(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132551
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】含フッ素開環重合体
(51)【国際特許分類】
C08G 61/06 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
C08G61/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043363
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】早野 重孝
【テーマコード(参考)】
4J032
【Fターム(参考)】
4J032CA23
4J032CA24
4J032CB04
4J032CC02
4J032CD04
4J032CE03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】低温特性に優れた含フッ素開環重合体を提供すること。
【解決手段】下記一般式(1)で表される含フッ素脂環式単量体に由来の単位を、全繰り返し単位に対して1~50モル%の割合で含有する含フッ素開環重合体を提供する。
(上記一般式(1)中、nは1~5の整数であり、mは、1または2である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される含フッ素脂環式単量体に由来の単位を、全繰り返し単位に対して1~50モル%の割合で含有する含フッ素開環重合体。
【化9】
(上記一般式(1)中、nは1~5の整数であり、mは、1または2である。)
【請求項2】
前記含フッ素開環重合体中における、フッ素原子の占める重量比率が25~50重量%である請求項1に記載の含フッ素開環重合体。
【請求項3】
前記含フッ素開環重合体のガラス転移温度が-40℃以下である請求項1または2に記載の含フッ素開環重合体。
【請求項4】
請求項1または2に記載の含フッ素開環重合体と、充填剤とを含有するゴム組成物。
【請求項5】
請求項4に記載のゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素開環重合体に関し、より詳細には、低温特性に優れた含フッ素開環重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、シクロペンテンやノルボルネン化合物などの環状オレフィンは、WCl6やMoCl5などの周期表第6族遷移金属化合物と、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、テトラブチルスズなどの有機金属活性化剤とからなる、いわゆるチーグラー・ナッタ触媒の存在下で、メタセシス開環重合することで、不飽和の直鎖状の開環重合体を与えることが知られている。
【0003】
たとえば、特許文献1では、多環の含フッ素環状オレフィン単量体を開環重合してなる含フッ素環状オレフィン開環重合体や、その水素化物が開示されている。この特許文献1に開示の含フッ素環状オレフィン開環重合体は、光透過性に優れ、光学樹脂用途として好適であるものの、ガラス転移温度が高く、低温環境下における機械的特性が十分でないものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、低温特性に優れた含フッ素開環重合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成すべく検討を行ったところ、特定の単環の含フッ素脂環式単量体に由来の単位を、全繰り返し単位に対して1~50モル%の割合で含有する含フッ素開環重合体によれば、優れた低温特性を実現できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明によれば、以下の含フッ素開環重合体、ゴム組成物、およびゴム架橋物が提供される。
[1]下記一般式(1)で表される含フッ素脂環式単量体に由来の単位を、全繰り返し単位に対して1~50モル%の割合で含有する含フッ素開環重合体。
【化1】
(上記一般式(1)中、nは1~5の整数であり、mは、1または2である。)
[2]前記含フッ素開環重合体中における、フッ素原子の占める重量比率が25~50重量%である[1]に記載の含フッ素開環重合体。
[3]前記含フッ素開環重合体のガラス転移温度が-40℃以下である[1]または[2]に記載の含フッ素開環重合体。
[4][1]~[3]のいずれかに記載の含フッ素開環重合体と、充填剤とを含有するゴム組成物。
[5][4]に記載のゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、低温特性に優れた含フッ素開環重合体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<含フッ素開環重合体>
本発明の含フッ素開環重合体は、下記一般式(1)で表される含フッ素脂環式単量体に由来の単位を、全繰り返し単位に対して1~50モル%の割合で含有する開環重合体である。
【化2】
(上記一般式(1)中、nは1~5の整数であり、mは、1または2である。)
【0010】
一般式(1)中、nは1~5の整数であり、好ましくは1~4の整数、より好ましくは2~3の整数である。また、mは、1または2であり、好ましくは2である。なお、nが2以上である場合には、複数含まれるmの値(すなわち、一つの炭素原子に結合するフッ素原子の数)は同じであっても異なるものであってもよい。たとえば、nが2である場合には、一般式(1)において、mは2つ含まれることとなるが、一方は、m=1(m=1の場合には、-CHF-となる。)であり、一方は、m=2(m=2の場合には、-CF
2-となる。)である態様であってもよく、この場合には、-CHF-CF
2-となる。本発明においては、mの値が全て2であることが好ましい。すなわち、上記一般式(1)で表される含フッ素脂環式単量体のなかでも、mの値が全て2である、下記一般式(2)で表される含フッ素脂環式単量体が好ましい。
【化3】
(上記一般式(2)中、nは上記一般式(1)と同じである。)
【0011】
本発明の含フッ素開環重合体において、一般式(1)で表される含フッ素脂環式単量体は、開環重合することにより、下記一般式(3)で表される繰り返し単位を形成する。
【化4】
(上記一般式(3)中、n、mは上記一般式(1)と同じである。)
【0012】
一般式(1)で表される含フッ素脂環式単量体としては、たとえば、
3-フルオロシクロプロペン、3,3-ジフルオロシクロプロペンなどの含フッ素シクロプロペン類;
3,4-ジフルオロシクロブテン、3,3,4-トリフルオロシクロブテン、3,3,4,4-テトラフルオロシクロブテンなどの含フッ素シクロブテン類;
3,4,5-トリフルオロシクロペンテン、3,3,4,5-テトラフルオロシクロペンテン、3,4,4,5-テトラフルオロシクロペンテン、3,3,4,4,5-ペンタフルオロシクロペンテン、3,3,4,5,5-ペンタフルオロシクロペンテン、3,3,4,4,5,5-ヘキサフルオロシクロペンテンなどの含フッ素シクロペンテン類;
3,4,5,6-テトラフルオロシクロヘキセン、3,3,4,5,6-ペンタフルオロシクロヘキセン、3,4,4,5,6-ペンタフルオロシクロヘキセン、3,3,4,4,5,6-ヘキサフルオロシクロヘキセン、3,3,4,5,5,6-ヘキサフルオロシクロヘキセン、3,3,4,5,6,6-ヘキサフルオロシクロヘキセン、3,3,4,4,5,5,6-ヘプタフルオロシクロヘキセン、3,3,4,4,5,6,6-ヘプタフルオロシクロヘキセン、3,3,4,4,5,5,6,6-オクタフルオロシクロヘキセンなどの含フッ素シクロヘキセン類;
3,4,5,6,7-ペンタフルオロシクロへプテン、3,3,4,5,6,7-ヘキサフルオロシクロへプテン、3,4,4,5,6,7-ヘキサフルオロシクロへプテン、3,4,5,5,6,7-ヘキサフルオロシクロへプテン、3,3,4,4,5,6,7-ヘプタフルオロシクロへプテン、3,3,4,5,5,6,7-ヘプタフルオロシクロへプテン、3,3,4,5,6,6,7-ヘプタフルオロシクロへプテン、3,3,4,5,6,7,7-ヘプタフルオロシクロへプテン、3,4,4,5,5,6,7-ヘプタフルオロシクロへプテン、3,4,4,5,6,6,7-ヘプタフルオロシクロへプテン、3,3,4,4,5,5,6,7-オクタフルオロシクロへプテン、3,3,4,4,5,6,6,7-オクタフルオロシクロへプテン、3,3,4,4,5,6,7,7-オクタフルオロシクロへプテン、3,3,4,5,5,6,6,7-オクタフルオロシクロへプテン、3,3,4,5,5,6,7,7-オクタフルオロシクロへプテン、3,4,4,5,5,6,6,7-オクタフルオロシクロへプテン、3,3,4,4,5,5,6,6,7-ノナフルオロシクロへプテン、3,3,4,4,5,5,6,7,7-ノナフルオロシクロへプテン、3,3,4,4,5,6,6,7,7-ノナフルオロシクロへプテン、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7-デカフルオロシクロへプテンなどの含フッ素シクロへプテン類;などが挙げられる。
【0013】
これらのなかでも、低温特性をより高めることができるという観点より、3,3-ジフルオロシクロプロペン、3,3,4,4-テトラフルオロシクロブテン、3,3,4,4,5,5-ヘキサフルオロシクロペンテン、3,3,4,4,5,5,6,6-オクタフルオロシクロヘキセン、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7-デカフルオロシクロへプテンが好ましく、3,3,4,4-テトラフルオロシクロブテン、3,3,4,4,5,5-ヘキサフルオロシクロペンテンがより好ましい。一般式(1)で表される含フッ素脂環式単量体は、1種類を単独で使用しても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
本発明の含フッ素開環重合体中における、一般式(1)で表される含フッ素脂環式単量体に由来の単位の含有割合は、全繰り返し単位に対して、1~50モル%であり、好ましくは10~50モル%、より好ましくは20~50モル%、さらに好ましくは30~50モル%である。
【0015】
本発明の含フッ素開環重合体は、一般式(1)で表される含フッ素脂環式単量体と、これと共重合可能な単量体との共重合体であってもよい。共重合可能な単量体としては、フッ素非含有の単環の環状オレフィンや、フッ素非含有の多環の環状オレフィンなどが挙げられる。
【0016】
フッ素非含有の単環の環状オレフィンとしては、環状構造を1個のみ有し、フッ素原子を含有しないオレフィンであれば特に限定されないが、たとえば、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、メチルシクロペンテン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどの環状モノオレフィン;シクロヘキサジエン、メチルシクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチルシクロオクタジエンなどの環状ジオレフィン;などを挙げることができる。
【0017】
単環の環状オレフィンは、単環の環状オレフィンとしては、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンおよびシクロオクタジエンが好ましく、本発明の効果がより得られやすいという観点より、シクロペンテンおよびシクロオクタジエンがより好ましく、シクロペンテンが特に好ましい。
【0018】
また、フッ素非含有の多環の環状オレフィンとしては、環状構造を2個以上有し、フッ素原子を含有しないオレフィンであれば特に限定されないが、たとえば、下記一般式(4)で表されるノルボルネン化合物が好適に挙げられる。
【化5】
(一般式(4)中、R
1~R
4は水素原子、炭素数1~20の炭化水素基、または、塩素原子、ケイ素原子、酸素原子もしくは窒素原子を含む置換基を示し、R
2とR
3は互いに結合して環構造を形成していてもよく、kは0~2の整数である。)
【0019】
上記一般式(4)で表されるノルボルネン化合物の具体例としては、たとえば、以下の化合物が挙げられる。
【0020】
2-ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネン、5-エチル-2-ノルボルネン、5-ブチル-2-ノルボルネン、5-ヘキシル-2-ノルボルネン、5-デシル-2-ノルボルネン、5-シクロヘキシル-2-ノルボルネン、5-シクロペンチル-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-ビニル-2-ノルボルネン、5-プロペニル-2-ノルボルネン、5-シクロヘキセニル-2-ノルボルネン、5-シクロペンテニル-2-ノルボルネン、5-フェニル-2-ノルボルネン、テトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ-3,5,7,12-テトラエン(1,4-メタノ-1,4,4a,9a-テトラヒドロ-9H-フルオレンともいう)、テトラシクロ[10.2.1.02,11.04,9]ペンタデカ-4,6,8,13-テトラエン(1,4-メタノ-1,4,4a,9,9a,10-ヘキサヒドロアントラセンともいう)、ジシクロペンタジエン、メチルジシクロペンタジエン、およびジヒドロジシクロペンタジエン(トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ-8-エン)などの無置換または炭化水素置換基を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン類;
【0021】
テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-メチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-エチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-シクロヘキシルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-シクロペンチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-メチレンテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-エチリデンテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-ビニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-プロペニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-シクロヘキセニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-シクロペンテニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、および9-フェニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エンなどの無置換または炭化水素置換基を有するテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン類;
【0022】
5-ノルボルネン-2-カルボン酸メチル、5-ノルボルネン-2-カルボン酸エチル、2-メチル-5-ノルボルネン-2-カルボン酸メチル、2-メチル-5-ノルボルネン-2-カルボン酸エチルなどのアルコキシカルボニル基を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン類;
テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-9-エン-4-カルボン酸メチル、および4-メチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-9-エン-4-カルボン酸メチルなどのアルコキシカルボニル基を有するテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン類;
【0023】
5-ノルボルネン-2-カルボン酸、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸、および5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物などのヒドロキシカルボニル基または酸無水物基を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン類;
テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-9-エン-4-カルボン酸、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-9-エン-4,5-ジカルボン酸、およびテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-9-エン-4,5-ジカルボン酸無水物などのヒドロキシカルボニル基または酸無水物基を有するテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン類;
【0024】
5-ヒドロキシ-2-ノルボルネン、5-ヒドロキシメチル-2-ノルボルネン、5,6-ジ(ヒドロキシメチル)-2-ノルボルネン、5,5-ジ(ヒドロキシメチル)-2-ノルボルネン、5-(2-ヒドロキシエトキシカルボニル)-2-ノルボルネン、および5-メチル-5-(2-ヒドロキシエトキシカルボニル)-2-ノルボルネンなどのヒドロキシル基を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン類;
テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-9-エン-4-メタノール、およびテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-9-エン-4-オールなどのヒドロキシル基を有するテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン類;
【0025】
5-ノルボルネン-2-カルバルデヒドなどのヒドロカルボニル基を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン類;
テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-9-エン-4-カルバルデヒドなどのヒドロカルボニル基を有するテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン類;
【0026】
3-メトキシカルボニル-5-ノルボルネン-2-カルボン酸などのアルコキシカルボニル基とヒドロキシカルボニル基とを有するビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン類;
【0027】
酢酸5-ノルボルネン-2-イル、酢酸2-メチル-5-ノルボルネン-2-イル、アクリル酸5-ノルボルネン-2-イル、およびメタクリル酸5-ノルボルネン-2-イルなどのカルボニルオキシ基を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン類;
酢酸9-テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エニル、アクリル酸9-テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エニル、およびメタクリル酸9-テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エニルなどのカルボニルオキシ基を有するテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン類;
【0028】
5-ノルボルネン-2-カルボニトリル、および5-ノルボルネン-2-カルボキサミド、5-ノルボルネン-2、3-ジカルボン酸イミドなどの窒素原子を含む官能基を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン類;
テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-9-エン-4-カルボニトリル、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-9-エン-4-カルボキサミド、およびテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-9-エン-4,5-ジカルボン酸イミドなどの窒素原子を含む官能基を有するテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン類;
【0029】
5-クロロ-2-ノルボルネンなどの塩素原子を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン類;
9-クロロテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エンなどの塩素原子を有するテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン類;
【0030】
5-トリメトキシシリル-2-ノルボルネン、5-トリエトキシシリル-2-ノルボルネンなどのケイ素原子を含む官能基を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン類;
4-トリメトキシシリルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-9-エン、4-トリエトキシシリルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-9-エンなどのケイ素原子を含む官能基を有するテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン類;
【0031】
上記一般式(4)で表されるノルボルネン化合物としては、上記一般式(4)において、mが0または1である一般式で表されるものが好ましく、mが0である一般式で表されるものがより好ましい。また、上記一般式(4)において、R1~R4は、同一であっても異なっていてもよい。
【0032】
また、フッ素非含有の多環の環状オレフィンとしては、芳香環を有する多環のシクロオレフィンなども挙げられる。芳香環を有する多環のシクロオレフィンとしては、たとえば、フェニルシクロオクテン、5-フェニル-1,5-シクロオクタジエン、フェニルシクロペンテンなどが挙げられる。
【0033】
共重合可能な単量体は、1種類を単独で使用しても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。共重合可能な単量体としては、低温特性をより高めることができるという観点より、フッ素非含有の単環の環状オレフィンが好ましく、シクロペンテンおよびシクロオクタジエンがより好ましく、シクロペンテンが特に好ましい。
【0034】
本発明の含フッ素開環重合体中における、フッ素非含有の単環の環状オレフィンに由来の単位の含有割合は、全繰り返し単位に対して、50~90モル%であり、好ましくは50~80モル%、より好ましくは50~75モル%、さらに好ましくは50~70モル%である。
【0035】
本発明の含フッ素開環重合体において、低温特性を適切に高めることができるという観点より、本発明の含フッ素開環重合体中における、フッ素原子の占める重量比率が25~50重量%であることが好ましく、より好ましくは30~40重量%である。
【0036】
また、本発明の含フッ素開環重合体は、ガラス転移温度が、好ましくは-40℃以下であり、より好ましくは-45℃以下、さらに好ましくは-50℃以下である。
【0037】
本発明の含フッ素開環重合体の数平均分子量(Mwnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定される、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)の値として、好ましくは5,000~1,000,000であり、より好ましくは8,000~800,000、さらに好ましくは10,000~500,000である。また、本発明の含フッ素開環重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定される、ポリスチレン換算の、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、好ましくは1.0~5.0、より好ましくは1.1~2.9、さらに好ましくは1.2~2.5であり、特に好ましくは1.3~2.3である。
【0038】
本発明の含フッ素開環重合体のトランス/シス比は、好ましくは10/90~90/10であり、より好ましくは20/80~90/10であり、さらに好ましくは30/70~85/15である。上記のトランス/シス比とは、本発明の含フッ素開環重合体を構成する繰返し単位中に存在する二重結合のシス構造とトランス構造との含有割合(シス/トランスの比率)である。トランス/シス比を上記範囲とすることにより、低温特性をより高めることができる。
【0039】
<含フッ素開環重合体の製造方法>
本発明の含フッ素開環重合体を製造する方法は特に限定されないが、たとえば、上記一般式(1)で表される含フッ素脂環式単量体と、これと共重合可能な単量体とを、開環重合触媒の存在下で共重合させる方法が挙げられる。
【0040】
開環重合触媒としては、上記一般式(1)で表される含フッ素脂環式単量体と、共重合可能な単量体とを、開環共重合できるものであればよく、特に限定されないが、遷移金属原子を中心原子として、複数のイオン、原子、多原子イオンおよび/または化合物が結合してなる錯体が挙げられる。遷移金属原子としては、周期表(長周期型周期表、以下同じ)第5、6および8族の原子が使用される。このような遷移金属原子としては、特に限定されないが、第5族の原子としては、たとえばバナジウム、ニオブ、タンタルが挙げられ、第6族の原子としては、たとえばモリブデンやタングステンが挙げられ、第8族の原子としては、たとえばルテニウムやオスミウムが挙げられる。
【0041】
これらの中でも、第6族のモリブデンやタングステン、第8族のルテニウムやオスミウムの錯体を開環重合触媒として用いることが好ましく、モリブデンやタングステンの錯体触媒、モリブデンやタングステン、ルテニウムのカルベン錯体が特に好ましい。ルテニウムカルベン錯体は、酸素や空気中の水分に対して比較的安定であって、失活しにくく、触媒活性に優れるため好ましい。
【0042】
より具体的には、周期表第6族の遷移金属を含む錯体触媒としては、六塩化タングステン、オキシ四塩化タングステン、タングステン(エチルイミド)(テトラクロリド)(ジエチルエーテル)、タングステン(エチルイミド)(テトラクロリド)(テトラヒドロフラン)、タングステン(フェニルイミド)(テトラクロリド)(ジエチルエーテル)、タングステン(フェニルイミド)(テトラクロリド)(テトラヒドロフラン)、タングステン(2,6-ジメチルフェニルイミド)(テトラクロリド)(ジエチルエーテル)、ビス{3,3’-ジ(t-ブチル)-5,5’,6,6’-テトラメチル-2,2’-ビフェノキシ}オキシモリブデン(VI)、ビス{3,3’,5,5’-テトラメチル-2,2’-ビフェノキシ}オキシモリブデン(VI)、ビス{3,3’-ジ(t-ブチル)-5,5’,6,6’-テトラメチル-2,2’-ビフェノキシ}オキシタングステン(VI)、{3,3’-ジ(t-ブチル)-5,5’,6,6’-テトラメチル-2,2’-ビフェノキシ}オキシタングステン(VI)ジクロリドなどが挙げられる。
【0043】
開環重合触媒として上述した周期表第6族の遷移金属を含む錯体触媒を用いる場合には、触媒活性を高めるべく、上述した周期表第6族の遷移金属を含む錯体触媒を、共触媒としての当該錯体触媒以外の触媒と組み合わせて用いることが好ましい。
【0044】
その他の触媒としては、既知の有機金属化合物が挙げられる。有機金属化合物としては、炭素数1以上20以下の炭化水素基を有する、周期表第1、2、12、13及び14族いずれかの有機金属化合物が好ましく、有機リチウム化合物、有機マグネシウム化合物、有機亜鉛化合物、有機アルミニウム化合物、有機スズ化合物がより好ましく、有機リチウム化合物、有機アルミニウム化合物が特に好ましい。
【0045】
有機リチウム化合物としては、n-ブチルリチウム、メチルリチウム、フェニルリチウム、ネオペンチルリチウム、ネオフィルリチウム等が挙げられる。
有機マグネシウム化合物としては、ブチルエチルマグネシウム、ブチルオクチルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、エチルマグネシウムクロリド、n-ブチルマグネシウムクロリド、アリルマグネシウムブロミド、ネオペンチルマグネシウムクロリド、ネオフィルマグネシウムクロリド等が挙げられる。
有機亜鉛化合物としては、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジフェニル亜鉛が挙げられる。
有機アルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムエトキシド、エチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジエトキシド等が挙げられる。
有機スズ化合物としては、テトラメチルスズ、テトラ(n-ブチル)スズ、テトラフェニルスズ等が挙げられる。
【0046】
その他の触媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
また、周期表第6族の遷移金属を含む錯体触媒としては、たとえば、下記一般式(5)で表される化合物を挙げることができる。
【化6】
【0048】
一般式(5)中、Mはモリブデン原子またはタングステン原子を表す。
【0049】
R6、R7は、それぞれ独立に、それぞれ独立に、水素原子;メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基等の炭素数1~12のアルキル基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3~20のシクロアルキル基;又は置換基を有していてもよい炭素数6~20のアリール基;を表す。前記置換基を有していてもよいアリール基のアリール基としては、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等が挙げられる。また、アリール基の置換基としては、メチル基、エチル基等の炭素数1~12のアルキル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1~12のアルコキシ基;トリフルオロメチル基等の炭素数1~12のハロアルキル基;トリフルオロメトキシ基等の炭素数1~12のハロアルコキシ基;フェニル基、4-メチルフェニル基、2,4-ジメチルフェニル基、2-クロロフェニル基、3-メトキシフェニル基等の置換基を有していてもよい、炭素数6~12のアリール基;等が挙げられる。
【0050】
L1は、炭素数1~12のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6~20のアリール基、および置換基を有していてもよい炭素数3~20のシクロアルキル基から選択される置換基を有していてもよい窒素原子、または酸素原子を表す。
【0051】
L1の窒素原子、酸素原子が有する炭素数1~12のアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれのものであってもよい。その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられる。
L1の窒素原子、酸素原子が有する炭素数3~20のシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、アダマンチル基などが挙げられる。
また、L1の窒素原子、酸素原子が有する炭素数6~12のアリール基としては、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等が挙げられる。
【0052】
L1の窒素原子、酸素原子が有する、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数6~12のアリール基が有しうる置換基は特に限定されるものではない。たとえば、メチル基、エチル基等の炭素数1~12のアルキル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1~12のアルコキシ基;トリフルオロメチル基等の炭素数1~12のハロアルキル基;トリフルオロメトキシ基等の炭素数1~12のハロアルコキシ基;フェニル基、4-メチルフェニル基、2,4-ジメチルフェニル基、2-クロロフェニル基、3-メトキシフェニル基等の置換基を有していてもよい、炭素数6~12のアリール基;アミノ基;メチルアミノ基等のモノ置換アミノ基;ジメチルアミノ基等のジ置換アミノ基;イミノ基等が挙げられる。
【0053】
L2、L3は、少なくとも1個の窒素原子を有してなる環員数が5~15の、置換基を有していてもよい共役複素環基であり、または、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子から選ばれるハロゲン基であり、あるいは、O-R8からなるアルコキシ基であり、R8は、置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルキル基、および置換基を有していてもよい炭素数6~30のアリール基から選択される基である。
【0054】
L2、L3の共役複素環基としては、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基等の5員環共役複素環基;ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基等の6員環共役複素環基;キナゾリニル基、フタラジニル基、ピロロピリジル基等の縮合環共役複素環基;等が挙げられる。
【0055】
前記共役複素環基が有しうる置換基は特に限定されるものではない。たとえば、メチル基、エチル基等の炭素数1~12のアルキル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1~12のアルコキシ基;トリフルオロメチル基等の炭素数1~12のハロアルキル基;トリフルオロメトキシ基等の炭素数1~12のハロアルコキシ基;フェニル基、4-メチルフェニル基、2,4-ジメチルフェニル基、2-クロロフェニル基、3-メトキシフェニル基等の置換基を有していてもよい、炭素数6~12のアリール基;アミノ基;メチルアミノ基等のモノ置換アミノ基;ジメチルアミノ基等のジ置換アミノ基;イミノ基等が挙げられる。
【0056】
前記R8の置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルキル基の炭素数1~12のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基などが挙げられる。また、L2、L3がいずれもO-R8から成る場合には、R8のアルキル同士が結合していてもよい。
【0057】
前記R8の炭素数1~12のアルキル基が有しうる置換基は特に限定されるものではない。たとえば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1~12のアルコキシ基;トリフルオロメチル基等の炭素数1~12のハロアルキル基;トリフルオロメトキシ基等の炭素数1~12のハロアルコキシ基;フェニル基、4-メチルフェニル基、2,4-ジメチルフェニル基、2-クロロフェニル基、3-メトキシフェニル基等の置換基を有していてもよい、炭素数6~12のアリール基;アミノ基;メチルアミノ基等のモノ置換アミノ基;ジメチルアミノ基等のジ置換アミノ基;イミノ基等が挙げられる。
【0058】
前記R8の具体例としては、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロポキシ基、2-メチル-2-プロポキシ基、1,1,1-トリフルオロ-2-メチル-2-プロポキシ基、1,1,1-トリフルオロ-2-トリフルオロメチル-2-プロポキシ基、2-トリフルオロメチル―2-フェニル-1,1,1-トリフルオロエトキシ基、を挙げることが出来る。置換基を有していてもよい炭素数6~30のアリール基の具体例としては、2,6-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)フェノキシ基、2,6-ビス(2,4,6-トリイソプロピルフェニル)フェノキシ基、2,4,6-トリメチルフェノキシ基、2,3,5,6-テトラフェノルフェノキシ基、またなどが挙げられる。R8のアルキル同士が結合している場合として、3,3’-ジ(t-ブチル)-5,5’,6,6’-テトラメチル-2,2’-ビフェノキシ基が挙げられる。
【0059】
L4は、少なくとも1個の窒素原子またはリン原子を有してなる中性配位子である。窒素原子を有してなる中性配位子の具体例としては、アセトニトリル、ブチロニトリル、アクリロニトリル、フマロニトリル、ピリジン、2-メチルピリジン、2,4‐ルチジン、2,6‐ルチジン、2,2’-ビピリジン、5,5’-ジメチル-2,2’-ビピリジル、4,4’-ジメチル-2,2’-ビピリジル、4,4’-ジブロモ-2,2’-ビピリジル、2,2’-ビキノリン、1,10-フェナントロリン、ターピリジンが挙げられる。リン原子を有してなる中性配位子の具体例としては、ジメチルフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリフェニルホスフィンが挙げられる。複数の窒素原子を有する場合や複数のリン原子を有する場合、単座ではなく2座の配位子となりうる。
【0060】
また、前記L4の該共役複素環基は置換基を有していてもよい。該置換基としては、前記L2の共役複素環基が有しうる置換基として列記したものと同様のものが挙げられる。
【0061】
一般式(5)で表される化合物の具体例としては、ビス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロポキシ)ネオフィリデンタングステン(VI)(2,6-ジメチルフェニルイミド)、ビス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロポキシ)ネオフィリデンモリブデン(VI)(2,6-ジメチルフェニルイミド)、ビス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロポキシ)ネオフィリデンタングステン(VI)(2,6-ジイソプロピルフェニルイミド)、(2,3,5,6-テトラフェニルフェノキシ)2,6-ジメチルフェニルイミドタングステン(VI)(2,5-ジメチルピロリド)(ネオフィリデン)、{3,3’-ジ(t-ブチル)-5,5’,6,6’-テトラメチル-2,2’-ビフェノキシ}ネオフィリデンモリブデン(VI)(2,6-ジメチルフェニルイミド)、(2-トリフルオロメチル-2-フェニル-1,1,1-トリフルオロエトキシ)2,6-ジメチルフェニルイミドタングステン(VI)(2,5-ジメチルピロリド)(ネオフィリデン)(1,10-フェナントロリン)、(2-トリフルオロメチル-2-フェニル-1,1,1-トリフルオロエトキシ)2,6-ジメチルフェニルイミドタングステン(VI)(2,5-ジメチルピロリド)(ネオフィリデン)(2,2’-ビピリジン)、(2-トリフルオロメチル―2-フェニル-1,1,1-トリフルオロエトキシ)フェニルイミドタングステン(VI)(2,5-ジメチルピロリド)(ネオフィリデン)(ピリジン)、ペンタフルオロフェニルイミドモリブデン(VI)(2,6-ジ(2,4,6-トリメチルフェニル)フェノキシ)ネオフィリデン(2,5-ジメチルピロリド)、アダマンチルイミドモリブデン(VI)(2,6-ジ(2,4,6-トリメチルフェニル)フェノキシ)ネオフィリデンクロリド(ピリジン)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0062】
また、ルテニウムカルベン錯体としては、下記一般式(6)または一般式(7)で表される錯体化合物が好ましい。
【化7】
【0063】
上記一般式(6)、一般式(7)において、R9、R10は、それぞれ独立して水素原子;ハロゲン原子;または、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子もしくはケイ素原子を含んでもよい炭素数1~20の炭化水素基;である。また、X1、X2は、それぞれ独立して任意のアニオン性配位子であり、L5、L6はそれぞれ独立して、ヘテロ原子含有カルベン化合物または中性電子供与性化合物である。R9、R10、X1、X2、L5およびL6は、それぞれ組み合わせは任意であり、互いに結合して多座キレート化配位子を形成していてもよい。なお、ヘテロ原子とは、周期表第15族および第16族の原子を意味し、具体的には、N、O、P、S、As、Se原子などを挙げることができる。これらの中でも、安定なカルベン化合物が得られる観点から、N、O、P、S原子などが好ましく、N原子が特に好ましい。
【0064】
ヘテロ原子含有カルベン化合物としては、カルベン炭素の両側にヘテロ原子が隣接して結合しているものが好ましく、さらにカルベン炭素原子とその両側のヘテロ原子とを含むヘテロ環が構成されているものがより好ましい。また、カルベン炭素に隣接するヘテロ原子には嵩高い置換基を有していることが好ましい。このようなヘテロ原子含有カルベン化合物としては、下記一般式(8)または一般式(9)で示される化合物が好ましい。
【化8】
【0065】
上記一般式(8)、一般式(9)において、R11~R14は、それぞれ独立して水素原子;ハロゲン原子;または、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子もしくは珪素原子を含んでもよい炭素数1~20の炭化水素基;である。また、R11~R14は、それぞれ組み合わせは任意であり、互いに結合して多座キレート化配位子を形成していてもよい。
【0066】
上記一般式(6)、一般式(7)において、アニオン性配位子X1、X2は、中心金属から引き離されたときに負の電荷を持つ配位子であり、たとえば、F、Cl、Br、Iなどのハロゲン原子;ジケトネート基、置換シクロペンタジエニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルボキシル基などを挙げることができる。これらの中でもハロゲン原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
【0067】
また、中性の電子供与性化合物は、中心金属から引き離されたときに中性の電荷を持つ配位子であればいかなるものでもよく、たとえば、カルボニル、アミン類、ピリジン類、エーテル類、ニトリル類、エステル類、ホスフィン類、チオエーテル類、芳香族化合物、オレフィン類、イソシアニド類、チオシアネート類などが挙げられる。これらの中でも、ホスフィン類、エーテル類およびピリジン類が好ましく、トリアルキルホスフィンがより好ましい。
【0068】
上記一般式(6)、一般式(7)で表される錯体化合物の具体例としては、ベンジリデン(1,3-ジメシチルイミダゾリジン-2-イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3-ジメシチルイミダゾリジン-2-イリデン)(3-メチル-2-ブテン-1-イリデン)(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3-ジメシチル-2,3-ジヒドロベンズイミダゾール-2-イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、トリシクロヘキシルホスフィン[1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-4,5-ジヒドロイミダゾル-2-イリデン][ 3-メチル-2-ブテニリデン]ルテニウムジクロライドなどのL5、L6がそれぞれヘテロ原子含有カルベン化合物および中性の電子供与性化合物であるルテニウム錯体化合物;ベンジリデンビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ジクロロ-(3-フェニル-1H-インデン-1-イリデン)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム、(3-メチル-2-ブテン-1-イリデン)ビス(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウムジクロリドなどのL5、L6ともに中性電子供与性化合物であるルテニウム化合物;ベンジリデンビス(1,3-ジシクロヘキシルイミダゾリジン-2-イリデン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデンビス(1,3-ジイソプロピル-4-イミダゾリン-2-イリデン)ルテニウムジクロリドなどのL5、L6ともヘテロ原子含有カルベン化合物であるルテニウム錯体化合物;などが挙げられる。これらの中でもL5、L6がそれぞれヘテロ原子含有カルベン化合物および中性の電子供与性化合物であるルテニウム錯体化合物が好ましい。
【0069】
また、上記一般式(8)、一般式(9)で表される化合物の具体例としては、1,3-ジメシチルイミダゾリジン-2-イリデン、1,3-ジメシチル-4-イミダゾリン-2-イリデン、1,3-ジ(1-フェニルエチル)-4-イミダゾリン-2-イリデン、1,3-ジメシチル-2,3-ジヒドロベンズイミダゾール-2-イリデンなどが挙げられる。さらに、上記一般式(8)、一般式(9)で表される化合物の他に、1,3,4-トリフェニル-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-1,2,4-トリアゾール-5-イリデン、1,3,4-トリフェニル-4,5-ジヒドロ-1H-1,2,4-トリアゾール-5-イリデンなどのヘテロ原子含有カルベン錯体化合物なども使用できる。
【0070】
開環重合触媒の使用量は、(開環重合触媒:開環重合に用いる単量体)のモル比で、通常1:500~1:2,000,000、好ましくは1:700~1:1,500,000、より好ましくは1:1,000~1:1,000,000の範囲である。また、開環重合触媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種類以上混合して用いてもよい。
【0071】
また、上記一般式(1)で表される含フッ素脂環式単量体と、共重合可能な単量体とを開環重合させる際には、必要に応じて、得られる含フッ素開環重合体の分子量を調整するために、分子量調整剤として、オレフィン化合物またはジオレフィン化合物を重合反応系に添加してもよい。
【0072】
オレフィン化合物としては、エチレン性不飽和結合を有する有機化合物であれば特に限定されないが、たとえば、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンなどのα-オレフィン類;スチレン、ビニルトルエンなどのスチレン類;アリルクロライドなどのハロゲン含有ビニル化合物;エチルビニルエーテル、i-ブチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリクロロシラン、スチリルトリメトキシシランなどのケイ素含有ビニル化合物;2-ブテン、3-ヘキセンなどの二置換オレフィン;などが挙げられる。
【0073】
ジオレフィン化合物としては、1,4-ペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、1,6-ヘプタジエン、2-メチル-1,4-ペンタジエン、2,5-ジメチル-1,5-ヘキサジエンなどの非共役ジオレフィンが挙げられる。
【0074】
分子量調整剤としてのオレフィン化合物およびジオレフィン化合物の使用量は、製造する含フッ素開環重合体の分子量に応じて適宜選択すればよいが、重合に用いる含フッ素開環重合体に対して、モル比で、通常1/100~1/100,000、好ましくは1/200~1/50,000、より好ましくは1/500~1/10,000の範囲である。
【0075】
重合反応は、無溶媒中で行ってもよく、溶液中で行ってもよいが、溶液中で行うことが好ましい。溶液中で共重合する場合、用いられる溶媒は重合反応において不活性であり、共重合に用いる単量体や、開環重合触媒などを溶解させ得る溶媒であれば特に限定されないが、炭化水素系溶媒またはハロゲン系溶媒を用いることが好ましい。炭化水素系溶媒としては、たとえば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素;ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素;などを挙げることができる。また、ハロゲン系溶媒としては、たとえば、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロアルカン;クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどの芳香族ハロゲン;などを挙げることができる。これらの溶媒は、一種を単独で用いてもよいし、2種類以上混合して用いてもよい。
【0076】
重合反応温度の下限は、特に限定されないが、好ましくは-100℃以上であり、より好ましくは-50℃以上、さらに好ましくは0℃以上、特に好ましくは20℃以上である。また、重合反応温度の上限は特に限定されないが、好ましくは120℃未満であり、より好ましくは100℃未満、さらに好ましくは90℃未満、特に好ましくは80℃未満である。重合反応時間も、特に限定されないが、好ましくは1分間~240時間、より好ましくは10分間~120時間である。重合反応により、含フッ素開環重合体を含有する重合溶液が得られる。得られる重合溶液は、重合反応完了後に回収してもよいし、重合に用いる単量体、ならびに、開環重合触媒の一方または両方を、連続的または断続的に添加する一方で、一定量の重合溶液を連続的に抜き出すことにより回収してもよい(連続重合方式)。
【0077】
重合反応により得られる含フッ素開環重合体には、所望により、フェノール系安定剤、リン系安定剤、イオウ系安定剤などの老化防止剤を添加してもよい。老化防止剤の添加量は、その種類などに応じて適宜決定すればよい。さらに、所望により、伸展油を配合してもよい。重合溶液として含フッ素開環重合体を得た場合において、重合溶液から含フッ素開環重合体を回収するためには、公知の回収方法を採用すればよく、たとえば、スチームストリッピングなどで溶媒を分離した後、固体をろ別し、さらにそれを乾燥して固形状の含フッ素開環重合体を取得する方法などが採用できる。
【0078】
<ゴム組成物>
本発明のゴム組成物は、上述した本発明の含フッ素開環重合体、および充填剤を含有する。充填剤としては、シリカや、カーボンブラックが挙げられる。
【0079】
シリカとしては、たとえば、乾式法ホワイトカーボン、湿式法ホワイトカーボン、コロイダルシリカ、特開昭62-62838号公報に開示されている沈降シリカが挙げられる。これらの中でも、含水ケイ酸を主成分とする湿式法ホワイトカーボンが好ましい。また、カーボンブラック表面にシリカを担持させたカーボン-シリカデュアル・フェイズ・フィラーを用いてもよい。これらのシリカは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0080】
シリカの窒素吸着比表面積(ASTM D3037-81に準じBET法で測定される。)は、好ましくは50~400m2/gであり、より好ましくは100~220m2/gである。また、シリカのpHは、pH7未満であることが好ましく、pH5~6.9であることがより好ましい。これらの範囲であると、含フッ素開環重合体とシリカとの親和性が特に良好となる。
【0081】
シリカを用いる場合は、含フッ素開環重合体とシリカとの親和性をより向上させる目的で、本発明のゴム組成物に、シランカップリング剤をさらに配合することが好ましい。シランカップリング剤としては、たとえば、ビニルトリエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィドなどや、特開平6-248116号公報に記載されているγ-トリメトキシシリルプロピルジメチルチオカルバミルテトラスルフィド、γ-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィドなどのテトラスルフィド類を挙げることができる。なかでも、テトラスルフィド類が好ましい。これらのシランカップリング剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。シランカップリング剤の配合量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは0.1~30質量部、より好ましくは1~15質量部である。
【0082】
カーボンブラックとしては、たとえば、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、グラファイトなどが挙げられる。これらの中でも、ファーネスブラックが好ましく、その具体例としては、SAF、ISAF、ISAF-HS、ISAF-LS、IISAF-HS、HAF、HAF-HS、HAF-LS、FEFなどが挙げられる。これらのカーボンブラックは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0083】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、好ましくは5~200m2/gであり、より好ましくは70~120m2/gであり、ジブチルフタレート(DBP)吸着量は、好ましくは5~300ml/100gであり、より好ましくは80~160ml/100gである。
【0084】
充填剤の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100質量部に対して、好ましくは1~150質量部、より好ましくは2~120質量部、さらに好ましくは15~100質量部、特に好ましくは15~80質量部である。
【0085】
本発明のゴム組成物は、ゴム成分として、上述した含フッ素開環重合体以外のゴムを含んでいてもよい。上述した含フッ素開環重合体以外のゴムとしては、たとえば、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、乳化重合SBR(スチレン-ブタジエン共重合ゴム)、溶液重合ランダムSBR(結合スチレン5~50質量%、ブタジエン部分の1,2-結合含有量10~80%)、高トランスSBR(ブタジエン部のトランス結合含有量70~95%)、低シスBR(ポリブタジエンゴム)、高シスBR、高トランスBR(ブタジエン部のトランス結合含有量70~95%)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、スチレン-イソプレン共重合ゴム、ブタジエン-イソプレン共重合ゴム、乳化重合スチレン-アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム、高ビニルSBR-低ビニルSBRブロック共重合ゴム、ポリイソプレン-SBRブロック共重合ゴム、ポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレンブロック共重合体、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、フッ素ゴム、シリコンゴム、エチレン-プロピレンゴム、ウレタンゴムなどが挙げられる。なかでも、NR、BR、IR、EPDM、SBRが好ましく、SBRが特に好ましく用いられる。これらのゴムは、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0086】
本発明のゴム組成物中の含フッ素開環重合体の含有割合は、ゴム成分の全量に対して、10質量%以上とすることが好ましく、20質量%以上とすることがより好ましく、30質量%以上とすることが特に好ましく、100質量%以下であってよく、90質量%以下であってもよい。この割合が低すぎると、低温特性の向上効果が得られなくなるおそれがある。
【0087】
本発明のゴム組成物には、上記成分の他に、常法に従って、架橋剤、架橋促進剤、架橋活性化剤、無機材料以外の充填剤、老化防止剤、活性剤、プロセス油、可塑剤、滑剤などの配合剤をそれぞれ必要量配合できる。
【0088】
架橋剤としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などの硫黄;一塩化硫黄、二塩化硫黄などのハロゲン化硫黄;ジクミルパーオキシド、ジターシャリブチルパーオキシドなどの有機過酸化物;p-キノンジオキシム、p,p’-ジベンゾイルキノンジオキシムなどのキノンジオキシム;トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、4,4’-メチレンビス-o-クロロアニリンなどの有機多価アミン化合物;メチロール基をもったアルキルフェノール樹脂;などが挙げられる。これらの中でも、硫黄が好ましく、粉末硫黄がより好ましい。これらの架橋剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。架橋剤の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1~15質量部、より好ましくは0.5~5質量部である。
【0089】
架橋促進剤としては、たとえば、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-(tert-ブチル)-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N’-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミドなどのスルフェンアミド系架橋促進剤;1,3-ジフェニルグアニジン、1,3-ジオルトトリルグアニジン、1-オルトトリルビグアニジンなどのグアニジン系架橋促進剤;ジエチルチオウレアなどのチオウレア系架橋促進剤;2-メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド、2-メルカプトベンゾチアゾール亜鉛塩などのチアゾール系架橋促進剤;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィドなどのチウラム系架橋促進剤;ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛などのジチオカルバミン酸系架橋促進剤;イソプロピルキサントゲン酸ナトリウム、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛、ブチルキサントゲン酸亜鉛などのキサントゲン酸系架橋促進剤;などが挙げられる。なかでも、スルフェンアミド系架橋促進剤を含むものが好ましく、N-(tert-ブチル)-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミドを含むものが特に好ましい。これらの架橋促進剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。架橋促進剤の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1~15質量部、より好ましくは0.5~5質量部である。
【0090】
架橋活性化剤としては、たとえば、ステアリン酸などの高級脂肪酸や酸化亜鉛などを用いることができる。架橋活性化剤の配合量は適宜選択されるが、高級脂肪酸の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.05~15質量部、より好ましくは0.5~5質量部であり、酸化亜鉛の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.05~10質量部、より好ましくは0.5~3質量部である。
【0091】
プロセス油としては、鉱物油や合成油を用いてよい。鉱物油は、アロマオイル、ナフテンオイル、パラフィンオイルなどが通常用いられる。その他の配合剤としては、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、シリコーンオイルなどの活性剤;炭酸カルシウム、タルク、クレーなどの無機材料以外の充填剤;石油樹脂、クマロン樹脂などの粘着付与剤;ワックスなどが挙げられる。
【0092】
本発明のゴム組成物は、常法に従って各成分を混練することにより得ることができる。たとえば、架橋剤および架橋促進剤を除く配合剤と含フッ素開環重合体などのゴム成分とを混練後、その混練物に架橋剤と架橋促進剤とを混合してゴム組成物を得ることができる。架橋剤および架橋促進剤を除く配合剤と含フッ素開環重合体などのゴム成分との混練温度は、好ましくは20~200℃、より好ましくは30~180℃であり、その混練時間は、好ましくは30秒間~30分間である。架橋剤と架橋促進剤との混合は、通常100℃以下、好ましくは80℃以下で行われる。
【0093】
<ゴム架橋物>
本発明のゴム架橋物は、上述した本発明のゴム組成物を架橋してなるものである。
本発明のゴム架橋物は、本発明のゴム組成物を用い、たとえば、所望の形状に対応した成形機、たとえば、押出機、射出成形機、圧縮機、ロールなどにより成形を行い、加熱することにより架橋反応を行い、架橋物として形状を固定化することにより製造することができる。この場合においては、予め成形した後に架橋しても、成形と同時に架橋を行ってもよい。成形温度は、通常、10~200℃、好ましくは25~120℃である。架橋温度は、通常、100~200℃、好ましくは130~190℃であり、架橋時間は、通常、1分~24時間、好ましくは2分~12時間、特に好ましくは3分~6時間である。
【0094】
また、ゴム架橋物の形状、大きさなどによっては、表面が架橋していても内部まで十分に架橋していない場合があるので、さらに加熱して二次架橋を行ってもよい。
【0095】
加熱方法としては、プレス加熱、スチーム加熱、オーブン加熱、熱風加熱などのゴムの架橋に用いられる一般的な方法を適宜選択すればよい。
【0096】
このようにして得られる本発明のゴム架橋物は、上述した本発明の含フッ素開環重合体を含有するため、低温特性に優れたものである。そして、本発明のゴム架橋物は、このような特性を活かし、種々の用途、特に、優れた低温特性が求められる種々の用途に好適に用いることができる。
【実施例0097】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」は、特に断りのない限り質量基準である。
本実施例および比較例において行った試験方法は以下のとおりである。
【0098】
<含フッ素脂環式単量体由来の単位およびシクロペンテン由来の単位の割合>
含フッ素開環重合体中の単量体組成比を、1H-NMRスペクトル測定から求めた。
【0099】
<分子量>
含フッ素開環重合体の数平均分子量(Mn)および分子量分布は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)システム(製品名「HLC-8320」、東ソー社製)を用いて、Hタイプカラム(製品名「HZ-M」、東ソー社製)二本を直列に連結して用い、テトラヒドロフランを溶媒として、カラム温度40℃にて測定を行い、ポリスチレン換算値として求めた。なお、検出器は、示差屈折計(製品名「RI-8320」、東ソー社製)を用いた。
【0100】
<主鎖二重結合のシス/トランス比>
含フッ素開環重合体の主鎖のCF2CH=CHCH2二重結合のシス/トランス比を、1H-NMRスペクトル測定および19F-NMRスペクトル測定から求めた。すなわち、含フッ素繰り返し単位と、非フッ素繰り返し単位の間の二重結合のシス/トランス比を求めた。
【0101】
<ガラス転移温度(Tg)、融点(Tm)>
含フッ素開環重合体のガラス転移温度(Tg)および融点(Tm)を、示差走査型熱量計(製品名「X-DSC7000」、日立ハイテクサイエンス社製)を用いて、-150~100℃の範囲にて、10℃/分の昇温条件にて測定することにより求めた。
【0102】
<フッ素原子含有割合>
含フッ素開環重合体中のフッ素原子の含有割合を1H-NMRスペクトル測定から求めた含フッ素開環重合体中の単量体組成比から算出した。
【0103】
〔実施例1〕
3,3,4,4-テトラフルオロシクロブテン2.72部、およびシクロペンテン0.491部をガラス製反応器の中で混合し、基質混合液とした。
これとは別に、別の反応器にて、開環重合触媒(ペンタフルオロフェニルイミドモリブデン(VI)(2,6-ジ(2,4,6-トリメチルフェニル)フェノキシ)ネオフィリデン(2,5-ジメチルピロリド))(X643)0.120部を、ジクロロメタン3.82部に溶解し、触媒溶液を作製した。
得られた触媒溶液を、上記にて調製した基質混合液に添加し、25℃にて20時間撹拌した。次いで、プロピオンアルデヒドを、開環重合触媒に対して50モル当量の割合にて添加し、さらに1時間攪拌し、反応をクエンチして全ての揮発分を留去し、残渣を4部のトルエンに溶解することで、粘稠な溶液を得た。得られた溶液を20部のメタノールに一定速度で滴下し、共重合体を沈殿させ、次いで、上澄み液をデカンテーションし、沈殿物を真空乾燥させた。そして、得られた共重合体を6部のジクロロメタンに溶かし、20部のメタノールから再び沈殿させた後、溶媒相を除去し、共重合体を再び真空乾燥させることで、0.89部の含フッ素開環共重合体Aを得た。
得られた含フッ素開環共重合体AのMnは13,800、Mw/Mnは2.2であった。また、1H-NMRによりその組成を確認したところ、3,3,4,4-テトラフルオロシクロブテンとシクロペンテンが等モルにて交互共重合されたものであり、かつ、そのトランス/シス比が32/68とシスリッチの交互共重合体であった。得られた含フッ素開環共重合体Aのフッ素の含有割合は39重量%であり、ガラス転移温度は-65℃であり、39℃にブロードな融点を有する結晶性エラストマーであった。
【0104】
〔実施例2〕
3,3,4,4-テトラフルオロシクロブテン4.53部、およびシクロペンテン0.491部をガラス製反応器の中で混合し、基質混合液とした。
これとは別に、別の反応器にて、開環重合触媒(アダマンチルイミドモリブデン(VI)(2,6-ジ(2,4,6-トリメチルフェニル)フェノキシ)ネオフィリデンクロリド(ピリジン)(X837)0.183部を、ジクロロメタン5.48部に溶解し、触媒溶液を作製した。
得られた触媒溶液を、上記にて調製した基質混合液に添加し、25℃にて4日間撹拌した。次いで、プロピオンアルデヒドを、開環重合触媒に対して50モル当量の割合にて添加し、さらに1時間攪拌し、反応をクエンチして全ての揮発分を留去し、残渣を4部のトルエンに溶解することで、粘稠な溶液を得た。得られた溶液を20部のメタノールに一定速度で滴下し、共重合体を沈殿させ、次いで、上澄み液をデカンテーションし、沈殿物を真空乾燥させた。そして、得られた共重合体を6部のジクロロメタンに溶かし、20部のメタノールから再び沈殿させた後、溶媒相を除去し、共重合体を再び真空乾燥させることで、0.60部の含フッ素開環共重合体Bを得た。
得られた含フッ素開環共重合体BのMnは23,000、Mw/Mnは2.3であった。また、1H-NMRによりその組成を確認したところ、3,3,4,4-テトラフルオロシクロブテンとシクロペンテンが等モルにて交互共重合されたものであり、かつ、そのトランス/シス比が70/30とトランスリッチの交互共重合体であった。得られた含フッ素開環共重合体Bのフッ素の含有割合は39重量%であり、ガラス転移温度は-51℃であり、94℃にブロードな融点を有する結晶性エラストマーであった。
【0105】
〔実施例3〕
3,3,4,4-テトラフルオロシクロブテン2.73部、およびシクロペンテン0.491部をガラス製反応器の中で混合し、基質混合液とした。
これとは別に、別の反応器にて、開環重合触媒(アダマンチルイミドモリブデン(VI)(2,6-ジ(2,4,6-トリメチルフェニル)フェノキシ)ネオフィリデンクロリド(ピリジン)(X837)0.119部を、ジクロロメタン3.56部に溶解し、触媒溶液を作製した。
得られた触媒溶液を、上記にて調製した基質混合液に添加し、25℃にて48時間撹拌した。次いで、プロピオンアルデヒドを、開環重合触媒に対して50モル当量の割合にて添加し、さらに1時間攪拌し、反応をクエンチして全ての揮発分を留去し、残渣を4部のトルエンに溶解することで、粘稠な溶液を得た。得られた溶液を20部のメタノールに一定速度で滴下し、共重合体を沈殿させ、次いで、上澄み液をデカンテーションし、沈殿物を真空乾燥させた。そして、得られた共重合体を6部のジクロロメタンに溶かし、20部のメタノールから再び沈殿させた後、溶媒相を除去し、共重合体を再び真空乾燥させることで、0.37部の含フッ素開環共重合体Cを得た。
得られた含フッ素開環共重合体CのMnは19,500、Mw/Mnは2.0であった。また、1H-NMRによりその組成を確認したところ、3,3,4,4-テトラフルオロシクロブテンとシクロペンテンが37:63(モル比)にて共重合された共重合体であり、かつ、そのトランス/シス比が69/31とトランスリッチの共重合体であった。得られた含フッ素開環共重合体Cのフッ素の含有割合は31重量%であり、ガラス転移温度は-72℃のエラストマーであった(融点は確認されなかった)。
【0106】
〔実施例4〕
3,3,4,4,5,5-ヘキサフルオロシクロペンテン7.05部、およびシクロペンテン0.910部をガラス製反応器の中で混合し、基質混合液とした。
これとは別に、別の反応器にて、開環重合触媒(アダマンチルイミドモリブデン(VI)(2,6-ジ(2,4,6-トリメチルフェニル)フェノキシ)ネオフィリデンクロリド(ピリジン)(X837)0.220部を、ジクロロメタン6.69部に溶解し、触媒溶液を作製した。
得られた触媒溶液を、上記にて調製した基質混合液に添加し、25℃にて48時間撹拌した。次いで、プロピオンアルデヒドを、開環重合触媒に対して50モル当量の割合にて添加し、さらに1時間攪拌し、反応をクエンチして全ての揮発分を留去し、残渣を4部のトルエンに溶解することで、粘稠な溶液を得た。得られた溶液を20部のメタノールに一定速度で滴下し、共重合体を沈殿させ、次いで、上澄み液をデカンテーションし、沈殿物を真空乾燥させた。そして、得られた共重合体を6部のジクロロメタンに溶かし、20部のメタノールから再び沈殿させた後、溶媒相を除去し、共重合体を再び真空乾燥させることで、0.90部の含フッ素開環共重合体Dを得た。
得られた含フッ素開環共重合体DのMnは11,400、Mw/Mnは1.3であった。また、1H-NMRによりその組成を確認したところ、3,3,4,4,5,5-ヘキサフルオロシクロペンテンとシクロペンテンが35:65(モル比)にて共重合された共重合体であり、かつ、そのトランス/シス比が85/15とトランスリッチの共重合体であった。得られた含フッ素開環共重合体Dのフッ素の含有割合は36重量%であり、ガラス転移温度は-79℃のエラストマーであった(融点は確認されなかった)。
【0107】
【0108】
表1に示すように、一般式(1)で表される含フッ素脂環式単量体に由来の単位を、全繰り返し単位に対して1~50モル%の割合で含有する含フッ素開環重合体は、ガラス転移温度が-40℃以下であり、低温特性に優れるものであり、-40℃以下の低温条件においても、十分な機械的特性を発揮し得るものであるといえる(実施例1~4)。