(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132234
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】電解質分析装置、及び電解質分析装置の異常判定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/416 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
G01N27/416 366D
G01N27/416 351A
G01N27/416 351J
G01N27/416 353Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042940
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小貫 明子
(72)【発明者】
【氏名】三宅 雅文
(57)【要約】
【課題】イオン選択電極の取付異常を判定可能な電解質分析装置とその取付異常判定方法を提供する。
【解決手段】試料が送液される孔を有する電極と、電極の孔と接続され、電極への試料の送液及び/又は電極からの試料を排出するための流路と、制御部を備え、電極内に送液される試料のイオン濃度を測定する電解質分析装置において、前記流路を通過するように超音波又は光を照射する照射部と、流路を通過した超音波又は光を検出する検出部を有し、制御部は、電極取り付け後の検出部により検出したデータに基づき、電極の取付異常を判定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料が送液される孔を有する複数の電極を組み合わせてなる電極群と、
前記電極の孔と接続され、前記電極への試料の送液及び/又は前記電極からの試料を排出するための流路と、
前記流路を通過する超音波又は光を照射する照射部と、
前記流路を通過した超音波又は光を検出する検出部と、
前記検出部の検出出力に従い、前記電極群の取付異常を判定する判定部と
を備えたことを特徴とする電解質分析装置。
【請求項2】
前記照射部は前記流路の一端に配置され、前記検出部は前記流路の他端に配置されている、請求項1に記載の電解質分析装置。
【請求項3】
前記照射部及び前記検出部は、前記流路の一端の同じ側に配置され、前記流路の他端には前記流路を通過した超音波又は光を反射する反射板を有する、請求項1に記載の電解質分析装置。
【請求項4】
前記流路の一端の同じ側に配置された前記照射部及び前記検出部と、前記流路の一端との間にハーフミラーを有する、請求項3に記載の電解質分析装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記検出部により検出した超音波又は光の強度によって前記電極群の取付異常を判定する、請求項1~4のいずれか一項に記載の電解質分析装置。
【請求項6】
前記判定部は、前記検出部により検出した超音波又は光の照射面積によって前記電極群の取付異常を判定する、請求項1~4のいずれか一項に記載の電解質分析装置。
【請求項7】
前記判定部は、前記検出部により検出した超音波又は光の照射位置の形状に基づき前記複数の電極のずれの方向を判定する、請求項1~4のいずれか一項に記載の電解質分析装置。
【請求項8】
前記照射部はレーザ光源を有し、前記検出部はイメージセンサを有する、請求項1~4のいずれか一項に電解質分析装置。
【請求項9】
前記判定部は、前記電極群の取付異常の報知に基づく前記電極の取付け回数が所定の閾値以上となったか否かを判定し、表示部を介してユーザに前記電極群の交換を促す、請求項1~4のいずれか一項に記載の電解質分析装置。
【請求項10】
電極群を形成する複数の電極に形成され試料が送液される孔に、前記電極への前記試料の送液又は排出のための流路を接続するステップと、
前記流路に超音波又は光を照射すると共に、前記流路を通過した超音波又は光を検出するステップと、
前記超音波又は光の検出の結果に従い、前記電極群の取付異常を判定するステップと
を備えたことを特徴とする、電解質分析装置の異常判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料中の電解質成分を分析する電解質分析装置、及びその異常判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電解質分析装置は、血液や尿などの試料(生体試料)に含まれるナトリウム、カリウム、塩化物等の電解質成分を分析する装置である。多くの電解質分析装置は、特定のイオンの濃度に応じた電位を生じるイオン選択電極(ISE:Ion Selective Electrode)と基準電位を生じる比較電極との間の電位差を測定するよう構成されている。検出した電位差により、試料中の電解質成分の濃度が測定される。現在製造販売されている電解質分析装置においては、複数の電解質成分を同一の試料から測定するため、各電解質成分を検出する各電極が一体に接続されている構成が一般的である(特許文献1、2参照)。
【0003】
電解質分析装置において、電極同士を接続する際に、できるだけ孔のずれが生じないようにする必要がある。しかし、従来の電解質分析装置では、複数の電極間の孔のずれを完全に無くすことは困難である。そこで、孔のずれを簡易に検知することが可能な電解質分析装置が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-18141号公報
【特許文献2】特開2011-158258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、イオン選択電極の取付異常を判定可能な電解質分析装置、及び異常判定方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、試料が送液される孔を有する電極と、前記電極の孔と接続され、前記電極への試料の送液及び/又は前記電極からの試料を排出するための流路と、前記流路を通過する超音波又は光を照射する照射部と、前記流路を通過した超音波又は光を検出する検出部と、前記検出部の検出出力に従い、前記電極の取付異常を判定する判定部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、イオン選択電極の取り付け異常を判定可能な電解質分析装置とその取り付け異常判定方法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】本実施の形態の電解質分析装置1000に備えられるイオン選択性電極ISEの構造の一例を示す斜視図である。
【
図1B】本実施の形態の電解質分析装置1000に備えられるイオン選択性電極ISEの構造の一例を示す斜視図である。
【
図1C】本実施の形態の電解質分析装置1000に備えられるイオン選択性電極ISEの連結構造の一例を示す斜視図である。
【
図1D】本実施の形態の電解質分析装置1000の全体構成を示している概略図である。
【
図2】実施の形態の電解質分析装置の異常判定機構の構成例を示す図である。
【
図3】実施の形態の第1変形例の電解質分析装置の異常判定機構の構成例を示す図である。
【
図4】実施の形態の第2変形例の電解質分析装置の異常判定機構の構成例を示す図である。
【
図5】実施の形態の電解質分析装置における取付異常判定の手順を説明するフローチャートである。
【
図6】電極の取付が正常に行われたことを報知する画面の一例(画面例1)を示す図である。
【
図7】電極取付異常、及び電極流路の閉塞を報知する画面の一例(画面例2)を示す図である。
【
図8】電極取付異常、及び電極のずれ方向を報知する画面の一例(画面例3)を示す図である。
【
図9】電極取付異常を検知し電極のずれを通知する画面の一例(画面例4)を示す図である。
【
図10】電極取付異常を検知し電極交換を通知する画面例の一例(画面例5)を示す図である。
【
図11】光を照射した場合の出射光強度による異常判定方法の一例(画面例6)を示す図である。
【
図12】光を照射した場合の出射光像面積の異常時の面積減少の一例を示す図である。
【
図13】光を照射した場合の出射光像形状による電極のずれ方向の判定方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本実施形態について説明する。添付図面では、機能的に同じ要素は同じ番号で表示される場合もある。なお、添付図面は本開示の原理に則った実施形態と実装例を示しているが、これらは本開示の理解のためのものであり、決して本開示を限定的に解釈するために用いられるものではない。本明細書の記述は典型的な例示に過ぎず、本開示の特許請求の範囲又は適用例を如何なる意味においても限定するものではない。
【0010】
本実施形態では、当業者が本開示を実施するのに十分詳細にその説明がなされているが、他の実装・形態も可能で、本開示の技術的思想の範囲と精神を逸脱することなく構成・構造の変更や多様な要素の置き換えが可能であることを理解する必要がある。従って、以降の記述をこれに限定して解釈してはならない。
【0011】
以下、本実施の形態の電解質分析装置1000を
図1A~Dを参照して説明する。まず、
図1A~
図1Cを参照して、電解質分析装置において用いられるイオン選択電極ISEの構成例を説明する。
図1A、
図1Bは一種類のイオン濃度を測定する単体のイオン選択電極ISEの構造例を示しており、
図1Cは、単体のイオン選択電極ISEを複数(図示の例は3つ)連結した状態(イオン選択電極群ISEG)の構造の例を示している。また、
図1Dは、本実施の形態の電解質分析装置1000の全体構成を示している。
【0012】
図1A、
図1Bに示すように、本実施の形態のイオン選択電極ISEは、電極本体8を備え、この電極本体8を貫通し測定流路となる孔1を有する。その孔1内には検出部となる応答膜(図示せず)が設けられる。銀線4は
図1では図示しない電圧計と接続される。また、電極本体8の表面には、複数のイオン選択電極ISEを互いに連結するために、接続時に電極同士を噛み合わせるための接続凸部2、接続凸部3、接続凹部5、接続凹部6などの凹凸部を有し得る。これらの凹凸部は電極の接続のための一手段であり、これらに限定されるものではない。イオン選択性電極ISEとしては、例えばフローセル型イオン選択性電極を用いることができる。1の装置中で連結されるイオン選択性電極ISEの数は、測定対象となるイオン種の数に応じて変更することができる。また、イオン選択性電極ISEは全てのイオン種に適応可能である。イオン選択性電極ISEは、サンプル(試料)中のイオン濃度に応じた電位を発生させる。
【0013】
図1Cに示すように、同じ孔1を有する複数のイオン選択電極ISEを連結すると、連結された複数のイオン選択電極ISEの群としてのイオン選択電極群ISEGが構成される。イオン選択電極群ISEGの中で接続された複数の孔1は、一つの測定流路7を形成する。この測定流路7の一端から試料が送液され他端から排出されることにより、各イオン選択電極ISEにおいて成分分析が行われる。なお、分析装置は、分析装置において発生する流路の気泡や、液体の振動、測定系への電気ノイズなどの異常を判定する機能を備え得る。
【0014】
このようなイオン選択電極ISEにおいて、直前の分析成分がイオン選択電極ISEに残留することが起こり得る(キャリーオーバ)。例えば、成分が高濃度の試料の次に低濃度の試料を測定する場合において、その高濃度の試料の一部が測定流路7内に残ると、次に低濃度の試料を測定した際に低濃度の試料が本来の濃度よりも高い濃度で検出されることになり、測定の精度の低下の虞がある。
【0015】
キャリーオーバの影響を低減する方法の一つとして、電極が正常に取り付けられ、各電極の流路同士にずれがない状態で測定することが挙げられる。電極の連結部分にずれが生じると、電極同士の流路の隙間に試料溶液が残りキャリーオーバの原因となる可能性があるためである。
【0016】
複数のイオン選択電極ISEを連結する際に、できるだけ孔1のずれが生じないように、例えば
図1の電極構造における凹凸部など、構造を工夫することは可能である。しかし、製造上での寸法公差や取り外しの容易さを考慮すると、電極を取り付けた際の孔のずれを完全に無くすことは困難である。そのため、イオン選択電極ISEを連結すると同時に、電極取付異常を判定することができることが望ましいと考えられる。本実施の形態は、このような観点から、電極取付異常を簡易に検出することができる構造を提案するものである。
【0017】
図1Dに示すように、電解質分析装置1000は、電解質分析ユニット200と、電圧計202、アンプ203、及び制御部204を備える。電解質分析ユニット200は、内部にイオン選択電極群ISEG及び比較電極REを搭載すると共に、イオン選択電極群ISEGの電極取付異常を検出するための取付異常検知部201を備える。
【0018】
電解質分析ユニット200は、イオン選択電極群ISEG、比較電極RE、取付異常検知部201の他、図示は省略するが、各種ノズル、比較電極液/内部標準液/希釈液/検体液/廃液等を収容するタンク、ポンプ、弁機構等を備える。
【0019】
イオン選択性電極ISEの流路7に導入された試料中の分析対象のイオン濃度によって、比較電極REと各イオン選択性電極ISEとの電位差(起電力)が変化する。電圧計202は、その起電力に対応する検出信号を出力し、その検出信号はアンプで増幅された後制御部204に出力される。
【0020】
制御部204(判定部)は、電解質分析装置1000の全体を制御すると共に各種演算処理及び判定処理を実行する。具体的には、制御部204は、電解質分析ユニット1の各構成の駆動制御、取付異常検知部201の検知結果に基づく判定及び情報処理、表示部(図示せず)における表示の制御などを行う。
【0021】
図2を参照して、取付異常検知部201の構成の詳細を説明する。
図2の取付異常検知部201は、一例として、流路形成部205、照射部206、検出部207、透明板208、209を備える。
【0022】
流路形成部205は、イオン選択電極群ISEGの流路7に接続する流路を構成する筐体であり、一例として、その内部に鍵の手状(クランク形状)に屈曲した流路210を備える。流路形成部205は、イオン選択電極群ISEGの一方の側に第1流路形成部を備え、他方の側に第2流路形成部を備え、第1流路形成部と第2流路形成部とによりイオン選択電極群ISEGを挟み、且つ流路7の出入り口が流路210と合致するようにされる。照射部206は、流路210の屈曲部に、電極の取付状態を判定するための超音波又は光をガラス又はアクリルの透明板208を介して照射する。照射部206から照射された超音波又は光は、流路210を通過して反対側の屈曲部から透明板209を介して射出するようにされる。照射部206は、光を発するものである場合、レーザ光を射出するレーザ光源、LED、ハロゲンランプ等であり得る。また、照射部206が超音波を発するものである場合、照射部206は超音波発生装置であり得る。
【0023】
検出部207は、流路形成部205の鍵の手状の流路210を挟んで照射部206とは反対側に設置される透明板209を介して超音波又は光を照射され、その超音波又は光の量を検出する。超音波及び光は、空気中及び液体中のいずれでも伝達可能である。光の場合は、出射光の強度、波長、出射光像面積、形状等の検出信号が検出部207において得られる。超音波は媒質に依存した伝搬速度により媒体の境界等を検出可能である。照射部206は、超音波、又は光のいずれかを照射するものであってもよいし、両方を照射するものであってもよい。超音波は、光よりも指向性が広く、孔のズレの検出精度は光の方が優れている一方で、流路孔に照射光の波長を透過しない液体が満たされているような場合でも、超音波による検出は可能である。
【0024】
検出部207の検出信号は、制御部204に送信され、その解析が制御部204で行われることにより、イオン選択電極群ISEGにおける取付異常が検知され得る。本例はイオン選択電極群ISEGの両端の流路210の一方に照射部206を設置し、他方の側に検出部207を設置している。
【0025】
図3を参照して、取付異常検知部201の構成の別の例を説明する。
図2と同一の構成要素については
図3でも同一の参照符号を付しているので、重複する説明は省略する。前述の
図2の例では、照射部206と検出部207とが流路形成部205を挟んで対向して配置され、流路形成部205を透過する光を検出部207で検知していた(透過型)。これに対し、
図3の例は、流路形成部205の一方の側から照射部206から照射した超音波又は光を、他方の側で反射させ、照射部206と同じ側に配置された検出部207’で検出する方式を採用している(反射型)。
【0026】
図3の例は、同じ側に照射部206と検出部207’を備えることができるので、設置スペースを
図2の例に比べ小さくすることができる。実際の電解質測定装置においては、イオン選択電極群ISEGの一方の面側に、試料を送液する送液機構等を備える構造を有するものもある。このような構造の場合、照射部206及び検出部207’をイオン選択電極群ISEGのどちらか一方の側にまとめて設置し、もう一方の流路側面には他の機構などを備えるスペースを確保することが望ましい。
図3の構成例は、このような構造に適合するものである。
【0027】
図3の例では、照射部206及び検出部207’は流路形成部205の一方の側にのみ設置される。流路形成部205の他方の側には、反射板211が形成される。これにより照射部206から射出して流路210を通過した超音波又は光が反射板211で反射され、再び流路210を通って検出部207’に到達する。なお、照射部206及び検出部207’は、互いに別の素子であっても良いが、設置スペースをよりコンパクトにするために、光源(又は超音波源)と検出センサが一体となった光電センサ又は超音波センサとされてもよい。
【0028】
照射部206において光を使用して、反射光が光源と同一の位置に戻ってくるよう反射させる構造を採用する場合、前述の一体型の光電センサは光源と検出部の位置がわずかに異なるため正確な検出が困難な可能性がある。この点を改善した構成として、
図4に示す構成例を提案することができる。
【0029】
図4では、照射部206及び検出部207’’が別の素子により構成され、位置的にも離れた位置に配置される。ここでの照射部206は光を発する光源(レーザ光源等)であり、照射部206と透明板208の間には、照射光を透過し、かつ反射光の光路を検出部207’’の方向に反射させるハーフミラー213が設置される。以上の構造により、照射部206及び検出部207’’を流路側面の一方のみに設置することができ、かつ反射光を正確に受光することが可能になる。
【0030】
次に、
図5のフローチャートを参照して、取付異常検知部201による電極取付状態の異常判定方法の実行手順を説明する。本例においては、
図2の構造を採用しているという前提で、且つ照射部206からの照射信号は光であるとして説明する。まず、ステップS501において、イオン選択電極群ISEGの電解質分析ユニット200への取付前に、照射部206から光を照射して検出部207で受光させ、その検出光量を基準値として記録する。この基準値を元に閾値Th1、Th2を設定する。ここで、閾値Th1は、隣接するイオン選択電極ISEの孔の有意なズレの有無を判断するための閾値であり、閾値Th2は、隣接するイオン選択電極ISEの孔の閉塞を判断するための閾値であり、Th2<<Th1である。
【0031】
続くステップS502では、イオン選択電極群ISEGを電解質分析ユニット200に取り付けて、照射部206から光をイオン選択電極群ISEGに照射して検出部207で検出光の光量を測定する。そして、検出部207で測定された検出光に従って、検出信号の信号量が閾値Th1未満であるか否かが制御部204により判定される。Yesの場合にはステップS504に移行し、Noの場合には、ステップS503に移行する。ステップS503では、イオン選択電極群ISEGは正常に取り付けられ、ズレは生じていないと判定され、その旨の表示(例えば
図6参照)が図示しない表示装置においてなされる。
【0032】
一方、ステップS504では、続いて、イオン選択電極群ISEGの電解質分析ユニット200に取付け回数がN回未満であるか否かが判定される。Yesの場合にはステップS505に移行し、Noの場合(N回以上)には、ステップS510に移行する。
【0033】
Nの値は、例えば3~5程度に設定され得る。後述するように、エラー表示に応じてオペレータはイオン選択電極群ISEGの組立を再度行い、電解質分析ユニット200への取付けをやり直すが、ステップS504はその回数に上限を設けるものである。すなわち、N回以上イオン選択電極群ISEGの取付けを繰り返しても所定値以上の検出信号が検出部207で検出された場合には、イオン選択電極群ISEG自体に構造上の問題があるなど、取付け作業の不備ではない可能性が高いと判断することができるため、このようなステップS504が設けられる。なお、イオン選択電極群ISEGの取付け回数のカウントは、例えば取付異常検知部201に付属する圧力センサ、光センサ等により検知/計数されてもよいし、イオン選択電極ISEGに接続される電圧計202の検出電圧等により検知されてもよい。
【0034】
ステップS505では、検出部207の検出信号が閾値Th2以上であるか否かが判定される。Yesの場合はステップS507へと進む。Noの場合にはステップS506へと進む。
【0035】
ステップS506では、アラーム1を通知する。アラーム1は、検出信号がTh2未満であり、流路7が閉塞されまたは略閉塞されているため、
図7の画面例のように、電極流路が塞がれている旨と、取付状況を確認するような案内表示が図示しない表示装置において表示され得る。ユーザは、複数のイオン選択電極ISE間にズレがあり流路7が塞がれている状態であることを念頭に、取付作業を再開することができる。取付作業が再度完了すると、出射光を再度測定するためステップS502が再度実行され、上記の手順が繰り返される。
【0036】
ステップS507では、イオン選択電極群ISEG内の複数のイオン選択電極群ISEの間のズレの方向が判定可能であるか否かが判定される。判定可能な場合(Yes)にはステップS508に移行し、不可能な場合にはステップS509に移行する。
【0037】
ステップS507に処理手順が到達する場合は、イオン選択電極群ISEGのイオン選択電極ISEの孔1同士は、閉塞するほどズレていないが所定量以上のズレは生じ、正常な取付け状態ではないことを意味している。ステップS507は、検出部207での光等の受光状態を解析することにより、イオン選択電極ISEのズレの方向の検出が可能かを判定し、可能であればそのズレの方向を算出する。判定可否についての具体的な判定方法は後述する。
【0038】
ステップS507においてイオン選択電極ISEG内のイオン選択電極ISEのずれ方向が判定可能と判定される場合(Yes)は、ステップS508に移行する。ステップS508では、
図8に示すような画面を表示装置に表示することにより、イオン選択電極ISEの取り付けにずれがあることを通知すると共に、そのずれ方向を矢印50により示すことができる。ユーザは矢印表示に従いイオン選択電極ISEのずれ方向を意識しながらイオン選択電極群ISEGを組み立て直し、再度電解質分析ユニット200に組み込むことが可能である。
【0039】
ステップS507においてイオン選択電極ISEG内のイオン選択電極ISEのずれ方向が判定不可能と判定される場合(No)は、ステップS509に移行し、
図9に示すような画面を表示装置に表示する。
図9の画面例は、イオン選択電極ISEの取り付けにずれがあることを通知する一方で、その方向は表示しない。ユーザは、連結したイオン選択電極ISEにズレがあることを報知され、イオン選択電極群を見てズレが無くなるように再度取付け作業を実行することはできる。
【0040】
ステップS508、ステップS509のいずれにおいても、電極を再度取り付けた後はステップS502へと戻り、出射光を再度測定する。このとき検出信号が所定範囲から外れているかどうかについて、再度判定を行う。再判定の結果、所定範囲内であった場合は、ステップS503の電極は正常に取り付けられたと判定され、
図6の画面例1のように通知することができる。
【0041】
再度の取付け作業によっても再び検出部207において所定の信号が得られない場合は、再度上記の手順が繰り返され、電極の取付回数がN回に達すると、ステップS510に移行する。ステップS510では、例えば
図10の画面が表示されることにより、電極のずれが改善できないので、電極を新しいものに交換することが促される。
【0042】
次に、
図11を参照して、取付異常検知部201の具体的な判定方法について説明する。ここでは、照射部206からはLED、ハロゲンランプ、レーザ光源等から発する光を照射し、検出部207ではCCDイメージセンサやフォトダイオード、フォトダイオードアレイを使ってその受光状態を判定することによりイオン選択電極ISEのズレの量や方向を判定する場合を例として説明する。レーザ光源は指向性が高い点で好適であるが、LEDやハロゲンランプを用いる場合でも、レンズ等の集光光学系を用いることで十分な指向性を得ることが可能である。
【0043】
検出部として単体のフォトダイオードを用いた場合でも、イオン選択電極ISEの間のズレの有無は、その光量の大小により判定することが可能である。また、検出部としてフォトダイオードアレイやCCDイメージセンサを用いることにより、イオン選択電極ISEの間のズレの有無のみならず、そのズレの方向も検出することが可能になる。
【0044】
イオン選択電極ISEを組み立ててイオン選択電極群ISEGを構成した後、イオン選択電極ISE間でずれが生じている場合、イオン選択電極群ISEGの一部に照射部206から照射した光が当たることになる。イオン選択電極群ISEGに当たった光は反射・吸収、又は散乱するので、イオン選択電極ISEがズレ無く正常に取り付けられている場合に比べ、検出部207に到達光の強度(受光強度)は小さくなる。このため、
図5のフローチャートで説明したように、イオン選択電極群ISEGを電解質分析ユニット200に取り付ける前の検出信号の信号強度を基準値とし、この基準値を基準として上述の閾値Th1、Th2を設定することができる。大きな光強度が検出部207において検出され、閾値Th1以上の検出信号が得られた場合には、イオン選択電極ISEは正常に取り付けられていると判定することができる(
図11参照)。一方、閾値Th1未満の検出信号しか得られない場合には、イオン選択電極ISEの取付けが異常(ズレ有り、又は閉塞)であると判定される。更に、閾値Th2未満の検出信号しか得られない場合には、イオン選択電極ISEのずれが大きく流路7が閉塞し又はほぼ閉塞していると判断することが可能である。
【0045】
図12を参照して、検出部207の検出面における光の照射領域の位置、及びその面積に従いイオン選択電極ISEのズレ量及びズレ方向を検出する方法を説明する。
【0046】
検出部207において、光の照射領域の面積を検出することが可能な検出器(例えば、CCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサ等)が利用される場合には、照射領域の位置及びその大小に基づき、イオン選択電極ISEのズレ量及びズレの方向を検出することができる。なお、照射領域の面積及びその大小によりイオン選択電極ISEのズレ量及びズレの方向を検出する方式の場合、照射部206から照射される光は高指向性である必要はなく、レーザの他、LEDやハロゲンランプなどの低コヒーレントな光源であってよい。
【0047】
検出部207において照射領域の面積を直接検出することが難しい場合は、図示しないスクリーン等への照射領域をCCDイメージセンサ等で撮像し、その照射領域の位置、及びその面積に従いズレ量及びズレ方向を演算することも可能である。
【0048】
図12を参照して具体的に説明する。初めに、イオン選択電極群ISEGの電解質分析ユニット200への取付前の状態で照射部206から光を照射し、基準となる照射領域の面積Amm
2を決定する。これは上述の基準値として利用される。
【0049】
イオン選択電極群ISEGを電解質分析ユニット200に取り付けた後、再度照射部206から光を照射して、検出部207の検出面における照射領域の面積を算出する。このとき、イオン選択電極群ISEGに含まれるイオン選択電極ISEにズレが無い場合、照射領域の面積はAmm2のままである。
【0050】
しかし、イオン選択電極群ISEGにおいてイオン選択電極ISE間にずれが生じている場合は、光の照射領域にもずれが生じ、一部の照射領域102は検出面の外となり、検出面における照射領域はBmm2に減少する。この面積の比(B/A)が所定の第1の閾値を下回る場合に、取付異常が生じていると判定することができる。
【0051】
イオン選択電極ISEの間のズレ量が更に拡大し、流路7を塞ぐほどにズレが大きくなっている場合は、照射領域103の面積は更に減少して例えばその面積bmm2は0に近い値となる。この面積の比b/Aが所定の第2の閾値を下回る場合に、流路7が塞がれていると判定することができる。なお、照射面積によるズレ量の演算の場合、面積が演算できれば十分であるため、照射領域における光強度が微弱又は飽和してしまう場合であっても、面積の演算は可能である。また、以上は照射面積に伴うズレの量の演算の方法を説明したものであるが、照射領域の位置を判定することにより、ズレの方向を演算することも可能となる。
【0052】
図13を参照して、イオン選択電極ISEのズレの方向を演算する別の方法を説明する。
図13に示す方法は、照射領域の形状を分析することにより、イオン選択電極ISEのズレの方向を検出するものである。
【0053】
初めに、イオン選択電極群ISEGの電解質分析ユニット200への取付前の状態で照射部206から光を照射し、基準となる照射領域の形状を決定する。基準の照射領域の形状は、例えば
図13に示すような正円形状150となる。
【0054】
イオン選択電極群ISEGを電解質分析ユニット200に取り付けた後、再度照射部206から光を照射して、検出部207の検出面における照射領域の形状を分析する。イオン選択電極群ISEGにおいてイオン選択電極ISE間にずれが生じている場合は、照射領域の形状にも変化が生じ、この変化量を分析することにより、ズレの方向を判定することができる。例えば、照射領域の形状は、正常時の正円形状150から、楕円形状151に変化する。
【0055】
この正円形状150と楕円形状151の交点152及び153が検出され、その2つの交点を結ぶ線分154の中点155を特定し、この中点を通る垂線156を特定する。この垂線156の方向が、イオン選択電極ISEのズレ方向と略一致する。この垂線156は、取り付け前の正円形状150に対し楕円形状151でも変動しない円弧157に向かう方向に向かうものであり、この垂線156の方向にイオン選択電極ISEがずれていると判定することができる。
【0056】
1つのイオン選択電極群ISEGに含まれるイオン選択電極ISEが3つ以上ある場合、複数のイオン選択電極ISEのずれの方向は一方向でなく複数方向である場合もあり得る。この場合、
図13に示す交点が3点以上発生する。また、交点が2点だけであったとしても、円弧157の位置が正円形状150の位置から変動することになる。このような場合には、例えば元の円弧157の位置と、移動後の円弧157との位置との関係に基づいて推定によりずれの方向を求めることも可能である。
【0057】
以上、本発明の種々の実施形態を説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0058】
1…孔、 2、3…接続凸部、 4…銀線、 5、6…接続凹部、 7…流路、 8…電極本体、 102、103…照射領域、 200…電解質分析ユニット、 201…取付異常検知部、 202…電圧計、 203…アンプ、 204…制御部、 205…流路形成部、 206…照射部、 207、207’、207’’…検出部、 208、209…透明板、 210…測定流路、 211…反射板、 213…ハーフミラー、 1000…電解質分析装置、 ISE…イオン選択電極、 ISEG…イオン選択電極群
RE…比較電極