(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132473
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】定着装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
G03G15/20 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043244
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【弁理士】
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】岡本 潤
(72)【発明者】
【氏名】古市 祐介
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 聖治
(72)【発明者】
【氏名】池田 保
(72)【発明者】
【氏名】南野 茂夫
【テーマコード(参考)】
2H033
【Fターム(参考)】
2H033BA03
2H033BA06
2H033BA11
2H033BA12
2H033BA31
2H033BB02
2H033BB03
2H033BB04
2H033BB05
2H033BB12
2H033BB13
2H033BB14
2H033BB15
2H033BB18
2H033BB21
2H033BB22
2H033BB29
2H033BB30
2H033BB33
2H033BB34
2H033BE00
2H033BE03
(57)【要約】
【課題】筐体フレームの小型化及び低コスト化と誤装着防止とを両立させることが可能な定着装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置100に着脱可能な定着装置10であって、画像形成装置100への挿入方向の後方側の面を覆う支持板25、及び挿入方向に沿った一対の側板26からなり、挿入方向の前方側の面が開口した筐体フレームを備え、支持板25は、一方の側板26bの外側に延びる延在部25aを有し、延在部25aは、画像形成装置100に装着されたとき、画像形成装置側に設けられた定着装置の適合性を識別する係合部と係合する被係合部を備える定着装置である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置に着脱可能な定着装置であって、
前記画像形成装置への挿入方向の後方側の面を覆う支持板、及び前記挿入方向に沿った一対の側板からなり、前記挿入方向の前方側の面が開口した筐体フレームを備え、
前記支持板は、一方の前記側板の外側に延びる延在部を有し、
前記延在部は、前記画像形成装置に装着されたとき、前記画像形成装置側に設けられた前記定着装置の適合性を識別する係合部と係合する被係合部を備えることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記延在部は、前記画像形成装置に装着されたとき、前記画像形成装置側の本体カバーまたは定着装置収容部を構成する支持板に設けられた前記定着装置の適合性を識別する係合部と係合する被係合部を備えることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記係合部が係合状態を検知する検知手段を備え、
前記延在部の前記被係合部は、前記画像形成装置に装着されたとき、前記係合部と係合するとともに前記検知手段を作動させることを特徴とする請求項1または2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記延在部は、前記前記画像形成装置に装着されたとき、前記画像形成装置と電気的に接続されるコネクタを備えることを特徴とする請求項1または2に記載の定着装置。
【請求項5】
装着される定着装置の適合性を識別する係合部を有し、
請求項1または2に記載の定着装置が搭載されたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
前記係合部が係合状態を検知する検知手段を備え、
前記検知手段がプッシュスイッチであることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置に搭載される定着装置は、紙詰まりの処理、定着装置内部品のメンテナンス、及び定着装置の交換等のために定着装置を画像形成装置本体から着脱する必要がある。
【0003】
定着装置を装着する際、本体の電源電圧仕様と異なる入力電源電圧仕様の定着装置を誤って装着すると事故や故障を招くおそれがある。この問題に対し、特許文献1では、定着装置と画像形成装置本体とを電気的に接続するコネクタが、供給される商用電源の種類によって異なるピンアサインを有する構成が開示されている。
【0004】
しかしながら、誤った装着による不具合を電気的接続により回避するためには複雑な構成が必要となる。そこで近年、適合性の無い定着装置が画像形成装置に誤装着されるのを防止するため、適合性を識別する部材(メカ非互換部材)を備える構成が採用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
定着装置の適合性を識別するための部材としては、例えば、定着装置側に設けられた一方の部材と、画像形成装置側に設けられた他方の部材とが係合する構造を有するものが知られている。適合性がない定着装置が挿入された場合は係合しないため、誤装着を防止することができる。定着装置側の部材は、定着装置の筐体フレーム上に設けられる。
【0006】
定着装置の筐体フレームは、従来、構成部材の四方を囲む板状の部材で構成されている。これに対し近年、装置の軽量化や小型化、及び低コスト化のために、筐体フレームの一部を省略する構成が提案されている。この場合、装置の適合性を識別するための部材を配置することが困難になるおそれがある。
【0007】
そこで本発明は、筐体フレームの小型化及び低コスト化と誤装着防止とを両立させることが可能な定着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の定着装置は、画像形成装置に着脱可能な定着装置であって、前記画像形成装置への挿入方向の後方側の面を覆う支持板、及び前記挿入方向に沿った一対の側板からなり、前記挿入方向の前方側の面が開口した筐体フレームを備え、前記支持板は、一方の前記側板の外側に延びる延在部を有し、前記延在部は、前記画像形成装置に装着されたとき、前記画像形成装置側に設けられた前記定着装置の適合性を識別する係合部と係合する被係合部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、筐体フレームの小型化及び低コスト化と誤装着防止とを両立させることが可能な定着装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の一形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【
図2】本実施形態に係る定着装置の概略構成図である。
【
図3】本実施形態に係る定着装置の筐体フレームの構成と画像形成装置への挿入方向を説明する図である。
【
図4】本発明の実施の一形態に係る定着装置の構成を示す図である。
【
図5】本発明の実施の一形態に係る定着装置の構成を示す図である。
【
図6】従来の定着装置の筐体フレームの構成を説明する図である。
【
図7】本発明の実施の一形態に係る定着装置の構成を示す図と部分拡大図である。
【
図8】本発明の実施の一形態に係る定着装置の構成を示す図と部分拡大図である。
【
図9】検知手段の一例としてのプッシュスイッチを説明する図である。
【
図10】上記実施形態とは異なる定着装置の構成を示す図である。
【
図12】上記実施形態とは異なる定着装置の構成を示す図である。
【
図13】上記実施形態とは異なる定着装置の構成を示す図である。
【
図14】上記実施形態とは異なる定着装置の構成を示す図である。
【
図15】上記実施形態とは異なる定着装置の構成を示す図である。
【
図16】上記実施形態とは異なる画像形成装置の構成を示す図である。
【
図19】
図17に示されるヒータ及びヒータホルダの斜視図である。
【
図20】ヒータに対するコネクタの取付状態を示す斜視図である。
【
図21】(A)は
図17に示される定着装置が備える温度センサとサーモスタットの配置を示す図であり、(B)は
図20に示されるフランジ部材の溝部を示す図である。
【
図22】上記実施形態とは異なる定着装置の構成を示す図である。
【
図23】
図22に示されるヒータ、第1高熱伝導部材、ヒータホルダの斜視図である。
【
図24】第1高熱伝導部材の配置を示すヒータの平面図である。
【
図25】第1高熱伝導部材の配置の他の例を示すヒータの平面図である。
【
図26】第1高熱伝導部材の配置のさらに別の例を示すヒータの平面図である。
【
図27】拡大分割領域を示すヒータの平面図である。
【
図28】上記実施形態とは異なる定着装置の構成を示す図である。
【
図29】
図28に示されるヒータ、第1高熱伝導部材、第2高熱伝導部材、ヒータホルダの斜視図である。
【
図30】第1高熱伝導部材及び第2高熱伝導部材の配置を示すヒータの平面図である。
【
図31】第1高熱伝導部材及び第2高熱伝導部材の配置の他の例を示すヒータの平面図である。
【
図32】第2高熱伝導部材の配置のさらに別の例を示すヒータの平面図である。
【
図33】上記実施形態とは異なる定着装置の構成を示す図である。
【
図34】グラフェンの原子結晶構造を示す図である。
【
図35】グラファイトの原子結晶構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る定着装置および画像形成装置について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
また、各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材及び構成部品などの構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0012】
図1は、本発明の実施の一形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
ここで、本明細書中における「画像形成装置」には、プリンタ、複写機、ファクシミリ、印刷機、又は、これらのうちの二つ以上を組み合わせた複合機などが含まれる。また、以下の説明で使用する「画像形成」とは、文字及び図形などの意味を持つ画像を形成するだけでなく、パターンなどの意味を持たない画像を形成することも意味する。
まず、
図1を参照して、本実施形態に係る画像形成装置の全体構成及び動作について説明する。
【0013】
図1に示す画像形成装置100は、画像形成装置本体に対して着脱可能な4つの作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkを備えている。各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkは、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの異なる色の現像剤を収容している以外は同様の構成となっている。これらの色の現像剤は、カラー画像の色分解成分に対応する。各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkは、像担持体としてのドラム状の感光体2と、帯電装置3と、現像装置4と、クリーニング装置5とを備えている。帯電装置3は感光体2の表面を帯電する。現像装置4は、感光体2の表面に現像剤としてのトナーを供給してトナー画像を形成する。クリーニング装置5は感光体2の表面をクリーニングする。
【0014】
また、画像形成装置100は、露光装置6と、給紙装置7と、転写装置8と、加熱装置としての定着装置10と、排紙装置9とを備えている。
露光装置6は、各感光体2の表面を露光し、その表面に静電潜像を形成する。給紙装置7は、記録媒体(以下、「用紙」ともいう)Pを用紙搬送路14に供給する。転写装置8は各感光体2に形成されたトナー画像を用紙Pに転写する。定着装置10は用紙Pに転写されたトナー画像を用紙P表面に定着させる。排紙装置9は用紙Pを装置外に排出する。各作像ユニット1、感光体2、帯電装置3、露光装置6、転写装置8などは、用紙に画像を形成するための画像形成手段を構成している。
【0015】
画像形成装置100は、定着装置10が着脱可能に配設される定着装置収容部105を備えている。
また、画像形成装置100は、定着装置10の適合性を識別するための構造を有している。適合性を識別する具体的態様については後述する。
【0016】
転写装置8は、中間転写体としての無端状の中間転写ベルト11と、一次転写部材としての4つの一次転写ローラ12と、二次転写部材としての二次転写ローラ13とを有している。中間転写ベルト11は複数のローラによって張架されている。一次転写ローラ12は各感光体2上のトナー画像を中間転写ベルト11へ転写する。二次転写ローラ13は中間転写ベルト11上に転写されたトナー画像を用紙Pへ転写する。複数の一次転写ローラ12は、それぞれ、中間転写ベルト11を介して感光体2に接触している。これにより、中間転写ベルト11と各感光体2とが互いに接触し、これらの間に一次転写ニップが形成される。一方、二次転写ローラ13は、中間転写ベルト11を介して中間転写ベルト11を張架するローラの1つに接触している。これにより、二次転写ローラ13と中間転写ベルト11との間には二次転写ニップが形成されている。
【0017】
また、用紙搬送路14における給紙装置7から二次転写ニップ(二次転写ローラ13)に至るまでの途中には、一対のタイミングローラ15が設けられている。
【0018】
次に、
図1を参照して上記画像形成装置の印刷動作について説明する。
印刷動作開始の指示があると、各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkにおいては、感光体2が
図1の時計回りに回転駆動され、帯電装置3によって感光体2の表面が均一な高電位に帯電される。次いで、原稿読取装置によって読み取られた原稿の画像情報、あるいは端末からプリント指示されたプリント情報に基づいて、露光装置6が各感光体2の表面を露光する。これにより、露光された部分の電位が低下して静電潜像が形成される。そして、この静電潜像に対して現像装置4からトナーが供給され、各感光体2上にトナー画像が形成される。
【0019】
各感光体2上に形成されたトナー画像は、各感光体2の回転に伴って回転し、一次転写ニップ(一次転写ローラ12の位置)に達する。そしてトナー画像は、
図1の反時計回りに回転駆動する中間転写ベルト11に順次重なり合うように転写される。そして、中間転写ベルト11上に転写されたトナー画像は、中間転写ベルト11の回転に伴って二次転写ニップ(二次転写ローラ13の位置)へ搬送される。トナー画像は、二次転写ニップにおいて搬送されてきた用紙Pに転写される。この用紙Pは、給紙装置7から供給されたものである。給紙装置7から供給された用紙Pは、タイミングローラ15によって一旦停止された後、中間転写ベルト11上のトナー画像が二次転写ニップに至るタイミングに合わせて二次転写ニップへ搬送される。かくして、用紙P上にフルカラーのトナー画像が担持される。また、トナー画像が転写された後、各感光体2上に残留するトナーは各クリーニング装置5によって除去される。
【0020】
トナー画像が転写された用紙Pは、定着装置10へと搬送され、定着装置10によって用紙Pにトナー画像が定着される。その後、用紙Pは排紙装置9によって装置外に排出されて、一連の印刷動作が完了する。
【0021】
なお、画像が形成される記録媒体としては、用紙P(普通紙)の他、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ、OHPシート、プラスチックフィルム、プリプレグ、銅箔等が含まれる。
【0022】
続いて、本発明が適用される定着装置の構成の一例について説明する。
図2は定着装置の側面の概略構成図である。
図3は、本実施形態に係る定着装置の筐体フレームの構成と画像形成装置への挿入方向を説明する図である。
【0023】
図2に示すように、本実施形態に係る定着装置10は、定着部材としての回転可能な無端状の定着ベルト20と、定着ベルト20を加熱するヒータ22と、ヒータ22を保持するヒータホルダ23と、定着ベルト20の内側に配設されヒータホルダ23を支持するステー24と、定着ベルト20とニップ部Nを形成する加圧ローラ21と、を備えている。
【0024】
図2の紙面に直交する方向は定着ベルト20、加圧ローラ21、ヒータ22、ヒータホルダ23、ステー24等の長手方向であり、以下、この方向を単に長手方向と呼ぶ。なお、この長手方向は搬送される用紙Pの幅方向、定着ベルト20のベルト幅方向、そして、加圧ローラ21の軸方向でもある。
【0025】
定着ベルト20は、例えば外径が25mmで厚みが40~120μmのポリイミド(PI)製の筒状基体を有している。定着ベルト20の最表層には、耐久性を高めて離型性を確保するために、PFAやPTFE等のフッ素系樹脂による厚みが5~50μmの離型層が形成される。基体と離型層の間に厚さ50~500μmのゴム等からなる弾性層を設けてもよい。また、定着ベルト20の基体はポリイミドに限らず、PEEKなどの耐熱性樹脂やニッケル(Ni)、SUSなどの金属基体であってもよい。定着ベルト20の内周面に摺動層としてポリイミドやPTFEなどをコートしてもよい。
【0026】
加圧ローラ21は、例えば外径が25mmであり、中実の鉄製芯金21aと、この芯金21aの表面に形成された弾性層21bと、弾性層21bの外側に形成された離型層21cとで構成されている。弾性層21bはシリコーンゴムで形成されており、厚みは例えば3.5mmである。弾性層21bの表面は離型性を高めるために、厚みが例えば40μm程度のフッ素樹脂層による離型層21cを形成するのが望ましい。
【0027】
加圧ローラ21が付勢手段によって定着ベルト20側へ付勢されることで、加圧ローラ21は定着ベルト20を介してヒータ22に圧接される。これにより、定着ベルト20と加圧ローラ21との間にニップ部Nが形成される。また、加圧ローラ21は駆動手段によって回転駆動されるように構成されており、加圧ローラ21が
図2の矢印方向に回転すると、これに伴って定着ベルト20が従動回転する。
【0028】
ヒータ22は、定着ベルト20の幅方向に渡って長手状に設けられ、定着ベルト20の内周面に接触するように配置されている。ヒータ22は、定着ベルト20に対して非接触、あるいは低摩擦シートなどを介して間接的に接触する場合であってもよいが、ヒータ22を定着ベルト20に対して直接接触させる方が定着ベルト20への熱伝達効率がよくなる。また、ヒータ22を定着ベルト20の外周面に接触させることもできるが、定着ベルト20の外周面がヒータ22との接触により傷付くと定着品質が低下する虞があるため、ヒータ22は定着ベルト20の内周面に接触している方がよい。
【0029】
ヒータホルダ23及びステー24は、定着ベルト20の内周側に配置されている。ステー24は、金属製のチャンネル材で構成され、その両端部分が側板26に支持されている。ステー24によってヒータホルダ23のヒータ22側とは反対側の面が支持されていることで、ヒータ22及びヒータホルダ23は加圧ローラ21の加圧力に対して大きく撓むことなく保たれ、定着ベルト20と加圧ローラ21との間にニップ部Nが形成される。
【0030】
ヒータホルダ23は、ヒータ22の熱によって高温になりやすいため、耐熱性の材料で形成されることが望ましい。例えば、ヒータホルダ23をLCPやPEEKなどの低熱伝導性の耐熱性樹脂で形成した場合は、ヒータ22からヒータホルダ23への伝熱が抑制され効率的に定着ベルト20を加熱することが可能である。
【0031】
印刷動作が開始されると、加圧ローラ21が回転駆動され、定着ベルト20が従動回転を開始する。また、ヒータ22に電力が供給されることで、定着ベルト20が加熱される。そして、定着ベルト20の温度が所定の目標温度(定着温度)に到達した状態で、
図2に示すように、未定着トナー画像が担持された用紙Pが定着ベルト20と加圧ローラ21との間(ニップ部N)に搬送されることで、未定着トナー画像が加熱及び加圧されて用紙Pに定着される。
【0032】
図3に示すように、本実施形態の定着装置10の筐体フレームは、画像形成装置100への挿入方向の後方側の面を覆う支持板25、及び挿入方向に沿った一対の側板26(26a、26b)からなり、挿入方向の前方側の支持板が省略され、前方側の面は開口している。支持板25は、一方の側板26bの外側に延びる延在部25aを有している。
定着ベルト20は挿入方向の前方側、加圧ローラ21は挿入方向の後方側に配設されている。
【0033】
図6(A)及び
図6(B)は、従来の定着装置の筐体フレームを示す図であり、画像形成装置に装着された状態を示している。
図6(A)に示す従来例は、筐体フレームが構成部材の四方を囲む板状の部材で構成されている。本実施形態の定着装置10において省略されている挿入方向前方側のフレーム部材44を備えている。フレーム部材44には、画像形成装置100の定着装置収容部105を構成する収容部支持板40に設けられた係合凹部40aと係合する被係合凸部46を有する部材が配設されている。
図6(B)に示す従来例は、筐体フレームが構成部材の四方を囲む板状の部材で構成され、さらにカバー部材45を備えている。カバー部材45には、収容部支持板40に設けられた係合凹部40aと係合する被係合凸部46を有する部材が配設されている。
【0034】
係合凹部40a及び被係合凸部46は、係合により定着装置10の適合性を識別するための構成(以下、「識別係合部」ともいう)であり、適合性がある場合は係合し、適合性が無い場合は係合しない。
【0035】
図3に示す本実施形態の定着装置10では、フレーム部材44とカバー部材45が省略されているため、
図6(A)及び
図6(B)に示す被係合凸部46を配設することができないという課題が生じる。
【0036】
これに対し本実施形態の定着装置10では、支持板25に延在部25aを設け、延在部25aに識別係合部を備えている。すなわち、延在部25aに、画像形成装置100に装着されたとき、画像形成装置側に設けられた定着装置の適合性を識別する係合部と係合する被係合部を備えている。
以下、識別係合部の態様を説明する。
【0037】
図4に示す定着装置10は、延在部25aに、画像形成装置100側の本体カバー50に設けられた定着装置の適合性を識別する係合部42aと係合する被係合部27aを備えている。
係合部42aは凸部を有する部材である。
被係合部27aは係合部42aの凸部と係合する凹部、または凸部と嵌合する貫通孔を有している。以下、単に凹部という。
図4に示す例では、被係合部27aの凹部が複数設けられた例を示しているが、凹部の数は係合部42aの凸部の数以上であればよい。係合部42aの凸部の数は特に限定されないが、1~3個が好ましい。
【0038】
適合性のある定着装置10が画像形成装置100の定着装置収容部105に挿入され、本体カバー50が押圧されると、
図4に示すように係合部42aの凸部が被係合部27aの凹部と係合し、本体カバー50が正常に閉じられる。
【0039】
適合性のない定着装置10としては、例えば、被係合部27aが設けられていないものや、被係合部27aが係合部42aと対応する位置に設けられていないものが挙げられる。
適合性のない定着装置10が定着装置収容部105に挿入され、本体カバー50が押圧された場合、画像形成装置100側の係合部42aの凸部が定着装置10の支持板25と干渉して本体カバー50は閉じられない。
【0040】
図4の例では、係合部42aが被係合部27aと係合し、本体カバー50が正常に閉じられることにより定着装置10の適合性が識別される。
【0041】
図5に示す定着装置10は、延在部25aに、画像形成装置100側の本体カバー50に設けられた定着装置の適合性を識別する係合部42bと係合する被係合部27bを備えている。
係合部42bは凹部を有する部材である。
被係合部27bは係合部42bの凹部と係合する凸部を有している。
図5に示す例では、被係合部27bの凸部が複数設けられた例を示しているが、凸部の数は、係合部42bの凹部の数以下であればよい。係合部42bの凹部の数は特に限定されないが、1~3個が好ましい。
凸部は、支持板25の曲げ加工等により形成することができる。
【0042】
適合性のある定着装置10が画像形成装置100の定着装置収容部105に挿入されると、
図5に示すように係合部42bの凹部に被係合部27bの凸部が係合し、正しい位置にセットされる。
【0043】
一方、適合性のない定着装置10としては、例えば、被係合部27bが設けられていないものや、被係合部27bが係合部42bと対応する位置に設けられていないものが挙げられる。このような適合性のない定着装置10が定着装置収容部105に挿入された場合、正しい位置にセットすることができない。
【0044】
図5の例では、係合部42bが被係合部27bと係合し、正しい位置に定着装置10セットされることにより定着装置10の適合性が識別される。
【0045】
図4及び
図5に示したように、本実施形態の定着装置10は、筐体フレームの長手方向の一方を構成する大型の部材であるフレーム部材44やカバー部材45を省略することにより、定着装置10の小型化及び軽量化と部品コストの低減を実現することができ、これらの部材を省略しても、適合性のない定着装置の誤装着を防止することができる。
【0046】
識別係合部は、係合構造に加え、係合状態を電気的に検知可能な検知手段を備える構成とすることができる。これにより、より高い精度で定着装置の適合性を識別することができる。
以下、検知手段を備える例を説明する。
【0047】
図7(A)に示す定着装置10は、延在部25aに被係合部27aを備えている。被係合部27aは、画像形成装置100側の本体カバー50に設けられた定着装置の適合性を識別する係合部42cと係合する。
係合部42cは、往復移動可能な可動凸部(往復移動ピン)43を有している。
被係合部27aは係合部42cの可動凸部43と係合する凹部、または可動凸部43と嵌合する貫通孔である。以下、単に凹部という。
図7(A)に示す例では、被係合部27aの凹部が1個設けられた例を示しているが、凹部の数は可動凸部43の数以上であればよい。可動凸部43の数は特に限定されないが、1~3個が好ましい。
【0048】
係合部42cは、係合状態を検知する検知手段を備えている。検知手段は、例えば、プッシュスイッチ200である。
延在部25aの被係合部27aは、画像形成装置に装着されたとき、係合部42cの可動凸部43と係合するとともに、検知手段としてのプッシュスイッチ200を作動させる。
【0049】
プッシュスイッチ200は係合部42cとともに本体カバー50に配設される。プッシュスイッチ200は、
図7(A)に示した例のように定着装置収容部105の内側に配設されてもよく、外側に配設されてもよい。外側に配設する場合は、可動凸部43をカバー部材を貫通して往復移動する構成とする。
【0050】
図7(B)及び
図7(C)は識別係合部の部分拡大図である。
図7(B)に示すように、適合性のある定着装置10が画像形成装置100の定着装置収容部105に挿入され、本体カバー50が押圧されると、係合部42cの可動凸部43が被係合部27aの凹部と係合する。可動凸部43が図の上方へ移動することにより、プッシュスイッチ200のプッシュピン205は非押圧状態となる。
【0051】
図7(C)の部分拡大図に示すように、適合性のない定着装置10が画像形成装置100の定着装置収容部105に挿入され、本体カバー50が押圧されると、係合部42cの可動凸部43は支持板25と干渉し、図の下方に移動する。これによりプッシュスイッチ200のプッシュピン205は押圧状態となる。
【0052】
なお、適合性のある定着装置10が挿入された場合であっても、正しくセットされていない場合には、同様に係合部42cの可動凸部43が図の下方に移動し、プッシュスイッチ200のプッシュピン205は押圧状態となる。
【0053】
本実施形態において、プッシュスイッチ200の設定を非押圧時にオフ(非導通状態)、押圧時にオン(導通状態)とした場合、非導通状態となることにより適合性のある定着装置10が装着されたことが識別され、導通状態となることにより適合性のない定着装置10が装着されたこと、または正しくセットされていないことが識別される。
【0054】
また、本実施形態において、プッシュスイッチ200の設定を非押圧時にオン(導通状態)、押圧時にオフ(非導通状態)とした場合、導通状態となることにより適合性のある定着装置10が装着されたことが識別され、非導通状態となることにより適合性のない定着装置10が装着されたこと、または正しくセットされていないことが識別される。
【0055】
図8(A)に示す定着装置10は、延在部25aに被係合部27bを備えている。被係合部27bは、画像形成装置100側の本体カバー50に設けられた定着装置の適合性を識別する係合部42bと係合する。
係合部42bは、凹部を有する部材である。
被係合部27bは係合部42aの凹部と係合する凸部を有している。
図5に示す例では、被係合部27bの凸部が1個設けられた例を示しているが、凸部の数は、係合部42bの凹部の数以下であればよい。係合部42bの凹部の数は特に限定されないが、1~3個が好ましい。
【0056】
係合部42bは、係合状態を検知する検知手段を備えている。検知手段は、例えば、プッシュスイッチ200である。
延在部25aの被係合部27bは、画像形成装置に装着されたとき、係合部42bの凹部と係合するとともに、検知手段としてのプッシュスイッチ200を作動させる。
【0057】
図8(B)の部分拡大図に示すように、適合性のある定着装置10が画像形成装置100の定着装置収容部105に挿入されると、係合部42bの凹部に被係合部27bの凸部が係合し、正しい位置にセットされる。そして、プッシュスイッチ200のプッシュピン205は押圧状態となる。
【0058】
図8(C)の部分拡大図に示すように、適合性のない定着装置10が画像形成装置100の定着装置収容部105に挿入されると、係合部42bの凹部には凸部が係合しないため、プッシュスイッチ200のプッシュピン205は非押圧状態となる。
【0059】
なお、適合性のある定着装置10が挿入された場合であっても、正しくセットされていない場合には、係合部27bの凸部は係合部42bの凹部と係合せず、プッシュスイッチ200のプッシュピン205は非押圧状態となる。
【0060】
本実施形態において、プッシュスイッチ200の設定を非押圧時にオフ(非導通状態)、押圧時にオン(導通状態)とした場合、導通状態となることにより適合性のある定着装置10が装着されたことが識別され、非導通状態となることにより適合性のない定着装置10が装着されたこと、または正しくセットされていないことが識別される。
【0061】
また、本実施形態において、プッシュスイッチ200の設定を非押圧時にオン(導通状態)、押圧時にオフ(非導通状態)とした場合、非導通状態となることにより適合性のある定着装置10が装着されたことが識別され、導通状態となることにより適合性のない定着装置10が装着されたこと、または正しくセットされていないことが識別される。
【0062】
なお、プッシュスイッチ200の電気信号による検知結果をユーザに通知する手段を備えることが好ましい。係合状態を高い精度で認識することが可能となり、確実に誤装着の防止を行うことができる。
【0063】
図9(A)はプッシュスイッチ200の一例を示す外観斜視図であり、
図9(B)はその回路図の一例である。
【0064】
図9(A)に示すプッシュスイッチ200は、プッシュピン205を複数備えているが、プッシュピン205の数はこれに限定されず、識別係合部の構造に応じて適宜選択することができる。
【0065】
例えば、プッシュピン205が押圧状態となることにより
図9(B)に示す回路が閉じ、電気信号を発生する。
上述のように、プッシュスイッチ200の設定を非押圧時にオフ(非導通状態)、押圧時にオン(導通状態)とすることもでき、押圧時にオン(導通状態)、非押圧時にオフ(非導通状態)とすることもできる。
【0066】
本実施形態の定着装置は、延在部25aに、前記画像形成装置100に装着されたとき、画像形成装置100と電気的に接続されるコネクタを備えることが好ましい。
被係合部27の近傍にコネクタを配設することにより、誤装着の場合や正しくセットされていない場合にコネクタが接続されない構成とすることができる。
【0067】
本実施形態の定着装置、及び該定着装置を備えた画像形成装置によれば、装置の小型化、軽量化、低コスト化とともに、定着装置の誤装着防止を実現することができる。
【0068】
上記の構成は、異なる実施形態の定着装置及び画像形成装置にも適用可能である。
以下、本発明が適用される定着装置及び画像形成装置の例について説明する。また、定着装置10が備えるヒータ22及びヒータホルダ23の例についてもあわせて説明する。
【0069】
図10に示される定着装置10は、加熱源として、基材55上に抵抗発熱体56が設けられた面状又は板状のヒータ22を備えている。基材55は、アルミナ、窒化アルミなどのセラミック、又はガラス、マイカ、ポリイミドなどの耐熱性と絶縁性を有する材料により形成される。また、基材55は、ステンレス、鉄、アルミニウムなどの金属材料の上に絶縁層を形成したものであってもよい。抵抗発熱体56は、銀パラジウム(AgPd)及びガラス粉末などを調合したペーストを基材55の表面にスクリーン印刷などにより塗工し、その後、基材55を焼成することによって形成される。また、抵抗発熱体56は、絶縁層57によって覆われている。絶縁層57は、耐熱性ガラス、セラミック、ポリイミドなどの材料により形成される。
【0070】
図11に示すように、ヒータ22は、長方形の板状に形成されており、その長手方向が定着ベルト20の長手方向となるように配置される。抵抗発熱体56は、基材55(ヒータ22)の長手方向に渡って間隔をあけて複数配置されている。また、各抵抗発熱体56が設けられている基材55の面には、複数の電極部58と複数の給電線59が設けられている。各抵抗発熱体56は、基材55の長手方向両端部に設けられた各電極部58に対し給電線59を介して並列に接続されている。また、各抵抗発熱体56及び各給電線59は、絶縁層57によって覆われている。一方、各電極部58は、給電端子としてのコネクタが接続できるように、絶縁層57によって覆われておらず露出している。
【0071】
図10に示すように、ヒータ22は、ヒータホルダ23によって保持され、定着ベルト20の内周面に接触するように配置される。従って、ヒータ22が発熱すると、定着ベルト20がその内側から加熱される。
【0072】
定着ベルト20と加圧ローラ21は、上記実施形態に係る加圧ローラと基本的に同じ構成である。
【0073】
ヒータホルダ23には、ガイド部材66が一体に設けられている。ガイド部材66は、定着ベルト20の回転方向におけるニップ部Nの上流側と下流側に配置されている。ガイド部材66は、定着ベルト20が回転する際、定着ベルト20の内周面に接触することにより定着ベルト20を内側からガイドする。
【0074】
また、定着ベルト20の内側には、ヒータ22の温度を検知する温度検知部材としての温度センサ67が配置されている。これらの温度センサ67は、バネ70により加圧されている。
図10に示される温度センサ67は、ヒータ22のニップ部N側とは反対側の面に接触して温度を検知する接触式の温度センサであるが、ヒータ22に対して非接触に配置され、ヒータ22近傍の雰囲気温度を検知する非接触式の温度センサであってもよい。
【0075】
定着装置10においては、画像形成装置本体に設けられている電源からヒータ22に電力が供給されることにより、抵抗発熱体56が発熱する。これにより、定着ベルト20が加熱される。また、温度センサ67によって検知されるヒータ22の温度に基づいてヒータ22の発熱量が制御されることにより、定着ベルト20の温度が所定の温度(定着温度)となるように維持される。この状態において、
図10に示すように、未定着トナーを担持する用紙Pが、定着ベルト20と加圧ローラ21との間(ニップ部N)に進入することにより、用紙P上の未定着トナーが加圧及び加熱され、用紙Pにトナー画像が定着される。
【0076】
温度センサ67の位置は、
図10に示されるような用紙搬送方向におけるニップ部Nの中央Mのほか、
図12に示される実施形態のように、ニップ部Nの中央Mよりも用紙搬送方向上流側に配置されていてもよい。言い換えれば、温度センサ67は、ニップ部Nの入り口側に配置されていてもよい。ニップ部Nの入り口側は、ニップ部Nに進入する用紙Pによって定着ベルト20の熱が特に奪われやすい領域であるため、温度センサ67によって入り口側の温度を検知することにより、画像の定着性を確保し、トナー画像を十分に加熱できない定着オフセットの発生を効果的に抑制できる。
【0077】
図13に示す定着装置10は、定着ベルト20に対して加圧ローラ21側とは反対側に、押圧ローラ69が配置されている。押圧ローラ69は、回転部材としての定着ベルト20に対向して回転する対向回転部材である。この押圧ローラ69とヒータ22とが定着ベルト20を挟んで加熱するように構成されている。一方、加圧ローラ21側では、定着ベルト20の内周にニップ形成部材68が配置されている。ニップ形成部材68は、ステー24によって保持されている。ニップ形成部材68と加圧ローラ21とによって、定着ベルト20を挟んで定着ニップNを形成している。
【0078】
図14に示す定着装置10では、前述の押圧ローラ69が省略されており、定着ベルト20とヒータ22との周方向接触長さを確保するために、ヒータ22が定着ベルト20の曲率に合わせて円弧状に形成されている。その他は、
図13に示す定着装置10と同じ構成である。
【0079】
図15に示す定着装置10は、加熱アセンブリ92、定着部材である定着ローラ93、対向部材である加圧アセンブリ94からなる。加熱アセンブリ92は、先の実施形態で説明したヒータ22、ヒータホルダ23、ステー24、回転部材としての加熱ベルト99等を有する。定着ローラ93は、回転部材としての加熱ベルト99に対向して回転する対向回転部材である。また、定着ローラ93は、中実の鉄製芯金93aと、この芯金93aの表面に形成された弾性層93bと、弾性層93bの外側に形成された離型層93cとで構成されている。また、定着ローラ93に対して加熱アセンブリ92側とは反対側に、加圧アセンブリ94が設けられている。加圧アセンブリ94は、ニップ形成部材95とステー96とを配置し、これらニップ形成部材95とステー96を内包するように加圧ベルト97を回転可能に配置している。そして、加圧ベルト97と定着ローラ93との間の定着ニップN2に用紙Pを通紙して加熱および加圧して画像を定着する。
【0080】
本発明に係る画像形成装置は、
図1に示すカラー画像形成装置に限らず、モノクロ画像形成装置や、複写機、プリンタ、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等であってもよい。
【0081】
例えば
図16に示されるような構成の画像形成装置にも適用可能である。
図16に示される画像形成装置100は、感光体ドラムなどからなる画像形成手段80と、一対のタイミングローラ81等からなる用紙搬送部と、給紙装置82と、定着装置10と、排紙装置84と、読取部85と、を備えている。給紙装置82は複数の給紙トレイを備え、それぞれの給紙トレイが異なるサイズの用紙を収容する。
【0082】
読取部85は原稿Qの画像を読み取る。読取部85は、読み取った画像から画像データを生成する。給紙装置82は、複数の用紙Pを収容し、搬送路へ用紙Pを送り出す。タイミングローラ81は搬送路上の用紙Pを画像形成手段80へ搬送する。
【0083】
画像形成手段80は、用紙Pにトナー像を形成する。具体的には、画像形成手段80は、感光体ドラムと、帯電ローラと、露光装置と、現像装置と、補給装置と、転写ローラと、クリーニング装置と、除電装置とを含む。トナー像は、例えば、原稿Qの画像を示す。定着装置10は、トナー像を加熱および加圧して、用紙Pにトナー像を定着させる。トナー像の定着された用紙Pは、搬送ローラなどにより排紙装置84へ搬送される。排紙装置84は、画像形成装置100の外部に用紙Pを排出する。
【0084】
次に、本実施形態の定着装置10について説明する。前述の実施形態の定着装置と共通する構成については、適宜その記載を省略する。
【0085】
図17に示すように、定着装置10は、定着ベルト20と、加圧ローラ21と、ヒータ22と、ヒータホルダ23と、ステー24と、温度センサ67等を備えている。
【0086】
定着ベルト20と加圧ローラ21との間に定着ニップNが形成される。定着ニップNのニップ幅は10mm、定着装置10の線速は240mm/sである。
【0087】
定着ベルト20はポリイミドの基体と離型層とを備え、弾性層を有していない。離型層は、例えばフッ素樹脂からなる耐熱性のフィルム材からなる。定着ベルト20の外径は約24mmである。
【0088】
加圧ローラ21は、芯金21aと弾性層21bと離型層21cとを含む。加圧ローラ21の外径は24~30mmで形成され、弾性層21bの厚みは3~4mmで形成される。
【0089】
ヒータ22は、基材と、断熱層と、抵抗発熱体などを含む導体層と、絶縁層とを含み、全体の厚みが1mmで形成される。また、ヒータ22の配列交差方向の幅Yは13mmである。
【0090】
図18に示すように、ヒータ22の導体層は、複数の抵抗発熱体56と、給電線59と、電極部58A~58Cとを備える。本実施形態においても、
図18の拡大図に示すように、複数の抵抗発熱体56が配列方向に分割された分割領域Bが形成される(ただし、
図18では拡大図の範囲のみで分割領域Bを図示しているが、実際は全ての抵抗発熱体56同士の間に分割領域が設けられる)。抵抗発熱体56により、三つの発熱部35A~35Cが構成される。電極部58A,58Bに通電することにより、発熱部35A,35Cが発熱する。電極部58A,58Cに通電することにより、発熱部35Bが発熱する。例えば、小サイズ用紙に定着動作を行う場合には発熱部35Bを発熱させ、大サイズ用紙に定着動作を行う場合には全ての発熱部に発熱させることができる。
【0091】
図19に示すように、ヒータホルダ23は、ヒータ22を収容して保持する凹部23bを有している。凹部23bは、ヒータホルダ23のヒータ22側に形成されている。また、凹部23bは、ヒータ22とほぼ同じサイズの矩形(長方形)に形成された面(底面)23b1と、その面23b1の外郭を形成する4つの辺に沿って面23b1と交差するように設けられた4つの壁部(側面)23b2,23b3により構成されている。なお、ヒータ22の長手方向X(抵抗発熱体56の配列方向)と交差する方向に配置される一対の壁部23b2のうち、一方の壁部23b2を省略し、凹部23bがヒータ22の長手方向の一端部において開口するように構成してもよい。
【0092】
また、
図20に示すように、ヒータ22及びヒータホルダ23は、コネクタ86によって保持される。コネクタ86は、樹脂製(例えばLCP)のハウジングと、ハウジング内に設けられた複数のコンタクト端子などを有している。
【0093】
コネクタ86は、ヒータ22とヒータホルダ23とを表側と裏側から一緒に挟むようにして取り付けられる。この状態で、各コンタクト端子が、ヒータ22の各電極部に接触(圧接)することで、コネクタ86を介して発熱部と画像形成装置に設けられた電源とが電気的に接続される。これにより、電源から発熱部へ電力が供給可能な状態となる。
【0094】
フランジ部材32は、ステー24の両端に
図20の矢印の方向に挿入され、定着ベルト20の両端をベルトの内側から保持する。
【0095】
コネクタ86のヒータ22およびヒータホルダ23に対する取り付け方向はヒータの配列交差方向である(
図20のコネクタ86からの矢印方向参照)。コネクタ86のヒータホルダ23に対する取り付け時に、コネクタ86とヒータホルダ23との一方に設けた凸部が、他方に設けた凹部に係合し、凸部が凹部内を相対移動する構成としてもよい。またコネクタ86は、配列方向のいずれか一方側であって、加圧ローラ21の駆動モータが設けられる側とは反対側で、ヒータ22およびヒータホルダ23に取り付けられる。
【0096】
図21(A)は、温度センサ67と、通電遮断部材であるサーモスタット88の配置を示す図である。
【0097】
図21(A)に示すように、温度センサ67は、定着ベルト20の長手方向における中央C側と端部側のそれぞれの内周面に対向するように配置されている。また、これらの温度センサ67のうちいずれか一方は、ヒータ22の抵抗発熱体同士間の上記分割領域B(
図18参照)に対応する位置に配置される。
【0098】
定着ベルト20の中央C側と端部側においては、通電遮断部材としてのサーモスタット88が定着ベルト20の内周面に対向するように配置されている。各サーモスタット88は、定着ベルト20の内周面の温度又は内周面近傍の雰囲気温度を検知する。サーモスタット88によって検知された温度があらかじめ設定された閾値を超えた場合は、ヒータ22への通電が遮断される。
【0099】
また、
図21(A)及び
図21(B)に示すように、定着ベルト20の両端部を保持するフランジ部材32には、ガイド溝32aが設けられている。ガイド溝32aは、定着ベルト20の加圧ローラ21に対する接離方向に延在する。ガイド溝32aには定着装置10の筐体フレームの側板26が係合する。側板26の係合部が係合ガイド溝32a内を相対移動することにより、定着ベルト20は加圧ローラ21に対する接離方向へ移動可能に構成されている。
【0100】
また、本発明は、次のような構成の定着装置にも適用可能である。
図22は、本発明を適用可能な別の実施形態に係る定着装置の概略構成図である。
図22に示すように、本実施形態に係る定着装置10は、回転体あるいは定着部材としての定着ベルト20と、対向回転体あるいは加圧部材としての加圧ローラ21と、加熱源としてのヒータ22と、加熱源保持部材としてのヒータホルダ23と、フランジ部材としてのステー24と、温度検知部材としての温度センサ(サーミスタ)67と、第1高熱伝導部材89を備えている。温度センサ67は、第1高熱伝導部材89の温度を検知する。
【0101】
ステー24は、ヒータ22などの厚み方向に延在する二つの垂直部240の当接面241をヒータホルダ23に当接させ、ヒータホルダ23、第1高熱伝導部材89、ヒータ22を保持する。配列交差方向(図の上下方向)において、当接面241は抵抗発熱体56が設けられる範囲よりも外側に設けられる。これにより、ヒータ22からステー24への伝熱を抑制でき、ヒータ22が定着ベルト20を効率よく加熱できる。
【0102】
また、ヒータホルダ23には、定着ベルト20をガイドするガイド部材66が設けられている。ガイド部材66は、ヒータ22のベルト回転方向の上流側と下流側とにそれぞれ設けられている。また、上流側と下流側のガイド部材66は、ヒータ22の長手方向に渡って間隔をあけて複数配置されている。各ガイド部材66は、略扇型に形成されており、定着ベルト20の内周面に対向するようにベルト周方向に延在する円弧状又は凸曲面状のベルト対向面を有する。
【0103】
22は、上記
図18に示されるヒータと同じように、複数の抵抗発熱体56が、ヒータ22の長手方向に互いに間隔をあけて配置されている。しかしながら、複数の抵抗発熱体56が互いに間隔をあけて配置される構成においては、抵抗発熱体56同士の間隔である分割領域Bにおけるヒータ22の温度が、抵抗発熱体56が配置される部分に比べて低くなる傾向にある。このため、分割領域Bにおいては、定着ベルト20の温度も低くなり、定着ベルト20の温度が長手方向に渡って不均一になる虞がある。
【0104】
そのため、本実施形態においては、分割領域Bにおける温度落ち込みを抑制して、定着ベルト20の長手方向の温度ムラを抑制するために、上記第1高熱伝導部材89を設けている。以下、第1高熱伝導部材89についてより詳細に説明する。
【0105】
図23に示すように、第1高熱伝導部材89は、図の左右方向において、ヒータ22とステー24との間に配置され、特にヒータ22とヒータホルダ23との間に挟まれる。つまり、第1高熱伝導部材89の一方の面は、ヒータ22の基材55の裏面に当接し、第1高熱伝導部材89の他方の面(一方の面とは反対側の面)は、ヒータホルダ23に当接している。
【0106】
第1高熱伝導部材89は、一定の厚みを有する板状の部材であり、例えば、その厚みが0.3mm、長手方向方向の長さが222mm、長手交差方向の幅が10mmに設定される。本実施形態においては、第1高熱伝導部材89が単一の板材により構成されるが、複数の部材からなってもよい。なお、
図23においては、
図22に記載のガイド部材66が省略されている。
【0107】
第1高熱伝導部材89は、ヒータホルダ23の凹部23bに嵌め込まれ、その上からヒータ22が取り付けられることで、ヒータホルダ23とヒータ22とに挟み込まれて保持される。本実施形態においては、第1高熱伝導部材89の長手方向の幅がヒータ22の長手方向の幅と略同じに設定されている。第1高熱伝導部材89及びヒータ22は、凹部23bの長手方向と交差する方向に配置される両側壁(長手方向規制部)23b1によって、長手方向の移動が規制される。このように、第1高熱伝導部材89の定着装置10内における長手方向の位置ずれが規定されることにより、長手方向の狙いの範囲に対して熱伝導効率を向上させることができる。また、第1高熱伝導部材89及びヒータ22は、凹部64bの長手方向に配置される両側壁(配列交差方向規制部)23b2によって、長手交差方向の移動が規制される。
【0108】
第1高熱伝導部材89が配置される長手方向(矢印X方向)の範囲は、
図23に示される範囲に限らない。例えば、
図24に示すように、抵抗発熱体56が配置される長手方向の範囲のみに第1高熱伝導部材89が配置されてもよい(
図24におけるハッチング部参照)。
【0109】
また、
図25に示す例のように、長手方向(矢印X方向)の間隔(分割領域)Bに対応する位置で、その全域のみに第1高熱伝導部材89を配置することもできる。なお、
図25においては、便宜上、抵抗発熱体56と第1高熱伝導部材89が
図25の上下方向にずらして示されているが、両者は長手交差方向(矢印Y方向)のほぼ同じ位置に配置される。また、第1高熱伝導部材89は、抵抗発熱体56の長手交差方向(矢印Y方向)の一部に渡って配置されてもよいし、
図26に示される例のように、第1高熱伝導部材89が抵抗発熱体56の長手交差方向(矢印Y方向)の全体に渡って配置されていてもよい。
【0110】
さらに、
図26に示すように、第1高熱伝導部材89を、長手方向の間隔Bに対応する位置に加えて、その間隔Bを間にはさむ両側の抵抗発熱体56にまたがって配置することもできる。この「第1高熱伝導部材89を両側の抵抗発熱体56にまたがって配置する」とは、第1高熱伝導部材89が両側の抵抗発熱体56と長手方向の位置が少なくとも一部重なることを意味する。また、第1高熱伝導部材89は、ヒータ22の全ての間隔Bに対応する位置に配置されてもよいし、
図26に示される例のように、一部の間隔B(この場合、1箇所)に対応する位置だけ配置されてもよい。ここで、「第1高熱伝導部材89が間隔Bに対応する位置に配置される」とは、間隔Bと第1高熱伝導部材89の少なくとも一部が長手方向において重なることを意味する。
【0111】
加圧ローラ21の加圧力により、第1高熱伝導部材89はヒータ22とヒータホルダ23との間に挟み込まれてこれらの部材に密着する。第1高熱伝導部材89がヒータ22に接触することにより、ヒータ22の長手方向の熱伝導効率が向上する。そして、第1高熱伝導部材89が、長手方向において、ヒータ22の間隔Bに対応する位置に配置されることにより、間隔Bにおける熱伝導効率を向上させることができ、間隔Bへ伝達される熱量を増やし、間隔Bにおける温度を上昇させることができる。これにより、ヒータ22の長手方向の温度ムラを抑制でき、定着ベルト20の長手方向の温度ムラを抑制できる。その結果、用紙に定着される画像の定着ムラ及び光沢ムラを抑制できる。また、間隔Bにおいて十分な定着性能を確保するために、ヒータ22の発熱量を多くする必要が無くなり、定着装置の省エネ化を実現できる。特に、抵抗発熱体56が配置される長手方向全域に渡って第1高熱伝導部材89が配置される場合は、ヒータ22による主な加熱領域(つまり、通紙される用紙の画像形成領域)全域において、ヒータ22の伝熱効率を向上させ、ヒータ22ひいては定着ベルト20の長手方向の温度ムラを抑制できる。
【0112】
さらに、第1高熱伝導部材89とPTC特性を有する抵抗発熱体56との組み合わせにより、小サイズ用紙通紙時の非通紙領域による過昇温をより効果的に抑制できる。このPTC特性とは、温度が高くなると抵抗値が高くなる(一定電圧をかけた場合に、ヒータ出力が下がる)特性である。すなわち、抵抗発熱体56がPTC特性を有していることにより、非通紙領域における抵抗発熱体56の発熱量を効果的に抑制できると共に、第1高熱伝導部材89によって、温度が上昇した非通紙領域の熱量を通紙領域へ効率的に伝達できるので、これらの相乗効果により非通紙領域による過昇温を効果的に抑制できる。
【0113】
また、間隔Bの周辺においても、間隔Bの発熱量が小さいことによりヒータ22の温度が低くなるため、第1高熱伝導部材89を配置することが好ましい。例えば、
図27に示される間隔Bの周辺の領域を含む拡大分割領域Cに対応する位置に、第1高熱伝導部材89を配置することにより、間隔B及びその周辺における長手方向の熱伝達効率を向上させ、ヒータ22の長手方向の温度ムラをより効果的に抑制できる。また、第1高熱伝導部材89が、全ての抵抗発熱体56が配置される領域の長手方向全体に渡って配置されている場合は、ヒータ22(定着ベルト20)の長手方向の温度ムラをより確実に抑制できる。
【0114】
続いて、定着装置のさらに別の実施形態について説明する。
図28に示す定着装置10は、ヒータホルダ23と第1高熱伝導部材89との間に第2高熱伝導部材90を有している。第2高熱伝導部材90は、ヒータホルダ23,ステー24、第1高熱伝導部材89などの部材の積層方向(
図28における左右方向)において、第1高熱伝導部材89と異なる位置に設けられる。より詳しくは、第2高熱伝導部材90は、第1高熱伝導部材89に重ね合わせされて設けられる。また、本実施形態においては、上記
図22に示される実施形態と同じように、温度センサ(サーミスタ)67が設けられているが、
図28は、温度センサ67が配置されていない断面を示している。
【0115】
第2高熱伝導部材90は、基材55よりも熱伝導率の高い部材、例えばグラフェン又はグラファイトにより構成される。本実施形態においては、第2高熱伝導部材90が、厚み1mmのグラファイトシートにより構成される。また、第2高熱伝導部材90は、アルミニウム、銅、銀などの板材により構成されてもよい。
【0116】
図29に示すように、第2高熱伝導部材90は、ヒータホルダ23の凹部23bに複数配置され、各第2高熱伝導部材90同士の間には長手方向の間隔が介在している。ヒータホルダ23の第2高熱伝導部材90が設けられる部分には、その他の部分よりも一段深い窪みが形成されている。第2高熱伝導部材90は、長手方向の両側において、ヒータホルダ23との間に隙間が設けられている。これにより、第2高熱伝導部材90からヒータホルダ23への伝熱が抑制され、ヒータ22によって定着ベルト20が効率的に加熱される。なお、
図29においては、
図22に記載のガイド部材66が省略されている。
【0117】
図30に示すように、第2高熱伝導部材90(ハッチング部参照)は、長手方向(矢印X方向)において、間隔Bに対応する位置で、隣り合う抵抗発熱体56の少なくとも一部に重なる位置に配置されている。特に、本実施形態においては、第2高熱伝導部材90が、間隔B全域に渡って配置されている。
なお、
図30(および後述の
図31)においては、第1高熱伝導部材89が、全ての抵抗発熱体56が配置される領域の長手方向全体に渡って配置されている場合を示しているが、第1高熱伝導部材89の配置範囲はこれに限らない。
【0118】
本実施形態のように、第1高熱伝導部材89に加えて、長手方向の間隔Bに対応する位置で、隣り合う抵抗発熱体56の少なくとも一部に重なる位置に第2高熱伝導部材90が配置されていることにより、間隔Bにおける長手方向の熱伝達効率をより一層向上させ、ヒータ22の長手方向の温度ムラをより効果的に抑制できる。また、最も好ましくは、
図31に示すように、間隔Bに対応する位置でその全域にのみ第1高熱伝導部材89及び第2高熱伝導部材90を設ける。これにより、間隔Bに対応する位置において、その他の領域と比較して特に熱伝達効率を向上させることができる。
【0119】
なお、
図31においては、便宜上、抵抗発熱体56と第1高熱伝導部材89及び第2高熱伝導部材90が、図の上下方向にそれぞれずらして示されているが、これらは長手交差方向(矢印Y方向)のほぼ同じ位置に配置される。ただし、これに限るものではなく、第1高熱伝導部材89及び第2高熱伝導部材90は、抵抗発熱体56の長手交差方向の一部に配置されていてもよいし、長手交差方向の全体を覆うようにして配置されていてもよい。
【0120】
また、第1高熱伝導部材89及び第2高熱伝導部材90の両方が上記グラフェンシートにより構成されてもよい。この場合、グラフェンの面に沿う所定の方向、つまり、厚み方向ではなく長手方向に熱伝導率の高い第1高熱伝導部材89及び第2高熱伝導部材90を形成できる。このため、ヒータ22及び定着ベルト20の長手方向の温度ムラを効果的に抑制できる。
【0121】
グラフェンは薄片状の粉体である。グラフェンは、
図34に示すように、炭素原子の平面状の六角形格子構造から成る。グラフェンシートとは、シート状のグラフェンであり、通常、単層である。また、グラフェンシートは、炭素の単一層に不純物を含んでいてもよいし、フラーレン構造を有するものであってもよい。フラーレン構造は、一般的に、同数の炭素原子が5員環および6員環でかご状に縮環した多環体を形成して成る化合物として認識されており、例えば、C60、C70およびC80フラーレン又は3配位の炭素原子を有する他の閉じたかご状構造である。
【0122】
グラフェンシートは、人工物であり、例えば化学気相蒸着(CVD)法により作製され得る。
【0123】
グラフェンシートには市販品を用いることができる。グラフェンシートの大きさ、厚み、あるいは後述するグラファイトシートの層数などは、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)によって測定される。
【0124】
また、グラフェンを多層化したグラファイトは大きな熱伝導異方性を持つ。グラファイトは、
図35に示すように、炭素原子の縮合六員環層面が平面状に広がった層を有し、この層が何重にも重なった結晶構造を有する。この結晶構造における炭素原子間は、層内での隣接する炭素原子同士は共有結合をなし、層間の炭素原子同士はファン・デル・ワールス結合をなす。そして、共有結合はファン・デル・ワールス結合に比べてその結合力が大きく、層内での結合と層間での結合とでは大きな異方性を持つ。つまり、第1高熱伝導部材89あるいは第2高熱伝導部材90をグラファイトにより構成することにより、第1高熱伝導部材89あるいは第2高熱伝導部材90における長手方向の伝熱効率が厚み方向(つまり、部材の積層方向)に比べて大きくなり、ヒータホルダ23への伝熱を抑制できる。従って、ヒータ22の長手方向の温度ムラを効率よく抑制するとともに、ヒータホルダ23側へ流出する熱を最小限に抑えることができる。また第1高熱伝導部材89あるいは第2高熱伝導部材90をグラファイトにより構成することにより、700度程度まで酸化しない優れた耐熱性を第1高熱伝導部材89あるいは第2高熱伝導部材90に持たせることができる。
【0125】
グラファイトシートの物性や寸法は、第1高熱伝導部材89あるいは第2高熱伝導部材90に求められる機能に応じて適宜変更できる。例えば、高純度のグラファイトあるいは単結晶グラファイトを用いる、あるいは、グラファイトシートの厚みを大きくすることにより、その熱伝導の異方性を高めることができる。また、定着装置を高速化するために、厚みの小さいグラファイトシートを用いて定着装置の熱容量を小さくしてもよい。また、ニップ部N及びヒータ22の幅が大きい場合には、それに合わせて第1高熱伝導部材89あるいは第2高熱伝導部材90の長手方向の幅を大きくしてもよい。
【0126】
機械的強度を高める観点から、グラファイトシートの層数は11以上であることが好ましい。またグラファイトシートは部分的に単層と多層の部分とを含んでいてもよい。
【0127】
第2高熱伝導部材90は、長手方向において、間隔B(さらに拡大分割領域C)に対応する位置で、隣り合う抵抗発熱体56の少なくとも一部に重なる位置に設けられればよく、
図30の配置に限らない。例えば、
図32に示す例のように、第2高熱伝導部材90Aは、長手交差方向(矢印Y方向)において、基材55よりも長手交差方向の両側へ飛び出して設けられていてもよい。また、第2高熱伝導部材90Bは、長手交差方向において、抵抗発熱体56が設けられる範囲に設けられていてもよい。また、第2高熱伝導部材90Cは、間隔Bの一部に設けられていてもよい。
【0128】
また、
図33に示される別の実施形態においては、第1高熱伝導部材89とヒータホルダ23との間に厚み方向(
図33における左右方向)の隙間が設けられている。つまり、ヒータ22、第1高熱伝導部材89、及び第2高熱伝導部材90が配置されるヒータホルダ23の凹部23b(
図29参照)の一部の領域に、断熱層としての逃げ部23cが設けられている。
【0129】
逃げ部23cは、第2高熱伝導部材90(
図33においては図示省略)が設けられる部分以外の長手方向の一部の領域に設けられる。また、逃げ部23cは、ヒータホルダ23の凹部23bの深さをその他の部分よりも深くすることにより形成されている。これにより、ヒータホルダ23と第1高熱伝導部材89との接触面積を最小限にとどめることができるので、第1高熱伝導部材89からヒータホルダ23への伝熱が抑制され、ヒータ22によって定着ベルト20を効率的に加熱できるようになる。
なお、長手方向の第2高熱伝導部材90が設けられる断面においては、上記
図28に示す実施形態のように、第2高熱伝導部材90がヒータホルダ23に当接する。
【0130】
また、本実施形態においては、逃げ部23cが、長手交差方向(
図33における上下方向)において、抵抗発熱体56が設けられた範囲全域に渡って設けられている。これにより、第1高熱伝導部材89からヒータホルダ23への伝熱が効果的に抑制され、ヒータ22による定着ベルト20の加熱効率が向上する。なお、断熱層として、逃げ部23cのように空間を設ける構成の他、ヒータホルダ23よりも熱伝導率の低い断熱部材を設ける構成であってもよい。
【0131】
また、本実施形態においては、第2高熱伝導部材90を第1高熱伝導部材89とは異なる部材として設けたが、これに限らない。例えば、第1高熱伝導部材89の間隔Bに対応する部分を、その他の部分よりも厚みを大きくすることにより、第1高熱伝導部材89が第2高熱伝導部材90の機能を兼ねるようにしてもよい。
【0132】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> 画像形成装置に着脱可能な定着装置であって、
前記画像形成装置への挿入方向の後方側の面を覆う支持板、及び前記挿入方向に沿った一対の側板からなり、前記挿入方向の前方側の面が開口した筐体フレームを備え、
前記支持板は、一方の前記側板の外側に延びる延在部を有し、
前記延在部は、前記画像形成装置に装着されたとき、前記画像形成装置側に設けられた前記定着装置の適合性を識別する係合部と係合する被係合部を備えることを特徴とする定着装置である。
<2> 前記延在部は、前記画像形成装置に装着されたとき、前記画像形成装置側の本体カバーまたは定着装置収容部を構成する支持板に設けられた前記定着装置の適合性を識別する係合部と係合する被係合部を備えることを特徴とする前記<1>に記載の定着装置である。
<3> 前記係合部が係合状態を検知する検知手段を備え、
前記延在部の前記被係合部は、前記画像形成装置に装着されたとき、前記係合部と係合するとともに前記検知手段を作動させることを特徴とする前記<1>または<2>に記載の定着装置である。
<4> 前記延在部は、前記前記画像形成装置に装着されたとき、前記画像形成装置と電気的に接続されるコネクタを備えることを特徴とする前記<1>から<3>のいずれかに記載の定着装置である。
<5> 装着される定着装置の適合性を識別する係合部を有し、
前記<1>から<4>のいずれかに記載の定着装置が搭載されたことを特徴とする画像形成装置である。
<6> 前記係合部が係合状態を検知する検知手段を備え、
前記検知手段がプッシュスイッチであることを特徴とする前記<5>に記載の画像形成装置である。
【符号の説明】
【0133】
10 定着装置
20 定着ベルト
21 加圧ローラ
22 ヒータ
24 ステー
25 支持板
25a 延在部
26 側板
27 被係合部
40 収容部支持板
41 本体フレーム
42 係合部
43 可動凸部
50 本体カバー
100 画像形成装置
105 定着装置収容部
200 プッシュスイッチ
205 プッシュピン
【先行技術文献】
【特許文献】
【0134】