(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132466
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】冷却板及び荷電粒子ビーム描画装置
(51)【国際特許分類】
H01J 37/141 20060101AFI20240920BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20240920BHJP
H01J 37/305 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H01J37/141 B
H01L21/30 541A
H01J37/305 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043235
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】504162958
【氏名又は名称】株式会社ニューフレアテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】辻田 耕希
(72)【発明者】
【氏名】若山 茂
(72)【発明者】
【氏名】山中 吉郎
【テーマコード(参考)】
5C101
5F056
【Fターム(参考)】
5C101EE14
5C101EE22
5C101EE63
5C101FF02
5C101GG19
5F056CB31
5F056EA02
5F056EA05
5F056EA06
5F056EA14
(57)【要約】
【課題】均熱化に優れた冷却板、及びこの冷却板を用いて対物レンズのコイルを効率良く冷却できる荷電粒子ビーム描画装置を提供する。
【解決手段】本実施形態に係る冷却板は、環状の平面部を備え、前記平面部には、渦巻状の第1冷媒流路と、前記第1冷媒流路の下方に位置する渦巻状の第2冷媒流路とが互いに重なり合うように形成されており、前記第1冷媒流路の内、内周の流路は徐々に低位となるように傾斜し、前記第2冷媒流路の内周の流路に接続されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の平面部を備える冷却板であって、
前記平面部には、渦巻状の第1冷媒流路と、前記第1冷媒流路の下方に位置する渦巻状の第2冷媒流路とが互いに重なり合うように形成されており、
前記第1冷媒流路の内、内周の流路は徐々に低位となるように傾斜し、前記第2冷媒流路の内周の流路に接続されている、冷却板。
【請求項2】
前記第1冷媒流路の内、内周の流路は、前記第2冷媒流路の流路と互いに重なり合うように配置されている、請求項1に記載の冷却板。
【請求項3】
前記第1冷媒流路における冷媒の周回方向と、前記第2冷媒流路における冷媒の周回方向とが同一である、請求項1に記載の冷却板。
【請求項4】
前記平面部には、複数層の渦巻状の冷媒流路が形成されており、
各冷媒流路は、最内周又は最外周の流路が、上層側又は下層側の冷媒流路に接続されている、請求項1に記載の冷却板。
【請求項5】
前記平面部には、複数層の渦巻状の冷媒流路が複数段形成されており、
各段において、各冷媒流路は、最内周又は最外周の流路が、上層側又は下層側の冷媒流路に接続されており、
冷媒の入口及び出口が各段に設けられている、請求項1に記載の冷却板。
【請求項6】
冷媒が、冷却対象の発熱体が配置された面側の冷媒流路を外周側から内周側に向かって進む、請求項1に記載の冷却板。
【請求項7】
描画対象の基板を載置するステージが設置された描画室と、
前記描画室に連結され、荷電粒子ビームを放出する放出部、前記荷電粒子ビームを偏向する偏向器、及び前記荷電粒子ビームを前記基板上に結像させる対物レンズが設けられた電子光学鏡筒と、
を備え、
前記対物レンズは、コイルと、前記コイルを内側に配置するヨークとを有する電磁レンズであり、
前記ヨーク内に、前記コイルを冷却する請求項1乃至6のいずれかに記載された冷却板が設けられた、荷電粒子ビーム描画装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却板及び荷電粒子ビーム描画装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LSIの高集積化に伴い、半導体デバイスに要求される回路線幅は年々微細化されてきている。半導体デバイスへ所望の回路パターンを形成するためには、縮小投影型露光装置を用いて、石英上に形成された高精度の原画パターン(マスク、或いは特にステッパやスキャナで用いられるものはレチクルともいう。)をウェーハ上に縮小転写する手法が採用されている。高精度の原画パターンは、電子ビーム描画装置によって描画され、所謂、電子ビームリソグラフィ技術が用いられている。
【0003】
電子ビーム描画装置は、描画対象の試料を載置するステージが収容された描画室と、描画室に連結された電子光学鏡筒とを備える。電子光学鏡筒内には、電子ビームを放出する電子銃、ビームを偏向して試料上でのビーム照射位置を決定する偏向器、試料表面にビームの焦点を合わせる対物レンズ等が設けられている。
【0004】
対物レンズは、磁極とコイルを有する磁界レンズ(電磁レンズ)で構成され、コイルに電流を流して作られた磁力線がポールピースを介して空間に漏洩し、磁界が作られ、電子ビームに対するレンズとして機能する。対物レンズは、電子光学鏡筒の最下部に配置されており、コイルに電流を流すことにより発熱し、ステージ上の試料の温度分布に影響を与えていた。
【0005】
従来の電子ビーム描画装置では、対物レンズのコイルに対し、冷却板を介して冷却水で発生熱を吸収していたが、冷却水での吸熱の過程で冷却板内部に温度勾配が生じ、その温度勾配が影響して試料における温度分布を発生させることがあった。
【0006】
このような問題を解決するため、特許文献1には、コイル冷却板と試料との間に3重の熱シールド構造を設ける構成が開示されている。しかし、このような構成では、3重シールド構造の配置スペースを確保することが困難になることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011-66247号公報
【特許文献2】特開2020-145238号公報
【特許文献3】特開2015-12057号公報
【特許文献4】特開2000-208975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、均熱化に優れた冷却板、及びこの冷却板を用いて対物レンズのコイルを効率良く冷却できる荷電粒子ビーム描画装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様による冷却板は、環状の平面部を備える冷却板であって、前記平面部には、渦巻状の第1冷媒流路と、前記第1冷媒流路の下方に位置する渦巻状の第2冷媒流路とが互いに重なり合うように形成されており、前記第1冷媒流路の内、内周の流路は徐々に低位となるように傾斜し、前記第2冷媒流路の内周の流路に接続されているものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、冷却板を均熱化することができる。また、本発明によれば、対物レンズのコイルを効率良く冷却できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に電子ビーム描画装置の概略図である。
【
図7】
図7Aは流路の全てを円弧とする例を示し、
図7Bは流路の一部を楕円弧とする例を示す図である。
【
図8】コイル冷却板の下面の温度分布のシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。実施の形態では、荷電粒子ビームの一例として、電子ビームを用いた構成について説明する。但し、荷電粒子ビームは電子ビームに限るものでなく、イオンビーム等でもよい。
【0013】
図1は、本実施形態による電子ビーム描画装置の概略構成図である。
図1に示す電子ビーム描画装置1は、クリーンルームにも設置可能な装置である。電子ビーム描画装置1は、描画対象の試料であるマスク基板2を載置するステージ3を内蔵して真空引きされる描画室5と、描画室5の上部に連結された電子光学鏡筒7とを備える。電子光学鏡筒7内に設けられた電子銃4から電子ビーム6が放出され、ステージ3に載置されたマスク基板2に照射される。
【0014】
ステージ3は、ステージ移動手段8によって移動可能である。ステージ3には、レーザ干渉計10用のミラー9が設けられている。レーザ干渉計10は、ミラー9にレーザ光を照射し、ミラー9の反射光を受光し、受光信号を位置検出手段(図示略)に出力する。位置検出手段は、レーザ干渉計10からの信号に基づいて、ステージ3の位置を検出する。
【0015】
電子光学鏡筒7には、電子ビーム6を偏向し、電子ビーム6の形状や、マスク基板2上での照射位置を調整する偏向器(図示略)が設けられている。また、電子光学鏡筒7の最下部には、電子ビーム6をマスク基板2上に結像させる対物レンズ20が配置されている。
【0016】
描画制御装置(図示略)が、描画条件などを記述した描画ジョブに基づいて、ステージ3の位置や偏向器の偏向量等を制御し、マスク基板2に対する描画処理を行う。
【0017】
図2は、対物レンズ20の模式的な縦断面図である。対物レンズ20は磁界レンズ(電磁レンズ)であり、ドーナツ型のコイル21と、コイル21を収容するヨーク22とを有する。ヨーク22は鉄などの透磁率の高い材料で構成され、一部に切り欠き(ポールピース23)が設けられている。
【0018】
コイル21に電流を流して作られた磁力線が、ポールピース23を介して空間に漏洩し、磁界が作られる。
【0019】
コイル21に電流を流すことで、コイル21は発熱する。そのため、ヨーク22内には、コイル21で発生した熱を吸収する金属製のコイル冷却板30が配置されている。
【0020】
図2,
図3に示すように、コイル冷却板30は、環状の平面部31(底部)と、平面部31の外周縁から上方に起立する円筒状の周壁部32とを有する。環状とは、例えば円環状や楕円環状である。コイル21は平面部31の上に載置されている。また、コイル21の外周は周壁部32に取り囲まれている。
【0021】
コイル21の下面は、絶縁のための樹脂モールド材を介して、平面部31の上面に接している。同様に、コイル21の外周面は、樹脂モールド材を介して、周壁部32の内周面に接している。
【0022】
平面部31の内部には、コイル21を冷却する冷却水(冷媒)が流れる冷却水流路40が形成されている。
【0023】
冷却水流路40の構成を、
図4~
図6を用いて説明する。
図4は
図3のIV-IV線断面図である。
図5は、平面部31における冷却水流路40の模式図である。
図6は、冷却水の流れ方を説明する図である。
【0024】
冷却水流路40は、環状の平面部31を周回するような渦巻状の上層流路41と、渦巻状の下層流路42とを備える2層構造になっている。上層流路41のうち、最内周の流路41aは徐々に低位となるように傾斜し(螺旋状であり)、下層流路42の最内周の流路42aに接続される。上層流路41の最外周の流路41bの端部は上方に屈曲し、周壁部32内で上下方向に延在し、周壁部32の上面に冷却水入口41c(
図3参照)が形成される。
【0025】
平面部31内の上層流路41のうち、最内周の流路41a以外の部分は、同じ高さに配置されている。
【0026】
下層流路42の最外周の流路42bの端部は上方に屈曲し、周壁部32内で上下方向に延在し、周壁部32の上面に冷却水出口42cが形成される。平面部31内の下層流路42は、同じ高さに配置されている。
【0027】
流路の幅W(
図4参照)は、30mm程度であり、高さHは2mm程度である。また、流路の間隔D1(隣接する内周側の流路と外周側の流路との間の距離)は1mm程度である。また、上層流路41と下層流路42との間隔D2は1mm程度である。上層流路41と下層流路42とは流路の断面積が同一(一定)である。
【0028】
上層流路41の流路は、下層流路42の流路の上方に位置し、上層流路41と下層流路42とが互いに重なり合うように形成されている。
【0029】
描画装置の外部から、図示しない経路を介して冷却水が装置内に導入され、冷却水入口41cに供給される。
図6に示すように、冷却水は、上層流路41を外周側から内周側に向かって反時計回りに周回しながら進む。
【0030】
冷却水は、上層流路41の最内周の流路41aを下って下層流路42へ入り、下層流路42を内周側から外周側に向かって反時計回りに周回しながら進む。冷却水は、冷却水出口42cに接続された経路(図示略)を介して、描画装置の外部へ排出される。
【0031】
コイル21が載置された平面部31の内部に冷却水の流路が設けられているため、コイル21を効率良く冷却できる。
【0032】
発熱したコイル21により、冷却水は、冷却水流路40を進むに伴い徐々に温度が上昇する。従って、冷却水は、冷却水入口41cに近い程、温度が低く、冷却水出口42cに近い程、温度が高くなる。ここで、本実施形態に係るコイル冷却板30では、冷却水は、上層流路41を外周側から内周側に向かって周回しながら進み、続いて、上層流路41の直下に設けられた下層流路42を内周側から外周側に向かって周回しながら進む。
【0033】
温度が高い冷却水が流れる冷却水出口42cに近い流路の直上に、温度が低い冷却水が流れる冷却水入口41cに近い流路が配置されているため、コイル冷却板30の平面部31全体が均熱化される。
【0034】
上層流路41及び下層流路42は、共に渦巻状であり、折れ曲がりや急激な折り返しがなく、滑らかに接続されている。そのため、圧力損失を低減し、冷却水流量を増やすことができ、熱伝達率を向上させ、より効率的に吸熱することができる。
【0035】
コイル冷却板30の平面部31全体を効率よく均熱化するために、上層流路41と下層流路42とが重なり合う面積を大きくすることが好ましく、例えば、コイル冷却板30の上面視において、上層流路41の80%以上が下層流路42に重なっている(下層流路42を覆っている)ことが好ましい。
【0036】
図7A、
図7Bに示すように、上層流路41及び下層流路42は、流路の全てを円弧とする場合と比較して、一部を楕円弧とすることで、流路の途中に直線部や折れ曲がりを作ることなく、上層流路41と下層流路42とが重なり合う面積が大きくなるため、コイル冷却板30の平面部31の均熱化に好適である。
【0037】
以下のシミュレーション条件で熱流体解析を行った場合の、コイル21(発熱体)を冷却するコイル冷却板30の平面部31の下面における温度分布のシミュレーション結果を
図8に示す。なお、シミュレーションでは、上層流路41の85%が下層流路42に重なっているものとした。
・流体名 水(所定温度)
・熱伝導率 0.019[W/m・K]
・流量 5[L/min]
・発熱体の発熱量 45[W]
【0038】
図8に示す解析結果のカラースケールの範囲は0.5℃である。シミュレーションにより、コイル冷却板30の平面部31の下面における温度分布(高温箇所と低温箇所との温度差)が約0.4℃に収まり、均熱化されていることが確認できた。コイル冷却板30の平面部31の下面を均熱化することで、マスク基板2における温度分布の発生を抑制できる。
【0039】
本実施形態によれば、コイル冷却板30とマスク基板2との間に従来構成のような多重の熱シールド構造を設ける必要がなく、部品点数の削減、省スペース化、コスト削減が可能となる。
【0040】
コイル冷却板30は金属積層造形法で作製することができ、材料はステンレス合金が好ましい。熱伝導率の高い金属として知られる銅と比較すると、ステンレスは熱伝導率が低いが、耐食性が高く、長期の使用が可能であり、かつ造形が容易である。また、上述したように、コイル冷却板30は、コイル21の直下に冷却水の流路を配置することができるため、ステンレス(又は熱伝導率は低いが耐食性が高い他の金属)で作製した場合でもコイル21を十分に冷却できる。
【0041】
冷却水入口41c及び冷却水出口42cの位置は周壁部32の上面に限定されず、周壁部32の側面や底面に形成してもよい。
【0042】
コイル冷却板30の周壁部32内にも冷却水の流路を形成してもよい。
【0043】
コイル冷却板30は、周壁部32を省略した構成としてもよい。この場合、環状の平面部31の外周面に冷却水入口及び冷却水出口を形成すればよい。
【0044】
上層流路41の最外周の流路の端部に冷却水出口を設け、下層流路42の最外周の流路の端部に冷却水入口を設けてもよいが、冷却対象のコイル21に近い上層流路41に冷却水入口を設ける方が好ましい。
【0045】
渦巻状の上層流路41及び下層流路42の渦巻き周回数は特に限定されず、平面部31のサイズ、流路の幅や高さ、冷媒流量、冷却対象の発熱量等から決定すればよい。
【0046】
上記実施形態では、渦巻状の上層流路41及び下層流路42を備える2層構造の冷却水流路40について説明したが、
図9に示すように、冷却水流路40は2×n層の積層構造(nは1以上の整数)とすることができる。
【0047】
例えば、冷却水流路を4層構造(n=2)とする場合、1層目(最上層)の流路の最外周部分に冷却水入口が設けられる。1層目の流路の最内周部分は徐々に低位となるように傾斜し、2層目の流路の最内周部分に接続される。2層目の流路の最外周部分は徐々に低位となるように傾斜し、3層目の流路の最外周部分に接続される。3層目の流路の最内周部分は徐々に低位となるように傾斜し、4層目(最下層)の流路の最内周部分に接続される。4層目の流路の最外周部分に冷却水出口が設けられる。
【0048】
2×n層の積層構造の冷却水流路を、m段(mは2以上の整数)設けてもよい。この場合、冷却水入口及び冷却水出口は各段に設けられる。例えば、4層構造の冷却水流路が2段設けられた冷却板は、8層(=4層×2)の流路を有する。1層目の流路の最外周部分に冷却水入口が設けられる。4層目の流路の最外周部分に冷却水出口が設けられる。4層目の流路と5層目の流路とは接続されない。5層目の流路の最外周部分に冷却水入口が設けられる。8層目の流路の最外周部分に冷却水出口が設けられる。4層の流路を2段並列に配置することで、8層の流路を直列に接続する場合と比較して、冷却水の圧力損失を下げることができる。各段の冷却水流路の流路層数は同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0049】
冷却水流路40は2×n+1層(nは1以上の整数)、すなわち3以上の奇数層の積層構造としてもよい。冷却水流路を3層構造(n=1)とする場合、1層目(最上層)の流路の最外周部分に冷却水入口が設けられる。1層目の流路の最内周部分は徐々に低位となるように傾斜し、2層目の流路の最内周部分に接続される。2層目の流路の最外周部分は徐々に低位となるように傾斜し、3層目の流路の最外周部分に接続される。3層目の流路の最内周部分は、下から接線方向に直線状又は滑らかな円弧を描きながら冷却水出口に向かう形状となる。
【0050】
2×n+1層の積層構造の冷却水流路を、m段(mは2以上の整数)設けてもよい。冷却水入口及び冷却水出口は各段に設けられる。各段の冷却水流路の流路層数は同じでもよいし、異なっていてもよい。冷却水流路の流路層数が偶数の段と、(3以上の)奇数の段とが含まれていてもよい。
【0051】
上記実施形態ではシングルビーム描画装置について説明したが、描画装置はマルチビーム描画装置であってもよい。
【0052】
上記実施形態では、描画装置の対物レンズのコイルを冷却する構成について説明したが、冷却板の冷却対象は特に限定されず、周辺部材の温度分布への影響を抑制したい様々な発熱部品に適応することができる。
【0053】
発熱体より上方に均熱化したい面がある場合は、発熱体の上面に冷却板を設置することが可能である。この場合、冷却板には、発熱体を配置した面側の冷却水流路の最外周部分から冷却水を供給する。
【0054】
冷却水流路40(冷媒流路)に流す冷媒は水に限定されず、装置部品の劣化防止及び沸点上昇の目的で何らかの物質を水に加え生成された水溶液の使用が可能である。また、HFE(ハイドロフルオロエーテル)などフッ素系の冷媒や、FC(フロリナート)、HFPE(H-ガルデン)の使用が可能である。
【0055】
平面部31を、内周側ほど低位となるように傾斜したすり鉢状の構成としてもよい。この場合、上層流路41は冷却水入口から徐々に低位となるように傾斜した螺旋状となる。一方、下層流路42は、上層流路41との接続箇所から冷却水出口に向かって徐々に高位となるように傾斜した螺旋状となる。上層流路41及び下層流路42は、内周側ほど低位となる。
【0056】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0057】
2 マスク基板
20 対物レンズ
21 コイル
30 コイル冷却板
40 冷却水流路