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特開2024-132490液体吐出ヘッド及び液体を吐出する装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132490
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド及び液体を吐出する装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
B41J2/14 607
B41J2/14 301
B41J2/14 611
B41J2/14 613
B41J2/14 603
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043274
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】秋山 善一
(72)【発明者】
【氏名】マカヴォイ, グレゴリー ジョン
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AF40
2C057AG12
2C057AG32
2C057AG33
2C057AG44
2C057AG47
2C057AG55
2C057AG82
2C057AG84
2C057AG93
2C057AP32
(57)【要約】
【課題】ノズル板振動方式の液体吐出ヘッドにおいてクロストークを抑制する。
【解決手段】同じ液体を吐出する複数のノズル2と、複数のノズルにそれぞれ連通する複数の個別流路4と、複数の個別流路の各ノズル形成壁110にそれぞれ設けられる複数のアクチュエータ5と、ノズル形成壁と対向する側に位置する複数の個別流路の開口部4aに面し、前記同じ液体が流れる共通流路3とを備え、アクチュエータを駆動して個別流路内の液体をノズルから吐出させる液体吐出ヘッドであって、共通流路3は、隔壁121によって互いに仕切られた複数の共通流路部3A,3Bによって構成され、複数の共通流路部は、互いに異なる個別流路の開口部に面している。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同じ液体を吐出する複数のノズルと、
前記複数のノズルにそれぞれ連通する複数の個別流路と、
前記複数の個別流路の各ノズル形成壁にそれぞれ設けられる複数のアクチュエータと、
前記ノズル形成壁と対向する側に位置する前記複数の個別流路の開口部に面し、前記同じ液体が流れる共通流路とを備え、
前記アクチュエータを駆動して前記個別流路内の液体を前記ノズルから吐出させる液体吐出ヘッドであって、
前記共通流路は、隔壁によって互いに仕切られた複数の共通流路部によって構成され、
前記複数の共通流路部は、互いに異なる個別流路の開口部に面していることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記複数のアクチュエータを駆動する駆動回路は、該複数のアクチュエータが形成される基板上に形成されていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項3】
請求項2に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記複数のアクチュエータには、該アクチュエータごとに、前記駆動回路から延びる2つの駆動用配線が接続されていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項4】
請求項3に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記駆動回路に接続される各アクチュエータの駆動用配線の一部又は全部を複数の層に分けて形成し、前記基板上又は前記基板内の同一平面上に並べて配置される配線の数を減らした構成を有することを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項5】
請求項4に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記複数の層に分けて形成される複数の配線部は、前記駆動回路を構成する材料と同じ材料からなる第一の配線部と、前記アクチュエータを構成する材料と同じ材料からなる第二の配線部とを含むことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項6】
請求項2乃至5のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記駆動回路は、前記複数の共通流路部を仕切る前記隔壁上に形成されていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項7】
請求項2乃至5のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記駆動回路は、前記共通流路部ごとに異なる位置に配置される複数の駆動回路部によって構成され、
前記複数の駆動回路部は、それぞれが対応する共通流路部から前記同じ液体が供給される個別流路に対応したアクチュエータを駆動することを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項8】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記アクチュエータは、窒化アルミニウム(AlN)を含む圧電素子であることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項9】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドを備えることを特徴とする液体を吐出する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッド及び液体を吐出する装置に関するものである。
【0002】
従来、同じ液体を吐出する複数のノズルと、複数のノズルにそれぞれ連通する複数の個別流路と、複数の個別流路の各ノズル形成壁にそれぞれ設けられる複数のアクチュエータと、ノズル形成壁と対向する側に位置する複数の個別流路の開口部に面し、複数の個別流路へ供給する前記同じ液体を収容する共通流路とを備えた液体吐出ヘッドが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、複数のノズル及びアクチュエータが形成された振動板(ノズル形成壁)と、複数のノズルにそれぞれ連通する複数の圧力室(個別流路)とを備える液体吐出ヘッドが開示されている。アクチュエータは、ノズルと同軸の円環形状に形成され、各圧力室内のインクを加圧するように駆動する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、個別流路のノズル形成壁にアクチュエータが設けられる従来の液体吐出ヘッドでは、各個別流路内で生じるアクチュエータ駆動による液体の慣性流あるいは圧力波が他の個別流路に伝搬するクロストークが発生するという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、同じ液体を吐出する複数のノズルと、前記複数のノズルにそれぞれ連通する複数の個別流路と、前記複数の個別流路の各ノズル形成壁にそれぞれ設けられる複数のアクチュエータと、前記ノズル形成壁と対向する側に位置する前記複数の個別流路の開口部に面し、前記同じ液体が流れる共通流路とを備え、前記アクチュエータを駆動して前記個別流路内の液体を前記ノズルから吐出させる液体吐出ヘッドであって、前記共通流路は、隔壁によって互いに仕切られた複数の共通流路部によって構成され、前記複数の共通流路部は、互いに異なる個別流路の開口部に面していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、個別流路のノズル形成壁にアクチュエータが設けられる、いわゆるノズル板振動方式の液体吐出ヘッドにおいて、クロストークを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態におけるノズル板振動方式の液体吐出ヘッドを模式的に示す断面図。
図2】同液体吐出ヘッドのノズル面を模式的に示す斜視図。
図3図1中の符号Xで示す破線で囲った部分の拡大断面図。
図4】同液体吐出ヘッドの内部構造を模式的に示す平面図であり、C-C'断面の断面図。
図5】同液体吐出ヘッドを構成する4つのヘッド部のうちの1つの内部構造を模式的に示す平面図であり、C-C'断面の断面図。
図6】同液体吐出ヘッドの内部構造を模式的に示す正面図であり、A-A'断面の断面図。
図7】同液体吐出ヘッドの内部構造を模式的に示す側面図であり、B-B'断面の断面図。
図8】変形例1における圧電素子の配線部の配置(レイアウト)を模式的に説明するための平面図。
図9】変形例1における液体吐出ヘッドの内部構造の一部を模式的に示す側面図であり、図8中のB-B'断面の断面図。
図10】同液体吐出ヘッドの内部構造の一部を模式的に示す側面図であり、図8中のD-D'断面の断面図。
図11】変形例2における駆動回路の配置(レイアウト)を模式的に説明するための平面図。
図12】実施形態における印刷装置の概略説明図。
図13】同印刷装置のヘッドユニットの一例の平面説明図。
図14】他の印刷装置の要部平面説明図。
図15】本例の印刷装置の要部側面説明図。
図16】本例の液体吐出ユニットの要部平面説明図。
図17】本例の液体吐出ユニットの正面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を、液体を吐出する装置に設けられる液体吐出ヘッドに適用した一実施形態について説明する。
なお、本発明は、以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0009】
本実施形態における液体吐出ヘッドは、ノズルを有するノズル板に設けられるアクチュエータにより個別流路の圧力を変動させることにより個別流路内の液体をノズルから吐出するノズル板振動方式の液体吐出ヘッドである。ノズル板振動方式は、一般的なユニモルフ型ピエゾヘッド(圧力室のノズルが連通する壁部(ノズル形成壁)に対向する面を振動させて液体を吐出するもの)に比べて小さい力で液滴が飛ばせるという特徴があり、アクチュエータの省電力化を図ることができる。
【0010】
図1は、本実施形態におけるノズル板振動方式の液体吐出ヘッドを模式的に示す断面図である。
図2は、本実施形態の液体吐出ヘッドのノズル面を模式的に示す斜視図である。
液体吐出ヘッド1は、ノズル板110と、個別流路基板100と、共通流路基板120とを備えている。そのほか、液体吐出ヘッド1は、後述するように、フレーム部140なども備えている。
【0011】
ノズル板110は、薄膜状であり、液体を吐出する複数のノズル2と、ノズル2の周囲に配置される環状のアクチュエータである電気機械変換素子としての圧電素子5とを有している。個別流路基板100は、複数のノズル2に各々連通する複数の個別流路4を有している。各個別流路4の一面にはノズル2(振動膜103)があり、当該一面と対向する側には、個別流路の開口部4aが配置される。共通流路基板120は、複数の個別流路4に連通する共通流路3を有している。液体吐出ヘッド1の両端には、外部の電源等の電気部品と接続するための電気接続パッド55が設けられている。
【0012】
図3は、図1中の符号Xで示す破線で囲った部分の拡大断面図である。
個別流路基板100は、SOI(Silicon on Insulator)基板であり、振動膜103が成膜される側に駆動回路101および配線部102を有している。駆動回路101は、トランジスタや抵抗などを含む回路である。配線部102は、第一電極51に駆動波形を印加するための配線部と、第二電極53に駆動波形を印加するための配線部と有している。また、配線部102は、振動膜103に開けられた第三コンタクト7cを介して電気接続パッド55に電気的に接続されている。
【0013】
ノズル板110は、複数のノズル2が形成され、圧電素子5を覆うノズル形成部(膜)111を有しており、このノズル形成部111のノズル面には、撥液膜112が形成されている。液体の吐出を続けた場合、吐出と同時に発生したミストがノズル面に付着する。このミストがノズル面に多量に付着すると、ノズル2から吐出した液体が、ノズル面に付着した液体の影響を受けて、所望の着弾位置からずれてしまうおそれがある。ノズル面に撥液膜112を形成することで、ノズル面への液体の付着を抑制することができ、ノズル2から吐出した液体が、ノズル面に付着した液体の影響を受けるのを抑制することができる。
【0014】
ノズル板110の圧電素子5は、第一電極51(下部電極ともいう。)と、圧電膜52と、第二電極53(上部電極ともいう。)とを有している。圧電素子5は第一絶縁膜8aに覆われている。第一絶縁膜8aは、第一電極51への電気的な接続を行うための孔状の第四コンタクト7dと、第二電極53への電気的な接続を行うための孔状の第五コンタクト7eとが形成されている。
【0015】
また、第一絶縁膜8aには、圧電素子5の第一電極51と個別流路基板100の配線部102とを電気的に連結する第一引出し配線9aと、圧電素子5の第二電極53と個別流路基板100の配線部102とを電気的に連結する第二引出し配線9bとが形成されている。
【0016】
第一引出し配線9aは、第四コンタクト7dを介して第一電極51に電気的に接続され、第一コンタクト7aを介して配線部102に電気的に接続されている。第二引出し配線9bは、第五コンタクト7eを介して第二電極53に電気的に接続され、第二コンタクト7bを介して配線部102に電気的に接続されている。第一引出し配線9aおよび第二引出し配線9bは、第二絶縁膜8bに覆われている。本実施形態では、第二絶縁膜8bは、圧電素子5も覆っており、樹脂からなるノズル形成部111に侵入した湿気が圧電素子5へ侵入するのを防止して圧電素子5を保護する機能を有している。
【0017】
なお、第一電極51及び第二電極53にそれぞれ引き出し配線部を設けて、振動膜に開けられたコンタクトを介して配線部102に直接、電気的に接続してもよい。また、第二絶縁膜8b上にノズル形成部111との密着性を確保するための密着改善膜を形成してもよい。
【0018】
液体吐出ヘッド1内に満たされた液体は、ノズル2に入り込み、ノズル内でメニスカスを形成する。圧電素子5の各電極51,53に所定の駆動波形(電圧)を印加することで、圧電膜52が振動し、振動膜103が図3中上下方向に振動する。振動膜103が振動することで個別流路内の液体に圧力変化が生じ、ノズル2から液体が吐出される。
【0019】
また、本実施形態の液体吐出ヘッド1は、ノズル2の内周面、個別流路4の内周面および共通流路3の底面に、液体吐出ヘッド1が吐出する液体に対して親液性有し、液体の浸食を防ぐ表面層としての保護膜11が形成されている。本実施形態では、液体吐出ヘッド1が吐出する液体は、アルカリ性であり、個別流路4を形成する個別流路基板100および振動膜103はシリコン単結晶およびシリコン酸化物からなる。これらの材料は、アルカリ性の液体に対して脆弱性を持ち、アルカリ性溶液に溶出し浸食される。これを防ぐために、液体の浸食を防ぐ耐液性の保護膜11を形成することで、個別流路基板100および振動膜103を液体から保護することができる。
【0020】
また、個別流路4およびノズル2はドライエッチングにて形成される。ドライエッチングのガスにフッ素が含まれることで、エッチング後の個別流路4の内壁面およびノズル2の内周面にはフッ素を含む表皮膜が形成され、個別流路4の内壁面およびノズル内周面が撥液性を持ってしまう。個別流路4の内周面が撥液性を有すると、液体の充填時に液体が、個別流路4の内周面に濡れ広がっていかないため、個別流路4が液体で良好に満たされず、個別流路4の角部などに気泡が生じてしまう場合がある。
【0021】
本実施形態では、個別流路4の内周面やノズル2の内周面に親液性を有する保護膜11を形成するので、個別流路4およびノズル2の内周面に対する液体の濡れ性を向上させることができる。保護膜11は、保護膜11が成膜される個別流路4やノズル2の成膜面(保護膜11の下層面)よりも液体に対する親液性があればよい。液体の溶剤が水性の場合は、親水性の高い保護膜とし、液体の溶剤が油性の場合は、親油性の高い保護膜とすることで親液性の高い保護膜11を形成することができる。
【0022】
このように、個別流路4に充填される液体に対して親液性を有する保護膜11をノズル2および個別流路4の内周面に形成することで、液体の充填時に液体が、個別流路4およびノズル2の内周面に濡れ広がやすくなる。その結果、液体の充填性を向上でき、液体の充填の際に加圧や吸引を行わずとも、良好に個別流路4およびノズル2に液体を充填することができる。よって、液体の充填時に振動膜103にクラックが発生するのを抑制することができる。
【0023】
本実施形態の液体の溶剤は水性であるため、個別流路4およびノズル2の内周面に対し、少なくともフッ素を含まない保護膜11を形成することで、ドライエッチングにより形成されたフッ素を含む表皮膜に比べ親液性を向上することができる。上記に加え、さらに、この膜は様々な液体と直接接するため、耐液性をもつ材料、例えば不働態を形成する金属の酸化物であることが望ましい。さらに親液性を向上する方法として、前記不働態を形成する金属酸化物に二酸化ケイ素(SiO)を分子レベルで混ぜたものを用いることもできる。保護膜11のSiOはその表面のOが置換され親水性を有するOH基を持つ。これにより、保護膜11にさらに親水性を付与することができる。上記金属酸化物の金属としては、酸化数への対応性が高いタンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、タングステン(W)などが挙げられる。特にSiOと似た価数を持つZrやHf、あるいはその前後の価数を持つTaなどが特に望ましい。
【0024】
また、例えば、保護膜11を、耐液性の膜と親液性の膜の2層構造としてもよい。この場合は、ノズル2および個別流路4の内周面に耐液性の膜を形成した後に、耐液性の膜上に親液性の膜を形成する。
【0025】
なお、本実施形態では、共通流路3の底面を構成する個別流路基板100の振動膜103の成膜面とは反対側の面にも親液性の保護膜11を形成しているが、この面の保護膜11は耐液性のみを有するものであってもよい。しかし、共通流路3の底面に保護膜11を形成する工程を、ノズル内周面や個別流路の壁面に親液性の保護膜を形成する工程とは別に設ける必要があり、製造工数が増えるおそれがある。また、共通流路3の底面に保護膜11を形成することで、共通流路3の底面に液体が濡れ広がりやすくなるため、液体の充填性も向上する。そのため、共通流路3の底面を構成する個別流路基板100の振動膜103の成膜面とは反対側の面にも親液性の保護膜11を形成するのが好ましい。
【0026】
振動膜103の材質としては、SiOやSiN、金属酸化物や樹脂など少なくとも絶縁性を持つ材質であれば良い。しかし、変位を大きくするためにはヤング率が低い材料が望ましく、かつ個別流路基板100との線膨張係数の差を考えるとその差が比較的小さいSiO(二酸化ケイ素)が、振動膜103の材質として最も望ましい。
【0027】
第一電極層151と第二電極層153は電気抵抗が小さく反応性の低い金属が望ましく、Ir、Moなどの金属が望ましい。圧電層152を構成する圧電材料としては、本実施形態のように、密度向上のために個別流路基板100に駆動回路101と配線部102を内蔵する場合は、それらを破壊しないために、その成膜温度が450℃以下である圧電材料が望ましい。成膜温度が450℃以下である圧電材料としては、AlNやAlNよりも圧電定数の高いScAlNが挙げられる。
【0028】
また、圧電材料としてScAlNを用いることで、次の利点も得ることができる。すなわち、圧電膜52の結晶配向を揃えることで圧電特性を向上することができるが、その配向制御のために振動膜103と第一電極51の間に配向制御層を設ける必要がある。圧電膜52の圧電材料がScAlNのときは、配向制御層としてもScAlNを用いることで、Moからなる第一電極51の格子定数をScAlNに近づけることができる。その結果、圧電膜52の結晶配向が揃い、圧電特性の向上が可能となる。
【0029】
図4は、本実施形態における液体吐出ヘッド1の内部構造を模式的に示す平面図であり、C-C'断面の断面図である。
図5は、本実施形態における液体吐出ヘッド1を構成する4つのヘッド部のうちの1つの内部構造を模式的に示す平面図であり、C-C'断面の断面図である。
図6は、本実施形態における液体吐出ヘッド1の内部構造を模式的に示す正面図であり、A-A'断面の断面図である。
図7は、本実施形態における液体吐出ヘッド1の内部構造を模式的に示す側面図であり、B-B'断面の断面図である。
【0030】
本実施形態の液体吐出ヘッド1は、図6に示すように、ノズル板110、個別流路基板100、共通流路基板120、フレーム部140の順で配置され、構成されている。
【0031】
個別流路基板100には、ノズル板110に形成されている複数のノズル2に対応するように、複数の個別流路4が二次元方向に配列して形成されている。具体的には、ノズル板110には、図5中上下方向に沿って各ノズル2が直線状に配列されて構成されるノズル列が図5中左右方向に複数(図示の例では8列)並べて配置されている。そのため、個別流路基板100に形成される個別流路4も、図5に示すように、図中上下方向に沿って配列された列が図中左右方向に複数(図示の例では8列)並べて配置されている。なお、各ノズル列のノズルは、ノズル列方向(図5中上下方向)の位置が互いにズレるように配列されているため、これに対応して、個別流路4も、図5に示すように、図中上下方向の位置が互いにズレるように配列されている。これにより、ノズル列間で互いに隣接するノズルの隣接方向(B-B'断面の方向)は、ノズル列方向(A-A'断面の方向)に対して直交せず、傾斜する方向となっている。
【0032】
個別流路基板100の上面(共通流路3側の面)には、図6及び図7に示すように、各個別流路4の開口部4aが開口しており、共通流路基板120に形成されている共通流路3が各個別流路4の開口部4aに面するように配置される。本実施形態では、一例として、個別流路4の寸法(開口部4aの直径)は220[μm]であり、個別流路4を区画している隔壁の幅は30[μm]としている。
【0033】
共通流路基板120の上面(個別流路基板100とは反対側の面)には、図6に示すように、フレーム部140が設けられている。液体吐出ヘッド1には、外部の液体貯留部に貯留される液体がフレーム部140の液体供給口33を介して供給される。この液体供給口33から供給された液体は、供給液体貯留室31から供給連通路32を通って共通流路3へ供給され、共通流路3から各個別流路4の開口部4aを介して各個別流路4へ供給される。
【0034】
また、本実施形態の共通流路3は、排出連通路34を介して、フレーム部140に形成されている排出液体貯留室35にも連通されている。これにより、共通流路3内の液体は、排出連通路34から排出液体貯留室35を通り、液体排出口36から外部のポンプ等を経由して、外部のインク貯留部に戻される。すなわち、本実施形態の液体吐出ヘッド1は、液体循環方式の液体吐出ヘッドである。
【0035】
液体循環方式の液体吐出ヘッドによれば、共通流路3内の液体を循環させることが可能となる。これにより、共通流路3などの液体吐出ヘッド1内の流路中に存在する気泡を排除したり、沈降しやすい成分をもつ液体を用いる場合に共通流路3などの液体吐出ヘッド1内の流路内に液体の成分が沈降することを抑制したりすることができる。
【0036】
特に、本実施形態では、供給連通路32と排出連通路34が共通流路3をヘッド長手方向から挟むように配置されている。そのため、供給連通路32と排出連通路34のうちの少なくとも一方が共通流路3をヘッド短手方向から挟むように配置される構成よりも、ヘッド短手方向に液体吐出ヘッドを小型化できる。この小型化の効果は、図4に示すヘッドユニット10のように、本実施形態の液体吐出ヘッド1がヘッド短手方向に複数並べて配置される場合において、特に有効である。
【0037】
なお、共通流路3に対して供給連通路32と排出連通路34をどのように配置するかは適宜設定することができる。したがって、例えば、供給連通路32と排出連通路34のうちの少なくとも一方が共通流路3をヘッド短手方向から挟むように配置してもよい。
また、本実施形態では、共通流路3内の液体が循環する液体循環方式の液体吐出ヘッドの例で説明したが、共通流路3から液体を排出する排出流路を備えていない液体吐出ヘッドであってもよい。
【0038】
ここで、ノズル板110の圧電素子5により振動膜103を振動させて個別流路4内の液体に圧力が加えられると、その圧力はノズル2から液体を吐出させる力となるが、その一部は個別流路4の開口部4aから共通流路3へ逃げる。この逃げた圧力は、クロストークを生じさせる圧力波あるいはクロストークを生じさせる慣性流として、共通流路3を通じて周囲の個別流路4に伝搬する。すなわち、各個別流路4には、その周囲に存在する個別流路4からの圧力波や慣性流が共通流路3を通じて伝搬し、これにより各個別流路4のノズル2の吐出不良を生じさせるクロストークを引き起こす。
【0039】
そこで、本実施形態においては、共通流路基板120に共通流路3を仕切る隔壁121を設け、共通流路3を複数の共通流路部3A,3Bに分割している。これら複数の共通流路部3A,3Bは、同じ共通流路3を構成するものであり、互いに同じ供給液体貯留室31の供給連通路32に接続され、互いに同じ液体を流す。そして、各共通流路部3A,3Bは、互いに異なる個別流路4の開口部4aに面することになる。
【0040】
本実施形態においては、図5に示すように、図中上下方向に延びる8列のノズル列に対応して8列の個別流路列が配列されている。そして、本実施形態では、8列の個別流路列を図中左右方向の中央で4列ずつに分け、4つの個別流路列ずつの2つの個別流路群とし、これらの2つの個別流路群がそれぞれ別の共通流路部3A,3Bから液体の供給を受けるように構成されている。
【0041】
なお、各共通流路部3A,3Bに接続される個別流路群をどのように設定するか、言い換えると、仕切る隔壁121によって共通流路3をどのように仕切るかは、適宜設定することができる。したがって、例えば、8列の個別流路列を図5中上下方向の中央で2分割して、列長さが半分になった8つの個別流路からなる2つの個別流路群とし、これらの2つの個別流路群がそれぞれ別の共通流路部から液体の供給を受けるように構成されている。また、共通流路3を分割して構成される複数の共通流路部3A,3Bの数も適宜設定することができ、例えば、共通流路3を3つ以上の共通流路部に分割してもよい。
【0042】
本実施形態によれば、2つの共通流路部3A,3Bのそれぞれに接続される個別流路4の数は、同じ液体を吐出する全ノズル2の個別流路4が単一の共通流路に接続されている従来構成の半分となる。したがって、各個別流路4において、同じ共通流路部3A,3Bに接続される周囲の個別流路4の数が少なくなり、各個別流路4に伝搬してくる周囲の個別流路4からの圧力波や慣性流の影響が軽減される。その結果、各個別流路4のノズル2の吐出不良を生じさせるクロストークが抑制される。
【0043】
〔変形例1〕
次に、本実施形態における液体吐出ヘッド1の一変形例(以下、本変形例を「変形例1」という。)について説明する。
【0044】
上述した実施形態の液体吐出ヘッド1は、各圧電素子5を駆動する駆動回路101が当該各圧電素子5の形成される個別流路基板100(SOI基板)上に形成されている。この構成により、駆動回路101や配線部102を圧電素子5とともに半導体製造プロセスにより個別流路基板100上に作成することができる。
【0045】
一方で、アクチュエータとして用いられる圧電素子の材料としては、一般には、圧電特性の高さから、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)が広く利用されている。しかしながら、上述した実施形態の液体吐出ヘッド1のように駆動回路101や配線部102が作成される基板上に圧電素子5の圧電膜を成膜する場合、PZTでは成膜・結晶化温度が600℃以上を要することから、圧電素子5の材料としてPZTを用いると、基板内の駆動回路101や配線部102が高温に耐えられなくなる。そのため、圧電素子5と同じ基板に配線部102や駆動回路101を作成する構成では、圧電材料としては、PZTよりも成膜温度の低い圧電材料が求められる。成膜温度の低い圧電材料はPZTに比べて圧電特性の低い場合が多いが、上述したノズル板振動方式であれば、一般的なユニモルフ型ピエゾヘッドに比べて小さい力で液体を吐出できることから、PZTよりも圧電特性の低い材料を選択することが可能である。よって、非鉛材料など成膜・結晶化温度は低いがパワーの小さい圧電材料でも良好に液体を吐出することができる。そのため、上述した実施形態における圧電素子5としては、窒化アルミニウム(AlN)を含むAlNやScAlNなどの圧電素子を採用している。
【0046】
ただし、圧電特性の低い材料からなる圧電素子5を用いて良好に液体を吐出させるためには、圧電素子5に印加する駆動波形を工夫する必要がある。具体的には、圧電特性の高いPZTからなる圧電素子であれば、第一電極51及び第二電極53のうちの一方の電極を複数の圧電素子間で共通した共通電極(グランド電極)とする構成を採用することができる。そのため、第一電極51及び第二電極53のうちの一方の電極の配線については1本の配線で済み、基板上における配線部102の領域は少なくて済む。
【0047】
各圧電素子5の配線は、通常、個別流路4を区画している隔壁上の領域を通るように、基板上又は基板内の同一平面上に並べて配置して、駆動回路101まで引き出すように配置される。個別流路4の隔壁の幅は、液体吐出ヘッド1のノズル密度(解像度)を高めようとするほど狭くなるが、圧電特性の高いPZTからなる圧電素子であれば、引き出す配線数の少ないため、個別流路4の隔壁の幅が例えば1200dpiという高い解像度を実現するための幅であっても、駆動回路101まで引き出すように配置することが可能である。
【0048】
これに対し、圧電特性の低い材料からなる圧電素子5では、良好に液体を吐出させるためには、例えば駆動波形を電圧の極性が反転する波形を含ませるなどの工夫が必要である。そのため、第一電極51及び第二電極53のいずれについても圧電素子5ごとに個別の配線を設け、これらの配線を駆動回路101に接続する必要があり、基板上における配線部102の領域が大幅に増大する。その結果、個別流路4の隔壁の幅が例えば1200dpiという高い解像度を実現するための幅では、各圧電素子5の配線を、個別流路4を区画している隔壁上の領域を通るように、基板上又は基板内の同一平面上に並べて配置して、駆動回路101まで引き出すことが難しい。
【0049】
そこで、本変形例1では、駆動回路101に引き出す各圧電素子5の配線の一部又は全部を複数の層に分けて形成し、基板上又は基板内の同一平面上に並べて配置される配線の数を減らすことで、各圧電素子5の配線を、個別流路4を区画している隔壁上の領域を通して駆動回路101まで引き出すようにする。
【0050】
図8は、本変形例1における各圧電素子5の配線部102の配置(レイアウト)を模式的に説明するための平面図である。
図9は、本変形例1における液体吐出ヘッド1の内部構造の一部を模式的に示す側面図であり、図8中のB-B'断面の断面図である。
図10は、本変形例1における液体吐出ヘッド1の内部構造の一部を模式的に示す側面図であり、図8中のD-D'断面の断面図である。
【0051】
本変形例1では、図8に示すように、ノズル列間で隣り合う8個のノズルに対応する8個の圧電素子5ごとに駆動回路101が設けられ、各駆動回路101は、8列のノズル列に対してノズル列並び方向(B-B'断面の方向)の一端側に配置されている。各駆動回路101と各圧電素子5との間の配線部102は、個別流路4を区画している隔壁104上の領域を通って駆動回路101まで引き出されるように配置される。本変形例1では1つの圧電素子5につき、第一電極51及び第二電極53にそれぞれ接続される2つの配線が必要となるので、個別流路4の隔壁104の幅内には最大で16本の配線を通すことが求められる。しかしながら、例えば1200dpiという高い解像度を実現する場合の隔壁104の幅では、16本の配線を基板上又は基板内の同一平面上に形成することは困難である。
【0052】
本変形例1では、図10に示すように、駆動回路101に引き出す各圧電素子5の配線の一部を3層(3つの異なる面上)に分けて形成している。具体的には、駆動回路101に接続される8つの圧電素子を駆動回路101に近い順に3つのグループに区分する。そして、駆動回路101に最も近い第一グループの圧電素子(例えば3つの圧電素子)については、図10に示すように、振動膜103とノズル板110(ノズル形成部(膜)111)との境界面に形成される第一配線部102Aのみからなる配線によって接続する。
【0053】
一方、第一グループの次に駆動回路101に近い第二グループの圧電素子(例えば3つの圧電素子)については、図10に示すように、振動膜103とノズル板110(ノズル形成部(膜)111)との境界面に形成される第一配線部102Aと、振動膜103の内部に形成される第二配線部102Bとを接続した配線によって接続する。第二グループの圧電素子に対応する第一配線部102Aは、第一グループの圧電素子に対応する第一配線部102Aと同じ面上に形成されるものであるが、個別流路4の隔壁104上の互いに異なる領域に形成される。一方、第二グループの圧電素子の配線を構成する第二配線部102Bは、第一グループの圧電素子の配線を構成する第一配線部102Aが形成される個別流路4の隔壁104の幅内において、当該第一配線部102Aが形成される面(振動膜103とノズル板110との境界面)とは異なる面を通って、駆動回路101に接続される。
【0054】
他方、駆動回路101から最も遠い第三グループの圧電素子(例えば2つの圧電素子)については、図10に示すように、振動膜103とノズル板110(ノズル形成部(膜)111)との境界面に形成される第一配線部102Aと、振動膜103の内部であって第二配線部102Bとは異なる層に形成される第三配線部102Cとを接続した配線によって接続する。第三グループの圧電素子に対応する第一配線部102Aも、第一グループ及び第二グループの圧電素子に対応する第一配線部102Aと同じ面上に形成されるものであるが、個別流路4の隔壁104上の互いに異なる領域に形成される。一方、第三グループの圧電素子の配線を構成する第三配線部102Cは、第二グループの圧電素子の配線を構成する第二配線部102Bが形成される個別流路4の隔壁104の幅内においては、当該第二配線部102Bが形成される面(振動膜103の内部の層)とは異なる面を通り、第一グループの圧電素子の配線を構成する第一配線部102Aが形成される個別流路4の隔壁104の幅内においては、当該第一配線部102Aが形成される面(振動膜103とノズル板110との境界面)とは異なる面を通って、駆動回路101に接続される。
【0055】
以上の構成により、どのグループの第一配線部102Aも、互いに同じ面上に形成されるものであるが、個別流路4の隔壁104上の互いに異なる領域に形成されるので、同一平面上で個別流路4の隔壁104の幅内に並べて配置されることがない。したがって、第一配線部102Aについては、個別流路4の隔壁104の幅内に最大で6本の配線(3つの圧電素子分の配線)を配置すればよい。また、第二配線部102Bについても、その本数が6本であるため、個別流路4の隔壁104の幅内に6本の配線を配置すればよい。また、第三配線部102Cについては、その本数が4本であるため、個別流路4の隔壁104の幅内に4本の配線を配置すればよい。
【0056】
したがって、個別流路4の隔壁104の幅内に16本の配線を同一平面上に形成する必要があったところ、本変形例1によれば、個別流路4の隔壁104の幅内に最大で6本の配線を同一平面上に形成するだけで済む。その結果、例えば1200dpiという高い解像度を実現する場合の隔壁104の幅であっても、十分な太さの配線を形成することができ、安定した駆動波形の伝送を実現でき、安定した圧電素子の駆動を実現することができる。
【0057】
しかも、本変形例1における駆動回路101は、複数層構造のCMOS回路101aを含んでおり、CMOS回路101aの配線層を形成するプロセスにおいて、振動膜103内の第二配線部102B及び第三配線部102Cを一緒に形成することができる。特に、本変形例1の圧電素子5は、窒化アルミニウム(AlN)やその関連物質(アルミニウムを一部スカンジウムに置換した、窒化スカンジウムアルミニウム(ScAlN))で形成されるものである。この場合、圧電膜の成膜温度が低いので、駆動回路101のCMOS回路101aを形成した後に圧電膜の成膜が可能となる。したがって、CMOS回路101aに使われている配線膜の成膜時に、圧電素子5への駆動用配線(電圧供給電線)を成膜することができる。
【0058】
一方、第一配線部102Aについては、上述した実施形態と同様、圧電素子5の作成時に配線される。この場合、第一配線部102Aは、圧電素子5を構成する材料と同じ材料で形成され、第二配線部102B及び第三配線部102Cは駆動回路101を構成する材料と同じ材料から形成されることになり、これらの間で配線材料が異なるものとなる。
【0059】
〔変形例2〕
次に、本実施形態における液体吐出ヘッド1の他の変形例(以下、本変形例を「変形例2」という。)について説明する。
図11は、本変形例2における駆動回路101の配置(レイアウト)を模式的に説明するための平面図である。
【0060】
本変形例2では、図11に示すように、2つの共通流路部3A,3B間で互いに異なる駆動回路101を配置している。具体的には、同じ共通流路部3A,3Bに対応するノズル列間で隣り合う4個のノズルに対応する4個の圧電素子5ごとに駆動回路101が設けられている。したがって、上述した変形例1と比べると、駆動回路101の数は2倍に増えているが、個々の駆動回路101が駆動する圧電素子の数は1/2に減っている。したがって、個々の駆動回路101における駆動負荷が軽減された構成になっている。
【0061】
また、上述した実施形態及び変形例1の液体吐出ヘッド1では、すべての駆動回路101が、8列のノズル列に対してノズル列並び方向(B-B'断面の方向)の一端側に配置された例である。これに対し、本変形例2の液体吐出ヘッド1では、図11に示すように、一部の駆動回路101、詳しくは共通流路部3Bに対応する駆動回路101が、2つの共通流路部3A,3Bを仕切る隔壁121上に形成されている。
【0062】
この構成によれば、共通流路3を仕切るために形成される隔壁121上の領域は、個別流路4等を形成できないデッドスペースであるところ、この領域に駆動回路101を設けることでデッドスペースの有効活用に資することになり、液体吐出ヘッドの小型化に寄与する。
【0063】
また、液体吐出ヘッド1においては、一般に、駆動回路101の発熱を効率よく除去する構成が望まれる。駆動回路101の熱は、共通流路3へ逃がすのが効率的である。本変形例1のように、共通流路部3A,3Bを仕切る隔壁121上に駆動回路101を設けることで、当該駆動回路101が2つの共通流路部3A,3Bとの間に配置されることになり、当該駆動回路101の熱を両側から2つの共通流路部3A,3Bへ逃がすことができる。
【0064】
特に、本変形例1のように、駆動回路101の数を増やし、個々の駆動回路101が駆動する圧電素子の数を減した構成においては、個々の駆動回路101の発熱量を抑制できるとともに、駆動回路101の放熱面積を増やして冷却効果が高まることから、駆動回路101の発熱を効率よく除去する構成が実現できる。
【0065】
次に、本発明に係る液体を吐出する装置の一例について、図12及び図13を参照して説明する。
図12は、本実施形態における液体を吐出する装置としての画像形成装置であるインクジェット記録装置である印刷装置の概略説明図である。
図13は、本実施形態の印刷装置のヘッドユニットの一例の平面説明図である。
【0066】
この液体を吐出する装置である印刷装置500は、連続体510を搬入する搬入手段501と、搬入手段501から搬入された連続体510を印刷手段505に案内搬送する案内搬送手段503とを備えている。また、印刷装置500は、連続体510に対して液体を吐出して画像を形成する印刷を行う印刷手段505と、連続体510を乾燥する乾燥手段507と、連続体510を搬出する搬出手段509なども備えている。
【0067】
連続体510は搬入手段501の元巻きローラ511から送り出され、搬入手段501、案内搬送手段503、乾燥手段507、搬出手段509の各ローラによって案内、搬送されて、搬出手段509の巻取りローラ591にて巻き取られる。この連続体510は、印刷手段505において、搬送ガイド部材559上をヘッドユニット550に対向して搬送され、ヘッドユニット550から吐出される液体によって画像が印刷される。
【0068】
本実施形態の印刷装置500では、ヘッドユニット550に、上述した本実施形態に係る2つのヘッドモジュール100A,100Bを共通ベース部材552に備えている。
【0069】
そして、ヘッドモジュール100A,100Bの搬送方向と直交する方向における液体吐出ヘッド1の並び方向をヘッド配列方向とするとき、ヘッドモジュール100Aのヘッド列1A1,1A2で同じ色の液体を吐出する。同様に、ヘッドモジュール100Aのヘッド列1B1、1B2を組とし、ヘッドモジュール100Bのヘッド列1C1、1C2を組とし、ヘッド列1D1、1D2を組として、それぞれ所要の色の液体を吐出する。
【0070】
次に、本発明に係る液体を吐出する装置としての印刷装置の他の例について、図14及び図15を参照して説明する。
図14は、本例の印刷装置の要部平面説明図である。
図15は、本例の印刷装置の要部側面説明図である。
【0071】
本例の印刷装置500は、シリアル型装置であり、主走査移動機構493によって、キャリッジ403は主走査方向に往復移動する。主走査移動機構493は、ガイド部材401、主走査モータ405、タイミングベルト408等を含む。ガイド部材401は、左右の側板491A、491Bに架け渡されてキャリッジ403を移動可能に保持している。そして、主走査モータ405によって、駆動プーリ406と従動プーリ407間に架け渡したタイミングベルト408を介して、キャリッジ403は主走査方向に往復移動される。
【0072】
このキャリッジ403には、本発明に係る液体吐出ヘッド1及びヘッドタンク441を一体にした液体吐出ユニット440を搭載している。液体吐出ヘッド1は、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色の液体を吐出する。また、液体吐出ヘッド1は、複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配置し、吐出方向を下方に向けて装着している。液体吐出ヘッド1は、液体循環装置と接続されて、所要の色の液体が循環供給される。
【0073】
この印刷装置500は、用紙410を搬送するための搬送機構495を備えている。搬送機構495は、搬送手段である搬送ベルト412、搬送ベルト412を駆動するための副走査モータ416を含む。搬送ベルト412は用紙410を吸着して液体吐出ヘッド1に対向する位置で搬送する。この搬送ベルト412は、無端状ベルトであり、搬送ローラ413と、テンションローラ414との間に掛け渡されている。吸着は静電吸着、あるいは、エアー吸引などで行うことができる。そして、搬送ベルト412は、副走査モータ416によってタイミングベルト417及びタイミングプーリ418を介して搬送ローラ413が回転駆動されることによって、副走査方向に周回移動する。
【0074】
さらに、キャリッジ403の主走査方向の一方側には搬送ベルト412の側方に液体吐出ヘッド1の維持回復を行う維持回復機構420が配置されている。維持回復機構420は、例えば液体吐出ヘッド1のノズル面をキャッピングするキャップ部材421、ノズル面を払拭するワイパ部材422などで構成されている。また、主走査移動機構493、維持回復機構420、搬送機構495は、側板491A,491B、背板491Cを含む筐体に取り付けられている。
【0075】
このように構成した印刷装置500においては、用紙410が搬送ベルト412上に給紙されて吸着され、搬送ベルト412の周回移動によって用紙410が副走査方向に搬送される。そこで、キャリッジ403を主走査方向に移動させながら画像信号に応じて液体吐出ヘッド1を駆動することにより、停止している用紙410に液体を吐出して画像を形成する。
【0076】
次に、本発明に係る液体吐出ユニットの他の例について、図16を参照して説明する。
図16は、本例の液体吐出ユニットの要部平面説明図である。
【0077】
この液体吐出ユニット440は、前記液体を吐出する装置を構成している部材のうち、側板491A、491B及び背板491Cで構成される筐体部分と、主走査移動機構493と、キャリッジ403と、液体吐出ヘッド1で構成されている。
【0078】
なお、この液体吐出ユニット440の例えば側板491Bに、前述した維持回復機構420を更に取り付けた液体吐出ユニットを構成することもできる。
【0079】
次に、本発明に係る液体吐出ユニットの更に他の例について、図17を参照して説明する。
図17は、本例の液体吐出ユニットの正面説明図である。
【0080】
この液体吐出ユニット440は、流路部品444が取付けられた液体吐出ヘッド1と、流路部品444に接続されたチューブ456で構成されている。
【0081】
なお、流路部品444はカバー442の内部に配置されている。流路部品444に代えてヘッドタンク441を含むこともできる。また、流路部品444の上部には液体吐出ヘッド1と電気的接続を行うコネクタ443が設けられている。
【0082】
本願において、吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどである。これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0083】
「液体吐出ユニット」は、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体が含まれる。例えば、「液体吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構、液体循環装置の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
【0084】
ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
【0085】
例えば、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットのヘッドタンクと液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。
【0086】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。
【0087】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。また、液体吐出ヘッドとキャリッジと主走査移動機構が一体化されているものがある。
【0088】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。
【0089】
また、液体吐出ユニットとして、ヘッドタンク若しくは流路部品が取付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。このチューブを介して、液体貯留源の液体が液体吐出ヘッドに供給される。
【0090】
主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものとする。
【0091】
なお、ここでは、「液体吐出ユニット」について、液体吐出ヘッドとの組み合わせで説明しているが、「液体吐出ユニット」には上述した液体吐出ヘッドを含むヘッドモジュールやヘッドユニットと上述したような機能部品、機構が一体化したものも含まれる。
【0092】
「液体を吐出する装置」には、液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット、ヘッドモジュール、ヘッドユニットなどを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて液体を吐出させる装置が含まれる。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0093】
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0094】
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0095】
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0096】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0097】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0098】
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0099】
また、「液体を吐出する装置」としては、他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置がる。また、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などもある。
【0100】
なお、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【0101】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[第1態様]
第1態様は、同じ液体(例えば同色のインク)を吐出する複数のノズル2と、前記複数のノズルにそれぞれ連通する複数の個別流路4と、前記複数の個別流路の各ノズル形成壁(例えばノズル板110)にそれぞれ設けられる複数のアクチュエータ(例えば圧電素子5)と、前記ノズル形成壁と対向する側に位置する前記複数の個別流路の開口部4aに面し、前記同じ液体が流れる共通流路3とを備え、前記アクチュエータを駆動して前記個別流路内の液体を前記ノズルから吐出させる液体吐出ヘッド1であって、前記共通流路3は、隔壁121によって互いに仕切られた複数の共通流路部3A,3Bによって構成され、前記複数の共通流路部は、互いに異なる個別流路の開口部に面していることを特徴とするものである。
個別流路のノズル形成壁にアクチュエータが設けられる、いわゆるノズル板振動方式の液体吐出ヘッドにおいて、アクチュエータを駆動して個別流路内の液体に圧力が加えられると、その圧力は当該個別流路のノズルから液体を吐出させる力となるが、その一部は個別流路の開口部に面している共通流路へ逃げる。この逃げた圧力は、クロストークを生じさせる圧力波あるいはクロストークを生じさせる慣性流として、共通流路を通じて周囲の個別流路に伝搬する。すなわち、各個別流路には、その周囲に存在する個別流路からの圧力波や慣性流が共通流路を通じて伝搬し、これにより各個別流路のノズルの吐出不良を生じさせるクロストークを引き起こす。
本態様における共通流路は、隔壁によって互いに仕切られた複数の共通流路部によって構成され、各共通流路部は、それぞれ、お互いに異なる個別流路の開口部に面するように構成されている。これにより、同じ共通流路部に接続される個別流路の数は、同じ液体を吐出する全ノズルの個別流路が単一の共通流路に接続されている従来構成よりも少なくなる。したがって、各個別流路において、同じ共通流路部に接続される周囲の個別流路の数が少なくなり、各個別流路に伝搬してくる周囲の個別流路からの圧力波や慣性流の影響が軽減される。その結果、各個別流路のノズルの吐出不良を生じさせるクロストークが抑制される。
【0102】
[第2態様]
第2態様は、第1態様において、前記複数のアクチュエータを駆動する駆動回路101は、該複数のアクチュエータが形成される基板(例えば個別流路基板100)上に形成されていることを特徴とするものである。
これによれば、駆動回路をアクチュエータとともに基板上に作成することができる。
【0103】
[第3態様]
第3態様は、第2態様において、前記複数のアクチュエータには、該アクチュエータごとに、前記駆動回路から延びる2つの駆動用配線(例えば配線部102,102A,102B,102C)が接続されていることを特徴とするものである。
これによれば、アクチュエータごとに、例えば電圧の極性が反転するような駆動波形を印加することが可能となり、圧電特性の低い材料からなるアクチュエータを用いる場合でも、良好に液体を吐出させることが可能となる。
【0104】
[第4態様]
第4態様は、第3態様において、前記駆動回路に接続される各アクチュエータの駆動用配線の一部又は全部を複数の層に分けて形成し、前記基板上又は前記基板内の同一平面上に並べて配置される配線の数を減らした構成を有することを特徴とするものである。
これによれば、駆動回路に接続される各アクチュエータの配線のすべてを基板上又は基板内の同一平面上に並べて配置する場合よりも、同一平面上に並べて配置される配線の数を減らすことができる。これにより、個別流路を区画している隔壁上の領域のような狭い幅の領域に配線を通すことができる。
【0105】
[第5態様]
第5態様は、第4態様において、前記複数の層に分けて形成される複数の配線部は、前記駆動回路を構成する材料と同じ材料からなる第一の配線部(例えば第二配線部102B及び第三配線部102C)と、前記アクチュエータを構成する材料と同じ材料からなる第二の配線部(例えば第一配線部102A)とを含むことを特徴とするものである。
これによれば、駆動回路の製造プロセス時とアクチュエータの製造プロセス時に、複数の層に分けて形成される複数の配線部を作成することができる。
【0106】
[第6態様]
第6態様は、第2乃至第5態様のいずれかにおいて、前記駆動回路は、前記複数の共通流路部を仕切る前記隔壁上に形成されていることを特徴とするものである。
共通流路を仕切るために形成される隔壁上の領域は、個別流路等を形成できないデッドスペースである。本態様では、この領域に駆動回路を設けるので、デッドスペースの有効活用に資することになり、液体吐出ヘッドの小型化に寄与する。また、共通流路部を仕切る隔壁上に駆動回路を設けることで、当該駆動回路が2つの共通流路部との間に配置されることになり、当該駆動回路の熱を両側から2つの共通流路部へ逃がすことができるので、駆動回路の発熱を効率よく除去する構成が実現できる。
【0107】
[第7態様]
第7態様は、第2乃至第6態様のいずれかにおいて、前記駆動回路は、前記共通流路部ごとに異なる位置に配置される複数の駆動回路部によって構成され、前記複数の駆動回路部は、それぞれが対応する共通流路部から前記同じ液体が供給される個別流路に対応したアクチュエータを駆動することを特徴とするものである。
これによれば、個々の駆動回路の駆動負荷を軽減して発熱量を抑えるとともに、駆動回路を分散して配置することで、駆動回路の放熱効率を高めることができる。
【0108】
[第8態様]
第8態様は、第1乃至第7態様のいずれかにおいて、前記アクチュエータは、窒化アルミニウム(AlN)を含む圧電素子であることを特徴とするものである。
これによれば、一般に用いられているジルコン酸チタン酸鉛(PZT)よりも圧電膜の成膜温度が低いので、駆動回路を形成した後に圧電膜の成膜が可能となる。
【0109】
[第9態様]
第9態様は、液体を吐出する装置であって、第1乃至第8態様のいずれかの液体吐出ヘッドを備えることを特徴とするものである。
これによれば、個別流路のノズル形成壁にアクチュエータが設けられる、いわゆるノズル板振動方式の液体吐出ヘッドを用いる液体を吐出する装置において、クロストークを抑制することができる。
【符号の説明】
【0110】
1 :液体吐出ヘッド
2 :ノズル
3 :共通流路
3A :共通流路部
3B :共通流路部
4 :個別流路
4a :開口部
5 :圧電素子
10 :ヘッドユニット
31 :供給液体貯留室
32 :供給連通路
33 :液体供給口
34 :排出連通路
35 :排出液体貯留室
36 :液体排出口
51 :第一電極
52 :圧電膜
53 :第二電極
100 :個別流路基板
101 :駆動回路
101a :CMOS回路
102 :配線部
102A :第一配線部
102B :第二配線部
102C :第三配線部
103 :振動膜
104 :隔壁
110 :ノズル板
111 :ノズル形成部
120 :共通流路基板
121 :隔壁
140 :フレーム部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0111】
【特許文献1】特開2017-193108号公報
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