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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013252
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F25J 5/00 20060101AFI20240125BHJP
   F25J 3/04 20060101ALI20240125BHJP
   F28F 3/08 20060101ALI20240125BHJP
   F28D 9/00 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
F25J5/00
F25J3/04 102
F28F3/08 301A
F28D9/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115186
(22)【出願日】2022-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】江越 信明
【テーマコード(参考)】
3L103
4D047
【Fターム(参考)】
3L103AA05
3L103BB29
3L103CC22
3L103DD15
3L103DD17
3L103DD22
3L103DD53
4D047AA08
4D047AB01
4D047AB02
4D047CA03
4D047CA04
4D047CA16
4D047CA19
4D047DA04
4D047DA06
4D047DA17
(57)【要約】
【課題】低圧塔と高圧塔及び混合塔を有する空気分離装置において用いられ、設備コスト増大を抑制できる熱交換器を提供する。
【解決手段】本発明に係る熱交換器110は、低圧塔600、高圧塔500及び混合塔400を有する空気分離装置1100において用いられるものであって、プレートとフィンから構成され、少なくとも一部の原料空気である温流ガス(W1,W2,W3の少なくとも一つ)と混合塔400から取り出される少なくとも1つの温流液(W4,W5の少なくとも一つ)を、低圧塔600から取り出される少なくとも1つの冷流ガス(C2,C3の少なくとも一つ)と混合塔400から取り出される冷流ガス(C1)とにより冷却するとともに、低圧塔600から昇圧ポンプ800を介して取り出されて混合塔400に供給される冷流液(C6)を加熱することを特徴とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低圧塔、高圧塔及び混合塔を有する空気分離装置において用いられる熱交換器であって、
プレートとフィンから構成され、少なくとも一部の原料空気である温流ガスと前記混合塔から取り出される少なくとも1つの温流液を、前記低圧塔から取り出される少なくとも1つの冷流ガスと前記混合塔から取り出される冷流ガスとにより冷却するとともに、前記低圧塔から昇圧ポンプを介して取り出されて前記混合塔に供給される冷流液を加熱することを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記高圧塔から取り出される少なくとも1つの温流液を冷却することを特徴する請求項1記載の熱交換器。
【請求項3】
前記冷流液が流れる冷流液通路と、前記冷流ガスが流れる冷流ガス通路と、前記温流液が流れる温流液通路と、温流ガスが流れる温流ガス通路を備え、前記温流ガス通路は前記温流ガスが前記冷流液と前記冷流ガスに対して向流で流れるように配されており、前記温流液通路は前記温流液が前記冷流液と前記冷流ガスに対して十字流で流れるように配されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低圧塔と高圧塔及び混合塔を有する空気分離装置において用いられ、原料空気を冷却するとともに、低圧塔から混合塔に供給する液体を加熱するための熱交換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気分離装置には、低圧塔と高圧塔に加えて混合塔が用いられるものがあり、一般的に混合塔が用いられるものにおいては、酸素濃度約97%以下の低純度の酸素が製品酸素ガスとして製造される。混合塔では塔頂からの液体酸素と塔底からのガス空気との直接接触により液体酸素を低純度の酸素ガスとし、この低純度の酸素ガスが塔頂から製品酸素ガスとして取り出される。
【0003】
塔頂に供給される液体酸素は低圧塔塔底の液体酸素をポンプで昇圧したものであり、その温度は昇圧圧力での沸点よりも低い。そのため、この状態で低圧塔に供給すると、混合塔塔頂からの製品酸素ガスの流量を低下させるとともに、塔底からの液体空気流量を増加させ、空気分離装置の酸素収率を低下させる要因となる。
そこで、ポンプで昇圧された液体酸素を加熱するための加熱器において、混合塔から排出されるサイドカット液体及び缶出液と熱交換させ、さらに補助熱交換器において、ガス空気と熱交換させることで加熱し、飽和温度に近づけて混合塔に供給するプロセスが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-28572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ポンプで昇圧された液体酸素の加熱には加熱器や補助熱交換器の設置、またこれらの機器への配管の取り回しが必要となる。さらに、これらの機器や配管を格納するためにコールドボックスが大きくなるため、設備コストが増大することが問題となっていた。
【0006】
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、低圧塔と高圧塔及び混合塔を有する空気分離装置において用いられ、設備コスト増大を抑制できる熱交換器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る熱交換器は、低圧塔、高圧塔及び混合塔を有する空気分離装置において用いられるものであって、
プレートとフィンから構成され、少なくとも一部の原料空気である温流ガスと前記混合塔から取り出される少なくとも1つの温流液を、前記低圧塔から取り出される少なくとも1つの冷流ガスと前記混合塔から取り出される冷流ガスとにより冷却するとともに、前記低圧塔から昇圧ポンプを介して取り出されて前記混合塔に供給される冷流液を加熱することを特徴とするものである。
【0008】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記高圧塔から取り出される少なくとも1つの温流液を冷却することを特徴するものである。
【0009】
(3)また、上記(1)又は(2)に記載のものにおいて、前記冷流液が流れる冷流液通路と、前記冷流ガスが流れる冷流ガス通路と、前記温流液が流れる温流液通路と、温流ガスが流れる温流ガス通路を備え、前記温流ガス通路は前記温流ガスが前記冷流液と前記冷流ガスに対して向流で流れるように配されており、前記温流液通路は前記温流液が前記冷流液と前記冷流ガスに対して十字流で流れるように配されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、機器数を減らすとともにコールドボックスをコンパクトにすることができ、これによって設備コストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1に係る熱交換器を備えた空気分離装置の説明図である。
図2】実施の形態1に係る熱交換器の内部構造の説明図である。
図3】実施の形態2に係る熱交換器を備えた空気分離装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施の形態1]
図1は、本実施の形態に係る熱交換器を用いた空気分離装置の一例を示したものである。
本実施の形態に係る熱交換器110は、図1に示すように、低圧塔600、高圧塔500及び混合塔400を有する空気分離装置1100において用いられるものであって、プレートとフィンから構成され、少なくとも一部の原料空気である温流ガス(W1,W2,W3の少なくとも一つ)と混合塔400から取り出される少なくとも1つの温流液(W4,W5の少なくとも一つ)を、低圧塔600から取り出される少なくとも1つの冷流ガス(C2,C3の少なくとも一つ)と混合塔400から取り出される冷流ガス(C1)とにより冷却するとともに、低圧塔600から昇圧ポンプ800を介して取り出されて混合塔400に供給される冷流液(C6)を加熱することを特徴とするものである。
【0013】
まず、図1に基づいて熱交換器を含む空気分離装置の全体構成を説明し、その後、熱交換器の内部構造について説明する。
なお、本明細書において、流体を示す記号として「C」(coldの頭文字)を付したものは当該流体が冷流体であることを示し、「W」(warmの頭文字)を付したものは当該流体が温流体であることを示している。
【0014】
<空気分離装置の構成の説明>
空気分離装置1100は、高圧塔500、低圧塔600、混合塔400と過冷器190および熱交換器110を備えている。
圧縮機90で圧縮され、精製器91で精製された原料空気(W1,W2,W3)は、その一部(W2)が管路21により熱交換器110に供給され、混合塔400の塔頂から管路1で供給される製品酸素ガス(C1)と低圧塔600の塔頂から過冷却190を経て管路2で供給される窒素ガス(C2)、高圧塔500塔頂から管路3で供給される中圧窒素ガス(C3)及び低圧塔600塔底から昇圧ポンプ800で昇圧された液体酸素(C6)との熱交換により冷却され、管路22により高圧塔500の底部に供給される。
【0015】
また、原料空気の一部(W1)は、再圧縮機92で昇圧された後、管路11により熱交換器110に供給され、冷流体である製品酸素ガス(C1)、窒素ガス(C2)、中圧窒素ガス(C3)及び液体酸素(C6)との熱交換により冷却された後、管路13により混合塔400の塔底に供給される。
さらに、原料空気の一部(W3)は、再圧縮機93で昇圧された後、管路31により熱交換器110に供給されて冷流体である製品酸素ガス(C1)、窒素ガス(C2)及び中圧窒素ガス(C3)との熱交換により冷却され、さらに膨張タービン94によって膨張した後、管路32により低圧塔600に供給される。
【0016】
高圧塔500の塔底に管路22で供給された空気は、塔内を流下する還流液との気液接触により、上昇しながら低沸点成分である窒素が濃縮し、塔頂にて窒素ガスが生成する。
また、高圧塔500の塔底には高沸点成分である酸素が富化した酸素富化液体空気が生成し、管路53によって引抜かれる。
【0017】
高圧塔で生成した窒素ガスは、主凝縮器300にて液化され、その一部は、管路51により過冷器190に供給されて冷却され、管路52を経て減圧された後に還流液として低圧塔600の塔頂に供給される。
また、高圧塔500の塔底から管路53で引抜かれた液体空気は、混合塔400から管路41、熱交換器110を経て、管路42で取り出された液体空気とともに管路43により過冷器190に供給され、冷却され、管路44を経て減圧された後に、低圧塔600に供給される。
なお、過冷器190におけるこれら液体の冷却源は、低圧塔600の塔頂から管路60を経て供給される窒素ガスである。
【0018】
低圧塔600に供給された還流液は、塔内の上昇ガスとの気液接触により流下しながら高沸点成分である酸素が濃縮し、塔底にて液体酸素が生成する。また、上昇ガスは上昇しながら低沸点成分である窒素が濃縮し、塔頂にて窒素ガスが生成する。
低圧塔600の塔底に生成した液体酸素(C6)は、管路61により取り出され、昇圧ポンプ800で昇圧された後、管路62で熱交換器110に導かれ、混合塔400から管路45でサイドカットされた液体(以下、「サイドカット液」という)(W5)及び管路41の缶出液(W4)と原料空気の一部(W1、W2)と熱交換し、加熱された後、管路64で取り出され、混合塔400の塔頂に供給される。
混合塔400では供給された液体酸素と管路13で導入されたガス空気が直接接触し、塔頂から管路1で低純度の製品酸素ガス(C1)が製造される。
【0019】
<熱交換器の説明>
熱交換器110には、プレートとフィンからなる各層が積層されたプレートフィン型熱交換器が適用され、図2は、熱交換器110の各層を流路毎に分離して示したものである。
熱交換器110は、図2に示すように、3つの温流体通路A1~A3と3つの冷流体通路B1~B3を有している。
【0020】
そして、温流体通路A1は、温端側と冷端側との間で、温流ガスW1が流れる温流ガス通路a1を有する。
また、温流体通路A2は、温端側と冷端側との間で2つの流域に区画されており、温端側の区画には温流ガスW2が流れる温流ガス通路a2を有し、冷端側の区画には温流液W4が流れる温流液通路a4を有する。
また、温流体通路A3は、温端側と冷端側との間で2つの流域に区画されており、温端側の区画には温流ガスW3が流れる温流ガス通路a3を有し、冷端側の区画には温流液W5が流れる温流液通路a5を有する。
【0021】
また、冷流体通路B1は、温端側と冷端側との間で2つの流域に区画されており、温端側の区画には冷流ガスC1が流れる冷流ガス通路b1を有し、冷端側の区画には冷流液C6が流れる冷流液通路b6を有する。
また、冷流体通路B2は、温端側と冷端側との間で、冷流ガスC2が流れる冷流ガス通路b2を有する。
また、冷流体通路B3は、温端側と冷端側との間で、冷流ガスC3が流れる冷流ガス通路b3を有する。
【0022】
そして、温流ガスである原料空気(W1、W2、W3)が流れる温流ガス通路a1、a2、a3(図2(a)(b)(c)参照)は、冷流ガスである製品酸素ガス(C1)、窒素ガス(C2)、中圧窒素ガス(C3)が流れる冷流ガス通路b1、b2、b3(図2(d)(e)(f)参照)及び冷流液である液体酸素(C6)が流れる冷流液通路b6通路(図2(d)参照)に対して向流で流れるように配置されている。
また、混合塔400から管路41、45により引抜かれた温流液である缶出液(W4)及びサイドカット液(W5)が流れる温流液通路a4、a5(図2(b)(c)参照)は、冷流ガスである窒素ガス(C2)、中圧窒素ガス(C3)の流れる冷流ガス通路b2、b3(図2(e)(f)参照)及び冷流液である液体酸素(C6)が流れる冷流液通路b6(図2(d)参照)に対して十字流で流れるように配置されている。
【0023】
缶出液(W4)の通路(図2(b)参照)は5つのパス、サイドカット液(W5)の通路(図2(c)参照)は7つのパスから構成されている。
管路41により抜き出された混合塔400の缶出液(W4)は、図2(b)に示すように、通路の導入口(in)に流入し、窒素ガス(C2)、中圧窒素ガス(C3)及び液体酸素(C6)に対して十字方向に流れ、つづく冷端側に配したパスを逆向きに流れ、計5つのパスを経て導出口(out)から排出される。
【0024】
管路45により抜き出された混合塔400のサイドカット液(W5)は、図2(c)に示すように、導入口(in)から流入し、窒素ガス(C2)、中圧窒素ガス(C3)及び液体酸素(C6)に対して十字方向に流れ、つづく冷端側に配したパスを逆向きに流れ、計7つのパスを経て導出口(out)から排出される。これら缶出液(W4)及びサイドカット液(W5)の導入口(in)は、それぞれの導出口(out)に対して温端側に設けられており、管路41、45により混合塔400と接続されている。
【0025】
なお、本実施形態では、図2(b)(c)に示すように、缶出液(W4)及びサイドカット液(W5)の通路は、それぞれ原料空気(W2、W3)の通路の下方に仕切られて配されているが、原料空気(W1)、製品酸素ガス(C1)の通路の下方に配してもよい。
【0026】
また、混合塔400の塔頂に接続される液体酸素(C6)の導出口(out)、混合塔400のサイドカットに接続されるサイドカット液(W5)の導入口(in)は、原料空気(W1、W2)の導出口(out)の温端側に設けられている。これは、流体それぞれの温度を考慮して、熱交換の効率が高くなるように配置されたものである。このような配置は、一体化された熱交換器110であるが故に可能となるものであり、この意味で、熱交換器110は、従来例において別途設けられていた加熱器、補助熱交換器を主熱交換器に単純に並べて結合したものでない。もっとも、混合塔400の圧力に応じて、冷端側に配してもよい。
【0027】
以上のように、熱交換器110が上記の機能を有することにより、従来例において別途設けられていた加熱器、補助熱交換器を設置しなくてもよく、さらには、これら機器を格納するためのコールドボックス空間を削減でき設備コストが低減できる。
【0028】
[実施の形態2]
図3は、実施の形態2に係る熱交換器120を用いた空気分離装置1200を示したものであり、空気分離装置1200は、高圧塔500、低圧塔600、混合塔400および熱交換器120を備えている。なお、図3において、図1と同一部分には同一の符号を付してある。
【0029】
熱交換器120は、図1図2に示した熱交換器110に対して、管路43で導入される高圧塔500の塔底からの酸素富化液体空気を含む液体(以下、単に「酸素富化液体空気」)を冷却するための通路、また管路51で導入される主凝縮器300からの液体窒素(W7)を冷却するための通路が加えられたものである。
【0030】
これら酸素富化液体空気(W6)及び液体窒素(W7)の冷却源は、低圧塔600の塔頂から管路60を経て熱交換器12に導入される窒素ガス(C2)と、高圧塔500の塔頂から管路3を経て熱交換器120に導入される中圧窒素ガス(C3)である。
熱交換器120で冷却された酸素富化液体空気(W6)及び液体窒素(W7)は、それぞれ管路44、52で取り出され、減圧された後に低圧塔600に供給される。
【0031】
このように熱交換器120により、従来の加熱器、補助熱交換器および実施の形態1において設置していた過冷器190を設置しなくてもよく、さらには、これら機器を格納するためのコールドボックス空間を削減でき設備コストが低減できる。
【符号の説明】
【0032】
1100、1200 空気分離装置
800 昇圧ポンプ
500 高圧塔
600 低圧塔
400 混合塔
300 主凝縮器
190 過冷器
110、120 熱交換器
90 圧縮機
91 精製器
92、93 再圧縮機
94 膨張タービン
1、2、3、11、13、21、22、31、32、41、42、43、44、45、51、52、53、60、61、62、64、管路
A1~A3 温流体通路
B1~B3 冷流体通路
a1、a2、a3 温流ガス通路
a4、a5 温流液通路
b1~b3 冷流ガス通路
b6 冷流液通路
C1 製品酸素ガス
C2 窒素ガス
C3 中圧窒素ガス
C6 液体酸素
W1、W2、W3 原料空気
W4 缶出液
W5 サイドカット液
W6 酸素富化液体空気
W7 液体窒素
図1
図2
図3