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  • 特開-感光性樹脂組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132434
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/008 20060101AFI20240920BHJP
   C08F 20/54 20060101ALI20240920BHJP
   C08L 101/12 20060101ALI20240920BHJP
   C08K 5/28 20060101ALI20240920BHJP
   C08L 33/24 20060101ALI20240920BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20240920BHJP
   G03F 7/012 20060101ALI20240920BHJP
   B32B 27/16 20060101ALI20240920BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20240920BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240920BHJP
   B32B 7/027 20190101ALI20240920BHJP
【FI】
G03F7/008
C08F20/54
C08L101/12
C08K5/28
C08L33/24
G03F7/004 501
G03F7/012 501
B32B27/16 101
B32B27/18 Z
B32B27/30 Z
B32B7/027
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043186
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000236920
【氏名又は名称】富山県
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸岡 高広
(72)【発明者】
【氏名】横山 義之
【テーマコード(参考)】
2H225
4F100
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
2H225AA06
2H225AN11P
2H225CA30
2H225CB02
2H225CB06
2H225CC01
2H225CC11
2H225CD05
4F100AB11B
4F100AK12B
4F100AK25A
4F100AK26A
4F100AK53A
4F100AT00B
4F100BA02
4F100BA07
4F100CA02A
4F100EH46A
4F100JA05A
4F100JA05B
4F100JA07A
4F100JB14A
4F100JC00
4F100JJ10A
4F100JN17A
4J002AA011
4J002BG121
4J002BG131
4J002EQ036
4J002FD040
4J002FD050
4J002FD070
4J002FD140
4J002FD146
4J002FD150
4J002FD156
4J002FD310
4J002GE00
4J002GP03
4J002HA03
4J100AL08Q
4J100AM17P
4J100BA02Q
4J100BA03Q
4J100BA12Q
4J100BA15Q
4J100BA44Q
4J100BC43Q
4J100CA04
4J100DA01
4J100DA61
4J100DA65
4J100EA06
4J100FA03
4J100FA19
4J100FA28
4J100GC35
4J100JA38
(57)【要約】
【課題】
ライフサイエンスの分野、特に細胞培を取り扱う分野において所望の応答温度を有する温度応答性パターンをフォトリソグラフィ法により製造することが可能な温度応答性ポリマーを用いた感光性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】
炭素-炭素三重結合を有さない温度応答性ポリマー(A)、及び溶剤(B)を含み、アジド基を有する低分子化合物(C)を含んでもよい感光性樹脂組成物であって、
該低分子化合物(C)が含まれないとき、該温度応答性ポリマー(A)はアジド基を有し、該低分子化合物(C)が含まれるとき、該温度応答性ポリマー(A)はアジド基を有してもよい、感光性樹脂組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素-炭素三重結合を有さない温度応答性ポリマー(A)、及び溶剤(B)を含み、アジド基を有する低分子化合物(C)を含んでもよい感光性樹脂組成物であって、
該低分子化合物(C)が含まれないとき、該温度応答性ポリマー(A)はアジド基を有し、該低分子化合物(C)が含まれるとき、該温度応答性ポリマー(A)はアジド基を有してもよい、感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記温度応答性ポリマー(A)が、下記式(1)で表される構造単位を有するポリマーである、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【化1】
(式(1)中、Rは、水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基を表し、
は、置換されていてもよい炭素原子数1~10のアルキル基を表す。)
【請求項3】
前記温度応答性ポリマー(A)は下記式(2)で表される構造単位を有するポリマーである、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【化2】
(式(2)中、Rは、水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基を表し、
は、置換されていてもよい炭素原子数1~10のアルキル基を表し、
は、水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基を表し、
は、アジド基を含む基を表し、
x及びyはそれぞれx+y≦1、0<x<1、0<y<1を満たす任意の数である。)
【請求項4】
前記式(2)中のRは、アジド基に加え、カルボニル基、ヒドロキシ基、エーテル基、アリーレン基、炭素原子数1~10のアルキレン基、炭素原子数3~10の炭化水素環基、3~10員の複素環基及び3~10員の複素縮合環基からなる群より選択される一種又は二種以上を含んでもよい、請求項3に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記式(2)において、0.01≦y/x≦0.2を満たす、請求項3に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記溶剤(B)は、置換されていてもよい炭素原子数2~10のアルコール又は該アルコールとカルボン酸との反応物であるエステルから選択される、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記低分子化合物(C)が、アジド基を2つ以上含み、分子量が1000以下である、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物の硬化物又は部分硬化物からなる膜。
【請求項9】
基材と、請求項8に記載の膜とを有する積層体。
【請求項10】
前記膜が、パターニングされた膜である、請求項8に記載の積層体。
【請求項11】
前記基材が、ガラス転移温度が105℃以下であるプラスチックである、請求項9に記載の積層体。
【請求項12】
前記基材が、ガラス転移温度が105℃以下であるプラスチックである、請求項10に記載の積層体。
【請求項13】
基材の表面に、請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物の硬化物又は部分硬化物を形成する工程を含む、積層体の製造方法。
【請求項14】
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を基材の表面に塗布し、塗布膜を形成する工程、該塗布膜に光を照射する工程、及び露光後の塗布膜を現像する工程を含む、積層体の製造方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度応答性ポリマーを用いた感光性樹脂組成物に関し、さらに該組成物により形成された硬化物又は部分硬化物からなる膜、該膜を有する積層体及び積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
温度応答性ポリマーとしては、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAAm)が知られている。PNIPAAmは、N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAAm)とラジカル開始剤により容易に重合することで得られる。PNIPAAmの水溶液は、温度変化によって相分離を起こし、31℃以下では水に溶解され、それ以上の温度では不溶化し析出する。また、NIPAAmは他の機能性モノマーと共重合することも知られており、共重合により温度変化の刺激に応答するポリマーが得られる。
このような温度応答性ポリマーを含有する感光性樹脂組成物を用いて、フォトリソグラフィ法により形成したドットパターンを有するチップを製造する技術が知られている。基板等で用いられたフォトリソグラフィ法の技術は、微細なパターン構造を製造することができる。このような微細なパターン構造は、微小な細胞等を取り扱う際に有用となる。
【0003】
前記温度応答性ポリマーの文献及び温度応答性ポリマーを細胞培養等に利用した文献を示す。特許文献1では、実施例で単量体N-イソプロピルアクリルアミド及びN-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミドを重合した2元共重合体、さらにC=C-CO-NRR’構造をもつ単量体を加えて重合した3元共重合体が製造され、異なる種々の温度応答性のパターン付き基板(特に、細胞培養支持体)が、温度応答性ポリマーを含有する感光性樹脂組成物からフォトリソグラフィ法によるパターニングで製造されていることが記載されている。また、特許文献1では、80℃のオーブン中で、20時間、露光後ベーク(peb)し、その実施例では実施例ではガラス基板上に細胞培養支持体が製造されていることが示されている。
特許文献2では、細胞非接着性を示す構造単位と細胞接着性を示す構造単位を含むポリマーで被覆されたリガンド付き基体及びポリマーや基材自体への細胞の非特異的な接着により細胞選択性が損なわれることがない優れた細胞選択的培養能と分離能を発揮するコーティング材料について記載されている。特許文献2の実施例では、双性イオン及びクリック反応部位を有するポリマーの合成例が示されている。また、特許文献2では、ガラス基板表面へのポリマー被覆を100℃に加熱したホットプレート上で1分間加熱されていることが記載されている。
非特許文献1では、フォトリソグラフィを用いて、温度応答性のあるハイドロゲルが合成されたことが記載され、具体的には、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド-アクリル酸)(PIA)及びアジドフェニル誘導体化PIA(AzPh-PIA)が合成され、この合成物の水溶液はガラス板上に溶出され、フォトマスクを用いていくつかのパターン構造の温度応答性マイクロゲルが製造されていることが記載されている。ただし、非特許文献1の合成物は、水溶液であるため、ガラス板上のパターン製造際、水を蒸発させるために多くの熱を必要とする。さらに本文献における水溶液の塗布は均一な塗布ができない可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2016/068271号
【特許文献2】国際公開第2019/013148号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】macromolecules 1998,31,4397-4381
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、ポリスチレンなどのプラスチックは、安価、軽量、耐衝撃性に優れることから、細胞培養に用いられていた。一方、プラスチックは、耐熱性が低い、耐薬性が低い等の問題もある。
温度応答性ポリマーを細胞培養に適用する場合、露光後のベークを高温で行わなければならないことからプラスチックの基材ではなく、ガラスの基材が使用されている。ところが、細胞培養にガラスの基材を使用する場合、基材上の硬化物層は薄膜となるため、ガラス基材のアルカリ溶出による影響が大きく、再現性が取りにくいとの問題があった。
【0007】
そこで、細胞培養には、ガラス製ではなくプラスチック製の基材を使用することが望まれていた。そして、プラスチックを使用する場合、高温で使用できないものもあり、室温又は高くても50℃以下での使用が望まれること、さらに溶媒はプラスチックを溶解しない有機溶媒の使用が望まれていた。
本発明は上述のような事情に着目してなされたものであって、その目的は、細胞培養を取り扱う分野において、所望の応答温度を有する温度応答性パターンをフォトリソグラフィ法により製造することが可能な温度応答性ポリマーを用いた感光性樹脂組成物を提供することにある。さらに本発明の目的は、プラスチックの基材を使用可能とするため、露光後の高温ベークが必要とされず、室温又は50℃以下で処理が可能となり、プラスチックを溶解しない溶媒が使用され、処理等に酸が使用されない温度応答性ポリマーを用いた感光性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、炭素-炭素三重結合を有さない温度応答性ポリマーと低分子化合物等を含む感光性樹脂組成物であって、アジド基を有する感光性樹脂組成物を用いれば、高温ベークを必要とせずに、露光することで硬化物の調製が可能であり、50℃以下で処理が可能であり、所望の応答温度を有する温度応答性のパターンを、フォトリソグラフィ法によるパターニングで製造し得ることを見出し、発明を完成させた。さらに、その際、プラスチックを溶解しない有機溶媒を感光性樹脂組成物の溶剤として使用することができることを見出した。
【0009】
即ち、本発明は以下に関する。
第1観点として、炭素-炭素三重結合を有さない温度応答性ポリマー(A)、及び溶剤(B)を含み、アジド基を有する低分子化合物(C)を含んでもよい感光性樹脂組成物であって、
該低分子化合物(C)が含まれないとき、該温度応答性ポリマー(A)はアジド基を有し、該低分子化合物(C)が含まれるとき、該温度応答性ポリマー(A)はアジド基を有してもよい、感光性樹脂組成物に関する。
第2観点として、前記温度応答性ポリマー(A)が、下記式(1)で表される構造単位を有するポリマーである、第1観点に記載の感光性樹脂組成物に関する。
【化1】
(式(1)中、Rは、水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基を表し、
は、置換されていてもよい炭素原子数1~10のアルキル基を表す。)
第3観点として、
前記温度応答性ポリマー(A)は下記式(2)で表される構造単位を有するポリマーである、第1観点に記載の感光性樹脂組成物に関する。
【化2】
(式(2)中、Rは、水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基を表し、
は、置換されていてもよい炭素原子数1~10のアルキル基を表し、
は、水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基を表し、
は、アジド基を含む基を表し、
x及びyはそれぞれx+y≦1、0<x<1、0<y<1を満たす任意の数である。)
第4観点として、前記式(2)中のRは、アジド基に加え、カルボニル基、ヒドロキシ基、エーテル基、アリーレン基、炭素原子数1~10のアルキレン基、炭素原子数3~10の炭化水素環基、3~10員の複素環基及び3~10員の複素縮合環基からなる群より選択される一種又は二種以上を含んでもよい、第3観点に記載の感光性樹脂組成物に関する。
第5観点として、前記式(2)において、0.01≦y/x≦0.2を満たす、第3観点に記載の感光性樹脂組成物に関する。
第6観点として、前記溶剤(B)は、置換されていてもよい炭素原子数2~10のアルコール又は該アルコールとカルボン酸との反応物であるエステルから選択される、第1観点に記載の感光性樹脂組成物に関する。
第7観点として、前記低分子化合物(C)が、アジド基を2つ以上含み、分子量が1000以下である、第1観点に記載の感光性樹脂組成物。
第8観点として、第1観点乃至第7観点のいずれかに記載の感光性樹脂組成物の硬化物又は部分硬化物からなる膜に関する。
第9観点として、基材と、第8観点に記載の膜とを有する積層体に関する。
第10観点として、前記膜が、パターニングされた膜である、第8観点に記載の積層体に関する。
第11観点として、前記基材が、ガラス転移温度が105℃以下であるプラスチックで
ある、第9観点に記載の積層体に関する。
第12観点として、前記基材が、ガラス転移温度が105℃以下であるプラスチックである、第10観点に記載の積層体に関する。
第13観点として、基材の表面に、第1観点乃至第7観点のいずれかに記載の感光性樹脂組成物の硬化物又は部分硬化物を形成する工程を含む、積層体の製造方法に関する。
第14観点として、第1観点乃至第7観点のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を基材の表面に塗布し、塗布膜を形成する工程、該塗布膜に光を照射する工程、及び露光後の塗布膜を現像する工程を含む、積層体の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のアジド基を有する感光性樹脂組成物を用いれば、露光後の高温ベークが必要なく、50℃以下で、硬化させる処理が可能であり、酸を発生させない処理が可能であり、部分的に硬化させる処理が可能である。
本発明の溶剤を用いれば、プラスチック等を溶解することなく使用することが可能である。
本発明のアジド基を有する感光性樹脂組成物を用いた製造方法によれば、露光後ベークが不要で簡便なフォトリソグラフィ法による製造方法を提供できる。
本発明のアジド基を有する感光性樹脂組成物を用いた製造方法によれば、ガラス転移温度が105℃以下のプラスチックの基材に温度応答性を有する硬化物又は部分硬化物からなる膜及びパターニングされた膜を提供でき、さらに該基材と該膜からなる積層体を供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施例1乃至実施例3で得られた感光性樹脂組成物の感度測定の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<感光性樹脂組成物>
本発明の温度応答性ポリマーを用いた感光性樹脂組成物は、炭素-炭素三重結合を有さない温度応答性ポリマー(A)、及び溶剤(B)を含み、アジド基を有する低分子化合物(C)を含んでもよい感光性樹脂組成物であって、該低分子化合物(C)が含まれないとき、該温度応答性ポリマー(A)はアジド基を有し、該低分子化合物(C)が含まれるとき、該温度応答性ポリマー(A)はアジド基を有してもよい、感光性樹脂組成物である。
したがって、本発明の感光性樹脂組成物は、
(1)炭素-炭素三重結合を有さなく、アジド基を有する温度応答性ポリマー(A)、溶剤(B)及びアジド基を有する低分子化合物(C)、
(2)炭素-炭素三重結合を有さなく、アジド基を有さない温度応答性ポリマー(A)、溶剤(B)及びアジド基を有する低分子化合物(C)、
(3)炭素-炭素三重結合を有さなく、アジド基を有する温度応答性ポリマー(A)及び溶剤(B)、
のいずれかで構成される。
ただし、以下の感光性樹脂組成物についても説明する。
(4)炭素-炭素三重結合を有さなく、アジド基を有する温度応答性ポリマー(A)、溶剤(B)及びアジド基を有さない低分子化合物(C)。
以下、上記構成物を説明する。
【0013】
<炭素-炭素三重結合を有さなく、アジド基を有さない温度応答性ポリマー(A)>
炭素-炭素三重結合を有さなく、アジド基を有さない温度応答性ポリマー(A)としては、下記式(1)、並びに式(1-1―1)及び式(1-1-2)で表される構造単位を有するポリマーが挙げられる。
【化3】
(式(1)中、Rは、水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基を表し、Rは、置換されていてもよい炭素原子数1~10のアルキル基を表す。)
前記「炭素原子数1~3のアルキル基」として、直鎖又は分岐鎖を有するものが挙げられ、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。
【0014】
前記「炭素原子数1~10のアルキル基」として、直鎖又は分岐鎖を有するものが挙げられ、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、1-メチル-n-ブチル基、2-メチル-n-ブチル基、3-メチル-n-ブチル基、1,1-ジメチル-n-プロピル基、1,2-ジメチル-n-プロピル基、2,2-ジメチル-n-プロピル基、1-エチル-n-プロピル基、n-ヘキシル基、1-メチル-n-ペンチル基、2-メチル-n-ペンチル基、3-メチル-n-ペンチル基、4-メチル-n-ペンチル基、1,1-ジメチル-n-ブチル基、1,2-ジメチル-n-ブチル基、1,3-ジメチル-n-ブチル基、2,2-ジメチル-n-ブチル基、2,3-ジメチル-n-ブチル基、3,3-ジメチル-n-ブチル基、1-エチル-n-ブチル基、2-エチル-n-ブチル基、1,1,2-トリメチル-n-プロピル基、1,2,2-トリメチル-n-プロピル基、1-エチル-1-メチル-n-プロピル基及び1-エチル-2-メチル-n-プロピル基等が挙げられる。
【0015】
前記「置換されていてもよい炭素原子数1~10のアルキル基」が有し得る置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アミノ基、モノ-又はジ-炭素原子数1~4のアルキルアミノ基、ニトロ基、シアノ基、オキソ基、ヒドロキシ基、スルファニル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、炭素原子数1~4のアルコキシカルボニル基、ホルミル基、炭素原子数6~14のアリール基が挙げられる。
【0016】
前記「ハロゲン原子」としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
前記「モノ-又はジ-炭素原子数1~4のアルキルアミノ基」としては、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、n-エチル-n-メチルアミノ基が挙げられる。
【0017】
前記アルコキシ基は、直鎖状又は分枝鎖状のいずれでもよい。「炭素原子数1~4のアルコキシ基」としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基が挙げられる。
前記炭素原子数1~4のアルコキシカルボニル基は、前記「炭素原子数1~4のアルコキシ基」にカルボニル基-C(=O)-が結合した有機基である。
【0018】
前記「炭素原子数6~14のアリール基」としては、例えば、フェニル基、1-ナフチ
ル基、2-ナフチル基、1-アントリル基、2-アントリル基、9-アントリル基が挙げられる。
前記「炭素-炭素三重結合を有さなく、」の記載は、本発明において炭素-炭素三重結合とアジド基を含む化合物との付加環化反応及び1,2,3-トリアゾール環を作る反応が除かれていることを示す。
炭素-炭素三重結合を有さなく、アジド基を有さない温度応答性ポリマー(A)としては、下記式(1-1-1)及び式(1-1-2)で表される構成単位として含むポリマーが挙げられる。
【化4】
(式(1-1-1)中、R11は、水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基を表し、R12は、置換されていてもよい炭素原子数1~10のアルキル基を表し、
式(1-1―2)中、R13は、水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基を表し、
14は、アジド基を含まず、エポキシ基を含む基を表し、
式(1-1-1)及び式(1-1-2)に示す、x1及びy1はそれぞれx1+y1≦1、0<x1<1、0<y1<1を満たす任意の数である。)
上記x1及びy1は、前記式(1-1-1)及び式(1-1-2)において、それぞれx1+y1≦1、0<x1<1、0<y1<1を満たす任意の数である。さらに、x1及びy1は、0.01≦y1/x1≦0.2を満たすことができ、好ましくは0.02≦y1/x1≦0.18を満たすこと、さらには0.03≦y1/x1≦0.15を満たすことが好ましい。
「炭素原子数1~3のアルキル基」、「置換されていてもよい炭素原子数1~10のアルキル基」は式(1)で上述した内容と同じである。また、以下に「炭素原子数1~3のアルキル基」、「置換されていてもよい炭素原子数1~10のアルキル基」又は、「置換されていてもよい」との記載がある場合、特に記載がない限り上述した内容と同じである。
【0019】
前記「R14」、「アジド基を含まず、エポキシ基を含む基」とは、以下式(1-2)、式(1-3)で示される1価の基が挙げられる。
【化5】
(式(1-2)及び式(1-3)中、R15は下記式(I)、式(II)又は式(III)で表される2価の有機基を表す。)
【化6】
(式中、cは0乃至3の整数を表し、dは1乃至3の整数を表し、eはそれぞれ独立に2乃至6の整数を表す。)
前記式(1-1-2)の具体例を下記の式(1-11)~式(1-26)に示す。ただし、式(1-1-2)は、以下の具体例に限らない。
【化7】
その他、「炭素-炭素三重結合を有さなく、アジド基を有さない温度応答性ポリマー(A)」として、下記「アジド基を有さない低分子化合物(C)」を重合させたポリマーがある。
また、前記「x1+y1≦1」は「x1+y1=1」及び「x1+y1<1」となることがある。「x1+y1=1」となる場合は、「炭素-炭素三重結合を有さなく、アジド基を有さない温度応答性ポリマー(A)」は式(1-1-1)及び式(1-1-2)で示されるポリマーの構成単位のみで構成される。「x1+y1<1」となる場合は、「炭素-炭素三重結合を有さなく、アジド基を有さない温度応答性ポリマー(A)」は、式(1-1-1)及び式(1-1-2)で示されるポリマーの構成単位以外に、他のポリマーの構成単位を含むことを示している。この場合、構成単位の具体例は下記「アジド基を有さない低分子化合物(C)」を重合させたポリマーにおける構成単位が挙げられる。
以上から、「炭素-炭素三重結合を有さなく、アジド基を有さない温度応答性ポリマー(A)」として、下記式(1-4)の右側に示すモノマー、下記式(1-4)の左側に示すモノマー及び「アジド基を有さない低分子化合物(C)」からなる群の化合物より選択される一種又は二種以上を重合させたポリマーが挙げられる。
【0020】
<炭素-炭素三重結合を有さなく、アジド基を有さない温度応答性ポリマー(A)の合成>
【化8】
(式(1-4)中、R11、R12、R13、R14、x1及びy1は、それぞれ式(1-1-1)及び式(1-1-2)と同じである。)
前記式(1-4)の左に示すモノマーと右に示すモノマーをモル比でx1:y1としたものを溶剤(B)に溶解させた後、例えば50℃以上で10時間以上反応させ、前記式(1-4)の左に示すモノマーと右に示すモノマーの温度応答性ポリマーの溶液を得ることができる。
得られた温度応答性ポリマーの標準ポリスチレン換算した重量平均分子量(mw)は、低いと温度応答性の感度が低くなるため、好ましくは5,000以上、さらに6,000以上、7、000以上、8,000以上、9,000以上、10,000以上、11,000以上又は、12,000以上であることが好ましく、高いと溶解性や解像性が低下する可能性が高いため、好ましくは300,000以下、さらに250,000以下、200,000以下、150,000以下、100,000以下、90,000以下、80,000以下又は70,000以下であることが好ましい。本発明におけるmwの値は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定される。
【0021】
<炭素-炭素三重結合を有さなく、アジド基を有する温度応答性ポリマー(A)>
炭素-炭素三重結合を有さなく、アジド基を有する温度応答性ポリマー(A)としては、例えば下記式(2)で表される構造単位を有するポリマーである、温度応答性ポリマー(A)が挙げられる。
【化9】
(式(2)中、Rは、水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基を表し、
は、置換されていてもよい炭素原子数1~10のアルキル基を表し、
は、水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基を表し、
は、アジド基を含む基を表し、
x及びyはそれぞれx+y≦1、0<x<1、0<y<1を満たす任意の数である。)
【0022】
前記「R」、「アジド基を含む基」としては、アジド基に加え、カルボニル基、ヒドロキシ基、エーテル基、アリーレン基、炭素原子数1~10のアルキレン基、炭素原子数3~10の炭化水素環基、3~10員の複素環基及び3~10員の複素縮合環基からなる
群より選択される一種又は二種以上を含んでもよい基である。
前記「炭素原子数1~10のアルキレン基」は、炭素原子数1~10の直鎖又は分岐鎖アルキレン基であり、上記炭素原子数1~10の直鎖又は分岐鎖アルキル基として示した群の任意の炭素原子から1個の水素原子を除去した2価基が挙げられる。
前記「上記炭素原子数3~10の炭化水素環基」は、炭素原子数3~10の環状アルキル基とも称され、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基が挙げられる。
【0023】
上記「3~10員の複素環基」としては、例えば、チエニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基などの芳香族複素環基;及びアジリジニル基、エポキシ基、オキシラニル基、チイラニル基、アゼチジニル基、オキセタニル基、チエタニル基、テトラヒドロチエニル基、テトラヒドロフラニル基、ピロリニル基、ピロリジニル基、イミダゾリニル基、イミダゾリジニル基、オキサゾリニル基、オキサゾリジニル基、ピラゾリニル基、ピラゾリジニル基、チアゾリニル基、チアゾリジニル基、テトラヒドロイソチアゾリル基、テトラヒドロオキサゾリル基、テトラヒドロイソオキサゾリル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、テトラヒドロピリジニル基、ジヒドロピリジニル基、ジヒドロチオピラニル基、テトラヒドロピリミジニル基、テトラヒドロピリダジニル基、ジヒドロピラニル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチオピラニル基、モルホリニル基、チオモルホリニル基、アゼパニル基、ジアゼパニル基、アゼピニル基、オキセパニル基、アゾカニル基、ジアゾカニル基などの非芳香族複素環基が挙げられる。
【0024】
上記「3~10員の複素縮合環基」としは、下記式(2-1)で示す基が挙げられる。
【化10】
前記式(2)右側に示す有機基の構造単位の具体例は、上記の式(1-11)~式(1-26)に示す有機基と4-アジド安息香酸との反応物である有機基の構造単位である。ただし、式(2)右側に示す有機基の構造単位は、上記の式(1-11)~式(1-26)に示す有機基と4-アジド安息香酸との反応物に限らない。
前記「一種又は二種以上を含んでもよい」とは、例えば「-(エーテル基)-(アルキレン基)-(エーテル基)-(アルキレン基)-」の様に二種類以上の基が複数個結合した部分を含む基であってもかまわない。
【0025】
温度応答性ポリマー(A)は、例えば上記式(2)で表される構造単位を有するポリマーである。式(2)では、二種の構造単位が示され、x及びyはその構成単位のモル比率である。温度応答性ポリマー(A)は、式(2)で表される構造単位以外の構造単位を含んでもよい。
x及びyは、前記式(2)において、それぞれx+y≦1、0<x<1、0<y<1を満たす任意の数である。モル数yに対するモル数xの割合はy/xで表される。y/xが0.2より大きいと温度応答性が悪くなり、0.01より小さいと露光感度が悪くなる。したがって、y/xは、0.01≦y/x≦0.2を満たすことが好ましく、さらに好ましくは0.02≦y/x≦0.18を満たすこと、さらには0.03≦y/x≦0.15
を満たすことが好ましい。
例えば、前記「0.03≦y/x≦0.15」が意味するところは、xのモル数に対し、yのモル数は3モル%~15モル%であることを示している。これは、式(2)で表される、左側の構成単位に対し、右側の構成単位は3モル%~15モル%で足りることを示している。つまり、温度応答性ポリマーとしては、式(2)の左側の構成単位が重要であるが、光による架橋を促進するためには、式(2)の右側の構成単位が必要となることを示している。本発明においては、基材、溶剤、温度等の制約があるなかで、露光量とこのx:yの比によって膜の硬化度の調製、及び硬化物による膜にするか部分硬化による膜にするか決定することができるため、このx:yの比が重要な指標となる。
また、前記「x+y≦1」は「x+y=1」及び「x+y<1」となることがある。「x+y=1」となる場合は、式(2)で示される左右の構成単位のみで構成される。「x+y<1」となる場合は、「炭素-炭素三重結合を有さなく、アジド基を有する温度応答性ポリマー(A)」は、式(2)の右側と左側で示されるポリマーの構成単位以外に、他のポリマーの構成単位を含むことを示している。この場合の具体例は下記「アジド基を有さない低分子化合物(C)」を重合させたポリマーにおける構成単位が挙げられる。
以上から、「炭素-炭素三重結合を有さなく、アジド基を有する温度応答性ポリマー(A)」として、下記式(2)の左側に示す構成単位の重合前のモノマーと、その他に上記式(2)の右側に示す構成単位の重合前のモノマー及び「アジド基を有さない低分子化合物(C)」からなる群の化合物より選択される一種又は二種以上を重合させたポリマーが挙げられる。
【0026】
<炭素-炭素三重結合を有さなく、アジド基を有する温度応答性ポリマー(A)の合成>
例えば、前記式(1-1-1)及び式(1-1-2)に示す温度応答性ポリマーを有する溶液に、4-アジド安息香酸、及び溶剤(B)を添加し、例えば50℃以上で20時間以上反応させる。その後イオン交換を行うことで過剰の4-アジド安息香酸を取り除き、炭素-炭素三重結合を有さなく、アジド基を有する温度応答性ポリマー(A)の溶液を得ることができる。
また、例えば下記式(5-11)~式(5-26)に示すいずれかのモノマーと4-アジド安息香酸、及び溶剤(B)を添加し、例えば50℃以上で20時間以上反応させる。その後イオン交換を行うことで過剰の4-アジド安息香酸を取り除き、アジド基を有するモノマーの溶液を得ることができる。
上記式(1-4)の左に示すモノマーと前記アジド基を有するモノマーとをモル比でx1:y1としたものを溶剤(B)に溶解させた後、例えば50℃以上で10時間以上反応させ、前記式(1-4)の左に示すモノマーと前記アジド基を有するモノマーとの温度応答性ポリマーの溶液を得ることができる。
得られた炭素-炭素三重結合を有さなく、アジド基を有する温度応答性ポリマー(A)の標準ポリスチレン換算した重量平均分子量(mw)は、低いと温度応答性の感度が低くなるため、好ましくは5,000以上、さらに6,000以上、7、000以上、8,000以上、9,000以上、10,000以上、11,000以上又は、12,000以上であることが好ましく、高いと溶解性や解像性が低下する可能性が高いため、好ましくは300,000以下、さらに250,000以下、200,000以下、150,000以下、100,000以下、90,000以下、80,000以下又は70,000以下であることが好ましい。本発明におけるmwの値は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定される。
【0027】
<温度応答性ポリマー(A)の含有量>
温度応答性ポリマーの含有量は、良好なパターニング特性を達成するため、溶剤を除く感光性樹脂組成物の固形分の合計質量100質量部に対して、50~99質量部、60~98質量部、さらには、70~97質量部以下の割合で配合され得る。
【0028】
<溶剤(B)>
溶剤(B)は、置換されていてもよい炭素原子数2~10のアルコール又は該アルコールとカルボン酸との反応物であるエステルから選択される。
前記「炭素原子数が2~10のアルコール」は、直鎖状であってもよく、また分岐状であっても良い。具体的には、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、tert-ブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、2-メチル-1-ブタノール、3-メチル-2-ブタノール、2-エチル-1-ブタノール、2,3-ジメチル-2-ブタノール、2-メチル-2-ペンタノール、4-メチル-2-ペンタノール、tert-ペンチルアルコール、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、tert-ブチルセロソルブ、シクロヘキサノール、4-tert-ブチルヘキサノール、α-テルピネオール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、ジエチレングリコールモノーtert-ブチルエーテル、ジアセトンアルコールが挙げられる。
また、「該アルコールとカルボン酸との反応物であるエステル」は、前記「炭素原子数が2~10のアルコール」とカルボン酸が反応したもので、前記「炭素原子数が2~10のアルコール」で示した群の任意の炭素原子から一個の水素原子を除去した結合部に、「-COO-R」が結合したものである。
前記「R」は、上述した「炭素原子数1~10のアルキル基」である。
【0029】
前記「置換されていてもよい炭素原子数2~10のアルコール」が有し得る置換基とは、上述した「置換されていてもよい炭素原子数1~10のアルキル基」が有し得る置換基と同一である。特に、置換基がヒドロキシ基の場合、多価アルコールとなる。多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ジメチルブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオールなどの2価の多価アルコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパンなどの3価以上の多価アルコールなどが挙げられる。本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのアルコールは、それぞれ単独で用いてもよく、二種類以上を併用してもよい。
【0030】
溶剤の含有量は、膜厚をコントロールするため、及び良好なパターニング特性を得るために、感光性樹脂組成物の合計質量100質量部に対して、好ましくは50~99.5質量部、より好ましくは55~95質量部又は、60~90質量部、さらに好ましくは70~80質量部である。
【0031】
<アジド基を有する低分子化合物(C)>
アジド基を有する低分子化合物(C)の例としては、下記式(3-1)及び式(3-2)で示す化合物が挙げられる。
HOOC-R31-N (3-1)
(式(3-1)中、R31は、カルボニル基、エーテル基、アリーレン基、炭素原子数1~10のアルキレン基を示す。)
前記式(3-1)で表される化合物の具体例としては、4-アジド安息香酸が挙げられる。
C=CR32-COO-R33-N (3-2)
(式(3-2)中、R32は水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基を表し、
33は、カルボニル基、エーテル基、置換されていてもよいアリーレン基、置換されていてもよい炭素原子数1~10のアルキレン基からなる群より選択される一種又は二種以上を含んでもよい有機基である。)
前記「置換されていてもよい」が有し得る置換基とは、上述した「置換されていてもよい炭素原子数1~10のアルキル基」が有し得る置換基と同一である。
【0032】
<アジド基を2つ以上有する低分子化合物(C)>
アジド基を2つ以上有する低分子化合物(C)の例としては、下記式(4-1)、式(4-2)及び式(4-3)で示す化合物が挙げられる。
HOOC-C(R41-N)-R42-N (4-1)
(式(4-1)中、R41及びR42は、カルボニル基、エーテル基、アリーレン基、炭素原子数1~10のアルキレン基を示す。)
C=CR43-COO-C(R44-N)-R45-N (4-2)
(式(4-2)中、R43は水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基を表し、
44及びR45は、独立にカルボニル基、エーテル基、置換されていてもよいアリーレン基、置換されていてもよい炭素原子数1~10のアルキレン基からなる群より選択される一種又は二種以上を含んでもよい有機基である。)
-R46-N (4-3)
(式(4-3)中、R46は、カルボニル基、エーテル基、スルホニル基、置換されていてもよいアリーレン基、置換されていてもよい炭素原子数1~10のアルキレン基、置換されていてもよい炭素原子数1~10のアルケニレン基及び置換されてもよい2価の炭素原子数3~10の炭化水素環基からなる群より選択される一種又は二種以上を含んでもよい有機基である。)
前記「置換されていてもよい」が有し得る置換基とは、上述した「置換されていてもよい炭素原子数1~10のアルキル基」が有し得る置換基と同一である。具体例として式(4-11)~式(4-17)が挙げられる。
【化11】
アジド基を2つ以上有する低分子化合物の分子量は、1000以下であることが好ましく、さらに800以下、さらには500以下であることが好ましい。
【0033】
<アジド基を有さない低分子化合物(C)>
アジド基を有さない低分子化合物(C)としては、下記式(5)、式(5―1)及び式(5-2)で示す化合物が挙げられる。
【化12】
(式(5)中、R51は、水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基を表し、
52及びR53は、それぞれ独立に水素原子又は置換されていてもよい炭素原子数1~10のアルキル基を表す。)
上記式(5)で示す具体例としては、(メタ)アクリルアミド、n-メチル(メタ)アクリルアミド、n-エチル(メタ)アクリルアミド、n-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、n-プロピル(メタ)アクリルアミド、n-ブチル(メタ)アクリルアミド、n-(tert-ブチル)(メタ)アクリルアミド、ヘキシル(メタ)アクリルアミド、ヘプチル(メタ)アクリルアミド、n-メチル-n-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、n-(2-ヒドロキシ-1-メチルエチル)(メタ)アクリルアミド、n,n-ジメチル(メタ)アクリルアミド、n,n-ジエチル(メタ)アクリルアミド、n-エチル-n-メチル(メタ)アクリルアミド及びn-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド等がからなる群が挙げられる。
なお、本明細書中、「(メタ)アクリレート」等は「アクリレート及びメタクリレート」等を意味する。
【0034】
【化13】
(式中、R54は水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基を表し、
55は下記式(I)、式(II)又は式(III)で表される2価の有機基を表す。)
【化14】
(式中、cは0乃至3の整数を表し、dは1乃至3の整数を表し、eはそれぞれ独立に2乃至6の整数を表す。)
前記式(5―1)、式(5―2)で表される化合物(モノマー)の具体例としては、下記式(5-11)~式(5-26)で表されるモノマーが挙げられる。なお、これらのモノマーは単独で使用しても、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【化15】
【0035】
さらに、上記式(5)、式(5―1)及び式(5-2)で示す化合物以外に、アジド基を有さない低分子化合物(C)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート及び1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレートからなる群が挙げられる。
また、アミノメチル(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレートなどのアミノアルキル(メタ)アクリレート;ジアミノメチル(メタ)アクリレート、ジアミノエチル(メタ)アクリレートなどのジアミノアルキル(メタ)アクリレート;メトキシ(メタ)アクリレートなどのアルコキシ(メタ)アクリレート;メトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;N-(メタ)アクリロイルピロリジン、N-(メタ)アクリロイルピペリジン、N-(メタ)アクリロイルモルホリン等の(メタ)アクリルアミド誘導体;等が挙げられる。
くわえて、これらのモノマー並びに上記式(5)、式(5―1)及び式(5-2)で示す化合物の群から選択される二種以上の化合物を含めて「アジド基を有さない低分子化合物(C)」として利用できる。
【0036】
<架橋剤>
本発明の感光性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、架橋剤を含んでいてもよい。架橋剤としては、例えば、グリコールウリル化合物、メラミン化合物、ビスアジド化合物が挙げられる。
グリコールウリル化合物としては、例えば、1,3,4,6-テトラキス(メトキシメチル)グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(エトキシメチル)グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(プロポキシメチル)グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(ブトキシメチル)グリコールウリルが挙げられる。
メラミン化合物としては、例えば、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサエトキシメチルメラミン、ヘキサプロポキシメチルメラミン、ヘキサブトキシメチルメラミンが挙げ
られる。
【0037】
ビスアジド化合物としては、例えば、以下に示す式(6-1)~式(6-12)の架橋剤が挙げられる。
【化16】
架橋剤が使用される場合、その含有量は、充分な温度応答性を得るために、通常、前記温度応答性ポリマー(A)(樹脂成分)の合計質量100質量部に対して、50質量部以下、30質量部以下、さらには10質量部以下の割合で配合され得る。
なお、感光性樹脂組成物中に互いに反応する二種以上の反応性基が存在する場合には、感光性樹脂組成物は架橋剤無しで架橋することができる(自己架橋)。このような場合には、本発明の感光性樹脂組成物は架橋剤を含まなくてもよい。
【0038】
<その他添加剤>
本発明の感光性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、当該技術分野に慣用のその他添加剤を含んでいてもよい。その他添加剤としては、例えば、反射防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定化剤、増感剤、界面活性剤、レベリング剤、シランカップリング剤等及び前記「アジド基を有さない低分子化合物(C)」が挙げられる。
これらその他添加剤が使用される場合、通常、前記温度応答性ポリマー(A)(樹脂成
分)の合計質量100質量部に対して、30質量部以下、20質量部以下、10質量部以下、さらには5質量部以下の割合で配合され得る。
【0039】
<基材>
基板の材料としては、例えば、樹脂等が挙げられる。
樹脂は、天然樹脂、変性天然樹脂及び合成樹脂のいずれでもよい。天然樹脂としては、例えば、セルロース等が挙げられる。変性天然樹脂として、例えば、三酢酸セルロース、デキストラン硫酸を固定化したセルロース等が挙げられる。合成樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ABS、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリウレタン、ポリ乳酸、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸ブチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリエステル系ポリマーアロイ、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリエーテルスルホン等が挙げられる。
【0040】
本発明で使用する基材は、基材のガラス転移温度が105℃以下であるプラスチックを使用することができる。特に、「基材のガラス転移温度が105℃以下であるプラスチック」とは、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ABS、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリ乳酸、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸ブチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等が挙げられる。これらプラスチック群の中で好ましくは、ポリスチレンが挙げられる。
【0041】
<感光性樹脂組成物の硬化物又は部分硬化物からなる膜、該膜と基材とを有する積層体及びパターニングされた膜と基材を有する積層体>
本発明は、前記感光性樹脂組成物から得られる硬化物又は部分硬化物からなる膜、該膜と基材とを有する積層体、パターニングされた膜と基材を有する積層体も提供する。本発明のパターニングされた膜は、下記パターン形成方法により製造することができる。さらに、前記積層体は、下記積層体の製造方法によって製造することができる。
本発明の感光性樹脂組成物を用いてフォトリソグラフィ法によるパターニングで、所望の応答温度を有する温度応答性のパターニングされた膜と基材を有する積層体も提供する。
本発明の積層体は、膜と基材とを有する。したがって、基材の片面だけでなく、両面に膜があってもよい。
また、本発明の積層体を構成する膜は、複数の硬化物からなる膜、又は複数の部分硬化物からなる膜であってもよい。
【0042】
前記「部分硬化物」とは、露光量を大きくすれば硬化物となるが、その露光量が小さいために全体の一部が硬化物になっていないものを表わす。また、例えば上記式(1-4)中のy1/x1や式(2)中のy/xが小さい場合も部分硬化物となる。
【0043】
パターニングされた膜に形成されるパターンの形状に特に制限は無く、基板の上側から観察した場合、例えば、四角状、丸状、線状、ラインアンドスペース等が挙げられる。上側から観察したパターンの大きさ及びパターン断面から観察したその厚さ(高さ)に特に制限は無い。パターンの一辺の大きさは、例えば0.1μm~1,000mm、パターンの厚さ(高さ)は、例えば5nm~1,000μmである。これらパターンの形状は、露光工程時に、透過光の形状が異なる複数のマスクを用いることで制御可能である。
【0044】
<膜と基材を有する積層体の製造方法>
本発明の感光性樹脂組成物の硬化物又は部分硬化物からなる膜及び該膜と基材とを有する積層体となる。そして前記膜がパターニングされることにより、パターニングされた膜及び該膜と基材を有する積層体となる。前記積層体は、例えば以下に記載するような方法で製造できる。
i)感光性樹脂組成物を基材の表面に塗布し、塗布膜を形成する工程
本発明の感光性樹脂組成物をスピンコート、スリットコート等の方法で基材に塗布し、溶媒除去することによって塗膜を形成する。
ii)該塗布膜に光を照射する工程
該塗膜にアライナーを用い一定波長の光を、所望のパターンを得るためにマスクを介して照射すると、露光部分のみで、それによる架橋(硬化)が生ずる。
iii)露光後の塗布膜を現像する工程
露光後の塗膜を、現像液等で現像を行い、未露光部(塗膜の未硬化部分)を除去する。
以上の製造方法により、感光性樹脂組成物の硬化物、部分硬化物からなる膜、パターニングされた膜を製造することができるとともに該膜と基材とを有する積層体、そしてパターニングされた膜と基材を有する積層体を製造することができる。
【0045】
前記製造方法の「ii)該塗布膜に光を照射する工程」において、露光量を少なくすれば完全に硬化しない、部分硬化物を製造することができる。部分硬化物を製造する場合、膜厚、溶剤の種類、溶剤の濃度等で部分硬化物の硬化の割合が変化するため、要求される硬化の割合に従い露光量を調整する。
照射する光は、好ましくは紫外線、500nm以下の可視光線、より好ましくは紫外線である。露光量としては、好ましくは1~10,000mj/cm、より好ましくは10~5,000mj/cm、さらに好ましくは20~3,000mj/cmである。
【0046】
<細胞培養支持体及びその製造方法>
本発明の細胞培養支持体は、温度応答性ポリマーを含有する感光性樹脂組成物を用いて、温度応答性の硬化物からなる膜、部分硬化物からなる膜又はパターニングされた膜であり、該膜を基材上に形成した積層体である。本発明は、該細胞培養支持体の製造方法、及び該製造方法から得られる細胞培養支持体も提供する。
本発明における細胞培養支持体の製造方法は、温度応答性ポリマーを含有する感光性樹脂組成物を用いた前記<膜と基材を有する積層体の製造方法>と同じである。基材上に塗膜を形成し、該塗膜に光を照射して硬化物からなる膜、部分硬化物からなる膜又はパターニングされた膜を形成する工程を含むことを特徴とする。感光性樹脂組成物は、酸発生剤を含有せず、光照射後の高温ベークは行わないことが好ましい。また、感光性樹脂組成物は、架橋剤又はその他添加剤を含有してもよい。
細胞培養支持体としての膜の厚さ(高さ)は、培養中には細胞を上記膜に付着させ、培養細胞の回収時には培養系の温度を変化させて培養細胞を膜から剥離させるために、好ましくは1~100nm、より好ましくは2~50nm、さらに好ましくは3~30nmである。上側から観察した膜の大きさに特に制限は無く、硬化物層の一辺の大きさは、例えば0.1~1,000mmである。
細胞培養支持体としての基材は、前記<基材>と同一のものでかまわない。
【0047】
<下限臨界点温度>
本発明における細胞培養支持体としての培養中には細胞を上記膜に付着させ、培養細胞の回収時には培養系の温度を変化させて培養細胞を膜から剥離させるために下限臨界点温度(Lower Critical Solution Temperature,LCST)を有する。下限臨界点温度は、溶液がある温度以上で2相に分離するときの温度である。すなわち,下限臨界共溶温度をもつ系では,それ以下の温度なら複数成分が組成にかかわらず1相で存在するとされている。
下限臨界点温度(LCST)の値は、ポリマー溶液をリン酸緩衝生理食塩水(Phos
phate buffered saline)(シグマアルドリッチ社製)に2wt%の濃度で溶解させた。窒素雰囲下、該水溶液の温度を1℃/分で下げながら、示差走査熱量計(Differential scanning calorimetry、DSC)(SIIナノテクノロジー(株)製「DSC7020」)を用いて大気を対象として示差熱を測定し、測定曲線のピークトップを示す温度をポリマーの下限臨界点温度(LCST)として算出した。
本発明における細胞培養支持体は、温度応答性ポリマーの構成単位を変更することで、下限臨界点温度(LCST)が15℃以上45℃未満である細胞培養支持体を製造することができる。また、細胞培養支持体は、2種類以上の温度応答性が異なる構成単位を含有する温度応答性ポリマーを用いた感光性樹脂組成物であり、応答温度が2種以上のパターンを有していてもよい。本発明における細胞培養支持体は、前記いずれの細胞培養支持体も使用することができる。
【0048】
<細胞培養支持体の細胞の培養方法等>
本発明において、細胞培養支持体の細胞の培養方法及び条件に特に限定は無く、自体公知の方法によって細胞を培養することができる。
細胞の培養方法は、基材上に、温度応答性ポリマーを含有する感光性樹脂組成物から形成された前記膜を有する細胞培養支持体を用い、前記膜上である細胞培養支持体上に細胞を播種し、培養に適した温度、かつ細胞培養支持体が有する下限臨界点温度よりも高い温度で細胞をインキュベートすることで細胞を培養し、その後、硬化物層の温度を温度応答性ポリマーが有する下限臨界点温度よりも低い温度に調整することによって、細胞培養支持体から細胞を剥離し、細胞を回収することで行われる。
【0049】
本発明において、細胞に特に限定は無く、種々の細胞を培養することができる。細胞としては、例えば、体内の各組織及び臓器を構成する上皮細胞及び内皮細胞;収縮性を示す骨格筋細胞、平滑筋細胞及び心筋細胞;神経系を構成するニューロン及びグリア細胞;繊維芽細胞;体内の代謝に関係する肝実質細胞、非肝実質細胞、及び脂肪細胞;種々の組織に存在する幹細胞、並びに骨髄細胞及びES細胞等が挙げられる。
本発明において、細胞を播種する方法又は細胞培養支持体から剥離させた培養細胞を回収する方法に特に限定は無く、自体公知の方法を用いることができる。
【実施例0050】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、上記・下記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0051】
<a.ポリマー及びモノマーの合成>
<合成例1>
N-イソプロピルアクリルアミド20gとグリシジルメタクリレート2.8gを1-プロパノール81.4gに溶解させた後、75℃まで昇温させた。その後、反応液を75℃に保ちながらアゾビスイソブチロニトリル0.5gを添加し、75℃で24時間反応させN-イソプロピルアクリルアミドとグリシジルメタクリレートのポリマーの溶液を得た。得られたポリマーのGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は34000であった。そのポリマー11.1gを有する溶液50gに、4-アジド安息香酸2.3g、トリエチルアミン0.1g、及び1-プロパノール2.2gを添加し、80℃で48時間反応させた。その後イオン交換を行うことで過剰の4-アジド安息香酸を取り除き、式(11)のポリマーの溶液を得た。得られたポリマーのGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は51000であった。
【化17】
【0052】
<合成例2>
N-イソプロピルアクリルアミド20gとグリシジルメタクリレート1.3gを1-プロパノール76.1gに溶解させた後、75℃まで昇温させた。その後、反応液を75℃に保ちながらアゾビスイソブチロニトリル0.4gを添加し、75℃で24時間反応させN-イソプロピルアクリルアミドとグリシジルメタクリレートのポリマーの溶液を得た。得られたポリマーのGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は29000であった。そのポリマー11.1gを有する溶液50gに、4-アジド安息香酸1.2g、トリエチルアミン0.05g、及び1-プロパノール0.8gを添加し、80℃で48時間反応させた。その後イオン交換を行うことで過剰の4-アジド安息香酸を取り除き、式(12)のポリマーの溶液を得た。得られたポリマーのGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は36000であった。
【化18】
【0053】
<合成例3>
N-イソプロピルアクリルアミド20gと4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル3.9gを1-プロパノール56.9gに溶解させた後、75℃まで昇温させた。その後、反応液を75℃に保ちながらアゾビスイソブチロニトリル0.5gを添加し、75℃で24時間反応させN-イソプロピルアクリルアミドと4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテルの共重合高分子化合物の溶液を得た。得られた共重合高分子化合物のGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は30800であった。その高分子化合物21.4gを有する溶液70gに、4-アジド安息香酸4.2g、トリエチルアミン0.2g、及び1-プロパノール52.8gを添加し、80℃で48時間反応させた。その後イオン交換を行うことで過剰の4-アジド安息香酸を取り除き、式(13)の高分子化合物の溶液を得た。得られた共重合高分子化合物のGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は36000であった。
【化19】
【0054】
<合成例4>
N-イソプロピルアクリルアミド10gとメタクリル酸4-ベンゾイルフェニル0.73gを1-プロパノール43.3gに溶解させた後、70℃まで昇温させた。その後、反応液を70℃に保ちながらアゾビスイソブチロニトリル0.11gを添加し、70℃で24時間反応させN-イソプロピルアクリルアミドとメタクリル酸4-ベンゾイルフェニルの共重合高分子化合物(式(14))の溶液を得た。得られた共重合高分子化合物のGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は55200であった。
【化20】
【0055】
<比較合成例1>
N-イソプロピルアクリルアミド20gとグリシジルメタクリレート2.8gをプロピレングリコールモノメチルエーテル81.4gに溶解させた後、75℃まで昇温させた。その後、反応液を75℃に保ちながらアゾビスイソブチロニトリル0.5gを添加し、75℃で24時間反応させN-イソプロピルアクリルアミドとグリシジルメタクリレートの共重合高分子化合物の溶液を得た。得られた共重合高分子化合物のGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は38900であった。その高分子化合物11.1gを有する溶液50gに、4-アジド安息香酸2.3g、トリエチルアミン0.1g、及び1-プロパノール2.2gを添加し、80℃で48時間反応させた。その後イオン交換を行うことで過剰の4-アジド安息香酸を取り除き、式(15)の高分子化合物の溶液を得た。得られた共重合高分子化合物のGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は59800であった。
【化21】
【0056】
<比較合成例2>
N-イソプロピルアクリルアミド20g、2-ヒドロキシエチルアクリレート5.13gを1-プロパノール101.5gに溶解させた後、80℃まで昇温させた。その後、反応液を80℃に保ちながらアゾビスイソブチロニトリル0.25gを添加し、80℃で24時間反応させN-イソプロピルアクリルアミドと2-ヒドロキシエチルアクリレートの共重合高分子化合物(式(16))の溶液を得た。得られた共重合高分子化合物のGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は23000であった。
【化22】
【0057】
<b.組成物の調製>
<実施例1~3>
合成例1~3で得た反応生成物0.7gを含む溶液3.6gに1-プロパノール6.4gを加えた後、孔径0.10μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いて濾過して感光性樹脂組成物(組成物1~3)の溶液を調製した。
<実施例4>
合成例4で得た反応物生成物0.67gを含む溶液3.24gに1,11-ジアジドー3,6,9-トリオキソウンデカン0.13g(式(17))、1-プロパノール16.63gを加えた後、孔径0.10μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いて濾過して感光性樹脂組成物(組成物4)の溶液を調製した。
【化23】
<比較例1>
比較合成例1で得た反応生成物0.7gを含む溶液3.6gにプロピレングリコールモノメチルエーテル6.4gを加えた後、孔径0.10μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いて濾過して感光性樹脂組成物(比較組成物1)の溶液を調製した。
<比較例2>
比較合成例2で得た反応物生成物2gを含む溶液10gにα-(メチルスルホニルオキシイミノ)-4-メトキシベンジルシアニド(商品名:PAI-1001、みどり化学(株)製)0.1g、1,3,4,6-テトラキス(メトキシメチル)グリコールウリル0.03g及び1-プロパノール0.52gを加え、孔径1.0μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いて濾過して感光性樹脂組成物(比較組成物2)の溶液を調製した。
【0058】
<c.光学パラメーター測定>
実施例1~2で調製した感光性樹脂組成物溶液をスピナーにより、シリコンウェハー上に塗布した。ホットプレート上で100℃1分間焼成し塗膜を形成した。そして、これらの膜を分光エリプソメーター(J.A.Woollam製VUV-VASE)を用い、波長275nmでの減衰係数(k値)を測定した。275nmは4-アジド安息香酸部位が寄与する吸収となる。
結果、実施例1では0.034、実施例2では0.019と変化したことから、ポリマーに望みの4-アジド安息香酸がグラフトされていることが示唆された。
【0059】
<d.感度測定>
実施例1~4で調製した感光性樹脂組成物溶液をスピナーにより、シリコンウェハー及びポリスチレン基板上に塗布した。ホットプレート上で50℃1分間焼成し、膜厚が300nmの塗膜を形成した。アライナーにより254nm光を、露光量を変え照射した後1-プロパノールで現像することにより、シリコンウェハー上及びポリスチレンシャーレ(IWAKI製35mm Non treated Dish)上でも光硬化膜を形成できた。4-アジド安息香酸のグラフト量により感度に差が見られた。また、架橋剤としてのジアジド化合物添加でも同様な感度挙動が見られた。
しかし、比較組成物例2ではポリスチレン基板上に塗布した。ホットプレート上で50℃1分間焼成し、アライナー(キヤノン製PLA-501)により365nm光を、露光量を変え照射した後、露光後ベーク(PEB)し、1-プロパノールで現像することにより光硬化膜を形成するが、PEBでは100℃以上の温度が必要であり、ポリスチレンシャーレの耐熱温度を超えてしまうため、PEB時にポリスチレンシャーレの変形が見られた。感度測定の結果を図1に示す。
【0060】
<e.ポリスチレンシャーレの浸食試験>
ポリスチレンシャーレ(IWAKI製35mm Non treated Dish)に比較組成物1を入れ、コーティングを試みたがシャーレが溶解してしまった。プリピレングリコールモノメチルエーテルから1-プロパノールに変更した組成物1~3ではシャーレを溶解させなかった。

図1