移金属とを含む金属酸化物又は該金属酸化物中の遷移金属の一部が異種元素によって置換された金属酸化物である。異種元素としては、例えばNa、Mg、Se、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、Sb、B等が挙げられ、なかでもMn、Al、Co、Ni及びMgが好ましい。異種元素は、1種でもよく又は2種以上でもよい。これらの正極活物質は単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。ニッケル水素電池における上記活物質としては水酸化ニッケル等が挙げられる。
【0020】
負極活物質は、アルカリ金属イオンを可逆的に吸蔵及び放出できる材料であれば特に限定されない。典型的には、結晶構造を有するグラファイトを含む炭素材料を負極活物質として使用できる。そのような炭素材料としては、天然黒鉛、球状又は繊維状の人造黒鉛、難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)、易黒鉛化性炭素(ソフトカーボン)等が挙げられる。炭素材料以外の材料としては、チタン酸リチウムが挙げられる。また、リチウムイオン電池のエネルギー密度を高める観点から、シリコン、錫、シリコン合金、錫合金、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化錫等の高容量材料も負極活物質として好適に使用できる。
【0021】
ニッケル水素電池における上記活物質としては水素吸蔵合金としては、Zr-Ti-Mn-Fe-Ag-V-Al-WやTi15Zr21V15Ni29Cr5Co5Fe1Mn8等で代表されるAB2系或いはA2B系の水素吸蔵合金が例示される。
【0022】
正極又は負極の結着剤には、例えばPVDF、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリルニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチルエステル、ポリアクリル酸エチルエステル、ポリアクリル酸ヘキシルエステル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチルエステル、ポリメタクリル酸エチルエステル、ポリメタクリル酸ヘキシルエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリエーテル、ポリエーテルサルフォン、ヘキサフルオロポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース等が使用可能である。また、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、エチレン、プロピレン、ペンタフルオロプロピレン、フルオロメチルビニルエーテル、アクリル酸、ヘキサジエンより選択された2種以上の材料の共重合体を用いてもよい。また、これらのうちから選択された2種以上を混合して用いてもよい。
【0023】
電極に含ませる導電剤には、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛のグラファイト類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック類、炭素繊維や金属繊維等の導電性繊維類、フッ化カーボン、アルミニウム等の金属粉末類、酸化亜鉛やチタン酸カリウム等の導電性ウィスカー類、酸化チタン等の導電性金属酸化物、フェニレン誘導体、グラフェン誘導体等の有機導電性材料等が用いられる。
【0024】
燃料電池での活物質は、一般に、カソード電極やアノード電極の触媒として、白金、ルテニウム或いは白金合金等の金属微粒子をカーボン等の触媒担体に担持させたものを用いる。触媒担体の表面に触媒粒子を担持させるには、例えば触媒担体を水中に懸濁させ、触媒粒子の前駆体を添加、(塩化白金酸、ジニトロジアミノ白金、塩化第二白金、塩化第一白金、ビスアセチルアセトナート白金、ジクロロジアンミン白金、ジクロロテトラミン白金、硫酸第二白金塩化ルテニウム酸、塩化イリジウム酸、塩化ロジウム酸、塩化第二鉄、塩化コバルト、塩化クロム、塩化金、硝酸銀、硝酸ロジウム、塩化パラジウム、硝酸ニッケル、硫酸鉄、塩化銅等の合金成分を含むものを用い)懸濁液中に溶解させアルカリを加え金属の水酸化物を生成させると共に、触媒担体表面に担持させた触媒担体を得る。かかる触媒担体を電極上に塗布し、水素雰囲気下等で還元させることで、表面に触媒粒子(活物質)が塗布された電極を得る。
【0025】
<樹脂層又は無機層>
樹脂層又は無機層は、集電体上に形成されている電極合材層、又は集電体に、液体吐出ヘッドにより液体組成物を吐出することにより形成される機能層の一例である。本実施形態に係る機能層は、蓄電デバイスとしたときに電極同士を物理的に絶縁し、短絡の発生を抑制する絶縁層としての機能を有するが、絶縁層としての機能を奏する範囲であれば、絶縁層としての機能以外の機能を更に有していてもよい。なお、集電体に、まず、比較的正確な精度をもつ塗工方法、例えばスクリーン印刷やグラビア塗工、インクジェット塗工やディスペンサ描画等によって、絶縁性枠状等の所望の電極形状のパターンの樹脂層又は無機層を形成してもよい。この場合、樹脂層又は無機層を形成した後、上記活物質をスラリー状にしたものを上記パターン上に塗布し、乾燥する。これにより、電極合材層の形成速度を極端に上昇させたり、或いは粘度の限られたスラリーから比較的厚い膜を形成したりする場合にも、後の乾燥工程での所望のサイズ幅の活物質が、集電体上に常に接する状態を作れることにより、結果として目的とする塗工寸法が常に実現できるため、好ましいものとなる。
【0026】
従って、かかる樹脂層又は無機層に要求される性能は、集電体に対して、正確に塗布乾燥できることと、上記活物質や、最終的にデバイスにしたときに用いられる電解液に対して反応又は溶解しないものであることが好ましい。即ち、電極合材層の周辺部の樹脂層又は無機層は、絶縁性膜であることを特徴とするものである。ここでいう絶縁性膜は、通常厚さ方向で、メガオーム[/cm]以上の絶縁性を有するものであることが好ましい。また、デバイスの中において長く絶縁性を保つ必要があるため、上記電解液に溶解しにくい必要がある。従って、通常の有機溶媒に溶解した樹脂のみではこれらの性能を達成することは難しく、塗布した後に、熱や電離放射線等によって架橋不要化性能等を有する樹脂群が好ましい。或いは、無機材料は絶縁性を有する微粒子であり、微粒子が溶媒に分散していて、塗布後に乾燥させ絶縁性を有する膜であることが好ましい。また、無機材料は固体電解質材料や半固体電解質材料であってもよい。更に、この樹脂層又は無機層は、電極加工の過程で、最大250[kN]程度の線圧によるプレス工程等が存在するため、上記線圧に対して耐性を有することが好ましい。
【0027】
なお集電体上において電極合材層を形成する領域の周囲(枠領域)に先に樹脂層又は無機層を形成しておき、枠領域に樹脂層又は無機層が形成されている集電体上に活物質をスラリー状にしたものを塗布し、乾燥させてもよい。これにより、電極合材層の形成速度を極端に上昇させたり、或いは粘度の限られたスラリーから比較的厚い膜を形成したりする場合にも、後の乾燥工程における所望のサイズ幅の活物質が、集電体上に常に接する状態を作ることができる。その結果、目的とする塗工寸法が常に実現できるため、好ましいものとなる。従って、樹脂層又は無機層に要求される性能は、集電体に対して、正確に塗布乾燥できることと、活物質や、最終的にデバイスにしたときに用いられる電解液に対して溶解しないものであることが好ましい。即ち、電極合材層の周辺部の樹脂層又は無機層は、上述したように絶縁性膜で構成される。
【0028】
<樹脂形成用液体組成物>
【0029】
次に、上述の樹脂層を形成するため液体組成物である、樹脂及び該樹脂の前駆体(モノマー)の少なくとも何れか一方(樹脂又は該樹脂の前駆体)と、溶媒と、を含む樹脂層形成用液体組成物を先に説明する。
【0030】
樹脂及び該樹脂の前駆体としては、分子内に電離放射線や赤外線(熱)によって架橋性の構造を保有する樹脂類やオリゴマー類を液体である有機溶剤(有機溶媒)に溶解せしめたものが好ましい。樹脂及び該樹脂の前駆体としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂のうち低分子量のオリゴマー前駆体や、その一部に例えば脂肪族不飽和結合を有する炭化水素基で修飾したものが好ましく、例えばアクリル系共重合体の一部の側鎖にアリル基、アリルオキシ基、アクリロイル基、ブテニル基、シンナミル基、シンナモイル基、クロトメイル基、シクロヘキサジェニル基、インプロペニル基、メタクリロイル基、ペンテニル基、プロペニル基、スチリル基、ビニル基、ブタジェニル基等の不飽和結合を有するもの等が好ましい。
【0031】
更にポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリルニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリエーテルケトン、ポリエチレンナフタレート、ポリスルホン、ポリイミド、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリオキシメチレン、ポリアミド、ポリビニルピロリドン、及びセルロース等についても分子量1万以下の比較的低分子量の分散前駆体やセルロースナノファイバーを用い、それらを電離放射線や赤外線によって加熱することにより定着後の不溶性及び架橋性を高めることができる。
【0032】
更にこれらの前駆体は、架橋性を高めるために最大30重量部程度のアジド化合物を含有させても構わない。例えば、3.3′-ジクロロ-4.4′-ジアジドジフェニルメタン、4.4′-ジアジドジフェニルエーテル、4.4′-ジアジドジフェニルジスルフィド、4.4′-ジアジドジフェニルスルフィド、4.4′-ジアジドジフェニルスルホン、4-アジドカルコン、4-アジド-4′-ヒドロキシカルコン、4-アジド-4′-メトキシカルコン、4-アジド-4′-モルホリノカルコン、4-ジメチルアミノ-4′-アジドカルコン、2.6-ビス(4′-アジドベンザル)-4-メチルシクロヘキサノン、2.6-ビス(4′-アジドベンザル)-シクロヘキサノン、シンナミリデン-4-アジドアセトフェノン、4-アジドシンナミリデンアセトフェノン、4-アジド-4′-ジメチルアミノシンナミリデンアセトフェノン、シンナミリデン-4-アジドシンナミリデンアセトン、2.6-ビス(4′-アジドシンナミリデン)-4-メチルシクロヘキサノン、2.6-ビス(4′-アジドシンナミリデン)-シクロヘキサノン、1.4′-アジドベンジリデンインデン、1.4′-アジドベンジリデンインデン、1.4′-アジドベンジリデン-3-α-ヒドロキシ-4″-アジドベンジルインデン、9.4′-アジドベンジリデンフルオレン、9.4′-アジドシンナミリデンフルオレン、4.4′-ジアジドスチルベン-2.2′-ジスルホニル-N-(p-メトキシフェニル)アミド、4.4′-ジアジドスチルベン-2.2′-ジスルホニル-N-(p-ヒドロキシエチルフェニル)アミド、4.4′-ジアジドスチルベン-2.2′-ジスルホニル-N-(p-ヒドロキシフェニル)アミド、4.4′-ジアジドスチルベン-2.2′-ジスルホニルアミド、4.4′-ジアジドベンゾフェノン、4.4′-ジアジドスチルベン、4.4′-ジアジドカルコン、4.4′-ジアジドベンザルアセトン、6-アジド-2-(4'-アジドスチリル)ベンゾイミダゾール、3-アジドベンジリデンアニリン-N-オキシp~(4-アジドベンジリデンアミド)安息香酸、1.4-ビス(3′-アジ1ζスチリル)ベンゼン、3.3′-ジアジドジフェニルスルホン、4.4′-ジアジドジフェニルメタン等が挙げられる。
【0033】
なかでも特に2.6-ビス-(4′アジドベンザル)-4-メチルシクロヘキサノン等を好適に用いることができる。これらの材料が溶解される溶媒は特に規定されるものではないが、上記化合物が溶解できて沸点や表面張力が後の塗布や乾燥工程に対して好適なものを単独又は混合して調整し用いることができる。
【0034】
<無機層形成用液体組成物>
次に、上述の無機層を形成するため液体組成物である、無機粒子と、溶媒と、を含む無機層形成用液体組成物を説明する。
【0035】
無機粒子を構成する無機酸化物としては、例えば、酸化アルミニウム、二酸化チタン、チタン酸バリウム、二酸化ジルコニウム、酸化ニッケル、酸化マンガン、二酸化バナジウム、二酸化ケイ素、ゼオライトなどの鉱物資源由来物質、又はこれらの人造物等が挙げられる。中でも、電気抵抗の大きさや安定性の観点から、酸化アルミニウム、二酸化チタンが好ましく、酸化アルミニウムがより好ましく、α-アルミナがさらに好ましい。
【0036】
溶媒としては、上述した無機酸化物を分散可能な溶媒であることが好ましい。
【0037】
また、無機層形成用液体組成物は、必要に応じて無機粒子同士を結着するバインダーを含んでいてもよい。
【0038】
<電気化学素子の構成>
続いて、電気化学素子(電池)の構成について説明する。
図2は、電気化学素子の構成の一例を示す図である。電気化学素子100が液系の電気化学素子である場合は、電極素子140に電解質水溶液又は非水電解質を注入することにより電解質層151が形成されており、外装152により封止されている。電気化学素子100において、引き出し線141及び142は、外装152の外部に引き出されている。また電気化学素子100が固体電気化学素子である場合は、セパレータを固体電解質又はゲル電解質に置き換えればよい。
【0039】
なお、電気化学素子100の形状としては特に制限はない。電気化学素子100の形状は、例えば、ラミネートタイプ、シート電極及びセパレータをスパイラル状にしたシリンダタイプ、ペレット電極及びセパレータを組み合わせたインサイドアウト構造のシリンダタイプ、ペレット電極及びセパレータを積層したコインタイプ等が挙げられる。
【0040】
<電気化学素子の用途>
また、電気化学素子の用途としても特に制限はない。例えば、車両、スマートフォン、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤ、携帯電話、携帯ファクシミリ、携帯コピー、携帯プリンタ、ヘッドホンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナ、ポータブルCD、ミニディスク、トランシーバ、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダ、ラジオ、バックアップ電源、モータ、照明器具、玩具、ゲーム機器、時計、ストロボ、カメラ等の電気機器などが挙げられる。これらの中でも、車両、電気機器が特に好ましい。車両としては、例えば、普通自動車、大型特殊自動車、小型特殊自動車、トラック、大型自動二輪車、普通自動二輪車などが挙げられる。
【0041】
●用語について●
本実施形態において「被検査物」とは、機能層が形成された、集電体上に設けられた電極合材層及び集電体のうち少なくとも一方をいう。「被検査物」は特に、検査ユニット400により検査される機能層の表面をいう。
【0042】
また本実施形態において「欠陥」とは、機能層を含む集電体320の表面上の塗膜に穴が開き、電極(電極合材層)がむき出しの状態をいう。
【0043】
また本実施形態において「塗膜不良」とは、機能層を含む集電体320の表面上の塗膜が部分的に薄くなっている(塗膜の厚みが規定値に達していない)箇所が存在(又は点在)する状態をいう。
【0044】
〔電極製造装置の装置構成〕
続いて、
図3及び
図4を用いて、実施形態に係る電極製造装置の装置構成について説明する。
【0045】
まず電極製造装置の全体構成について説明する。
図3は、実施形態に係る電極製造装置の全体構成(側面図)の一例を示す図である。
図3は、電極製造装置3をXYZ軸の-Y方向からみた側面図であり、電極製造装置3は、集電体上に設けられた電極合材層上又は集電体上に機能層を形成する。具体的には、電極製造装置3は、巻出しモジュールから巻き出された集電体320を含む電極基体を、
図3の右から左(XYZ座標軸の-Y方向から見て+X方向(右)から-X方向(左))へ搬送する。更に電極製造装置3は、液体吐出ヘッド350(吐出ヘッドA,B,C,D)及びセンサ335を含む作像部、光源360、ヒータ370、検査ユニット400を経由させて巻取りモジュールにて集電体320を巻き取る。但し、
図3に示した電極製造装置3の構成は一例であり、これに限らない。なお本実施形態では、検査ユニット400は、電極検査装置の一例として機能する。
【0046】
また、電極製造装置3は、例えば、巻き出しモジュールと、液体吐出ヘッド350及びセンサ335と、の間に巻き出しモジュールで巻き出された集電体上に電極合材層を付与するための活物質層形成部を設けてもよい。この活物質層形成部においては、電極合材層を形成するための組成物を付与する付与部の他、付与された組成物を高密度化させるためのプレス部を含んでいてもよい。また、液体吐出ヘッド350から吐出される液体組成物が光重合性化合物(光重合性モノマー)を含まないような、光源を必要としない場合、作像部と乾燥部との間の光源360を設けなくてもよい。
【0047】
図3に示したように、本実施形態では、XYZ軸におけるX軸は、集電体(電極基体)の搬送方向(MD: Media Direction)を示す方向である。またY軸は、集電体(電極基体)の搬送方向を示すX軸と直行する方向、すなわち集電体(電極基体)を矩形とみた場合の幅方向(CMD:Cross Media Direction)を示す方向である。またZ軸は、電極製造装置3を地面(床面等)に設置した場合の鉛直方向を示す方向と定義する。
【0048】
図4は、実施形態に係る電極製造装置の検査ユニットの構成(側面図)の一例を示す図である。
図4に示すように、集電体320上に設けられた電極合材層上又は集電体320上に塗布(形成)された機能層は、搬送方向(X軸方向)に搬送され、エリアセンサカメラ410の撮像領域下に到達した時点で、所定の領域Sだけエリアセンサカメラ410により撮像される。なお、集電体320は所定の速度で搬送されているため、エリアセンサカメラ410は、所定の領域Sが移動した次の領域(例えば、領域S′)がエリアセンサカメラ410の撮像領域下に到達した時点で再度撮像される。エリアセンサカメラ410は、この撮像処理を繰り返す。つまり、エリアセンサカメラ410は、その撮影範囲が集電体320の搬送に伴い機能層を抜けるまで連続して撮影する。なお、エリアセンサカメラ410により撮像される所定の領域S及びS′は、一部重畳する領域があってもよい。
【0049】
エリアセンサカメラ410により撮像された所定の領域は、集電体320の搬送に伴い、次のライン型照明420及びラインセンサカメラ430の撮像可能位置に到達した時点で、それぞれ光が照射されるとともに、ラインセンサカメラ430により所定のライン数だけ撮像される。ラインセンサカメラ430による撮像についても、集電体320が搬送されている間は、継続的に撮像処理を繰り返す。
【0050】
本実施形態では、エリアセンサカメラ410及びラインセンサカメラ430が所定の位置に固定され、集電体320が搬送される(動く)構成を前提に各処理が行われる。但し、集電体320が固定され、エリアセンサカメラ410及びラインセンサカメラ430が移動する構成であってもよい。つまり、エリアセンサカメラ410及びラインセンサカメラ430と集電体320の所定領域(所定ライン)との相対的な位置関係が得られる構成であれば、いずれの構成であってもよい。
【0051】
なお、本実施形態では、集電体320上に設けられた電極合材層上又は集電体320上に塗布され、機能層を形成させるための液体組成物層の膜を含めて、「被塗布材」と呼ぶ。
【0052】
〔電極製造システムの全体構成〕
続いて、電極製造システムの全体構成について説明する。
図5は、実施形態に係る電極製造システムの全体構成の一例を示す図である。
図5に示されているように、電極製造システム1は、情報管理装置2及び上述した電極製造装置3を有している。なお、第1の実施形態では、電極製造システム1を構成する電極製造装置3における各種処理について説明する。
【0053】
更に、電極製造システム1では、情報管理装置2及び電極製造装置3は、専用の有線ケーブルを介して互いに接続されているが、通信ネットワークを介して接続されている形態であってもよい。その場合の通信ネットワークは、不特定多数の通信が行われる通信ネットワークであり、インターネット、イントラネット、LAN(Local Area Network)等を含む無線通信ネットワークによって構築されている。なお、通信ネットワークには、4G(4th Generation)、5G(5th Generation)、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)、LTE(Long Term Evolution)等の通信ネットワークが含まれてもよい。
【0054】
ここで、情報管理装置2について説明する。情報管理装置2は、一般的なOSなどが搭載された通信を行うための情報処理装置(コンピュータシステム)によって実現され、電極製造システム1を構築する一つの構成要素である。また、情報管理装置2は、他の装置やアプリ、通信端末と通信を行うための通信アプリを記憶手段に記憶している。
【0055】
なお、情報管理装置2は、一般的に使用されるPC(Personal Computer)、携帯型ノートPC、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、ウェアラブル端末(サングラス型、腕時計型等)の通信機能を有する通信端末であってもよい。情報管理装置2は更に、ブラウザソフトウエア、各種アプリ(自然文検索アプリ等)のソフトウエアを動作させることが可能な通信装置又は通信端末が用いられてもよい。
【0056】
電池電極製造に係る本実施形態では、情報管理装置2は、
図5に示した電極製造システム1における電極製造装置3の各種データ(情報)の一括管理を行うことも可能である。したがって、後述するように、電極製造システム1は、情報管理装置2が、電極製造装置3で管理されるデータテーブル及び各種画像データを一括管理するようなシステムとして構築されてもよい。
【0057】
なお、情報管理装置2では、ストレージ等の各部(機能又は手段)を分割して任意に割り当てられた複数のコンピュータによって構築されてもよい。また、情報管理装置2の機能の全て又は一部は、クラウド環境に存在するサーバコンピュータであってもよいし、オンプレミス環境に存在するサーバコンピュータであってもよい。情報管理装置2は、更に、ブラウザソフトウエア等のソフトウエアを動作させることが可能な通信装置又は通信端末が用いられてもよい。
【0058】
また、情報管理装置2は、電極製造装置3に対してプッシュ通知(送信)によりデータ(情報)を通知(送信)してもよい。その場合、情報管理装置2は、例えば、プッシュ通知サーバの一例であるFCM(Firebase Cloud Messaging)を介してプッシュ通知が行われるようにしてよい。
【0059】
〔ハードウエア構成〕
続いて、
図6乃至
図8を用いて、実施形態に係る情報処理システムを構成する通信端末又は装置のハードウエア構成について説明する。なお、
図6乃至
図8に示されている各装置のハードウエア構成は、必要に応じて構成要素が追加又は削除されてもよい。
【0060】
<情報管理装置のハードウエア構成>
図6は、実施形態に係る情報管理装置のハードウエア構成の一例を示す図である。
図6に示されているように、情報管理装置2は、例えばコンピュータによって構築されており、CPU201、ROM202、RAM203、EEPROM204、HD(Hard Disk)205、HDD(Hard Disk Drive)コントローラ206、ディスプレイ207、近距離通信I/F208、CMOSセンサ209、撮像素子I/F210を備えている。情報管理装置2は更に、ネットワークI/F211、キーボード212、ポインティングデバイス213、メディアI/F215、外部機器接続I/F216、音入出力I/F217、マイク218、スピーカ219及びバスライン220を備えている。
【0061】
これらのうち、CPU201は、情報管理装置2全体の動作を制御する。ROM202は、CPU201の駆動に用いられるプログラム等を記憶する。RAM203は、CPU201のワークエリアとして使用される。EEPROM204は、CPU201の制御にしたがって、アプリ等の各種データの読出し又は書込みを行う。HD205は、プログラム等の各種データを記憶する。HDDコントローラ206は、CPU201の制御にしたがってHD205に対する各種データの読出し又は書込みを制御する。ここで、情報管理装置2は、HD205及びHDDコントローラ206に代えて、SSD(Solid State Drive)を搭載したハードウエア構成であってもよい。ディスプレイ207は、カーソル、メニュー、ウィンドウ、文字又は画像などの各種情報を表示する。本実施形態において、ディスプレイ207は、表示手段の一例として機能する。近距離通信I/F208は、NFC(Near Field Communication)、Bluetooth(登録商標。以下省略)、Wi-Fi(登録商標。以下省略)等の無線通信インターフェイスを備える通信装置又は通信端末等とデータ通信を行うための通信回路である。CMOSセンサ209は、CPU201の制御にしたがって被写体を撮像して画像データ又は動画データを得る内蔵型の撮像手段の一種である。なお、撮像手段は、CMOSセンサではなく、CCD(Charge Coupled Device)センサ等で構成される撮像手段であってもよい。撮像素子I/F210は、CMOSセンサ209の駆動を制御する回路である。
【0062】
ネットワークI/F211は、通信ネットワーク150を利用してデータ通信をするためのインターフェイスである。キーボード212は、文字、数値、各種指示などの入力のための複数のキーを備えた入力手段の一種である。なお、キーボード212に代えて又は加えて、所定のボタン、アイコン等を操作するタッチパネル等の入力手段を用いてもよい。ポインティングデバイス213は、各種指示の選択や実行、処理対象の選択、カーソルの移動などを行う入力手段の一種である。メディアI/F215は、フラッシュメモリ等のメディア214に対するデータの読出し又は書込み(記憶)を制御する。外部機器接続I/F216は、各種の外部機器を接続するためのインターフェイスであり、電極製造装置3と専用の有線ケーブルを用いて接続される。なお、外部機器は、USB(Universal Serial Bus)メモリ等であってもよい。音入出力I/F217は、CPU201の制御にしたがってマイク218及びスピーカ219との間で音信号の入出力を処理する回路である。マイク218は、音を電気信号に変える内蔵型の回路であり、外部のスピーカ等から発する音声や音波を取得し電気信号を用いた情報を取得する。スピーカ319は、電気信号を物理振動に変えて音楽や音声などの音を生み出す内蔵型の回路である。バスライン220は、CPU201等の各構成要素を電気的に接続するためのアドレスバスやデータバス等である。
【0063】
<電極製造装置のハードウエア構成>
図7は、実施形態に係る電極製造装置の制御部を含むハードウエア構成の一例を示す図である。電極製造装置3は、例えばコンピュータによって構築されており、制御部300、層形成部330、センサ335、エンコーダ380、操作部390及び検査ユニット400を備えている。なお、層形成部330は、搬送機構340、液体吐出ヘッド350(インクジェットヘッド)、光源360及びヒータ370を含む。
【0064】
制御部300は、搬送機構340、液体吐出ヘッド350、光源360、ヒータ370等の動作を制御すると共に、検査ユニット400、操作部390における各処理を制御する。なお制御部300は、電極製造装置3との間において信号又はデータの送受が可能であれば、電極製造装置3の内部又は外部のいずれに配置されていてもよいし、電極製造装置3から離れた遠隔場所に配置されていてもよい。
【0065】
制御部300は更に、CPU301、ROM302、RAM303、HDD304、I/F305、SSD(Solid State Drive)306及びバスライン310を備えている。
【0066】
これらのうち、CPU301は、電極製造装置3全体の動作を制御する。ROM302は、CPU301の駆動に用いられるプログラム等を記憶する。RAM303は、CPU301のワークエリアとして使用される。HDD304は、CPU301の制御にしたがって、アプリ等の各種データの読出し又は書込みを行う。I/F305は、NFC(Near Field Communication)、Bluetooth(登録商標。以下省略)、Wi-Fi(登録商標。以下省略)等の無線通信インターフェイスを備える通信装置又は通信端末等とデータ通信を行うための通信回路である。I/F305は更に、専用の有線ケーブルを介して接続された装置(情報管理装置2)とデータ通信を行うための通信回路である。SSD(Solid State Drive)306は、CPU301の制御にしたがって、HDD304の補助的な記憶装置として利用されてよく、印刷画像データ等を記憶し繰り返し使うようにしてもよい。
【0067】
集電体320は、XYZ座標軸のY方向に沿って延伸する長尺シート状の導電性箔である。導電性箔は、例えばアルミ箔、銅箔である。集電体320と、集電体320上に設けられた電極合材層と、を有する電極基体は、集電体上に、性状が異なる点を+Y方向と交差するX方向に沿って複数有する。この性状には、電極基体の厚み、色及び反射率等が挙げられるが、これらの少なくとも一つが含まれることが好ましい。具体的には、集電体320上には電極合材層が形成されている。そのため、電極基体において、電極合材層が形成されている領域と形成されていない領域との間では厚み、色及び反射率の少なくとも一つが異なっている。性状が異なる点は、電極合材層が形成されている領域と、電極合材層が形成されていない領域と、の境界に含まれる点である。
【0068】
層形成部330は、上述したように搬送機構340、液体吐出ヘッド350(インクジェットヘッド)、光源360及びヒータ370を備え、センサ335による電極合材層の端部に係る検出結果に基づき、電極合材層上又は集電体320上に機能層を形成する。
【0069】
搬送機構340は、駆動ローラ340aと従動ローラ340bとにより、集電体320、又は集電体320と集電体320上に設けられた電極合材層とを有する電極基体をX方向に搬送する。搬送機構340は更に、駆動ローラ340aと、従動ローラ340bと、駆動ローラ340aの回転角度信号を出力するエンコーダ380と、駆動ローラ340aを駆動させるモータと、を含んでいる。電極基体は、少なくとも駆動ローラ340a及び従動ローラ340bに架け回されており、駆動ローラ340aの回転に従ってX方向に走行することによって搬送される。なお、搬送機構340は、電極基体の移動を補助するガイド部材等を更に備えてもよい。
【0070】
液体吐出ヘッド350は、X方向に搬送される電極基体が有する集電体320上に形成されている電極合材層上に液体組成物を吐出して付与することにより、集電体320上に機能層としての樹脂層を形成する液体吐出手段の一例である。
【0071】
液体吐出ヘッド350(インクジェットヘッド)は、機能層としての樹脂層を形成するための元データとなる画像データに基づいて液体組成物を吐出し、樹脂層の前駆状態である樹脂前駆層を形成する。
【0072】
液体吐出ヘッド350としては、X方向における電極基体の幅以上の幅を有するライン状に並べたヘッドを使用することができる。液体吐出ヘッド350から液体組成物を吐出する圧力発生手段及び駆動方法には特に制限はない。例えば、発熱体の熱により発生する蒸気の圧力を利用して液体組成物滴を飛翔させるサーマルアクチュエータ、圧電素子によって発生する機械的な圧力パルスを利用して液体組成物滴を飛翔させる圧電アクチュエータ、或いは、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータ等を使用することができる。液体吐出ヘッド350は更に、必要に応じて液体組成物の供給系を圧力オンオフすることにより液体組成物を飛翔させてもよい。
【0073】
光源360は、電極基体上に形成された液体組成物層(樹脂前駆層)に光を照射し、樹脂前駆層に含まれるモノマーの重合を促進させることで、液体組成物層を樹脂層に硬化させる。光源としては、例えば、低、中、高圧水銀ランプのような水銀ランプ、タングステンランプ、アーク灯、エキシマランプ、エキシマレーザ、半導体レーザ、高出力UV-LED、YAGレーザ、レーザと非線形光学結晶とを組み合わせたレーザシステム、高周波誘起紫外線発生装置、EBキュア等の電子線照射装置、X線照射装置等を使用することができる。但し、システムを簡便化できる観点では、高周波誘起紫外線発生装置、高・低圧水銀ランプ、半導体レーザ等を使用することが好ましい。また、光源に集光用ミラーや走査光学系を設けてもよい。
【0074】
光源の例として、例えばライトハンマーシリーズ(フュージョンUVシステムズ社製)等が例示される。また、日亜化学工業株式会社に代表されるLEDメーカから1W以上の高輝度のUV-LEDやレーザーダイオード等が販売されており、これらを線又は平面上に並べることによって好適に用いることができる。また、活物質粉体の隙間にしみ込んだり(入り込んだり)して光が届きにくい場合には、電子線、X線照射装置等を光源として用いることができる。この場合、例えば岩崎電気株式会社製の小型EB射装置等が好適に用いられる。
【0075】
ヒータ370は、電極基体上に形成された樹脂層形成用液体組成物の吐出によって形成される樹脂前駆層を加熱することにより、硬化の促進、溶媒の除去、乾燥等を行う。ヒータ370としては、例えば、赤外ランプ、発熱体を内蔵したローラ(熱ローラ)、温風又は熱風を吹き出すブロワ、水蒸気等を用いたボイラー型熱風を導入した炉等を使用することができる。
【0076】
なお、ヒータ370は、熱源として知られ制御可能なものであればいかなるものでもよい。例えば、光源として、可視光に加えて赤外光を発生し得るものを使用した場合には、光照射と同時に加熱を行うことができる。この場合にはヒータ370は硬化、即ち樹脂前駆層に含まれるモノマーの重合を促進させることができるため、より好ましい。なお、樹脂前駆層に光を照射すると、光源から発生する熱によって樹脂前駆層が加熱されるため、加熱手段は、ヒータ370のように必ずしも独立した部材として設ける必要はない。しかし、光源からの熱のみにより常温で放置して樹脂前駆層を完全に硬化させるには長時間を要する。したがって、常温放置は、完全硬化までに充分に長い時間を確保できる用途に適用することが望まれる。
【0077】
エンコーダ380は、上述したように駆動ローラ340aの回転角度信号を出力する。
【0078】
操作部390は、タッチパネル等により構成されており、電極製造装置3のユーザ(利用者)による電極製造装置3への操作入力を受け付けると共に、電極製造装置3の状態情報、設定情報等を操作部390の画面上に表示する。
【0079】
検査ユニット400は、電極製造装置3において集電体320上に機能層が形成され、ヒータ370で乾燥された後の機能層の表面(塗膜物表面。以下、単に「機能層の表面」と呼ぶ)上の異常又は欠陥を検知(検査)する。検査ユニット400は、後述するライン型照明420(照射手段の一例、検査手段の一例)と二つの撮像手段(エリアセンサカメラ410、ラインセンサカメラ430)を備えており、機能層の表面をインラインで検査する。また検査ユニット400は、エリアセンサカメラ410(第1の撮像手段の一例)で撮像した撮像情報に基づき、機能層の表面状態を検査する。
図4に示したように、エリアセンサカメラ410(第1の撮像手段の一例)より搬送経路における下流側にはラインセンサカメラ430(第2の撮像手段の一例、検査手段の一例)を備え、エリアセンサカメラ410の検知結果に応じて、検査ユニット400における検査条件を設定する。ラインセンサカメラ430は、一例として被検査物が高速搬送されている場合でも撮像が可能なラインセンサカメラが挙げられるが、これに限るものではない。同様に、エリアセンサカメラ410についてもこれに限るものではない。
【0080】
<検査ユニットのハードウエア構成>
図8は、実施形態に係る電極製造装置の検査ユニットのハードウエア構成の一例を示す図である。検査ユニット400は、例えばコンピュータによって構築されており、CPU401、ROM402、RAM403、操作パネル404、HDD/SSD405、ネットワークI/F406、外部I/F407、エリアセンサカメラ410、ライン型照明420及びラインセンサカメラ430を備えている。
【0081】
これらのうち、CPU401は、検査ユニット400全体の動作を制御する。また、CPU401は、ROM402、HDD/SSD405のうち少なくとも一方に格納されたプログラムを読み出して、RAM403に格納する。CPU401は更に、RAM403に格納されたプログラムに従って、後述する各種処理を実行する。ROM402は、例えば、不揮発性の補助記憶装置である。ROM402には、BIOS等の検査ユニット400の基本的な動作を規定したプログラムが格納される。RAM403は、例えば、揮発性の主記憶装置である。RAM403は、CPU401の作業領域として使用される。HDD/SSD405は、大容量の不揮発性の補助記憶装置である。HDD/SSD405には、受信した撮像データ、後述する各種処理のプログラム、設定情報等が格納される。ネットワークI/F406は、例えばLAN(Local Area Network)カードであり、通信ネットワークを介して他の機器との間で通信するための中継器である。外部I/F407は、外部機器として接続されている機器、具体的には、電極製造装置3との間で通信するための中継器である。なお、外部I/F407は、電極製造装置3内に検査ユニット400が内蔵されている場合は、その機能を有する必要はない。
【0082】
また、本実施形態に係る電極製造装置3は、必要に応じて液体吐出ヘッド350の前段又は後段に各種工程を実行する装置を備えることで蓄電デバイス製造装置としてもよい。
【0083】
上述した蓄電デバイス製造装置は、電極基体に液体を付与する電極製造装置3を有し、更に、例えば、樹脂層又は無機層が形成された電極基体をセル(電池)化に向けて加工する電極基体加工部などを含む。
【0084】
<電極基体加工部>
電極基体加工部は、液体吐出ヘッド350よりも下流において、樹脂層又は無機層が形成された電極基体を加工する。電極基体加工部は、裁断、折り畳み、及び貼り合わせの少なくとも一つを実施してもよい。電極基体加工部は、例えば、樹脂層又は無機層が形成された電極基体を裁断し、電極基体積層体を作製することができる。電極基体加工部は、樹脂層又は無機層が形成された電極基体を巻回又は積層することができる。絶縁層が融点又はガラス転移点を有する材料を含む場合、電極基体加工部では、例えば、一の電極基体積層体と他の電極基体積層体は、加熱により少なくとも一部が接着される。
【0085】
電極基体加工部は、例えば、電極基体加工装置を有し、樹脂層又は無機層が形成された電極基体の裁断やつづら折り、積層や巻回、積層や巻回後の電極基体間の熱接着等を目的の電池形態に応じて実施する。電極基体加工部において樹脂層又は無機層が形成された電極基体の加工が行われるときは、加工後の電極基体にシワ等のダメージを低減させることが可能となる理由から、電極基体の搬送速度は比較的遅いことが好ましい。
【0086】
電極基体加工部によって行われる電極基体加工工程は、例えば、液体吐出ヘッド350よりも下流において、樹脂層又は無機層が形成された電極基体を加工する工程である。電極基体加工工程は、裁断工程、折り畳み工程、及び貼り合わせ工程の少なくとも一つを含んでもよい。
【0087】
なお、上記プログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルで、コンピュータで読取り可能な記録媒体に記録、又はネットワークを介してダウンロードを行い流通させるようにしてもよい。記録媒体の例として、CD-R(Compact Disc Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)、Blu-ray Disc(Blu-rayは登録商標。以下省略)、SDカード、USBメモリ等が挙げられる。また、記録媒体は、プログラム製品(Program Product)として、国内又は国外へ提供されることができる。例えば、検査ユニット400(電極検査装置)は、本発明に係るプログラムが実行されることで、本発明に係る電極検査方法を実現する。
【0088】
〔電極製造システムの機能構成〕
次に、
図9乃至
図12を用いて、本実施形態の機能構成について説明する。
図9Aは、実施形態に係る電極製造システムの機能構成の一例を示す図であり、特に情報管理装置の機能構成を示す図である。
図9Bは、実施形態に係る電極製造システムの機能構成の一例を示す図であり、特に電極製造装置の機能構成を示す図である。なお、
図13は、
図10に示されている情報管理装置2又は電極製造装置3のうち、後述する処理又は動作に関連するものを示す。
【0089】
<情報管理装置の機能構成>
次に、情報管理装置の機能構成について説明する。
図9Aに示されているように、情報管理装置2は、送受信部21、操作受付部22、取得部23、表示制御部24、判断部25、算出処理部26、生成部27、条件制御部28及び記憶読出部29を有する。これら各機能部は、
図6に示された各ハードウエア資源のいずれかが、ROM202、EEPROM204、HD205及びメディア214のうち少なくとも一つからRAM203に展開された情報管理装置2用のプログラムに従ったCPU201からの命令により動作することで実現される機能又は手段である。また、情報管理装置2は、
図6に示されているROM202、EEPROM204、HD205及びメディア214のうち少なくとも一つにより構築される記憶部2000を有している。更に、記憶部2000には、電極製造装置3と専用の有線ケーブルを介して通信を行うための通信プログラム(通信アプリ)、集電体320に対して機能膜の形成(印刷)を実行するための印刷アプリ等が記憶されている。
【0090】
<<情報管理装置の各機能構成>>
次に、情報管理装置2の各機能構成について詳細に説明する。
図9Aに示されている情報管理装置2の送受信部21は、主に、ネットワークI/F211及び近距離通信I/F208に対するCPU201の処理によって実現され、通信ネットワーク(有線ケーブル)を介して電極製造装置3との間で各種データ(又は情報)の送受信を行う。また送受信部21は、電極製造装置3が送信した撮像画像を受信する。また送受信部21は、検査条件を電極製造装置3に対して送信する。本実施形態において送受信部21は、第1の受信手段及び第2の送信手段のうち少なくとも一方の手段の一例として機能する。
【0091】
操作受付部22は、主に、ディスプレイ207、キーボード212及びポインティングデバイス213のうち少なくとも一方が受け付けた各種操作により生成された信号をCPU201が処理することによって実現される。なお、操作受付部22は、ディスプレイ207及びポインティングデバイス213に代えて、タッチパネル等の入力手段が受け付けた各種操作により生成された信号が用いられてもよい。本実施形態において操作受付部22は、受付手段の一例として機能する。
【0092】
取得部23は、主に、CPU201の処理によって実現され、送受信部21によって受信された撮像画像等の各種情報(データ)を取得する。本実施形態において取得部23は、取得手段の一例として機能する。
【0093】
表示制御部24は、主に、ディスプレイ207に対するCPU201の処理によって実現され、情報管理装置2における各種画面及び情報(データ)の表示制御を行う。また、表示制御部24は、例えば、ブラウザを用いて、HTML等により生成された表示画面を、ディスプレイ207に表示させる。本実施形態において表示制御部24は、表示制御手段の一例として機能する。
【0094】
判断部25は、主に、CPU201の処理によって実現され、情報管理装置2における各種判断を行う。本実施形態において判断部25は、判断手段の一例として機能する。
【0095】
算出処理部26は、主に、CPU201の処理によって実現され、例えば、撮像画像における表面状態の定量化計算を実行する。本実施形態において算出処理部26は、算出処理手段の一例として機能する。
【0096】
生成部27は、主に、CPU201の処理によって実現され、電極製造装置3に対して送信される印刷実行要求に含まれる各種情報を生成する。本実施形態において生成部27は、生成手段の一例として機能する。
【0097】
条件制御部28は、主に、CPU201の処理によって実現され、電極製造装置3の検査ユニット400により行われる機能層の表面の検査に係る検査条件の変更、決定を行う。また条件制御部28は、電極製造装置3が送信した撮像画像に基づいて、検査ユニット400による検査条件を設定する。本実施形態において条件制御部28は、条件制御手段の一例として機能する。
【0098】
記憶読出部29は、主に、ROM202、EEPROM204、HD205及びメディア214のうち少なくとも一つに対するCPU201の処理によって実現され、記憶部2000に各種データ(又は情報)を記憶したり、記憶部2000から各種データ(又は情報)を読み出したりする。本実施形態において記憶読出部29は、記憶読出手段の一例として機能する。
【0099】
●検査条件管理テーブル●
図10は、情報管理装置で管理される検査条件管理テーブルの一例を示す概念図である。なお、以下に説明するデータテーブルは一例であり、これに限るものではない。記憶部2000には、
図10に示されているような検査条件管理テーブルによって構成された検査条件管理DB2001が構築されている。検査条件管理テーブルでは、電極製造装置3の装置IDをタブとしたそれぞれのタブごとに、変更項目ID、変更項目名、検査条件1、検査条件2を含む項目が関連付けられて記憶、管理されている。これらのうち、変更項目IDは、検査ユニット400において行われる機能層の表面に対する検査の項目を設定するための識別情報である。
【0100】
変更項目名は、変更項目IDに関連付けられた変更項目の内容であり、例えば、「照明強度」、「撮像解像度」、「撮像画像2値化処理閾値」、「2値化後ノイズ除去処理」等である。「照明強度」は、照明の明るさを示すパラメータである。集電体320の表面は、照明強度が高い(強い)ほど明るく撮像される。そのため、
図14に示すように点状のグレー部分も明るく撮像されることにより黒色欠陥として検出されにくくなる。そこで、検査条件1の設定値よりも検査条件2の設定値を大きくすることで欠陥の検出頻度を抑制する。欠陥検出時の「撮像画像2値化処理閾値」とは、欠陥を検出する際に撮像データを黒データ(欠陥)と白データとに2値化処理する閾値である。2値化処理閾値が小さいほど黒データに振り分けられにくくなる。よって検査条件2の設定値を検査条件1の設定値よりも小さくすることで、欠陥の検出頻度を抑制することになる。
【0101】
検査条件1及び検査条件2は、エリアセンサカメラ410(第1の撮像手段の一例)で撮像後に、ラインセンサカメラ430(第2の撮像手段の一例)で撮像及び検査を行う際の条件である。後述するように、エリアセンサカメラ410(第1の撮像手段の一例)で撮像された撮像画像の状態に応じてこれらの条件を変え、ラインセンサカメラ430(第2の撮像手段の一例)で撮像及び検査を行う。
【0102】
なお、検査条件の変更は、あくまでロール搬送されている集電体320の搬送を止めることなくインライン検査中に行う必要があり、ごく僅かな時間の猶予しかない。よって、エリアセンサカメラ410、ラインセンサカメラ430等の撮像装置や照明の相対位置を変更するような大掛かりなハードウエアの変更は不可若しくは困難でとなる。そのため、その手段、方法は限定される。
【0103】
そこで、上述した四つの検査条件の設定例を説明する。
【0104】
照明強度とは、照明の明るさを示すパラメータである。強度が高いほど明るく撮像されるため、後述する
図14(b)に示す点状のグレー部分も明るく撮像される。これにより、対象となる部分は黒色欠陥として検知されにくくなる。よって、検査条件1の設定値よりも検査条件2の設定値を大きくすることで、欠陥の検出頻度を抑制することができる。
【0105】
撮像解像度とは、エリアセンサカメラ410、ラインセンサカメラ430で撮像した画像データの単位面積あたりの画素数である。解像度が低いと
図14(b)に示す点状のグレー部分と周囲の機能膜部分との境界が不鮮明となり、欠陥が検知されにくくなる。よって、検査条件1の設定値よりも検査条件2の設定値を小さくすることで、欠陥の検出頻度を抑制することができる。
【0106】
撮像画像の2値化処理閾値とは、欠陥を検出する際に撮像画像を表す撮像データを黒データ(欠陥)と白データとに2値化処理する閾値である。2値化処理閾値が小さいほど黒データに振り分けられにくくなる。よって、検査条件2の設定値を検査条件1の設定値よりも小さくすることで、欠陥の検出頻度を抑制することができる。
【0107】
2値化後ノイズ除去処理とは、2値化後のデータにて黒データ(欠陥)に振り分けられた箇所について画像処理を行うことによって、黒データ部分を白データ(非欠陥データ)へ変更する処理をいう。ノイズ除去処理とは、例えば、一般的に使用されているモフォロジー処理(膨張処理と収縮処理の組合せ処理)を用いた孤立点除去(穴埋め)が挙げられる。なお、検査条件管理テーブルでは、電極製造装置3の装置IDをタブとして分類したが、これに限らず、電極製造装置3で実行される印刷ジョブIDをタブとして分類するような形態であってもよい。また、それらのデータテーブルで管理される検査条件は、上記に限らない。
【0108】
本実施形態において検査条件管理テーブル(検査条件管理DB2001)は、検査条件管理手段の一例として機能する。
【0109】
<電極製造装置の機能構成>
続いて、電極製造装置の機能構成について説明する。
図9Bに示されているように、電極製造装置3は、制御部300に、送受信部31、計測部32、受付取得部33、撮像制御部34、判断部35、画像処理部36、生成部37及び記憶読出部39を有する。また、電極製造装置3は、制御部300に、層形成制御部40を有する。層形成制御部40は更に、搬送制御部41、吐出制御部42、照射制御部43、加熱制御部44、操作制御部49を有する。これら各機能部は、
図7に示された各ハードウエア資源のいずれかが、ROM302、HDD304及びSSD306のうち少なくとも一つからRAM303に展開された電極製造装置3用のプログラムに従ったCPU301からの命令により動作することで実現される機能又は手段である。また、電極製造装置3は、
図7に示されているROM302、HDD304及びSSD306のうち少なくとも一つにより構築される記憶部3000を有している。更に、記憶部3000には、情報管理装置2と有線ケーブルを介して通信を行うための通信プログラム(通信アプリ)、各種データベース(DB)、検査結果としての欠陥画像データ等が記憶されている。
【0110】
<<電極製造装置の各機能構成>>
次に、電極製造装置3の各機能構成について詳細に説明する。
図9Bに示されている電極製造装置3の制御部300は、電極合材層上又は集電体320上に液体組成物層の膜(機能層の一例としての樹脂層又は無機層)を形成するよう、層形成部330を制御する。
【0111】
一方、層形成制御部40は、層形成部330を制御して電極合材層上又は集電体320上に機能層を形成する。本実施形態において層形成制御部40は、層形成制御手段の一例として機能する。
【0112】
以下、制御部300に含まれる各機能について説明する。送受信部31は、主に、I/F305に対するCPU301の処理によって実現され、有線ケーブルを介して情報管理装置2との間で各種データ(又は情報)の送受信を行う。また送受信部31は、ラインセンサカメラ430(第1の撮像手段)により撮像された撮像画像を、情報管理装置2に対して送信する。また送受信部31は、情報管理装置2が送信した検査条件を受信する。本実施形態において送受信部31は、第1の送信手段及び第2の受信手段のうち少なくとも一方の手段の一例として機能する。
【0113】
計測部32は、主に、CPU301の処理によって実現され、CPU301のクロックをカウントすることにより時間を計測し、時間計測結果を得る。計測部32は更に、エンコーダ380から入力した駆動ローラ340aの回転角度信号に基づき、電極基体が搬送された距離(走行した距離)を計測し、搬送距離計測結果を受付取得部33に出力することもできる。本実施形態において計測部32は、計測手段の一例として機能する。
【0114】
受付取得部33は、主に、CPU301の処理によって実現され、情報管理装置2が送信した検査条件に係る検査条件データを取得する。また受付取得部33は、ユーザにより操作部390に対して操作入力された各種情報を取得する。受付取得部33は更に、センサ335及びエンコーダ380からの検出結果を含む各種情報を取得する。本実施形態において受付取得部33は、取得手段の一例として機能する。
【0115】
撮像制御部34は、主に、検査ユニット400に対するCPU301の処理によって実現され、検査ユニット400に含まれるエリアセンサカメラ410、ライン型照明420及びラインセンサカメラ430の撮像解像度、照明強度等を制御する。また撮像制御部34は、後述する判断部35により、機能層の表面状態に対する検査結果が所定の条件を満たさないことで表面状態が異常又は欠陥と判断された場合に、検査条件を設定する。本実施形態において撮像制御部34は、制御手段の一例として機能する。
【0116】
判断部35は、主に、CPU301の処理によって実現され、電極製造装置3における各種判定(判断)を行う。本実施形態において判断部35は、判断手段の一例として機能する。
【0117】
画像処理部36は、主に、CPU301の処理によって実現され、撮像画像における表面状態の定量化計算を行う。また画像処理部36は、検査ユニット400における撮像画像に対する2値化処理の閾値設定、2値化後ノイズ除去処理等を行う。また画像処理部36は、判断部35により、機能層の表面状態に対する検査結果が所定の条件を満たさないことで表面状態が異常又は欠陥と判断された場合に、検査条件を設定する。本実施形態において画像処理部36は、処理手段の一例、制御手段の一例として機能する。
【0118】
生成部37は、主に、CPU301の処理によって実現され、電極製造装置3における各種情報を生成する。本実施形態において生成部37は、生成手段の一例として機能する。
【0119】
記憶読出部39は、主に、ROM302、HDD304及びSSD306のうち少なくとも一つに対するCPU301の処理によって実現され、記憶部3000に各種データ(又は情報)を記憶したり、記憶部3000から各種データ(又は情報)を読み出したりする。本実施形態において記憶読出部39は、記憶読出手段の一例として機能する。
【0120】
次に、層形成制御部40の各機能について説明する。搬送制御部41は、主に、CPU301の処理によって実現され、搬送機構340を制御して巻出部341及び巻取部342による被塗布材の搬送の開始及び停止、並びに被塗布材の搬送速度等を制御する。本実施形態において搬送制御部41は、搬送制御手段の一例として機能する。
【0121】
吐出制御部42は、主に、CPU301の処理によって実現され、メディアの搬送位置を検出するエンコーダ380に同期して送られた画像データを受け取り、液体吐出ヘッド350における吐出条件を制御する。吐出制御部42は、画像処理部36から入力した補正後の画像データに基づいて、液体吐出ヘッド350による吐出条件(液体組成物の吐出タイミング、吐出量等)を制御する。本実施形態において吐出制御部42は、吐出制御手段の一例として機能する。
【0122】
照射制御部43は、主に、CPU301の処理によって実現され、光源360による樹脂前駆層への光の照射を制御する。また照射制御部43は、検査ユニット400に含まれるライン型照明420の照度制御を行う。また照射制御部43は、判断部35により、機能層の表面状態に対する検査結果が所定の条件を満たさないことで表面状態が異常又は欠陥と判断された場合に、検査条件を設定する。本実施形態において照射制御部43は、照射制御手段の一例、制御手段の一例として機能する。
【0123】
加熱制御部44は、主に、CPU301の処理によって実現され、ヒータ370による樹脂前駆層への加熱を制御する。本実施形態において加熱制御部44は、加熱制御手段の一例として機能する。
【0124】
操作制御部49は、主に、CPU301の処理によって実現され、操作部390に対する各種操作により生成された信号をCPU301が処理することによって実現される。本実施形態において操作制御部49は、操作制御手段の一例として機能する。
【0125】
また、上述した層形成制御部40によって制御される層形成部330は、搬送機構340、液体吐出ヘッド350、光源360及びヒータ370をそれぞれ制御して、電極合材層上又は集電体上に層を形成する。本実施形態において層形成部330は、層形成手段の一例として機能する。
【0126】
検査ユニット400は、エリアセンサカメラ410、ライン型照明420及びラインセンサカメラ430に対する各種制御を行う。各種制御については上述したとおりであり、それらの詳細は、フローチャートにおいて説明する。本実施形態において検査ユニット400は、検査手段の一例として機能する。
【0127】
●検査条件管理テーブル●
図11は、電極製造装置で管理される検査条件管理テーブルの一例を示す概念図である。なお、以下に説明するデータテーブルは一例であり、これに限るものではない。記憶部3000には、
図11に示されているような検査条件管理テーブルによって構成された検査条件管理DB3001が構築されている。検査条件管理テーブルでは、変更項目IDごとに、変更項目名、検査条件1、検査条件2を含む項目が関連付けられて記憶、管理されている。なお、上記の各項目は、情報管理装置2の検査条件管理テーブル(検査条件管理DB2001:
図10参照)で管理される各項目と同様であるため、説明を省略する。
【0128】
本実施形態において検査条件管理テーブル(検査条件管理DB3001)は、検査条件管理手段の一例として機能する。更に、「照明強度」、「撮像解像度」、「撮像画像2値化処理閾値」、「2値化後ノイズ除去処理」等についても、
図10で示した説明と同様であるため、それらの説明を省略する。
【0129】
●欠陥情報管理テーブル●
図12は、実施形態に係る欠陥情報管理テーブルの一例を示す概念図である。なお、以下に説明するデータテーブルは一例であり、これに限るものではない。記憶部3000には、
図12に示されているような欠陥情報管理テーブルによって構成された欠陥情報管理DB3002が構築されている。欠陥情報管理テーブルでは、欠陥IDごとに、欠陥発生位置(X座標:[μm])、欠陥発生位置(Y座標:[μm])、幅[μm]、長さ[μm]、面積[μm
2](又は[μm^2])、濃度、欠陥判定を含む項目が関連付けられて記憶、管理されている。
【0130】
これらのうち、欠陥IDは、電極合材層上又は集電体320上に形成された、機能層を含む集電体320の表面を表す機能層の表面の欠陥を識別する識別情報である。欠陥発生位置(X座標)、欠陥発生位置(Y座標)は、機能層の表面で発生した欠陥のX座標値、Y座標値である。なお、XY座標値は、
図3等で示したXYZ座標軸の各座標と同じ定義である。幅は、発生した欠陥の幅を表す。長さは、発生した欠陥の長さを表す。面積は、発生した欠陥の面積を表す。濃度は、欠陥の濃度を表す。欠陥判定は、欠陥の状態、程度を表し、それぞれ「大」、「中」、「小」で分類される。なお、「大」、「中」、「小」の分類に関しては、検査結果として得られた欠陥の幅、長さ、面積、濃度のうち、任意の情報に対する所定の閾値、若しくは範囲に応じて分類されてよい。更に、欠陥の幅、長さ、面積、濃度のいくつかを組み合わせた結果に対する所定の閾値、若しくは範囲に応じて分類されてもよい。
【0131】
本実施形態において欠陥情報管理テーブル(欠陥情報管理DB3002)は、欠陥情報管理手段の一例として機能する。
【0132】
〔実施形態の処理又は動作〕
次に、
図13及び
図16を用いて、実施形態に係る電極製造装置における各処理又は動作を説明する。
【0133】
<検査ユニットにおける検査処理>>
図13は、第1の実施形態に係る検査処理の一例を示すフローチャートである。なお、以降に示すフローチャートは、本実施形態を説明するための一例であり、これに限らない。
【0134】
まず、電極製造装置3の撮像制御部34は、第1の撮像手段による機能層の表面の撮像を開始する(ステップS11)。具体的には、撮像制御部34は、検査ユニット400に含まれるエリアセンサカメラ410(第1の撮像手段)を制御し、搬送される集電体320がエリアセンサカメラ410の下を通過するタイミングでエリアセンサカメラ410が機能層を含む集電体320の表面(機能層の表面)の撮像を開始する。あわせて、受付取得部33は、撮像した撮像画像を取得する。
【0135】
次に、画像処理部36は、撮像画像における表面状態の定量化計算を実行する(ステップS12)。具体的には画像処理部36は、機能層の表面の塗膜状態の正常又は異常を切り分ける指標として、
(1)表面撮影写真のざらつき度合を定量化する指標(粒状度)
(2)表面の凹凸形状を定量化する指標(表面粗さ)
のうちのいずれかを使用した定量化計算を行う。
(1)については、例えば、一般的に知られた定量化手段として、
URL:https://jp.ricoh.com/-/Media/Ricoh/Sites/jp_ricoh/technology/techreport/23/pdf/056_062.pdf
「ハ-フト-ンカラ-画像のノイズ評価法 Noise Evaluation Method for Halftone Color Image 今河 進* 日野 真* 鎰谷 賢治* Susumu IMAKAWA Makoto HINO Kenji KAGITANI」で開示されているRMS粒状度とGS粒状度を用いることが可能である。
(2)については、例えば、これも一般的に知られた定量化手段として、
URL:https://www.iwata-fa.jp/html/technicaldata/tec_other_21.pdf
「表面粗さ●JIS B 0601(1994)・JIS B 0031(1994)より抜粋」で開示されている算術平均粗さRaを用いることが可能である。但し、上述した定量化計算の指標は一例であり、(1)及び(2)に示したものに限られない。
【0136】
次に、判断部35は、塗装(塗膜)状態は正常かを判定する(ステップS13)。具体的には、判断部35は、上述した粒状度、表面粗さのうち少なくとも一方を利用して、所定の閾値を超えていた場合に異常(又は正常)と判断する。
【0137】
なお、ステップS13の処理における機能層の表面状態が所定の条件を満たすか否かを判断する処理については、所定の条件として、
(1)機能層の表面状態に対する検査結果としての異常又は欠陥を判断する条件
としてもよいし、
(2)機能層の表面状態に対する検査結果としての正常判断する条件
としてもよい。なお、上述したステップS13の判断では、所定の条件を(1)の解釈として用いているが、すでに述べたように(2)の解釈として用いてもよい。
【0138】
塗膜(塗膜)状態は正常と判断された場合(ステップS13:YES)、撮像制御部34は、検査条件1を用いて第2の撮像手段による機能層の表面の撮像を開始する(ステップS14)。具体的には、撮像制御部34は、搬送される集電体320が検査ユニット400に含まれるライン型照明420及びラインセンサカメラ430の焦点付近を通過するタイミングでライン型照明420及びラインセンサカメラ430を制御する。続いてラインセンサカメラ430(第2の撮像手段)は、搬送される集電体320の表面(機能層の表面)を撮像する。その後、制御部300は、ライン型照明420及びラインセンサカメラ430(検査手段の一例)による機能層の表面に対する検査条件を、エリアセンサカメラ410(第1の撮像手段の一例)により撮像された機能層の表面状態に応じて設定する。なお、機能層の表面状態の一例は、上述したステップS13による塗装(塗膜)状態が正常か否かの判断結果で示される。
【0139】
次に、検査ユニット400は、第2の撮像手段における撮像データから欠陥を検出する(ステップS15)。具体的には、検査ユニット400は、機能層を含む集電体320の表面上の塗膜に穴が開き電極(電極合材層)がむき出しの状態を示す欠陥を検出する。
【0140】
次に、記憶読出部39は、欠陥データとして保存する(ステップS16)。具体的には、記憶読出部39は、検出された各欠陥の欠陥発生位置、欠陥の幅、長さ、面積、濃度、欠陥判定(「大」、「中」、「小」)を、欠陥情報管理DB3002(
図12参照)の対応する項目に保存する。記憶読出部39は更に、検出された欠陥の画像データを、記憶部3000の所定領域に欠陥データ(欠陥画像データ)として保存してもよい。
【0141】
次に、判断部35は、検査対象が機能層の表面でないかを判断する(ステップS17)。検査対象が機能層の表面でない場合(ステップS17:YES)、判断部35は、このフローを抜けて処理を終了する。他方、検査対象が機能層の表面である場合(ステップS17:NO)、判断部35は、ステップS11の処理に戻り、エリアセンサカメラ410による機能層の表面の撮像処理を、機能層の表面(被検査部)の搬送がエリアセンサカメラ410の下を通過するまで繰り返す。
【0142】
ステップS13での処理で、塗膜(塗膜)状態が異常と判断された場合、(ステップS13:NO)、撮像制御部34は、検査条件2を用いて第2の撮像手段による機能層の表面の撮像を開始する(ステップS18)。具体的には、撮像制御部34は、搬送される集電体320が検査ユニット400に含まれるライン型照明420及びラインセンサカメラ430の焦点付近を通過するタイミングでライン型照明420及びラインセンサカメラ430を制御する。続いてラインセンサカメラ430は、搬送される集電体320の表面(機能層の表面)を撮像する。その後、制御部300は、ライン型照明420及びラインセンサカメラ430(検査手段の一例)による機能層の表面に対する検査条件を、エリアセンサカメラ410(第1の撮像手段の一例)により撮像された機能層の表面状態に応じて設定する。なお、機能層の表面状態の一例は、上述したステップS13による塗装(塗膜)状態が正常か否かの判断結果で示される。これにより、
図10及び
図11で説明したとおり、それぞれの項目に対して実行される欠陥の検出頻度を抑制することができる。
【0143】
次に、検査ユニット400は、第2の撮像手段における撮像データから欠陥を検出する(ステップS19)。具体的には、検査ユニット400は、機能層を含む集電体320の表面上の塗膜に穴が開き電極(電極合材層)がむき出しの状態を示す欠陥を検出する。
【0144】
次に、記憶読出部39は、欠陥データとして保存した(ステップS20)後、ステップS17に遷移する。具体的には、記憶読出部39は、検出された欠陥位置情報を、欠陥情報管理DB3002(
図12参照)の対応する項目に保存する。記憶読出部39は更に、検出された欠陥の画像データを、記憶部3000の所定領域に欠陥データ(欠陥画像データ)として保存してもよく、その後、ステップS17に遷移する。ステップS17では、判断部35は、塗装(塗膜)状態における検査条件の切替えを、集電体320の搬送がラインセンサカメラ430の下を通過するまで繰り返す。なお、上述したステップS20の処理では、記憶読出部39は、検出された欠陥の欠陥位置情報のみを、記憶部3000の所定領域に欠陥データとして保存するようにしてもよい。
【0145】
<機能層の表面に異常が生じている場合の例>
図14は、実施形態に係る機能層の表面状態の一例を示す模式図であり、(a)は正常な塗膜状態を表す撮像データの一例を示す図、(b)は異常な塗膜状態を表す撮像データの一例を示す図である。(a)に示すように、機能層として塗布された塗膜の塗膜状態が正常な場合は、機能層の表面状態が均一な状態となっている。
【0146】
他方、(b)に示すように、機能層として塗布された塗膜の塗膜状態が異常な場合は、機能層の表面状態が不均一な状態となっている。状態異常は、インク等の被塗布材の表面形状、特に凹凸の大きさ、被塗布材表面上の異物、印刷時のインクの吐出状態、ヒータ370等の乾燥手段による乾燥条件などさまざまな要因によって生じる可能性がある。(b)のような塗膜状態においては(a)と同様の検査条件を用いてしまうと、点状に散在しているグレー部分を全て欠陥と検知するおそれがあり、欠陥検出における画像処理が間に合わなくなる場合がある。また(b)は、欠陥検査結果如何に関わらず不良品であると判断できるため、異常が生じている範囲のみ保存できていればよい。
【0147】
したがって、電極製造装置3は検査条件を変更し、不必要に欠陥として検出する頻度を抑制するようにする。ここでいう欠陥とは、点状の黒色欠陥と線状の黒色欠陥をいう。
【0148】
<検査結果の提示>
<<検査条件の違いによる検査結果>>
図15は、実施形態に係る検査条件の違いによる検査結果の一例を示す図であり、(a)は被検査物が正常塗膜部のみだった場合の検査結果の一例を示す図である。欠陥は、本実施形態において◆で表現しており、◆の大きさが欠陥の大きさと相関していることを示している。また、◆の位置が被検査物の全領域に対する欠陥発生位置を示している。なお、欠陥をどのような図形で表現するかは上述した方法に限らない。
【0149】
図15(b)、(c)は、被検査物の搬送方向中間部に異常塗膜部が存在している場合の検査結果の例を示す図である。正常塗膜部の検査結果の示し方は(a)と同様であるが、異常塗膜部は被検査物の搬送方向に対する位置関係が示されればよい。そのため、(b)のように被検査物の中央部分をグレーハッチングする、若しくは(c)のように開始点と終了点を目印(×印)で示すようにしてもよい。
【0150】
<<塗膜領域の違いによる検査結果>>
図16は、実施形態に係る塗膜領域の違いによる検査結果の一例を示す図であり、(a)は被検査物が塗膜部のみだった場合の検査結果の一例を示す図である。(a)では、被検査物が塗膜部のみだった場合の検査結果を示す図である。欠陥の示し方は
図15の例と同様である。
【0151】
図16(b)、(c)は被検査物の搬送方向先端部と後端部に非塗膜部が存在している場合の検査結果の一例を示す図である。塗膜部の検査結果の示し方は(a)と同様であるが、非塗膜部は被検査物搬送方向に対する位置関係が示されればよいため、(b)のように対応する部分をグレーハッチングする、若しくは(c)のように開始点と終了点を目印(×印)で示すようにしてもよい。
【0152】
また、
図15及び
図16で得られた各検査結果は、電極製造装置3から情報管理装置2へ送信され、情報管理装置2の表示制御部24によってディスプレイ307にそれぞれ表示されるようにしてもよい。
【0153】
〔第1の実施形態の主な効果〕
以上説明したように本実施形態によれば、電極製造装置3の検査ユニット400は、機能層の表面を撮像するエリアセンサカメラ410、ライン型照明420及びラインセンサカメラを備え、ライン型照明420及びラインセンサカメラを含めた検査手段により行われる機能層の表面に対する検査の検査条件を、エリアセンサカメラ410により撮像された機能層の表面状態に応じて設定する(ステップS14,S18)。これにより、集電体上に設けられた電極合材層上及び集電体上のうちの少なくとも一方に形成された機能層の表面状態に応じて、機能層の表面を検査する検査条件を設定することが可能になる、という効果を奏する。
【0154】
〔第2の実施形態〕
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、電極製造システム1を構成する情報管理装置2及び電極製造装置3の各ハードウエア構成、並びに、各機能構成及び各データテーブルは、第1の実施形態と同様である。そのため、ここではそれらの説明を省略する。
【0155】
<検査ユニットにおける検査処理>>
図17は、第2の実施形態に係る検査処理の一例を示すフローチャートである。なお、以降に示すフローチャートは、本実施形態を説明するための一例であり、これに限らない。なお、ステップS21及びS22に係る各処理は、第1の実施形態で示した
図13におけるステップS11及びS12に係る各処理と同様であるため、その説明を省略する。
【0156】
次に、判断部35は、検査対象が塗装(塗膜)部かを判断する(ステップS23)。具体的には、判断部35は、ステップS22で実行した撮像画像における表面状態の定量化計算を実行後、撮像画像として得られた部分が塗装(塗膜)部であるかを判断する。
【0157】
ここで、塗装(塗膜)部であるかの判断の詳細について説明する。塗装(塗膜)部であるかの判断は、エリアセンサカメラ410の違い若しくは塗装(塗膜)部かパターン印刷部かによって多少変動してもかまわない。まずエリアセンサカメラ410の違いは、例えば、以下の場合によって判断される。
・エリアセンサカメラ410がカラーカメラの場合は、塗装(塗膜)部と塗装(塗膜)部外の色相の違い
・エリアセンサカメラ410が白黒カメラの場合は、塗装(塗膜)部と塗装(塗膜)部外の明度の違い
である。
【0158】
色相の違いとしては、塗装(塗膜)部は白色に近いグレー色から中間色に近いグレー色であるのに対して、塗装(塗膜)外部は金属箔の色(例としては銅色若しくは銀色等)、又は、負極若しくは正極の色(黒色)と、明確な色の差がある。
【0159】
明度の違いとしては、塗装(塗膜)は白色に近いグレー色から中間色に近いグレー色であるのに対して、塗装(塗膜)外部は白色(金属箔の色)、黒色(負極若しくは正極の色)と、明確な明度差がある。
【0160】
次に、塗装(塗膜)部かパターン印刷部かの違いについて下記に説明する。パターンとは、負極若しくは正極上に文字、バーコード、QRコード等が印刷されている部分をいう。上述の切分けは、カラーカメラであるか白黒カメラであるかによらず、エリアセンサカメラ410の撮像画像の平均明度が所定の閾値よりも高い場合(塗膜部リッチな場合)は、塗装(塗膜)部、平均明度が所定の閾値以下の場合(塗装(塗膜)部と負極若しくは正極が混在している場合)は、パターン印刷部と判断する。
【0161】
なお、上述した判断基準は、何らかの条件によって変わることは想定しなくてもよい。
【0162】
続いて、検査対象が塗装(塗膜)部である場合(ステップS23:YES)に、後続の処理となるステップS24乃至S27に係る各処理が実行されるが、これらの処理は、第1の実施形態で示した
図13におけるステップS14乃至S17に係る各処理と同様であるため、その説明を省略する。
【0163】
他方、検査対象が塗装(塗膜)部でない場合(ステップS23:NO)、電極製造装置3は、第2の撮像を停止してステップS27の処理に遷移する(ステップS28)。具体的には、電極製造装置3の制御部300は、判断部35が、検査対象が塗装(塗膜)部でないと判断した場合、検査ユニット400に対してライン型照明420及びラインセンサカメラ430の制御を停止し、撮像及び検査を停止させる。つまり、電極製造装置3は、検査ユニット400に対して、塗装(塗膜)部以外の部分の検査を行わないよう制御する。
【0164】
〔第2の実施形態の主な効果〕
以上説明したように本実施形態によれば、電極製造装置3の制御部300は、判断部35が、検査対象が塗装(塗膜)部でないと判断した場合、検査ユニット400に対してライン型照明420及びラインセンサカメラ430の制御を停止し、撮像及び検査を停止させ、塗装(塗膜)部以外の部分の検査を行わないよう制御する。これにより、電極製造装置3における機能層の表面に対する検査の効率を向上させることが可能になる。
【0165】
〔第3の実施形態〕
次に、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態では、電極製造システム1を構成する情報管理装置2及び電極製造装置3の各ハードウエア構成、並びに、各機能構成及び各データテーブルは、第1の実施形態と同様である。そのため、ここではそれらの説明を省略する。なお、第3の実施形態では、電極製造装置3と、電極製造装置3に専用の有線ケーブル若しくは通信ネットワークを介して接続された情報管理装置2と、を含む電極製造システム1における各処理について説明する。具体的には、情報管理装置2が欠陥に係る検査条件まで決定し、電極製造装置3は、決定された検査条件にしたがって検査手段による検査を実行する処理について説明する。
【0166】
<電極製造システムにおける検査処理>
図18は、第3の実施形態に係る検査処理を示すシーケンス図の一例である。まず、電極製造装置3の検査ユニット400は、第1の撮像手段による撮像処理を行う(ステップS31)。具体的には、検査ユニット400は、集電体320の搬送にあわせて、集電体上に設けられた電極合材層上及び集電体320上のうちの少なくとも一方に形成された機能層の表面を、エリアセンサカメラ410により撮像する。
【0167】
次に、送受信部31は、情報管理装置2に対して、検査条件制御要求を送信する(ステップS32)。これにより、情報管理装置2の送受信部21は、電極製造装置3が送信した検査条件制御要求を受信する。このとき、検査条件制御要求には、電極製造装置3の装置ID、撮像画像データが含まれる。
【0168】
次に、情報管理装置2の条件制御部28は、検査条件の変更/設定、決定を行う(ステップS33)。
【0169】
<<検査処理の詳細>>
図19は、第3の実施形態に係る検査条件の変更/設定、決定処理の一例を示すフローチャートである。まず、取得部23は、撮像画像データを取得する(ステップS33-1)。具体的には、取得部23は、ステップS32で受信した検査条件制御要求に含まれる撮像画像データを、送受信部21を介して取得する。
【0170】
次に、算出処理部26は、撮像画像における表面状態の定量化計算を実行する(ステップS33-2)。具体的には、算出処理部26は、上述したステップS12の処理で用いた機能層の表面の塗膜状態の正常又は異常を切り分ける指標として、
(1)表面撮影写真のざらつき度合を定量化する指標(粒状度)
(2)表面の凹凸形状を定量化する指標(表面粗さ)
のうちのいずれかを使用した定量化計算を行う。なお、(1)及び(2)の詳細についてはすでに第1の実施形態において説明済みのため、説明を省略する。
【0171】
次に、判断部25は、塗装(塗膜)状態は正常かを判断する(ステップS33-3)。具体的には、判断部25は、機能層の表面状態が所定の条件を満たすか否かを判断する。より具体的には、判断部35は、上述した粒状度、表面粗さのうち少なくとも一方を利用して、所定の閾値を超えていた場合に異常(又は正常)と判断する。なお、判断部35による正常若しくは異常、欠陥の判断については、ステップS13で説明した内容と同様であり、二つの解釈のいずれを用いるようにしてもよい。
【0172】
塗膜(塗膜)状態は正常と判断された場合(ステップS33-3:YES)、条件制御部28は、第2の撮像手段による検査条件として検査条件1を設定し(ステップS33-4)、このフローを抜けて処理を終了する。具体的には、条件制御部28は、ステップS32で受信した装置IDを検索キーとして検査条件管理DB2001(
図10参照)を検索することにより、対応する検査条件を読み出す。ここで読み出される検査条件は、変更項目IDで関連付けられた各変更項目名における検査条件1の内容となる。
【0173】
他方、塗膜(塗膜)状態は正常でないと判断された場合(ステップS33-3:NO)、条件制御部28は、第2の撮像手段による検査条件として検査条件1を設定し(ステップS33-5)、このフローを抜けて処理を終了する。具体的には、条件制御部28は、ステップS32で受信した装置IDを検索キーとして検査条件管理DB2001(
図10参照)を検索することにより、対応する検査条件を読み出す。ここで読み出される検査条件は、変更項目IDで関連付けられた各変更項目名における検査条件2の内容となる。
【0174】
図18に戻り、情報管理装置2の送受信部21は、検査条件制御要求に対する応答として、電極製造装置3に対して検査条件制御応答を送信する(ステップS34)。これにより、電極製造装置3の送受信部31は、情報管理装置2が送信した検査条件制御応答を受信する。このとき、検査条件制御応答には、ステップS33で設定した検査条件に係る検査条件データが含まれる。
【0175】
次に、電極製造装置3の検査ユニット400は、第2の撮像手段による撮像処理を行う(ステップS35)。具体的には、検査ユニット400は、集電体320の搬送にあわせて、エリアセンサカメラ410により撮像された所定の領域を含む機能層の表面を、ライン型照明420及びラインセンサカメラ430により撮像し、機能層の表面の検査を行う。
【0176】
次に、検査ユニット400は、欠陥の検出を行う(ステップS36)。具体的には、検査ユニット400は、機能層を含む集電体320の表面上の塗膜に穴が開き電極(電極合材層)がむき出しの状態を示す欠陥を検出する。
【0177】
次に、記憶読出部39は、欠陥データの保存を行う(ステップS37)。具体的には、記憶読出部39は、検出された各欠陥の欠陥発生位置、欠陥の幅、長さ、面積、濃度、欠陥判定(「大」、「中」、「小」)を、欠陥情報管理DB3002(
図12参照)の対応する項目に保存する。記憶読出部39は更に、検出された欠陥の画像データを、記憶部3000の所定領域に欠陥データ(欠陥画像データ)として保存してもよい。
【0178】
次に、生成部37は、検査結果画面データを生成する(ステップS38)。具体的には、生成部37は、
図15又は
図16に示した各検査結果に係る検査結果画面データを生成する。このとき、生成部37は記憶読出部39を介して、記憶部3000の所定の領域に生成した画面データを記憶、保存しておいいてもよい。
【0179】
次に、送受信部31は、検査結果画面データを含む検査結果情報を情報管理装置2に対して送信する(ステップS39)。これにより、情報管理装置2の送受信部21は、電極製造装置3が送信した検査結果情報を受信する。
【0180】
次に、情報管理装置2の表示制御部24は、検査結果をディスプレイ207に表示させる(ステップS40)。具体的には、表示制御部24は、ステップS39で受信した検査結果画面データを情報管理装置2のディスプレイ207に表示させる。なお、表示される検査結果画面データは、
図15又は
図16に示した形式に限らず、利用者に対して適宜変更、最適化されたフォーマットによって表示されてもよい。
【0181】
なお、
図18に示したシーケンス図は一例であり、情報管理装置2において実行される処理内容の範囲は、これに限らない。例えば、情報管理装置2は、上述したステップS36乃至S38までの処理についても、情報管理装置2内部で実行するようにしてもよい。つまり、ステップS35の処理において、電極製造装置3から撮像画像を取得して、その後の欠陥検出処理、欠陥データの保存処理、検査結果画面データの生成処理及び検査結果画面データの表示処理を行うようにしてもよい。
【0182】
本実施形態に係る電極製造システムでは、例えば、上述したステップS32及びS34の各処理が通信ネットワークを介して実行される場合、情報管理装置2と電極製造装置3との間に他の装置等が存在してもよい。つまり、情報管理装置2と電極製造装置3との間で送受信される各情報(データ)は、一度他の装置等を介して送受信されるような構成であってもよい。上述した構成は、情報管理装置2と電極製造装置3との間に他の処理ステップが存在した場合でも適用することが可能である。
【0183】
〔第3の実施形態の主な効果〕
以上説明したように本実施形態によれば、情報管理装置2は、電極製造装置3のエリアセンサカメラ410で撮像された撮像画像に基づいて検査条件の変更、決定を行い、決定した検査条件データを電極製造装置3に送信する。これにより、電極製造装置3は、検査条件の変更、決定に係る処理負担を電極製造システム1に分散させることが可能になる。
【0184】
〔第4の実施形態〕
次に、第4の実施形態について説明する。第4の実施形態では、電極製造システム1を構成する情報管理装置2のハードウエア構成、並びに、機能構成及び各データテーブルは、第1の実施形態と同様である。そのため、ここではそれらの説明を省略する。なお、電極製造装置3のハードウエア構成において、下記に示す通り一部追加される構成があるが、追加される部分以外の構成、並びに機能構成及び各データテーブルは、第1の実施形態と同様であるため、それらの説明を省略する。
【0185】
図20は、第4の実施形態に係る電極製造装置の全体構成(側面図)の一例を示す図である。
図20では、検査ユニット400に対して-X軸方向(集電体320の搬送方向下流側)に更に、液体吐出ヘッド355、光源365及びヒータ375を設けた構成が示されている。つまり、検査ユニット400は、集電体320上に設けられた電極合材層上及び集電体320上のうちの少なくとも一方に形成された機能層に対して、機能層の表面を検査する。そして、電極製造装置3は、機能層の表面に対する検査結果として所定の条件を満たさなかった部分に対して、液体吐出ヘッド355、光源365及びヒータ375を用いて再度機能層を形成させる機構を備えている。
【0186】
〔第4の実施形態の主な効果〕
以上説明したように本実施形態によれば、電極製造装置3は、機能層の表面に対する検査結果として所定の条件を満たさなかった部分に対して、液体吐出ヘッド355、光源365及びヒータ375を用いて再度機能層を形成させる。これにより、被検査物としての電極合材層上及び集電体320上のうちの少なくとも一方に形成された機能層の検査結果で所定の条件を満たさない結果が出た場合にも、検査ユニット400の下流側(後段)に配置された液体吐出ヘッド355、光源365及びヒータ375によって、欠陥等が発生した部分に対して再度機能層を形成させることが可能になる。
【0187】
更に、
図20のような構成を備えることにより、集電体320の一度の搬送によって、形成された機能層の欠陥を補正することができる。これにより、電極の生産性を向上させることも可能になる。
【0188】
〔光源を搭載しない場合の電極製造装置〕
<電極製造装置の全体構成例>
図21は、電極製造装置の全体構成(側面図)の他の一例を示す図である。
【0189】
図21に示すように、電極製造装置100は、繰出部1001と、電極印刷部1002と、硬化部1003と、乾燥部1004と、巻取部1005と、を備える。
【0190】
繰出部1001は、ロール状に巻かれた電極基体Wを保持する繰出ローラ1001aを備える。繰出部1001は、繰出ローラ1001aを、図中、反時計まわり方向に回転させ、電極基体Wを電極印刷部1002側へ繰り出す。なお、
図20において、Xは電極基体Wの搬送方向を示し、Yは搬送方向Xと直交する方向を示す。
【0191】
電極印刷部1002は、複数の液体付与部1020a,1020b,1020c,1020dと、クリーニングシステム1080と、を備える。液体付与部1020a,1020b,1020c,1020dは、それぞれ同じ構成であるため、特に区別しない場合には、液体付与部1020と総称表記する。
【0192】
電極印刷部1002は、繰出部1001から繰り出された電極基体Wに対して液体付与部1020により液体を付与する。電極印刷部1002において、液体付与部1020は、液体を付与するためのノズルを有するヘッドを備え、各ヘッドは、ノズルから付与される液体の付与(吐出)方向が、電極基体Wに向くように配置されている。液体付与部1020で用いる液体は、液体付与部毎で異なる種類の液体を用いてもよく、また、すべての液体付与部1020で同じ種類の液体を用いてもよい。例えば、電極基体Wに多孔質層を形成する場合、一つの液体付与部1020により多孔質層を形成しようとすると、層が不均一となり、電気化学素子としたときの特性にムラが生じる懸念がある。このような場合、複数の液体付与部1020で同じ種類の液体(インク)を用いることで、層を均一に形成することが可能となる。
【0193】
また、樹脂を骨格とした多孔質構造を含む多孔質層に代えて、無機酸化物粒子を含む多孔質層や、樹脂粒子を含む多孔質層、活物質を含む層や固体電解質を含む層を形成してもよい。ここで、無機酸化物粒子としては、例えばアルミナやシリカなどが挙げられる。但し、液体付与部の数は4個に限定されるものではなく、任意の個数であってもよい。クリーニングシステム1080は、液体付与部1020のそれぞれが有するヘッドに対してクリーニング動作を行い、ヘッドの液体付与状態を維持する。ここで、電極印刷部1002は「液体付与装置」の一例である。
【0194】
樹脂を骨格とした多孔質構造を含む層を形成するために用いられる液体が、重合性化合物(モノマー)を含む場合、硬化部1003は、電極基体Wに付与された液体に対し、紫外線を照射することで重合性化合物を重合させ、液体を硬化させる。硬化部1003は、光源1003a,1003bを備える。光源1003a,1003bは、電極基体Wに付与された液体に紫外線を照射して、液体層を樹脂層に硬化させる硬化機能を有する。光源1003a,1003bとしては、例えば、水銀ランプ、タングステンランプ、アーク灯、エキシマランプ、エキシマレーザ、半導体レーザ、高出力UV-LED、YAGレーザ、レーザと非線形光学結晶とを組み合わせたレーザシステム、高周波誘起紫外線発生装置、EB照射装置、X線照射装置等が挙げられる。このうち、システムを簡便化できる観点から、光源1003a,1003bは、高周波誘起紫外線発生装置、高圧又は低圧水銀ランプや半導体レーザ等であることが好ましい。また、光源1003a,1003bは、集光用ミラーや掃引光学系を備えてもよい。
【0195】
乾燥部1004は、例えば、電極基体Wに対して温風を送り、液体を乾燥させることで、電極基体Wに連続した一様な膜を形成する。乾燥部4は、ヒータ1004a,1004b,1004cを備える。ヒータ1004a~1004cは、電極基体Wに付与された液体を加熱して液体中の残溶媒を乾燥させ、液体の硬化を促進したり乾燥させたりする。ヒータ1004a~1004cは、硬化、乾燥、あるいは加熱としての機能を有する。ヒータ4a~4cは、例えば、赤外ランプ、発熱体を内蔵したローラ(熱ローラ)、温風又は熱風を吹き出すブロワ、水蒸気などを用いたボイラー型熱風を導入した炉等である。なお、本実施形態においては、硬化部3と乾燥部4の両方を備える形態について説明するが、いずれか一方を備える形態であってもよい。例えば、液体が重合性化合物を含まない場合は、硬化部1003は備えず、乾燥部1004のみを備える形態とすることができる。ここで、硬化部1003及び乾燥部1004は「後処理装置」の一例である。
【0196】
〔その他の実施形態〕
次に、その他の実施形態について
図22乃至
図27を用いて説明する。
【0197】
<転写方式を採用した印刷部>
図22は、転写方式を採用した印刷部の一例を示す構成図であり、(a)は、ドラム状の中間転写体を用いた印刷部を示す図、(b)は、無端ベルト状の中間転写体を用いた印刷部を示す図である。
【0198】
図22(a)に示した印刷部400´は、中間転写体4001を介して基材に液体組成物を転写することで基材の表面に機能層を形成する、インクジェットプリンタである。
【0199】
印刷部400´は、インクジェット部420、転写ドラム4000、前処理ユニット4002、吸収ユニット4003、加熱ユニット4004及び清掃ユニット4005を備える。
【0200】
インクジェット部420は、複数のヘッド101を保持したヘッドモジュール422を備える。ヘッド101は、転写ドラムに4000に支持された中間転写体4001に液体インクを吐出し、中間転写体4001上にインク層を形成する。各ヘッド101は、ラインヘッドであり、使用可能な最大サイズの基材の記録領域の幅をカバーする範囲にノズルが配列されている。ヘッド101は、その下面に、ノズルが形成されたノズル面を有しており、ノズル面は、微小間隙を介して中間転写体4001の表面と対向している。本実施形態の場合、中間転写体4001は円軌道上を循環移動する構成であるため、複数のヘッド101は、放射状に配置される。
【0201】
転写ドラム4000は、圧胴621と対向し、転写ニップ部を形成する。前処理ユニット4002は、ヘッド101によるインクの吐出前に、例えば、中間転写体4001上に、インクの粘度を高めるための反応液を付与する。吸収ユニット4003は、転写前に、中間転写体4001上のインク層から液体成分を吸収する。加熱ユニット4004は、転写前に、中間転写体4001上のインク層を加熱する。インク層を加熱することで、インク層中の樹脂が溶融し、基材への転写性が向上する。清掃ユニット4005は、転写後に中間転写体4001上を清掃し、中間転写体4001上に残留したインクやごみ等の異物を除去する。
【0202】
圧胴621の外周面は、中間転写体4001に圧接しており、圧胴621と中間転写体4001との転写ニップ部を基材が通過するときに、中間転写体4001上のインク層が基材に転写される。なお、圧胴621は、その外周面に基材の先端部を保持するグリップ機構を少なくとも一つ備えた構成としてもよい。
【0203】
図22(b)に示した印刷部400´´は、中間転写ベルト4006を介して基材に液体組成物を転写することで基材の表面に機能層を形成する、インクジェットプリンタである。
【0204】
印刷部400´´は、インクジェット部420に設けた複数のヘッド101からインク滴を吐出して、中間転写ベルト4006の外周表面上にインク層を形成する。中間転写ベルト4006に形成されたインク層は、乾燥ユニット4007によって乾かされ、インク層は中間転写ベルト4006上で膜化する。
【0205】
中間転写ベルト4006が転写ローラ622と対向する転写ニップ部において、中間転写ベルト4006上の膜化したインク層は基材に転写される。転写後の中間転写ベルト4006の表面は、清掃ローラ4008によって清掃される。
【0206】
中間転写ベルト4006は、駆動ローラ4009a、対向ローラ4009b、複数(本例では4つ)の形状維持ローラ4009c,4009d,4009e,4009f、及び複数(本例では4つ)の支持ローラ4009gに架け渡され、図中矢印方向に移動する。ヘッド101に対向して設けられる支持ローラ4009gは、ヘッド101からインク滴が吐出される際の中間転写ベルト4006の引張状態を維持する。
【0207】
<液体吐出ヘッドの一例を示す概略分解図>
次に、
図23乃至
図25を用いて液体吐出ヘッドの構成を説明する。
図23は、液体吐出ヘッドの一例を示す概略分解図、
図24は、液体吐出ヘッドの流路構成の一例を示す説明図、
図25は、液体吐出ヘッドの流路構成の一例を示す断面斜視図である。ヘッド3601は、ノズル板3510、流路板(個別流路部材)3520、振動板部材3530、共通流路部材3550、ダンパ部材3560、フレーム部材3580及び駆動回路3604を実装した基板(フレキシブル配線基板)3605などを備える。
【0208】
ノズル板3510は、インクを吐出する複数のノズル3537を備え、複数のノズル3537は、ノズル板短手方向及びこれと直交するノズル板長手方向に二次元状に並んで配置されている。
【0209】
流路板3520には、複数のノズル3537に各々連通する複数の液室(個別圧力室)3526と、複数の液室3526に各々通じる複数の供給流路(個別供給流路)3527及び回収流路(個別回収流路)3528とが設けられている。なお、以降の説明では便宜上、一つの液室3526と、当該液室3526に通じる供給流路3527及び回収流路3528と、を併せて個別流路3525とも称する。
【0210】
振動板部材3530は、液室3526の変形が可能な壁面である振動板3535を形成し、振動板3535には圧電素子3536が一体に設けられている。振動板部材3530には、供給流路3527に通じる供給側開口3532と、回収流路3528に通じる回収側開口3533と、が形成されている。圧電素子3536は、振動板3535を変形させて液室26内のインクを加圧する。
【0211】
なお、流路板3520と振動板部材3530は、別部材であることに限定されるものではない。例えばSOI(Silicon on Insulator)基板を使用して流路板3520及び振動板部材3530を同一部材で一体に形成することも可能である。
【0212】
つまり、シリコン基板上に、シリコン酸化膜、シリコン層、シリコン酸化膜の順に成膜されたSOI基板を使用し、シリコン基板を流路板3520とし、シリコン酸化膜、シリコン層及びシリコン酸化膜で振動板3535を形成できる。この構成では、SOI基板のシリコン酸化膜、シリコン層及びシリコン酸化膜の層構成が振動板部材3530となる。このように、振動板部材3530は流路板3520の表面に成膜された材料で構成されるものを含む。
【0213】
共通流路部材3550は、2以上の供給流路3527に通じる複数の共通供給流路支流52と、2以上の回収流路3528に通じる複数の共通回収流路支流3553とを、ノズル板長手方向において交互に隣接して形成している。共通流路部材3550には、供給流路3527の供給側開口3532と共通供給流路支流3552を通じる供給口3554となる貫通孔と、回収流路3528の回収側開口3533と共通回収流路支流3553を通じる回収口3555となる貫通孔が形成されている。
【0214】
共通流路部材3550は、複数の共通供給流路支流3552に通じる1又は複数の共通供給流路本流3556と、複数の共通回収流路支流3553に通じる1又は複数の共通回収流路本流3557を形成している。
【0215】
ダンパ部材3560は、共通供給流路支流3552の供給口3554と対面する供給側ダンパ3562と、共通回収流路支流3553の回収口3555と対面する回収側ダンパ3563を備える。共通供給流路支流3552及び共通回収流路支流3553は、同じ部材である共通流路部材3550に交互に並べて配列された溝部を、ダンパ部材3560の供給側ダンパ3562又は回収側ダンパ3563で封止することで構成している。なお、ダンパ部材3560のダンパ材料としては、有機溶剤に強い金属薄膜又は無機薄膜を用いることが好ましい。ダンパ部材3560の供給側ダンパ3562、回収側ダンパ3563の部分の厚みは10[μm]以下が好ましい。
【0216】
共通供給流路支流3552と共通回収流路支流3553の内壁面、及び共通供給流路本流3556と共通回収流路本流3557との内壁面には、流路内を流れるインクに対して内壁面を保護するための保護膜が形成されている。例えば、共通供給流路支流3552と共通回収流路支流3553との内壁面、及び共通供給流路本流3556と共通回収流路本流3557との内壁面は、Si基板が熱処理されることで、表面に酸化シリコン膜が形成される。酸化シリコン膜の上にはインクに対してSi基板の表面を保護するタンタルシリコン酸化膜が形成される。
【0217】
フレーム部材3580は、その上部に供給ポート3581と排出ポート3582を備える。供給ポート3581は共通供給流路本流3556にインクを供給し、排出ポート3582は共通回収流路本流3557より排出されるインクを排出する。
【0218】
上述のようにヘッド3601は、インクを吐出するノズル3537、ノズル3537に通じる液室3526、液室3526にインクを供給する供給流路3527、及び液室3526からインクを回収する回収流路3528を有する。ここで、ヘッド3601は「液体吐出ヘッド」の一例、液室3526は「液室」の一例、供給流路3527は「供給流路」の一例、回収流路3528は「回収流路」の一例である。
【0219】
なお、ヘッド3601の構成として、ノズル板3510のノズル面(ノズル3537が形成された面)の形状は長方形に限らず、台形、ひし形、平行四辺形など、長方形以外の形状であってもよい。その一例を、
図26及び
図27を用いて説明する。
図26は、平行四辺形状のノズル板を備えたヘッドの一例を示す構成図、
図27は、
図26のヘッドを複数並べた状態を示す図である。ヘッド1001Rは、ノズル板短手方向に対して角度θ傾斜した外形(稜線)を有し、ヘッド1001Rの液体吐出部1101R及びノズル板1010Rもこの稜線に沿う形状に形成されている。つまり、液体吐出部1101Rは、外形形状が平行四辺形をしたノズル板1010Rを有し、ノズル板1010Rには複数のノズルが規則的に二次元状に配列されている。ノズルの配列は、例えば、N個のノズルによって1列のノズル列が構成され、このノズル列を、上述の稜線と平行に、且つノズル板短手方向と直交するノズル板長手方向に複数列設けた配列となっている。
【0220】
上述した構成のヘッド101Rは、
図26に示すように複数のヘッド1001Ra,1001Rbをノズル板長手方向に1列に並べることが可能であり、これにより、使用する基材の記録幅に合わせて、所望の長さのラインヘッドを得ることができる。
【0221】
実施形態に係る液体吐出装置は、電極製造装置に限定されるものではない。例えば、実施形態に係る液体吐出装置は、用紙等の記録媒体に画像を形成する画像形成装置等であってもよい。
【0222】
〔実施形態の補足〕
上述した実施形態の各機能は、一又は複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」とは、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウエアによって各機能を実行するようプログラミングされたデバイスを含むものとする。このデバイスとは、例えば、プロセッサ、上記で説明した各機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(digital signal processor)、FPGA(field programmable gate array)、SOC(System on a chip)、GPU(Graphics Processing Unit)、及び従来の回路モジュール等をいう。
【0223】
これまで本発明の一実施形態に係る電極検査装置、電極製造装置、電極製造システム、電極検査方法、プログラム及び蓄電デバイス製造装置について説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態の追加、変更又は削除等、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。なお、上述した各構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。
【0224】
■まとめ■
本発明に係る態様は、例えば、以下のとおりである。
【0225】
<第1態様>
第1態様としての検査ユニット400(電極検査装置の一例。以下省略)は、集電体320上に設けられた電極合材層上及び集電体320上のうちの少なくとも一方に形成された機能層を検査し、機能層の表面を撮像するエリアセンサカメラ410(第1の撮像手段の一例。以下省略)と、機能層の表面状態を検査するライン型照明420(検査手段の一例。以下省略)及びラインセンサカメラ430(第2の撮像手段の一例、検査手段の一例。以下省略)と、ライン型照明420及びラインセンサカメラ430による機能層の表面に対する検査条件を、エリアセンサカメラ410により撮像された機能層の表面状態に応じて設定する撮像制御部34、画像処理部36及び照射制御部43の少なくとも一つ(制御手段の一例。以下省略)と、を備える。
【0226】
第1態様によれば、集電体上に設けられた電極合材層上及び集電体上のうちの少なくとも一方に形成された機能層の表面状態に応じて、機能層の表面を検査する検査条件を設定することが可能になる。
【0227】
<第2態様>
第2態様としての検査ユニット400の撮像制御部34は、第1態様において、画像処理部36及び照射制御部43の少なくとも一つは、第1態様において、エリアセンサカメラ410により撮像された機能層の領域がライン型照明420及びラインセンサカメラ430で検査される検査位置に到達するまでの間において、検査条件を設定する。
【0228】
第2態様によれば、第1態様による効果に加えて、機能層の表面の状態に応じた検査条件を適確なタイミングで設定することが可能になる。
【0229】
<第3態様>
第3態様としての検査ユニット400は更に、第1態様又は第2態様において、ラインセンサカメラ430と、ラインセンサカメラ430が機能層の表面を撮像する際に機能層の表面に光を照射するライン型照明420(照射手段の一例、検査手段の一例)と、を含み、撮像制御部34、画像処理部36及び照射制御部43の少なくとも一つは、検査条件として、ラインセンサカメラ430により機能層の表面が撮像される際にライン型照明420から照射される光の照射強度を含む条件を設定する。
【0230】
第3態様によれば、第1態様による効果の具体的な効果として、機能層の表面における異常又は欠陥の検出頻度を抑制することが可能になる。
【0231】
<第4態様>
第4態様としての検査ユニット400は更に、第1態様又は第2態様において、ラインセンサカメラ430と、ラインセンサカメラ430が機能層の表面を撮像する際に機能層の表面に光を照射するライン型照明420(照射手段の一例、検査手段の一例)と、を含み、撮像制御部34、画像処理部36及び照射制御部43の少なくとも一つは、検査条件として、エリアセンサカメラ410の撮像解像度を含む条件を設定する。
【0232】
第4態様によれば、第1態様による効果の具体的な効果として、機能層の表面における異常又は欠陥の検出における画像処理を間に合わせることが可能になる。
【0233】
<第5態様>
第5態様としての検査ユニット400は更に、第1態様又は第2態様において、ラインセンサカメラ430と、ラインセンサカメラ430が機能層の表面を撮像する際に機能層の表面に光を照射するライン型照明420(照射手段の一例、検査手段の一例)と、を含み、撮像制御部34、画像処理部36及び照射制御部43の少なくとも一つは、検査条件として、エリアセンサカメラ410による撮像で得られた撮像画像に対する画像処理条件を含む条件を設定する。
【0234】
第5態様によれば、第1態様による効果の具体的な効果として、機能層の表面における異常又は欠陥の検出における画像処理を間に合わせることが可能になる。
【0235】
<第6態様>
第6態様としての検査ユニット400は、第1態様又は第5態様のいずれかにおいて、エリアセンサカメラ410が、機能層の表面の所定の領域を撮像するエリアセンサカメラであり、ラインセンサカメラ430が、機能層の表面におけるラインセンサカメラ430の解像度に応じた所定の幅を撮像するラインセンサカメラである。
【0236】
第6態様によれば、集電体320が高速搬送されている場合でも、エリアセンサカメラ410で撮像した画像を撮像することが可能になる。
【0237】
<第7態様>
第7態様としての電極製造装置3(電極製造装置の一例。以下省略)は、集電体320上に設けられた電極合材層上及び集電体320上のうちの少なくとも一方に機能層を形成する層形成部330(層形成手段の一例。以下省略)と、第1態様乃至第6態様のいずれかにおける検査ユニット400と、を備える。
【0238】
第7態様によれば、第1態様と同様の効果を奏する電極製造装置3を提供することが可能になる。
【0239】
<第8態様>
第8態様としての電極製造装置3は更に、第7態様において、機能層の表面状態が所定の条件を満たすか否かを判断する判断部35(判断手段の一例。以下省略)を備え、判断部35により、機能層の表面状態が所定の条件を満たさないと判断された場合に、撮像制御部34、画像処理部36及び照射制御部43の少なくとも一つは、検査条件を設定する。
【0240】
第8態様によれば、第1態様による効果の具体的な効果として、機能層の表面における異常又は欠陥の検出頻度を抑制すること、画像処理を間に合わせることが可能となる。
【0241】
<第9態様>
第9態様としての電極製造装置3は、第8態様において、判断部35によって、電極合材層上及び集電体320上のうちの少なくとも一方に機能層が形成されていないと判断された場合に、判断部35は、ライン型照明420及びラインセンサカメラ430による機能層の表面状態の検査を停止する。
【0242】
第9態様によれば、検査ユニット400における処理負荷を軽減させることが可能になる。
【0243】
<第10態様>
第10態様としての電極製造装置3の判断部35は、第8態様又は第9態様において、エリアセンサカメラ410により撮像される機能層の表面における色相又は明度の違いに応じて、機能層の表面状態を判断する。
【0244】
第10態様によれば、機能層の表面における異常又は欠陥の検出をより細かな条件に応じて行うことが可能になる。
【0245】
<第11態様>
第11態様としての電極製造装置3の検査ユニット400は更に、第7態様乃至第10態様のいずれかにおいて、ライン型照明420及びラインセンサカメラ430により検査された機能層の表面状態に対する検査結果のうち、異常又は欠陥が発生した位置の座標、及び異常又は欠陥の程度を含む検査結果を生成する生成部37(生成手段の一例。以下省略)を備える。
【0246】
第11態様によれば、利用者に対して具体的な検査結果を生成することが可能になる。
【0247】
<第12態様>
第12態様としての電極製造システム1(電極製造システムの一例。以下省略)は、
集電体上に設けられた電極合材層上及び集電体320上のうちの少なくとも一方に形成された機能層を検査する検査ユニット400(電極検査装置の一例。以下省略)と、電極合材層上及び集電体320上のうちの少なくとも一方に機能層を形成する層形成部330(層形成手段の一例。以下省略)と、を有する電極製造装置3(電極製造装置の一例。以下省略)と、電極製造装置3と通信可能な情報管理装置2(情報管理装置の一例。以下省略)と、を含み、
電極製造装置3は、
機能層の表面を撮像するエリアセンサカメラ410(第1の撮像手段の一例。以下省略)と、機能層の表面状態を検査するライン型照明420及びラインセンサカメラ430(検査手段の一例。以下省略)と、エリアセンサカメラ410により撮像された撮像画像を、情報管理装置2に対して送信する送受信部31(第1の送信手段の一例。以下省略)と、を備え、
情報管理装置2は、
電極製造装置3が送信した撮像画像を受信する送受信部21(第1の受信手段の一例。以下省略)と、受信した撮像画像に基づいて、ライン型照明420及びラインセンサカメラ430による検査条件を設定する条件制御部28(条件制御手段の一例。以下省略)と、検査条件を電極製造装置3に対して送信する送受信部21(第2の送信手段の一例。以下省略)と、を備え、
電極製造装置3は更に、
情報管理装置2が送信した検査条件を受信する送受信部31(第2の受信手段の一例。以下省略)と、を備え、ライン型照明420及びラインセンサカメラ430は、受信した検査条件に基づいて、機能層の表面状態を検査する。
【0248】
第12態様によれば、第1態様と同様に、集電体上に設けられた電極合材層上及び集電体上のうちの少なくとも一方に形成された機能層の表面状態に応じて、機能層の表面を検査する検査条件を設定することが可能になる。
【0249】
<第13態様>
第13態様としての検査ユニット400(電極検査装置の一例。以下省略)が実行する検査方法は、
検査ユニット400が、集電体320上に設けられた電極合材層上及び集電体320上のうちの少なくとも一方に形成された機能層を検査するものであって、機能層の表面を撮像する第1の撮像ステップと、機能層の表面状態を検査する検査ステップと、検査ステップによる機能層の表面に対する検査条件を、第1の撮像ステップにより撮像された機能層の表面状態に応じて設定する制御ステップと、を実行する。
【0250】
第13態様によれば、第1態様と同様に、集電体上に設けられた電極合材層上及び集電体上のうちの少なくとも一方に形成された機能層の表面状態に応じて、機能層の表面を検査する検査条件を設定することが可能になる。
【0251】
<第14態様>
第14態様としての検査ユニット400(電極検査装置の一例。以下省略)に実行させるプログラムは、機能層の表面を撮像する第1の撮像ステップと、機能層の表面状態を検査する検査ステップと、検査ステップによる機能層の表面に対する検査条件を、第1の撮像ステップにより撮像された機能層の表面状態に応じて設定する制御ステップと、を実行させる。
【0252】
第14態様によれば、第1態様と同様に、集電体上に設けられた電極合材層上及び集電体上のうちの少なくとも一方に形成された機能層の表面状態に応じて、機能層の表面を検査する検査条件を設定することが可能になる。
【0253】
<第15態様>
第15態様としての蓄電デバイス製造装置は、第7態様乃至第11態様のいずれかにおいて記載の電極製造装置3(電極製造装置の一例。以下省略)を有する。
【0254】
第15態様によれば、第1態様と同様に、集電体上に設けられた電極合材層上及び集電体上のうちの少なくとも一方に形成された機能層の表面状態に応じて、機能層の表面を検査する検査条件を設定する蓄電デバイス製造装置を提供することが可能になる。
【符号の説明】
【0255】
1 電極製造システム
2 情報管理装置
3 電極製造装置
21 送受信部(第2の送信手段の一例、第1の受信手段の一例)
26 算出処理部(算出処理手段の一例)
28 条件制御部(条件制御手段の一例)
31 送受信部(第1の送信手段の一例、第2の受信手段の一例)
32 計測部(計測手段の一例)
33 受付取得部(受付手段の一例、取得手段の一例)
34 撮像制御部(制御手段の一例)
35 判断部(判断手段の一例)
36 画像処理部(制御手段の一例)
37 生成部(生成手段の一例)
39 記憶読出部(記憶読出手段の一例)
40 層形成制御部(層形成制御手段の一例)
43 照射制御部(制御手段の一例)
330 層形成部(層形成手段の一例)
380 センサ(検出手段の一例)
390 操作部(操作手段の一例)
400 検査ユニット(電極検査装置の一例)
410 エリアセンサカメラ(第1の撮像手段の一例)
420 ライン型照明(照射手段の一例、検査手段の一例)
430 ラインセンサカメラ(第2の撮像手段の一例、検査手段の一例)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0256】
【特許文献1】特開2004-354226号公報
【特許文献2】特許第3953026号公報