(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132557
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】内視鏡
(51)【国際特許分類】
A61B 1/00 20060101AFI20240920BHJP
A61B 1/04 20060101ALI20240920BHJP
G02B 23/24 20060101ALI20240920BHJP
G02B 23/26 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
A61B1/00 715
A61B1/04 530
G02B23/24 A
G02B23/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043369
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳生 右京
(72)【発明者】
【氏名】赤羽 秀文
【テーマコード(参考)】
2H040
4C161
【Fターム(参考)】
2H040AA00
2H040BA00
2H040CA11
2H040CA22
2H040DA03
2H040DA12
2H040DA15
2H040DA18
2H040DA19
2H040DA21
2H040DA56
2H040DA57
2H040GA02
4C161FF32
4C161FF35
4C161PP07
(57)【要約】
【課題】被検者と使用者の双方の負担を軽減できる内視鏡を提供すること。
【解決手段】内視鏡1は、挿入部2を備え、挿入部2は、処置具管路260と、撮像部302および撮像部302と接続するケーブル301とを内蔵し、挿入部2の先端部7は、挿入部2の内蔵物を収容する筒状の第1部材71を有し、第1部材71の基端部710には、処置具管路260を収容する収容部711と、撮像部302を収容する収容部712とが、隣り合って設けられ、基端部710の外周面には、収容部712に通じる開口710aが形成されており、挿入部2の軸線方向に見た状態で、基端部710は膨出部710Bを含み、膨出部710Bの外周面と開口710aは、挿入部2の中心Pを挟んで反対側に配置されており、収容部711は、膨出部710Bの隣に配置されている、
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入部を備え、
前記挿入部は、処置具が挿通される処置具管路と、撮像部および前記撮像部に接続されるケーブルの一部とを内蔵し、
前記挿入部の先端部は、前記挿入部の内蔵物を収容する筒状の第1部材を有し、
前記第1部材の基端部には、前記処置具管路を収容する第1収容部と、前記撮像部を収容する第2収容部とが、隣り合って設けられ、
前記基端部の外周面には、前記第2収容部に通じる開口が形成されており、
前記挿入部の軸線方向に見た状態で、前記基端部の外周面は、前記挿入部の中心からの距離が第1距離となる第1領域と、前記距離が前記第1距離よりも大きい第2距離となる第2領域と、を含み、
前記軸線方向に見た状態で、前記第2領域と前記開口は、前記挿入部の中心を挟んで反対側に配置されており、
前記第1収容部は、前記第2領域の隣に配置されている、内視鏡。
【請求項2】
挿入部を備え、
前記挿入部は、処置具が挿通される処置具管路を内蔵し、
前記挿入部の先端部の外径に対する前記処置具管路の内径の比率が35%以上であり、前記内径が3mm以上である、内視鏡。
【請求項3】
請求項1に記載の内視鏡であって、
前記第1収容部と前記第2収容部は連通している、内視鏡。
【請求項4】
請求項3に記載の内視鏡であって、
前記基端部には、前記内蔵物を収容する第3収容部が設けられ、
前記第2収容部と前記第3収容部が連通している、内視鏡。
【請求項5】
請求項4に記載の内視鏡であって、
前記第3収容部に収容される内蔵物はライトガイドである、内視鏡。
【請求項6】
請求項1、3から5のいずれか1項に記載の内視鏡であって、
前記基端部には、前記内蔵物を収容する第4収容部が設けられ、
前記第4収容部の基端側は、前記軸線方向に垂直な断面が長円となっている、内視鏡。
【請求項7】
請求項6に記載の内視鏡であって、
前記第4収容部に収容される内蔵物は流体管路である、内視鏡。
【請求項8】
請求項1、3から5のいずれか1項に記載の内視鏡であって、
前記基端部には、先端にノズルが固定される流体管路を前記内蔵物として収容する第4収容部が設けられ、
前記挿入部の先端部は、前記第1部材の先端側の外周面に固着された第2部材を有し、
前記軸線方向に見た状態で、前記第1部材の前記第2部材と固着される外周面は、前記挿入部の中心からの距離が第3距離となる第3領域と、前記距離が前記第3距離よりも大きい第4距離となる第4領域と、を含み、
前記第4領域は、前記第4収容部の外周縁に沿って設けられている、内視鏡。
【請求項9】
請求項1、3から5のいずれか1項に記載の内視鏡であって、
前記挿入部は、前記基端部の外周面と固着される固着部材を先端に有した湾曲部を備え、
前記固着部材は、前記開口を覆っており、且つ、前記第2領域を露出させる開口部を有する、内視鏡。
【請求項10】
請求項1、3から5のいずれか1項に記載の内視鏡であって、
前記第1部材は、先端と基端の間の外周面に周方向に沿って延びる凸部を有し、
前記第2領域は、前記凸部基端側から前記第1部材の基端面まで設けられる、内視鏡。
【請求項11】
請求項10に記載の内視鏡であって、
前記挿入部は、前記基端部の外周面と固着される固着部材を先端に有した湾曲部を備え、
前記固着部材の先端が、前記凸部に当接する、内視鏡。
【請求項12】
請求項1、3から5のいずれか1項に記載の内視鏡であって、
前記基端部は、第1ライトガイドが収容される収容部と、第2ライトガイドが収容される収容部と、第1流体管路が収容される収容部と、第2流体管路が収容される収容部と、を含み、
前記軸線方向に見た状態で、前記開口と前記挿入部の中心と前記第2領域とを結ぶ直線によって分割される前記基端部の2つの領域の一方に前記第1ライトガイドが収容される前記収容部が設けられ、前記2つの領域の他方に前記第2ライトガイドが収容される前記収容部が設けられ、
前記軸線方向に見た状態で、前記第1ライトガイドが収容される前記収容部の中心と前記第2ライトガイドが収容される前記収容部の中心を通る直線によって分割される前記基端部の2つの領域の一方に前記第1流体管路が収容される前記収容部が設けられ、当該2つの領域の他方に前記第2流体管路が収容される前記収容部が設けられる、内視鏡。
【請求項13】
請求項1、3から5のいずれか1項に記載の内視鏡であって、
前記第2収容部は、前記撮像部を収容し、
前記撮像部に含まれる撮像素子の背面が、前記先端部の径方向外側に向いて配置される、内視鏡。
【請求項14】
請求項2に記載の内視鏡であって、
前記先端部の外径は、7.6mm以上8.5mm以下である、内視鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、体腔内に挿入される丸管状の挿入部を備える内視鏡において、上記挿入部の先端面に一端が開口し、上記挿入部を軸長方向に貫き、処置具が通る処置具路と、上記挿入部の先端面に一端が開口し、上記挿入部を軸長方向に貫き、上記一端から流入された流体が流れる流体路とを備え、上記処置具路及び上記流体路は断面視で一部が連続している内視鏡が記載されている。
【0003】
特許文献2には、略円柱形状をした内視鏡の先端部に、観察用レンズと、この観察用レンズの先端面を洗浄する洗浄用ノズルを有する内視鏡において、内視鏡先端部の外周部分に、観察用レンズと洗浄用ノズルを結ぶ線上付近に位置し、他の外周部分の円の径より外側へ突き出す異形部を設けた内視鏡が記載されている。
【0004】
特許文献3には、内視鏡の先端部に内蔵された撮像ユニットと、この撮像ユニットの周囲に複数に分岐され、照明光を伝送するライトガイドバンドルと、を備えて、上記先端部内に処置具チャンネル、送気送水チャンネルおよび前方送水チャンネルが配設される内視鏡挿入部の先端部構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-55802号公報
【特許文献2】特開2001-78953号公報
【特許文献3】特開2012-110526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の技術は、被検者と使用者の双方の負担を軽減できる内視鏡を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様の内視鏡は、挿入部を備え、上記挿入部は、処置具が挿通される処置具管路と、撮像部および上記撮像部に接続されるケーブルの一部とを内蔵し、上記挿入部の先端部は、上記挿入部の内蔵物を収容する筒状の第1部材を有し、上記第1部材の基端部には、上記処置具管路を収容する第1収容部と、上記撮像部を収容する第2収容部とが、隣り合って設けられ、上記基端部の外周面には、上記第2収容部に通じる開口が形成されており、上記挿入部の軸線方向に見た状態で、上記基端部の外周面は、上記挿入部の中心からの距離が第1距離となる第1領域と、上記距離が上記第1距離よりも大きい第2距離となる第2領域と、を含み、上記軸線方向に見た状態で、上記第2領域と上記開口は、上記挿入部の中心を挟んで反対側に配置されており、上記第1収容部は、上記第2領域の隣に配置されている、ものである。
【0008】
本開示の一態様の内視鏡は、挿入部を備え、上記挿入部は、処置具が挿通される処置具管路を内蔵し、上記挿入部の先端部の外径に対する上記処置具管路の内径の比率が35%以上であり、上記内径が3mm以上である、ものである。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、被検者と使用者の双方の負担を軽減できる内視鏡を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本開示の技術の一実施形態である内視鏡1を示す模式図である。
【
図2】
図2は、挿入部2を軸線方向に先端側から見た図である。
【
図3】
図3は、内視鏡1における先端部7及び湾曲部6の拡大斜視図である。
【
図4】
図4は、
図3に示す湾曲部6の内部構造を示す図である。
【
図5】
図5は、
図3において湾曲部6を省略して示す部分拡大図である。
【
図6】
図6は、
図3において湾曲部6を省略して示す、
図5とは異なる方向から見た部分拡大図である。
【
図7】
図7は、
図3において湾曲部6を省略して部分的に拡大して示す先端側から見た分解斜視図である。
【
図8】
図8は、
図2に示すA-A線の断面を部分的に示す模式図である。
【
図9】
図9は、先端部7を構成する第1部材71を基端側から見た斜視図である。
【
図10】
図10は、先端部7を構成する第1部材71を先端側から見た斜視図である。
【
図11】
図11は、先端部7を構成する第1部材71を基端側から軸線方向に見た図である。
【
図12】
図12は、先端部7を構成する第1部材71を先端側から軸線方向に見た図である。
【
図13】
図13は、湾曲駒部60を右方向に見た側面図である。
【
図14】
図14は、湾曲駒部60において隣り合う2つの環状部材64の分解斜視図である。
【
図15】
図15は、
図14に示す2つの環状部材64の連結状態を基端側から軸線方向に見た図である。
【
図16】
図16は、湾曲駒部60に内蔵される内蔵物の配置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本開示の技術の一実施形態である内視鏡1を示す模式図である。同図における内視鏡1は、被検体内に挿入される長尺状の挿入部2と、挿入部2の基端に連設され、内視鏡1の把持及び操作等に用いられる操作部3と、内視鏡1を不図示の光源装置及びプロセッサ装置等のシステム構成機器に接続するユニバーサルコード4と、を備える。本実施形態の内視鏡1は、胃又は十二指腸等を観察する上部内視鏡、或いは、大腸等を観察する下部内視鏡(大腸内視鏡)等である。
【0012】
挿入部2は、基端から先端に向かって順に連設される軟性部5、湾曲部6、及び先端部7から構成される。軟性部5は、可撓性を有し、挿入部2の挿入経路に沿って任意の方向に湾曲する。操作部3には、アングルノブ8、9と、処置具導入口12と、送気送水ボタン10と、吸引ボタン11等が設けられる。
【0013】
湾曲部6は、アングルノブ8、9の各々の操作により上下と左右の各々の方向に湾曲する。鉗子等の処置具は処置具導入口12から挿入され、先端部7に設けられた鉗子口26(
図2参照)から導出される。また、先端部7には、体内の被観察部位を撮影する観察窓30(
図2参照)と、被観察部位に照明光を照射する第1照明窓32及び第2照明窓34(
図2参照)とが設けられている。
【0014】
挿入部2は、その軸線方向に沿って移動して被検体内に挿入され、操作部3のアングルノブ8、9を回転操作することで、挿入部2の湾曲部6が上下左右方向に湾曲する。これにより、挿入部2の先端部7を体内の所望の方向に向けることができ、先端部7に設けられた観察窓30により観察画像を取得できる。
【0015】
図2は、挿入部2を軸線方向に先端側から見た図である。
図2には、湾曲部6を湾曲させることのできる方向として、上方向Uと、その反対の下方向Dと、上方向U及び下方向Dに直交する方向の一方の方向である右方向Rと、右方向Rの反対の左方向Lと、が示されている。
【0016】
図2に示すように先端部7は、最も先端側に配置された先端面14を有している。先端面14は、軸線方向にみて円状に構成される。
図2には、仮想円V1が示されている。仮想円V1は、軸線方向にみたときの挿入部2の中心を中心とする真円である。先端面14の外周縁は、全体としては、仮想円V1の外周に沿う形状となっている。先端面14の外周縁は、その半分を超える部分(仮想円V1の円周上の位置を時計の時刻で示す場合に、時計回りで、図の例では約3時から約11時までの範囲)が、仮想円V1の外周縁と重なる形状となっており、その部分を除く部分(時計回りで、約11時から約3時までの範囲)は、仮想円V1よりも外側に膨らむ形状となっている。このように、内視鏡1では、先端面14の外周縁の半分を超える部分が真円(仮想円V1)の円弧となっている。仮想円V1の直径のことを、先端部7の外径φ1と定義する。
【0017】
先端面14は、その外周縁よりも先端側に位置し、且つ、その外周縁の内側に形成された軸線方向に垂直な第1面20と、第1面20から先端側に突出した第2面21と、第1面20から先端側に突出した第3面22と、を備えている。第1面20の外周縁と先端面14の外周縁とは傾斜面によって接続されている。
【0018】
第2面21は、軸線方向に垂直な平坦面21Aと、平坦面21Aと第1面20との間をつなぐ部分である段差部21Bと、を含む。段差部21Bは、第1面20から平坦面21Aに向かって高くなる傾斜面で構成される。平坦面21Aと先端面14の外周縁とは傾斜面14Aによって接続されている。
【0019】
第3面22は、軸線方向に垂直な平坦面22Aと、平坦面22Aと第1面20との間をつなぐ部分である段差部22Bと、を含む。段差部22Bは、第1面20から平坦面22Aに向かって高くなる傾斜面で構成される。平坦面22Aと先端面14の外周縁とは傾斜面14Bによって接続されている。
【0020】
第1面20には、鉗子口26と、流体噴射用のノズル27と、WJ(ウォータージェット:前方送水)噴出口28とが設けられている。
【0021】
第2面21は、軸線方向に見て、先端面14の外周縁からノズル27に向かって延び、略三角形の形状を有している。第2面21は鉗子口26及びノズル27と離間している。第2面21の平坦面21Aには、観察窓30と第2照明窓34が配置されている。平坦面21Aにおいて、観察窓30がノズル27の側に配置され、第2照明窓34が観察窓30を挟んでノズル27と反対側に配置される。
【0022】
第3面22は、軸線方向に見て、先端面14の外周縁から第2面21に向かって延び、鉗子口26及びノズル27の間に位置している。第3面22の平坦面22Aには、第1照明窓32が配置されている。
【0023】
鉗子口26は処置具管路(後述の処置具管路260)を介して処置具導入口12に連通し、処置具導入口12から挿入された処置具は鉗子口26から導出される。また、鉗子口26は処置具管路を介して吸引ポンプ(負圧源)と接続される。吸引ボタン11を操作することにより、洗浄水及び付着物(被検体内の血液等)が鉗子口26から吸引される。
【0024】
ノズル27は、流体(液体又は気体)を噴射するための噴射口27Aを備え、噴射口27Aは観察窓30の側に向けられている。ノズル27の噴射口27Aは、観察窓30の表面及びその周辺部に、液体又は気体等の流体を矢印で示す噴射方向EDに噴射し、噴射方向EDの側に位置する観察窓30に付着した付着物または洗浄水等を吹き飛ばして除去する。ノズル27は、挿入部2、操作部3、及びユニバーサルコード4内に配設された流体管路(後述の流体管路270)に連通し、図示省略の送気送水装置から送り込まれた流体を観察窓30へ噴射する。
【0025】
WJ噴出口28は、洗浄水又は薬液等の液体を被観察部位に向けて噴射する。WJ噴出口28は、挿入部2、操作部3、及びユニバーサルコード4内に配設された流体管路(後述の液体管路280)に連通し、図示省略の送液装置から送り込まれた液体を被観察部位へ直接吹き付ける。WJ噴出口28は、第1面20において鉗子口26に隣接した位置に配置される。
【0026】
観察窓30は、被検体内を観察するために、被観察部位の画像を取得する観察部の構成要素であり、被観察部位からの被写体光を観察部の他の構成要素である光学系(レンズ群等)及び撮像素子に取り込む。この観察部により撮影された画像は観察画像としてユニバーサルコード4により接続されたプロセッサ装置に送られる。
【0027】
第1照明窓32及び第2照明窓34は、先端部7に搭載される照明部の構成要素であり、照明部の他の構成要素である光出射部から出射された照明光を被観察部位に照射する。この光出射部から出射される照明光は、ユニバーサルコード4により接続された光源装置から内視鏡1の内部を挿通するライトガイドを通じて伝搬される。
【0028】
以下、挿入部2の内部構造の一例について詳細に説明する。
【0029】
図3は、内視鏡1における先端部7及び湾曲部6の拡大斜視図である。
図4は、
図3に示す湾曲部6の内部構造を示す図である。
図5は、
図3において湾曲部6を省略して示す部分拡大図である。
図6は、
図3において湾曲部6を省略して示す、
図5とは異なる方向から見た部分拡大図である。
図7は、
図3において湾曲部6を省略して部分的に拡大して示す先端側から見た分解斜視図である。
【0030】
図5及び
図6に示すように、先端部7は、外周面の基端側に開口710aが形成された筒状である先端部本体の第1部材71と、第1部材71の先端側の外周面に固着された筒状である先端キャップの第2部材72と、を備える。第1部材71及び第2部材72の軸方向は挿入部2の軸線方向と一致する。第2部材72の先端が前述した先端面14を構成する。第1部材71は例えば金属等で構成される。第2部材72は例えば樹脂等で構成される。本明細書において筒状の部材とは、その部材の軸方向の一端面から他端面まで繋がる空間が内部に1つ以上含まれる部材のことを言う。
【0031】
図5に示すように、第1部材71は、基端と先端の間の略中央部に設けられ、第1部材71の中で外径が最大となる円環状の大径部730と、大径部730の基端側端面から基端側に延びる基端部710と、大径部730の先端側端面から先端側に延びる部材先端部720と、を備える。部材先端部720の外周面の先端側に、第2部材72が固着されている。大径部730は、軸線方向に見た状態で、基端部710及び部材先端部720の外周面から突出する凸部を構成しており、第1部材71の周方向に沿って設けられている。
【0032】
図3に示すように、湾曲部6は、可撓性を持つ被覆部材(ネット)61の内部に設けられた湾曲駒部60を備える。
図4に示すように、湾曲駒部60は、複数の環状部材64を互いに回動可能に連結して構成されている。隣り合う環状部材64同士は、カシメピン66によって回動可能に連結されている。湾曲駒部60には、最も先端側に、第1部材71と湾曲部6とを連結するための筒状の固着部材62が設けられる。固着部材62が第1部材71にネジ止め等によって固着されることで、先端部7と湾曲部6とが連結されている。固着部材62と複数の環状部材64のうちの最も先端側に位置する環状部材64とは、カシメピン66によって回動可能に連結されている。湾曲駒部60には、最も基端側に、軟性部5と湾曲部6とを連結する筒状の連結部材63が設けられる。連結部材63と複数の環状部材64のうちの最も基端側に位置する環状部材64とは、カシメピン66によって回動可能に連結されている。
【0033】
固着部材62、複数の環状部材64、及び連結部材63の内部には、4本のワイヤWが挿通されている。各ワイヤWは、その一端側が固着部材62に固定され、その他端側がアングルノブ8、9によって回動操作されるスプロケット(図示は省略)に巻回されたチェーンの端部に固定される。これにより、湾曲部6は、操作部3に設けられたアングルノブ8、9を回動することによって遠隔的に湾曲操作(アングル操作)される。
【0034】
図3に示すように、挿入部2には、基端から先端まで、長尺状の内蔵物を複数含む内蔵物群OBが内蔵されている。内蔵物群OBには、4本のワイヤW(
図4参照)と、撮像部302及び撮像部302に接続されるケーブル301(
図5参照)の一部と、それぞれが複数本の光ファイバを束ねて構成された左ライトガイド320及び右ライトガイド340(
図5参照)と、鉗子又は穿刺針等の処置具が挿通される処置具管路260(
図5参照)と、液体又は気体を流すための流体管路270(
図5参照)と、液体を流すための液体管路280(
図6参照)と、が含まれる。
【0035】
ケーブル301、左ライトガイド320、及び右ライトガイド340は、先端部7からユニバーサルコード4の基端まで延びて設けられる。処置具管路260、流体管路270、及び液体管路280は、先端部7から操作部3まで延びて設けられる。
【0036】
図7に示すように、撮像部302の先端面302Aは、第2部材72に軸線方向に貫通して設けられた貫通孔300kに挿通されて、観察窓30を構成する。左ライトガイド320の先端面320Aは、第2部材72に軸線方向に貫通して設けられた貫通孔320kに挿通されて、第1照明窓32を構成する。右ライトガイド340の先端面340Aは、第2部材72に軸線方向に貫通して設けられた貫通孔340kに挿通されて、第2照明窓34を構成する。処置具管路260は、第2部材72に軸線方向に貫通して設けられた鉗子口26に連通している。流体管路270は、第2部材72に軸線方向に貫通して設けられた貫通孔27kに連通している。貫通孔27kにはノズル27が挿通されて固定される。液体管路280は、第2部材72に軸線方向に貫通して設けられたWJ噴出口28に連通している。
【0037】
図8は、
図2に示すA-A線の断面を部分的に示す模式図である。
図8に示すように、撮像部302には、対物レンズとしての観察窓30に接続するレンズ群303を収容した鏡胴と、鏡胴の基端側に配置されたプリズム304と、プリズム304の光射出面に固着された撮像素子305と、撮像素子305が取付けられたメイン基板306と、メイン基板306に取り付けることができなかった部品等が取り付けられたサブ基板307と、が含まれる。ケーブル301としては多芯ケーブルが用いられる。ケーブル301は、複数の素線308を含み、複数の素線308は撮像部302に電気的に接続されている。撮像素子305は、その背面(プリズム304と固着される面と反対面)が第1部材71の開口710aに向いて配置されている。換言すると、撮像素子305は、その背面が先端部7の径方向外側に向く状態で配置されている。
【0038】
図9は、先端部7を構成する第1部材71を基端側から見た斜視図である。
図10は、先端部7を構成する第1部材71を先端側から見た斜視図である。
図11は、先端部7を構成する第1部材71を基端側から軸線方向に見た図である。
図12は、先端部7を構成する第1部材71を先端側から軸線方向に見た図である。
【0039】
図9及び
図11に示すように、基端部710は、外周面に開口710aが形成されており、軸線方向に見た状態で、略C字状を成している。
図11には、大径部730の外周縁で構成される円と同心円で且つその円よりも直径の小さい仮想円V2が示されている。
【0040】
仮想円V2は、軸線方向にみたときの挿入部2の中心Pを中心とする真円である。基端部710は、仮想円V2よりも内側の本体部710Aと、本体部710Aから仮想円V2の外側に膨出する膨出部710Bと、を備える構成となっている。本体部710Aの外周縁は、仮想円V2の外周縁と重なる形状となっており、膨出部710Bの外周縁は、仮想円V2よりも外側に膨らむ形状となっている。
図5に示すように、膨出部710Bは、大径部730から基端部710の基端面まで延びて設けられている。
図11に示すように、本体部710Aの外周面は、中心Pからの距離が仮想円V2の半径と同じ距離L1となり、膨出部710Bの外周面は、中心Pからの距離が距離L1よりも大きい距離L2となっている。
【0041】
第1部材71には、処置具管路260を収容する収容部711と、撮像部302を収容する収容部712と、右ライトガイド340を収容する収容部713と、液体管路280を収容する収容部714と、流体管路270を収容する収容部715と、左ライトガイド320を収容する収容部716と、が設けられている。なお、収容部712に撮像部302とケーブル301との接続部が含まれていても良い。これら収容部は、いずれも、第1部材71の基端側端面から先端側端面まで通じる孔部により構成されている。
図7に示すように、処置具管路260、流体管路270、撮像部302、左ライトガイド320、及び右ライトガイド340は、それぞれ、その先端が部材先端部720の先端面と同じ位置かそれよりも先端側までくる状態で、基端部710、大径部730、及び部材先端部720の内部に収容されている。液体管路280は、その先端が大径部730の先端縁まで達した状態で、基端部710及び大径部730の内部に収容されている。
【0042】
収容部714と収容部715は、それぞれ、基端部710の基端面から基端部710の軸線方向の略中央までの間の部分714b、715bにおいては、軸線方向に垂直な断面形状が長円状となっており、基端部710の略中央から部材先端部720の先端面までの間の部分714a、715aにおいては、軸線方向に垂直な断面形状が真円状となっている。このような構成により、先端部7よりも基端側においては、軸線方向に見た状態で流体管路270と貫通孔27kとの位置がずれていても、収容部715において流体管路270を曲げることで、その位置のずれをなくすことができ、挿入部2内の設計を容易とすることができる。同様に、先端部7よりも基端側においては、軸線方向に見た状態で液体管路280とWJ噴出口28との位置がずれていても、収容部714において液体管路280を曲げることで、その位置のずれをなくすことができ、挿入部2内の設計を容易とすることができる。
【0043】
図11に示すように、基端部710において、開口710aと膨出部710Bの外周面は、中心Pを挟んで反対側に配置されている。そして、収容部711と収容部712は、開口710aと膨出部710Bとを結ぶ直線(中心Pを通り且つ開口710a及び膨出部710Bと交差する直線LA)上に並んで配置されている。
【0044】
収容部712は、開口710aの隣に配置されており、開口710aによって基端部710の外側に開放されている。なお、撮像部302は、仮想円V2の外に出ないように、収容部712に収容される。
【0045】
収容部711は、膨出部710Bの隣に配置されており、収容部712と膨出部710Bの間に配置されている。また、収容部711は、収容部712と連通している。
【0046】
収容部713は、収容部712の隣に設けられ、収容部712と連通している。
【0047】
基端部710には、直線LAによって分割される2つの領域の一方に収容部716が設けられ、この2つの領域の他方に収容部713が設けられている。また、基端部710には、収容部713の中心と収容部716の中心を通る直線LBによって分割される2つの領域の一方に収容部715が設けられ、この2つの領域の他方に収容部714が設けられている。
【0048】
図11において、各収容部の配置は変えずに、開口710aを閉じた第1参考構成を想定する。この第1参考構成では、収容部712を閉じる基端部710の外周部分の厚みを確保する必要がある。このため、ある程度の大きいサイズである撮像部302を収容するためには、収容部712をより中心P側に移動させる必要がある。この移動のためには、収容部711の容積を小さくする、すなわち、処置具管路260の外径を小さくする必要がある。また、
図11において、各収容部の配置は変えずに、膨出部710Bを設けない第2参考構成を想定する。この第2参考構成では、収容部711の内壁をより内側に形成する必要があるため、収容部711の大きさを小さくする必要がある。
【0049】
これらの参考構成に対して、
図11に示す構成によれば、収容部712を外側に移動できるため、収容部711の容積を拡大できる。また、膨出部710Bがあるため、収容部711の容積を拡大できる。この結果、先端部7の外径を変えることなく、処置具管路260の外径を大きくすることができる。また、
図11に示す構成では、収容部711と収容部712が連通しているため、収容部711と収容部712の境界に壁を形成する場合と比べると、収容部711の容積を大きくできる。このことからも、処置具管路260の外径を大きくすることができる。また、
図11に示す構成では、収容部712と収容部713が連通しているため、収容部712と収容部713の境界に壁を形成する場合と比べると、収容部712をより外側に移動できる。このことからも、処置具管路260の外径を大きくすることができる。また、本形態の内視鏡1では、収容部712において先端部7の径方向外側に撮像素子305が配置される。このため、観察窓30と鉗子口26を近づけることができ、処置具を用いた処理を高精度且つ効率よく行うことができる。
【0050】
このように、本形態の内視鏡1の先端部7の構成によれば、処置具管路260の内径φ2(
図7参照)を3mm(ミリメートル)以上とし、且つ、先端部7の外径φ1(
図2参照)に対する内径φ2の比率を35%以上とした内視鏡を実現することができる。例えば、外径φ1の範囲を7.6mm以上8.5mm以下とし、内径φ2の範囲を3mm以上3.4mm以下とした内視鏡1を作成可能となる。このように、挿入部2が細く且つ処置具管路260の内径が大きい内視鏡1を実現できる。内視鏡1の使用者にとっては、被検体に対する挿入のしやすさの点で利点があり、処置具管路260の内径が大きいことで様々な処置具を使える点で利点がある。被検者にとっては、細い挿入部2のために負担が少なく、また、様々な手術や検査が一度の内視鏡1の挿入で可能となり負担が軽減される。
【0051】
図3及び
図8に示すように、湾曲部6の固着部材62は、基端部710の開口710aを覆う状態で、基端部710の外周面に固着されている。このように、開口710aが固着部材62によって覆われることで、撮像部302を保護できる。また、
図3に示すように、固着部材62には、膨出部710Bと対応する位置に、切欠き状の開口部62Aが設けられている。この開口部62Aから膨出部710Bを露出させることで、先端部7が太くなるのを防ぐことができる。
図3及び
図8に示すように、固着部材62の先端は、大径部730の基端面(
図11における仮想円V2と大径部730の外周縁との間の領域)に当接しており、これにより、湾曲部6と先端部7の軸線方向の位置決めがなされている。
【0052】
図12には、
図11で説明したのと同様の仮想円V3が示されている。仮想円V3は、仮想円V2と同心円であるが、直径が異なっている。部材先端部720は、仮想円V3よりも内側の本体部720Aと、本体部720Aから仮想円V3の外側に膨出する膨出部720Bと、を備える構成となっている。本体部720Aの外周縁は、仮想円V3の外周縁と重なる形状となっており、膨出部720Bの外周縁は、仮想円V3よりも外側に膨らむ形状となっている。本体部720Aの外周面は、中心Pからの距離が仮想円V3の半径と同じ距離L3となり、膨出部720Bの外周面は、中心Pからの距離が距離L3よりも大きい距離L4となっている。膨出部720Bは、収容部715に隣接しており、膨出部720Bは収容部715の外周縁に沿って設けられている。膨出部720Bを設けることにより、先端部7の径を太くすることなく、収容部712からより離れた位置に収容部715を配置できる。このため、収容部715に装着されるノズル27の設置スペースを十分に確保可能となる。
【0053】
また、
図10及び
図12に示すように、本体部720Aの先端側の外周面には、収容部716に対応する位置に切り欠き716Aが形成され、収容部713に対応する位置に切り欠き713Aが形成されている。切り欠き713Aと切り欠き716Aを設けることで、収容部713と収容部716をより外側に配置できるため、収容部711のサイズを十分に確保可能となる。
【0054】
図13は、湾曲駒部60を右方向に見た側面図である。
図13には、挿入部2の基端から先端に向かう方向である先端方向Fと、先端方向Fの反対である基端方向Bと、が示されている。
【0055】
湾曲駒部60に含まれる複数の環状部材64は、軸線方向の先端側にある先端グループGR1と、軸線方向の基端側にある基端グループGR2と、先端グループGR1と基端グループGR2の間にある中間グループGR3とにグループ分けされる。
図13の例では、先端側から数えて3つ目までの環状部材64が先端グループGR1を構成している。また、基端側から数えて5つ目までの環状部材64が基端グループGR2を構成している。また、先端側から数えて4つ目の環状部材64から、基端側から数えて6つ目の環状部材64までの環状部材64が中間グループGR3を構成している。
【0056】
これらグループに属する各環状部材64は、左右方向に延びる軸回りに回動可能となっている。環状部材64のうち、全てのカシメピン66を結ぶ直線を境にして下側の部分が回動可能な最大回動角度θdは、中間グループGR3が最も大きく、先端グループGR1が最も小さく、基端グループGR2が先端グループGR1より大きく且つ中間グループGR3より小さくなっている。この最大回動角度θdの平均値を18°以上とする構成により、下方向への湾曲角度を大きくすることができる。環状部材64のうち、全てのカシメピン66を結ぶ直線を境にして上側の部分が回動可能な最大回動角度θuについても、同様に、中間グループGR3が最も大きく、先端グループGR1が最も小さく、基端グループGR2が先端グループGR1より大きく且つ中間グループGR3より小さくなっている。最大回動角度θuにおいても、その平均値を22°以上とすることで上方向への湾曲角度を大きくすることができる。例えば、湾曲部6の上方向への湾曲角度が210°であり、湾曲部6の下方向への湾曲角度が160°となる挿入部2を実現できる。また、この構成によれば、先端グループGR1が大きく曲がらないため、先端部7と内蔵物群OBとの固定状態を安定して維持できる。また、中間グループGR3が最も大きく曲がるため、湾曲角度の向上に寄与できる。また、基端グループGR2が中間グループGR3よりも曲がりにくくなるため、湾曲部6を曲げる際に応力が局所的に集中せずに曲げることが可能となる。
【0057】
湾曲駒部60には、全部で16個の環状部材64が含まれるが、これらすべてが同一の形状である必要は無い。例えば、16個の環状部材64として、基端側端面や先端側端面の上下方向に対する傾斜角が異なる複数種類を用いることが好ましい。湾曲駒部60は、8種類以上の環状部材64を用いて構成することが好ましく、その総数は16個とすることが好ましい。このようにすることで、湾曲部6の上方向への湾曲角度が210°であり、湾曲部6の下方向への湾曲角度が160°となる挿入部2を実現できる。
【0058】
図14は、湾曲駒部60において隣り合う2つの環状部材64の分解斜視図である。一方の環状部材64には、ワイヤWが挿通される挿通孔641aを含む一対の挿通部材641が、左右方向に対向して設けられている。他方の環状部材64には、ワイヤWが挿通される挿通孔641aを含む一対の挿通部材641が、上下方向に対向して設けられている。挿通部材641は、軸線方向に見た状態で、環状部材64の内周面640から突出して設けられている。挿通部材641は、ワイヤWのガイド部材として機能する。
【0059】
図15は、
図14に示す2つの環状部材64の連結状態を基端側から軸線方向に見た図である。
図15に示すように、軸線方向に見た状態では、湾曲駒部60の内部には、4つの挿通部材641が、環状部材64の周方向の異なる位置に配置されている。
【0060】
軸線方向に見た状態での湾曲駒部60の内部空間は、空間SP1と、空間SP2と、空間SP3と、空間SP4と、空間SP5と、に分けられる。空間SP1は第1空間を構成し、空間SP2から空間SP5は第2空間を構成する。
【0061】
空間SP1は、4つの挿通部材641に内接する内接円V4で区画される空間である。
図15には、周方向で隣り合う挿通部材641の頂点同士を結んで形成される四角形V5が示されている。内接円V4は、この四角形V5の外接円とも言うことができる。内接円V4は真円である場合もあるし楕円となる場合もある。
【0062】
空間SP2は、
図15中の右側の挿通部材641、
図15中の上側の挿通部材641、空間SP1、及び内周面640で区画される空間である。
【0063】
空間SP3は、
図15中の左側の挿通部材641、
図15中の上側の挿通部材641、空間SP1、及び内周面640で区画される空間である。
【0064】
空間SP4は、
図15中の右側の挿通部材641、
図15中の下側の挿通部材641、空間SP1、及び内周面640で区画される空間である。
【0065】
空間SP5は、
図15中の左側の挿通部材641、
図15中の下側の挿通部材641、空間SP1、及び内周面640で区画される空間である。
【0066】
なお、軸線方向に見た正射影(
図15に示す状態)での4つの挿通部材641のうちの環状部材64の周方向で隣り合う2つの挿通部材641の周方向の距離は、内接円V4におけるその2つの挿通部材641の頂点間の距離の1.3倍となっていることが好ましい。
【0067】
図16は、湾曲駒部60に内蔵される内蔵物の配置を示す模式図である。
図16に示すように、湾曲駒部60の内部空間には、前述してきた内蔵物群OB(処置具管路260、流体管路270、液体管路280、ケーブル301、左ライトガイド320、及び右ライトガイド340)が収容されている。
図16では、内蔵物群OBに含まれる各内蔵物について、軸線方向に垂直な断面で示している。また、
図16では、内蔵物群OBに含まれるワイヤWについては図示を省略している。処置具管路260、流体管路270、液体管路280、ケーブル301、左ライトガイド320、及び右ライトガイド340は、それぞれ、湾曲部6内においては、軸線方向に垂直な断面の外形が円形となっている。
【0068】
図16に示すように、処置具管路260、流体管路270、及び液体管路280は、それぞれ、少なくとも湾曲部6内においては、中空の筒状の内蔵物である。中空の内蔵物とは、軸線方向に垂直な断面において、外周円の面積に対する空間の割合が20%以上となっているものを言う。ケーブル301は、多数の信号線が内部に存在しているため、非中空の内蔵物ということができる。左ライトガイド320及び右ライトガイド340は、それぞれ、多数の光ファイバが内部に存在しているため、非中空の内蔵物ということができる。
【0069】
図16に示すように、空間SP1には、中空の内蔵物である処置具管路260が配置されている。処置具管路260は、内蔵物群OBの中で、外径が最大となっている。処置具管路260は、空間SP1のほぼ全体を埋める大きさとなっている。つまり、対向する2つの挿通部材641の間の距離L4、L5と、処置具管路260の外径φ3との差は、十分に小さくなっており、例えば、湾曲部6に含まれる最も小さい外径を持つ内蔵物であるワイヤWの外径の半分以下となっている。また、軸線方向に見た状態で、環状部材64の中心と処置具管路260の中心との距離は、十分に小さくなっており、例えば、ワイヤWの外径の半分以下となっている。
【0070】
空間SP2には、非中空の内蔵物であるケーブル301と、非中空の内蔵物である右ライトガイド340とが配置されている。ケーブル301は、右ライトガイド340よりも剛性が高くなっている。ケーブル301は、右ライトガイド340よりも上側に配置されている。ケーブル301は上側の挿通部材641と右ライトガイド340と内周面640に接した状態が維持される。右ライトガイド340は、右側の挿通部材641とケーブル301と内周面640に接した状態が維持される。
【0071】
ケーブル301の外径φ4と右ライトガイド340の外径φ5の差は十分に小さくなっており、例えば、ワイヤWの外径の半分以下となっている。この構成により、ケーブル301と右ライトガイド340の少なくとも一方が空間SP1にはみ出す量を最小限としつつ、空間SP2における空スペースをできるだけなくすことができる。このため、湾曲部6の湾曲時等において、空間SP1に配置された処置具管路260が空間SP2に入り込むのを防ぐことができる。また、処置具管路260の外径の最大化を図ることができる。また、ケーブル301と右ライトガイド340は、共に剛性は高い。この剛性の高さによっても、空間SP1に配置された処置具管路260が空間SP2に入り込むのを防ぐことができる。
【0072】
空間SP3には、中空の内蔵物である流体管路270と、非中空の内蔵物である左ライトガイド320とが配置されている。流体管路270は、左ライトガイド320よりもケーブル301の近くに配置されている。これにより、先端面14において、ノズル27と観察窓30とを近づけることが容易となる。
【0073】
左ライトガイド320は、右ライトガイド340よりも剛性が低くなっている。この剛性の差は、被覆部材の種類、層数、層厚などの差によって得られている。つまり、左ライトガイド320の外径φ7は、右ライトガイド340の外径φ5よりも小さい。例えば、右ライトガイド340と左ライトガイド320とでは、外表面を被覆する被覆部材の数が異なっている。具体的には、左ライトガイド320の外周に更に被覆部材を設けたものが、右ライトガイド340とされている。
【0074】
流体管路270の外径φ6と左ライトガイド320の外径φ7の差は十分に小さくなっており、例えば、ワイヤWの外径の半分以下となっている。
【0075】
この構成により、空間SP2と空間SP3を比較すると、空間SP3の方が、空きスペースが大きくなっている。つまり、流体管路270の外径φ6と左ライトガイド320の外径φ7の和は、ケーブル301の外径φ4と右ライトガイド340の外径φ5の和よりも小さくなっている。これにより、空間SP1に配置された処置具管路260が空間SP3に寄ってきた場合でも、流体管路270と左ライトガイド320が逃げるスペースを確保できる。このようなスペースが確保されることで、処置具管路260の外径の最大化を図ることができる。
【0076】
なお、流体管路270は、ケーブル301、右ライトガイド340、及び左ライトガイド320と同等の外径であるが、中空であるため、ケーブル301、右ライトガイド340、及び左ライトガイド320よりは剛性が低くなっている。したがって、空間SP3に配置される内蔵物と空間SP2に配置される内蔵物とでは、空間SP3に配置される内蔵物の方が相対的に変形しやすくなる。このため、空間SP3に処置具管路260が寄ってきて流体管路270と左ライトガイド320に接した場合でも、流体管路270と左ライトガイド320自体の変形や移動によって空きスペースを形成して、処置具管路260を逃がすことができる。
【0077】
空間SP4には、中空の液体管路280が配置されている。液体管路280が空間SP4に配置されていることで、処置具管路260が空間SP1にて動くのを抑制できる。
【0078】
このように、内視鏡1では、湾曲部6の内部において、処置具管路260の周囲に、ケーブル301、右ライトガイド340、流体管路270、左ライトガイド320、及び液体管路280が配置される構成である。換言すると、軸線方向に見た状態で、環状部材64の中心と、処置具管路260以外の内蔵物(ケーブル301、右ライトガイド340、流体管路270、左ライトガイド320、及び液体管路280のそれぞれ)の中心との距離は、環状部材64の中心と処置具管路260の中心との距離よりも大きくなっている。そして、処置具管路260を囲む4つの空間SP2から空間SP5のうちの1つである空間SP2には、処置具管路260が移動しないように、剛性が高く且つ外径が同等のケーブル301と右ライトガイド340が配置され、空間SP2の隣の空間SP3には、剛性が低く且つ外径が同等の流体管路270と左ライトガイド320が空きスペースを多くとるように配置されている。これにより、処置具管路260の内径φ2を3mm以上とし、且つ、先端部7の外径φ1に対する内径φ2の比率を35%以上とした内視鏡を実現することができる。
【0079】
以上説明してきたように、本明細書には以下の事項が記載されている。なお、括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を示しているが、これに限定されるものではない。
【0080】
(1)
挿入部(挿入部2)を備え、
上記挿入部は、処置具が挿通される処置具管路(処置具管路260)と、撮像部(撮像部302)と上記撮像部に接続されるケーブル(ケーブル301)の一部とを内蔵し、
上記挿入部の先端部(先端部7)は、上記挿入部の内蔵物を収容する筒状の第1部材(第1部材71)を有し、
上記第1部材の基端部(基端部710)には、上記処置具管路を収容する第1収容部(収容部711)と、上記撮像部を収容する第2収容部(収容部712)とが、隣り合って設けられ、
上記基端部の外周面には、上記第2収容部に通じる開口(開口710a)が形成されており、
上記挿入部の軸線方向に見た状態で、上記基端部の外周面は、上記挿入部の中心(中心P)からの距離が第1距離(距離L1)となる第1領域(本体部710Aの外周面)と、上記距離が上記第1距離よりも大きい第2距離(距離L2)となる第2領域(膨出部710Bの外周面)と、を含み、
上記軸線方向に見た状態で、上記第2領域と上記開口は、上記挿入部の中心を挟んで反対側に配置されており、
上記第1収容部は、上記第2領域の隣に配置されている、内視鏡。
【0081】
(2)
挿入部(挿入部2)を備え、
上記挿入部は、処置具が挿通される処置具管路(処置具管路260)を内蔵し、
上記挿入部の先端部(先端部7)の外径(外径φ1)に対する上記処置具管路の内径(内径φ2)の比率が、35%以上であり、上記内径が3mm以上である、内視鏡。
【0082】
(3)
(1)に記載の内視鏡であって、
上記第1収容部と上記第2収容部は連通している、内視鏡。
【0083】
(4)
(3)に記載の内視鏡であって、
上記基端部には、上記内蔵物を収容する第3収容部(収容部713)が設けられ、
上記第2収容部と上記第3収容部が連通している、内視鏡。
【0084】
(5)
(4)に記載の内視鏡であって、
上記第3収容部に収容される内蔵物はライトガイド(右ライトガイド340)である、内視鏡。
【0085】
(6)
(1)、(3)から(5)のいずれかに記載の内視鏡であって、
上記基端部には、上記内蔵物を収容する第4収容部(収容部714、715)が設けられ、
上記第4収容部の基端側は、上記軸線方向に垂直な断面が長円となっている、内視鏡。
【0086】
(7)
(6)に記載の内視鏡であって、
上記第4収容部に収容される内蔵物は流体管路(流体管路270、液体管路280)である、内視鏡。
【0087】
(8)
(1)、(3)から(5)のいずれかに記載の内視鏡であって、
上記基端部には、先端にノズル(ノズル27)が固定される流体管路(流体管路270)を上記内蔵物として収容する第4収容部(収容部715)が設けられ、
上記挿入部の先端部は、上記第1部材の先端側の外周面に固着された第2部材(第2部材72)を有し、
上記軸線方向に見た状態で、上記第1部材の上記第2部材と固着される外周面は、上記挿入部の中心からの距離が第3距離(距離L3)となる第3領域(本体部720Aの外周面)と、上記距離が上記第3距離よりも大きい第4距離(距離L4)となる第4領域(膨出部720Bの外周面)と、を含み、
上記第4領域は、上記第4収容部の外周縁に沿って設けられている、内視鏡。
【0088】
(9)
(1)、(3)から(8)のいずれかに記載の内視鏡であって、
上記挿入部は、上記基端部の外周面と固着される固着部材(固着部材62)を先端に有した湾曲部(湾曲部6)を備え、
上記固着部材は、上記開口を覆っており、且つ、上記第2領域を露出させる開口部(開口部62A)を有する、内視鏡。
【0089】
(10)
(1)、(3)から(9)のいずれかに記載の内視鏡であって、
上記第1部材は、先端と基端の間の外周面に周方向に沿って延びる凸部(大径部730)を有し、
上記第2領域は、上記凸部基端側から上記第1部材の基端面まで設けられる、内視鏡。
【0090】
(11)
(10)に記載の内視鏡であって、
上記挿入部は、上記基端部の外周面と固着される固着部材(固着部材62)を先端に有した湾曲部(湾曲部6)を備え、
上記固着部材の先端が、上記凸部に当接する、内視鏡。
【0091】
(12)
(1)、(3)から(11)のいずれかに記載の内視鏡であって、
上記基端部は、第1ライトガイド(左ライトガイド320)が収容される収容部(収容部716)と、第2ライトガイド(右ライトガイド340)が収容される収容部(収容部713)と、第1流体管路(流体管路270)が収容される収容部(収容部715)と、第2流体管路(液体管路280)が収容される収容部(収容部714)と、を含み、
上記軸線方向に見た状態で、上記開口と上記挿入部の中心と上記第2領域とを結ぶ直線(直線LA)によって分割される上記基端部の2つの領域の一方に上記第1ライトガイドが収容される上記収容部が設けられ、上記2つの領域の他方に上記第2ライトガイドが収容される上記収容部が設けられ、
上記軸線方向に見た状態で、上記第1ライトガイドが収容される上記収容部の中心と上記第2ライトガイドが収容される上記収容部の中心を通る直線(直線LB)によって分割される上記基端部の2つの領域の一方に上記第1流体管路が収容される上記収容部が設けられ、その2つの領域の他方に上記第2流体管路が収容される上記収容部が設けられる、内視鏡。
【0092】
(13)
(1)、(3)から(12)のいずれかに記載の内視鏡であって、
上記第2収容部は、上記撮像部を収容し、
上記撮像部に含まれる撮像素子の背面が、上記先端部の径方向外側に向いて配置される、内視鏡。
【符号の説明】
【0093】
1 内視鏡
2 挿入部
3 操作部
4 ユニバーサルコード
5 軟性部
6 湾曲部
7 先端部
8,9 アングルノブ
10 送気送水ボタン
11 吸引ボタン
12 処置具導入口
14,302A,320A,340A 先端面
14A,14B 傾斜面
20 第1面
21 第2面
21A,22A 平坦面
21B,22B 段差部
22 第3面
26 鉗子口
27 ノズル
27A 噴射口
27k,300k,320k,340k 貫通孔
28 WJ噴出口
30 観察窓
32 第1照明窓
34 第2照明窓
60 湾曲駒部
61 被覆部材
62 固着部材
62A 開口部
63 連結部材
64 環状部材
66 カシメピン
71 第1部材
710a 開口
72 第2部材
260 処置具管路
270 流体管路
280 液体管路
301 ケーブル
302 撮像部
303 レンズ群
304 プリズム
305 撮像素子
306 メイン基板
307 サブ基板
308 素線
320 左ライトガイド
340 右ライトガイド
640 内周面
641 挿通部材
641a 挿通孔
710 基端部
710A,720A 本体部
710B,720B 膨出部
711,712,713,714,715,716 収容部
714a,714b,715a,715b 部分
720 部材先端部
730 大径部
V1,V2,V3 仮想円
GR1 先端グループ
GR2 基端グループ
GR3 中間グループ
V5 四角形
V4 内接円
SP1,SP2,SP3,SP4,SP5 空間
L1,L2,L3,L4 距離