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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132732
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】CMP装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/30 20120101AFI20240920BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240920BHJP
   B24B 37/32 20120101ALI20240920BHJP
【FI】
B24B37/30 E
H01L21/304 622K
B24B37/32 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043630
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100169960
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 貴光
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 颯典
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158BB06
3C158BB08
3C158CB01
3C158DA12
3C158DA17
3C158EA13
3C158EA14
3C158EA23
3C158EB01
5F057AA16
5F057AA21
5F057BA11
5F057BB06
5F057BB09
5F057CA11
5F057DA03
5F057EC24
5F057EC25
5F057FA13
5F057FA19
5F057FA20
5F057GA02
5F057GA27
(57)【要約】
【課題】スラリーのワークへの固着を抑制可能なCMP装置を提供する。
【解決手段】CMP装置1は、ワークWを収容可能な収容ポケット40aが中央に形成され、キャリア30の下端を囲繞するように設けられた略円環状のリテーナリング40と、リテーナリング40に周縁が把持されて、キャリア30との間に圧力伝搬室Cを形成するメンブレンフィルム50と、収容ポケット40a内でメンブレンフィルム50に接合され、ワークWを保持可能なバッキングフィルム60と、圧力伝搬室Cに保湿水を含む加圧流体を供給する流体供給源32と、を備え、ワークWが研磨される際に、加圧流体は、圧力伝搬室Cと収容ポケット40aとを連通するようにメンブレンフィルム50及びバッキングフィルム60に形成された連通孔70を介して収容ポケット40a内に供給される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを研磨パッドに押し当てて研磨するCMP装置であって、
前記ワークを収容可能な収容ポケットが中央に形成され、キャリアの下端を囲繞するように設けられた略円環状のリテーナリングと、
前記リテーナリングに周縁が把持されて、前記キャリアとの間に圧力伝搬室を形成するメンブレンフィルムと、
前記収容ポケット内で前記メンブレンフィルムに接合され、前記ワークを保持可能なバッキングフィルムと、
前記圧力伝搬室に保湿水を含む加圧流体を供給する流体供給源と、
を備え、
前記ワークが研磨される際に、前記加圧流体は、前記圧力伝搬室と前記収容ポケットとを連通するように前記メンブレンフィルム及び前記バッキングフィルムに形成された連通孔を介して前記収容ポケット内に供給されることを特徴とするCMP装置。
【請求項2】
前記加圧流体は、前記ワークが研磨される際に、前記ワークと前記バッキングフィルムとの間に満たされていることを特徴とする請求項1記載のCMP装置。
【請求項3】
前記加圧流体は、DIWと圧縮空気とを混合して成るミストエアーであることを特徴とする請求項1記載のCMP装置。
【請求項4】
前記加圧流体は、DIWであることを特徴とする請求項1記載のCMP装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェハを研磨するCMP装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造分野では、シリコンウェハ等の半導体ウェハ(以下、「ワーク」という)を研磨して平坦化するCMP装置が知られている。
【0003】
特許文献1記載の研磨装置は、化学的機械的研磨、いわゆるCMP(Chemical Mechanical Polishing)技術を適用した、エアーフロート方式のCMP装置が開示されている。このCMP装置では、研磨時に、研磨ヘッドのキャリアとゴムシートとの間に形成されたエア室にエアが導入されて圧力流体層が形成され、この圧力流体層を介してウェハの表面(被研磨面)を研磨布に押し付ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-212754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載のCMP装置を用いて難加工性材料から成るウェハを研磨する場合、高圧・高回転で長時間に亘って研磨を行うため、ウェハ温度が過度に上昇して、ウェハに付着したスラリーが蒸発してウェハに固着するという問題があった。さらに、ゴムシートの穴から噴き出たエアが、ウェハとゴムシートとの間に回り込んだスラリーを乾燥させると、スラリーがウェハにさらに固着し易いという問題があった。
【0006】
そこで、スラリーのワークへの固着を抑制するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るCMP装置は、ワークを研磨パッドに押し当てて研磨するCMP装置であって、前記ワークを収容可能な収容ポケットが中央に形成され、キャリアの下端を囲繞するように設けられた略円環状のリテーナリングと、前記リテーナリングに周縁が把持されて、前記キャリアとの間に圧力伝搬室を形成するメンブレンフィルムと、前記収容ポケット内で前記メンブレンフィルムに接合され、前記ウェハを保持可能なバッキングフィルムと、前記圧力伝搬室に保湿水を含む加圧流体を供給する流体供給源と、を備え、前記ワークが研磨される際に、前記加圧流体は、前記圧力伝搬室と前記収容ポケットとを連通するように前記リテーナリング及び前記バッキングフィルムに形成された連通孔を介して前記収容ポケット内に供給される。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、保湿水を含む加圧流体が連通孔を介して収容ポケット内に供給されることにより、ワークの乾燥及びワークの温度上昇が抑制されるため、スラリーのワークへの固着を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施例に係るウェハ吸着装置を適用したウェハ研磨装置を模式的に示す斜視図。
図2】研磨ヘッドを模式的に示す縦断面図。
図3】研磨ヘッドの要部を模式的に示す縦断面図。
図4】保湿水を含む加圧流体を生成する流体供給源の構造を示す模式図。
図5】実験例1の圧力分布を示す画像。
図6】実験例2の圧力分布を示す画像。
図7】実験例3のスラリー固着量、プラテン表面温度及び研磨レートを示す表。
図8】実験例3の研磨プロファイルを示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。なお、以下では、構成要素の数、数値、量、範囲等に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも構わない。
【0011】
また、構成要素等の形状、位置関係に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似又は類似するもの等を含む。
【0012】
また、図面は、特徴を分かり易くするために特徴的な部分を拡大する等して誇張する場合があり、構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。また、断面図では、構成要素の断面構造を分かり易くするために、一部の構成要素のハッチングを省略することがある。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係るCMP装置1を模式的に示す斜視図である。CMP装置1は、ワークWの下面を平坦に研磨するものである。ワークWは、例えば、炭化ケイ素(シリコンカーバイド:SiC)を含む物質から成るウェハ又は窒化ガリウム(GaN)から成るウェハ等であるがこれに限定されるものではない。CMP装置1は、プラテン2と、研磨ヘッド10と、を備えている。
【0014】
プラテン2は、円盤状に形成されており、プラテン2の下方に配置された回転軸3に連結されている。回転軸3がモータ4の駆動によって回転することにより、プラテン2は図1中の矢印D1の方向に回転する。プラテン2の上面には、研磨パッド5が貼付されており、研磨パッド5上にノズル6から研磨剤と化学薬品との混合物であるCMPスラリーSが供給される。
【0015】
研磨ヘッド10は、プラテン2より小径の円盤状に形成されており、研磨ヘッド10の上方に配置された回転軸10aに連結されている。回転軸10aが図示しないモータの駆動によって回転することにより、研磨ヘッド10は、図1中の矢印D2の方向に回転する。研磨ヘッド10は、図示しない昇降装置によって垂直方向Vに昇降自在である。研磨ヘッド10は、ワークWを研磨する際に下降して研磨パッド5にワークWを押圧する。研磨ヘッド10が研磨するワークWは、図示しないウェハ搬送機構によって受け渡される。
【0016】
CMP装置1の動作は、コントローラ7によって制御される。コントローラ7は、CMP装置1を構成する構成要素をそれぞれ制御するものである。コントローラ7は、例えばコンピュータであり、CPU、メモリ等により構成される。なお、コントローラ7の機能は、ソフトウェアを用いて制御することにより実現されても良く、ハードウェアを用いて動作するものにより実現されても良い。
【0017】
次に、研磨ヘッド10について、図2及び図3に基づいて説明する。
【0018】
研磨ヘッド10は、ヘッド本体20と、キャリア30と、リテーナリング40と、メンブレンフィルム50と、バッキングフィルム60と、を備えている。
【0019】
ヘッド本体20は、回転軸10aに接続されており、回転軸10aが図示しないモータの駆動によって回転することにより、回転軸10aと共に回転する。ヘッド本体20は、連結部21を介してヘッド本体20の下方に配置されたキャリア30に連結されており、ヘッド本体20及びキャリア30は連動して回転する。
【0020】
キャリア30には、キャリア30の周縁に等間隔に離間して配置された流体供給ライン31が設けられている。流体供給ライン31の下端は、キャリア30の下面30aとメンブレンフィルム50との間に形成された圧力伝搬室Cに開口している。
【0021】
流体供給ライン31は、流体供給源(RS)32及び図示しない真空源に接続されている。流体供給源32及び真空源は、図示しないバルブ等を介して流体供給ライン31に切替可能に接続されている。流体供給源32は、流体供給ライン31を介して少なくとも保湿水を含む加圧流体を圧力伝搬室Cに供給可能である。流体供給ライン31に供給される加圧流体の圧力は、図示しないレギュレータによって調整される。圧力伝搬室C内に供給された加圧流体は、キャリア30の外周縁に形成されたリムによってメンブレンフィルム50の上方に圧力伝搬層を形成し、メンブレンフィルム50全面を下方に押圧する。また、真空源は、流体供給ライン31を介して負圧を圧力伝搬室C内に供給可能である。
【0022】
ヘッド本体20とキャリア30との間には、キャリア押圧手段33が設けられている。キャリア押圧手段33は、図示しないエア供給源から供給されるエアによって膨張するエアバッグ等である。エア供給源から供給されるエアの圧力は、図示しないレギュレータによって調整される。キャリア押圧手段33は、供給されるエアの圧力に応じて、キャリア30を介してワークWを研磨パッド5に押圧する。
【0023】
リテーナリング40は、キャリア30の下端付近を囲むように配置されている。
【0024】
リテーナリング40は、例えば、ガラスエポキシ、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)又はポリフェニレンサルファイド(PPS)等の樹脂から成る。リテーナリング40は、円環状に形成されており、略中央にワークWを収容する収容ポケット40aを備えている。
【0025】
リテーナホルダ41は、リング状に形成され、下面41aがリテーナリング40の上面40bにメンブレンフィルム50を介して接合され、リテーナリング40を保持する。リテーナホルダ41は、スナップリング42を介してリテーナ押圧部材43に取り付けられている。ヘッド本体20とリテーナ押圧部材43との間には、リテーナ押圧手段44が設けられている。なお、符号45は、スナップリング42の上方を覆うカバーである。
【0026】
リテーナ押圧手段44は、図示しないエア供給源から供給されるエアによって膨張するエアバッグ等である。エア供給源から供給されるエアの圧力は、図示しないレギュレータによって調整される。リテーナ押圧手段44は、供給されるエアの圧力に応じてリテーナリング40を研磨パッド5に向けて押圧する。
【0027】
メンブレンフィルム50は、周縁がリテーナリング40及びリテーナホルダ41に挟持されて、圧力伝搬室Cと収容ポケット40aとを区画している。圧力伝搬室Cに圧縮空気が導入されると、メンブレンフィルム50は、収容ポケット40a内で下方に向かって弾性変形する。
【0028】
メンブレンフィルム50は、適度な強度と柔軟性を兼ね備えた材料が好ましく、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)又はポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂が好ましい。メンブレンフィルム50には、物性及び入手性の観点からPEEKが特に好ましいが、PPSやPETであってもヤング率がPEEKに近く、また比較的に容易に入手できるため好ましい。
【0029】
バッキングフィルム60は、例えば、スウェードフィルムである。バッキングフィルム60は、その中心が研磨ヘッド10の回転軸10a上に位置決めされた状態でメンブレンフィルム50に貼着されている。バッキングフィルム60は、圧力伝搬室Cに圧縮空気が導入されると、メンブレンフィルム50の弾性変形に伴って弾性変形する。
【0030】
メンブレンフィルム50及びバッキングフィルム60には、圧力伝搬室Cと収容ポケット40aとを連通する連通孔70が形成されている。連通孔70の孔径は、例えば約3~5mmに設定される。これにより、圧力伝搬室C内の加圧流体Fは、図3の矢印で示すように、連通孔70を介して収容ポケット40a内に供給される。これにより、加圧流体Fは、キャリア押圧手段33の押圧力をワークWに伝播するとともに、ワークWの上面Waとバッキングフィルム60との間へのスラリーSの回り込みを抑制することができる。また、圧力伝搬室C内の負圧は、連通孔70を介して収容ポケット40a内に供給され、ワークWがバッキングフィルム60に吸着保持される。
【0031】
また、加圧流体Fは、ワークWが研磨される際に、ワークWの上面Waとメンブレンフィルム50との間に満たされているのが好ましい。これにより、ワークWの上面Waとバッキングフィルム60との間へのスラリーSの回り込みをさらに抑制することができる。
【0032】
加圧流体Fは、ワークWの上面Waを保湿可能な水量の保湿水を含み、ワークWを加圧可能な程度に加圧された流体であればよく、例えば、圧力調整されたDIW(De-Ionized Water)のみから成るもの、又は圧力調整されたCDA(Claen Dry Air)にDIWの水滴を加水して成るミストエアー等が考えられる。
【0033】
DIWのみから成る加圧流体Fを用いる場合には、DIWの液膜がワークWの上面Waを覆って上面Waを保湿可能で、上面Waでのスラリーの固着を抑制することができる。また、水と気体とを混合して成るミストエアーを用いる場合には、ワークWの上面Waを加湿して上面Waでのスラリーの固着を抑制しつつ、さらに圧力応答性に優れて均一な圧力分布を実現できる。
【0034】
流体供給源32は、ワークWの上面Waを保湿可能な水量の保湿水を含む加圧流体Fを供給可能であれば如何なる構成であってもよい。例えば、ミストエアーを供給する流体供給源32は、図4(a)に示すように、図示しないCDA供給源に接続されてCDAが流れるCDAライン34と、図示しないDIW供給源に接続されてDIWが流れるDIWライン35とを分岐して設けて、CDAにDIWを適量滴下して加水することにより加圧流体Fを生成する構成、又は図4(b)に示すように、CDAライン34をDIWを貯留したバッファ36に接続し、CDAをDIW内に通過させて加湿した後に、冷却機37でCDAを露点以下に冷却して水滴を発生させて加圧流体Fを生成する構成等が考えられる。
【0035】
このようにして、本実施形態に係るCMP装置1は、ワークWを研磨パッド5に押し当てて研磨するCMP装置1であって、ワークWを収容可能な収容ポケット40aが中央に形成され、キャリア30の下端を囲繞するように設けられた略円環状のリテーナリング40と、リテーナリング40に周縁が把持されて、キャリア30との間に圧力伝搬室Cを形成するメンブレンフィルム50と、収容ポケット40a内でメンブレンフィルム50に接合され、ワークWを保持可能なバッキングフィルム60と、圧力伝搬室Cに保湿水を含む加圧流体Fを供給する流体供給源32と、を備え、ワークWが研磨される際に、加圧流体は、圧力伝搬室Cと収容ポケット40aとを連通するようにメンブレンフィルム50及びバッキングフィルム60に形成された連通孔70を介して収容ポケット40a内に供給される構成とした。
【0036】
このような構成により、圧力伝搬室C内の保湿水を含む加圧流体Fが連通孔70を介して収容ポケット40a内に供給されることにより、ワークWの上面Waが保湿されるとともにワークWが冷却されるため、スラリーSのワークWへの固着を抑制することができる。
【実施例0037】
次に、上述した実施形態に係るCMP装置1を用いた実験について説明する。以下では、CMP装置1を用いた、保湿水を含む加圧流体でワークWを押圧して研磨する押圧方式を「ウォーターフロート方式」といい、キャリアの下部に形成されたエア室に導入されたエアでワークWを研磨する従来の押圧方式である「エアーフロート方式」と区別する。
【0038】
(実験例1)
加圧流体としてDIWのみを用いたウォーターフロート方式(実施例1)について、加圧流体の圧力伝播性及び研磨開始からの応答性をそれぞれ計測した。
【0039】
図5は、DIW流量を0.1150ml/minに設定した実施例1及び従来のエアーフロート方式(比較例1)について、加圧開始直後と加圧開始後所定時間経過後の圧力分布を示す測定画像である。なお、本実験例では、キャリア押圧手段33及びリテーナ押圧手段44の各押圧力を9psiに設定した。図5に示す測定画像は、明るい領域は相対的に高い圧力が作用していることを意味し、図5の画像中に示す大径のリング部分は、リテーナリング40に対応しており、小径の円部分は、収容ポケット40aに対応している。
【0040】
図5(a)、(b)によれば、比較例1は、エア供給開始1秒後には、ワークWに圧力が十分に伝播していることが分かる。これに対し、図5(c)、(d)によれば、実施例1は、バッキングフィルム60とワークWとの間にDIWが行き渡るまで圧力伝播が生じないため、DIW供給開始直後ではワークWを十分に押圧できていないものの、DIW供給開始から15秒後には、ワークWとバッキングフィルム60との間にDIWが満たされて、ワークWに圧力が伝播していることが分かる。すなわち、本実験例によれば、比較例1と比べて応答性にラグが生じるものの、圧力伝播性は確保されることが分かる。
【0041】
(実験例2)
次に、加圧流体としてDIWのみを用いたウォーターフロート方式(実施例2~5)において、キャリア押圧手段33及びリテーナ押圧手段44による圧力を変化させたときの圧力の伝搬性を計測した。
【0042】
図6は、以下に示す実施例2~5及び従来のエアーフロート方式(比較例2)について、キャリア押圧手段33及びリテーナ押圧手段44の押圧力を1psi、3psi、5psi、7psi、9psiと変化させたときの圧力分布の測定画像を示す。図6に示す測定画像は、明るい領域は相対的に高い圧力が作用していることを意味し、図6の画像中に示す大径のリング部分は、リテーナリング40に対応しており、小径の円部分は、収容ポケット40aに対応している。また、図6中の「WP/RP」は、キャリア押圧手段33及びリテーナ押圧手段44の押圧力を意味する。
・実施例2:DIW流量1.15l/min
・実施例3:DIW流量0.57l/min
・実施例4:DIW流量0.285l/min
・実施例5:DIW流量0.15l/min
【0043】
図6によれば、実施例2~4は、各押圧力において比較例2と同様に良好な圧力分布を得られることが分かる。一方、実施例5は、比較例2と比較して、十分な圧力を示す圧力分布を得られていないことが分かる。したがって、本実験例においては、DIW流量0.285ml/min以上を確保するのが好ましいことが分かる。
【0044】
(実験例3)
次に、加圧流体としてDIW及びCDAを用いたウォーターフロート方式(実施例6~7)において、P-TEOS膜を研磨した際にワークWに固着したスラリーの固着量(厚み)及び単位時間当たりのワークWの研磨量(研磨レート)を計測した。
【0045】
図7は、以下に示す実施例6~7及び従来のエアーフロート方式(比較例3)について、30分研磨後のワークWの上面Waにおけるスラリー固着量及びプラテン2の表面温度並びに研磨レートを示す表である。なお、本実験例の研磨条件は、キャリア押圧手段33及びリテーナ押圧手段44の各押圧力を5psi、プラテン2の回転数を90rpm、研磨ヘッド10の回転数を87rpm、CDAの流量を30L/min、研磨時間を30分にそれぞれ設定した。また、スラリーSには、シリカスラリーを用いた。
・実施例6:DIW流量0.015ml/min
・実施例7:DIW流量0.030ml/min
【0046】
図7によれば、比較例3では、30分研磨後のスラリー固着量が200μmであるのに対し、実施例6では、スラリー固着量が0.06μm、実施例7では、スラリー固着量が0.05μmとそれぞれ十分に低減されていることが分かる。また、図7によれば、実施例6~7及び比較例3では、30分研磨時のプラテン2の表面温度が同様であって且つ研磨レートに有意な差はないことから、DIWが注水された分だけスラリーSが希釈されても、スラリーSの潤滑効果は保たれていると考えられる。
【0047】
また、図8は、実施例6~7及び比較例3について、縦軸に研磨レート、横軸にワークWの中心からの径方向距離を設定した研磨プロファイルを示すグラフである。
【0048】
図7及び図8によれば、実験例6~7及び比較例3では、ワークW全面に亘って研磨レートに有意な差はないことから、DIWがスラリーSを希釈して研磨レートが悪化する等の悪影響は生じず、DIWが存在することによりワークWの上面Waへのスラリーの固着が抑制されたと考えられる。
【0049】
また、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り、上記以外にも種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【符号の説明】
【0050】
1 :CMP装置
2 :プラテン
3 :(プラテンの)回転軸
4 :モータ
5 :研磨パッド
6 :ノズル
7 :コントローラ
10 :研磨ヘッド
10a:(研磨ヘッドの)回転軸
20 :ヘッド本体
21 :連結部
30 :キャリア
30a:(キャリアの)下面
31 :流体供給ライン
32 :流体供給源
33 :キャリア押圧手段
40 :リテーナリング
40a:収容ポケット
40b:(リテーナリングの)上面
41 :リテーナホルダ
41a:(リテーナホルダの)下面
42 :スナップリング
43 :リテーナ押圧部材
44 :リテーナ押圧手段
45 :カバー
50 :メンブレンフィルム
60 :バッキングフィルム
70 :連通孔
C :圧力伝搬室
S :スラリー
V :垂直方向
W :ワーク
Wa :(ワークの)上面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8