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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132485
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】ヒトリガ科の昆虫由来細胞
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/07 20100101AFI20240920BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240920BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20240920BHJP
【FI】
C12N5/07
C12N5/10
C12N15/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043260
(22)【出願日】2023-03-17
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、文部科学省、戦略的創造研究推進事業 CREST、研究領域「情報担体を活用した集積デバイス・システム」、研究課題名「嗅覚受容体を活用したバイオハイブリッド匂いセンサ」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笹岡 紀男
(72)【発明者】
【氏名】高橋 康彦
(72)【発明者】
【氏名】小林 健太郎
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BD12
4B065CA24
4B065CA46
(57)【要約】
【課題】化学物質センサに利用することができる冷蔵耐性に優れた細胞を提供すること。
【解決手段】センサタンパク質のコード配列を含む外来性ポリヌクレオチドを含む、ヒトリガ科の昆虫由来細胞。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサタンパク質のコード配列を含む外来性ポリヌクレオチドを含む、ヒトリガ科の昆虫由来細胞。
【請求項2】
前記センサタンパク質が嗅覚受容体タンパク質である、請求項1に記載の細胞。
【請求項3】
前記センサタンパク質が昆虫嗅覚受容体タンパク質である、請求項1に記載の細胞。
【請求項4】
前記外来性ポリヌクレオチドが、嗅覚受容体共受容体タンパク質のコード配列、及び発色又は発光するタンパク質のコード配列を含む、請求項1に記載の細胞。
【請求項5】
前記外来性ポリヌクレオチドが、薬剤耐性遺伝子のコード配列を含む、請求項1に記載の細胞。
【請求項6】
前記外来性ポリヌクレオチドがゲノムDNAに組み込まれている、請求項1に記載の細胞。
【請求項7】
ヒトリガ科の昆虫がクワゴマダラヒトリ属の昆虫である、請求項1に記載の細胞。
【請求項8】
クワゴマダラヒトリ属の昆虫がクワゴマダラヒトリである、請求項7に記載の細胞。
【請求項9】
センサタンパク質のコード配列を含む外来性ポリヌクレオチドを含む、冷蔵耐性を有する細胞。
【請求項10】
以下の冷蔵耐性試験を実施した場合に冷蔵耐性を有すると判定される、請求項9に記載の細胞:
<冷蔵耐性試験>
工程(1)区画を有するプレートに細胞を1x10^5/200μL/区画で播種し、6時間27℃で静置する。
工程(2)プレートをアルミホイルで遮光し、4℃で72時間静置した後、蛍光強度を測定する。
工程(3)センサタンパク質が応答する物質を各区画に添加した後、蛍光強度を測定する。
工程(4)工程(3)で測定された蛍光強度が工程(2)で測定された蛍光強度よりも大きい場合、細胞は冷蔵耐性を有すると判定する。
【請求項11】
4℃で15日間保存後の生存率が50%以上である、請求子9又は10に記載の細胞。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかに記載の細胞を含む区画を含む、細胞チップ。
【請求項13】
化学物質検出用である、請求項12に記載の細胞チップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトリガ科の昆虫由来細胞等に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの特定の疾患や精神状態等を特徴付ける匂い物質群が同定されており、診断マーカーとしての利用価値が高いことから、これらをターゲットとした様々な匂いセンサの開発が盛んになっている。生物の嗅覚受容体は、多様性、感度、選択性等の面で半導体等の従来の匂いセンサ素子にはない優れた特性を有することから、嗅覚受容体をセンサ素子とした新しい匂いセンサの開発が期待されている。
【0003】
特許文献1では、改変嗅覚受容体を発現する細胞や改変嗅覚受容体を備える脂質二重膜を匂いセンサとして用いることについて開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2022/024902号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
嗅覚受容体等のセンサタンパク質を備える脂質二重膜を人工的に調製する工程を有する匂いセンサは、製造効率が必ずしも十分ではないため、匂いセンサのさらなる製造効率向上が求められている。そこで、センサタンパク質を発現する細胞を利用することに着目した。
【0006】
匂いセンサ等の化学物質センサとして細胞を利用する場合、利用の簡便性の観点からは、細胞をその都度培養して調製して利用するという形態ではなく、予め細胞が容器などに保持されたものを調製しておき、それを必要な場合に利用するという形態が望ましい。後者の形態の場合、細胞の保存耐性が必要であり、細胞を乾燥させない観点等から特に冷蔵耐性が重要である。
【0007】
本開示は、化学物質センサに利用することができる冷蔵耐性に優れた細胞を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記課題に鑑みて鋭意研究を進めた結果、ヒトリガ科の昆虫由来細胞が冷蔵耐性に優れ、且つ化学物質センサに利用することができることを見出した。本発明者はこの知見に基づいてさらに研究を進めた結果、本開示の発明を完成させた。即ち、本開示は、下記の態様を包含する。
【0009】
項1. センサタンパク質のコード配列を含む外来性ポリヌクレオチドを含む、ヒトリガ科の昆虫由来細胞。
【0010】
項2. 前記センサタンパク質が嗅覚受容体タンパク質である、項1に記載の細胞。
【0011】
項3. 前記センサタンパク質が昆虫嗅覚受容体タンパク質である、項1又は2に記載の細胞。
【0012】
項4. 前記外来性ポリヌクレオチドが、嗅覚受容体共受容体タンパク質のコード配列、及び発色又は発光するタンパク質のコード配列を含む、項1~3のいずれかに記載の細胞。
【0013】
項5. 前記外来性ポリヌクレオチドが、薬剤耐性遺伝子のコード配列を含む、項1~4のいずれかに記載の細胞。
【0014】
項6. 前記外来性ポリヌクレオチドがゲノムDNAに組み込まれている、項1~5のいずれかに記載の細胞。
【0015】
項7. ヒトリガ科の昆虫がクワゴマダラヒトリ属の昆虫である、項1~6のいずれかに記載の細胞。
【0016】
項8. クワゴマダラヒトリ属の昆虫がクワゴマダラヒトリである、項7に記載の細胞。
【0017】
項9. センサタンパク質のコード配列を含む外来性ポリヌクレオチドを含む、冷蔵耐性を有する細胞。
【0018】
項10. 以下の冷蔵耐性試験を実施した場合に冷蔵耐性を有すると判定される、項1~9のいずれかに記載の細胞:
<冷蔵耐性試験>
工程(1)区画を有するプレートに細胞を1x10^5/200μL/区画で播種し、6時間27℃で静置する。
工程(2)プレートをアルミホイルで遮光し、4℃で72時間静置した後、蛍光強度を測定する。
工程(3)センサタンパク質が応答する物質を各区画に添加した後、蛍光強度を測定する。
工程(4)工程(3)で測定された蛍光強度が工程(2)で測定された蛍光強度よりも大きい場合、細胞は冷蔵耐性を有すると判定する。
【0019】
項11. 4℃で15日間保存後の生存率が50%以上である、請求子1~10のいずれかに記載の細胞。
【0020】
項12. 項1~11のいずれかに記載の細胞を含む区画を含む、細胞チップ。
【0021】
項13. 化学物質検出用である、項12に記載の細胞チップ。
【発明の効果】
【0022】
本開示によれば、化学物質センサに利用することができる冷蔵耐性に優れた細胞、及び当該細胞を用いた細胞チップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】試験例1で測定した細胞生存率を示す。縦軸は、細胞生存率(0日目が100%)を示し、横軸は、4℃での保存期間を示す。凡例に使用した細胞を示す。
図2】試験例2で測定したORA細胞の化学物質応答活性を示す。縦軸は、化学物質(化合物a)の添加前後の蛍光強度の差分を示し、横軸は、化学物質の濃度を示す。左側の図は、冷蔵保存しない場合の結果を示し、右側の図は、冷蔵保存した場合の結果を示す。
図3】試験例3で測定した嗅覚受容体安定発現SpIm細胞の化学物質応答活性を示す。グラフの上方に細胞が発現する嗅覚受容体を示し、グラフの下方に使用した化学物質を示す。縦軸は、化学物質の添加前後の蛍光強度の差分を示し、横軸は、化学物質の濃度を示す。
図4】試験例3で測定した嗅覚受容体安定発現SpIm細胞の化学物質応答活性を示す。グラフの上方に細胞が発現する嗅覚受容体を示し、グラフの下方に使用した化学物質を示す。縦軸は、化学物質の添加前後の蛍光強度の差分を示し、横軸は、化学物質の濃度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0025】
本開示は、その一態様において、センサタンパク質のコード配列を含む外来性ポリヌクレオチドを含む、ヒトリガ科の昆虫由来細胞(本明細書において、「本開示の細胞」と示すこともある。)、に関する。以下に、これについて説明する。
【0026】
ヒトリガ科(Arctiidae)の昆虫由来細胞は、ヒトリガ科の昆虫由来細胞の生体構成細胞の初代培養細胞、又は株化細胞であり、その限りにおいて特に制限されない。
【0027】
ヒトリガ科としては、例えばヒトリガ亜科(Arctiinae)、コケガ亜科(Lithosiinae)、カノコガ亜科(Syntominae)等が挙げられるが、これらの中でも好ましくはヒトリガ亜科が挙げられる。ヒトリガ亜科としては、好ましくはSpilosoma(クワゴマダラヒトリ属)、Spilarctia、Rhagonisの属が挙げられ、特に好ましくはクワゴマダラヒトリ属が挙げられる。クワゴマダラヒトリ属としては、特に制限されないが、冷蔵耐性等の観点から、特に好ましくはクワゴマダラヒトリ(Spilosoma imparilis)が挙げられる。
【0028】
ヒトリガ科の昆虫由来細胞は、公知の生物バンクから入手することもできるし、公知の方法に従って又は準じてヒトリガ科の昆虫の生体から採取・培養して得ること、必要に応じて株化して得ることができる。
【0029】
クワゴマダラヒトリ由来細胞としては、例えば農業生物資源ジーンバンクのFFPRI-SpIm-2AM-SF細胞(MAFF番号:275052)、FFPRI-SpIm-2AM-IPL411細胞(MAFF番号:275053)等が挙げられる。
【0030】
本開示の細胞は、ヒトリガ科の昆虫由来細胞であり、且つセンサタンパク質のコード配列を含む外来性ポリヌクレオチドを含む細胞である。
【0031】
外来性ポリヌクレオチドとは、ヒトリガ科の昆虫由来細胞のゲノムDNA(特に、染色体ゲノムDNA)に由来しない塩基配列を含むポリヌクレオチドであり、その限りにおいて特に制限されない。
【0032】
本明細書において、ポリヌクレオチドには、次に例示するように、生物が内在するDNA、RNA等の典型的なポリヌクレオチド以外にも、公知の化学修飾が施されてなるポリヌクレオチド、人工ポリヌクレオチド等も包含される。ヌクレアーゼなどの加水分解酵素による分解を防ぐために、各ヌクレオチドのリン酸残基(ホスフェート)を、例えば、ホスホロチオエート(PS)、メチルホスホネート、ホスホロジチオネート等の化学修飾リン酸残基に置換することができる。また、各リボヌクレオチドの糖(リボース)の2位の水酸基を、-OR(Rは、例えばCH3(2´-O-Me)、CH2CH2OCH3(2´-O-MOE)、CH2CH2NHC(NH)NH2、CH2CONHCH3、CH2CH2CN等を示す)に置換してもよい。さらに、核酸塩基部分(ピリミジン、プリン)に化学修飾を施してもよく、例えば、ピリミジン塩基の5位へのメチル基やカチオン性官能基の導入、あるいは2位のカルボニル基のチオカルボニルへの置換などが挙げられる。さらには、リン酸部分やヒドロキシル部分が、例えば、ビオチン、アミノ基、低級アルキルアミン基、アセチル基等で修飾されたものなどを挙げることができるが、これに限定されない。また、ヌクレオチドの糖部の2´酸素と4´炭素を架橋することにより、糖部のコンフォーメーションをN型に固定したものであるBNA(LNA)等もまた、用いられ得る。
【0033】
センサタンパク質は、化学物質の存在を検出可能なタンパク質から選択すればよく、例えば化学物質をリガンドとする受容体タンパク質であることができる。センサタンパク質は、特に好ましくは嗅覚受容体タンパク質である。
【0034】
嗅覚受容体タンパク質は、7回膜貫通構造を有する膜タンパク質であり、生物の匂いセンサとして働く。嗅覚受容体タンパク質のアミノ末端(以下、「N末端」という場合もある。)からカルボキシル末端(以下、「C末端」という場合もある。)に向かって順に、N末端領域(NT)、第1膜貫通ドメイン(TM1)、第1細胞外ループ(EC1)、第2膜貫通ドメイン(TM2)、第1細胞内ループ(IC1)、第3膜貫通ドメイン(TM3)、第2細胞外ループ(EC2)、第4膜貫通ドメイン(TM4)、第2細胞内ループ(IC2)、第5膜貫通ドメイン(TM5)、第3細胞外ループ(EC3)、第6膜貫通ドメイン(TM6)、第3細胞内ループ(IC3)、第7膜貫通ドメイン(TM7)、及びC末端領域(CT)が連結されて構成される。本開示において、各領域は、TMpred(K. Hofmann, W. Stoffel, TMbase - a database of membrane spanning proteins segments, Biol. Chem. Hoppe-Seyler, 374 (1993), p. 166、https://embnet.vital-it.ch/software/TMPRED_form.html)を用いた構造予測(条件はデフォルト)により決定される。
【0035】
嗅覚受容体タンパク質は、化学物質の検出に適しているという観点から、昆虫嗅覚受容体タンパク質が特に好ましい。昆虫嗅覚受容体タンパク質の由来昆虫としては、好ましくはカ科、ショウジョウバエ科等の双翅目昆虫;カイコガ科等の鱗翅目昆虫;ミツバチ科等の膜翅目昆虫;バッタ科等の直翅目昆虫;トコジラミ科等の半翅目昆虫等が挙げられ、さらに好ましくはカ科、ショウジョウバエ科等の双翅目昆虫;バッタ科等の直翅目昆虫;トコジラミ科等の半翅目昆虫が挙げられる。カ科の昆虫としては、例えば、ガンビエハマダラカ(Anopheles gambiae)、ネッタイシマカ(Aedes aegypti)、ネッタイイエカ(Culex quinquefasciatus)等が挙げられる。ショウジョウバエ科の昆虫としては、例えば、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)、ウスグロショウジョウバエ(Drosophila pseudoobscura)、クロショウジョウバエ(Drosophila virillis)等が挙げられる。カイコガ科の昆虫としては、例えば、カイコガ(Bombyx mori)、クワコ(Bombyx mandarina)、イチジクカサン(Trilocha varians)等が挙げられる。ミツバチ科の昆虫としては、例えば、セイヨウミツバチ(Apis mellifera)、ヒメミツバチ(Apis florea)、オオミツバチ(Apis dorsata)、セイヨウオオマルハナバチ(Bombus terrestris)等が挙げられる。バッタ科の昆虫としては、例えば、トノサマバッタ(Locusta migratoria)等が挙げられ、トコジラミ科の昆虫としては、例えば、トコジラミ(Cimex lectularius)等が挙げられる。
【0036】
野生型の昆虫嗅覚受容体タンパク質として、具体的には、例えば、AaOR1、AaOR2、AaOR4、AaOR5、AaOR6、AaOR7、AaOR8、AaOR9、AaOR10a、AaOR15、AaOR22、AaOR24、AaOR25、AaOR26、AaOR27、AaOR28、AaOR30、AaOR34、AaOR36、AaOR38、AaOR41a、AaOR41b、AaOR42、AaOR43、AaOR44、AaOR47、AaOR49、AaOR50、AaOR52、AaOR54、AaOR58、AaOR59、AaOR60、AaOR61、AaOR64、AaOR65、AaOR66、AaOR67a、AaOR69a、AaOR70、AaOR71、AaOR72a、AaOR73、AaOR74、AaOR75、AaOR77、AaOR78、AaOR79、AaOR81、AaOR83b、AaOR84、AaOR85、AaOR86、AaOR87、AaOR91、AaOR95、AaOR97、AaOR96、AaOR99、AaOR100、AaOR102、AaOR103、AaOR104a、AaOR105、AaOR107、AaOR108、AaOR109、AaOR110、AaOR112、AaOR114、AaOR116、AaOR117、AaOR118、AaOR122、AaOR125、AaOR128、AgOR1、AgOR2、AgOR3、AgOR4、AgOR5、AgOR6、AgOR7、AgOR8、AgOR9、AgOR10、AgOR11a、AgOR12a、AgOR12b、AgOR13、AgOR14、AgOR15、AgOR16a、AgOR17、AgOR18、AgOR20、AgOR21、AgOR23、AgOR25、AgOR26、AgOR27、AgOR28、AgOR30、AgOR34、AgOR36、AgOR37、AgOR38、AgOR39a、AgOR40、AgOR42、AgOR44、AgOR45、AgOR46、AgOR47、AgOR49、AgOR50、AgOR54、AgOR56a、AgOR57、AgOR60、AgOR61、AgOR62、AgOR63、AgOR64、AgOR65、AgOR69、AgOR70、AgOR71、AgOR72、AgOR74、AgOR75、AgOR76a、AmOR1、AmOR3、AmOR9、AmOR10、AmOR13、AmOR41、AmOR51、AmOR52、AmOR55、AmOR71、AmOR73、AmOR78、AmOR85、AmOR89、AmOR90、AmOR114、AmOR115、AmOR118、AmOR120、AmOR121、AmOR161、BmOR1、BmOR2、BmOR3、BmOR4、BmOR5、BmOR8、BmOR9、BmOR10、BmOR13、BmOR17、BmOR18、BmOR23、BmOR24、BmOR25、BmOR35、BmOR36、BmOR42、BmOR45、BmOR49、BmOR51、BmOR52、BmOR55、BmOR56、BmOR61、DmOR1a、DmOR9a、DmOR19a、DmOR22a、DmOR22b、DmOR22c、DmOR24a、DmOR30a、DmOR33a、DmOR33b、DmOR33c、DmOR35a、DmOR42b、DmOR43a、DmOR45a、DmOR45b、DmOR47a、DmOR49b、DmOR59b、DmOR65b、DmOR65c、DmOR67b、DmOR67c、DmOR69a、DmOR71a、DmOR74a、DmOR82a、DmOR83a、DmOR83b、DmOR83c、DmOR85a、DmOR85c、DmOR85e、DmOR85f、DmOR88a、DmOR92a、DmOR94a、DmOR94b、DmOR98b等が挙げられる。
【0037】
本明細書において、ORは嗅覚受容体(Odorant receptor)を示し、DmはDrosophila melanogaster由来であることを示し、BmはBombyx mori由来であることを示し、AgはAnopheles gambiae由来であることを示し、AaはAedes aegypti由来であることを示す。これらを含む各種嗅覚受容体タンパク質のアミノ酸配列及びコード配列は公知であるか、公知の配列に基づいた配列同一性検索により容易に同定することができる。
【0038】
センサタンパク質は、化学物質応答活性が著しく低減しない限りにおいて、野生型アミノ酸配列に対するアミノ酸変異を含むことができる。「著しく低減しない」とは、例えば、アミノ酸変異を含むセンサタンパク質の化学物質応答活性が、野生型のセンサタンパク質の化学物質応答活性100%に対して、例えば50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、よりさらに好ましくは90%以上である、ことを意味する。
【0039】
アミノ酸変異は、例えばアミノ酸の置換、挿入、付加、又は欠失であり、好ましくは置換であり、特に好ましくは保存的置換である。
【0040】
本明細書中において、「保存的置換」とは、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基に置換されることを意味する。例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジンといった塩基性側鎖を有するアミノ酸残基同士で置換されることが、保存的な置換にあたる。その他、アスパラギン酸、グルタミン酸といった酸性側鎖を有するアミノ酸残基;グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システインといった非帯電性極性側鎖を有するアミノ酸残基;アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファンといった非極性側鎖を有するアミノ酸残基;トレオニン、バリン、イソロイシンといったβ-分枝側鎖を有するアミノ酸残基;チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジンといった芳香族側鎖を有するアミノ酸残基同士での置換も同様に、保存的な置換にあたる。
【0041】
センサタンパク質は、野生型アミノ酸配列、野生型アミノ酸配列に対して例えば70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、よりさらに好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含むことができる。
【0042】
本明細書において、アミノ酸配列の「同一性」とは、2以上の対比可能なアミノ酸配列の、お互いに対するアミノ酸配列の一致の程度をいう。従って、ある2つのアミノ酸配列の一致性が高いほど、それらの配列の同一性又は類似性は高い。アミノ酸配列の同一性のレベルは、例えば、配列分析用ツールであるFASTAを用い、デフォルトパラメータを用いて決定される。若しくは、Karlin及びAltschulによるアルゴリズムBLAST(Karlin S, Altschul SF.“Methods for assessing the statistical significance of molecular sequence features by using general scoringschemes”Proc Natl Acad Sci USA.87:2264-2268(1990)、KarlinS,Altschul SF.“Applications and statistics for multiple high-scoring segments in molecular sequences.”Proc Natl Acad Sci USA.90:5873-7(1993))を用いて決定できる。このようなBLASTのアルゴリズムに基づいたBLASTXと呼ばれるプログラムが開発されている。これらの解析方法の具体的な手法は公知であり、National Center of Biotechnology Information(NCBI)のウェブサイト(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を参照すればよい。
【0043】
センサタンパク質には、化学物質応答活性が著しく損なわれない限りにおいて、他のアミノ酸配列、例えばタンパク質タグ、蛍光タンパク質、発光タンパク質、シグナル配列等のタンパク質又はペプチドが付加されてもよい。タンパク質タグとしては、例えばビオチン、Hisタグ、FLAGタグ、Haloタグ、MBPタグ、HAタグ、Mycタグ、V5タグ、PAタグ等が挙げられる。
【0044】
本明細書において、化学物質応答活性とは、センサタンパク質が化学物質を認識し、そのセンサタンパク質単独が又は他のタンパク質と共役してシグナル伝達活性(例えば、イオンチャネル活性)を示す性質をいう。嗅覚受容体の場合であれば、嗅覚受容体が化学物質を認識し、その嗅覚受容体と嗅覚受容体共受容体とが形成した嗅覚受容体複合体が活性化されてイオンチャネル活性を示す性質をいう。センサタンパク質の化学物質応答活性は、化学物質と接触したセンサタンパク質のシグナル伝達活性を指標として(例えばシグナル分子の量を定量・評価して)測定することができる。嗅覚受容体の場合であれば、嗅覚受容体の化学物質応答活性は、化学物質と接触した嗅覚受容体と嗅覚受容体共受容体とが形成する嗅覚受容体複合体のイオンチャネル活性を指標として測定することができる。例えば、(a)嗅覚受容体、(b)嗅覚受容体共受容体、及び(c)嗅覚受容体複合体が応答した場合に細胞内に流入するイオン(カルシウムイオン等)により発色又は発光するタンパク質を発現する細胞と、化学物質とを接触させ、当該細胞の発光量を測定する。測定された発光量が多い程、嗅覚受容体の化学物質の応答活性が高いと判定する。具体的には特許文献1に記載の方法に従って測定することができる。
【0045】
センサタンパク質のコード配列は、センサタンパク質をコードする塩基配列である限り、特に制限されない。外来性ポリヌクレオチドは、その一態様において、センサタンパク質の発現カセットを含む。発現カセットは、細胞内でセンサタンパク質を発現可能なポリヌクレオチドである限り特に制限されない。センサタンパク質の発現カセットの典型例としては、プロモーター、及びそのプロモーターの制御下に配置されたセンサタンパク質のコード配列を含むポリヌクレオチドが挙げられる。
【0046】
プロモーターとしては、特に制限されず、適宜選択することができる。プロモーターとしては、例えばpol II系プロモーターを各種使用することができる。pol II系プロモーターとしては、特に制限されないが、例えばCMVプロモーター、EF1プロモーター、SV40プロモーター、MSCVプロモーター、昆虫由来遺伝子のプロモーター等が挙げられる。
【0047】
センサタンパク質が昆虫嗅覚受容体である場合、外来性ポリヌクレオチドは、本開示の細胞を化学物質検出用途にそのまま使用できるという観点から、昆虫の嗅覚受容体共受容体のコード配列を含むことが好ましい。昆虫の嗅覚受容体共受容体は、嗅覚受容体と同様に7回膜貫通構造を有する膜タンパク質であるものの、それ自身は匂い物質を認識せず、嗅覚受容体とヘテロ複合体を形成して機能する。嗅覚受容体と嗅覚受容体共受容体とから構成されるヘテロ複合体である嗅覚受容体複合体は、匂い物質で活性化されるイオンチャンネル活性が備わっており、活性化されるとナトリウムイオン(Na+)、カルシウムイオン(Ca2+)等の陽イオンを細胞内に流入させる。
【0048】
本開示の細胞を化学物質検出用途にそのまま使用できるという観点から、外来性ポリヌクレオチドは、センサタンパク質(特に、嗅覚受容体タンパク質)が応答した場合に細胞内に流入するイオン(カルシウムイオン等)により発色又は発光するタンパク質のコード配列を含むことが好ましい。このようなタンパク質としては、イクオリン、Yellow Cameleon(YC)、GCaMP等が挙げられる。或いは、本開示の細胞は、カルシウムイオン依存性蛍光色素(例えばFura-2、Fluo-3、Fluo-4等)等のイオン依存性蛍光色素を含むことが好ましい。
【0049】
本開示の細胞を化学物質検出用途にそのまま使用できるという観点から、本開示の細胞は、センサタンパク質を含む、すなわち、本開示の細胞においてはセンサタンパク質が発現している。一態様において、センサタンパク質は、7回膜貫通構造を有するので、膜タンパク質として、細胞膜上に配置される。
【0050】
外来性ポリヌクレオチドは、本開示の細胞を薬剤選別できるようにするために、薬剤耐性遺伝子のコード配列を含むことが好ましい。薬剤耐性遺伝子としては、昆虫細胞の薬剤選別に使用できる薬剤に対する耐性遺伝子を選択すればよく、例えばクロラムフェニコール耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、エリスロマイシン耐性遺伝子、スペクチノマイシン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ピューロマイシン耐性遺伝子などが挙げられる。
【0051】
昆虫の嗅覚受容体共受容体のコード配列、発色又は発光するタンパク質のコード配列、薬剤耐性遺伝子のコード配列等のコード配列は、発現カセットの形態で外来性ポリヌクレオチドに含まれていることが好ましい。発現カセットの構成についてはセンサタンパク質の発現カセットと同様である。発現カセットのプロモーターは、複数のコード配列間で共有することが可能である。
【0052】
外来性ポリヌクレオチドは、好ましくはゲノムDNA(特に好ましくは染色体ゲノムDNA)に組み込まれている。これにより、安定にセンサタンパク質を発現することができ、化学物質検出に適したものとなる。この場合、外来性ポリヌクレオチドは、ゲノムDNA内の、1つの連続領域であることができ、また2つ以上の連続領域の組み合わせ(例えばセンサタンパク質コード配列が連続領域Aに含まれ、薬剤耐性遺伝子のコード配列が連続領域Aとは別の連続領域である連続領域Bに含まれる形態、或いはセンサタンパク質コード配列が連続領域Aと連続領域Bの両方に含まれる形態)であることができる。
【0053】
外来性ポリヌクレオチドは、別の態様において、ゲノムDNAに組み込まれない状態であることができる。この場合、外来性ポリヌクレオチドは、例えばベクターの形態であることができる。この場合、外来性ポリヌクレオチドは、1種のポリヌクレオチド分子であることができ、また2種以上のポリヌクレオチド分子(例えばセンサタンパク質コード配列がポリヌクレオチド分子Aに含まれ、薬剤耐性遺伝子のコード配列がポリヌクレオチド分子Aとは別の分子であるポリヌクレオチド分子Bに含まれる形態、或いはセンサタンパク質コード配列がポリヌクレオチド分子Aとポリヌクレオチド分子Bの両方に含まれる形態)であることができる。
【0054】
本開示は、その一態様において、センサタンパク質のコード配列を含む外来性ポリヌクレオチドを含む、冷蔵耐性を有する細胞(当該細胞も、「本開示の細胞」と示すこともある。)、に関する。
【0055】
冷蔵耐性は、本発明の一態様において、以下の冷蔵耐性試験1に基づいて判定することができる:
<冷蔵耐性試験1>
工程(1)区画を有するプレートに細胞を1x10^5/200μL/区画で播種し、6時間27℃で静置する。
工程(2)プレートをアルミホイルで遮光し、4℃で72時間静置した後、蛍光強度を測定する。
工程(3)センサタンパク質が応答する物質を各区画に添加した後、蛍光強度を測定する。
工程(4)工程(3)で測定された蛍光強度が工程(2)で測定された蛍光強度よりも大きい場合、細胞は冷蔵耐性を有すると判定する。
【0056】
冷蔵耐性試験1のより詳細な条件については、後述の試験例2に従う。
【0057】
本発明の一態様において、冷蔵耐性は、4℃で一定期間保存後の生存率が一定以上であると定義することができる。例えば、冷蔵耐性は、4℃で14日間保存後の生存率が例えば50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上であることができる。当該冷蔵耐性は、後述の試験例1に従って測定する。
【0058】
本開示の細胞は、化学物質センサへの利用に適しているという観点から、細胞チップに含まれた形態であることが好ましい。このため、本開示は、その一態様において、本開示の細胞を含む区画を含む、細胞チップ(本明細書において、「本開示の細胞チップ」と示すこともある。)、に関する。
【0059】
本開示の細胞チップの区画は、細胞と、ハイドロゲルとを含むことが好ましい。これにより、細胞の乾燥を防ぐことができる。
【0060】
区画の形態は、細胞を保持できる態様である限り特に制限されない。細胞の保持性、製造効率、又は化学物質検出性の観点から、区画は、ウェル状であることが好ましい。
【0061】
区画の材質は、細胞を保持できるものである限り特に制限されない。材質は、例えば樹脂、金属等であることができる。
【0062】
区画は、検出感度の観点から、通常、複数個の細胞を含む。区画における面積(cm2)当たりの細胞数(個)は、例えば1×103~1×109個/cm2である。
【0063】
1区画の底面積は、検出感度の観点、又は製造効率の観点から、好ましくは0.5~100mm2、より好ましくは1~30mm2、さらに好ましくは1.5~10mm2である。
【0064】
細胞チップが含む区画の数は、検出感度の観点、又は製造効率の観点から、好ましくは10~2000個、より好ましくは30~1000個、さらに好ましくは50~500個である。
【0065】
本開示の細胞は、冷蔵耐性に優れる。本明細書において、「冷蔵耐性」とは、冷蔵保存(例えば0~10℃、0~8℃、0~6℃、2~6℃)で一定期間(例えば1日以上、1~30日間、2~20日間、3~10日間)経過後の細胞生存率、及び/又は化学物質応答活性が、より高い状態に保たれていることを意味する。細胞生存率、化学物質応答活性は、後述の実施例の方法に従って又は準じて測定することができる。
【0066】
本開示の細胞は、他の生物種由来の細胞に比べて、センサタンパク質を用いた化学物質応答活性に優れている。また、本開示の細胞は、多様なセンサタンパク質を用いて、化学物質を検出することに適している。
【0067】
本開示の細胞及び本開示の細胞チップは、化学物質(特に匂い物質)の検出に用いることができる。化学物質は、例えば体液(例えば、尿、血液、唾液)、空気(例えば、室内の空気、包装内の空気)、水(例えば、河川水、海水、水道水、上水、下水)
等の試料中の化学物質であることができる。この場合、例えば本開示の細胞と試料とを接触させること、或いは本開示の細胞チップの区画に、試料を添加することにより、試料中の化学物質が細胞に到達し、細胞のセンサタンパク質に接触することができる。例えば細胞内に流入するイオンを検出する(例えばイオンにより発色又は発光するタンパク質により検出する)ことにより、化学物質を検出することができる。
【実施例0068】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0069】
試験例1.冷蔵耐性試験1
クワゴマダラヒトリ(Spilosoma imparilis)由来細胞(SpIm細胞)、Sf9細胞、及びHEK293細胞それぞれを、96-well plateのウェルに3x10^3個/well、n=3で播種した。播種時の細胞数は、細胞懸濁液をトリパンブルーで染色し、countessII FL Automated Cell Counter (Thermo Fisher)を使用し計測した。なお、使用した培地は次のとおりである:SpIm細胞;Sf-900III SFM培地、Sf9細胞;Sf-900III SFM培地、HEK293細胞;ダルベッコ変法イーグル培地(4.5g/l グルコース)(L-グルタミン, HEPES含有, ピルビン酸不含))。
【0070】
細胞播種後、アルミホイルで96-well plateを遮光し、冷蔵室(4℃)で静置した。静置開始から、SpIm細胞については14、28、及び35日目、Sf9細胞については1、3、7、及び14日目、HEK293細胞については1、2、及び5日目に、MTTアッセイ法(Roche社製キット)により細胞生存率を測定した。
【0071】
MTTアッセイはキット添付の手順書に従って次のようにして行った。MTT溶液を10μL/wellで添加後、27℃インキュベーターで4時間静置した。次に、MTT溶出液を100μL/wellで添加し、37℃インキュベーターで終夜静置した。続いて、TECAN infinite M200 proを使用して560 nmの吸光度を測定した。播種後サンプルの吸光度を播種時(0日目)のサンプルの吸光度で除して、細胞生存率(%)を算出した。
【0072】
結果を図1に示す。SpIm細胞は、冷蔵状態でより長い期間保存しても、より高い生存率を示すことが分かった。
【0073】
試験例2.冷蔵耐性試験2
<2-1.安定発現細胞の作製>
SpIm細胞に、嗅覚受容体タンパク質(ORA)コード配列、嗅覚受容体共受容体コード配列、カルシウムセンサー発光タンパク質コード配列、及びピューロマイシン耐性遺伝子コード配列がプロモーター配列の制御下に配置されてなり、且つこれらの配列が5´ITR(逆向き反復配列)及び3´ITRの間に配置されてなるトランスボゾンベクターを導入し、ピューロマイシンでセレクションを行い、上記コード配列及びプロモーター配列を含む外来DNAが染色体ゲノムDNAに組み込まれてなる嗅覚受容体安定発現SpIm細胞(以下、ORA細胞)を作製した。
【0074】
<2-2.センサ機能の測定>
ORA細胞を96-well plate CORNING3909に1x10^5/200μL/wellで播種し、27℃インキュベーター(CO2供給なし)内で静置した。培地は、Sf-900III SFM培地を使用した。細胞のカウントは、細胞懸濁液をトリパンブルーで染色後、countessII FL Automated Cell Counter (Thermo Fisher)を使用し計測した。播種から24時間後に、96-well plateから培養液を除去し、0.1%BSA HBSS (-)(フェノールレッド不含)80 mLに交換した。当該液交換の操作の5分後にFlexStation3にて蛍光強度(GCaMP)を測定した。具体的には、各濃度(0、0.01、0.1、1、10、100μM)に調整した化合物a(ORAが応答する物質)を各ウェルに添加し、添加前後の蛍光強度の変化をマイクロプレートリーダー(FlexStation3、Molecular Devices)を用いて定量した。
【0075】
<2-3.冷蔵保存後のセンサ機能の測定>
ORA細胞を上記2-2と同様に播種した後、6時間27℃インキュベーター(CO2供給なし)に静置後、アルミホイルで遮光し、冷蔵室(4℃)にて静置した。72時間後に、上記2-2と同様にして化合物a添加前後の蛍光強度を測定した。
【0076】
<2-4.結果>
結果を図2に示す。SpIm細胞は、化学物質応答センサとして使用することができ、またそのセンサ機能は冷蔵保存後でも安定に保たれることが分かった。
【0077】
試験例3.化学物質応答活性評価試験
Splm細胞を用いて、上記2-1と同様にして、嗅覚受容体タンパク質(ORA、ORB、ORC、ORD、ORE、ORF、AaOR47)それぞれを発現する嗅覚受容体安定発現SpIm細胞を作製した。それぞれの細胞を用いて、上記2-2と同様にして化学物質応答活性を評価した。
【0078】
結果を図3及び図4に示す。SpIm細胞は、多様な嗅覚受容体を用いた場合でも、化学物質応答活性を示すことが分かった。
図1
図2
図3
図4